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結核感染症課

1.感染症対策

(1) 一類感染症対策について
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律が施行されてから約4年が経過しているが、第一種感染症指定医療機関の指定が行われていない道府県が全体の約8割を占めるなど、対応の遅れが目立っている。このため、指定に向けて医師会、医療機関等関係者との間で早急な調整等を図るとともに、指定までの間においては、一類感染症患者等の発生に備え、隣県等との協力体制を取るなど、万全な体制の整備をお願いする。なお、施設整備、維持管理については、国庫補助の対象としているので、活用されたい。
 
(2) 動物由来感染症対策について
 感染症法で規定されている感染症の多くは、動物から人に感染する動物由来感染症であり、動物における感染症の保有状況の実態を把握し、国民へ情報提供する体制整備が重要であることから、動物由来感染症予防体制整備事業を実施している。各地方公共団体におかれては、積極的に本事業を活用していただくようお願いする。
 プレーリードッグについては、厚生科学審議会の意見を踏まえ、今春から輸入規制の導入を予定していることから、関係者への周知方に努められるようお願いする。
 また、平成14年10月「身体障害者補助犬法」の施行に伴い、平成14年10月1日付け結核感染症課長通知「身体障害者補助犬法の施行について」にて「身体障害者補助犬の衛生確保のための健康管理ガイドライン」を配布したが、関係部局と連携し、周知等に努められるようお願いする。なお、平成15年度より「補助犬の衛生管理をモデルにした動物由来感染症対策開発事業」を実施することとしており、補助犬をモデルに、さらなる動物由来感染症対策の環境整備を図る予定であることから、本事業へのご協力をお願いする。
 動物由来感染症に関する情報提供の充実については、平成13年7月に開設した動物由来感染症のホームページに最新情報を提供するとともに、今年度には「動物由来感染症ハンドブック」(平成14年5月24日付け結核感染症課事務連絡)を配布したので、国民への啓発にあたり活用いただくようお願いする。
 
(3) 狂犬病予防法について
 狂犬病は我が国においては、昭和32年以降発生していないが、諸外国においては、アメリカ、ロシア、韓国等なお多くの国で発生しており、いつ我が国に狂犬病が侵入してくるかわからない状況にあることから、今後ともその予防対策を講じていく必要がある。このため、狂犬病予防法に基づき、各市町村が実施主体となり犬の登録(生涯1回)、予防注射(毎年1回)を実施しているところであるが、各都道府県におかれては平成14年6月11日付け結核感染症課長通知「狂犬病予防法に基づく犬の登録等の徹底について」を参考に、狂犬病予防対策事業に支障のないよう登録等の状況把握、各市町村間の連絡調整をお願いしたい。また、平成15年の狂犬病予防注射においても、注射頭数が減少することのないよう、獣医師会等との連絡を十分図り、犬の所有者等に対し周知するよう各市町村に対する指導方お願いする。
 なお、農林水産省と連携し、平成14年9月27日付け結核感染症課長通知「我が国に不法に持ち込まれる犬の対策等の徹底について」をとりまとめたところであり、昨年度作成の「狂犬病対応ガイドライン2001」(平成13年10月25日付け結核感染症課事務連絡)及び本年度作成のCD-ROM「タイで麻痺型狂犬病と診断された犬の臨床経過(1例)」(平成14年11月8日付け結核感染症課事務連絡)も参考に対策をすすめられるようお願いする。
 
(4) 肝炎対策について
 我が国における肝炎ウイルスに感染しながら、明らかに症状がない潜在的な持続感染者は340万人以上といわれており、これらの者に対する対応が重要な課題となっている。また、ウイルス肝炎に対する誤った知識や肝炎感染者に対する無理解や差別が生じることがないよう配慮することが重要である。そこで、肝炎の正しい知識の普及啓発を徹底するようお願いする。
 
(5) 性感染症対策について
 性感染症に関する特定感染症予防指針において、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖形コンジローム、梅毒及び淋菌感染症(以下「性感染症」という。)は、性的接触を介して感染するとの特質を共通に有し性的接触により誰もが感染する可能性がある感染症である。特に、性感染症を取り巻く近年の状況としては、十代の半ばごろから二十代前半にかけての年齢層における発生の増加が報告されていること、等が挙げられており、これらを踏まえた上で、性感染症対策を進めていくことが重要である。
 なお、特定感染症検査等事業において、保健所等が実施した性感染症検査については、国庫補助の対象としているので活用されたい。
 
(6) ウエストナイル熱について
 ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)については、昨年11月に「感染症の患者に対する医療に関する法律」上の全数届出の四類感染症とし、国内における発生動向を把握できるようにするとともに、検疫法上の検疫感染症に準ずる感染症として水際対策を強化することとしたところである。
 また、ウエストナイル熱の侵入の早期発見を目的として、死亡カラス情報の収集をお願いしたところであるが(平成14年12月13付健感第1213001号課長通知)、今後、カラスの生息の多い公園等における死亡カラスのスポット的なサーベイランス事業についても、各都道府県等において実施されるよう依頼通知の発出を近々に予定しているので、併せてご協力をお願いする。
 
(7) 予防接種対策について
 予防接種の適切な実施を図るとともに、ワクチンが原因と疑われた健康障害の発生等の対応については、「ポリオワクチン接種後の健康障害報告への対応マニュアル」(平成12年8月31日 公衆衛生審議会感染症部会ポリオ予防接種検討小委員会)などを参考に、適切な対応が行われるよう配慮願いたい。
 特に、近年の麻しんの罹患数の状況に鑑み、麻しんの予防接種については、管内市町村において、予防接種実施要領における標準的接種期間(生後12月から24月)におけるなるべく早期の実施につき配慮願いたい。
 また、風しん予防接種の対象年齢を変更したその経過措置として「昭和54年4月2日〜昭和62年10月1日までの間に生まれた者」について、予防接種法に基づく予防接種を行ってきたところであるが、本規定は本年9月30日までの間に限り適用されるものであり、該当者への周知等に努められるようお願いする。なお、女性が妊娠中に風しんの予防接種を受けると障害をもった子供が生まれる可能性があるので、接種をしないことや、接種後2ヶ月は妊娠を避けるように、特に注意するようお願いする。


2.結核対策

(1) 結核の最近の状況について
 平成13年結核発生動向調査年報集計結果によると、結核の最近の状況は、次のとおりである。
 結核の年間新登録患者数は35,489人(前年比3,895人減)であり、全国罹患率は人口10万対27.9(前年比3.1減)となっており、2年続けて状況の改善がみられたが、依然として油断できない状況にある。
 平成13年末現在の結核登録者数は91,395人(前年比8,086人減)である。(資料1参照)
 平成13年中の結核による死亡者数は2,488人(前年比162人減)であり、死亡順位は全疾病中25位(前年24位)、死亡率は2.0(前年2.1)となり、死亡順位、死亡率は下降した。
 地域間格差を見ると、罹患率の最高は大阪府の51.9、ついで兵庫県、東京都の順であり、最低は長野県の13.6、次いで山形県、山梨県の順である。長野県と大阪府との罹患率の格差は約3.8倍となっており、国内地域間格差がなお大きい。(資料2参照)
(2) 今後の結核対策について
 平成13年3月に公表された結核緊急実態調査報告を踏まえて、中長期的な視野から結核対策の見直しのための検討を厚生科学審議会感染症分科会で行い、集団的・一律的対応から個別的・リスク別対応への方向転換等の意見を頂いたところである。
 これらを踏まえ、(1)小学一年及び中学一年のツベルクリン反応検査及びBCG再接種について、来年度から中止する政令改正を行ったところであり、(2)その他についても、結核予防法の改正を視野に入れた制度改正に向けて必要な技術的指針等の検討を行っているところである。
 
(3) 結核患者収容モデル事業について
 平成4年12月10日健医発第1415号保健医療局長通知により結核患者の高齢化等に伴って複雑化する、高度な合併症を有する結核患者に対して、一般病床において収容治療するモデル事業を実施し、さらに平成11年度より精神病床において精神疾患(入院を要するもの)と結核の合併症患者を収容治療する事業を加えた。
 平成14年度モデル事業については、一般病床において6医療機関(13床)、精神病床において4医療機関(8床)を整備したが、平成15年度においても引き続き実施することとしているので、各都道府県等におかれては、合併症患者の収容確保を図るため、事業の積極的な実施をお願いする。
 
(4) 結核病棟改修等整備事業(医療施設近代化施設整備事業)について
 結核病棟改修等整備事業は、老朽化した結核病棟又は結核病室の改修等を行うことにより病院における結核患者の療養環境、衛生環境等の改善を図るため、「医療施設近代化施設整備事業」の一事業(メニュー化)として平成11年度より実施しているところであり、全国で14医療機関を整備したところである。このため、各都道府県等におかれては、結核患者の収容確保及び療養環境の改善を図るために、事業の積極的な実施をお願いする。
 
(5) 結核対策特別促進事業について
 結核対策特別促進事業のうち、特に特別対策事業について、研修等の事業については定着してきたものと考えられることから平成15年度予算案において減額となっており、対象事業をかなり絞って大都市における結核の治療率向上(DOTS)事業等を中心に推進していきたいと考えているので、事業内容を十分に検討し、補助申請を行われたい。
 また、DOTS事業については、モデル例を示す予定にしており、各都道府県等におかれては、それを参考として本事業に積極的に取り組まれることをお願いする。
 なお、DOTS事業の実施の際には、入院時からの院内DOTSの推進にも配慮されたい。
 
(6) 定期外健康診断(接触者検診)の積極的な実施について
 厚生科学審議会結核部会報告「結核対策の包括的な見直しについて」において、接触者検診の励行等が提言されたところである。各都道府県等におかれては、「結核定期外健康診断ガイドライン」及び「保健所における結核対策強化の手引き」を参考として、複数保健所間にまたがる場合には保健所間の連携を図り、定期外健康診断(接触者検診)の積極的な実施をお願いする。
 
(7) 結核の集団感染の防止について
 平成9年以降、結核の集団感染が著しく増加してきており、その傾向として、特に医療機関及び学校における結核の集団感染が続発している。各都道府県等におかれては、「結核院内(施設内)感染予防の手引き」及び「保健所における結核対策強化の手引き」を参考とし、今後とも、病院、高齢者入所施設及び学校等の集団感染の予防及び結核患者の早期発見、感染拡大防止について万全を期すよう、管内関係機関等に対する指導の徹底をお願いする。
 なお、集団感染事例等の発生があった場合には、積極的結核疫学調査を実施するとともに、その状況等を速やかに結核感染症課に報告されるようお願いする。


3.インフルエンザ対策

(1) 今冬のインフルエンザ対策について
 インフルエンザは、毎年冬季に流行を繰り返し、国民の健康に対して大きな影響を与えている。また、インフルエンザウイルスは、感染力が非常に強いことから集団生活の場に侵入することにより、大規模な集団感染を起こすことがある。このため、平成14年11月5日付けで「今冬のインフルエンザ総合対策の推進について」の課長通知(健感発第1105001号)を発出し、貴管内市町村等関係機関に対して普及啓発、施設内感染防止対策等の周知徹底をお願いしているところである。
 
(2) インフルエンザに係る発生動向調査の強化について
 インフルエンザの発生動向については、感染症法に基づく発生動向調査事業の中で把握されているが、平成11年度からインフルエンザ対策の緊急性にかんがみ、インフルエンザの流行期における死亡者数及び患者数の迅速把握事業を実施しているところである。今年度においても、同事業を開始しており、協力方よろしくお願いする。



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