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4.介護保険制度の運営について

(1)保険料の単独減免について

 低所得者である第1号被保険者の保険料を単独で減免する市町村が一部にみられる(平成13年10月1日現在で単独減免を実施している市町村数は310。このうち、下記の3原則を遵守しているものが6割に相当する188)が、これまでも申し上げてきたとおり、介護保険制度は、介護を国民皆で支え合おうとするものであり、保険料を支払った者に対して必要な給付を行うものであることから、

(1)保険料の全額免除
(2)収入のみに着目した一律の減免
(3)保険料減免分に対する一般財源の繰入

については、適当ではないと考えており、引き続き市町村に対する御指導について御配慮いただきたい。

(2)利用者負担の単独減免について

 一部の自治体において、国の「社会福祉法人の利用者負担軽減」と同様の仕組みを民間企業や医療法人等にも拡げるとともに、対象サービスの範囲を拡大する例がみられる。
 しかしながら、介護保険は、現にかかった費用の9割が保険給付される仕組みであり、サービスに要する費用が介護報酬額より安く済んだ場合は、その安く済んだ額の9割が給付されることとなる。運営基準においても、これに対応し、事業者が1割の負担を受領すべきことが規定されている。
 したがって、こうした措置は、介護保険の仕組みそのものや運営基準に反するおそれがあるものであり、適当ではないと考えている。

(参考)
介護保険制度の考え方

説明図

(1) 事業者は、法定代理受領サービスに該当する介護を提供した際には、その利用者から利用料の一部として、当該介護にかかるサービス費用基準額から当該事業者に支払われる介護サービス費の額を控除して得た額の支払を受けるものとする。(運営基準)

(2) 保険者が支給する介護サービス費の額は、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額(介護サービス費用基準額=介護報酬)の90%とする。ただし、厚生労働大臣の定める基準により算定した額が現にサービスに要した費用の額を超えるとき(すなわち、実際には介護報酬より安く済んだとき)は、当該現にサービスに要した費用の額とする。(介護保険法第41条第4項第1号)

※ にもかかわらず、保険者が定められたとおりの額の90%を支払うと、保険者にとっては結果的に4.5%(90−85.5)の過剰支払となる。

説明図

(3)介護保険広域化支援事業の適正化について

 広域化を検討している地域に対する支援策の一環として、平成14年度予算(案)に、広域化支援のための予算を計上したところであるので、管内市町村等に対し周知願いたい。
 また、昨年実施された会計検査院の実地検査の結果、平成11年度実施の当該事業について、一部の地域において、補助の対象とならない職員に係る給料を事業実績に含んでいたため、国庫補助金が過大に交付されていたとの指摘を受けたところである。
 今後は、このような事態が生じないよう、平成14年度当該事業の実施を検討している市町村等に対し併せて周知願いたい。

(4)要介護認定のあり方の検討について

ア 要介護認定調査検討会について

 要介護認定における一次判定については、(1)痴呆性高齢者が低く評価されているのではないか、(2)在宅における介護の状況を十分に反映していないのではないか、などの指摘があることから、平成12年8月に「要介護認定調査検討会」を設置し、一次判定の仕組みについて専門的・技術的な検討を行っている。
 本検討会での議論を踏まえ、平成13年2月〜6月に全国で「高齢者介護実態調査」を行ったところである。
 また、平成13年11月〜14年1月に全自治体において「要介護認定に関する調査」に御協力をいただいているところであり、今後は、当該各種調査結果を踏まえながら、要介護認定ソフト(改訂版)についての具体的な検討を行っていく予定である。
 なお、平成14年度については、要介護認定モデル事業の実施及び15年度からの全国市町村における要介護認定ソフト(改訂版)の円滑導入の準備について協力願いたい。

イ 要介護認定二次判定変更事例集Vol.2について

 要介護認定における最終判定は二次判定であることから、その重要性に鑑み、全国の有識者を中心に御検討いただいたうえで、二次判定において一次判定の結果を変更した事例をとりまとめ、要介護認定二次判定変更事例集Vol.2を作成した。
 これは、要介護度の変更にいたる検討過程や変更理由を可能な限り明らかにして全国の関係者間で共有することにより、今後の審査判定の運用の一層の明確化をはかるための参考資料を提供しようとするものである。
 さらに、事例の取りまとめに際し、「要介護認定における留意点について」をまとめたので、今後ともより適正な要介護認定業務を実施されたい。

ウ 更新認定における有効期間について

 更新認定における有効期間については、原則6月間としながらも、市町村が認定審査会の意見に基づき特に必要と認める場合には、3月間〜12月間の範囲内で有効期間の延長又は短縮を可能としている旨、全国介護保険担当課長会議において周知してきたところである。
 平成13年9月申請分について認定支援センターへ送信いただいた要介護認定等の結果の集計では、約6割の事例で12ヵ月間に延長されているところであるが、引き続き、申請者の状態が安定して継続すると判断できる場合には、有効期間の延長について事務局から認定審査会に対して意見を求めるなど、延長の是非について検討されたい。

エ 認定調査員等研修事業について

 認定調査員等研修事業については、都道府県において実施しているところであるが、今年度は、「介護認定審査会運営研修」を新たに設け、審査判定の一層の適正化を図られるようお願いしているところである。
 本研修を始め、種々の研修事業を活用し、要介護認定等がより円滑かつ適切に実施されるよう、御配慮いただきたい。

(5)介護報酬の見直しについて

 平成15年4月からの第2期事業計画期間に向けた介護報酬の見直しについては、昨年10月に「社会保障審議会・介護給付費分科会」を立ち上げ、介護報酬の個々の論点について審議を行っているところである。今後の具体的な審議スケジュールについては、本年7月を目途に報酬骨格を設定し、平成15年1月に新単価の諮問・答申、同年4月に改定を行う予定を考えている。また、報酬骨格の設定後、平成14年度中に審査支払システムの設計変更を準備する予定である。


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