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2017年10月17日 第102回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省 大臣官房厚生科学課

○日時

平成29年10月17日(火) 15:30~17:30

 

○場所

厚生労働省 省議室(9階)

○出席者

【委員】

相澤委員、石原委員、磯部委員、大澤委員、川西委員、
楠岡委員、倉根委員、木幡委員、玉腰委員、中村委員、
福井委員、山口委員、横川委員

○議題

1.審議事項
  議題1 「研究機関における公的研究費の監理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく研究機関に対する平成29年度履行状況調査の実施について
  議題2 平成28年度国立感染症研究所研究開発機関評価について

2.その他報告事項
  平成17年~28年度に実施された戦略研究の総括について

○配布資料

資料1-1 「研究機関における公的研究費の監理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく研究機関に対する平成29年度履行状況調査の実施について(案))
資料1-2 平成29年度履行状況調査実施フロー図
資料2-1 平成28年度国立感染症研究所研究開発機関評価報告書
資料2-2 平成28年度国立感染症研究所研究開発機関評価に係る対処方針
資料3-1 厚生労働科学研究における戦略研究の総括に向けた調査分析 総括報告書【概要】
資料3-2 厚生労働科学研究における戦略研究の総括に向けた調査分析 総括報告書
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会 委員名簿
参考資料2 研究開発機関評価について(概要)
 

○議事

 

 

下川研究企画官 少し早いのですが委員の先生方がおそろいですので、始めたいと思います。傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては既にお配りしている注意事項をお守りくださるよう、お願いいたします。ただいまから、第102回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様方には御多忙の折、お集まりいただきお礼を申し上げます。本日は、8名の委員から御欠席の御連絡を頂いております。出席委員が過半数を超えておりますので、会議が成立することを報告します。
 続いて、本日の会議資料の確認をいたします。議事次第、座席表が最初にあり、議題1の資料として資料1-1、資料1-2、議題2の資料として資料2-1、資料2-2、報告事項の資料として資料3-1、資料3-2、委員名簿、議題2の研究開発機関評価の関係が参考資料として2つあります。資料の欠落がある場合はお申し出ください。
 それでは、福井部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。
○福井部会長 それでは、よろしくお願いします。本日の議題として、審議事項が2件、報告事項が1件あります。最初に審議事項の議題1「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく研究機関に対する平成29年度履行状況調査の実施について、御議論いただきたいと思います。事務局より説明をお願いします。
○下川研究企画官 資料1-1を御覧ください。厚労科研費の管理・監査については、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」により、研究機関及び配分機関が講じる事項を定め、その遵守を求めております。その遵守状況については、平成27年度の厚労科研の公募から、「体制整備等自己チェックリスト」の提出を求めております。
 このガイドラインにおいては厚労省が講じるべき措置として、自己評価チェックリストの提出による確認に加え、研究機関におけるガイドラインに基づく体制整備・運用の状況の把握を目的として一定数を抽出し、履行状況調査を行うことになっております。また、その調査の結果、体制の整備・運用に不備があると判断された機関に対しては、所用の改善を促すための管理条件の付与等の措置を講じることが求められております。
 したがって、2の実施方針のとおり、平成29年度の履行状況調査を実施したいと考えております。2の実施方針の(1)調査対象です。文章で記載しており分かりづらいので、それを図で示している資料1-2を御覧ください。調査対象機関の選定方法です。まず、はじめに1と書いてある部分です。体制整備等自己評価チェックリストで「全ての機関が実施する必要がある事項」に、未実施項目がある研究機関をリストアップし、そのうち平成28年度の配分実績の上位から、5機関程度を選定したいと考えております。5機関の選定に当たっては、厚労省が平成27年度、平成28年度に実施した機関を外して、また文部科学省とも同様な調査を行っており、事前に文部科学省と調整し、そちらとも対象機関が重複しないように配慮したいと思います。
 また、2と書いてある部分です。1に加えて厚労省が所管する施設等機関及び国立研究開発法人は全12機関あり、ここ2年間で8機関が終了しているので残り4機関になりますが、1機関は既に文科省が調査を行っておりますので、残り3機関を実施したいと考えております。
また、3と書いてある部分です。平成28年度に研究費の不正使用に関する調査報告書の提出があった研究機関の鳥取大学も調査対象としたいと考えております。
 次に4と書いてある部分です。平成28年度に施行した履行状況調査において、改善すべき事項が認められた6機関をフォローアップとして改善状況を調査したいと考えております。6機関は、岩手医科大学、国立病院機構鈴鹿病院、エイズ予防財団、国立保健医療科学院、国立医薬品食品衛生研究所、国立国際医療研究センターの6機関です。
 また、これらの1~4までの機関に関して、まずは書面調査を実施して履行状況等を確認し、必要に応じて、例えば、ほとんど実施すべき事項が実施されていないような場合には「現地調査」を実施して、現場で話を聞いて指導したいと考えております。
 次に、資料1-1の裏面を御覧ください。(2)調査内容です。これはガイドラインにおいて研究機関が遵守すべき事項についての研究機関の実施状況の詳細で、具体的にどのように何を実施しているのか調査します。この四角の枠で囲んだ部分が具体的な調査事項の例示です。例えば、丸1最高管理責任者の役割、責任の所在・範囲と権限を定めた内部規定等の整備、あるいは、丸2競争的資金等の運営・管理に関わる全ての構成員を対象にしたコンプライアンス教育の実施、丸3不正を発生させる要因に対応する具体的な不正防止計画の策定の有無、丸4発注・検収業務について、事務部門が実施しているかどうか、丸5競争的資金等の不正への取組に関する機関の方針等を公表しているかどうか、丸6内部監査部門は、リスクアプローチ監査を実施しているかどうか、このようなものが調査事項となっております。
 次に、(4)調査結果の取扱い等です。調査結果を取りまとめて、本科学技術部会に報告をします。平成29年度の履行状況調査の結果、ガイドラインに基づく体制整備・運用に未履行があると判断された研究機関がある場合には、その事項を改善事項として履行期限までの改善を求める管理条件を付与することにしたいと思います。また、来年度、履行状況調査をする際には、フォローアップ調査の対象機関として管理条件の履行状況についてのモニタリングを行う予定としております。
 次に、3.スケジュールです。本日の科学技術部会で実施方針の御了解を頂きましたら、11月に調査対象機関からの調査報告書の提出の後、現地調査を行い、結果を来年の2月の科学技術部会に報告したいと考えております。説明は以上です。
○福井部会長 ただいまの説明について、何か御意見、御質問等ございますか。これは全部で15機関についての調査を行うということです。その結果を来年の2月に報告していただくということになります。いかがでしょうか。
○大澤委員 内容的に遅れている質問ですが、(2)の調査事項の例という所の丸4に、発注・検収業務については、原則として事務部門が実施しているかという項目があり、これは既にこの委員会等でも通ったチェックリストだと思います。例えば、ものによっては大量販店というか、ものを安く売っているお店があり、そこに研究者が直接行って購入したほうが安く購入できるようなものもあったりします。原則として、そういうものは認めないということでしょうか。
○下川研究企画官 今の御指摘について、基本的に事務部門でやっておりますが、ここに原則と書いてあるのは、インターネットでないと買えないものがあったり、学会の申込みをインターネットでやるとか、あと、ネットからダウンロードして買うもの等、そういう場合に事務部門がどのように関与するのかというのは、最初から絶対に事務部門でないとできないとか、そうすると支障があるということで、具体的なやり方としては、それぞれの研究機関でルールを定めていただいているということです。
○福井部会長 よろしいでしょうか。
○大澤委員 ありがとうございました。
○福井部会長 金額によっても少し区別している所があるように思います。ほかに何かございますか。この件について、よろしいでしょうか。それでは、科学技術部会として了承したとさせていただきます。
 それでは、審議事項の議題2、平成28年度国立感染症研究所研究開発機関評価について御議論いただきたいと思います。まず、事務局から趣旨について説明の後、国立感染症研究所所長より御説明をお願いいたします。
○下川研究企画官 まず、参考資料2を御覧ください。「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」に基づき、国立支援研究機関の長は、機関全体の評価を3年に1回を目安に定期的に行うこととしております。評価は外部の専門家等による評価委員会から受け、評価報告書の提出を受けることになります。この評価報告書に機関の運営の改善についての指摘事項が記載されている場合には、研究開発機関の長は検討を行って対処方針を作成することになっております。
 その後、研究機関の長は評価報告書を厚生科学審議会に提出し、具体的にはこの科学技術部会ですが、厚生科学審議会は、必要があると認めるときはこの評価報告書と対処方針に対して意見を述べることができることとなっております。この評価報告書の対処方針について不十分な点があり、厚生科学審議会から意見があった場合には、その後、それに対する改善の状況を再度報告することになっております。
 次に、資料2-1を御覧ください。今、説明した厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針のルールに基づいて、今般、国立感染症研究所において、平成26~28年度の活動を対象に外部の第三者委員会による機関評価が行われております。その評価報告書が資料2-1です。そして、その評価委員会による評価報告書の指摘事項に対する機関としての対処方針が資料2-2です。
 それでは、国立感染症研究所より、資料2-1と資料2-2の御説明をお願いいたします。
○福井部会長 よろしくお願いいたします。
○倉根委員 まず、資料2-1を御覧ください。12ページに委員名簿があります。委員長は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構科学技術顧問の岩本愛吉先生にお願いしてあります。1ページです。「はじめに」は、岩本先生におまとめいただいたものです。「感染研」の業務の目的が「はじめに」の所に書いてあります。業務の目的は、感染症を制圧し、国民の保健医療の向上を図る立場から、広く感染症に関する研究を先導的・独創的かつ総合的に行うとともに、国の保健医療行政の科学的根拠を明らかにし、また、これを支援することにあるということが役割です。
そのための業務として、感染症に関わる基礎・応用研究、レファレンス業務、これは検査あるいは検査診断と言っていいかと思います。サーベイランス業務と感染症情報の収集・解析・提供、生物学的製剤(ワクチン、血液製剤)等の品質管理に関する研究と国家検定・検査業務、国際協力関係業務、研修についても我々は実際に行って、多岐にわたっているということです。
 研究評価ですが、既に厚生科学課決定の研究評価の指針があり、それに基づいて「国立感染症研究所所内研究開発評価マニュアル」を作っており、3.機関評価の対象にあります。そこの一番下ですが、丸1研究、開発、検定、検査、調査から丸2~丸4、次のページの丸5~丸11まで分かれております。この形にのっとって作られている報告書を岩本委員長から我々は頂いたということです。
 それに基づいて資料2-2を御覧いただくと、これはどのような作りになっているのかというと、四角があり左側に研究機関におけるコメントといいますか、これは委員のコメントということになります。先ほど申し上げた資料2-1の5.研究部評価の結果というものと全く同じです。それに対して、右側にそれぞれの対処方針を述べております。ものによっては、特にこちらから何か対処するということが求められていないものもありますので、そこについては、我々の対処そのものというよりは意見を述べている、あるいは、同意の所については同意を述べているということです。
時間の制限もありますので、まず、ここにある(1)~(12)項目について、いろいろ御指摘いただきましたので、その12項目を簡単に左と右を合わせるという形で説明したいと思います。
 まず、(1)研究、開発、検定、検査です。1)研究、開発については、対処方針が書かれておりますが、特に何かこちらで対処すべきという大きなものはありません。
 2ページです。2)サーベイランス業務についても、引き続き努力するようにということを言ってもらっておりますので、ここについても特に大きな対処方針を入れておりません。
 3)レファレンス機能について、少しページがずれておりますが、3ページの左側のカラムの上から6行目辺りに、我々、この委員会から地方衛生研究所の検査機能の維持向上も我が国全体として重要な課題であり、感染研がこの点でも十分な役割を果たすことを期待するということで、「期待」でございます。もちろん、今、地方衛生研究所は85ありますので、それぞれの地方自治体にあるのですが、我々と地方衛生研究所はネットワークを組んでおり、その中で業務を行っております。感染症法の改定に伴って地方衛生研究所の役目が明確化されたということから、我々もそれに基づいて地方衛生研究所に関して、そのできる部分を行う、充実させ、それなりの役割を果たせということがありました。それに対しては、2ページの右側のカラムのレファレンス活動についてはということで、もちろん、我々自体がきちんと機能を果たすということは重要ですが、地方衛生研究所全国協議会との連携のもと、検査方法の改良・標準化、検査への制度管理の導入等により、地方衛生研究所における検査機能の維持向上にも貢献し、我が国全体における国内レファレンス機能の向上・充実をも目指し、そのための体質強化も図るということで、実は外部制度管理等の事業も始めたところです。感染症研究所への評価ですが、やはり、我々も国のこういう役割を持った研究所として、国全体として機能が果たせるようにということを考えて今後進むという対処方針です。
 3ページの左側の4)国家検定です。一番下から11行目に今後はというものがあり、血液製剤についてもSLP導入に向かうことが望まれると。今後もワクチン検定の件数はさらに増大することが予想されることから、所として必要な予算と人員を確保する必要がある。今後は各製剤のリスク評価を行うとともに、新たな技術も取り入れ、検定法の変更を図ることも必要ではないのかという御指摘がありました。
 それに対する我々の対処が右側にあります。下から8行目辺りですが、まず、必要な予算増額と人員増加の要求を継続的に行っていく。それと同時に、各製剤のリスク評価に基づく国家検定法の方式も考えるべきではないかということを考えております。これは医薬食品局になろうかと思いますが、厚生労働本省との連携のもとに、リスク評価に基づく国家検定法を導入することが必要ということも考えております。国家検定の質を落とすことなく、検定自体の効率化、経費の減少を図るということです。
 もちろん、予算、人員については要求を続けますが、しかし、ワクチンの量、ロット数が非常に増えていく中で、ただ単に予算増額、人員増だけではなくて、質は落とさないものの、新しいやり方を我々研究所として考え、そして、それを厚生労働本省の医薬食品局に提示していきたいと思います。もちろん、そういう形でよろしいかどうかということは、また国の、厚生労働本省として決めていただくということもありますが、各国の事情も勉強しつつ経費を削減し、できるような形に持っていくべきではないかと、我々は今考えております。
 4ページです。5)健康危機管理については、特に対処を求められる事項がありませんでした。
 5ページです。(2)研究開発分野・課題については2つ御指摘を頂いております。まず、左側の最初のパラグラフの8行目辺りからです。希少感染症の専門家を維持して研究を継続的に行いうるのは、現状ではおそらく感染研をおいて他にはない。このような分野の研究者が定員削減等によって維持されなければ、我が国からその分野の研究が消滅するという事態も招きかねない。感染研は不測の事態に備えるための感染症各分野の人的リソースを維持し、高い研究レベルを維持し、充実させる責務があるということです。
 特に、非常にまれな感染症に関して、きちんと準備をしておく、人的にも準備をし、技術も準備しておくということです。これに関しては、右側の下から2つ目のパラグラフを見ていただくと、希少感染症、あるいは、我が国において研究者層が非常に薄い分野については、当然、厚生労働行政に直結する研究機能の維持が必要であるということです。
 それから、まれな感染症で研究者層が非常に薄い分野についても、当然、若手研究者の育成を含めて研究基盤の維持をするということです。ただ、こういう非常にまれで余り病気がないような感染症分野については、現実にはなかなか難しいのが実情です。というのは、大学等に専門家がいないので、そこからリクルートしてくるということが難しい。そうすると、内部で育成しなければならないということです。あるいは、仮にそういう分野の人員増、やはり、それなりに小さい部になってしまうので、これは内閣人事局等のお考えもあるのでしょうが、要求はしておるのですが、なかなか増えないということが現実です。しかし、我々はきちんと重要性を説明していく責務があります。
 5ページの左の下から2つ目のパラグラフの6行目辺りに、部門間での研究レベルに差があるのではないかということです。感染症研究に新たなインパクトを与えるような研究成果や、感染研ならではの研究成果を期待するということです。
 確かに、うちには25を超える部門があり、部門間の差をどのように見るのかですが、論文の数、あるいは研究費の取り具合であるということで見て判断されるということもあります。我々の対処方針としては、5ページの右側の一番下のパラグラフです。各病原体専門部と、例えば病原体ゲノム解析センター、感染病理部、免疫部、細胞化学部等、特定の病原体を対象としない部センター間での共同研究をこれまで以上に推進して、全体的にそれぞれの部の垣根をなくすことによって全体のレベルを上げていくという方策が一番現実的であり、我々の役目にも十分沿える、我々の業務、ティーオーアールにも沿えるということで、今、それを強く促進しております。こういう形で、比較的、研究費が取れない所、人が少ない部門についてもレベルを何とか維持して上げていくという方策を取ろうと思っております。
 6ページは特にありませんので、7ページを御覧ください。(4)は研究上の遂行上の基盤組織、研究補助、施設情報基盤等の話です。左側の一番下のパラグラフの下から12行目辺りです。実は、この委員会が2月に開かれており、この段階ではまだ認められたというところしか我々は言えなかったのですが、薬剤耐性研究センターが、国の薬剤耐性対策アクションプランに基づいて新たに設置されました。このときには、まだ設置されますということですが、その中に最初から全ての要求人員が充当されるわけではなくて、実は併任が掛かっており、そこのところを説明したことに関して他部局からの配置変えや併任も行われるようだが、その結果、元の部局のアクティビティに負の影響が出ないことを十分考慮して、きちんと維持するようにということです。
 それに対して、右側の一番下のパラグラフに本センターの人員についてはというものがあります。本センターの人員については、新たな増員がなされたものの、当初の要求数が全て手当されたわけではないので、他部局との併任がかなりの部分を占めるというのは説明したとおりです。一方、もちろん、それについては今後も増員は要求するのだけれども、併任となっている所員のほとんどが、現在の部局においても薬剤耐性に関する業務、研究を行っているので、その業務を継続されることから、直ちに元の研究活動に大きな影響が出るということはないというお答えをしており、現実にそうなっておりますが、本センター自体の専任職員についても、やはり、毎年、必要な部分についてはこちらから増員をお願いしていくという形でやるつもりでおります。
 8ページは特にありませんので、9ページを御覧ください。(7)研究者の育成及び確保です。その中で御指摘されたものは5行目辺りからです。定員削減がなされているけれども、機能維持のためにも、また将来の研究の発展のためにも、今後もこれ以上の人員削減、特に研究を支える年代の研究員の削減がないようにすべきと思われる。また、非常勤職員が減っていることからも、これまで非常勤職員が行ってきた業務を研究員が行わざるを得ない状況を生み出すこととなっており、感染研における研究者の育成の点からも非常勤職員の削減を避ける方策が取られるべきであるということです。
 これについては、右側の下のカラムの上から9行目辺り、ちょうど真ん中ぐらいですが、既に毎年の定員削減数が本年度を含めて5年間については計画されております。それは国の御指示です。それに対して、増員に向けての人員要求を行っているということです。現状では、喫緊のものに対してはお認めいただくことが多いのですが、そうでなくここが減りますと、こういう希少なものに対して対応が取れないということについて、なかなか増えないのですが、それは我々も十分説明しつつ今後も努力するということです。
 それから、薬剤耐性研究センターと、これは国の施策として絶対必要であるということについては、もちろん確保できたことから、今後もこのようにして国の期待に沿うべく増員の必要性を示して説明し、実質的な定員増に向けて何とか進めていきたいということで、実は今年度については減がなく何とかとんとん、1だったか増えたという形で収まっておりますが、今後も十分な説明をしていきたいと考えております。
 10ページの一番上のカラムについて、委員の方の誤解があったので、我々の説明があれだったかと思いますが、医師資格を持たない優秀なPh.Dを採用していく努力も必要となっているのではないかということ。それから近未来における研究所の活力低下と後継者の欠落が生じることを防ぐため、組織の若返りも考えるということです。右側に対処方針を入れておりますが、研究員の採用に関して、多くの部において、特に医師であるということが必要であるという職種以外は、医師資格を有する人材に特にこだわっておりません。
 もちろん、獣医学、歯学、薬学、理学、生物学、工学に至るまで、他の分野で教育、トレーニングを受けた優秀な人材も、当然、採用しております。ここについては、少し委員の先生方に誤解があったかと思います。それから、一時、感染研は年齢構成が高いという形があったのですが、近年、40歳代の職員が最も多い「釣鐘型」の分布となってきております。もちろん学位を取ってから採用するとなると、どうしても最初に採用するのは、恐らく30数歳になってからの採用になりますので、そういう意味ではあれですが、何とか釣鐘型を維持して、技術、研究の継続性を維持するということを考えております。それなりに釣鐘型になっており、一時の年齢の高い研究者が多いという構造は、今は少し外れてきております。
 11ページです。左側の(8)専門研究分野の成果に基づく社会貢献です。この社会貢献の中で我々はアウトリーチ活動について少し説明し、それに対して御意見を頂いております。左側のパラグラフの15、16行目です。特にアウトリーチ活動について重要な活動であることは明らかであるが、一方、このような活動が、他の業務で非常に忙しい職員に過剰な負担とならないように配慮するということです。現在、我々はアウトリーチ活動を非常に重視して行っております。所の公開であるなど、非常に重視して行ってきております。
 これについては、11ページの右側のカラムの8行目ぐらいからです。アウトリーチ活動の重要性を認識している職員が非常に多くなってきております。一方、この御指摘のように、このような機会が増加するにつれてアンバランスが生じ、特定の職員に過剰な負担が発生する危険もあります。我々はそれをよく理解しており、参加した職員からもそういう意見を聞いております。アウトリーチ活動を職員間で分担することも推し進めることで、特定の職員にのみ過剰な負荷がかかることを防止できます。これは、具体的にどのようにしたのかというと、今、戸山庁舎や村山庁舎で、庁舎の一般公開をしているのですが、以前は両方にお願いしたような方もかなりおったのですが、何とか分けて、村山庁舎については村山で、戸山庁舎では戸山でというような分けを決めて、両方ともアウトリーチ活動で本来業務ができない、これも本来業務なのですが、支障を来すことのないようにということで、委員会等とも意見を調整しつつ行っております。
 12ページです。最初の(9)の倫理規定あるいは利益相反等で、このパラグラフの6行目辺りに、感染研がワクチンの国家検定を行う機関であることから、ワクチン開発等の研究業務が利益相反にあたらないよう、外部から見てもよく分かるように、開発と検定の組織を明確に区分していくということです。これに対して、右側の5行目です。まず、国家検定業務に係わる職員については、利益相反管理委員会において個々の利益相反を把握し、対処しております。
 一方で、特に、ここにインフルエンザと書いてありますが、株を各メーカーに配布するという業務と、検定するという業務を同一センターで現在行っておりますが、室として分けて運営することによって、できる限り機能を落とさず、しかし、ここの御指摘に対する対応ということを考えております。当然、あるセンター、あるいは部のワクチン関連の開発するという業務、あるいは開発ではない業務、例えば検定の業務を完全に分けるというのは、実は我々の目標ですが、現在の人員の中で全てをクリアにスパッと分けてしまうと、今度は業務自体がなかなか成り立たないということがあります。今後、これは組織の考えも含めて、我々の業務と組織をうまく調整しつつということですが、現在はできる限りのことを行っているということが現状です。
 次に、(10)バイオセキュリティ及び情報管理セキュリティ等の整備及び運営です。ここについては、村山のBSL4に対しての指示があり、村山庁舎のバイオセキュリティに関する施設の整備などが特に求められるということであります。
 右側のパラグラフの上から7行目に、特に、村山庁舎においては、平成27年のBSL4施設指定に関連して、警察・消防との連携を強化しております。それから、村山市の住民を含む村山庁舎施設運営連絡協議会を中心として、バイオセキュリティレベルを向上させました。次のページの右側へ続きますが、アクセス道路の設置、これは逃げるときのものです。新ゲートの設置、防御フェンスの増強、緊急時の消防車両の進入ゲート、ソフト面では警備のための立哨、ゲートの開閉の新ルールの充実を図りましたし、訓練についても、状況に応じて、周辺自治体との合同訓練も行っており、市や警察にも見ていただくということもやっております。今後もこれを更に強めていくという対処をしております。
 その後に総合評価及び意見については、もう既に述べたものがまとめてありますが、述べられていないものが2つあるので説明します。14ページの左側の一番下のカラムの下から5行目です。これも、委員から通常業務の量によって基盤研究に割ける時間が違うであろうと、そうすると論文数やインパクトファクターのみによる評価ではなくて、通常業務における貢献や実績を十分に評価して、バランスよく評価するような評価制度を推進すべきではないかということでした。
 これは、我々はここ10年ぐらいそのような評価に移ってきており、右側にあるように、下のパラグラフの9行目ですが、できる限り通常業務の各部センターへの分散化も図るということが1つです。一方、評価に当たっては、研究業務とともに通常業務の評価を十分に行ってきております。研究業務の評価においても、質のみではなく、質の評価を行うけれども、いわゆるインパクトファクターのみの評価は行っておりません。やはり、どうしても通常業務、研究業務は両方とも業務ですので、そのバランスは全ての人が同じパーセントになっておりません。しかし、その中でも我々が研究するのは当然であるというスタンスでやっております。通常業務への貢献、検定、検査について十分配慮して行っております。
 16ページの左側の一番下のカラムの上から4行目です。しかし、検査法、ワクチン、開発等の基礎的研究を遂行し実用化していく過程の中で、企業等との連携についても柔軟なあり方を検討する必要もあるのではないか。一方、感染研が検定業務や承認前検査を行う機関であることから、利益相反の疑いを招く恐れのないように、規定や組織体制を改変していくべきである。ここも、我々は申し上げたつもりだったのですが、右側の下のパラグラフ、感染研は企業との連携は行っていないわけではありません。共同研究契約を結んで共同研究を進めております。お金の動きはありません。ですから、共同研究契約でも我々の部分は我々のお金でやるし、企業の部分は企業でやるということです。実用化や特許等に結び付いているものもかなりあります。このことは感染研は予防治療法に係る研究が、業務の1つであるということと、我々は矛盾しないと思っております。
 ただ、確かにこのように委員の先生方々からも、そこの透明性ということもきちんと考えて行うということですので、利益相反委員会等でここについても、今後きちんとディスカッションしていく。それから、企業の共同研究契約の結び方についても、専門家の意見も入れつつ何とか透明性を確保していきたいと思っております。少し時間を取ってしまいました。ありがとうございます。
○福井部会長 ありがとうございます。大変分かりやすく御説明いただきました。御意見、御質問等がありましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。いかがでしょうか。感染研全体で何名のスタッフでがいるのか、大体の数でお願いいたします。
○倉根委員 分かりました。今、国家公務員、正規の職員として362人です。そのうち約40人が総務部の事務担当で、研究者としては320人前後でやっております。
○福井部会長 はい。中村委員、どうぞ。
○中村委員 大変重要なお仕事をしていただいていることは、よく理解いたしました。何度も話の中で出ていましたが、予算と人員ということで、今、人員の御質問がありましたが、予算の最近の推移はお聞きできるものなのでしょうか。減っているか、増えているのか。
○倉根委員 予算については少し減り気味です。ただ、昨年、今年も、次の予算もありますけれども、薬剤耐性とか、国の方針というものが出ているものがありまして、そこの重要性を我々も大分言うことによって、何とか削減は最低限にしていただいております。全体で増えているか減っているかと言われると、少し減っているということです。
○福井部会長 ほかにはいかがでしょうか。相澤先生、お願いいたします。
○相澤部会長代理 御指摘のとおり、今の日本の予算構造そのものが非常に硬直的になっていて、予算全体は増えているが、支払額が増えているのは義務的経費ばかりになっています。そういう面でいうと、政策的経費に掛けられる額はどんどん減っています。したがって、感染研のような社会的重要性があったとしても、予算における査定が厳しい状況になっています。そういう全体の構造の問題というのがあると思います。とはいえ、重要な政策なので、頑張っていただきたいと思います。
 ただ、スポットライトが当たったものについては、その時だけは予算が付きやすいという、日本の予算構造の特殊性も考慮していただきたいと思います。
 最近、観光立国があり、日本に来る外国人の数が増えるというのが政策ですから、いろいろな物を持って入って来るということから感染症対策を厚生労働省に主張していただくとよろしいのではないかと思います。○福井部会長 倉根委員、どうぞ。
○倉根委員 我々も、今、先生がおっしゃいましたように、メディア的に脚光を浴びる部分というか、非常にそれも重要ですが、やはり先ほど途中でも出てきましたが、ほとんど研究者がいない分野の研究であったり、研究者の維持とか、それから検査、もう1つは常にある患者数が出るものというのは、なかなか予算を要求しても常にあるものですから、増えてもいない、減ってもいないという部分ということもあります。
 もちろんそこは、我々も厚労省本省にも説明いたしますし、それから、財務省とか、内閣人事局に我々も御説明するときに重要性は分かると、常に内閣人事局にも言われますが、しかしということがあります。それは我々の説明ぶりかと思います。ただ、我々の持ち味として、そういう危機管理対応というのは、これは1つの役目です。それ以外に、常に全ての感染症に対応できる科学的知見と技術と研究能力を維持し、何が起こっても対応できる、厚生労働本省と連携して対応できるだけの科学的基盤を維持するのが我々の本当の姿というか、なかなか外からは見えづらいところかもしれませんが、それが一番大切なところだと思っております。
○福井部会長 磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 磯部でございます。大変大事なお仕事をされていることはよく理解できましたし、御努力されているということ、ありがとうございます。少し伺いたいのは、研究者の育成確保ですが、私も3月まで大学に籍を置いておりました。基礎研究者がどんどん減っているというのが非常に問題になっています。特に、一旦、臨床経験をもって基礎研究に入る。特に感染症の領域はそういう方のニーズというか、必要性は非常に高いと思うのですが、これを拝見していますと、連携大学院を組んでということが主に書かれていますけれども、連携大学院というのは、中の職員を大学の連携大学に出しているのか、あるいは、学生を受け入れているのか、多分、両方必要なアプローチだと思います。特に大学院だけではなくて、もう少し若い世代、医学部も含めて、そういう努力をしていかないと日本の科学教育全体がそうですが、医師の基礎研究離れというのは非常に深刻で、この領域でも多分そうなのだと思います。その辺りを何か工夫なされていたら教えていただきたいのです。
○倉根委員 連携大学院は18大学ですが、幾つかまた増えるので20大学ぐらいになるのだろうと思います。先生がおっしゃったように、これは各大学の考え方にもよるのですが、多くは、我々の職員が客員教授、連携教授という教授職、あるいは准教授としてポジションを得ております。そうすることによって、ある大学の大学院生が、実際にはうちで研究しているということになります。学位も出せるということです。これは大学ごとには違うのですが、多くの大学はそうなっています。
 あとは、学部学生についても、なかなか今、医学や獣医学教育はカリキュラムが詰まっていますので、感染研に来るというのが難しいのですが、その状況でも夏休み等に来てもらったりしています。また、こちらから一般の方々への感染症の講義を夕方6時か、7時頃からやるとか、その中に学部学生も入ってもらうとか、さらに、もう少し小さい人たちへの出前授業のようなものもやっています。ですから、いろいろ手を使っていますが、なかなか学部学生となると、大学院よりも、学生の自由度というか、大学がある教育しなければいけないという部分が、どうしても厳しく決まっている部分もあって、なかなかそこについて大学院ほど活発に行えないというのが現状です。
○福井部会長 磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 ありがとうございます。今、ほとんどの大学で研究のための期間を設けて、例えば、私がいた医科歯科大学は半年間まるまる研究所とか、外国も含めて、学内機関だけではなくて、研究に専念するプログラムがあります。そういう制度が結構各大学で行われていますので、そこで研究に触れてそちらに進むという人は結構多いので、そういうことも御活用いただいたらいいかと思いました。
○倉根委員 各大学との「連携大学院」という形になっておりまして、ですが、大学によっては、今、先生がおっしゃったような研究機関というか、学部学生でも受け入れられることは受け入れられますので、また、そこもディスカッションしたいと思います。ありがとうございます。
○福井部会長 楠岡委員、どうぞ。
○楠岡委員 この報告書でも、やはり人、予算の問題がかなり指摘されています。これは研究所の責任というよりは、どちらかというと、その上にある厚生労働省の責任かと思います。
 私自身の経験で申し上げると、前職の病院長をしていたときに、病院内でメタロβラクタマーゼ産生腸内菌細菌群のアウトブレイクを経験しました。これがかなり長期にわたって存在していたようで、結果的に、感染研のインフェクションコントロールチームとか、疫学チームに来ていただいて、それと、大阪大学の協力を得て、何とか封じ込めた経験がありました。やはり患者間での感染の状況とかを見る場合には、菌のDNA解析等をしていかなければなりません。感染研でやっていただいているのですが、やはり人手がないのか、なかなか結果が返ってこないとか、あるいは、チームが報告書をまとめかけたところで、別のアウトブレイクが起こったので、そちらに人手を取られて報告書をまとめるのが遅くなるとか、もちろん随時報告は頂いているので、それにのっとって院内の対策はできるのですが、最終的な報告書が出ないと、いわゆる終了宣言ができないとか。結果的に、発生してから、最終的な終了宣言をするまでに1年以上かかっています。
 これは変な話ですが、多少の風評被害もあって、病院の経営にも多少の影響が出ることもありました。そういう意味では、平時はいいとして、何か大きなものが重なったりしたときに、十分対処できる人員とか機材がないと、どちらも中途半端になってしまったり、あるいは十分な調査が完全にできない、あるいは時間的に間に合わないということが危惧されます。今の仕組みではどうしても平時は何とかなる、あるいは、それもぎりぎりいっぱいなのですが、非常時に関しては絶対的に足りません。では、どこが応援してくれるかというと、我々の場合は、たまたま大阪大学に手伝っていただいたり、それから、病院で臨時に職員を雇用したりして対処できましたが、そういうような経験を通じ、特に研究所側の余裕がある体制が必要ではないかというのを身にしみて感じました。是非この辺のことも御検討いただきたいと思います。
○福井部会長 倉根委員、どうぞ。
○倉根委員 報告が遅れて申し訳ありませんでした。どうしても複数重なったときに、今、先生がおっしゃったようなことだと思います。内部的にはどうやっているかというと、例えば、インフルエンザ等が非常に全国的に蔓延して、どうしても担当部だけでは無理だというときは、ほかから人を出してもらって検査をする。例えばPCR等の検査を十分行えるという人たちを他部局から出してもらって、そして、ローテーションを組んでやるということの準備を行っています。それは時々の状況を判断して行っています。もちろん担当部のほうから、他部からの応援がないと無理だということを聞きつつ、体制を組んでいくのですが、そういう体制で乗り切ったこともあります。
 今回、薬剤耐性のセンターもできましたし、それから、ゲノム解析センターのほうの力も大分上がってきていますので、そこは部間を越えた共同の業務がかなりスムーズに行えるようになりました。それは感染研としての責任ですので、そこは内部的に他の分野の人を動かしてでも、きちんと維持するという対策は必ず取るようにいたします。
○福井部会長 ありがとうございます。川西委員、どうぞ。
○川西委員 先ほどの連携大学院の話に戻りますが、私どもも感染研と一緒に厚労省直轄系ということで、研究公務員ということになって、実は大学のほうからこちらに来ていただくことに関しては比較的にやれるのですが、こちらの職員が大学のほうに行くということに関しては、公務員の「職務専念義務」というのがあって、かなり制約があるのです。少なくとも、今の運用では、相当制約があるのです。その辺り、今、産官学の連携というのが非常にうたわれる中で、私どもの研究所はレギュラトリーサイエンスということで、結局、大学でのそういう人の人材育成ということに関して、我々も積極的に出て行くこともやっていくべきだと思っているのですが、どうも制度的な問題の中で、非常に制約を感じて、むしろ、なかなか外に行くことがものすごく制約されていることがあるのです。感染研の場合は、その辺りどういう運用をされていますか。
○倉根委員 連携大学院であれば、もちろん出張の手続は取るのですが、これは業務の中で行うというように厚生科学課とのお話の中でやっています。非常勤講師であれば、これは休みを取っていくという形になりますが、今、連携大学院であれば、出張手続を取りつつも、業務の中で行えると我々は理解して、今、そのように運用しております。
○福井部会長 最近、クロスアポイントメントで、両方のポジションを持つことが可能になってきていると思います。それについては何かありますか。
○倉根委員 いわゆる、今、大学等の国立大の先生方が持っているようなクロスアポイントメントではないのですが、大学の名簿を見ると、連携大学院で我々の名前が書いてあって、名簿にも載っております。ただ、クロスアポイントメントかと言われると、恐らく違うのだと思います。
○福井部会長 山口委員、どうぞ。
○山口委員 今日の御説明はしっかりとしていただき、有り難いのですが、内容から少し離れた発言をさせていただきます。生物兵器等への対応ですが、再興感染症といったものと似た部分があると思いますが、しばらく前ども、アメリカのネブラスカ州立大学とか、NIHのフレデリックとかを尋ねたときに、そういう話をされておられたのです。こういう御時世ですので、どこからミサイルが飛んで来るか分かりません。そういう場面での初動は多分、防衛省とか、国立国際医療研究センターとか、あるいは、地域の病院とかになるのでしょうけれども、この研究所は最後の砦だと思います。ですので、平和な時代には予算がどんどん削られるかもしれないけれども、そのとんでもない危機管理、これにはアウトブレイクなどが関係してきますが、そういう意味での予算をしっかり取っておいていただく必要があるのではないかと思います。コメントです。
○福井部会長 倉根委員、どうぞ。
○倉根委員 国立感染症研究所の所掌を見ても、バイオテロの名前はどこにも出ていません。ただ、我々は現実的には、恐らく対処することになるというか、これまでもバイオテロ疑いということがありました。それはなぜかというと、恐らくバイオテロだとしても、感染症という形で現れるであろうから、そういう意味で、感染症の危機管理の対応の中で、結果として、それはバイオテロだったということになるのかもしれません。これまででももちろん警察から我々の所に話がきても、当然、これは本省を通しての御指示なり、依頼がくるわけですが、バイオテロ等のものを検査したこともあります。
 研究については、やはりバイオテロの班が幾つかあります。その主任研究者なり、分担研究者に感染研の者がなっているというのはあります。なっているという理由というのは最初に述べたように、恐らく感染症として現れるだろうから、検査という意味では、ほぼ変わらないと予想されます。そういう意味では対応も、基盤としては持ちつつやっております。ただ、所掌に書いてあるわけではありませんが、そのように我々は解釈しております。
○福井部会長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。私から1点質問です。感染研は外国と比べると随分小さな組織だと思います。日本全国でどういうまれな感染症の専門家がどこにいて、比較的リアルタイムで日本中の研究者の分布・配置といったことを把握しているのはどこなのですか。先生の所でしょうか、それとも厚労省でそういうことは把握されているのですか。
○倉根委員 まず、地方衛生研究所であれば、我々のカウンターパート、もちろん大学との共同研究等はやっておりますが、カウンターパートはやはり地方衛生研究所ですので、地方衛生研究所と我々の間では、検査マニュアルも同じものを使っております。それから、どの地方衛生研究所だとこれはできる、これはできないというのは分かっております。それから、それぞれの重要な疾患、まれな疾患については、レファレンスセンターという体制を15か、16作っています。それぞれの各地域の代表、例えば東北が1つ、関東が1つといったようにそれぞれの病原体について構築しております。そこに我々のほうから検査キットを渡し、そしてそこが中心になってやっていただくと。それから、プラスして毎年1年に1回は、衛生微生物協議会で顔を合わせて問題をディスカッションしている。ですから、先生の御質問ですが、地方衛生研究所の方であれば我々は分かります。どこにどのような先生がいるのかということ。大学に関しては、それは個々の専門の人に聞けば、うちのある部の専門家に聞けば、各大学にはこの人というように分かります。リストを作れと言われれば、大体のリストは大学でも作れるかとは思います。
○福井部会長 ありがとうございます。それでは、この件についてはよろしいでしょうか。科学技術部会として了承したということにさせていただきます。倉根委員、どうもありがとうございました。
○倉根委員 どうもありがとうございました。
○福井部会長 それでは、報告事項に移りたいと思います。平成17年~28年度に実施された戦略研究の総括について、資料3を用いて事務局より御報告を頂きたいと思います。
○浅沼厚生科学課長 資料3-1と資料3-2を御準備いただきたいと思います。まず資料3、厚生労働科学研究における戦略研究の総括に向けた調査分析総括報告書というものです。2ページ目を御覧ください。戦略研究は、今まで、平成17年度~28年度の12年間、8分野におきまして、計17の研究課題を実施してきました。考え方といたしましては、この大規模臨床研究を中心とした研究を実施し、実施に当たっては、研究を遂行する研究リーダーをはじめとした研究グループの他に、研究のマネジメントを行う研究支援組織によって、科学性、透明性、倫理性の高い研究体制を構築することを求めてきました。これにより、各研究課題を企画・モニタリング・評価する中で、大規模介入研究を行う上での経験や知見が集積されてきたところです。
 ただ一方で、平成27年の4月から国立研究開発法人日本医療研究開発機構、以下AMEDと言いますけれども、AMEDが設立されて、円滑な研究推進のための環境整備が、別途行われてきたところです。こうした背景も踏まえ、厚生審議会科学技術部会のほうで、戦略研究という枠組みでは、平成29年度の予算要求はしないこととして、これまで12年間やってきた戦略研究の総括の場を設けるということで取り組んできました。本年度は「戦略研究の総括に向けた調査分析委員会」というものを設置し、黒川清先生を筆頭に、吉田先生、津村先生とで、この戦略研究を振り返っていただきながら、これまでの知見、ノウハウ、今後の政策的課題の解決を目的とした研究のあり方、支援のあり方について有益な知見を取りまとめさせていただきました。
 3ページからは資料です。戦略研究の総括を書いておりますが、戦略研究とはこちらに書いておりますとおり、国民的課題を解決するための大規模な臨床研究ということで、特に健康障害をターゲットにした形で、予防・治療の介入、診療の質改善のための介入などの有効性を検証してきました。大体、今までの厚労科研費の厚生科学研究と比べ、下段の表に書いておりますが、特に事前評価のところを見ていただきたいと思います。戦略研究とは、一般公募課題が申請課題の中で相対評価をすることに関して、事前評価の時点では実現の可能性について「絶対評価」をしてきたということです。また研究計画なども事前に設定し、研究者にお任せするのではなくて、議論の中できちんと計画を立ててきました。
 今までは年次報告・評価を一般公募課題はやっているのですが、それに加えてモニタリングや中間・事後・追跡調査でも実施することとした上に、ここがポイントですけれども、研究期間が今までは一般公募課題は3年だったのですが、原則として5年間、もちろん中間評価によっては終了や中止も有り得るのですけれども、当時の厚生労働科学研究と比べ、非常に長くなっています。また金額も、今までの一般公募課題では、数百~数千万円ということに対し、数億円の大型研究となっていたということです。ですから、課題数としては数課題しか取れませんが、今、言ったように、長所を生かしながら進めてきた研究です。
 4ページです。これは今までの歴史をひもとく形の表になっております。平成13年度から準備に入り、平成16年度から具体的な戦略研究に取り組んできました。糖尿病、自殺、がん対策、エイズ予防、腎臓病、感覚器障害と戦略研究に取り組んできて、1年と少し間を置きましたが、生活習慣病の重症化予防の戦略研究、それにまた健康医療分野のデータベースを用いた戦略研究などを行ってきた形になっております。
 続いて5ページですが、基本要件としては、まず研究課題として7つの事項を挙げております。人間集団を対象とする臨床研究であること。政策目標を達成するために、できるだけ基礎的・臨床的研究知見の集積があるということ。また、先行研究に基づいて、科学的な仮説が構築されていること。また、評価対象となる保健・医療・介護・福祉サービスに関する研究が、実際に政策として国民に広く普及されることが可能な段階であること。そして国民・社会レベルで意味のあるアウトカムが設定できるということ。6番目としては、多施設やあるいは複数の地域で実施する大規模介入研究であるということ。そして7番目ですが、早期に大幅な制度の見直し等が見込まれているということです。
研究遂行体制、支援体制につきましては、先ほど申し上げている5年間のベースにした上で、研究体制を作っていくことで、各種委員会などの組織をしていくことになっております。
 6ページ、先ほども申し上げましたが、糖尿病の課題、自殺の課題、がん、エイズ、感覚器疾患、腎疾患、そして広範になってきますが、生活習慣病の重症化予防、そして健康医療分野のデータベースということで4課題を取ってきたという形で歴史をひもといてきました。
 7ページ、研究実施戦略における成果、ここからが大事になってきますが、黒川先生方に見ていただいた成果の全体です。まず1番目、施策のための研究企画・遂行管理体制の確立です。社会的、健康・医療政策的にも重要な領域を対象とした研究企画です。客観的かつ公平な視点による研究課題を選定、議論をしてきました。さらには施策の方針等、科学的な視点を踏まえた研究組織体制構築と予算を設定してきました。また、フィージビリティ・スタディによる精度の高い研究実施計画を作成していただきながら、中間・事業・追跡評価の仕組み、また研究課題の中止の判断と合意形成、さらにはサイトビジットを伴うモニタリングの早期問題点の抽出と解決ということで、これらをしっかりと管理体制として確立してきました。
 また2番目としては、質の高い大規模臨床研究の実践ということで、アウトカムの明確化、さらには研究の透明性・客観性の担保を厳格に求める研究理念を徹底し、政策研究の領域に大規模介入研究を導入しました。また、こういった研究ですので、生物統計家の方々も参画をしていただきながら、多施設協働臨床研究ということで進めましたので、そのマネジメントする推進室などの組織、さらには外部のデータマネジメントセンターについても設置してきました。
 最後の8ページ、研究成果、波及効果の3番目です。施策反映・診療現場への活用につながるエビデンスの創出として、例えば各種ガイドライン、あるいは基準の作成ということで、学会の臨床ガイドライン、基準の反映をしていただく、あるいは診療報酬ということで、例えば「外来栄養食事指導料」などの新しい診療報酬事項の設定への反映、さらには研究の成果物及びツールの診療現場での配布・活用、事業の重要性に関して社会的な普及啓発、研究プロトコルの学術的な評価、さらには研究領域に対する好事例ということで、具体的な成果につながっております。
 また、4番目ですけれども、研究参画を通じた幅広い研究人材の育成ということで、かかりつけ医、コメディカルを含めた臨床現場の方々に対し、研究マインドを浸透させたということ。特に若手の研究者の方々、そして臨床疫学を手段として、新しい臨床研究に精通した臨床医の方々、そうした方々を育成してきたということです。
 また、推進室における研究企画、組織マネジメントのスキルや人材の育成ということで、研究を支えるこうした企画、マネジメントの方々の育成、さらにはモニタリングを担当した委員の方々の育成、最終的には多施設共同臨床研究を実施することが多かったので、組織間の横断的な連携の促進なども図れたのではないかと、今回の総括報告書では指摘を頂いております。以上が黒川先生を中心に取りまとめていただいた戦略研究の総括となります。
 ただ、この戦略研究は、今、申し上げたとおりで、実施に当たっては、研究計画を厚労省側で作成しながら、その上、研究者側にもデータマネジメントセンター、運営委員会等の委員会、またそれらの運営に伴う事務を行う組織の構築も含め、エビデンスレベルの高い臨床研究を行ったということは、平成17年に発足した当時とすれば、画期的で先進的だったと考えております。
 先ほどから申し上げておりますが、平成27年にAMEDができてから、従来の厚労科研費が、厚労科研費とAMEDという2つの研究費の枠に分かれてしまっています。厚労科研費においては、恒常的に戦略研究を行おうということになると、大部分の大型研究費並みの予算がAMEDに行ってしまったので、また残ってしまった厚労科研費の中で、この大型の予算を組もうというのが、なかなかしづらい状況になってきているということです。
 また、もともとの大規模な臨床介入研究を行うことで始まった戦略研究ですが、近年はビッグデータを利用するような研究が増えてきています。これは新たな手法として非常に注目されています。このビッグデータ解析による研究が行われ始めたことを考えると、このような状況では、なかなか厚労省として、この戦略研究という枠組みの中で、恒常的に予算を確保するのは難しいということで、先ほど申し上げたとおり、平成28年度をもって戦略研究は終了したということです。
 しかしながら今後は、戦略研究で培った知見を活用しながら、戦略研究のような研究が必要な場合には、適宜、AMED研究の中で、あるいはなかなか予算の中では厳しいかもしれませんが、厚労科研費の中において、必要に応じて課題設定をしながら、柔軟に対応していきたいと考えている次第です。以上です。
○福井部会長 ただいまの御説明について、御意見、御質問等よろしくお願いします。いかがでしょうか。
私から伺いたいのですが、自殺対策関係の研究について、ここ何年間か自殺率が減ってきているのですけれども、それに戦略研究が行われたことが、どれぐらい貢献したのか、そういう視点で、以前、研究班が立ち上がって、少し関わったことがあります。死亡率が下がってきたとか、発症率が下がったとか、又はコスト面でメリットがあったとか、何か最終的な国民のヘルスアウトカムに、どれぐらい影響を与えたかという視点での評価は行われてきているのでしょうか。
○浅沼厚生科学課長 資料3-2の総括報告書の50ページ以降が、自殺対策のための戦略研究の取りまとめになっております。51ページから53ページになります。こちらにも書いてありますが、御指摘の点につきましても、2)の研究成果ということです。この自殺対策のための戦略研究の成果として、まず丸1として、社会や施策への活用ということで、当時の自殺の戦略研究を行ったことの成果を踏まえ、自殺対策基本法というものがあります。これの改正に役立てていただけたということで、診療報酬の評価としては、救急患者精神科継続支援料というものが設定されたということです。また、自殺未遂者の再起と防止事業も、平成27年度から始まっております。
 また、会議ものですが、国際自殺予防学会アジア・太平洋地域大会が開催されるなど、そうしたことにも役立てられたり、少々身近な話で申し訳ありませんけれども、厚生労働省のホームページにも自殺対策プログラムが掲載されて、自殺対策の資料になったということです。
 その他、丸2ですけれども、研究の波及効果ということで、例えば平成23年の東日本大震災の際には、直後の危機介入から復興支援において、例えば岩手県、宮城県などの被災地の支援モデルとして役立つなどしております。
 丸3ですが、当時の関係者の方々が、匿名教授などで被災地支援を行いながら、自殺予防に励まれたり、あるいは国立精神・神経医療研究センターの室長として、また複数の臨床研究に当時の非常勤研究員の方々が携わっているということです。
 また、もう1つのほうのACTION-Jですが、こちらは自殺企図の再発防止に対する複合的ケースマネジメントの効果、同様に社会的施策への活用ということで、診療報酬への反映、さらには学術論文、あるいは関係されていた研究者の皆様方においては、救命救急センターなどの新しい職場で活躍されているということです。以上です。
○楠岡委員 この戦略研究は、もちろん成果としてのこともありますけれども、非常に大事な点は、資料の5ページの下の欄にあるような、研究遂行体制というもの、これを平成17年の時点で、既にこういうものを構築していたということではないかと思います。
 アメリカにおけるがんの研究等においては、もうとっくにこのような体制が取られていたのですが、日本ではまだ全然そこまで行っていなくて、プロジェクトマネジメントをする部署があるとか、データセンターがあるとか、生物統計家が最初から関わっているとか、いろいろな運営組織があって、そこが全体を押さえていて、したがって研究を進める側と、実際に研究を実施する側が、はっきりパートが分かれている。
 これは、今では臨床研究中核病院とかは、正にこれを実施していただく体制を取っていただいているわけで、まだ当たり前ではないですけれども、定着しつつあるわけで、10年以上も前にこの体制を日本で作ったということは、非常に大きく評価すべきところではないかと思います。
 今は研究の主体がAMEDに移っているというお話だったのですが、AMEDに関しては、やはりどうしてもアウトプット重視というか開発重視で、薬とか機器とか再生医療とか、ものづくりにどうしても中心が行ってしまっております。今年から末松理事長はアートにも力を入れるとおっしゃっていましたが、このような、いわゆるアートに関する研究は、まだなかなかスタートしていません。
 もし今後、AMEDのほうで戦略研究のようなものを引き継いでやっていただくということであれば、そういうことに関してAMEDにも取り組んでもらうようにしていただきたい。そうでないと、今のままだとお金の面とかは別として、AMEDの中でこういう戦略研究を実施しようとしても、提案を持っていくAMEDの受付窓口が、なかなか見付かりにくい。疾患別の難病とかがんなどの所では少しありますが、どうしてもどちらかというとものづくりに行ってしまっているところがあると思うので、それは今後、御検討いただく必要があるのではないかと思います。
○福井部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
○川西委員 私もこれについては余りよく知らなかったのですが、実にすばらしい体制で、厚労省として、実に面白いことをやったのだなと聞かせていただきました。私も1つは医療のほうに関わっていますが、ほとんど今は、医療関係はAMEDのほうにシフトしています。それ以外の、例えば食品の関係なども、こういうレベルで何か打ち出すというのは、1つの戦略なのではないかとちょっと思ったところで、考えろと言われれば考えますので、これは厚労省にとって非常に重要な部分だと思いますので、是非とも考えてトライしていただければと思います。
○福井部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。私も、やはりAMEDがすぐにテーマにしないというか、できないような、国民の疾病や健康に直接関わるテーマが何かあるのではないかと思っていますので、こういう形で関わってもらえるような研究があるようでしたら、是非、積極的に取り扱ってもらえればと思います。よろしいでしょうか。ほかにないようでしたら、今日は少し早いですけれども、本日はこれで全ての議事が終了いたしました。その他、事務局から何かありましたら報告をお願いします。
○下川研究企画官 次回の日程につきましては、平成29年12月11日火曜日を予定しておりますので、日程の確保をお願いいたします。また、正式に決まりましたら、委員の皆様には改めて開催場所について御連絡申し上げます。事務局からは以上です。
○福井部会長 それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。

 

(了)

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