ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)> 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録(2017年9月29日)




2017年9月29日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

○日時

平成29年9月29日(金)10:00~


○場所

新橋8E会議室


○出席者

出席委員(20名) 五十音順

◎荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、○一 色 高 明、 梅 津 光 生、
  北 澤 京 子、 後 藤 雄 一、  小 西 郁 生、 齋 藤 知 行、
  正 田 良 介、 鈴 木 邦 彦、  田 島 優 子、 寺 崎 浩 子、
  中 島 康 雄、 中 谷 武 嗣、  配 島 由 二、 濱 口    功、
  菱 田 和 己、 村 上 輝 夫、  桃 井 保 子、 渡 邉 和 久
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人2名

欠席委員(2名)五十音順

石 井 明 子、 塩 川 芳 昭、 

行政機関出席者

宮 本 真 司 (医薬・生活衛生局長)
森    和 彦 (大臣官房審議官)
中 井 清 人 (医療機器審査管理課長)
山  本    史 (医薬品審査管理課長)
佐 藤 大 作 (医薬安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
宇  津    忍 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
木 下 勝 美 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○医療機器審査管理課長 それでは定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会」を開催いたします。先生方におかれましては、御多用の中、御出席いただきましてどうもありがとうございます。本日は、本部会委員22名のうち19名でありまして、後ほど田島先生はお越しいただけるかと思いますが、御出席を頂いております。薬事・食品審議会令に基づく定足数を満たしていることを御報告申し上げます。

 まず、先日事務局から人事異動がありましたので、御紹介させていただきます。機構の安全第一部長を務めておりました近藤恵美子が退任し、新たに上野清美が就任してございます。

○安全第一部長 上野でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局 次に、本日の議題の公開、非公開の取扱いについて御説明します。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日予定している全ての議題は医療機器の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容などが含まれるため非公開といたします。

 続いて配布資料の確認をいたします。右側に事前配布資料、左側の上から順番に、議事次第、委員名簿、その裏面に座席表、配布資料一覧、当日配布資料一覧があります。また、当日配布資料一覧の中に当日配布資料1~4までがとじてあり、当日配布資料2と3は両面となっております。事前配布資料は資料1の下に資料2、資料3、資料4-1、資料4-2、資料4-3、資料5-1、資料5-2と参考資料が置かれております。過不足などがありましたら事務局までお知らせください。

 次に、本日の審議事項に関する競合企業として、当日配布資料の2と3に示しております企業について、委員の皆様から寄附金・契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、薬事分科会審議参加規定第12条の審議不参加の基準に基づく審議に参加できない委員はいらっしゃいませんでした。以上、御報告いたします。

 それでは、以降の進行について荒井部会長、よろしくお願いします。

○荒井部会長 おはようございます。それでは始めさせていただきます。ただいまの事務局からの説明につきまして、何か御意見等ございますでしょうか。よろしいですか。

 それでは議題1に入ります。「MitraClip NTシステム」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定の要否についてを始めさせていただきます。

 本議題の審議に当たりましては、参考人として、国立大学法人富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二の教授であられる絹川弘一郎先生にお越しいただいています。先生、よろしくお願いします。

○絹川参考人 よろしくお願いいたします。

○荒井部会長 それでは事務局から説明をお願いします。

○事務局 議題1につきまして、事務局から説明いたします。資料1を御用意ください。1枚目が諮問書です。本議題では、医療機器MitraClip NTシステムの高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定の要否について御審議をお願いします。

 まず、一般的名称の新設についてというタグをお引きください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器に対しては、部会の御意見を聞いて、新たに一般的名称を新設することとなります。新設を予定する一般的名称は、経皮的僧帽弁接合不全修復システムです。経皮的に挿入し、僧帽弁の接合不全を修復するために用いる植込み型器具をいいます。デリバリーシステムを含む場合もあります。1のとおり、副作用又は機能の障害が生じた場合において人の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがあることから、高度管理医療機器に指定し、2のとおり、保守点検、修理その他の管理を必要とするものではないと考えられるため、特定保守管理医療機器として指定しないことが適切と考えております。審議品目及び審査の概要につきましては、機構より説明をお願いします。

○機構 機構より御説明します。まず、事前に配布しました資料に修正があります。当日配布資料1の新旧対照表にてお示しします。おわび申し上げます。また、当日配布資料2「専門協議委員一覧」を御覧ください。本審査に当たり、資料にお示しする4名の専門委員の御意見を頂きました。

 それでは本品の概要について御説明します。資料1、緑タブの審査報告書の7ページの1.審議品目の概要を御覧ください。本品の対象疾患である僧帽弁閉鎖不全症(以下MR)は、心臓弁の一つである僧帽弁が心臓の収縮時に適切に閉じないために、血液が左心室から左心房へ逆流する状態であり、容量負荷が掛かることで経時的に左室機能不全となり、最終的に心不全へとつながります。本品は、大腿静脈から経カテーテル的に挿入したクリップで僧帽弁の前尖と後尖を把持することで、僧帽弁からの逆流を低減する医療機器となります。

 治療の流れを図4にお示ししました。本手技は心臓を停止させず拍動下で行います。まず、大腿静脈から、図3にお示ししたスティーラブルガイドカテーテルを挿入し、心房中隔に穴を開け、その後、図2にお示ししましたクリップデリバリーシステムを挿入し、クリップを僧帽弁まで運び弁尖を把持します。心エコーにて把持の状態と逆流の改善を確認の上、最適な位置に最終的に留置します。

 続いて、開発の経緯を御説明します。報告書8ページ上段の()開発の経緯を御覧ください。MRは一次性の器質性MRと二次性の機能性MRの2種類に分類されます。器質性MRは弁の変性や機能不全等、弁組織自体の異常により起こります。一方、機能性MRは、僧帽弁の構造自体は正常ですが、心筋梗塞などの虚血性心筋症や拡張型心筋症などに伴う心筋の異常が原因で、僧帽弁が心室側に引っ張られ弁が適切に閉じないことにより二次的に起こります。逆流の程度が大きい高度MRに対する治療法については、根治治療となる外科手術は大きな侵襲を伴うため、リスクの高さから適応できない患者もいます。そこで、外科困難な患者の場合にも、より低侵襲に弁尖を把持し逆流を低減させる本品が開発されました。

 続いて、報告書9ページの()外国における使用状況について御説明します。欧州では、組織の接合による機能不全の僧帽弁の再建を適応として、2008年3月にCEマークを取得しており、米国においては、MR重症度3+以上の高度の器質性MRを適応として、201310月にPMAを取得しております。MR重症度は、逆流の程度で1~4段階まで分かれており、3以上を高度としております。2015年7月から2017年2月までで、本品前世代品を合わせると約4万本の販売実績がございます。

 続いて、本品の非臨床試験については特段大きな問題は認められませんでしたので、臨床試験成績について御説明します。報告書18ページの表10を御覧ください。主な別添資料になります。海外臨床試験として、外科手術困難なMR重症度3以上の高度MR患者を対象とした単群のE II HRR試験78例と、この継続試験であるRealism HR試験273例を統合したデータであるIntegrated High Risk Cohort351例の解析結果、及び国内臨床試験としてAVJ-514治験の成績が提出されました。

 まず、海外臨床試験について、報告書39ページから御覧ください。351例について、器質性MR患者105例と機能性MR患者246例に分けて評価を行いました。有効性については、主に急性期手技成功、NYHA心機能分類、心不全入院率で評価を行っております。報告書39ページの表36の下の文章を御覧ください。急性期手技成功は本品を留置でき、退院時のMR重症度が2以下であった割合になります。器質性MR患者で79%、機能性MR患者で85%であり、約8割の手技成功が認められました。

 続いて、報告書40ページ、表37の有効性に関する成績の一番下の二つの評価項目を御覧ください。NYHA心機能分類は、身体活動能力により心不全の重症度を評価する項目であり、1~4の4段階で評価されます。3以上ですと身体活動が著しく制約されます。NYHAの評価の結果、評価可能な症例において本品の治療により3以上の割合が、器質性MR患者で78.9%から12.7%に改善し、機能性MR患者で83.4%から19%に改善し、2以下の割合が約8割となりました。また、1被験者・年当たりの心不全による入院率も、器質性MR患者で0.68から0.18、機能性MR患者で0.81から0.39に改善されました。

 続いて、安全性の評価についてです。同じ表37の安全性に関する成績を御覧ください。主要有害事象の主なものは死亡になります。安全性に関する成績の上から六つ目の項目になりますが、手技後12か月以内の死亡率は、器質性MR患者で23.8%、機能性MR患者で22.4%でした。本海外臨床試験で示された死亡率について、傾向スコアマッチングが可能な内科的治療のデータとして、同じ米国のデューク大学のデータベースから本海外臨床試験の選択基準に合致し、治療時期が同時期である内科治療症例を抽出し比較対象データとして評価を行いました。

 まず、器質性MR患者について報告書41ページの図9を御覧ください。本品で治療した器質性MR患者105例と、デューク大のデータの器質性MR患者65例において、傾向スコアマッチングを行い、両群65例として比較を行いました。結果、12か月経過観察時のKaplan-Meier死亡率は、本品群で20%、DUKE群で30.6%でした。

 続いて機能性MR患者になります。報告書43ページの図10を御覧ください。同様に傾向スコアマッチングを行い、両群246例として比較を行いました。結果、12か月経過観察時の死亡率は、本品群で21.9%、DUKE群で34.3%でした。以上から、器質性MR及び機能性MRにおいても、本品を用いた治療が内科的治療に劣る傾向は認められませんでした。

 次に国内臨床試験について、報告書49ページの下段の1)主要評価項目の結果を御覧ください。症例30例について評価を行いました。構成は、器質性MR14例と、機能性MR16例になります。手技後30日の主要評価項目の結果、安全性評価項目の死亡を含む主要有害事象は認められず、有効性評価項目の急性期手技成功率は86.7%と良好な成績が示されました。

 続いて、審査における主な論点について御説明します。一つ目の論点ですが、本品特有のリスクについて2項目説明します。一つ目の特有のリスクとして、報告書65ページの表54を御覧ください。急性期手技成功率について、国内臨床試験のAVJ-514治験では86.7%と比較的高い値を示しており、本邦でも一定の手技成功率を確保することは可能と考えております。一方、一定の割合で手技不成功が生じることは避けられず、また、低侵襲とはいえ、本品による介入があるため、内科的治療を継続した場合よりも合併症等のリスクが高まる可能性があります。このため、介入リスクについては、添付文書をトレーニング等により医師、患者に情報提供を行うとともに、トレーニング等により手技成功の向上を図ることが必要と判断しております。

 二つ目の特有のリスク、経時的なMR重症度の悪化に関するリスクについて、同じ報告書65ページの中段の2)を御覧ください。351例の海外臨床試験において、手技成功を達成した292例のうち、33例について経時的なMR重症度の悪化が認められました。MR重症度が悪化した要因の一つとして、片方の弁尖からクリップが外れた状態である片側弁尖把持が認められましたが、その他の明確な原因は特定されておりません。片側弁尖把持については、報告書66ページの表55に示すとおり、最近の臨床データでは、その発生率が1~3%程度に低減化されているものの、経時的なMR重症度の悪化については、本品による治療の限界として医師と患者が理解して本治療を行う必要があり、添付文書やトレーニング等により情報提供をすることが妥当と判断しております。

 二つ目の論点は、製造販売後の安全対策についてです。報告書71ページの()を御覧ください。御説明したとおり、本品を有効かつ安全に国内に導入するためには、高い手技成功率の確保と、本品を用いた治療リスクを踏まえた適応の判断が重要と考えております。国内において高い手技成功率を確保するため、申請者は、欧米と同様に表59のトレーニングとプロクターによる技術支援を行うことを予定しております。国内臨床試験においては、本品の豊富な使用経験がある欧米と遜色ない手技成功率が示されていることから、本対策は妥当と判断しております。

 また、報告書72ページの中段の真ん中の、「本品を用いた治療の」というくだりになります。そこに記載したとおり、適応の判断も含め本治療を適切に実施することは、高度MR治療に関する内科的及び外科的治療の十分な経験と対応が可能となる医師及び医療機関で本治療を行う必要があることから、承認条件1を付すことが妥当と判断しております。なお、ニーズの高い医療機器として、本品の要望書を提出した日本循環器学会が中心となり、本品の適正使用や使用する医師や施設の基準を作成する予定となっております。

 次に、使用成績調査について御説明します。報告書73ページの表61を御覧ください。重点評価項目は、急性期手技成功と片弁尖把持として、1~3%程度で生じる当該事象を精度よく収集するよう、症例数は全例登録で最大500例と設定されました。また、フォローアップ期間3年を含め、調査期間は6年としております。経カテーテル的に本MRを治療する医療機器は、本品が本邦で初めての導入となることから、使用成績調査により、国内導入後の手技成功率や有害事象発生状況等について情報収集をするとともに、必要に応じて追加のリスク低減化措置を講ずる必要があり、報告書74ページの最後の行から75ページにかけて記載したとおり、承認条件2を付すことが妥当と判断しました。さらに、75ページに記載したとおり、提出された臨床試験の経年報告を求め、その長期成績を確認していくために、承認条件3を付すことが妥当と判断しました。

 続いて、報告書74ページの4.総合評価の()を御覧ください。先ほど御説明しました製造販売後の安全対策を行った上で、本品の有効性及び安全性の評価は次のように考えております。本治療により、MR重症度、NYHA心機能分類、入院率などの改善が認められました。また、本品のリスクについては、死亡率を増加させることがないことが示唆されました。内科的治療を含む適切な治療を十分に行っているにもかかわらず、症状がある高度MR患者の予後は不良であり、外科手術困難な患者に対しては他に有効な治療法もないことから、本治療のベネフィットはそのリスクを上回り、本品は新しい治療の選択肢になり得ると判断しました。

 以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会にて御審議いただくことが適切と判断しました。本品は、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。

 最後に、事前に塩川委員から御質問を頂いていますので紹介いたします。塩川委員からは、本品のMR対応の可否について御質問を頂いております。この点については、本品はMR対応であり、MR検査が施行可能な条件については、資料1の青色のタブの添付文書()の9ページの左側の中段、使用上の注意、重要な基本的注意の6番目に記載しております。また、トレーニングなどの説明の際に、MR対応品であることを明確に説明するよう申請者に求める予定です。なお、添付文書の使用方法欄の量が長いため、使用方法の記載の簡略化も求めていく予定になっております。機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いします。

○荒井部会長 それでは、はじめに、参考人としてお越しいただいている絹川先生から、追加の御発言いただけますでしょうか。

○絹川参考人 今日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。富山大学の絹川と申します。私は心不全を専門としている循環器内科医です。本MitraClipの審査に関与させていただいた経緯で、このデバイスについての概要とニーズについて、それから適応について、どこを懸念すべきかというところをお話させていただきます。

 弁膜症という病態がありまして、弁膜症自体はそれだけでも心不全を発症するわけです。大動脈弁狭窄というのが最近大変話題になっているのは御存じかと思いますが、大動脈弁狭窄の患者さんというのは手術が困難な場合に、最近ではカテーテル治療で弁置換ができるようになりました。TAVIというデバイスがあります。これを僧帽弁の部分にどのような形で持ち込めるかということを、最近我々の内科と外科が議論している最中です。

 僧帽弁に関してですが、僧帽弁狭窄というものは、過去のリウマチ熱の産物です。現在我が国では、ほとんど新規発生もありませんし、現状、罹患している患者さんもおられません。しかしながら、僧帽弁に関しては、閉鎖不全又は僧帽弁逆流という病態が決して減っていませんし、高齢社会の心不全の患者さんが増えると同時に、ますます増えてきているという印象があります。正確な統計はありませんが。

 また、僧帽弁の逆流という病態は、先ほど機構からも御紹介がありましたが、前方に拍出すべき血流が後方に戻ってしまうということで、非常に効率が悪い。また、後方に戻るということは、肺の方に血液がうっ血するということで、患者さんの呼吸困難が、しばしば耐えられない程度に増悪するということもありまして、ほとんどの場合は症状を有しますし、何らかの治療が必要となることが多い病態です。

 また、僧帽弁の逆流というのは、年次推移を見ていくと、当初は、非常にごく軽いものが、だんだん数年たつと重症度を増してくるといった病態でもありますので、一定の重症度になった場合、何らかの治療が必要ということになりますが、内科的な薬物治療、その他ペースメーカー等の治療で、これを確実に制御できる方法論は見付かっておりません。ですので、ガイドライン等でも基本的には手術可能ならば、心臓外科と循環器内科で、よくよく相談をして、僧帽弁の置換ないし僧帽弁形成術という逆流を止める手術を推奨しています。

 しかしながら昨今、高齢者の心不全が増えてくると、コモビディティ、すなわち手術に非常に不利益となる合併症を有している患者さんがたくさんいらっしゃいます。例えば、腎機能が悪いとか、やはり高齢自体ということも問題ですし、COPD、呼吸機能が悪いといったことで、麻酔、それから大きな開心術ということで、耐え難いという、そういう判断を下さざるを得ないことが多々あるわけです。現実、そのような場合には、私たちでも外科の先生によく御相談申し上げるのですが、やはりこれは難しいでしょうということで、外科手術の対象とならない方がたくさんいらっしゃいます。

 そのような場合に私たちはどうするかというと、結局、内科的治療、薬物治療、利尿薬を増量することを続けざるを得ませんけれども、そのような場合に逆流が減ることもなく患者さんの症状が緩和されることは、どちらかというと、僅かのパーセントにとどまります。そういう形で、僧帽弁に対しての介入ということを外科手術以外で内科的に、カテーテル的に行うということは、アンメットニーズのものであり、我々としては大変期待が高いということになります。今後、幾つかのこれ以外のデバイスも開発されていると伺っております。

MitraClip自体は、御紹介がありましたように、もう世界で先駆けて、かなり幅広く使われていまして、安全性等に関しても一定の評価を得た機械です。是非我が国でも、早い導入を目指していきたいと考えております。

 ただ、問題点というところもありまして、実際に外科手術困難ないし不可能という判断のもとにこのデバイスを選択いたします。今、御紹介いただきました幾つかの試験を見ていただくとお分かりのように、どうしてもコントロール群を設けることが難しいわけです。つまり、外科の手術ができない人に対して、このデバイスを入れて、そうすると、どの人をコントロールしたらいいのかと。つまり、何もやらない人たちをコントロールするということは、言うは易しでありまして、現在そういう治験が米国で走っておりますが、なかなかエントリーの患者さんが集まらないということも聞いております。

 現実、最近の二つ、三つの試験は、シングルアームの単群試験で、前向きには見ておりますが、それを過去のヒストリカルコントロールと比べたというデータが、幾つかあるということになっております。その点で、どこまでの患者さんが真に必要なのかということを、明確な形で我々がまだ手にはしていないのかも分かりません。ですので、よくよく専門家がいる病院のエキスパート同士で議論をして、真に手術不適応であるということ、真にこの方の僧帽弁逆流を治療すべきであると。この2点を議論するといったような施設を選定しまして、適応患者を選んでいくという立場が必要ではないかと思います。

 手技的な問題に関しては、8、9割の手技成功率は得られているようでありますし、幾つかの試験の経時変化を見ると、基本的には年々良くなっております。我が国で行われた30例の、どちらかというとフィージビリティーを見るタイプの試験ですけれども、非常に低い合併症率となっておりますので、我が国の中で適応を選んで、そして、安全に行うという体制は、確実に担保できるものだと思っております。是非、御審議をお願いしたいと思います。

○荒井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の方々から御質問はいかがでしょうか。

○梅津委員 このような新しいデバイスで選択肢の幅を広げるということは、極めて大事だと私は思います。長期予後の解析結果を機構に報告することというのは、今回も75ページの承認条件の中に書かれているわけですが、こういう新規のデバイスが、我が国で認められれば、いろいろな先生が使われるわけです。そのときに適正使用というのをいくら決めても、初期のいろいろな思ってもみないような問題、ひょっとしたら日本人特有の問題が起こるかもしれません。そのようなときに備えて、できれば、初期の問題をまず克服するような仕組みというのを何か作っていただきたいと思いますが、先生、何かそれについてお考えはありますでしょうか。私は始めが心配なのです。

○絹川参考人 新しいデバイスを導入するときに、必ずこのような市販後調査というのを組むわけです。組むときに、なるべく長く見たいと、そういう観点でお話をすることが多いのですが、ただ、梅津先生がおっしゃいましたように、長く見た後でそれを全部開けて見るということではなくて、当初、例えば1年をめどに何らかのデータの解析という形で、そこで適正に使用されているかといった担保付けというのがあってもいいのかと思っております。

○梅津委員 是非とも学会でそういうことを検討していただいて、機構と相談していただきたいと思います。TAVIでもやはり初期の問題というのが出てきて、それを克服することで、成績が良くなってきたような気がいたします。よろしくお願いします。

○荒井部会長 機構から、いかがですか。

○機構 機構からですが、今、学会の先生方とPMSで考えていることについて、今の梅津先生の御質問に対し補足説明させていただきます。

 今、循環器学会が中心となって適正使用基準を作っていただいて、学会としてデータを一応集めて、それについてはある程度定期的にレビューするという方針であるということは伺っております。

 もう一つは、PMSで、最大500例を全例調査で追うことになっていて、そのデータについては定期的に機構の方に報告いただいて、必要であれば、適切な形で情報提供できるような方法を考えているところですので、先生のおっしゃっていることは確かに、日本のデータがどうなのかというところをきちんと出していくことは重要だと思いますので、なるべく対応していきたいと考えています。

○梅津委員 お願いします。

○荒井部会長 そのほかには、いかがでしょうか。

○齋藤委員 教えていただきたいのですが、これはあくまでも経時的にMRが悪化するということで、タイムセービング的な処置あるいは手技という位置付けなのでしょうか。またこれが出来るのは一回だけなのか、何か悪化した時に再度使用出来るのか。その辺はいかがでしょうか。

○絹川参考人 ありがとうございます。最初の御質問ですが、確かにおっしゃるとおりでして、恐らく患者さんが悪くなっていく傾きが緩やかになる、ないしは急性増悪で再入院する回数を何回か減らせるというようなタイプの治療だと心得ております。ですので、抜本的に心機能が回復するという患者さん、中には弁膜症だけが問題の場合は、当然回復して、それだけで一定の期間で治ってしまったという状況は得られると思いますが、必ずしもそういう患者さんばかりでないということは御指摘のとおりです。複数個をインプラントすることはありますけれども、複数回やるというのは余り議論になっていないと思います。

○機構 MRが経時的に悪化した場合に、ケース・バイ・ケースですが、もう1回クリップを留置するというケースはありますが、症例としては少ないケースとなっております。

○齋藤委員 原則としては1回限りという事ですね。

○機構 基本的には1回と考えております。

○荒井部会長 初回に複数個入れる場合はあるけれども、経時的に追加していくということは、ほとんどないという理解でよろしいですか。

○機構 初期の治療段階で複数個を置く場合は、今のデータでは5、6割、2個を置くケースがあります。

 また、最初に止めた後、逆流が止まったのですが、経時的に悪くなるというケースも一定程度あるのですが、経過観察で状態を見る、若しくは場合によっては2個目を入れるというケースが一部あります。

○荒井部会長 一部はあるということですね。分かりました。

○機構 はい。

○荒井部会長 よろしいですか。ほかの委員の方、ご意見ありますでしょうか。

○中谷委員 この方法は、まず外科的に僧帽弁逆流に対する手術をするときに、非常に単純に、僧帽弁の両弁尖を合わせてしまえばいいのではないかということで取り組まれて、それはそれなりに効果があることがわかり、それだったらカテーテル治療ができるのではないかということで始まったということです。2000年半ばぐらいに欧米で、かなり話題になっていたもので、実はここにも書いてありますが、2011年には、ニーズの高い医療機器早期導入検討委員会でも認められているのです。そこから7年ほど掛かっていますが、このシステムで長く掛かった経緯とか、何か問題点等々あるのでしょうか。本質と外れるかも分かりませんが、実際に今回のような形のものを日本で取り入れていくときの問題点が明らかになり、今後の一つの参考になるのではないかという気がするので、質問させていただきました。

○荒井部会長 いかがですか。

○機構 開発が長期化した経緯ですが、当初、米国の承認前後から、機構の方には相談に来ており、企業とは一応、相談がスタートしていました。適応の範囲を器質性のみにするのか、機能性も含めるのか等、その段階で相談しました。その後、両方取りたいという希望もあり、また、本手技は新規性が非常に高いというところもありまして、国内で手技の成功率は一定程度見る必要があるという判断のもと、米国の承認後に国内の治験を開始しようという話になったため、長期化したという経緯があります。

○荒井部会長 ここは本来の議題から少し離れますが、絹川先生、何か御意見はありますでしょうか。

○絹川参考人 本当は、私も最初から関わっていたわけではなくて、今回、30例の企業治験をするしないという議論の辺りから参加した記憶があります。一番問題は、やはり臨床試験で、例えば、明らかにカプランマイヤーで差が認められて、この手技が絶対に予後を改善するというデータがあれば、それが1本で終わりなのですが、そういうことになじまないということ、ないしは現在、心不全が一定以上増悪した人に対しての、内科治療対MitraClip治療ということが、前向きにまだ臨床試験をやっているという状態といった中で、日本において、どのような適応がふさわしいのかというところが、少々時間を要したのではないかと思います。

○荒井部会長 ありがとうございます。

○一色部会長代理 私から一つ、機構の方に対する御質問になるかと思います。MRの重症の方、TAVIのときも話題になったと思いますが、非常に重症で、外科適応がない方の中には、逆流を止めても改善しない方が一定頻度おられると思います。このような有効性を期待しにくい症例は恐らく適応から外す努力をされたのだろうと思います。例えば、ものすごい拡張がひどくなってしまって、収縮力が低下している等々あると思いますが、69ページの使用目的、効果の所に除外基準が書かれていて、そこの部分、あえて御説明されなかったので確認させてください。非常に有効性が期待される人に対してはよろしいのですが、改善が見込めないような症例については、ここに書いてある除外項目で、十分担保されているというお考えかどうか御意見を伺いたいと思います。

○絹川参考人 それは私の方でもよろしいかと思います。御質問ありがとうございます。確かに先生のおっしゃるとおりです。MitraClipで、全てのMRが理想的に制御されるということは全く想定しておりませんので、恐らく、本当に重症な心機能を有する人というのは、補助循環、補助人工心臓でなければ救えないのではないかと思います。

 当然、補助人工心臓に関しては一定の縛りが、年齢制限等もありますから、全ての患者さんが補助人工心臓の適応になるわけではないという現実もあります。ただ、しかしながら、やっても全然効かない人に対して高額のデバイスを使うということは、やはりこれは許されることではありません。私たちとしては、補助人工心臓の適応になっているような強心薬依存の患者さん、それ以上重症な患者さん、心原性ショックも含めて、そのような方は恐らくこのデバイスは、まず間違いなく適応ではないと思って、ここに記載させていただきました。

 今まで、欧米等の試験においても、このような患者さんたちは除外されています。基本的には臨床試験とマッチする形の除外規定になっております。

 ただ、これ以外に、僧帽弁の解剖学的な要素とか、いわゆる手技的にもふさわしくないということに関しては、もう少し細かくエコーの所見等で検討すると。可能かどうかは、そこで判断するということになっておりまして、一律に記載することは、ここではしておりません。ですので、EFの下限を一応30%と決めております。EFが30%未満の方ないし強心薬依存の方、心原性ショックの方等々は、今のところ、少なくとも除外させていただいています。そこからどこまで広げる必要があるか、ないしは逆に狭める必要があるのか、その辺りはやはり市販後の動向を見て、また検討する課題かと思っております。

○機構 機構から追加で御説明いたします。青タグの添付文書案の1ページ目の警告、左側の5が誤記になりますが、二つありまして、下の方の5、6に、本品が解剖学的条件として本品が適さない条件については、ここで注意喚起を行っています。また、学会の基準の方で、ハートチームで内科、外科、心不全専門医を含めて、適応を慎重に検討するようにという基準を、今、作っていただいております。以上になります。

○荒井部会長 私から一つ質問があります。先ほど絹川先生から御説明いただき、この領域でのRCT、すなわち、何もしない場合と治療する場合とのRCT は難しいことはよく判りました。それで、傾向スコアマッチングという手法が採られた訳で、この方法は最近結構はやりの統計解析法になっています。ただし、どのぐらいの数のパラメータを使うか問題で、少なければ交絡因子をたくさん見落としてしまうという危険性をはらんでいます。このため、論文の世界では今、問題になっているのです。DUKEの施設等の比較で使ったときのパラメータは、幾つぐらい使ったかは分かりますか。大変でしたら、今ではなくてもいいですけれども。

○機構 臨床試験の成績に書かれている患者背景情報の何項目かは、一応、全て評価の項目に入れています。

○荒井部会長 何項目ぐらい使っているのでしょう。傾向スコアマッチングは比較的最近濫用されているのですが、はっきり言ってしまえば、5個や6個の項目だけでマッチングされれば、その設定の仕方によってデータが作れてしまうぐらいの怖いところがあるのです。

○機構 確認して、また。

○荒井部会長 この部会に提出されるデータでも、RCTが難しい領域については、今の流れだと、この方法が結構たくさん出てくるかもしれません。私も専門ではありませんが、ここはお互い、慎重にやっていきたいと思います。

○機構 ありがとうございます。一応、DUKEのときのマッチングについては、心不全の患者背景は多種多様なので、10項目以上の、基本的には臨床試験の主要な選択除外基準については、きちんとマッチングした上で、今、背景情報の14項目は、少なくとも、マッチングできるような環境下で行われている。

 DUKEの元のデータが10万例以上入っているデータなので、そこからやっと200例ぐらい抽出してやってきているので、それなりの精度の高いマッチングができているとは思いますが、きちんと確認した上で、後ほど御報告したいと思います。

○荒井部会長 分かりました。お互い気を付けていきましょう。

○機構 はい、分かりました。

○荒井部会長 鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 手術に比べたら侵襲性が少ないので、高齢者に向いている治療なのかという気がしますが、海外ではどのぐらいの高齢の方までされているのか、あるいは国内ではどうなのか。日本は世界一の超高齢国ですから、超高齢者に対しても適応があると考えているのか、年齢の要因については、どのようにお考えなのかお聞かせいただけますか。

○絹川参考人 ありがとうございます。大体、7075歳ぐらいが最も多い対象患者さんではないかと思っております。更に高齢の80歳以上の方というのは、かなり少なくなってくると思います。ただ、我が国の現状で、80歳以上の高齢者の心不全の入院が半分近くなっておりますから、そこは我が国の実情に合わせて適応をまた更に検討する必要があるかと思います。

○鈴木委員 年齢についての方針も検討されるということですか。

○絹川参考人 いや、これは、やはり個々の症例での、その方のQOLないしADL、認知症の度合い等々といったことで、一律で年齢ということはありません。

○鈴木委員 分かりました。ありがとうございます。

○荒井部会長 ほかによろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、ほかに御意見がないようですので、議決に入らせていただきます。

 医療機器MitraClip NTシステムについて、本部会として、高度管理医療機器に指定して承認を与えて差し支えないものとし、特定保守管理医療機器への指定は不要、生物由来製品又は特定生物由来製品への指定は不要とすることとしてよろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○荒井部会長 ありがとうございます。また、使用成績評価については、期間を6年として指定することとしてよろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○荒井部会長 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件は、分科会にて報告をさせていただくこととなっております。これで議題1を終了いたします。絹川先生、どうもありがとうございました。

○絹川参考人 ありがとうございました。

                                ( 絹川参考人退室)

○荒井部会長 それでは、議題2「「Hot AXIOSシステム」の高度管理医療機器、管理機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定の要否について」に進ませていただきます。本議題の審議に当たりましては、参考人として、国立大学法人滋賀医科大学臨床研究開発センター、センター長並びに教授であられる久津見弘先生にお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

○久津見参考人 よろしくお願いいたします。

○荒井部会長 それでは、事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 議題2について、事務局から御説明いたします。資料2を御覧ください。1枚目が諮問書となります。本議題では、医療機器Hot AXIOSシステムの高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定の要否について、御審議をお願いいたします。

 まず、一般的名称の新設についてというタグをお引きください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器に対しては、部会の御意見を聞いて新たに一般的名称を新設することとなります。新設を予定する一般的名称は、膵臓用瘻孔形成補綴材です。治療目的で、超音波内視鏡下で経消化管的に消化管壁と膵嚢胞壁を引き寄せて瘻孔を形成するために用いる人工器具になります。

 本品につきましては、1のとおり、副作用や機能の障害が生じた場合において、人の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがあることから、高度管理医療機器に指定すること、2のとおり、保守点検、修理その他の管理を必要とするものではないと考えられるため、特定保守管理医療機器として指定しないことが適切と考えております。

 審議品目及び審査の概要につきましては、機構担当者より、よろしくお願いいたします。

○機構 機構より御説明いたします。まず、当日配布資料3、本品目の専門協議委員一覧を御覧ください。本審査に当たり、資料にお示しする2名の専門委員の御意見を頂きました。

 それでは、本品の概要を御説明いたします。資料2の審査報告書のタブ、5ページ及び6ページを御覧ください。本品は慢性膵炎の増悪を含む急性膵炎の膵局所合併症の治療に使用されます。膵臓の周囲に形成された嚢胞内に液体が貯留することで、感染や破裂等の重篤な合併症を引き起こすことがあるため、審査報告書6ページ、図1のマル1に示すようなステントとシリコーンからなる瘻孔形成補綴材を体内に留置し、瘻孔を形成させ、胃や十二指腸の中へ液体を排出させます。なお、瘻孔形成補綴材は、以後補綴材と呼ばせていただきます。

 排泄させる液体には、浸出液と壊死組織の両方が含まれます。補綴材により瘻孔を形成させる際は、図1マル2のデリバリーシステムを、図2のように高周波発生装置に接続し、超音波内視鏡下で瘻孔を形成する部位の胃壁又は十二指腸壁と嚢胞壁に、通電により穴を開けます。その後、補綴材を展開させながら、胃壁又は十二指腸壁と嚢胞壁を両端のフランジで挟むように留置します。また、液体の排出以外に、補綴材の内腔を介して内視鏡を嚢胞内に挿入し、組織の除去や嚢胞内の洗浄、観察を行うこともできます。なお、留置した補綴材は、嚢胞が消失した際には抜去します。

 次に、本品の開発の経緯について御説明します。審査報告書8ページ、表2を御覧ください。現在の急性膵炎の診療ガイドラインでは、膵炎の形態と貯留の状態により、表2のとおり4種類の病態に分類されています。本品の対象患者は、表の一番右の列にある「PPC」と表記している膵仮性嚢胞、又は「WON」と表記している被包化壊死を有する患者となります。PPC及びWONは、いずれも膵炎が悪化し、間質性浮腫性膵炎又は壊死性膵炎の発症から4週以降に認められる病態です。これらの病態は保存的治療で奏功が得られる場合もありますが、奏功が期待できない場合は、嚢胞内の液体を嚢胞外へ排出するための処置が必要となります。

 繰り返しになりますが、本品はこれらの手技を、胃又は十二指腸を介して内視鏡下で行う際の瘻孔を形成するために使用されます。本邦では嚢胞に対する内視鏡的治療は普及してきておりましたが、嚢胞に対する瘻孔形成を目的とした医療機器は本邦では承認されておらず、胆管用ステントなどが適応外使用されているのが現状です。このため、瘻孔形成専用のデバイスが臨床現場で望まれ、本品は日本消化器内視鏡学会より早期導入の要望書が提出されております。

 次に、本品の海外における使用状況について御説明いたします。審査報告書9ページを御覧ください。米国では平成27年8月に膵仮性嚢胞又は被包化壊死に対するドレナージを適応として、510kを取得しております。また、欧州では平成25年4月に膵仮性嚢胞及び胆道のドレナージを適応として、CEマークを取得しております。平成27年8月から平成29年7月までの販売実績は、米国で約□□□個、欧州では約□□□個となっております。

 次に、非臨床試験成績について御説明いたします。概略は審査報告書11ページから15ページに記載しております。特段、問題はありませんでしたので、続いて臨床試験成績について御説明いたします。

 審査報告書16ページの後半、()Hot AXIOS試験を御覧ください。本臨床試験は膵仮性嚢胞を有する患者30例を対象に、米国内8施設で行われた多施設共同非盲検単群試験です。なお、この膵仮性嚢胞患者は、先に御説明したPPC及びWONの患者と同じ病態の患者となります。

 まず、有効性について御説明いたします。審査報告書21ページ、表8を御覧ください。有効性評価項目は、補綴材の留置、補綴材内腔の開存性、技術的成功、そして臨床的成功の4項目が設定されました。補綴材の留置については「最長60日間、適切な位置にとどまっていること」と定義され、観察時点において補綴材の移動は認められませんでした。次に、補綴材の開存性については、手技後30日目では81.8%、手技後60日目では100%で補綴材内腔の開存が確認できました。次に技術的成功については「本品のデリバリーシステムを用いた補綴材の留置成功、及び標準的な内視鏡器具を使用した抜去成功」と定義され、その成功率は90%という結果でした。最後に、臨床的成功については「嚢胞サイズが50%以上縮小すること」と定義され、その成功率は83.3%という結果でした。

 次に、安全性について御説明いたします。審査報告書22ページを御覧ください。安全性評価項目は「試験手技時から補綴材抜去の試験期間終了まで、重大な合併症がないこと」と定義されております。この重大な合併症とは、出血や感染などのアクセス部位に関連する有害事象や補綴材の位置ずれなど6項目が事前に定められ、これらの有害事象が認められなかった場合、重大な合併症がなかったと判断されました。

 結果は表9に示すとおり、重大な合併症として補綴材抜去後の出血、補綴材の自然移動、蜂巣炎の3例が認められましたが、いずれの事象も後遺症なく回復しております。

 次に、機構における審査の概要について御説明いたします。審査報告書23ページ、下段を御覧ください。まず、一つ目の論点としては、本邦への海外臨床試験成績の外挿性についてです。本邦と海外の急性膵炎に伴う膵局所合併症に対するガイドラインにおいて、診断基準や診療方針に大きな差はないこと。そして急性膵炎の発生頻度及びその成因は類似していること。さらに本品を用いた治療においては、嚢胞サイズが重要であり、体格差は治療効果に影響しないこと。これらを踏まえ、機構は本邦へ海外臨床試験成績を外挿することは可能と判断いたしました。

 なお、今回添付された海外臨床試験の対象患者である膵仮性嚢胞は、現在とは異なる膵局所合併症の分類に基づいて選択されておりました。この分類は2013年に改訂され、従来から膵仮性嚢胞とされていた病態は、壊死性組織を含まない病態のPPCと壊死性組織を含む病態のWONとに区別されました。しかしながら実際には、膵局所合併症の分類の改定前後においても、本品が対象とする内視鏡的治療の適応患者は変わらないこと。つまり、本海外臨床試験の対象患者は、現在使用されている分類のPPC又はWONに該当すると考えられることから、本品の適応患者をPPC又はWONとすることは妥当と判断いたしました。

 二つ目の論点は、有効性及び安全性についてです。審査報告書26ページ、下段の()は有効性及び安全性についてを御覧ください。海外臨床試験の有効性評価項目において、良好な結果が得られております。そして従来の方法による治療効果を示す文献報告と比較した場合においても、技術的成功は本品90%に対して、従来の方法では88.6%から95%という結果であり、また臨床的成功率は、表13に示しておりますが、本品83.3%に対して、従来の方法では78.9%から97%という成績であり、いずれも同程度の結果が得られていることが確認できました。また、有害事象についても本品特有の事象は認められなかったことから、本品の有効性及び安全性は、臨床的に許容可能であると判断いたしました。

 次に三つ目の論点は、製造販売後の安全対策についてです。審査報告書30ページ、()の製造販売後の安全対策についてを御覧ください。本品は既存の手技と異なり、瘻孔形成部の電気的な切開から、補綴材の展開等の一連の操作が本品のみでできるなど、本品特有の操作方法があると考えられます。したがって、当該疾患及び治療に対する十分な知識及び経験のある医師が本品に関する適切なトレーニングを受けた上で、各種合併症に対応可能な施設において使用することが必要と考え、このことを遵守させるための承認条件を付すことが妥当と判断いたしました。なお、本品の取扱いに関しては、関連学会によって適正使用指針が作成される予定です。

 最後に四つ目の論点は、使用成績評価についてです。審査報告書30ページ、表14を御覧ください。本邦において本品の治験が実施されていないこと、また、本品特有の手技上の特徴があることなどから、本邦での臨床使用実態下における有効性及び安全性を確認する必要があると判断いたしました。使用成績評価としては、症例数を100例とし、主な解析事項は臨床的成功、留置の成功などとし、調査期間として準備期間6か月、登録期間2年、解析期間6か月の計3年とすることが妥当と判断いたしました。

 以上の審査を踏まえ、機構は本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。本品は生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断いたしました。なお、薬事分科会では報告を予定しております。機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○荒井部会長 それでははじめに、参考人でお越しいただいております久津見先生の方から、追加の御発言を頂けますでしょうか。

○久津見参考人 機会を与えてくださり、どうもありがとうございます。私は消化器内科医でありまして、特に胆膵医療器の内視鏡を中心に診療してまいりまして、急性膵炎の患者のたくさんを診てきたと、そういう立場から、少し本品と今の対象となる病態に対して、お話をさせていただきます。

 従来から急性膵炎の局所合併症として、これは晩期の合併症に入るわけですが、嚢胞というものがあります。従来から6のルールというものがありまして、6cm、6か月、6週間というものなのですが、それらは要するに、6週間以上のものに関しては、自然消退が期待できないということと、いろいろ圧迫による症状が起こったりですとか、感染を合併する危険性があるということで、治療対象と言われています。特に感染を起こした場合は緊急のドレナージが必要となるというわけです。

1990年の中頃までは、外科的処置を中心にやられておりました。外科的処置というのは開窓術と言いまして、胃とか小腸と、その嚢胞を吻合して、窓を開けて消化管にドレナージするというような手術であります。あるいは、感染を起こして膵炎が非常に広い範囲に広がっている場合ですと、開腹してオープンドレナージという形で閉腹せずにガーゼとかを当ててドレナージするという、非常に重篤な感染を伴うというような病態であります。

 ですから外科医の方も最終的に閉腹されなかったりですとか、かなりベタベタの状態になりますので、何とか開腹せずに済ませたいということもありまして、内視鏡の普及とともに1990年の中頃から、内視鏡的にドレナージというのが行なわれてきております。

 特に2000年に入ってからですけれども、超音波内視鏡というのが日本中に普及しまして、一気に内視鏡的ドレナージというものが広く行われるようになっております。ただ、専用の処置具がありませんでした。今、機構の方から話がありましたように、胆道用のドレナージで使うプラスチックのチューブのステントですとか、メタリックのステントなどを使用してドレナージしていたということです。

 それでもうまくドレナージ効果が得られない場合は、最終的には外科にお願いするわけですが、かなりの治療効果が得られまして、ガイドラインにも載っているという状況であります。やはり現場としては、そういうオフラベルユースというものではなくて、専用のものをずっと望んでいたわけであります。

 と言いますのも、どうしても胆管のステントというものは非常に細くて、1本でドレナージできるような、嚢胞の中が漿液性のものであれば、それでいいのですけれども、やはり重症化すればするほど中がドロドロしてまいりますし、壊死物質も多く含まれてきます。そうしますと、メタリックステントで1cmぐらいあるのですが、そういうものを複数本入れたりとかして開窓を大きくして、中の洗浄効果を上げるというような工夫をしたり、鼻からチューブをずっと嚢胞まで通して、洗浄を毎日繰り返すですとか、いろいろな工夫をしてきています。

 それでも効果を得られない場合は、かなりの致死率があります。嚢胞を合併した場合だけで全体で20%以上の致死率があるわけです。それがドレナージ効果が得られませんと、かなり高い致死率になるということでして、このような処置法が必要ということで、是非ともそういう観点も御理解いただき、御審議願いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○荒井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の方から御質問、御意見いかがでしょうか。

○中島委員 このデバイスは非常に期待できるすばらしいデバイスだと思うのですけれども、今、内視鏡下というところに特定されているような記載なのですが、経皮的に、胃を通して嚢胞に穿刺をして、そこにチューブを置いてくるというのは、今でも行われている方法です。内視鏡が難しい例では、経皮的なアプローチでもこのデバイスは使用されることもあると思うのですけれども、その辺に関してはどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

○久津見参考人 嚢胞の中に穿刺していきまして、刺し過ぎて嚢胞の体側に当たってしまいますと、大きなトラブル、合併症を起こすわけですので、要するに体外的にエコーで見ながらということを言うわけですね。

○中島委員 画像ガイドはCTでも何でも可能だと思うのですけれども、要するに経皮的なルートから内視鏡を入れて用いても良いかを、お伺いしたいところです。

○久津見参考人 やはり今の時代、内視鏡でかなりのことができます。経皮的にやりますと、消化管を貫通してやらないといけません。つまり胃、消化管の前壁、それから消化管の後壁を通ってから嚢胞に行くと思うので、そうなりますと消化管の前壁と腹壁の間の閉鎖の問題が起こってくると思います。ですので、やはり内視鏡で消化管を通して、そのまま直接嚢胞に行けば、1回の瘻孔の形成で済むという。

○中島委員 もちろんそうなのですけれども。

○久津見参考人 可能性としてですね。

○中島委員 例えば内視鏡が何らかの形でできないとか、すでに胃瘻がおかれている、そういう場合でもこのデバイスは使えるデバイスなのではないかと思いまして、そういう質問をさせていただきました。

○久津見参考人 ありがとうございました。

○荒井部会長 これは私も中島委員と同じ領域の人間なのでよく分かるのですが、結局ある学会から出て、例えば内視鏡学会から出て、きちっと審査をする。審査の過程は当然内視鏡のデータになりますので、承認は内視鏡でということになります。ただ、医療現場でたまたまそれができる内視鏡医がいないなど様々な理由で、内視鏡なしにこれを使いたいという状況は、十分に発生しうると思われます。

 それをよしとするかどうか、例えばそれを保険でカバーするかといった問題については、恐らくそれぞれの支払機関の判断による思われます。もちろん、あくまで例外的な話であり、中島委員も言われたように、基本的には内視鏡でできるならその方がいいという点は誰しも認めるところです。

 そもそもデータがありませんし、二股掛けての申請ではありませんから、ここでの議論は内視鏡の使用に関してということに限定させて頂きますが、臨床現場では、そういったことは時々起こり得るという点については、皆さん御理解いただければと思います。そのほかの御質問どうぞ。

○齋藤委員 教えていただきたいのですけれども、成功率が高い手技だと思うのですが、これは胃や十二指腸の内壁から、その癒着部位というのを想定し、ワンポイントでこれを狙うのは、熟練した内視鏡医であれば簡単な手技なのでしょうか。また、先ほど嚢胞が残ると20%の死亡率が高まるというお話がありましたが、臨床的にこの処置をして改善しているデータの有無を伺いたいです。死亡率の問題、血液学的なデータが改善している、自覚症状が改善している等ですね。その辺のデータがあれば、お示ししていただければと思います。

○久津見参考人 ありがとうございます。まず、手技の成功率ですが、これは超音波内視鏡で、直接嚢胞が胃壁直下に見え、大きな刺すウインドウがあります。嚢胞が6cm以上ありますと、刺すポイントは幾らでもあると思っていただければいいと思います。ただ、その癒着の有無に関しては、その画像だけでは、確認は困難と考えています。ただし、この病態を考えますと、ほとんどのものが癒着している。炎症が波及してきて癒着していると考えています。ただし、PPCという仮性嚢胞に関しては、炎症が少ないですので、圧排だけの可能性も十分あると思われています。そういう場合、抜去するタイミングは、癒着する期間の2週間以上たってからでないと抜去してはいけないだろうと考えています。

 それから死亡率の改善なのですが、この処置具が普及するから死亡率が改善するかどうかというのは、まだまだ分からないですが、従来の外科的な処置に比べて、内視鏡処置というのは比較的早い段階でされていますので、数字的に示されたものは私の認識ではありませんけれども、その辺りは貢献しているだろうとは思っています。

○荒井部会長 その他、御意見、いかがでしょうか。

○小西委員 逆に胃液が嚢胞内に入ったり、後腹膜腔に出て、何か悪いことが起こるというのはないのでしょうか。

○久津見参考人 それは考えられるのですが、ただ、この手技は、従来から外科的にはもっと大きな穴で、開窓術という胃と嚢胞を吻合して、かなり大きな開窓を作るわけでして、そのような実績はずっとあります。内視鏡処置もずっとやられてきていまして、感染がゼロというわけではありませんけれども、感染を起こせば洗浄するという対応ができますので、問題はないと思います。

○一色部会長代理 サイズのことで、お伺したいのです。管に入れる場合は、基本的にサイズが決まってしまうのですけれども、瘻孔の場合にサイズの選択というのは、具体的にどのようにされているのかということと、例えば先ほど、内容物によって効率が変わるというお話でしたけれども、小さいものを選択してうまくいかないから、入れ直しをするとかいうようなことも可能性としてはあるデバイスなのか、その辺のことも含めて教えていただきたいと思います。

○久津見参考人 分かりました。やはり、サイズに関しては内容液によると思います。内容液が漿液性でさらさらであれば、大きいサイズは要らないと。やはり壊死物質がかなり含まれてあれば、大きなサイズのものを選びます。後々、内視鏡をそこから入れて、デブリをするとかという処置をされることもあります。最初、小さなものを選んだけれども、途中で大きくしないといけないとなった場合は、これを使うのではなくて、これは抜去して、瘻孔ができているわけですから、そこをバルーンで広げて、道を作っていくというような処置をしていくことになります。

○一色部会長代理 ありがとうございます。

○荒井部会長 よろしいでしょうか。今、お話がありましたように、実は内視鏡でできるようになる前は、私の専門であるIVRの仕事だったものですから、チューブや細い胆管ステントでやっていました。しかし、中がドロドロだと本当に出てこず、すぐに詰まってしまっていました。それに比べれば、内視鏡が中まで入ってつまんでこれる訳ですから、格段に治療はしやすくなったと言えると思います。ほかに御意見よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは特に御意見ないようですので、議決に入らせていただきたいと思います。医療機器「Hot AXIOSシステム」につきまして、本部会として高度管理医療機器に指定して、承認して差し支えないものとし、特定保守管理医療機器への指定は不要、生物由来製品又は特定生物由来製品への指定は不要とすることとしてよろしいでしょうか。また、使用成績評価には期間を3年として、規定することとしてよろしいでしょうか。

                                ( 異議なし)

○荒井部会長 御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件も分科会にて報告を行うこととさせていただきます。よろしければ、これで議題2を終了したいと思います。久津見先生、どうもありがとうございました。

○久津見参考人 ありがとうございました。

                             ( 久津見参考人退席)

○荒井部会長 それでは議題3の医療機器の医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について」に進みます。事務局から説明をお願いします。

○事務局 それでは、議題3について資料3に基づき御説明いたします。タイトルに諮問書と書かれた3枚ほどの薄い紙が資料3です。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器があり、新たに一般的名称を新設する際には、いずれのクラス分類に該当するかについて、またその保守管理に専門的な知識を要するものとして特定保守管理医療機器に指定するか否かについて御審議いただいております。まず資料3の最初のページにあるのが本件の諮問書です。1ページめくっていただき、裏ページの下に今回審議いただく名称が記載されております。今回新設する名称は「生殖細胞系列遺伝子変異解析プログラム(抗悪性腫瘍薬適応判定用)」です。クラス分類は高度管理医療機器、クラス III とし、特定保守管理医療機器に指定しないこととしております。

 次のページです。新設する一般的名称()についてです。本ページの下に参考と書いてありますが、本品に近い一般的名称として三つ名称を示しました。これは全血液検体から得られた生殖細胞系列の遺伝子変異情報を用いて、抗悪性腫瘍薬の適応判定のために用いる医療機器プログラムの前例はないということから、今回は既存の一般的名称のいずれにも該当しないと判断いたしました。

 もう1枚ページめくっていただき、新一般的名称が付される予定の品目概要です。本品は血液検体から抽出された生殖細胞系列のBRCA1又はBRCA2遺伝子情報に基づきオラパリブの卵巣癌患者への適応を判定するために用いられる医療機器プログラムとなっております。BRCA1又はBRCA2遺伝子の変異情報を規定されたアルゴリズムに基づき分類し、検出された変異がオラパリブの適応対象になる変異に該当するかどうかを判定いたします。本品は機能の障害が生じた場合に人の生命に重要な影響を与える恐れがあることから、クラスIIIの高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また特定保守管理医療機器の指定については、本品は保守点検修理その他の管理を必要とするものではないと考えられるため、指定しないことが適切であると考えております。説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○荒井部会長 いよいよゲノム医療におけるこのような機械について、この部会で審議を行わなければいけない時代になりました。さて、今の説明について何か委員の方から御意見、御質問等ございますでしょうか。

○後藤委員 これ、今回は医療機器として出てきていますが、実際の遺伝子検査をして、その検査結果が正しいものが出てくるまでのことではなくて、それ以降の話も含まれることになるのですね。そうするとそれは情報として出てきた正しい遺伝子情報が、臨床的に意味があるかないかを判定するためのプログラムを医療機器として考えたいということなのでしょうか。まず第1点にそれを聞きたいのです。

○医療機器審査管理課長 御回答いたします。本品についてはプログラム医療機器としての一般的名称の創設でして、御指摘のとおり、今、BRACと呼ばれているものがありますが、そのうちのプログラムの部分を医療機器として、我々としては有効性、安全性を確保しようということを考えております。

○後藤委員 今後、遺伝子を調べて正しい結果を出すところに関しては、医療機器が絶対必要だと私は思うのですが、出てきた結果が臨床的意味があるかないかに関しては、新しい情報が出てきて、それを参照しながら判定をするということが今後もずっと行われていくはずなので、それがプログラム化されて、本当に正しい医療機器になるかどうかはまだ分からない状況だと思うのです。それをもうこの段階で、これを医療機器として認めてやっていこうと考えていらっしゃるということですね。

○医療機器審査管理課長 御指摘の点は、プログラムの前の部分をどのように有効性、安全性を確保するかということですが、今の薬事法、薬機法上の規制と考えて、そのプログラムとして、まずは医療機器として有効性、安全性を確保しようということになります。ただその前のものについては、まだ御審議いただくわけではございませんので、その辺はまた御審議のときに御理解いただければと思いますが、それなりにプログラムを前提として持っていただけるものとして、中に一定程度手続などの品質を確保できるという手筈を考えたいと思っております。

○後藤委員 もう1点、今、見本として出てきているBRACAnalysisうんぬんというところで、解析システムという名前になっているのです。解析システムと言いながら、実際にこれはプログラムだけなのか、遺伝子解析をするところも含めたものなのかが分からないのです。あくまでもこれはプログラムとしてという部分について、今、審議ということなのですね。

○医療機器審査管理課長 審議というか、一般的名称の創設ですが、今後御審議いただく品目についてはプログラムのものになります。ただ、先生が御指摘の部分は、恐らく前提の前の部分のことをおっしゃっているかと思います。そこの部分については使用方法などをいかに特定できるか、品質が管理できるかは、また別途の議論としてあるということです。

○荒井部会長 よろしいでしょうか。

○後藤委員 いろいろありますけれども。

○荒井部会長 こういう項目の箱を作るというのが、今日のこの部会での議論の目的かと思います。そのほか御意見はいかがでしょうか。

○中島委員 僕も十分理解ができていないのですが、こういう診断プロセスの解析プログラムの全てが、今後この部会で検討するようになるのでしょうか。プログラムBRCA1、2というのは一つの例として挙げられていて、それに類似した診断プログラムは現在でもあるでしょうし、これからも非常にたくさん出てくるのだろうと思います。この部会が次世代シーケンサーや人工知能的なプログラムを審査をするという、ほかにないのかもしれませんが、その辺あまたあるような気がするのか見解を教えていただきたいです。

○医療機器審査管理課長 御回答申し上げます。医療機器たるプログラムに関しては、この部会で御審議をお願いしたいと思っております。先生がおっしゃった「あまた」がどこからどこまでかよく分からないのですが。

○中島委員 医療機器たるプログラムと医療機器とならないプログラムというのは、どのようにして区別するのですか。

○医療機器審査管理課長 分かりやすく言うと、治療に影響を与える、与えないなどでして、例えば、今よく巷で売っている健康管理のプログラムがあると思いますが、それは医療機器でないものもございます。研究用として行っているものは医療機器でないものもございます。ただ一方でプログラムを解析していって診断方法を判定するなどといったものについては、医療機器としての有効性、安全性を確保しようということで、この部会での御審議をお願いしたいと思っております。

○荒井部会長 どうぞ。

○荒川委員 私も後藤先生のフォローなのですが、例えばBRAFの遺伝子変異があっても、BRAFの阻害剤が必ずしも効くとは限らない。大腸癌では単剤では効かないというデータもあるわけです。そういうことがまだまだ分かってないことがいっぱいある中で、これを本当に医療機器として承認する段階かどうかということは、ゲノム医療のところで盛んに議論されていることかと思うので、そこは慎重に扱ったほうがいいような気がします。

○医療機器審査第一部長 今回、御審議いただいている新一般的名称ですが、資料3の品目概要を御覧いただくと、4の使用目的、効能又は効果ですが、これはオラパリブという薬のコンパニオン診断薬、コンパニオン診断に使うためのプログラムになるので、そこに関しては当然薬の投与の可否を決めるために一定の品質、有効性、安全性を担保する必要があることから、このプログラムの一般的名称の箱を創設することについて御審議していただきたいと思っております。今いろいろ先生方の御意見で、いろいろな変異を測るプログラムが当然ございますし、また今、データベースを参照して、そのデータベース自体も変わりながら、新しい知見でいろいろなものが測れるものに関して、この一般的名称で今、全部を見るわけではございません。そこがBRAFならBRAFですとか、ALKとかいろいろなものが、今度は次世代のシーケンサー、一度に測れるものがきたときに、ではこの一般的名称として、それをまず医療機器としてどこまでの範囲を取り扱うか。当然、体外診断薬の試薬部分ですとか、シーケンスを測る部分の次世代シーケンサーですとか、その結果を解析するプログラムといういろいろな構成要素がありますが、今後の技術の進展に応じて一番適切な形で一般的名称、どこまでの範囲を医療機器として、どこまでの一般的名称で付けるかは、それは多分個々にここで、また一般的名称の御審議を含めて、御議論いただく形になるのかと思っています。これを作るから、全て全部が機器になるかというと、多分そうではないと思います。

○荒井部会長 要するに現段階では、ディスカッションする箱がないというか、場がない訳で、まずその箱を作りましょうと。その中に何を入れるかに関しては、今後出てくるものを見て、順次そこでまた協議して判断していきましょうという理解でよろしいですか。

○医療機器審査第一部長 はい。

○荒井部会長 よろしいでしょうか。よろしければ、議決に入らせて頂きます。生殖細胞系列遺伝子変異解析プログラム(抗悪性腫瘍薬適応判定用)を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定しないこととして、よろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○荒井部会長 ありがとうございます。これで箱を作ったことになりますので、今後ここの中に入ってくるものが、どのくらいたくさんなのかは分かりませんが、その都度真摯にディスカッションをしていきたいと思います。御異議がないようですので、このように議決させていただき、この件については、次の薬事分科会にて文書報告をさせていただきます。これで議題3を終了いたします。

 続いて議題4に入ります。議題4「医療機器の再審査結果について」を始めます。事務局より説明をお願いします。

○事務局 事務局より議題4、医療機器の再審査結果について御報告いたします。再審査は改正前の薬事法の第14条の4に基づき、原則、新しい医療機器について再審査期間を定め、承認後の使用成績等の調査を行わせるものであり、その調査資料に基づいて有効性及び安全性の再確認を行うことを目的とした制度です。今回は再審査結果の報告が3件ございますので、順に御説明いたします。

 まずは資料4-1です。販売名、TAXUS エクスプレス2 ステント及びタクサス リバティー ステントシステム の2品目についてです。申請者はボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社です。これらの製品は薬剤溶出型の冠動脈ステントであり、ステントプラットフォーム、デリバリーシステムは異なりますが、同一のパクリタキセルとポリマーがコーティングされております。TAXUS エクスプレス2 ステントは平成19年3月30日、タクサス リバティー ステントシステム は平成21年1月28日に承認されました。本使用成績調査は医療機器の不具合の発生状況、有効性、安全性等に関する情報の検出又は確認を行うことを目的として、TAXUS エクスプレス2 ステントについては2,132症例が、タクサス リバティー ステントシステム については616症例が登録されました。本使用成績調査において、それぞれの不具合の発生状況、有効性及び安全性について調査したところ、特段の対応が必要となる問題はございませんでした。このため薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当しないこと、すなわち、再審査結果の区分を効能効果、用法用量などの承認事項についての変更の必要がないカテゴリー1と判断しております。

 次に資料4-2です。2件目は販売名、クロッサーシステムについてです。申請者は株式会社メディコンです。この製品は経皮的血管形成術(PTA)においてガイドワイヤーの通過が困難な慢性完全閉塞病変(CTO)に対して、機械的振動を用いて腸骨動脈領域を除く下肢動脈の狭窄病変を貫通し、ガイドワイヤーの通過部を確保するために使用される機器で、平成22年4月30日に承認されました。本使用成績調査は医療機器の使用実態下における不具合発生状況、有効性及び安全性を確認することを目的として、107例が評価対象となりました。医療機器の不具合発生状況、有効性及び安全性について調査したところ、特段の問題はございませんでした。このため薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当しないこと、すなわち、再審査結果の区分を効能効果、用法用量などの承認事項についての変更の必要がないカテゴリー1と判断しております

 最後に資料4-3です。販売名ELVeSレーザーです。申請者は株式会社インテグラルです。本品は一時性下肢静脈瘤に対して、治療対象となる伏在静脈内で本品を用いてレーザーを照射することにより、主に血管壁を損傷・収縮させて血管を閉塞し、血流を遮断する医療機器で、平成22年6月14日に承認されました。本使用成績調査では医療機器の不具合発生状況、有効性及び安全性を確認することを目的として、637例の全例が調査対象となりました。医療機器の不具合発生状況、有効性及び安全性について調査したところ、特段の問題はございませんでした。このため薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当しないこと、すなわち、再審査結果の区分を効能効果、用法用量などの承認事項についての変更の必要がないカテゴリー1と判断しております。以上の報告については、事前に委員の先生方に資料をお送りさせていただいておりますので、簡単な説明といたしました。以上、御報告いたします。

○荒井部会長 委員の皆様から御意見、御質問等ございますでしょうか。いずれもかなり個数的には出た製品かと思いますが、よろしいですか。よろしければこれで議題4を終了いたします。

 それでは先に進み、議題5です。「部会の報告品目について」です。事務局から説明をお願いします。

○事務局 議題5、部会報告品目について、資料5-1及び資料5-2に沿って御説明いたします。平成29年4月から平成29年6月末までの3か月間に承認された品目のうち、クラス IV の医療機器、臨床評価が必要なクラス III の医療機器、承認基準外の体外診断用医薬品など、本部会へ報告対象となっている品目についてまとめております。医療機器52品目については資料5-1に掲載しておりますが、事前送付をもって報告とさせていただき、詳細な説明は割愛させていただきます。また体外診断用医薬品は資料5-2に記載しており、新規検査項目、コンパニオン診断薬、新規の使用目的の追加など重要なものについては、備考欄に内容を記載しておりますが、こちらも詳細については割愛させていただきます。御説明は以上です。

○荒井部会長 資料5は概要で説明いただきましたが、特に委員の方々から御質問、御意見はよろしいでしょうか。特に御意見がありませんようでしたら、これで議題5を終了いたします。これで本日予定された議題は全て終了しました。事務局から連絡事項はございますか。

○医療機器審査管理課長 それでは連絡を申し上げます。次回の部会については12月6日()午後5時半から7時半までです。通常より少し遅い時間の開催となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 それから、以前この部会でも何度か御報告申し上げた件ですが、辞任いただいた委員の事案について、昨日の薬事分科会においてその対応について御確認をいただきました。今後の再発防止策として、委員への就任時及び会議開催時にその分科会規定の適合状況について、書面に御署名いただく形にしたいということで、併せて報告、申告様式についても薬事分科会において御了解をいただいております。これについては次会部会から運用をさせていただきたいということですので、よろしくお願いします。詳細については追って事務局より御連絡申し上げたいと思います。連絡事項は以上でございます。

○荒井部会長 今、御説明いただきましたように、次回から毎回各委員には簡単な書式ですが、書いて頂いたものをご提出頂かなくてはなりません。お手数ですが、非常に大切なことですので、是非とも御協力ください。よろしければこれをもちまして本日の医療機器体外診断薬部会は終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室 室長 柳沼(内線4226)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)> 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録(2017年9月29日)

ページの先頭へ戻る