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結核感染症課

1 感染症対策

(1)一類感染症対策について

ア 第一種感染症指定医療機関の指定について

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律が施行されてから約3年が経過しているが、第一種感染症指定医療機関の指定が行われていない道府県が全体の約8割を占めるなど、対応の遅れが目立っている。このため、指定に向けて医師会、医療機関等関係者との間で早急な調整等を図るとともに、指定までの間においては、一類感染症患者等の発生に備え、隣県等との協力体制を取るなど、万全な体制の整備をお願いする。なお、施設整備、維持管理については、国庫補助の対象としているので、活用されたい。

イ 大規模感染症発生時非常対応事業について

 国際化の進展により海外との交流機会が拡大しており、これに伴い、国内に常在しない感染症が我が国に流入する危険性も増大している。特に本年はサッカーの2002年ワールドカップが開催される予定であり、これ(平成14年5月31日〜6月30日、韓国との共催)に対応した感染症危機管理対策として迅速に感染症発生を把握することが必要となっている。このため、開催府県における症候群別サーベイランスの実施、検疫所を中核としたブロックごとの検疫所、地方厚生局、都道府県等の広域連携を図ることを目的として連絡協議会の設置等を行うこととしているので、各都道府県等の御協力をお願いする。なお、詳細については改めてご連絡することとしている。

ウ 一類感染症等予防・診断・治療研修事業について

 感染症指定医療機関等の医師に対して、西アフリカなどの海外の流行地域において実際の症例の診断・治療を研修させることにより、一類感染症等に関する専門家を養成することを目的として平成13年度に開始した本事業は、平成14年度においても、引き続き実施することとしているので研修医の推薦等御協力お願いする。またこれらの者が帰国後、その知見を感染症指定医療機関の医師等に対して伝達する研修を実施することとしているので、各都道府県におかれては、実地研修への派遣及び帰国後の本研修の活用等を図り人材養成に努めていただきたい。

(2)動物由来感染症対策について

 感染症法で規定されている感染症の多くは、動物から人に感染する動物由来感染症であり、動物における感染症の保有状況の実態を把握するとともに国民への情報提供のための体制整備が重要であることから、動物由来感染症情報収集分析体制整備事業を実施してきたところである。平成14年度予算(案)においては、講習会開催等のための普及啓発費、動物に加え人における動物由来感染症の保有状況調査費等についても事業の対象とする予定である。各地方公共団体におかれては、積極的に本事業を利用していただくようお願いする。
 また、平成13年7月、動物由来感染症に関する情報提供のためのホームページ「動物由来感染症を知っていますか?」(URL:https://www.forth.go.jp/mhlw/animal/)を作成したので、国民への啓発にあたり活用いただくようお願いする。

(3)狂犬病予防法について

 狂犬病は我が国においては、昭和32年以降発生していないが、諸外国においては、アメリカ、韓国等なお多くの国で発生しており、いつ我が国に狂犬病が侵入してくるかわからない状況にあることから、今後ともその予防対策を講じていく必要がある。このため、狂犬病予防法に基づき、各市町村が実施主体となり犬の登録(生涯1回)、予防注射(毎年1回)を実施しているところであるが、各都道府県におかれては狂犬病予防対策事業に支障のないよう登録等の状況把握、各市町村間の連絡調整をお願いしたい。また、平成14年の狂犬病予防注射においても、注射頭数が減少することのないよう、獣医師会等との連絡を十分図り、犬の所有者等に対し周知するよう各市町村に対する指導方お願いする。
 なお、平成13年10月、狂犬病発生の疑いがある場合の対応手引書として、「狂犬病対応ガイドライン2001」をとりまとめ、各地方公共団体あて送付したところであり、各地方公共団体におかれては、本ガイドラインを活用いただくようお願いする。

(4)肝炎対策について

 我が国における肝炎ウイルスに感染しながら、明らかに症状がない潜在的な持続感染者は200万人以上といわれており、これらの者に対する対応が重要な課題となっている。また、ウイルス肝炎に対する誤った知識や肝炎感染者に対する無理解や差別が生じることがないよう配慮することが重要である。そこで、肝炎の正しい知識の普及啓発を徹底するようお願いする。
 また、平成14年度から保健所等で行う性感染症又はHIV抗体の検査をする40歳以上の希望者に対して、HBs抗原検査、更にはHCV抗体検査までの事業を行い、それに対して国庫補助することを予定してるので、各都道府県等におかれては、今後の肝炎対策について御協力をお願いする。

(5)性感染症対策について

 性感染症に関する特定感染症予防指針において、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖形コンジローム、梅毒及び淋菌感染症(以下「性感染症」という。)は、性的接触を介して感染するとの特質を共通に有し性的接触により誰もが感染する可能性がある感染症である。特に、性感染症を取り巻く近年の状況としては、十代の半ばごろから二十代前半にかけての年齢層における発生の増加が報告されていること、等が挙げられており、これらを踏まえた上で、性感染症対策を進めていくことが重要である。
 また、従来、保健所が実施した健康診断費については、国庫補助の対象としていたが、平成14年度からHIV検査、ウイルス肝炎検査を合わせ総合的に検査をする予定としているので、関係機関等への周知方よろしくお願いする。

(6)感染症発生動向調査の報告実施の徹底について

 感染症法に基づく一類感染症、二類感染症及び三類感染症については、「感染症発生動向調査事業実施要綱」において直ちに報告を行うことが定められているところであるが、先般、二類感染症である細菌性赤痢の患者が発生した際、一部都道府県等においてその徹底が図られていないことが判明した。
 感染症の発生情報の的確な把握は、感染症対策の基本であって、全ての対策の前提となる重要なものである。このため、昨年12月25日付けで「感染症発生動向調査の報告実施の徹底について」の課長通知(健感発91号)を発出したところであり、周知徹底について改めてお願いする。

(7)予防接種対策について

 昨年11月に予防接種法を改正を行ったところであり、改正の趣旨等を踏まえ、管内市町村等における適切な実施について指導されたい(後述「3.インフルエンザ対策」)。また、これまでの対象疾病についても適切な実施を図るとともに、ワクチンが原因と疑われた健康障害の発生等の対応については、「ポリオワクチン接種後の健康障害報告への対応マニュアル(平成12年8月31日 公衆衛生審議会感染症部会ポリオ予防接種検討小委員会)などを参考に、適切な対応が行われるよう配慮願いたい。
 また、特に、近年の麻しんの罹患数の状況に鑑み、麻しんの予防接種については、管内市町村において、予防接種実施要領における標準的接種期間(生後12月から24月)におけるなるべく早期の実施につき配慮願いたい。

2 結核対策

(1)結核の最近の状況について

 平成12年結核発生動向調査年報集計結果によると、結核の最近の状況は、次のとおりである。

(2)結核対策の見直し検討について

 昨年度3月に公表された結核緊急実態調査報告を踏まえて、中長期的な視野から、結核対策の見直しのための検討を、現在、厚生科学審議会感染症分科会結核部会で行っているところである。結核部会では、(1)社会的な背景を踏まえた結核の疫学像の変化と対策の基本的考え方、(2)結核発病の予防・早期発見、(3)結核患者に対する医療の提供、(4)行政機関、医療機関等の役割の4つの重点課題について、検討が進められているところである。
 今後は、関係機関への意見照会(ヒアリング)等を行い、年度内には、報告がとりまとめられる予定である。

(3)結核患者収容モデル事業について

 平成4年12月10日健医発第1415号保健医療局長通知により結核患者の高齢化等に伴って複雑化する、高度な合併症を有する結核患者に対して、一般病床において収容治療するモデル事業を実施し、さらに平成11年度より精神病床において精神疾患(入院を要するもの)と結核の合併症患者を収容治療する事業を加えた。
 平成13年度モデル事業については、一般病床において9医療機関(19床)、精神病床において4医療機関(42床)を整備したが、平成14年度においても引き続き実施することとしているので、各都道府県等におかれては、合併症患者の収容確保を図るため、事業の積極的な実施をお願いする。

(4)結核病棟改修等整備事業(医療施設近代化施設整備事業)について

 結核病棟改修等整備事業は、老朽化した結核病棟又は結核病室の改修等を行うことにより病院における結核患者の療養環境、衛生環境等の改善を図るため、「医療施設近代化施設整備事業」の一事業(メニュー化)として平成11年度より実施しているところであり、全国で11医療機関を整備したところである。このため、各都道府県等おかれては、結核患者の収容確保及び療養環境の改善を図るために、事業の積極的な実施をお願いする。

(5)結核対策特別促進事業について

 結核対策特別促進事業のうち、特に特別対策事業については、平成14年度予算が大幅に減額となる見込であるので、事業内容を十分に検討し、補助申請を行われたい。また、大都市における結核の治療率向上(DOTS)事業については、入院時からの院内DOTSの推進などに積極的に取り組まれるとともに、本事業以外においてもその推進に配慮されたい。

(6)結核の集団感染の防止について

 平成9年以降、結核の集団感染が著しく増加しており、この状況は平成13年においても同様である。近年の傾向として、特に医療機関及び学校における結核の集団感染が続発している。各都道府県等におかれては、「結核院内(施設内)感染予防の手引き」及び「保健所における結核対策強化の手引き」を参考とし、今後とも、病院、高齢者入所施設及び学校等の集団感染の予防及び結核患者の早期発見、感染拡大防止について万全を期すよう、管内関係機関等に対する指導の徹底をお願いする。
 なお、集団感染事例等の発生があった場合には、積極的結核疫学調査を実施するとともに、その状況等を速やかに結核感染症課に報告されるようお願いする。

3 インフルエンザ対策

(1)今冬のインフルエンザ対策について

 インフルエンザは、毎年冬季に流行を繰り返し、国民の健康に対して大きな影響を与えている我が国最大の感染症である。また、近年、高齢者施設における集団感染や高齢者の死亡の増加等が指摘され、その発生の予防とまん延防止が重要な課題となっている。このため、昨年11月12日付けで「今冬のインフルエンザ総合対策の推進について」の課長通知(健感発第70号)を発出し、貴管内市町村等関係機関に対して周知徹底をお願いしているところである。
 また、高齢者を対象とするインフルエンザに予防接種を実施すること等を内容とする予防接種法の一部を改正する法律及び関係政省令が、昨年11月7日に公布・施行されているので、引き続き、高齢者に対する予防接種の推進に取り組むよう併せてお願いする。

(2)インフルエンザに係る発生動向調査の強化について

 インフルエンザの発生動向については、感染症法に基づく発生動向調査事業の中で把握されているが、平成11年度からインフルエンザ対策の緊急性にかんがみ、インフルエンザの流行期における死亡者数及び患者数の迅速把握事業を実施しているところである。今年度においても、昨年12月から事業を開始しており、協力方よろしくお願いする。

(3)新型インフルエンザ対策について

 新型インフルエンザウイルスは、10年から40年の周期で不連続変異により出現し世界的に大きな被害(インフルエンザパンデミック)をもたらしてきた。そこで、新型ウイルスが地球的規模での流行が発生した場合に、ワクチンを緊急に製造する体制を整備する事業(ウイルス株の選別・保存・診断機材の作成)を実施しており、平成10年度より全国の地方衛生研究所の協力を得て開始しているが、平成14年度においても引続き実施する予定としているので協力方よろしくお願いする。

(4)予防接種法改正等について

ア インフルエンザについて

 昨年11月7日に公布・施行された予防接種法の一部を改正する法律については、同日付け健康局長通知(健発第1058号)「予防接種法の一部を改正する法律等の施行について」、同年12月6日付け結核感染症課長通知(健感発第82号)「予防接種法にもとづくヒト免疫不全ウイルス感染者に対するインフルエンザの予防接種について」、インフルエンザ予防接種ガイドライン及びインフルエンザと予防接種(啓発資料)等により実施しているところであるので、各市町村に対する指導方よろしくお願いする。

イ 風しんの予防接種について

 平成6年改正により風しんの予防接種の対象者を見直し、その経過措置として「昭和54年4月2日〜昭和62年10月1日までの生まれた者」であって、「12歳以上16歳未満の者」も対象者としていたが、これらの者にいまだに未接種者が多く、公衆衛生上の重大な問題であることから、再度接種の機会を与えることとした。今般の政令改正により、経過措置に対象者を、「昭和54年4月2日〜昭和62年10月1日までの生まれた者」であって、「14歳以上の者」と改めたので各市町村に対する指導方お願いする。なお、本規定は、平成15年9月30日までの間に限り、適用されるものである。

資料 1
資料 2


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