戻る  前へ  次へ

5.介護サービスの質の向上への取り組みについて

(1)訪問介護員(ホームヘルパー)の養成及び資質の向上について

 在宅サービスの中心となる訪問介護の担い手である訪問介護員については、その質・量両面にわたる人材確保が、在宅での自立支援という制度趣旨に沿ったサービスを提供していくためにも重要な課題である。そのため、平成14年度予算においては、地域の実情に応じた総合的なヘルパー確保、資質向上への取組みを支援できるよう、既存の訪問介護員関連の研修事業(「離島等における訪問介護員養成事業」、「訪問介護員資質向上事業」、「訪問介護員養成研修円滑化事業」、「訪問介護適正実施研修事業」)に新規の研修メニューを追加してメニュー事業として再編成を行い、「訪問介護員資質向上等推進事業」を創設することとしているので、当該事業を活用し、訪問介護サービスの充実にご配意願いたい。
 なお、メニュー事業として、新たに行う事業は次のとおりである。

ア テーマ別技術向上研修事業

 現任の2級ヘルパー等を対象とし、日々の業務において直面する個別の問題に対応したテーマ別の研修

イ 訪問介護計画作成・展開研修事業

 訪問介護事業所のサービス提供責任者としての良質な人材を養成する観点から、現任の2級ヘルパー等を対象とし、多職種合同での事例演習等を通じて、最適な訪問介護計画の作成・展開技術を身につけるための研修

(2)介護支援専門員(ケアマネジャー)に対する支援及び資質の向上について

ア ケアマネジャーに対する支援

 介護サービスの要である介護支援専門員(ケアマネジャー)の地域における支援体制を強化するため、従来からの取組みに加え、「ケアマネジメントリーダー」の養成及び活動支援を行っていくこととする。
 この「ケアマネジメントリーダー」の活動は、ケアマネジャーの業務の支援はもちろん、それを通じて地域における介護保険内・外にわたるケア体制(ケアチーム)の構築支援にも活用できるような事業と位置付けており、地域の実情に応じたケア体制の構築という観点からも、積極的な取組みをお願いする。
 おって、具体的な内容については、2月12日の全国主管課長会議等において別途お示しする予定であるが、その概要は以下のとおりであるので、留意されたい。

(ア)都道府県ケアマネジメントリーダー養成研修

a 研修対象者
 それぞれの地域における高齢者ケア体制の特性に応じつつ、ケアマネジメントリーダーに期待される役割の担い手として、地域において活動することができるような現任のケアマネジャーやそれに準ずる者。

b 研修実施方法
 ケアマネジャーの支援活動を行う上での視点、心得、具体的な活動事例、スーパービジョンに関する演習など、ケアマネジメントリーダーとして必要な知識・技術を修得させることを目的に、18時間の研修を行う。
 なお、国において平成14年度当初に「ケアマネジメントリーダー研修」を行うこととしており、その後、各都道府県においてもその成果を波及させるための伝達研修の実施をお願いすることとなるので、ご留意願いたい。

(イ)市町村ケアマネジメントリーダー活動支援事業

 以下のような取組みを始め、地域の状況に応じた支援活動を弾力的に対象とすることを考えているが、こうした活動を適切に推進するためには、ケアマネジメントリーダーと市町村との連携による体制づくりが不可欠であるのでご留意願いたい。

(1) 個々のケアマネジャーへのサポート
  • ケアマネジャーへの個別指導・相談・活動支援・同行訪問
  • 地域ケア会議を活用した個別のケース対応
  • サービス担当者会議の開催支援 など

(2) 地域のケアマネジャー同士の連携体制の形成

  • 地域での意見交換会・研修会・勉強会の開催支援 など

(3) 地域のケア体制(ケアチーム)の構築支援

  • 市町村、保健所、福祉事務所等関係機関との調整に係る体制づくり
  • 地域の保健、医療、福祉サービス等に関する情報収集・提供、関係施策との連携などの地域の支援体制づくり など

イ ケアマネジャーの資質の向上等

(ア)介護支援専門員(ケアマネジャー)に対する現任研修等の充実

 要介護者等が良質なサービスを安心し利用し続けることができるよう、ケアマネジメントの質の向上を図っていくことが極めて重要であるが、そのためにはケアマネジャーの更なる資質の向上が必要である。こうした観点から、平成14年度においては、「介護支援専門員現任研修」等について次のような充実、強化を図ることとしているので、研修への積極的な取組みについてご配意をお願いする。

a 「介護支援専門員現任研修」事業
 現任研修のカリキュラムについては、平成13年度の老人保健健康増進等事業において「介護支援専門員現任研修カリキュラム等に関する研究委員会」を設置し、そのあり方を検討しているところであるが、援助困難事例等を中心としたテーマ別の事例演習等を通じて、より高度なケアマネジメント技術の習得を目指す「専門研修課程」の新設を行うこととしている。
 また、平成15年度からの第2期介護保険事業計画期間に向けて、要介護認定の仕組みや介護報酬見直しの動向など、制度の円滑な運用に資するための新たな知識等の習得を含めた「基礎研修課程」の充実を図ることとしている。

b 「介護支援専門員実務研修」事業
 国の示す基準(32時間)に加えて、「相談面接技法」、「福祉用具・住宅改修の活用、福祉用具の安全な使用法」など、必要に応じて時間枠の拡大や新規のカリキュラムの導入等を行い、養成段階から資質向上を目的とした研修を実施する場合についても弾力的に支援することとしている。

(イ)第5回実務研修受講試験の実施

 第5回実務研修受講試験については、本年10月27日(日)を予定しているが、各都道府県においては、会場確保等の所要の準備を適切に進められたい。
 なお、本試験の実施にあたっては、都道府県等介護支援専門員実務研修受講試験実施要領に基づき、くれぐれも遺漏なきを期されたい。

(3)福祉用具・住宅改修の普及及び活用の促進について

ア 支援体制の整備

 要介護者が住み慣れた自宅で生活していくためには、福祉用具及び住宅改修の活用によって、日常生活の自立や介護負担の軽減等を図ることが重要であるが、一方では、

などの問題点が指摘されることがある。
 このため、利用者への相談対応・情報提供、身体状況への適合など福祉用具・住宅改修の効果的な活用のための支援体制を整備・強化するため、介護実習・普及センター、在宅介護支援センター等を拠点として、以下の2事業を平成14年度から実施することとしているので、各都道府県、市町村の積極的な取組みをお願いする。

(ア)福祉用具・住宅改修活用広域支援事業(都道府県事業)

 介護実習・普及センター等を活用し、福祉用具や住宅改修に係る広域的な事業者協議会の開催、高度で複雑な福祉用具の活用や住宅改修に関する相談援助体制の整備・強化を図る。(各都道府県1カ所、計47カ所)

(イ)福祉用具・住宅改修地域利用促進事業(市町村事業)

 在宅介護支援センター等を活用し、福祉用具や住宅改修に係る地域の事業者協議会の開催、相談等に応じる専門家の登録・活動等、市町村レベルでの身近な相談援助体制の整備・強化を図る。(各都道府県3カ所、計141カ所)

イ 相談援助体制の強化

 また、福祉用具・住宅改修に関する知識の普及を図るため、介護実習・普及センター等において、福祉用具貸与・販売、住宅改修事業者やケアマネジャー等に対する研修(福祉用具・住宅改修研修事業)を実施しているが、一層の相談援助体制の強化を図るため、平成14年度から、これらの事業に加え、新たに在宅介護支援センター等の職員、作業療法士、理学療法士に対する適合技術に関する実習等、福祉用具・住宅改修に関する最新の動向をふまえた、より専門的な研修を実施することとしているので、併せて積極的な活用をお願いする。

(4)身体拘束廃止に向けての取り組みについて

ア 平成13年12月17日に「第3回身体拘束ゼロ作戦推進会議」が開催され、今後の同会議の取り組みとして、身体拘束をせずにケアを行う場合の法的責任やリスクマネージメントの在り方についてより詳細に検討した資料を作成するとともに、利用者の家族等に対する普及啓発の在り方等について検討し、各都道府県における普及啓発活動に使用できるようなパンフレットの内容をとりまとめることとされたところである。
 また、平成14年度予算(案)においては、利用者の家族等に対する講習会等の事業への補助を新規に計上するなど、国としても支援策の拡充を図っているところである。

イ 各都道府県の身体拘束廃止への取り組み状況を見ると、平成13年12月現在、推進会議を設置しているのは41都道府県、相談窓口を設置しているのは27都道府県である。推進会議等を未設置の都道府県におかれては早急に設置されるようご配慮いただきたい。
 また、全ての都道府県において、当省の推進会議の動向等も踏まえつつ、利用者の家族等に対する普及啓発を積極的に推進していただく等、同作戦の一層の推進を図っていただくようお願いする。

(5)痴呆介護研修事業について

ア 痴呆介護実務者研修

 本研修は、痴呆介護の現場における介護実務者に対し痴呆介護に関する知識及び技術を修得させるという極めて重要なものである。
 本研修の受講対象者は、介護保険施設又は居宅サービス事業等に従事する職員としているが、中には居宅サービス事業等を研修対象としていない都道府県・指定都市が見受けられることから、受講対象者の範囲の拡大並びにこれに伴う研修回数の増加に積極的な対応をお願いする。
 また、近日中に本研修事業の平成13年度における実施状況を調査する予定であるので、ご協力をお願いする。

イ 痴呆介護指導者養成研修

 全国3か所(東京都杉並区、愛知県大府市、宮城県仙台市)の高齢者痴呆介護 研究センターにおいては、来年度も3回ずつの研修の実施を予定しているが、本研修の修了者は、都道府県・指定都市が実施する痴呆介護実務者研修の効果的なカリキュラムを編成する等の企画立案に携わる外、当該研修の講師としてその一部を担当する等、都道府県・指定都市における痴呆介護に関する中核的な役割を担う重要な人材である。
 ついては、痴呆介護実務者研修の実施体制をできるだけ早期に充実させるためにも、各高齢者痴呆介護研究センターにおいて実施される年間3回の本研修に、毎回1名ずつ受講者を派遣するよう配慮願いたい。
 なお、高齢者痴呆介護研究センターにおいては、痴呆介護に関する研究及び指導者の養成研修等に取り組んできているところであるが、このほか来年度より新たに痴呆介護に関する国内外の情報の収集・提供等を行う「痴呆介護情報ネットワーク(仮称)」の運用を開始する予定であるので、痴呆介護に関する情報の収集、実務者研修の内容充実等に積極的に活用されたい。

(6)痴呆性高齢者グループホームのサービス評価について

 痴呆性高齢者グループホームについては、今年度より自己評価を義務づけ、来年度からは第三者評価の義務づけを予定しているところである。
 第三者評価の仕組みについては、評価機関及び評価調査員の要件、評価調査員の養成に関する事項など全般的な検討を進めているところである。このうち評価機関については、痴呆性高齢者グループホームの評価について公正中立な立場で第三者評価を行うことができる機関として都道府県が認めた機関とすることを予定しているが、都道府県において速やかに評価機関を確保することは困難であることが予想されることから、都道府県における実施体制が整うまでの間は、高齢者痴呆介護研究センターがその機能を果たすことができるよう検討を進めているところである。また、第三者評価項目の参考例については、自己評価項目の参考例の中から一部再構成したうえで策定する予定である。
 なお、これまで検討を重ねてきた自己評価項目の参考例については、近日中にお示しすることとしているので、都道府県において未だ自己評価項目を策定していない場合は、この内容も参考とされたい。


トップへ
戻る  前へ  次へ