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水道課

1.水道施策の推進

(1 )今後の水道施設整備の基本的考え方
 全国の水道普及率は、96.8%(平成14年度末)に達し、水道は国民生活の質の向上や経済活動に直結する基盤施設として必要不可欠なものとなっている。
 しかしその一方で、水道原水の悪化に伴う異臭味、消毒副生成物の有害性、塩素耐性を持つ新たな病原性微生物問題への対応や地震あるいは渇水に強い水道を構築するなど、次世代に継承するにふさわしい質の高い水道として整備することが要請されている。
 平成16年度政府予算案における水道施設整備費は、他府省計上分を含めて、1,331億円(対前年度比90.3%)を確保し、簡易水道施設整備においては、「水道未普及地域解消事業」、「地方の生活基盤となる簡易水道の整備・近代化」、上水道施設整備並びに水道水源開発では、「安全で安心できる生活を支える水道の整備」、「地震・渇水に強い水道施設の整備」をより一層促進するため、予算配分の重点化を行ったところである。
 また、地震・渇水等に強い水道施設整備に向けて、(1)配水池整備事業の補助対象の見直し、(2)緊急時用連絡管整備事業について、広域圏間での整備を追加等により、事業の推進を図ることとしたところである。
 ついては、都道府県において、これらの補助事業の積極的な活用を図るとともに、水道整備の課題を踏まえた基本構想及び広域的水道整備計画の策定・改定などによって、計画的な水道整備の推進が行われるよう水道事業者に対する指導等に努められたい。
 昨年から特に多発している地震等の災害による被害を踏まえ、緊急時給水拠点確保、水道広域化施設整備等の国庫補助制度を活用しつつ、震災時の広域的応急対策計画の策定、水道施設の耐震化の計画的・効率的実施等について水道事業者等を指導されたい。
 地震・渇水対策を推進するため、引き続き利用者への節水PR、漏水防止、広域化を促進するほか、事業計画の認可等に際し、水資源開発の適正な規模についての検討をされたい。

(2 )水道ビジョンの策定等について
 平成13年の水道法改正において制度化された水道の管理に関する業務の第三者への業務委託をはじめ、平成14年には、地方自治法の一部改正(指定管理者制度)及び地方独立行政法人法の公布等がなされ、水道事業の事業形態については、地域の状況等に応じ、様々な形態をとることが可能となったところである。このうち水道法第24条の3に基づく第三者への業務委託に関しては、平成14年度から3年計画で第三者への業務委託を適切に推進するためガイドラインを整備することとしており、平成14年12月に、同ガイドラインの整備の一環として、水道事業者等における第三者への業務委託の対象業務の考え方について情報提供を行ったところである。
 また、水道事業の広域化による管理体制の強化に関しては、市町村合併の推進とあいまって広域化が円滑に推進されるよう、水道事業統合のメリットやデメリットの整理、統合に向けた計画策定に資する情報の整理等を行っているところであり、今後、段階的に情報を提供することとしている。
 さらに、厚生労働省水道課においては、今後の水道に関する課題を明確化し、これらの課題に対処するための政策手法等を包括的に明示した水道ビジョンを検討することとしている。当該ビジョンの中では、今後の水道施策の目指すべき方向性を明確にし、計画的に施策を推進していくために、次に掲げる課題等について、長期的な水道に関連する目標の整備、目標の整備にあたっての前提条件、目標達成のための総合的な水道政策の概要、スケジュール等について定めることとしている。
 (1) 水道の経営・運営形態の適正化等を通じた水道事業の技術・経営基盤の強化
 (2) 水道水源の保全から給水栓に至るまでの各種対策を講じることによる水道水質の向上
 (3) 災害対策等の充実による安定的な水の供給
 (4) 水道分野における環境・省エネルギー等の対策の強化
 (5) 国民の水道に対する多様的かつ高度化したニーズへの適切な対応
 (6) 国際協力等を通じた水道分野の国際貢献


(3)平成16年度予算(案)の概要


・安全で良質な水道水の安定供給、地震・渇水に強い水道づくりを推進。

964億円
  90.7%(対前年度比)

(単位:百万円)
区分 平成15年度
予算額
平成16年度
予算額(案)
対前年度
増△減額
対前年度
比率(%)
水道施設整備費
(簡易水道)
(上水道)
147,520
( 39,074 )
( 108,446 )
133,138
( 36,658 )
( 96,480 )
14,382
(△ 2,416 )
(△ 11,966 )
90.3
(  93.8  )
( 90.0  )
 
厚生労働省計上分
(簡易水道)
(上水道)
106,299
( 31,617 )
( 74,682 )
 96,375
( 30,052 )
( 66,323 )
 9,924
(△ 1,565 )
(△ 8,359 )
90.7
(  95.1  )
( 88.8  )
他府省計上分
(簡易水道)
(上水道)
 41,221
( 7,457 )
( 33,764 )
 36,763
( 6,606 )
( 30,157 )
 4,458
(△ 851 )
(△ 3,607 )
89.2
(  88.6  )
( 89.3  )

主な事項
(対前年度比 95.2%)
○ 地方の生活基盤となる簡易水道の整備近代化  31,551百万円 → 30,025百万円

[重点化事項]
 ・  維持管理面、経営面等で脆弱な小規模水道の広域化を推進

(対前年度比 95.9%)
  (1
)水道未普及地域解消事業の促進等  13,097百万円→ 12,562百万円
 水道未普及地域の解消を推進することにより、有害物質やO−157等に対しても安全な水道水をどこでも誰でも利用できるよう簡易水道等の整備を促進する。

(対前年度比 95.0%)
  (2
)簡易水道再編事業の促進  13,567百万円→ 12,894百万円
 維持管理面、経営面等で脆弱性を有している簡易水道等の統合を促進する。

(対前年度比 93.5%)
  (3
)生活基盤近代化事業の着実な推進  4,731百万円→ 4,423百万円
 水洗化、シャワーの普及等、現代の生活水準に対応できる簡易水道の整備を推進するとともに安全で安定的な水道の確保を図る。


(対前年度比 99.4%)
○ 安全で安心できる生活を支える水道の整備  11,248百万円 → 11,184百万円

[重点化事項]
 ・  異臭味被害やクリプトスポリジウム等の感染性微生物問題等に対応した安全で良質な水道水を確保するための高度浄水施設整備の推進

(対前年度比100.0%)
  (1
)高度浄水施設整備事業の積極的な推進  10,563百万円→ 10,563百万円
 異臭味被害、四塩化炭素やヒ素等による水源汚染、塩素耐性を有する感染性微生物による健康被害等を防止し、より安全で安心して飲用できる水道水を供給するため、高度浄水施設の整備を推進する。

(対前年度比 95.0%)
  (2
)水質検査施設等整備費  359百万円→ 341百万円
(1)  水道水質管理体制の強化を図るため、共同水質検査センター等の水質検査機器整備や水道原水の水質監視を行うための水道水源自動監視施設の整備を促進する。
(2)  改正水道水質基準に基づく新たな水質検査体制の円滑な推進を図るため、現行の補助対象機器等の見直し。
(3)  水道水源放射能汚染検査施設整備費を廃止。
(対前年度比 85.9%)
  (3
)浄水場排水処理施設整備費  326百万円→ 280百万円
(1)  浄水場から排出される水による河川、湖沼等の水質汚濁を防止し、水質環境基準を保持するための浄水場のろ過池洗浄水、沈澱池排水の処理及び浄水場の減量化・再利用等の促進を図るために必要な処理施設の整備を行う。
(2)  浄水汚泥再利用等促進事業費を廃止。


(対前年度比 86.9%)
○ 地震・渇水に強い水道施設の整備  63,367百万円 → 55,075百万円

[重点化事項]
 ・  災害時の給水拠点確保の推進
 ・  老朽管等の計画的な更新を推進

(対前年度比 85.1%)
  (1
)水道水源開発施設整備費  22,459百万円→ 19,108百万円
 渇水時においても国民の生活を守ることができるよう、安定的な水道水源の確保のための事業を促進する。

(対前年度比 86.4%)
  (2
)水道広域化施設の整備の推進  34,334百万円→ 29,652百万円
(1)  水道水の需要の増加及び地震、渇水等災害に対応するため、重複投資を排除しつつ水源を安定的に確保し、広域的な水運用及び水道施設の効率的利用を図るため、広域化施設の整備を促進する。
(2)  一般広域化施設整備費の採択基準(資本単価)を見直し。

(対前年度比 96.1%)
  (3
)ライフライン機能強化等事業費  6,574百万円→ 6,315百万円
(1)  地震の被害が予想される地域において、配水管等管路を利用した貯留施設及び緊急遮断弁の整備推進を図る。
(2)  配水池容量の増大及び連絡管整備を引き続き促進する。
 なお、配水池整備事業について、補助対象要件を見直し。
(3)  水道管路からの漏水や折損事故等に対処するため老朽管等の更新を促進する。


(対前年度比 95.5%)
○ 水道施設整備事業調査費  67百万円 → 64百万円

 効率的かつ効果的な水道施設整備を推進するため、

(1)  地震やテロ、水道施設事故、水質事故など想定される危機毎に水道事業者が講ずるべき方策の調査検討

(2)  既に人口減少に直面している水道事業体の実態把握等を行うことにより、将来水道事業体が直面するであろう課題を抽出し、今後の水道事業の在り方についての検討

(3)  水道関係の統計調査結果等の基礎データについて、水道施設の適切な設置に資するための必要な整理、分析及び当該結果の国民への情報提供
 等を行う。


(対前年度比 40.9%)
○ 産炭地域事業補助率差額  66百万円 → 27百万円

○国庫補助制度の見直し
 緊急時給水拠点確保等事業費
緊急時用連絡管整備事業
 緊急時において、水道水を相互融通できる施設の整備事業について、非常時においても広域圏域や都道府県県域を越えた水道水の相互融通を実施する「広域圏域の間」を補助対象に追加。



2.水道水質管理について

(1 )水道水質基準の見直しについて
 重点事項で示したとおり、本年4月1日より新制度が施行されることとなるので、貴部局におかれてもよろしく対応をお願いいたしたい。

(2) 公益法人改革に係る水道法の改正について
(1) 平成14年3月に閣議決定された「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」に基づき、水道水質検査及び簡易専用水道の管理に関する検査を行う機関(いわゆる20条機関及び34条機関)については、「指定制度」から「登録制度」へ移行するための水道法の一部改正を含む「公益法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備に関する法律(平成15年法律第102号)」が7月2日に公布されたところである。
(2) これに伴い、水道法施行規則の一部を改正することとしており、現在、パブリックコメントに付し、意見募集を行っているところであり、平成16年3月末までには施行することとしている。
(2) なお、制度改正後は、これまでにも増して衛生部局の役割が重要になることから、今後適切に情報提供を行っていくこととしているので、貴部局におかれてもよろしく対応をお願いいたしたい。

(3) 飲用井戸の衛生確保のための対策の充実について
(1) 昨年6月に、茨城県神栖町におけるヒ素による飲用井戸の汚染事例を踏まえ、飲用井戸の衛生対策の徹底を図ることにつき特段の配慮をお願いしていたところである。
(2) このような状況を踏まえると共に、水道法改正、水質基準改正を踏まえ、飲用井戸等の衛生対策については更なる向上を図ることが重要であるので、貴部局におかれてもその衛生確保についてよろしく対応をお願いいたしたい。
(3) これに併せて、既にお知らせしているが、昨年12月には、旧軍毒ガス弾等の全国調査のフォローアップ調査の結果が公表されたところである。また、調査結果を踏まえ、国内における毒ガス弾等に関する今後の対応方針について閣議決定され、これを受けて、新たに関係省庁連絡会議が設定されたところである。今後、閣議決定の方針に基づき、井戸水や水道水を介した被害の未然防止を図ってまいりたい。貴部局におかれても、今後の毒ガス弾等による被害の未然防止のための施策の推進のため協力をお願いすると共に、改めて、飲用井戸の衛生対策の徹底に特段の配慮をお願いする。また、貴管下水道事業者等の水道水の水質管理についても同様の配慮をお願いする。

(4 )クリプトスポリジウム対策の強化について
 平成13年11月に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を改正しており、所要の対策が的確に講じられるよう水道事業者等への指導・支援をお願いする。
 なお、昨年4月の水質基準の見直し等についての厚生科学審議会答申ではクリプトスポリジウム対策の更なる強化が提言されているところであり、現在、提言の趣旨を踏まえ、円滑な施行のための制度のあり方等について検討を進めており、今後の動向について留意願いたい。

(5) 鉛に関する改正水質基準について
(1) 鉛の水道水質基準、給水装置に係る鉛の浸出基準等については昨年4月から施行されたところである。
(2) 水質基準については、先に水質基準の施行通知においてお知らせしているとおり、その検査に供する水の採取方法として、いわゆる15分間滞留法を本年4月より採用することとしているところであり、格段の配慮をお願いする。

(6 )その他
貯水槽水道について
 平成13年の水道法改正の趣旨を踏まえ、各水道事業者において貯水槽水道の管理の充実等を目的とする供給規程の改正が、平成14年度中に行われたところである。今後とも、水道事業者とも連携し、貯水槽水道の管理が一層充実するよう対応方よろしくお願いする。
飲料水健康危機管理について
 水道水質の異常時における迅速かつ的確な対応のため、緊急時連絡体制の整備、水質異常時の対応指針の策定等が重要であるが、平成11年3月に「水質汚染事故に係る危機管理実施要領策定マニュアル」を配布しているので参考とされたい。
水道水源の水質保全対策の推進
 水道水の安全性を確保する上で、適切な水質管理と浄水処理を実施することは不可欠であるが、加えて良質な水道原水確保のために水質保全対策の推進を図ることも重要である。
 「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」に基づく都道府県計画の策定を支援するため、計画策定に必要な経費について国庫補助制度を設けているので、積極的な活用を図られたい。



3.水道計画指導について

(1 )水道事業者等への指導監督について
 水道事業者等への指導監督については、平成12年度からは国と都道府県それぞれが、水道事業の規模等に応じてその業務を実施しているところである。
 厚生労働省においては、平成13年度から厚生労働大臣認可に係る水道事業者等を対象に立入検査を実施しており、今年度は496事業(473事業者)の内112事業(108事業者(水道管理業務受託者1者含む))に対して、水道の管理体制の強化をテーマとして立入検査を実施したところである。(平成15年12月末現在)
 水質管理の複雑化・高度化、施設の老朽化やその更新、テロ対策など、水道事業に要求される技術水準、施設水準、安全水準は非常に高くなっていることを踏まえ、より信頼される水道事業が進められるよう水道事業者等に対する指導監督体制の一層の充実を図っていくこととしており、都道府県においても管下事業体の指導監督の充実をお願いする。
 また、平成14年度より、厚生労働大臣認可に係る水道事業等の水道技術管理者を対象として技術的な研修を実施しているが、今後とも引き続き実施することとしているので、各都道府県担当者の研修としても御活用いただきたい。
 さらに、国と都道府県それぞれの所管する事務の遂行のために必要な情報交換等についても重要と考えているので引き続き各都道府県の協力をお願いしたい。

(2 )水資源開発基本計画について
 水資源開発促進法に基づく水資源開発基本計画(フルプラン)については、国土交通省水資源部が中心となり、水利用の安定性の確保、既存施設の有効活用等について十分な検討を行い、水需給上の必要性等を吟味した上で順次改定されることとなっており、吉野川水系について平成14年2月に全部変更されたのに引き続き、現在、利根川・荒川、木曽川、豊川、淀川、筑後川水系について、国土審議会水資源開発分科会に各水系毎の部会が設置され審議されている。
 当面、木曽川、利根川・荒川水系での策定作業が先行して行われることとなる見込みであるので、関係都府県においては、計画策定に必要な水の需給想定調査等についての協力をよろしくお願いする。

(3 )ダム事業からの撤退や事業廃止の手続きについて
(1) 水資源機構ダム
 平成14年12月に成立した独立行政法人水資源機構法において、利水者の事業からの撤退や事業廃止の手続きが新たに規定され、平成15年10月1日の水資源機構設立と同時に施行されている。
事業が縮小される場合や廃止される場合の費用負担のルール(いわゆる「撤退ルール」)は、同法施行令において定められている。この撤退ルールは、事業に参画している事業者が、途中でその事業から撤退する場合、その撤退が原因で他の事業者に必要以上の負担が発生しないよう、撤退する事業者に必要な費用を負担してもらうための基本的なルールとなっている。また、事業を廃止する場合についても、廃止に伴い追加的に必要となる費用を含め、事業の廃止までに要した費用を、その事業に参画している事業者に負担してもらうことをルールとして定めている。

(2) 特定多目的ダム等
 現在、国土交通省においては、特定多目的ダム及び河川法第70条の2の流況調整河川に関する撤退ルールについても、水資源機構法施行令と同様の撤退ルールを制定すべく、特定多目的ダム法施行令等の改正作業が進められている。
 各都道府県におかれては、この撤退ルールの活用も含め、合理的な水道事業の運営を図るため、管下水道事業者において、適宜水需給の見通しについて見直しが図られるようご指導願うとともに、これを機会に、各都道府県における水道整備基本構想、広域的水道整備計画に関しても、状況の変化に応じた適時適切な見直しが図られるよう、よろしくお願いする。

(4 )水資源に関する行政評価・監視結果の勧告について
 平成13年7月、総務省行政評価局より厚生労働省に対し、地域における利水関係者等間の情報の共有化による円滑な水の用途間転用の推進を図るため、補助に係る水資源開発等施設の水源の利用状況も踏まえた水利使用に関する情報交換の推進等、必要な条件整備を図るよう勧告がなされた。 この勧告の趣旨を踏まえ、地域における利水関係者等の情報の共有化による円滑な水の用途間転用の推進を図るために、「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」(厚生労働省ほか関係4省で構成)の場を活用するなどにより、水利使用に関する情報交換を推進している。
 具体的な転用事例としては、平成14年度には霞ヶ浦開発事業に係る茨城県の工業用水から水道用水への転用が実現している。
 関係都道府県においても、用途間転用等水資源の有効活用について検討するとともに、水利使用に関する利水関係者間の情報交換、関係者への情報提供をよろしくお願いする。


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