ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)> 平成30年度第6回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録(2018年8月28日)

 
 

2018年8月28日 平成30年度第6回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会

医薬・生活衛生局 医薬安全対策課

○日時

平成30年8月28日(火)15:00~

 

○場所

田中田村町ビル8階8E会議室
(東京都港区新橋2-12-15)

○議事

 

○医薬安全対策課長 お待たせいたしました。定刻の3時になりましたので、これより医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開始いたします。既に部会等で御挨拶させていただいた先生方もおられますが、この調査会としては初めてですので、私は7月31日付で安全対策課長になりました関野でございます。どうかよろしくお願いいたします。
改めまして、ただいまから平成30年度第6回安全対策調査会を開始いたします。本日出席の先生方、そして本日は3名の参考人の先生方にも御出席いただいております。お忙しい中、そして今日も比較的暑い中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日の調査会は、御覧のとおり公開で行っております。カメラ撮りは議事に入る前までとさせていただいておりますので、傍聴の方々におかれましては御理解と御協力のほどをお願いいたします。併せて、お手元にお配りしております留意事項の遵守もお願いいたします。
次に、本日の委員の先生方の出欠状況です。本調査会は、6名の先生方に委員をお願いしており、全員の委員の方に出席していただいております。したがって、薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議が成立していることを報告申し上げます。
引き続き、先ほど申し上げましたとおり、本日は3名の参考人の先生方に御出席いただいておりますので紹介いたします。まず、公益社団法人日本産婦人科医会副会長の石渡先生です。
○石渡参考人 石渡です。どうぞよろしくお願いします。
○医薬安全対策課長 北里大学医学部産科学教授の海野先生です。
○海野参考人 海野です。よろしくお願いいたします。
○医薬安全対策課長 最後に、東京歯科大学衛生学講座教授の眞木先生です。
○眞木参考人 眞木です。よろしくお願いいたします。
○医薬安全対策課長 よろしくお願いいたします。それでは、これより議事に入ります。冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力のほどお願いいたします。以後の進行は、五十嵐座長にお願いいたします。
○五十嵐座長 では早速議事に入ります。初めに事務局から、審議参加に関する遵守事項について御説明をお願いいたします。
○事務局 議事参加について御報告いたします。本日御出席の委員、及び参考人の方々の過去3年度における関連企業、対象品目及び競合品目の製造販売業者からの寄附金・契約金などの受取状況を御報告いたします。本日の議題に関して、競合品目・競合企業については、事前にリストを各委員にお送りして確認を頂いておりますが、柿崎委員より、あすか製薬株式会社から50万~500万円以下の受取り、舟越委員より、あすか製薬及び小野薬品工業株式会社から50万円以下の受取り、望月委員より、あすか製薬株式会社から50万円以下の受取り、眞木参考人より、ライオン株式会社から50万円以下の受取りと申告いただいたほかは、受取りの申告はありませんでした。よって柿崎委員におかれましては、議題2の陣痛促進剤の安全性に係る審議において、意見を述べることはできますが、議決に加わることはできません。その他の委員におかれましては、意見を述べ、議決にも加わることができるとともに、全ての参考人におかれましても意見を述べることができます。これらの申告については、ホームページで公表させていただきます。
続いて事務局より、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定しております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
審議参加に関する遵守事項についての説明、薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果の御報告は以上です。
○五十嵐部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの御説明について、何か御質問等はありますか。よろしいでしょうか。特にないようですので、競合品目及び競合企業の妥当性を含めて御了解を頂けたと理解いたします。それでは、今日の配布資料の確認をお願いいたします。
○事務局 お手元の資料を御覧ください。本日お配りしている資料は、議事次第、配布資料一覧、委員、参考人の一覧があります。続いて資料1-1、資料1-2、資料2-1、資料2-2、参考資料1、参考資料2があります。更にその下に、競合品目・競合企業リストがあります。不足等がありましたら御連絡ください。
○五十嵐部会長 よろしいですか。それでは、議題1の要指導医薬品のリスク管理について討議を始めます。個別成分の審議の前に、要指導医薬品の一般用医薬品への移行の評価手続について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 資料1-1「要指導医薬品のリスク評価について」を御覧ください。表に記載されております品目は、現在、要指導医薬品に指定されており、このたび製造販売後調査の終了見込みに伴い、一般用医薬品としての適切性を確認するために、リスク評価をお願いするものです。
初めに、要指導医薬品の一般用医薬品への移行の評価手順について、簡単に説明いたします。2ページ目を御覧ください。「スイッチOTC薬等のリスク評価について」は、リスク評価手続について、平成25年12月に開催されました医薬品等安全対策部会において決定していただいたものです。本日の御審議は、この部会決定に基づいて実施していただくこととなります。背景から順に説明いたします。平成25年の旧薬事法改正により、適正使用のために薬剤師による対面による情報提供や、薬学的知見に基づく指導が必要な医薬品として、一般用医薬品とは別に、要指導医薬品という新たな医薬品カテゴリーが設けられました。この要指導医薬品のうち、スイッチOTCやダイレクトOTCには、それぞれ一定期間の製造販売後調査の実施が義務付けられており、この調査期間が経過しますと、一般用医薬品に移行することとなるため、移行の際には一般用医薬品としての販売の可否を確認するためのリスク評価を行う必要があります。資料の2.のとおり、一般用医薬品としての販売可否に関する評価については、原則3年間の製造販売後調査の終了までに行うこととし、製造販売後2年以降の時点において、製造販売後調査の中間報告の結果などを元に、製造販売承認の拒否事由に該当する状況にないことを確認していただくこととなります。この確認については、3.に記載されているとおり、本安全対策調査会にて行っていただくこととしており、また本日の審議会については医薬品等安全対策部会に御報告させていただくこととしております。
要指導医薬品から一般用医薬品への移行についての流れを説明いたします。4ページを御覧ください。企業は承認後、原則3年間の製造販売後調査を実施し、その間は要指導医薬品と区分されます。調査期間中に1年ごとに年次報告書が提出され、また製造販売開始後2年以降を経過し、特別調査の目標症例数、内服薬であれば3,000例、外用薬であれば1,000例を集めた時点で、中間報告書が提出されます。この中間報告書をもって、安全対策調査会で一般用医薬品としての販売の可否について評価いたします。一般用医薬品への移行が認められた場合、製造販売後調査期間が終了した時点で、第1類医薬品に移行いたします。
製造販売後調査が終了後の1年の間に、企業から提出される最終報告などの結果から、一般用医薬品としてのリスク区分を安全対策調査会、及び安全対策部会での審議などを経て決定することになります。繰り返しになりますが、今回お願いさせていただく評価は、第1類医薬品としての販売の可否についての評価になります。説明は以上です。
○五十嵐部会長 ありがとうございました。では議題1、フッ化ナトリウムの審議を始めます。御説明をお願いいたします。
○事務局 フッ化ナトリウムについて、事務局より説明いたします。資料1-2を御覧ください。販売名は「エフコート」及び「クリニカフッ素メディカルコート」です。エフコートは、平成27年9月18日に製造販売を開始しております。その後、有効性、有効成分、用法・用量、効能・効果などに同一性を有するものとして、クリニカフッ素メディカルコートが承認され、平成29年9月27日に製造販売を開始しております。クリニカフッ素メディカルコートは、製造販売開始から11か月ほど経過しており、特別調査の症例数も1,000例には達しておりませんが、先行して製造販売されているエフコートの製造販売後調査期間に合わせて、中間報告書を提出していただいております。
こちらの効能・効果は、虫歯の予防です。用法・用量は資料にお示しのとおり、1日1回食後又は就寝前に洗口うがい(ぶくぶくうがい)をいたします。1回に口に含む液量は、年齢等による口腔の大きさを考慮し、通常4~5歳で5mL、6歳以上で7~10mLです。
製造販売後調査の概要を御覧ください。まずエフコートについて説明いたします。特別調査とは、個別に薬局と契約して、モニター店舗でアンケート調査票を配って、アンケートによる調査を実施するものです。この特別調査では、調査症例数1,195症例で、副作用が0件でした。使用者又は薬剤師からの自発報告という形での一般調査においては、報告された副作用は35例、38件です。内訳は、口内・舌・口唇のピリピリ感が7件、口渇が3件、歯の変色・着色が2件、味覚異常が2件などありました。このうち重篤と判断された症例はありませんでした。
続いて、クリニカフッ素メディカルコートについて説明いたします。特別調査では、調査症例数371症例、副作用が4例、4件でした。内訳は、適用部位刺激感が2件、舌の感覚麻痺が1件、下痢が1件でした。このうち重篤と判断された症例はありませんでした。一般調査では、報告された副作用は6例、6件です。内訳は、適用部位刺激感が5件、適用部位疼痛が1件でした。このうち重篤と判断された症例はありませんでした。
医薬品医療機器法第68条の10第1項に基づく報告ですが、エフコート及びクリニカフッ素メディカルコートの報告書のデータロック後に報告された重篤な副作用報告はありませんでした。また、使用上の注意の改訂、指導などもありませんでした。資料の説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○五十嵐部会長 ありがとうございました。本日は、参考人として眞木先生においでいただいておりますので、御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
○眞木参考人 今、厚労省から報告があり、またこのデータも読ませていただきました。例えば副作用に関しては、その副作用がどの程度の副作用なのかを見ますと、1ページに書いてあるように、口の中又は口唇・舌などの違和感や、味覚異常や歯の着色ということで、重篤な副作用、例えば入院を要した例などは全くないということです。私自身は、特にこのまま一般用医薬品に移行することに関して、異議はありません。
ただ、フッ化物に関しては、特に歯の色の変化や着色とあります。この点に関して、多少エフコートの所に記述がありました。ただし、いずれも判明した例では、歯科医院に行って、今はホワイトニングなどと言いますが、清掃、研磨すると落ちるということで、フッ化物による副作用の場合はエナメル質の形成不全ですので、着色が落ちることはありません。ということで安全性に関しては、その点を考慮しても問題ないと考えております。以上です。
○五十嵐部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局の御説明と、眞木先生の御意見に対して、何か御質問、御意見等はありますか。特にありませんか。フッ素は、米国では多くの集の水道水にも入っています。日本でも一時期自治体によってはフッ素を水道水にくわえていたこともありました。そういう意味でも安全性というものに対しては、余り大きな問題がないと理解しています。眞木先生もそのような御意見ですので、これを第1類の一般用医薬品として、適切としてよろしいでしょうか。
○望月委員 1点だけ確認をさせてください。安全性については大きな問題がないと理解いたしました。今回、サンスターさんとライオンさんの2つの製販業者から、両方合わせたリスク評価という形になっております。後ろのほうの資料ですと、別々な集計や、2つの企業の出しているもので特に違いがなかったとか、その辺りについて情報がありましたら、そこだけ確認させていただければと思います。
○事務局 今、望月先生から御質問を頂きました件は、事務局で2社の製造販売業者からの報告書をそれぞれ見る限り、傾向としてはほぼ同様で、いずれも重篤な副作用はないという状況です。使用の状況についても、ほぼ同じような傾向が見られております。
○望月委員 ありがとうございます。
○五十嵐部会長 よろしいですか。
○望月委員 はい。
○五十嵐部会長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
○眞木参考人 今の件に関しては、私は実は歯の歯垢の染出剤の関係で、副作用に関して、これまで10年間で2件ほどアレルギー性のショックがあったという報告がありました。洗口剤、歯磨剤、染出剤を含めて、この10年間かなり詳しく調査させていただきました。歯磨剤、洗口剤に関しては、全く同じなのです。歯磨き剤でもヒリヒリ感や、口腔内の違和感があるのですが、歯磨剤は医薬部外品で、それに対してこちらは一般用医薬品ですので、歯磨剤と同じような違和感を感じる程度で副作用といえるようなものはないというのが、私ども学会の評価でもあります。
それから、座長の先生がおっしゃっておりましたが、実はアメリカもヨーロッパ、EU諸国も全て、フッ素は虫歯予防のための栄養素で、日本でいうと食品摂取基準に盛られています。その辺りから考えても、栄養という考え方で体重1kgキロ当たり1日1人0.05mg取りなさいと言っているのが海外の先進国の現状です。それから比べると、日本はそういう意味では、まだフッ素がそのような捉え方をされておらず、医薬品の評価しかないというのは、私どもも少し不満に思っているところです。以上です。
○五十嵐部会長 ありがとうございます。望月先生、よろしいですか。
○望月委員 はい。
○五十嵐部会長 そのほかはいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、このフッ化ナトリウムについては、第1類の一般用医薬品として適切とするということで、よろしいでしょうか。それでは、御異議なしといたします。どうもありがとうございました。眞木先生におかれましては、貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございました。
○眞木参考人 どうもありがとうございました。
○五十嵐部会長 これ以後の議題については特に御意見を頂く予定はありませんので、途中で御退席されても差し支えございません。どうもありがとうございました。
それでは今後の流れについて、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 御審議いただき、ありがとうございました。製造販売後調査終了までの間、報告される副作用報告などを評価し、本日御審議いただいた結果に変更がないことを確認しつつ、一般用医薬品に移行する手続を進めてまいります。また本日の結果については、次の医薬品等安全対策部会に報告をさせていただきます。どうもありがとうございました。
○五十嵐座長 ここまでについて何か委員の先生方、よろしいですか。
                                   (異議なし)
○五十嵐座長 それでは、議題2、陣痛促進剤の安全性について討議をしたいと思います。事務局から説明をお願いします。
○事務局 資料2-1を御覧ください。「陣痛促進剤の添付文書における無痛分娩への対応について」です。本日、検討いただく陣痛促進剤はオキシトシン、ジノプロスト、ジノプロストンの3剤となっております。陣痛誘発でも使われることもありますので、「子宮収縮薬」と総称したほうが正確であるという御指摘もありますが、慣例的にこのような呼び方をされることが多いこともありますので、本日はこちらで呼ばさせていただければと考えております。
背景です。昨年、無痛分娩における妊婦、赤ちゃんの死亡や障害の事例の報道が多数ありましたように、近年、無痛分娩児の重篤事例が報告されております。そのため、無痛分娩の実態把握と安全な提供体制への構築が急務となっておりました。そこで、無痛分娩の実態把握を行うこと、その結果を分析し、無痛分娩の安全な提供体制の構築を行うことを目的として、昨年、厚生労働科学特別研究事業により、無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究が行われ、診療体制等に関する提言がなされたところです。
この研究の概要として、参考資料1を用意しております。まず、参考資料の3ページを御覧ください。こちらのページの左側に無痛分娩の実施の推移が示されております。最近、増加傾向にありまして、近年は5%~6%ぐらい行われていることが示されております。右側の円グラフは、妊産婦死亡のうち、無痛分娩の有無が示されておりまして、妊産婦死亡271例のうち5.2%に当たる14例が無痛分娩であったことが示されております。この結果からは、無痛分娩で特に妊産婦死亡率が高いと結論することはできないとされております。また、無痛分娩を行っていた妊産婦死亡の14例についても検討が行われております。こちらについては、同じ資料の6ページを御覧ください。この14例中のうち1例については、局所麻酔薬中毒ですが、残り13例については、羊水塞栓症など無痛分娩でなくても起こり得る例とされております。こちらのページには記載はありませんが、死亡例14例のうち13例では陣痛促進剤が使われていたとのことです。なお、無痛分娩では計画分娩になることが多いという都合上、それに伴って陣痛促進剤が使われることが多いと聞いております。陣痛促進剤の添付文書におきましては、分娩監視装置を使用すべきことや、羊水塞栓症、子宮破裂等の有害事象が発生し得ることについて、既に注意喚起がなされているところです。そういったところではありますが、今般、無痛分娩における陣痛促進剤の使用の観点から安全対策措置について検討することといたしました。
今般、この検討を行うに当たり、PMDAに報告されている陣痛促進剤の副作用症例から無痛分娩と考えられる症例について、PMDAに評価を依頼し検討を行っております。資料2-2を御覧ください。
調査の経緯については、今、御説明したような内容です。続きまして、資料の2ページ、平成27年度から3年間の副作用報告症例で、無痛分娩の症例を抽出して評価を行っております。対象については、重複を除き29症例ありました。評価の結果、29例については、いずれも陣痛促進剤と副作用の因果関係評価は困難又は不明とされております。また、29例のうち17例では情報が不足しており、因果関係評価が困難であったとされております。この結果から、現時点で陣痛促進剤に対する新たな注意喚起を行うべき合理的な理由はないものと判断され、専門協議においてもこの見解は支持されておりますが、無痛分娩時は母体の痛みが緩和されることから、陣痛における状況に十分注意するよう注意喚起を行う必要があるとの意見が出されたところです。その意見を踏まえて、現行の添付文書の警告に記載されているとおり、分娩監視装置を用いて十分に監視する等の注意事項を遵守した上で陣痛促進剤が投与されるよう、「無痛分娩時を含め」との文言を追記することが適切と最終的に結論されております。こちらの改訂の文言案については、資料2-1の裏面を御覧ください。3剤とも共通ですが、警告欄に「無痛分娩時を含め」という一節を追記するものとなっております。本改訂案について御審議のほど、よろしくお願いします。
○五十嵐座長 本日はお二人の参考人の先生においでいただいております。初めに、石渡先生から御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
○石渡参考人 今回の機構からの評価結果を御覧になっても、特段問題はないと。要するに、今回は専門協議において調査対象とした症例を評価したところ、いずれの症例も陣痛促進剤との因果関係が評価、あるいは困難、不明という結果が出ているわけです。結論として、副作用、報告症例の評価から、現時点で陣痛促進剤に対する新たな注意喚起を行うべき合理的な理由はないと判断をされております。この1年ぐらい前から、様々な新聞報道等々でも無痛分娩に関する報道がなされて、少し報道そのものも繰り返し繰り返しの方向で、感情的な部分もあろうかと思いますが、そういう中で、無痛分娩について、この添付文書の中で注意喚起していこうというお考えだと思います。実は、陣痛促進剤の添付文書改訂について、無痛分娩に特化した研究は今までなされていないのが現状です。無痛分娩中は、母体に痛みが緩和されていることから、無痛分娩における陣痛の状況に注意喚起をするために訂正する必要があろうというお考えですが、実際には、痛みという自覚的なものに関する評価というのはなかなか難しいのが現状です。私たちは、産婦人科診療ガイドラインに沿って臨床現場において医療をしているわけですが、その産科診療ガイドライン2017には、陣痛促進薬について注意点がいろいろ書かれております。重要な点は、投与中の連続監視、分娩監視装置による連続監視と、過強陣痛の有無のチェックであって、これは子宮頻収縮、つまり、過強陣痛の1つですが、陣痛が頻繁にくる、それと胎児心拍数の変化、これは胎児機能不全の有無ですが、それを評価すべきであるとしているわけです。したがって、あえて無痛分娩に特化した記述の必要はないのではないか、というのが私の考え方です。子宮収縮薬投与中における誤った管理法を広めてしまうという心配もあろうかと思います。何も無痛分娩だけではなくて、ほかにいろいろな分娩のスタイルとかいろいろありますので、そういうものに波及していく心配があるのではないか。
海外においても、無痛分娩の手技については、統一されたものは全くないわけです。産婦人ガイドラインにも、今まで無痛分娩は取り扱われておりません。
もう一つは、今回の分析の中の症例とオーバーラップしているところはあろうかと思いますが、産科医療保障制度、これは脳性まひの保障制度ですが、その再発防止委員会で、重要なことについてはテーマ別に検討をしているわけです。今まで無痛分娩に関する検討はなされていないのが現状です。1,600ほどの脳性まひの事例が挙がってきて、その中で69例が無痛分娩をしているということです。その中で、明らかにその原因になっていることは見当たらないと思っております。
もう一つは、妊産婦死亡評価検討委員会は、産婦人科委員会等々が中心にこういう事例を集めておりますが、その分析が付いたのは271事案で、先ほどの資料の中にありますが、その中で無痛分娩がなされた症例が14例、5.2%です。麻酔そのものが原因と思われる事案は1例です。そのほかについては、別の理由でお亡くなりになったわけですが、先ほどお話がありましたが、無痛分娩をやっている群と、無痛分娩をしていない群との妊産婦の死亡率の差というのは明らかに私たちの研究の中から出てきませんでした。
そういうことも踏まえて、私たちは臨床の現場において、これは若いドクターから周知徹底されている産婦人科診療ガイドラインに沿った診療が行われていることが非常に重要であって、あえて、今回の添付文書の中に「無痛分娩」の文言を追加する必要はないと思っております。
具体的に、どういうことがガイドラインに載っているかと言いますと、2017年には子宮収縮薬投与下、開始における確認すべき点ということで、推奨レベルがAからCとなっております。推奨レベルAというのは、実施することを強く勧められる状況を言っております。今のことで言いますと、まず、陣痛促進薬を使う適応と禁忌をちゃんと確認すること。投与開始前から分娩監視装置の装着と胎児心拍数陣痛図の記録を取るということが載っております。基準範囲内の量で投与を開始する。これが推奨レベルAとしてきちんと盛られております。
次は子宮収縮薬の投与中にルーチンに行うべきことは何かという問いについてです。推奨レベルAとして、分娩監視装置を連続装着です。連続です。そして、胎児心拍数図を記録する。推奨レベルBというのは、実施することは強く勧められるものですが、2時間ごとのバイタルチェック、血圧や脈拍をチェックする。それから子宮頻回収縮、過強陣痛及び胎児機能不全、胎児の心拍に異常が出てくる。こうした場合には、減量又は中止することが推奨レベルBとして盛られております。
もう一つ、子宮収縮薬投与中の増量、あるいは再投与における減量中止については、推奨レベルBですが、子宮収縮薬の増量及び再投与については、胎児機能不全がない、あるいは子宮頻収縮がない、静脈内投与では前回増量時から30分以上たっている。あるいは内服薬では1時間以上経過している。そういうものについて増量、あるいは再投与を考慮する。子宮収縮薬を中止する場合は、子宮収縮薬投与中に胎児機能不全、あるいは子宮の頻収縮、過強陣痛が出現した場合には、減量あるいは中止を考える。つまり、ガイドラインの中を十分に遵守すれば、あえて添付文書の中に無痛分娩について追加する必要は全くないと考えました。以上です。
○五十嵐座長 ありがとうございました。それでは、海野先生からも御意見を頂きたいと思います。
○海野参考人 北里大学の海野です。よろしくお願いします。先ほど御紹介いただきましたように、昨年度、私どもが担当した特別研究で、妊産婦死亡14例中13例が陣痛促進剤が使われていたということで、本件で御検討いただく1つのきっかけになっているのかと感じております。この研究班の中で、この件についてどう考えていたのか、まず御説明したいと思います。
我が国の無痛分娩の状況というのは、基本的に麻酔科の先生がすごく少なくて、それぞれの外科系の診療科は、みんなその科のドクターが麻酔をかけなければいけないような状況がどこでも多く存在しているわけですが、産科の領域もそういう状況があります。
そういう中で、無痛分娩も麻酔科の先生が関与していただける状況と、それに関与していただけない状況で行われていることが相当あるわけです。どちらかというと、関与していただけない状況で行われているほうが多いことをまず御理解いただきたいと思います。
そういう中で、安全に無痛分娩を行う。御希望がありますから、それで行っていく上で、これは他の国よりも我が国はよりそういう傾向が強いのですが、計画的な無痛分娩。要は分娩誘発と無痛分娩等を一緒に組み合わせたような形の分娩の誘導の仕方というのが、かなり普及した状態で、現状でもあります。残念ながら、細かい数字、正確な数字は私どもは把握できていないのですが、我が国の多くの無痛分娩実施施設では、医学的適応があって、この人は無痛分娩でやったほうがいいという人も含めてですが、計画無痛分娩をできるだけ行って、麻酔科の先生の御負担も少なくする。あるいは産科の中でのいろいろな段取りにもスムーズに進められるようにするということで、リスクを下げようということが行われております。これは現状でもそうです。
以前に比べると、自然陣発を待って、それから無痛分娩に移行するという施設が、無痛分娩の件数が増えてきた施設では、そういう対応ができている所は少数ですが、現に、大多数はそういう状況です。そういう状況ですから、過去数年間にわたる妊産婦死亡の後方視的の形では、こういうような数字が出てくるアソシエーションは、ある程度理解できる範囲なのかと私どもは考えました。
ただ、そういう理解が本当に正しいかということになると、それは無痛分娩の実施実態や、その中で、陣痛促進剤をどういう形で、どのようなタイミングで使われているか詳細に調べないと分からない部分がありますが、そういうデータをまだ我々は持っていないのが正直なところです。それは我々がそう考えていると御理解いただければと思います。
無痛分娩というのは、どうしても子宮収縮薬を分娩経過中も含めて投与しなければならない状況になることが、かなり頻度として高い。これは世界的に見てもそうです。それはそういう傾向はあり得るということです。
実際に分娩誘発の際に無痛分娩をする場合としない場合で、どちらがリスクが高いのだろうかという研究は多く世界中でされているわけです。分娩誘発も、例えば妊娠高血圧症候群や、どうしてもリスクがあって誘発したほうがリスクを下げられるというケースが産科学的にあります。そういうケースに関して、無痛分娩をやるべきなのか、やらないべきなのかということです。結論から言いますと、リスクは変わらない。要するに、無痛分娩をやるから、分娩誘発のリスクが高まるということはないというのが、世界的なメタアナリシスとか、そういうことをやられた結果として、現時点としての認識ということになります。ですから、そういうような状況で無痛分娩と子宮収縮薬の関係というのは認識されていることになります。
今回のPMDAでまとめていただいた調査については、先ほどそういう観点で非常にいろいろ懸念をお持ちいただいた上で、副作用報告を御検討いただいたかと思いますが、先ほど石渡先生から御指摘がありましたように、新たな注意喚起を行うべき合理的な理由はないのですよという御結論になっているようです。私が理解できないのは、それも調査に基づいて結論を出すとすれば、今回、添付文書に「無痛分娩時を含め」という文言を追記することの合理的な根拠がどこにあるのかというのがよく分らなかいというのが正直なところです。
もちろん、御指摘がありました専門委員の、無痛分娩時には過強陣痛を疑う要素である母体の痛みが緩和されるということは事実です。もちろんそれを目的として無痛分娩を行っているわけですから、それは事実ですが、その結果として、例えば強い陣痛を結果的に起こしているのか、あるいは陣痛促進剤、子宮収縮薬の投与量が無痛分娩をやっていない場合とやっていない場合で投与量が違うのか、これは違うかもしれませんが、我々はこのデータを持っていないのが今の現状です。
ですから、もし、陣痛促進剤、無痛分娩時にオキシトシン、プロスタグランジンの投与量が多くなるという話であれば、それは非常に大きな問題なので、それはもっと強い表現で注意喚起する必要がある問題だと思います。ただ、今回のそういうデータがない所で「無痛分娩時を含め」というのは、無痛分娩時はより危険だという意味でもないようにも思えるので、そういう表現をあえて追記されることが妥当なのかどうかについては疑問を持ちます。もし必要ならばもっと強い表現で、それはもっとエビデンスが必要だということになりますので、今の段階で、もっと私どもの調査というか、研究がまだ限られた範囲でしか行われていなくて、その結果として十分なエビデンスを御提供できていないというところがありますので、その辺を何とかしなければいけないという認識ではおります。
あと産科診療ガイドラインのお話が、先ほど石渡先生から出ておりました。無痛分娩時は、子宮収縮薬を使わない場合でも、一時的に強直的な子宮収縮が起きて、胎児心拍が減少することが観察されます。これは一過性のもので必ず戻るものですから、それは承知の上で使っている。投与して観察して、それを実際やるのですが、そういうことの現象があるものですから、無痛分娩時に関しては、胎児心拍モニターに関しては、連続モニタリングということに、これは大分前から診療ガイドライン、実際には、2011年から胎児心拍モニターに関しても、診療ガイドラインに掲載するようにしたのですが、その段階から連続モニターということで、実際に進めているという現状があります。ですから、胎児心拍、子宮収縮の状態を十分に監視することについて注意喚起というのは、既にもうなされていて、これはオキシトシンの問題や子宮収縮薬の問題だけではなく、無痛分娩の問題として我々は認識しております。今回、子宮収縮薬の添付文書の中で、あえて書いていただくことの意味が、先ほども申し上げたような理由で、根拠が余りないなと考えております。むしろ、診療ガイドラインにも書いてありますが、もっと使用実態を知るとか、実際の診療の状況をより詳細に調べた中でもっと適切な問題、課題を抽出した上で、必要ならば改訂していただくということでお考えいただくとよろしいのではないかというのが私の意見となります。以上です。
○五十嵐座長 ありがとうございました。お二人の意見はほぼ共通しているのではないかと思いましたが。それでは、委員の先生方、お二人の御意見に対して、あるいは事務局の方針について御質問や御意見はありますか。いかがですか。
○柿崎委員 無痛分娩に限らず、本剤を投与するときには注意喚起をしなければいけないということですが、「無痛分娩時を含め、本剤の投与に当たっては」という1文が入ったことによって、何か臨床での受取り方は変わりますか。本剤を使うときには十分注意しなければいけないということは、以前から皆さん承知しているところだと思いますが、この1文が加わることによって、臨床医の先生方の受取り方が何か変わったりはしますか。
○海野参考人 実は今、添付文書は全部インターネットを見れば出ているので、国民、患者さんたちはそれを見て知っているわけです。無痛分娩ということを入れることによって、無痛分娩が必要以上に怖いものだとか、そういうような印象を与えかねないという危険もあります。私たち臨床現場においては、そういうことは周知の上でやっているわけで、そのために分娩監視をきちんとやって連続モニターをして、過強陣痛を気を付けているわけですから、あえてここに書く必要は私はないと今の時点では思います。
○五十嵐座長 ほかはいかがですか。
○望月委員 とても複雑というか、無痛分娩をするときの注意喚起と、これが子宮収縮のための薬の注意喚起とが少しクロスしているみたいなところがあって、先生方の御説明を聞いていると、もっともと思うところもたくさんありまして、難しいなと思ってお聞きしておりました。
子宮収縮薬の中に無痛分娩のときの注意喚起が入れられれば、先生方のおっしゃるようなところが到達できるのかなと思ったのですが、これが子宮収縮薬の添付文書なので、そういうところは入れられないとすると、事務局提案のような形で終息させる形になるのかなと思いながらお聞きしておりました。
これが子宮収縮薬でなければ、無痛分娩のための診療ガイドラインをきちんと遵守しながら使うようなことが入れてある添付文書もほかの場合はあるのですが、これが無痛分娩のためのお薬ではないので、それを入れられないなと思いながら、先生方のお話をお聞きしておりまして、私にはそれ以上の判断ができなかったという感じです。
○五十嵐座長 ほかはいかがですか。
○舟越委員 私も望月委員と同じような印象を受けたのですが、社会的背景に無痛分娩をもしこういう形で入れる場合は、例えば、先ほどの副作用の実態調査と研究の結果を、添付文書の副作用の市販後調査の結果と同じような形で、何か入れる形で相殺というか、そういうことはできないのでしょうか。無痛分娩の中での被疑薬の調査結果を入れることはなかなか難しいものなのでしょうか。
○五十嵐座長 事務局への質問ですか。
○事務局 御質問としては、何か論文等の結果を添付文書に書くことがあるかということと承りました。一般論としてお答えすれば、関連の研究等の結果を添付文書に記載することはありますが、今回、無痛分娩に関して、何かそういった論文等が出ている状況ではないかと思います。そういった意味では、うまく該当するものがないのではないかと思われます。
○望月委員 間に「無痛分娩時を含め」ということが入ると、もしかしたら、無痛分娩時が特に強調されてしまうというのが先生方の御心配だと私は理解しております。これを間に入れないで、通常どんな場合でも、このお薬を使うときは、こういう注意喚起が必要だと。このことは無痛分娩時でも同様であるみたいな、そういう書き方はできますか。並行するような。これは警告なので、一番最初の文章なので、すごくインパクトがある文章だとは思うのですが、例えば、今現在の添付文書で、一旦、本剤をこれこれの目的で使用するに当たって、これこれにより、こういうことが起こることがあり、母体、あるいは児が重篤な転機に至った症例が報告されているので、本剤の使用に当たっては以下の事項を遵守し、慎重に行うこと、この後か何かに、無痛分娩時に本剤を使用する場合も同様の注意が必要であるみたいな、そういう書き方は先生方はいかがですか。
○海野参考人 これは専門家の先生方に申し上げるのもあれですが、これは薬の添付文書ですよね。ですから、薬の性質に基づいた話で、無痛分娩というのはまた少し別の医療行為、その状況の中でこのお薬を使うという話なのですが、この注意事項に関しては、要は、無痛分娩では既にそれはやっているというものなので二重になっているのです。無痛分娩のほうでも既に書かれていることを、オキシトシンを使わなくてもそうなのです。そういう状況を考えると、そこに書くことの意味というか、論理的に意味があるのだろうかというのが疑問としてはあります。
○佐藤委員 無痛分娩の実際のプロシージャーというところはそんなに詳しくはないのですが、計画的な出産を促すに当たって、陣痛促進剤の使用というのは必須なのですか。それによって、そちらの頻度を考えたときに、明らかに無痛分娩のほうが、これを使う頻度が高いということであれば、頻度の高いものに対しての薬剤に対する注意喚起は、当然ながら頻度に合わせて上がってくるはずだと思うのですが。無痛分娩の時に、陣痛促進剤の使用を明記した基本的なガイドラインなり、プロトコールなりはあるのでしょうか。
○海野参考人 それは、無痛分娩は別に自然陣痛のときにも行うことがありますし、分娩を誘発している誘発分娩の最中にも行う場合があります。ですから、誘発分娩を行う場合は当然子宮収縮薬は投与されていることになりますし、自然陣痛の場合にはケース・バイ・ケースということになります。
私が申し上げているのは、要は別の医療行為というか、無痛分娩ということを言うのであれば、それは別の話なので、これをオキシトシンなり、子宮収縮薬の添付文書の中で記載する必要があるのかということです。もちろん、高い頻度で実際に無痛分娩の場合に使われるのは事実ですが、そのときはオキシトシンの添付文書と、無痛分娩での注意事項と両方遵守しなければならないのは当然ですが、それはここに書く必要があるのかという疑問はあるということです。
○五十嵐座長 委員の先生方、いかがでしょうか。今までの御説明等を拝聴しますと、これを特出しにすることによって、得るものが一体何なのかという点が非常に大きな問題になるのだと思います。そういう意味で、あえてここに無痛分娩を含めるというのは、言ってみれば当たり前のことなわけです。これは本剤が全ての分娩時に使われるわけで、無痛であろうが、経膣分娩であろうが、使うときは使うわけです。それをあえてここにこの時出すということの意味がどこにあるかということを考えなければいけないかと思っております。そういう意味でも、今のお話を伺っていると、書くことによって、かえって非常に無痛分娩に対する心配が高くなってしまうような誤解を与える可能性があるという石渡先生の御意見も非常に説得力があるのではないかと思いましたが、先生方、御意見はどうでしょうか。
○望月委員 確かに先生方もおっしゃっていたのですが、無痛分娩時と通常で子宮収縮剤でどういう影響があるかというところは、きちんと明確に無痛分娩時での影響と、そうではないときの違いの明確なデータがないと先生方がおっしゃられていたので、今回、実は私もこの内容を見たときに、全部無痛分娩時の症例だけ集めてきて、因果関係がどうであったかという判断をしているだけのデータだったので、これで全て特出しするだけの情報になると考えられるとも私も判断はできなかったところがありますので、先生方のおっしゃることは非常に理解できるなと思います。
○海野参考人 私自身も、この件に問題がないと思っているわけではなくて、いろいろな問題があると思っております。私どもの研究班での議論としては、実際の陣痛促進剤の問題以外に、無痛分娩の硬膜外麻酔の合併症として非常に重篤な事例が出ているのが確かで、これは何としても対応しなければならないということで、研究班の報告書もそういうふうに作ってあるのです。
今回の件も含めて、実態が明らかでない部分が相当ありまして、その辺をもっとしっかり把握して、その上で本当の使用実態に問題がないか、そのリスクを高めている部分がないかということについて、検討した上で本当に書くべきことを書くことを示していかなければいけないのではないかと考えておりました。現時点ではこういう結果しかないので、そこで中途半端な形よりは、むしろ、もっとしっかりとした調査、検討を進めていただくほうがよろしいのかなと考えております。
○石渡参考人 実は先ほどお話があった厚労省の研究班は、3月31日をもって終了しましたが、そのときにいろいろな提言が出ました。幾つかの提言があるのですが、その1つにインシデント、アクシデントを今後とも無痛分娩に関してはより丁寧に全国から収集して分析していきましょう、という流れに今なっております。その分科会が動いているところで、そこで、いろいろな状況がはっきり出てくるのではないかと思っておりますが、現時点で分かっていることは、妊産婦死亡に関しては無痛分娩であろうと、そうでない普通の分娩であろうと変わりがないということで、無痛分娩は非常に危険だという結果は出てこなかったということです。
もう一つは、脳性麻痺についても余り差がないのではないかということも、これはまだ正解が出ておりませんが、大体こういうふうになると予測が付けられるデータは出てきております。まだ無痛分娩に関してはいろいろな情報を集めるところから考えても、まだ不十分の部分がありますので、研究班の中の継続として提言を実施する段階ですから、そこまで少し待っていただいてもいいのではないかと思います。私は決して良いとは全然思っていなくて、これからデータを集めてより良い安全な無痛分娩におけるオキシトシン、あるいは陣痛促進薬の使い方についても専門家としてこれから考えていきたいと思っております。
○五十嵐座長 ありがとうございます。一口に無痛分娩と言いましても、外国、特に欧米では違う状況で行われているわけです。日本では、まだ十分な数にはなっていませんが産科麻酔専門医が増えてきています。成育医療センターには産科麻酔を専門とする麻酔医が3人おりますし、都内の大学病院にもそういう所が幾つかあると思います。しかし、多くの所はそういう専門家ではない方がやらざるを得ない状況で、無痛分娩が行われていることが多いと伺っておりますので、簡単には外国と比較はできません。
ただ、日本も恐らく近い将来、欧米と同じように無痛分娩のニーズは高くなってくるので、産科麻酔医が増えてくるのではないかと思います。そういう意味でも産科麻酔の実態を調査し、ガイドラインとして基準を作ることは、産科の先生方の大きなお仕事ではないかと思います。そういう中で、今回事務局は非常に心配して「無痛分娩時を含め」という文言を入れたらどうかという御提案をされました。今日のディスカッションの中では、今回はあえてこの文言を入れることはしないほうがいいのではないかという意見が多かったと思います。委員の先生方にも御意見を伺いたいと思います。
○医薬安全対策課長 これから先生方に改めて御意見を伺う前に、こちらとしての事情と言いましょうか、考えておりましたことについて、もう一度紹介させていただきたいと思います。資料2-2の2ページの上のほうにある大きな2.「追加の安全対策措置の必要性」です。先ほど先生方からも実際に触れていただきましたが、最初の2行に書いてあるとおり、合理的な理由がないという記載部分があるかと思います。しかしその下も続いており、これら全体で資料2-2が成り立っております。
特に3段落目になるのですけれども、機構のほうで専門的な形での協議、専門委員との間でやり取りをしていった中で、無痛分娩時には過強陣痛を疑う要素である母体の痛みが緩和されるという意見がありました。これについては様々な御専門の中で、個々の医療機関ではきちんとした管理の下で行っておりますから、こういうことは懸念というぐらいのことかもしれません。
一方で先ほど座長からもありましたとおり、日本の場合はまだいろいろな体制があるということも踏まえた場合に、こういった意見について我々としては、やはり少し慎重にと言いましょうか、丁寧に受け止めなければいけない部分もあります。ごく一般に標準的にはさほど心配がないという、現状の御意見を頂いたわけですけれども、ここに書いているような、過強陣痛を疑う要素である母体の痛みというものが、むしろ無痛分娩時にマスクされてしまって、それによって本来気付くべきものが気付かずに何かあった場合にということは、こういった意見を知った以上、我々も非常に気になるところです。そして陣痛促進剤を使う側のほうからのアプローチとして、無痛分娩時についての注意、気付きを、少なからず提供できないかという思いの中で、今回こういう提案をさせていただいている次第です。その点も含めてこの後、また先生方から御意見を頂ければと考えております。
○石渡参考人 確かに無痛分娩の目的は、患者さんのつらい陣痛を和らげるということですけれども、実は無痛分娩の場合だからこそ、余計連続監視と分娩監視装置による子宮収縮の状況と胎児心拍数を見ているのです。それをやっていないのなら別ですけれども、それをきちんとやっているので、あえて無痛分娩ということを書く必要はないというのが私たちの考え方です。
○五十嵐座長 いかがでしょうか。
○柿崎委員 本剤の投与に当たっては十分注意をするということで、無痛分娩に限ったことではないのです。また、無痛分娩に関して違った方法での注意喚起とか、この添付文書とは別に分けるとか、あるいは別の場所に記載するという方法もあるのではないかと思いました。
○五十嵐座長 望月先生、最終的にどうでしょうか。
○望月委員 多分、無痛分娩を施行される先生方は御専門の先生方で、十分ガイドラインも御理解の上でお使いになられているということは、今日の御説明で非常によく分かりました。その上で実は私たちは、添付文書はいろいろな方が見るということを考えたときに、今の事務局の御説明の専門協議の中で専門医の方が御指摘されている、無痛分娩実施中は母体の痛みが緩和されることから、無痛分娩時における陣痛の状況に十分注意するような注意喚起をする必要があるだろうということを踏まえ、「無痛分娩時を含めて」という文言を入れるということは、添付文書を誰が見るかということも含めて考えたときに、私はジェネラルに必要な事項としての注意喚起と捉えられるのではないかと思い、事務局案に賛成させていただきます。
○五十嵐座長 今そうではない意見と、これを残すという意見の2つに分かれているのですけれども、ほかの先生方はいかがですか。伊藤先生はどういう印象でしょうか。
○伊藤委員 私もいろいろとお話を伺いながら、判断に迷っていたのです。そもそもこちらに「無痛分娩を含め」と入れることのデメリットは、余り考えていませんでしたので、安全性のために入れたらいいと思っていたのですが、参考人の先生方のお話を伺って、怖いものだと思ってしまうという辺りが、どのぐらい患者さんのほうに伝わってしまうのかというところが、今ひとつ理解できないのです。それを見て無痛分娩は嫌だと思われるのか、その辺りの程度にもよるのかなと思ったのですけれども、判断ができないのです。
○佐藤委員 先ほど望月先生がおっしゃっていたことと同じです。やはり、なぜここに入っているのか、と思わされます。注意を促すという基本的な考えには賛成ですけれども、もうちょっと自然に読めるように、工夫をされてみてはいかがでしょうか。すぐに解決案が出てくるわけではないのですが、一番最初にこれが入っていると変な誤解を与えないでしょうか。何となく不自然です。もう少し文章を練って、挿入箇所についてご検討いただければ、ニュアンスが変わってくるのかなという気はしました。
○望月委員 専門医の先生方は十分に分かっていらっしゃる情報ではあるのですけれども、例えば警告欄に入れるのか、重要な基本的注意欄に入れるのか、そこはいろいろな御意見があるかと思うのです。やはり無痛分娩実施中の痛みの緩和があるので、陣痛の状況には十分に注意をして把握しなければいけないという、無痛分娩時の過強陣痛をうまく疑うことが少し難しいという理由をどこかに書いて、だから陣痛促進薬を使うときには、更に一層注意をしていただきたいというような、そういう書き方はいかがでしょうか。
○五十嵐座長 石渡先生、今の御指摘は医学的に見て正しいのでしょうか。
○石渡参考人 私の基本的な考え方は、やはり学問、科学ですから、科学である以上はそういう実証をした研究をして、きちんとしたエビデンスを付けて、それからものを言うのならいいのですけれども、そうではなくて、今回のことについても今はどちらかと言うと、無痛分娩の事故がバーッと新聞で報道されて、一般の方も怖いという印象を持った方が多いと思うのです。しかし現場はそうではなくて、いろいろな調査をしてみたら余り差がなかったとか、明らかに無痛分娩が危険だということも出てこなかったのです。私は、警告という欄は非常に重いと思うのです。だから、その中に書き込むことについて私は、いかがなものかと思っているのです。では、どこに書いたらいいかということになると、これから私たちが無痛分娩についての日本における標準的なやり方というのを、だんだん検討を考え、研修も含めて作っていきますから、それまで少し待っていただくことはできないかということです。
○海野参考人 望月先生がおっしゃることも十分理解はできるのですが、それをどこにどのように記載するか、それは何を根拠とするかということがありますよね。我々が一番困っているのは、根拠が余りはっきりしていないところだと思うのです。この添付文書は、それぞれ一文一文いろいろな検討をして、根拠に基づいて書かれているものですよね。ですから、それとはちょっとレベルの違う記載がここに入り込んでくることによる問題もあるのかなという気がしております。そこも含めて、我々ももっとちゃんとしたデータを出さなければいけないと思いますし、しっかりとした根拠に基づいたもので、一番置かれるべき場所に記載されるべきだろうと思います。そういう御検討をお進めいただくのが望ましいのかなと感じました。
○五十嵐座長 今日の議論が簡単にまとまらなくて、申し訳ありません。これだけまとまらないのは、委員の中でも1つの方向性に向かって同意できない状況にあるためと思います。私は座長として、おまとめしたいと思います。私の印象だと、産科診療ガイドラインは現在の日本の産科診療で重みを持っていると思います。少なくとも現時点では、その中には記載されていません。3年後に産科診療ガイドラインの改訂版が作成される予定です。そのときには調査結果を反映して、もう少し踏み込んだ記載ができるのではないかと思います。現時点でこれを書き込むこと自体が、サイエンティフィックでない面があるのではないかという印象も受けております。
ですから私個人は、今回はあえて「無痛分娩を含める」という文言は入れないけれども、日本産婦人科科学会あるいは日本産婦人科医会の先生方が協力して、この点についての調査をしっかりしていただくことが必要と思います。調査により、問題がないというデータが出ればそれを産科診療ガイドラインのほうに書き込んでいただくという作業をしていただきたく考えます。その様な御指摘をさせていただいた上で、今回は「無痛分娩を含める」という文言を入れることは差し控えるようにしたいと考えます。委員の先生方はいかがでしょうか。
○審議官 事務局側から余りああだこうだと言うのも僭越至極ではございますが、今日の御議論は非常に大事な、際どい御議論をしていただいていると思っています。実は、添付文書の改訂の議論は、前にも重要な基本的注意で「使用の有無によらず」ということで、陣痛時にいろいろな注意をしてくださいという記載を追記したときにも、専門の先生方に散々いろいろな御意見を頂いて、議論に議論を重ねてこの書き込みをしたという経緯があります。警告に書くのはさすがに重いというお話は、調査会の先生方にしても迷うところでした。
ただ一方で、今話題になっている無痛分娩が行われる際に、分娩監視をきちんとするというお話は、今日の参考人の先生にも言っていただきました。それを添付文書に書くのか、書くまでもなく、この薬を納入している企業側からも実際にこれを使っている現場に、分娩監視装置を徹底するという注意をお願いして、十分な監視をお願いしますということを言って回ることは、折を見てやることも可能かと思います。あるいは添付文書の記載の中で、幾ら何でも警告は重過ぎるということになったとしても、一応スペキュレーションかもしれませんが、無痛分娩の際の過強陣痛に気付きにくいからこそ、監視装置は必須なのだということについては、今日のお話の中でも明確になっているかと思うのです。そういう意味での徹底をお願いしますということを、現場にお願いしていけるための根拠となる手掛かりになるところを、添付文書の中に書き込めないかというのが、ギリギリのところかなというようにも拝見いたします。
どこの欄に書くかという話については、アプライオリにこれでなければいけないということに固執するわけではないのですが、今日のお話の中でも無痛分娩の際に、これはやはりちゃんとしてもらいたいということを予防的見地から呼びかけても、過大に心配されることにならないようなやり方ができるのかどうかについて、先生方の御意見をお伺いできると、私どもも踏ん切りが付くのです。ギリギリの話ですみませんが、いかがでしょうか。
○五十嵐座長 では、参考人の先生方ですね。石渡先生、どうでしょうか。
○石渡参考人 何回も同じようなことを話しているのですが。今、ガイドラインは3年に1回の見直しで、今度は2020年に出る予定になっています。一方で、私たちも何人かの団体でやっていて、妊産婦死亡の母体安全の提言というのを毎年出しているのです。今回も無痛分娩に関しては、会員への啓発ということで提言を書いてあります。そういう対応はもちろんできるし、会員へはほかの方法で注意喚起ができるわけです。ただ、こういう添付文書というのはすごく重いのです。しかも今は、一般の方たちが御覧になっているのです。薬をインターネットでパッと書けば全部出てきますから、まず警告の辺りからボーンと出てくるのです。それで今、無痛分娩については無用な心配をなさっている国民の方たち、あるいは妊婦の方たちが多いと思うのです。今、せっかくこういう研究班の中から提言を出して、それについて実行していこうというところですから、ちょっとお待ち願えませんかというのが私の意見です。
○海野参考人 私は事務局のお考えも十分分かっているつもりですが、先ほど申し上げたように、その根拠がまず基本として調査されているわけですよね。報告書に、これには合理的理由があるというように書いてないところが。その上で「なお」というのは、ちょっと無理があるなと感じております。あくまでもこれは現状、我々が今解析できたデータの範囲の話です。我々はもっとちゃんとした調査・検討をしなければならないと考えているという立場ですので、ここに書くべきでないと言っているわけではなく、書くには根拠をちゃんとしっかりした上で進められるのがいいのではないかということを、意見として申し上げたということです。
○五十嵐座長 産婦人科の病院やクリニックで、分娩監視装置を付けないでお産をすることは基本的に極めて少数だと思います。もちろん産科麻酔をするときには分娩監視装置を付けるだけでなく、産科の先生たちは非常に注意深く母子をモニターしています。ですから「分娩監視装置を付けてください」と呼びかけるのは、現実的ではないと考えます。このような事件が報道されたことがバックにあるので、注意喚起をしたらどうかというお申出と理解しますが、今日の議論では注意喚起は少し早いのではないかとの御意見が多いと思いました。委員の先生方、それでよろしいでしょうか。
○柿崎委員 「無痛分娩時には過強陣痛を疑う要素である母体の痛みが緩和されることがあるので、分娩監視を十分に行う」という文言自体は間違いではないわけですよね。
○石渡参考人 間違ってはいないのですけれども、あえて書く必要はない。
○柿崎委員 警告欄に書くわけでなく、どこかに入れたいのであれば、また違った所に。
○石渡参考人 それはこれからいろいろなエビデンスが積み重なって出てきた時点で、どこに書くのが一番適切なのか、あるいは警告欄に書かなければいけないのか、禁忌に書かなければいけないのか、説明のどこに書けばいいのかということを判断していくということでよろしいのではないかと思います。
○五十嵐座長 委員の先生方、よろしいですか。
                                  (異議なし)
○五十嵐座長 では、今回は陣痛促進剤の添付文書に「無痛分娩時を含め」という文言を加えることはしないと。それと同時に学会のほうには、この分野の研究を是非進めていただいて、次のガイドラインに反映するようなエビデンスを出していただきたい、ということを要望したいと考えております。よろしいでしょうか。このような方向でまとめさせていただきたいと思います。ありがとうございました。では、今後の予定について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○事務局 御意見ありがとうございました。本日の結果ですが、本日御提案申し上げた改訂案については、エビデンスの収集を待ってから再度検討すべきという御意見と承知いたしましたので、学会・医会の先生には今回の提言にもあったインシデント、アクシデントの検討等を引き続き進めていただきつつ、そちらで出てきたエビデンスを踏まえてのガイドラインの検討の状況等を踏まえ、添付文書の改訂については機が熟したら行うという形にさせていただければと存じます。
○五十嵐座長 では、そのような方向でよろしくお願いしたいと思います。今日の予定はこれで終了ですけれども、事務局から何かありますか。
○事務局 御議論いただき、ありがとうございました。本日の議事録については、後日送付させていただきますので、内容の御確認をお願いいたします。なお、御確認いただいた後は、厚生労働省のホームページに掲載いたしますので、よろしくお願いいたします。
○五十嵐座長 では、これで終了したいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 

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