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貸借対照表原則


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V. 貸借対照表原則

1. 貸借対照表の作成目的
 貸借対照表は、貸借対照表日におけるすべての資産、負債及び純資産を記載し、経営者、出資者(開設者)、債権者その他の利害関係者に対して病院の財政状態を正しく表示するものでなければならない。(注1
(1) 債務の担保に供している資産等病院の財務内容を判断するために重要な事項は、貸借対照表に注記しなければならない。
(2) 貸借対照表の資産の合計金額は、負債と純資産の合計金額に一致しなければならない。

2.貸借対照表の表示区分
 貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部の三区分に分け、さらに資産の部を流動資産及び固定資産に、負債の部を流動負債及び固定負債に区分しなければならない。

3.資産、負債の表示方法
 資産、負債は、適切な区分、配列、分類及び評価の基準に従って記載しなければならない。

4.総額主義の原則
 資産、負債及び純資産は、総額によって記載することを原則とし、資産の項目と負債又は純資産の項目とを相殺することによって、その全部又は一部を貸借対照表から除去してはならない。

5.貸借対照表の配列
 資産及び負債の項目の配列は、流動性配列法によるものとする。

6.貸借対照表科目の分類
(1) 資産及び負債の各科目は、一定の基準に従って明瞭に分類しなければならない。(注2
(2) 資産
  資産は、流動資産に属する資産及び固定資産に属する資産に区別しなければならない。仮払金、未決算等の勘定を貸借対照表に記載するには、その性質を示す適当な科目で表示しなければならない。
 A 現金・預金、経常の活動によって生じた未収金等の債権及びその他一年以内に回収可能な債権、売買目的有価証券等、医薬品、診療材料、給食用材料、貯蔵品等のたな卸資産は、流動資産に属するものとする。
   前払費用で一年以内に費用となるものは、流動資産に属するものとする。
   未収金その他流動資産に属する債権は、医業活動上生じた債権とその他の債権とに区分して表示しなければならない。
 B 固定資産は、有形固定資産、無形固定資産及びその他の資産に区分しなければならない。
   建物、構築物、医療用器械備品、その他の器械備品、車両及び船舶、放射性同位元素、その他の有形固定資産、土地、建設仮勘定等は、有形固定資産に属するものとする。
   借地権、ソフトウェア等は、無形固定資産に属するものとする。(注3)(注4
   流動資産に属さない有価証券、長期貸付金及び有形固定資産並びに無形固定資産に属するもの以外の長期資産は、その他の資産に属するものとする。
 C 債権のうち役員等内部の者に対するものと、他会計に対するものは、特別の科目を設けて区別して表示し、又は注記の方法によりその内容を明瞭に表示しなければならない。
(3) 負債
  負債は、流動負債に属する負債と固定負債に属する負債とに区別しなければならない。仮受金、未決算等の勘定を貸借対照表に記載するには、その性質を示す適当な科目で表示しなければならない。
 A 経常的な活動によって生じた買掛金、支払手形等の債務及びその他期限が一年以内に到来する債務は、流動負債に属するものとする。
 買掛金、支払手形その他流動負債に属する債務は、医業活動から生じた債務とその他の債務とに区別して表示しなければならない。
 引当金のうち、賞与引当金のように、通常一年以内に使用される見込みのものは、流動負債に属するものとする。(注5
 B 長期借入金その他経常の活動以外の原因から生じた支払手形、未払金のうち、期間が1年を超えるものは、固定負債に属するものとする。
引当金のうち、退職給付引当金のように、通常一年を超えて使用される見込みのものは、固定負債に属するものとする。(注6
 C 債務のうち、役員等内部の者に対するものと、他会計に対するものは、特別の科目を設けて区別して表示し、又は注記の方法によりその内容を明瞭に表示しなければならない。
 D 補助金については、非償却資産の取得に充てられるものを除き、これを負債の部に記載し、業務の進行に応じて収益に計上しなければならない。設備の取得に対して補助金が交付された場合は、当該設備の耐用年数にわたってこれを配分する。(注7
なお、非償却資産の取得に充てられた補助金については、これを純資産の部に記載するものとする。
(4) 純資産
  純資産は、資産と負債の差額として病院が有する正味財産である。純資産には、損益計算書との関係を明らかにするため、当期純利益又は当期純損失の金額を記載するものとする。(注1

7.資産の貸借対照表価額
 貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。
 
8.無償取得資産の評価
 譲与、贈与その他無償で取得した資産については、公正な評価額をもって取得原価とする。

9.有価証券の評価基準及び評価方法
(1) 有価証券については、購入代価に手数料等の付随費用を加算し、これに移動平均法等の方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。
(2) 有価証券については、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、その他有価証券に区分し、それぞれの区分ごとの評価額をもって貸借対照表価額とする。(注8)(注9

10. たな卸資産の評価基準及び評価方法
 医薬品、診療材料、給食用材料、貯蔵品等のたな卸資産については、原則として、購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算し、これに移動平均法等あらかじめ定めた方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、時価が取得原価よりも下落した場合には、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。

11. 医業未収金、未収金、貸付金等の貸借対照表価額
(1) 医業未収金、未収金、貸付金等その他債権の貸借対照表価額は、債権金額又は取得原価から貸倒引当金を控除した金額とする。なお、貸倒引当金は、資産の控除項目として貸借対照表上に計上するものとする。(注2
(2) 貸倒引当金は、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、合理的な基準により算定した見積高をもって計上しなければならない。

12.有形固定資産の評価
(1) 有形固定資産については、その取得原価から減価償却累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。有形固定資産の取得原価には、原則として当該資産の引取費用等の付随費用を含める。
(2) 現物出資として受け入れた固定資産については、現物出資によって増加した純資産の金額を取得原価とする。
(3) 償却済の有形固定資産は、除却されるまで残存価額又は備忘価額で記載する。

13.無形固定資産の評価
 無形固定資産については、当該資産の取得原価から減価償却累計額を控除した未償却残高を貸借対照表価額とする。(注3

14.負債の貸借対照表価額
 貸借対照表に記載する負債の価額は、原則として、過去の収入額又は合理的な将来の支出見込額を基礎として計上しなければならない。
(1) 買掛金、支払手形、その他金銭債務の貸借対照表価額は、契約に基づく将来の支出額とする。
(2) 前受金等の貸借対照表価額は、過去の収入額を基礎とし、次期以降の期間に配分すべき金額とする。
(3) 将来の特定の費用等に対応する引当金の貸借対照表価額は、合理的に見積もられた支出見込額とする。
(4) 退職給付引当金については、将来の退職給付総額のうち、貸借対照表日までに発生していると認められる額を算定し、貸借対照表価額とする。なお、退職給付総額には、退職一時金のほか年金給付が含まれる。(注6
(5) 外貨建金銭債務については、原則として、決算時の為替相場による円換算額をもって貸借対照表価額とする。



貸借対照表原則注解

(注1) 純資産の意義と分類について
 非営利を前提とする病院施設の会計においては、資産、負債差額を資本としてではなく、純資産と定義することが適切である。
資産と負債の差額である純資産は、損益計算の結果以外の原因でも増減する。病院は施設会計であるため貸借対照表における純資産の分類は、開設主体の会計の基準、課税上の位置づけによって異なることになり、統一的な取り扱いをすることはできない。したがって、開設主体の会計基準の適用にあたっては、必要に応じて勘定科目を分類整理することになる。ただし、当期純利益又は当期純損失を内書し損益計算書とのつながりを明示しなければならない。

(注2) 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について
1.医業未収金(手形債権を含む)、前渡金、買掛金、支払手形、預り金等の当該病院の医業活動により発生した債権及び債務は、流動資産又は流動負債に属するものとする。ただし、これらの債権のうち、特別の事情によって一年以内に回収されないことが明らかなものは、固定資産に属するものとする。
2.貸付金、借入金、当該病院の医業活動外の活動によって発生した未収金、未払金等の債権及び債務で、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払の期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が一年を超えて到来するものは、固定資産又は固定負債に属するものとする。
3.現金及び預金は、原則として流動資産に属するが、預金については貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に期限が到来するものは、流動資産に属するものとし、期限が一年を超えて到来するものは、固定資産に属するものとする。
4.所有有価証券のうち、売買目的有価証券及び一年内に満期の到来する有価証券は流動資産に属するものとし、それ以外の有価証券は固定資産に属するものとする。
5.前払費用については、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に費用となるものは、流動資産に属するものとし、一年を超える期間を経て費用となるものは、固定資産に属するものとする。未収収益は流動資産に属するものとし、未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする。
6.医薬品、診療材料、給食用材料、貯蔵品等のたな卸資産は、流動資産に属するものとし、病院がその医業目的を達成するために所有し、かつ短期的な費消を予定しない財貨は、固定資産に属するものとする。

(注3) ソフトウェアについて
1.当該病院が開発し利用するソフトウェアの制作費のうち、研究開発が終了する時点までの費用は研究開発費として計上しなければならない。
2.医療用器械備品等に組み込まれているソフトウェアの取得に要した費用については、当該医療用器械備品等の取得原価に含める。

(注4) リース資産の会計処理
リース取引はファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分し、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。

(注5) 引当金について
 将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。

(注6) 退職給付の総額のうち期末までに発生していると認められる額
 退職給付の総額のうち期末までに発生していると認められる額は、退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法その他従業員の勤務の対価を合理的に反映する方法を用いて計算しなければならない。

(注7) 補助金の収益化について
補助金については、非償却資産の取得に充てられるものを除き、これを負債の部に記載し、業務の進行に応じて収益に計上する。収益化を行った補助金は、医業外収益の区分に記載する。

(注8) 有価証券の評価基準
 有価証券については、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、その他有価証券に区分し、次のように評価を行う。
(1) 売買目的有価証券 時価で評価し、評価差額は損益計算書上、損益として計上する。 
(2) 満期保有目的の債券は、取得原価をもって貸借対照価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合においては、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。償却原価法とは、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。なお、この場合には、当該加減額を受取利息に含めて処理する。
(3) その他有価証券は時価で評価し、評価差額は、貸借対照表上、純資産の部に計上するとともに、翌期首に取得原価に洗い替えなければならない。
 なお、満期保有目的の債券及びその他有価証券のうち市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の費用として計上しなければならない。

(注9) 満期保有目的の債券とその他有価証券との区分
1.その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券以外の有価証券であり、長期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券や、政策的な目的から保有する有価証券が含まれることになる。
2.余裕資金等の運用として、利息収入を得ることを主たる目的として保有する国債、地方債、政府保証債、その他の債券であって、長期保有の意思をもって取得した債券は、資金繰り等から長期的には売却の可能性が見込まれる債券であっても、満期保有目的の債券に含めるものとする。



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