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2018年5月16日 平成30年度第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会

医薬・生活衛生局 医薬安全対策課

○日時

平成30年5月16日(水)14:00~


○場所

厚生労働省専用第22会議室


○議事

○医薬安全対策課長 それでは、定刻になりましたので、平成30年度第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催いたします。本日の御出席の委員、参考人の先生方におかれましては、大変暑い中、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日の調査会は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入る前までとさせていただいておりますので、御理解、御協力をお願いいたします。傍聴の方々におかれましては、静粛を旨とし、喧騒にわたる行為はしないこと、座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うことなど、留意事項の厳守をお願いいたします。

 本日の委員の出欠状況ですが、6名の委員の先生方全て御出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会規程により、本日の会議は成立することを御報告申し上げます。また、本日、参考人といたしまして、国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部部長の石井先生、日本大学医学部精神医学系主任教授の内山先生、福岡看護大学基礎・基礎看護部門基礎・専門基礎分野教授の岡田先生、川崎市健康安全研究所所長の岡部先生、日本医師会常任理事の釜萢先生、東京大学大学院医学系研究科教授の水口先生、自治医科大学名誉教授・両毛整肢療護園の桃井先生、山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座教授の山縣先生、ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口先生に御出席いただいております。本日、御欠席の参考人の先生方、日本薬剤師会副会長の乾先生、木原記念横浜生命科学振興財団理事長の大野先生、東京医科歯科大学大学院器官システム制御学講座心肺統御麻酔学教授の槇田先生にも、本日の資料の御確認を頂いております。参考人の先生方も、参考人ではございますが、ほかの委員の先生方と同様に御発言、御議論を頂く形で、本日は御議論をお願いいたします。

 それでは、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。以後の議事進行は五十嵐先生にお願いいたします。

○五十嵐座長 ありがとうございました。では、議事に入りたいと思います。今日は、参考人の先生方にたくさんおいでいただきました。よろしくお願いいたします。まず、事務局から、審議参加に関する遵守事項につきまして、御説明をお願いいたします。

○事務局 議事参加について御報告いたします。本日御出席の委員及び参考人の方々の過去3年度における関連企業、対象品目及び競合品目の製造販売業者からの寄附金、契約金等の受取り状況を御報告いたします。本日の議題に関して、競合品目、競合企業については、事前にリストを各委員、参考人の先生方にお送りして、御確認いただいております。遠藤委員より中外製薬株式会社より 50 万円以下の受取り、柿崎委員より塩野義製薬株式会社より 50 万円以下の受取り、望月委員より中外製薬株式会社より 50 万円以下の受取り、内山参考人より第一三共株式会社及び塩野義製薬株式会社より 50 万円以下の受取り、岡田参考人より第一三共株式会社及び塩野義製薬株式会社より 50 万円以下の受取り、岡部参考人より第一三共株式会社より 50 万円以下の受取り、山口参考人よりグラクソ・スミスクライン株式会社及び中外製薬株式会社より 50 万円以下の受取りと申告いただいたほかは、受取りの申告はございませんでした。よって、全ての委員におかれまして、意見を述べ、議決にも加わることができるとともに、全ての参考人におかれましては、意見を述べることができます。これらの申告についてはホームページで公表させていただきます。

 続きまして、事務局より、所属委員の薬事分科会規程第 11 条への適合状況の確認結果について報告いたします。薬事分科会規程第 11 条においては、委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならないと規定しております。今回、全ての委員の皆様より薬事分科会規程第 11 条に適合している旨、御申告いただいておりますことを御報告いたします。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。審議参加に関する遵守事項、薬事分科会規程第 11 条への適合状況の確認結果の御報告は以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございました。今、事務局から説明がありました、審議参加に関する遵守事項につきましては、皆さんよろしいでしょうか。では、特に御異議はないようですので、競合品目と競合企業の妥当性を含めまして、御理解を頂けたと判断したいと思います。続きまして、事務局から今日の配布資料の確認をお願いいたします。

○事務局 配布資料の確認をいたします。議事次第の裏面に配布資料一覧がございますので、こちらを御覧いただければと思います。委員、参考人一覧と資料1、資料2、参考資料が1~4までございます。また、委員、参考人の先生方、机上には資料1で示した報告書(案)に関する文献と座席表を配布しております。以上です。漏れ、乱丁等ございましたら、お申し出ください。

○五十嵐座長 皆さんよろしいでしょうか。それでは、早速、議題に入りたいと思います。まず、議題1は「抗インフルエンザウイルス薬の安全対策について」を審議したいと思います。資料の説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、御説明させていただきます。まず、今回の調査会の趣旨は、抗インフルエンザウイルス薬の安全性については毎年この安全対策調査会で秋頃に御審議いただきまして、その前のシーズンの副作用報告などを基に、次のシーズンの安全対策の在り方というものを御議論いただいております。今回の調査会では、参考資料1にも御用意しておりますが、平成 21 年にこの安全対策調査会においてタミフルと異常行動等との関連について報告書をまとめていただいておりますが、そこから約 10 年が経過して新たな知見も集まってきたということで、改めてその蓄積されたデータを基に、今後の抗インフルエンザウイルス薬全体の安全対策の在り方というものを御審議いただきたいという趣旨です。では、資料1の御説明をさせていただきます。

 資料1は、先ほど御紹介した平成 21 年当時の報告書をアップデートするような形で、ここ 10 年近くの知見をまとめております。全部を説明しますと大部になりますので、まずは前半と後半に分けて、前半の部分の 11 ページの疫学研究の手前までを御説明して、そこまでを、まず御審議いただければと思っております。資料1の1ページ目から御説明いたします。

 1番の所です。先ほど申し上げましたように、過去に作った報告書はタミフルが中心に書かれておりましたので、今回もタミフルを中心にということで、1番の「品目の概要」の所にはタミフルの情報を記載しております。

 2番、「これまでの経緯」です。タミフルは、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の適応を有する経口薬です。その注意喚起については、まず精神・神経症状について因果関係は明確ではないものの、医療関係者に注意喚起を図るという観点から、平成 16 年5月に、添付文書上の「重大な副作用」の欄に、異常行動を含む精神・神経症状というものが追記されております。その後、平成 19 年2月にタミフルを服用した中学生が自宅で療養中にマンションから転落死をするという事例が、2例大きく報道されたということがありまして、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、タミフルの処方の有無にかかわらず、自宅において療養を行う場合、1つ目として、異常行動の発現のおそれについて説明をすること、2つ目として、少なくとも2日間、1人にならないよう配慮することを患者及び家族に説明するよう、医療関係者に注意喚起を行っております。その後、平成 19 年3月に、添付文書の「警告」の欄に、 10 代の患者にはハイリスク患者と判断される場合を除き、原則として、使用を差し控えるということを追記するとともに、緊急安全性情報を配布しまして、更に医療関係者の注意を喚起するよう製薬企業に対して指導が行われております。

 2ページ目を御覧ください。四角の下の「その後」からの所ですが、その後、タミフルの服用と異常行動、あるいは突然死との関係については、先ほど御紹介した参考資料の報告書になりますが、当時の安全対策調査会、それから、その下に設置された基礎的な論文等を御議論いただく基礎ワーキンググループ、臨床の論文等を御議論いただく臨床ワーキンググループといった形で、別途設置されたワーキンググループで平成 21 年6月に、参考資料1にある報告書が取りまとめられました。その当時の検討結果としては、それ以前に、先ほど申し上げたように注意喚起を行っておりました、 10 代の使用の差し控えを含む安全対策措置を継続することが適当とされております。

 その報告書の概要を、次の四角の中に記載しております。簡単に御紹介いたします。まず、1つ目の○ですが、廣田先生の研究班の疫学調査において、タミフルの服用者と非服用者の間に統計学的な有意差はなかったものの、タミフル服用者のほうが非服用者よりもリスクが高いといったデータが出ておりました。一方で、そのデータの収集、分析にかかわる様々な調査の限界があるということで、その疫学調査の解析結果のみでタミフルと異常行動の因果関係に明確な結論を出すことは困難であると判断されております。

 それから、2つ目の○ですが、廣田先生の研究、あるいは今日も報告書の中に入れさせていただいておりますが、参考人としてもお越しいただいている岡部先生の研究班で行った疫学調査の解析によりまして、タミフル服用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴い発現する場合があることが明確になったということ。

 3つ目の○ですが、平成 19 年3月に予防的な安全対策を取ったことを踏まえて、安全対策については、その後、その当時は、転落、飛び降りによる死亡等の重篤な事例は報告されていなかったということから、一定の効果が認められた。一方で、 10 代の予防的な安全対策を変更する積極的な根拠も得られていなかったということで、現在の安全対策を継続することが適当という判断が当時されております。

 3ページ目を御覧ください。続きの4番目の○ですが、タミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬についても、同様に異常行動等に関する注意喚起を継続することが適当であるとされております。

 最後に、厚生労働省等は、引き続き因果関係について情報収集に努め、必要な対策を行うべきというように報告書はまとめられておりました。その続きですが、その後、先ほども簡単に御紹介しましたが、安全対策調査会では、シーズンごとの異常行動の副作用報告の状況、あるいは、その当時以降、ずっと継続していただいています岡部先生の研究班の疫学調査の結果等を報告させていただいておりまして、各安全対策調査会において現行の注意喚起を継続することが妥当と判断されました。

 昨年秋の調査会、平成 29 11 月9日のものでは、注意喚起の方法について先生方より御指摘いただきまして、より具体的な説明を行うことの必要性が指摘されました。その御指摘を受けまして、玄関及び全ての窓の施錠を確実に行う、あるいはベランダに面していない部屋で療養を行わせるなどといった具体的な注意喚起の例について周知を行ったところです。この周知については、今回参考資料3として、昨年 11 27 日に当方からプレスリリースを行った資料ということで参考資料をお付けしております。

 資料1に戻っていただきまして、3ページ目の続きですが、なお書きの所ですけれども、これまでにタミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬について、 10 代の使用の差し控えといったような安全性対策措置は取られていないという状況で、添付文書上の「重要な基本的注意」の欄に、異常行動に関する注意喚起が記載されているという状況です。

 少し飛びますが、具体的な添付文書上の注意喚起の現状を御説明いたします。資料1の最後の辺り、 24 ページにある別添1を御覧ください。別添1の横表です。現在、市販されている抗インフルエンザウイルス薬として、タミフル以外にも、リレンザ、ラピアクタ、イナビルがあります。最近承認されたゾフルーザについては、ここには記載していませんが、ゾフルーザについてもリレンザ、ラピアクタ、イナビルとほぼ同様の注意喚起を行っているという状況です。タミフルは先ほど申し上げたとおり、「警告」の欄に、 10 代以上の未成年の患者においては、原則、使用を差し控えるということ、それから、異常行動に関する注意喚起が記載されています。一方で、リレンザ、ラピアクタ、イナビルに関しては、「重要な基本的注意」の項目に、タミフルでいう「警告」の後段に当たる所、異常行動の注意喚起について同様の文言で記載されているという状況です。

 資料は元に戻っていただきまして、3ページの下のほうの3番、「抗インフルエンザウイルス薬の使用実態等」の所に進みます。まず、(1)抗インフルエンザウイルス薬の使用指針です。現状、日本感染症学会から出されておりますガイドラインでは、4ページの表1の所に使用指針をまとめておりますが、入院管理が必要とされる患者あるいは外来治療が相当と判断される患者に対して、どういう抗インフルエンザウイルス薬を使えばよいかということが定められております。

 続いて、4ページの下半分ですが、それぞれの抗インフルエンザウイルス薬の処方患者の推計です。 2016/2017 シーズンのもので推計を記載しておりますが、タミフルについては、全年齢層では約 300 万人程度で、 10 代の使用を差し控えているということもありまして、 10 19 歳では約 10 万人にとどまっているという状況です。抗インフルエンザウイルス薬全体で見ると、表がページをまたいでいて恐縮ですが、5ページの上に記載があるイナビルの約 475 万人というのが人数的には一番処方されているという状況です。

 5ページの4番、「欧米の添付文書」です。欧米のタミフルの添付文書について御説明いたします。そこでは、タミフルの使用時に異常行動が報告されていること。また、精神症状についてはタミフル服用の有無にかかわらず、インフルエンザに随伴する症状であること。それから、患者を観察すること及び精神神経症状が生じた場合に、個別の患者ごとにタミフルの継続のリスクとベネフィットを評価することなどが記載されていますが、日本とは異なり、欧米で 10 代での使用の差し控えはされていないという状況です。参考として、この資料の最後、別添2に欧米の添付文書の関連の記載を付けております。

 5ページ、5番、「国内の副作用報告の状況」です。これは製造販売業者からPMDAに報告されている国内の副作用の報告の状況です。5ページの下の表3 - 1から6~7ページにかけて、それぞれシーズンごとの件数、あるいは年齢別、性別、最初の投与から異常な行動の発現までの病日数によって統計を取っております。その集計の結果としては、 10 歳未満あるいは 10 歳代での報告が他の世代に比べて多いこと。それから、女性に比べて男性のほうの報告が多いこと。また、異常行動の発現までの病日数は、最初の投与から第2病日までの間であることが多いという傾向が見て取れるかと思います。

 7ページの6番、「非臨床試験等」の項に移ります。非臨床試験に関しては、平成 21 年当時の検討結果としては、異常行動や突然死などとの因果関係を直接的に支持するような結果は得られていない。また、タミフルは、突然死に結び付くような循環器系の影響を有することを示唆する結果は得られなかったといったような結果として取りまとめられておりますが、それ以降に出された文献等を中心に今回はまとめております。

 まず、(1)体内動態です。7ページに記載しているのがラットに関する文献ですけれども、タミフルを静脈内投与したときの脳への分布ということで、新生児の分布が最も多く、成長に応じてその分布量が減っていくという論文があります。8ページ、一番上がサルの論文です。こちらも静脈内投与ですけれども、幼若動物及び思春期動物では、成熟動物よりも高い脳内の最高濃度になっているという報告です。

 続いて、1行空けて、今度はヒトでの報告です。実際にタミフルを服用された後に転落事故を起こして亡くなられた小児の方の血液を使った研究です。この結果としては、タミフルあるいは活性代謝物の血中濃度は通常の臨床試験で得られた値と大差なく、代謝異常があったとは考えられなかったというものです。それから、 Suzaki らの論文ですが、これは薬物動態パラメータと、カルボキシエステラーゼの多型との関係を調べたものですが、多型では説明できなかったという論文になっています。

 (2)一般毒性です。ラットに 2.2 mg/kg を反復経口投与をした際に、酸化ストレスや肝障害の存在が示唆されたという論文がありました。一方で、それよりもかなり高用量の 100 mg/kg を長期間、半年間にわたり同じく経口投与した試験もありまして、そこでは肝毒性は認められていないという状況です。その他、臨床試験でも肝障害を示す結果は得られていない状況です。

 続いて、(3)中枢神経系への影響です。具体的な記載は、9ページを御覧ください。こちらはラットに皮下投与をしたもので、一般行動として、中枢神経系への影響がないかというものを観察しておりますが、毒性兆候は認められなかったというものです。

 次のパラグラフ、先ほどのものは皮下投与で、今回のものが経口投与ですが、こちらでも毒性兆候は認められなかったという結果です。これらの結果から、臨床で現れた異常行動がタミフル投与によるものではないということを示唆しているとされています。

 9ページの下の(4)の体温への影響です。1つ目が、ラットへの経口投与のもので直腸体温を調べています。投与直後に統計的に有意な低下は認められましたが、その程度は小さく、用量依存性もないということで、意味のある変化とは認められなかったとされております。次の論文が腹腔内投与の論文です。 100 mg/kg を投与した場合、体温を低下させたという結果もあります。また、下から2行目の Fukushima らの報告では、同じくタミフルの腹腔内投与ですが、 30 mg/kg の投与で、体温の低下は認められなかったという結果になっております。 10 ページ、上のほうに先ほどの体温の低下に関する記載が続きでありますけれども、小児の臨床用量の 50 倍の用量を腹腔内投与したときに現れたというもので、経口投与での副作用と関連するものとは考えられないとされております。

 続いて、(5)呼吸・循環器系への影響です。1つ目のパラグラフはマウス、2つ目からがラットの記載ですが、静脈内投与をした例です。2つ目のパラグラフのラットの静脈内投与ですと、用量依存的に血圧の低下と徐脈が現れたという結果が出ておりまして、高用量である 200 mg/kg では呼吸が停止し、死亡したという結果も出ております。

 次のパラグラフは、「また」以下ですが、こちらも静脈内投与、 100 mg/kg の静脈内投与ですが、これでは横隔神経の放電頻度が一過性に低下した。あるいは 150 mg/kg 以上では、呼吸停止が起きたという結果も出ております。その結果として、中枢神経系の呼吸抑制を起こすこと、また、その呼吸・心臓停止作用が臨床による突然死と関連しているというように著者らは示唆しております。しかし、臨床用量の 15 倍あるいは 50 倍以上といった高用量を静脈内投与した結果ということで、タミフル投与後に現れたインフルエンザ患者の有害事象との関連を示すものではないと考えております。

 最後のパラグラフはイヌの試験です。こちらも臨床の血漿中濃度の 10 倍程度までは比較的安全と思われるが、それ以上では電気生理学的変化を引き起こす可能性があるというように考察されている論文です。

 続いて、 11 ページ、上はイヌあるいはモルモットを用いた試験です。イヌの慢性房室ブロックモデル、あるいはモルモットの心室乳頭筋標本を用いた検討ということですが、イヌのほうは静脈内投与をしても特段影響は起きなかった。モルモットのほうでは、 100 μ M 以上の高濃度では活動電位のVmax、あるいは持続時間に統計的に有意な変化を現したという結果が出ております。

 以上、以下でまとめておりますけれども、心・呼吸器系に影響が現れることというのは、マウス、ラット及びイヌで示されています。一方で、その結果というのが、投与量は小児での臨床用量と比べ高いこと、あるいは静脈内投与の結果であったということもありまして、臨床でのばく露条件と差があるということが言えるかと思います。

 (6)その他です。マウスの静脈内投与の試験ですが、こちらでは電気刺激による筋の収縮力低下は 100 mg/kg では起こさないけれども、d -tubocurarine で筋弛緩の回復を遅らせるという報告があって、ニコチン性アセチルコリン受容体阻害作用によるというように考察されています。このような結果が出ておりますけれども、投与方法が臨床と異なる静脈内投与であることなどから、この臨床的意義は不明であるという結論になろうかと思います。

 最後、(7)非臨床試験等のまとめということで、ここまでで御紹介してきました論文のまとめを記載しておりますが、タミフルの作用に関して現時点においても異常行動、あるいは突然死などとの因果関係を直接的に支持するような結果は得られていないというまとめにしております。以上、少々長い御説明になりましたが、ここまでの御審議をお願いいたします。

○五十嵐座長 抗インフルエンザ薬の使用実態とタミフルの非臨床試験あるいは薬物動態等を詳しく説明していただきました。 11 ページまでですが、これにつきまして御意見、御質問を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○山口参考人 私は患者の立場で活動してきている者です。このタミフルについて、 11 ページのまとめということで、現時点においても異常行動や突然死などとの因果関係を直接的に支持するような結果は得られていないというご説明がありました。今、タミフルだけが警告ということで、 10 歳以上の使用は差し控えるということになっていますが、いろいろお聞きしてみますと、ほかの抗インフルエンザ薬でも同じように異常行動が起きている、そして薬を使わないインフルエンザの患者でも異常行動が起きているというようなことは余り一般的に知られていないのではないかと思っています。そういう一般的に知られていない中で、なぜタミフルだけが警告扱いになっているのかというのを、もし経緯がありましたら、まずそれをお聞きした上で意見を述べたいと思います。

○医薬安全対策課長 貴重な御意見をありがとうございます。先ほど資料の紹介をさせていただきましたが、平成 19 年時点でタミフルを服用した中学生が療養中に転落死するという痛ましい事故が起きたということが発端にはありますが、この頃の状況ということで申し上げますと、抗インフルエンザ薬で日本国内で一番ドミナントに使用されていたのがタミフルであったこと、もう一種類はその当時はリレンザであり、2つしかなかった。当時の市場の状況から見ますと、リレンザの使用よりもタミフルのほうが圧倒的に多い状況であって、当時は疫学的な部分での分析というものは十分に行われている状況ではないという中で、やはり安全サイドに立てば、見ている現象からするとタミフルを飲んでいる方が圧倒的に多くて、その中で起こった事故ということですので、やはり予防的な安全対策という観点からすれば、当時主に使われていた薬であるタミフルというものに対して、最も重い形での注意喚起をするといった安全対策が求められた状況だったと思います。

 ただ、今、山口参考人からも御指摘がございましたように、この 10 年間の中で抗インフルエンザ薬、またインフルエンザに対する治療のアプローチというものも、様々な手段が出てきているという中で、その中で今起きている現象はどうなのかということを改めて今日は御議論いただきたいということで、本会を開催させていただいたという次第です。

○山口参考人 ありがとうございます。ということは、時代の変化に伴ってこれが変化していないということだと思うのです。1度決めたものがそのまま踏襲されているということだと思います。

 そうすると、ほかの薬を使っても、あるいは薬を使わなくても、こういう異常行動が発生しているということからしますと、そういったことを一般的に知らせていかないと予防することができないのではないかと考えます。だとしたら、タミフルだけを特別に警告にしておくというよりは、他のインフルエンザ治療薬と同列にして更に注意喚起を国民に向けて発信していくことが大事なのではないかと思います。こういういろいろな結果、先ほど 11 ページにあるような、今の段階ではタミフルとの明確な因果関係が分かっていないということも合わせて、それでも起きることがあるのだということを、インフルエンザになったときに、例えば親御さんも、そして 10 歳以上ということは、自己管理ということも中高生ぐらいになると出てくると思います。そういったことを一般的に知らせていくためにも、ある程度同列にした上で情報提供していくということが、今まさに必要になってきているのではないかと思います。

○五十嵐座長 貴重な意見をありがとうございます。そのほかにいかがでしょうか。基礎的な研究成果を主に説明いただいたのですが、薬学の先生方からどなたか御意見はございますか。

○水口参考人 質問でなくて申し訳ないのですが、基礎的な立場からです。7ページ以下に、これまでの研究の結果をおまとめいただいて、非常によくまとまっていて分かりやすいので有用だと思いますが、これはある種のレビューアーティクルになっていると思うのです。その結論は、今後の審議の方向性に非常に強く影響を与えると思うのです。

 少し気になったのは、9ページの中段に、「これらの結果は、臨床で現れた異常行動がタミフル投与によるものではないことを示唆している」と書いてあるのですが、これは論文そのものに書いてあった結論なのか、これをおまとめになった方がそう思ったから書いたということなのか、その辺りを明らかにしていただければと思います。

○事務局 ここの記載は、事務局で先生方と相談して作った記載ということです。ですので、この場で御審議いただいて、修正していただく可能性のある部分と認識しております。

○水口参考人 そうしますと、ある種の論文だと思うのですが、この筆者は誰で、これまでどういう形で内容が吟味されているのかという過程をもう少し教えていただけませんか。

○事務局 まず、それぞれの文献については、今回ドッジファイルに付けております。この個別の文献の内容、サマリーなどをまとめているという状況です。特に、この基礎的な部分については、事前に参考人の大野先生、あるいは委員の伊藤先生、佐藤先生などと御相談し、この記載にさせていただいております。

○五十嵐座長 水口先生、例えば9ページの真ん中の「これらの結果は」以下の1行は、修正したほうがいいという御意見ですか。

○水口参考人 基礎的な論文に対する評価としてはどうかなと。

○五十嵐座長 言い過ぎではないかということですね。

○水口参考人 はい。

○五十嵐座長 変えるとしたら、どのように変えたほうがいいと思いますか。

○水口参考人 この項は削除でよろしいと思います。

○五十嵐座長 薬学の先生方も、それでよろしいですか。そのほかにいかがでしょうか。

○医薬安全対策課長 この資料1は、クレジットは当調査会の報告書となっておりますので、この場で先生方の御意見を頂いて修正いただき、合議した形のものを最終版とさせていただくということです。

○五十嵐座長 そういう方向性で御意見がございましたら御指摘いただきたいと思いますが、ほかにもありますでしょうか。特によろしいでしょうか。それでは、続いて報告書の続きの御説明をお願いいたします。

○事務局  11 ページ以降、7の「疫学研究」以降について御説明いたします。 11 ページから 12 ページの冒頭にかけては、平成 21 年当時の調査の結果のサマリーを記載していますが、先ほど御説明いたしましたので割愛し、 12 ページの四角枠囲みの下から御説明いたします。

 本報告書においては、岡部先生の疫学調査の結果と、平成 21 年当時の臨床ワーキンググループで検討に用いられなかった文献及びそれ以降に出てきた知見のうち、比較的症例数の多い文献、論文についてまとめたものです。

 まず、(1)岡部班の疫学調査です。こちらはインフルエンザ様疾患罹患時に発現する異常行動の背景に関する実態把握を行うため、全国の医療機関に対して調査票を送付し、インフルエンザ様疾患と診断され、かつ重度の異常な行動を示した患者に関する報告をまとめたものです。 13 ページ以降の表4 - 1から表4 - 4にあるとおり、それぞれ年齢、性別、異常行動発症までの日数、発症時期という切り口で集計しております。その結果、これまでの知見と同様、「 10 代での報告が多い」「女性に比べて男性での報告が多い」「異常行動発症までの日数は発熱から2日目までの間であることが多い」「異常行動を発症するタイミングは睡眠から覚醒した直後が多い」という傾向が認められております。

 続いて、 13 ページのイです。抗インフルエンザウイルス薬服用の有無と種類別の集計を表5 - 1、処方数のデータを用いて 100 万当たりの報告数を表5 - 2にまとめております。まとめた表は 14 ページを御覧ください。こちらは一部報告数の少ないラピアクタの全年齢群、あるいはリレンザ及びイナビルの4歳以下の群等では正確な比較は難しいところがありますが、表5 - 2の 100 万処方当たりの年齢層別の報告例数の数値を御覧いただければ、抗インフルエンザウイルス薬の処方の有無または種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現する可能性があるということが見て取れると考えています。

 また、 14 ページの一番下ですが、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無と種類別に異常行動発生までの日数の集計を行っております。こちらも最初の全体の傾向と同様ですが、タミフル服用群の約7割で2日目までに異常行動が発症している、また服用なし群、またタミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬服用群でも同様の傾向という形で集計されております。

 続いて、 15 ページの真ん中の(2)臨床ワーキンググループで検討に用いられなかった文献と、平成 21 年以降の知見についてまとめておりますので、簡単に御紹介いたします。まず、前向き研究の(ア)の文献です。 2006/2007 シーズン、 2007/2008 シーズンにインフルエンザ陽性となった 18 歳未満の患者 345 例を対象とした調査が行われたものです。この中で、タミフル使用後の異常行動の発現が 18 例、リレンザ使用後の発現が 19 例、無治療又はインフルエンザウイルス薬の投与前に発現した症例が 28 例という報告です。

 続いて(イ)です。こちらは最初に御説明した1万人規模の廣田班の疫学調査の同一データを用い、異常行動をせん妄という形で再解析を行うということで、タミフル等と、せん妄、意識障害、熱性痙攣との関係について解析を行ったものです。 16 ページを御覧ください。冒頭ですが、せん妄に関して統計的な有意差は示されなかったものの、タミフル服用後にせん妄のリスクが増大する傾向が認められたとなっております。意識障害に関しても、タミフルのみ有意な関係性が認められたとなっております。熱性痙攣に関しては発生リスクとの関連は認められなかったとなっており、これらの結果はタミフルとせん妄、意識障害の発現の関連を疑わせるものであったとまとめられております。

 こちらの文献については、既に医薬品医療機器総合機構において、専門家の検討も踏まえて評価が行われており、その報告書の中においては、この文献の報告をもって本薬と異常行動との因果関係が明確になったものと評価できないと考えるが、本薬と異常行動の関係については引き続き情報収集並びに評価をしていく必要があると判断したと評価されております。この評価としては、解析が行われたのが、情報収集が行われた1年以上経過したタイミングで、不明点についての照会が困難であった、また、調査票の回収後に異常行動の解釈をせん妄として評価したといったような限界がPMDAの報告書において指摘されているところです。

 続いて、 17 ページの中段の(ウ)の文献です。こちらは成人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験のメタ解析を行ったものです。6つの試験が解析に用いられており、精神神経系有害事象について、タミフル投与群と対象群で違いは認められなかったという文献となっています。

 続いて(エ)の文献です。こちらはタミフルと異常行動との関連性の評価に、自己対照ケースシリーズ手法を適応したもので、先ほど来申し上げている廣田先生の疫学調査の解析で用いられたデータのうち、事故につながったり他人に危害を与えたりする可能性がある異常行動を示した群のうち、 28 名を対象として解析を行ったものです。異常行動に対するタミフルの効果ありの期間と対照コントロールの期間を、それぞれ自己対照で4パターンに分けて解析したもので、最も高いパターンでリスク比が 29.1 を示しています。一方で、この期間は高熱が観察されるインフルエンザの初期と重なっていること、またインフルエンザの発症経過の影響を制御する方法がないということから、インフルエンザ自体による異常行動を否定できないというように著者らは結論付けています。

 続いて、 18 ページのイの後ろ向き研究を御紹介いたします。(ア)診療情報、電子カルテ等を用いた研究のマル 1 の文献ですが、異常行動を主訴として受診したインフルエンザ陽性患者 12 名を異常行動群とし、発熱を主訴としてインフルエンザ陽性となった患者 335 名を対照群とし、タミフルの使用率に関する研究が行われたものです。この結果においては、タミフルの使用率が異常行動群で対照群に比べて有意に低かったという結果となっております。

 続いてマル 2 の文献です。インフルエンザと診断された米国における精神神経系有害事象に関するコホート研究です。精神神経系有害事象の発現状況がタミフル使用群で 3.0 %、非治療群で 3.8 %ということで、タミフル治療群と非治療群で統計的な有意差が認められたとなっております。また、傾向スコアで重み付けしたロジスティック回帰分析の結果、タミフル治療により精神神経系症状の発現について、僅かではあるが有意な抑制効果が認められたというデータとなっております。

 続いて、 19 ページのマル 3 の文献です。こちらは米国の医療費請求データベースを用いた精神神経系有害事象に関するコホート研究です。この精神神経系有害事象を3つのカテゴリーに分類し、ロジスティック回帰分析を行っておりますが、その結果、その全てのカテゴリーにおいてタミフル投与による発現率の増加はないことが示されております。一方、年齢層別の解析においては、 17 歳以下のサブグループにおいて、処方なしと比較してタミフル処方ありで、気分障害エピソードの発現率が有意に高かったというデータも示されております。

 続いて、マル 4 の文献です。台湾におけるウイルス検査のデータベースを用いた研究で、インフルエンザ陽性と確認された 2,651 名の患者のうち、 18 歳未満で中枢神経系機能障害の徴候又は症状を呈して入院した 74 例の患者情報のレビューが行われたものです。痙攣発作等の症状が多く見られているということで、 74 例のうち 17 例でタミフルの投与が行われていますが、これらは中枢神経系機能障害発現後の投与であったという文献です。

 続いてマル 5 の文献です。こちらは米国において、インフルエンザ罹患が確認された 18 万人ほどを対象に、外来患者の電子データを用いてタミフル投与群と非投与群をマッチングした上で、精神神経系有害事象発現との関連性を調べる研究です。その結果、処方後7日目までのリスク期間における初発の精神系事象の絶対リスクは、タミフル投与群で 0.126 %、非投与群で 0.105 %で、オッズ比が 1.21 であったという結果です。

 続いて 20 ページを御覧ください。(イ)副作用報告等の自発報告を用いた研究についてまとめております。マル 1 の文献です。 Roche Global Safety Database を用い、タミフルに関連する精神神経系有害事象についての調査を行ったものです。多く収集された有害事象としては、異常行動が約 25 %であったということ、また 1,805 件ありますが、そのうち約6割において 16 歳以下の患者での報告であったという結果になっております。

 マル 2 の文献です。こちらは米国FDAの有害事象報告システムを用い、タミフルに関連する精神神経系有害事象について、 MedDRA の用語ごとの報告数から報告オッズ比を算出したという研究です。報告オッズ比の高い順に、異常行動、精神及び行動に現れる症状、せん妄、幻覚等であったという結果です。なお、この報告のうち約半数の症例は日本からの報告であったということです。

 続いてマル 3 です。こちらも米国FDAの有害事象報告システムを用い、精神神経系有害事象を対象に、男女それぞれに対して調整オッズ比を算出しているものです。 21 ページを御覧ください。 20 歳以上と比較して 10 代における調整オッズ比が高かったという結果であり、若年の男性患者に対してタミフルが投与される際には、精神神経系有害事象や異常行動の発現に十分な注意が必要であるというようにまとめられております。

 以上を踏まえまして、(3)疫学研究のまとめです。まず、アとして、岡部班調査の前向き研究と後ろ向き研究です。平成 16 年以降、平成 21 年の報告書の結論でも触れておりますが、タミフル服用の有無にかかわらず、インフルエンザ自体に伴い異常行動が発現するということが示されているとしています。一方、タミフルと異常行動との因果関係等については、異常行動の発現率をタミフル服用群が非服用群に比べて有意に低いと示す論文もある一方で、タミフルの服用後にリスクが増大する傾向があることを指摘する論文もあるという状況です。また、これらの報告の中には、異常行動と発熱との関係を指摘している論文もある一方で、時間的情報、あるいは発熱との関係の考察が行われていない、又は行うことが困難であった報告もあるという状況です。一方で、服用後にリスクが増大する傾向を指摘している文献の中で、藤田らの報告については、調査内容の解析が行われたのが1年以上経過した後であり、不明点についての照会ができなかったということ、また調査票回収後、異常行動の解釈をせん妄として評価する旨を定義したこと、また解析対象に異常行動を契機に受診した対象を含んでおり、異常行動発生率が高くなる方向に情報収集されているといったことが指摘されております。また、 Fukushima らの報告におきましても、タミフル服用後に起きる異常行動が発現しやすい期間が、高熱が観察されるインフルエンザの初期と重なっている、あるいはインフルエンザの発症経過の影響を制御する有用な方法がなく、インフルエンザ自体による異常行動を否定できないというように結論付けられております。また、異常行動に関する明確な定義がなく、その解析対象はそれぞれの報告によって様々であり、各報告間の比較が難しいという点にも留意が必要であるとまとめさせていただいております。

 続いて、副作用報告との自発報告を用いた研究です。米国FDAの副作用有害事象報告システムを用いた解析においては、タミフル服用後の異常行動あるいは精神神経系有害事象の報告オッズ比が有意に高いという報告でしたが、自発報告を用いた研究においては、今アでも申し上げたような種々の限界に加えて、報告バイアスが避けられない、今回のもので言うと米国のデータベースというのは、日本からの報告が大部分を占めているといった状況もあり、これらの報告をもってタミフルと異常行動の関係性を明らかにするものではないと考えられるとまとめております。

 ウのまとめとして、以上のことからタミフル服用と異常行動の関係に否定的な報告が多かったものの、様々な交絡因子及びバイアスの存在等、解析の限界から、今回収集された報告をもってタミフルと異常行動の因果関係に明確な結論を出すことは困難と考えられたとまとめております。

 最後の8、「突然死に関する報告」について、1報簡単に御紹介いたします。(1)の文献です。タミフルとリレンザに関する相対死亡率の研究を行ったものです。こちらは抗インフルエンザウイルス薬処方後 12 時間以内の重篤化割合を主要評価項目とし、評価がされております。この文献においては、処方 12 時間以内に重篤化した症例が、タミフル処方で約 119 例中 38 例、リレンザ処方で 15 例中0例、非処方例において 31 例中4例であったというデータから、タミフルが特に処方後 12 時間以内に重篤化を誘発する可能性を示唆するものであったというまとめとなっております。

 なお、こちらの報告についても、医薬品医療機器総合機構において、既に専門家を交えた評価を行っており、この結果をもってタミフルがその処方後 12 時間以内の重篤化を誘発するという結論を導くことができないと評価されております。その報告書の抜粋を二重括弧書きで引用していますが、簡単に申し上げますと、厚生労働省のウェブサイトに公表されている死亡症例に関する情報の大部分が日にち単位の情報であるにもかかわらず、そこから時間単位に分けた検討を行っているということで、日単位の情報を機械的に時間に換算するというような解析では大きな誤差が生じる可能性が高い、また処方時間と服用時間の関係が明確でないということをもって、処方後 12 時間以内の重篤化を誘発するという結論を導くことはできないと評価しているところです。

 以上、「疫学研究」以降について、簡単ですが御説明いたしました。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 資料1の後半の疫学の御説明でしたが、これについて御意見、御質問を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○山縣参考人 今日呼ばれているのは疫学を専門にしているからだと思われますが、きちんとまとめられていると思います。私もここに載せられている論文に関しては目を通させていただきましたが、基本的には大きな間違いはないと思います。その上で、もしもう少し専門的に書くとするならば、まずは研究デザインによってエビデンスレベルが異なってくるので、例えば 17 ページにある(ウ)の Dobson らの研究というのは二重盲検のメタ解析ですので、最もエビデンスレベルの高いものとなっておりますし、一方でケースコントロールスタディのようなものというのは少しエビデンスレベルとしては下がるので、そういうものも考慮しながら考えていく必要があるというのが1点目です。

 それから、様々なバイアスがあるということは全くそのとおりなのですが、もう少し整理していくと、いわゆる選択バイアスと情報バイアスがどのようにこの研究の中に入っているかということです。これまでの廣田班、藤田先生の論文等にも、いわゆる選択バイアスの問題というのが非常にあって、1つは異常行動の定義と判断というものが、グループ分けというのが非常に大きな選択バイアスになっているということと、もう1つは発熱から受診までの期間というものがそれぞれ異なるといったようなことも指摘されているところが問題であると。

 もう1つは、情報バイアスとして、ここにもありますように、投与の時間的な関係、経過といったようなものが、どこまで正確なものであるのかといったようなことが、それぞれの論文において少しずつ違いがあるというために明確な結論を出すことができないようなものが多いということだと思います。全体としての疫学研究に関するまとめとしては、妥当なものではないかと思いました。以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございます。岡部先生は、何か追加はございますか。

○岡部参考人 いや、私は、実に自分の所でやったデータですので、それについてうんぬんではありませんが、ほぼ 10 年間やって、同じような手法でやってほぼ同じような成績が得られているというのは、1つ加えていただいていいことではないかと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。私、1つ質問があるのですが。 13 ページの岡部先生の御報告で、これはずっと 10 代のことがうんぬんされているわけですが、この表を拝見して気付くことは、5~9歳の異常行動を呈した人数です。

○岡部参考人 はい。

○五十嵐座長 5~9歳の異常行動を起こした人数は 290 で、一方、 10 歳代の異常行動を起こした人数は 360 と示されています。これまでは10歳代の異常行動が主に強調されて来ました。しかし、 10 歳未満でも異常行動を起こす人はいるというように理解してよろしいでしょうか。

○岡部参考人 はい。これも毎年の報告ではもう少し細かい年齢別で分けているのですが、実際に生じやすいのは小学校入学前後ぐらいで、男の子に圧倒的に多い。ただ、重症度で言うと、子供たちの場合は、決定的に危ないところまで至るのが非常に少ないということは言えると思います。でも、それは子供たちの動き、強さとか保護者らの観察の度合いによって生じた相違ではないかと考えています。

○五十嵐座長 そうすると、異常行動等はもう少し小さい年齢の、 10 歳よりも小さな年齢の方にも見られると理解して宜しいですね。

○岡部参考人 はい。ですから私たちは、小学校であってもやはり気を付けなくてはいけないということを、インフルエンザの場合の注意として付け加えております。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○桃井参考人 それぞれの多くの研究報告について、今、山縣先生が重要なコメントをしていただきましたが、統計学、疫学の素人としても、全体を拝見したときに、科学的なことだけを淡々と書いてあるレポート、エビデンスレベルが非常に高いと思われるものに関して、その意味付けを書かずに淡々とお書きになっているレポートもあり、例えば 15 ページの(イ)のようにサンプルバイアス、スタディ・デザインにも種々の限界がありながら延々とこれに対して説明が、科学的でない説明も含めて入っているのは非常にバランスが悪く、もう少し全体を科学的な根拠に基づいた説明にとどめるという配慮が必要ではないかと思いました。というのは、これが公開されてお読みになったときに、科学的データよりも根拠がないかもしれないけれども、感想的な文章のほうが一般の方にはより大きく、たやすく受け止められます。そういう受止めバイアスが社会には必ずございます。

 例えば 15 ページの、統計的な有意差は示されなかったもののタミフルうんぬんの服用後にせん妄リスクが増大する傾向が認められる、という箇所、これは科学的に誤った記載です。統計学的有意差は、傾向があるかどうかを見るために見ているわけですから、有意差もないのに傾向が認められたと書くのは、科学的に誤りであると思います。また、次のページの専門委員のコメントもまとまらず内容がつかみにくいコメントなのですが、真ん中辺の「しかしながら、適切に行われた疫学的調査であれば、因果関係についてかなり大きな情報を提供」、の箇所は何のためにこの文章が入っているか分からないのです。このスタディが適切に行われたために因果関係についてかなり大きな情報を提供できるという意図でお書きになったのか。しかし、この様々なバイアスのある限界のあるスタディですから、決してそうは言えないわけです。こういう文章が科学的なデータ、エビデンスレベルと関係なくチラチラと入ってきますと、人々がこれらの情報を見るときに大きくミスリードされるリスクがございますので、もう少し適切な科学的記載をしていただきたいと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。細かい点では直さなければいけない点が多々あるという、そういう御指摘ですが、全体としての評価としては、桃井先生、いかがでしょうか。

○桃井参考人 その部分を適切な書き方にしていただければと思います。

○五十嵐座長 記載をですね。

○桃井参考人 はい。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○佐藤委員 ちょっと気になった点があります。 20 ページの Hoffman らの報告で、報告症例のうち半数が日本からの報告だと書いてあるのですが、これは恐らく母集団をどこに取るかによってその結果、何を導き出すかというところが変わってくるのかなという印象をちょっと受けております。今回の報告書でもどのデータベースを使った結果なのかということを分かりやすく整理し、国内・国外、全世界的にはこうだというような形で整理していただけたほうが理解がしやすいのではないかと思いました。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○水口参考人 1点だけ、また非常に細かい記載の指摘なのですが。 21 ページの真ん中辺の文章に「一方、藤田ら、 Fukushima ら、 Greene らの報告ではタミフルの服用後にリスクが増大する傾向があることを指摘している」と書いてあります。その藤田らと Fukushima らは納得したのですが、 Greene らの報告を 19 ページの下段のほうで読んでみると、ここに書いてあることでは1つも有意差は出ていないので、そういう結論にならないのです。もし Greene らがまた別の根拠に基づいて下げる傾向があったと言っているのだったら、それを追加していただいて 21 ページはこのままでいいと思うのですが、そうでなければ、 21 ページから Greene らを削除したほうがいいのではないかと思いました。

○五十嵐座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。

○石井参考人  21 ページに「なお、異常行動に関する明確な定義はなく、その解析対象は報告によって様々であり、各報告間の比較は困難である点にも留意が必要である」ということが書かれています。拝見しますと、確かに異常行動として何を見ているかが報告によって違う。その頻度を相互に比較することができないというのは御指摘のとおりかと思いますけれども、異常行動の中でも、軽症のものを対象にしているもの、より重篤なものを対象にしているものといった形で整理する必要はないでしょうか。

○岡部参考人 私たちの報告では放っておくと生命を脅かすような、例えば飛び下りそうな寸前とか、あるいはちょっと飛び起きただけの、重いのと軽いのという形では分けてあります。その結果としては、結論として余り変化がない。つまり、両方とも同じような行動が起きているというのは出ています。ただ、重度のほうが分かりやすいというような形で、説明には重度のほうを前面的によく出しておりますが、軽症でも同じような傾向です。

○事務局 事務局よりお答えいたします。今、岡部先生からも少しコメントがございましたが、岡部先生の研究班では異常行動の中でより重篤なものとそうでないものという区別がなされているので、そこは報告書の中でもある程度分けさせていただいているのですが、そのほかの文献につきまして、どの程度のものなのかというところが文献上、明確に区別できるものに限界があるというようなことも踏まえて、こういった形で比較が困難であるというようにまとめているところです。

○望月委員 すみません、とてもたくさんの情報を基礎から臨床にわたって集めていただいて、客観的に分析をしていただいた報告になっていると拝見したのですが、その上で幾つか確認をさせていただきます。まず、前回の平成 21 年の報告のときは基礎系のワーキンググループと臨床系のワーキンググループに分けて、それぞれそこに関わっている方々が、基礎系のデータについては、基礎系のワーキンググループに関わっている方々が、自分たちで非臨床試験をなさってデータを出されたという理解でよろしいでしょうか。

○事務局 平成 21 年当時の調査におきましては、一部の基礎的な実験について、製造販売業者に試験を求めて、その結果を先生方に御評価いただいたというような形かというように理解しております。

○望月委員 なるほど、製造販売業者さんが厚労省から要求されたデータを出されてということで、今回はそれだけではなくて、様々な研究論文を集められてレビューを書かれたという理解でよろしいですか。

○事務局 御指摘のとおりです。

○望月委員 前回の基礎系ワーキンググループのときのデータの取り方と今回の非臨床などは大分、データの取り方が違っていて、前回は結構、脳に集中的にいろいろなことをされていて、今回はもう少し違う形で非臨床のデータをまとめられているという印象があったので、そこはきちんと網羅的に論文が集められて、それがレビューされているのかどうかという点を確認をしたかったという点が1つです。

 それから、それは同じことが臨床のほうのデータにも言えて、疫学研究をたくさん集めていただいてあるのですが、それが先ほど山縣参考人がおっしゃっていた、エビデンスのレベルの高いものだけを取り上げたとか、どういう交通整理をしながらこのデータとして集められたのか、その辺りについてちょっと御説明をお願いしたいと思います。

○事務局 今回集めた論文については、通常の安全対策でもそうなのですが、製造販売業者が安全性に関する論文を随時集めているという状況もありますので、そこで挙がってきているものを基本的にはここに載せています。また、疫学部分で申し上げますと、例えば1例、2例を基に何かしら記載のある論文はここには載せておりません。ある程度の数の調査をしたものに限定して載せているという状況で、先ほどの山縣先生の指摘のエビデンスレベルのところまでは、それによって切り分けをしているというものでは、現状ございません。

○望月委員 確認をしたかったのは、取り分け何かセレクションを掛けて選び出しているということがなく、そういう意味では、科学的な配慮をした上で選び出しているという理解でよろしいですね。

○事務局 はい。

○医薬安全対策課長 補足をさせていただきます。特に前回の基礎のワーキンググループのときの議論では、血中濃度、脳内での未変化体の濃度がどうなのかということが大きな議論になりました。特にその部分についてフォーカスを当てた形で製造販売業者にデータを出していただいたという経緯がございまして、ある程度こちら側から、要するに、出すべきデータを指示した形で出させていただいています。それで、それ以降、平成 21 年以降の状況から言いますと、その議論については、一旦そこで議論がされたということで、特段、こちらから何か新しい基礎実験をするような形の指示はメーカー側にはしてございませんので、以降、今回までに集められている論文は、企業とか、そういった関係ではない方々が自発的に行われている研究論文を一応、くまなく見渡した上で収集させていただいているものという、そういう整理です。

○五十嵐座長 よろしいですか。

○望月委員 はい。

○五十嵐座長 ほかはいかがでしょうか。

○岡田参考人 基礎的論文から臨床的な論文まで、まとめていただきまして、どうもありがとうございました。参考になりました。論文全体の記載の仕方です。これは先ほど桃井先生も言われたこととも関連すると思いますけれども、今回ご紹介いただいた論文を、多くの雑誌の原著論文にあるアブストラクトのような記載の仕方ができないでしょうか。例えば、目的、方法、対象、結果、結論、それから、リミテーションがあるのだったらリミテーションというように、記載の仕方をある程度統一されると、見ている者にとってみると少し分かりやすいかなとは思いました。御検討いただければと思います。

○五十嵐座長 複数の論文が出ていますから、それを比較する上では、そういう表示の仕方は読むほうにとっては有益ではないかと思います。

 それから、山縣先生がおっしゃいましたが、特に疫学研究の場合はエビデンスレベルの評価を今、コクランレビュー等でやっておりますので、そういうものにのっとった1つの基準で、どの程度のエビデンスレベルなのかということをレビューしたものも示してもいいのかもしれないです。それも御検討いただけるといいのではないかと思います。何かありますか。

○医薬安全対策課長 いろいろと御指摘を頂きまして、ありがとうございます。このレポート、本日、案の形で出させていただいてございます。今日頂きました御指摘を踏まえまして、項目立ての所を全部直すとかなりの作業量になりますので、そこはある程度統一性を持たせるという形で対応させていただこうと思います。今日頂いた御指摘で科学的な記載の部分でより正確に書かせていただくとか、一部、事実関係の中で違っているものを修正する、その他の修正も含めて、また事務方で整理させていただいて、また修正したものを次回の会合でこちらに御提出させていただくような形で作業をさせていただこうと思っております。

○五十嵐座長 ありがとうございます。それでは、資料1の報告書についてはほかに何か御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、全体の評価としては結構だが、個々の研究に対する評価について、例えば、非常に詳しく評価が記載されているものや簡単に評価されているものなど、濃淡があるので、これらについて修正して、まとめ直していただくということにしたいと思います。少し大変だと思いますが、是非よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、資料2の御説明をお願いしたいと思います。

○事務局 それでは、資料2の御説明をさせていただきます。資料1の報告書につきましてはいろいろと御意見を頂きまして、ありがとうございます。その報告書の方向性についてはおおむね了承いただいたのかなと思っておりますが、その報告書の中から資料2の1番「これまでの経緯」あるいは2番「平成 21 年以降の新たなデータ」という所を抜粋して今、記載させていただいております。

 簡単に御紹介だけさせていただきますと、1番の「これまでの経緯」の所は、1つ目が、平成 19 年当時の異常行動あるいは 10 代使用差し控えに関する注意喚起の話を記載しております。2つ目の○が平成 21 年の報告書をまとめた当時の話です。3番目の○がその後、その安全対策措置は変わっておりませんが、現状のタミフルの添付文書あるいはそれ以外の抗インフルエンザウイルス薬の添付文書の状況を記載しております。

 2番の「平成 21 年以降の新たなデータ」の所は、先ほどの報告書の構成と同様に非臨床試験と疫学研究というように分けて、詳細は先ほど御説明したので割愛させていただきますが、それぞれのまとめを記載させていただいております。これらの1番、2番、あるいは資料1の報告書の内容を踏まえて、今回、この調査会にて御議論を頂きたい論点について、資料2の裏側、3番の「論点」の所に、事務局としてこのような論点があるのではないかということで記載させていただいております。ここを御紹介させていただきたいと思います。

 まず、安全対策全体論としまして、1つは抗インフルエンザウイルス薬、これはタミフルに限った話ではないということを前提にですが、抗インフルエンザウイルス薬と異常行動との因果関係が不明であったとしても、これまでどおり予防的な措置として、何らか異常行動に関する安全対策措置を講じるべきかどうかという点です。それから、今回、異常行動にフォーカスをして報告書等も作っておりますが、その他、抗インフルエンザウイルス薬の安全対策を議論する上で検討すべき論点はあるかどうか、そういった点です。

 次に、添付文書上での注意喚起です。1つ目が、タミフルにのみ適用されております 10 代への原則使用差し控え措置を今後も引き続き継続すべきかどうか。そして2つ目が、これは全ての抗インフルエンザウイルス薬に共通ですが、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者、家族に対し説明を行うことといった注意喚起が記載されておりますが、これを今後も引き続き継続すべきかどうかといった点。そして3つ目が、今、申し上げました異常行動に関する注意喚起ですが、現状では、タミフルでは警告欄、その他の抗インフルエンザウイルス薬では重要な基本的注意欄に記載しておりますが、この記載項目が異なるという現状を維持すべきかどうかという点です。

 最後の論点としましては、添付文書に限らない注意喚起という意味で、インフルエンザ罹患時の異常行動に対する注意喚起の在り方として、医療関係者であったり保護者であったりへの注意喚起を徹底するために、具体的にどのような方策が必要であるかといった点です。このような論点が考えられるかと思いますので、これらの点について御議論を頂ければと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございました。それでは、2ページの3の論点のことについてこれから御審議いただきたいのですが、それまでに、その前段階として何か御質問とか御意見はございますか。よろしいですか。では、厚労省から頂いている、ここで論議していただきたい点のリストの2ページの所に入りたいと思います。

 まず、安全対策全体論として、抗インフルエンザウイルス薬と異常行動との因果関係が不明ではあるわけですが、これまでどおり予防的な措置として異常行動に関する安全対策措置を続けて講じていくべきかどうかという点についてですが、まず、これについて御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。厚労省が予防的な措置としての安全対策措置をいろいろと具体的に、最近も出ましたけれども出していますので、最近は飛び降りの事故などの報告は少なくなっているとは思います。それが有効に作用しているのではないかとは思うのですけれども、これについてはいかがでしょうか。

○柿崎委員 インフルエンザ自体にも異常行動のリスクがある、薬剤の服薬の有無にもかかわらずあるということは、これからも続けて広く啓発していく必要はあると思います。それによってこういった事故が減ってきているのが啓発してきたことの成果なのだと思いますので、そういった啓発は続ける必要があるのではないかとは思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。この点はいかがですか。

○釜萢参考人 私も、今、御意見にございましたとおりだと思います。今、検討しているこの一番下の部分ですね、添付文書以外での注意喚起、インフルエンザ一般に対してのきちんとした注意喚起がまず一番大事で、参考資料3にある厚労省のプレスリリースのこういうものを、やはり継続してしっかり出していって、これがマスコミにもしっかり取り上げられて、国民に繰り返し示されるということがまず必要だろうと強く思います。

 抗インフルエンザウイルス薬を使用したことで異常行動が増えるかどうかということについては、今回の検討も踏まえて結論が出ていないわけです。ですから、場合によっては添付文書に書く必要があるのかどうかということも考えられるのですが、抗インフルエンザウイルス薬を使用するのはインフルエンザのときですので、添付文書にこの内容を何らかの形で書いて警告を促すということは継続して必要なのかなと思います。後でまた議論されると思いますが、その場合は、抗インフルエンザウイルス薬は皆、同じように扱ってもよろしいのかなと思います。以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○岡部参考人 研究班として今までの結論から言うと、今までの先生方と同じ意見なのですが、私たちの研究も抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の因果関係を明確にする目的でやったものではないので、ここで因果関係がある、ないという言い方は、当然できないと思います。ただし、インフルエンザそのものによって起きているのとほぼ同等なので、注意としては、今までもある、「薬の有無にかかわらずやはり注意してください」という意味では、投薬時の注意という所は一段とインフルエンザそのものに対する注意喚起にもなると思います。実際、注意喚起をして以降、確かに、いろいろな理由はあると思うのですが、死に至るような重症というのはかなり防がれているように思いますので、それなりの効果は、私は評価ができると思います。

 もう一点は、最近、抗インフルエンザウイルス剤として、これまでとメカニズムが違う薬剤が出てきているので、それについてどういう傾向があるかというのは、できれば継続して調査をさせていただければとは思っております。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○山口参考人 例えば、一時期で終わったことであって、今はもう全くないということであれば、予防的なことは必要ないと思いますが、今、薬を使う、使わないにかかわらず異常行動が一定数発生しているということは、やはりこれは継続してやっていかないといけないことだと思います。特に、先ほど 10 歳未満の子供さんもというお話がございましたけれども、親が注意するということからしますと、対象となる子を持つ親はどんどん先送りになって登場してくるというか、次々と新たな親が出てくるわけですから、こういうことは、やはり言い続けないと浸透しないと思いますので、私も、継続して対策は取っていくべきではないかと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○岡部参考人 抗インフルエンザウイルス薬おしなべてということであって、急にその他の薬も含めて注意喚起のレベルを上げるという意味では私たちはないので、ノイラミニダーゼ阻害薬すべてを同列に扱っていただければという意見です。

○五十嵐座長 ありがとうございます。ではそれも、できれば添付文書に何らかの形で書いていただきたいという、そういうことですね。

○岡部参考人 はい。

○五十嵐座長 この点については、皆さん、ほぼ同じような御意見のようですけれども、それでよろしいでしょうか。

○水口参考人 因果関係と言うと、どうしてもその後があり、なしという話になってきてオール・オア・ナッシングになりやすいのですが、岡部先生たちの研究からも 100 %の原因であるということはほぼ否定的ということで、あとは、リスクを上げているかどうかということで、そこで分かれていると思います。リスクが上がっているにしても 1.3 倍とか 1.5 倍ぐらいだったらいいかなと思ったのですけれども、今回の Fukushima 先生の論文は初回投与から Tmax で上がる間が 29 倍というちょっと衝撃の数字ですので、この論文をどう評価するかということです。

 ほかのタミフル以外の薬と同列にというのも、薬の性質からすれば分かるのですが、でも、タミフルに関してはそういう論文が出てしまっているので、やはりこれをどう考えるか。タミフルに関しては、しかもそこで初回服用から1時間ぐらいがやはり危ないのだということを強く示唆しているわけですから、その情報をやはり何らか伝わりやすい形で、少なくともそれは、ある論文ではそう言っているということぐらいは伝えていく必要はあるかと。そうなると、でも、リレンザその他に関しては、その時間的なタイミングはまだ全然分からないわけですから、それは書けないということで、完全に同じとはやはりならないのではないかというのが私の意見です。

○五十嵐座長 先生は、タミフルについては多少、注意喚起のトーンが強くなっても。

○水口参考人 そうですね、やはりもう論文が出てしまっていると。これはタミフルには気の毒なことなのかもしれませんけれども、論文が出てしまっていますので、それはやったほうが。

○五十嵐座長 そういう御意見ですね。

○水口参考人 はい。

○山縣参考人  Fukushima 論文はちょうど発熱が上がるときに異常行動がおきやすいとしている論文で、そういう意味では、タミフルとの因果関係を示している論文ではないというように理解はしております。

○岡部参考人 解釈は、それはそれで読み方が違ってくるのです。ただ、 Fukushima 先生の論文はレトロスペクティブであって、以前のデータを用いているので継続的にずっと見ているわけではないので、やはり一時期の現象を捕らえられている可能性があると思うのです。 Fukushima 先生自身も、発熱そのものによるものは否定できないということはきちんと書かれているので、そういう意味では、こういう論文があったというのは事実でしっかり読み込むべきだとは思いますけれども、大きい影響は、私は与えていないのではないかと思います。

○五十嵐座長 そういう意味でも、その論文のエビデンスレベルを明示するということはやはり大事ですね。それから、読む人によってその解釈が違ってくるというのはあまり良くないと思います。どのように評価するかについて、後でまた相談したいと思います。よろしくお願いします。基本的には、異常行動に対する安全対策措置は添付文書を含めて続けるべきだということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それから、この抗インフルエンザウイルス薬のうち、タミフルには突然死の報告があります。安全対策を議論する上で突然死の可能性についても言及する必要があると考えられます。突然死については資料1の 22 ページに記載されています。この報告書では、突然死については重視すべき内容ではないという結論になっています。これについてはこの結論でよろしいですか。さらに、突然死や異常行動以外に何か議論すべきことはありますでしょうか。よろしいですか。では、異常行動以外については懸念すべき論点はないと理解してよろしいですね。ありがとうございます。

 続きまして、添付文書上での注意喚起の1番です。これはタミフルにのみ適用されている 10 代への原則使用差し控え措置を今後も引き続き継続すべきかどうかということです。これについて、御意見を頂きたいと思います。

○柿崎委員 先ほど山口参考人からもありましたが、タミフルだけ一段上げておきますと、逆にイナビルだとかリレンザのほうが安全だという間違った認識を受けられる方もいるかと思います。インフルエンザ自体が発症リスクということもありますので、ある程度、統一性を持ってもいいのではないかとは思います。

○内山参考人 私も今回、岡部先生と一緒に調べまして、こうした異常行動はやはり薬を投与していなくてもインフルエンザ罹患者に起こるということがわかりました。このような行動学的な特徴を持った異常行動は大人には起こっていませんでした。ですから、インフルエンザにかかると 10 代あるいは小児、こういった人たちに異常行動が起こりやすいということをまず第1に強調する必要があると思います。その上で、薬を使うときには十分注意すべきというこういったメッセージになっていかないと、使っていなかったら異常行動が起こらないと誤解されたら困ります。ある特定の種類の薬だけには起こって、その他のものでは起こらないと誤解されてはいけません。問題となった事例は基本的にはきちんとウォッチしていないために大きな事故につながったということが重要な教訓です。私は精神科医なのですが、精神医学的に見ると、一番重症なもので起こったというよりも、たまたま一番元気な人たちに起こったせいで飛び降りてしまったという印象をもちました。異常行動の発現は意識障害の重症さを表しているものではないと思いました。やはり注意喚起としては、小児から 10 代まではインフルエンザにかかった時には、きちんとウォッチしておくべきものであるというメッセージが伝わることが大切かと思いました。

○五十嵐座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。

○釜萢参考人  10 代への原則使用差し控え措置というのは必要ないだろうと思います。そこは、今回の議論を経て外すべきではないかと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○遠藤委員 同じ意見になってしまうのですが、当時、このタミフルの 10 代差し控えというのがすごく強く世の中に広がった経緯もありまして、いまだに一部の医療者の人は、タミフルはそうで、それ以外は問題がないのだと思われている節もないわけではないので、既に何人かの参考人や委員からも意見は出ていますが、今回、そこについては同列に扱うのがいいのではないかと思います。

○五十嵐座長 そうしますと、タミフルのみ 10 代の差し控えをするという必要性は余りないのではないかという御意見と判断してよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。確かに学会のガイドラインでも、タミフルの 10 代への投与の必要性は指摘されております。それから、 10 歳未満でも異常行動が見られています。これらの点から考えると、 10 代だけを対象にして差し控えをするという今までの措置に関しては、改めてもいいのではないかという御意見だったと思います。それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。では、そのようにまとめたいと思います。

 それからもう1つ、抗インフルエンザウイルス薬全てに共通の、「少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が1人にならないよう配慮することについて患者・家族に対して説明を行うこと」という注意喚起につきましては、これからも必要という御意見も幾つか出ております。この注意喚起は今後も引き続き継続すべきでしょうか。

○内山参考人 やはり岡部班の検討でも、異常行動は薬を服用していなくても起こることだとわかりました。インフルエンザ全般に対して、異常行動に注意するべきということを啓発することが必要です。データ的にはむしろこれは薬を飲んでいて軽快していくときにやはり起こりやすいものだという印象を私は受けました。ちょうど眠って起きたときに起こるというので、あれは発熱が少し、和らいだときに起きているので、軽症であっても非常にこういったことについては注意が必要だということを強調する必要があると思います。インフルエンザ全体に対して、今回の調査の中で分かったことをきちんと、皆さんに伝えて知識を持ってもらうことができたらいいのではないかと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○岡部参考人 そういう点では、厚労省が出した参考資料3のプレスリリース、これは調査会で桃井先生の御意見とか研究班の意見でこういった形になったと思うのですが、これも強調すべきはこの点だと思うのです。ただ、2日間インフルエンザになった子供をたった1人にしないようにというのは理想なのですが、現実に 24 時間、 48 時間ずっと親御さんが子どもを見ているというのはあり得ないので、もう少し表現を何とか考えないと、今、いい案が見つからないのですが、もう少し考えてもいいのではないかと思います。

○五十嵐座長 どうぞ、では桃井先生。

○桃井参考人 タミフルの 10 代の原則使用差し控え措置を中止して、服用、非服用にかかわらず、インフルエンザ罹患全体に注意を喚起することは賛成なのですが、それをするからには、添付文書以外での注意喚起は今まで以上に徹底をしないといけないと思われます。プレスリリースは一般の方は御覧になりませんし、厚生労働省の重要な国民の一人一人に知ってほしい情報を末端までどう伝えるかという、その方策が非常に重要だと思うのです。もちろん、医師会を通じて各地域の医師会の診療所に伝えていただくことは重要なのですが、国民にどう伝えるかということは、ほかの厚生労働省の様々な行政についても共通することですが、本件は生死に関わる事項ですので、1例であっても死亡者はあってはならず、また予防できる事項ですので、末端までどうやったら情報を徹底できるかを、一層、お考えいただきたいと思います。

○五十嵐座長 先生の御指摘の点は、この2ページの一番下の「添付文書以外での注意喚起」という表題と正に合致するものです。この点につきましては後ほど、皆さんから御意見を頂きたいと思います。どうぞ、山口先生。

○山口参考人 先ほど、2日間というのが非現実的だという話がありましたが、実は、私たちの電話相談に、これまでこの2日間ということで、非常に戸惑った御相談が届いています。例えば、母子家庭でお母さんが働かないと生活が成り立っていかない。それを2日間仕事を休んで丸々見るということについて、どこまでやり続けないといけないのでしょうかという戸惑いの声も挙がってきているところです。ですので、現実的に無理な家庭もあるのではないかとは思いますが、2日間は気を付けなければいけないと、こういうメッセージはやはり送っておく必要があるかと思います。

 私も、このプレスリリースを見ていて、これが割と全体に広がればいいと思った一方で、先ほどの報告書資料1の 12 ページにある、先ほどからお話が出てきている 10 代での報告が多いということと、男性のほうが多いとか、寝て起きたときに多いとか、そのことについてはここに書かれていないので、今までの流れの中で分かってきたことも加えた上で、今、桃井参考人が、後でとおっしゃったのですが、添付文書以外の注意喚起として、例えば、このプレスリリースだけではなくて、厚労省の中にPDFか何かでダウンロードできるようなものを作って、例えば、インフルエンザの子供さんを診断したときに、ドクターが直接親御さんに渡すとか、あるいは、こういったことがダウンロードできることを学校の養護の先生などに情報として届けば、これは季節的なものですので、インフルエンザが流行り始める頃にPTAの方たちに配布するように文科省と連携してやるとか、直接的に必要な方の手に渡るようなことからまずやっていくことが大事ではないかと思いますので、1つ提案としてお伝えしたいと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございました。どうぞ水口先生。

○水口参考人 ちょっとしつこいのですが、因果関係は別として、 Fukushima 論文で、タミフルを初回服用した数十分の間が最もリスクの高い時間であることは事実として報告されているわけですから、 48 時間均等に気を付けるということではなくて、特にその時間がリスクが高いという報告があるということは、これはそれなりに貴重なデータだと思いますので、注意喚起に当たっては盛り込むべきことではないかと考えます。

○五十嵐座長 その点を盛り込むことも検討したいと思います。ありがとうございます。

○伊藤委員 2日間という表現なのですが、今、添付文書では、「本剤による治療が開始された後は、少なくとも2日間」と続くと思うのですが、服用していなくても2日間、例えば、資料1の 15 ページの表5 - 3というのを見ますと、服用していない患者さんでも2日目までの異常行動が多いということで、そのまとめにもありますように、やはり発熱から2日間という、これはそういう集計なのかと思うのですが、薬の服用とも関係のある話ですが、表現として周知する場合に、発熱から2日間とするのか、その辺りも少し検討したほうがいいのかと思いました。

○五十嵐座長 そうですね。これはなかなか難しいのだとは思います。

○医薬安全対策課長 事務局でございます。今、伊藤先生から御指摘を頂いた点は、昨年の調査会でも議論になった部分です。参考資料3の先ほどのプレスリリースの所を御覧いただきますと、具体的な対策ということで、2日間ずっと目を離さないようにしているのは現実的ではないということもありまして、ここに書いてあるような、飛び出ないための、例えば施錠とか、そういう部分で具体的な対応を取る所を対策で書いているのと同時に、ここでも、「服用の有無によらず治療開始後2日間」という言い方をしております。要は、診療を受けに行ったところから見た2日間という形で、昨年の調査会でも御議論を頂きまして、こういう整理をしております。こういうタイムポイントにしないと、服用していないケースはどこから見て2日間になるのだということになってしまうものですから。したがいまして、今日いろいろと御意見を頂いたところで、また注意喚起の文書等を作成するときは、こういった部分を注意して作成させていただきたいとは思っております。

○五十嵐座長 ありがとうございます。そのほかはいかがでしょうか。よろしいですか。続きまして、この添付文書上での注意喚起の3つ目の点です。すでにこれまでの御議論の中で御意見が出ております。現状では、タミフルでは警告欄に記載があるのに対して、その他の抗インフルエンザウイルス薬では重要な基本的注意欄に記載があるという乖離が見られます。今までの御意見ですと同様の記載にすべきだという御意見が多かったと思います。その場合、「警告欄」に記載をするのか、あるいは「重要な基本的注意欄」に記載するのか、これについては如何でしょうか。御意見を頂きたいと思います。

○岡部参考人 研究班の意見としては、横並びにするときに、どこかを強化するのではなくて、現在のところの横並びにしていただきたい。つまり、ほかの3種類とタミフルは同等でもいいのではないかという意味です。

○五十嵐座長 つまり、「重要な基本的注意欄」への記載を基本とするということですね。

○岡部参考人 はい。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

○山口参考人 今回の報告書の内容からしましても、全てを警告に上げるということの根拠にならないと思いますので、タミフルを1つ下に下ろして同等にすることが報告書との整合性がある結論ではないかと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。皆さん、それで基本的によろしいですか。はい、ありがとうございます。ではそのように変更したいと思います。

 それでは添付文書以外での注意喚起についてです。既に本日の調査会で幾つか御指摘を頂きました。参考資料3の内容については、例えば、年齢が 10 代の人に異常行動が多いことだけでなく、8歳、9歳の人にも異常行動が見られること、男の子に多くみられること、寝起きに多いことなどを、「小児・未成年者がインフルエンザにかかったときは異常行動に御注意ください」という文章に追記し、広く周知をしていただきたいという御意見がありました。関係する学会の先生方のお力も借りて周知をすることが必要と考えます。それから、学校の関係者にも周知が必要との御指摘もありました。そのほか、アプリを使った周知の有効性について御指摘も戴きました。この点につきまして、その他に御意見はございますでしょうか。

○柿崎委員 厚労省とかから全般的に啓発していくことも、リーフレットとかをダウンロードしてもらって配っていただくことも大事だと思うのですが、なかなか臨床の現場では自分でダウンロードして配ったりということがないのです。例えば、製造販売業者にそういった資材を作ってもらって、診療所なり、あるいは調剤薬局で薬を処方するときに一緒に渡してもらうことも1つの方法ではないかと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○内山参考人 私も、災害時のいろいろな精神医学的なマネジメントについて、行政担当者に対しての解説のリーフレットと、行政担当者が実際に住民に配るためのリーフレットを同じものをベースにして作ったのですが、こういった形で、今回の場合には臨床医に対してということと、あともう1つは当事者、親御さんに対してという両方を作っていただくことが大切と思います。最近は、製薬会社が非常にたくさんパンフレットを作ってきて、本当なのか嘘なのか分からないようなパンフレットがたくさんあって困っているわけなので、やはり厚生労働省できちんとしたセットを作っていただいて、もし製薬会社が配るのならそれを引用したものとして資料を作成してもらうということです。厚労省の生活習慣病対策室で睡眠指針というのを作ったのですが、これも商業的なプロモーション用にいろいろなものがたくさん出回ってしまっているので、厚労省できちんと作ったものを基にして啓発資料を作ろうということではじまりました。啓発資料やパンフレットはやはり業者から離れた形で公的に専門家が作るのが一番いいと思います。

○五十嵐座長 貴重な御指摘だと思います。

○山縣参考人 医療機関での啓発も非常に重要だと思いますが、基本的にインフルエンザはみんなが罹患する可能性があるわけですから、やはり、その学校だとか地域の中で、インフルエンザの予防だとか予防接種も含めて、そういうものの中に、インフルエンザに罹患するとこういう可能性があるのだということをきちんと明記したような啓発を、地域、学校で出していただくというのはどうかと思います。

○五十嵐座長 はい、どうぞ。

○岡部参考人 内容のことなのですが、プレスリリースでは、「治療開始後2日間」というような表現なのですが、私たちのデータは、発熱から 48 時間なのです。これをどう扱うかはもう少し議論をしていただいたほうがいいと思うのです。熱が出てから何日かたってから初めて医療機関に来る子供さん、というかインフルエンザの患者さんもいるので、できれば発熱からのほうがいいと私たちは思っております。

 それからもう1つは、今年は、このプレスリリースが出てから私のほうにも随分メディアからの問合せがあって、その説明をしたときに、結果として報道の方々の多くは、これは使っても使わなくても起こるのですねという表現を随分使っていると思うので、そこら辺はかなりきちんと説明をして協力を頂ければいいのではないのかと思う、そういう方法も必要だろうと思います。

○五十嵐座長 報道機関にも説明をしたほうがいいということですね。ありがとうございました。インフルエンザに罹患したときに、発熱してから 48 時間以内は異常行動に注意が必要と記載されていますが、治療開始、即ち、服薬してから 48 時間以内は注意が必要であるとするエビデンスはないのですね。

○岡部参考人 ないです。

○五十嵐座長 そうしますと、熱が出てからという言い方しかないでしょうね。

○医薬安全対策課長 その点なのです。確かに岡部先生のデータは発熱後 48 時間なのですが、実際に発熱をした段階で、例えば、情報資材ですとかそういったもの、また、医療関係者からの指導とかそういうものが得られるかというと、実際には先生からそういうお話を聞く、薬局、薬剤師等からそういうお話を聞くというのは、やはり受診行動があった後でないと、なかなかその情報に接することはないと思うのです。事前啓発が非常にうまくいっている状況であれば、熱が出て 48 時間というのはだんだん皆さんにも浸透してくるのだと思います。そういった意味では、昨年の情報提供では、そういう受診行動があったところが1つの注意喚起のタイミングなのだろうということで、こういう記載をさせていただいたということなので、ちょっとその辺り、どういう伝え方をするかというところは、また次回の検討の中でも御意見を頂きながら、情報啓発資材等をまとめたいと思っております。

○五十嵐座長 ありがとうございます。そのほか何か。

○伊藤委員 今、ここで議論することではないのかもしれないのですが、例えばタミフルの警告の一番最後の所に、「なお、インフルエンザ脳症等によっても同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと」という文章があるのですが、この上記と同様の説明を誰に対して行うのかとか、ちょっとこの文章が分かりにくいように思うのです。ほかの薬物にも同じ文言があるのですが、添付文書をもし改訂されるようでしたら、検討したほうがいいかと思いました。

○五十嵐座長 ありがとうございます。これは、添付文書をもう一回見直すことをしてくださいという要望ですので、承りたいと思います。ありがとうございます。そのほかはいかがですか。

○望月委員 実際の添付文書が改訂になったりするのは、もう一回ここで議論があった上で改訂でよろしいでしょうか。分かりました。ちょっと、横並びで警告から外れたときに、企業がどういう情報提供活動をするかというのが気になるところではあったので、そこをわきまえた上で行動していただけるように、何かきちんと御指導いただきたいと思っています。

○五十嵐座長 ありがとうございます。ではよろしいですか。本日は大変活発な御意見を頂き、その結果、抗インフルエンザ薬の異常行動に対する注意喚起は全ての抗インフルエンザ薬において同様に基本的注意欄での記載をすることに御意見の一致を戴きました。大きな変革になるのではないかと思います。ありがとうございます。今日、議論をしました論点につきましては、御意見を踏まえた形で、もう一度、事務局で具体的な安全対策の在り方についておまとめいただき、再度、この安全対策調査会で検討し、最終的に決めていきたいと思います。それでよろしいでしょうか。ありがとうございました。では事務局、お願いします。

○事務局 本日、御審議いただきましてありがとうございました。次回の安全対策調査会につきましては、今日、御指摘いただきましたような点を踏まえて検討いたしまして、改めて御連絡させていただきます。

○五十嵐座長 それでは、今日の調査会はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。

 


(了)

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