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2018年3月5日 第6回労働政策審議会労働政策基本部会

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成30年3月5日(月) 14:00~15:58


○場所

厚生労働省 省議室


○出席者

(委員)

岩村氏、川崎氏、後藤氏、佐々木氏、武田氏、冨山氏、長谷川氏、守島部会長、御手洗氏、山川氏

(ヒアリング対象者)

大橋 弘氏 (東京大学大学院経済学研究科教授)

(事務局)

藤澤政策統括官(総合政策担当)、本多総合政策・政策評価審議官、弓職業安定局雇用政策課長、波積参事官(人材開発政策担当参事官室長併任)、弓職業安定局雇用政策課長、波積参事官(人材開発政策担当参事官室長併任)、奈尾労働政策担当参事官、大竹企画官

○議題

・ 働く人すべての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組について(ヒアリング)
・ その他

○議事

○守島部会長 それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。

 ただいまから、第6回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたします。皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただき、本当にありがとうございます。

 カメラはないですね。

 本日は所用で入山委員、大竹委員、古賀委員が御欠席の予定です。また、職業安定局雇用政策課からは座席表では弓課長の御出席となっておりますけれども、所用により西川課長補佐の代理出席となっております。

 議事に入ります前に、本日の部会の説明はタブレットで行わせていただきます。事務局から何か説明があれば、よろしくお願いいたします。

○奈尾労働政策担当参事官 第4回のこの基本部会におきましても、ペーパーレスということでタブレットで開催させていただいたのですが、本日もその方法でございまして、お手元にはタブレットとスタイラスペンが配られているかと思います。使用方法につきましては1枚紙、操作説明書を配付させていただいていますけれども、もし御不明な点などございましたら、お近くの職員にお申しつけいただきたいと思います。

○守島部会長 それでは、議事に入りたいと思います。

 本日の進め方について御説明させていただきます。議題1ですけれども、最初に大橋委員より生産性の論点について20分ほど御説明いただいた後、その内容について20分程度質疑応答を行います。

 引き続きまして、議題2のその他ですけれども、ヒアリング終了後、事務局より第5回のヒアリングの概要と補足資料、今後の議論に向けてのたたき台(案)について20分ほど説明していただきます。

 その後、残りの時間で自由に議論していただきたいと思います。

 それでは、説明が長くなりましたけれども、議題1のヒアリングに移りたいと思います。大橋委員、よろしくお願いいたします。

○大橋委員 ただいま御紹介いただきました大橋と申します。きょうはどうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは第6回と伺って、来られない回が幾つかあって、ごぶさたしておりまことに恐縮でございます。

 きょうのテーマの生産性の論点、これも事務局とのお話の中で生産性の話をしていただくのはどうかという御提案もあり、そうした論点でまとめてきたということでございます。与えられた時間を若干延びてしまうかもしれませんけれども、お話しさせていただければと思います。

PP

 本日の内容ですけれども、大きく3つの点についてお話をしたいと思っています。

 生産性は基本的に指標で語っているわけですけれども、その指標についてのお話が1点。

 その指標を使って生産性を見たときに、生産性の現状及び現状を説明するための仮説の提起をさせていただければと。これは通常言われている内容についてまとめたものでございます。

 3点目は、生産性に関連するその他の論点ということで、私が出席できなかった会もございますので、その会におけるコメントも中に入ってしまっているものも幾つかあります。

PP

 最初に生産性といって何を思い浮かべるでしょうか。おそらく真っ先に思い浮かべるのは労働生産性なのかなと思っています。我が国の生産性はそもそもOECDのデータからということですけれども、これは毎年出されていて、それによると日本は、直近のもので見てもずっと20位のあたりを漂っている状況で、この40年近く来ています。よって、労働生産性は我が国は低いということが言われていて、低い理由について話題になってきたというのがこれまでの経緯ではないかなと思います。

PP

 復習がてら労働生産性の定義を4ページ目に記していますけれども、基本的には付加価値額を労働投入量で割ったものでございます。

 後ほどお話ししますが、生産性といっても労働生産性ではない生産性もあるわけですけれども、なぜ労働生産性がよく用いられるのかということを思えば、非常にわかりやすい指標だからだと思います。インプットが労働なので、何人雇っていますか、どのくらいの時間働きましたかというものでアウトプットを割り込んだもの。データさえあれば簡単に誰でも計算できますということで、非常にわかりやすい指標なので、よく使われているということだと思います。

 わかりやすいがゆえに、いろいろな課題が存在するというのも恐らくあって、きょうはやや経済学的にテクニカルな論点も含みますけれども、労働生産性、あるいは広くは生産性指標の全般についても実は問題がないわけではなくて、利用可能なデータと本来見たい、知りたいものとの間の不一致が存在していて、そうしたところのお話を振り返ってみるのもいいのではないかなと思って、資料をご用意したところです。

PP

 5ページ目ですが、生産性の指標の課題として大きく分けて2つあるだろうということであります。

 1つは生産性の指標の中でも労働生産性についての課題ということで取り上げてみると、先ほど、そもそもアウトプットとして付加価値額、あるいは生産量を説明するのに労働投入を使っているわけですが、そもそも就業者あるいは時間だけが生産を生み出すためのインプットかといわれると、決してそんなことはない。そもそも資本投入もあるし、農業であれば土地もあるし、いろいろなインプットがあっての生産活動なので、それをあえて労働だけで見ていることの問題は恐らくあるのではないかというのが1点です。わかりやすいから労働で見ているということですが、本当に生産性というものに真摯に向き合ったときに、労働だけでいいのかという論点はあるでしょうというのが1点です。

 2点目は、後ほど労働生産性で全要素生産性というお話をさせていただきますけれども、そのお話をさせていただいた上でも、それを含む生産性の指標全般について、実は課題がありますというのが2点目のポイントで、ややテクニカルな論点と書いてあります。だから、議論の構造が2階建てになっていて、一つは労働生産性、労働だけで見ることは問題がありますねと。それを踏まえた上で、全要素生産性という指標のお話をしますが、全要素生産性で完全に答えが片づいたかというと、実は生産性指標そのものに問題がありますよねというお話を、➁でさせていただくということであります。

 2つあって、1つは推定上の問題があります。推定というのは、生産性はそもそも見えないので、見えないものをデータで見えるようにしているわけですね。そういう意味でいうと、何らかの推定というかデータ処理をやっているわけですが、そのデータ処理上の問題が1点ありますというのが1つです。

 2つ目は、これを推定する際に使っているデータがあるのですけれども、このデータの問題が恐らくあるでしょうという点であります。

 ➁の点はややテクニカルな論点で、きょう、実は経済学者の方とかがいるかもしれないと思ってつくったのですけれども、ややマニアックかなと感じられる場合は、早目にスキップすべき論点かもしれませんが、実は重要な論点だと私は思っています。

PP

 労働生産性の問題ですが、式を書いていますけれども、Yがアウトプットで、アウトプットを説明する要素としてKとLとAがあります。労働生産性というのは、Yというアウトプットに対して影響を与えるものはLしかないときに、比較的すんなり理解ができる概念です。ただ、現実問題としてL以外にもいろいろな要素があって、今、ここではKと書いてありますけれども、先ほど農業の場合では土地もあるかもしれないとかと申し上げました。

 労働生産性というのはYをLで割ったものですけれども、実際問題としてはL以外ではなくてKとかほかの生産要素の影響を受けているので、そうした影響を除いた結果として得られるものが生産性だと本来的には考えられるのではないか。それは一体何かというと、この式上のAであります。よって、本当に知りたいのはインプットをしたときにアウトプットが出てくるわけですけれども、同量のインプットでより多くのアウトプットが出てくればその分が生産性の向上なので、その生産性の向上は何かといったら、キャピタルのAになります。

 赤丸をつけましたけれども、キャピタルのAが全要素生産性になります。若干教科書的な説明になってしまって恐縮です。

PP

 この全要素生産性で見たときに、我が国の生産性の現状はどうか。労働生産性の順位は日本生産性本部で発表されている表を先ほどお見せしたとおりですが、このような形になります。これはOECDのデータをとってきて、それの10年の移動平均をとったものです。これは5年の移動平均をとるケースとか、あるいは毎年で出すケースとかいろいろな見せ方があって、見せ方によってでこぼこが大きくなったり、表の見やすさが違ってきたりします。

 ここでは10年をとって見てみたということですが、これから見るとどのような感じのことが言えそうかというと、世界的に生産性は低下しているのではないかということが見てとれます。これは経済学の分野では一般的に言われている内容だと思いますが、それが見てとれるということが1点です。

 もう一つは、直近で見ると、日本はそんなに悪くないというのも同時に言われている点だと思います。赤が日本ですけれども、日本も下がってはいますが、全体の位置づけでいうと、みんなが低位に収束している中でいうと、最底辺のグループではないように見えますということだと思います。10年の移動平均だとこういうように見えるということです。

PP

 よって、世界的に生産性の低減は見られるので、これについては幾つか非常に大きな議論があります。仮説は大まかに3つあるのではないかと言われていると思います。

 1つはイノベーションが枯渇したという議論です。「簡単にもぎ取れる果実がなくなった」。ローハンギングフルーツが全部とられてしまって、簡単にイノベーションなんてできなくなってきましたよねというのが言われている内容で、Cowenの『大停滞』とか、幾つか翻訳されているものがあって、Robert Gordonのほうはすごく厚いので、翻訳が出るとしてもちょっと先かもしれませんが、同じようなことを言っている。昔の指導教官でもあるのですが、そういうことを言っている人がいます。

 2点目はIT投資が減少したのではないかという議論があります。

 3つ目は、データがそもそも問題ではないか。大まかにいうと、3つのことが言われているのかなと思います。

 ちょっとお時間のあれもありますけれども、簡単にこの3つだけ御紹介をします。

PP

 まず仮説1、イノベーションの枯渇です。これは当時長期停滞論がはやっていて、ローレンス・サマーズ元教授が言ったとか、いろいろな話があります。今はもう長期停滞論と言わなくなってしまったので、余りレリバントではない話にはなりますけれども、ちょうどイノベーションの枯渇と長期停滞論でみんな議論した時期があったということです。

 今、こうやって振り返ってみると、Robert Gordonは特にそうなのですけれども、TFPの低下とイノベーションをリンクづけて論じていたわけですが、TFPの低下だけを見てイノベーション云々というのはなかなかできないというのが正直なところかなと思います。ここにも書きましたけれども、TFPは資源配分を変えるだけでも随分伸びたりするので、そういう意味でいうとRobert Gordonの議論は一つの見方ではあるけれども、今、ちょうどAIとかいろいろな話、今回この部会でもされていることを思うと、TFPのこれだけでイノベーションを論じるのはなかなか難しいのではないかというのが、大まかなイメージではないかと思います。

 (参考)と書かせていただいたのですけれども、この部会でもイノベーション調査の結果をいろいろと議論したのではないかなと拝察します。私も実はイノベーション調査にかかわっていたことがあって、当時文科省、NISTEPというものがあって、そこでやっていたのですけれども、これは非常に国際比較が難しいデータだという認識でいます。日本はこの調査によると、すごくイノベーションが低いことになっています。過去の資料、ここの部会の資料に出ているので見ていただくといいと思いますけれども、そういうように書いてあります。

 何が難しいのかというと、あそこの彼らのところのDPが1本出ているのですけれども、イノベーションという言葉なのです。これはCISといってCommunity Innovation Surveyという国際的というかOECDのマニュアルに準拠して行っているのですけれども、質問は企業にイノベーションについて聞いているわけです。企業のイノベーションという言葉の受けとめが、日本の企業と海外の企業で違うのです。ここが多分イノベーション調査で我が国が低く出ている理由ではないかと私個人は思っています。

 つまり、日本の企業にプロダクトイノベーションとかと聞いたときに、すごくハードルが高いものとして捉えてしまう。当時、ドイツ、イギリス、アメリカで聞いている調査なのですけれども、ほかの国でいうと、同じイノベーションなのにもかかわらず、容易にこれはイノベーションだと捉えるわけです。なので、意識の違いはすごくあって、イノベーション調査の結果に出ているのではないかなと、データを使った人間からすると非常に強く思っているので、このデータは注意深く使わないといけないなという感じはしています。

PP

 仮説2なのですけれども、ICTに関する投資が停滞したのではないかという議論があります。これはある論文から、この生産性は労働生産性なのですけれども、労働生産性の変化率とブロードバンドの普及、あるいはITの投資の付加価値のシェアでそれぞれ需要と供給を大まかに見た図があります。

 これは単なる相関関係にすぎないのですが、相関関係で見るとほとんどないという感じに見てとれるということだそうです。この論文はICT投資が必ずしも労働生産性を、これは5年から10年くらいのラグをとって見ているわけですが、直接影響を与えることがこの時間のランジだと、少なくともこのデータではないようだということが言われているのだと思います。

 以前、「ソローのパラドックス」という話があって、投資をしてもすぐには生産性にあらわれない。それはどうしてなのだという議論があったのですけれども、それと似たような現象なのかもしれません。そういうところが一つあるかなと。だから、ICT投資で直接影響があるかどうかは、ないという結論をつけることもできるし、ここからはなかなか見てとれないねというのが言われていることなのかなと思います。

PP

 仮説3、不完全なデータなのですけれども、私個人としてはこれが一番大きいのかなという感じがします。ITが生み出す消費者便益というかメリットがあると思うのですけれども、その大きさは多分ITが普及するにつれてすごく大きくなっている。今、皆さんもスマホとかで非常に利便性を感じながらやっていると思いますし、検索も含めて無料のサービスは随分たくさんあって、実は無料というよりも自分のパーソナルデータを提供しつつもらっているという形だと思いますが、そういうようなことで少なくとも対価、お金のやりとりがない形で非常にITのメリットが出てきている。

 そうした消費者余剰は、推定した幾つかの論文、ここでは2つ書きましたけれども、かなり大きいものが出ているにもかかわらず生産性にあらわれないのは、アウトプットのデータが消費者余剰の数字を拾っていないからだろうと思われるということです。つまり、生産性の指標から消費者の余剰が漏れているのではないかと思います。

 この漏れは、ある意味サービスの提供、広告とかほかの形でマネタイズするようなビジネスがどんどん広がっていくと、だんだん漏れが大きくなってくるという姿になるのかなと思います。

 そういう意味で、ここのあたり、国のデータではGDPだと思いますが、GDPあるいはGNIみたいなものが本当に国の生産性をはかる上でいいのかという議論にも結びつくお話なのだろうとは思いますけれども、こうしたことが言われていることなのだろうなということで、仮説を3つ書かせていただきました。

PP

 以上が➀の話で、次にテクニカルな論点なのですけれども、生産性指標そのものに内在する幾つかの問題があるのではないかということで、それについて数分述べさせていただきます。

 1つは、「Y=」というのは先ほど生産性で書かせていただいたもので、労働というLと資本というKがYに影響を与えていますよねという式です。これを線形であらわすことができる。対数変換といって、高校生のときにやったのですけれども、対数で変換するとこういうように書けますということです。そうすると、推計したいものは何かというと、aですね。先ほど言った、同じインプットなのにもかかわらず、アウトプットがふえた分を生産性の向上と呼びたいわけですから、見たいものはaなわけです。リニアライズした式を見ていただくと、このaは何かというと、はっきり言って誤差項なのです。よって、実は全要素生産性は何を言っているかというと、推定上、誤差項を拾っていることになっています。だから、フィットが悪いモデルを使うと誤差項が大きくなる。つまり、生産性が高くなることになりかねないというのが、この式が言っている内容になります。

 逆に言うと、いろいろな形でフィットをよくしようと、データも労働の就業者数だけではない、時間数だけでもない、例えば労働の質を入れてこようとか、いろいろなものを入れてくると、だんだんこの誤差項を説明できるはずなのです。そうすると、究極的には説明できるものが完全になくなると、a=0になります。よって生産性が0になるということです。

 ここのあたりが生産性の推定における若干パラドクシカルなところで、これはソローが最初に全要素生産性を提起したときに指摘しているポイントなのですけれども、今でもレリバントなのかなという感じがします。余りここら辺の話をする人はいないですが、こういうポイントが恐らくあるだろうという感じがします。

 つまり、これは一つの考え方で、推定上生産性というものがどうやって測られるのかというのは、実のところかなりシリアスな問題なのかもしれないということだと思います。

PP

 2点目は付加価値額を用いることの問題点なのですけれども、先ほど生産性本部の労働生産性の式の定義の分子には、付加価値額かあるいは生産量かと書かれていました。ただ、多くのケースは、実際にデータとして何を使っているのかというと、付加価値額が圧倒的に多いと思います。生産量を使っているケースはほぼないのではないかと思います。なぜならば、付加価値額がデータとしてとりやすいからです。特にサービス業の話をすると、はっきり言って付加価値額しかとりようがない。要するにサービス業全般を論じ始めると、生産量はそれぞれのサービス業でユニットの単位も違うし、銀行業におけるアウトプットは何かみたいな話になってしまうので、基本的には付加価値額をとってくるのが圧倒的に多いと思うのです。

 そうすると、P掛けるYが付加価値額なので、実際にはYではなくてPを掛けたものになっているのです。両辺にPを掛けたものを実際には推計しているということなのですけれども、そうすると推計された生産性は価格Pにも影響を受けることになります。これが生産性を議論するときにいろいろな誤解を生み出すところなのですけれども、要するに価格を高く売れば生産性が上がるという感じになっているわけです。

 例えば、経済学の用語で独占という言葉があるのですけれども、マーケットが企業数の企業で独占されて競争性がなくなってしまって、そうすると価格が高くなるではないかと。そういうものが独禁法上も問題ではないかと言う人がいるわけですけれども、これを見ると、そうした形で価格が上がると生産性が上がる感じになってしまうのです。非常にゆがんだ形になってしまうので、本来的に付加価値額は使うべきではないのですけれども、そうも言っていられないのでこういうものを使っていますということになります。

 このPをどう調整するかはアカデミック上、非常に大きな問題で、つまり通常実質化とかというのですけれども、マクロの変数で実質化したときに、実際推定された結果を見ると、このPの影響は完全に取り除けないことが知られていて、例えば需要が生産性に影響を与えてしまうことがあるとすると、それはPの調整に失敗しているということなのです。ここのあたりが、実はアカデミックには今でもフロンティアの議論で、完全な解決方法が何かとここで説明することはできないのですけれども、1つ申し上げたいのは、付加価値額を使うことの問題点が実は存在はしていることをここで主張したかったということです。

 以上が、生産性の問題として推定の問題とデータの問題と2つありそうだというお話をさせていただいたわけです。

PP

 最後、その他の論点ということで2枚だけ紙をつけています。

PP

 1つはこの部会でも資料があったと思ってつけたのですけれども、IT投資と生産性との関係をどう見るかということです。これについてはいろいろな議論があると思うのですけれども、単純にはIT投資をふやせば生産性がふえるからどんどんやるべきではないかという話があるのかもしれないのですが、実はもう少し丁寧に見る必要があるのではないかと思っています。

 ここはある論文のエッセンスだけ記したものですけれども、ノルウェーにおいてブロードバンドを導入したわけです。ブロードバンドを導入するというIT投資が各企業の生産性にどういう影響を与えたかということを見たものになります。かなり細かいデータを持っていて、労働者レベルでブロードバンドをどう使ったのかをデータとしてお持ちなのですけれども、労働者のタイプによってかなり生産性への影響に違いますというのが論文の結論になります。skilled workersunskilled workersとここではタイプ分けをしてありますけれども、あるいは定型、否定型のタスクという形でも分けられるのかもしれませんが、skilled workersの生産性はブロードバンドによって上がる。ただ、unskilled workersの生産性は逆に悪化させているという結論が導き出されています。

 この含意は何かと考えてみると、IT投資と生産要素、つまりここでいうところのワーカーとの間には必ずしも代替関係にあるわけではなくて、補完関係にあることもあり得るのではないかということが1つ。

 直接的な含意ではないですけれども、IT投資をして生産性が高まる企業。つまり、この企業はskilled workersを抱えている企業だと思いますけれども、そうした企業が投資をするのであって、IT投資をしない企業に無理やりIT投資をさせることで生産性が伸びるかというと、必ずしもそうではないかもしれないということが2点目の含意として挙げられるのではないかと思います。つまり、この論文の含意をそのまま持ってくるとすれば、どういうタイプの労働者を抱えているかによって、実はインプリケーションはかなり異なると思います。

 いずれにしても、IT投資を通じて企業の生産性分布は二極化する。長期的には下のこぶにある企業は退出するからそれでいいではないかという話というのは恐らくあるのだと思いますけれども、企業の話をしましたが、他方で労働者の話も同様にできるわけです。そうすると、労働者は下のこぶにある人はみんな退出していいのかという議論に多分につながりかねない。企業は退出していいけれども、労働者はどうなのだとかという議論が必要なのだろうとは思います。

PP

 2点目は「ご参考」と書かせていただいて、時間があればということで記したものですけれども、これは労働市場の流動化と投資のインセンティブについてということで、書かせていただいたものです。余り奇をてらった内容ではないのですけれども、労働市場はどんどん流動化させたらいいではないかという議論は当然あって、私も十分理解するところですが、負の側面も当然ありますよねということを念のため書かせていただいたものであります。

 これは経済学でも労働の分野の方がお詳しいので、私なんかが申し上げる点ではないとは思ったのですけれども、労働市場の流動化というイシューではなくても、流動化という観点で取り上げると、結構いろいろなところで実は現象面として見られているのかなという感じがしていまして、それを点線の括弧書きで記しています。

 今は公益事業とかでいろいろな形で自由化、労働市場の流動化と自由化がパラレルに論じられるとすれば、自由化においてすごく懸念点として論じられているのは、実は投資の話であります。

 電力、ガスも自由化されましたけれども、例えばそれを事例として取り上げると、これまで地域独占をやっていたわけですが、地域独占を外して自由に事業者が参加できる、あるいは需要家が自由にスイッチができることになったわけです。そうすると、懸念面として何があるかというと、その需要家に向けて投資をしたにもかかわらず、投資が終わった途端にその需要家が別のところにスイッチするかもしれないわけです。そうすると、投資回収におけるリスクは必然的に高まることになります。投資採算性がとれないような地域とかあるいは分野には、投資ができないではないか。よってユニバーサル・サービス、ここでの定義はあまねく地域に同じ品質やサービスを提供するということですけれども、これは非常に難しくなるのではないかという、実は至極当たり前なのですが、こういう議論は改めてされているのではないかと思います。

 また、自由化すると基本的に規制をすることができないので、企業の自由な意思のもとに投資をするわけですけれども、その投資は市場のシグナルで基本的には投資の判断をするので、企業が見ているシグナルは同じ市場から出てくるので、そうするとそのシグナルによってみんなが投資し始めたり、みんなが投資をしなかったりすることが起きます。つまり投資のboom&bustが起きることが海外では非常によく見られていて、今後日本でもこれが見られるのではないかと言われています。

 自由化しましたけれども、公益事業というとユニバーサル・サービスはついてくるので、そうすると、ユニバーサル・サービスを維持するためには投資を促すスキームは必要だよねという議論がされていて、例えば電力でいうと今、容量市場という新しい市場をつくるという非常に大きな議論をしているわけですが、これはまさに市場では投資が促されない、あるいは投資を促したいところに投資が促されないために、そうしたものを入れようとするところがあるということなのだと思います。

 こうした点線のところの含意を労働市場に当てはめたときにどのようなことがいえるかなと考えてみると、労働市場を流動化させたときに、労働者によっては積極的に自己投資をする人はいると思うのです。投資をして自分の価値を高められる人は当然そうすると思うのですけれども、反面、そうでない人もいるだろうなということが言えるだろうと思います。それがまさにユニバーサル・サービスにおける投資採算性が得られないエリアの話が、労働者に対応する人がいるのではないかということですけれども、そうした人は投資しなくていいのかという話があって、もしユニバーサル・サービスを維持したいとすれば、容量市場が電力の場合は要るという話になるわけです。では、労働の場合ではどうなのだろうかという、パラレルなディスカッションはあり得るのかなと感じたということです。当然、これは労働経済の方がお詳しいので聞いていただければと思います。

 以上、ちょっと時間が延びてしまいましたけれども、私の発表とさせていただきます。かような機会をいただきまして本当にありがとうございました。

○守島部会長 ありがとうございました。

 実は時間は延びていないのですけれども、ありがとうございました。

 それでは、質疑応答に入りたいと思います。ただいまの御説明に関して、何か質問のある方は挙手をお願いいたしたいと思います。御意見でも構いません。

○岩村委員 非常に初歩的な質問なのですが、先ほどの生産性の式のところで、6枚目のところでYは結局生産量になると理解してよろしいということでしょうか。

○大橋委員 はい。

○岩村委員 ありがとうございます。それだけです。

○守島部会長 どうぞ。

○御手洗委員 1つが質問というか確認と、1つが意見に当たると思うのですけれども、P.7で全要素生産性の伸び率があって、下に世界的に見ても生産性が低下していると。これ以降生産性低下と書かれていましたけれども、これは伸び率の低下、微分ですよね。ですので、実際に生産性が低下しているのは0%を切っているイタリアが2004年あたりから低下していて、あとはUK、カナダが最近で、それ以外の国は0%以上なので生産性は低下していないというのが1点目の確認です。

○大橋委員 正しいですね。

○御手洗委員 それから、次が12ページなのですけれども、13ページでお話ししたほうがいいかな。生産性を捉えるときに、生産量をYではなくて価格を掛けたPYを使う。これはそのほうがデータが捕捉しやすいからで、これをどう使うかがアカデミックには関心ごとで、本来はYであるべきではないかというニュアンスで御説明いただいたように感じたのですけれども、むしろ私の理解は逆で、ある程度成熟した経済においては、P込みの付加価値での生産、アウトプットを上げる。そのためにAを上げていくことが主たる手になるのかなと思っています。

 それは例えばどういうことかというと、私の理解なので正しいかどうかわからないですけれども、Aというのは感覚値が大分大きく入る部分なのかと思います。例えば同じ人数をかけて同じ原材料費をかけたラーメン屋さんが2軒あって、片方はおいしい、片方はそんなにおいしくないといったときに、おいしいほうは人が集まる。そうすると、ラーメン1杯の値段を100円くらい上げられるかもしれない、200円上げられるかもしれない。そうすると従業員さんにたくさんお金が払えるようになり生産性が上がっている。誰もお客さんが来ないけれども、毎日同じスープをとり続けていたら生産性が低い。このときのおいしさみたいなものはAなのかなと思うのです。まずこの理解は合っていますか。

○大橋委員 人数を抜いたときのおいしさというのはAだと思いますね。

○御手洗委員 そうですよね。だから、お客さんが見たときに、同じ人数の人が働いている、同じ原価がかかっていても、おいしいとか美しいとか心地よいとか何かいいとか楽しいとかで買われるものが選ばれていく。このときのおいしいとか美しいとかがAに当たりますね。そうすると、ある程度成熟した経済においては、テクノロジーの発展を要素として伸びる部分と、それ以外は感覚値の部分でより好まれるものをつくって、よりちゃんと単価がとれるようにし、それによって同じ労働をしている人に対して、より多くのお給料を払えるようにするというのが、一つ成熟経済における企業のやるべきことなのかなと思っております。なので、PとYの要素をできるだけ減らしていくということがなぜかなと思ったのです。

○大橋委員 ややテクニカルと書いてあるので、余り大論争をする気はないのですけれども、多分先ほどの議論の中で単価を上げるというところが急にぽっと入ってきたわけですね。単価を上げるというのは価格づけの話になります。生産性の話と価格づけの話は若干違うということだと思います。要するに、価格づけはできると思いますけれども、価格づけをするというのは価格づけをする市場の中での競争要因も入ってきていて、どのくらいおいしさを提供できる企業がいるだとか、ほかの要素がいろいろと入ってきている話なので、生産性の高い企業がより高い付加価値をつけられるというのは、これのインプリケーションとしてはあると思いますが、生産性の議論、要するに生産性が高い、よって価格づけの議論とは話が違うと思います。

○御手洗委員 わかります。私の理解だと、Pまで入っていると企業としての生産性に当たり、Pを除いていると製造能力としての生産性になるように思いますが。

○冨山委員 物的生産性か付加価値生産性かという話ですね。

○大橋委員 付加価値生産性という方もいるのですね。付加価値生産性はPを入れたことを議論されている内容だと思うのですけれども、それは若干混同してしまうのだよね。価格づけの話と生産性の話は違う話だということなのです。

○冨山委員 物的生産性は逆に捕捉できなくありませんか。例えばサービス業の場合に何人さばいたかとか、あるいは製造業だったら何個物をつくりましたという概念になってしまいますよね。実際、ほとんどの場合、経済指標からとってきてしまっているから、現実問題として付加価値生産額で計算してしまっていませんか。

○大橋委員 そうです。

○冨山委員 だから、Pをノイズと見るかどうかなのだが、マクロ的需給関係で物価が下がるという要素が入ってきて、マクロ的にはノイズといえばノイズになってしまうのだけれども、それは統計上必ず入ってくる気がするのです。

○大橋委員 何度も言うのですけれども、テクニカルな論点と書いてあるから、かなりアカデミックな話をし始めてしまうことになるので、そこを若干お許しいただくと、サービス業というのがいろいろな雑多な業種を含んでいるのだと思います。アウトプットの指標も随分違うものを含んでいるのだと思います。それを一括して論じることが、実はこうしたアカデミックな観点からの生産性のフレームワークでいうとかなり難しい部分があって、付加価値生産性みたいなことを言わない限り、サービス業全体としての生産性の議論をするのは恐らく不可能だと思います。よって、解決策がなかなかないのですが、問題点の指摘という意味で、本来的にはもうけるから生産性が上がる。あるいは独占だから生産性が上がるとほぼパラレルですけれども、そうしたものは生産性の概念からは本来は除去して考えるべきなのだろうと思われるということです。

○岩村委員 多分今、大橋先生が言われたことの含意は、恐らく一般的には先ほどもおっしゃったように付加価値生産性でみんな見ている。ただし、それは厳密に言うとノイズの入ったものなので、そのことに留意しつつ議論をする必要がありますねということだと私は理解したのです。

○大橋委員 そういう理解で正しいと思います。ありがとうございます。

○守島部会長 川崎委員、お願いします。

○川崎委員 では、テクニカルな論点のところのお話は一旦ここで終わったというようにして、次の質問でいいでしょうか。

10ページなのですけれども、生産性とICTの投資のところがあって、生産性とブロードバンドの普及のところで、生産性は企業が活動として影響があるものでしょう。ブロードバンドの普及率自体は、企業というよりはその国全体ということになってくると、個人の家庭とかそういうところも含めての普及だと思うので、直接これが相関をとること自体、そこの影響を見ているのか見ていないのかということが質問の1つ。

 もう一つ、隣のところでITの付加価値シェアとあるのですけれども、付加価値シェアは一体どういうものを指しているのかということが2つ目の質問。

 もう一つあって、これは1995年から2004年までの伸びになっているのですけれども、ITとかICTで考えていくと、実は昨今の10年間が物すごく大きい変貌を遂げていると思っていまして、そこを踏まえても同じようなトレンドになるのか、いや、これは過去の10年間の期間だけのデータなのかといったところを教えていただきたいと思います。

○大橋委員 ありがとうございます。

 これは国レベルで見ているので、生産性の指標というのはまさにGDPみたいな統計を使って見ているのです。それが仮に企業のものだけから来ているのだとすると、このブロードバンドも企業だけに敷設されたもので見るべきなのではないかという御指摘なのかもしれませんね。各国でそうした統計がないので、こうせざるを得ないのかなという感じはしますが、本当は丁寧に見るとそういうところが重要なのかなと思います。

 時期も、これは他人の論文で2016年に出たものなので、これをどの程度今後アップデートできるかというお話になるのだと思いますけれども、やはりデータを見る上で後追いにならざるを得ないところというのは、恐らくあるのだろうなという感じはします。よって、もう少し時間をあるいは2年くらい延ばすことはできるのかもしれませんけれども、それでどうかという話はあるのかなという感じがします。

ITの付加価値シェアの定義をちゃんと記し忘れてしまったなと思っていまして、ぱっと今正確にお答えできないのですけれども、ITの影響ということで1つはブロードバンドの普及とIT投資なのですが、投資との関係という2つの指標で見てみたときに、両方とも生産性に対する影響というのは、この軸で見たときには見てとれないねという主張をしている論文を御紹介した感じになります。ありがとうございます。

○川崎委員 ありがとうございます。

○守島部会長 では、もう一つくらい。

 どうぞ。

○武田委員 本日はプレゼンテーションの貴重な機会をどうもありがとうございました。

 生産性の話のところで仮説が3つあったと思うのですけれども、そこについてもう一つ、仮説として考えていることがございますので、それについての先生の御意見を伺いたいと思います。趨勢的なトレンドなので必ずしもそれだけではないと思っていますが、7ページを見ても明らかなとおり、2007年から2008年にかけての世界的な金融危機以降、大きく低下している傾向が各国にあります。

 あのとき起きたことを振り返ると、金融市場が本当に麻痺しまして、日本のトップメーカーでさえドルの資金需要を賄うことができなくなったという、クレジット市場が完全に麻痺する、世界的に麻痺するということが1年間ありました。

 そうしたときに、R&D投資など必要な毎年行う投資が一部ストップしまして、結果的に企業の将来の期待成長率を下げ、それがイノベーションに必要な投資も伸ばさない方向に働き、さらにそれがTFPの伸びを鈍化させるといういわゆる「負の履歴効果」が働いた可能性がございます。

 今、アメリカはさすがにそういう状況からは脱しているので、もし期待成長率が低下しているということであれば、金融危機という特殊な負の履歴効果だけではなく、別の要素もきいている可能性はございます。ただ、事後的にこの数字を見ると、金融危機による負の履歴効果は、労働市場でよく議論されていますけれども、全要素生産性に与えている影響というのも見過ごせないのではないかと考えているのですが、その点に関する先生のお考えをお聞かせ頂ければ幸いです。

○大橋委員 どうもありがとうございます。

 この点について詳しく見たわけではないですけれども、見なければいけないのは、確かに民間の投資が、R&D、日本もそうですが、電気、自動車を中心にがくっと落ちているわけです。日本の場合、それが全体に影響を与えてしまって、国からのがそれほどふえたわけではないので、やはりR&D投資としてはかなり落ちたという感じで今に至るのかなという感じもします。

 諸外国についてどうなのかというのも、統計が出ているのですけれども、私はその観点で見たことがないので興味深いなと思いますが、履歴効果は恐らく労働でもあるとおっしゃられましたが、R&Dでもある意味ショックに影響が真っ先に出やすい部分だということからして、見られるのかなという感じがします。ただ、どのくらいの期間まで見られるのかというのは一つの論点なのかなと思いますけれども、御指摘の部分はあるのだろうなと思います。

○武田委員 ありがとうございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、大橋委員のプレゼンテーションと質疑応答のセッションはこれで終わりにしたいと思います。大橋委員、ありがとうございました。

 次に議題2のその他に移りたいと思います。まず、事務局より説明をお願いいたします。

○奈尾労働政策担当参事官 きょうの資料2から資料4までで御説明いたします。

 まず資料2でございますが、前回第5回の慶應義塾大学花田先生のヒアリングの概略をまとめてございます。そこにつけているとおりですけれども、かいつまんで御説明いたします。

 まず、キャリア自立支援を体系的にやるのが必要だという話がございました。その場合に、企業が中心になって5年、10年先を見据えて従業員の教育訓練をやる。それは環境変化が厳しい中では先を見通せない部分があるので、個人一人一人も当事者意識を持ってキャリア形成に取り組んでいくべきだと。

 あとは中高年についてですけれども、例えば55歳でポストオフされた場合を考えると、いわゆる「キャリアアップ」というよりは今後の「キャリア充実」、いかに能動的な職業生活を送っていくかといった「キャリア充実」が重要になるという話がございます。

2016年に職業能力開発促進法を改正したわけでございますけれども、その中で個人の責任として職業生活の設計、能力開発が盛り込まれる。企業はキャリコンの機会の提供等の援助をするということがあって、これは評価されているという感じでございました。

 現在、キャリコンについては、一人一人のキャリア形成支援で終わらせずに、いかに組織の活性化につなげる仕組みをつくるかということも課題かということでございました。

 続きまして資料3でございますけれども、現在の資料の補足という位置づけですが、若干資料を提出させていただいたものでございます。3ページ、4ページ、労働生産性についての補足資料を2枚ほどつけてございます。

 まず3ページ、これは平成29年、昨年の労働経済白書でも分析した内容ということで御紹介いたしたいわけですが、TFPの上昇にはイノベーションの促進が重要だと言われている中で、前回、研究開発でありますとか、先進的な機械等の取得が重要だという御説明を申し上げたと思うのですが、今回はその補足といたしまして設備投資、ビンテージの関係といったものをつけてございます。

 真ん中のグラフをごらんいただきますと設備投資の推移がございまして、日本は赤でございます。これをごらんいただきますと、英米独仏はおおむねリーマン前の水準に設備投資が戻っているのに比べて、日本は比較的低調であるということが言えるかと思います。

 ビンテージは設備の平均年齢でございますけれども、右側をごらんいただきますと、真ん中のグラフに呼応するかのように、日本はビンテージが高いことが見てとれる。対して、特に英米は設備投資が比較的活発であって、ビンテージも低いことが言えるわけでございます。一般的に国際的に見ると、イノベーション実現とビンテージには負の相関があると言われておりますので、これも今後のイノベーションを考えるに当たって一つの参考になり得るかなということでございます。

 4ページ、今度は非技術的イノベーションと申しますか、ワーク・ライフ・バランスの促進と生産性について若干論文を紹介させていただくものでございます。

 2つつけてございますが、上のほうが阿部先生、黒澤先生の論文でございます。「分析結果」をごらんいただきますと、1つ目の小さいポツでございますが、企業はいろいろと異質性がございますので、統計的に何がよいか考えてみますと、育児のための短時間勤務制度だけが統計的には有意にプラスの影響を与える。一般的にワーク・ライフ・バランスの充実施策が必ずしも企業にポジティブな影響を与えるわけではないというのが大まかな結論でございます。

 下の山本先生、松浦先生の論文でございますが、「分析結果」の1つ目のポツをごらんいただきますと、上の阿部先生の論文も同じなのですけれども、もともとワーク・ライフ・バランス施策に取り組むような業績がいい企業がワーク・ライフ・バランスに取り組んでいただくと、生産性も上がりやすいという内生性があるものですから、そこは両論文とも注意して分析されていると理解しております。

 山本先生、松浦先生の論文の1つ目におきましては、ワーク・ライフ・バランス施策が一貫してTFPを高めるという因果関係は見出せない。ただし、そこに書いておりますように、例えば従業員300人以上の中堅大企業といったように、幾つかの前提を置けばワーク・ライフ・バランス施策がTFPを中長期的に上昇させる傾向があるという結論でございます。

 続きまして、労働移動について前回若干宿題をいただきまして、6ページ以降でございます。前回の御議論の中で、労働移動の状況については規模別、産業別で見ていかないと、一般的な傾向だけを見るのでは対応を考えていくのに不十分ではないかといった御指摘をいただきましたので、規模別、産業別に少しとってみたものでございます。

 6ページ、規模別でございますが、太い黒の実線が規模計でございます。規模別をごらんいただきますと、例えば赤の点線の1,000人以上は企業規模計に比べて比較的低い水準で推移している。対して中小の企業におきましては、比較的活発であるという傾向が言えるかと思います。ここ30年近くとった場合に、右に上がっていると言えなくもないのですが、どちらかというと景気要因のほうが大きいのかなという印象でございます。

 続きまして、7ページが産業別に見た場合の入職率、離職率でございます。これをごらんいただきますと、白が入職率で緑が離職率ですけれども、前回口頭でも御説明したかもしれませんが、白の入職率が高い産業では一般的に緑の離職率も高い。典型的には真ん中あたりの宿泊業、飲食サービス業、これはどちらも3割とか32%とか入職も離職も高い傾向がございます。

 対して、左から6番目の金融業、保険業、こちらは入職も離職も10%弱で低いということでして、例えば左から2番目の製造業においては入職より離職が高いといった傾向があるわけでございますけれども、一般的には入職率が高いところは離職率も高いのではないかということが言えるかと思います。

 これから言えることは、社会全体で付加価値の高い成長産業、成長企業を増やしていくことが重要であると理解してございます。

 次が8ページ、9ページ、これは労働者、企業からの長期雇用についての受けとめ、評価ということで、労働移動の補足という観点で出させていただいているものでございます。

 まず8ページ、労働者から見た場合の長期雇用の評価、労働者調査でございます。これは1999年から2015年まで7回にわたりまして勤労者生活に関する調査を実施しているわけでございますけれども、どちらかというと終身雇用を指示している方の割合が高くなっている。特に赤が20代の方ですけれども、2004年から2007年にかけてかなり急な伸びを示しているというのが傾向で言えるかなと思います。

 9ページ、今度は企業の長期雇用についての評価でございますが、まず左上のグラフをごらんいただきますと、現在、現状についての長期安定雇用のメリットとデメリットでありまして、大体7割を超える企業がどちらかといえば長期安定雇用のメリットのほうが大きいという回答をされているということかなと思います。

 左下でありますが、今後どうなるかでありますけれども、長期安定雇用のメリットのほうがどちらかというと大きいというのは、大体半分の企業です。特に変化はないが3割で、長期安定雇用のデメリットのほうが大きくなるというのは17%弱でございます。

 では、なぜ長期安定雇用のメリットが大きいかが右側ですけれども、多いのは「知識や技能の継承がしやすい」「従業員の長期的な人材育成がしやすい」といったあたりでございます。これは複数回答であります。

 最後、10ページは労働移動に関連しまして年金、ポータビリティーの話を少し補足しておりまして、特に黄色で塗ったところですが、確定拠出年金から確定給付型へのポータビリティーが拡充されたということでございます。今後はこの制度の周知等も努めていく必要があると思ってございます。

 以下は参考資料ということで、適宜御参照いただければと思います。

 最後、資料4ですけれども、今後の議論に向けてのたたき台ということで、2枚にわたってつけてございます。この趣旨は、今までの委員の皆様方の御発言でありますとか、あるいは有識者ヒアリングで出された御意見、御見識、それに私どもとしての今後の政策の方向性として事務局としてこう考えられるのではないかと、この3つを混在して入れ込んでございます。あくまで今回の議論のたたき台でして、これでは足りないとか、これはむしろこう考えるべきではないかという御意見を今日出していただければという位置づけでございます。

 これまで今日を含めて6回この基本部会を開催しているわけでございますが、特に第3回、第4回の技術革新の動向と労働への影響等についてということと、労働生産性向上等についてはかなりかかわりが深いということで、この2つのトピックをまとめてたたき台として出しているわけでございます。

 詳しくはごらんいただくといたしまして、主な点を申し上げますと、まず技術革新の動向と労働への影響等についてですが、1つ目の○、技術革新による労働への影響について諸説あるわけですが、一部または大部分が代替される可能性はあるけれども、雇用そのものが代替されるケースは限定的という予測もございます。

 定型的な業務を中心に雇用が減少するという予測もあります。

AI等による自動化の進展によってタスクの内容が変化していく。そのために情報は常にアップデートしていかないといけない。そのアップデートした情報をマッチング支援とか教育訓練の環境整備に役立てる必要があるというのが2つ目です。

 これは次の議論にもかかわるわけでありますけれども、一人一人の労働者が生み出す付加価値、労働生産性の向上を図るべく、環境変化に対応していく必要がある。

 これは次回以降の御議論にかかわるわけでありますが、「時間や空間にしばられない働き方」でありますとか、「雇用によらない働き方」が増加する可能性があるということです。

 下から2つ目の○でありますけれども、どちらにしても技術革新の動向とか労働への影響は、正確な予測が難しい面がございますので、情報の収集・分析は常にやっていく必要がある。技術の進歩に柔軟に対応した政策を考えていくべきだというのが次です。

 次の○でありますけれども、人材育成の必要性。機械では代替困難なスキルの習得・向上でありますとか、技術進歩の果実の社会への均てんが重要だといった話を書いてございます。

 続きまして、生産性向上等に向けた取組関係でございますが、まず現在日本は先進諸国と比較して労働生産性が低いというのがございますので、逆に向上の余地があるのではないか。

 労働生産性を高めるためには人的資本への投資が不可欠である。ITスキルとか創造力、このあたりは必要とされる能力、場合によっては標準的な能力と言えるかもしれませんけれども、それを把握した上で生涯にわたって高めていく必要がある。

 職業を取り巻く環境の変化が速いということで、それに対応していかないといけない、これは企業にとっても個人にとっても必要なことであるということで、前回のヒアリングの御紹介もいたしましたが、個人も当事者意識を持って取り組む必要がある。キャリアコンサルティングの活用も大事だということでございます。

 学び直しですけれども、社会人の誰もが自発的にスキルアップの学び直しをする必要がある、そのためにリカレント教育等の充実をする必要があるということでございます。

 前回も少し御紹介したかもしれませんが、企業の労働者一人当たりの教育訓練費が減少傾向にあるので、より一層の促進が必要ということが次であります。

 人材育成と生産性を高める投資を積極的に進める必要がある。それからICTの投資、これは御議論があるかもしれませんけれども、ICTへの投資は労働生産性の向上に資することも知られているので、人手不足が深刻化するものを中心にICTの利活用促進が必要である。

 イノベーションの実現を図ることが重要であるということでございます。イノベーション活動の促進に向けては、研究開発、先進的な機械の取得、能力ある従業員の確保等が課題とされている。これは前回の資料でつけたとおりでございますが、これに尽きるかどうかという御意見は当然あろうかと思います。

 ワーク・ライフ・バランスは、先ほどの資料3で見たとおりですけれども、一部生産性を上げる可能性もございますという話です。

 技術革新の進展や就業環境の変化によって労働移動が活発化する可能性もある。その中では転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行の確立を促すことによって、労働者のほうもみずからキャリアを設計できるようにする必要がある。

 先般、年金の話をいたしましたけれども、ライフコースの多様化に合わせて、転職等があっても継続的に高齢期の所得確保が図れるようにする必要がある。

 最後に、就業形態にかかわらず、全ての労働者、使用者が適切な労働法の知識等を身につける必要があるということでございます。

 雑駁でございますが、以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、残りの時間50分ほどで本日の大橋委員のプレゼンテーションも踏まえて、事務局から提出された今後の議論に向けてのたたき台(案)について、自由に御議論いただきたいと思います。どなたでも御意見等がおありになる方は挙手をして御発言ください。よろしくお願いします。

 早速、どうぞ。

○冨山委員 ありがとうございます。

 たたき台をメーンに話をしたいと思うのですが、大大大前提の議論として議論の目的関数といいましょうか、ここは割とちゃんと押さえておいたほうがいいと思うのですけれども、労働生産性の議論をしようとしているのですが、これは多分含意としては労働生産性が恐らく賃金にすごく相関関係があって、賃金がふえると基本的には経済にはプラスに働きますから、要は国民の経済的豊かさが増すというので議論しているのだと私は思っているのです。そうすると、まず労働生産性を何でディファインするかということはちゃんと共有しておいたほうがいいと思っていて、その脈絡で言ってしまうと、やはりここは明確に付加価値生産性だと思っているのです。時間当たりの付加価値生産額だと思っています。これははっきりしておいたほうがいいと思うのです。物的生産性は幾ら計算してもほとんど意味がないのです。恐らく今、製造業なんて物的生産性は世界で一番高いくらいなのですが、はっきり言って何個車をつくれましたかというのはどうでもいい話なので、要するに安い値で売ってしまったら意味がないので、それはそういう気がしています。これは押さえの議論です。

 もう一つその脈略で、そういう意味でずっと気になっているのは、さっきの大橋先生のデータは一般的によく出ているデータで、この後の生産性の伸びの関係でも出ていますけれども、労働生産性の世界ランクは結構動いているのです。日本だけがずっと低位安定なのですけれども、動いているのです。上がっている国もあれば下がっている国もあるのです。日本がなぜずっと下かというのもいいのですけれども、メダルを取りにいくときに万年取れない人の分析はしないので、要するに上がっている人は何で上がっていて、下がっている人は何で下がっているのかというのは、私はどこかでちゃんと見ていったほうがよくて、さっきの顔ぶれを見ると、ヨーロッパ諸国であるとかサービス産業物価が高い国が大体高いのです。見ていると大体物価が高い、特にサービス物価、ホテルとかレストランがくそ高い国が高いのです。言い方が下品で済みません。

 私は旅行してみて、何でこのレストランはこんなに高いのだろうという印象を持つところが大体高くて、世界で最もうまいものが安く食えるのは日本なので、何と言ったってあの牛丼が300円で食べられるなんて奇跡的なことなのです。何が言いたいかというと、そういうものをちゃんと見ていかないと、AIの議論も結構なのでありますが、一番大事なところを見落としてしまう気が私はしています。これが1つです。

 その脈略でもう一つ申し上げると、ひょっとすると今まで私たちは暗黙のうちに、例えばAppleGoogleみたいな非常に派手でグローバルでナイスな産業が生産性を規定しているかのような錯覚を持ってきた部分がある。したがって、さっきの大橋先生の議論で言ってしまうと、要するにああいう脈略で言ってしまうと、基本的には経済学的に頭の中は完全に新自由主義型になってしまうので、そういうものは規制緩和型イノベーション、生産性の向上という図式に割となるのですが、さっきの独占の議論で言ってしまうと、付加価値生産性で言ってしまうと、独占の方が好ましい可能性があるのです。要は独占価格で均衡するとすれば、付加価値生産性の概念で言ってしまうと、実は大事なのは生産者余剰なのです。生産者余剰がある部分が資本に分配されて、ある部分が労働に分配されるわけです。消費者余剰というのは値段が成立していないのだから、実は経済的に実現しない三角形なのです。要するに永久にミステリーなユーティリティーなのです。

GDPを豊かさの指標で使ってきたのは、三角形で均衡しているとすると、この三角形の下半分が生産者余剰で、アダム・スミス的に言ってしまうと、ほぼこれと同じサイズの消費者余剰が存在しているはずなので、これが大きくなっていけば総ユーティリティーが大きくなっているという前提で議論をされてきているのです。

 何が言いたいかというと、例えばの話で、大橋先生の仮説3、私はすごく有力な仮説だと思っていて、ゼロマージナルコストエコノミーになってくると、価格均衡点が限りなくゼロになってくるのです。価格均衡点がゼロになると、ほとんどのユーティリティーは消費者余剰としてしか実現されていないので、したがって所得にはなりません。

 唯一所得にする方法は1つしかなくて、この世界のマネタイズ法は1つしかありません。独占です。独占すれば、この三角形で月額定額料金というと取り方ができるのです。だからああいう値づけになるのです。従量課金ができなくなって、月額この三角形定額課金というのができるプレーヤーしかマネタイズができなくなるのです。したがって、独占によってめちゃめちゃもうかる人と、その他大勢という典型的な格差世界が今、実はああいうネットの世界では登場していて、スモールプレーヤーは唯一のマネタイズ方法は独占企業に買収されることなのです。これはシリコンバレーで顕著に起きていて、自分たちで実現できないので、結局独占のプレーヤーに買収してもらうことによってマネタイズするというモデルになっているのです。

 もしそういう世界がどんどん広がってきてしまうとすると、割とオーソドックスな経済学が想定しているものとは違う世界がどんどん生まれてきているので、その中で付加価値生産性としての労働生産性を上げようとすると、価格実現をしてあげなければいけないのです。そうすると、ひょっとすると20世紀の終わりのころに私たちが割とナイーブに信じていたことと違うことが起きてくる可能性があるのです。

 いわゆるAIIoT、第4次産業革命のすごく大事なインプリケーションの一つはそれだと思っているのです。というのは、例えばシェアリングエコノミーとかほとんどがゼロマージナルコストエコノミーなのです。だって車もわっとそろっていて、それをみんなで借りて使うという世界になってきますから、ほとんど限界費用ゼロ経済になってしまうのです。そうすると、実は価格実現は意外と難しいのです。下手をすると、みんなフリーサービスにどんどん近づいていってしまうので、もちろんその世界でユーティリティーが上がっているのだから幸せでいいではないかというのはいいのですが、果たしてそれでいいのという議論がある気がしていて、きょうの大橋先生の話からもインスパイアされてしまったのですけれども、この話と先ほどの上下の話です。だから実は意外とそういう世界にむしろ背を向けて、サービス産業の規制が強い国のほうが、ひょっとしたらそういう産業の生産性が上がっているのではないのかなと思ってしまったりしたのです。

 単に規制を強化しろと言っているのではなくて、ルールデザインというものが、実はここではすごくデリケートで重要な問題を提起していて、単純に緩和すればいいというものではなくて、どうルールを、さっき言った実現供給者余剰を最大化できるか。

 もう一つ大事なことは、その中で労働分配率が下がってしまうと、これが全部資本の収益に上がってしまうので、この議論はもちろん残っているのだけれども、パイがないと分配のしようがないので、パイがゼロになっていく世界で分配の議論をしてもむなしくなってしまうので、そういう感じがあるので、それを今後の議論にどう反映していくかというのは、私はすごく大事な議論かなと、きょうの議論を受けて改めて思いました。

 あと、先ほど中小企業あるいは業種別の流動状況のデータは、ほぼ私のイメージどおりで、この資料を見る限り、少なくとも日本の労働市場の流動性が低いという都市伝説は、ほぼ大企業の正社員においてのみ有効であって、昔から中小企業は流動性が高いのです。ほぼ安定的に高いのです。むしろまたさらに最近高くなっているわけで、過去のヒアリングもそうなのですけれども、例えば企業内訓練の問題であるとか、多くの労働経済学系の先生方に話を聞くと、話は99%大企業の議論になります。今回の働き方改革の議論も、電通で起きた事件というのをベースにしているので、ほとんどが大企業の議論です。

 はっきり言って、私の問題意識の中においては、労働生産性と賃金の脈略では、大企業はあまり重要でない。おおむね放っておけばいいです。むしろ私は何も変えなくてもいいくらいに思っています。どちらにしろ人手不足だし、大企業はとにかくグローバリゼーションが激しいので、日本の労働市場のいいの悪いのと言っても、伸び代は全部海外になるので、例えばトヨタやパナソニックの経営に今後あまり影響はありません。今どき加工貿易立国で海外にはかかわりません。全部現地生産、現地開発、現地販売です。だから、はっきり言って日経平均225、あの世界はこの世界と関係ない世界になってしまっているので、私はあんなものは忘れてしまっていいと思っています。

 圧倒的に重要なのは、中小企業やサービス業で働く人たちの労働政策をどうするかということになるので、その脈略において、過去のいろいろな分析が出てくるのですけれども、さっきのワーク・ライフ・バランスが滑った転んだといういろいろな分析があるのですが、これは分析しているのはほとんど大企業でしょう。いろいろな先生たちが調べていますけれども、中小、その他、零細業でこういう調査をちゃんとやっているのかなと思っていて、答え方を見ていると、ヒアリングも多分大企業の人事にヒアリングしているように聞こえるのです。長期雇用がいいの滑った転んだと、はっきり言って中小企業はそんなことを考えている場合ではないので、今は人を雇うので精一杯なので、どうもこの手の話は、終身雇用の支持割合も当然こうなるのは当たり前で、だからどうしたで、だって現実の雇用者、7割、8割の世界に実際に終身雇用なんてないのだから。現実問題として終身雇用を中小企業に強制できないでしょう。そうすると、どんどん潰れてしまうだけの話なのです。

 お願いしたいのは、この後の議論をするときに、AIがどうたらこうたらもいいのだけれども、現実にはほとんどのこれからの労働者の圧倒的多数は、年間少なくとも10%、大体20%くらいの流動性がある中小企業のサービス業の中で人が働くということを現実として捉えた議論を今後していかないと、きょう聞いていて思ったのですが、何となく知らない間に大企業の話になっているのです。それは統計もとりやすいし、インタビューとかアンケートもとりやすいからそうなってしまうのだが、そこに固定的に人がいるし、固定的に人事部が存在しているからとりやすいのだけれども、ここは本当に申しわけないが、余り改善余地はないです。長時間労働を短くしよう、結構です。確かにパナみたいな会社の労働時間を短くしても生産性は関係ないので、どんどん短くしてもらって結構だと思います。そこは全体に与えるインパクトは小さいし、今後ますます小さくなりますから。だから、くどいようですけれども、AI化で一番影響を受ける可能性があるのも中小企業と絶対サービス業です。あるいは農林水産業なので、そこはぜひよろしくお願いします。

○守島部会長 ありがとうございました。

○奈尾労働政策担当参事官 まず、私どもで使っている労働生産性についての考え方を一言申し上げておきたいのですけれども、基本的にはマンアワーベース、これが分母です。雇用者数掛ける労働時間数。分子が国内総生産をとっているので付加価値ベースかと理解しています。一般的に労働生産性を国際比較する場合、OECDの統計を使うことも多いと思うのですけれども、OECDでは分子の付加価値はGDPでとっていると理解しております。

○守島部会長 ありがとうございます。

 ほかにどなたか。

 では、後藤委員。

○後藤委員 ありがとうございます。

 1点目は、冨山委員からもありましたとおり、生産性の向上にあたっては、適正な対価を払うことが必要であると思います。サプライチェーンの中で買い叩き等が発生していると、生産性も下がっていくのは間違いないと思います。適正な対価を支払うという仕組みについても、しっかり目を向けていくべきであると思っています。

 2点目は、大企業は政策の射程におかなくてよいというお話だったのですが、大橋先生の話に絡んでもいますが、生産性の計算の分母となる労働時間を短くしていくということは必要です。この点は冨山委員からもありましたので、その方向感もきちんと盛り込むべきであり、これは大企業と中小企業も同じ状況にはあるのだと思います。その点は留意すべきであると思います。

 3点目は、少し話は変わりますが、これまでの部会での議論の中でもその必要性が指摘されてきましたが、学び直し、リカレント教育への投資もきちんと入れていくべきであると思います。また、対象と主体をどうするかということも重要であると思います。在職者、離職者、あるいはこれからキャリアを伸ばしていきたいといった人たちに、どのプレーヤーが手を差し伸べるのか、あるいはサポートしていくべきなのか。かつ、それに付随する財源を誰が負担していくのか。教育訓練の公的支出や企業の教育投資が少なくなっているという資料も前回まであったと思いますので、その点もしっかりと見ていくことが必要ではないかと思います。一部に、雇用保険から財源をたくさん出したほうがいいのではないかといった議論もあったと聞いています。先ほど武田委員からも、リーマン・ショックの後の危機的な状況も考えると、失業時の所得補償という保険機能を有する雇用保険を教育投資にどんどん使っていくとなると、過去の年金の問題と同じような問題も起こってしまいます。先ほど申し上げたとおり、どういった主体がどういった対象をどういった財源の裏付けをもとにサポートしていくことについて議論をすべきであると思います。まとめになるかどうかわかりませんが、その視点を入れていただくことが必要ではないかと思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 ほかにどなたか。

 どうぞ。

○冨山委員 今のお話は全くそのとおりで、7割くらいの人が中小企業で働いている現実があって、サービス業で働いている現実がある中で、企業の側にそんな真面目に雇用訓練を期待するのは、どう考えてもあり得ない話で、そんなものは無理なのです。かつ、これはイノベーションを受ければ当然また流動化してしまうわけですから、今、先生が言われたとおりで、リカレント教育は公共財と考えざるを得なくて、通常の個々の競争の中で生きていかなければいけない民間プレーヤーの立場からすると、これはゲーム理論的には裏切り戦略になるのです。人がほかのところに出て行ってしまうわけですから、やはり協調戦略を取りにくいのです。とすると、これはある種公共領域とか協調領域、公共財というか協調領域として考えなければいけなくて、実は協調領域の世界において企業がお金を出す動機づけが働きますかどうですかということになってしまうのです。恐らくこの労働市場における職業訓練領域というのは、どんどんどんどんそういう非競争領域化していってしまうので、逆に言うと、実はその一方でアメリカの今の特にトップIT企業は、めちゃめちゃなお金を人材投資しています。何に使っているかというと、残念ながら一部のさっき言ったオリンピックアスリートをつくるためにめちゃめちゃな金を使っています。理由は簡単で、投資が回収できるからなのです。そうなってしまうと、この話は結局どうしてもすごくエリートの数パーセントの世界の話になってしまうのです。

 かつ、この人たちの多くは、どちらかというと労働市場的には無国籍労働者ですから、あるときはシリコンバレーにいて、あるときは上海にいて、あるときはテルアビブにいてという無国籍型のワーカーになっていってしまう人たちなので、国民経済という観点で考えてしまうと、むしろそれ以外の 90%、80%のことを真面目に考えなければいけない。その世界によっては私も全く同じことを思っている。

 要は、よくある議論で、会社が最近人材投資をしなくなったのはけしからんとそこで幾ら言ってみても、おっしゃるとおりで全くむなしい議論で、今、申し上げたある種のマーケットフェイルが起きているわけですから、労働市場の流動性が10%以上あるところでほとんどの人が働いているという前提で、どういうデザインをすればそれがワーカブルかということを、ぜひ真面目に考えていただきたいです。

 もう一つあるのは、AIの領域に入ってきたときに、AIを使っていろいろなことをやるのです。例えばバス会社などもいろいろな生産性向上をやっています。実は、例えばGoogleがただで提供しているナビサービスとかを私たちは使うわけです。さっき言ったようにこの部分はユーティリティーとしては計算されないのだけれども、ゼロマージナルエコノミーで生産性の向上手段を使えるようになってきているのです。

 ここもすごく大事なポイントで、結果的に価格実現をできるプレーヤーにとっては、コストサイドが劇的に下がる可能性があって、すなわちほとんどが今度は供給ががっと下がるわけです。ということは生産余剰がふえる可能性を持っていて、恐らく今後懸念されるのは、日本の多くの中小企業、サービス産業がクラウド化してオープンソース化して、劇的に社会的にはどんどん協調領域になっていくAIテクノロジーを上手に使えない可能性がある。さっきのIoTの話も、これも大橋先生から示唆がありましたけれども、この危険性があって、ここで物すごく生産性格差がついてしまったり、あるいはそれができない事業者の中に閉じ込められている労働力は、すごく低い賃金で甘んじ続けるという危険性があって、ここをどう考えるかというのもあって、どちらかというと労働者の訓練というよりは、経営者の訓練の問題かもしれないのです。

 繰り返しになってしまいますけれども、AIのああいういろいろなテクノロジーは今、かなりの部分はオープンソースになっています。今後ますますオープンソース化が進みます。そうすると、クラウド化が進むということです。クラウド上でかなり安く、あるいは場合によってはただで使えるようになってくるので、まさに使う側の技量の開発する能力。ですから、中小企業は天才AI開発者なんて持っている必要はなくて、そんなものはGoogleにやらせておけばよくて、すぐただでアップされてしまうので、それを使う側の訓練の問題もぜひ考えてもらえたらいいなと思います。長くなって済みませんけれども、大事なポイントなのです。

○守島部会長 では、御手洗委員。

○御手洗委員 ありがとうございます。

 後藤委員のお話にも通ずるところがあるかと思うのですけれども、私はこのたたき台を見ていて、やはりこれだけ変化の局面にあって、行政がやるべきことは何かという観点が要るかなと思いました。例えば企業はもっとICTに投資しましょうみたいな話は、企業がやることなので、わざわざここで言うことでもないでしょう。本来的に厚労省としてやらなくてはいけないことは、これだけ変化が起こっているときに、働く人に対するセーフティーネットを適切な形で用意することなのではないかなと。

 今のたたき台の項目だと、2つ目の項目、「働く人すべての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組について」という中の下のほうに、さらっと年金ポータビリティーの話とリカレント教育の話が入っていたりします。私は、セーフティーネットの整備こそ重要で、それは特に社会保障と教育機会の提供になるかと思うのですが、それは別章で章立てをつけて書くべきことなのではないかと思います。

 社会保障については、年金ポータビリティーの活用を促進すべきという、ことしの5月に施行される法令を使えば大丈夫、で終わっているような文章に読めるのです。そうではなくて、例えば受発注で仕事を受ける形態になってきたときに、失業保険がなかったりとか、体を壊したときに業務発注の形態だと仕事を受けられないのでその期間収入がなくなってしまうという事態が起こります。そういう人に対するサポートは今何も考えられていないと思うのです。なので、まず社会保障という意味でのセーフティーネットはどういうことが今穴が開いていて、何を整備しなくてはいけないのかというのは、大きな検討項目ではないかと思います。

 教育に関してなのですけれども、これも技術革新などによって今持っているスキルが陳腐化していってしまうことは大いにあることで、今在籍している企業だけではなくて、今後の自分の将来価値を高めるためにも、これはすぐAIができてしまうことだよなと思いながら仕事をしている人が、新しいことを学び直す機会を社会として用意していくことも大きいことかと思います。

 それをどこまで行政がやって、何を企業がやるかということについてなのですけれども、これは企業にとっては流動化したマーケットでは人を育てることのインセンティブが働かないから、公の場として行政がやるべきというだけでは弱いかなと思っています。なぜかというと、日々刻々と変わる状況に対して、行政の人が今エクセルをやりましょうみたいな機会を提供したところで、そこは本当に使えるスキルを教えてくれるのかなと思いますし、全員が学べるものはもはやコモディティーのスキルになってしまうので、その人のキャリアアップにはつながっていかないと思うのです。だから、ベーシックなことを学べる場を行政が整備することは大事だと思うのですが、それだけではなくて、企業が人を育てることにはコミットするという枠組みづくりが要るのかなと。終身雇用だけではなくて、どんどん人がやめてしまうかもしれないけれども、なお、人を育てる。そこで市場の失敗が起こるのであれば、これは注意深く考える話ではありますけれども、毎年の採用人数に対してある程度教育投資をするみたいなことを企業に対して奨励していく。長期雇用とは限らないが、やめてしまうかもしれないけれども、その人たちにきちんとスキルを身につける場を提供していくことを企業に促す行動まで行政は必要になってくるのかなと、個人的には思います。

○守島部会長 ありがとうございました。

○奈尾労働政策担当参事官 今、御手洗委員のおっしゃったことは、半分くらいは恐らく次回以降に御議論いただくことかなと思っておりまして、典型的には雇用類似の働き方について現状どうなっていて、それを今後どういう方向に持っていくかという御議論をお願いしようかなと思っているところでございます。

 教育訓練について、これはきょうの資料のたたき台については、これまでの意見とかヒアリングの御議論の中身を中心に書いておりますので、当然いろいろな御意見があろうかと思います。それはきょうも含めて出していただければということでございますけれども、確かに国と企業と個人、これはそれぞれ今後どういう感じに教育訓練に主体的に取り組んでいくかとかといった話はいろいろな御意見があると思いますので、そこは出してもらえればと思っています。

○守島部会長 では、佐々木委員。

○佐々木委員 ありがとうございます。

 まず、一人一人の生産性を高めることと給料の関係を考えると、私もたくさんの人の面接をしている中で、今のお給料はどのくらいですかと聞きながら面接をすることが多いのですけれども、本当に企業や業界によって給与のスケールが違う。同じ人が何でこの人はここの会社で一千万ももらっているのだろう、何でこの人は350万で働いているのだろうということを長年考えて来ました。いろいろな機会で現状とかを伺うと、一千万もらっているのですけれども最近やめたのです、転職をしようと思ってと。あなたはやめなければよかったのに、何でやめてしまったのと思う人もやはり何人か出くわすし、何でそんなお給料で今まで働いていたのという人にも出会って。これが業界だったり、会社の規模だったり、成長過程の会社かどうか、さまざまなもので違う。でも、それは何人もの人に会って話を聞いた私の側からは見えますけれども、本人は自分の周りの人の集団の中での、いろいろな何年目だとか何だとかということで、そんなに自分が高いか安いかとわかっていない。

 今度は転職市場の中でその人たちがどういう評価をされるかというと、またこれも微妙で、そういった転職したい人たちがいろいろと登録しているところに最近アクセスしてみて、いわゆるスカウトができるのです。新卒ではなくて中途採用の人たちのプールがあって、スカウトができるのでスカウトをして、いろいろと来てくれる人とお会いするのですけれども、どうですかと聞くと、毎日60通とか100通とかの企業からオファーが来るそうです。転職したいと言っているプールの何十万人もの人の中のよさそうな略歴の人です。その方々が、仕事は星の数ほどあるのだなということを今、実感していますと言って、どうやって選んだらいいかわからないとなっています。

 ということは、これから流動性を図るということは、やはり一人一人の労働者、働き手が自分はそもそもどのようなところにいて、何が本当は足りなくて、実は何がすぐれているのかがもう少し客観的にわかる仕組みがあるといいなと。これは国がやることなのか、民間がやるサービスなのかもわかりませんし、やったことはないのですけれども、多分転職会社みたいなところはあなたの価値を調べますみたいな広告がよく出ているので、もう少し自分を客観的に見ると、仮にブラックといわれる企業に勤めている人は、ほかがいっぱいあるということもわかるのかもしれないし、あるいは自分が意外といい待遇を受けていることがわかった人は、もう少し頑張るのかもしれないということがあるのかなということが1点。

 それに付随して、教育機会が中小企業の場合はなかなかなくて、どうしても外のセミナーに送り出すとか、自分たちの中で教え合うとかということしかないので、こういったものがもう少し中小企業向けには仕組みがあってもいいのかなと思うことが2つ目。

 それに付随するのですけれども、流動性ということとも関係してくるのですが、大企業の人と中小企業の人がもう少し、例えば出向みたいな形なのかわかりませんが、交流する機会があって、つまり企業間でもう少しお互いに、会社をやめないながらも、お金に少し余裕のある企業は出してあげるということにもなるかもしれませんが、そういう出向の機会があって、いろいろなところでぐるぐる回るといいなと。今、大企業の出向は、どちらかいうとお役所に出向するとかで、人脈づくりとかそういう感じでやっているように思うのですけれども、もう少し日本国の経済を考えたら、中小企業との行き来をしたりするということを積極的にしていったら、教育機関がなくてもお互いの会社が活性化されるのかなと思っています。

 最後に、雇用の流動性はずっと叫ばれていて、流動するといいと言っている一方で、決算書などでは勤続年数は何年か、社員がどれだけ長い間そこにいたのかというのでその会社がよいと評価されるというのが私はいつもわからなくて、私たちの会社のように出産だ何だということを自由にやったりすると、1年働いて1年は契約になったり、また1年休んだり、また1年働いたりとすると、いつも勤続年数は3年くらいになってしまったりするのですけれども、実は15年同じ人が働いていることもあったりします。なので、企業価値を見るところに勤続年数を入れていること自体がいつも不思議に思っていて、このあたりは教えていただきたいところなのですが、流動性を高めることと企業にステイするという関係も整理しないと、企業はどこに向かっていくと自分たちの企業がいい企業だと評価されるのかということにつながらないかなと思います。

 1点だけ。経営者の教育というのがあったのですけれども、やはりこれはすごく重要だと思っていて、経営者が雇用の法律もそうですが、イノベーションのこともやるというのは、こういうことはきっと実現はしないのでしょうが、教員が5年に一遍、10年に一遍、外でちゃんと勉強しないといけませんよとなっているみたいに、今は簡単に会社がつくれるのですが、最低何らかの試験に、起業試験みたいなものに合格した人しか起業できないようにしたら、ものすごくブラックな企業はなくなるのではないかと。免許を取るみたいに、車を運転するみたいにする。お金を出せば会社をつくれるのではなくて、すごくベーシックでいいのですけれども、雇用法とか知っているかどうかのチェックをしてから会社をつくらせればいいのになと思っていたことがあるのです。同じように考えれば、経営者の訓練でITとかというのも、それが10年に一遍かよくわかりませんけれども、経営者試験みたいなものがあるとか、あるいは何か教育に行くとかということも含めて、経営者はもう少し教育対象として考えるというのはあるのかもしれないと、これも議論のための発言とさせていただきます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 では、川崎委員。

○川崎委員 ありがとうございます。

 私も少し御手洗委員と発言がかぶるところがあるのですけれども、人材育成のところで教育をどうしていくのか。どこが主体的に労働者のスキルを上げていくのかといったところで、行政の役割もありますと。ただ、ポータブルのところは行政がやるにしても、結構企業特化した部分もどうしても企業それぞれにはある部分がありまして、そこは私たちの会社でも比較的短期雇用する人たちもいないわけではない。彼らはやはり研修とかいろいろな形で育成しますというところもありますので、企業が育成する部分に関しても何らかの後押しをするようなものも、ぜひ議論の検討の素材として上げていってもらいたいと思っています。

 それから、生産性の向上をどうしていくのかといったところでの第一次産業、第二次産業、第三次産業を見ていった場合に、日本は非常に第二次産業のところは生産性が高いです。ここは世界的に高い。ここの分野は非常にITもよく使われていますということだと思うのですけれども、これから先、第三次産業、サービス業と第一次産業のところをどうやってITを使って生産性を上げていくのか。これは結構うまく使って生産性を上げている外国の事例もありますし、例えば農業でもITを使って生産性を上げていく事例はたくさんあるので、そういうように少し産業別で見たときのIT投資のあり方みたいなところも、今後議論をするときに少し検討のところに上げてもらえたらと思っています。

○守島部会長 ありがとうございます。

 ほかにどなたか。

 では、長谷川委員。

○長谷川委員 長谷川です。

 私は今の話を聞いていて、自分と同じような考え方の先生がいらっしゃったのでやはりと思ったのですが、労働政策の立案にあたっては、企業規模を考慮しないで全部一くくりで政策立案する点に限界が来ているのだと思うのです。1,000人規模以上の事業所、300999人の事業所、100299人の事業所、3099人の事業所と細かく見た上で、そこで今どういう企業がどういう業務、仕事しているのかということを分析しながらどういう政策立案することが必要なのです。

 私は八王子の町の中を必ず一週間に何日かゆっくり歩くのです。そうすると、昔は大和田の工業団地に製造業がどんとあったのですが、もうそこはない。町の様子もがらっとさま変わりして、あるのはサービス業です。一番多いのが介護、デイケアサービスです。それから指圧とかマッサージとかというものがすごく多くなっています。その次が花屋さん、美容院、最近コーヒーブームで若い人たちがコーヒーショップの小さなお店を開いている。町の様子はさま変わりしており、そういうところに若い人が結構働いています。

 また、昔は安いコーヒーショップは学生アルバイトだったのですけれども、今は学生アルバイトではないです。女性たちが働いている。年齢も学生ではなくて、もっと年齢の高い人たちが働いています。いつもそういう人たちを見たときに、この人の賃金はどのくらいなのか、社会保障はどうなっているのか、この人はけがした時にどうなのかということばかり考えています。きっと、賃金は最近最低賃金が上がっているから少し上がっていますけれども、そんなに高いわけではないです。労働安全、労災は難しいぎりぎりのグレーのところにいるのではないか、そんな気がします。無論、社会保険は保険料が自己負担の国民健康保険グループではないかなという気がするのです。そうすると、この人たちが将来70歳になったときにどうなのだろうかとか、そんなことを思いながらずっと町の中を歩いていると、やはり労働政策の中にこういう人たちの問題をきっちりと整備して、政策を打ち立てないといけないのではないかと思うのです。

 従業員数が1,000人以上のようなグローバルな大企業などでは、従業員を確保するために自社でいろいろな制度などを作ると思うのです。もちろん、大企業に対しても警告を鳴らしておかないと、どこかの国のような物づくりみたいに衰退してしまうこともあるので、そこもやはり見ておかなければいけないとは思いますが、もう少し事業規模毎に労働政策を検討する必要があると思うのです。

 また、現状では、能力開発は全く個人任せです。八王子に東京都の職業訓練学校がありますが、いろいろな人が来るのでそこは満杯です。一時、厚労省にいろいろな能力開発の施設がありましたけれども、整理、統合したりして、少なくなってしまいました。中小企業で働く労働者やサービス業で働いている労働者の能力開発、人材育成をやろうと思うと、パブリックなものと民間が連携してやらないとうまくできないと思います。

 もう一つは、これも皆さんと同じなのですけれども、資料4の裏面の上から○の4、5などに記載されていることは、厚労省というよりも経産省、中小企業庁の役割ではないかと思います。商工会議所は昔のお友達クラブではだめなのです。お友達クラブから脱皮して、起業家の育成などをやるべきです。商工会議所はまだ昔のお友達クラブになっているので、もう少し経産省と厚労省がお互いに連携しながらやることが必要なのではないかと思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 ほかにどなたか。

○奈尾労働政策担当参事官 若干事実関係等を中心に補足をさせていただきたいと思いますが、順不同でございます。

 まず特に中小企業、大企業の企業の規模の違いでありますが、これは確かに同じように処方箋を考えるわけにはいかないかなというのは、事務局としても思っております。特に最近中小企業の皆様方とは働き方改革をめぐって話をする機会もあるのですけれども、とにかく中小企業の皆さんがおっしゃっているのは、一様に人手不足で全然人が採れないという話が、これが多分一番切実な課題かと思っています。

 そういう中で、教育訓練、このあたりもどのくらいコストをかけられるのかという話も時々聞くわけでありますけれども、当初の施策ではないのですが、一般的には中小企業庁が持っておられる中小企業大学校というものがございまして、こちらのほうでも研修をしたり、もともと中小企業向けとか中小企業支援者向けと聞いていますが、取り組みをされていると思っていますが、そういったあたりの取り組みについても多分御意見があるのかなと、きょう聞いて思ったわけでございます。

 人材育成についてはITみたいなもの、AIはちょっと別なのですけれども、IoTなどについてはかなり標準的な部分がございますので、これは全従業員といいますか、産業、規模を問わず、従業員が身につけなければいけない標準的な部分とすると、そこは標準的なものとして取り組んでいただく必要があるし、当省としても何らかの支援をやる必要があるのかなという形で今動いていると理解しています。それだけで生産性が上がるかどうかというのはありますので、そのあたりはまた御議論をいただくことかなと思います。

 最後、長谷川委員がおっしゃられていた例えば商工会議所の話がございましたけれども、今日の資料4については、これまでの議論とかヒアリングの内容を踏まえたものでございますが、当省の分野でとどまらない部分もあろうかと思っています。このあたりについても具体的にここはこうすればいいという議論があれば、そこは今後の議論としてあり得るという前提で御議論いただければと思っております。

○守島部会長 では、冨山委員。

○冨山委員 特に今の長谷川委員の最後のところがすごく大事です。

 政策決定においてずっと私は欠陥があると思っているのは、大企業の世界においては大企業の経営者を代表している昔でいえば日経連、今でいえば経団連がいるのです。大企業で働いている労働者をおおむね代表している連合があるのです。中小企業の世界はほとんど組織化されていないので、経営者を代表する日商はあるのだけれども、そこで働いてる人の意見を糾合的に、政治的にまとまった形で施策に反映するメカニズムが存在しないのです。だけれども、繰り返しますが、日本国民、日本の勤労者の7割はこのセグメントにいるのです。

 そうすると、政策決定はすごくゆがんでいて、圧倒的少数派にすぎない大企業の経営者、これは超少数派です。かなり少数派であろうところの中小企業の経営者と、いまや少数派になってしまった、組織率が18%くらいでしょうか、大企業の労働者の声というのは政治的にかなりシステマティックに反映されるのだけれども、要するにここの一番大きな固まり、恐らく低い労働生産性のほとんどの原因はここに存在しているので、政治的にはこれがすっぽり抜けているという政策決定過程になってしまっているのです。

 この問題はやはりかなり深刻にいろいろなゆがみを生んでいると思っているので、当然中小企業社にヒアリングに行かれるのは結構なのですけれども、経営者の言い分を聞いていると、例えば美容理容業界なんかも、ヘアサロンもオーナーの声は反映させるけれども、そこで働いている人の声はどこかに飛んでしまうのです。なので、あの業界も政治的にややこしい問題がいろいろあるでしょう。例のキュービーネットが滑った転んだという議論になって、実は普通の美容室よりもキュービーネットの社員のほうが現実問題として給料が高いのですね。でも、一部の人たちはあそこはブラックに見えるのだけれども、そういうことが結果的に政策決定上、違う理屈でそういう政策になってしまうのです。なので、そこのところはこの後、特に自由にここは議論をしようという場をせっかくつくったので、今の長谷川委員の意見は私も全く同意見で、空白ゾーンの実態や思いをどう吸い上げられるか、あるいは空白ゾーンの人たちの生産性を上げるために何が本当にいいのか。

 多くの場合、この世界でも労使の利害は相反するとか、大企業以上にかなり対立します。わかりやすく言ってしまうと、今どきどちらかというとマルクス・レーニン主義的な労働からの搾取が行われているのはこちらなのです。ストレートに言ってしまいますが、さっきの美容師さんもそうなのだけれども、搾取型産業が多いのはこちらなのです。

 また余計なことを言ってしまうと、大企業においては昔ほどのシャープな対立構造は今はなくなってきてしまっているので、むしろここのほうが話の根っこが深刻だと思っているのです。本当に許せないようなブラックは出現頻度においては、セクハラ、パワハラを含めてこちらのほうが圧倒的に多いですから、なので、今の話はすごく重要なポイントなので、そこの政策的なプロセスの偏りというものを考えてくれたらうれしいなと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

 ほかに。

 岩村委員。

○岩村委員 もう時間もないので一言、二言だけです。

 きょうの資料4は今までの議論とヒアリングを非常にうまくまとめていただいて、今後の議論を進める上で有益なものだと思います。皆様方がいろいろお話しになったので、あえてつけ加えることもないのですが、私もどちらかというと従業員規模1,000人以上の企業についてはどちらにしろグローバルに動いているので、国際社会経済あるいは国際市場の動きに応じて可変的にやっていかないと負けてしまうという世界にいますから、放っておけとは言いませんけれども、自分たちでやる力がある程度はあるのかなと思っています。

 他方で、問題としては中小企業のところにあるのと、もう一つは私の限られた知見でも、先進諸国で見ても、大体中小企業が雇用の創出力を持っているということがありますので、今後AIの発展といったことを見越して、その中でどうやって雇用をつくっていくかというときには、中小企業のところをどうやって伸ばしていくかが恐らく重要なポイントになるだろうと思いますし、できるだけ若い世代の人が自分で起業をしていくことをどうやって支援していくかということを、今後一つ考えていくのが重要なポイントかと思っています。

 その中で、先ほど佐々木委員が免許みたいなものというアイデアをおっしゃっていましたけれども、若い人が起業していくのを支援していく中で、競争法とか、知的財産法とか、労働法制とかといったものについてもある一定程度学んでいただくというようなメカニズムを支援策の中に組み込んでいって、そして起業を支援し、伸びていくことを支援していく。そういう方策を考えていくのも一つの方向性としてあるかなと思っています。ここになってくると、厚労省の守備範囲と経産省の守備範囲と重なるようなところなので、そこはうまくタイアップしてプラスに回っていく仕組みができるといいのかなという気がしています。

 以上でございます。

○守島部会長 では、最後に御手洗委員。

○御手洗委員 今まで長谷川委員、冨山委員、岩村委員、先生方がおっしゃってくださっていたこととほとんど同じなのですけれども、私は実際地方で零細企業というか泡沫企業をやっておりますが、いろいろな人を見るのでイメージが湧きやすいように具体例でお話ししようかなと思います。

 例えばうちで働いている人というのは、水産加工会社で20年間さんまを切っていました。だけれども、足が痛いからもうやめましたみたいな人なのです。20年間さんまをずっと切り続けていたので、さんまの切り方は抜群に速いしきれいなのですけれども、さんまを切る以外やったことがないのです。そういう人たちが本人の希望によって編み手さんになっていたり、さらにはスタッフにもなっていたりします。そうすると、オンラインストアの管理とかをやってもらおうとすると、パソコンとかは怖くてさわりたくない、みたいな感じなのです。そういうものはさわったことがないので、ボタンを間違えて押したらパソコンが爆発するかもしれない、くらいなのです。多少押し間違えても大丈夫ですからというところからパソコンの使い方を教えて、そこからオンラインシステムを使えるようにしてとか、そういうレベルなのです。

 ただ、冨山先生もおっしゃっていたように、人数としては圧倒的にそういう人が多いのだろうなと思います。東京にいてある程度、言葉が悪いですけれども、エリートの人とか大企業の人と話していると気づかないかもしれないのですが、長谷川委員のおっしゃるように町を歩けばそういう人のほうが人数が多いのは直感的にもわかることで、やはり議論を混同させないようにやっていくことが大事なのかなと思います。

 また、冨山委員が言われていた地方のほうがブラック形態が多いということは、一つ構造的な要因があるかなと思います。日本の大企業の場合、社員の人が上がっていってサラリーマンが最後は社長になれる。経営陣に移行できて、経営者は従業員だった経験があるわけですけれども、地方の中小企業のほとんどはオーナー経営者がやっていて世襲です。ですから、地域の中で完全に階級格差みたいなものがあって、社長の子は将来社長になれる。お家もこれくらいの暮らしぶりである。従業員の子はずっと従業員である。ここは物すごい給与格差も生活の暮らしぶりの差もありますし、従業員のお家の子は起業とかをしない限り、こちらに昇格しないのです。そういう構造上の問題もあります。ですので、より職場環境なども改善されにくいのだろうと思います。こういうところまで踏み込んで見ていかないと、社会全体の働く人の環境改善にはなっていかないのかなと思っております。

○守島部会長 それでは、そろそろ時間になりますので、ほかにどなたか御発言がなければこれで終わりにしたいと思います。活発な御議論をどうもありがとうございました。

 最後に、事務局から次回以降の日程についてお話しいただきたいと思います。

○奈尾労働政策担当参事官 次回の日程でございますけれども、4月20日を予定しております。場所等、詳細につきましてはまた追って事務局から調整の上、御連絡させていただきますのでよろしくお願いいたします。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、本日はこのあたりで閉会とさせていただきたいと思います。

 本日の会議の議事録につきましては、審議会の運営規定により部会長である私とほか2人の委員に御署名をいただくことになっています。つきましては、佐々木委員、武田委員に署名人になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、本日の会議はこれで終了といたします。ありがとうございました。


(了)

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