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総務課

1.原爆被爆者対策等

 原爆被爆者対策については、被爆者の高齢化に伴う保健、医療、福祉にわたる総合的な施策を引き続き推進することとしている。
 平成14年度においては、特に以下の点に留意し、その円滑な実施に努められたい。

(1)各種手当の支給額について

 平成14年度の健康管理手当等の各種手当の支給額については、平成13年の消費者物価指数の下落が見込まれるところであるが、物価スライドの特例措置として平成13年度の支給額と同額とする法律案を第154回通常国会に提出する予定である。
 なお、平成14年4月以降の葬祭料の額については、179,000円から189,000円に引き上げる予定である。

(2)福祉事業の国庫補助の対象拡大について

 被爆者が、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)等に入所する場合の費用負担分に対する助成事業等については、平成13年度より、費用負担1/2の国庫補助の対象を広島、長崎両県市から事業実施希望都道府県に拡大しているので、御留意願いたい。

 (参考)
○福祉事業の国庫補助の対象拡大
 (広島、長崎両県市 → 事業を実施する都道府県、広島市、長崎市)
 〈平成13年11月末の事業実施自治体 : 26都道府県、広島市、長崎市〉
被爆者が、介護老人福祉施設等に入所した場合の自己負担分に対する助成事業
被爆者が、介護保険のデイ、ショートステイサービスを受給した場合の自己負担分に対する助成事業
低所得者の被爆者が、介護保険のホームヘルプサービスを受給した場合の自己負担分に対する助成事業

(3)介護保険事務処理システムの修正について

 上記の福祉事業の助成制度を利用する被爆者が、自己負担なしで、現物給付による介護サービスの給付を受けられるよう、全額国の負担において、社団法人 国民健康保険中央会の介護保険事務処理システムのプログラムを修正することとしており、プログラム修正に伴う事務処理等については、別途連絡する予定である。

(4)在外被爆者に対する支援について(参考1参照)

 在外被爆者に対する支援に関しては、昨年12月にとりまとめられた「在外被爆者に関する検討会」の報告を踏まえて、平成14年度において、広島、長崎両県市を通じ、在外被爆者が被爆者健康手帳の交付を受けるための渡日の支援等の事業を行うこととしている。
 また、在外被爆者の所在を把握するために、離日時における届出等の法令上の規定を整備することとしており、これにより、今後、被爆者が国外に居住地を変更する場合や在外被爆者が日本国内に居住又は現在することとなった場合等に、都道府県知事、広島市長及び長崎市長に届出を行うこととなる。現在、関係法令等の改正を準備中である。詳細は後日お知らせするので、御留意願いたい。

(5)長崎被爆体験者に対する支援について(参考2参照)

 長崎被爆体験者に対する支援に関しては、昨年8月にとりまとめられた「原子爆弾被爆未指定地域証言調査報告書に関する検討会」の報告を踏まえて、拡大要望地域(爆心地から12kmの区域内であって被爆者援護法の被爆地域及び健康診断特例区域以外の区域)を被爆者援護法の「健康診断特例区域」とし、原爆投下時に当該区域に在った者又はその当時その者の胎児であった者に対して健康診断を実施する。対象者には、都道府県知事、広島市長及び長崎市長が、従来の健康診断受診者証とは別種の受診者証を交付することとしており、その申請、審査手続き等詳細は後日お知らせするので御留意願いたい。
 また、医療費については、拡大要望地域の住民においては、原爆の放射線による健康被害は認められないことから、被爆者援護法に規定する医療等の施策の対象とならないが、「被爆体験」による精神的要因に基づく健康影響が認められることに鑑み、関連する疾病・疾患について医療費の支給を行うこととしている。この場合は、現在も拡大要望地域に居住する者を対象とし、長崎県、市を通じて実施することとしているので御了知願いたい。

(6)原爆被爆者追悼事業等の推進について

 原爆死没者追悼平和祈念館は、国が原爆死没者の尊い犠牲を銘記し、恒久の平和を祈念するため広島及び長崎に設置するものであり、広島の祈念館は平成14年度、長崎の祈念館は平成15年度の開館に向けて、現在、施設整備及び開設準備を進めているところである。
 この広島、長崎両祈念館においては、原爆死没者の氏名及び遺影(写真)をその遺族の申し出に基づき収集・登録し、入館者の閲覧に供することとしている。
 このため、原爆死没者の遺影の収集及びその遺影収集に係る広報を平成13年3月中旬頃から行っている。原爆死没者の遺族等に対する事業の周知について、引き続き、各都道府県の御協力をお願いしたい。
 また、地域及び職域で行われる慰霊式典等に対する助成についても、引き続き行うこととしているので、これについても事業の実施に御協力をお願いする。

(7)被爆二世健康診断の実施について

 被爆二世(以下「二世」という。)に対する健康診断については、平成13年度より、受診者の増及び健診開始時期の早期化に対応するため、各都道府県、広島市及び長崎市への委託事業として実施しており、14年度においても引き続き実施する。委託契約を早期に締結したいと考えているので御了知願いたい。
 なお、被爆二世健康診断は、二世の健康不安解消を目的とするものであるので、各都道府県、広島市及び長崎市におかれては、引き続き当該健診の目的に沿った受診の周知に努めていただくようお願いしたい。

(8)毒ガス障害対策

 第二次大戦中、広島県大久野島にあった旧陸軍造兵廠忠海製造所等、福岡県北九州市にあった同曾根製造所及び神奈川県寒川町にあった旧海軍相模海軍工廠において毒ガス製造に従事していた方の中には、毒ガスによる健康被害が多く見られたことから、国との雇用関係に基づかない動員学徒等の被害者に対して広島県、福岡県及び神奈川県に委託して健康診断、医療費、各種手当の支給等の救済措置を講じているところであり、引き続き事業の実施について御協力をお願いしたい。
 なお、平成14年度の各種手当の支給額については、平成13年の消費者物価指数の下落が見込まれるところであるが、物価スライドの特例措置として平成13年度の支給額と同額とすることとしている。

2.地域保健対策

(1)地域保健の推進

 平成6年に制定された地域保健法は、市町村が身近で頻度の高いサービスを提供し、保健所を地域保健の専門的、技術的、広域的拠点として位置づける新しい地域保健体系を構築した。
 また、同法に基づき、平成6年12月に制定された「地域保健対策の推進に関する基本的な指針(平成6年12月1日:厚生省告示第374号:以下「基本指針」という。)」は、地域保健対策の円滑な実施及び総合的な推進のために、地域保健対策の基本的な方向性、保健所及び保健センターの整備及び運営、人材の確保及び育成、調査研究の充実、社会福祉等の関連施策との連携等に関する基本的な指針を定めている。平成12年3月には「基本指針」の一部改正が行われ、地域における健康危機管理体制の確保、介護保険制度の円滑な運用のための地域保健対策としての取組の強化、ノーマライゼーションの推進、21世紀における国民健康づくり運動の推進等を新たに定めたところである。
 各地方公共団体においては、引き続き、これらに基づき地域保健対策の一層の推進を図られたい。
 なお、平成14年度において、都道府県、政令市、特別区というそれぞれの行政形態ごとに、保健所として最低限確保すべき機能をどの程度有しているか等を評価する事業を予定しており、そのための経費を平成14年度予算案に計上しているので御協力方お願いしたい。

(2)最近の地域保健対策における問題点

 近年、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、腸管出血性大腸菌O-157食中毒事件、和歌山市毒物混入カレー事件、東海村臨界事故等の地域における健康危機事例が頻発しており、地域における健康危機管理の在り方が問われているが、各地方公共団体においては、改正後の「基本指針」(平成12年3月)や「地域における健康危機管理について〜地域健康危機管理ガイドライン〜」(平成13年3月30日健総発第17号:健康局総務課長通知)を踏まえて、健康危機管理における保健衛生部門の役割分担の明確化や健康危機情報の収集・伝達体制の整備に努めるとともに、保健所と本庁、地方衛生研究所等の関係機関、関係団体との連携の強化等を一層推進していただきたい。
 また、昨年9月に発生した米国における同時多発テロに際して、地域における健康危機管理体制の再確認の指示の通知(平成13年10月4日健総発第62号:健康局総務課長通知)を、さらに、炭疽菌のおそれのある郵便物による健康被害に対する国内での対応として、保健所等に郵便物等の検査依頼がなされた場合の対応や地方衛生研究所での検査の方法等についての通知(平成13年11月16日健総発第73号:健康局総務課長通知)を都道府県にしたところである。各地方公共団体におかれては、これらの通知の趣旨等を踏まえ、引き続き地域における健康危機管理体制の充実強化に努められたい。
 なお、平成13年度に保健所等の地域保健関係機関を対象とした健康危機管理情報システムの構築のための検討会を開催しているが、平成14年度予算案においては、これをシステム化するための事業費を計上しているので御了知頂きたい。
 さらに、平成14年度予算案において、平成13年度に引き続き保健所長に対する健康危機管理研修や、新たに、健康危機発生時に必要となる防護服、除染シャワーの整備等について計上しているので併せて御了知頂きたい。

(3)保健婦等の人材確保及び資質の向上

ア.保健婦の確保

 保健婦の確保については、平成12年度までに市町村保健婦及び都道府県保健婦として約31,000人分の地方財政措置が講じられてきたところであるが、新たに介護予防事業・老人保健事業第4次計画・児童虐待予防等の実施に必要な保健婦を計画的に増員するため、平成13年度の地方財政計画において、平成13年度から平成16年度までにかけて、都道府県73人、市町村1,282人、総数1,355人の増員を行うものとされた。
 また、健康づくりの推進(ヘルスアッププラン)として、平成14年度から地方公共団体における健康づくり・疾病予防対策の取り組みに対して、新たに地方財政措置が講じられることとなった。この事業例としては、地方健康増進計画の策定・推進、青壮年層を対象とした健康教育の充実、公民館等の健康相談コーナーの設置、健康スポーツの振興などが挙げられており、これらの事業費には非常勤保健婦等の雇い上げ経費が含まれている。
 各都道府県においては、地方財政が厳しい中ではあるが、地域保健対策の推進に支障を来さないよう、今後とも保健婦等の人材確保及びそのための管下市町村への助言方をよろしくお願いする。

イ.小規模町村対策

 保健婦の未設置町村及び1人設置町村は年々減少してきているが、平成12年3月31日現在の保健婦の設置状況は、未設置町村が20、1人設置町村が155といまだ人材確保の困難な町村も存在している。(資料3参照)
 各都道府県においては、各都道府県の人材確保支援計画に基づき、今後ともこれら保健婦等の人材確保が困難な町村と十分連携を図り、「特定町村人材確保対策事業」を活用して人材の確保に努めていただきたい。

ウ.地域保健関係職員等の資質の向上

 地域保健対策の推進を図るためには、人材の確保ととともに人材の資質の向上が重要な課題である。平成14年度予算案において、地域保健関係職員が新たな健康問題等に対応するための研修体制の在り方や教育機関との連携等を見直すための検討会の開催、及びC型肝炎に関する研修事業を新たに計上しているので御了知頂きたい。
 各都道府県においては、地域ケアの総合調整や健康日本21を効果的に推進するための市町村職員の研修、市町村への技術支援を行う保健所職員の研修等、地域保健関係職員等の資質の向上のための事業の実施に特段の御配慮をお願いする。

(4)地域・職域の保健活動の推進

 生活習慣病の予防のためには、個人の自己責任による健康管理の実現に加え、健康診査等の保健事業による生涯を通じた継続的な健康管理の支援が必要である。
 このため、平成12年から「生活習慣病予防のための健康診査等の保健事業の連携の在り方に関する検討会」を開催し、平成13年3月に中間報告書がまとめられた。これを受けて平成13年9月に「生活習慣病予防のための地域・職域連携保健活動検討会」を開催して健診情報の総合管理及び活用、効果的・効率的な地域・職域連携保健事業の推進等に関する検討を行っているところである。
 また、平成13年度から実施している地域職域健康管理総合化モデル事業(資料4参照)を平成14年度も継続的に実施するとともに、地域職域において共同で実施可能な事業等について検討する協議会等をモデル的に実施する地域職域連携共同モデル事業を実施することとしている。
 各都道府県におかれても、地域・職域の保健活動の連携の推進に努められたい。

(5)市町村保健センターの整備

 市町村保健センターについては、国民の健康づくりに対する関心が年々高まる中、住民に密着した健康教育、健康相談、健康診査等の対人保健サービスを総合的に行う拠点として、また、地域住民の自主的な保健活動の場として、その役割が増大してきているところである。
 このため、市町村保健活動の重要な拠点となる市町村保健センターの適切かつ円滑な整備促進を図る観点から、平成13年度補正予算及び平成14年度予算(案)においても必要な額を計上したところである。
 各都道府県におかれても、整備の促進について特段の御配慮をお願いする。

(6)地方衛生研究所の機能強化について

 地方衛生研究所については、改正後の基本指針により、地域における科学的かつ技術的な中核となる機関として再編成し、その専門性を活用した地域保健に関する総合的な調査及び研究を行うとともに、当該地域の地域保健関係者に対する研修を実施することが規定されており、地域保健対策の推進において、大きな役割が期待されている。
 今後とも、改正後の基本指針、平成9年の「地方衛生研究所の機能強化について」(平成9年3月14日厚生省発健政第26号:事務次官通知)、平成13年3月の「地域健康危機管理ガイドライン」等を踏まえ、精度管理及びリファレンス活動の推進、健康危機管理の観点からの体制づくり、調査研究等の企画調整及び組織強化、情報関連機能の充実強化等を通じ、地方衛生研究所の機能強化につき、特段の御配慮をお願いする。


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