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2018年1月30日 第5回労働政策審議会労働政策基本部会

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成30年1月30日(火) 10:00~12:00

 

○場所

厚生労働省 省議室

○出席者

(委員)

岩村氏、古賀氏、後藤氏、長谷川氏、守島部会長、山川氏
 

(ヒアリング対象者)

花田 光世氏 (慶應義塾大学名誉教授、慶應義塾大学SFCキャンパス一般財団法人SFCフォーラム代表理事)
 

(事務局)

藤澤政策統括官(総合政策担当)、本多総合政策・政策評価審議官、弓職業安定局雇用政策課長、波積参事官(人材開発政策担当参事官室長併任)奈尾労働政策担当参事官、大竹企画官、

○議題

・ 働く人すべての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組について(ヒアリング)
・ その他

○議事

 

 

○守島部会長 それでは、定刻よりちょっと前ですけれども、全員おそろいのようなので、始めたいと思います。それでは、ただいまから第5回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催したいと思います。

 

 皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席をいただき、ありがとうございます。

 

 それでは、カメラ撮りは、この辺にさせていただきたいと思います。

 

(報道関係者退室)

 

○守島部会長 本日は、所用により、石山委員、入山委員、大竹委員、大橋委員、川崎委員、佐々木委員、武田委員、冨山委員、御手洗委員が御欠席です。

 

 あとは、いらしていますけれども、本日は委員の皆様方のほかに、ヒアリングのために慶應義塾大学名誉教授、慶應義塾大学SFCキャンパス一般財団法人SFCフォーラム代表理事の花田先生にお越しいただいております。

 

 それでは、議事に入りたいと思います。

 

 前回のヒアリングの中で、委員から質問があった点について、独立行政法人労働政策研究・研究機構の山本様より御回答をいただいております。事務局から御説明をいただきたいと思います。

 

○奈尾労働政策担当参事官 資料1をごらんください。

 

 前回、独立行政法人労働政策研究・研究機構、山本研究員にヒアリングをお願いいたしまして、そのときにいただいた質問につきまして、山本研究員から御回答があったものを、こちらでまとめたものでございます。

 

 簡単に御説明いたしますと、資料1でありますが、ドイツの失業率は4.6%、これは徐々に低下でございます。年齢別、東西別に書いております。

 

 労働協約カバー率は、2016年、旧西ドイツで59%、旧東ドイツで47%となっております。

 

 裏面でございますが、産業別の比率ですが、日本、ドイツを対比させております。これはGDPベースでございます。

 

 最後に日独の大企業と中小企業の比率です。若干定義が違うわけですが、いずれも99%以上という比率でございます。

 

 以上でございます。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は「(1)働く人すべての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組について」「(2)その他」となっております。

 

 本日の進め方ですけれども、以下のように、進めたいと思います。

 

 議題(1)については、最初に、事務局より20分程度、資料に沿って説明していただきます。

 

 次に、ヒアリングのためにお越しいただいております花田先生より「自律的キャリア形成に関して」というタイトルで20分程度御説明いただいた後、その内容について20分ほど質疑応答を行います。

 

 引き続きまして、議題(2)の「その他」については、議題(1)の事務局説明とヒアリングを踏まえて、日本における労働生産性の課題、多様な就業形態間の労働移動の見通し、人材育成のあるべき方向性、今後の労働教育のあり方について、自由に御議論いただきたいと思います。

 

 それでは、説明が長くなってきましたけれども、議題(1)「働く人すべての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組について」事務局より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○奈尾労働政策担当参事官 資料2をごらんください。

 

 資料2をめくっていただきますと、目次が裏面に出ていますが、日本における労働生産性、労働移動、人材育成、労働法教育ということで、4つに分かれて目次を書いてございます。

 

 順次御説明いたしますが、まず2ページ以降でございます。

 

 労働生産性ですが、3ページが名目労働生産性、4ページが実質労働生産性をグラフ化したものでございます。

 

 3ページをごらんいただきますと、名目ですが、日本は、主要国に比べて低い。

 

 右側でありますけれども、推移を見ても、2005年比で3.8%の増ということで、上昇比率は低くとどまっているというのが3ページでございます。

 

 4ページですが、実質労働生産性についても右側のグラフですけれども、日本は見かけ上かなり伸びているように見えるのですが、これはデフレーター要因でございます。

 

 左側をごらんいただきますと、実質労働生産性の水準がありまして、依然として主要国より低いものでございます。

 

 労働生産性の寄与度でございますが、5ページをごらんください。

 

 上の囲みで書いておりますが、労働生産性が上がるためには、全要素生産性(TFP)、1人当たり資本装備率、こういった寄与が大きいと言われているわけでございます。これを1985年以後、大体5年単位でとったものがグラフですけれども、1990年代以後、特にTFPの上昇寄与が低下傾向にあるということが見てとれるわけです。

 

 グラフの赤い部分が、TFPでございます。

 

 グラフの青の斜め線の部分でございますが、これは資本装備率です。これは有形と無形がありますけれども、特に2010年以後低くなっているものでございまして、このあたりも今後の対策を考えるべきかと思われます。

 

 緑で産業間というものがあり、これは産業間の労働移動であります。緑の産業間は、労働生産性が低い産業から高い産業に移るとプラスになる、高い産業から低い産業に移るとマイナスになるといった関係がございます。

 

 6ページですが、TFPを上昇させるためには、イノベーションが重要ではないかということでございます。一般的にイノベーションが実現すると、TFPは高くなります。

 

 6ページの一番左のプロッティングをごらんいただきますと、TFPとイノベーションには正の相関があるといえ、日本は、下のほうにTFPが位置しているわけでございますが、このTFP上昇率は単年度でとっておりますので、中期的にとると、TFP上昇率がこういった点になるかどうかは留保がつくということでございます。いずれにしても、主要国の動向で見ると、イノベーションとTFPは相関があると言えるものでございます。

 

 日本、英、米、独、仏について、産業別、製造業、サービス業別にとった場合でございますが、真ん中のグラフでありまして、製造業はサービス業よりもイノベーション実現割合は高い。ただし、英、米、独、仏よりも、日本のイノベーション割合は低いということが見てとれるわけであります。

 

 この要因が右側でございますけれども、赤で囲んでありますが、研究開発、この辺が促進すべき要因、先進的な機械等の取得、機械等の「等」には、ソフトウエア等を含んでいるわけでありますが、こういったものがイノベーション活動を促進すべき要因ではないかと思われるわけであります。

 

 右側の青の棒グラフでありますが、能力のある従業者の不足が一番多くて7割ぐらい、このあたりが阻害要因として一番大きいもの、以下、目先の売り上げ・利益の追求と続くわけでございます。

 

 先ほども少し申し上げましたが、TFPは無形資産との相関があるということでございます。

 

 上の囲みに書いておりますが、無形資産への投資が上昇すると、TFPは一般的に高まるということでございます。

 

 左側の図をごらんいただきますと、無形資産とTFPの相関関係を書いてありまして、一般的に緩い正の相関があると思われるわけでございます。

 

 書いていなくて恐縮なのですが、参考までに申し上げますと、日本は縦軸のTFPでいうと0.8%ぐらいのところで、これは左から3つぐらい等間隔で並んでいるところにありまして、左からドイツ、日本、イギリスになっています。日本は、縦軸が0.8ぐらいで、横軸は3.4ぐらいでございます。

 

 右側でありますが、無形資産の中で、情報化資産と人的資本に着目いたしまして、その上昇率をとったものでございますけれども、上の情報化資産は、パッケージソフトとか、ソフトウエアですが、日本は、特に2006年以後、低い。それまでは、そこまで低くはなかったわけでありますけれども、この10年ほどで、情報化資産の上昇が低いということが、見てとれるわけであります。

 

 右下でありますが、人的資本が低いわけでありまして、これは最近始まった話ではないようであります。いずれの産業でも、能力開発費が伸び悩んでいるのではないかということも、背景にあろうかと思います。

 

 8ページは、アメリカと日本のICT投資を参考までに比較したものです。

 

 以上が、1つ目の固まりの生産性でございます。

 

 9ページ以後は、労働移動の現状と今後の方向性ということで、まとめさせていただいたものであります。

 

10ページをごらんください。

 

 上が労働移動の現状でありますけれども、概略を申し上げますと、雇用情勢は現在改善が進んでおりまして、有効求人倍率は今日の発表で1.59という数字が出ています。

 

 そうした中で、成熟産業から成長産業への労働移動、あらゆる方々にとっても働きやすい職場へのニーズが高まっているということであります。

 

 一方で、転職を希望される方についてはいろんな課題がある、特に中高年については、企業の採用意欲がまちまちであるという問題がございます。

 

 それから、一般的に年齢が上がるにつれて転職が難しくなり、転職後の賃金も減少するといったことが見てとれます。これは、後でまた出てまいります。

 

 今後、目指す方向性でございますが、現在、労働移動の支援策については当省を中心に取り組んでいるところですので、その取組から引き伸ばしてみると、今後の方向性はこうなるのではないかということで書かせていただいたものであります。あくまで基本部会の御議論ですので、これは今の事務局として考えている方向性という程度でございますので、修正とか追加等がございましたら御意見をいただければありがたいと思っています。

 

 そのような前提つきでございますが、今後の方向性の1つは、転職が不利にならない柔軟な労働市場、企業慣行の確立。後でまた出てまいりますけれども、主体的なキャリア設計。

 

 2つ目は、あらゆる転職を希望される方が、情報をとりやすくする。職業能力とか、職場情報の見える化をさらに進めるべきということです。

 

 多様で柔軟な働き方の選択が、お一人お一人に置かれた環境において重要になるのではないかというのが3つ目であります。

 

 最後に、また後で出てまいりますけれども、企業による人材育成の重要性を書いてございます。

 

11ページですけれども、転職が不利にならないような労働市場、企業慣行は何があるかでありますが、上のほうに、これまでの主な取組を書いてございます。

 

 細かくなりますので、概略だけ申し上げますが、例えば成長産業が成熟産業から人を受け入れた場合には、労働移動支援助成金という助成金がございますけれども、これも段階的に拡充をしてきており、特に成長企業で受け入れた場合、拡充をしているというのが1つです。

 

 ハローワークの求人・求職情報といったものは、自治体とか、民間事業者にも開放しております。

 

 4つ目ですけれども、高齢者については、全国110カ所ほどのハローワークに、生涯現役支援窓口がありまして、これは仕事の相談と生活の相談を一体的にやっている窓口でございますが、こういったものを設けているということであります。

 

 転職の促進については、現在、指針の策定ということを検討中でございます。

 

 下でございますが、当面の主な取組です。

 

 これも主なものを申し上げますと、1つ目の「●」で、労働移動支援助成金等の効果的な活用。こちらは、事業縮小などで離職を余儀なくされた方のスムーズな労働移動を支援するというのが一番の目的でありますが、特に成長産業に移行した場合の助成を重点的に行うでありますとか、あるいは企業が初めて中途採用の方を採用する場合の助成をするといったことをやってございます。

 

 2つ目でありますけれども、ハローワークにおけるマッチング。3つ目もそうですけれども、これは当然進めていかないといけない。

 

 3つ目については、自治体等と連携しながら進めていくという話でございます。

 

 4つ目の「●」でありますけれども、出向支援を通じたキャリアチェンジ等の促進。雇用調整以外にキャリアチェンジも支援しましょうということで、現在も試行在籍出向プログラムということで取り組んでおりますけれども、来年度以後、少し形を変えてまた取り組んでいきたいと思っています。

 

 下から2つ目ですけれども、年齢にかかわらず多様な選考・採用機会を拡大するための指針の策定ということで、現在検討中でございます。できれば、年度内にこの指針をつくりたいと思っています。

 

 最後ですけれども、生涯現役支援窓口、高齢者に対するものでありますが、これは2020年度までに300カ所と、大幅に拡充しようと思っておりまして、これと各種助成金とをあわせて、高齢者の就業促進を図っていきたいと思っています。

 

12ページ、職業能力・職場情報の見える化でありますが、上の囲みの中で、見える化3法というものがありまして、くるみん等、そういったものについて、一般の方にわかりやすくということで、見える化を進めているわけであります。

 

 今後でありますが、下のほうでありますけれども、1つは、総合的職場情報提供サイト、これは働きやすい企業の職場情報、先ほどのくるみん等でありますが、これを一元的・総合的に提供するサイトを今年度中に開設したいと思っています。

 

 それから、日本版O-NETと呼んでおりますけれども、職業情報、この職業につくためにはこんな能力が必要だとか、そういうことを書いてあるものでありますが、そのサイトについても近々運用を行いたいと思って準備中でございます。

 

 ジョブ・カードにつきましては、平成32年までに300万人という目標がございますけれども、例えば個々の求職者、労働者の方が自宅のパソコンでプログラムをダウンロードすると専用サイトが立ち上がって、そこで自分でジョブ・カードが策定できるといったソフトも提供するということでございます。

 

13ページでございますが、ここまでこれまでの取組を紹介したわけでございますけれども、日本の産業間労働移動はどうかということをグラフ化してございます。

 

 これは「リリエン指標」と書いてありますけれども、平成28年度の『労働経済白書』で御紹介したものでございます。これは何かといいますと、各産業の就業者数の変化が全産業計の就業者数の変化と比較してどの程度高いか、どの程度乖離しているかという指標で、これが高いほど、産業間の労働移動が多いと読むというものであります。

 

 これをご覧いただきますと、左の方、産業間の労働移動が多いグループは、旧社会主義国に多い、旧新興国に多いということがわかります。一方で、日本、英、独、仏等を比較すると、日本は、英、独、仏と同じような水準ということが言えるわけでございます。一般的に、経済水準、GDP等、リリエン指標には、緩い負の相関があると言われているようであります。

 

14ページ以後でありますが、入職者等の現状ということで参考になると思われるものをまとめさせていただいています。

 

14ページでありますけれども、入職者のうち、転職入職者、右側の真ん中あたりにございますが、約478万人であります。

 

 労働移動を年齢別にとったものが、15ページでございまして、特に右側の年齢別の転職入職率でございますけれども、若年世代で高い。それから、65歳以上は、水準は低いけれども、ここ数年で伸びている状況であります。

 

16ページでありますが、左側が産業計・企業規模計の転職入職率でありまして、これは一言で申しますと過去30年ぐらいで大きな変動はないわけでありますが、景気要因にかなり左右されているものであります。

 

 右側については、大企業です。大企業は、どちらかというと右肩上がりのトレンドがあると思われます。

 

17ページでありますが、中途採用者の採用ということで、特に右のグラフをごらんいただきますと、中高年を採用したいかという意向を聞いたときに、採用実績あり、これは過去3年間の採用実績ありという意味でありますけれども、採用実績があるところでは、3分の2ぐらいの企業が、いい人がいれば採用したい、積極的に採用したいと回答しています。

 

 逆に過去3年間、採用実績がない企業については3分の1強が、いい人がいれば採用したいというのが、ないと見てとれるものであります。企業によって、かなりばらつきがあるわけであります。

 

 時間の関係で省略させていただきますけれども、19ページまで飛びます。転職して入職した方の賃金の変動状況、それまでの賃金に比べて上がったか、下がったかでありますが、これは一言で申しますと、上がった人と変わらない人と下がった人がおおむろ1対1対1という関係でございます。

 

20ページ、21ページは、転職を希望される方等が、行政にどんなニーズがあるのかということを書いております。

 

20ページが事業者側のニーズであります。一番多いのが左側でありまして、公的な求職状況の提供機能の拡充、それから、個人の職業能力開発に対する公的援助、こういったものが書いてあります。これは選択肢がこれしかなかったもので、その中での話ということで御理解いただければと思います。重複回答です。

 

21ページでありますが、行政に対して転職希望者御本人が望むものでありまして、一番多いのが一番左側、より多くの求人情報の提供でありますけれども、次に多いのは企業年金・退職金が不利にならないような制度の改善、いわゆる年金ポータビリティー等のニーズが非常に高いということがわかります。そのほかに、職業紹介サービスのさらなる充実とか、能力開発の支援ということで回答があったわけであります。

 

22ページは参考でございますけれども、労働関係助成金ということで、助成金についても、生産性の向上を積極的に支援するということで、先ほどの生産性の話とも絡むわけでございますが、生産性を支援しつつ、失業なき労働移動、真ん中あたりの下のほうに出ていますけれども、労働移動も支援する。その場合、成長産業が成熟産業からの離職者を受け入れた場合には、さらに手厚く支援するという考え方でまとめているものでございます。

 

 人材育成については、担当の部局から御説明をいたします。

 

○波積参事官(人材開発政策担当参事官室長併任) 人材育成の現状と今後の課題につきましては、人材開発政策担当参事官の波積より説明をさせていただきます。

 

24ページをごらんください。こちらで現状と方向性を示しております。

 

 現状といたしましては、まず4点です。

 

 企業に着目いたしまして、企業が支出する労働者1人当たりの教育訓練費でございますが、後ほどデータも示しておりますけれども、以前と比べて、減少傾向にございます。

 

 また、個人につきましても、自己啓発を行う上で問題があると回答した労働者の方が多くて、そのうち時間や費用について問題があると回答した割合が高うございました。

 

 現在、総理を議長とします人生100年時代構想会議の中で、人生100年時代を見据えた経済・社会システムのグランドデザインが議論されておりますけれども、私どもとしましても、従前、高校・大学まで教育を受けて新卒で入る、定年退職をする、言ってみれば単線型の人生を全員が送るのではなくて、一人一人のライフスタイルに応じたキャリア選択を行い、新たなステージで求められる能力・スキルを身につけることは、大事であると考えているところでございます。

 

 また、新しい動きといたしましては、現在、第4次産業革命と人材育成の関係が議論になっておりますけれども、未来投資会議の下に設定されます、第4次産業革命人材育成推進会議におきましても、政府全体で、我が国のIT人材力の強化を図ることになっておりますが、厚生労働省といたしましては、産業界をリードするITトップ人材の育成というよりも、むしろ労働者全体のIT人材力の底上げの取り組みが大事だと考えているところでございます。

 

 それを踏まえまして、方向性として、3点挙げております。

 

 企業による人材育成がさらに促進されるように、環境整備を行うということ。

 

 個人につきましても、幾つになっても、しっかりと学び直しと新しいチャレンジの機会が確保されるように、個人による主体的な学び直しを支援する対策を充実させるということ。

 

IT人材力の強化に関しましては、各産業における中核的IT人材が身につけるべきIT力、あらゆる業種・規模の企業の人材が身につけるべき基礎的なITリテラシー、これに関する施策を講じることが大事だと考えている次第でございます。

 

25ページで、具体的な取り組み状況を説明しているところでございます。

 

 これまででございますが、企業に関しましては、職業訓練を実施する事業者等に対しまして訓練経費、訓練中の賃金の一部を人材開発支援助成金、あるいはキャリアアップ助成金、こういったもので助成をしております。

 

 さらに全国の職業能力開発促進センター等、これはポリテクセンターと言われているものでございますけれども、その中に、生産性向上人材育成支援センターを設置いたしまして、生産性向上に関する課題等に対応した訓練、こういったものを実施しているところでございます。

 

 個人につきましても、キャリアアップの支援ということで、専門実践教育訓練給付につきまして、平成29年の法改正で給付率・上限額を引き上げるであるとか、あるいは土日・夜間・eラーニングの講座の拡充など、対象講座を拡充してまいった次第であります。

 

IT人材力の強化につきましても、専門実践教育訓練給付制度におきまして、高度IT分野の対象講座を拡充したり、あるいは高度なITの資格を取得するための長期の離職者訓練、こちらの設定も促進しているところでございます。

 

 ただ、一方で、それぞれのライフステージに応じまして課題を抱えるいろいろな層がございます。これに対するきめ細やかな対応が必要だろうということで、ここで当面の取り組みを4つ紹介させていただいております。

 

 取り組み➀といたしましては、社会人の学び直しに有用なプログラムをつくると書いてございますけれども、出産・育児によりキャリアを中断した女性の職場復帰、あるいは非正規の方の若者キャリアアップ、シニア層のキャリアチェンジに焦点を当てた効果的なプログラムを現在開発しております。

 

 実際に時間的な制約の多い社会人も受講しやすいような訓練形態、教育手法につきましても、調査研究を実施いたしまして、専門実践訓練の質・量、双方の充実を図りたいということで、対策を組んでおります。

 

 企業が求める能力、みずからが有する能力を理解する上でキャリアプランを設計したり、学び直しが必要でございますので、キャリアコンサルティングもしっかりと施策として推進しているところでございます。

 

 取り組み➁にございますとおり、専門実践教育訓練給付対象講座のさらなる拡充ということで、現在、文科省が進めております、専門職大学の開設を見据えて、こちらも専門実践の給付の対象となるように検討するなど、関係省庁とも連携しながら引き続き講座の拡充を図っているところでございます。

 

 右側の上にあります、取り組み➂ということで、出産・育児を理由として離職した女性等への対策ということで、ハロートレーニング(公的職業訓練)の中で、託児サービスつきの訓練、離職した保育士等の職場復帰を支援する訓練、あるいは短時間の訓練、こういったものも積極的に推進を進めております。

 

 最後は、取り組み➃にありますとおり、基礎的なITリテラシーの対応でありますけれども、現在、基礎的なITリテラシーにつきまして、具体的なカリキュラムを考えているところでございまして、こういったカリキュラムの設置を踏まえて、来年度以降、在職者訓練、離職者訓練におきまして、基礎的なITリテラシー習得のための訓練コースの設定を進めるところでございます。

 

 それ以降、26ページ、27ページは、関連の資料を入れているところでございまして、28ページは、私どもの人材開発施策の概要を1枚紙で示しているところでございます。

 

 いずれにいたしましても、このような取り組みを通じまして、企業、個人の職業能力開発の取り組みを一層促進する形で、環境整備に努めたいと考えているところでございます。

 

 以上でございます。

 

○奈尾労働政策担当参事官 続きまして29ページ以降でございますが、最後に労働法教育について私から御説明いたします。

 

30ページをごらんください。厚生労働省における労働法教育の取組でございますけれども、いろいろございますが、主なものを申し上げますと、全体として大学・高校向け、特に先生向けの教科書、各冊子を配布して周知しているとか、あるいは労働行政、労働局等から、学校現場等に職員を派遣して、必要な講演をしている、そういった取り組みをやっているわけであります。

 

 上から申しますと、左の欄で上から2つ目に一般という欄がありますけれども、そこに労働法教育プログラムとございまして、自治体等で若い労働者を対象にするセミナー等を開催する際に、活用できる資料等を作成。趣旨は、大学・高校等にいらっしゃる方については、学校経由で周知ができるわけでありますけれども、今、学校にいらっしゃらない方については自治体経由で周知することが必要だということで、来年度こういった取り組みをするものであります。

 

 大学・高校向けには、授業をされる際のモデル的な授業案ということで20ほど授業案を考えて配布しています。これには、労働基準とか、労働組合等の話を盛り込んでおります。

 

 大学生・高校生御本人向けには冊子を配っていまして、文字による冊子のみならず漫画でも周知する取組をやっております。

 

 右側の青いところでありますが、労働局、ハローワーク等から講師を派遣して周知をしているほかに、最近では過労死の遺族の方を講師にして、学校に派遣して生徒さんに理解を深めてもらうという取組をやってございます。

 

 こういった取り組んで進めているわけでありますが、一番下に「※」で書いておりますけれども、高校の学習指導要領(2022年より実施予定)において必修科目に公共というものがございまして、雇用とか、社会保障に関することを含めて記載ができないかということで、文科省さんと調整しているということを、最後に御紹介させていただきたいと思います。

 

 私からは、以上でございます。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 質疑応答は、後でまとめてやりたいと思います。

 

 それでは、専門家の方からのヒアリングに移りたいと思います。花田先生、よろしくお願いいたします。

 

○花田氏 花田でございます。

 

 時間は、20分でよろしいですか。

 

○守島部会長 はい。

 

○花田氏 それでは、「自律的キャリア形成に関して」というテーマで少しお話をさせていただければと思います。

 

 私は組織・人事・キャリアという領域で授業を担当しておりますが、研究というよりも、どちらかというと企業の中での人事、教育、キャリア制度の構築・運用、こういった実践にかかわる研究や活動支援に焦点をあて活動してまいりました。研究よりも、実践を重視しているとお考えいただいてもいいと思います。

 

 最初に、産業能率大学というちょっと変わった大学で教職についておりましたけれども、企業の現場で目標管理、賃金テーブルの設計、人事考課・業績評価のフォーマットづくり、あるいは組織開発といった分野で実践的な研究や支援活動を担当させていただいてまいりました。また流動化に関しては早い段階でパソナさんがつくられたブライトキャリアという転職支援の会社作りにも参加させていただいたり、自分で自分のキャリアをどのように構築したらいいのかという、自律型のキャリアデザインの仕組みの研究と企業での実践活動を行ってまいりました。

 

 バブル崩壊の少し前ですけれども、87年に『企業白書』で、個性主義の人事の展開を提言したりもいたしました。

 

2000年少し前から、大学でキャリアリソースラボというラボを立ち上げて、そこで企業向けのキャリアデザインワークショップの実践、キャリア自律をベースとした制度・制度の運用・風土づくりといった支援活動を実践してまいりました。

 

 最初は企業も導入には後ろ向きだったのですが、2008年以降、非常に積極的に導入が進んでまいりまして、企業の人事だけではなく、労働組合の方々も非常に関心をもたれまして、最初は当時の松下電工の組合が企業とタイアップしてキャリア支援の枠組み作りを構築したり、伊勢丹の労働組合がキャリア自律のワークショップを組合員に提供したりし、現在は金融系の組合がキャリアデザインワークショップの実施に非常に興味をもたれているという現状があるかと思います。

 

 こういう中で、自律的なキャリア形成とは一体どういうことなのだろうかということに関して、少しお話をさせていただければと思います。

 

 よくキャリア自律のプログラムをやや否定的にとらえる方々からは、自己啓発の延長で、自己実現を目指す、そういったワークショップを行えば従業員のキャリア志向に関して、言葉は悪いのですけれども、ガス抜き対策になるから、とりあえずワークショップを実践しているのではないのかとか、他の会社がやっているから、うちもちょっとやってみよう、とりあえずワークショップを実施してみようという程度でキャリア自律プログラムの実施を行っているのではという話しを耳にしたり致します。しかしそれは現在のキャリア自律プログラムの実態とはかなり異なる発言であると考えます。

 

 新しい働き方をベースとする人事の仕組みの一環の中で、キャリアデザインワークショップは当然動いてくる。どういうことかというと、例えば社内公募・応募、自己申告も含めて、自分で自分のキャリアに関して手を挙げて、それに対する受け皿といったものが存在することが非常に重要ですし、企業の風土としてキャリア自律型を施行することも大事ですし、さまざまな運用上の工夫で例えば360度フィードバック等を導入して、そこで管理者が部下に対してのキャリア支援をしっかり行っているかの確認とか、キャリア自律の実践は新しい教育や人事の仕組みと連動した運用がなされてきております。

 

 お手元の資料の23ページに組織視点によるキャリア自律支援のモデルの図がございます。ビジョン・方針、キャリア自律をしっかりと重視することをベースとして、人事制度、教育制度、現場での実践、キャリアコンサルタントの育成等を含む運用支援の役割、風土づくり、こういった一つの体系としてキャリア自律を進めていくことが肝要だと思っております。

 

24ページでございますけれども、具体的に一つ一つどういったものなのかといったときに人事として対応できるところは、多分にいろいろある。こういった具体的な実践といったものを伴わないで、先ほどガス抜きといった言葉で表現いたしましたけれども、ワークショップ、教育、これを一本流せば何とかなるというのは全く考え方が違うと考えております。

 

 こういった流れがどうして出てきたかということなのですが、組織の人事の仕組みと運用の変化が必然という視点をベースとして出てきた流れに他なりません。そもそも環境の変化が非常に激しくなってくると5年先、10年先を想定して、企業が中心となって、教育訓練、階層別・職能別研修、こういったものをしっかり行えば何とかなるということにはだんだんならなくなってくる。変化の激しい時代は、一人一人の個が、ある意味、当事者意識と責任を持って、自分のキャリア開発、職業生活の設計に責任を持つことが、大前提として存在するということが重要なのではないかと思っております。

 

 キャリア自律のプログラム、組織内でキャリア自律を展開するというプログラムが起こってきたのは、アメリカのシリコンバレー地域の企業が中心となって展開してきたと私は認識しております。とりわけ、シリコンバレー地域の企業の中でもヒューレットパッカード(HP)が中心となって、キャリアデザイン、キャリア自律のプログラムをつくり込んでいったという認識をもっています。どうしてかというと、アメリカの中でも、特に環境変化が激しいシリコンバレーの地域では、ビジネスモデルとして企業の売った、買った、あるいは技術革新で、あっという間に企業が潰れていく。こういったところでは、企業がある意味、莫大な投資をして企業内教育という仕組みをつくるよりも、個人が当事者意識を持って、自分のキャリアを前向きに考え、自分自身のキャリア作りに当事者意識と責任を持ち、キャリア開発を自ら行い、その支援を行うことが、より重要だという考え方が出てきたのではないかと思います。

 

94年、95年あたりに『ハーバード・ビジネス・レビュー』に、キャリア自律に関してのプログラムの提言、論文が結構出てまいりました。非常に印象的なのは、キャリアデザイン、自律型キャリアをつくることが非常に大事だということを提言していたグループのお一人にウォーターマンという方がおられたということです。彼はマッキンゼー社のコンサルタントです。どうしてウォーターマンがということなのですが、ウォーターマンは、1983年、すなわち1994年の11年前に『エクセレント・カンパニー』を書かれた本人です。

 

 『エクセレント・カンパニー』で、長期にわたって人材を育成・教育、組織視点で従業員をしっかりと教育することがエクセレント、強い企業のポイントになるということをおっしゃられていたウォーターマンが、94年、95年、むしろ自律型のキャリアデザインといったものを通して、組織といったものは革新していく、これがこれから先の方向なのだということをおまとめになられました。これは、ウォーターマンの考え方の変化というよりも、恐らく組織・人事を取り巻く環境が大きく変わっていったのだと思います。

 

 そうなってくると、私たちはどういうことを想定しなければいけないかというと、いろんなデータから見ますと、30年後、あるいは25年後、20年後、いろいろな未来予測が出ております。

 

 1つは、2035年に仕事をしているというか、労働をしている労働者の65%は、今、存在しない仕事についているとか、あるいはこれも有名な研究ですけれども、オックスフォード大学のグループで10年から15年後、アメリカの従業員、今、仕事をしている方の仕事の47%はなくなっていく。日本の場合は、それよりも2%多い、49%の仕事がなくなっていく。いわゆるAIを中心とした未来予測が出てきて、2030年から2035年の労働環境は、下手をしたら、技術失業が極めて急速に進展していく時代に入っていく。そういった流れの中で、どのように労働者、従業員一人一人が、自分のキャリア、長いライフキャリアの職業生活をしっかり考えるかということが、重要なテーマとならざるを得ないということだと思います。

 

 これに加えて、日本の置かれた状況といったものを私たちはいろいろと考えなければいけないと思います。

 

 女性の人口で見ると、50歳以上の女性が、2020年には過半数に達するというデータがあります。

 

65歳の定年の義務化といった、2025年に何が起こるかというと、年金の場合、何人で1人を担ぐかといったときに、1.95人で1人を担ぐというように2人を割り切るような事態になってくる。そうなってくると、私の推測では、65歳の定年の実質義務化が2025年に始まるとするならば、その時点で70歳までの雇用延長は当たり前のように中小企業では起こってくる。2035年には、一人の年金受給者を支える人が、1.7人から1.5人にといった具合に、年金を支払うことを想定される生産年齢労働者が大幅に減っていく。こういう事情を考えると、これははったりでも何でもなく、現実の問題として75歳まで働く、あるいは80歳近くまで働くということが当然要請されるようになっていく。100歳時代云々というのは、言葉としては簡単に出てくるのだけれども、企業の中でそれが起こったらどういうことかということを真剣に考えたときに、とんでもないことが起こり始めるわけです。

 

 今でも、例えば某IT関連企業はバトンタッチ制度と呼んでいますけれども、課長のポストオフは50歳です。部長のポストオフは55歳です。大手電機メーカでITを先導している某社では、課長のポストオフは53歳、部長のポストオフは55歳、事業部長のポストオフは58歳という、厳しい対応をしています。これは何もこの二社に目くじらを立てているということではなくて、当たり前のように、55歳のポストオフといったものが、企業で導入され、それがなければ、非常にシニア化された社会において、年配の管理者がずっとポストを独占し続けることにもなってしまうわけだから、これは何とかしなければいけないわけです。

 

 先ほど申し上げたように、仮に75歳まで働くということが見えたときに、55歳で、あるいは53歳でポストオフをしたら、その後どうやって働くのかという問題が現実に起こってきているわけです。世間では、キャリアアップと言います。でも、現実にシニアが日本の企業を支えるということを前提としたときに、ポストオフの対象となったシニアには、給与が上がる、部下の数が増える、権限が増えるなどの「アップ」という現実はそんざいしない。つまり、こういう中で、キャリアアップという言葉が、多くのシニアに対しては逆にどれほど空虚な響きを持っているのか。彼らにとってみれば、キャリア充実という言葉が非常に重要になってきて、アップではないのだけれども、どのように、能動的・主体的に、自分なりに自分の生き方とマッチした形で、自分のキャリア、職業生活をつくることができるかどうか。これは死活問題というか、非常に重要なテーマだと思いますし、これをしっかりと解決しないと、日本の高齢化された社員、あるいはモチベーションの問題というのは解決できないのではないかと思うところです。

 

 ポストオフをした社員に対して企業はどう対処するかといったときに、この部分は、企業としてこうだという決め打ち的なものはなくて、一人一人の社員の自律的なキャリア形成、自分がどのようなライフスタイルを志向し、それに基づいたどのような仕事、あるいは働き方を志向するか。これを御自身で考えながら、能動的・主体的にこれを実践していくことが極めて重要になってくると考えています。

 

 私は、企業でいろいろな研修を担当させていただくことが多いのですが、最初にまだ30代前半で担当した仕事が今でも記憶に残っているのですが、それはある電機メーカーでの45歳研修でございました。この会社では45歳研修を非常に積極的に展開されて、45歳になった方は全員、ラインから離れて1カ月研修をする。45歳になったときに、事業部長もいるし、部長もいるし、課長もいるし、ヒラもいるという形で、45歳の人たちの研修をしていたのですが、同じ45歳でもヒラと部長を一緒にというのは非常に難しい。そうなってきたときに、ヒラは分けて別にやりましょうということになって、社内の人間がそれを担当することは非常に難しいので、私がお手伝いをさせていただきました。

 

30代前半のまだ駆け出しの私が、45歳、これから先、定年まで管理職になる可能性がある意味全くなくなった人たちに対して、どのようにその後の職業生活の設計をするかということに関して、非常に苦しい思いをしながら研修をした記憶がありますが、ポイントは、本人がその気にならなければどうにもならない。どちらにしても、65歳あるいは60歳まで、しっかりと企業の中で頑張るのだったら自分のライフスタイル、あるいは職業生活をどうつくっていくのかということに気持ちを切りかえていかざるを得ない。これはシニアでもそうですし、多くのミドルにおいてもそうだと思います。

 

 どういうことかというと、バブル期、91年、92年、93年に入社された方たちが、各企業で46歳、47歳、48歳ぐらいになってきています。バブル期入社の方たちが、管理職ポストにつけないままずっと仕事をされておられる。一方、ポストオフが53歳とか、55歳になってくると、47歳、48歳でポストについていない方を企業がポストにつけることはあり得ないです。ということは、ミドルの人たちのモチベーションとして、一生、ポストにはつかないということはわかっていて、しかも七十幾つまで働き続けるのに、自分はどのように働いたらいいのだろうかということの不安や悩みを抱えている。そういうことに対応していくことに企業も個々人の社員ももっと当事者意識をもたざるを得ない。

 

 そういった流れの中で何が出てきているかというと、2016年4月1日から実施されている職業能力開発促進法の改正です。職業能力開発促進法は、職業生活の設計とそのための能力開発は個人の責任で行う。それに対して、企業はキャリアコンサルティングを提供しなければいけない。これは、マストです。

 

 キャリアコンサルティングはどういうものかというと、国によって定められたキャリアコンサルタントの資格試験を通るか、あるいは技能検定の2級、1級を通った方が、キャリアコンサルティングの機会の提供を行っていく。これらの方々の支援をベースとして、昨年11月に、キャリアコンサルティングの機会の提供の具体的な内容が提起されるにいたりました。

 

 具体的にどういう内容かというと、セルフ・キャリアドックという名称で、キャリアコンサルティングの内容が明示されたのです。セルフ・キャリアドックでは、企業が人材育成方針を明確化し、社員に明示し、それをしっかりと実践していくことが企業に求められるようになりました。

 

 このときに、私がコメントしたいのはキャリアコンサルタントの役割の変化です。厚生労働省から、2025年までに「キャリア・コンサルタント10万人養成計画」が出てきました。平成14年にキャリアコンサルタントができたときに、キャリアコンサルタントイコールキャリアカウンセラーでした。それが平成18年から19年に、キャリアコンサルタントイコールキャリアカウンセラープラスキャリアアドバイザー、そして、2016年の法制化以降、キャリアコンサルタントイコール、組織の活性化に対しての支援を行うキャリアコンサルタント、といったように新たな役割が次々と付加されてきました。

 

 初期のキャリアカウンセラーというのは、どちらかというと、不安、悩み、ストレス、心の問題を主として担当する方々であって、例えばキャリアづくりといったことに関しての視点は、十分に持っていなかった。ましてや、組織の活性化といったものは、全く関係がなかった。

 

 平成1819年になってきて、キャリアカウンセラーが心の不安や悩みへの対応に加えて、一人一人のキャリアづくりも重要な課題だということで、よろず悩み事相談から、具体的なキャリア支援に入っていくようになりました。しかし、それは一人一人のキャリア支援であって、組織の活性化には十分につながらなかった。

 

 それが、去年、登場したセルフ・キャリアドックでは、組織の活性化という視点で、個々人の元気といったものをしっかり担保しなければいけないという流れになってきたのです。

 

 キャリアコンサルティング支援は企業にとって提供しなければならないサービスとなりました。

 

 個別企業のキャリアコンサルティング内容を経営視点でしっかりつくり、それを就業規則か、あるいは経営からの通達として社内に明示することが義務化されたのです。経営の視点というのは、経営の生産性がどうのこうのということではなくて、一人一人の個人が自分の職業生活の設計、そのための能力開発を極めて経営的な重要な課題として、経営的な視点で支援の仕組みを構築することが要請されているということにほかなりません。

 

 これからは、キャリア支援は、人事も含めて経営の視点でサポートされていかざるを得ない。そのために、キャリアコンサルタントと人事、教育部門が協業することが要請され、組織への提言、キャリア支援の実態に関してのコンサルティング報告を、例えば半期あるいは四半期、必ず実施することが求められ、さらに一人ひとりの個人のキャリアカルテをしっかりとつくって、それを守秘義務の範囲の枠の中でしっかりと組織全体で共有して活用することが企業に求められるようになりました。

 

 コンサルティング報告では、企業が抱えているキャリア支援に関しての問題、課題を、経営問題として解決を行うことが要請される。面談だけではなくて、総合的なフォローが必要とされ求められています。

 

 それに加えて、従来、人事・組織視点で組織の生産性向上という形でつくられていた、様々な活動、例えば組織風土分析、組織開発、OJTといった様々な活動を個人のキャリア支援の視点で組みなおすことが要請されるようになりました。ですから、先ほど申し上げた、一人一人の方々が、自分たちがこれから先、どのように長い職業人生、自分のキャリアを全うしていくのかに関し、個人の視点ということで終わらせずに、組織の活性化、組織の活力にどのようにつなげていくか。これをしっかりと仕組み化させていくことで、ある意味、働き方改革につなげるという道筋が示されたと考えます。

 

 こういったトータルな仕組みをどう構築するかということが、今、私たちが直面している大きな課題であって、単にガス抜きで、キャリアデザインワークショップを実施すれば、あるいはガス抜きで、自己申告や社内公募・応募の形だけ整えて、何とかなるのではないかというキャリア自律に関するうがった見方は過去のものとなりました。キャリア自律に向けた個人の元気と、それを組織の活性化に向けた仕組みにしっかりつくり込むということが、非常に重要になってきているのです。

 

 最後に一言申し伝えるならば、今まではどちらかというと、利益市場主義や組織の効率といったものをベースとして使われていた、例えば目標管理、あるいはパフォーマンスマネジメントが、米国において、非常に変わってきております。私は3Gと言いますけれども、GEGapGoogle、こういった企業において、GEはセッションCを廃止して、目標管理をパフォーマンスマネジメントからパフォーマンスデベロップメント、一人一人の個の活性化に視点を置きかえた。キャリア自律を通して個々人が自身のパフォーマンスを自ら開発するといった新しい動きが日本だけの問題ではなくて海外において出てきているということで、問題点をまとめさせていただきました。

 

 大体20分でございます。以上でございます。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 それでは、今の花田先生のお話について、質疑応答に入りたいと思います。

 

 ただいまの御説明について、何か御質問がある方は挙手をお願いいたしたいと思います。

 

 後藤さん、お願いします。

 

○後藤委員 後藤と申します。

 

 大変貴重なお話をありがとうございました。幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 

 自律的なキャリア形成が重要というお話がありましたが、その前提として、現在はポストのあり方として、55歳前後でラインの分岐点になっているけれども、55歳以降も職業人生は相当長く続くというお話だったと思うのです。この前提となっているポストのあり方が、今後75歳ぐらいまで働くことを前提としたときに、自律的なキャリア形成としてはどのように考えるべきかということを、教えていただきたいと思います。

 

 それから、自律的なキャリア形成においては、年代によって少しアプローチの違いがあるのではないかと思っているのです。例えば今の日本では新卒一括採用が多いですが、若い人たちとシニアに対するキャリア形成の支援の違いについても少し教えていただきたいと思います。

 

 最後に、企業規模によって、自律的キャリア形成のアプローチの仕方が違うのではないかと思っているのですが、その点についても御示唆いただければと思います。

 

○花田氏 わかりました。

 

 まずシニアの話を出しましたけれども、シニアの問題は非常に大きいということで出したわけですが、これから例えばペイが必ず上がるわけでもない、ポジションが上がるわけでもない。例えば監督職層クラスのカテゴリーとか、それより下の階層に20年、25年塩漬けになる。それが現実的には起こっているわけです。そのときに何をモチベーションと考えるかというと、組織から介入したモチベーション管理にはいろんな意味で限界が出てくると思います。一人一人が働くということに関して、自分なりの哲学というか、考え方を持つことが大事で、例えば21世紀型の職人文化の構築などはこれに対応するような動きであるとも思います。

 

 職人の方たちは、ある意味、給与がすごく上がるわけではない、ポジションが上がるわけではない。でも、自分たちの技術といったものに関して誇りとプライドを持って、それを与えられたから、言われたから深めるというよりも、自分なりに深化させていく。こういった一人一人の心根のところに、ある意味、新しい職人文化をどう形成していくことができるかどうかが重要であると考えます。

 

 このときの問題は、例えば江戸時代、明治時代でしたら、1つの職種で生涯十分に対応できるわけだけれども、これからは技術の陳腐化も起こってくる中で職人かたぎといった技術スキルの深化に向けたスピリッツも、5年から8年ぐらいでリセットしていかざるを得ないようなことも起こってくる。

 

 そういったときに何が重要になってくるかというと、もちろんスキルや知識や資格も大事だけれども、何が起こっても自分は自分のキャリアを前向きにつくるというしっかりとした働く姿勢、意欲、マインド、これをしっかり持つことが非常に重要になってきます。それには何が効いてくるかというと、社会に出た最初のかなり早い段階でのいわゆる働くということに対しての前向きな姿勢、意欲のインプリンティングというか、つくり込みが非常に大事だと思います。

 

 私が前に調査をしたデータがありまして、例えば課長への第一次選抜、監督職への第一次選抜に挙がってくる人たちの特徴は、入社した最初の3年間の上司とのきめの細かい人間的な成長に関しての支援の存在があったかどうかでした。

 

 先ほどジェネレーションギャップのお話が出ましたけれども、ゆとり世代を含めて、特に若い方は、世の中には解決法がある、解決法にはスキルがある、そのスキルを最も効率的にマスターすることが、生き抜く上で一番重要だという教育を受けていらっしゃると思います。ですから、会社に入ってきても、優しく丁寧に教えてほしい、正しいスキルの手本を見せてほしい、そういったメンタリティーで上司に向き合うわけです。

 

 これは、間違っていると思います。むしろ最初の3年間、働くということに関して厳しい自分なりのマインド設定を行う。キャリア自律において、ブルドーザーで整地されていたり、用意されたキャリア自律の道をつくられても全く意味がないわけです。自分で修羅場を乗り切っていかざるを得ない。そのときは、自分自身のモチベーションの強さが必要です。こういうことを、最初の3年間あるいは5年間、しっかりと企業の中で学んでいくことはもしかしたら時代錯誤、アナログではないかと言われるかもしれないけれども、非常に大事だと思います。

 

 それから、私たちの研究所で2008年に転職者の満足度調査をいたしました。2,700人の転職者に対して、転職後、転職満足に影響する要因を分析調査をしたのですが、転職あっせんの業者の方々は、キャリアアップから地位が上がる、報酬が上がる、自分の希望どおりの仕事に就くことができることが転職満足に直結するとお考えになるわけです。

 

 でも、世の中はそんなに甘くないわけです。仮に地位があったとしても、いろんな形でダウンすることもあり得るわけで、転職後の調査をしたときに何が一番転職に関しての満足かというと、成長実感と、チャンスが拡大したことと、新しい職場で自分がお役に立ったという実感、こういうことを持てたことになります。いろんな意味で、転職者というのは一番のキャリア自律を実践している方たちです。

 

 そういう人たちにとって何が重要なのかというと、いろんな意味も込めて、成長実感と、自分の可能性、先行き、いろんな形でチャンスがふえていくという期待、そしてお役に立っているという人間関係の位置づけ、こういうものをしっかりとベースに置いて、例えばシニアのポストオフになった方、あるいはポジションになかなかつけない方、そういう方たちに対して、メンターやキャリアコンサルタントの方が何が成長実感なのか、自分にとって何がチャンスだと思っているのか、自分にとって何がお役に立つ喜びと感ずるのか、そういった支援をしっかりと行いないながらそれを定期的に実施し続ける。つまり、1回で終わらせるのではなく連続的に行い続けることが非常に重要なのではないかと思っております。

 

 お答えになったかどうかわかりませんけれども、以上です。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 ほかにどなたかございますか。

 

 山川さん、お願いします。

 

○山川委員 山川と申します。

 

 不勉強なもので極めて初歩的な質問で恐縮なのですが、キャリア自律といった場合、もちろん組織内でということもあるけれども、組織外もあると思います。今、転職の話もおっしゃいましたけれども、すごく大きいと思うのですが、社外も含めた全体的なキャリアコンサルみたいなことを一私企業がやる動機づけはどこにあるのですか。いい人材を獲得するとか、そういうところにあるのですか。

 

○花田氏 きれいごとかもしれないけれども、一人一人の方々にモチベーションをみずから開発して仕事をしていだくことは個人の活力にもなるし、あるいは企業の活力にもつながっていくという大前提は当然あると思います。

 

 ただ、今はそれよりも何よりも法律で、職業生活の設計とそのための能力開発は個人の責任で行うということが言われていて、それに対して企業は職業能力開発促進法でキャリアコンサルティングの機会の提供を行わなければいけないわけです。

 

 諏訪先生が、その昔、キャリア権という言葉をお使いになられました。キャリアコンサルティングの機会の提供を個人個人が受けることができることが法律で明記され、企業はそのサービスを提供しなければならない。ここに1人ひとりのキャリア権が(キャリアコンサルティングを受ける権利)が成立したと考えています。

 

 問題はキャリア権を個人が行使するかどうかです。キャリア権を行使するかどうかは本人の意識によります。今までキャリアのことは全て企業が考えてくれていて、それにのっかっていればそれでいいと考えていた人たちにとっては、このキャリア権の行使はとても難しいことかもしれません。

 

 ですので、個人が、先ほどから言っているような当事者意識と主体性と責任を持って対応していくような方向にいろいろと絡めて仕組みをつくっていくことが必要になってくるし、そういうことがないと結局、55歳、60歳になって、ああ、そうだったのか、もっと昔からやっておけばよかったという個人の気持ちは必ず出てくると思います。それは、不幸なことです。

 

 企業にとってみても、短期的な成果主義であればパフォーマンスマネジメントが重要ですが、企業と個人のサスティナブルな成長を念頭に置いたときに、一人一人の個人が自らパフォーマンスを開発していくというパフォーマンスデベロプメントがこれから重要となるかと思います。

 

GEも、Gapもみんな変わってきている。日本の企業の中でもパフォーマンスデベロプメントに向けた具体的な対応を始めた企業が出始めてきています。そういった方向に向けていかないと2035年、2040年、2045年の日本の企業の社員の方のモチベーションと企業の活性化は非常に厳しいものになるのではないかと考えております。

 

○山川委員 ありがとうございます。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 ほかにどなたかございますか。

 

 岩村さん、お願いします。

 

○岩村委員 私もこういう問題は素人なので、ピント外れな質問になるのかもしれません。お話を伺っていて今後非常に激しい技術革新、AI、その他が進む中で、企業が持続的に活動し、成長していくことを考えたときに問題となることの1つは、大卒ならば大卒の人を定期採用で獲得できる企業のレベルですと、よく聞くのは、非常にやる気のある若い人をせっかく採っても、その上に滞留している、やる気を失ってしまったおじさんたちがいて、その結果として若い人がやる気をなくして、やめていってしまうというようなことかという気がします。

 

 今、お話を伺っていると、今後そういったタイプの企業が危機感を持たなければいけなくて、特に一定年数等がたってしまって滞留している人たちに対して自律的なキャリア、キャリアの自律という観点からもう一度モチベーションを持ってもらって、そして、会社全体としての経営力あるいは組織力のアップにつなげ、ひいては若い人が持続的にその会社で働いてもらえるということにつながっていく。

 

 何となくそういうこともあるのかなと思いながら伺っていたのですが、そういったイメージがピント外れなのか、その辺をお伺いできればと思います。

 

○花田氏 これは極めて私見ですけれども、いわゆる肩たたきで、積み増しをするから出ていく機会をということをおやりになる場合、どういう方たちが出ているかというと、出ていってもらったら困る方たちが手を挙げて出ていかれます。これは、一般的な話だと思います。キャリア自律という考えが浸透していったときに、キャリア自律という機会が存在しなければ、もしかしたら前向き、能動的、積極的な方はかなり若い段階から見切って、出ていくようになるかもしれない。

 

 これもいろいろ問題がある発言かもしれないのですけれども、昨今の金融等の人材の流動化の動きを見ていると、給与の大幅ダウンであっても、あえて転職される方が若手にも増えてきています。ある意味、金融界の将来に関して物すごく強い危機感を持っている。その方たちは、自律的に、自分で自分の可能性を開いていく、そういった動きを積極的にされるわけです。これは避けることはできないし、産業の活性化から言えば優秀な人材がマーケットに出ていくのは産業としてのいろんな意味での活性化になっていくと思います。

 

 ただ、それをやってしまうと個別の企業の活性化はどうなっていくのか。当然いろんな意味でのバランスもあるけれども、個別の企業が強く生き残る、サステーナブルに伸びていくには将来を真剣に考えている人たちが、逃げいかないような仕組みを社内の中でしっかりとつくらないと、企業防衛からいっても危ない。ですから、私たちは優秀な人材には企業に残ってもらうということも1つやらなければいけないし、産業構造が大きく変わる中、ある特定の産業からこれから伸びていく産業に人が動いていくということも支援しなければいけないし、そのバランスをどのようにつくるかということはすごく重要なことなのではないか。

 

 私は、個別企業がしっかりとしたキャリア自律、キャリアデザインのプログラムを従業員と一緒につくり込んでいくというのは、企業防衛上からいっても非常に重要なことだという視点を持っております。

 

○岩村委員 ありがとうございます。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 ほかにはよろしいですか。どうぞ。

 

○波積参事官(人材開発政策担当参事官室長併任) 人材開発政策担当の波積でございます。

 

 今、花田先生からございましたキャリアコンサルティングですが、まさにいつも委員としてこの制度の普及・促進に向けて、非常に御協力をいただいておりましてありがとうございます。

 

 その中で、先生は愛情を持って私どもの業務の推進に協力をいただいておりますので、今日の表現でも義務化という表現をなされているのですけれども、念のために正確に情報を紹介させていただきます。

 

 職業能力開発促進法の中で、10条の3におきまして、事業主の方はキャリアコンサルティングの機会の確保、その他の援助を行うことと書かれておりまして、その上でこれを引いた条文で第8条の中で、事業主の方は、その雇用する労働者が多様な職業訓練を受けること等により職業能力の開発及び向上を図ることができるように、その機会の確保について、次条から第10条の4、要はこの中でキャリアコンサルティングの機会の確保が書かれており、条文ではそこに定める措置を通じて配慮するものとすると規定してございます。

 

 配慮という形になっておりまして、法律上、絶対にやらなければいけないという強制的な義務としては、書かれておりません。ただ、それを普及するために、先生には、いろんな意味で御尽力をいただいております。

 

 改めて、事実関係、法律上の条文を含めて御紹介させていただきます。よろしくお願いします。

 

○花田氏 義務から、ある意味、好ましいという流れで、いろんなニュアンスというか、程度はございます。その中で、割と義務に近い方向で読み取ることが可能な条文にもなっているのではないかということです。

 

○波積参事官(人材開発政策担当参事官室長併任) そういうことで、若干関係があるということを御紹介させていただきます。

 

○花田氏 資料3-2で、法制的な部分の私の解釈をまとめさせていただいております。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 それでは、これで花田先生のヒアリングは終わりにしたいと思います。花田さん、どうもありがとうございました。

 

 続いて、議題(2)の「その他」に移りたいと思います。議題(1)の事務局説明と、今の花田先生のヒアリングを踏まえて、日本における労働生産性の課題、多様な就業形態間の労働移動の見通し、人材育成のあるべき方向性、今後の労働教育のあり方について、残りの時間で御自由に議論いただきたいと思います。

 

 御意見等がおありになる方は、挙手をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。

 

 後藤さん、どうぞ。

 

○後藤委員 ありがとうございます。

 

 事務局提出資料の6ページと7ページに関してですが、生産性を上げていくためには、特にTFPとの関係ですと、イノベーションの寄与度が高いことが見て取れます。一方で、阻害要因を見ると、「能力のある従業員の不足」という労働者側からすると厳しい内容も掲げられているのですが、次のページでは、逆に日本は人的資本への投資が低いというデータが示されています。この関係というのはどのように見ればいいのか、少し教えていただけますか。

 

○奈尾労働政策担当参事官 6ページなのですけれども、左のグラフにありますように、イノベーションとTFPに相関があるということを前提に、何が阻害要因・促進要因なのかということで、右側に書いているのですが、恐らく右側のグラフは出典が文科省さんのイノベーションについての統計報告ということで紹介しているのですけれども、それと次のページの人的資本がどうかといいますと、どの産業でも能力開発費が伸び悩んでいるということが7ページにあらわれていると思います。

 

 この2つをどう両立するのかですけれども、例えばミスマッチ要因があるとすると、6ページ、7ページの内容は両立し得ると思います。御自分の会社で、現に従業者がいるけれども、その中ですぐこの仕事につける能力という面ではまず足りないという方がいらっしゃった場合、本来、能力開発をどうやるかというのは会社でも主体的に考えていく必要があると思うのですが、そこは目先の資本投資が十分にできていないという実態があるのではないか。今、わかる範囲ですけれども、そんな感じだと私どもは理解しております。

 

○後藤委員 ありがとうございました。

 

 先ほどの先生からのお話、更には前回までの関係者ヒアリングなどからすると、生産性向上のためには、能力開発や教育といった、人への投資ということが非常に重要なのではないかということをあらわしているのであろうと思いますので、そういった方向感の施策を強めていくことは重要なのではないかと感じました。以上です。

 

○守島部会長 ありがとうございます。

 

 ほかにどなたかございますか。

 

 山川さん、お願いします。

 

○山川委員 非常に感想めいた話になるのですけれども、特に自律的なキャリア支援の話を聞いていて、私は弁護士なので、資格があって専門性が非常にあるので、この話はよく理解できるし、うちの業界には結構当てはまると思いました。

 

 例えば、うちの事務所であれば、若い弁護士がいて、もちろんうちの事務所に残ってほしいのだけれども、必ず残るわけではないということはみんな大前提として思っています。独立するかもしれないし、別の事務所に行くかもしれない。でも、教育はしっかりしないと、今、困るし、残ってもらうためにも教育はしっかりするし、教育の内容もどちらかというとうちの事務所でのキャリアではなくて、弁護士としてどうかという話を中心にしています。

 

 あとは、キャリアの形成も非常にやりやすい。なぜかというと、職域が広いということもあるし、資格があるとすごく強い。特に女性の場合は、資格がある非常に強い。

 

 ただ、1つ、弁護士の場合、全く参考にならないのは、私見ですけれども、不当な参入制限があるので、競争がないからやっていけるというところもあるのですが、不当な参入制限などを除いても専門性はすごく大きくて、専門性があるから自信を持っていて、将来に対する不安はそんなにはないわけです。最悪、自分でやればいいわけです。そういうことを考えると、専門性を高めるというのは、自律性ということになると非常に重要だと思います。

 

 それから、生産性という観点とか、キャリア形成でもジェネラリストとしてキャリア形成するのはすごくイメージしにくいのだけれども、私は人事の専門家になるとか、経理の専門家になるということであればキャリア形成も考えやすいので、そうなってくると今までやってきた大企業でのジェネラリストでの育成というのはもちろんいいことがあることもよくわかるのですが、もうちょっと専門性を高めるとか、資格とまでは言わなくても、専門性が見えやすい方向にするとか、そうするともうちょっと流動性とか、自律性に寄与すると思いました。感想です。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 ほかにどなたかございますか。

 

○花田氏 守島先生、ちょっと発言してよろしいですか。

 

○守島部会長 どうぞ。

 

○花田氏 先ほど後藤委員が御質問されたことで、1つ御回答していなかった部分と、今のお話でちょっとお話ししたいことがございます。

 

 企業サイズに関してご質問を受けたと記憶しています。キャリアデザインワークショップ等に関して見ても、例えばシニア向け、ミドル向け、若手向け、あるいは企業サイズ、いろいろ変えてプログラムをつくり込んでいる。そういった意味での研究や対応をしています。

 

 こういう公の場で発言するのは言葉を選ばなければいけないのですが、ある外食産業で、そこで働くパートに近い方たちのキャリアデザインワークショップを実施したのですが、成長といってもわかってもらえないのです。子供の成長はわかるけれども、私はもう成長しているし、何が成長なのかというレベルです。そうすると、その方たちの目線に立った成長という話をしなければいけなくて、その方たちの立場に応じた世界観をつくりながら、そこでのキャリア自律をつくっていくということはすごく大事なことです。企業のサイズや業種、パートであろうとなんであろうと、それができれば、応用可能性は大だと思います。

 

 これから先のことを考えれば、スキルも、プロフェッショナリティーも、資格も、陳腐化していく。オックスフォード大学の研究でいうと、弁護士の資格も危ないわけです。特に特許の検索などにかかわる専門領域の弁護士などです。そうなってくると、今は国家資格や業界検定という形である程度の専門性を確保するけれども、それはいろんな意味でどんどん変わっていく。そのときに、変わったとしてもめげないで立ち上がってまた一歩踏み出せるという、皆さんにとっては、えっと思われるかもしれないけれども、回復力とか、人間力とか、総合力とか、こういうものがないと専門性は絶対に生かせないと思います。

 

 ですから、いろんな意味で専門性は大事で、持つことも大事なのだけれども、それをより積極的に活用していくに当たっては、その昔『アニマルスピリット』という本がございましたが、そういったガッツフィーリングみたいなものをどれほど個人がしっかり持てるかというのは非常に重要です。両方をどのようにバランスをとって持っていくか、それが大事だと思います。

 

 勝手なお話で、済みません。

 

○守島部会長 ありがとうございます。

 

 ほかにどなたかございますか。

 

 岩村委員、どうぞ。

 

○岩村委員 きょう、事務局に御用意いただいた資料2についてなのですが、私も素人なのでどこまでよくわかっているのかということもあるのですけれども、例えば資料2の5ページ、労働生産性変化率の寄与度分解ということで、経年的にグラフを示していただいていますし、7ページのところも、右側のグラフは経年的なもので示していただいています。

 

 特に日本の場合は、例えば5ページの図で見ると、1985年から1989年はいずれにしても非常に高く、それが下がっていって、今度は2000年から2004年で、産業間のところは別としてもTFPというのは逆に上がっている。

 

 ところが、2005年以降はずっと落ち込んでいる。そういうものを見ると、景気の変動の影響を非常に強く受けているのではないか。2005年から2009年というと、2008年にリーマン・ショックがあったということで、それ以来、日本経済は停滞してしまっていて、したがって設備投資とか、人的投資もみんな落ち込んでいるということなのか。

 

 無形資産装備率の7ページのグラフでも同じで、人的資本のところもそうですし、その上の無形資産装備率でも2006年以降のところでかなり落ち込んでしまっている。人的資本のほうは2001年から落ち込んでいるということで、事務局の観察があればと思うのですが、よく日本は生産性が低いと言われるのですけれども、それは構造的なものなのか、それとも景気変動とか、そういったものによってのことなのか。とりわけ最近の傾向、その他については、事務局ではどのように見ておられるのかということを伺えればと思います。

 

○奈尾労働政策担当参事官 今の5ページについてですけれども、景気要因がどのぐらいあるかは分析してみないと今にわかに申し上げにくいのですが、言えることといたしましては、日本の場合、労働生産性の伸びはデフレーター要因が大きくて付加価値要因が余りないと言われているようであります。

 

 それはなぜかというと、特に2000年あたりから先なのですが、いわゆるIT革命に乗りおくれている面があるのではないかということがよく言われているようでございまして、そういったことも、特に2005年以降のTFPの低下でありますとか、資本装備率もそれに近いものがあると思っています。資本装備率はソフトウエア、無形資産を含んでいるわけでありますけれども、そういったものについて、ここ10年余りの中でやや乗りおくれている面があるのではないか。その辺は、改善の余地があると思ってございます。

 

○岩村委員 ありがとうございます。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 ほかにございますか。ございませんか。

 

 岩村さん、お願いします。

 

○岩村委員 これも実証データに基づいていない単なる印象論なのですが、労働力の流動化という関係でいうと、最近、たまたま自分の教え子たちと会う機会があって職場等との関係がどうなっているかという話を聞くのですが、私の大学の場合は、それなりに皆さんいいところに入ることもあり、官公庁もそうなのですが、3年、5年たって異動しているかというと余り異動していません。大体同じところに皆さん勤めている。

 

 どうしてかという話を聞いたら、これも全く実証データではないのですが、コメントとして返ってきたのは、いいところに勤めているので福利厚生も含めて処遇が非常にいい。とりわけ女性は、そういう意味では、移るというインセンティブが比較的乏しいということになるかもしれないという話が返ってきました。

 

 確かに、彼らにしてみれば、相当の教育投資を経て、それなりの選抜を経て、処遇のいいところに入っているので、そう簡単にそこを手放すというのは、場合によっては投資が回収できないこともあるので、それはそれなりに合理的な行動だと思っていました。

 

 他方で、これも実証的データとしては全く言えませんけれども、もう少し規模の小さい企業のレベルで話を聞くと、先ほどの話ではありませんが、意外と会社自体の構造が古くて、結局、若い人はやる気があってもやめていってしまって、よりいいところを探してほかに移っていってしまうということは、どうもあるという感じがありました。

 

 さまざまな実証研究をされているのだと思いますけれども、労働力の流動性といったときに、どういう原因でそれが現実の中で起きていて、他方で、それが日本の場合、流動化しないというのはどうしてなのか。多分、これは年齢層とか、勤めている企業の規模とか、業種とか、そういったものによってかなり実相は違うと思います。

 

 気になるのは、労働力の流動化を高めましょうと言っていても、日本の場合、特に中小企業層はそもそも高いのではないかと思っているので、その辺はもう少し精査をするなり、当然資料はあるだろうと思うので、御紹介いただいたりすると、もう少し議論の焦点が絞れるという印象を持ちました。

 

 そうしないと、抽象的に流動性を高めましょうとか、成長が伸びていないところから、伸びているところへ移しましょうという、非常に抽象度の高い議論になってしまってかみ合わないという気がするので、その辺は工夫をしていただけると今後の議論に有益なのではないかという気がしました。

 

○守島部会長 ありがとうございました。

 

 何かございますか。

 

○奈尾労働政策担当参事官 今の岩村先生の御指摘でございますけれども、今日の資料の16ページにも産業計、例えば大企業については転職入職率をつけておりまして、これも中小企業はあると思いますので、御紹介できればと思っています。企業規模、産業、このあたりも雇用動向調査等であるのではないかと思いますので、次回また工夫させていただきたいと思います。

 

 例えば雇用動向調査でいいますと、産業別に見ると、入職率と離職率は高いところは高いし、低いところは低いという関係がございまして、28年度の雇用動向調査で見ますと、入職率が一番高いのは宿泊業、飲食サービス業になりまして、こちらの入職率は32%となっています。

 

 ところが、こういうところは離職率も高くて、離職率は30%です。入職率と離職率は、プラスマイナスで大体2割ぐらいの差にとどまっている産業が多いです。

 

 逆に金融・保険業は、入職率が10%で、離職率が9.4%になっていまして、入職率が高い産業は離職率も高くて、低いところは低いという関係になっているだろうと思います。

 

 そういったことも踏まえて、次回、資料も修正したいと思いますので、よろしくお願いします。

 

○守島部会長 ありがとうございます。

 

 ほかにどなたかございますか。

 

 後藤委員、お願いします。

 

○後藤委員 今の岩村先生のお話と職場の実態も踏まえた感想になりますが、大企業は人が出ていかないようにいろいろと努力をしている部分は多分にありまして、人事・処遇制度もその観点で整備していると思います。

 

 とりわけ、最近、意外だと感じているところは、例えば、日本企業が海外に現地法人などをつくっているケースがありますが、海外だと結構ジョブホッピングが多いように思うのです。しかし、最近は人材に定着して欲しいという思いが非常に強くて、現地法人でも日本の人事制度と似たような制度を導入して、その企業、あるいは現地法人の中でキャリアアップしていくような制度などもつくっているのです。つまり、海外だからといって、必ずしも全体として流動性が高いということでもないですし、企業の大きさや産業によってもかなり事情が違うのだろうと思っていますので、その辺をもう少し解明できれば議論がまた違うと思います。

 

○守島部会長 ありがとうございます。

 

 ほかにどなたかございますか。大丈夫ですか。

 

 後藤委員、ちょっとだけ私からお伺いしたいのですけれども、企業だと出したい人とキープしたい人はある程度峻別をされている可能性はある。峻別というのは、そこまで明確ではないにしても分かれている可能性はあって、それに対して1つのシステムで、もしくは仕組みで何をやっていくということが難しい。残したい人をどうやって残して、出したい人をどうやって出していくのかという、そこの部分で結構逡巡がおありになると私は感じていますけれども、後藤委員は唯一企業の方なのでお願いいたします。

 

○後藤委員 なかなか答えづらいところではありますが、先ほど花田先生からもお話があって、例えば早期退職優遇制度などを入れると、どうしても優秀な人からやめていってしまうということは本当にそのとおりなのです。優秀な人材を確保しつつ、出したい人を出していくということを、ある一つの制度の中で実現しようというのはなかなか難しいです。むしろ、労働力が減少してしまっている昨今、出したい人を出していくということよりも、出したいと思っているかもしれない人の能力をどうやって高めていって、企業の中で活躍してもらうか。あるいは、企業グループを形成しているのであれば、本社機能だけではなくて企業グループ全体の中で、適正な配置によって能力を発揮してもらうかということのほうにシフトしているのではないかと思います。

 

○守島部会長 わかりました。ありがとうございます。

 

 どなたかございますか。よろしいですか。

 

 それでは、ちょっと早いのですけれども、きょうはこれで終わりにさせていただきたいと思います。

 

 キャリア自律という議論は、花田先生もおっしゃったように流動化ということを必ずしも出口として考えている考え方ではないと思います。世の中的にはそういう議論がされていますけれども、働く人が自分のキャリアを主体的につくっていくということを通じて、どうやってモチベーションを高めていくのか、自分で自分のスキルをどうやって高めていくのか、どういう方向でつくっていくのか、変わるということもあります。

 

 全体として、キャリア自律があることによって、きょうのテーマであるところのトータルな個人の生産性が高まっていくという、そこが出口であるべきであって、流動化ということが必ずしも出口ではないように思います。ですから、その辺も、今後の議論の中では少し分けた形で話し合いたいと思います。確かに、成長産業からどうこうという話は、重要になると思うのですけれども、そういう話だけにしないほうがいいという感じはきょう伺っていて感じました。

 

 それでは、時間的にはまだあるのですけれども、これできょうは終わりにさせていただきたいと思います。

 

 最後に、事務局から何か補足等はございますでしょうか。大丈夫ですか。ありがとうございます。

 

 それでは、次回日程について、御連絡いただきたいと思います。

 

○奈尾労働政策担当参事官 次回の当部会の日程でございますけれども、3月5日月曜日の14時から16時の開催を予定しております。

 

 場所につきましては、改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

○守島部会長 ありがとうございます。

 

 それでは、本日はこのあたりで閉会にさせていただきたいと思います。

 

 本日の議事録に関しましては、本審議会の運営規程によって部会長である私と2人の委員に御署名をいただくことになっております。本日は、岩村委員と山川委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

 それでは、これで本日の会議を終了したいと思います。ありがとうございました。御苦労さまでした。

 

 

(了)

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