ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金部会)> 第15回社会保障審議会年金部会(2019年12月25日)

 
 

2019年12月25日 第15回社会保障審議会年金部会

年金局

○日時

令和元年12月25日(水)15:00~17:00

 

○場所

東京都港区新橋1-12-9

AP新橋 4階(D+Eルーム)

○出席者

神 野 直 彦(部会長)
阿 部 正 浩(委員)
植 田 和 男(委員)
小 野 正 昭(委員)
菊 池 馨 実(委員)
権 丈 善 一(委員)
駒 村 康 平(委員)
小 室 淑 恵(委員)
高 木 朋 代(委員)
武 田 洋 子(委員)
出 口 治 明(委員)
永 井 幸 子(委員)
原 佳 奈 子(委員)
佐 保 昌 一(委員)
牧 原      晋(委員)
諸 星 裕 美(委員)
山 田      久(委員)
細 田      眞(委員)
米 澤 康 博(委員)

○議事

2019-12-25 社会保障審議会年金部会(第15回)
 
○神野部会長 それでは、定刻でございますので、第15回を数えます「社会保障審議会年金部会」を開催したいと存じます。
年末の大変お忙しいところ、さらにお寒い中を御参集くださいまして、本当にありがとうございます。
本日の委員の出欠状況でございますが、藤沢委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。
また、菊池委員、永井委員から少々おくれて到着される旨の御連絡を頂戴しています。
阿部委員、さらにおくれて到着される菊池委員も、所用のため途中退席なさる御予定と承知しております。しかし、御出席いただきました委員が3分の1を超えておりますので、会議が成立していることをまずもって御報告申し上げたいと思います。
それでは、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきたいと存じますので、事務局からお願いいたします。
○総務課長 年金局の総務課長でございます。
厚生労働省におきましては、審議会等のペーパーレス化を推進しております。本日の部会におきましてもペーパーレスで実施させていただいております。
したがって、委員の皆様はタブレットの中に資料を入れておりますけれども、本日は資料といたしまして、まず、資料1「社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)」、資料2「年金制度改正の検討事項」、参考資料といたしまして、参考資料1「年金制度改革等に向けた提言」、これは自由民主党社会保障制度調査会・年金委員会・医療委員会の提言でございます。参考資料2「人生100年時代戦略本部取りまとめ ~人生100年時代の全世代型社会保障改革の実現~」、参考資料3「安心の全世代型社会保障の構築に向けて(中間提言)」、参考資料4「全世代型社会保障検討会議中間報告」、以上を使用いたします。もし、不備等ございましたら、事務局にお申しつけください。
事務局からは以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、カメラの方は申しわけありませんが御退席いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○神野部会長 それでは、これより議事に入らせていただきますが、お手元に議事次第が行っているかと思います。御照覧いただければと思いますけれども、本日、議事を1つのみ準備してございます。「社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)について」ということで議事を準備させていただいております。
昨年4月からですので早1年8カ月の時間が経過いたしましたけれども、そこからスタートして、今後の年金制度のあり方に関して委員の皆様方からさまざまな論点について御議論を頂戴してまいりました。本日は、これまでの議論を事務局において議論の整理(案)という形でまとめていただいております。これについて、まず事務局のほうから御説明いただいた上で、委員の皆様方からの御意見を頂戴したいと思いますので、最初に事務局のほうから御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○年金課長 ありがとうございます。年金課長でございます。
今、部会長からも御紹介がございましたように、昨年4月4日に第1回目の年金部会におきまして、これまでの改革のレビューから審議をスタートいただきまして、去る11月13日まで14回にわたり精力的に御審議をいただいたところでございます。その後、政府・与党でも年金制度の改革の議論が進みまして、12月19日に全世代型社会保障検討会議の中間報告で年金制度改革についても記載されております。その際、特に適用拡大の企業規模ですとか拡大を行う時期、それから在職老齢年金制度について中心に議論が行われたところでございます。
本日は、これまで当年金部会で委員の皆様方に御議論いただいた事項に関しまして、政府・与党での議論の結論なども踏まえつつ、事務局のほうで議論の整理を作成させていただいておりますので、ポイントを絞って御説明申し上げたいと思います。
それでは、資料1の「社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)」をお開きいただきたいと思います。
「I はじめに」、「1 これまでの年金制度改革の経緯」ということで、最初の2つの○では、平成16年改正について記載させていただきました。
1ページの下の最後の○ですけれども、平成21年の財政検証、改革後初めての検証になっておりますが、それと社会保障と税の一体改革について書かせていただきました。
2ページに行っていただきまして、次の段落では、社会保障制度改革国民会議、社会保障制度改革プログラム法について書かせていただいております。
次の○は、2回目となります平成26年財政検証についてと、そこで初めて行われることになりましたオプション試算というものを行うことになったということを書かせていただいております。
その下の○ですけれども、こちらは平成28年の年金改革法について書かせていただいております。この改革法は、社会保障制度改革国民会議報告書の中のマル1、マクロ経済スライドの見直しに対応したものとなっているということでございます。したがいまして、マル2、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、マル3、高齢期の就労と年金受給のあり方、マル4、高所得者の年金給付の見直しが引き続きの課題となっていたわけでございます。
3ページに行っていただきまして、「2 平成28年年金改革法成立後の検討」ということで、昨年4月から年金部会をスタートさせていただきましたということが最初の○でございます。
2つ目の○でございますけれども、その中でも短時間労働者に対する、被用者に対する被用者保険の適用拡大が一つの大きなテーマでございまして、「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」の議論の取りまとめの報告を受けながら御議論をいただいたということでございます。
その下の3つ目の○は、政府における改革検討事項がどのように設定されていたかということを記載させていただいておりまして、その下の○で、当年金部会でも短時間労働者への被用者保険の適用拡大、高齢期の就労と年金受給のあり方等、年金制度において改革を進めるべき事項について精力的に議論を行っていただいたということを書かせていただいております。
その次の「3 2019(令和元)年財政検証」についてでございます。ここの○でございますけれども、2019(令和元)年8月27日に財政検証結果が公表されまして、当部会でも報告を受けていただいたということでございます。
4ページに行っていただきまして、最初の段落のところでございますけれども、この中で年金部会からの御要請もございまして、被用者保険のさらなる適用拡大、保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択肢の拡大など、それから、制度改革を実施した場合を仮定したオプション試算をこのような形で実施したということでございます。
その下の○がこの財政検証結果のサマリーでございまして、マル1ですけれども、経済成長と労働参加を促進することが将来の年金の水準確保のためにも重要だということが言えると。マル2でございますけれども、オプション試算Aとして被用者保険のさらなる適用拡大をしたわけでございますけれども、125万人、325万人、1050万人の3つのケース、いずれでも対象者の規模が大きいほど所得代替率や基礎年金の水準確保に効果が大きいことが確認されたということでございます。
マル3、オプション試算Bですけれども、基礎年金の加入期間の延長、在職老齢年金制度の見直し、厚生年金の加入年齢の上限の引き上げ、就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大といったオプションを行いました。年金の水準確保にこれらのものも大きいということが確認できたところでございます。
「4 今後の方向性」ということでございます。最初の○の部分でございますけれども、働き方の多様化、高齢期の長期化という今後の社会経済の変化を見越した制度改革を行うことが必要という共通認識に達したということでございまして、多様な就労を年金制度に反映する被用者保険の適用拡大、就労期間の延伸による年金水準の確保・充実を2つの大きな柱として議論を行っていただいたということでございます。
その次の○につきましては、重要なポイントだと思いますので、全文読ませていただきます。
この結果、本部会では、検討項目全体を貫いて今後の年金制度改革の基本に置くべき考え方として、概ね次の様な方向性を共有した。
マル1 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
被用者は、被用者による支え合いの仕組みとしての被用者保険に加入するのが基本であること、厚生年金の適用により将来の年金を手厚くできることが期待されること、社会保険制度の適用の仕方によって働き方や企業の雇い方、経営条件などに影響をできるだけ与えないことが望ましいことから、被用者として働く者には被用者保険を適用するという基本的な考え方に立つ必要がある。ただし、具体的な適用拡大は、人手不足や社会保険料負担を通じた企業経営への影響等に留意しつつ、丁寧に進める必要がある。
マル2 高齢期の就労と年金受給の在り方
基礎年金創設時と比べると、今日まで65歳の平均余命は5年程度伸長しており、将来人口推計では、今後さらに3年程度伸長することが仮定されている。また、65歳を迎えた人が90歳に達する確率は、1950(昭和25)年生まれで男性の3割以上、女性の約6割であるところ、1990(平成2)年生まれでは男性の4割以上、女性の約7割になる見込みである。医学的見地からも、高齢期の健康状態が若返り、就労意欲が高い状況を踏まえると、年金制度において、より多くの人がこれまでよりも長く多様な形で働く社会となることを展望した上で、高齢期の経済基盤の充実のために行っておくべき制度的な対応を今の段階から図っておくことが重要である。
こうしたことから、在職老齢年金制度の在り方の見直し及び在職定時改定の導入、年金受給開始時期の選択肢の拡大を行うとともに、今後、必要となる財源確保の在り方も検討した上で、平均寿命の伸長、就労期間の延伸等に対応した被保険者期間(保険料拠出期間)の延長等、残された課題についても議論を続けていくべきである。
このようにさせていただいております。
次に、6ページから具体の改革ということでございます。
「Ⅱ 今般の年金制度改革」、「1 短時間労働者等に対する被用者保険の適用拡大」ということで、6ページから7ページを超えまして、8ページの冒頭の部分までは、大きくは適用拡大の意義ですとか適用拡大の効果、それから、今、非適用事業所になっている法定16業種外についての記述をさせていただいております。
その中でもポイントになる記述でございますけれども、6ページの一番下の○でございますが、法律上の附則に規定され、「当分の間」の経過措置として位置づけられている現行の500人超という企業規模要件は撤廃し、本来全ての被用者に被用者保険が適用されるように見直されるべきものであると。
7ページでございますけれども、他方で、本部会では、被用者保険の適用拡大は、事業者側の社会保険料の負担を増加させるものであり、適用拡大に当たっては中小企業への負担に配慮することも重要であるという意見や、そもそも適用範囲を拡大することに慎重な検討を求める意見もあったということでございます。
その下の○でございますけれども、このような本部会での議論を受けて、政府・与党内で議論・調整が行われたと。
次の段落ですが、具体的には、2024年10月に50人規模の企業まで適用することとし、その施行までの間にも、できるだけ多くの労働者の保障を充実させるため、2022年10月に100人超規模の企業までは適用することを基本とするとの結論に至ったということでございまして、その下のマルの最後の部分でございますけれども、今回の政府・与党での調整結果に加えて、今後、引き続き適用拡大に取り組んでいくことが求められるということでございます。
その次の○からは、それ以外の部分でございまして、1年以上の勤務要件については、本則の2カ月超の要件が適用されるようにするということ。それから、労働時間要件につきましては現状維持、月額賃金8.8万円の賃金要件は現状維持とするということでございます。
次の非適用となっている業種につきましては、法定16業種外のものでございますけれども、このページの一番下のほうの記述ですが、個人にとって、適用事業所か否かで将来の年金給付が変わることは適切でない。非適用業種についても、実態を踏まえた見直しを図っていくべきであるということで、次の8ページの段落に移りますけれども、弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業については適用業種に追加すべきであるという形にさせていただいております。
次の○から9ページを超えまして、さらに10ページの冒頭の2つ目の○、すなわち「2」の直前までは、今後、適用を拡大していくに当たってどのようなことに留意すべきかということをまとめさせていただいておりまして、大きくは適用拡大のメリットなど、丁寧な説明が必要であるということ。それによりまして、就業調整などができるだけ起きないように、例えば専門家派遣などを行うなどして企業支援を行うといったこと。それから、適用拡大の対象者の属性を見ますと、現在、国民年金の第1号の方も多うございますので、そういった方々については大変メリットがあるということ。それから、未適用事業所への適用の促進も求められるといったこと。そういったことをまとめさせていただいております。
続きまして、10ページに移っていただきまして、「2 高齢期の就労と年金受給の在り方」についてでございます。
最初の○でございますけれども、社会保険方式をとる公的年金制度は、保険料を拠出された方に対し、それに見合う給付を行うことが原則である。在職老齢年金制度は例外的な仕組みであるという基本認識を書かせていただいております。
次の段落の最後の部分でございますけれども、変化する高齢者の雇用環境に合わせて、今から在職老齢年金制度の見直しを図ることは将来の変化を展望し、制度的な対応として意義を持つものであると。その次の段落でございますけれども、本部会では、現在の65歳以上の者に対する在職老齢年金制度のあり方を見直すべきとの意見も多かった。また、厚生年金は所得再分配機能が組み込まれた制度であるとの意見もあったということでございます。
次の10ページの一番下の○もポイントになりますので、全文読ませていただきます。
他方で、在職老齢年金制度の撤廃又は基準額の緩和は、見直しによる就労の変化を見込まない場合、将来世代の所得代替率を低下させることが2019(令和元)年財政検証オプション試算の結果でも確認されている(撤廃の場合は0.4ポイント(ケースIIIの場合。以下同じ。)、基準額62万円への引上げの場合は0.2ポイント)。
本部会では、所得代替率への影響は、在職老齢年金制度によるもののみではなく、被用者保険適用拡大による所得代替率引上げ効果(125万人拡大で0.5ポイント等)など、年金制度改正全体で見ていくべきとの意見があった。
しかしながら、現在の高在老の適用基準(47万円)の対象者が、年金と賃金を合計すれば同世代あるいは現役世代と比較しても比較的フロー所得に余裕があることからすると、在職老齢年金制度の単純な見直しは、高所得の高齢者を優遇するものであるとの指摘がある。また、在職老齢年金制度による支給停止の対象は、厚生年金の適用事業所で働く被保険者及び70歳以上の者の賃金であり、自営業や、請負契約、顧問契約で働く収入や不動産収入を有する者等は対象にならないといった、就業形態の違いによる公平性の問題も存在し、この問題は年金制度だけで考える限りは解決できない。こうした事実及び中長期の雇用環境の変化を総合的に判断して、在職老齢年金制度の見直しは議論されるべき、との意見も多かった。
という形で整理させていただいております。
次の○は在職定時改定に関してでございまして、これに関しては導入を支持する意見が多かったとまとめさせていただいております。
次の2つの○は、政府・与党内での議論・調整の関係でございまして、2つ目の○の2段目からですけれども、年金制度だけで考えるのではなく、税制での対応や各種社会保障制度における保険料負担等での対応もあわせて、今後とも検討していくべき課題であるとされたと。他方で、在職定時改定の導入を行うこととされたということでございます。
その次の○、11ページの一番下の○が、今度は60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度についてでございまして、就労に与える影響が一定程度確認されているという観点、60歳代前半の就労、特に2030年度まで支給開始年齢の引き上げが続く女性の就労を支援するという観点から、見直すことが適切であるとさせていただいております。
続きまして、12ページに移っていただきまして、冒頭でございますけれども、60歳代前半の老齢厚生年金に適用される在職老齢年金制度の基準が混在するということでございまして、低在老、いわゆる60歳代前半の在職老齢年金の見直しについては、後半以降の高在老と同じ基準とすることで、制度をわかりやすくするという利点もあることから、現行の28万円から47万円の基準に合わせるべきとさせていただいております。
これに関しまして、次の段落ですけれども、特定の世代にしか効果が及ばないとの批判もあるということでございますが、低在老の見直しによって60歳代前半の年金制度をなるべく早期に就労に対して中立的となるようにすることは、支給開始年齢が65歳に引き上がる将来世代にとっても意義があると考えられるとさせていただいております。
次の○が年金の受給開始時期に関してでございまして、現行の60~70歳から60~75歳へと拡大すべきである。1月当たりの繰り上げ減額率を0.4%に、繰り下げ増額率は0.7%とすべきである。繰り上げ・繰り下げの増減率は、頻繁に変えるものではないという整理にさせていただいております。
「3 その他の制度改正事項及び業務運営改善事項」につきましては、これまで年金部会で議論いただいたとおりの整理にさせていただいております。
続きまして、14ページにお進みいただきたいと思います。「III 今後の年金制度改革の方向性」ということでございます。
2つ目の○でございますけれども、今回の年金制度改革が与える影響は、今後の社会経済の変化の動向などを検証し、社会経済や労働市場の変化に対応した制度のあり方について、雇用政策とも連携しながら今後とも検討を進めていく必要があるとしております。
次の段落ですが、社会経済状況に応じて5年に1度財政検証を行う公的年金制度には、制度改革、その効果検証、社会保障の動向把握、年金財政の現状把握と将来像の投映というPDCAサイクルが組み込まれている。このサイクルにおいて、オプション試算は社会経済の変化に対応した改革志向の議論を進めていく上で必要不可欠なものである。今後とも、課題に対応した内容の充実も含めて、オプション試算を重視した改革議論を進めていくべきであるとさせていただいております。
その上で、今後ということで「1 被用者保険の適用拡大」としておりますけれども、1つ目の○では、本来企業規模要件を撤廃し、被用者である者には被用者保険を適用すべきであるとしております。
2つ目で、今回の50人超規模まででの適用拡大により生じる影響の検証を行った上で、さらなる適用拡大をどのように進めていくかを議論すべきであるとさせていただいております。
15ページに行っていただいて最初の○ですが、個人事業主の事業所の適用業種の見直しにつきましては、本来、被用者には全て被用者保険を適用すべきとの原則からすると、この適用業種についても、その他の業種への拡大を引き続き検討すべきであるとさせていただいております。
次の○は複数事業所就業者に関するものでございまして、適用事務を合理化し、事業主の事務負担軽減を図るよう関係者の意見を広く聞きつつ検討を進めるべきとさせていただいています。
次の○は、兼業・副業も含めて、適用基準を満たさない就労を複数の事業所で行う者に対する保障のあり方についての問題提起がされていること。それから、フリーランスやギグワーク、請負型で働く者など、個人事業主であっても実態は雇用に近い働き方をしている者への保障のあり方についての問題も提起されているということで検討していく必要性が指摘されたということでございます。
次の○は第3号被保険者制度に関してで、前回の「社会保障審議会年金部会における議論の整理」が既になされておりまして、一番下ですけれども、今回の適用拡大はこの方向に沿って一歩前進するものであり、引き続きこの方向性に沿った対応を進めていく必要があるとさせていただいております。
16ページが「2 高齢期の就労と年金受給の在り方」ということでございまして、先ほども述べましたように、在職老齢年金制度に関する課題があるということを書かせていただきまして、引き続き検討を進めていく必要があるということ。
それから、次の次の段落の最後の部分ですが、今後の高齢期の就労の変化を念頭に、高齢期の就労と年金のあり方について検討を進めていくことが求められると整理しております。
次の○は繰り下げ関係でございますけれども、一番最後で、就労と年金の組み合わせの選択がより多様で柔軟にできるよう、引き続き検討を進めるべきとしております。
「3 年金制度の所得再分配機能の維持」ということでございまして、最初の○でございますけれども、1階部分の基礎年金部分のマクロ経済スライド調整期間が、2階部分の厚生年金よりも長期化しているという現状認識のもとで、最後のほうでございますけれども、この調整期間の長期化は、年金制度の所得再分配機能の低下を意味する。この再分配機能を維持することは、基礎年金のみを受給する者だけではなく、厚生年金の受給者にとっても、その高齢期の経済基盤を充実させるために非常に重要であるとしております。
その次の○は、被用者保険の適用拡大は、こういった観点からも徹底して進める必要があるということでございます。
その次の○は、マクロ経済スライドの効果についても、引き続きその状況の検証を行うべきと書かせていただいております。
その次の○でございますけれども、保険料拠出期間の延長についても必要となる財源確保のあり方も検討した上で、就労期間の長期化などの高齢者の雇用実態なども踏まえて検討すべきであるとさせていただいております。
次の段落ですけれども、その上で、報酬比例部分と基礎年金のバランスを確保して基礎年金の所得再分配機能を維持していくため、どのような方策が可能か、引き続き検討するべきとさせていただいております。
最後に「4 その他」でございます。
最初の○でございますけれども、公的年金制度については、障害年金・遺族年金についても、社会経済状況の変化に合わせて見直しを行う必要がないか検証し、その結果に基づいた対応についての検討を進めていくべきとさせていただいております。
次の○でございますけれども、年金制度については、広報媒体の多様化や世代の特性も踏まえつつ、さまざまな媒体を適切に用いた周知を行いながら、正しい情報を伝え、関係者の理解を得ていくことが重要であるとさせていただいております。
それから、次の18ページの段落の最後の部分になりますけれども、モデル年金以外の所得保障の状況についてもイメージできるようにわかりやすく示す工夫を重ねていくことが重要であるとさせていただいております。
次の○でございますけれども、公的年金制度に関する関心内容として「自分が受け取れる年金はどのくらいか」が最も高くなっているところでございまして、個々人の老後の公的年金の支給額等が幾らとなるか若いころから見通せるようにすることが、老後生活や年金に対する不安を軽減するためにも重要であるとさせていただいておりまして、次の段落でございますけれども、これまでも「ねんきんネット」による年金見込み額試算の充実などが取り組まれているところでございますけれども、さらに、公的年金、私的年金を通じて、個々人の現在の状況と将来の見通しを全体として「見える化」し、老後の生活設計をより具体的にイメージできるようにするための仕組みを検討すべきとさせていただいております。
その次の○、3段落目になりますけれども、社会全体で連帯して備える社会保険を中心とした社会保障制度という大きな枠組みの中で、年金制度の意義や位置づけを理解してもらうことが重要ということでございまして、子供のころから生涯を通じた年金教育の取り組みを進める必要があるとしております。
「最後に」ということで、最後の○でございますけれども、国民全体の幸福、我が国全体の発展に資するような改革が何かを十分に検討し、今後も、将来世代のための改革の議論を続けていくことが重要であるとして示させていただいております。
引き続きまして、ちょっとだけお時間をいただきまして、資料2の資料集でございますけれども、今まで年金部会に提出させていただいた資料が中心ではございますが、3点だけ御報告申し上げておきたいと思います。
1ページ目でございまして、これが今、申し上げたような整理も踏まえつつでございますけれども、制度改正の全体像を整理してみたものでございます。
それから、大分飛びまして恐縮ですが、32ページをお開きください。こちらが今回行います改革をした場合に所得代替率の影響がどうなるかで、代表としてケースIIIを大きく掲げておりまして、注のところでその他のケースも書かせていただいておりますが、被用者保険の適用拡大で基礎部分の上昇がプラス0.4、比例は▲0.0ということで、全体としては端数処理の関係ですけれども、プラス0.3となります。それから、在職定時改定の導入に伴いまして比例部分で▲0.1%未満ということで、両者をあわせたパッケージといたしましては、基礎がプラス0.4、比例が▲0.1ということで、あわせますと全体としての所得代替率の上昇効果はプラス0.2%ポイントということでございます。
最後でございます。42ページをお開きください。こちらは60歳代前半の在職老齢年金につきまして、現行の基準から47万円基準に引き上げた場合の支給停止対象者の人数ですとか額ということでございますけれども、これですとどのぐらい支給されるかがわかりにくいものですから、一番下に白抜きで書いておりますけれども、どれだけ給付が払われるようになるのかという形で差し引きで書いております。
施行年がまだ決まっておりませんけれども、例えば2022年のラインを見ますと、施行が2022年だといたしますと給付の増額が1600億円ということになります。従前から御説明申し上げておりますとおり、男性の支給開始年齢がいずれ引き上がり切りますので、2025年度以降は女性だけということになりますので、給付額は急速に下がるというような状況になっております。
少しお時間をとってしまって恐縮でございましたけれども、事務局からの説明は以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
私ども、この当部会が14回にわたって議論してきた内容について整理をしていただいたわけでございますが、それについて端的に御説明をいただきました。ただいまいただいた御説明について、御質問や御意見があれば頂戴しておきたいと思います。いかがでございましょうか。
どうぞ。
○牧原委員 今回、議論の整理(案)をお取りまとめいただき、また、これまで部会の中で申し上げた点についても丁寧に取り上げていただいて、内容については基本的に了解するとともに、まずもって感謝を申し上げたいと思います。
今後の議論について、私たちが考えている問題点や方向性についてまず申し上げたいと思います。先般、政府において全世代型社会保障検討会議の中間報告が取りまとめられておりますが、今後の検討にあたっても、高齢者自身の働き方のニーズも多様化しているという実態を踏まえて検討すべきであるというのが1点目です。
2点目は、この議論の整理(案)の中にもある通り、年金制度は将来的にも持続可能であることが必要ですが、そのためには将来世代を含めた給付と負担のバランスを踏まえた議論が必要であると考えます。今回の財政検証でも、経済成長と労働参加が進むケースでは、将来にわたって公的年金の水準が維持できることは確認できています。給付だけに偏った議論は、現在や将来の負担増を招いて、結果として経済成長を阻害しかねないリスクもありますので、年金制度に対する国民の理解を深める努力を行った上で、自助・共助・公助のバランスの取れた持続可能な年金制度にしていく必要があると考えます。
また、労働参加もこのシナリオ上は必要になりますが、労働参加を進める上では、働き方も多様化していきます。今回、適用対象の拡大が議論されましたが、高齢者の就労のみではなくて、様々な世代が多様な働き方をするということを前提に、年金制度の改善や整備をしていく必要があると考えます。
次に、議論の整理(案)について質問と意見を申し上げます。まず、被用者保険の適用拡大について、今後適用拡大が進むことにより、複数事業所において短時間就労の増加が見込まれています。こうした中で、現在でも副業や兼業によって複数事業所で勤務する方に対して被用者保険の適用に関する事務手続は煩雑になっていると聞いております。実務面の改善が是非とも必要な領域だと考えていますが、今後の具体的な進め方について、スケジュール等を含めて、今、答えられる範囲でお答えいただきたいと思います。
また、「Ⅲ 今後の年金制度改革の方向性」のうち、「3 年金制度の所得再分配機能の維持」について、報酬比例部分と基礎年金のバランスを確保して基礎年金の所得再分配機能を維持していくことを検討するにあたっては、様々な問題が想定されることから、課題の立て方も含めて、非常に慎重な議論が必要であると考えます。本件については、必要性の可否も含めた検討が必要であると思います。

○神野部会長 どうもありがとうございました。貴重なコメントをいただきましたが、質問について、お願いできますか。
○事業管理課長 事業管理課長でございます。
2以上の複数事業所での勤務者に対する今後の事務の合理化等に向けた検討のスケジュールという御質問をいただいたということでございますけれども、御指摘いただきましたように、現在、複数の事業所に勤務する被保険者の方につきましては、被保険者の方からどちらの医療保険を選択するかといったことであるとか、あるいは保険料を合算して計算したりするようなことを機構や医療保険者などから通知するといったこともございまして、事業者の方々の中では個別の管理をしていただく必要がそれぞれあるというところがございまして、一定の事務負担があるものと承知をいたしてございます。
他方、本件については医療保険等の適用との関係であるとか、保険者とかそういったところとのかかわりも深く出てまいりますので、そうした医療保険サイドとの関係も含めて幅広い関係者の意見なども踏まえながら、検討していくべき課題だと考えておりまして、現時点で詳細なスケジュールとかそういったことを定めているものではございませんけれども、今申し上げたようないろいろな負担の問題であるとかいうものもあると承知しておりますので、医療保険部局や保険者などともよく連携をしながら、どういう対応が可能かということも含めて、よく研究をさせていただきたいと考えております。
○神野部会長 よろしいですか。どうもありがとうございます。
ほかはいかがでございますでしょうか。
では、まずは諸星委員からいきます。
○諸星委員 ありがとうございます。
14回にわたる議論を集約いただいて本当にありがとうございました。整理(案)の最後にも触れていただいておりますけれども、さまざまな意見がとにかくあったということを前提に将来世代のための改革の議論を続けるという大きな目的をこの部会は持っておりますので、このあり方については特に委員としてかかわるようになってからは十分理解しているつもりです。しかしながら、どうしても現場感覚と異なることとか、あるいは部会で議論している方向性の趣旨をいかにわかりやすく現場や国民の皆様に伝えていくかについては、まだまだ正直、悩みが多いと感じています。毎回部会で私が伝えている意見というのはほとんど現場サイドなので、大きな政策決定をする中では余り関係ないのではないかと正直思うこともたびたびありまして、そのことについては、この発言の場をおかりしてお伝えしたいなと思っています。
しかしながら、やはり現場感覚や起きている事実を伝えることが自分の責務と考え、今回まとめていただいた案ではございますが、3点ほど意見と1点確認をさせていただきたいと思います。
まずはやはり適用拡大についての進め方なのですが、厚労省などで他の労働関連法を中小企業に適用する場合は、大体、従来では500から300、100という段階的な進め方をされていました。そういう印象があったため、当初から50という数字が出てきたことに、私たち実務家の目から見て、正直驚きは隠せませんでした。結果、100人というもう一つの段階を経ることになりそうなのですが、それでも中小企業の事業主からかなりの反発の声が挙がっています。また、現時点で働き方改革、最低賃金の引き上げ、消費税などの対応で四苦八苦されている様子から、国は、正直なところ、中小企業は潰してもよいと思うようになったという声も実は多々聞いております。
ここで誤解をしていただきたくないのは、事業主が適用拡大自体を理解していないということではございません。法で決まればそれに向けて努力をしたいという方々が実際は多いことに間違いない、ということはお伝えしたいと思います。
そのときに必ずネックになるのが、働く側にまだまだ就労調整をしたいという理由づけが残っていることが問題だと思います。今回の年金制度の中の議論の整理で、いわゆる健康保険の被扶養者、130万円の壁については記載がございましたが、やはり税制法上の103万の壁というのが現場では大きな問題として残っておりまして、それを取り払う動きにつながっていただければいいなと願っておりますが、社会保障と税の一体改革と言いつつ、それがなかなか進んでいないというのは残念に思います。
また、今回の案の中に適用拡大を進めてよい結果が出ているとありましたけれども、このデータはあくまでも人的資源もある比較的大きな企業が対象であったことから考えれば、この案にも書いてはいただきましたけれども、やはり適用拡大を進める中では中小企業の経営に関し、影響を調査し、意見を聞くこともしっかり果たしていただきたいと思っております。
もう一つ、滞納事業所が必ずふえる可能性が出てきますので、それも含めてやはり後追いをするべきだと思っております。
次に、これに関連して事業主だけでなく、勤務する方、国民の皆様にも広報活動を行い戦略的に進めていくとありますが、具体的にはどう進めていくのかということを疑問に思いましたけれども、やはり年金事務所の職員の方々が日々対応している現実的な声を聞いていただきたいと私は思っています。
また、広報周知に対して、地域や事業所における年金委員の活用が重要であるとありましたが、正直、年金委員の存在はほとんど知られておりません。その活動も一握りの方の頑張りであるのが現実であり、私としてはかなり違和感を覚えていますので、そこに重きを置くというよりは、一つの方法として活用されていくということであればよろしいのではないかと思います。
中小企業の適用拡大を丁寧に進める中では、やはり実務面でも、また、中小企業事業主から非常に相談を多く受ける、整理の案でも触れていただいている「社会保険と労務の専門家」といえば、やはり国家資格を有する社労士の団体との協力も必要ではないかと私は考えます。その点、厚生労働省として今後どうかかわっていく予定があるのかは、後ほど確認をさせていただきたいと思っています。
最後になりましたが、今後の年金制度改革の方向性のうち、その他の中にありますが、障害年金、遺族年金の見直しについてはできるだけ早目に検討を進めていただきたいと考えます。特に共働き世帯がますますふえており、適用拡大で確実に加入対象者が広がります。その場合、遺族年金を受ける者の男女差について、以前から部会の議論の俎上にあがりつつも、いつの間にか後回しにされているという印象が私は強いと思いますので、ぜひとも本腰を今後入れていただきたいと考えております。
ということで、3つの意見と1つ確認したいことをお願いしたいと思っております。
以上です.ありがとうございました。
○神野部会長 確認について何かコメントはありますか。
どうぞ。
○年金課長 年金課長でございます。
まず、最後の障害・遺族年金に関しましては、まさに複数の委員からそういった御意見がありますので、本部会の取りまとめの案として出させていただいておりまして、そういった気持ちでございます。今回は老齢が中心になっておりましたけれども、次からのタイミングでは障害・遺族ということかと思っております。
年金委員につきましても一つの方法としてという前向きな御意見をいただきまして、まさに年金委員は昔からずっと地域で活動していただいている方々でございますので、そういった方々にも一緒になってやっていただきたいという思いで書いてございますので、サポートしていただけるように、みんなで頑張っていければと思っております。
適用拡大につきましては、確かにこれまでの中小企業の段階で言うと300というのもあるというお声もございましたけれども、適用拡大の必要性にも鑑みまして、あるいは適用拡大の規模感などさまざま議論がございまして、50を基軸とするという中で、300ではなく100という数字が出てまいったというのがこの間の政府・与党での議論の経緯でございます。そういった形になった以上は、むしろ広報ですとか、先ほどおっしゃったような専門家の活用といったものも含めて、できるだけ中小の方々、前向きな方もいらっしゃるという心強いお言葉もいただきましたので、しっかり内容を浸透させていっていただきまして、できるだけ働いている方にとっても、お雇いになっている方々にとっても、やってよかったというような形になれるように、私どもとしても努力したいと考えております。
それから、大きな企業のデータだということでございましたので、私どももそこは大企業でない、特に総務的な業務とかが比較的弱い方々へお願いしていくことになるということは十分意識してやってまいりたいですし、そういった観点から、団体の方々からも常日ごろ御意見交換させていただいていますので、やるとなりましたら、その施行のやり方、あるいは周知の仕方についてもよくよく御意見を賜りながら、丁寧に進めてまいりたいと思っております。
以上でございます。
○神野部会長 ありがとうございます。
出口委員、その後、佐保委員に行きます。
○出口委員 まず、この資料については、非常によくまとめていただいて、皆さん大変御苦労さまでしたと思います。ありがとうございました。
ただ、資料の文言について、1点ちょっと全体の流れとの関係で理解に苦しむところがありまして、7ページの一番上の文章で、「他方で、本部会では、被用者保険の適用拡大は、事業者側の社会保険料の負担を増加させるものであり、適用拡大に当たっては中小企業への負担に配慮することも重要であるという意見」もあったということであればよく理解できるのですが、この全体のトーンが、適用拡大が必要であるということが全員の総意であるというニュアンスで書かれている中で、「そもそも適用範囲を拡大することに慎重な検討を求める意見もあった」ということは論理的に矛盾しているのではないかと思いますので、ここの文章は、削除すべきではないか、適用拡大に当たっては、先ほど諸星委員が言われたように中小企業への負担に配慮することも重要であるという意見もあったで必要十分であると思うのですけれども、ここは御検討をお願いできればと思います。資料についてはこの1点だけです。
あとは2つぐらい感想を申し上げさせていただきたいのですけれども、本当に大変御苦労さまで、皆さんの実際の御苦労はある程度は理解できるつもりなのですが、先ほど年金課長が御説明された、今回の改正案の結果がプラス0.2であると。これでも大きな進歩だとは思うのですけれども、オプション試算でやったI、IIの結果と比べれば、確かに前には進んでいますけれども、本当に微々たる前進であって、これはある方に聞いたのですけれども、今の日本の課題は、世界の動くスピードに比べて改正のスピードが遅過ぎることであるという意見を聞いたことがあるのです。これはもちろん政治の力学やいろいろなものがかかわってきますから、皆さんの努力が足らないということを言っているのでは全然ないのですけれども、オプション試算の結果と今回の改正の結果をもう少し国民の皆さんにきちんと対比させて説明し、これだけやろうと思ったらできるのだけれども、現実にはいろいろな力学が働いてこれしかできないということをもっと市民の皆さん一人一人が知ることによって、もっと改正しなければいけないという力が働くのではないかと。だから、発表のときはこのプラス0.2だけではなくて、ぜひプレスの皆さんには、オプション試算で計算上は本当に全面改正したらここまでできるのだということを常にPRしていただきたいというのが感想の一つです。
それから、もう一つ、この議論を通じて感じたのは、多様な働き方の実態を踏まえてとか、そういう議論がよく出ます。そのとおりだと思うのですけれども、ここで注意していただきたいのは、制度が実態をゆがめるのですね。これの典型的な例は配偶者控除等を考えていただいたらわかるのですけれども、実態、実態と言ってしまうと、制度のゆがみが忘れられてしまうので、働き方や人間の動き方の活動の実態は制度と裏腹で、制度が実態に影響を与え、実態が制度に影響を与えているという、この双方向の議論をちゃんとしないと判断を誤る気がするのです。これは税と社会保障の一体改革と同じように、給付だけではなくて負担も見なければいけないのと同じことですので、実態については必ず制度によってゆがんでいる部分があるということをできるだけ検証して議論するように資料等をつくっていただければ大変ありがたいと思います。
以上2点は感想です。
どうも本当にお疲れさまでした。すごく丁寧にまとめていただいて感謝をしております。
○神野部会長 修正箇所について何かコメントがあれば承っておきますが、いいですか。
○年金課長 7ページの一番上の部分につきましては、私ども、議事録などをこの間レビューさせていただいて、こういった御意見もあったということで書かせていただいているものでございますけれども、これは申しわけございません、委員間の討議の結果を踏まえて、最後は事務局として判断させていただければと存じます。
○出口委員 結構でございます。
○神野部会長 佐保委員。
○佐保委員 ありがとうございます。今回、議論の整理のため、連合としての全体の受けとめと各論についての意見を順に述べたいと思っております。
最初に、ここまでの間において、事務局は各種調整など御奮闘いただいたことに、まずもって敬意を表したいと思っております。
その上で、まず、全体の受けとめについてですが、今回の制度改革の一丁目一番地である社会保険の適用拡大について、全くの踏み込み不足となったということについて大変残念だと思っております。また、財政検証でも明らかになった基礎年金の給付水準の大きな低下に対する対応策も示されず、全体としては不十分な改革内容にとどまったと言わざるを得ないと思っております。
もちろん、在職定時改定や低在老の基準額の見直しなど、年金受給の選択肢の拡大や高齢期の就労環境整備という観点からは評価できる点もあるということは申し添えたいと思っております。
続いて、各論について大きく意見4点と質問1点を申し上げたいと思っております。
まず、7ページ目の2つ目の○で、政府・与党内で議論・調整が行われたと書いてありますが、年金部会における議論の整理であるにもかかわらず、この記述があるのにはちょっと違和感があります。もちろん、そうした調整があったことは理解の上で、当該部分の記述は不要ではないかと考えております。
2つ目ですが、7ページから8ページにかけての社会保険の適用拡大についてです。本来撤廃すべきである企業規模要件が存続された上に人数も段階的に51人以上までの拡大、個人事業所の非適用業種も10の士業だけの見直しにとどまったということについては、適用拡大の対象とならなかった働く者からすれば、納得できるものではないと考えております。働く者の立場からすれば、働き方や企業規模、形態によって社会保険の適用の有無が異なるということは不合理であります。今後、さらなる適用拡大に向けた本部会での検討を早期に再開していただきたいと考えております。
また、実務を担う日本年金機構の体制強化を図り、未適用事業所への適用促進を進めることも重要であるというふうに考えております。
続いて、17ページになりますが、基礎年金の底上げの部分であります。今回の財政検証で明らかにされた最も重要な点は、基礎年金の給付水準が大きく低下していくということであります。しかし、オプション試算で基礎年金の所得代替率の引き上げ効果が確認された保険料拠出期間の延長が先送りとなったことは、極めて遺憾であると思っております。連合としては、就職氷河期でもある団塊ジュニア世代が高齢期を迎える2035年ごろを見据えて、基礎年金の底上げが喫緊の課題であると考えております。今後、早期に検討を開始すべきと考えます。
続いて、16ページの所得再分配機能の強化の部分であります。数カ所にわたって書いてあるのですが、基礎年金の所得再分配機能の維持という表現になっておりますが、基礎年金の底上げの必要性については、複数の委員から意見があったというふうに認識をしております。強化に修正すべきではないかと考えております。
最後に質問であります。17ページですが、厚生年金と国民年金の積立金を統合するやの報道が一部でありましたが、こういった報道についてどこで議論された内容なのか、どのような経緯でこの報道がなされたのか、伺いたいと思います。被保険者として基礎年金の底上げは重要だと考えておりますが、そのために財政状況だけを理由にして保険料の徴収、給付の方法が異なる積立金の統合には明確に反対の立場であるということを申し上げたいと思います。
その上で確認ですが、17ページ、2つ目の○の2段落目の記載は、積立金の統合を意図したものではないというふうに理解してよいか、伺いたいと思います。
以上です。
○神野部会長 17ページ等々の件についてコメントをいただければ。
○年金課長 年金課長でございます。
まず、政府・与党の議論・調整といったような記述は不要ではないかという御意見でございまして、それは部会の整理だからというロジカルな面は十分感じつつ、他方で、これがないと具体に何をするかというのが内容から抜けてしまいますので、ちょっと事務局なりに工夫させていただいたつもりではあるのですけれども、何かしら記述しないと何をどこまでやるかという改革内容が書けなかったものですから、そういった観点もあるということで、できれば御理解を賜れればと思っております。
それから、適用業種の問題につきましては、今回書かせていただいたとおりでございますので、時期の問題はまた御議論かと思いますけれども、方向性としては今後も議論を進めるということだと思っております。
それから、17ページの保険料の延長の問題は年金部会のほうでもこれ自体は方向性としては正しいのだろうけれどもということでございましたが、やはり今回の財政検証結果でも明らかになりました国庫負担分の財源確保の問題という大きな壁がございますので、その議論とセットでないとということで、先送りという厳しいお言葉もいただきましたけれども、財源確保も含めというふうに書かせていただくことで、できるだけそういうこと自体は進めていく方向なのだということを書かせていただいたつもりでございます。
それから、17ページの記述が積立金統合を意図したものではないという御確認でございますけれども、これは全くそのとおりでございまして、年金制度におきまして積立金と申し上げますのは、委員も御案内のとおり制度統合をしたような際に相当する積立金を移換するといったような制度改革はこれまでもございましたけれども、積立金だけを統合するといったような議論は聞いたことがございませんし、第一、年金部会でそういった議論を一切しておりませんので、ここはあくまで適用拡大、あるいは御指摘いただいた被保険者の延長といった正論の議論がまずあるわけでございます。他方で、どうしてもこれまでの財政検証の結果を見ますと、厚生年金と基礎年金、今回わずかながらですが基礎年金の調整期間、この改革をやれば初めて少し短くなるわけでございますけれども、まだまだ短くすることが足りないという中で、努力はいたしますが、何もしないでそのままの議論でいいのかという問題意識を書かせていただいたことでございまして、まさにこの問題意識に対する議論、その議論が始まってからということでございますので、決して積立金の統合といったことが先取りして答えとしてあるということでは一切ございませんし、繰り返しになりますが、積立金の統合というのは、通常は制度統合でもない限りは議論の俎上にも上らないようなものでございますので、一切そのようなことを意識しての記述ではないということでございます。
以上でございます。
○神野部会長 ほかにいかがですか。
あと、これについての修正等々については、もしも必要であれば、この部会を取り仕切る責任は私にありますので、私のほうの責任でもってやらせていただくということを委員の皆様の御了解を得てやろうと思っておりますので、そういうことで御理解いただければと思います。
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 ありがとうございます。
これまでも何人かの委員が御発言されましたように、事務局は大変御苦労されたと思いますが、この報告書は積極的に支持したいとは思いませんけれども、許容範囲かとは思います。ただ、先ほど出口委員がおっしゃった部分は私も応援したいというか、同様の意見を持っているということです。
今回の議論の中で一番大きかった部分が、基礎年金の劣化というところをどうするかということでさまざまなオプションが出てきたわけです。具体的に言うと、65歳になっている1954年生まれの方が90歳になったときの基礎年金額は、物価で再評価した金額ですけれども、5万円というところまで実質購買力も含めて下がっていくということが問題です。1979年生まれの方が65歳に、これはケースIIIの話ですけれども、新規裁定で6万2000円という水準に、これは物価で割り引いてそうなってくる。ましてや代替率で見たときには、現在の36.4%、基礎年金の給付水準は、これを100にしたときに2047年には、36.4%の代替率が26.2%と、マクロ経済スライド適用前を100にすると72%相当になっていると。この基礎年金の低下、実質水準の劣化については、基礎年金が所得保障制度の中核であるということを考えると、生活保護や他の制度に非常に大きな影響を与えてくると思われます。もちろん基礎年金だけの方というのはこれから決して多数派ではなくなるかもしれませんけれども、基礎年金に依存する部分というのは非常に大きい。これに対してどうするのかというのが今回の大きなテーマでした。
にもかかわらず、45年加入は余り議論できなかったし、適用拡大もわずかに、この部分での改善効果は0.4%にすぎない。基礎年金の低下について漫然と先送りをしてしまうようなことであってはいけないと思いますので、さらなる適用拡大を進めていただくのと、なるべく早く45年適用の話をしていただきたいと思います。年金制度というのは改革してから効果が出るまでにかなり時間がかかる。先ほども団塊ジュニア世代のことをイメージすれば、改革は早いにこしたことはないわけですね。ほかの社会保障制度と異なって時間がかかるのだということを関係者はよく理解していただき、もしこれができないとすれば、この基礎年金の劣化に何で応えていくのかと考える必要がある。年金外で応えるのかというのをしっかりと政府、ほかの部局も含めて問題意識を共有してもらいたいなと思いました。
済みません。意見というよりも感想になりましたけれども、ありがとうございます。
○神野部会長 細田委員、どうぞ。
○細田委員 商工会議所の細田でございます。私は途中からの参加だったのですが、今回、おまとめいただきまして、こういう議論が進められてきたのだなということで、自分としても非常に勉強になりましたし、大変参考にさせていただきました。
今、議論にございました適用拡大そのもの云々という出口委員と駒村委員のお話のところは、たしか商工会議所の意見として申し上げたのではなかったかなと思いますので、その辺は、部会長に御判断いただければよろしいかなと思います。
今回の適用拡大についてなのですけれども、私の理解では、財源確保の問題と、それから、こういう言い方がこういう場で正しいのかどうかわからないのですけれども、年金弱者の救済という、この2つの目的があるのかなと思いながらずっと議論に参加をしておりました。
ただ、商工会議所は中小企業が多いのですけれども、中小企業では、年金弱者も中小企業の社員であり、また、金を出すのも中小企業ということになってくると、非常にこれは痛しかゆしという部分がございますので、その辺は今後もバランスをとりながら議論していっていただきたいと思いますし、今、駒村委員がおっしゃったように、時間がかかる問題だということはそのとおりだと思いますので、ここだけのではなくて、どういった部分でもって財政的な補填をしていくのかということも含めて、ぜひ今後の議論につなげていっていただければありがたいかなと思っております。
また、在職老齢年金制度について、これは私どもの会社もそうですけれども、就労者の年齢というのはどんどん上がっておりますし、就労形態というのも今後、変わってくると思いますので、これは前進があったのかなと思います。
あと、資料1の12ページ、3の(3)の脱退一時金の件です。外国の方の就労に対して、支給上限年数を3年から5年に見直すということですが、これも我々、人手不足を懸念している企業にとっては非常にありがたいかなという部分だと思いますし、その後の(6)立入調査の件についても、今後いろいろと強化されていくということで、ぜひ進めていっていただければありがたいかなと思っております。
そんなところですが、全体としましては、私としては非常によくまとめていただけましたし、途中でもって参加した人間としては、よくわかる内容だなと思いましたので、今後の活用をお願いしたいと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
高木委員、お待たせしました、申しわけありません。
○高木委員 私もこの議論の整理(案)を見させていただいて、事務局の方々の努力と能力の高さというものに委員の一人として非常に感謝している次第です。
ただ、いろいろ物申したいところもあるのですけれども、改定してほしいとかそういうことではなくて、私がこれから申し上げることの一つの方向性というのは、これまで委員の先生方がおっしゃられたことに一部反論してしまうことになるかもしれないということと、もう一つは、こういった法であるとか制度が整ったところで、その実態として、最終的な結果が期待するところに着地しなかったということも往々にしてあるということです。それは人間行動であるとか企業行動というものが、思ったとおりの行動を起こしてくださらなかったということがあるからで、全体としてはこういう方向性でよろしいと思うのですけれども、監視というか、モニタリングというか、そういったことが必要になるのではないかという観点から少し物申したいと思います。
1つには、先ほど諸星委員から出たお話に関連するのですけれども、私が思いますのは、この日本の国のすばらしさは産業界、個々の企業が頑張ってきたというところにあると思うのです。それは非常に評価するべきところだと思っていて、例えば諸外国、ここで言う諸外国は例としてヨーロッパ諸国になってしまうのですけれども、政策で何か実行するというときに、大体政府が強い手綱を引いて実行するということのほうが目立っているのですけれども、日本の場合は産業界の個々の企業が非常に頑張るというところで、この国がすばらしく成り立ってきたのだろうと思うのです。
それを重々わかった中で申し上げたいのですけれども、ここで51人以上企業の適用スケジュールが示されていたのですが、これは与党のほうの議論、提言とほぼ同じ形で書かれているということでした。しかし、私はこれを見たときに、やはり年金制度というものが企業ではなくて働く一人一人のためのものであるということを考えると、企業規模によらずに働く一人一人の安全な将来生活の土台を築くという意味で、やはり企業規模というものは限りなく撤廃されていくべきものであって、それに対しては皆さんの合意が得られていると思うのです。
何を申し上げたいかというと、今、これを書きかえてくれということではなくて、50人以下の企業の適用スケジュールも示してもよかったのではないかぐらいに実は思っています。今示して、そのときになってそれを実行するかどうかは別として、将来そうなるという予測と準備というものを具体的にしていただく、そういった精神性を各企業に持っていただきたい。それは中小規模企業でも同じなのではないかというふうに思ったのです。私は実はそのように考えました。
しかし、何度も言っているのですけれども、中小規模企業の経営に強い負担がかからないように準備をしていただくということともに、時限つきになると思うのですけれども、企業に対する何らかの、補助の仕組みがやはり必要だと考えます。その上でソフトランディングしていただくためにも具体的にスケジュールが立っていたほうが本当はよかったのではないかというふうに思っている次第です。
あと、この年金制度の改正であるとか改定というものが働き方の多様化に即した中立的な年金制度とするべきであるということから、さまざまな改定がされていくわけですが、当然、適用拡大だけではなくいろいろあるわけですけれども、そこで思いますのは、例えばきょうの整理(案)の中にも冒頭のほうに書いてあったのですが、高年齢期にある人々が働き続けることで、それがフルタイム、つまり正規ではなくて、多様な働き方が拡がることになると。年金制度がそれに対応していくべきということであるならば、それは全くそのとおりだと思うのですけれども、ほかの全世代が多様な働き方、例えば非正規という働き方になっていくことが促進されていくのを支援するようなものであってはならないと思うのです。短日短時間で働いていてもきちんとした、頑健な社会保障システムのメンバーシップを持つことができるということで、では、非正規の形で一生涯生きてもいいではないかと、そういった労働社会に日本がなってしまうことは得策ではないと考えています。願わくばなのですけれども、非正規でなくて、この際だから正規に雇用形態を転じさせるという企業が多くあらわれてくれることを私は期待しています。
この点に関連するのですけれども、我々が思ったとおりの成果に着地しない場合に備えて、次のことをモニタリングする必要があるのだろうと思うのですが、例えばドイツではミニジョブという制度を利用して、事業主が短時間労働者を多く雇い入れて、保険料の支払いを回避するという事態が昔起きていました。例えば今回、中規模企業への適用拡大により、やはり苦しいということで、20時間未満の労働者の使い回しということに走っていただいては困るということで、その点に関する監視というものが必要になってくるのではないかと考えています。
もう一つ、これは監視ではなくて気をつけなければならないということなのですけれども、学卒時に就職氷河期にあった人々が非正規という形で今でも就労を続けており、皆さん御承知おきのように、一旦非正規という形になると正規に転じることが非常に難しいわけなので、ある程度の中年期になっても非正規という形に留まっている事態となっています。短日短時間や非正規で働いているこの方々が、第1号被保険者であったものが2号になるという点で、すばらしい制度改革になるだろうという話になりがちなのです。しかしもう一つ、やはり3号問題というものがあるわけです。例えばこの議論が民間レベルで語られたときに何に注目が集まるかというと、第2号被保険者の配偶者が保険料を払わずとも基礎年金を将来もらえるという点はやはり非常に魅力度が高いので、3号に居続けたいのに2号になるのは嫌だわという人たちが何らか物を申したり就業抑制するということは、多分起こり得るのだろうと思うのです。
これをいかに回避するというか、御納得いただくかということを考えたときに、今回の資料の何ページかのところに、第2号被保険者になることでこういった利得、メリットがありますよということが幾つか書いてあったのですけれども、これは懇切丁寧に御理解いただけるまで細やかに説明するということになるかと思うのですが、この3号の方たちの就業抑制ということを考えたときに、私はちょうど自分の研究で人間行動について研究しているものですから、ちょっと思い当たることがあったのです。神経経済学であるとか脳科学の分野で、fMRIを使って質問をして、それに応じるときに脳のどこのところが賦活するのかということを調べたり、あるいは社会行動実験をして、人々がある行動を起こすときにどのように考え、どのように行動するのかということをいろいろ分析したり調査したりすることが、日本の中でも行われていますし、海外でも行われています。いろいろな方が研究した成果として、同じような結果が出ておりまして、かなり信憑性が高い見解が導かれています。これによると、人々が考える報酬価値というものと、その報酬について価値を考えるときに時間割引というものがあるということで、行動実験とか神経経済学の議論ではよく参照されているのですけれども、この論理が3号問題にすっかり当てはまっているのだなということに気がついたのです。
私よりも詳しい先生方がいらっしゃるかもしれないのですけれども、どういうことかというと、報酬というものを考えたときに、人間というのは概して得をすることよりも損をすることに非常に敏感に反応するということが一つあります。そこにまた時間割引というものが効いてくるということなのですね。将来得をするかもしれないということよりも、もっと最近の「今」得られる利得のほうにより目がいって、後者を人は選択するということが時間割引という考え方なのですけれども、これを3号の方たちに当てはめて考えると何が言えるかということです。1つには、2号に転じることにご納得いただくためには、将来受け取る価値が、この時間割引を越えるほどに物すごいメリットがあってすばらしいものなのだよということを強く訴えかけることができなければならないということです。しかし、より遠い将来のことに関する利得を示したところで、余り反応しない可能性があります。そこで、より目先の今現在における損、ここで言う損というのは保険料を払わなくてはいけないということなのですが、そこに目がいってしまうということがあるのだけれども、「遠い将来」と「現在」の中間をとって、受給者になるという遠い将来の利得ではなくて、その間のもっと近い将来の利得を強く説明することが有効なのではないかと思っています。
例えば、傷病手当であるとかさまざまな利得がありますけれども、遠い将来ではなく近い将来に受け取れる利得があることを示すことによって、割引率が低減されるととともに、より近い将来であれば、その利得の価値をよく考えることができるのだろうということなのですね。そういった形で示すことが、御納得いただく手立てとして必要かもしれないと考えました。
それとともに、この話だけだったら神経経済学で言われている理論がそのまま当てはまりますねということで終わってしまうのですけれども、一つ、必ずしもここで示したような行動を起こすわけではない人々がいるということがある程度この研究でわかっていて、それはどういう人かというと、社会性を非常に強く、高く持っている人々と、利他的な物の考え方あるいは行動をする人々ということなのです。つまりそのような人々は、報酬価値とか時間割引の考え方に基づく行動が強く出てこないということなのです。
それで何が言えるかというと、今日のこの議論の整理〔案〕の最後に書かれていることですけれども、やはり社会保障システムというものが一体何であるのかということについて深い理解をして頂くということが誠に重要になってくるということです。きちんと御理解いただくことによって、社会性を持ったり、利他的な個人になっていく。そういった人々を多くつくり出すということが恐らく大切になってくるのだろうと思うわけです。
もう一つだけ申し上げたいのですが、これは今この案を変えてくれということではなくて、これは私の委員としての一個人の考えなのですけれども、60歳代前半層の低在老の改定について書かれていたのですが、私は、企業側のマネジメントの混乱を避けるという意味においても、低在老、男性においては2025年、女性においては2030年までだと思うのですけれども、短い期間ではあるのですが、この混乱を避けるというためにも、低在老は今のままで本来的には終わらせるということのほうが恐らくよろしいのではないかと実は考えているところです。しかし、これは書きかえてくれとかそういったことを申すつもりは全然ないです。
在職老齢年金に関して議論するときに、やはり我々は働く側の意欲を向上させるということばかりを見てしまうのですけれども、でも、日本においてはそれよりも重要なのが、雇用の受け皿であるところの企業が雇用の場を用意できるのかどうかという、こちらのほうがよほど重要だというふうに考えています。
それとともに、企業側が働く場を用意できるための要が何であるかというと、一人一人の労働者、従業員がこのまま我が社で働き続けてもらいたいなと思えるような、そういった高い質の人材であるということで、そのように人を育て上げていく企業と産業界であることが求められるのだろうということです。
この議論は一番最初の話に戻るのですけれども、高年齢層だけではなくて全世代の労働者が多様な働き方をしていく、この場合、多様な働き方というものの中心は多分、非正規だったりということになると思うのですけれども、非正規というかたちで働き、企業からの育成投資を十分に受けることができない人々が60歳、65歳になって。
○神野部会長 高木委員、帰られる委員がいらっしゃるので、ちょっと適当なところでおまとめいただいて。
○高木委員 わかりました。あと一言だけ、ここで終わります。
そうした人々が60歳、65歳になって、企業側からいてほしいと思ってもらえるような人材になれるかというと、やはり難しいのではないかというふうに考えているわけです。
長くなりまして済みません。以上です。
○神野部会長 永井委員、ちょっと待っていただけませんか。菊池委員、済みません。お帰りになるというか、御予定があるということなので。
○菊池委員 申しわけありません。途中から来て中座をするということで大変申しわけないです。
非常に丁寧なプロセスでおまとめいただきまして、感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
今後に向けて2点コメントですけれども、17ページの「4 その他」のところで、1番目の○で障害年金・遺族年金についての検討を進めていくべきであると入れていただいて、ありがとうございます。ただ、これは毎回私もお願いしているのですが、なかなか検討が進まないというか、最近制度改正が頻繁なので、本当に御当局、息つく間もない中でやっておられるというのは重々承知しているのですが、制度改正の合間にぜひ少し腰を据えて、社会経済状況はまさに変化してきていますので、障害年金・遺族年金について検討を進めていただきたいと改めてお願いをしておきます。
もう一点は、その下の○のところで1段落の最後で年金委員の活用も重要であるという一文を加えていただいてありがとうございました。確かになり手がいないとか高齢化、あるいは周知されていないといった問題があることは承知していますけれども、最近、年金機構のほうでも予約相談が8割、9割になってきて、非常にスムーズにいくようになってきた。あるいはその職員が前向きに年金セミナー等で地域に出ていろいろ活動しておられるという状況になってきていると聞いています。なので、年金事務所について一部入れていただくのもよかったのかなと今になって思っていますが、それは入れなくていいのですけれども、その中で所得保障をつかさどる年金事務所等も、いわゆる最近の政府の政策目標である地域共生社会の一端を担っていこうという気概が少し出てきているように感じます。
その中で、年金委員というのは、最初に述べたようにさまざまな問題がありますけれども、まさに日本年金機構法30条に規定された法律上の位置づけを与えられた存在ですので、年金制度の広報という面ももちろんですけれども、地域共生社会を担っていく、その役割を担い得るものとして、少しこの年金委員のあり方について検討されたらどうかと思う次第です。ここはお願いということでございます。
以上2点です。
○神野部会長 ありがとうございました。
それでは、済みません。永井委員、お待たせしました。
○永井委員 ありがとうございます。また、丁寧な取りまとめと御説明を本当にありがとうございました。これまでもいろいろと発言させていただきましたし、また、働き方の多様化を踏まえた懇談会のほうにも出席させていただいて、発言もさせていただいたことを踏まえまして、改めて働く者の立場から3点述べさせていただきたいと思います。
1つ目は社会保険の適用拡大についてでございますが、懇談会の場でも発言をしておりますけれども、今回、社会保険の適用拡大が我々が考えていたことよりは少しの前進にとどまったということは、やはり非常に残念だと思っております。単に短時間労働者といいましても、独身女性の方、またシングルマザーなど多様な背景があります。将来のための資産形成が必ずしも十分にできない方々も多いと認識しております。一人でも多くの方に被用者にふさわしい保障が実現するよう、さらなる適用拡大が急務であるということを改めて強く申し上げておきたいと思います。
2つ目には、副業・兼業で働く方への対応、資料で言いますと15ページになると思いますが、ここにつきましては、今回の改革ではここも具体的な対応策が示されていないということについては大変残念だと思っております。課題認識、今後の検討ということは触れられておるとは思います。複数の事業所で雇用される方に対する労災保険や雇用保険の適用に関しては、具体的な検討が進んでいると認識しておりまして、そういったことから労働政策と歩調を合わせて、できる限り早期に就労実態に沿った形で社会保険を適用すべきと考えております。
3つ目は女性と年金の問題についてでございますが、今回の財政検証では、所得水準ごとの所得代替率も示していただきましたが、まだモデル世帯という考え方は踏襲されると理解しております。女性の就業率が約7割まで上昇している中、働く女性の視点からの年金の見直し論議が少し不十分だったのではないかと考えております。第3号被保険者のあり方、高齢、単身女性が貧困に陥る率が高いといったことなどを含めて、今後も丁寧な議論を積み重ねるべきと考えております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでございましょうか。
原委員、山田委員。とりあえず、原委員、お願いします。
○原委員 まずはこの議論の整理(案)ということでお取りまとめいただきまして、ありがとうございます。内容のことというよりは、今後の年金制度改革の方向性というところで1点だけお話しさせていただきます。
最後のところにあります「その他」の広報ですとか教育のところについてです。ページで言うと17ページの終わりから18ページに書かれていますけれども、先ほど菊池委員からもお話がありましたが、年金委員さんとかもいらっしゃるということに関連してなのですが、ここの文章にもちりばめられていますけれども、年金制度についてやはり正しい情報を正確に伝えて関係者の理解を得ていくことが重要であるという部分はポイントだと思います。いろいろな制度改革をする、あるいは今後しようとするという意味でも、ある程度、細かいところはいいと思うのですが、制度を知っていただいて、特に年金制度の意義とか理念とかそういったものを若い方から含め、受給者を含め、知っていただくということが非常に重要かと思います。
そういった意味で、ある程度のことが浸透すればいろいろな、今後、やらなければいけない将来世代のためのさまざまな制度改正もやりやすくなるのではないかと思っております。
なので、ここにもありますが、広報の充実強化に取り組んでいただきたいですし、それを戦略的な広報展開と書いてありましたけれども、これも引き続き検討していただきたいと思います。その中で、これまでの仕組みも踏襲しつつ、ここにもありますけれども、新しいあり方というものも検討していくべきだと思います。
今、年金の広報検討会というのが行われていると思います。そこで年金広報コンテストも行われていますが、割と若い方からいろいろな案が出てきていますので、そういった意味でも、広く、年金を身近に感じていただきながら、楽しくと言ったら言い過ぎかもしれませんが、すっと年金制度の意義や理念が頭に入るように、そして広く伝えていっていただくような新しい試みもぜひ継続してやっていただきたいと思っております。
もう一つの観点で広報について申し上げますと、18ページの中段ぐらいですが、公的年金、私的年金を通じてというところです。見える化とか、老後の生活設計をより具体的にイメージできるようにするための仕組みを検討するとか、あと、下から2つ目の○のところで、年金制度の意義や位置づけを理解してもらう、年金教育の取り組みを進める必要があるというところについてです。まさにそのとおりかと思いますので、特にこれから老後の所得確保というものを考えたときに、公的年金と私的年金の組み合わせというものが必要になってくるかと思います。ただ、公的年金というものがその中で土台というか、柱というか、軸となるものでありますので、そこの部分への理解、そしてプラス上乗せとしての私的年金、個人年金、企業年金ということかと思います。そういった意味では、例えば投資教育とか金融教育という部分が考えられている中で、社会保障教育、年金教育といったものも並行して、そういった部分にまできちんとやって、広報と同時に教育という部分も今後広く、10代、20代のころからやっていくということも必要ではないかなと思います。老後の所得確保といった意味でも広報、教育といったものについて、より一層継続的に進めていっていただきたいと思いますので、先ほど開催されていましたが、企業年金部会との連携といったものも必要ではないかと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
○神野部会長 ありがとうございました。
山田委員、どうぞ。
○山田委員 ありがとうございます。
まず、事務局におかれましては、さまざまな意見がある中でできる限り反映する形で取りまとめられたことに対して敬意と感謝を表したいと思います。
その上で、むしろ今後ということに関しての幾つか感想に近いのですけれども、あるいは今後の課題ということで、次回以降検討していただきたいことについて幾つか申し上げたいと思います。
1つは、今回の最大の焦点というのは被用者年金の適用拡大であったかと思います。これに関しましては、べき論で言いますと全てに適用していくということかなと思いますけれども、実際にはなかなかさまざまな制約がある中で、一定の成果が上がっていっているということかなと思います。
ただ、これまでもさまざま議論がありましたように、これはどうしても中小企業にとってはさまざま負担が出てくるというのは事実ですので、ここを、一つはやはり産業政策のようなところでどう補完していくのか。そことの連携というのを改めて、報告書の中でも書いていただいていますけれども、いかに実効性を上げていけるのかというところを、年金部会から外になるかもしれませんけれども、事務局のほうからぜひそういう連携のところをやっていただきたいなということです。
もう一つは、先ほど幾つかの委員からもあったのですけれども、どうしても中小企業が厳しいということになってくると、いわゆる短い就労で雇用を回してしまったり、あるいは最近少しふえていますけれども、フリーランスのような形で、本来雇用であるところをそうでない形にシフトしていくという動きも発生する可能性はありますので、ここも書かれておりますけれども、次回の検討ということだと思うのですけれども、そこに対しての適用のあり方ということもしっかり議論を始めていくことが重要ではないかなと考えております。
それから、2つ目の今回の大きな論点は高齢期の就労と年金との関係ということで、私自身はもう少し未来志向で在職老齢年金のところは踏み込むほうがよかったと個人的には思っておりますけれども、これはさまざまな意見がある中で一定の方向が出された、特に基本的な考え方が示されているということは、それでよかったのではないかなと思います。
ただ、これを引き続き進めていくということが大事だと思うのですけれども、これも書かれているのですが、やはり年金制度とそれ以外の特に税制との連携ですね。そういうところが逆に今回、ひとつネックになったということが改めて浮上しているということですので、そういうことを意識して今後引き続き進めていっていただきたいということです。
最後に1点は、これは駒村委員を中心にさまざまな方がおっしゃっていますが、やはり基礎年金のところが弱いという問題への対応は今回十分議論ができなかったということだと思います。これを改めて被用者年金としてどんどん適用していくということが一つのやり方だと思いますし、期間を延ばすということもそうなのですけれども、税制との連携の中でこれをどうしていくのかというのはやはり課題として残っているのが事実だと思いますから、次回これはぜひ重要な課題として取り組んでいただきたいなと。
以上、感想でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
まずは権丈委員。
○権丈委員 私も少し話をさせていただきたいのですけれども、本当にお疲れさまでしたと言いたいですね。前向きに倒れているのを私は実感しております。
これは何が難しいかと言いますと、例えば2013年の社会保障制度改革国民会議というのがあったのですが、そこに経済界の人たちが呼ばれて報告しました。そのときに医療関係者である大島伸一先生という人が、一体どんな医療を国民側あるいは保険者として受けたいのだと、どんな議論をしているのだ。お金がない、お金が足りないという話はもういいから、どんな医療を受けたいのだという話を尋ねたらば、ある経済団体の方は、議論をしたことはございません、私どもはそこまで考えたことはありませんと。ほかの経済団体は、課題とさせていただければと存じます。ほかは、積極的に議論したことはございませんというような回答だったのですけれども、審議会というのは、こういう人たちが全員参加してきてほぼ拒否権を与えられるという制度なのですね。だから、ここまでよく頑張ったよねというのが私の評価であります。
最終的には神野先生に一任してお願いをするということになりますけれども、先ほどのところで少し言っておきますと、18ページでモデル年金以外の世帯類型も少し検討してもらえないだろうかというような話があったのですが、今回、参考資料4の中に十分充実したデータがあるんですね。「多様な世帯類型における所得代替率」という資料です。だから、こういう要望に対して今回の財政検証の中では、多様な世帯類型における所得代替率に関して、世帯における一人当たり賃金というのが極めて重要であって、世帯類型において所得代替率、要するに年金の給付水準が変わるわけではないことを示したということがこの報告書の中で評価されるというような言葉があっていいのではないかと私は思っております。関連資料のこの部分は、私はすごくよくできたデータだと思っておりますので、このあたりのところはぜひお願いしたいと思います。
それと、10ページになるわけですが、先ほど出口委員からいろいろ話がありましたけれども、出口委員が8月27日にこの財政検証の資料の中で一番大事なのはオプションAとオプションBの組み合わせの試算であると発言されていて、その組み合わせ試算では1050万人の適用拡大では11ポイント給付水準が上がると。これが最も重要な資料だとおっしゃってました。その中には在老の撤廃による0.4ポイント減も入っているのです。引き下げていく効果を反映させていきながら11ポイント上がっている。そこで原委員と私が、いや、もしかすると1050万は難しいから325万ではないのかとかいうような発言をして、それでもケースIIIで8ポイント上がるわけです。そういうようなことを議論していたわけですね。それがトータルで0.4になりましたという、とにかく所得代替率で見ましょうという議論はすばらしくいいことだったわけですが、でも、議論の整理案10ページに入っているのが、適用拡大が125万人で0.5ポイント上がりますというところしか入ってないのです。だから、ここはやはりもう少し、先ほどのケースIII、325万だったら8ポイント、1050万人だったら11ポイントぐらい上がるというようなことを「等」という形ではなく、3つ加えておいていただくのがいいと思います。私が適用拡大規模125万で議論をしていたら、出口委員のほうからそんな小さいことを言うもんじゃないと言われていたので、出口委員の代弁者としてそれを言っておきたいと思います。
そして、10ページの在老のところは、見直しを支持するのか支持しないのかという文章が込み入っているのですね。ここは両論併記で書きたくないというような気持ちも分かりますけれども、前半部分、在老をなくすと所得代替率が下がります。そして、下がった上に高所得者から低所得者に対する批判というのがありますというところで一度閉じて、そして、そうはいってもほかの所得代替率全体で見ていくとというところから、あるいは先ほどの山田委員のような将来的な状況から考えていくと、どう考えても資料の中には、平均的な就労を将来やっていったら在老にひっかかるというような資料も出ていたわけですね。そこからバックキャスティングに見えていくと、今打つべき手段は、将来から見ていくと今やらなければいけないというような意見が双方対立していて、多くの意見は見直しましょうというふうになっていたのではないのかなというような印象があったので、2つここは混在しない形でやっていくと同時に、厚生年金というのは年金と賃金、厚生年金に入っている人たちだけが在老の対象になるからというところで、厚生年金の中だけで所得再分配をやろうとしているこの制度、在老というのは不公平という側面があるのが導入されているのは、私はとてもいいことではないかと評価させていただいております。
それと、適用拡大のところで51人以上に決まったようですけれども、当分の間とか、経過措置とか言っているけれども、2012年からはじまっている経過措置ですからね。2012年のときから経過措置としてしっかりやっていきましょうというような形で、いつまで経過措置をやっているのだという話。そして、この付録のほうの資料にありますけれども、51人以上というのは全産業の3.1%ですね。何をこれから先やっていくのかなというような話になっているけれども、私は皆さんがとにかく前向きに説得していろいろやっているのだろうというような状況、生活を犠牲にしながらやっているのだという状況は何となく見えていたわけですけれども、ここは先ほどの出口委員がおっしゃっていたように、何ゆえに目指したところに行かなかったのかということを世の中にちゃんと知っていただくことが大切だと思っております。
公共政策というのは基本的に、ミクロとか短期的視野で見ると正しいことがマクロとか長期的視野で見ると間違ってしまうという合成の誤謬を解くために存在するのですね。だから、いろいろな意見があるというのはいつも当たり前のことです。当時者から見れば冗談じゃないという抵抗は絶対に示していく。そして、それを全員一致でまとめていかなければならない審議会の報告書は読み方というのがあって、最後のほうにありますように、さまざまな意見というものは国民全体の幸福の観点から出ているのか、我が国全体の発展に資するような意見として出されているのかというようなことをしっかりとマクロ、長期的な観点から読者は判断して、この報告書を読んでいただければと思っております。
どうもありがとうございました。
○神野部会長 ありがとうございました。
それでは、小野委員、その後米澤委員と行きますので、小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
この議論に参加させていただきまして、特に財政検証のときの資料を中心として非常に充実した資料を頂戴しまして、私もよく勉強させていただいて、非常にいい経験になったなというふうに思っております。
私からは、被用者年金の適用拡大についてコメントさせていただきたいと思うのですけれども、今回の改正によって次回の検証における所得代替率への影響というのは、企業規模要件を撤廃しただけでは、恐らく極めて限定的になるのだろうと考えています。
また、年金制度だけの問題ではないにしろ、社会の変化に適切に対応していかないと、また新しい裁定機会を提供してしまうのではないかということに留意すべきだと考えておりまして、そういう意味ではまだまだ道半ばというふうに評価させていただいております。
その観点から3点コメントさせていただきますと、まず、これは事務局へのお願いではなくて単なる感想なのですけれども、規模要件について、なぜ51人としたのか。我々はエビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングでやってきたというつもりがあるのですけれども、ここに根拠が示されていないのではないかと思っております。経済産業省の資料に基づいて分析すると、小売業とか飲食サービス業といった業種では付加価値生産性に関して規模の利益が確認できないという研究もあるということでございます。
次に、報告書の5ページの最初の文章の4行目に経営条件というのがあります。後の文章から判断しますと、これはこの○の中の2つ目の文章の「ただし」以降の企業経営というのを意識しているのではなくて、ここは公平な経営条件の確保というのを意図しているのだろうと思いますけれども、それは確認までということでございます。
それから、今後に向かって14ページの最後の文章ですけれども、次回の検証の際には、ぜひとも被用者保険の適用を受けないことの多い離婚とか死別の世帯主である女性、あるいは未婚の低所得者といったような声を上げることが難しい社会的な弱者の声というのを吸い上げていただきたいと思っております。
働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会でも、配偶者控除の壁、それから社会保険適用の壁等のために収入が押し下げられてきたというのがシングルマザーの現実というような指摘もございました。こうした声に対応していかないと、社会の雰囲気というのは悪くなるのではないのかなというふうに懸念をしております。これが被用者年金の適用拡大に関するコメントでございます。
最後に1点だけなのですけれども、18ページの最後から2つ目の○の真ん中あたりなのですが、社会全体で連帯して支える社会保険を中心とした社会保障制度という大きな枠組みの中での後に、保険としての年金制度の意義や位置づけというような形で、そこだけ挿入していただきたいなという気持ちがあります。
以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございます。
米澤委員、お願いします。
○米澤委員 私は、1点、小さなところだけ確認させていただきたいのです。その前に、この報告書に関しましては、全体として私も事前のレクで、もうこれで十分ですと。一、二点確認させていただいた点はあったのですけれども、特にここのところが問題ですということは全くなかったということを報告させていただきたいと思います。
特に高在老のところは私も多少意見を言ったつもりですが、そちら側のようなところに落ちついているところに関しましても、私としてはよかったかなと思っております。
1点だけ確認させていただきたいのですけれども、一番の今回のポイントですけれども、要件の規模の拡大です。50人を目指して100人ですか。現在は500人なのでしょうか。これはもう何回も、小さくなればなるほど企業経営者としては負担が大きいということは私も百も承知、わかるのですが、最近のいわゆる人手不足で企業の採るほうも大変だと思うわけです。特に中小になればなるほどなかなか人を採用できないときに、うちの企業は厚生年金をやっていますよということは売りにならないのでしょうか。私は、ならないわけはないと思いますので、先ほどこれによって中小企業を殺すのかというようなところまで言っているようなところもあると言っていたのですけれども、むしろ殺すのかというのは、厚生年金を適用しないような規模ないしはしないところが殺される可能性があって、どんどん下げていった場合には、企業の負担は確実に上がるわけですが、それによって、そうでなければ集まらなかった人が集まるということのメリット、今後、その効用、効果はかなり重要ではないかと思っておりますので、うまくそれを労働市場に企業としては宣伝をしながらやっていけば、ウイン・ウインの形である程度問題が解決されるのではないだろうかと期待しております。きれいごとだけかもしれませんけれども、そういう点が少し無視されているのかなという感想を持ちました。
以上です。
○神野部会長 武田委員、どうぞ。
○武田委員 ありがとうございます。
まず、取りまとめていただきました事務局については、大変丁寧な取りまとめであったと思いますので、感謝と敬意を表したいと思います。
今後に向けた意見としては2点ございまして、まず1点目は、将来の経済社会の方向性を見据えた改革は今後も続けていくべきという点です。働き方だけではなく生き方も多様化する中で、引き続き、それを見据えた改革が大事なわけですが、先ほど出口委員がおっしゃったように、双方向の改革があると思います。つまり、実態が変わってきたので、その実態に合わせて制度を変えてくということと、制度自体が、抑制したり阻害要因になっているものについて、将来を見据えて将来の方向性を示すことによって人々の行動を変容させていく改革もあると思っています。今後は後者の部分が非常に重要になってくると思います。これでとめることなくまた次につなげていくことが必要と思います。
2点目は将来の持続可能性の確保が変化云々にかかわらず引き続き極めて重要だということです。そういう意味では今回の取りまとめの資料の最後に、将来世代のための改革の議論を続けていくことが重要であるという一文で終えていただいたことは、私は非常によかったと思っておりますし、それが極めて重要であると思います。
当社は毎年生活者3万人に定例的にアンケートをしておりますが、その中の一つに、将来に対して不安に思うものは何かという項目があります。この数年で顕著に下がっている項目は雇用に対する不安です。先ほど米澤委員がおっしゃられたように、人手不足の中で、働く側についての雇用に対する不安は大分減ってきているということがあります。
一方で、残念ながら高どまりしている項目が一つだけありまして、それが社会保障制度に対する不安になります。もちろん社会保障制度は年金だけではないので、この部会の範囲も超えて社会保障制度自体を持続可能性を高めるために改革していくことが極めて大事だと思いますが、駒村先生もおっしゃったように、改革を進めていくにはどうしても時間がかかり、それが最後、社会で実装されるまでもさらに時間がかかるので、この年金部会においても持続可能性を高める上で将来も見据えつつ、どう改革していけるかということについて、今後も議論を進めていただきたいとお願い申し上げる次第です。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
小室委員、どうぞ。
○小室委員 ありがとうございました。
おまとめいただいた資料、ありがとうございました。私からは1点、参考までにというか、働き方改革で中小企業と大企業の配慮をどうするかということの一つの例として申し上げたいなと思ったのですけれども、働き方改革、労基法の改正に関しては大企業がことしの4月が期限で、中小企業は来年4月が期限ということになったのですけれども、それはもちろん中小企業への配慮ということで期限を1年おくらせたのですが、現実はどうなったかというと、ことしの春に、学生の見え方としては、働きやすい大企業とブラックなままの中小企業というふうに物すごく差が開いてしまったのですね。なので、ことしが一番、中小企業にとって過酷な年になってしまって、猶予を与えたはずなのだけれども、差が物すごく開いてしまったということが結果だったかなというので、時期をおくらせることが本当に配慮になるのかというところは、働き方改革に関してはとても今は疑問な状態で、中小企業は来年の春がリミットだと思っていた。でも、そうではなかったのだというようなことを今、感じているのではないかなと思っています。これは参考までにということです。
1点は、これが最後ですけれども、最終のページにあった戦略的な広報展開というところがここからの部分で非常に重要なところで、もっともっとスピーディーにこの点についての議論が進んでいくことを期待したいなと思っているのですけれども、ちょうど18ページの真ん中のあたりに自分の受け取れる年金が幾らかというのが最も関心が高いというのがあったのですけれども、これが見える形の広報を今、検討し、恐らくシステムを構築することを考えてくださっているのではないかと思うのです。それとともに、今は自分は3号だけれども、自分の状態をもしも少し多く働いたら、労働時間を少しふやしたら、それらはどうなるのかなというような現実を変化させたときに、長期的に見たときに自分のもらえる年金がどう変化するのかということをシミュレーションできる機能を入れていくことによって、何かしら目先の負担がふえるのではないかということで自分の生活を一歩踏み出せないのだけれども、長期で見たときにはそのほうが自分は安定するのではないかというような思考に持っていける、そういう機能をつけていくことで、今受け取れる年金は幾らかだけではなくて、どう行動していくとより安定するのかということが見える、そういう周知機能にしていくことが考え方として大事ではないかなと思っています。今後とても期待していますというところです。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
諸星委員。
○諸星委員 済みません。先ほどの米澤委員のことについてちょっと。実は適用拡大ということであって、人手不足の中小企業では、社会保険をきちんと整備するということは人を採用するということが大前提なので、そこは基本なのです。ただ、短時間の今回の適用拡大を進めるとなると、なかなかそこの意識が少なかったり事業主の理解もないために、どうしてもそこの部分で声をかけても全部後退のほうの意見しか出ない、あるいは就労調整をしてしまうということなので、実質、人手不足の中小企業においては、やはり社会保険に入っているということが人を呼ぶのには一番すばらしいということはわかっているということだけは御理解いただければなと思います。
○神野部会長 ほかはいかがですか。よろしいですかね。
どうもありがとうございました。一当たり御意見を頂戴いたしまして、いろいろな御批判等々をいただきましたけれども、多くが今後の課題ですね。今後こう進めるべきだという課題が一つあったと。それから、もう一つは、これは主として私の責任なのですけれども、基礎年金を含めて本来議論しておくべき事柄が十分にやっていなかったではないかということに起因して、ここに入っていないというような問題があるかと思います。
ということを考えると、この文言をきょうの御議論を踏まえて修正していきたいと思いますが、一方で、可能な限り事務局のほうとしてはここで出た議論を一定の価値観から取捨選択することなく書かれていると思うのです。もちろん、もうちょっと広くいろいろ拾えば書けますが、一方でオッカムの剃刀の原則もあるので、そぎ落としておくことも必要ですので、御意見として伺った限りでは、そう修整する箇所はないかなと思っております。
これは私の責任において文言について修正すべきだと思われる点については修正することにさせていただいて、先ほど権丈委員からもエールをいただいたので、そうさせていただいて、もちろん御発言いただいた皆様方に、ここについては修正しませんがということを御理解いただいたり、あるいはこう修正させていただきますということを確認させていただいた上で、修正については私に一任していただけるとありがたいのですが、よろしいですか。
(「お任せします」と声あり)
○神野部会長 それでは、そのようにさせていただいて、修正が終了した時点で委員の皆様方にそれをお送りし、厚生労働省のホームページ等々で公表すると同時に、きょうついておりました案を取らせていただいて、ここの部会での決定というふうにさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、そのようにさせていただきますので、この整理もこれまでの議論の一区切りのまとめでございますので、そう御理解を頂戴できればと思います。
もう時間いっぱいなので、私のほうからは、きょうもそうですが、冒頭申し上げたように1年8カ月をかけて皆様方に、きょうを含めると15回を数えるほど熱心に議論を頂戴いたしました。おわびと御礼の言葉を申し上げたいと思いますが、きょうもさまざまに議論が出たように、タイムプレッシャーの中で運営しておりますので、どうしても十分に御議論を頂戴できないような論点等々が多々あり、また、私の運営の仕方等々に至らない点があったために、皆様方に御迷惑をおかけしたということをおわびしておきたいと思います。
しかし、とはいえ、きょう一区切りとしてまとめることができましたので、これについては皆様方の御協力と御指導のたまものだということで、委員の皆様方に深く感謝をするばかりでございます。
さらに、事務局におかれては、事務局の努力については皆さん高く評価していただいているわけですね。大変な作業等々を行っていただいて、この部会を支えていただいたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。
年金の改革というのはなかなか難しくて、難しくてというのは私がやっている財政学のほうでは、カナールというフランスの財政学者が言った言葉でもって、旧税は良税なり、古い税金はいい税金だったけれども、新税、改革した後の税金は悪税なり、悪い税金だということを言っています。このことは、先ほどいろいろな制度というのは行動を及ぼすので、むやみやたらに変えるということに対する弊害を指摘した言葉として有名な言葉でございますが、年金制度という、つまり憲法で規定されている単年度主義とはどうしても離れざるを得ないような制度は、どうしても現行の制度を維持しながら、それぞれ時々の社会経済の状況の変化にそれをいかに合わせていくかといいましょうか、調整していくかというのがどうしても基本にならざるを得ないと思っております。
そういった点では、もちろん目的は、私の恩師の宇沢先生の好きな言葉を使えば、人間の尊厳と魂の自立というのが大目的であるということは言うまでもないのですが、そうしたことを繰り返しながら、本来の年金の目的を見失わないで努力を積み重ねていくしかないのだろうと思っております。
ということで、今回ここで議論したことは、現行制度をいかに新しい状況のもとで合わせていくかという努力だったと思いますので、皆様方の御指導と御協力に感謝をする次第でございます。
きょう一応、事務局のほうでこれからまとめていただくとしても、一区切りでまとまりましたので、古い言葉で、寒い冬に誓った約束は破られることはないということわざがありますから、これを基盤にしながら、これから一層、事務局が法案化を目指して努力していただくことになるかと思いますが、よりよい社会をつくるための一助になればと願っております。
私のほうから、おわびと御礼を申し上げた上で、局長からお言葉をいただければと思います。よろしくお願いします。
○高橋年金局長 昨年4月からの1年8カ月、15回にわたりまして、神野部会長を初め委員の皆様には大変精力的な御議論をいただきまして、ありがとうございました。
とりわけ8月に財政検証を公表して以来、短期間で集中的に制度改正に向けた御議論をいただきました。その後、与党内での調整を挟みまして、特に今回は最大の改正項目である被用者保険の適用拡大、さまざまな御意見がある中でこれをどう調整していくかというのが一番難題ではありましたけれども、本来は被用者は全て適用するのが原則であり、こういった考え方のもとで、できる限りのところでの到達点には現時点で到達することができたと思います。これも先生方の御指導のたまものかなと考えております。在老の話もいろいろな議論をたどりましたけれども、そういう意味で多角的な議論がされた上での結論になっていると感じております。
今後、この部会と並行して企業年金・個人年金部会で議論していただいた私的年金制度の改正とあわせまして、公的年金制度と私的年金制度の改正をあわせまして、来年3月には法案化を図って国会に提出し、御審議をいただきたい。その上で、それをお認めいただければ、できる限り早期に施行して、今回は適用拡大を中心に丁寧にその趣旨を理解していただき、また、制度の中身、実際どういうことなのかということをよく丁寧に、個々、説明していくということが非常に大事だと思っておりますので、そういったことにも力を入れていきながらやってまいりたいと思っています。
また、今回多くの課題を残しました。年金制度の今後の課題は多々ございます。先ほど部会長から、寒い冬にした約束は守られるという話がございましたけれども、たくさんある課題をしっかりと考えながら、今後、しっかりとした国民本位の将来に向けた年金制度にしていけるよう頑張ってまいりたいと思います。
長らく御議論いただきまして、大変ありがとうございました。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、事務局のほうから今後の予定についてお願いできますでしょうか。
○総務課長 今後の開催につきましては、必要に応じて御連絡をさしあげたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○神野部会長 それでは、これにて第15回の年金部会を閉じさせていただければと思います。御多忙中のところを御参集くださいまして、日の暮れるまで熱心に御討議いただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金部会)> 第15回社会保障審議会年金部会(2019年12月25日)

ページの先頭へ戻る