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2019年11月13日 第14回社会保障審議会年金部会

年金局

○日時

令和元年11月13日(水)14:00~16:00

 

○場所

東京都新宿区市ヶ谷八幡町8番地

 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター 5階(ホール5A)

○出席者

神 野 直 彦(部会長)
小 野 正 昭(委員)
権 丈 善 一(委員)
駒 村 康 平(委員)
高 木 朋 代(委員)
武 田 洋 子(委員)
出 口 治 明(委員)
永 井 幸 子(委員)
原 佳 奈 子(委員)
佐 保 昌 一(委員)
藤 沢 久 美(委員)
牧 原      晋(委員)
山 田      久(委員)
細 田      眞(委員)

○議事

○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから、第14回「年金部会」を開催したいと存じます。
大変御多用中のところを万障繰り合わせて御参集くださいましたことに、深く感謝を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出欠状況でございますが、阿部委員、植田委員、菊池委員、小室委員、諸星委員、米澤委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。
また、武田委員は30分ほどおくれて御参加いただけるということを伺っております。
駒村委員、出口委員、永井委員、細田委員におかれましては、所用のため途中退席をされるという御連絡も頂戴いたしております。
以上のようなことでございますけれども、御出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、この会議は成立しているということをまず御報告申し上げたいと思います。
それでは、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきたいと存じますので、事務局から御確認をお願いいたします。
○総務課長 よろしくお願いします。
毎度申し上げてございますけれども、厚生労働省におきましては、審議会等のペーパーレス化を推進しております。本日の部会におきましてもペーパーレスで実施させていただいております。
なお、傍聴される方には、あらかじめ厚生労働省ホームページでお知らせしておりますとおり、御自身のタブレット等の携帯端末を使用して、厚生労働省ホームページから資料をダウンロードしてごらんいただくこととしております。
本日は、資料といたしまして、資料1「被用者保険の適用事業所の範囲の見直し」、資料2「在職老齢年金制度の見直し」を使用いたします。
また、本日御欠席の菊池委員からも資料をいただいておりますので、菊池委員提出資料、「意見書」と書いているものでございますけれども、あわせて御用意しております。御確認ください。
もし不備などがございましたら、事務局にお申しつけください。
事務局からは以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、大変恐縮でございますけれども、カメラの皆様方にはこれにて御退席をお願いしたいと思います。御協力をいただければ幸いに存じます。よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○神野部会長 それでは、議事に入らせていただきますが、お手元の議事次第をごらんいただければと存じます。
本日は議題を1つ準備しておりまして「これまでの議論を踏まえて更にご議論いただきたい事項」となっております。読んで字のごとしなのですが、少し具体的に申し上げておきますと、これまでこの部会におきましては、前回まで今後の年金制度のあり方について、高齢期の就労と年金受給のあり方などにかかわって論点ごとに一通り御議論を頂戴いたしました。委員の皆様方からさまざまな御意見を頂戴したわけでございますので、「これまでの議論」というのは、そういう委員の皆様方の貴重な御議論を踏まえてという意味でございまして、本日はそれをさらに深めて御議論を頂戴したい事項につきまして、御議論を頂戴できればと思っております。
具体的には、本日は被用者保険の適用拡大と在職老齢年金制度の見直しについて、御議論を頂戴したいと考えております。
そのことを御説明した上でもって、本日御議論いただきたい論点につきまして、一括資料を事務局から御説明していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。
資料1、1ページ目をお開きいただければと思います。被用者保険の適用拡大に関しましては、適用事業者の範囲の見直しについても論点として挙がってございますけれども、この件でございます。
現行制度では、法人事業所の場合、業種や従業員規模にかかわらず被用者保険の適用の事業所となってございます。
個人事業所の場合につきましては、法定されました16業種のいずれかに該当し、常時5人以上の従業者を使用するものとなってございます。
この適用事業所の範囲につきましては、昭和60年(1985年)の改正で法人が強制適用となって以来変更がないというのが現状でございます。また、限定列挙されています16の業種につきましては、昭和28年(1953年)の改正以来変更がないというのが現行制度でございます。
見直しをする場合に、その意義でございます。適用事業所の範囲は、勤務先にかかわらず被用者にふさわしい保障を確保する方向で見直す必要があると考えております。
特に法定16業種につきましては、新たに出現した業種はできるだけ解釈によりまして16業種に含めるなど、一定の対応を図ってきております。
昭和60年(1985年)の改正で法人が強制適用となりまして、さらに会社法改正などによりまして、法人設立が制度上容易となってきたといったこともございまして、ある程度の規模で事務処理能力を有する事業所は、法人として適用を受ける蓋然性が高く、そのような形で対応がされてきております。
このような適用事業所の経緯ですとか、置かれている状況も念頭に置きながら、なお残る非適用業種につきましては、一度御報告いたしました「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」のとりまとめも踏まえ、過去の経緯と現況を個別に勘案し、見直しの必要性を検討していただいたらどうかと思っております。
このような観点で、見直しの方向性として、非適用業種のうち、法律・会計に関する行政手続などを行う業種、いわゆる「士業」につきましては、被用者保険適用に関する事務処理能力は期待できる上に、1つ目、全事業所に占める個人事業所の割合が高く、特に常用雇用者5人以上の個人事業所の割合が他の業種に比べても高いということから、被用者として働きながら非適用となっている方が多いということが見込まれます。
また、制度上、法人化に一定の制約条件があるか、そもそも法人化が不可能のような業種もございまして、他の業種であれば、後ほどごらんいただくデータのように大宗が法人化しているような従業員規模でも個人事業所にとどまっている割合が有意に高く、被用者保険制度上で個別に対応を図る、すなわち適用事業所として範囲を拡大する必要性が高いのではないかといった要素を考慮いたしまして、適用業種とすることを検討していただいてはどうかと思っております。
具体的には、弁護士・司法書士・行政書士・土地家屋調査士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士・公証人・海事代理士の10の業種でございます。
2ページをお開きください。こちらが懇談会についてですけれども、一番下の「とりまとめにおける今後の検討の方向性」の部分でございますが「適用事業所の範囲については、本来、事業形態、業種、従業員数などにかかわらず被用者にふさわしい保障を確保するのが基本であるとの考え方が示された。その上で、非適用とされた制度創設時の考え方と現状、各業種それぞれの経営・雇用環境などを個別に踏まえつつ見直しを検討すべきとの認識が共有された」ととりまとめられているところでございまして、このとりまとめに応じて事務局で整理してみたものでございます。
3ページをごらんください。業種ごとの法人あるいは個人事業の比率でございます。主な非適用業種の中では、一部の業種において、全事業所に占める個人事業所の割合が高いということになっておりまして、このグラフで申し上げますと、赤い色の部分とピンク色の部分でございます。この中でも左端の特に士業におきましては、赤い部分の常用雇用者数5人以上の個人事業所の割合が他の業種と比べても有意に高く、12%を超えている状況でございます。
4ページをごらんください。こちらは横軸に従業員の規模をとりまして、縦軸が法人化率でございます。多くの業種で法人割合は事業規模が大きくなるほど上昇する傾向がございます。ただし、一番下の赤い折れ線グラフでございますけれども、士業におきましては、他の業種であれば大宗が法人化しているような規模でも個人事業所にとどまっている割合が高く、例えば常用雇用者数「5~9人」という左から2番目という部分でも、法人2割・個人8割、少し先の右端の「100人以上」でございましても、法人8割・個人2割と、他産業と比べても有意に低い状況が見てとれます。
5ページをごらんください。なぜこのようなことが起きているのかを事務局で分析してみたものでございますけれども、士業の法人割合が高くない要因といたしまして、法人化に際して制度上一定の制約条件があるか、あるいは法人化がそもそも制度上不可能であることが関係している可能性があるのではないかと思っております。
そのような特性を持つ業種を見ますと、左の先ほど御報告を申し上げた10の業種でございますけれども、全て法律あるいは会計にかかわるような行政手続などを行う業種でございまして、このような形の業種におきましては、一般的に被用者保険適用に係る事務処理能力も十分期待できるのではないかということでありまして、逆に申し上げますと、従前どおり非適用にとどめておく積極的な理由も見出せないということでございます。
このような形の場合、例えば弁護士でしたら、弁護士個人は雇う側になりますので、仮に適用拡大されたとしても、その方々が厚生年金に入るということではなくて、そこで雇われている方々の社会保険の保障をどうするかという議論ということでございます。
6ページ、今の法人適用ですとか常時5人、16業種の関係図でございます。
7ページ、センサスで見た場合に適用されていない業種を赤字で強調して見やすくしているものでございます。
8ページ、以前から御説明していますけれども、経緯、変遷の図でございます。先ほどポイントとなる昭和28年と昭和60年の改正につきましては、御報告申し上げました。
9ページ、参考で、昭和60年のときの国会答弁でございますけれども、法人を適用化した理由として、法人であればそういった社会保険関係の適用業務の事務処理能力が十分期待できるのでといったような整理で国会答弁がなされているところでございます。
引き続きまして、資料2をお開きいただければと思います。一度当部会で御議論いただきました「在職老齢年金制度の見直し」についてでございます。
1ページ目をお開きください。去る10月9日に御議論いただいたときの当部会での主な意見を事務局で適宜抜き出して整理させていただいたものでございます。
65歳以上の在職老齢年金、いわゆる高在老につきまして、就業抑制については立証できておらず、廃止や見直しをするにしても、将来世代の所得代替率の低下に留意すべきといった御意見。
働けない人との公平性にも留意して検討すべきという御意見。
現時点では就業を阻害する効果がないからといって、将来も必ずないとまでは言えない。今回のタイミングを逃すと次は2025年ごろとなりますけれども、それだと遅いのではないかという御意見。
財源問題も考慮し、完全撤廃ではなく、基準の引き上げを行うべきではないかという御意見。
年金は原則にのっとって給付し、所得再分配効果は税で担保すべきではないかという御意見。
所得代替率の変化は、高在老の見直しだけではなく、被用者保険の適用拡大など、制度改正全体で見ていくべきではないかという御意見。
支給開始年齢が65歳に完全に引き上がった後に、65歳以降の就業意欲を阻害しないようにする必要があるので、基準額の引き上げは必要ではないかという御意見。
エージフリーで考えて、そこから議論を行うべきだという御意見。
日本の高齢者雇用で重要なのは、企業側の受け入れ体制のほうの問題ではないかといった御意見がございました。
60~64歳の間の低在老につきましては、低在老は就業抑制効果が認められているということから、あるいは労働の現場でもその効果、つまり就業抑制効果が感じられているということから、低在老こそ見直すべきではないかといった御意見がございました。
2ページ、では、見直す場合にその見直しの意義ということでございます。
一番上でございますけれども、先ほどの委員御意見にもございましたが、年金制度は、保険料を拠出された方に対して、それに見合う給付を行うということが保険制度である以上は原則ではないかということでございまして、注1のところでございますけれども、高在老をめぐります歴史的経緯を改めて整理いたしますと、昭和60年(1985年)の改正のときに、支給開始年齢は原則65歳だとした際に、65歳以降は被保険者ともならず、年金と賃金との調整も行わず、65歳以降は年金額を満額支給するという形で整理されております。
ここで65歳で全てそろっていたわけですけれども、平成12年の2000年改正のときに、被保険者の期間を70歳まで延ばすような改正もしておりますが、同時に当時は少子化が進行していて、年金財政は非常に議論があった時期でもございまして、現役世代の負担が保険料も上がったりして重くなっていく中で、60歳台後半であっても働けて報酬のある方は年金制度を支える側に回っていただいたらどうかということで、現在の高在老の仕組みが後から導入されているという経緯でございます。
また、後ほど資料もごらんいただきますけれども、注2にございますように、諸外国を比較対象とすべきではないかという御議論もあったと記憶しておりますけれども、支給開始年齢後は収入額によって年金額を減額する仕組みは、私どもが調べた数カ国の中ではなかったということでございます。
高齢期の就労につきましては、これまでも65歳以上の定年の廃止の支援をしていたり、同一労働同一賃金の実現に向けて、不合理な待遇格差の解消に向けた取り組みなども政府においても進められているようなことなども踏まえつつ、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるよう高齢者の活躍の場を整備していくことが重要となってございます。
また、在職老齢年金制度による調整は、適用事業所で適用要件を満たす形で働く被用者の賃金のみが対象となっておりまして、例えば自営業の方とか請負といった契約の形、あるいは適用要件を満たさない顧問契約といった形で就労した場合には、在職老齢年金の支給停止の対象とはなっておりません。高齢期の多様な働き方が進展したり、あるいは選択がふえていく中では、このような形でいろいろな働き方がある中で、特定の働き方だけ在職老齢年金制度がかかる仕組みは中立的ではないというのは正直ございます。
こうした中、年金制度につきましても、高齢期の就労拡大に対応するという観点は重要と考えておりまして、1つ目、就労期の長期化や繰り下げ制度の活用を通じて老後生活の経済基盤を充実できるようにしていきたい、2つ目、高齢期の多様な就労に対してできるだけ中立的な仕組みといった観点がございますので、こういった観点から見ますと、在職老齢年金制度は見直していくということで考えていただいたらどうかと思っております。
3ページ、具体にどう考えていくかということでございます。現在のところ、65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)による就業抑制効果は限定的であるというのは、年金部会でも御報告している状況でございます。
他方で1つ目、今後、生産年齢人口の減少が加速化する中で高齢期の就労の重要性は日本の経済社会の中では増すことが見込まれております。
2つ目、高齢期の就業が多様化する中で、現役期の働き方に近い形、フルタイム就労などの高齢者が全体的にも少しずつふえてきている傾向が見てとれます。
3つ目、先ほど御報告した2000年に定めました在職老齢年金制度の基準額である「47万円」は、現役男子の被保険者の平均月収を基準として設定しております。そうしますと、現役期の働き方に近い形での働き方、あるいは賃金水準がそのような形になってまいりますと、そういう形で働く方々にとっては、年金水準の充実の効果、例えば繰り下げ一つとっても、その効果が限定されるような仕組みあるいは効果を在職老齢年金は持ってしまうことになっております。
こういったことを考慮いたしまして、長寿化していく中でも、長く働くことによって老後生活の経済基盤の充実が図れるように、今後の高齢期就労の変化を念頭に制度の見直しを進めていってはどうかと御提案してみたいと思っております。そのような形の御検討をいただければと思います。
少し話がかわりまして、今度は60~64歳のいわゆる低在老についてでございます。これについては、データ的には逆に一定の就業抑制効果は見られるわけでございますけれども、検討を進めていく際に、1つ目、2021年度、2年後には1961年4月2日以降生まれの男性が65歳以降に本来支給される老齢厚生年金の繰り上げ受給ができる年度になってまいります。そうしますと、60歳までの繰り上げをこの方々がする可能性がある中で、この方々に対する在職老齢年金は、65歳以降のものをもらっているということですので、60歳台前半であっても高在老の在老の対象になります。
そうした中で、1961年4月1日より前に生まれている男性、あるいは1966年4月1日より前に生まれている女性が受給する年金は、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金でございまして、これはいわゆる低在老の対象になっておりまして、制度が混在いたします。
具体は、大変恐縮ですけれども、12ページに飛んでいただきまして、今の関係を図にしております。一番上が先ほど申し上げました2021年に60歳に到達する男性は、最大60歳まで65歳の年金を繰り上げて受給できるようになりますので、この60歳台でもらっている年金に対しては高在老がかかります。それに対しまして、まだ支給開始年齢の引き上げ途上の男性、女性に関しましては、特別支給の老齢厚生年金、緑の部分が支払われますので、これは引き続き低在老がかかっている。このように、生年月日によりまして、60歳台前半でも受けられる在老の基準が異なってくるという状況が生じます。
恐縮ですが、3ページに戻っていただければと思います。60歳台前半の在老の見直しの視点の続きでございます。2つ目、こちらも年金部会でも御指摘があったように記憶しておりますが、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるように高齢者の活躍の場を整備していくことが求められている中で、60~64歳のいわゆる低在老の仕組みなどが、賃金水準を含めまして60歳台前半の雇用のあり方に一定の影響を与えていると見られておりまして、その60歳台前半の雇用のあり方が、65歳以上の雇用についても引き続き影響を与えてしまう。特に賃金水準だと思いますけれども、そういうことが考えられます。
こういったことを総合的に考えますと、65歳以上の在職老齢年金を見直すのであれば、この際、今の1つ目、2つ目といった観点、あるいは就労抑制効果が確かに低在老には認められていることなどから、同一の基準として、まずは一つの基準でわかりやすくするとともに、就労抑制も意識せず働いていただけるような環境を早期につくっていく観点から見直しを図ってみてはどうかということでございます。
4ページ、具体の一つの方向でございます。65歳以上の在職老齢年金につきましては、現行では現役世代の平均的な賃金収入の方とのバランスで基準をつくっておりますけれども、一つのケースとして、現役世代の平均的な賃金収入とその世代といいますか、働きながら年金をもらっている方の平均的な年金収入、こちらを合わせた額までは支給停止にならないような基準を、2000年から20年近くたって高齢者雇用も大分変わってきておりますので、新たに基準を設定し直してみてはどうかという考え方でございます。
具体は、今、現役男子の被保険者の平均月収はボーナス込みで44万円弱になってございます。それから、65歳以上の在職、つまり、働きながら年金を受給している方の厚生年金、報酬比例部分の平均年金額は約7万円となってございますので、これを足し合わせまして、51万円としてはどうかということでございます。
5ページを先にごらんください。上が現行制度のイメージでございます。左側の青い現役世代の平均的な賃金に合わせまして、右側の赤い点線の基準を設けております。したがいまして、厚生年金、報酬比例をもらっていることがもちろん前提でございますので、厚生年金をもらう分、賃金のほうを調整しないと、この赤い点線を超えていってしまう、こういう形に現行制度はなっております。基礎年金はいずれにいたしましても別の法律に基づく別の給付ですので、調整対象にはなっておりません。
見直しの方向性としては、一つはマクロ経済スライドによる年金水準の調整も進んでまいります一方で、現役期の働き方に近い形での働き方を長く続けていただく方、あるいは定年の延長・廃止、同一労働同一賃金が進展してまいりますと、60歳台の賃金の低下を経ることなく、従前の賃金のまま65歳に到達する方もふえていくということを予見いたしまして、年金制度としては、先取りして準備しつつ、就労期間を長期化することで引退後の経済基盤の充実を図ることを可能にしていっていただきたい。このような制度改正を一つの目的にしてはどうかということでございます。
下の図のように、現役世代の平均的な賃金を受け取り、かつその世代の平均的な厚生年金を受け取っている方については、つまり、平均的な働き方をしてきて、平均的な年金を受給している、平均的な方につきましては、在老の対象とはならず、その分の厚生年金も繰り下げの対象に全てできるという形で、高齢期の充実を長く働く中で実現していっていただくという改革の方向性ではいかがかということでございます。
なお、仮に51万円基準に上がりましても、それでも在職老齢年金にかかる方は出てまいりますので、その方々が支給停止されている在職老齢年金分は繰り下げの対象にならないという原則はもちろん維持のままで、あくまで平均的な職業人生を送ってきた方については、在職老齢年金の対象にならないような思想で基準を考え直してみたらどうか。2000年のときの考え方とは変えてということでございます。
4ページに戻っていただきまして、仮にこの51万円のケースだと財政影響等々はどうなるかということでございますが、まず、支給の対象になる方は、とまる方が41万人から32万人に減りますので、約9万人の方は今回新しく支給の対象になるということでございまして、それに必要な所要額が4100億円から3400億円を引いた約700億円ということになります。
所得代替率の影響ですけれども、注のところに書かせていただいておりますが、厳密にはしっかり計算して見ないとわからないわけではございますけれども、前回お示ししました62万円の場合がオプション試算上、代替率への影響がマイナス0.2%で、このときの支給規模と比べますと今回の700億円というのは3割程度になりますので、代替率の影響も3割程度だとしますと、影響は0.1%を切りまして、0.1%未満という形になろうかと思っております。
この点につきまして、7ページをお開きください。65歳以上の在職受給者の賃金と年金の状況でございます。今、65歳以上の方は平均の賃金は標準報酬相当のもので26万円程度でございますが、60歳台前半のほうは既に34万円まで来ておりますので、先ほど申しましたように、定年の延長・廃止ですとか、あるいは同一労働同一賃金がどんどん進展していきますと、ここも上がってくるのではないかということが予見されます。平均年金額は7万円でございます。
また、左の65歳台の報酬分布に基づきました右側の年金額の分布を見ますと、報酬が低いほうの方が年金額も低い傾向があると。これは働いてきたときに報酬が低い方は60歳以上、65歳以降も低い傾向だろうという予測のもとで、年金も恐らくその影響で低いのではないかと思われますけれども、この分布を見る限りでは、先ほど申し上げた平均的な方の働き方として51万円にすれば、それなりのボリュームの方々は在老を気にしないでいい環境の方々、特に低い報酬の方を中心にそうなる絵柄が想定されます。
8ページ、7万円という先ほどの平均的な年金額を受給されている方のケースという形でつくってみたものですけれども、左側が今の47万円基準の場合です。この場合ですと、賃金が40万円、ボーナス込みですけれども、年収480万円を超えますと一部支給が始まりまして、年収が650万円ぐらいになりますと、年金が全て支給停止になってまいるという形でございます。
仮に平均的な方は支給しますという形の51万円基準に見直したといたしますと、年収528万円、500万円を超えるぐらいまでは支給停止が始まらず、696万円、700万円ぐらいになると、その後は年金が受け取れなくなるというイメージに変わります。
1つだけですと数字がどんな枠に入っているのかわかりにくいので、9ページにもう一つのパターンもつくっております。モデル年金が9万円ですので、例えば切りのいいところで10万円で見た場合にはどうなるかということでございますけれども、現行制度ですと、年収が444万円を超えますと支給停止が始まりまして、684万円ぐらいになりますと年金が全額支給停止になるという形になります。
仮に51万円にいたしますと、年収が492万円、やはり500万円ぐらいまでは全額支給されまして、年収が732万円と700万円を超えるとさすがに全額支給停止という形になっておりますので、500万円ぐらいの年収、ボーナス込みの方を高所得者と言えるかどうかといったことも一つの視点ではないかという気がしております。
10ページをごらんください。水準に与える影響が、所得代替率と年金額ではマクロ経済スライドの影響で少し違いますので、整理してみたものでございます。左側が所得代替率でございまして、ブルーの点線ラインが見直しをしなかった場合だといたしまして、見直しを仮にいたしますと、例えば赤とか、その程度によりましてさらに下のほうみたいに、水準の調整が入った上でそこで固定されますと。これが所得代替率の場合の水準固定のイメージになります。
他方で、年金額の場合には右のような形になりまして、ブルーのラインで立ち上がっていく予測だったものが、少しマクロ経済スライドがかかる年数が延びます分、赤のように少し立ち上がりが遅くなっていくという形のイメージになります。したがいまして、年金額の実額が下がるというよりは、年金額の立ち上がりが少し遅くなるというのがマクロ経済スライドの影響ということでございます。
これが65歳以降の話でございまして、4ページに戻っていただきます。60歳台前半のいわゆる低在老につきまして、わかりやすさという観点等々から、今申し上げたような高在老の見直しに合わせて基準を同一にするということであれば51万円が一つのケースでございますし、仮に、そういった御意見もあったように承知していますが、高在老は見直さないけれども、低在老だけは就業抑制効果もあるので見直すということであれば、一つある数字とすれば、47万円の現行の高在老の基準ということですので、47万円だったらどうなるかというのも数字をつくってまいりました。
人数や影響額はこのとおりでございますけれども、2つ留意点がございまして、施行時期が決まっておりませんので、これはあくまで足元値の数字でございます。施行時期が遅くなればなるほど、以前お示しした図のように対象者は減ってまいりますので、影響額は減ってまいります。対象人数も減ってまいります。
それから、単年度の影響が数年間、最大でも本当に4~5年ぐらい続くということでございますので、そうなってまいりますと、長期での財政影響はないとお考えいただいて大丈夫だと思います。
6ページ、高在老につきまして、今申し上げました47万円基準から仮に51万円基準になるとどのぐらいの分布になるのかを図式化したものでございます。
同様に11ページをごらんください。60歳台前半のいわゆる低在老につきまして、現行の28万円基準から47万円基準、あるいは51万円基準とした場合にどのぐらいの分布になるかをお示しした図でございます。
最後に御紹介だけになりますけれども、13ページが諸外国の中でもアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと、限られた外国ではございますけれども、私どものほうで支給開始年齢以降、年金がどうなっているかを調べたものでございますけれども、支給開始年齢以降は収入額によって年金額を減額する仕組みは、この4カ国にはなかったということでございます。
長くなりましたけれども、事務局からの説明は以上となります。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
本日、御議論を頂戴したい2つのテーマにつきまして、論点を資料に基づいて御説明いただきました。
それでは、委員の皆様方から御質問や御意見を頂戴したいと思いますので、どなたからでも結構でございます。
細田委員、どうぞ。
○細田委員 早目に失礼しますので、最初に発言させていただきます。
まず資料1につきまして、昭和28年から変更はない、見直しをしていないというのはびっくりしたのですけれども、ぜひ今後も研究して、拡大できるところがあれば進めていっていただきたいと思います。非適用業種ということで、その中でも法人化されているようなところですとか、人を使っているところがあるのではないかということですので、今後の研究課題になるのではないかと思います。
適用拡大の議論の中で、中小企業が雇用するアルバイト等に対しても社会保険を適用していこうという議論がなされていますが、そういう中で、こういったかけられていないところがあるとすれば、ぜひそこら辺はもっと掘り起こしをしていっていただければありがたいかと思います。
資料2に関して、商工会議所としましては、高齢者が働き続けることのインセンティブということで前々から申しあげておりましたので、新聞などにも出ていましたけれども、こういった形で基準額が51万になる、上がっていくということについては非常にいいことかと思います。
ただ、それがどの程度、年金財政に影響するのかということになってくると、これは議論がまたされるのだろうと思いますけれども、特に中小企業にとっては、高齢者の働き手は非常に重要な労働力にもなりますので、ぜひこういった方が働けるような、働く意欲を持てるような環境をつくっていただければありがたいと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
以上、意見でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございます。御意見を2つ頂戴いたしました。
牧原委員、どうぞ。
○牧原委員 適用事業所の範囲の見直しについて、意見を申し上げたいと思います。
近年、働き方が多様化している中、被保険者の適用事業所の範囲が現状のままでいいのかということは、我々も問題意識を持っていまして、今回の提案につきましては、フルタイムの労働者であるにもかかわらず、適用が任意になっている業種ということであり、適用を拡大していくべきだと思います。
ただ、その他の非適用業種というのもまだまだありまして、それぞれの時代を背景とした理由はあったと思いますけれども、現状に照らした上で適切であるかを議論し、被用者にとってふさわしい保障が受けられるように見直しの検討を進めていくべきだと思います。
○神野部会長 特に事務局でコメントがなければ、ほか、いかがですか。
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 私もやや早目に出ますので、意見を申し上げたいと思います。
2つの論点で、前半部分の適用の問題ですけれども、これは事務局の考え方に賛成であります。今まで議論がありましたし、菊池先生の意見もありましたが、被用者であれば、労働者という形で雇われているならば、本来は事業形態や規模にかかわらずカバーされるべきものだと思いますので、それに向けての第一歩ということではいいと思いますが、まだ強制適用外の人たちもいるので、これは引き続き埋めていっていただきたい。もちろん、その際の経済的なインパクトはちゃんと注視していただいて、妙なことが起きないようにモニターはしていただきたいと思います。
2つ目の高在老、低在老の議論ですが、大枠としては私も賛成であります。これからマクロ経済スライドが効いてくるわけですから、なるべく長く働いていただいて、なるべく繰り下げ受給を選んでいただく。なるべく高い賃金でも働いていただくように応援をしていくわけでありますけれども、それに対して、将来の問題として、就労意欲を阻害しないように現在対応していくというのは大変重要だと思います。
ただ、これも前回の議論がありましたように、働き方の変化によって所得分布が変わってくるという問題については税制上で対応する部分も求められると思います。財政的なインパクトは動態的に考えていくべきであって、この制度が現時点で財政に与える影響を静態的に見るのではなくて、この見直しによって動態的に変化する部分も考慮する必要があるのだと思います。
その上で質問になるわけですけれども、この在老の資料2の4ページに43.9万円が男性の平均賃金と書いてあるのですけれども、7万円のほうは男性、女性ともに平均を出しているということなのかどうか。ほとんど男性だとは思いますけれども、その辺、データ上の確認だと思います。
またこの辺の考え方なのですけれども、これから適用拡大が、長い目で見れば女性の労働力率も上昇していく中で、こういう問題についてなぜ男性の平均で議論をしていくのかについては、今回はいいかもしれませんけれども、今後の問題として若干気になるところであります。
以上です。
○神野部会長 今の御質問については、年金課長でいいですか。
○年金課長 ありがとうございます。お答えしたいと思います。
まず、適用・非適用事業所の問題につきましては、何人かの委員から御指摘もございました。これはもちろんもともと時代の趨勢に応じてしっかり検証しながら見直していくべきであるというのが懇談会の大きな御結論だったように受けとめておりまして、今回の中ではこのような形でまずはどうかということでございますので、引き続きの課題として受けとめさせていただけばと存じます。
駒村委員からの御質問の件は、委員の御指摘のとおりではございます。ただ、前のデータで恐縮ですけれども、60歳台前半の在職老齢年金にかかっている男女の比率みたいなデータもお示ししたと思うのですが、現実にはこれから女性の高齢者も含めた、あるいはフルタイム就労を経てきた女性の高齢者像がふえてくるような段階でございます。恐らく女性を入れた全平均にしてしまいますと、下がることが見込まれます。そうしますと、確かに年金の部分だけ男女でくっつけてとゆがんでいる形になっているのは事務局も十分受けとめておるのですけれども、賃金の男女の平均像を出すにはまだ時代が追いついてきていないと受けとめておりまして、これはほかのほうで先生がモニターとおっしゃっているように、今後もモニターしながら議論していくべき課題だと受けとめさせていただきました。
以上でございます。
○神野部会長 どうぞ。
○権丈委員 余りにも次元が違う話をするかもしれないので、早目に発言させていただきます。
今から発言するのは、皆さん、年金局の人は先輩たちの失敗をいろいろカバーするのに大変ですねという話なのですけれども、まず確認しておきたいのは、実際にこの「在職老齢年金制度」の資料の最後のページにありますように、普通、法定の満額給付を得ることができる支給開始年齢以降は、収入額によって年金給付額を減額する仕組みはないんですね。
年金というのは、大体我々の世界では、老齢年金なのか退職年金なのかという議論をするわけですけれども、どの国も老齢年金であるという設定をし、その筋から外れるようなことはやめようという制度設計でずっと運営してくる。だから、満額の年金を得ることができる支給開始年齢以降に関しては、老齢年金なのだから、そこから先にペナルティーを課すようなことはなしにしようと制度設計していくし、2ページをごらんになっていただくと、1985年にこの国もそこにぴたっと制度を合わせていたわけです。
だけれども、ここから先がだらしがなくて、財政的な理由がせっぱ詰まった形で出てくると、保険料率を余り上げたくないから、65から69歳までの部分を動かせばどうにかなりますとか、あるいは保険料率18.35%の端数0.05を切り捨てて、きれいな数字にするようにという要求に対して、70歳以上に在労を適用すればうまくいきますよということでやってきたわけです。
だから、そのときに理屈もなくいろいろやっているから、本当の高所得者は在老の対象でない収入を得ながら在老の対象にならないという逃げ道たくさんの非常にだらしのない制度になっているというのが現在の状況であって、それを年金局の皆さん方、そして我々の世代みんなで正常な老齢年金に戻そうとしたのが今回の動きだったんですね。
正常な老齢年金に戻そうとしていろいろやっていくわけですが、だらしのないものをつくっているから、就労に影響があるかとか、ないかとか、いつの間にかそういう話ばかりになってしまった。その上、今度は野党から、高所得者の1%の所得をふやして99%の人を減らすのかという一点勝負で仕掛けられてきて、かつての年金カット法案と同じような形で餌食にされていって、今、皆さんたちが日夜苦労しているところだと思います。
彼らの観点から見ると、私がここで話したような適用拡大とセットで考えていこうという理論的、理性的な論は、絶対にでてこないと思います。彼がアピールしたい対象が恐らく違うのだと思うので、絶対にでてこないと思う。
となれば、私は今までは適用拡大をやりたい、官邸は割と在労を見直して老齢年金に戻したい、あるいはこれから人生100年の社会の年金を考えていく上で在老をなくさなければいけないと考えているだろうから、その要望とセットにして、適用拡大の範囲を極大化できないかということは考えていたのですが、どうも官邸もさまざまなことで、この問題は野党の、声を大きくした一点勝負の攻撃のあり方、そこら辺で逃げ腰になってくると、私が前からいろいろ言っていたセット論も視野にはなくなってきている。
私が懸念しているのは、適用拡大を動かしていくエネルギーがどうも消えているという状況です。適用拡大を最大限広げて、そして、給付を上げていく、適用拡大を最大限広げていくということをこの前話していたわけですが、どうもそのあたりが両方から消えてきているのを感じております。極めて残念なのですけれども、政治家としてそういうアピールの仕方に成功体験を持っている人たちがいる限り、これは動かないなというのがあります。
そういう中で、せめて支給停止基準額を51万円というところで、そして、在老の考え方を平均的な就労をしている人たちに影響がない制度というぎりぎりのラインで行くのはどうでしょうかという案の出し方は、今は野党は猛反発、与党も逃げ腰という状況の中で、結構いいラインの出し方ではないかと思っております。今回出された案は、ぎりぎり厚労省の方々が、先輩たちがやっただらしのない制度設計の中でつくられていったものを何とか盛り返すという意味で、私はこの形で落ちついていっていいのではないかと思うと同時に、これで少し政治のところを説得していっていただければと思っております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
特に事務局からコメントはありませんか。いいですか。
出口委員、どうぞ。
○出口委員 私も先に失礼しますので、3点だけ申し上げたいと思います。
第1点は、きょういただいた資料1の、士業の件については当然にやっていただきたいと思いますし、ほかの委員も言われたように、ほかの業種でも適用できるところがないかは常時調べていただいて、その都度適用範囲を広げていただきたいと思います。事務局の案に賛成です。
第2点は、政治的な動きなどは私にはわかりませんので、いただいた資料だけで申し上げますと、この資料2は、結論としては高在老も低在老も合わせるということで、私はこれでいいと思うのですけれども、最後の12ページを見ていて感じたことは、権丈先生がおっしゃったような経緯はわかりませんが、諸外国が何もないということは、老齢年金だからという理屈もあると思うのですが、もう一つ大事なことは、政府の制度は極力例外をつくらない、本当にシンプルな制度にするということが大事だと改めて思いました。確かに年金が始まったら在職していてもそんなものは関係がないという老齢年金ならではの本質論もあると思うのですが、何よりも制度は極力シンプルにしなければいけないというインプリケーションを与えているのではないかという気がしました。
3点目は、適用拡大についてはここの委員会では私の理解する限り、ほとんど全員の皆さんが、いろいろな問題はあるけれども、最終的なゴールは適用拡大を100%に近づけていくのだと。それについて私は異論がなかった気がするのです。そこでいろいろ新聞報道等を見ていると、中小企業の経営が大変だ、こういう議論になっているように見受けられるのです。
これについて、私は切り口が違うと思っていて、適用拡大という一つの大きい方向のある中で、奇貨おくべしとして中小企業もこれを機会にもうけなければいけない。むしろ日本の企業の体質を強くする。これは特にメディアの方に私は書いていただきたいと思うのですけれども、ちゃんともうけて被用者の人生を支えるというのが基本なので、社会保険料の負担がふえた、大変だというのは、企業の体力を強化するという気概がないのかと。それは別に社会保険料の問題ではなくて、日本経済自体が弱くなるのだと、ここの正論を徹底して論じていただいて、それは厚労省の守備範囲ではないとおっしゃるかもしれませんが、少なくともほぼ全員が適用拡大をやらなければいけないということですので、ここは局長以下、頑張っていただいて、一人でも多く適用拡大の範囲を広げるということで、全力を挙げていただきたいと希望いたします。
以上3点です。
○神野部会長 ありがとうございます。
永井委員、どうぞ。
○永井委員 ありがとうございます。私も途中退席させていただきますので、2つほど働く者の立場から申し上げたいと思っております。
1つ目は、資料1の適用事業所の範囲の見直しでございますけれども、今までも先生方から御意見が出ていましたが、まずは弁護士を初めとする士業10業種に適用拡大するということには反対するものではないという立場でございます。
ただ、ずっと申し上げてまいりましたが、働く者の立場からすれば、勤め先事業所の業種によって厚生年金の適用の有無が異なるということは不合理であり、問題があると考えているところでございます。
スライド2に参りますと、懇談会のとりまとめでも示されておりますように、本来、事業形態、業種、従業員数などにかかわらず、被用者にふさわしい保障を確保するのが基本という考え方を鑑みましても、業種にかかわらず原則適用を目指すべきと考えております。
これを言ってしまうと譲歩するように聞こえるかもわかりませんけれども、この検討の中で常用雇用者5人以上の事業所は全て適用対象とするといったことはできなかったのかということもお伺いをしたいと思っております。
2つ目には、在老のほうでございますけれども、これまでの議論で、先ほども少しお話がありましたけれども、女性の低在老の適用について示された資料がございました。低在老の支給停止対象者数と停止総額の将来推計が過去の部会で示されておりますが、低在老によって支給停止となる働く女性が2021年度から2023年度で15万人程度と推計として示されております。この15万人がボリュームが大きいとまでは言えないのかもしれませんが、これから働く女性が増加し、また、家族形態も多様化していくという観点を踏まえまして、低在老の基準額の見直しも進めていきたいと考えております。
以上です。
○神野部会長 第1点については質問があったと思いますので、年金課長、お願いできますか。
○年金課長 年金課長でございます。
永井委員からの御指摘に関しましては、昭和28年以来、確かに見直しが図られてこなかったと。そこの理由は冒頭に申し上げたように、法人化などいろいろな理由もございましたけれども、働く者の立場に立ってみれば働く場所によって違うのはどうなのかというのもございます。そういった基本的な考え方は十分に受けとめつつ、委員からも第一歩というお話も出てございますけれども、今回はまず法人化が期待できないところには入っていただくということで、引き続きの御議論として、今後の動態変化も見ながらと考えております。
そういった検討の経緯の中で、まずは法人化が構造的にできないところにはしっかり入っていただいて、そこで働いている労働者の方々の社会保険をまずはしっかり厚くするというところから、事務局としてはスタートさせていただきたいという思いで御提案を申し上げた次第と、これが経緯でございます。
なぜかということに物すごくしっかりと答えていないのかもしれませんけれども、そういう形で、まずは10業種をしっかり入れたいという思いで御提案を申し上げているということでございます。
○神野部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
佐保委員、どうぞ。
○佐保委員 まず、資料1の被用者保険の適用事業所の範囲の見直しについてでございますが、さまざまな団体や有識者から構成されて、8回にわたり議論が行われた「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」における「とりまとめにおける今後の検討の方向性」の中で、被用者として働く者については、被用者保険に加入するという基本的考え方が示されたということは、重く受けとめる必要があると考えております。
そのことを踏まえても、今回の適用事業所の範囲の見直しは、まだまだ不十分であると言わざるを得ないと考えております。個人事業所についても、全ての業種を原則適用とすべきではないかと考えております。
10の士業を適用対象とするという御提案、これにつきましては全く異論がないところでございますが、ほかの業種まで適用対象を拡大する余地が全くなかったのかどうか、その検討経緯について質問をさせていただきたいと思います。
2つ目、在職老齢年金の見直しについてでございますが、高在老の基準額の見直しについて、今回の提案は就労抑制効果に着目したわけではなく、今後の高齢期の就労の変化を念頭に置いたものと理解しましたが、就労抑制効果が調査研究等で確認されていない段階で、所得再分配や年金財政への影響が懸念される見直しの要否については、なお慎重な検討が必要であると考えております。
一方で、低在老については、就労抑制効果が確認されており、基準額の見直しを検討すべきと考えております。その検討に当たっては、見直しを行った場合、支給開始年齢の引き上げまでの間における所得再分配や年金財政などへの影響について、より詳しい試算を行っていただきたいと考えております。
以上です。
○神野部会長 1点目も経緯といいますか、その中で意見があったかどうかという御質問ですので、年金課長、お答えいただければと思います。
○年金課長 御指摘に関しましては、もう少しクリアに御説明できると思いますけれども、資料1の3ページ、4ページのあたりをごらんいただきまして、このデータをどう見るかという見方にかかわってくるとは思うのですけれども、生産性向上やいろいろな中小企業さんの働き方改革も進めたりと、今、非常に揺れ動いている時期でございます。そういった中で、確かに飲食サービス業、洗濯・理容・美容・浴場業といったものも立ち上がりは遅くはございますけれども、それなりに法人化していけば一定の適用は期待できると。あるいは現場とお話ししたときも、ちゃんと法人化したり、任意包括適用なども進めながら、やっていこうとしている時期なのだというお話も個別に頂戴しております。
そういう観点からいたしますと、明らかに私どもが法制的な手当てをしないと構造的になかなか従業員、労働者の方に適用のカバーが行かない部分をまず最初にやって、今おっしゃった努力ですとか、あるいは生産性向上、法人化をしっかり見通しながら引き続き議論をしていくというほうが、今回はまだ時期的には望ましいのではないかということで、このような整理にさせていただいたということでございますので、御理解を賜れればと思っております。
構造的にこの10業種は法制的対応が必要であろうということで、法人化の流れも見ていけばもう少しそういうものを見ていってもいいのではないかと、その他の業種につきましては、そういうことでございます。
○神野部会長 いいですか。
お待たせしました。山田委員、どうぞ。
○山田委員 ありがとうございます。
それぞれの論点に関して意見を申し上げたいと思います。
最初の非適用業種の見直しにつきましては、まず、士業に関しては適用していくというのは妥当だと思います。それ以外に関しても、先ほど来議論がありましたように、中長期的に見れば適用していくということだと思うのですけれども、そもそも非適用の根拠は、一つ有力なのは事務処理能力がなかなか追いつかないという話があるわけですが、状況がIT化等によって変わってきているということではないかと思います。むしろ人手不足等を考えますと、今後小さいところであってもIT化によって効率化していかなければ、結局生き残っていけない状況になっている。そのあたりを考えながら、IT化の政策支援もセットで適用を進めていく。そういう方向を示す必要があるのではないかということでございます。
在職老齢年金に関しましては、私自身も前回基本的な考え方を申し上げたとおりですので、基本的にはシニアの活躍促進という文脈から見れば、在職老齢年金の見直しは必要だと思います。ただ、世代間の所得再配分と考えますと、一定の基準額の引き上げにとめておく。どのレベルにするのか、前回の数字と今回の数字で若干違うということがあって、なかなかここは難しいところだと思いますけれども、結論的には、さまざまな事情の中で今回の51万円というのは、差し当たり入り口としてはこういうものかと思うのです。
ただ、本来、在職老齢年金の見直しというのは、フォワードルッキングという視点だと思うのです。駒村委員も前にその視点を非常に強調されていたと思いますが、そこから考えますと、例えば賃金が少しずつ上がっていくということを考えていけば、この51万円でいいのか。そこに関しては長期的な視点で見ていくということだと思います。
もともとの根本的なメッセージは、現在の高齢の富裕層の方を優遇するということではなくて、むしろ将来の高齢者、すなわち今の中堅、若手の方が長く活躍していくための環境整備をしていく。そこのメッセージをしっかり発信しながら、とりあえずはこれで見直すのだけれども、将来的にも引き続き見直していくと。
実際にはもちろん財源の問題は出てくるわけですけれども、これも前回申し上げましたが、年金制度だけの問題ではなくて、もっと広く税制とのかかわりも問題提起をしていくことが重要なのではないかと考えてございます。
以上でございます。
○神野部会長 ありがとうございます。
事務局、よろしいですか。
○年金課長 山田委員からの御指摘のとおりでございまして、私どもの整理でも、就業抑制的な見方から見ると明確な根拠があるわけではないと。ただ、委員からもありましたフォワードルッキングで見ていきますと、むしろ年金制度としてフルタイム的な働き方をする今後の世代が出ることを予見しつつ、その方々はある意味、在老は気にしなくていいですよと。ただ、これも委員が御指摘になりました世代間のバランスも同時に目配せしなければいけないのが現状でございますので、そこで事務局としては、まずは平均的な方であればそこは御心配に及びませんというおっしゃったようなメッセージも込めて、こういう形で御議論いただくと。
その上で、ただし、在職老齢年金制度自体、将来的には本来的にはないほうが望ましいものであるとするのであれば、静態的に見ればこの瞬間だけはこういう結論も一つかもしれませんけれども、動態的に見ていけば所得代替率、環境もどんどん変わってまいりますので、これで終わるということではなく、常に年金部会あるいは5年に1回財政検証と、議論の機会は必ずございますので、動態的に少し長い目で同時に見ていただいた御議論をいただければと考えております。
税との関係につきましては、部会長とも御相談の上、いずれとりまとめの段階に入ります年金部会の意見のときには、そういった視点が入ってくることは十分考え得るのではないかと考えております。
○神野部会長 ありがとうございます。
小野委員、どうぞ。
○小野委員 ありがとうございます。
今回から年金部会に参加させていただいたのですけれども、私の理解では、これまでの部会では個別の項目ごとに議論してきたということだと思いますが、この年金制度に与えられている重要な課題の一つは、将来世代の給付水準をいかに引き上げるかということであり、そのためのオプション試算であったと理解しております。つまり、今回の財政検証におけるでき上がりの年金改革が、トータルで見て給付水準を上昇させるものでないと意味がないと考えております。したがいまして、個別項目も、ほかの項目の帰趨がわからないと判断が難しい面があるのではないかと思ってございます。
先ほどの権丈委員からの御指摘にもありましたけれども、巷間言われているように、オプションA-マル1という規模要件の撤廃ですね。125万人のケースさえも実現できないということになりますと、在職老齢年金の改定、在職定時改定などは、最終的に支出をふやす要因でありますので、結果的にはいろいろ合わせると将来世代の給付水準はほとんど変わらないのではないかという懸念をもっておりまして、そういう意味で、適用拡大あるいは厚生年金の被保険者の75歳までの延長等々の帰趨が気になりますということは、感想としてございます。
具体的に、資料1に関して、ほかの委員の皆さんと同じで、適用業種の拡大は被用者保険の適用拡大に通じるものと理解しておりますので、ぜひとも推進していただきたいと思います。
その上で、確認までなのですけれども、規模感なのですが、ここを拡大したとしても将来の給付水準を引き上げるほどの規模ではない、恐らくそういう理解でいいのではないかと思いますけれども、それをまず一応確認をしたいということです。
もう一点は、既に適用される業種にも言えることかもしれないのですけれども、個人事業所を5人以上で区切ると、細分化して適用を回避するような動きが想定されないでしょうかということでございます。素人考えで恐縮なのですけれども、5人未満でも例えば青色申告をしている個人事業所は、先ほどのIT化なども含めて考えますと、対象にしてもよいような感じを持ちました。
資料2に関して、これも皆さんと同じなのですが、低在老の高在老に合わせた基準見直しには賛成いたします。質問なのですけれども、この51万は将来にわたって改定するという規定を設けることになると思います。現役世代のボーナスを含めた月収というところはそのとおりだと思うのですけれども、もう一点は、在職受給者の基本年金額の実績を反映した上で改定するという意味では、年金制度がこういった働き方の変化を受けて改定されるのを受けて、やや後追いになるのかもしれないのですけれども、改定していくという規定ぶりになるのではないかと思いますが、そのあたりを確認させていただきたいと思います。
以上でございます。
○神野部会長 御質問と、資料1でも御指摘していただいた事項がありますので、年金課長、よろしくお願いします。
○年金課長 御回答申し上げます。
まず、適用拡大のときも今の501人以上もそうだったのですけれども、一定の粗い推計はできますが、現実の人数は適用状況によって正直変わってまいります。
その上で、例えば今回の10業種について拡大した場合ですが、事務局として推計も試みてみたのですけれども、なかなか既存データの中で、ここまで細分化された人数と任意包括適用みたいなものも含めて、既に適用されている人とされていない人は、専門用語で我々はフラグと言っているのですけれども、旗が立っていないものですから、そこの差し引き関係が正直わかりません。ですので、まだ推計レベルにも至らないようなものでございますけれども、仮に我々が今把握している諸データで差し引きをした結果として適用されたとすると数万人規模ぐらい、10万には行かない、何から何を引いていいのかわからないものですから、本当にそのぐらい粗い数万人程度ということではございます。
他方で、この方々は国民年金で申しますと、第1号被保険者ではないかと思われます。もちろん中には第3号でたまたま働かれている人もないとは言いませんけれども、第1号の可能性はかなり高いと思っていますので、適用拡大との関係で申し上げますと、1号の方が2号に来るという効果は比較的期待ができる層かなという中で、代替率の影響は、数万で幾らかみたいなものは粗過ぎて申し上げられないのが現状でございます。
在職老齢年金で仮に51万にした場合、今の仕組みも2000年に定めて、実は改定して47万になっていまして、もともとは48万で設定しておりますけれども、これは年金の改定率で使う賃金の動向でずらしていって、結果的に47万になっております。
ですので、仮に51万ならば51万で設定した場合にも、考え方は年度単位ではそういうずらしで設定していくことになろうかと思いますけれども、きょうの御議論の中でも在職老齢年金はいろいろな動向を見ながら、もちろん定期的に見直しの対象にはするということでございますので、その時々でデータを取り直して全部置きかえるのか、ずらしたものを維持するのか、そういったことは御議論の対象にはなってくるのではないかと。
今回は、私どもとしては平均的な方はという形で基準を置きかえることを御提案申し上げているわけですけれども、もちろん部会としてはその視点にとどまらず、フォワードルッキングな見方として、財政影響も見ながら、財政影響も御案内のように5年に1回財政検証をやるたびに変わってまいりますので、そういったものも常に見ながら、在老については定期的にレビューしていただく対象になるのではないかと受けとめております。その間は、今言ったような自動改定はもちろんやっていく形になるのではないかと思います。
○権丈委員 将来的にどう見直していくか、改定していくかという話なのですけれども、きょうの在職老齢年金の5ページ「在職老齢年金制度における支給停止の基準の考え方」はすごく大きな意味を持っていると思うのです。在職老齢年金の存在意義の考え方を変えるというところで、今までは現役世代とのバランスというものを考えていた。これから先は就労期間を長期化することで引退後の経済基盤の充実を図る。つまり、現役世代の平均的な賃金を得ていたとしても影響が出ないような仕組みにするという、在労の意味に大きな転換があったと思うのです。
その転換に基づいた形で、将来的にこの基準で見直していく、改定をしていく、状況が変わったら変化していくという一つの目標があるとは思うのですけれども、老齢年金としての完成を目指していくという目標も掲げておいてほしい。
老齢年金としての完成を目指していくというのは、満額の年金を受給することができる、それ以上の年齢のところは、在職老齢年金などはないというところを目指していく。そこでは、平均的な賃金がどうしたとか、就労に影響を与えるからどうのこうのとか、人生100年型だからみんなで働かなければいけないからどうのこうのとか、一切関係ないです。
理念と違うこと、理屈と違うことをずるくやると、後々苦労するんです。今、その苦労の段階にあるわけですけれども、議論をもっと整理して、将来的には老齢年金としての完成形を目指すということもどこかに加えておいてもらい、それ以外の話はどう考えれば満額の受給権を得るというところから、そこから先のところでペナルティーを課す考えが出てくるのだという話はあってもいいと思いますので、よろしくお願いします。
○神野部会長 どうぞ。
○年金課長 全体の年金部会の意見をとりまとめていく際に部会長とよく御相談しながら、そういう視点も入れていくことが必要ということであれば、私どもも冒頭の資料に、年金は本来支給すべきものだという基本原則は書かせていただいておりますので、あとはステップ論としてどこまでということも含めての御議論かと受けとめさせていただきます。
○神野部会長 どうもありがとうございます。
お待たせしました。高木委員、どうぞ。
○高木委員 私からはまず、資料1の適用拡大についてなのですけれども、私も年金部会は途中から出させていただいて、その間に非正規の短時間労働者に関しての中小規模企業への適用拡大の議論は何回かあったのですが、きょうの資料を見ますと、ここに挙げている業種への適用に関しては、それよりも先立って着手されるべき事項だったのではないかぐらいに思っています。
この方向性で当然適用を考えていくということで間違いないと思うのですけれども、非正規の短時間労働者の件で出てきたように、個人事業所の雇用労働者に適用していくということになると、保険料は当然労使折半ということになると思います。その場合に、個人事業所さんが保険料を負うことで経営上非常に難しくなるとか、そういったことがこの士業と言われる業種の中であるのかどうか。それを知りたいと考えています。もしそういった難しさがあるのであれば、そのあたりも考えて適用について考えていく必要があるのではないかと考えています。
そして、お話ししたいことの中心は資料2になるのですけれども、まず思いますのは、前回、前々回の資料で在職老齢年金を廃止するというオプションも書かれていた中で、今回見るこの資料ではそのオプションが消えているということで実はほっとしています。私自身は、例えば諸外国で在老に当たる制度がなかったとしても、それを日本が追従して、そのとおりになぞらえる必要は全然ないと思っているのです。なぜかというと、諸外国と労働市場の状況が違うということと、労働者の意識が違うということがあるかと思います。決して年金財政のことだけの問題ではないと考えているわけです。
例えば、60歳前半層までの高年齢層の就労というのは、皆さん御承知おきのように、従来企業で継続して働くことが多くなっているということがあります。もちろん、フルタイムもあれば短時間もあるということになります。これが例えば、その雇用が65歳以降に持ち越されたとしても、恐らく日本の場合は従来企業で継続して働く場合がやはり多くなるのではないかと思います。フルタイムが今よりもふえるかもしれないし、短時間でも現在働いている企業で継続していく場合が多くなっていくのではないかと考えるわけです。
しかし、諸外国の場合ですと、高年齢期で従前働いていた企業で継続して働くというのはそれほど見られないわけです。前回も同じようなことを言ったのですけれども、彼らがどのような働き方をするかというと、年金を当然フルでもらう。そして、就業というよりは、軽微で短時間で臨時的なお仕事に、ほとんど活動の一種のような形で就くということになってきます。
そうすると、日本の場合とは違うということで、労働市場が高年齢層に日本ほどには開かれていないというのが実態としてあると思います。年金をフルでもらって軽微な仕事につく。それ以上の働き方は、よほど特殊な業種でない限りみられないし、それほど労働市場が開かれてはいない。それに対して日本は、産業界が頑張って高年齢層の雇用を促進してきた。これから60歳後半の雇用であっても日本の産業界はある程度頑張っていくと思うのですが、それが日本国の強みであるとも考えているわけです。
もう一つ、例えば年金をフルで受給するために仕事をやめるという考え方もあるでしょうし、一方では、仕事をしながら賃金水準が上がってしまえば年金は一部カットされるということが在老ではあるわけですけれども、この場合、年金はカットされていても仕事をしている中で、労働者の意識は、むしろ自分は働いている労働者だという意識が非常に強いと思うのです。諸外国の場合、年金をフルでもらって、あと少し仕事をしているという形になると、これは年金生活者という認識のほうが強くなるということがあるかと思います。そういったこともあって、働く側の意識も実は違ってきている。
例えば、ちょっと古いデータで、6~7年前に私自身が設計して国際意識比較調査を実施したのですけれども、その中で、きょう資料2で見せていただいた最後のページにある国々のアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、あと、スウェーデン、日本を入れて個人調査をやったことがあったのです。
そこで見てきた中で、日本以外の国は高年齢期の生活において政府に何を望むかと聞くと、年金を初めとする社会保障の充実を求めることが非常に高く出てくるわけなのです。日本だけが社会保障の給付の充実ではなくて、ずっと働き続けることができるような労働市場の整備ということを答えている比率のほうが高いのです。それは日本だけだったわけです。
そういう形で、働く側の意識も諸外国と違うことを考えると、必ずしも諸外国が在老と同じような仕組みを持っていないとしても、日本の場合はまた違う考え方をしても、それは正解なのではないかと私は考えています。つまり、フルで年金をもらう、そのように整えるということも一つあると思うのですけれども、働いて報酬を得ることができる間においては、年金制度を支える側に回っていただく。こういう考え方も当然あってしかるべきだと思うので、私はむしろそのほうが日本に合っているのかもしれないと少し考えているところです。
もう一点だけなのですけれども、60歳前半層の在職老齢年金の低在老のほうですね。これは当然対象者が少なくなってきますし、短期間の問題かもしれないのですが、資料2の4ページで示していただいたように、現行基準額が28万、これを場合によっては47万あるいは51万に上げることがケースとして示されているわけなのですけれども、恐らくこのような制度上の見直しをすると、企業の人事部では賃金決定をするのに混乱が生じるのだろうなということが予測されます。
日本の企業の場合、どうやって賃金をお支払いするかというその考え方なのですけれども、提供してもらった労働力の対価としての賃金のお支払いというよりは、その人の全体の人生、生活などの全体バランスを見て決めるということは比較的知られていることです。今、60歳定年制が支配的なこの日本の産業界で、再雇用になるときに再雇用後の賃金をどう決めるかというと、労賃と、高年齢者雇用継続給付金、あとは年金、このバランスを見て賃金を決めるということを大方の企業がやっていると思います。
この時、再雇用後に賃金が引き下がることに対して御納得いただくための一つの説明材料として、在職老齢年金があったわけなのです。そのため、この基準額が上がることによって、企業側は賃金の決定に関しても考え方を変えて変更していかなければいけないということがあって、恐らく混乱が生じるのだろうということが予測されます。なおかつ、その混乱を避けるために、そしてまた再雇用者に御納得いただくために、賃金レベルを上げていくことになってくるかもしれません。
そうすると、何が起こるかというと、これまではある程度再雇用の際に賃金を下げることによって多くの高年齢層を雇うことに成功してきたし、実施してきたと。それが、一人一人の賃金を結構上げていかなくてはいけないということになると、今、人材不足が生じているときだから企業もそれをのむかもしれないのですが、経済情勢が悪くなって経営が厳しくなったときには、どのような判断を企業はしていくだろうかということです。当然、高年齢者雇用安定法で希望者全員の雇用が法律上求められているのですけれども、厳しくなってきたときには企業はそれなりの選別をかけて、もしかしたら高年齢者の雇用の数の絞り込みを賃金の上昇とともにしていくかもしれない。こういったことも少しシミュレーションしていく必要がもしかしたらあるかもしれないと考えています。
以上です。
○神野部会長 第1点で士業にかかわる御指摘をいただいていますので、この御質問にお答えいただきたいということと、第2点でも、社会が改革を求める圧力要因はそれぞれの社会の置かれている地理的、歴史的諸条件によって違っていて、それも配慮すべきだという御指摘、重要な御指摘なので承った上で、なお何かコメントがあればお願いできますか。
○年金課長 士業に関しましては、ほかの委員との御議論もありましたように、昭和28年以来、ストレートに言いますと、なかなか手がついてこなかったことに関しましては、さまざまな理由はございましたけれども、今回の短時間労働者の方への適用拡大を進める中で、フルタイムの方々という御議論が出てきたこともありまして、今回真摯に一からの議論として見直し、検討をさせていただいて、さんざん御議論いただいたように、まずはこの10の業種からという経緯になっております。その長い歴史も私どもとしては受けとめさせていただきつつ、今回はこういうことでございましたということで、御理解が得られれば幸いと思っております。決してこれで終わりということではございませんで、そういうモメンタムといいますか、改革のスタートといいますか、そういう議論を今回やり始めたということだと思います。
○神野部会長 もう一つありましたね。
○高木委員 年金課長、この士業と言われる業種の個人事業所が労使折半の中で保険料を担わなくてはいけないといったときに、経営上厳しくなるといったことがあるのかについてお願いします。
○年金課長 そちらの質問を失念しておりました。今回の御提案もそうですけれども、社会保険の場合、究極的にはプロフィットのレベルがどのぐらいかというので適用関係を決め始めますと制度が最終的にはゆがんでしまいますので、そこは最後は見ないことになるのだろうと思います。
今回の短時間の適用拡大でも、そういった経営環境にも配慮しなければいけないという御意見もあるわけですので、士業の団体などにもこちらも御相談を申し上げながらきょうを迎えているわけでございます。具体的なプロフィットレベルというものは私どもも持ってはおりませんけれども、今の時代の趨勢から考えて、中には包括適用を既に進めていらっしゃる方々も中にはいらっしゃいますので、さまざまな観点から今回は適用していっても大丈夫だろうという形になっています。データ的なものでやりとりはございませんので、そういう御報告ができないのは大変恐縮でございますけれども、その辺は十分注意しながら議論を進めさせていただいて、きょうに至っていることでございます。
諸外国といいますか、在老の関係でございます。権丈委員がおっしゃったような老齢年金として本来はどうなのか。これは年金制度論から議論を進めていくようなお話かと存じますし、高木委員からお話がありましたような高齢者雇用のあり方から見ていく。昔は定年退職即年金という姿で年金制度自身も設計されていたわけですけれども、日本の現状は、むしろ働きながら年金をもらうような今後の生き方、高齢期の過ごし方という中で、年金制度もどのように考えていくかという方向に移り変わりつつあるような時代の中での議論かと受けとめております。
そうなってまいりますと、御紹介させていただいたようなヨーロッパ型みたいな、まずやめてしまって年金受給者であって足りない分を働くというよりは、日本の今後のあり方は、働くこと自体をまずは推進していく。その上で、年金の支給レベルによって賃金水準から何かを決めていってしまう、ある種、逆に年金が雇用をゆがめたり、何か形成するような影響を与えてしまっていいのか、そうではなくて年金は雇用に対して中立であった方が良いという視点での今までの議論だったと受けとめております。
そうやって考えてきたときに、年金の制度はシンプルなほうがいいと。シンプルに年金はこういうものですと。労働市場、賃金形成、そういうものはそれはそれでやっていただきたいという方向での整理、議論は今後しっかりさせていっていただいてもいいのかなと。
ただ、高木委員が言っているような現実もございますので、現実との関係は委員が御指摘のような、書きぶりとしてデータがないので生煮えのものでしたけれども、むしろ60歳台のそういった状況が65歳以降も引き続いてしまうということの観点からも、低在老の見直しは一つの観点になるのではないかというつもりでマル2はお示しさせていただいていたという次第でございます。
○神野部会長 権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 今の課長のお話につけ加えますと、年金を担当している部署は所得を全部把握しているわけでも何でもないのですね。だから、年金は年金として制度設計をしていって、その中で年金額を基準として、あるいはそれにかかわる賃金を基準としてという形でやっていこうとすると、相当のゆがみが出てくる、ひずみが出てくるというのもある。例えば高齢期のところの高在老の対象の人で「あいつ、俺より所得があるのに全然対象になっていないんだぞ」ということが出てくるわけです。
だから、年金は年金として制度設計をしていくというのが他国の選択であって、ほかのところはいろいろな所得を把握して総合化している税で対応していく。高在老をなくすために、この分だけを税から持ってくるという議論そのものが私の中でおかしくて、税は税として高齢者に対する所得の把握、そして、その税のあり方は議論していくというだけの話であって、年金は年金として自分たちでできる、あるいは対象として把握することができる所得だけで制度設計をして、余り負荷をかけ与えないような形でつくっておく。あとは税でしっかりと対応していく。在労をなくすから、何千億円こちらからという話でもなく、税の世界は向こう側の理念型を求めてやってもらうという話ではいかがでしょうかという話ですので、今回のところで野党などからの1%の人にお金を与えるために99%のという話とか、あるいは何百万円をどうのこうのという話は、ウケるのだろうけれどもねと。
それで、高在老に関して支給停止基準51万円で今回はという話は、民度以上の制度はできないと私はずっと言い続けているので、民度レベルなのかなというところで、先ほどよろしいのではないですかという話をしたことになるわけです。
○神野部会長 承っておきまして、ほか、いかがでございましょうか。
原委員、どうぞ。
○原委員 ほとんど皆様が言われた意見と同じところと、少しつけ加えたコメントだけさせていただきます。
1つ目の適用事業所の範囲の見直しについては、皆さんおっしゃっていたとおりでございます。これでこの問題は一旦終わりということではなく、4ページにございましたけれども、士業以外にも法人化せずに個人事業所にとどまっている業種はまだあります。また、昔とは環境も異なっています。また、世代によっては個人事業主さんの考え方も違っていたりなどもあると思います。現状に合わせていただいて、ここの部分については引き続きの検討をお願いしたいと思います。
特にいろいろな専門技術、サービス業もそうですが、新しい業種も出てきているかと思いますので、そのあたりも含めてぜひほかのところも引き続き検討をお願いしたいと思います。
在職老齢年金についてなのですけれども、資料2のほうですが、非常に難しい問題だとは思うのです。見直しについてということで、65歳以上のほうです。高在老と言ってしまいますが、こちらについての見直しの意義にもありましたけれども、年金制度は保険料を拠出した人に対してそれに見合う給付を行うことは原則であるということがありますので、もちろんそうであると思っております。
ただ、見直しについて、所得代替率や財源の問題がありますので、4ページにもありましたけれども、そこは留意すべきだと思います。そういった中で、例えば被用者保険の適用拡大などほかの制度改正全体で見ていくとどうなるかという視点は非常に大事だと思っております。
皆さん言われておりましたけれども、65歳まで働くことが当たり前の時代になって、さらに65歳以降も誰もが希望すれば働く環境ができるという世界を想定して考えなければいけないと思っておりますので、65歳以降の雇用環境、給与体系などが変化して、対象者の就労意欲を阻害しないという視点で考えていかなければいけないと思っております。
今回の見直し案を出していただいたのですけれども、現役男子被保険者の平均月収、賞与を含むという43.9万円と、65歳以上の在職受給権者全体の平均年金月額7.1万円を合計した51万円という基準が出されていますが、この基準自体は、納得性があると私は思っております。
したがって、高在老の支給停止の仕組みは存続するという解釈になるのかと思います。ただ、定義として、現役世代の平均的な賃金収入と平均的な年金収入がある人たちが支給停止の対象とならないようにするという明確なものになったのではないかと思っております。それ以上の収入や年金がある方については、引き続き支給停止の仕組みを残すという整理になるかと思います。
ただし、財政支出増となる部分についてどのようにするか明確にしておいたほうが良いということと、負担する側の人たち、現役世代が納得することは大事かと思います。
最後、低在老です。60~64歳までの低在老についても、4ページで見直しということでご提案がされています。ここは特に反対ということではないのですけれども、コメントだけさせていただきたいです。
そもそも低在老というのは、御存じのとおり、60~64歳までの特別支給の老齢厚生年金を受給できる人が対象になっています。つまり、生年月日で言えば、昭和36年4月1日以前生まれの男性、今で言うと59歳や58歳の方、女性は5年おくれですので、昭和41年4月1日以前生まれの人に限られた制度になっています。そもそも特別支給である有期年金の老齢厚生年金なので、生年月日に関係なく支給される65歳からの本来の終身年金の老齢厚生年金とは性質が異なるものです。
また、現在、生年月日によって支給開始年齢が65歳に向かって引き上げられている最中でありまして、あと少しという言い方がいいのか、男女の違いはありますけれども、そういう対象の方自体がいなくなるものです。先ほどどなたかから発言がありましたが、施行時期によっては対象者数も異なる部分があるということだと思われます。見直しをするならば、もう少し早くしていただきたかったな、という思いは正直ございます。
このタイミングで見直しということで、どうなのかなというのがありますが、ただ、山田先生などの研究結果にもあるとおり就労意欲への影響が一定程度認められるということもありますので、特に反対ということではないのですが、何となく高在老を見直すのでシンプルがいいから低在老も同じで、というのは特別支給の老齢厚生年金であるという性質が違う年金ですし、特定の方が対象とされているということを頭の片隅に入れていただいて、見直しを検討していただければと思います。
この金額も後でなくなるものとはいえ、そういったことについてもどう見るかということもあるかと思いますので、特に反対ということではないのですが、そういったことはわかった上で、ここはかなり対象者が増えますので、そういった意味ではいいという部分ももちろんあると思うのですけれども、ただ、もっと早くやってほしかったというのは今の受給者からもそうですが、1年遅れるたびに施行時期はいつなのかなどということもありますので、そこは留意していただきたいと思っております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
牧原委員に御発言いただいた上でコメントがあればまとめてお願いします。
牧原委員、どうぞ。
○牧原委員
今回の議論は財政検証や、それに合わせたオプション試算を踏まえて、将来世代の給付水準をできるだけ確保しようということを議論してきたかと思います。
在職老齢年金制度について、先ほどコメントしなかったので、コメントしたいと思います。在職老齢年金制度のあり方も含め、年金制度全体としての見直しということで議論が進んできたと思います。今回の見直し案についても程度の問題はありますけれども、結果としては所得代替率低下につながるという試算になっているので、この点をどのように考えていくのかが大事であると思います。
高齢者の雇用促進、就労促進というのは、日本の経済のみならず年金財政にとっても重要なことだと理解しておりますが、年金制度だけで高齢者の雇用が促進するわけでも、阻害されるわけでもなく、国の産業・雇用施策、あるいは企業の取組みによって高齢者の雇用は推進していくものだと思いますし、それが動態的にどのように年金に影響を与えるかということも踏まえておく必要があると感じます。
また、公的年金制度のあり様として、老齢年金という考え方だけでなく、必要な人に対して給付の重点化をするという議論があってもいいと思います。仮に在職老齢年金制度の見直しを行うのであれば、こうしたことを踏まえた上で進めるべきであると思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
まず、お二人の発言についてコメントがあればお願いします。
○年金課長 牧原委員の御発言も踏まえてですけれども、給付の重点化、これは恐らく所得再分配と言いかえてもいいかと思います。これは委員の幅広い御議論からすると、余りにも年金課長っぽい発言になるのかもしれませんけれども、諸外国の年金制度と日本の年金制度を比較した場合に、年金制度内の所得再分配のやり方はさまざまでございます。
日本の場合には、模範としたイギリスの制度が変わってしまいましたけれども、俗にイギリス型と呼ばれていまして、定額給付を入れ、定額の部分で再分配を持たせて、2階の報酬比例の部分はむしろ拠出したことに対する実感を伴って拠出意欲を減退させないという形で、原則は報酬比例にしているという形です。多分、権丈委員が御指摘していたのはそういうことだと思います。
そういう基本構造になっており、それなりに高賃金で保険料を払っていただいている方は、再分配に既に貢献されている一方で、16年改正で保険料を固定して将来とのバランスを年金制度内に内包した中で、今言った基本構造と長期で見た場合の世代間バランスをどうとっていくか。委員が何遍も悩ましい問題だとおっしゃっていたのは、そこを御指摘されてのことだと思います。
ここの部分をどうしていくかというのは、年金制度の場合、必ず5年に1回PDCAで議論する機会が回ってきますので、静態的に考えるのではなくて動態的な見直しの中で、その辺はしっかり引き続き御議論の対象にしていっていただければと思っております。
将来世代の水準を上げていくというのがオプション試算の基本的な設計で、それを議論していくべきなのだというお話もありまして、それはそのとおり受けとめる一方で、今回はどこまで見直すかどうかは別といたしまして、在職老齢年金というのは必ずしも今働いている方だけを意識したものではございませんで、見直したものが実際に効いていくまでどうしてもタイムラグが年金制度、さらに雇用の慣行に至るまでのラグがございますので、そこをどう見るか。
フォワードルッキングとおっしゃっていましたけれども、そういう視点も大事になってまいりますので、必ずしも今この瞬間の方々をどうするかという議論だけではなくて、今後をどう見越していくかという部分もございます。そこまで入れると、多世代といいましても、実は将来世代のためにどうするかという部分の議論もございますので、その辺も含めた視点として、ただ、全体としては所得代替率を上げる方向の中でなければこの議論は成り立たないよという御指摘は多々いただいたと思っております。そこはしっかり受けとめながら、かつマクロ経済スライドもかかっていく中で、長く働いていただいて繰り下げ効果も実感していただきながら、御自身で受給のタイミングを選択していっていただくというのが、次の改革の大きな一つのメッセージだと思っております。
そのときに在職老齢年金、オプション試算でもお示ししましたように、薄い雪がかぶったようなどうしても繰り下げ効果が出ないような部分が出てきますので、ああいう部分に関しても平均的な方についてはまずそこを気にしなくていいような制度に直していけないかという視点もございまして、今回、こういう御議論をいただくに至っております。そういったことを総合的にしっかり受けとめながら、ただ、ちゃんと所得代替率を上げるのが改革なのだという基本線は崩さないようにしながら、どういう仕上がりベースにしていくのかというのは事務局としても重く受けとめて、引き続き努力してまいりたいと思います。
○神野部会長 どうぞ。
○権丈委員 課長が話していたことにつけ加えなのですけれども、財政検証の資料4というところで関連資料というものがあるのですが、公的年金の負担と給付の図というか解説です。日本の年金というのは、賃金に比例して保険料を払って、2階部分として比例分をもらっているのだから、所得が上がっていくと給付額は1人当たり上がっていくけれども、所得代替率は下がっていくのだというところ。ここは日本の公的年金の議論のスタート地点としておさえておかなければならないところで、現在、相当この制度の中で所得は高所得者から中低所得者に再分配されていますね。同時に、一歩間違えるとブログとかいろいろなところでこんなに高所得者は損をしているぞというのも出てきたりもしておりますぐらいに再分配がなされていて、私はこれは良い制度だと思っているのですけれども、再分配が年金制度の中に基本的に組み込まれているというところからスタートするということは、私はこの公的年金の議論では大事なことではないかと思います。
資料4の参考資料というところが今回の財政検証の中でありましたけれども、そのあたりはしっかりと皆さんで復習すると同時に、適用拡大というのは、この所得の左側のところ、つまり、低所得者、中所得者に有利な制度に入ってくださいという話だということを、世の中はもう少し理解したところからスタートしたほうがいいとは思っております。
○神野部会長 どうぞ。
○武田委員 どうもありがとうございます。
本日の議論に関して、意見を2点申し上げます。
1点目は、適用事業所の範囲の見直しでございますけれども、既に皆さんの意見のとおり、また、事務局の御提案のとおり、今回適用範囲を見直すことについて賛成です。さらに、引き続き将来的にそれを随時拡大する方向で見直していくことについて、改めてお願いしたいと思います。
2点目に関しましては、今回の改革のゴールは何かということをしっかり確認したほうがいいのではないかと思います。前回も申し上げたと思いますが、一つは、これから変わっていく人生100年時代を見据えて、より長く、そして多様となる働き方、あるいは生き方に対してふさわしい年金制度をつくっていくことができるか。今回、1回限りで全部見直せるわけではないと思います。ただ、方向性が見えている中で、ゴールに向かって近づく改革にすることが大切だと思います。
もう一つ、前回私が強調させていただいたのは、将来世代も含めての持続可能性という点は、年金部会に所属する者としての責任があると思っておりますので、そこを両立させ、バランスさせる。その2つを踏まえたうえでそれに近づく制度改革、その方向性を意識した改革であってほしいと考えております。
以上です。
○神野部会長 ほかに発言をいただきたいと思います。
どうぞ。
○藤沢委員 ありがとうございます。
もう出尽くしていると思いますので、重なっているところは恐縮なのですが、1点目の適用拡大については、事務処理能力の問題はもう適用外の理由にはならないと思いますので、できるだけ幅広く、かつ今の日本国民としては資産運用や資産形成の教育は受けておりませんので、雇用者の責務として雇用した者に対してはこういった制度に入れるようにというのは、ぜひ早く急いでやっていただきたいと思います。
2つ目の観点に関しまして、近未来を考えてということではあるのですが、私はこの上限を上げることの意味がよくわからない。確かに働いていただいたらいいというのはわかるのですが、中小企業は確かに高齢者の方に働いていただきたいと思っていると思いますが、逆に大企業を見ていると、もうずっといらっしゃる高齢の方をどうやって整理しようかというのが、言いにくいけれども、事実であります。そういう中で、本当にみんなに働いてほしいというときに、もう少し深く考える必要があるのではないか。かつ、中小企業の方の皆さんとお話をしていると、高木先生がおっしゃったのと全く同じことですけれども、今の年金プラス給料という考え方をしているので、この額が上がると、中小企業にとっては恐らく支払うべき給料を上げなければいけなくなる可能性があると思うのです。そうすると、高齢者の雇用の数を減らそうという逆の圧力は、私は少なからずあるかと。
これによって雇用者がふえるメリットがあるとしたら、タクシー業界のようなある程度自分でコントロールできる人たちがもう少し運転時間を延ばそうということにはなると思いますが、一般的な中小企業にとっては、もしかしたらプラスでなくてマイナスに働くのではないか。だから、誰の視点でこの議論をしているのかというのは、もう少し幅広に考えてみたいと思いました。
最後に、これも多くの先生がおっしゃっていますが、そういう意味で、長期的に定年廃止の動きは出てきていますが、そうなってくると、人事の評価制度や賃金の基準なども変えていっているので、30代、40代で給料がマックスになって、その後に下がっていくようなことも進んでいくと考えると、在職老齢年金制度そのものに余り意味がないのではないかと。なので、長期的にはこういう制度をなくて、あくまでも繰り下げというのですか、支給を後に回していくような制度をもっと充実するように議論を進めていけたらよいのではないかと思います。
以上です。
○神野部会長 お二方の御発言について、事務局からコメントがあれば承っておきます。
○年金課長 武田委員の御指摘のようにゴールをしっかり見据えて、今回の改革もゴールを見据えた上で、ここまでを達成したいという一歩だということがはっきりできる改革になるように尽力したいと思います。
藤沢委員からも高木委員と同じように雇用の現場実態を踏まえた御意見を頂戴いたしました。その辺、仮に51万に見直した場合であっても、中小企業を初めとした高齢者雇用にどういうインパクトを与えてどうなっていくのかというのは、見直した場合だからこそかもしれませんが、年金部会の場も使いながら、そこはしっかりウオッチしていく形にしていくと。こういう改革がどういう影響を与えるのかというのは、今回就業抑制については山田教授に研究していただいたわけですけれども、ああいうスキームになるのかわかりませんが、そこは気をつけながらという形にしていくべきではないかと考えております。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほかによろしいですか。
どうもありがとうございました。さまざまな視点から、さらに建設的な御発言をたくさんいただきましたこと、深く感謝を申し上げる次第でございます。
こうした御意見を充実させる方向で引き続き議論を続けていきたいと思いますので、本日の議事につきましては、この辺で終了させていただければと思っております。
今後の予定等々については、総務課長からお願いできますか。
○総務課長 総務課長です。
次回の議題や開催日程につきましては、また追って御連絡さしあげたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○神野部会長 それでは、これにて第14回「年金部会」を終了させていただきます。
ちょうど時間どおりだと思いますので、皆様方の議事運営にかかわる御協力に深く感謝申し上げる次第でございます。
どうもありがとうございました。
 

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