臓器移植対策について
臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号。以下「臓器移植法」という。)が平成9年10月に施行されたことに伴い、社団法人日本臓器移植ネットワークを中心として、公平かつ適正な臓器あっせん体制を整備し、臓器移植の円滑な推進を図ってきたところである。
また、臓器移植法に基づく脳死下での臓器提供については平成15年1月9日現在全国で23例行われたところであるが、心停止下での腎臓及び眼球(角膜)の提供による腎臓移植及び角膜移植の件数は、近年、減少傾向にあるといわれている。今後とも更なる臓器移植の推進を図るために関係機関の御協力を賜りながら取り組む所存である。
臓器移植法については、法施行後5年が経過したところであるが、これまでの法の施行状況を踏まえ、臓器提供者(ドナー)適応基準等の制度の運用に関する事項について、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において議論いただきながら、改善を行っているところである。審議会の議事録等の詳細については厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp)を参照されたい。
また、15歳未満の子供からの臓器提供の可否など制度の根幹に関わる問題については、賛否両論いろいろあり、実情を踏まえた国民的な議論が行われるべきものと考えており、今後、国会をはじめ各界での議論の動向を見ながら対応して参りたい。
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臓器移植の普及啓発について
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臓器移植法においては、臓器提供の要件として、心停止下での腎臓及び眼球の提供を除き、本人が生前に臓器提供の意思を書面により表示していることを定めており(臓器移植法第6条第1項)、「臓器提供意思表示カード」や医療保険の被保険者証又は運転免許証に貼付することのできる「臓器提供意思表示シール」の普及を図ることが重要な課題となっている。
しかしながら、昨年7月に行われた世論調査においては、臓器提供意思表示カードの認識度が前回調査に比べ低下してきている状況であり、国民への認識度を高める観点からも、引き続きこれらのカード及びシールの普及について御努力をお願いしたい。
なお、カードの配布状況や移植の件数等については、社団法人日本臓器移植ネットワークホームページ(http://www.jotnw.or.jp)又は、日本眼球銀行協会ホームページ(http://www.j-eyebank.or.jp)を参照されたい。 |
(イ) |
臓器移植に関する広報については、各地方公共団体においても各種の活動に御尽力いただいているところであるが、国民への移植医療の理解を深めていくことが国及び地方公共団体の責務であることが法律上も明文化されている(臓器移植法第3条)ところである。
また、毎年10月を「臓器移植普及推進月間」として普及啓発を行っており、平成14年度においては10月19日に長崎県長崎市で全国大会が開催されたところであり、来年度においては10月頃に三重県で開催される予定である。 | |
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関係医療機関の臓器提供に対する理解及び協力の確保について
脳死下での臓器提供については「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」において提供可能な施設を限定しており、平成14年9月30日現在、提供可能な施設は431施設であり、そのうち、厚生労働省の照会に対して臓器提供施設としての必要な体制を整えていると回答した施設は287施設(公表について同意した施設282施設)である。
今後とも都道府県臓器移植連絡調整者(都道府県臓器移植コーディネーター)については、都道府県内の関係医療機関の医療従事者等に対し臓器移植に関する普及啓発活動を行い臓器提供のための体制を整えていただくなど、各都道府県内の臓器提供体制の拡充に努めるとともに、心停止下での腎臓提供も含めて臓器提供に協力いただいている施設等を定期的に巡回し、臓器提供に対する一層の理解及び協力が得られるようよろしくお願いしたい。
平成15年度予算においては、「平成15年度予算編成の基本方針(平成14年11月29日閣議決定)」の主旨を踏まえ、本事業に係る経費を一般財源により措置することとしたところであるが、事業の必要性はより強くなってきており、引き続き事業の推進をお願いしたい。
また、都道府県臓器移植コーディネーターが、社団法人日本臓器移植ネットワークの指示に基づき、あっせん活動を行う際の活動費については、臓器移植ネットワークへの補助対象事業としているので、活用されたい。
なお、腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準については、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会の審議を踏まえ、「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の一部改正について」(平成13年12月25日厚生労働省健康局長通知)により、従来の「HLA型の適合度」に加え「待機日数」「搬送時間(阻血時間=地域要件)」を総合的に加味するよう変更されているところである。それぞれの地域における臓器提供件数等の状況が都道府県内の移植数に影響することとなるので、改正趣旨・内容について十分周知し、理解を深められたい。
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