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(母子保健課関係)

1 総合的な母子保健対策の推進について

 母子保健は、生涯の健康の基礎であり、また、次の世代を健やかに生み育てるための基礎であることから極めて重要であると認識しており、今後とも、住民の多様なニーズに対応した母子保健対策の一層の推進を図って行くこととしている。
 このため、平成13年度においても、(1)周産期医療対策事業、(2)生涯を通じた女性の健康支援事業、(3)子どもの心の健康づくり対策事業等、少子社会に対応した総合的な母子保健対策の充実強化を図ることとしている。
 さらに、昨年11月に21世紀初頭における母子保健の国民運動計画である「健やか親子21」を策定したところであり、この計画に基づき、地方公共団体や関係機関・団体等の自主的・積極的な取組の推進を図ることこととしており、これにより母子保健水準の一層の向上を図っていきたいと考えている。
 また、平成14年度は市町村母子保健計画の見直しの時期を迎え、平成13年度中に、市町村においてその策定作業が行われるものと考えられるが、都道府県におかれては、こうした改訂が円滑に行われるよう、管下市町村に対して適切な助言・指導をお願いしたい。

2 「健やか親子21」について

 我が国の母子保健は、既に世界最高水準にあるが、妊産婦死亡や乳幼児の事故死について改善の余地があるなどの残された課題や思春期における健康問題、親子の心の問題の拡大などの新たな課題が存在する。また、小児医療や地域母子保健活動の水準の低下を防止することも重要である。
 このような中、21世紀の母子保健のビジョンを示す「健やか親子21」が、昨年11月に関係専門家等からなる検討会によりとりまとめられたところである。今後は、この内容の周知を図るととともに、関係機関・団体とともに構成する「健やか親子21推進協議会」を設置し、国民的な運動の展開を図っていくこととしており、都道府県、市町村における自主的・積極的な取組をお願いする。

3 乳幼児健診における育児支援強化事業(新規)について

 育児不安を抱える母親等の増加、児童虐待が社会的な問題となっており、家庭における育児機能の強化や地域における児童虐待の早期発見・早期対応のシステムづくりが重要となっている。
 1歳6か月児及び3歳児に対する健康診査は、母子保健法に基づく法定健診として実施しており、受診率が高いことから、こうした健診の場を活用することが有効であるため、1歳6か月児健診などの場において、育児相談体制の充実を図るものである。
 なお、本事業は、「子どもの心の健康づくり対策事業」のひとつとして実施することとしているので、「虐待・いじめ対策事業」や「児童虐待市町村ネットワーク事業」等と合わせて実施することにより、市町村における児童虐待対策の総合的な推進に努められたい。

4 周産期医療ネットワークの整備について

 妊産婦死亡、周産期死亡等のさらなる改善により安心して出産できる体制を整備するため、新エンゼルプランにおいて、総合周産期母子医療センターを中核とした周産期医療ネットワーク(システム)の整備を計画的に進めているところである。
 地域医療計画の改訂に際しては、周産期医療について計画に盛り込むとともに、平成16年度までに原則として各県に1か所の総合周産期母子医療センターを整備し、これを中心とした地域周産期母子医療センター及び一般産科との母体及び新生児の搬送体制をはじめとする連携体制の整備をお願いする。

5 不妊専門相談センター事業の整備について

 不妊に悩む方々に的確な情報を提供し、専門的な相談に応じられる体制を地域において整備することは重要であることから、平成8年度から「生涯を通じた女性の健康支援事業」の一環として、不妊専門相談センター事業を実施しているが、平成13年度予算案においては、24カ所から30カ所に補助対象の増を図ることととしている。
 本事業については、新エンゼルプランの中で計画的に整備すべき重点施策として位置づけられていることから、引き続き都道府県等の積極的な実施をお願いする。

(13年度予算案)
30か所
16年度目標値)
47か所

6 乳幼児健康支援一時預かり事業について

 乳幼児健康支援一時預かり事業については、新エンゼルプランを着実に推進するため、200市町村から275市町村に拡大するために必要な予算を確保することとしたので、各市町村の積極的な取り組みについて指導をお願いする。
 施設整備についても、保育所等の児童福祉施設に加え、医療機関で本事業を実施するための部屋の整備を医療施設等施設整備費により行うこととしたので、積極的に取り組まれるようお願いする。

(13年度予算案)
275市町村
(16年度目標値)
500市町村

7 新生児聴覚検査の実施について

 難聴等の早期に発見し、早期治療を進める観点から、新生児聴覚検査事業を平成12年度から試行的に開始(10月実施)したところであるが、平成13年度においても、実施主体となる都道府県・指定都市の積極的な検討・取組をお願いしたい。
 なお、現在、新生児聴覚検査事業について具体的な実施方法等を示した「新生児聴覚検査事業の手引き」を、平成12年度の厚生科学研究事業により検討しているところである。この手引きの中では、検査の意義に始まり、必要となる検査の実施体制、望ましい療育の実施方法などを具体的に解説しており、実施主体が実施に向けて検討する際に、参考となるものと考えている。手引きの完成は、3月下旬を目途としているが、出来上がり次第、速やかに送付することとしているので、積極的に活用し事業の実施をお願いしたい。

8 先天性代謝異常等検査の一般財源化について

 先天性代謝異常検査費(昭和52年度創設)及びクレチン症検査費(昭和54年度創設)は、制度創設後相当の年数が経過し都道府県・指定都市の経常的な事務として同化・定着していることから、地方分権推進委員会の第2次勧告の趣旨に沿って、平成13年度で一般財源化を行うこととしている。
 なお、所要の財源については地方交付税措置されることとなるので、一般財源化によって事業の低下を招くことのないようお願いする。

○ 一般財源化の対象費 先天性代謝異常検査費及びクレチン症検査費
(神経芽細胞腫検査費及び精度管理費は含まない)

9 葉酸の摂取に係る適切な情報提供について

 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のため、妊娠を計画している女性等に対する葉酸の摂取について、昨年10月、関係する専門家からなる検討会を設置し検討を行った。検討会の報告を受けて、神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための葉酸の摂取について下記(1)〜(4)の情報提供を推進しているところである。

平成12年12月28日児母第72号厚生省児童家庭局母子保健課長・健医地生発第78号厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課生活習慣病対策室長連名通知
 なお、神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための葉酸の摂取に関する情報提供に当たっては、妊娠可能な年齢の女性等の本人の判断に基づく適切な選択を可能とし、また過度の不安を招かないよう通知の情報提供要領に記載の啓発・普及に当たっての一般的注意事項及び葉酸摂取の際の留意事項等も踏まえ、適切な情報提供となるようご協力をお願いする。

(1) 妊娠可能な年齢の女性に関しては、神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させためには、葉酸摂取が重要であるとともに、葉酸をはじめその他のビタミンなどを多く含む栄養のバランスのとれた食事が必要であること。

(2) 妊娠を計画している女性に関しては、神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させるために、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、葉酸をはじめその他のビタミンなどを多く含む栄養のバランスがとれた食事が必要であること。当面、食品からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mgの葉酸を摂取すれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが集団としてみた場合に低減することが期待できること。
 ただし、医師の管理下にある場合を除き葉酸摂取量は1日当たり1mgを越えるべきではないこと。

(3) 神経管閉鎖障害の児の妊娠歴のある女性に関しては、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、医師の管理下での葉酸の摂取が必要であること。

(4) 妊娠を計画している女性に関しては、妊娠中のみならず妊娠前からの適切な健康管理が重要であること。すなわち、妊娠中の母体の健康と胎児の健全な発育のため、日頃から多様な食品を摂取することにより栄養のバランスを保つなど食生活を適正にし、妊娠中の禁煙・禁酒が不可欠であること。

10 乳幼児の事故防止普及啓発用ポスター及びビデオの配布について

 乳幼児のうち1歳〜4歳児の死亡原因として、溺水、誤飲等の不慮の事故が第一位となっているため、乳幼児の事故予防は重要な課題となっている。
 これらについては、周囲の大人が目を光らせることで事故の6割が防げると言われていることから、一般家庭や保育所等の児童福祉施設等の職員に対して、こうした事故予防の方法や、万一の際の応急処置などの普及啓発を行うことが有効であると考えている。
 このため、乳幼児の事故防止に関する普及啓発を図るため、普及啓発用ポスター及びビデオを現在作成しているところであり、3月下旬を目途に都道府県・政令市・特別区あて送付することとしているので、管内市町村、保健所及び市町村保健センター、並びに保育所等の関係機関への配布など、ご協力をお願いしたい。

11 生殖補助医療について

 生殖補助医療については、近年急速に普及してきているが、一方で、精子の売買や代理懐胎の斡旋など様々な問題が社会的にも大きく取り上げられるようになってきている。
 このため、平成10年10月に、生殖補助医療のあり方等について集中的に審議するため、厚生科学審議会先端医療技術評価部会の下に、生殖補助医療技術に関する専門委員会を設置し検討いただいていたところであるが、既にご案内のとおり、昨年の12月末に、同専門委員会の検討結果として、「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」がとりまとめられたところである。
 都道府県等においては、報告書の内容を承知していただくとともに、特に、報告書の中に「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のうち、AID以外は同報告書における結論を実施するために必要な制度の整備がなされるまで実施されるべきではない」旨の見解が示されていることに留意いただき、管内の市町村、関係団体、医療機関等に対し、報告書の内容を周知していただくようお願いする。


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