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2018年11月12日 第72回労災保険部会

労働基準局労災管理課

○日時

平成30年11月12日(月)15:00~

 

○場所

AP新橋虎ノ門11階貸会議室C+D
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

○出席者

明石 祐二((一社)日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹)
秋田 進(日本通運株式会社取締役常務執行役員)
荒木 尚志(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
岩村 正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
大前 和幸(慶應義塾大学名誉教授)
小畑 史子(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
酒向 清(日本化学エネルギー産業労働組合連合会副会長)
砂原 和仁(東京海上日動メディカルサービス株式会社企画部担当部長)
田久 悟(全国建設労働組合総連合労働対策部長)
立川 博行(全日本海員組合中央執行委員政策局長)
坪田 英明(日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員)
二宮 美保(セコム(株)人事部特命担当次長)
浜田 紀子(UAゼンセン(日本介護クラフトユニオン特任中央執行委員))
本多 敦郎(鹿島建設(株)安全環境部長)
宮智 泉(読売新聞東京本社編集委員)
村上 陽子(日本労働組合総連合会総合労働局長)
山内 幸治(新日鐵住金(株)人事労政部 部長)
 
 

○議題

(1)労働保険の保険料の徴収等に関する一部の申告書の提出方法の変更について
(2)複数就業者への労災保険給付の在り方について

○議事

○荒木部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第72回労災保険部会を開催いたします。本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の水島委員が御欠席、それから使用者代表の砂原委員は遅れての到着と聞いております。そうしますと出席者は17名となる予定ですが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がございますので、定足数は満たしていることを御報告いたします。
 始めに、事務局の人事異動がありましたので御挨拶をお願いいたします。

○審議官(労災、建設・自動車運送分野担当) 7月30日付けで労災担当の大臣官房審議官に着任いたしました松本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。委員の皆様方におかれましては、日頃より労働行政の推進につきまして御理解、御協力を賜っていますこと、厚く御礼を申し上げます。
 本日の部会では、1つ目の議題といたしまして、労働保険料の徴収等に関する電子申請の推進につきまして、御議論いただく予定です。この議題は、昨年6月に閣議決定いたしました規制改革の計画に基づきまして、今、検討しているものです。また、2つ目の議題としましては、複数就業者への労災保険給付の在り方について、御議論を頂く予定です。これは本年6月の労災保険部会でも既に議論を開始していただいているところです。今回、改めまして、現行の労災保険制度等につきまして整理した資料を用意しておりますので、皆様方の忌憚のない御意見を頂ければ幸いだと思っているところです。本日の部会、また今後の部会におきまして、委員の皆様方から、労働行政の推進に当たりましての温かい御意見、御指導をお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○労災管理課長 夏の異動で労災管理課長を拝命いたしました田中でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○荒木部会長 次に、本日の部会はタブレットによるペーパーレス開催となります。事務局から御説明があるようであればお願いいたします。

○労災管理課長 できるだけペーパーレス化をするということになっており、今回、このようにタブレットが確保できたということがございまして、ペーパーレス開催とさせていただきたいと思います。課長補佐の尾崎よりタブレットの操作方法を御説明いたしますので、どうぞよろしくお願いします。

○労災管理課長補佐(企画) それでは私、尾崎のほうから御説明させていただきます。まず、タブレットは、指、又は配布しておりますスタイラスペンのいずれかでタッチいただいて、操作いただきたいと考えております。このスタイラスペンというのは、クリップ部分を捻っていただいて先を出していただくと、タッチできることになります。指でも結構です。ただ、このペンには、今の時点でメモ機能がございませんので御了承ください。また、このタブレットの画面ですけれども、今、皆さんの所では横置きにしておりますが、適宜、縦置きにもできますので、見やすい形でお願いしたいと思います。それから、お手元に配布しました操作説明書、この青の紙も適宜、御参照いただきながらと思いますが、もし、資料の説明の途中で御不明点がございましたら、周りに職員がおりますのでお声掛けいただければと思います。
 それではまず、資料を開いていただきたいと思います。開き方ですが、既に皆様の画面右側にマイプライベートファイルというフォルダーが開かれているかと思います。こちらに議事次第含め4つの資料がございますが、その順番にこちらから御説明しますので、該当する資料をタッチいただければと思います。例えば、03資料2というのを開いていただいて、また閉じる場合ですが、どこか任意の画面をタッチいただきますと、一番左上にマイプライベートファイルという青い文字が出ますので、そこをもう一回タッチいただきますと、元の画面に戻ることになります。
 資料の繰り方は御説明するまでもないかもしれませんが、順次、スライドしていくと繰っていくことができます。もし、任意のページ、指定のページを開きたいという場合には、一番左下に青い3本線が出るので、そちらの「ファィル印刷に注釈を付ける」という所をタッチしますと、一番下に小さい画面でいろいろページ数が出てきますので、そこをなぞりながら指定の画面を開いていただければと思います。不都合がございましたらお声掛けください。
 最後に、御発言の際には、できればマイクを口元に近付けて御発言いただければと思います。以上です。

○荒木部会長 それでは、傍聴の方でカメラ撮影等があれば、ここまでということでお願いをいたします。本日の議事に入らせていただきます。第1の議題は、労働保険の保険料の徴収等に関する一部の申告書の提出方法の変更についてです。では、事務局から説明をお願いいたします。

○労働保険徴収課長 それでは、お手元の資料、資料1がございますでしょうか。まず、2ページ目、(参考)という所から御説明を申し上げたいと思います。今回、こちらに御提案を申し上げました変更案となるまでの経緯です。まず、一番初めに、平成28年6月20日に、日本再興戦略2016の中で「GDP600兆円経済」の実現に向けて幾つかの課題が掲げられました。その中の1つが、事業者の生産性向上を徹底的に後押しするということで、それの具体的な中身として事業者目線で規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に進める新たな規制・制度改革手法の導入ということが掲げられたわけです。これを受けまして平成29年3月、規制改革推進会議行政手続部会で、行政コストを2020年までに20%削減するという目標が掲げられました。また、加えまして、同年6月9日に閣議決定されました規制改革実施計画において、税・社会保険関係事務のIT化、ワンストップということが目標となりました。それを更に具体化した厚生労働省の行政手続コスト削減のための基本計画、これは平成29年6月に策定されましたけれども、社会保険関係の主要取続について、大法人の事業所が行う場合は電子申請を義務化という流れに従いまして、今般、その中身について御提案を申し上げているところでございます。
 それでは1ページに戻って、具体的な中身について御説明をいたします。前段については、今、申し上げた経緯です。中盤以降に「より一層電子申請の利用促進を図るために、労働保険等」と書いてありますが、この「等」については、一般拠出金のことを含めて「等」というふうに書いてございます。労働保険等に関します一部の主要な手続について、特定の法人が行う場合には電子申請によることを義務付けるものであり社会保険及び税も同じような枠組みの中でやります。ただ、そこにおける主要な手続というのは個々に異なってきますので、それについて以下、御説明を申し上げたいと思います。
改正の概要という所ですが、①義務化する対象手続です。労働保険の場合につきましては、主要な手続としておおむね3つあります。概算保険料の申告、それと増加概算保険料の申告、さらには精算をするための確定の保険料の申告ということになっておりますが、それぞれに石綿健康被害救済法の一般拠出金が同時に申告をされることになっておりまして、今般、対象とする手続については以上の4点を考えております。
 ②ですが、特定の法人等の範囲についてです。そこに4点書かせていただきました。資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人、それと相互会社、投資法人、特定目的会社です。全体的に申し上げますと、この中で最も多いのは資本金が1億円を超える法人であると私どもは認識をしております。これは財務省が行っております法人給与統計調査の母集団になりますけれども、そこではおおむね3万2,000程度の法人が対象となってくるだろうと思っております。その他の法人等につきましては、それほど数が大きくないものですから、恐らく3万2,000~3,000程度の対象法人になるだろうと考えております。これらの法人が特定の法人となってまいります。
 加えまして、1つ目については、社会保険労務士及び社会保険労務士法人がこの特定法人に代わって手続を行う場合も含みますということ。それともう1つ、やむを得ない理由がある場合は次回以降の電子申請を促しつつ、紙での申請も受け付けるということにしております。この、やむを得ない理由と言いますのは、災害でありますとか、今回は特に、このシステム関係を介在して申請を頂くということになりますので、システムの障害等が考えられるわけでございます。
 続きまして、施行の時期です。平成32年4月1日を考えております。周知期間をしっかり取ろうということで、この時期にこの部会に御提案をさせていただいているわけでございます。
 最後は、経過措置です。平成32年4月1日以降開始される事業年度について順次、適用するとしております。これも税、及び社会保険との並びを考えてこのようにしております。各法人におかれましては、事業年度が定まっておりますので、平成32年4月1日以降、順次、各法人の事業年度の開始日以降は、この改正に基づいて電子での申告をやっていただくという流れになっております。私からは以上です。

○荒木部会長 それでは、ただいまの御説明につきまして御意見、御説明等があればお願いいたします。

○酒向委員 労働保険等の関係手続の電子申請の義務化について、最初の御説明にございましたように、政府全体での行政コストの削減という観点でと理解をいたしましたが、利用者の利便性の向上や、申請手続の処理の迅速化に加えまして、作業の軽減という観点も併せた形で是非とも御検討いただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○労働保険徴収課長 頂きました御意見につきましては、現在も私どもとして迅速処理に努めておりますが、引き続き、今後とも迅速な処理に努めていきたいと思っておりますので、どうぞ御協力いただければ有り難いと思っております。

○荒木部会長 ちなみに今、御覧いただいている資料1については、次回、諮問を頂きたいということで、今日のところは御説明についての御意見を頂くという案件です。ほかにいかがでしょうか。

○明石委員 質問を2点させてください。1点目は、平成32年4月1日以降の義務化による罰則はあるのかということ。もう一点は、これはお願いマターですが、紙ベースでやっているものを電子化するためにソフトウエアを直していくと、やはりかなりコストが掛かるということになります。これについて、e-Gov等を利用するのがいいと思うのですけれども、事業者にとって何かやりやすい方法等について御考慮を頂きたいのですが、いかがですか。

○労働保険徴収課長 まず1点目の罰則の件ですが、この関係については罰則規定はございません。それと2点目につきましては、システムの使いやすさだと思います。厚生労働省で電子申請に関しての調査をしましたところ、やはり、電子申請の窓口であるe-Govの初期設定ですとか、いわゆる準備に手間が掛かるという御意見も頂いておりますので、私どもとしましても、来年度は電子申請のシステムを利用するための初期設定につきまして、私どもで代行するサービスを実施していく事業なども考えているところでございます。

○荒木部会長 よろしゅうございますか。ほかにはいかがでしょうか。特段、御意見等がなければ、ただいまの件は次回、大臣からの諮問を受けて議論する予定でおりますので、ここまでにしたいと思いますが、よろしいですか。
それでは、続いて第2の議題に移ります。第2の議題は、複数就業者への労災保険給付の在り方についてです。では、事務局から説明をお願いします。

○労災管理課長 労災管理課長でございます。それでは、お手元のタブレットのファイルナンバー03、04を用いて御説明を申し上げたいと思います。
 まず資料2になりますけれども、複数就業者への労災保険給付についてというのを開けていただければと思います。先ほど、審議官からもお話を申し上げたところなのですが、平成30年6月22日の部会におきまして、複数就業者への労災保険給付の在り方についてということで議論を始めていただいたということです。その際、大まかな論点をお示ししたのですけれども、今回は補足的に労災保険の制度の概要や、あるいは労働基準法と労災保険法の関係、こういったものについて御説明を申し上げたいと思います。
 それでは、複数就業者への労災保険給付についてという資料の2ページ目を御覧いただきたいと思います。労働者災害補償保険制度という題になっています。労災保険法の背景・趣旨というところから、書かせていただいておりますけれども、労災保険については業務災害、通勤災害に対して、迅速かつ公正な保護をするための保険給付を行うことがメインになっていますが、併せて被災労働者の社会復帰の促進や、被災労働者やその遺族の援護、安全衛生の確保を図ることも、保険制度の目的としているということです。
 それから労働者の業務災害については、使用者は労働基準法に基づく災害補償責任、いわゆる無過失責任、災害補償責任を負っています。ただし、労働基準法の災害補償に相当する労災保険給付が行われる場合には、この責任が免除されるということになっていて、労災保険が、実質的に事業主の災害補償責任を担保する役割を果たしているということです。
 概要・仕組みという所ですが、御案内のように、労災保険法については、労働者を使用する全ての事業に適用というのが原則です。小さい字で※1や、あるいは※2という所に書かせていただいていますが、農林水産業の事業の一部が暫定的に任意適用になっているということです。また、労働者以外の方であっても、いわゆる特別加入という制度があるということです。費用ですが、原則として事業主の負担する保険料によって賄われているということです。
 主な保険給付としては、そちらに書いてありますように、療養補償給付、これは療養されたときの給付です。休業補償給付、休業1日につき給付基礎日額の6割を支給するというものです。障害補償給付、障害が残った場合に年金又は一時金を支給するもの。それから遺族補償給付、遺族に対して年金又は一時金を支給するもの。こういったものが主な保険給付ということです。こちらも小さい字で恐縮ですが、※5という所で、これらに加えまして特別支給金というプラスアルファの支給金も出しているということです。
 社会復帰促進等事業というものですが、これについては3つの類型に分かれます。社会復帰促進事業として、特定疾病アフターケアの実施などを行っています。被災労働者等援護事業として、特別支給金、先ほどプラスアルファの給付と申し上げました特支金、あるいは被災労働者の遺児等への労災就学等援護費の支給、こういったものを行っています。安全衛生確保対策として、アスベスト等による健康障害防止対策、過重労働・メンタルヘルス対策、それからいわゆる賃確ですけれども、倒産した企業の労働者のための未払賃金の立替払事業といったものを行っているということです。
 基本データという所ですが、適用事業場数が300万近くあるということです。また、適用されている労働者数が5,830万余ということです。以下のデータについては、御覧いただければと思います。
 3ページ、労働者災害補償保険制度の概要(平成30年度予算額)です。これは、労災保険の体系を樹形図的に示したものです。内容については、先ほど申し上げた内容と重複していますが、保険給付と社会復帰促進等事業の2つに分けられていて、それぞれについて給付も何種類かあるということです。それぞれ予算額を入れていますので、規模感をこれで御覧いただければと思います。
 4ページ、労災保険給付の趣旨・目的です。こちらもそれぞれの給付について、簡単に書かせていただいています。まず、療養(補償)給付ですが、これは被災労働者が傷病を受けたことによる損害を填補するというものです。
 休業(補償)給付については、被災労働者の方が、受けた傷病の治療のために労働することができないと、そのために収入が得られなくなったということについて、日々の損害を填補するというものです。
 傷病(補償)年金ですが、これは被災労働者の方が、その受けた傷病により一定の障害の状態にあり、そしてその障害がまだ固定化されていない、こういった場合に労働能力を喪失したことによる損害を填補するという目的で給付されています。
 障害(補償)給付ですが、こちらは身体に障害が残ってしまった、その結果、将来に向かって労働能力の全部又は一部を喪失したと、そのために収入を得られなくなったことによる損害を填補するものです。
 最後の遺族(補償)給付ですが、こちらはお亡くなりになった場合に、将来に向かってその方から扶養を受けられなくなったことによる損害を、遺族の方について填補するというものです。以上のようなものが、主な給付とその目的ということです。
 5ページですが、労災保険の労災保険率です。これは業種によって、様々な保険料率になっているところです。左側の所が全業種の平均の推移で、今までどのように推移してきたかというものを書かせていただいていますが、ここ30年で見ますとだんだん下がってきています。災害発生率等が下がっているということもあると思いますが、下がっているところです。現在、平成30年度からは、4.5/1,000というのが平均になっております。
 これを分解して、どのような形でこの料率が構成されているかということですが、右側になりますけれども、業務災害分と非業務災害分などに分かれるかということです。業務災害分については、短期給付分、長期給付分ということで計算をしています。この2つについては、いわゆる全業種の平均値ということで、業種によって異なる数値になります。非業務災害分、通勤災害などの分ですが、それから社会復帰促進等事業や事務執行に要する費用分、こういったものについては全業種共通ということです。
 最後に、年金積立調整費用です。これは、いわゆる長期給付に備えて年金を、積み立てているわけですが、その責任準備金の状況を勘案して、これぐらいは下げても大丈夫だろうということで、引下げを3年間にわたって行うということなのですけれども、そのときの料率が0.4/1,000ということです。これを差し引いて計算しますと、4.5/1,000になっているということです。
 次に労働基準法と労災保険法の関係について、簡単にですが御説明したいと思います。7ページです。労働基準法の災害補償と労災保険法の給付の関係(イメージ図)というカラーのものがありますが、これは労災保険法の支給の範囲と労働基準法上の災害補償の範囲が、どういう関係になっているかというのを図示したものです。
 オレンジ色の部分が、労働基準法上の災害補償です。紫の囲いの中が、労災保険法の支給範囲ということです。これで見ますと、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、打切補償などについては、労働基準法上の災害補償の責任の部分と、それから労災保険法の支給範囲というのが一致をしている、重なっているということです。上の方の部分、障害補償(年金払)の部分や、あるいは特別支給金、こういったところがいわゆる上乗せになっているということです。
 また右側ですが、労災保険法独自の保険給付です。通勤災害に関する保険給付や介護補償給付、二次健康診断等給付、こういったものが労災独自の給付ということで、いわゆる横出しになっているということです。
 一番左側の方ですが、休業補償(休業1~3日目)と書いてありますけれども、休業して3日目までについては、これは労災保険法の適用はありません、労働基準法上の災害補償責任があるといった状況になっているということです。そういう意味では、労災保険法の支給範囲が、かなり広くなっていると考えていただいていいかと思います。
 8、9ページは、金額なども含めて細かくお示ししたものですので、また後で御参照いただければと思います。
 10ページが参照条文ということなのですけれども、この参照条文の中の一番下の所、労働基準法第84条があります。この中で、他の法律との関係ということで、この法律に規定する災害補償の事由について、労災保険法あるいは厚生労働省令で指定する法令、これは国共済や地共済などですが、そちらの災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は補償の責を免れるという規定になっているということです。したがいまして、労災保険が支給されるということであれば、災害補償の責任が免除されることになるということです。
 11ページ以降は、6月にお示した資料です。若干、微修正はしておりますけれども、基本的には変えておりません。複数就業者への労災保険給付(現行制度)についてということです。
 12ページ、複数就業者への労災保険給付(現行制度)です。まず、1.適用という所です。先ほど申し上げましたように、労災保険制度は労働者を強制加入の対象としているということですので、労働者の方であれば形態に関係なく強制適用の対象となるということです。ただし、暫定任意適用はありますということを書かせていただいています。このため複数就業者であって、本業・副業いずれも労働者として就業する場合には、本業・副業のいずれにおいても労災保険は適用されるということです。一方、本業は労働者、副業が非労働者かつ特別加入をしておられないといった場合については、本業では労災保険が適用されますけれども、副業では労災保険は適用されないということです。これがもし逆であれば、例えば本業が非労働者かつ特別加入していないと、そして副業で労働者だということであれば、これは結果は逆になるということです。
 給付額の所ですけれども、先ほど申し上げましたように、業務災害が発生した事業場の使用者については、労働基準法により、いわゆる無過失災害補償責任が課されているということです。労災保険制度が、当該使用者の災害補償責任を担保すると、こういった目的もありますので、療養の給付、これは病院に掛かられたときの給付ですけれども、こういったものを除きまして、当該使用者から被災労働者に支払われた賃金を基本に算定をするということになっています。それによって給付額を決定しているということです。それから、その下の所ですが、複数就業者への労災保険給付額については、本業・副業のいずれか災害が発生した事業場の賃金分のみを算定基礎としていると、こういう取扱いになっているということです。
 具体例ということで、こちらも前回6月にお示した資料にも載っておりましたけれども、13ページです。複数就業者の方、就業先Aという所で働いていらっしゃる方がBという所でも働いている場合です。就業先Bでは月に5万円、就業先Aでは月に15万円ということなのですが、例えば就業先Bでけがしたということで、休業せざるを得なくなったと、この場合には、就業先Bでも就業先Aでも休業せざるを得ないということになるわけですが、今の労災保険法上の取扱いでは、就業先Bの賃金分のみを基礎として給付を計算しているということです。
 あと下の方に少し付け足していますけれども、いわゆるメリット制というものについて若干書かせていただいています。こうして保険給付が出た場合については、3年間の保険料の額分の3年間の保険給付額、これらを分母分子としてメリット収支率というものを出しています。これも小さい字で恐縮ですけれども、分子の保険給付額の中には、例えば通勤災害など、事業主の災害防止努力の及ばない給付は入れないと、あるいは基準法の災害補償の範囲を越える給付は基準法の補償相当分に限定すると、こういった修正を行っているということですが、いずれにしてもこれでメリット収支率を計算するとこういうことになっています。
 これは少し補足的な説明ですが、次の14ページです。労災認定という所ですが、複数の事業場で就業されている方について、どういった認定の仕組みになっているかということなのですけれども、通勤災害等を除き、基準法に規定する災害補償責任の事由が生じた場合に保険給付を行うということが、労災保険法第12条の8に規定されています。このため業務災害が発生した事業場ごとに、労災認定における業務起因性の判断を行っているということです。したがいまして、使用者が同一である場合を除き、複数の事業場における業務上の負荷を合わせて評価するといった取扱いはしていないということです。
 参考として、このような趣旨の判決が大阪高裁で出ていると、直近の判決ですけれども書かせていただいています。
 具体例でいきますと、6月の資料にも入れておりましたが、就業先Aでは40時間、就業先Bでは25時間、1週間当たりに働いていらっしゃるといった場合で、例えば、脳や心臓疾患を発生した場合に、これはプラスして65時間働いていたと見るのではなく、Aのほうでは40時間、Bのほうでは25時間ということで、それぞれでそれだけの時間を働いていたと判断をするということです。ですので、この場合は、脳・心臓疾患の認定基準には当てはまらないということになります。こういったことを、例として書かせていただいています。以上が制度の内容等についてです。
 15ページ以降ですけれども、労災保険以外の事項に係る副業・兼業の検討状況です。ほかにどういった検討をしているかというのを、御紹介させていただきます。
 16ページですが、同じく労働基準局で行っていますけれども、副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会を行っています。どちらがどれだけの責任を負うか、あるいは労働時間管理の在り方はどのようなものが適切かといったようなことを検討していますが、諸外国の状況などもよく踏まえて検討するということで、これから海外調査なども行うと聞いています。現在までに、2回の検討会を開催している状況です。
 最後の17ページになりますが、雇用保険の適用に関する検討会、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用に関する検討ということです。この検討会については、既に4回開かれている状況です。一定の整理が近々なされるのではないかと思いますが、検討が進んでいるという状況です。以上がファイルの03の内容です。
 すみません、マイプライベートファイルに戻っていただきまして、ファイル04参考資料の副業・兼業の現状を若干、簡単に御説明します。これも6月に御覧いただいた資料の改訂版ということです。新しい数字も出てきましたので、それを入れ込んでいるというものです。
 副業・兼業の現状(前回資料の改訂版)ということですけれども、1ページ目、グラフが載っている所を御覧ください。副業・兼業の現状という所です。これは副業を希望されている方が、どれぐらいいらっしゃるかという調査ですが、2012年の数字に2017年の数字も入れ込んだということです。新しく入れ込んだ所が、赤字になっています。2012年に比べても増えているということで、増加傾向にあるということです。同じく複数就業者は、本業も雇用、副業も雇用という方ですけれども、2.2%ということで、これも2012年に比べると増えているということで、増加傾向にあります。
 2ページ、副業・兼業の現状(働き手側②)ですけれども、これも数字を新しくしています。本業の所得階層別でみた副業している者の数ということなのですけれども、本業はどれぐらいの所得の方が、どれくらい副業をしているかということで、これは傾向としては、2012年と余り変わっていません。本業の所得の低い方と高い方は、比較的、副業している方が多い状況となっています。ちなみに円グラフの所ですが、299万円までの方が67.3%。300万円以上の所は32.2%。299万円以下の方が、非常に多いという状況になっています。
 次ページですが、正規職員の方が、どれくらい副業しているかというグラフです。こちらは、前回はお出ししていなかった資料ですが、左側のグラフの形で見ますと、余り全体の傾向と変わらないということになっています。
 4ページ、本業は非正規の方についてはどうかということなのですが、所得階層別で見ますと、それほど中がくぼんでいるような形にはなっていないということです。大体、同じようなパーセンテージで推移しています。
 5ページ以下については、新しい資料を入れて更新をしていますが、それほど前回と傾向が変わっているわけではないということです。資料の説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

○荒木部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの資料の説明について、御意見、御質問等があればお願いします。

○浜田委員 御説明ありがとうございました。夏にも、同じような資料で御説明いだき、その際も申し上げたので繰り返しになりますが、今の御説明いただいたデータを見ても、副業・兼業をしている方というのは増加傾向にあるということが1つあります。労災保険では、労災認定における業務起因性の判断については、複数の就業先の業務上の負荷を合算するという評価の取扱いはしておりません。また、労災が発生した事業所における賃金を算定基準とした給付しかされませんので、AとBで働いていて、Aで倒れてしまった、けがをしてしまったとなると、Aの賃金の分しか算定基準にならないというのが現状です。やはり、労災保険そのものの趣旨を考えますと、被災労働者の保護、補償という目的がありますので、労働時間や具体的な出来事を合算して、認定給付が行われるべきであり、そのような観点から検討、整理を行っていただきたいという意見です。

○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○坪田委員 御説明ありがとうございました。労働災害の発生した状況として、4日以上の労働災害が発生した場合に、事業場による3日分の休業補償の給付があると思いますが、複数就業の場合、この給付がどのように保障されるのかをお聞きしたいのと、またその給付が確実に保障される仕組み、制度の検討をお願いしたいと思います。以上です。

○荒木部会長 幾つか御意見を聞いた後に、まとめて事務局からお答えすべき点をお願いしたいと思います。ほかにはいかがでしょうか。では今の2点について、事務局から何か御説明等がありますか。

○労災管理課長 御質問、ありがとうございます。休業3日分までの災害補償ということになりますけれども、これは災害補償責任として使用者の方にダイレクトに掛かっているということです。このため労災保険の対象になりませんので、それぞれの使用者の方が措置をされているとなるわけです。では、現実問題として、どうのように施行、運用されているかということについて、具体的にこうだと提示できるような実例を我々はお持ちしているわけではないのですけれども、当然、罰則もかかった規定ですので適切に施行がなされているということだと思います。仮になされていないということが、監督指導等の中で何か判明したということになれば、適切に指導はしています。もし実行されていなければ、そういうことになろうかと思います。

○荒木部会長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

○村上委員 今の坪田委員の質問への回答について、趣旨をもう一度、御説明したいのですが、現行の3日目までの災害補償責任としての休業補償の話は承知をしているのですが、複数就業の場合のそれぞれの事業場での状況、エピソードを合算して労災として補償をするといったときに、休業補償の分はどうなるのかということも、整理をしておく必要があるのではないかということです。A事業場とB事業場でそれぞれ、例えばハラスメントがあり、その両方が業務起因性のエピソードとなっていたということになったとき、3日目までの分をどのようにするのかということは、整理が必要ではないかという趣旨でした。この場で、何か整理ができるという話ではないかもしれませんので、今後、見直しを検討していく際には、そのことについても一定の整理が必要ではないかという意見です。

○荒木部会長 ありがとうございました。労基法上の使用者個人の補償責任と、労災保険法の関係にも影響する問題ですね。ほかにはいかがでしょうか。先ほど、浜田委員からは、被災者の保護のために、現在、両事業場からの収入を前提とした補償がなされていないところを、改善すべきではないかという趣旨の御発言がありましたけれども、使用者側からは何か、この点についてはよろしゅうございますか。

○明石委員 今、2つの検討会が動いておりますので、その様子を見ながら我々としても検討していきたいと思っています。

○荒木部会長 ありがとうございました。ほかの点については、いかがでしょうか。

○本多委員 前回のこの会議の場で、4点ほど問題提起をさせていただきましたので、今後、そのことについて事務局からの御説明をお聞きしながら、いろいろ協議させていただければ有り難いと思います。次回以降、どうぞよろしくお願いいたします。

○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。労基法上の制度と労災保険法上の制度をどう考えていくかという制度の問題もありますので、簡単には結論が出しづらい点もあるかと思います。ほかに特段、御意見がなければ、この点について、本日は以上ということで、よろしゅうございましょうか。
 本日も幾つか御指摘もありましたので、その点も踏まえつつ引き続きこの労災保険部会において、議論を進めてまいりたいと考えております。その他、この場で何か御発言があれば承りますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、本日の部会は以上といたします。本日の議事録の署名委員は、労働者代表の坪田委員、使用者代表は明石委員にお願いをすることといたします。
 御多忙の中、御参集いただきどうもありがとうございました。
 

 

(了)

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