ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金部会)> 第11回社会保障審議会年金部会(2019年10月9日)

 
 

2019年10月9日 第11回社会保障審議会年金部会

年金局

○日時

令和元年10月9日(水)14:00~16:00

 

○場所

東京都千代田区平河町2-4-2

全国都市会館2階 「大ホール」

○出席者

神 野 直 彦(部会長)
小 野 正 昭(委員)
権 丈 善 一(委員)
駒 村 康 平(委員)
高 木 朋 代(委員)
出 口 治 明(委員)
永 井 幸 子(委員)
原 佳 奈 子(委員)
平 川 則 男(委員)
牧 原     晋(委員)
諸 星 裕 美(委員)
山 田     久(委員)
細 田     眞(委員)
米 澤 康 博(委員)

○議事

○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第11回の年金部会を開催したいと存じます。
委員の皆様方には、大変お忙しいところを御参集くださいまして、本当にありがとうございます。伏して御礼を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出欠状況ですが、阿部委員、植田委員、菊池委員、小室委員、武田委員、藤沢委員から御欠席との連絡を頂戴いたしております。いずれ、権丈委員もお見えになるかと思っております。
御出席いただきました委員が3分の1を超えておりますので、会議が成立しているということをまず御報告申し上げたいと思います。
それでは、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきますので、事務局からよろしくお願いいたします。
○総務課長 前回も同じことを申し上げましたけれども、現在、厚生労働省におきましては審議会等のペーパーレス化を推進しております。本日の部会におきましても、ペーパーレスで実施させていただいております。
操作についての説明書をお手元に配付しておりますが、御不明な点がございましたら、適宜事務局がサポートいたしますので、御遠慮なくお申しつけください。
なお、傍聴される方には、あらかじめ厚生労働省ホームページでお知らせしておりますとおり、御自身のタブレット等の携帯端末を使用して、厚生労働省ホームページから資料をダウンロードしてごらんいただくこととしております。
タブレットのほうを御確認いただければと思いますが、本日は資料といたしまして、資料1「在職老齢年金制度の見直し」、資料2「就労期間の長期化に対応した被保険者期間の在り方の検討」を使用させていただきます。
また、タブレットに入っているはずですけれども、本日御欠席の菊池委員、藤沢委員からも資料をいただいておりますので、あわせて用意をしております。御確認ください。もし不備等ございましたら、事務局にお申しつけいただければと思います。
あと、今、私も話しておりますし、委員の皆様の前にもあるマイクは、真ん中のボタンを押していただいて、赤いランプがつけばマイクが入るようになっております。恐縮ですが、御発言が終わったときには、もう一度真ん中のボタンを押していただいて赤いランプを消していただければと。消さないと、次の委員の方がつけたときにハウリングを起こす可能性がございますので、御発言が終わりましたら、恐縮ですが、マイクの電源を消していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
○神野部会長 それでは、大変恐縮でございますが、カメラの皆様方にはこれにて退室をお願いしたいと思います。御協力をよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○神野部会長 それでは、議事に入らせていただきます。
本日は、議事次第をごらんいただければと思いますが、「高齢期の就労と年金受給の在り方について」という議題で御議論を頂戴したいと思っております。
既に前回から、ことしの財政検証の結果を受けて、前回は今後の年金制度の改正について事務局から御説明をいただいた上で、改革の大きな柱の一つである被用者保険の適用拡大について、委員の皆様方から御議論を頂戴したところでございます。
本日は、改革のもう一つの柱である、今申し上げました、高齢期の就労と年金受給の在り方を取り上げ、かつ、後で御説明がありますが、在職老齢年金制度の見直しと被保険者期間のあり方について御審議を頂戴したいと考えております。
それでは、初めに、事務局のほうから資料に基づいて御説明を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いします。
○年金課長 年金課長でございます。
資料1の1ページをごらんください。在職老齢年金に関してでございます。現行制度は、就労いたしまして一定以上の賃金を得ている厚生年金の受給者に関しまして、ボーナスを含む賃金と年金の合計額をもって基準額を上回る場合に、これは60歳代前半と後半で基準額が異なっておりますけれども、賃金2に対し、年金1を停止する、このような仕組みになってございます。
見直す場合に、その意義をまとめさせていただいております。年金制度におきましては保険料を拠出していただいておりますけれども、拠出に見合う給付を行うことが原則という中で、特に65歳以降の恒久化されている在職老齢年金に関してでございますけれども、どのような方々には年金の給付を一定程度我慢して貢献していただき、支え手に回っていただくか、そのようなあり方を検討する必要があるのではないかと考えております。
また、高齢期の就労拡大が見込まれているわけでございまして、就労の意欲を阻害しないという観点から、就労に中立的な制度が望ましいであろうということがございます。
また、多様な年金と雇用との組み合わせといいますか、受給のあり方という観点から、繰り下げ受給も今後ますます拡大していくであろう、あるいはそれを私どもとしてもの柔軟化を検討していくという観点の中で、在職老齢年金で支給停止がかかっている方は繰り下げ受給が実質的にはうまく使えないという状況になっておりますので、繰り下げ受給のメリットが出るようにするためにはどうしたらいいかという意義もあるだろうということでございます。下のほうにもまとめさせていただきますけれども、高齢期の就労はますます重要になってまいりますし、複数の研究者の方もおっしゃっていますけれども、現役期の働き方に近い形で就労する高齢者もふえてくる可能性もあるのではないかと。特に、同一労働同一賃金といった労働関係のほうの動向もございますので、そういった視点も必要ではないかということです。そうしますと、現役期に近い水準で働くような高齢者が今後ふえてくるというような視点も、当部会では持っていただいて御議論いただくというのもあるのではないかと考えてございます。
その上で、財政への効果、影響というものもございますので、オプション試算でもお示ししました2つのケースをこの観点に沿って整理しております。
ケース1が62万円に引き上げた場合でございますけれども、この場合ですと、右にございますように、約9%、23万人の方という一部の上位所得者の方は引き続き支給停止の対象となるという水準でございます。
一方で、男子の標準報酬(賞与込み)の平均から一定の幅、後ほど資料をお見せいたしますけれども、そういった賃金・年金の収入がある方については支給停止の対象にならないような水準になってございまして、このような方々は今後繰り下げの受給も選択に入ってくるということでございます。この場合の支給停止額は約1900億円となりますけれども、右の上に、小さい字で恐縮ですが、足元値は今4100億円ですので、差し引きの約2200億円が今後は支給の対象になるという考え方がケース1に該当いたします。その場合の将来への所得代替率への影響は▲0.2%と見ていただければと思います。
完全撤廃の場合は、保険料を払っていだたいた方にはしっかり給付するという原則論を徹底するという考え方で、高所得者であるとか、高額の賃金を得ているとか、そういったことは一切考慮しないというケースでございまして、この場合には全てが繰り下げ対象になるということになります。この場合の影響は▲0.4%でございます。
60歳代前半の在職老齢年金につきましては、昨年の年金部会での御議論の際も、経過的な制度であるのでというような御議論もございましたが、他方で、これも御報告いたしましたが、いわゆる就業抑制効果は計量的な研究でもあるというような観点もございまして、こちらもどうするかというのもあわせて御議論いただければと思っております。
この場合には、一つのケースといたしましては、今御紹介申し上げたような考え方で、引き続き維持するというケースの考え方もございますでしょうし、60歳代後半のほうを見直すのであれば、この際、同様の水準で措置するという考え方も一つのケースとしてはあり得るだろうということで、これも後ほど御報告いたしますが、この場合は長期の財政影響はほぼないに等しいと私どもは分析しております。
2ページ目でございますけれども、これは年金部会でも何遍かお示しした資料でございますが、60歳代前半と60歳代後半の在職老齢年金はその位置づけと意味合いが異なっております。60歳代前半につきましては基本的には就労期間で、就労をもって賄っていくという将来が来るという前提に立ちまして、そうは申しましても、低い賃金で働いていらっしゃる方の在職者の生活を保障するために、経過的に年金を支給するという考え方で水準が設定されております。
他方で、65歳以降は、先ほど申し上げましたように、年金の本来の姿からいけば、保険料の拠出に見合った給付を行うのが原則ではございますけれども、マル2にございますように、負担をしてくれる現役とのバランスの観点から、一定以上の賃金を得ていて、年金と賃金でそれなりの収入があれば、少し支え手に回っていただきたいということで、高賃金の在職者の年金の支給を停止しようという設計でできております。
3ページでございますけれども、こちらが在職老齢年金制度で実際に支給停止になっている方、あるいは働いていらっしゃる方の分布がどうなっているかというものでございます。現行の水準ですと、48万円基準のところから右の橙色の方々が支給停止の対象となってございます。
賃金と年金の合計額を階級別に見ますと、20~24万円未満の方が比較的多くなってございまして、65歳以上の在職されている年金受給者のうちの約2割の方が今支給停止となっております。先ほど申し上げましたケース1の62万円をプロットしてみますと、この場合、在職受給者の1割弱で、その人数は23万人程度と、この図のとおりでございます。
4ページは、オプション試算の結果でございまして、先ほど申し上げましたように、例えばケースIIIであれば、62万基準のケースですと▲0.2%、完全廃止の場合ですと▲0.4%というような試算結果が出ております。
5ページでございます。こちらは現役男子でして、この場合の現役男子というのは高齢者から若人まで全てを含んだ現役男子でございますけれども、データの制約上、共済が入っておりませんので、第1号厚生年金被保険者のみではございますけれども、厚生年金の被保険者の大宗は占めております。
この方々の標準報酬(賞与込み)をプロットしますと、このようなプロット図になっておりまして、算術平均は42.5万円になっておりますけれども、これに対しまして、右の黒枠で囲ってありますように、標準偏差をとってみますと19万円弱になりますので、1標準偏差を加えた水準は61.4万円という形になっております。単純平均ですと42万円強ですけれども、1標準偏差をとった場合にはこの程度ということで、1標準偏差の範囲内に8割ぐらいの方が入ってきて、残りの2割ぐらいの方は1標準偏差を超える位置に位置づけられる。こういう方々は比較的高所得の方と評価してもいいのではないかと、私どもは分析しております。
6ページは、60歳代前半につきましても同様の分析をしてみたものでございまして、60歳代前半ですと26~28万円に一つ大きな層がございまして、これがちょうど在職老齢年金の支給の停止基準とほぼ近い位置にあるというのは、昨年の年金部会でも御報告したとおりでございます。
この結果、今は半数強の55%の方が支給停止の対象となってございますけれども、こちらも65歳以上の方のケース1と同様の基準として仮に62万円というところで線を引いてみますと、11万人、9%ぐらいが引き続き対象者になるというような絵柄になってございます。
7ページをごらんください。こちらが、60歳代前半の方についての財政影響を見るために作成した資料でございます。支給開始年齢は徐々に引き上げられていきまして、男性は2025年に、女性は5年おくれの2030年には引き上がります。この間、特別に支給される厚生年金がございますが、2030年にはなくなる制度でございます。
この支給停止の規模でございますが、支給開始年齢の段階的な引き上げに伴いまして、年金のほうがなくなりますので、対象者も減っていくということで、そのぐあいは下の一覧表のとおりでございます。
なお、男女の今の比率といいますか、量を視覚的にわかりやすくするために、2019年度末の状況を上の段にグラフ化させていただいております。やはり男性のほうが非常にボリュームが大きいということがごらんいただけると思います。
8ページをごらんください。こちらが、もう既に申し上げました在職老齢年金の効果をもたらすために、繰り下げ受給した場合でありましても、在職によりまして支給停止をさせていただいている部分については繰り下げ増額の対象にはしないということでございます。ですので、その分は繰り下げ効果が減殺されますし、究極、全て支給停止されている方に関しましては、繰り下げても全く増額がないという状況になってございます。
9ページでございます。こちらが慶應大学の山田教授に研究していただきました最近の研究結果でございまして、在職老齢年金制度が高齢者雇用にどのように影響を与えるかを分析していただきました。
赤字のポイントだけ御紹介申し上げますけれども、男性につきましては62~64歳でマイナス10%ほど有意に就業率を押し下げる効果が確認できましたけれども、それ以外は就業抑制効果が確認できなかったということでございます。女性につきましては、60~61歳ではマイナス20%ほどの就業率を押し下げる効果が確認できて、それ以外はなかったということでございます。
山田教授は同時に、定年退職したときの賃金低下がどの程度影響を与えるのかというのも研究していただいておりまして、男性では同じく62~64歳でマイナス10%程度の就業抑制効果となりまして、在職老齢年金と賃金低下が同じぐらいの就業抑制効果があるという分析をされております。他方で、女性につきましてはこういった賃金による就業抑制効果は認められなかったということでございます。
最後に、サマリーとして山田教授によりますと、今後、合理的理由によらない賃金低下の是正が高齢者について進みますと、やはり賃金が上昇してまいりますので、在職老齢年金制度の効果がそういった方々についてあらわれる可能性もありますので、引き続きしっかりモニターしていく必要があるというのが結語でございました。
最後に、この資料の最後で10ページ、私どもで行いました年金制度に関する総合調査の調査結果の御報告でございます。
厚生年金を受け取る年齢になったときに、どのように働きたいかということを御質問いたしましたところ、年齢階級別に見ますと、年齢が高くなるほど年金額が減らないように収入が一定の額におさまるよう就業時間を調整しながら働くという方の割合が低くなる傾向が見られました。
右側のほうの図でございますけれども、今度は60歳代の第2号被保険者、つまり働いていて厚生年金が適用されている方だけに限ってデータをとってみますと、年金額が減らないように収入が一定の額におさまるよう就業時間を調整しながら働くと回答した方は、60~64歳の割合がやはり大きいものの、65~69歳でも4割を占めるという形で、意識レベルではやはり就業調整を意識しているという動向が見てとれます。
引き続きまして、資料2の御説明に移らせていただきます。
資料2は、前回の年金部会の中で、拠出期間の延長、被保険者期間のあり方につきましては、年金部会で引き続きしっかり議論するべきだという御意見を複数の委員からいただきましたので、御用意させていただいた資料でございます。
1ページ目をごらんください。現行制度の確認でございます。国民年金の被保険者は、制度創設時である昭和36(1961)年から20歳から60歳までの方とされまして、この年齢は変わっておりません。厚生年金の被保険者のほうにつきましては、適用事業所に使用される70歳未満の者とされております。
財政検証の結果は、下にございますけれども、基礎年金の拠出期間の延長、すなわち60ではなく65歳、45年拠出にした場合につきましては、ケースIからVのいずれにおきましても、約7%弱の代替率の押し上げ効果といいますか、上昇効果があるということでございます。厚生年金の加入期間を70から75歳に5歳延長した場合につきましては、0.2~0.3%ぐらいの代替率の上昇効果があるという結果でございました。
今後御議論いただいていく際に、私どもとして考えている留意点が幾つかございます。基礎年金の拠出期間の延長に関しましては、60~64歳の間の保険料の拠出能力、60歳代になってくると、就労の状態とか健康状態もさまざま変わってくるとも思われますので、この場合の能力を今後どういうふうに評価していくか。
それから、これはもう何遍も申し上げた内容で大変恐縮でございますけれども、基礎年金の場合ですと2分の1の国庫負担がございますので、これはピーク時で約1.2兆円と今回の財政検証オプションでは試算しておりますけれども、この確保をどうするかといった課題がございます。
厚生年金保険の被保険者期間の延長につきましては、今、被用者保険の適用拡大も議論して、企業負担についてもこれからお願いしていくような中で、こちらもやはり半分企業負担も入る話でございますので、そういった点も踏まえながら議論を進めていく必要があるのだろうと考えております。
2ページ目が、拠出能力に関して御議論いただくための一つの資料でございまして、左側の今後の就業の構造の変化といいますか、どの部分で就業が伸びることが見込まれているかということでございますけれども、男女ともに60歳以降の就労が伸びていく。これは働く形で賃金なりを得られる方がふえていくことが見込まれるということでございます。
他方で、現在の60~64の方々の就業状況、働き方で見ますと、パート・アルバイト、契約社員・嘱託など、正規の職員・従業員以外の数がやはり多いということでございますので、この辺は稼得能力といいますか、どのぐらいの負担能力があるかという際の一つの指標にはなろうかと思います。
3ページ、4ページは、昨年の年金部会でも一度御報告した内容でございますけれども、いわゆる1号期間、2号期間、3号期間というものを私どもの持っているデータのほうで長期トレンドを見ますと、若い世代になればなるほど、通算としての1号期間は減る傾向にございます。それから、下にありますように、今、足元値としての基礎年金拠出金の算定対象で見ますと、1号の対象者は14%を切るほどになってございますし、1号の中にも被用者的な働き方をしている方が一定数いるのは、適用拡大の議論の際に何遍か御報告したとおりでございます。
女性のほうは、男性に比べると1号期間が長い方も多いわけですけれども、女性も今、就業がどんどん進んできていますので、いずれ男性と似たような傾向になる可能性も十分にあるわけでございまして、60歳代前半の先ほどの就業の伸びも踏まえますと、厚生年金の適用といいますか、働いて一定の所得を得るような方々がだんだんふえてくるということも予測されるわけでございます。
実際、4ページの新規裁定者のデータで見ますと、最近の新規裁定者の方でいいますと、1号期間だけしかないという方はわずか4.4%という形になっておりますので、必ずしも生涯1号で、60歳代以降も1号で自営業という方ばかりのイメージでは今はなくなってきているということでございます。他方で、会社のお仕事をやめられて何も就業していないような方も一定層いますので、その辺の動向もよく見ながらの御議論かと感じております。
5ページは、先ほど御紹介いたしました年金制度に関する総合調査のほうで、意識について見たものでございます。保険料をもっと長く納めるようにして、その分、受け取る年金の水準が上がるようにしたほうがいいとお考えになっている方は、平均すると3割ぐらいでございます。受け取る年金の水準は上がらなくてもよいので、保険料負担がふえないように、保険料を納める期間は長くすべきではないという方が半数ぐらいいらっしゃいますので、こういった意識の動向にも注意を図る必要があるのかなと考えております。
6ページは、以前にも年金部会に出させていただいた資料ですが、冒頭申し上げましたように、国民年金制度は最初から60歳までとなっておりまして、当時は厚生年金のほうが定年の関係もありまして被保険者期間も拠出期間も短かったわけですが、その後、厚生年金のほうが被保険者期間も拠出期間もどんどん延びていって、今は70歳未満までになっているということでございます。
最後に、7ページと8ページはオプション試算で出させていただいた資料でして、資料の内容はもう既に先ほど御説明いたしましたので、適宜御参照いただければと思います。
私からの説明は以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。きょう御議論いただく2つのテーマにつきまして、資料に基づいて御説明をいただきました。
それでは、御審議を頂戴したいと思いますので、御質問あるいは御意見を頂戴できればと思います。いかがでございますか。どうぞ。
○牧原委員 在職老齢年金制度についてコメントしたいと思います。
在職老齢年金制度について、これまでこの制度が果たしてきた役割を踏まえて、見直した場合にどのような影響が生じるかということを考える必要があると思っています。
在職老齢年金制度の見直し論は、この制度が高齢者の就業抑制につながっており、これを廃止すれば高齢者の就労促進になり、年金財政の改善につながるということがベースにあるのではないかと思いますが、少なくとも高在老については就労抑制効果を立証できないという結果であったと理解しています。
一方、財政検証のオプション試算によれば、高在老の廃止によって将来の所得代替率は低下するという結果が出ていますので、高齢者の就労促進は社会全体として進めていかなければいけない課題であるということは理解しておりますけれども、仮に高在老の廃止や見直しをするにしても、これに伴う将来世代の所得代替率の低下には留意する必要があると考えます。
○神野部会長 建設的な御意見をありがとうございます。
諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 在職老齢の件ですが、財政検証のオプションでは高在老のことしか触れていなかったので、今回、低在老の見直し案はないのかなと思っていました。ただ、高在老のイメージは、中小企業の現場感覚ですと、経営者や役員クラスの一部の方々には制限があるのは感じていたものの、勤労意欲の阻害要因を除く、という意味ではぴんとこなかったのが本音です。
低在老の基準額の引き上げには逆に効果があると思っています。人手不足が続いていますし、先ほどの御説明にもありましたが特老厚の支給年齢の引き上げもあり、また60歳時に比べて賃金に変動を設けないケースも、実際に中小企業の現場では本当に増えているからです。ただし、年金の受給をきっかけに就労制限をするとか、雇用契約の見直しをするというのはまだ実際にありますので、いましばらくとはいえ、この低在老の基準額の見直しには、私は逆に期待したいなと思っています。
その場合に所得代替率にマイナスの影響をもたらす今回の高在老の基準額の引き上げ案とする62万ではなくて、現在の高在老である47万に統一するほうが制度がすごくわかりやすいのかなと。在職老齢というのは47万が上限ですよ、60から70はすべてそうですよ、とそのほうが非常にわかりやすいと思います。
それから、資料6にある低在老の分布図を見ても、47万でもかなりの人数が該当いたしますので、特に中小企業に勤務する方にはやはり恩恵があるのではないかと思っていますし、勤労意欲を阻害するということは少なくなると考えています。
被保険者期間の延伸については、後ほどまた言わせていただきます。
○神野部会長 ほかはいかがでございますか。どうぞ。
○細田委員 日本商工会議所の社会保障専門委員会委員の細田でございます。御丁寧な説明ありがとうございました。
商工会議所は、今年の4月に「高齢者の活躍促進に向けた意見」をまとめまして、その中で在職老齢年金については、「高齢者が働き続けることにインセンティブが働く制度に見直すべき」ということを盛り込んでおりますので、今回のような検討をされるということは非常によろしいことではないかなと思います。
資料1の1、2ページに、62万円とか47万円とか出ていますけれども、これについては財源の問題もありますので、どちらがということについてはなかなか申しあげにくいところでございますけれども、今後、年金財政に与える影響について十分考えながら検討していただければよろしいかなと思います。
個人的には完全撤廃が一番いいかなと思いますけれども、なかなか難しいところだろうと思います。これは個人の意見でして、商工会議所の意見ではございません。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほかはいかがですか。永井委員、どうぞ。
○永井委員 ありがとうございます。
では、在職老齢年金制度について意見を申し上げたいと思います。
まず、高在老につきましては、就労可能な方、それ以外の方との公平性、公的年金の所得再分配機能、将来世代にかかわる年金財政への影響などを十分に踏まえた上で、制度見直しの検討が必要と考えております。
財政検証では高在老の縮小、廃止は、先ほどもございましたが、単純に試算すると所得代替率が下がるということでございます。就労の変化を踏まえた、さらなる試算も必要ではないかと考えております。
また、低在老については、経過的な制度であるというものの、9スライドの分析にありますように、62~64歳の男性のところではマイナス10%の就業抑制効果が確認されたとの結果が出されております。
こうした調査結果だけでなく、現場といいますか、私どもの職場の感覚でも在老の就業抑制効果というのは感じられるところでありますので、見直しも含め、引き続きの検討が必要だと考えております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
どうぞ。
○米澤委員 今までの制度の成り行きは無視して、そもそも論でお話ししたいと思います。これは今更ですけれども、保険ですよね。厚生年金といえども保険ですので、何のリスクに対する保険かということを考えると、収入が大幅に減ったもとで長生きしなければいけなくて、そういうリスクに対する保険だとしますと、65歳以上で収入が高い方に関してはそういうリスクはないわけですよね。ですから、そういった人たちにあえて出す必要は、保険から見ればないのではないか。
ただ、先ほどから議論されていますように、中立性に関してやや配慮する必要があるというのは、そのとおりですけれども、余りその必要もないとしましたら、そこを大幅にふやすというのは、そもそも論から言って余りその必要はないのではないだろうかと。
むしろ60歳~64歳の場合の、収入はあるのだけれども、低い方に関してもう少し厚くするという方法も考えられるのではないだろうかなと思っております。
ただ、きょうの最初の資料でも、厚生年金も拠出された方にそれに見合う給付を行うということがもし原則であるとしますと、やや話が違ってくるかもしれませんが、そもそももう一度、リスクに対する保険と考えてみますと、収入の多い方にさらに分け与えるというのは、財源が豊富にある場合はいざ知らず、そうでない場合には余り必要としないのではないだろうかなと思っております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
どうぞ、駒村委員。
○駒村委員 高在老についてです。どちらかというと、見直しに対して慎重な意見が多かったと思いますが、私は見直しについて積極的な立場をとってコメントしたいと思います。
事務局が1枚目に整理したように、今後の動きを考慮していく必要もあると思うのです。年金制度というのは、今どうあるかというだけではなくて、将来、働き方や賃金政策がどう変化していくのかというのをある種イメージを立てて議論していかないといけないと思います。
山田先生の研究では、現在は労働への弾力性がないということですね。これはもっと詳しいデータがあれば後で教えてもらいたいのですけれども、資料1の3ページ目を見ると、確かに年金と賃金を足した分布というのは、46万円のところで少しキンクが出ている、ここで山が一回うっすらと出ているというのが見てわかりますが、それほど大きな勤労抑制効果や賃金に対するゆがみをもたらしているということではないと思います。
これは、足した分布しかないのか、それぞれの分布を3次元に見てみたい気もします。この足した状態で見ているだけではなくて、3次元でも見たい感じがしますが、そういう意味では、現時点では軽微な影響しか与えていないので、資源の効率的な配分に関しては、余り阻害効果はないと評価してもいいと思います。
この経済前提は、将来を見たときに2040年には男性の高齢者の就業率は70%半ばぐらいまで、65歳後半の方、65~70歳までのかなりの割合の方にある程度の賃金で働いていただくという想定も出てきていますし、2025年になると65歳からの支給開始に完全に切りかわっていくことを考えると、今、阻害効果がないといって、将来阻害効果がないとも言えない。むしろ、事務局がまとめたように、将来的には65歳以降の方も、今と同じ、現役世代と同じような働き方や賃金をとるように働いていただきたいと考えると、やはりいずれは見直さなければいけないのかと。
問題はいつなのかということで、年金改革は基本的には5年に1度、もし財政検証に連動したという制約があるならば、今回を逃すと次は24年になりまして、かなりぎりぎり感があるなと思いますので、やはり私は、全廃というのはやや極端かもしれませんけれども、少し対象を減らすような改革をやってもいいのではないか。ただ、標準偏差でどこかで切っていくという方法がいいかどうかはまたよく議論したいと思いますけれども、見直しには積極的な立場をとりたいと思います。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
山田委員、どうぞ。
○山田委員 私も在職老齢年金の見直しについてコメントさせていただきたいと思います。
もともと在老というのは、2つの観点から考えていく必要があると思います。先ほど、駒村委員の御指摘にありました、シニアの活躍促進というか、就労促進という観点と、それと慎重な意見にありますように、限られた財源の中でどこに公平に分配していくか、その2つの観点があると思います。
私自身、マクロの経済をもともと見ている観点からしますと、日本にとっての今後の大きな、これは経済自体もそうですし、そこで住んでいる国民ということを考えても、やはり就労促進、シニアの活躍というのが極めて重要な観点なのではないかなと思います。
そういう意味では、在職老齢年金という部分に関しましては、就労促進というか、今後60歳代の方々も活躍をしていただいて、賃金はもちろん個人によって差があるわけですけれども、やる気と体力のある方はむしろフルに働いていただいて十分な給与を受け取っていただく。そういうことを目指していくということが大事だと思います。
そういう観点からしますと、基本的には見直していく。理想を言うと全廃ということかもしれませんけれども、一方でもう一つの観点、限られた財源ということを考えますと、本日事務局が示された62万円という基準を置くというのは一つの考え方ではないかなと思います。
追加で見直しが必要だというところの根拠をもう一つ言いますと、そもそも社会保険方式ということになっておりますので、払ったものに応じて給付が受けられるという原則を考えますと、やはりそのことを考えていく必要があるのではないかということもあると思います。
財源の問題なのですけれども、現実問題としては年金財政の中で考えていくことになるわけですけれども、将来的には本来はもう少し広く、例えば税制との関係ですね。年金そのものはむしろ社会保険という原則を重視しながら、再分配のところは、例えば公的年金等控除の見直しによって財源を捻出していくということも将来的には考えていかないとだめなのではないかなと。
それから、もう少し小さい話になるのかもしれませんけれども、シニア就労と年金との関係で言いますと、雇用保険のほうで高年齢雇用継続給付というのがあります。これ自体が、基本的には企業の雇用促進のためにやっているわけですけれども、一方で賃金を抑制する面がございます。これもいきなり廃止というのはやや暴論かもしれませんけれども、将来的にはこことの関係も見直していきながら、全体として今の状況を考えますと、シニアが活躍していく、この観点をやはり重視すべきなのではないか。一つのメッセージとしても、今回、在職老齢年金の特に高在老の基準の引き上げは必要ではないかなと考えております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
では、小野委員。後で権丈委員にいきます。
○小野委員 余り損得勘定でお話をしたくないのですけれども、就労抑制というインセンティブみたいな面もあると思いますので、ちょっとお話ししたいと思います。
公的年金では、保険と再分配とのバランスだとか、あるいは企業年金とは位置づけが異なることに留意しなければならないと思いますけれども、かつて、私はアメリカの企業年金で展開されています支給開始年齢を超えて就労する場合の就労に対するペナルティーの議論を見たことがありますので、それを紹介させていただきたいと思います。
就労して保険料を拠出すれば年金額がふえるわけですけれども、一方で、支給開始年齢までの期間に相当する給付額は、アメリカの年金制度の場合には在職期間中は失ってしまうということになります。したがいまして、支給開始前の保険料に対して支給開始以降の保険料は、労働者にとって便益が低い、低下するということが指摘されておりました。結果として、支給開始年齢というのが実質的な定年年齢の役割を果たしているという理屈でございます。ただし、この議論は、恐らく労働者が提供する労働と受ける報酬とが見合っていること、これを労働者が認識していることが前提になっていると思います。
在職老齢年金における支給停止も、このような議論からすると、理屈としては就労抑制効果があるということになると思うのですけれども、高齢者についても就労に見合った報酬が実現するという時代になるにつれて、基本は就労抑制効果をできるだけ排除していくということになるかと思います。
ただ、この問題は、単に年金制度だけにとどまらないと思っておりまして、例えば年金があるから給料は低くても合理性があるというような判断があったり、あるいは年金と給与とで課税体系が全く異なっていまして、給与所得控除と公的年金控除というのは、在職老齢年金受給者については両方とも使えるということだとか、そういう面で労働政策とか課税政策とあわせて検討していく必要があると思います。
以上でございます。
○神野部会長 ありがとうございました。
権丈委員。
○権丈委員 昨年の10月の日本年金学会のシンポジウムで、ことしの財政検証について議論をして、そこで学会のほうから在職老齢年金の撤廃に要する4000億円については、マクロ経済スライドに溶け込ませるとどうなるかの試算をしてもらいたいという要望をまとめておりました。そして、それを昨年11月の第6回年金部会で私のほうから報告させてもらっております。
そうした試算を今回オプションB-2として行ってくださって、本当にありがたく思っております。その結果を見ると、高在老の撤廃にはマクロ経済スライドの1年延長が必要で、その結果、所得代替率が約0.4ポイント下がることが示されています。
おかげさまで、所得代替率という一本の座標軸上でオプションAとオプションBで示された適用拡大を議論できるようになったというのは、私は非常に大きな前進だと思っております。
高齢期の多くの人たちが若返って、老年学会、老年医学会が言うように、ワークロンガーを最優先の理念に掲げる社会においては、在老というのは複雑で、多くの人が正確に理解し切れていないために見直したほうがいいという政治サイドの主張は、私は十分理解できるのですね。
世論の基礎となるヒューリスティックな理解のもとでは、高在老も低在老と同様に就労に悪影響を与えるというようなごちゃごちゃの議論がなされているわけでして、昨年の10月でも年金学会でこの違いがわかっていない人が多分にいて、私はいろいろコメントしていたわけです。研究者の間でもそのようにしか理解されていない状況の中で、メッセージ性という形で政治のほうから、この在老というのを何とかしてなくしてもらえないだろうかという声が出ているのは十分理解しております。
ただし、在老の見直しというのは、一部の高所得者のために所得代替率が撤廃の場合は0.4ポイント、緩和で0.2%ほど下がるというのは事実で、再分配を旨とする社会保障政策でそういうことがあっていいのかという声がメディアとか野党のほうから出てくるのも理解できます。
この在老と適用拡大については、私はもし在老を改革するというのであれば、それによる所得代替率の低下を補って余りある適用拡大を進めるというのであれば支持したいと考えておりまして、適用拡大に関するオプションAというものは、規模要件を撤廃すれば約0.5ポイント上がります。
所得代替率が上がっていくわけですが、在老の撤廃と適用拡大による規模要件の撤廃をセットにするというのであれば、私は政府がことしの骨太の方針にも掲げているようなワークロンガーを目指すという、そのための素直なメッセージを発信したいという意図と、勤労者皆社会保険制度を目指すというのも骨太の方針に載っているのですけれども、これは両立できると思っておりますので、ぜひとも在老の撤廃と規模要件の撤廃というものをセットにして、相殺すれば給付水準は若干上がるという形で、先ほど牧原委員のほうからも代替率が下がることに留意が必要だという話があったのですけれども、この留意というのは適用拡大のほうでコンペンセイトしていくということをぜひとも表に出して議論していただければと思っております。
○神野部会長 ありがとうございます。
出口委員、どうぞ。
○出口委員 この問題につきまして、将来の年金がどうあるべきかということをまず最初に考えるべきだと思うのです。僕自身は、この前もエージフリーで考えるべきだと申し上げました。これからの社会は、いつも皆さんの議論で、シニアを働かせることはどうかとか、シニアはどうかという議論が出るのは、僕は発想自体がおかしいと思っていて、これからはエージレスの社会で考えるべきだとまず思うのです。それが多分世界の大きい傾向ではないかと思うのです。そのときに、例えば資料1に書かれている保険料を拠出された方に対し、それに見合う給付を行う年金制度の原則という認識は正しいのかどうかということをまず根底から疑うべきだと思うのです。
僕は保険業界に長くいたので、公的年金保険ということになっているわけですから、これは素人の間違った理解かもしれませんが、年金制度は何だといえば、経済的には特別目的税に近いお金を社会保険料という形で市民の皆さんから集めて、必要な人に、例えばビスマルクがつくったときには、たしか、けがをして働けなくなった人や年をとって体が動かなくなった人に社会保険を払う、プロイセンのために頑張った人に報いるのだというのがもともとの社会保険の趣旨ですから、そうであれば、保険である以上、保険料を拠出された方に対して見合う給付を行うというのが本来の年金の姿ではないと思うのです。
だから、エージレスで考えれば、何歳になろうが、例えば90歳でもナベツネさんのようにがんがん働いていらっしゃる方からは年金保険料をもらうべきだと思いますし、それはあくまでも保険なので、本当に病気で動けなくなったり、年をとって体が動かなくなった人にはたくさんお支払いする。だから、みんなから集めてどういうふうに再分配するか。これが年金制度の将来の姿であると僕自身は思うのです。
そういう将来のあるべき姿をみんなで議論した上で、もしこういう年金制度、こういう社会をつくるべきだという話を前提に置いた上で、今ある高在老をどのように変えたら、比較的スムーズに将来のあるべき姿に近づいていけるのかという観点で議論すべきだと思うのです。
いろいろな見方があると思いますが、僕自身は政府の制度はできるだけシンプルであるほうがいいと思うので、極力例外をなくす。物すごいシンプルな制度にするという意味であれば、もう完全撤廃する。ただ、完全撤廃すると、所得代替率でマイナス0.4という数字が出ているので、これで完全撤廃するのは誰が考えてもあほかという話になるので、それだったらほかの制度とセットで全体を見直す中で、全体として所得代替率は上がるのですという形で着地するという考えもあるかと思いますが、もし将来をエージフリーで考えるのだったら、一番シンプルには、所得代替率がマイナスになっているのだから、このまま置いておきます、何もしませんと。そのかわり、次の大きい制度改正のときには、さっき申し上げたように、本当に年齢フリーで思い切った改革をするために、この問題は今は手をつけませんという方法もあるのではないかと思います。
よくおっしゃっている、就労効果についてプラスかマイナスかというのは、いただいた資料を見た限りでは、どうもはっきりと有意に、本当に政策判断をするぐらいこの制度が悪影響を与えているのかどうか、僕自身が資料を拝読した限りは理解ができなかったので、この高在老が勤労意欲云々の話はほぼ関係ない話だと考えれば、遠い将来というか、これから日本がつくっていくべき社会を考えたら、この問題は多分二択ではないか。要するに、マイナスがあるのだからほっときます。これは、みんなが文句を言いませんよね。次に制度改正するまではほっときますというように割り切るか。思い切ってシンプルにして、いい制度にするために。そのかわり、適用拡大を徹底的にやるための一つの材料にして、捨て駒にすると割り切って適用拡大をがんと思い切ってやる。そのどっちかではないかなと個人的には思いますが、あくまで議論すべきは、本当にここに書かれているように、保険料を拠出された方に対して見合う給付を行うのが年金制度の原則ですかと。僕は違うと思っているのです。
こんなことを言ったら、御専門の方が書かれたことに対して素人が何を言っているのだとおっしゃるかもしれませんが、僕は公的年金はあくまで保険だと考えていますし、ビスマルクの考えたことは違うのではないか、払ったものを返してもらうのとは違うと僕は思うので、以上がこれに対する意見です。
○神野部会長 本質的な議論になりますが、これはいろいろ意見があるかと思いますが、いずれにしても普通に考えてもベバリッジ型みたいな、むしろ出口さんはそちらに近いのかもしれませんが、ベバリッジ型とビスマルク型があって、ただ、私の知識が正しければ、ビスマルクが最初構想したときには、たばこ専売で年金を運用すると考えたのです。ところが、議会がたばこ専売を否決したのです。そこで、結局、もともと別な保険が50%、50%になっていましたので、50%、50%の保険になったのです。
そこで、ビスマルクは、天使ではなく、議会によって取り違えられた醜い赤ん坊と嘆いていますので、必ずしもそこはそうではないので、これからもしも年金はどうあるべきかということであれば、今、私どもがとっているビスマルク型に近いような年金制度だと、ある程度激変緩和というか、退職したときと現役時代の所得との激変をなるべく緩和しようという意図も入っているので。
○出口委員 財源はそのとおりですけれども、言いたかったのは、ビスマルクはプロイセンのために頑張った人が道端に捨てられているのがかわいそうだというのが、たしか一つの動機だったということを聞いたので、これは『ビスマルク伝』で読んだのです。済みません。
○神野部会長 いずれにしても、ビスマルクは年金のときには、おっしゃるとおり、国民統合、こう言ってはあれですが、そのほかのところのビスマルクの有名なあめとむちがありましたけれども、国民統合というのを年金のときには重視して、それまでのような制度ではなく、専売として提案したということは間違いないのです。
事務局のほうから何かありますか。
○駒村委員 一言。今までの議論で少し気をつけなければいけないことがあると思うのです。この財政検証はあくまでも静態的な話をしているのです。だから、制度改革することによってフィードバックした効果はこの財政検証の中に入っていないという点は考えなければいけなくて、確かに今の高在老は就業抑制効果はないということで、フィードバック効果、賃金分布や就業行動が変わるということは余り想像できないということですので、動態的な変化は考慮しなくてもいい。だから、2000億円の不足が発生してしまうということは言えると思うのですけれども、これから65歳支給になり、マクロ経済スライドが効き始めたときにどうなっていくか。働き方や賃金分布が変化して、それが動態的に年金財政に与える影響というのはこの中で考慮されていないので、2000億円を所与として発生するというのか、それともそれを補って余りあるような年金財政に賃金や労働力の変化によって効果が出てくるかという、そのフィードバック効果がないので、適用拡大したら、今の状態のまま推計してマクロ経済スライドが続くので、年金給付水準の低下というろくでもない効果しかないのだと言い切るのは、静態的にのみ見ている年金財政検証の問題としては限界がある。動態的な効果もあわせて考えておかないといけないということは少しコメントしておきたいと思います。
この財政検証をどう見るかというわけで、フィードバック、制度変更によって働き方が変わっていく、労働者や市民が受け手としてではなくて、それを受けてどう反応するかというところは、当然ながら、仕方がないのですけれども、考えられていないのを留意しておかなければいけないと思います。
いずれにしても、先ほど山田委員がおっしゃったように、将来のことを考えながら議論しなければいけないときに、確かに今なのか、もう一個待つのかというのは判断の分かれるところかもしれませんし、現時点では確かにほとんど就労抑制効果はないというのは事実だと思いますけれども、将来をどう構想していくのかというのが大事かと思います。
○神野部会長 年金課長、コメントがあればお願いします。
○年金課長 事実関係の補足だけさせていただきます。
在職老齢年金制度の経緯にもかかわるのですけれども、在職老齢年金制度ができる前は退職年金制度でございまして、出口委員の御指摘のように、退職という一種の稼得の喪失を保険事故としてお支払いする。したがって、もう一回就職されますと退職がなくなりますので、年金も失権して、かわりにもう一回被保険者になって、もう一回退職されるとまた受給権が発生する、こういうような構成でございました。
そのうちに、働きながら年金をもらうことはできないのかというような話もありまして、昭和40年ぐらいから在職老齢年金制度ができ始めまして、そうすると、保険事故としての退職との関係がだんだん曖昧になってまいります。
それで、今はいわゆる支給開始年齢と言われるのは、年金部会のほうでも一度整理させていただきましたが、一定のルールに従って年金権と年金の受給額をお互い確認し合う、これを裁定行為と申し上げますけれども、それを通じて、一定年齢の到達をもって保険事故が発生したと擬制して、そこで保険給付の発生と支給を開始するというのが今の年金制度の構成になってございます。ここは、私どもの言葉足らずの部分が文章上、大変恐縮でしたけれども、そういう観点から考えると、一定のルールをもっての受給権の発生を一種期待権として持たせておきながら、一方で在職老齢年金制度を、歴史的経緯があってなのですけれども、現在も残していて、財政効果を出させていただいているという点がある。こういう趣旨でございます。保険事故としては、今、支給開始年齢の到達をもって擬制しているのが今の年金制度の整理になってございますということだけ、少し御説明させていただきます。
○神野部会長 ありがとうございました。
あと、事務局のほうから特にコメントはいいですか。どうぞ、審議官。
○大臣官房審議官(年金担当) 5年前の議論をしたときにも御説明したのですが、年金制度に関しては、所得のある高齢者の年金給付を制限すべきかどうかという命題でずっと議論がされてきています。
これに関して、2013年の、社会保障制度改革国民会議でも議論をして、結論は出していないのですが、考え方としては、給付を制限するというよりは、出すものは出した上で、むしろその所得をベースに負担はしっかりしていただくという形で整理をしていくほうがいいという意見が、強かったので、先ほどお話が出ていたように、この問題というのは年金だけで閉じて考えるのではなくて、広く給付と負担全体で考えるということだと思います。
社会保障の制度改革の中では、この間、例えば高齢者医療、あるいは介護保険で、高収入の高齢者に対するいわゆる保険料の水準や自己負担の水準が、相当引き上げられてきたという歴史がございます。
もう一つの税のほうですが、これは少し見直しが始まったところですが、政府税調での議論でも出ているとおり、退職給付の課税のあり方を総合的に検討していこうということがアジェンダセッティングされています。ただ、今年の年末の税制改正というよりは、もう少し中長期のテーマで議論をしていこうということになっていますので、給付の制限はやめて、そのかわり取るべきところで取るという形での見直しは、今の段階では判断ができない。こういう結論になるのだろうと思います。
その上で、今回、私どもが提案をしているのは、前回御説明したように、これからはより長く働いて、長期化する高齢期の経済基盤をどうやって充実をしていくか、そういうことにつながる年金改正を議論していかなければいけないという御説明をさせていただいたのですけれども、その文脈でこの在職老齢年金の制度を見ると、先日の財政検証でも御説明したように、これからマクロ経済スライド調整がかかっていって、現役のときの収入との対比で見た年金の給付水準はダウンをしていくということになります。その一方で、高齢期は長期化するということなので、社会全体では、これに対して就労長期化ということで対応をしていこうというシナリオになっていくということなのだと思います。
そのときに、財政検証でお示ししたように、平均的な賃金でずっと働き続けたという仮定を置くと、在職老齢年金制度に少しひっかかってしまって、Work Longerによってリカバリをするというシナリオが一部成立しなくなるという結果になっているわけです。
このことをどう考えるかということの中で、完全撤廃するかどうかは別にして、少し基準を見直してもいいのではないかという考え方が成立するのではないかという形で問題を提起させていただいているということは御理解いただきたいと思います。
同時に、きょうも何人かの先生方からお話しいただきましたけれども、おそらく高齢者の労働環境はまさにエージレスの社会の到来によって変わっていく。人手不足は起きていますし、同一労働同一賃金というのは、基本的には年齢に関係なく、同じ仕事をしていたら同じ処遇をしましょうという議論でありますので、現役並みに就業する高齢者が増加していくということを、その人を超高所得者扱いということで年金を全くとめてしまうというありようでいいかどうかについても、判断を求められるようになってくる。このような観点からの問題設定であるということを御理解いただければと思います。
○神野部会長 ありがとうございました。
平川委員、どうぞ。後で出口委員にいきます。原委員も後でいきます。
○平川委員 ありがとうございました。
確かにそういう観点もありますし、今後どうなっていくのかという長期的な視点で高在老を考えていく必要もあるかと思います。ただ、今の時点で厚生年金に対しての財政影響はマイナス0.4%、マイナス0.2%という数字が公表されており、多くの雇用労働者にやや衝撃を持って印象づけられているというのも事実ですから、厚生年金への財政影響という観点も必要と思っています。
ただ一方で、先を見据えていくということも重要なポイントだと思いますので、そういう議論が引き続き、将来どうなっていくかという資料が出てくるのが一番いいのでしょうけれども、その辺はまだ難しいと思いますけれども、議論に資するデータがありましたら出していただきたいと思います。
また、高所得者にかかわっての高在老の問題の視点の一つで、税制で何とかしようという話もあります。それが多分筋論だと思いますが、残念ながら、所得再分配機能が税制の場合どうなっているか、税制は所得再分配機能が弱いと言われている面もあります。
そういった意味で言うと、所得再分配機能を効かせるには、基本的には社会保障や社会保険制度の枠内で効かせていくというのが現実的なやり方ではないかなと考えているところであります。
いずれにしましても、公的年金制度の基本は、高齢期の所得が減るというリスクに対して、強制加入する中で社会全体で支え合っていく。その上で、手法として社会保険制度というのがつくられ、その上で再分配機能を強化する中で基礎年金をつくったり、高在老もその一つの役割を果たしているという意味もありますので、さまざまな視点はあるかと思いますけれども、今後も引き続き慎重な議論が必要かと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
原委員が初めてですので、先に原委員からお願いいたします。
○出口委員 後で大丈夫です。
○原委員 私も在職老齢年金についてです。たくさんの委員の方から意見がありましたので、重複するところもあるかもしれません。非常に難しい問題で、特に65歳以上の高在老についてですけれども、そこにも定義がありましたけれども、高賃金の在職者の報酬比例の年金を停止する仕組みの制度だと思います。そこを見直しするということでありますので、財源の問題とか所得代替率の話がありましたけれども、もし見直しをするとしても、現役世代の方に納得性が得られるようなものにする必要があるのではないかと思いますので、いろいろな検証とか試算も必要なのかと思います。
確かに、今後65歳まで働くのが当たり前になったときに、さらに65歳以降も今の60歳から64歳の方みたいに、どういった雇用形態になるのかわかりませんけれども、働く期間を1年ずつ延ばしていこうとか、70歳まで働こうなどというふうように、今と違う将来の世界をイメージするということも大事だということはよくわかります。
そのときの雇用形態や給与体系、働く環境、企業の体制なども今とは違う形になっているのだろうと思います。今は、男性で言うと58歳の方、昭和36年度の方からの年金が一斉に65歳支給になりますけれども、その世界を想定すると繰り下げなんかも考えやすいのですが、今、特老厚をもらっている方よりは、65歳で年金を初めてもらうという方が年金の受給開始時期をどうするか、働く期間をどうするかというふうに考える世界を頭の中で描いて考えなければいけない問題であるということはわかります。そういった意味では、今の低在老のような形になってしまわないような、65歳以降の働き方で言う就労意欲といったものを阻害しないという観点でも考えなければいけないことだとも思います。
そういった中で案が示されていますが、62万のラインという案が示されていましたけれども、本当にそこでいいのかというのももちろんあると思いますが、そのようにラインを現状とは少し変えるというということもあるのかなとは思います。
ただ、高齢期については、高在老も低在老もそうですけれども、厚生年金保険に入っている方が対象なので、これからいろいろな働き方をすることが考えられますから、そういった意味では、厚生年金保険加入を前提とした在老のあり方について、根本的にそこだけ見直したらいいのだろうかというような思いもあります。
そうなると、先ほどもおっしゃっていただきましたけれども、年金のことだけではなく、本来ならばもうちょっと全体的な視点で公平・公正になるような幅広い議論も今後必要になってくると思います。いろいろな働き方をしていく人がいますし。いずれにしても、見直しの有無、施行時期とか、生年月日の区切りとか、そういういろいろなことも含めて、現役の方を含めた納得感のあるようなものにしていくということが必要なのではないかと思っております。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
出口委員、お待たせしました。
○出口委員 保険事故を年齢に擬制しているということはよく承知しておりますし、審議官の言われたように、ワークロンガーをゆがめてはいけない、矛盾してはいけないということもよくわかるのですけれども、申し上げたかったことは、その議論の全ての前提が実は65歳とか60歳を基点に置いて議論されていることがちょっとおかしいのではないかと思うのです。
僕がたまたまエージレスで考えるべきだということを申し上げたのも、60とか65で議論しているからエージレスということを申し上げたのですが、人間は生物で、平均的に考えれば100でも120でも働けるわけではないのです。これもこの会の最初に申し上げましたけれども、普通は75歳ぐらいが一昔前の65歳と同じぐらいですよというお医者様方の意見もあるわけですから、僕は将来の議論をちゃんとするということは、例えばそういう実態があるので、1961年の20歳から60歳をいつまで引きずるのですかと。だから、医者の言うことをシンプルに聞いて、75歳を年金支給年齢の基準として何もおかしくないので、そこを基点に置いたときに、将来は全くそれで不思議はないと思うのです。例えば75歳が年金支給の基準ですよと仮に置いたときに、今の制度をどういうふうに手直ししたほうがスイッチしやすいかという観点で考えるべきであって、保険事故の考え方は、単純に年齢でいくのか、それともマイナンバーを上手に使って所得要件を入れるのか、この二択しかないと思うのですけれども、シンプルなほうがいいということで考えれば、年齢要件で擬制するのがいいと思うのですけれども、その年齢要件自身を今の医者が言うように、今の健康状態を考えて、75歳を支給開始年齢の基準にすると、仮にあるべき姿をそう考えたときに、今ある制度をどういうふうに手直しをしたらよりスムーズか、そういう発想で考えたほうがいいのではないかということが申し上げたかったことの理由です。
在職老齢年金の話になったので極言して言ったのですけれども、ベースを考えてみたら、どういう姿を将来我々が描いて、そこに対してどういうふうにアクセスしやすい、スイッチしやすいような制度設計をしていくかということなので、60とか65をベースにして矛盾がないようにするということは一見正しいようですけれども、では75を基準にしたときに、それでいいのですかと。済みません、そういうことが言いたかったので、舌足らずでしたけれども、おっしゃることはよくわかりました。
○神野部会長 では、権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 日本老年学会と日本老年医学会にかわって発言させていただきます。
老年学会と老年医学会は、歩くスピードとか、歯の本数とか、いろいろなものを観察していくと、どうも10年、20年前よりは人は10年若返った。だから、かつての65歳を高齢者と言うのだったら、今は75歳以上を高齢者と呼ぶべきであるとして、それに向けて、就労及び社会参加をして、みんなが生き生きと生きていくことができるような社会をつくるべきである。ただし、この高齢者再定義の提言に基づいて社会保障の給付カットなどを全く意図していないというのがいつも提言の後段にあります。高齢者再定義の提言に関連して支給開始年齢の引き上げということを言われることがあるのですけど、両学会は全くそういうことは意図していないと言っておりますので、そこはしっかりすると同時に、日本の今の年金制度であるのならば、今の制度を動かすこともなく、彼らの言う75歳を高齢者として定義していきながら、それまでみんながなるべく社会参加できるような社会をつくっていくというのは、年金を動かすこともなくできますので、そのあたりのところは日本老年学会と日本老年医学会のほうには十分理解していただいておりますので、よろしくお願いいたします。
ほかにも2点ほど言わせていただきます。適用拡大の話というのも、ほぼ条件闘争の段階に入っておりますので、在老の見直しの話と同じ次元で所得代替率を議論をしていって、適用拡大という話を進めていきながら、なおかつ政治方面、あるいはいろいろなところから来ている在老の見直しというものの両立を目指していくということはぜひともやっていただきたいと思っております。
同時に、新聞とかをいろいろ読んでいきますと、どうも在老が今の年金の諸悪の根源のような話でがんがん書かれているのです。昔から私は言っているのですけれども、この在老はそんなに悪いかというのがあるのだけれども、よく制度を理解するとこの制度はそんなに悪くはないし、このままでいいかもしれないよということで落ちつくかもしれないのですが、労働経済系の人たちとか、あるいは先ほど話した高在老、低在老の区別がつかない人たちからは、もう徹底的に諸悪の根源のように言われる。
私はずっと昔から言っているのですけれども、そういうふうに在労を理由に公的年金が叩かれるぐらいだったら、もう高在労はなくして、ほかのところで所得代替率の低下をカバーしていく形でいいのではないかというのがあります。
だから、先ほども言いましたように、適用拡大の規模要件完全撤廃というのが所得代替率にはプラスの効果があるけれども、在労についてはその内側の2分の1のところまでも許容しますけれども、なるべく全体の給付水準が下がらないように、上がる政策、下がる政策を複合していきながらしっかりとやっていってもらいたい。
それと、かつては在職老齢年金をなくしていくと、保険料を上げなければいけませんよというふうに厚労省の昔の年金局の人たちは説得して、在老を守ろうとしていたので、多くの人たちが在労の適用基準が上がると保険料が上がるのかというような懸念がどうも多分にあったのですが、そういうことも考えた上で、去年の日本年金学会のほうでは、在労見直しをマクロ経済スライドに溶かし込むと4000億円というのがどのくらいの期間のマクロ経済スライドの延長になるのか、その姿を見せてもらうことによって議論のフィールドをつくっていこうよというのがあったので、今回の財政検証によって今はかなり準備されてきたのではないかと思っております。
○神野部会長 どうもありがとうございます。
どうぞ。
○米澤委員 いろいろ言いたいことはあるのですけれども、私、高在老のまさに真っただ中にいるものですけれども、ほとんどカットされている者としては言うことが矛盾しているかもしれませんけれども、高在老の意義がやはりわからないのです。私はさっき保険のことを言ったのですけれども、原則ということもわからなくはないし、それから保険の言葉で言うと事故の前後で余り変わらない、スムージングということもよくわかるのですけれども、スムージングであるならば、むしろ高在老をやめて、その後の全体の所得代替率を上げたほうがよっぽどスムージングになると思うのです。そんなに必要でないときにもらって、必要なときに下がったのならば、そこも逆にスムージングすればいいだけの話でありますので、その意義を教えていただきたいのです。
以上です。
○神野部会長 年金課長のほうから何かコメントはありますか。
○年金課長 ストレートに申し上げれば、今回、権丈委員のほうからもございましたけれども、やはり財政上の効果というのが今の目線で見ますと最大の意義になろうかと思います。
繰り返しになりますけれども、ここの議論があるというのはきょうの委員間の御議論でも十分受けとめましたが、今の法律上のたてつけのルールどおりで申し上げますれば、65歳の時点で一定のルールに基づいた年金額あるいは権利というものを確定させて、それをベースに繰り上げとか繰り下げといった、ここは自己選択ですけれども、こういうふうに制度体系ができている中で、在職老齢年金だけは全く今は別の形で、賃金と年金の合計額があると、負担してくれている現役とのバランスの中でどこまでの給付をお支払いするかというたてつけになっていますので、全体の年金を一定確定させた後、どういうふうに組み合わせながら考えていっていただくかというような絵柄の中では、在職老齢年金だけはちょっと異質な存在になりつつあるという見え方だと思います。ただし、委員の間で十分御議論いただいていますように、もう既にそれがビルトインされた形で、権丈委員が言っていた保険料水準から代替率の問題から全てが成り立っておりますので、そこの財政的な効果、意義というものは無視し得ない形のものになっているということでございます。
○神野部会長 どうぞ。
○権丈委員 つけ加えて、かつて50%の給付水準を維持していくということを決めていこうとするときに、どうも保険料率を計算すると18.35%必要になってくるぞと。この18.35を18.30にする方法はないかということを政治の方から指示されて、みんなで考えていく中で、70歳以上に在老を適用すれば0.05減らすことができますとなったのですけど、余り格好いい理屈ではないのです。財政効果は明らかにありますので、そこら辺の給付の水準とのバランスの中で財政のバランスをとるために、在老をどのくらいの水準からやるかというのが決まっていくというところがありますので、年金論的というところからピュアに出てくるような話でもなかったのかなという気がしております。
○神野部会長 高木委員、お待たせしました。
○高木委員 在職老齢年金の制度に関しては、私は明確な答えが出ていなくて、考えれば考えるほど堂々めぐりしている状況ですけれども、きょうはコメントをするのを抑えようと思っていたのですが、発言をしないと委員としての責務が果たせないような気がしますので、少しだけお話したいと思います。私は雇用とか労働の専門家ですけれども、そうであるがゆえに、むしろ考えるのが難しかったところがあったわけです。
どのように堂々めぐりしたかというと、所得再分配という社会保障の基本的考えにのっとるならば、そしてまた、日本国がとっている賦課方式という年金制度の下で特に言えることだと思うのですけれども、まだ働いて自分の生活を立てることができるという人たちは、やはり年金を受けずに、その分を働いていない年金生活者に割り当てるということが考えられるのだろうと思うのです。
しかし、先ほどから出ているように、もしもこの制度が就業抑制という効果を持っているのであるならば、同時に考えられることとして、自由意思で労働参加をして自分の生活をよりよきものとする、豊かなものにするということをする人々がいるのであれば、その生き方の自己決定をゆがめるという、つまり、政府が過度に介入して労働市場の正常な活動を妨げているという考え方も確かにあると思うのです。
ただ、後半の議論について考えたときに、特に他国ではなくて日本の場合を考えたときですけれども、企業で働いている雇用労働者の就業率を高める最も大きな要因が何かと考えた場合、一般的にいわれているように、本人の就業意欲をそいでいる要因があればそれを排除するべきとか、もっと就業意欲を高めるべきとか、そういう話ではなくて、実は、企業側が就業意欲を持っている人々に働く場を継続的に提供することができるのか、また、働き続けたいと言っているけれども、その方が本当に企業が雇い続けたいと思えるような人材に仕上がっているのか、という問題のほうがよほど大きいように思うのです。
この年金部会でも資料が度々出ていますけれども、日本の高年齢層の就業意欲は非常に高いわけです。そう考えますと、就業率を上げるために何が最も影響しているのかというと、企業側が握っている部分が日本の場合はかなり多いのだろうと考えるわけです。
この制度が就業意欲にどのような影響を与えているのかというお話ですけれども、私、研究者として、方法論としてはアンケートをやってデータをとって分析をしたり、あるいは省庁が実施している調査の二次データ分析もしますし、同時にインタビュー調査も相当数やってまいりました。その経験から申しますと、例えばアンケートをつくって、そこに働かない理由のチェック項目を立てると、例えば賃金水準が低いからとか、年金が減額されるからとか、あるいはもう貯金が十分にあるからとか、配偶者が働いているから働く必要はなかったとか、そういうところに回答者はチェックを入れやすいのです。
その結果、データ分析すると、そうした項目が分析結果として非常に立ってくるということがあるのです。実はインタビュー調査をすると、働かない理由として年金が減額されるという話に及ぶことはほとんどないのです。何に焦点が当たるかというと、現役時代にやっていた仕事を継続してやることの意義であるとか、あるいは求められて働く、そういったところに話の焦点があって、年金が減額されるという話には全然及ばないのです。
ということは、就業をとめてしまった人の一番大きな要因は、実は在職老齢年金であるとか、そういったものにはないのかもしれない。年金が減額されるからやめましたみたいなことを後づけで言うかもしれないけれども、それが真の理由かというと、違うのではないかという感触を持っています。
それと、もしも就業抑制という効果がこの制度にあるとするならば、これを撤廃することで60歳代の後半層も含めた就業者数をふやすということがあるかもしれませんし、しかし一方で、年金財政が圧迫されてしまうということがあって、どちらをとるべきかという問題だと思うのですけれども、現在、人材不足が生じていて、在老年金制度を撤廃するということをしなくても、今後、企業側が働く場を用意できる、そういった可能性が高まっている中で、何も手をつけなくても実は就業率は上がっていくことが見込まれる可能性もあると思うのです。しかし、これがずっと将来的に続くのという疑問が、先ほど提起されたと思います。
この点について、日本の高齢社会における他国とは異なる強みというのは、非常に高齢者の就業意欲が高いというところにあると思うのですけれども、これが将来的に低下して、自分が働き続けるのか、あるいは年金を受給することを選ぶのか、それを天秤にかけて就業意欲を語り始めるという労働者の比率が将来高まるということがあるとするならば、それは現在行っている雇用政策の失敗だと思うのです。
みんなが働き続けたいと思い、働くことが自分の幸せにも直結すると考える人々が多いという点で、日本はほかの先進国と比べても非常に優位性を持っているのにもかかわらず、それがもし将来的に崩れるとするならば、もしかしたらそういった意欲をそぐような現在の雇用政策に問題があるのではないかと少し考えてしまいます。
もう一つ申し上げたいのは、他国にもこういった在職老齢年金に類するような制度があるのかどうかということです。私はそれは知らないですし、聞いたことがないのですけれども、海外がそういった制度を持っていないから、日本も撤廃するべきというふうに、単純にそれを輸入していいのかというと、そういう話ではないと思うのです。
というのは、この年金部会でも以前の委員会で資料が出てきていますけれども、標準的な年金受給開始年齢よりも海外の人々は少し早く引退していくということが平均値として出てきているわけです。彼らが引退して、その後働き続ける形というのが日本と違っていて、日本の場合は、定年を迎えて、その後、再雇用という形で従来の企業で働き続ける人たちの比率のほうが高いわけです。一方、海外の人たちは一旦退職すると、同じ会社で働き続けることは余りなくて、より軽微で臨時的な仕事、本当に短時間の軽微な仕事に移っていく。派遣みたいな形ですね。それがほとんどになっていくわけです。日本の場合と働き方が違うということがあります。
彼らがなぜそういう働き方をするかというと、年金をもらっているから十分だから、そんなに一生懸命働く必要がない。だから、日本で言うところのシルバー人材センターみたいな、臨時的で短期的で軽微な仕事を趣味程度にやるという形で働こうという形になっているのです。
そういった他国とは労働環境の違い、慣行の違いというものがある中で、他国がその制度をやっていないから、日本も撤廃だと、そういう単純な輸入の仕方はしてほしくないと考えています。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがですか。どうぞ。
○牧原委員 就労期間の長期化に対応した被保険者期間のあり方についてコメントをさせていただきたいと思います。
基本的には、国全体として高齢者の雇用を進めていかなければいけないというのは事実であり、今回の制度改定の中で、「より長く多様な形となる就労の変化を年金制度に反映して、長期化する高齢期の経済基盤を充実させる」という方向性については理解しています。その意味で、今回の検討事項ではないですが、年金の受給開始時期の選択範囲の拡大について議論されているということも理解をしています。
ただし、被保険者期間を延長するという点については、高齢期の方々の個人差を考えるべきだと思います。確かに、生物学的には10歳若返っているということはあると思いますけれども、職業人として本当に20代、30代、40代と同等の働き方ができるかどうかを比べると、やはり60代、70代の働き方というのは当然あると思います。さらに、家族関係なども大きく変わっているという現実を踏まえて、そうした高齢者の方々にどのような対応ができるかということを考えるべきだと思います。
企業側も、そうした高齢者のニーズに対応できるように働く場を今後も提供していくことが求められると思います。ただし、その対応には、企業の規模や業種によっては、今まで対応に出遅れているところもあるため、相当の準備が必要になるかと思います。
一方、企業は、生産性を向上し、競争力を維持する必要があります。それが結果として国全体の経済成長につながり、社会保障の基盤になると理解しています。
したがって、被保険者期間の延長については、高齢者や企業を取り巻く実態を踏まえつつ、生産性向上のための経済政策や雇用施策とあわせて議論すべきではないかと考えています。
○神野部会長 諸星委員も、先ほど2番目の問題を後からと。
○諸星委員 ありがとうございます。
被保険者期間の延伸に関しては、今回の財政検証でも効果は非常に高いということがわかりました。ただ、私は難しい問題だと思っていまして、わかりやすいという視点で言うと、現場で相談を受けた場合に、60歳まで納めたけれども、すぐにもらえず、何で5年も待たなければいけないのと。早目にいただきたいのだけれども、少なくなるのでしょうということをよく聞かれるので、65歳支給と合わせる形であれば、65歳まで納付するという点ではわかりやすいのかなと思います。ただ、その分、ここにありますように国庫負担も増えることになり、財源問題が残りますので、私は即、賛成とまでは言えないというのが正直なところです。
厚生年金の75歳までの加入期間も、実は75歳で後期高齢者になるために、健康保険と一緒という点ではわかりやすいという意味ではわかりやすいのです。ただ、適用拡大をこれから進めていきますし、同時に加入期間をふやすとなれば、ここにも書いてありますが、事業主の負担の増加が大変気になる一方、70歳以降、先ほどエージレスとお話がありましたけれども、実際、75歳まで勤務する人がどれだけふえるのか。実態はほとんど非正規で、賃金も低いとなれば、事業主の負担感としては案外それほど重く感じていないと思うことがあります。
先ほどの5ページに意識調査があったのですけれども、直接関係ないかもしれませんが、私はよく厚生年金の加入のメリットを説明する機会があります。その際、65歳以降の方、御夫婦で勤務しているという女性の方が必ず言われるのが、夫が亡くなったら遺族年金が出るのでしょう、自分が掛けている保険料は結局無駄になるのではないか、だから加入を望まないとか、既に遺族年金や老齢年金を女性の場合はもらっていることも多いので、そもそも加入する必要がないでしょうという声を聞くことがあるので、御自分で負担をすることの抵抗が、特に高齢になればなるほど非常に大きいではないかと感じています。
適用拡大の資料の中にも、50歳以上の方が就業調整をして加入しない傾向があるという資料が残っていたのですが、75歳まで延長ですよと言ったら、案外事業主よりも、75歳まで保険料を納めなければいけないのかと、働かれる側の方々の抵抗のほうが大きいのかなとは感じています。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
細田委員、どうぞ。
○細田委員 私も資料2について意見申しあげます。
1ページ目に、財政検証の結果として、「基礎年金拠出期間の延長」とか「厚生年金加入期間の延長」という話が出ています。今と全く同じような話になってしまいますけれども、これは所得代替率の向上に寄与するということは当然わかっていますが、それと同時に、国庫だけでなく、企業にとっても非常に大きな負担になります。これは前回のテーマだった適用拡大よりも、もしかしたら影響の大きい企業負担になるということもございますので、ここですぐに決まるということはないと思いますけれども、ぜひ、慎重に議論していただきたいと思います。
先ほどお話が出ていましたが、現在は60歳定年であっても、65歳までの雇用が企業側には義務づけられていますので、働きたいとおっしゃる方がいらっしゃれば、それを阻むことは当然言えない状況になっています。私どもの会社もそうですけれども、65歳まではきちんと働いてもらっていますし、それに対する社会保険料は企業にとって負担になってきているということは、御理解いただきたいと思っています。
したがって、先ほど在老の廃止と適用拡大とをセットで行うというお話があったのですが、企業側に対する負担、特に中小企業、小規模事業者が多いですから、そういうところにとってはなかなか厳しい話もあるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
○神野部会長 権丈委員、お待たせしました。
○権丈委員 資料2のほうで、2つといいますか2側面があって、60歳から65歳、40年から45年の被保険者期間の延長というところは、将来、税が必要になるという話を、我々が増税したくないからといって決めるという話であっていいのかというのはこの前も言っているのですけれども、将来の人たちの租税負担のあり方というところを我々が決めていいのかというのがあります。財政検証によれば、将来の人たち基礎年金の給付水準が上がる、これだけの上がる効果があるわけですね。これはもう準備に取りかかるというのを私たちは考えて当然ですし、税が必要だからここでは諦めるとかではなくて、税をしっかりと議論するようにというのが私たち年金部会のポジションだと思っております。
主計局長がいろいろなところで、やる気はありませんと言い続けていったら、日本全体はそれを諦めるという意思決定システムは何かおかしくないかというのが根っこの部分にあります。
70歳から75歳での就労可能性に関しては、日本老年学会、日本老年医学会に頑張ってもらいたいと思います。そんなことはない、ちゃんと働けると医者が言っているのだから、僕たちは従うしかないでしょうと僕たちは言っているところがあって、6月に彼らに頼まれてこれらの学会総会に講演に行ったわけですけれども、「社会保障から見た高齢者再定義」についてという講演をしてくれと言われたから、私はそれを断って、「高齢者再定義から見た社会保障」の話だったらすると。社会保障から、あるいは財政のほうから高齢者の再定義というような話は一言もしていない。あなたたち医者が科学的なエビデンスに基づいて若返ったと言うから、ワークロンガーの阻害になるような社会システムをなくしていこうことをやっているだけの話で、ぜひともあなたたちに私が求めるのは科学でいてくれということです。科学であることから外れると、よこしまなやつらが参入してくるから、あくまでも科学でいてくださいと。そして、彼らはあるところから70歳が落としどころだろうと言われたら、何を言っているのだ、これはエビデンスに基づいて75と言っているのだという姿勢があるので、私たちはそれに従ってシステムをしっかりと整えていくというところで、出口委員と全く同じ意見になっていくと思います。75歳ぐらいまで厚生年金の保険料を払っていくというのは、これはもう準備に取りかかっていいと思っております。
○神野部会長 ありがとうございます。
平川委員、どうぞ。
○平川委員 私のほうから、基礎年金拠出期間の延長の関係について意見を申し上げます。
オプション試算でも示されておりますけれども、基礎年金の給付水準が悪化するのをどうとめていくのかというのが大きな課題だと思っています。
そういった意味で、その手法として、例えば保険料を上げるとか税をさらに投入するという話になりますと、残念ながらどうもそういう環境ではないというのが明らかであります。では、具体的にどういうふうなことでやっていくか、その手段の一つとして拠出期間の延長というのが有効な手段だというのが示されていると思います。そういった意味で、支え合いの輪を広げていくということでもありますので、これは前向きに検討すべきと思います。
一方で、基礎年金が1986年の法改正でできました。そのときの国会の議事録を読ませていただきましたけれども、当時の年金局長の国会での答弁は、厚生年金、国民年金、共済を含めた共通のルールで基礎年金をつくり上げていくのだという答弁を、野党からの追及に対して再三再四行ってきているということであります。やはり共通のルールに基づいて基礎年金を支えていくのだという基本原則は堅持をしていくことが必要なのではないかなということも発言させていただきたいと思っているところであります。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほかに。では、原委員、出口委員の順で。どうぞ。
○原委員 私も資料2の「就労期間の長期化に対応した被保険者期間の在り方の検討」のところで、確かに、先ほど国庫負担の問題とか、60歳退職者などの留意点というのはありますけれども、やはり保険料拠出期間の延長として、まずは基礎年金の拠出期間、45年拠出というところですね。いろいろな働き方をしていく方がふえていくだろうと先ほど申し上げましたけれども、個人事業主として働くような場合でも、65歳までは保険料を拠出する。その分、年金額にも反映されるということは、引き続き、時間がかかるかもしれないですけれども、検討していってほしいです。 企業負担を含めて考えたとき、厚生年金被保険者の延長を進めるということも出ているのですけれども、そちらのほうが先に進んでしまうと、非常に差が開いてしまうことになります。これだけいろいろな働き方をしている60代、70代がいる中で、今でさえ国民年金は60歳まで、厚生年金は70歳までということで10年の差がありまして、それがさらに広がるということになると、いろいろな働き方が広まる中で、損か得かみたいな話にもなってしまうのではないかと思います。働き方が多様化する中で、もちろん拠出することができないという方もいらっしゃることは考慮しなければいけませんけれども、そういったところは知恵を出しながら、基礎年金についても45年拠出というところに向けて考えていかないといけないのではないかと思っております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
出口委員、どうぞ。
○出口委員 僕は75歳を基準年金と思っていますので、厚生年金加入期間の延長については、プラス効果があるし、これは自然に考えればこれでいいと思います。
それから、基礎年金の拠出期間の延長については、オプション試算を時間をかけて精緻にやられて、これだけの大きい効果があったら、やらなければ何をしているのだという話になるのではないかと思いますので、実際問題は2分の1問題とか、調整は必要だと思いますけれども、方向としては制度もシンプル、理由もシンプルなほうがいいので、6ポイントも改善するのですよ、これはやるしかないじゃないですかというシンプルな話でいくのが一番いいのではないかと思いますし、それは市民も望んでいることではないですか。こんなオプションをやってもらったのだから、当然、これだけ効果があることはすぐにやってくれるのですよねというのが普通の市民の発想だと僕は思います。
○神野部会長 小野委員、どうぞ。
○小野委員 ありがとうございます。
被用者年金の適用年齢の件ですけれども、かつて、昭和60年改正の際に、上限なしだったものを65歳未満に一斉適用したという話がございました。その後、平成12年改正のときに、65歳から69歳までの人を適用する際には、たしかこれは一気に適用したのではないかなと思います。
被用者年金の75歳までの適用につきましては、一気に適用するという方法もあるとは思いますし、それがいいと思います。既に20年近くたっている話ですから、5歳ぐらいシフトするというのは普通なのかもしれません。もしどうしてもということであれば、70歳到達者から適用していけば、5年間にわたって徐々に増加するわけでございますし、そのあたりは工夫の余地があるとは思います。少なくとも過去1度、一気に適用したという事実があると認識しておりますので、それが今できないというのはちょっとどうかという気もいたします。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
高木委員、どうぞ。
○高木委員 2番目の資料に関してですけれども、65歳までの保険料の拠出能力をどう評価するかということですが、これは当然御本人の問題ということになるのですけれども、それに関して資料の2ページで、男性も高齢期の就業というのが立ち上がって伸びてきているし、女性も高齢期の就業の伸びがあるということで、なおかつ、女性のほうですとM字型の底の部分が立ち上がってきていると推計されていて、そうであるがゆえに、皆さん働いているわけですから期間を延長しても、保険料を支払う能力もあるだろうと見るかもしれないのですけれども、例えば女性のところに関して言うと、今、高年齢期で働いているから働けるだろうという話ではなくて、このM字のと将来的に就業率が持ち上がってくると推計されている部分というのは、若かりしときの働き方とその中身が異なっているとみなさなければならないと思うのです。
正規社員として働いていた若かりしときがあったかもしれないけれども、結婚して出産、育児というものがある中で、また労働市場に戻ってくるときは正規社員ではなくて非正規という働き方をしている。そういう働き方の中での収入でしかないので、ここの部分の女性の60~64歳の保険料の拠出能力というのは、この単純なマクロ的に見た数字からでは推しはかれないものがあるのではないかと思っておりまして、もう少し留意が必要かと思っています。
もう一点は、被用者保険の適用拡大の件に関して、企業と折半で保険料を支払う企業負担というのが問題になっていますけれども、この件と、期間を延長していくというお話が重なってしまい、企業側に大きな負荷が及ぶと思うのです。これを二本柱で議論すると、どっちがどうなのかという話になってしまうと思うので、では、どちらを優先するべきなのか、順序を立てなければいけないのではないかと思っています。
その場合には、これまでこの年金部会でも議論されているように、被用者保険の適用拡大のほうが先に着手するべきことのように思われるのです。それをやることによって、次に期間延長の実行が誘引されるという、そういう順序があるように思っています。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 資料2の6ページの当時の国民年金の加入の年齢が20歳から60歳までだったという経緯について、マル2で説明してあるわけですけれども、当時の資料なんかを見ると、65歳からの支給は財政的な事情で決まっていたけれども、20歳からずっと払うと45年間払わなければいけない、それは非常に無理だろうということで、加入期間が60歳まで、支給開始が65という、何かわけがわからない5年のウエーティングの時期ができた。だから、本来、制度ができるときから、この5年間というウエートをする時間は、どうも盲腸みたいな、積極的な理由がなかったのではないかなと思います。やはり60から65歳、自営業の方は本当に負担能力が、現在も当時と同じようにないのかどうなのかということも、現在の視点から見直したほうがいいのではないかなと思います。これはあくまでも当時の60歳の自営業の方の負担能力がなかったということであって、それからもう60年近くもたっているわけですから、かなり状況が変わっていて、そもそも60歳までの加入としたこと自体が制度上は不完全だったと思いますので、この際、負担できるかどうか、自営業グループも確認した上で、その部分は埋めてしまったほうがいいのではないかと思います。
以上です。
○神野部会長 ほかにいかがですか。
よろしければ、次回も議論できないわけではないので、この辺で本日の会議は閉じさせていただきます。もちろんきょうの議論を踏まえながら、引き続き議論をさせていただきます。
それでは、事務局のほうから連絡事項についてお願いいたします。
○総務課長 次回の部会の日程でございますけれども、間が狭くて恐縮ですが、10月18日金曜日の10時から、場所はTKP新橋カンファレンスセンターを予定しております。
今回と同様、大きなテーマといたしまして、「高齢期の就労と年金受給の在り方」ということにつきまして、引き続き御議論いただきたいと思っております。
以上です。
○神野部会長 それでは、御承知おきいただいた上でもって、第11回の年金部会をこれで閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。
 

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金部会)> 第11回社会保障審議会年金部会(2019年10月9日)

ページの先頭へ戻る