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生活衛生課

1.生活衛生関係営業の振興

(1 )生活衛生営業振興事業について
 公衆衛生の見地から、国民の日常生活に極めて深い関係のある生活衛生関係営業(以下「生衛業」という。)の衛生施設の改善向上、経営の健全化、振興等を通じて衛生水準の向上を図ることが重要であり、平成13年度より営業者組織の自主的活動を促進するため、「生活衛生営業振興事業」を行っているところである。都道府県等においては、生衛業の振興対策の積極的な取組みをお願いする。

(2 )生衛業に係る地方財政措置について
 生衛業の振興に関しては、平成12年度から、1交付税標準団体当たり500万円(全国需要額約4億円)の地方財政措置が講じられているところであるが、平成14年度需要額が、約3億4千万円と低調である。各都道府県においては、生衛業の振興のための財政措置の実施について格別の御尽力をお願いする。

(3 )生衛業の指導体制について
 都道府県生活衛生営業指導センターの経営指導員による指導体制の充実・強化については従来より御配慮いただいているが、相談内容の複雑、高度化等によりその必要性がより一層高まっているところである。このため、経営、金融、税務、衛生等に関する指導を的確に実施できるよう、中小企業診断士等の資格を有する者の配置や経営指導員の資質の向上を図るための研修の実施等について、引き続き御配慮をお願いする。
 なお、平成16年度においては、長期化する景気低迷や金融環境の急激な変化の中で、個々では経営の再生等を図ることが困難な生活衛生関係営業者に対し、都道府県生活衛生営業指導センターに中小企業診断士や弁護士等の専門家を配置した「再生支援等特別相談窓口」を設置し、専門的かつ適切な指導・助言を行う体制を強化すること等によって営業者の早期再生や経営改善等を支援することとしている。

(4 )旅館・ホテルにおける生きがい対応型デイサービス
 「旅館・ホテルにおける生きがい対応型デイサービス」とは、旅館・ホテルを活用して、家に閉じこもりがちな高齢者、要介護状態になるおそれのある高齢者等に対し、通所による各種サービスを提供することにより高齢者の社会的孤立感の解消、自立生活の助長及び要介護状態になることの予防を目的とする事業である。この事業については、平成13年9月10日健衛発第94号生活衛生課長通知「旅館・ホテルにおける生きがい活動支援通所事業の実施について」により運用に当たっての実施要綱を定め、関係機関への周知及び積極的な支援についてお願いしたところである。
 厚生労働省としては、平成14年度税制改正の重点項目として当該事業を行う旅館・ホテルに係る固定資産税の減免について要望し、「各市町村の自主的な判断により減免することができる」旨が講じられたところである。
 当該事業の実施に関しては、引き続き、都道府県・市町村の福祉部局のみならず市町村の税制担当部局とも連携の上、積極的な御支援をお願いする。

(5 )旅館等へのSARS対策等について
 (財)全国生活衛生営業指導センターにおいて、旅館等を中心とした生活衛生関係営業施設で、衛生面での適切な対応や保健所等専門機関との迅速な連携によって、営業における重症急性呼吸器症候群(以下「SARS」という。)の感染機会をできるかぎりなくし、従業者や利用客への感染拡大の防止を図ることを目的として、「旅館等の生活衛生関係営業におけるSARS感染防止対策のための自主管理マニュアル」等を作成されましたので、本マニュアル等を貴管下の旅館等の指導に活用していただきSARSの感染防止対策の一層の徹底が図られるようお願いします。
 また、昨年、SARSにり患した外国人がホテルに宿泊した事案が発生し、感染経路の把握の際に必要となる宿泊者名簿が適正な記載がなされているかが重要となっていること、さらには、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」(平成15年12月犯罪対策閣僚会議決定)においても外国人の宿泊時の身分確認の厳格化等が求められていることから、平成16年1月13日付け健発第0113004号厚生労働省健康局長通知「宿泊者名簿の必要事項の記載の徹底について」により各都道府県知事、政令市長及び特別区長あて通知したので、貴管下の旅館等の指導を併せてお願いしたい。

(6 )標準営業約款の登録普及促進
 標準営業約款は、現在定められている理容・美容・クリーニングの3業種に加え、一般飲食店営業及びめん類飲食店営業の2業種について、新たに標準営業約款の策定に向け検討されているところである。
 全国生活衛生営業指導センターにおいて、平成元年度から毎年11月を「標準営業約款普及登録促進月間」と定め、特にこの期間におけるキャンペーンを実施しているところである。
 本制度の普及促進のため、ホームページや広報誌への掲載等による広報を行っているところであるが、都道府県、保健所設置市及び特別区においても、約款登録の普及促進のため、地域広報誌への掲載、関係団体への協力依頼等を積極的に実施されるよう御配慮をお願いする。特に、消費者に最も身近な市町村レベルでの広報の活用は、本制度の普及促進にとって効果的であるので、市町村等への要請方御配慮願いたい。
 なお、標準営業約款推進協議会を未だ設置していない都道府県においては早急に設置するようお願いする。

(7 )振興指針
 平成15年度は、理容業、美容業、クリーニング業、興行場営業、飲食店営業(すし店)の振興指針を改正することとし、今後、所要の手続を経た後、官報告示することとしている。
 各生活衛生同業組合が作成する振興計画の認定の事務は、都道府県においては、地方厚生局と連携の上、当該事務が円滑に実施されるよう御協力方お願いする。

(8 )国民生活金融公庫の融資制度
重点事項27ページの資料を参照されたい。

(9 )平成16年度税制改正
 平成16年度における生活衛生関係営業に関連する税制改正の概要は以下のとおりである。

 中小企業投資促進税制の延長(所得税・法人税)
 中小企業者が一定金額以上の機械装置を取得した場合に認められる特別償却制度等の適用期限を2年間延長する。

 公害防止用設備に係る特別措置の延長(固定資産税)
 活性炭吸着式処理装置及び地下水浄化設備に係る固定資産税を軽減する特別措置の適用期限を2年間延長する。

 エネルギー需給構造改革投資促進税制度の延長(所得税・法人税)
 エネルギー需給構造改革投資促進税制の対象設備から全自動洗濯脱水機が適用除外とされたが、引き続き、中小企業投資税制により同様の税制措置の適用を受けられることとなった。

 公害防止用設備に係る特別償却制度の延長(所得税・法人税)
 公害防止用設備に係る特別償却制度のうち、活性炭吸着式処理装置については適用期限を2年間延長する。一方、ドライクリーニング装置は当該制度の対象設備から適用除外とされたが、引き続き、中小企業投資促進税制により同様の税制措置の適用を受けられることとなった。


2.生活と環境における衛生対策

(1 )建築物衛生対策
 建築物衛生対策については、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)」に基づき推進しているところであり、平成14年には、近年の建築物衛生を取り巻く状況の変化に対応するため、維持管理基準の見直し等を内容とした同法施行令及び施行規則の改正が行われ、昨年4月1日から施行されているところである。
 また、本年度については、平成15年7月2日に公布された「公益法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備に関する法律(平成15年法律第102号)」及び平成15年5月30日に公布された「水道水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)」の施行に伴う同法施行規則の更なる改正を予定しているところである。この改正は、本法に規定する建築物環境衛生管理技術者講習会等の実施機関に関する「指定制度」を「登録制度」に変更するための登録基準の策定や建築物環境衛生管理基準における飲料水質基準等の見直しを主な内容とするものである。各都道府県等におかれては、改正省令の円滑な施行につき御配慮をお願いする。

(2 )シックハウス対策
 近年、住宅等の室内で、建材等から放散する化学物質を原因とした室内空気汚染等による健康への影響、いわゆる「シックハウス症候群」が問題となっている。これに対しては、平成12年4月に、シックハウス対策関係省庁連絡会議(厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、文部科学省及び環境省により構成)を設置し、関係省庁間で情報交換や政策協議等を行っている。
 シックハウスの問題については、様々な要因が複雑に関係していると考えられることから、「原因分析」「健康基準値と測定法の基準」「防止対策」「相談体制整備」「医療・研究対策」「汚染住宅の改修」等からなるシックハウス総合対策を関係省庁が連携して推進しているところである。このうち、厚生労働省の主な取組は、以下のとおりである。

 室内空気中の化学物質による健康影響等に関する研究
 平成15年度においては、昨年度に引き続き、疫学調査による実態の把握及び原因究明、健康影響の診断治療法等に関する研究を実施している。
 また、各都道府県等の保健所を始めとする医療従事者等に活用していただくため、これまでに実施されてきた調査研究により得られたシックハウス症候群等に関する医学的知見の整理に関する報告書を平成15年度中に作成・配布する予定である。

 建材等から放散される化学物質の室内濃度指針値等の策定
 これまでにホルムアルデヒド等13物質の室内濃度指針値とTVOC(総揮発性有機化合物)の暫定目標値のほか、「室内空気中化学物質の測定マニュアル」及び「室内空気中化学物質についての相談マニュアル作成の手引き」が策定されているところである。

 シックハウスに関する情報収集、普及啓発及び相談体制の充実
 防止対策を推進するため、普及啓発のためのパンフレットを作成・配布するとともに、シックハウスに関する普及啓発及び相談体制の充実を図るため、都道府県等の担当者を対象とした会議を平成13年度末に実施したところである。
 都道府県等においては、保健所におけるシックハウスに関する情報収集、普及啓発及び相談体制の充実について、引き続き、特段の御配慮をお願いする。

 平成16年度予算においては、以上に係る経費の他、いわゆる「シックハウス症候群」が疑われる患者の鑑別診断、カウンセリング等を行えるよう、公的医療機関に環境調整室(クリーンルーム)を整備する場合について、昨年度に引き続き、補助金を支出することとしている(医療施設等設備整備費補助金、医療施設等施設整備費補助金。国庫補助率は1/3。対象の施設整備は1億円程度のものを想定。)。近々に建替えを予定している公的医療機関やいわゆる「シックハウス症候群」やその類似症候群対策に重点を置く公的医療機関に関してこの補助金が活用されるよう、公的医療機関関係者との相談協議について意を用いられたい。

(3 )遊泳用プールの衛生確保
 遊泳用プールの衛生確保の基準については、平成13年7月24日健発第774号健康局長通知「遊泳用プールの衛生基準について」により改正を行っているところであり、昨年に引き続き、本格的な利用の時季までに周知広報や関係者への指導を行い、利用者が安心して新しい基準に従った衛生的かつ快適なプールを利用できるよう対応をお願いする。

(4 )試験・許認可等

 理容師・美容師国家試験
 理容師及び美容師の厚生労働大臣試験が平成12年4月から実施されており、その事務は財団法人理容師美容師試験研修センターに委託しているところであるが、この大臣試験を円滑に実施するためには都道府県の御協力が不可欠であり、今後とも格別の御協力方よろしくお願いする。

 理容師・美容師養成施設
 理容師・美容師養成施設の指定等の事務については、平成13年1月6日以降は、地方厚生局において実施されていることから、都道府県においては、地方厚生局と連携の上、当該事務が円滑に実施されるよう御協力方よろしくお願いする。
 また、近年、新たに養成施設を設立する者が増加していることにより、関係者から需給調整の観点から新設を抑制するようにとの意見が寄せられることがあるが、そのような観点に立った処分は行政の裁量を超えるものであり、許可・不許可の判断に当たっては指定基準に即して審査することとなっているので、都道府県においては、この趣旨を御理解の上事務の取進め方お願いする。

 クリーニング師の研修受講等の促進
 今日のクリーニング業界では、繊維製品の素材の多様化、溶剤等による環境問題、消費者からのクレームの増加など、様々な問題に直面しており、クリーニング師・業務従事者においては、これら諸問題に対応するため、クリーニング業法第8条の2(クリーニング師の研修)及び第8条の3(業務従業者に対する講習)に基づき研修・講習を3年に1度受講することが義務付けられているところであるが、年々受講率が低下傾向にある。これらは制度上問題があるので、都道府県においては、クリーニング師の研修受講等について、より一層の御配慮をお願いする。


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