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2019年8月27日 第9回社会保障審議会年金部会

年金局

○日時

令和元年8月27日(火)17:00~19:00

 

○場所

東京都港区新橋1-12-9

AP新橋 3階(Aルーム)

○出席者

神 野 直 彦(部会長)
植 田 和 男(委員)
小 野 正 昭(委員)
権 丈 善 一(委員)
駒 村 康 平(委員)
小 室 淑 恵(委員)
出 口 治 明(委員)
永 井 幸 子(委員)
原 佳 奈 子(委員)
平 川 則 男(委員)
牧 原 晋(委員)
諸 星 裕 美(委員)
山 田 久(委員)
細 田 眞(委員)
米 澤 康 博(委員)

○議事

○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第9回の年金部会を開催したいと存じます。
皆様には、月末のお忙しいところ、また、このような遅い時間の開催になってしまいましたが、万障繰り合わせて御出席いただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。
開会に先立ちまして、前回の開催以降、委員の異動がございましたので、まず、それを御報告させていただきたいと存じます。
本日までに、森戸委員、山本委員が御退任されていらっしゃいます。新たに細田委員に御就任いただいております。詳しくはお手元に配付してございます名簿を御参照いただければと存じますので、よろしく御承知おきいただければと思います。
本日の委員の出欠状況ですが、菊池委員、阿部委員、高木委員、武田委員、藤沢委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。また、小室委員におかれましては、御所用のため、途中、御退席される御予定だと伺っております。
御出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議が成立しておりますことを御報告申し上げたいと思います。
さらに、前回の開催以降、事務局におかれても人事の異動があったということを伺っておりますので、事務局から御紹介いただければと思います。よろしくお願いします。
○総務課長 それでは、事務局のほうに人事異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。
私もその一人となります。年金局総務課長を拝命いたしました、竹林と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
その他の事務局の人事異動でございますけれども、最初に年金局長の高橋でございます。年金管理審議官から、この7月に局長に異動しております。現在、別の会議に出席しておりまして、追って、おくれてまいります。恐縮でございます。
それから、年金管理審議官の日原でございますが、本日は所用により欠席させていただいております。
それから、国際年金課長の小澤でございます。
数理課長の山内でございます。
事業企画課長の巽でございますが、本日は所用により欠席させていただいております。
事業管理課長の駒木でございます。
以上でございます。
○神野部会長 引き続いて、議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。事務局からお願いいたします。
○総務課長 それでは、本日の配付資料でございます。
資料1といたしまして「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」。
資料2-1といたしまして「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」。
資料2-2といたしまして、その詳細結果。
資料3-1といたしまして「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しの関連試算-2019(令和元)年オプション試算結果-」でございます。
資料3-2で、その詳細結果でございます。
資料4で「2019(令和元)年財政検証関連資料」でございます。
資料5で「2019(令和元)年財政検証に用いる経済前提における内閣府の「中長期の経済財政に関する試算(2019年7月)」の取扱いについて」でございます。
以上、御確認いただきまして、もし不備等がございましたら、事務局にお申しつけください。
事務局からは以上でございます。
○神野部会長 お手元、御確認いただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、大変恐縮でございますけれども、カメラの方々につきましては、これにて御退室をいただければと思います。御協力いただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○神野部会長 それでは、議事に入らせていただきます。本日の議事でございますが、議事次第をごらんいただければと思います。本日は「2019(令和元)年の財政検証の結果」について、議事を準備させていただいております。
もう御案内のとおりでございますけれども、2019年、つまり、令和元年の財政検証につきましては、私どもの年金部会のもとに設置いたしました年金財政における経済前提に関する専門委員会におきまして、経済前提の検討を行っていただきました。これもことしの3月に、私どものこの年金部会において、事務局からその検討結果について御報告をいただいたわけでございます。
こうした結果を踏まえて、厚生労働省において、財政検証の公表に向けた作業を行っていただいてきたと承知いたしております。
その財政検証の作業の結果が取りまとめられたということでございますので、事務局から、それをまず御報告いただきたいと思います。
では、事務局からよろしくお願いいたします。
○数理課長 数理課長でございます。それでは、お手元の資料1から資料5までに基づきまして、2019年財政検証の結果について御報告をしたいと思います。
まず、恐縮ですが、一番下の資料5をごらんいただけますでしょうか。
財政検証については、今、御説明いただきましたとおり、前回の年金部会におきまして、さまざまな前提などを御報告いたしまして、以後、作業を進めてきたところであります。その間、経済前提の検討のための基礎資料の一つにしておりました、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」につきまして、7月31日に新しい試算が公表されたところであります。
財政検証の経済前提につきましては、特に足元10年間につきましては、内閣府の中長期試算と呼びますが、中長期試算に準拠するということになっていたこともありますので、新しい中長期試算の取り扱いについて、専門委員会に御相談をし、一定の考え方をまとめていただいたものでございます。
1ページ目の「2.考え方の整理」の(1)にありますとおり、経済前提につきましては、専門委員会の報告書について、おおむね1年半というか、長い時間をかけて過去の分析とか、ヒアリングとか、さまざまな観点から取りまとめたものなので、基本的な考え方といたしましては、足元の経済の状況は常に変動しているということもありますので、新しいデータが公表されたということで、直ちにこれを取り込んで見直しを行うべき性質のものではないということがまず一つ、基本的な考え方ということであります。
(2)でありますけれども、特に2029年度以降の長期の前提につきましては、そうした側面が強くて、独自のマクロ経済に関する試算なども行っておりますので、2ページ目の上のほうにありますとおり、1月試算と7月試算で、一つはTFP上昇率の見通しが、1月試算では1.3%程度までの上昇が見通されていたものが、1.2%程度の上昇と。これは経済成長が進むケースであります。
もう一つは、ベースラインケースのほうで、物価の上昇率につきまして、1.1%程度で推移すると見込まれていたものが0.8%と、そういう違いがあるわけなのですけれども、基本的には6行目に書いてありますとおり、こうした上昇率の設定などといいますのは、専門委員会において設定した長期の幅の中に含まれているということでありますとか、財政検証の基本的な考え方、プロジェクションであって、幅広く見るものだということを考えまして、必ずしも7月試算を織り込んで見直す必要はないということが(2)でございます。
(3)でございますが、ただし、足元の10年間につきましては、内閣府の中長期試算に準拠することになっておりましたので、新しいものが公表されたということを考えましたら、足元の10年分につきまして、置きかえることも差し支えない。そのようなことでまとめていただいております。
そして、具体的に整理をしていただいたものが、3ページが足元10年間の見通しということになっておりまして、4ページが長期の前提ということになっております。この4ページの長期の前提というのは、3月13日に御報告したものと同じということでございます。
そういうことで、3月に御報告いたしました事項から、足元の10年間の経済前提のみを新しい中長期試算に置きかえて作業したということでございます。
恐縮ですが、資料1をごらんいただけますでしょうか。資料1が、タイトルに「ポイント」と書いておりますけれども、今回の財政検証及びオプション試算の全体像をまとめたポイントの資料といいますか、概要ということになっております。
さらに、その中の1ページ目が、全体の見取り図みたいな形になっておりまして、下半分をごらんいただきますと、2019年財政検証結果のポイントということで書いております。<新しい将来推計人口と幅広い経済前提の設定に基づき試算。また、オプション試算も実施>ということになっておりまして、左側のマル1をごらんいただきますと、経済成長と労働参加が進むケース、ケースIからIIIということですが、これでは、マクロ経済スライド終了時に所得代替率は50%以上を維持と。それから、2つ目のポツでありますけれども、新規裁定時の年金額は、モデル年金ベースでは物価上昇分は割り引いても増加ということになっております。
こうした状況で、下に矢印で書いておりますが、得られる示唆といたしまして、経済成長と労働参加を促進することが、年金の水準確保のためにも重要ということであります。
右側はオプション試算AとBと書いてありますが、大きくは2通りのオプション試算を行っておりまして、オプション試算Aは被用者保険のさらなる適用拡大ということでありまして、下に矢印を描いておりますが、適用拡大は、所得代替率や基礎年金の水準確保に効果が大きいという結果が一つ。それから、オプションBにつきましては、基本的には保険料拠出期間の延長でありますとか、受給開始時期の選択といったことを、内容はいろいろあるわけなのですが、試算をしているわけなのですが、下の矢印に描いてあるとおり、就労期間・加入期間を延長することでありますとか、繰り下げ受給を選択することは、年金の水準確保に効果が大きい。そういうことになっております。
基本的にこの全体の見取り図といいますか、全体の大きな結果の概要につきましては、前回平成26年の財政検証と大体は同じような感じになっている。そういうことかと思います。前回の検証結果を5年たって改めて確認した面があるということかと思います。
以下、資料2-1以下に基づきまして、具体的な結果を御報告したいと思います。
まず、資料2-1でございますが、2ページ目には「財政検証について」と書いております。これは2004年の年金改正の年金財政のフレームワークを書いていると。それから、財政検証につきまして、中ほどに書いております。それから、所得代替率について一番下に書いています。
3ページは、その法律の規定を書いております。
4ページ、令和元年財政検証の諸前提ということでありまして、上半分は制度についての前提でありまして、基本的には現在想定されているといいますか、制度として動かすということが決まっているものは制度として織り込んでいるということを書いております。
下半分が社会・経済に関する主な前提ということで、人口の前提、労働力の前提、経済の前提、その他、実績のデータに基づき設定といったことになっております。
5ページ目が人口の前提なのですけれども、ここからは大変恐縮なのですが、資料1を1枚めくっていただきまして、資料1の2ページ目も横に置いていただきながらごらんいただければと思います。
5ページ目は人口の前提になっておりまして、合計特殊出生率及び死亡率につきまして、中位、高位、低位の3通りをそれぞれ設定されているというのが、2017年の「日本の将来推計人口」の推計ということになっております。
この出生率は中位推計で見ますと、2065年に1.44程度となっておりまして、先ほど横に置いていただきました資料1の2ページ目などをごらんいただきますと、水色のところに前回の推計との比較を書いておりますが、前回の推計では2060年に1.35程度というのが中位推計でしたので、それに比べると、出生率は向上という状況になっているということでございます。
右側、平均寿命でございますが、中位で見ますと、2065年に男性で84.95年、女性で91.35年ということになっておりますが、これにつきましては、先ほどの資料1の2ページ目にありますとおり、平均寿命は伸長ということになっているということであります。
5ページ目には書いておりませんが、資料1に書いてありますとおり、高齢化率として見ますと、前回推計では2065年ごろに40.4%になる見通しであったものが、今回の人口推計では2065年に38.4%になる見込みになっているということでございます。
次が、労働力の見通しでございますけれども、左側が労働力率で、右側が就業率で、上が男性で、下が女性なのですが、青い線が「経済成長と労働参加が進むケース」、緑の点線が「経済成長と労働参加が一定程度進むケース」、赤い点線が「経済成長と労働参加が進まないケース」ということで、独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計値となっております。
これにつきましても、先ほどの資料1の2ページ目をごらんいただきますと、15歳以上全体で見た就業率、労働参加とここでは表現しておりますが、就業率は前回推計では2030年までの推計値で58.4%だったものが、今回は2040年までの推計が行われておりまして、60.9%ということで、労働参加は進展、そのような前提になっているということでございます。
7ページ目、人口と労働力率の掛け合わせをした結果として見た労働力人口でありますとか、65歳以上人口の推移ということでありますが、青い線で前回の財政検証のラインを描いておりますけれども、これに対して今回の黒いラインというのは、65歳以上人口も長期的には多く推移すると推計されていますけれども、労働力人口なども上方に推計されているということでございます。
8ページ目、経済の前提でございますが、これは先ほど御説明したとおりでありますし、経済前提につきましては、前回御報告をしたとおりでございます。下に設定イメージということで、内閣府の成長実現ケースにつながって、ケースI、II、IIIということで経済成長と労働参加が進むケース、内閣府のベースラインケースにつなぐ形で経済成長と労働参加が一定程度進むケースのケースIVとVと、進まないケースのケースVIといった形で設定しているということでございます。
これらにつきましては、先ほどの資料1の2ページ目にありますとおり、全体としては、前回推計よりは控え目に設定となっているということでございます。
9ページは、3月に御報告した資料の中にも含まれておりますけれども、実績ベースで見たTFP上昇率の仮定で、左側は過去の実績をどの程度カバーしているかということでございます。例えばケースIIIであれば、過去の実績を大体6割カバーするということになっていると。右側は過去の平均水準とどのような関係にあるかということで、例えば過去20年ぐらいの平均であれば0.8%ぐらいであったということを確認しているということであります。
10ページ目、具体的な長期の経済前提で、下のほうに前回の財政検証との比較を書いております。
11ページ目、これも先ほどごらんいただきました、足元の経済前提ということでございます。
12ページ目、ここからが結果になりますけれども、今回、財政検証の結果といたしまして、財政検証のための物差しとして用いられるモデルによって、2019年度の所得代替率が61.7%ということなのですが、調整終了時になりますと、ケースIからIIIで、それぞれ調整終了年度が、その右側に2046年度とか2047年度と書いてありますが、調整終了時の所得代替率が51.9%から50.8%ということになっております。
財政検証の役割といたしまして、次の財政検証までに50%を下回ると見込まれる場合には、所要の措置を講じるということがあるわけなのですが、真ん中に「2024年度」と書いておりますが、2024年度の所得代替率につきましては、ケースIからVI、全てについて60%以上という状況になっているので、現在はそういう状況ということであります。
13ページ、もう少し詳しい結果なのですが、これは先ほどごらんいただきました資料1の3ページ目を横に置いてあわせてごらんいただきますと、13ページ目のケースIからIIIの所得代替率が51.9%から50.8%であるというのは、今、申し上げたとおりでありまして、調整終了年度の基礎と比例、それぞれについて、さらに右側に書いているということでございます。
一番上のケースIの比例の調整なしというのは、ケースIの場合は報酬比例部分といいますか、厚生年金につきましては、マクロ経済スライドの調整を行う必要がなく財政均衡する結果になっているということでございます。
ケースIVとVにつきましては、それぞれ2044年とか2043年に代替率50%に達しまして、法律上の規定では、50%に達することが見込まれるときには、所要の措置を講じるわけなのですが、さらにその先、機械的に給付水準調整を続けていくと、それぞれ46.5%から44.5%ぐらいまで水準調整を続ければ、100年間の財政均衡が図られるということになっています。
ケースVIにつきましては、水準調整を続けていくと、2043年度に代替率50%に達しまして、さらに水準調整を続けていきましても、国民年金が2052年度に積立金がなくなって完全な賦課方式に移行する。その後、賦課方式のもとで保険料と国庫負担で賄うことができる給付水準は、所得代替率38%から36%程度という見通しになっているということでございます。
先ほどの資料1の3ページ目には、各ケースの右側に、前回の2014年の財政検証の結果がそれぞれケースAからE、FからG、Hと分けて書いておりますが、基本的に見比べていただきますと、前回の財政検証と同じような結果、それほど変わらない結果になっているということが言えるかと思います。
14ページから19ページまでは、実際の年金額の水準を見たものでございます。それぞれケースI、IIなどとなっております。例えば14ページでごらんいただきますと、ピンク色の棒グラフが現役男子の手取り収入ということで、緑色の棒グラフが夫婦の年金額ということで、下の段が夫婦の2人分の基礎年金、上の段がモデル年金なので40年加入の片働き前提なのですが、夫の厚生年金ということになっております。
これは名目額を物価で割り戻した実質的な価値ということで表示をしておりますけれども、ケースIでありますとかケースIIは、基本的には賃金も上昇し、年金額も上昇していくということになります。そのうちの基礎年金の部分につきましても上昇していくということになります。
ケースIIIにつきましても、基本的には物価で割り戻した年金の水準、年金額は上昇していくということになっております。基礎年金につきましては、2019年に夫婦で13万というのが、2047年に12.4万ということなので、ほぼ横ばいか微減になっております。
17ページ、18ページは、経済成長と労働参加が一定程度進むケースでありますけれども、17ページは、モデル年金ベースでは物価上昇分を割り引いてもおおむね横ばいと。18ページは、ケースVでございますけれども、モデル年金ベースでは物価上昇分を割り引いて微減ということになっている。
19ページ、ケースⅥでありまして、モデル年金ベースで物価上昇分を割り引くとやや減少という結果になっているということでございます。
20ページ、これまでの推計は基本的に人口推計の出生中位、死亡中位の推計で行われた結果でございますが、これは前回の財政検証でも行っておりますが、出生率の前提が変化した場合と死亡率の前提が変化した場合ということの試算を行っているということでございます。
左が出生率の前提が変化した場合ということでありまして、出生中位から出生高位になりますと、給付水準調整終了年度が前のほうに行きまして、給付水準調整終了後の所得代替率が+2%~+4%上昇すると。
一方で、出生が低位になりますと、給付水準調整の終了年度が後ろのほうに行きまして、調整終了後の所得代替率が▲3%~▲5%となるという結果になっております。
一方で、死亡率の前提が変化した場合ということでございまして、右側の死亡高位のほう、死亡高位ということで寿命の延びが小さいということですが、調整期間が短くなりまして、所得代替率が+2%~+3%上昇と。
死亡低位の場合は、寿命の延びが大きいということになりまして、調整期間が延びまして、所得代替率も2~3%減少ということになっております。
それを詳しい表にしたものが、21ページでございます。
22ページでございますけれども、これは所得代替率の見通しの前回の財政検証からの変化ということで、ケースIからIIIで見ております。3段書きになっておりまして、大きく一番上が所得代替率で、報酬比例部分プラス基礎年金2人分、真ん中がその内訳の報酬比例部分で、下が基礎年金部分となっていて、それぞれさらにその中が3段書きになっておりまして、2004年の財政検証結果、その次が2014年、一番下が2019年ということになっております。
2004年の財政検証のときには、厚生年金部分も基礎年金部分も、おおむね19年間の給付水準期間の調整が見通されていたわけなのですが、最近の財政検証の傾向として、基礎年金の水準調整の期間が上昇、一方で、厚生年金が低下となっているということでございます。基本的には、基礎年金がなかなか2004年の改正以降、マクロ経済スライドの発動が行われなかったことなどで、足元で、例えば2014年の基礎年金のところだと、2004年のときに33.7%であった所得代替率が、2014年の財政検証のときには36.8%ということで、高止まるといいますか、上昇したことが背景にあるということでございます。
今回は、前回から今回までの間にマクロ経済スライドが2回、キャリーオーバーを入れると3回分発動されていることもありまして、足元の基礎年金の所得代替率が若干低下といったことがありまして、どんどん基礎年金の調整期間が先に行くといったようなことは一定程度抑制されている面があるかと見ております。
23ページ目、2014年の財政検証と2019年財政検証の諸前提の比較ということでありまして、縦に2014年と2019年と書いておりますが、基本的には足元の実績などは2014年検証において見通されていた2014年から2017年なり2018年までの状況で、それと2019年検証のときの足元の状況、実績の状況といったものが、足元の実績でございます。
これを見ますと、雇用状況が良好といったことなどもありまして、被保険者数は増加、それから、物価上昇率でありますとか、実質賃金上昇率は低目、スプレッド(賃金上昇率を上回る運用利回り)につきましては、実績のほうがかなり上回っているというのが、足元の状況ということであります。
つまり、いろいろな年金財政にとってプラスの影響を及ぼす要素とか、マイナスの影響を及ぼす要素などが経済前提の中でもいろいろある、そのように変動しているということかと思います。
将来の仮定につきましては、出生率や平均寿命につきましては、先ほど申し上げたとおりでありまして、就業率、それから、経済要素につきましては、先ほど申し上げたとおり、経済要素は全体的に慎重目な設定となっております。
以上が財政検証の結果でございまして、続きまして、3-1に基づきまして、オプション試算の結果について御報告をいたします。
2ページ目、オプション試算の内容をここに書いております。オプションAが被用者保険のさらなる適用拡大で、オプションBが保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択ということになっておりますが、具体的には3ページ以降の内容の説明で対応したいと思います。
一番下に「参考試算」と書いておりますけれども、これは2016年の年金改革法によって年金額改定のルールが改正されて、その効果を確認するというのが一つの課題になっておりましたので、それに対応したものということでございます。
まず、被用者保険のさらなる適用拡大でございますが、4ページをごらんいただけますでしょうか。これがオプション試算A全体の見取り図といいますか、状況になっておりまして、雇用者全体が5700万人程度と見込まれるわけなのですが、厚生年金の被保険者、フルタイムの方が4400万人ぐらいというのが今の状況と。さらに、2018年10月から施行されています短時間被保険者ということで、20時間から30時間の就業をされる方で、企業規模501人以上、月の賃金は8.8万円以上という方が大体40万というのが、今の厚生年金の適用の状況ということであります。
このオプションの試算は、20時間から30時間のところにつきまして、まず、企業規模の501人要件を撤廃したらというのがマル1でございます。対象者が125万人になるということであります。
その次、オプションの2つ目でありますが、マル2としましては、さらに月収要件も適用しないということにしたら、マル1の125万人も含めて、325万人が対象になるということでございます。
オプションのマル3としましては、一定以上の収入のある方全員に適用したらということで、これは右のほうに書いてありますけれども、1050万人適用になるということをオプションのマル1、マル2、マル3としております。
5ページ目、オプションA-マル1ということで、被用者保険のさらなる適用拡大を行った場合で、125万人ベースということになります。この場合、ケースI、III、Vを表示しておりますけれども、現行の仕組み、これが先ほどごらんいただいた水準調整終了後の所得代替率でありますが、ケースIで51.9%などとなっておりますが、これが125万人を適用拡大すると、おおむね0.5%から、ケースVだと0.4%ぐらい、最終的な所得代替率が上昇する見通しになっているということでございます。
この場合、特に上昇幅が顕著なのは基礎年金部分でありまして、基礎年金部分が基本的に上昇する形で、全体的な所得代替率が上昇するという見通しでございます。
6ページ目、325万人ベースで適用拡大を行った場合ということで、この場合は、青い矢印の中に書いてありますとおり、0.8%から1.1%程度、1.1%前後所得代替率が上昇するということで、基本的には基礎年金部分の所得代替率が上昇するということは、先ほどと同じでございます。
7ページ目、これは1050万人に適用しますと、所得代替率の上昇が4.3%から4.8%ぐらいということになりまして、これにつきましても基礎年金部分の所得代替率がかなり大きく上昇する。そのような効果があるという計算結果になっております。
8ページ目、適用拡大による被保険者数への影響を表にしたものでありまして、9ページ目は、適用状況別の平均加入期間の見通しが、適用拡大によってどのようになるかを整理したものでございます。
11ページ目以降が、オプションBといたしまして、保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択ということでございます。(1)から(4)までありますけれども、国民年金の被保険者期間を、現在は20歳から59歳までが加入なのですけれども、これを65歳に延長したらどうかというのが(1)でありまして、これは前回、平成26年の財政検証におきましても、同様の試算をしているということでございます。
(2)(3)あたりというのは、前回は行っていなかったものでございますが、(2)は厚生年金の被保険者ということで、現在、厚生年金の加入は70歳までとなっておりますが、これをさらに75歳に延長したらどうかということでございます。(3)は受給開始時期の選択でございまして、現在、繰り下げは70歳までですが、これを75歳に延長したらどうかということでございます。
(4)在職老齢年金につきまして、特に65歳以上のところの在職老齢年金につきまして、現在、賃金と年金とを合わせまして月額47万円を超えると調整が始まるわけなのですが、その47万円という基準を緩和なり廃止なりしたらどうなるかといったことであります。
右上のほうに、赤い点々で囲っておりますが、オプションB-マル5としまして、全部やった場合も試算しております。具体的に御説明をしていきますが、12ページ目は繰り下げによる効果のようなものを絵にしたものでございます。基本的には拠出期間を延ばして繰り下げますと、繰り下げ受給による増分、ピンクの矢印分と、上に出ている矢印分と、拠出期間が延長したことによる増分、緑色の矢印が上に出ていますが、そういう形で毎年の年金が増加するという仕組みでございます。
13ページ、在職の支給停止と繰り下げの関係でございますけれども、在職老齢年金の調整によりまして支給停止が行われますと、その部分は繰り下げましても、繰り下げ増額の対象にならないといったことを示しております。
14ページ、まず1つ目で、基礎年金の保険料拠出期間を延長した場合ということでございます。そういたしますと、拠出しまして、現在の左側にある現行の仕組みというのは、基本的には40年加入の前提の先ほどごらんいただいた所得代替率なのですが、これは基礎年金の拠出期間を45年にしまして、あわせて厚生年金も45年拠出したとしますと、所得代替率がそれぞれケースI、III、Vで6.4%から6.9%ぐらい上昇する見通しになっております。基本的には40分の45倍くらいになるということになります。
参考としまして、基礎年金40年拠出で厚生年金45年拠出の所得代替率を右側に書いております。
15ページ、基礎年金の拠出期間を延長した場合、そのような形で制度的に加入期間を延ばしますと、基礎年金に係る2分の1の国庫負担分も増加いたしますので、国庫負担の見通しなどをまとめております。
これを見ますと、基礎年金国庫負担が、右から2列目が現行制度で、一番右がオプションB-マル1と書いていますが、例えば制度がおおむね成熟すると思われる2063年ごろを見ますと、現行制度だと現在の価格ベースで8.5兆円のものが、オプションB-マル1だと9.7兆円ということで、1.2兆円程度国庫負担が増加することになるという見通しになっております。
16ページ、これは65歳以上の在職老齢年金を見直した場合ということで、65歳以上の在職老齢年金、今、在職で年金受給者の2割ぐらいが該当していると思われるわけなのですけれども、停止額は大体4000億円というのが、現在の足元の状況でありますが、一番右側の高在老の撤廃というのは、それをもうやめた場合ということであります。支給停止をしないと。その左側の(1)給付調整の基準額の引き上げというのは、現在の基準額の47万円を62万円まで引き上げてはどうかということであります。この場合、左側の現行制度から、これまで支給停止にされていた部分について支給を行うということなので、基本的には給付が増加するということで、マクロ経済スライドの調整期間が延びていく形になりまして、それで最終的な所得代替率が若干下がる結果になります。
例えばケースIIIとかケースIVとかで見ますと、高在老を撤廃すると、最終的な所得代替率が0.4%程度小さくなるということになります。
(1)のように47万円から62万円、62万円というのは現在の報酬のほぼ上限であるということと、62万円ということであれば停止の該当者、一部停止も含めて10%ぐらいということだと見込まれるのですが、それぐらいにすると影響としては半分ぐらい、所得代替率の低下が0.2%程度ということになるという試算を行っております。
先ほど足元の支給停止額を申し上げましたが、囲みの中に各年度の支給停止額を参考として表示しております。
17ページ、今度は厚生年金の加入年齢を70歳から75歳に延長した場合ということでございます。現行の仕組みから厚生年金の加入期間の延長をしますと、基礎年金のところは影響がないわけなのですが、報酬比例部分のところの所得代替率が若干上昇する。支え手が増加するといった効果がありまして、若干上昇する。0.2~0.3%の上昇となっております。
18ページ、これは就労期間の延長と受給開始時期の選択肢の拡大なので、主に繰り下げがテーマになるわけなのですけれども、基本的には現行制度なのですが、基礎年金は40年拠出ですし、在職老齢年金の支給停止の調整なども当然ある前提で、ただ、繰り下げ可能年齢を75歳まで延長していったらどういうふうになるか。そういうことを見たものでございます。
3本グラフが立っていて、経済前提ケースI、III、Vと書いてありますが、一番左が65歳まで働いて受給開始をした場合ということなので、基本的に基礎年金部分は40年拠出で、厚生年金部分は45年拠出という、そのときの所得代替率ということになりますが、これが70歳まで働いて受給開始をすると、ピンク色の部分が繰り下げることによる増額、緑色の部分が、65歳から70歳までの拠出期間による増額ということになるということであります。
繰り下げ増分のところに、白い点々の囲みがありますけれども、これは上の囲みの解説の中の下から2行目の真ん中より右側のほうで、今の在職老齢年金の47万円という基準額だと、モデル年金で報酬比例部分の3割ぐらいが支給停止になる。そういうことになりますので、一定の支給停止がかかる前提で書いているということであります。仮に支給停止がなかったら、点々で囲ったような所得代替率の上昇幅になるということであります。
さらに、これを75歳まで働いて受給開始ということで、今回、65歳から70歳までの繰り下げ増額率は月0.7%、5年間で42%ということなわけなのですが、70歳から75歳のところにつきましては、今回の財政検証では仮にということで、同じ率を仮定して推計しているということであります。なので、65歳から75歳まで繰り下げれば、基本的には増額率は84%になるという前提で計算しているということでございます。
それをごらんいただきますと、ピンクの部分がさらに大きくなって、ただ、緑の部分は、70歳以降は厚生年金への拠出はないという前提なので、70歳まで働いていた場合と同じ大きさになっているということでございます。
19ページは、それをさまざま一覧表にしたものでございます。
20ページは、オプションB-マル5ということで、今度は先ほどのオプションBのマル1からマル3の制度改正を全て行う。基礎年金は45年加入できますし、厚生年金は75歳まで加入できますし、在職老齢年金の支給停止はないといいますか、考えないといった前提で考えますと、さらにそもそもの65歳まで働いて受給開始をした場合というのが、基礎年金を含めて45年拠出のモデルになりますので、上昇いたしまして、70歳まで働いて受給開始をした場合に繰り下げ増額分はごらんのようになりますし、75歳まで働いて受給した場合には繰り下げ増額分がさらに大きくなり、かつ、拠出期間の延長分、緑の部分も大きくなるということで、所得代替率が100を超えてくるといった状況になるということでございます。
21ページは、それを表にしたものでございます。
今回、オプションAとオプションBの組み合わせなども行っておりまして、22ページ目以降ですが、23ページ目はオプションA-マル2、適用拡大325万人ベースと、オプションBのマル1からマル3の制度改正を全て行いますと、23ページでごらんいただけますように、所得代替率が7.1%から7.7%上昇すると。
24ページ目、今度は適用拡大の1050万人ベースにしますと、所得代替率が10.4%から11.1%程度上昇することになっております。
25ページ目以降が参考試算ということでございまして、2016年年金改革法による年金額改定ルールの確認でございます。
26ページ目、この試算をするに当たりまして、経済の変動を仮定しなければいけないということで、これは専門委員会の報告書の中に含まれておりますけれども、専門委員会のほうでいろいろ御検討いただきまして、26ページ目のような経済の変動を置いたということでございます。
そういう前提のもとで、27ページが、まず賃金変動に合わせて改定する考え方を徹底するという改正を行ったわけなのですが、その改正の影響を見るということで、左が現行の仕組みということなのですが、経済変動を見込んだ分、先ほど財政検証の結果としてごらんいただいた所得代替率とは若干違うものになっております。それが現在の仕組みがあって、現在の仕組みは既に2016年年金改革法後の姿なのですが、それで仮に賃金・物価スライドの見直しを行わなかった場合にはどうなるかということで、ケースIIIからケースVにありますとおり、改正の効果としましては、将来の所得代替率を引き上げる効果があったということが確認されたということでございます。
28ページ目、そういったことを絵にしたもので、29ページ目は、マクロ経済スライドのキャリーオーバーの仕組みを行わなかった場合にどうなるかということで、これは左の現行の仕組みは先ほどと同じなのですが、真ん中のキャリーオーバーを行わなかった場合ということで、その改正の効果につきましては、やはりプラスということでありまして、キャリーオーバーの仕組みによりまして、将来の所得代替率を上昇させる効果があったということでございます。
なお、参考までに、一番右のほうに、マクロ経済スライドによる調整がフル発動される仕組みの場合をあわせて参考でお示しをしております。
以上がオプションの結果の内容でございます。
資料4に基づきまして、関連資料の中で幾つか御説明をしたいと思います。
資料4の表紙の中に5つ書いております。この5つの中の下の2つ、生年度別に見た年金受給後の年金額の見通しでありますとか、公的年金の給付と財源の内訳など、これまでも作成して公表してきたものでございます。上の3つが今回新たにといいますか、作成をしたような面があるということでございます。
めくっていただきまして、まず経済成長と年金財政なのですけれども、3ページ目は2004年のフレームであります。
4ページ目、「マクロ経済スライド」について、わかりやすい絵解きがあったほうがよいかということで作成したものでございます。これはその仕組みを解説したものでありますけれども、基本的には年金額の改定率は、図の左側の青い太い矢印のように、賃金や物価の上昇に応じて改定されていくことになります。これからスライド調整率、これは被保険者の減少分と平均余命の延び分、平均余命の延び分は0.3%ということになっていますが、これらを差し引いたもので改定するので、実際には濃い青い矢印が年金額の改定率ということになるわけであります。
これは、マクロ経済スライド自体の意義などもありますし、さらに、例えば賃金が右の矢印のように上昇しますと、賃金の上昇によって年金額の改定というのも大きくなりますし、かつ、マクロ経済スライドによる調整率が小さくなれば、これはまさに現在起きている現象なのですけれども、支え手が増加することによって被保険者の減少分が緩和といいますか、減少の程度が小さくなればオレンジの調整率も小さくなっていくという構造になっておりますので、基本的にはその分年金額も増加するということなので、冒頭ご説明したとおり、年金財政全体にとって経済成長と支え手の増加が重要ということなのですけれども、これは個々の年金の水準について見ても、経済成長とか支え手の増加は非常に大きな要因になるということであります。
5ページ目、国民経済と公的年金の財源の整理をしたものであります。基本的には厚生年金の報酬などを増やしていくといったことで、財源を増やすということで、下にシーソーの絵が描いてありますけれども、財源が増やせれば年金給付も増えていくという構造になっております。
6ページ目、これは公的年金の左側の緑が年金給付費の対GDP比、真ん中がそれに対応する保険料負担の対GDP比で、右側が国庫負担の対GDP比でございます。2019年から2060年までを表示しておりますけれども、ごらんいただいておりますように、若干減っているように見えるときもあるということなのですが、基本的には横ばいと見ております。かつては高齢化に伴う社会保障の課題、一般的な課題と同じように年金についても基本的には高齢化による給付増にどう対応するかといった、昔はそのようなことが課題だったわけなのですが、2004年改正以降、現在の課題というのは、2つ目の○に書いておりますけれども、高齢化に伴う給付増の抑制という課題ではなくて、基本的には固定された負担水準のもとで支え手を増やすことなどによって国民生活の安心と安定に寄与できる給付をいかに確保していくかというのが、これからの年金制度の課題であるというのを確認したいということでございます。
7ページ目、足元の所得代替率を確保するために必要な受給開始時期の選択ということでございまして、スウェーデンのオレンジレポートと呼ばれているものなどを参考にいたしました。8ページ目の2つ目の○に書いておりますけれども、就労期間の延長によって所得代替率の低下を防ぐことは可能なわけなので、9ページ目が試算をした結果でございますが、これはケースIIIで表示をしておりますけれども、一番左が現在65歳の方のモデル年金、40年拠出で、所得代替率が61.7%ということになるわけなのですが、現在、20歳の方のモデル年金は、所得代替率が大体50.8%まで調整が進むことになっております。
他方で、平均受給期間は現在の65歳の方が22年4カ月ということに対して、25年3カ月ということで、そもそも延びるわけではあるのですけれども、所得代替率が低下するということがあります。
ただ、これを就労延長と受給期間を少し遅らせることによってどうなるかということで、右側の緑で囲ってあるところの左側が現行制度でございますが、現行制度で受給開始時期を66歳9カ月、66歳9カ月まで拠出をして受給を開始すれば、現行制度のもとでも所得代替率が61.7%を確保でき、この場合、受給期間は23年6カ月ということになるということでございます。
さらに右側のオプションB-マル5、つまり、オプションBに掲げた改定を全て行った場合ということであれば、終了と受給開始時期を65歳10カ月ということで設定すれば所得代替率61.7%となり、受給期間も24年5カ月ということになるということでございます。
10ページ、11ページは、そういったことを計数として整理したものでございます。
多様な世帯類型における所得代替率について整理が必要ではないかといったことも課題になっておりました。13ページでありますとか、14ページでありますとか、15ページでありますとか、これまでも作成してお示ししてきたものなのですけれども、例えば13ページでごらんいただけますように改めてもう一度確認をしておきますと、我が国の公的年金制度は基本的に世帯類型がどうかということで所得代替率とか年金水準が決まるということではなく、共働きなのか、片働きなのか、それはもういろいろある中で、世帯の1人当たり賃金水準が同じであれば年金水準も同じであり、かつ、所得代替率も同じになる。なので、2人世帯と単身世帯と比べても、1人分の賃金が同じであれば年金額も所得代替率も同じであるという仕組みであるということであります。
なので、多様な世帯ごとの所得代替率みたいなモデルはなかなか難しい面はあるのですが、視点を変えまして、例えば15ページでございますけれども、この図自体はこれまでも作成してごらんいただいてきたものなのですけれども、横軸が世帯2人の賃金水準ということで、20万円から80万円となっておりますが、基本的に賃金が上昇すれば、赤い線の年金月額は当然上昇いたします。他方で、所得代替率につきましては、賃金水準が低いほど高く、賃金水準が高いほど所得代替率は低目になる。これは基礎年金が所得再分配効果を有しているので、このようなことになるということでございます。
真ん中の点々のところに40万円を少し超えるところに「モデル年金」と書いておりますが、賃金43.9万円ということで、今のモデルは法律の要請もありますので、片働きの40年加入、一方で専業主婦というモデルを設定してはいるのですが、これはそうではなくて、例えば共働きで世帯の水準が43.9万円ということであっても、1人当たり21.9万円ずつの賃金であったとしても、実際には同じ年金水準であり、同じ所得代替率になるということでございます。
その下の世帯のマル1からマル5とブルーの矢印を描いておりますが、これは次のページをごらんいただきますと、今回、国民生活基礎調査を用いた分析ということで実績データを分析したものなのですが、上の表頭の世帯マル1からマル5が、先ほどごらんいただいた世帯マル1からマル5に対応しておりまして、要するに、世帯の賃金水準で表を整理しているということでございます。一番上が賃金水準で、世帯マル3は薄くブルーで塗っておりますが、これがモデル年金に近い世帯ということになります。上から2段目に賃金があって、年金月額があって、その下が所得代替率ということになるということであります。
これは何を示しているかといいますと、下のほうにデータがありますが「夫婦世帯の世帯構成」とか「単身世帯の世帯構成」などと書いてありますが、さらにその中が夫婦世帯が共働きだったり、片働きだったり、ともに正規雇用だったり、正規雇用と正規雇用以外の組み合わせであったりとかいろいろあるわけなのですが、要するに、どの世帯の賃金水準といいますか、世帯マル1からマル5のそれぞれにいろいろな世帯があるということを確認しているということであります。
特徴、見方はいろいろあります。例えば、ともに正規雇用で就労した場合の割合が世帯マル5では高いとか、いろいろありますけれども、どの世帯の水準のところにも、いろいろな世帯があることを確認している。なので、基本的には世帯の賃金水準が年金を考える上では大事ということを示していると。
17ページ以降は、先ほどごらんいただいた図を将来の推計値でもって示しているということでございます。
20ページ以降は、生年度別に見た年金受給後の年金額の見通しということでありまして、これもこれまでもごらんいただいているものであります。例えば24ページにケースIIIのモデル年金と書いておりますけれども、下から2行目に、現在35歳の方でありますと、2049年に新しく年金を受け取り始めて、このときの代替率が50.8%ということになっています。裁定後は物価で年金額が改定されていくということなので、この金額の表示は物価で割り引いた現在価値ということでありますが、24.5万円という水準というのは、裁定後も変わらない。ただ、現役の賃金は上昇していく、実質賃金の上昇分だけ上昇していくということなので、その下に書いてある所得代替率は若干下がっていくということになります。
ただ、所得代替率につきましては、一番下の注4のところに、その年の新規裁定者の水準との乖離が2割となったら同じように賃金で改定していくということになっておりますので、下から2行目の場合には、2074年度につきましては年金額が25.7万円ということで、ちょっと上がっていると。このときの所得代替率がそのときの所得代替率の8割水準ということで、以降はこれがキープされることを前提に、今回も財政検証をしているということでございます。
最後でございますけれども、28ページ目、公的年金の給付と財源の内訳ということで、これもこれまで作ってきているものなのですが、例えば33ページをごらんいただきますと、これは横が時間軸でありまして、左が財源構成割合で、右が給付の発生状況といいますか、それを表示したものなのですけれども、左の財源構成で、基本的にはいろいろな財源を組み合わせながら給付を賄っていくのですが、足元のほうでは積立金から得られる財源を使わなくてもよいということで、積立金を積み立てるステージがあったり、あるいは、将来的には積立金から得られる財源、これは利息でありますとか、積立金を使っていくということでありますが、基本的にはそういう組み合わせでやっていくと。
ただ、大部分は、今後の給付は保険料や国庫負担で賄われるということが確認されまして、例えば24ページでございますが、これはそれを運用利回りによって現在価値といいますか、一時金に換算したものでありますけれども、色は先ほどのグラフと大体対応しているのですけれども、左は財源の構成割合で、右が給付の状況ということで、現在価値、一時金化して2400兆円の財源の中で、積立金の部分は210兆円ということで、1割ぐらいと。これは過去からずっとこれぐらいの感じなのですが、こういうふうに推移しているということでありますとか、右側の給付が過去分とか将来分とかになっておりますが、積立方式に切りかえるとした場合に必要な処理すべき金額、二重の負担などが大体780兆円とここから計算されるといったことが表示されているということでございます。
長くなりましたが、以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。今回の財政検証の結果につきまして、御説明をいただきました。
それでは、委員の皆様方から御議論を頂戴したいと思いますが、ただいま御報告をいただきました財政検証の結果に対する御質問、さらには御意見、また、オプション試算をしていただいていますので、オプション試算を踏まえた次期制度改革に対するお考えなど、御自由に御発言を頂戴できればと思います。
牧原委員、どうぞ。
○牧原委員 丁寧な説明、ありがとうございます。
基本的に経済成長と労働参加が進むケースでは所得代替率50%を維持する、前回の財政検証と同じぐらいのことを想定した財政検証であったと理解をしています。さらに、マクロ経済スライドのキャリーオーバーや出生率の改善によって、最終的な落着については改善傾向も見られるという財政検証であったと理解しました。
質問なのですけれども、資料4の33ページ以降で、賃金上昇率と運用利回りで現在価値に置き直すという試算がありました。これは従来から載せられているということなのですけれども、給付の部分の過去期間に係る部分と将来期間に係る部分について、賃金上昇率で割り戻した場合と運用利回りで現在価値にした場合で比率が変わってくるのはなぜなのか、考え方をもう少し御説明いただければというのが質問です。
オプション試算について、マクロ経済スライドについて資料3-1で試算がありました。キャリーオーバーが導入されることによって効果があったと確認できますし、将来の給付ということを考えると、落着の水準も向上している。特に基礎年金部分の向上が見られるということを考えると、マクロ経済スライドの有効性はもう少し理解されるべきであると思いました。あわせて、フル発動をした場合については明らかに効果が出ておりますので、その辺もオプション試算の中であったということを理解すべきであると思いました。
これまでの年金部会で、基礎年金部分の拠出期間の延長について、年齢別の人員構成をもう少し細かく配慮すべきではないかということで、オプション試算のところでも依頼を申し上げました。
具体的には、60歳から65歳までで働いている方の割合は大きく違うと思っております。65歳時点での就業率というのが、今、どのぐらいなのかわかりませんけれども、先ほどの資料で労働参加率が進まないケースで55%とかという話がありましたが、実感として考えると、今、63歳以降の就業率はそれに近い水準なのではないでしょうか。そういった現在の実態をベースに考えたときに、65歳での国民年金の加入状況については、試算する上での考え方というのもあると思います。
具体的に言えば、例えば就業率が55%だとすると、45%は就業していないわけで、その人たちは国民年金に加入するのか、本当に国民年金の保険料を払えるのかどうかということは試算の上では問題になると考えられ、もし払えないということであれば、財政上はプラスになるとはとても思えません。あわせて、就業が進まない場合は、例えば繰り上げ支給を選択するということもあり得るでしょう。こうした場合については、年金の支給額そのものが下がってくることも考えられます。もし65歳に引き上げるというときには、相当のいろいろなことを考えていかなければいけません。
働き手側の問題もありますし、企業サイドとしても、受け入れポジションをつくらなければいけないということもあります。もちろん、高齢者を活用していかなければいけないというのは日本経済上必要なのですけれども、あわせて退職金制度や年金制度について検討する必要が出てきます。そういう意味で、きちんと課題を踏まえた上で、このオプション試算を読むべきではないかと思いました。
在職老齢年金制度の廃止については、今回の試算の結果として、所得代替率が低下するということが出ております。一部の在職老齢年金の対象になる層は限定されるわけですから、そうすると、そこの層については確かに解決にはなるのですけれども、それ以外の層については支給額が減少するという結果も現実に生じることを考える必要があります。在職老齢年金制度を廃止する場合について、給付のあり方について考えていかなければ、今の負担を前提にした場合については問題になると感じております。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
第1点の質問の問題と、3番目、4番目の点についても、コメントがあればいただければと思います。
○数理課長 1つ目なのですが、先ほどの資料4の33ページをごらんいただくのがわかりやすいかなと思います。比率にしていますけれども、実際にはそれぞれに対応する給付の額みたいなものがあるわけなのですけれども、過去期間に係る分というのは、この2019年以前の加入期間に係る分ということなので、それで将来支払われる年金ということなので、今の受給者の方とか、今の加入者のこれまでの加入期間分みたいなイメージで、将来期間はこれからの加入期間に対する年金の給付ということになって、それがこの時系列、2020年からずっとその先の見通しがあるわけなのです。
要するに、これを何で割り引かないといけないと決まっているものはないと思うのですが、よく一般的に使う運用利回りで割り引いてみたり、賃金上昇率で割り引いてみたりしたということで、例えば1年後だと1年分割り引きますし、10年後だと10年分割り引きますので、割引率の違いによって両者の現在価値というか、一時金価値にしたときのバランス感は若干違ってくるということだと思います。
マル3の基礎年金を45年加入にした場合の加入状況といったことでありますけれども、基礎年金を65歳支給にする場合につきましては、新しく保険料を払う方々がどのように納付されるかといった仮定は当然置かないといけなくて、今の高齢期の納付状況がそのまま大体同じようになるという仮定を置いて、今回計算をしているということであります。なので、それが制度を変更したことによって変化したりとか、今後何か別の違った要因で変化したりとか、そういったところまでは織り込んだりはしていない。最近の状況を見ながら、仮定を置いて推計をしたということでございます。
○神野部会長 牧原委員、よろしいですか。何かあれば。
○牧原委員 先ほどの1番目の話なのですけれども、賃金上昇率と運用利回りの割合で、確かに例えば33ページだと1.2%と1.7%で、数字が運用利回りのほうが大きいので、現在価値にした場合に全体の数字が下がるということを理解しますが、過去期間部分と将来期間部分の割合が何で変わるのでしょうか。
○数理課長 説明が足りず申しわけございません。33ページ、右側の図なのですが、過去期間に係る分というのはこれまでの加入期間分なので、近いところで支払われる、手前のほうにたくさんある。将来期間に係る分というのはピンク色なのですが、遠いところにあるということなので、近くにあるか、遠くにあるかによって、割引のきき方の違いが生じるということだと御理解いただければと思います。
○牧原委員 わかりました。
○神野部会長 お待たせしました。出口委員、お願いします。
○出口委員 本当に丁寧に説明していただいて、よくわかったのですが、要するに、年金問題の全てについて答えていただいたような感じで、もし私がこのレポートをまとめろと言われたら、たくさんあり過ぎてまとめるのが物すごくしんどい気がする。要するに、報告いただいた中で、何が幹で何か枝葉かということをまず考えていかないといけないと思ったのです。
私自身は、財政検証はあくまで将来予測ではなくプロジェクションなので、これによっていろいろな政策の選択肢を市民が考えるところに本願があると思うのです。そうであれば、今回の財政検証の一番大事なページはどこかといえば、資料3-1の24ページだと思うのです。
つまり、これを見たら、現行の仕組みの骨格を変えないでもいろいろな調整をやったら代替率が10%以上上がって、ケースIでは63、ケースVでも55に近い数字が出るわけですね。我々市民にとっては、今の年金制度の骨格を大きく変えないでも、いろいろと知恵を出せばこれだけ安心できるという、すごく大切なデータだと思うのです。
そうであれば、お聞きしたいのは、こういう改正を全部やるために、やろうとしたときに、何がデメリットで、何がネックになっているのかを一覧表で、一覧表でなくても例えば課長のお話で、このオプション試算Aとオプション試算Bをやろうとしたときに何がネックになるのかを普通の市民がわかるように御説明いただければ、すごく理解が進む気がするのです。私の判断は間違っているのかもしれませんが、私が聞いた限りでは、今回のこの財政検証の一番のポイントは、このページに尽きると思っていて、その点について、もしよければ、こういう改革をやるために何がネックになっているかを教えていただいたら、すごくわかりやすいと思うのです。
○神野部会長 これはどなたに。
○大臣官房審議官 では、私からお答えをさせていただきます。
オプション試算を大きく2つやっていますけれども、短時間労働の話も、高齢期の就業の話も、いろいろなセクターの方が実感しておられるかと思いますけれども、就労の形とか有様が、今日、かなり激変をしてきていると思います。今回のオプション試算の2つは、項目としては分かれますけれども、できるだけ変化する就労を年金制度に取り込むということと、できれば就労というものをプロモートできる、逆に言うと、ディスインセンティブにならないようにするということをどこまで制度的には織り込めるか。このような課題として、いろいろな選択のオプションがあって、それを入れ込んだらどうなるかを試算したものです。
確かに御指摘いただきましたように、経済成長や労働参加が余り進まないケースでは、5年前と同様に厳しい結果になっているとは思いますが、だからといって方策がないわけではなくて、いろいろ制度を見直すことによってリカバリーを打てる方法はあるのだということは提示できていると思います。
問題は、御指摘いただいたこういう改正をやろうとしたときに何がネックかというのは、これを材料にこの後具体的な制度改正の議論をしていくときに、またその辺も明らかにしていかなければいけないと思いますが、例えば短時間労働者の適用拡大であれば、厚生年金の適用ということですと、半分は事業主が負担を持たなければいけないという、事業主の負担を社会的にどういうふうにクリアしていくかというのは、これはずっと適用拡大の議論が始まって以来の大きな課題ということになると思います。
ただ、これもこれまでの年金部会の議論で御紹介してきたように、若干雇用をめぐる地合いは変わってきています。現在、適用拡大の懇談会をやっていて、その状況も御報告したいと思いますけれども、かなり今回の適用拡大に関して、部分的にパートの方は適用拡大になっているのですけれども、雇い主側は基本的には人手不足なので、できるだけ労働時間を減らさないでほしいというニュアンスのもとにかなり丁寧な説明を行ったりとか、あるいは保険料負担をしてもいいから労働力を確保したいというスタンスで臨まれたということも話に出てきています。その辺はそういう状況もあわせながらどういうふうに考えていくかということが課題になるかと思います。
2つ目の高齢期の話なのですが、今度は65歳が年金の支給開始年齢に2025年以降はなるということと、それにあわせて65歳までの継続雇用は社会的にはセッティングされておりますので、今、議論になっているのは65歳以降の雇用、どういうふうに就業機会をつくっていくかということが一つ課題になっておると思います。
ただ、これももちろんそのとおりいくかどうかというのはございますが、資料2-1の財政検証結果の6ページ目、今回、財政検証の前提にいたしましたJILPTさんの出しておられる「労働力需給の推計」、右側の就業率の将来推計というところで見ていただくとわかりますように、今、大体60代後半の就業率は50%台半ばという数字ですが、これが2040年には70.1%に上昇する。あるいは、70歳前半でいっても、今、30%台の就業率が48%、すなわち、70歳前半台でも男性の方は2人に1人は就業しておられるという見通しが出されているということでございます。現実にもそうですけれども、高齢者の就業は伸びていくということをどういうふうに制度に織り込むか。
ただ、高齢期の場合、難しいのは、かなり年齢を経るごとに個々人の差、一人一人の置かれた状況が変わってくる。健康状況もありますし、どのようなお仕事をされてこられたかということもありますので、ここは一つの切り口ですぱんと割るわけにはいかないので、いろいろな多様な組み合わせを考えていかなければいけない。その個々人が選択できる選択肢をどのように増やしていくかということと、もう一つは、仮に就業を延ばしてその分保険料をいただくとなれば、個々人の保険料の負担の問題、それから、厚生年金の場合は、あわせて雇い側の負担の問題、これはパートと似たような問題ですけれども、そういうところが出てくる。その辺をどういうふうに折り合いをつけながら、この制度改正を具体化できるか。そういう検討のステージに入っていくことになると考えているところでございます。
○神野部会長 よろしいですか。
○出口委員 よくわかりましたけれども、なぜこのような質問をさせていただいたかといえば、前回の財政検証のときにもたまたま委員をさせていただいていて、そのときに思ったことは、せっかく非常に真っ当な試算をされているのに、報道を見ると随分とんちんかんな報道が多かった記憶があり、それはやはり何が枝で何が幹であると、今、まさに審議官がおっしゃったような説明をきちんと、要約版のような形で今回の財政検証の幹はここだ、でも、そのほかの枝葉の技術的な問題もちゃんと整理してあるのだよと。そういうめり張りのきいた御説明をいただければ、恐らく、とんでも論のような報道はなくなると思います。
何が本筋で何が問題のありかかということをはっきりと事務局のほうでも示していただいたほうが年金の理解は進むと思いましたので、申し上げました。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
○大臣官房審議官 ありがとうございます。
説明と資料が十分ではなかったところがあるのかもしれませんが、財政検証の結果は、いろいろな人のいろいろな読み取りがあってしかるべきだと思うので、中立的に出している面もあります。ただ、間違いなく言えることは、これは5年前もそうだったと思いますけれども、年金でどう経済成長するかというのはなかなか難しい問題だと思いますが、年金というのは就労とは、表裏になりますので、労働参加ということは、非常に年金制度については関心も高いし、制度的にもいろいろ調整がありますし、そういうものを取り込んでいくのは非常に重要だというメッセージは、法律上で要請されている検証もそうですし、オプション試算もそうですし、全体を通じて言えることかとは考えております。御指摘ありがとうございます。
○神野部会長 年金局長、どうぞ。
○年金局長 年金局長です。
今、度山から申し上げたようなことを、きょうもたくさんいらっしゃっていますけれども、マスコミの方々にずっと説明していまして、きょうの資料ですと、資料1の1ページ目が、一番今回我々が発信したいメッセージであります。
年金制度は16年改正で上限保険料、そして、マクロ経済スライド、国庫負担2分の1ということで、フレームワークはしっかりとしたものができていて、それを5年ごとに点検しながら、そのときそのときの社会・経済の情勢に応じて修正を加えていくと。
そういう中で、その下にありますように、財政検証というのはとにかく経済成長と労働参加が進めば一定のしっかりとした水準も確保できて大丈夫なのですと。だからこそ、これは年金だけの世界ではなくて、経済全体をよくしていく。経済成長と労働参加をやるための国のさまざまな施策、これをしっかりやっていくことが大事なのだということ、それをしっかりとやっていけば、いたずらに不安になることもないというメッセージ。
そして、その右側にオプション試算A、オプション試算Bがありますように、年金制度として何ができるのかということで、適用拡大をしてできるだけたくさんの方に厚生年金のほうになっていただく。それが基礎年金の水準の向上にもなる。また、オプション試算Bのように、今、人生100年の時代ですから、できるだけ長く働いていただいて、長く拠出していただいて、支え手になっていただく。また、繰り下げ受給なども活用していただく。シンプルに申し上げると、1ページ目の赤字で書いたメッセージ、これを私どもは特にポイントとして説明をさせていただいているところでございます。細かいところはありますけれども、そういうメッセージをよく説明していきたいと思っております。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
ほか、いかがですか。
諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 まず、今回のオプション試算も含めて、非常に細かな検証をいただいたことに大変な御苦労があったと思います。その結果にまずは感謝をしたいと思います。
1点質問と、オプション試算に関し、幾つか言いたいことはあるのですが、1点だけ意見を言わせてください。
まず、資料3-1で、先ほど出口委員もおっしゃっていましたが、オプションAとオプションBの組み合わせ試算22ページ以降に、オプションA②と③にオプションBを合わせた場合分けがあるのですが、オプションA①の125万人拡大の部分については、特に触れていないのは、何か理由があるのでしょうか?ということが一つあります。試算はしたが効果としてなかったからあえて出していないのか、あるいは当初から試算をしなかったのかというのが疑問に思いました。まずそれが1点です。
意見としては、あくまでもオプション試算の一つなので、これから議論していくのでどうなるのかわかりませんけれども、今回繰り下げについて非常に選択をすることに効果があるということを改めて書いてありますが、前にご意見もしたように、繰り下げする人自体が少ない現状で、果たして繰り下げ期間の延長だけでどれだけ選択が広がるのかは非常に疑問だということを現実的に感じています。
基礎年金と厚生年金と別々に繰上げの選択が可能ですが、それぞれのデメリットもあります。資料では繰り下げ期間中の在職停止対象となる年金が増額対象にならないということには触れていましたが、振替加算や加給年金が停止になるということとか、その後遺族年金の対象となった場合は、当初から加算の対象にならないというように、非常に難しい年金の仕組みといいますか、制度がございますので、その説明を現実的にどうなさるのか。
あるいは、特に既に特老厚をもらっている方、特別支給の老齢年金ですね。その方が65歳になった時点で、はがき1枚で連絡が来るものに、どのように繰下げの選択をしてもらうのか?そういったことが現場感覚としては非常に気になりましたので、一つ御意見として触れさせていただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
では、最初の質問をお願いします。
○数理課長 非常に作業的な話で恐縮なのですけれども、組み合わせはなかなか作業として大変だったもので、A-マル1自体の効果はそれほど大きなものではなかったので、作業自体を割愛させていただいたというのが実態です。
○神野部会長 繰り下げのコメントはいいですか。
それでは、駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 ありがとうございます。
3つぐらいの面からコメントをしたいと思います。今、事務局が説明されたように、経済成長、労働力いかんによって、50%代替率を維持できるかどうかは五分五分ということなので、前回と同じ結果だったのだろうと思います。ただ、ケースIIIという場合においても、基礎年金においては、相変わらずアキレス腱がある。給付水準が大きく低下する、給付額も新規裁定も既裁定もかなり厳しい状態になっていく。したがって、この基礎年金のアキレス腱をどうやって食いとめていくのか、出てこないようにするのかということで、先ほどから出てくるオプションの中の適用拡大と、特に45年加入というのがあるだろうと思うのです。
適用拡大については、急いだほうがいいのではないかと思う。経済の状況がいいうちに進めていく。ただ、中小・零細企業が対象になってくることにおいては、いろいろ目配りをしなければいけなくて、当然ながら、これは場合によっては人件費の上昇として価格に転嫁していただくことも考えなければいけなくなると、これは産業政策のほうからも一緒に協力してもらわなければいけないと思います。
45年のほうは、これは厚生労働省だけで何とかなる問題ではなく、恐らく一般財源の確保の問題がありますので、5年に一度この議論をやってまた5年後というのは非常に悠長な感じがしますので、すぐにできなくても、政府部内できちんと継続的にこの議論する場を設けていただきたい。そのぐらいのつもりでやっていただかないと、基礎年金の劣化の部分はとめられないのではないかと思います。
3つ目に、オプションのところで、65歳以降の高在老の話でありますけれども、これは高在老がどのくらい労働インセンティブを阻害しているのかというのは、現時点で測定していると余り大きくないのではないかということがある一方で、2025年に65歳に到達した後の世代、この世代にとってみれば、もしかしたら非常に継続就業の邪魔になってくる可能性もあるということです。これも2025年までには、次回が2024年だとするとほとんど間に合わないということですけれども、これもきちんと議論を続けていただきたいテーマだと思います。
次に、大きい2番目として、今回のレポートと前回のレポートを比較すると、若干表現周りで違うところがあるのですけれども、これはよくなっている部分とどうしたのかなという部分があります。
1つ目は、資料4の15ページ目、これは現時点、所得階層別に所得代替率がどう落ちていくのかを、前回は現在と未来は同じ絵の中に入っていたのですけれども、今回はばらばらになっている。これは前回を見れば基礎年金の劣化ぶりが一目でわかったのですけれども、今回は余り把握できないようになってしまっているのは、次回以降、少し工夫していただきたい、これ以降の議論で工夫していただきたいと思います。
資料4の31ページ目の厚生年金と国民年金の財政構造の問題ですけれども、これまでたしかこれはばらばらにつくっていたと思うのですけれども、これを一個にしてしまった。これは下に数字が入っていますから、特段実害はないのですけれども、なぜわざわざ一個にしているのかなというのがよくわからなかったです。
表記の部分でいろいろ知りたいこともありますけれども、やや技術的なことなので、また次回以降とは思うのですけれども、3つ目に、質問になりますが、資料3-1の9ページ目の世代別の加入分布です。これはどういうふうにつくられたかですね。これはきょうでなくてもいいので、推計方法を詳しく、これは世代別の効果を見ていますので、大変重要なものだと思いますので、大変興味深い図なので、これは次回以降詳しく、どうやって推計したのか御説明いただきたい。
資料3-1の16ページ、18ページは、繰り下げと高在老のインパクトですけれども、これにはそれを変えることによって労働力率が変化して経済を通じて年金財政にまた入ってくるというルートは考慮して議論しているのか、していないのか、ここを確認したいと思います。
以上です。
○神野部会長 特に最後のところの資料3-1にかかわる質問について、今、簡単にお答えいただけるのであれば、しておいていただければと思います。
○数理課長 最後のところは、現在の就労状況を前提としておりますので、これによって何か拡大するとか、そういったことは織り込んでおりません。
○神野部会長 ほか、特にコメントはいいですか。
では、細田委員、どうぞ。
○細田委員 日本商工会議所社会保障専門委員会委員の細田でございます。今回より参加させていただきます。ありがとうございます。
今回初めて、いろいろと聞かせていただいたのですけれども、今、老後資金の2000万円の問題とか、いろいろな意味で老後に対する不安が国民の中にも出ているという中で、今日ご説明いただいたことについて、私はそれなりにレクチャーさせていただきながら聞いた内容なのですが、なかなかわかりにくいところがあるのだなと思いました。
我々の正直な感想で言えば、自分は年金を一体幾らもらえるのだろうか、ちゃんともらえるのだろうかというのが国民の一番の興味なのだろうなと思うのです。この辺がきちんとわかりやすく説明されてくれば、大変ありがたいと思います。実は私自身も今年から年金をもらう年齢になったのですけれども、こんなものしかもらえないのかなと若干がっかりしたとか、そんなこともありましたので、その辺はぜひ丁寧な説明が必要なのかなと思います。
2つ目なのですけれども、商工会議所の会員というのは、本当に中小・小規模事業者が多いのです。そういう中で、先ほど審議官から非常に力強い御説明をいただいたのですけれども、適用拡大の件に関し、雇用している側の立場から申しあげると、中小・小規模事業者がほとんどになってきてしまうという中、売り上げをなかなか上げられない、デフレで販売価格を上げることもできないという状況で、非常に苦労している。そういう中で、一方では人が足りず、人を雇用するという部分でも苦労している。そんなところでバランスをとりながらやっている中で、どの選択がいいのかというのは私どももなかなか申し上げにくいところはあるのですけれども、ぜひその辺りの負担が企業に過剰にかからないようにしていただきたいなと思います。
一方で、働き方が非常に多様化している中で、自分は社会保険に加入しないから、保険料を払うくらいだったら自分にくれと言う若者も正直なことを言えばいらっしゃる。実際に私どもの会社もアルバイトの方に働いていただいていますけれども、中にはそういう方もいます。もちろんこれは会社の義務として、給料とは別に納めなければならないものだからということできちんと支払っているのですが、実際にそういう方たちもいる。
それから、高齢者の方の働き方、また、パートの主婦の方の働き方、それぞれ皆さん多種多様な条件の中、自分の希望の中でもって働くということをやっていらっしゃるので、それを一律に適用拡大という中でもって議論するのは、なかなか大変なのかなと思います。私としては審議官に非常に力強いアシストをいただいたと思っていますので、今後も慎重な議論をしていただきたいと思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
特にコメントはいいですか。
○大臣官房審議官 現実問題として、事業主負担の負担は負担いただかなければいけないものですので、本当にどういうふうにして御負担をいただけるかということは、非常に重要なことだと思います。
ただ、今のお話で、確かに働いていらっしゃる方個々に御希望はあるのだとは思いますけれども、一方で、公的年金制度は強制適用で、基準を満たす方は一律に入っていただくということで制度が成り立っているところがありますので、個々の御希望で入りたい、入りたくないというのを考慮し出すと制度が成り立たなくなります。そこはどういうラインを引いて、そこを超えた方には御負担をいただくかということで考えていかざるを得ないかと思います。
ただ、前にパートの議論をしたときに御紹介もいたしましたけれども、40万人適用拡大をした時点では、多くの方は負担を受け入れて、余り就労時間を減らしたりという動きにはならなかったというデータはいろいろな実態調査で確認をしておりますので、そういう意味でいうと、今のラインはそこそこいろいろ考えられたラインなのかなという感じはしております。
○神野部会長 ありがとうございます。
○細田委員 企業として2カ月継続雇用していますと、社会保険が必要になってきますが、そういう意味で我々が逃げてしまうということではないということは御理解いただきたいと思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。
どうぞ。
○小野委員 雑駁な意見で恐縮ですけれども、本当に充実した資料をつくっていただきまして、非常に感服しております。
世間では、財政検証結果だけでも先に出すべきだという意見もありましたけれども、私は財政検証による現状の受けとめとオプション試算による政策効果の確認というのはセットだと思っておりますので、これでよかったかなと思っております。
年金数理の側面からコメントをさせていただきますと、資料4の冒頭で、年金と国民経済との関係をお示ししていただいたのがよかったなと思っております。4ページのように、1人当たりの経済の果実を分配するわけではなく、支え手全体の果実を分配するという考え方に立った現在の制度の規模をGDP比で見ると、当然ながら6ページに示されているとおり、非常に安定していることがわかるということだと思います。国の経済力を無視した制度運営は現実的ではないですし、このような考え方というのは、私が知る限りでは、スウェーデンとかイタリアの制度運営に通じるものがあるのではないかと考えております。
重要なのは、現在の制度運営を前提として、いかに分配の効率性を高めて、社会保険による所得保障政策の目的を達成することへの関係者の理解だと思っております。今回、そのための検討資料は十分に提供されていると思いますし、その含意は、先ほど局長の御説明のとおり、資料1の1ページの下半分に集約されると思っております。
特にオプションAでは、生産手段を持たない被用者をできるだけ被用者年金でカバーすることが重要でありますし、そのことが平均的な被用者保険の被保険者の給付水準をも引き上げる効果があるということを改めて確認できたのではないかと思います。
また、オプションBでも就労期間や加入期間を延ばすことや、年金の繰り下げ受給が給付水準の充実に効果があることも確認できましたけれども、このことと企業年金を中心とした私的年金との連携が促進されるような施策が重要だと思っております。
以上、コメントでございます。
○神野部会長 ありがとうございます。
永井委員も挙がっていましたか。
では、原委員、永井委員、どうぞ。
○原委員 大変わかりやすい資料をありがとうございました。
今回、私からはオプション試算について、AとBということでありましたけれども、こちらについてコメントをさせていただきます。
資料1にもまとめて書いてあったわけですけれども、適用拡大の部分について、これが適用拡大①、②、③ということで出ていましたけれども、いずれも年金の給付水準を確保する上でプラスであることが確認できたということで、また基礎年金にもプラスであることがわかったということですね。
これが今社会保険の対応に関する懇談会でも議論をされて、ヒアリングもされているところですので、そこでも議論していますが、まず、適用拡大①の企業規模要件というところです。中小企業の方からは、負担であるという声も聞かれるのですけれども、年金制度全体を見たときには、時間をかけて経過措置なども設けながら、例えば何らかの支援が必要であればそういったことも検討していきながら、いきなりというのはきついですので段階的に、適用拡大は進めていく方向がいいのではないかと思います。
そういった意味では、適用拡大①の125万ベース、これについてまずは取り組んでいって、適用拡大②については、最低賃金などの影響もあるかと思います。もともと短時間の労働者が社会保険に入るか入らないかというのは労働時間とか労働日数で考えていたところもあると思いますから、なるべくシンプルに、賃金の要件と時間の要件と二重で見るというのは複雑だという声も聞かれておりますので、そういった側面も考慮していくべきかと思います。
③の1050万人ベースですが、これはかなり大規模なケースだと思うのですけれども、この資料1で言うと9ページにあるとおり、これが全部の全体図だと思うのですが、非適用事業所について、フルタイムでも働いている方がいらっしゃいます。働く側の方からとってみると、どこで働くのかとか、どういった事業所で働くか、強制適用のところか任意適用のところかというので、自分が社会保険に入るか入らないかが分かれてしまうということがあると思います。フルタイムで働いている方もそうですし、短時間の方もそうです。
非適用事業所であれば、社会保険に入れないで、雇用保険は入っているということも多々見られるかと思います。また、時代が変わってきて、法人化されているところも多いですので、そういった意味では、この適用、非適用の線引きというのは大分前に決められたことだと思いますし、検討の対象にしていくのがいいのではないかと思います。
オプションBについてなのですけれども、こちらのほうは、たくさんいろいろなパターンを出していただいてありがとうございます。とてもバリエーションがあるわけですけれども、前回の5年前の財政検証のときにもありましたが、最初の部分の45年拠出モデルというところ。まずはそこから検討して、個人事業主の方、第1号の方で65歳まで保険料45年拠出というところから検討を始めていくべきかと思います。もちろん国庫負担とか財源の問題ですとか、国民年金被保険者特有の課題はいろいろあるかと思います。ただ、資料1で言うと10ページにありますが、かなり厚生年金の方との被保険者期間に差があると思いますので、働き方が多様化する中で、60歳から厚生年金に入らなくても個人事業主として働いていらっしゃる方も多いですから、そういった意味では、ここはまずオプションB-①というところから着実に進めて、課題もあるかと思いますし、財源の問題もあると思うので、ほかの省庁との調整も必要かと思いますけれども、検討していくというのがいいのではないかと思います。
先ほど出口委員もおっしゃっていましたけれども、資料3-1で、私はまずは23ページのところを見たのですけれども、オプション試算を組み合わせるという発想はすごく重要だと思います。例えば45年モデルで適用拡大の325万人ベースでやるというところが23ページだと思うのです。適用拡大の②ですね。この部分で、ケースI、ケースⅢの場合ですけれども、所得代替率を見ると60%に近い数字で出てきているので、オプション試算はそれぞれ個別に見てしまうこともあるのですが、組み合わせてどうなるかということを見ていくというのも今後議論していく上で非常に重要かと思います。
最後に、これは一つ感想なのですけれども、この同じ資料1のマクロ経済スライドの説明で、13ページにあるのですが、本当に簡潔に書いてあると思います。これを見ても適用拡大や保険料の拠出期間の延長といったことで、就業者が増加して被保険者が増える、調整を行いながら年金額が増加するという図がありますが、こういうことからしても、今回、いろいろなオプション、その組み合わせなどしていただいた試算というのは、今後の議論に大いに参考になるものだと思います。こういったことをもう少し読み解きながら考えていきたいと思います。
コメントになりますが、以上でございます。ありがとうございました。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
永井委員、どうぞ。
○永井委員 ありがとうございます。本当に丁寧な御説明と御苦労に感謝を申し上げたいと思います。
私は被用者の立場から2点ほど申し上げたいと思っております。まずオプションAでございますけれども、適用拡大のところですが、今回、原委員の意見に通じるところになるのですけれども、3つのケースを示していただきまして、いずれも給付水準及び年金財政に改善効果がある結果となっております。
一方で、マル1、マル2、マル3と示していただきましたが、マル3の効果に比べると、マル1、マル2のところは限定的に見えるということで、今後さらなる適用拡大には積極的に検討を行う必要があるのではないかと考えております。
1つ確認で、聞き漏らしたかもわからないのですが、オプションA-マル2の賃金要件と企業規模要件を廃止ということがあるのですが、賃金要件廃止の見方というか、これは全く賃金要件はないと考えていいのか。5万ですか。ここは確認したかったところです。
マル3の1050万人拡大ケースのところでは、基礎年金の所得代替率が上昇するという結果が示されておりまして、基礎年金の給付水準の改善をしていくためにも、強力に適用拡大を進めることが効果的と考えております。
もう一つ、資料4で、今回の多様な世帯類型における所得代替率を示していただきまして、これまでもモデル世帯以外のところについても意見を申し上げてきた立場としては、大変感謝をしたいと思っております。
16ページのところで、世帯マル1からマル5を示していただいて、それぞれの賃金水準にどのような世帯が属しているかを示されたということで、世帯類型ではなくて賃金水準の違いから生じているといった御説明もあったわけですが、国民生活基礎調査の推計の詳細のところを見せていただくと、どのような世帯というよりは、いろいろな働き方の組み合わせを御提示されているものなのかという感じを受けておるわけなのですが、その辺、そういう理解でよろしいのか、御説明をいただければありがたいと思います。
以上です。
○神野部会長 2点、賃金要件の廃止等々についての御質問です。
○数理課長 最初のA-マル2なのですけれども、賃金要件の撤廃というか、見ていないと。他方で、週20時間から30時間の働く方々なので、基本的には最低賃金との関係を考えれば、一定水準以上の所得のある方ということだと思います。
2つ目の国民生活基礎調査の集計でございますけれども、世帯類型という言葉をどういう意味で使うか。それは特に何か決めていろいろ議論をしているわけではなかったと思うので、ここでは夫婦か単身、夫婦の中では共働きか片働きとか、それで働き方の組み合わせ、そういうことで集計をしてみたということでございます。
○神野部会長 権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 きょうの議題は報告ということでしたから、おとなしくしておこうかと思ったのですけれども、出口委員の御発言に触発されて、話をさせていただきます。
今回の資料で一番大事なのは、資料3-1の22ページから24ページであることは当たり前ですね。組み合わせ試算、オプション試算の組み合わせをするとどんなことが起こるか。これは今までやってくれなかったから、我々が自分たちで計算していました。そうすると、物すごく大きな効果が出るわけです。このオプション試算をどう実現していくかということが実は年金局の仕事で、財政検証するのが彼らの仕事ではなくて、これをどう実現させていくか。国民の生活を守るために、日々彼らがやっていることはそれなのです。
だから、我々としても、研究者として、年金論者として、そして、メディアを含めていろいろな人たちのいろいろな発言というのが、そのベクトルに対してどういう作用をしていくかを意識していかないことには、彼らが幾ら頑張っても、全部出だしのところで潰されてしまうというものがあるわけです。
例えば内閣府の試算と財政検証の違いというのは、内閣府は10年先までしかやりません。年金局では実は平成16年改革時の規定では5年後の次の財政検証までに50%切るかに関心があるのだけれども、およそ100年先までやりなさいと書いてあるのです。これは平成16年のときから、つくりが将来起こり得ることを想定して、そこからバックキャスティングで現在のことを考えて、今とるべき政策を考えていくよということになっているわけだから、先ほどの小野委員がおっしゃっていた、あるメディアが本体試算だけを出せばいいではないかと言うこと自体が財政検証をわかっていないですね。
オプション試算を出して、将来こういう状況になるから、それに対してこういう手を打っていくという策を示すことによって初めて財政検証というものが成立し、そして、このオプション試算で示されていった改革の方向性というものを実現すること自体が彼らの仕事なわけで、きょうの資料の中で最も重要なものは、この組み合わせ試算なのだということ。そして、オプション試算というものは、本体試算は私はマップというもので、その中でどういう進路をとっていくとどこにたどり着くということを示していくのがオプション試算という名前になっているのだと示しておりますので、我々としても、研究者として、年金論者として、自分たちの発言がどのベクトルとして社会に作用してくのかを意識していきたいと思うと同時に、先ほど出口さんからもありましたけれども、とにかくくだらないところでばかばかしい戦いはやめようよというのがあります。
先ほどの被保険者期間の延長のところで、今回は国庫負担というものがいつの時代に幾らぐらい必要だというのを計算してくれておりまして、1.2兆円ぐらい必要になるというのが40年先ですね。4010年先まで増税は一切しないという総理大臣が何人か登場してきても間に合うのではないかと思うのですけれども、将来世代の老後の生活を我々が今の時点で縛ることはなかなかつらい話だと思いますので、まだ年金というのは保険料を払って、それで給付に全部反映してくるというのは相当時間がかかりますので、被保険者期間の延長はどうも視野には入っていない可能性があるのですけれども、これは今、我々がみんなで検討していく問題ではないかと思っております。
オプションの組み合わせというところの適用拡大というのは、どこまでいけるかということは前向きに最大限頑張っていただきたいと同時に、いずれ適用拡大のところで議論するとは思いますけれども、昔は一般的だった児童労働は禁止するというところから、この国はいろいろな形で労働条件を上げてきた。今の日本の中では、しっかりと生涯の生活費を賄うことができる、付加価値を出すような企業に世の中に存在してもらわなければいけないというところまで来ていると思いますので、医療も年金も含めて保険料を払う企業という形にどう世の中全体を持ち込んでいくかというのは、経済政策としても重要だと思っております。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
ほかにいかがですか。
では、米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 どうもありがとうございます。
非常にたくさんのアウトプットが出て、まだ全部理解できていないのが実際なのですけれども、基本的なところでこのとがった解釈がいいのかとか、確かめさせていただきたいのですけれども、資料1の1ページ目と2ページ目、ないしは3ページ目のヘッドラインのところなのですけれども、所得代替率を見ますと、ほんの少しですけれども、多少よくなったと理解しているのです。
では、それはどこに原因があったのかというと、もともとこういうものは経済成長と労働参加を促進させることが云々と書いてあって、これも2つのキーポイントになっていると言っているのですが、確かにケースIからケースVIまでは、経済成長がいいところから悪いところでその点ははっきりわかって出ているのですけれども、前回と今回の結果を見ますと、経済前提に関してはやや弱含みに今回設定してあるわけなのですね。
ですから、私なども経済前提のほうの会議で、弱含みしているので結果が少し恐ろしかったのですけれども、それと違っているのは、一つは人口のところが大ざっぱに言うと多少よくなっているということと、これは経済のほうに入るのでしょうか、労働参加が進展しているところ。ここのところが非常に大きな改善になっているということなので、ややラフに言うと、経済が多少悪くなっても、仮に労働参加が進めばここで言うところの年金財政は改善される理解でよろしいのかどうか。簡単には割り切れないのだとは思いますけれども、2つ挙げたときに、ポイントはやはり労働参加なのかなというと、オプションなどの試算のところの意義か何かも改めてよくわかるという結果が出てきております。
以上、感想と、もし今の私の解釈が大分違っているのかどうか教えていただきたいと思います。
○神野部会長 審議官、どうぞ。
○大臣官房審議官 お答えしますと、労働参加は非常に重要な要素なのですが、労働市場を考えると需要と供給の両面があって、労働需要は経済の規模で決まる部分もあるので、ある程度の経済成長が労働力が伸びるというときにも前提で、逆に言うと、経済が冷え込んでしまうと労働の需要も縮小してしまう面があるので、連動する要素もあります。
前提を見ていただくとわかるように、上3つのケースは基本的に経済成長と労働参加が両方とも進む、真ん中はそれが一定程度というふうにパラレルにつくっているので、その辺も考慮は必要かなと思います。
○神野部会長 山田委員、どうぞ。
○山田委員 財政検証というのは、先ほど来、さまざまな委員がおっしゃっているように、あくまで将来のシミュレーションというかプロジェクションであり、その中で課題を抽出して、今、何に対応を打つべきかを示していくものだと理解しています。
その観点から2点、インプリケーションがあるのではないかと思います。1点目は、駒村委員が既に御指摘されたところですけれども、基礎年金の弱さは継続してあるのではないかと思います。それへの対応策は先ほど来、さまざまな議論がありましたように、基本的には適用拡大をしていくということでしょうし、本当に年金制度の枠内だけでやり切れるものなのかという議論も本当はあるのではないかなと。別途、何らかの形で、ほかの制度との関連の中で最低のところを見ていく。そういう意味では、年金のところに閉じるだけではなく、関連制度との連関の重要性もインプリケーションにあるのではないかということです。
もう一点は、シニア就労の促進ということの重要性が改めて示されたのではないかと思います。幾つかの試算がある中で、結局、経済成長をしないと給付水準は下がっていくわけで、経済成長の今の最大のネックになっているのは労働力不足だと思うのです。もちろん外国人労働を増やすということはあるのですけれども、まず最大の国内資源であるシニアを生かしていくことが重要ではないか。
その中で、これも既に幾つかの委員がおっしゃったところですけれども、では、具体的に何かできるのかといったときに、先ほど申し上げたようなことで、年金制度だけではなくて雇用制度との連携であり、あるいは産業政策との連携。先ほど申し上げたような基礎年金の最低保障のようなところと同じ話ですけれども、ほかの政策との連携の必要性を改めて示唆しているのではないかと。
その中でも年金制度ができるところがあるとすれば、2つかなと。一つは、繰り下げ受給をもっと増やしていく。しかし、諸星委員から先ほどあったように、それはなかなか進んでいない。この背景にある原因は何かを改めて調べた上で、これをどう進めていくのかという話だと思います。
もう一つは、在老ですね。今回のオプション試算ですと、むしろ単純に試算をすると所得代替率が下がるというふうになっているわけですけれども、これは注意書きにあるように就労の変化の影響が入っていないわけで、そこを考えていくと、全体としてはもうちょっと違う結果も出てくるのではないかと私は思っています。
もちろん単純に高在老のところを撤廃してしまうと、そもそもかなり所得のある人にメリットがある形となり、それは問題がありますから、そこの制度設計は考えていく必要があると思うのですけれども、いずれにしてもシニアの就労促進という面の重要性を、改めて今回の試算は示しているのではないかと思います。
以上、意見であります。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほか、いかがですか。
平川委員、どうぞ。
○平川委員 今回の財政検証が示されました。この間年金部会で、当初は財政検証の結果は春先に公表すると言われていたのが、ここまで延びています。その理由は、きょうのオプション試算等を見れば、かなり複雑な計算をしたことにあることが見受けられます。このオプション試算の組み合わせの計算は、単純に計算の項目がふえただけではなくて、乗数的に作業がふえたのだなということは想像できます。とはいうものの、やはりこれだけおくれたことに関しての説明は不十分ではなかったかと思っておりますので、その辺は少し指摘をしておきたいと思います。ただ、この公表の詳細な計算の結果というのは、年金局で相当努力されたのだなということも見えますので、その点は評価をさせていただきたいと思います。
そういった中で、今回さまざまなケースが示されておりますけれども、前回の財政検証同様、特に基礎年金の給付水準がかなり低下をしていくことについて、しっかりと対応していかなければならないというのは、この間もずっと言い続けておりますし、改めてそれが見えてきているのかなと考えているところであります。具体的な給付改善に向けての真剣な議論が大変重要ではないかと思います。
特に、いわゆる就職氷河期世代が65歳以降になってくる2035年から2040年以降に向けて、その前にやるべきことはこの年金の制度の中でもたくさんあるのではないかというのが、今回見えてきているのかと思っています。
その中で、資料3-1にありますように、保険料拠出期間の延長によって基礎年金の給付水準が推計に較べて上昇するという結果が示されております。これについて、実施に当たってはさまざまな課題があるかと思いますけれども、その延長に向けた具体的な課題の解決に向けて、保険料拠出期間延長の検討を前向きに進めていく必要があるかと思います。
その中で、特に拠出期間の延長に伴って、ある意味大きな課題となっておりました国庫負担の問題について、資料3-1のスライド15の中で財政見通しが示されております。これをどう見るかというのは、なかなか意味深いペーパーだと思っているところでありまして、当然、被保険者が将来的に減っていく中で、国庫負担も自動的に減っていきますが、拠出期間が延長になればそれなりの国庫負担も必要ということが見えてくるわけであります。質問でありますけれども、ここで拠出期間延長開始が2026年からということが前提として記載されておりますけれども、なぜ2026年なのかを御説明いただければと思います。いろいろな仮定を置いたかと思いますけれども、教えていただきたいと思っているところであります。
それから、資料3-1の高在老の撤廃の関係であります。高在老が就労抑制につながっているというエビデンスはなかなかこれといったものがない一方で、全体としては公的年金の所得再分配の低下を招きかねないという結果も出ておりますので、この点は今後の検討の中で十分留意していくべきではないかと思っているところであります。
資料3-1の中で、オプションBのマル4からマル5の関係でありますけれども、繰り下げを選択する場合の推計がありますけれども、繰り下げを選択する受給者の割合の程度はどのくらいを想定しているのか、教えていただければと思っているところであります。
資料2-1に戻りますけれども、22ページで、先ほど所得代替率が2004年と比べて2014年で逆に上がってしまっているということの説明で、マクロ経済スライドの話をしていたと思うのですけれども、それもあるのでしょうけれども、特例水準が維持されてしまったことによって所得代替率が上がってしまったということもあるのではないかと思います。その辺、再度確認をさせていただきたいと思います。
最後に、皆さんがおっしゃっていましたけれども、支え手を多くふやすことが公的年金の安定性、給付の十分性を確保していくのだという大変大きなポイントだと思いますので、ぜひともそれに向かって私たちも議論に参加していきたいと思います。
以上です。
○神野部会長 3点ばかり質問があったと思うのですが、いいですか。
○数理課長 オプションの適用時期なのですけれども、これも作業上の都合で恐縮なのですが、組み合わせなどもやることを考えますと、それぞれまず適用拡大の時期があって、その次にオプションBを適用する時期と、そういうふうに整理させていただいたということで、まず適用拡大は次の財政検証期ぐらいかなということで5年後にセットして、その2年後ぐらいにオプションBが行われるみたいな、作業上の都合で、それ以上のことではございません。
オプションBのマル4とマル5の繰り下げなのですが、これは基本的には財政中立といいますか、個人の選択で行われる前提なので、何%ぐらいがこういう選択をされるかどうかという想定を置いて行ったものではないということで御理解いただければと思います。
最後のところは、詳細な要因分析まではなかなか今はやっておりませんけれども、かつては特例水準で高止まりしていたというのは、そういう面はあったかもしれません。ただ、影響の程度とか、そこら辺までは現在手元では見ていません。
○神野部会長 植田委員、お願いします。
○植田部会長代理 1つだけ、簡単なようなわかりにくいような質問ですが、所得代替率で年金制度を見るというところが中心だったわけですが、年金を貯蓄と見る立場からしますと、何%のリターンの貯蓄になるのかは当然興味があるところであるわけです。
そういう点に関する情報があるかなといろいろ考えていたのですが、例えば資料4でバランスシートを出していますね。これは割引率で財源と給付を割り引いて、当然同じ額になっているわけですが、その割引率はそれぞれのケースの民間の貯蓄の利回りを使っている、ないしは賃金上昇率を使っているということですので、例えば民間の貯蓄の利回りを使っているケースIであれば、実質で3%、名目で5%、その利回りにもある貯蓄であるという解釈で正しいのでしょうか。
ただし、もちろん裏には事業主負担もありますし、国庫負担もある。それをここにある国庫負担等を前提にすれば、例えばケースIでは5%の利回りもある貯蓄という制度であると。もちろん、さらに世代ごとに違うとか、いろいろな点はありますけれども、いかがでしょうか。
○神野部会長 これはいいですか。
○数理課長 お答えがとても難しいという答えになります。今、言われたように、まず国庫負担などがあったりしますし、本人の分と事業主の分は一体何なのだろうかとか、それについてもいろいろな考え方があったりするのではないかと思います。
加えると、今、支給されている給付は、過去のさまざまな制度というか、その当時の法令のもとで給付が決定されたもので、いろいろなものが含まれていて、水準もいろいろということがあるので、なかなかバランスシートといいますか、財源と給付の内訳の図から一概に貯蓄との対比みたいなことでお答えすることは、今の時点で私のところでは難しいと、恐縮ですが、そういうお答えをしたいと思います。
○神野部会長 権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 議事録にも残っているので、もう一回言っておきますと「支え手をふやす」という言葉がいっぱい出てきていますけれども、医療・介護・保育とかと違って年金の場合は自分で保険料を払って自分にリターンが返ってくるので、「支え手をふやす」という言葉を使うと抵抗があるかなというのがあるので「支え手をふやす」というのをやめようよということを、かつて年金では話したことがあります。これはもう完全に自分にリターンが返ってくる話ですので、そういうふうに考えていったほうがいいよねという形話です。
だから、年金の財政が厳しいから支え手をふやせば年金の財政が楽になるという話ではなく、いや、全部収支バランスがとれていて、自分の給付、みんなの給付が増えるだけの話なのだからという話になるのですが、財政が厳しいから支え手を増やすとういうふうに話が転換していくところが過去ちょっとあったので、そのあたりのところは注意していいと思います。
○神野部会長 ありがとうございました。
それでは、今回は財政検証の結果について御報告をいただきました。
次回以降でございますけれども、今回御報告をいただいた結果を材料としながら、今後の年金制度のあり方について御議論を深めていきたいと思っております。
本日も予定の時間を大幅にオーバーしてしまっておりますので、運営の不手際をおわびした上で、本日の議事はこれにて終了したいと思っております。よろしいでしょうか。
では、事務局のほうから、次回以降の日程等々について、連絡事項をお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や開催日程につきましては、追って委員の皆様に事務局より御連絡差し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
○神野部会長 それでは、第9回の年金部会をこれにて終了させていただきます。夜遅くまで御熱心に御議論を頂戴いたしましたこと、深く感謝を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。
 

 

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