ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(労働政策基本部会)> 第2回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録(2017年10月10日)
2017年10月10日 第2回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付労働政策担当参事官室
○日時
平成29年10月10日(火)10:30~12:00
○場所
厚生労働省専用第22会議室(18階)
○出席者
(委員)
石山氏、入山氏、岩村氏、大橋氏、川崎氏(テレビ会議)、古賀氏、後藤氏、佐々木氏、武田氏、冨山氏、長谷川氏、守島部会長、山川氏 |
(事務局)
宮野厚生労働審議官、藤澤政策統括官(総合政策担当)、本多総合政策・政策評価審議官、奈尾労働政策担当参事官、大竹企画官 |
○議題
(1)当部会の今後の進め方について
(2)その他
○議事
○守島部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催したいと思います。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただき、ありがとうございます。
それでは、カメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。
(報道関係者退室)
○守島部会長 議事に入る前に、資料1の委員名簿にも追加を記載しておりますが、当部会の委員が本日付で3名追加となりましたので、御紹介させていただきます。
まず、株式会社NTTドコモ執行役員北陸支社長の川崎委員です。
次が、情報産業労働組合連合会副中央執行委員長兼KDDI労働組合中央執行委員長の後藤委員です。
続きまして、日本労働組合総連合会 特別専門委員 の長谷川委員です。
追加は以上でございます。これで当部会の委員は合計15名となりました。よろしくお願いいたしたいと思います。
本日は、所用により大竹委員と御手洗委員が御欠席でございます。あと、川崎委員はごらんのとおりテレビ会議での御出席となっております。よろしくお願いいたします。
続きまして、事務局に異動がありましたので、御報告をお願いいたします。
○奈尾労働政策担当参事官 本年9月1日付で事務局に異動がございましたので、御報告いたします。
政策統括官付労働政策担当参事官室企画官の大竹です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、本日、当部会に初めて御出席いただく各委員から、前回同様に、1人1~2分程度で簡単な自己紹介と今後の労働政策・労働行政についての御関心事項を簡単にお話しいただければと思います。
まず、最初に大橋委員から始めまして、古賀委員、後藤委員、冨山委員、長谷川委員、川崎委員という順番で進めたいと思います。入山委員がちょっとおくれておりますので、来られた段階で自己紹介と御発言をお願いしたいと思います。
それでは、大橋委員からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大橋委員 どうも初めまして。東京大学の経済学研究科の大橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
そもそもの専門は経済学の中でも産業組織という科目でありまして、産業もろもろについて定量的に私は分析をするということをやっていまして、同時に競争政策のようなものも専門にしています。今、競争政策というところで言うと、彼らのほうも、競争政策と労働市場のあり方についてということでいろいろ議論も参加させていただいていて、従来から事業者のカルテルみたいな話というのはずっと昔からあるわけですけれども、そうではなくて、もう少し技術革新が進んだ中で、労働者と事業者の境目というのはだんだんつけにくくなっているよねと。フリーランスみたいなものをどう考えるのかという問題と、副業・兼業のようなところになってきたときに、労働者を働く局面で見ていかないと、労働者全体を一つの労働者性というくくりの中で議論することはすごく難しくなっているのではないか。そのような観点で、例えば、ある局面では彼らの法の適用の中で優越的地位の濫用みたいな話があるのですけれども、そういうものが仮にでも適用できる場合はどういう局面なのだろうかということが多分関心事項なのだと思います。私も、そういう意味で言うと、そのような競争政策の立場の中で関心があるわけですけれども、同時に産業が大きく変わってきている中でのフリーランスとか副業・兼業が、ある意味、すごく裾野が広がってきたという局面もあるわけで、そういう中で、私は労働法という観点で言うと素人なのですけれども、何らかの議論の貢献ができればという思いでおります。
いろいろ未熟なところも多いのですけれども、活発な議論に貢献したいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。
続きまして、お隣の古賀委員にお願いしたいと思います。
○古賀委員 古賀でございます。
先回はどうしても外せぬ用務がありまして欠席をしてしまいました。大変申しわけございませんでした。
私は、2年前まで連合会長を務めておりまして、退任以降はシンクタンク連合総研の理事長を務めております。いま、世界が大きな環境変化を迎える中で、社会全体が分断をされていくとか、あるいはどうしようもない将来不安といったものが一般国民に広がっています。私の関心は、このことをどう解決していくかということにあり、非常に大きな課題だと思っています。そういう意味で、働く現場においても、働くことの本質は何なのかということを突き詰めなければならないと思いますし、働き方や労働条件、労働法制そのものが、労働政策だけではなくて、まさに経済政策や産業政策、社会保障政策も含めてトータルに議論をしなければならない時代を迎えていると思います。
私は、基本部会ができる前段の「働き方に関する政策決定プロセス有識者検討会」の委員でもございましたが、基本部会では、大きな流れをどう整理し、そういう中で、働く現場や、国民、生活者がどういう現状にあって、それをどう解決すべきかという切り口からも議論をしていくべきではないかと思っております。よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、後藤委員、お願いいたします。
○後藤委員 情報労連、KDDI労働組合の後藤でございます。本日の部会からの参加となります。どうぞよろしくお願いいたします。
名立たる先生方の中で、私自身がこの場に参加することを非常に恐縮に思っているところですが、現役の働く者という立場で議論に参加できればと思っています。KDDIグループにもさまざまな職種の社員がおりますので、そのような働く者たちがどのように考えているのかということを議論の中に反映できればと思っております。私が働く情報通信分野は、とりわけIoTやAIといったものに非常にかかわっているところでございますので、できるだけ現場の声に近いものをお伝えできればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、冨山委員、続けてお願いいたします。
○冨山委員 冨山です。どうぞよろしくお願いいたします。
私も前の会議で古賀さんなどと一緒に議論している立場なので、そういう観点からは既に古賀委員が言われたとおりでありまして、特につけ加えることはないのですが、私自身のバックグラウンドとしては、いわゆる企業再生の仕事をたくさんやってきております関係で、当然労働問題というのはかなりシリアスに対峙しているわけです。現状、私は今の会社で4,000人ぐらいの雇用を持っているわけですが、それもすごくAIの最先端の開発をやっているようないわゆるエリートの人もいれば、地方のバス会社の経営もしておりますので、非常に幅広い人たちとかかわっています。企業再生でも、それこそカネボウとかJALとか大きな会社の再建もあれば、中小企業、田舎の旅館の再建までやっておりまして、いろいろな立場で働いている人たちとかなりシリアスにかかわってきました。
そのときからずっと思っていたのは、先ほど古賀さんが分断という話をされましたが、要は、いわゆる労働問題で議論するときに、伝統的に登場する労使関係とか、そういう場所で働いている人たちというのは、私の実感で言うとマイノリティーでありまして、恐らくちゃんとした労使関係、いわゆる大企業の俗に言う終身雇用、一括新卒採用、年功終身制という日本的メンバーシップ合意で働いている人というのは、名実ともにと言ってしまうと多分2割ぐらいしかないのですね。8割の人は、中小企業で働いている正規雇用か、あるいは非正規雇用です。
私が中小企業の再建で目にしてきた状況というのは、とにかく中小企業の正規雇用は、はっきり言って、多分、今、一番かわいそうです。ほとんど会社がおかしくなると泣き寝入りで、ぽんと首を切られてそれでおしまいです。誰も守ってくれません。そういう人たちがいっぱいいるわけで、そういう現実をいっぱい見てきた中で、これはすごくハイテク的な話もそうだし、実は古典的な枠組みの中でもそこからはみ出ている人がいっぱいいるわけで、そうすると、そこから分断が生まれてくるのは当然です。そういう雇用はけしからぬのだから、清く正しき終身年功制の中に取り込んでやろうというのが多分従来のアプローチだったのですけれども、この20年、30年は、それは現実にワークしていないのです。そして、今度もワークしないと思います。これは実態として思います。そうすると、そういう多様性がある中で、どうやったらそういった立場の人たちを社会の真ん中に取り込んでいけるかというのはすごく大事な問題だし、この国の経済にとってもすごく大事な問題。というのは、数が多いわけですから。
今、言われている賃金の話も、はっきり言って、私は経済人で経済同友会の副代表幹事がこういうことを言ってはいけないのですけれども、大企業はいいですよ。十分賃金は高いし、これ以上給料を上げたりする必要はあまりないかもしれない。私は結構真面目にそう思っています。その外側にいる8割の人たちの平均賃金はどうですかね。年収300万を切っているのではないかな。この人たちの賃金をどう上げていけるかというのが多分この国の未来にとって非常に大事なことなので、そういう脈絡で、とにかく21世紀版の新しい労使のありようといいましょうか、働くありようといいましょうか、その中におけるいろいろな政策体系をどう考えているかという議論をここでぜひできればと思っています。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続いて、長谷川委員、お願いいたします。
○長谷川委員 長谷川です。
私は、現役最後の職場が連合であり、連合に10年いる中で、雇用労働にかかわる労働法制を担当してきました。その後、中央労働委員会で8年、労使紛争の解決機関で、さまざまな労使紛争を経験しながらいろいろな解決を行ってきました。私の和解率は高いと言われています。現在は、労災保険の再審査の委員をやっております。
これまでも雇用・就労形態の多様化というのはよく言われていたのですけれども、その中では非正規労働者の労働条件をどのように改善するかということが議論されてきました。この点私は、雇用・就労形態の多様化というときの、委託契約で働く者とか、請負契約で働く者という「曖昧な雇用」や「雇用類似の就労者」と言われる人たちの労働安全とか賃金とか社会保障というのはどうあるべきなのかということに対して、ずっと関心を持っていました。今、私は八王子にいまして、もっぱら時間があるものですから毎日街中に出ていくのですけれども、毎日歩き方、道を変えて、街の中でどういう人たちが働いているのかというものを見て、こうした働き手がどこの企業と関連があるのかということを家に帰ってから復習などをして整理しています。その中で、恐らく請負労働者のような自営業というか、曖昧な雇用という就労者がすごくふえている実感があり、そういう人たちを見たときに、この人の年収はどのぐらいなのだろうかとか、労働災害になったらどうするのだろうかとか、社会保障はどうなのだろうかということにもっぱら関心が行っております。私が思うには、現在の労働・社会保障政策では、そういう人たちのこの手の問題がすぽんと抜けている、本当に底抜けしているのだと思うのです。そういう人たちの働き方に対して、どのように労働法制がフォローをすればいいのかということに非常に関心があるのです。今回の検討会ではその問題について私なりの考えなどを述べながら、皆さんと意見交換をしていきたいと思います。
今、何人かの方が言われましたように、労働基準法の労働者、労働契約法の労働者、労組法の労働者というのは、「労働者」と言っても定義が違います。法律がカバーしているところも違います。もう一つは、労働者ではないというところで労働法制から漏れている労働者、この辺をトータル的にどのように見ながら、将来どんな働き方をしても自分は幸せだと、そういう法律のカバーが必要なのではないかと思っています。
よろしくお願いします。
○守島部会長 ありがとうございます。
入山委員が御到着されましたので、最初に入山委員にお願いして、最後に川崎委員という形で進めたいと思います。
入山委員、お願いいたします。
○入山委員 早稲田大学の入山でございます。おくれまして、済みません。大変失礼いたしました。
私は、経営学者で専門は経営戦略論とか国際経営でして、こういう労働的なものは全く専門外ではないのですが、今回、加えさせていただきまして、可能な限りで貢献できればと思っています。
私は、今、たまたまいろいろな縁もあって、それこそダイバーシティとか働き方改革みたいなことで、民間企業さんからの講演を物すごくいただくのです。かなり断ったのですけれども、去年なども本当に毎週のように大手企業さんから講演の依頼をいただいて、特に去年はダイバーシティ推進法が施行されましたので、その辺のおじさんがいきなり室長さんにさせられて結構路頭に迷っているのですね。どうしたらいいかわからないと。私が何かメディアで発言しているので、ありがたいことなのですけれども、こいつなら教えてくれるかもしれないみたいな形でお話をいただくことが結構あるのですが、個人的な経験でいくと2つポイントがあって、1つが、これは大企業の話なのですけれども、大企業のダイバーシティ推進委員会とか働き方何とか本部という人たちが、そもそもこれは何のためにやるのかということをわかっていないのです。わかっていないというのは、これが正解というよりも、それに対して社内のコンセンサスが全くなくて、とりあえず上から降ってきたものを形だけやろうとしているということが非常に多い。実際、御社は何のためにダイバーシティをやるのですかと聞くと、大企業のダイバーシティ推進室長は9割方はわかりませんと答えるのですね。社長が言ったからとか安倍さんがとか言い出して、安倍さんのせいにするなという感じがするのですけれども、そんな感じだということです。それが個人的にすごく問題意識として一つ持っているということ。
加えて、これも大企業の話なのですけれども、当然会社は人でできているので、私は戦略論が専門なのですけれども、私も大企業はかなり厳しいなと思っているのですけれども、会社が変化をするには人事にかからないといけないわけです。だけれども、そこの人事のところが非常に力も弱いし問題意識も弱くて、要するに、いわゆる経営戦略を担う経営層と全くコミュニケートができていないところが非常に多いのです。ですので、これも大企業の話になるのですけれども、大企業が人事施策を変えようとしてもなかなか戦略的に変えられないということを個人的に感じています。
もう一点、こういう労働的なもののかかわり方ですと、私は、今、デロイトトーマツという民間のコンサルティング会社がありますが、そこは人材流動化研究会というものをやっていまして、これも大手企業さんなのですけれども、大手企業の人事の方が集まって、何とか人材を流動化させようという動きがあるのです。それの座長をやっていまして、大企業の人事は、これも大企業の話ばかりで申しわけないのですけれども、悩んでいるのですよね。大体が3つぐらいパターンがあって、1つが、そもそも優秀な経営ができる若手がいないので、そういうものを何とかして修羅場経験をさせたいと。例えば、そういう意味では人を外に放り出すみたいな動かし方。もう一つが、50代以上の方がはっきり言うと上で詰まってしまっているのですね。そういう方に第2のキャリアを見つけてほしいのだけれども、なかなかそういう受け皿が見つからないというところ。第3は、企業間連携です。今、30代、40代で一番働き盛りの層なのだけれども、この会社だと使い物にならないのだけれども、ほかの会社に行ったら使える可能性があるみたいな、そういうところをマッチングさせる場がない。
例えば、年配の方が外に行くというのは、結構大企業の人事も関心があるし、そういうことに関心のある方もいらっしゃるのですけれども、なかなかそれも地方のほうで受け皿がないというか、あるのだけれども、実は情報がなかなかないのです。例えば、北陸に御祓川という地域があって、そこなどは東京の人とかで親の介護などのタイミングで帰りたい人を受け入れるという仕組みを地方で頑張ってやられているのですけれども、なかなかそういう情報が東京までやってこないのですね。なので、今、デロイトさんではそういうものをマッチングするようなプラットフォームをつくろうかみたいな話をしているのですけれども、つまり、これは国全体の問題なので、そのときになかなか情報がいろいろなところで局所化されていてシェアされていないなということを個人的には思っています。
3つ目は、地方の中小の話なのですが、これもまた労働政策というよりは、私個人が興味があるのは、今回のテーマとは関係ないかもしれませんけれども、事業承継に学者としては興味を持っていまして、この前、日経新聞で記事が出ていましたけれども、毎月毎年、物すごい企業が承継者が見つからなくて潰れているわけです。そうすると、結局そこにいる従業員も雇用を失うというのは深刻な問題のはずでして、そこに何とかして承継をできるような人材とか、そういったものを東京から、例えば、大企業でそういう詰まったような方々がそういうところにチャンスを見出すとか、そういうことに個人的には関心を持っております。
いずれにしても私は経営学者ですので、余り労務的な立派なことは一切言えないのですが、皆様から勉強させていただきながら少しでも貢献できればと思っております。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、最後に川崎委員、よろしくお願いいたします。
○川崎委員(TV会議) ドコモ北陸支社の川崎です。
北陸エリアから参加しますので、これからどうぞよろしくお願いいたします。
北陸の今ですが、人手不足と課題があります、非常に労働環境には地域差がある一方で好景気です。首都圏からあるいは外国から労働人口が欲しいという要請があるものの、なかなか地域には来ない。地方の若者は都会に出ていくというようなことが発生しています。こういった地方が働く環境の向上と生産性を高めていくことで地方創生につなげていく、そういう観点でこの部会で皆さんと議論していければと思います。
一方、企業の立場というところからも、参加、貢献させていただければありがたいと思っております。今、働き方改革という観点でいろいろな工夫を企業の皆さんはやろうとしています。生産性の向上、ワーク・ライフ・バランスもそのひとつです。今回テレビ会議という形で参加をさせてもらっていますが、こういう場所を問わないような働き方をどうやって生産性の向上につなげていくのか。そのようなことも皆さんと一緒に答えを探していければと思っています。
とはいえ、実際は会ってお話しすることのメリットも大きいと感じており、都合がつく限りは東京の会議に参加をしたいと思っておりますが、このウエブ会議での参加が多いと思います。御了承いただき、これからどうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 川崎さん、ありがとうございました。
皆様方、どうも御発言をありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。
本日の議題は、第1に「当部会の今後の進め方について」がございまして、第2に「その他」でございます。
まず最初に、議題1の「当部会の今後の進め方について」ですけれども、9月15日に第40回労働政策審議会、この本審がございまして、当部会についての議論がなされております。そのときに私が出席をさせていただきましたので、そこからどういう議論があったのかということについて御紹介を差し上げたいと思います。
本審におきましては、何人かの方々から御意見が出たのですけれども、私なりにまとめますと、労働政策基本部会においては、将来の我が国の社会構造・産業構造の変化も見据えつつ企業・労使の実態も念頭に置いた地に足の着いた議論を行っていただきたい、また、現行の労働法では保護を受けることができないような弱い立場にある人の声も吸い上げてほしいといった御意見が多かったように思います。
これらの御意見をまとめる形で、本審の樋口会長から、労働政策基本部会は労働政策審議会の一部なので、ぜひとも政策につながるような、フィージビリティー、実行可能性の高いものをまとめてもらいたいとの御発言がありました。
また、同日の本審において、参考3をごらんいただきたいのですけれども、労働政策審議会運営規程の改正案について議論がされて、議決が行われております。それも御報告を申し上げます。
改正の趣旨というのは2つございます。1点目は、今もそうなのですけれども、テレビ会議システムによる会議の出席も定足数や議決権のカウントに含むということが第1点でございます。第2点は、当部会の所掌事務には既存の分科会の所掌事務に属さない特定の事項だけではなく複数の分科会の所掌事務にまたがる事項も含まれるため、それぞれの分科会と基本部会との審議の結果にそごを来す可能性がございます。そのため、当部会で議決があった場合には本審の議決を経由して、もって労働政策審議会の決定としたいと思います。これについては、本審において全会一致で承認されております。
以上が、9月15日の労働政策審議会の本審の御報告でございます。何か御質問、御意見等がございましたら、受けたいと思います。よろしくお願いいたします。
特にございませんか。
(委員首肯)
続きまして、本日のメーンテーマに入っていきたいと思います。当部会の審議事項と今後の進め方などについて、事務局からまずは御説明いただきたいと思います。
○奈尾労働政策担当参事官 それでは、資料に沿いまして御説明いたします。
資料2-1と2-2を中心に御説明申し上げます。
資料2-1をごらんいただきますと、「当面の労働政策基本部会の審議事項について(案)」でございます。
2つ○がございますけれども、まず、1つ目の○ですが、当部会におきましては各分科会及び部会を横断する中長期的課題、就業構造に関する課題、旧来の労使の枠組みに当てはまらないような課題について審議を行う。今日は資料をつけていなくて恐縮ですが、これは第1回の基本部会の資料4の審議事項に基づいて御説明申し上げたものでございまして、当日は、この方向性はいいけれども具体的な審議事項については合意がとれていないという形であったと私どもとしては受けとめてございます。
そこで、2つ目の○ですけれども、来年予定している報告書の取りまとめに向け、以下の審議事項について取り扱うということで、事前に委員の皆様方に御意見を照会いたしまして、こういう審議事項ではどうかということで今日御提案するものでございます。
1つ目のポツでございますけれども、技術革新、これはAI、ICT等でありますが、その動向と労働への影響、これは日本国内・諸外国の状況を両方踏まえて、国際的な観点も踏まえて検討すべきものであろうと思っています。したがって、ドイツの「労働4.0」のような諸外国の政策の動向、技術革新が働き方に与える影響についても、諸外国の例があればそちらの議論も踏まえて検討すべきではないかと思っております。
2つ目のポツでございますけれども、働く人全ての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組であります。生産性向上については、働き方改革とセットで進めていかなければならない課題だと認識しておりまして、まずは日本における課題は何があるかということと、多様な就業形態間、これは雇用と雇用以外の就業形態の労働移動も含めまして見通しがどうなるか。それに、人材育成の方向性についても議論していかないといけないかなと思います。国とか企業、個人等、いろいろな方々がどういう役割、能力開発を果たすべきかということも含めて方向性を考えると。それに関連いたしますけれども、労働教育についても検討する必要があるのではないかというのが2つ目でございます。
3つ目、時間・空間・企業に縛られない働き方でありますけれども、これは最初のポツの2つとも関連するのではないかと思っておりますが、1つがテレワーク、兼業・副業、雇用類似の働き方に関する現状と課題、既存のセーフティネットや労働法制での対応の必要性、これは対応の現状を踏まえた必要性ということかと思います。働き方の変化等、働き方の多様性を妨げないような制度のあり方について検討をする必要がある。最後は、再掲でありますが、今後の労働教育のあり方でございます。
こういった観点で、事務局としてはまずは考えてございますが、次に資料2-2をご覧いただきたいと思います。委員から御提案がありました審議事項について、石山委員から「技術革新(AI等)の動向と労働への影響等」という中で、1つ「労働経済学におけるAIの利活用」を含めてはどうかという御提案があったところでございます。
続きまして、参考1は、働き方の未来2035の7月31日時点でございますけれども、それぞれの主なトピック、参考1は16ページにわたっておりますけれども、左側に項目の番号を書いていまして、1から29までございます。この2035の主な政策課題ごとに大体29ぐらいあるのではないかと私どもとしては抽出いたしまして、そこで表の左から現在どうなっているか、現在の対応状況、真ん中でありますけれども、今後の対応予定内容、今後、例えば、こういった検討会でこのようにスケジュールを考えて検討していきますよというのが真ん中、右側でありますけれども、今後の対応予定内容、中長期的対応を中心に書いています。29項目の中には、社会保険といったような労働政策審議会の検討対象外のものも含まれておりますけれども、それもそのまま掲載しているものでございます。
参考2は、本日の部会に際しましての参考資料ということで幾つかつけてございます。こちらは前回の基本部会におきまして、これまでの検討の蓄積があるので、それを元に議論すればいいのではないか。それから、データ・エビデンスの蓄積があるので、それに立って検討していけばいいのだという御議論がございましたので、現段階の主なものということでつけてございます。もちろんそれぞれの会議におきましては、仮に先ほどの資料2関係で議題が決定いたしましたら、それに沿ったデータ・エビデンスとか、あるいは検討の蓄積についてはさらに追加するのは当然だろうと思っております。
参考2でございますけれども、大きく3つに分かれておりまして、まず、2~12ページで今回の働き方改革の背景的なものを主なデータをつけてございます。少子高齢化等の状況を中心に書いているものであります。
13~22ページが平成27年度の雇用政策研究会の報告でございます。雇用政策研究会におきましても、専門的な御見地からの検討に立って今後の方向性的なものを幾つか御提案いただいていますので、そういったものも参考にしながら今後の検討を進めるべきではないかということで、雇用政策研究会の報告書をつけてございます。
23ページ以降、平成29年度版労働経済の分析、いわゆる労働経済白書でございます。この労働経済白書は、毎年度の労働経済の状況を分析した後で、トピックを決めてその分析をしていくというものですが、23ページにちょっと書いてございますけれども、29年度については、イノベーションの促進とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題が今年度の白書のテーマでございます。これにつきましては、先月、9月29日に公表されたものでございます。詳細な説明は省略させていただきますけれども、イノベーションの促進という観点からは、設備投資の活性化とか、教育訓練の強化、そういった雇用管理の見直しが必要であることが1つ。ワーク・ライフ・バランスにつきましては、企業と労働者が一体となって実効性がある取り組みを進めていくことが重要である。そういったことを中心に書いてございます。そういった中で、例えば、AIの利活用等も踏まえて、私どもとしての分析をしたものでございますので、適宜御参照いただければと思ってございます。
私からは以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
前回、事務局からお話があったように、御提案があったように、この部会の報告書の取りまとめは来年夏ごろを予定しております。したがって、審議事項はなるべく早く決めていく必要があると思いますけれども、できましたら、来年の夏ごろぐらいまでの各回の検討内容まで今回決定できればと思っております。
また、その際、委員の皆様方のコンセンサスが得られたものを優先して審議をしていくことを基本にしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
(委員首肯)
○守島部会長 それでは、異議はないと認めたいと思います。
続きまして、先ほどから事務局からのお話にもありましたけれども、審議事項の御提案が石山委員から1件ございましたので、御提案の理由とか、背景、具体的な内容などについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
それでは、石山委員、お願いいたします。
○石山委員 大々的に論点として切り出していただいておりまして、大変恐縮しておりますが、私自身はことしの2月までリクルートの人工知能の研究所を統括しておりまして、当然リクルートの人工知能の研究所ですので人材系のデータをAIを活用してたくさん解析するという経験をしてまいりました。どちらかというと、この全体の委員の皆様方の中では人工知能系のバックグラウンドを持っている人間としてアサインいただいているような形ではないかと考えるのですが、当然この審議事項の中にありますように、技術革新、AI等の動向と労働への影響等ということで、人工知能自体が実際に産業の中でどのように活用されていたり、あるいは働き方の中でどのように活用されているのか自体も一つ大きな論点でありますが、加えてもう一つ論点がある部分は、まさにそれらの技術動向の影響を分析する、私たち自身のツールとして人工知能をどのように活用していくかということも重要ではないかと思いまして、こちらの論点を提示させていただいている次第でございます。
当然リクルートの人工知能の研究所だけではなくて、近年では、例えば、HRテックみたいな言い方をされたりするのですが、企業の中の人事におかれましても、人工知能等を使って人材の分析をするという潮流が出てきておりまして、その観点と我々自身の社会科学自体の中に人工知能を活用していくというところが融合していく中で、ミクロの活用とマクロの活用というところが最適化されていくのではないかと思いまして、この辺の論点もぜひ加えていただきたいと思いまして、提案させていただいております。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、今のお話について、事務局としてどういうお考えをお持ちかお話しいただけますでしょうか。
○奈尾労働政策担当参事官 今、石山委員から御説明いただきました。
AIという新しい技術を労働経済とか分析に活用することによって、従来とは違った観点、視点から、労働に関する諸問題をより的確に解明できるのではないかと私どもとしては受けとめてございます。これはAIの研究をなさっている石山委員ならではでございまして、私ども事務局としては思いつかなかったものでございます。
一方で、労働政策審議会は労働政策に関する重要課題を議論する場でして、学問の方向性について議論する場ではないということでございますので、例えば、受けとめですけれども、技術革新が働き方に与える影響という案を1つ出しているわけでございますが、その中で、働き方の政策の方向性を決める際に、基礎データとして労働経済を分析するということは、私どもは通例やってございます。その労働経済の分析にAIを活用するということでありましたら、現在、恐縮ながら私ども事務局はその能力は今はないものですから、石山委員の知見をかりながらということで進めていきたいと思っていますので、そのような場面があればぜひお願いしたいと思ってございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、事務局案の資料2-1、2-2、石山委員の御説明もありましたけれども、審議事項につきまして、御質問、御意見等がございましたら、ぜひお伺いしたいと思います。
冨山委員、お願いいたします。
○冨山委員 今の石山さんのものなのですけれども、AIとビッグデータも、多分データ分析のデータアナリシスも入っていますね。その脈絡で言うと、この前段階の委員会のときに、あるいは働き方改革もそうだったのですけれども、意外と労働に関する統計はいまいちだなと正直思っています。済みません。多分それは古い枠組みでやってしまっているから、今の労働者の実態を映すにはいまいちだと思っていて、例えば、先ほどの流動性に関するあれは私は都市伝説だと思っていて、大企業は確かに流動性が低いのです。先ほどの20%の労働所において低いことは事実なのですけれども、残りの70%は、私の経験で言うとめちゃくちゃ普通に高くて、中堅中小企業、私どもはバス会社を買収したときに、新卒からずっと同じ会社にいる人はあまりいないのですよ。平気で2回、3回とみんな転職しているので、要は、日本の労働者は流動性が低いと言っているのは、この霞が関とか丸の内とか大手町周辺のすごく限られた空間で、私どもがその世界に生きているから低いと言っているのですけれども、その外側は明らかに高いし、当然非正規はめちゃくちゃ高いに決まっているわけで、ところが、その数字はどうですかと言うと意外と把握できていないのですね。多分伝統的手法で統計をとるのは難しいので、例えば、そういう本当の流動性がどのぐらいあるかというのを今時のビッグデータなりAIを駆使して見つけ出すみたいなことをやってもらえると、前提事実は大事なので、そういう意味で言うと私はむしろ期待をかけているものですから、石山さんにぜひとも頑張ってもらえるとうれしいなと思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたか。
佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 ありがとうございます。
どのように進めるかという点で、来年6月くらいまでに取りまとめをしなくてはならないとすると、みんなで集まるのがあと6回なのか7回なのかみたいなことかと考えると、余り多くのテーマを挙げても仕方がないのではないかということを考えておりまして、この労働問題に関しましては、本当にさまざまな視点があり、ディスカッションをし始めれば切りがないくらいテーマがあると思うので、いかにきょう皆さんと話し合いながらそのテーマを絞り込むかということが重要ではないかと思っております。
その点では、前回大臣もおっしゃっていましたし、先ほど御報告をいただいた本審での御報告とも重なると思いますが、将来を見込んで、先を見据えて議論をするということと、制度改正につながるような具体的な議論をしてほしいということが重要ではないかと思います。せっかくの労政審の部会でございますので、懇談とか意見交換で終わらないで、何法の何をどうするというような具体的なところまで進められたらいいなと思っているのが私の考えです。その点では、例えば、先ほどから出ている大企業に向けた問題は省くとか、他でもたくさん扱っている労働の安全性についても、重要な問題ですけれども、たくさん議論されて進んでいるので仮に省くとすると、私の考えの中では、8割の中小企業で働く人たちの中で、もっと伸び伸びと働く、もっとイノベーティブに働いていくために足かせになってしまっている法律あるいは法令があれば、そこを改正するということに注目していくのはどうかとも思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか。
入山委員。
○入山委員 これは私が学者なので理屈っぽいだけなのかもしれないのですけれども、この前、厚労省の方に来ていただいたときも質問したのですが、中長期と言うときにいつぐらいを想定したらいいのかというのが全然わからなくて、こういうものはないほうがいいのかもしれませんけれども、中長期は人によってとり方は違いますから、3年先を中期と言う方もいらっしゃるかもしれませんし、30年先と言う方もいらっしゃると思うのです。
例えば、技術革新の影響などにしても、来年喫緊で起きる影響ともう少し長い目で見たときに起きる影響で、どうしても人間は認知バイアスがあって目の前で今起きていることが未来永劫続くと思うので、今、こういうAIとか目の前にあることが話題に上がるわけですけれども、30年後とか20年後は全然違うことが我々の社会に影響している可能性があって、なかなかそれを考えるのは難しいわけですけれども、いずれにしても、そういう話をしたいのか。それとも、目の前にあることで、今、ここ2、3年を中長期と言って、そういうインパクトの話をしたいのか。それとも、その真ん中ぐらいで、ある程度見通せるかもしれないけれども、どうしても現状の延長線のことしか考えられないような意味で話をしたいのかとか、その辺の時間軸みたいなものができたらこのメンバーとかでそろっていると議論がしやすいのかなと、私だけかもしれませんけれども、個人的には思っています。
○守島部会長 お答えになりますか。
どうぞ。
○奈尾労働政策担当参事官 今のお2人の委員の方からの御質問、コメントにお答えしたいと思います。
まず、佐々木委員からお話がありました点でございますけれども、大体これから来年夏ごろまでに報告書を取りまとめということになりますと、先ほどの資料2で3つのポツで示してございますが、大体1個のポツで2回ぐらいが現実的かなと、スケジュール感としては思ってございます。
そういった中なのですけれども、参考1で働き方未来2035の政策課題ごとに、例えば、検討会をつくって短期的とか中長期的に対応しますといった話をいろいろ御紹介したわけでございますが、そこでは、例えば、当面の法改正をにらんでの議論がされるのではないかと思っております。むしろ当基本部会を中心として御議論をお願いしたいのは、今後の政策の方向性といいますか、労働行政として、どういう方向性、どういう問題意識で方向性を考えるべきかというあたりが中心になるかと思います。当面、例えば、次の法制度、法改正をにらんでどうするかというのは、通常は検討会の議論になるかと思っておりますけれども、逆に検討会でエビデンスとかデータが蓄積されますと、それを元にこちらの基本部会にバックしていただいて、そのデータをもとに議論するということは十分にあるのではないかと思っております。
入山委員からのコメント、御質問でございますが、これも今の話に少し関連するかもしれませんけれども、中長期的とはどのぐらいかでございます。このあたりは確たる期間をなかなか言いにくいところはございますけれども。
○入山委員 この前も、中長期とはどのぐらいですかと聞いたら、中長期ですと答えられました。
○奈尾労働政策担当参事官 事務局として、今、考えている大体の相場観でございますが、1~2年となりますと、これは当面の法改正などを議論するようなタームになるので、それよりは通常は長いのではないかと思います。中期と言った場合に、例えば、法令の世界ではどう使われているかというと、独法の世界では中期目標とか中期計画というものがありまして、これは大体5年間でございます。ただ、別にそれに拘束されるわけではないと思っていますので、例えば、その5年の倍ぐらい、10年ぐらいまでとなると、現実も踏まえながら、ある程度長期の見通しも考えることができるのかなということで、大体10年ぐらいまでかなというあたりで漠然として事務局としてはそう考えています。例えば、3月の働き方改革実行計画におきましても、その計画の中では長期的かつ継続的に実行していくことが働き方改革の実現で大事だといった旨の記載があって、個別の項目ごとにロードマップで基本課題についてどう進めていくかというものを示しているのですけれども、ロードマップの終期は「2027年以降」と書いているのですけれども、ここで10年ぐらいを想定していることからいたしますと、大体それとも整合するかなということがございます。
それから、働き方の未来2035は20年後の姿を書いているのですけれども、20年後となりますと、就業構造の変化も見据えた政策、議論というのは、いろいろな変数といいますか、変化が非常に大きいので、見通しがその分難しくなるというのもございまして、大体10年ぐらいまでかなと考えてございますけれども、このあたりはトピックごとに委員の御意見を伺いながら進めていただければと思っています。
○守島部会長 よろしいですか。
○入山委員 はい。
○守島部会長 それでは、長谷川委員、武田委員、後藤委員の順番でいきたいと思います。
○長谷川委員 私は、この部会では、本日示された資料2-1にある3点について意見交換をするということで良いと思うのです。意見交換をしながら、先ほど言われていたように別の審議会で検討が始まっているというようなこともあるので、議論をしながら時々事務局から、「この課題はこの検討会で議論しています」とか、「このぐらいの予定で検討しています」ということを報告いただければ理解できるのではないかと思うので、ひとまずこの3点について議論を始めながら、1回議論をすると大体ターゲットなども見えてくると思うので、まず議論を始めたらどうか思います。それと、中長期というのは、事務局も言いましたけれども、具体的な政策にするとなると法律や予算が伴いますので、あまりに長期となると簡単ではありません。そのため、10年ぐらいというのは妥当なところではないかと思います。
本日示された3つの論点は、他の審議会と重複している部分あると思いますが、ひとまずは皆さんで議論しながら、どこの労働者をターゲットにするのかという議論もその中でしていけばよろしいのではないかと思っています。
なお、私も「働き方の未来2035懇談会」報告書を読みましたけれども、結構ボリュームがあって、本日示された論点は大体2035の報告書に盛り込まれている内容だと思います。議論の中ではその整理などもしていけばいいのかなと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。武田さん、お願いいたします。
○武田委員 どうもありがとうございます。
私も、基本的にはこちらに提示いただいている3つに絞って議論を進めていければよいと思います。先ほど佐々木委員もおっしゃったように、足元の動きというよりは先を見据えて今後どうするべきかという点により軸足を置くこと、また制度改革につなげていくことが重要と考えます。
追加の意見としては2点ございます。1点目は、労働市場の問題は制度だけではなく、特に大企業がそうですが、慣習や慣行に基づく論点が多いと思います。
2点目は、大企業を除いてはどうかという御意見も出ておりますが、私は慣習を変えていくという観点では、大企業も重要ではないかと思います。なぜなら、先を見据えて考えると、グローバル競争が一段と厳しくなっていく。AIやIoTなどのデジタル技術の分野はもちろんのこと、その他の分野でも、かつては先進国同士の競争だったのが、いまや新興国とも高付加価値分野での競争が激化している。そうした点も踏まえると、今、大企業が変われなければ、中小企業も大変なことになる。そういう意味では、中小企業の7割を考えるときに、大企業の問題を避けては通れないのではないかと考えます。
入山先生も先ほどおっしゃったように、企業内ではうまく活躍の場がないけれども本当は外に機会があって、マッチング機能をうまく働かせれば解決できることも多くございます。働き方改革の議論がちょうど進んでいることもあるため、ここは本部会を通じて一気に意識改革を進める原動力とする必要があると感じています。
中小企業の動きを軽視しているわけでは決してなく、雇用のウエートでは圧倒的に中小企業が大きいことは十分認識していますが、大企業が変わらなければ、日本経済全体としてやっていけないと考えております。
以上です。○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、後藤委員、お願いいたします。
○後藤委員 ありがとうございます。
冨山先生、佐々木先生からも、この部会の議論の射程は大企業ではなく中小企業にというお話があり、1回目から私自身の存在価値は余りないのではないか、もうちょっと仲よくやりたいと思っていたところに武田先生からお話がありました。私は、今、武田先生からお話があったこともあると思っておりますので、大企業の労働者に関しても一緒に含めて検討させていただきたいと思っているところです。
それから、石山先生からAIのことについてご発言がありましたけれども、論点の1つに技術革新が働き方に与える影響という項目が含まれていますけれども、我々の経験からしますと、情報通信産業は既にAIとかIoTという分野ではありませんけれども、過去に技術革新によって仕事が淘汰されてきたことも経験しております。例えば、電話の交換業務やテレックス、衛星通信についても、光ファイバーが世界中に張りめぐらされておりますので衛星に頼る業務も少なくなってきました。では、そうした業務に携わっている働き手がいなくなったかと言うとそうではなく、うまく企業の中でトレーニングして新たな業務に異動するなどの対応をしているのです。ただ、それが一気に進むということではなくて、うまく技術革新を業務の中に取り入れて、徐々にシフトさせていくということをしております。そういう意味で、論点案のタイトルについて、急に明日・明後日から新しい技術によって自分の仕事がなくなってしまうのではないかということとして働く人から受けとめられないようにする必要があると思います。先ほど労働政策審議会の本審の中でも、地に足のついた議論をしてほしいという求めがあったということですので、ぜひそういった方向で議論をさせていただきたいと思っています。
また、3つ目のポツにある「雇用類似の働き方」については、非常に関心を持っているところです。我々も情報労連の中で、個社の名前を出していいかは迷いますが、冠婚葬祭を営んでいるベルコという会社がありまして、数千人が働いているのですけれども、正社員は20人しかいなくて、残りの人たちは雇用契約ではなく請負契約で働いており、急に契約が切られて、その日から失業するあるいは条件が切り下げられるなどという問題が浮かび上がってきています。これはいま裁判をしているのですけれども、AIとか、IoTとか、そういった技術進展に伴って、将来、気づいたら働く人がいなくなったみたいな形にならないように、さまざまな制度の中できちんと担保する、就労者を保護する、使用者責任等を明確にするということも重要だと思っております。そういった観点もぜひ議論できればと思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
川崎委員。
○川崎委員(TV会議) どうもありがとうございます。
今回の議論の論点について、大きく3点にまとめてくださっている点については、この項目で適切だと考えています。
1つ、コメントしたい点があります。それは、労働法制、3つ目のポツにかかわる部分です。働き方は労働法制で大きい影響を受けるということは事実ですが、もう一方で、セーフティネットにくくられると思いますが、社会保障制度や年金制度、あるいは税制、が影響を及ぼしているものもたくさんあるというのも事実です。人が働く。それによって賃金を得る。そして、社会を支えていく。安定的に日本が成長していく。今の人の生活のあり方、具体的に言うと、生涯未婚の人たちがふえてきている。あるいは、子供を持たない家族もふえてきている。そういうことを踏まえた税制のあり方、社会保障制度のあり方、そういうものも、この場で、どういうものがあり方としてふさわしいのか、そういうデータの分析はぜひ冒頭にあったAIやビッグデータを使った科学技術的なものの支えがあって議論の方向性が導き出されていければということを期待しています。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか。
古賀委員、お願いいたします。
○古賀委員 ありがとうございます。
私も、事務局から提案のあった3項目について議論することが適当であると思います。ただ、2、3、御指摘がございますように、論点が広範囲にわたりますので、効率よくどう議論するかということについて知恵と工夫を絞らなければならないのではないかと考えます。加えて、先ほど議論があった大企業か中小企業かとか、地方か中央かとか等々のことは、議論を進める中で、そういう要素も含めて深掘りしてどういう方向をとっていくかということを議論すればいいのではないかと思います。
ただ、2つコメントをしますと、1つ目は我々が考えている以上に人口減少の問題というのは非常に大きく社会構造を変えようとしている。この面を常に我々は視点として持っておく必要があるのではないかということです。
2つ目は、経済性、競争、効率というのを、私は否定しませんし、もちろん必要な視点ですけれども、これだけを求める社会というのはどういう社会なのか。社会性とか、共生といった視点も必要であり、そういうことのバランスがとれるような社会をどうつくっていくのかという視点も非常に重要ではないかと思っておりますので、あえてコメントしておきたいと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。冨山委員、お願いいたします。
○冨山委員 この審議事項のあれはしていないので、何点か。
私も、カバレッジとしてはこれでいいと思います。ただ、先ほどの短期と中長期の議論でいってしまうと、多分大事なことは、AIが滑った転んだという話もあるのですけれども、必ず間違いなく起きることというのはあるのですね。今、古賀さんが言われた人口減少の問題は絶対に起きるのです。もう一つ、産業のサービス化とか知識集約化とかということも絶対に起きるのです。これはAIがあってもなくてもきっと間違いなく起きるのです。私がずっと典型的な大企業雇用の議論はもういいんじゃないのとちょっと乱暴な言い方をしているのは、要するに、大企業の典型雇用の議論というのは、どちらかというと人口増加期の設備集約型産業の時代モデルなのです。残念ながら、こういう場なので語弊があるかもしれない。例えば、いろいろな解雇の紛争解決の議論とか高プロの話とかを聞いていると、あれは多分ほとんどの人は我が事だと思って聞いていないのです。あの話は7~8割の人は関係ないです。だって、自分たちの世界ではないのだもの。そもそも年収1,000万なんてあり得ないのだから。仮に700万に下がったってほとんどの人は関係ないですよ。
そうすると、従来の議論のされ方というのは、ほっておくとどちらかというと典型雇用の世界、要するに、経団連と割とクラシックな意味の連合さんが割と対立するようなイシューを中心にどうしても政治でも議論が盛り上がってしまって、恐らく多くの人は我が事にあらずというアパシーを生んでいると思っているのです。
ですから、大企業も含めて私は鍵はインクルージョンだと思っていて、要するに、そこでの議論がどれだけ多くの働いている人を包括できるのか。多分大企業でも、非典型的な論点で、先ほど入山さんが言われた、今、終身雇用は終わっていると思っている。というのは、終身雇用という言葉は、ジェームズ・アベグレンという私の昔のBC時代の上司が、日本の雇用環境を見て、平均寿命が60歳そこそこの時代に55歳まで働けるということはほぼライフタイムじゃんと思って、ライフタイムをという言葉を英語でつけてしまったのです。これを訳したのが終身雇用なのです。はっきり言って、多分今の若い人は100近くまで生きるので、60歳と65歳定年であと30年ぐらい生きるので、これは全然終身でも何でもないとすると、先ほど入山さんが言われた論点は極めてクリティカルなのですね。
例えば、20%の人たちも、そこからこぼれ出た後の人生のほうが新卒から定年までの人生よりも下手をすると長いのです。今のトレンドだと、これは間違いなく人口減少とともに寿命の長期化もほぼ間違いなく起きますね。そうすると、間違いなく起きることで、かつ、それがある種の緊要性を持っている問題、多分先ほど佐々木さんが言われたのはそういう話ですね。間違いなく起きることの中でいい加減に手をつけないとまずいのではないかという問題は幾つかあって、私はそういう問題についてこの国は相当放置をしてきたと思うのです。それについてはこういう議論をしていく中で自然に浮かび上がってくると思うので、そこはある意味では、来年か、再来年か、数年内の立法措置というか、政策措置をとるように、背中を押すような報告書を私は出すべきだと思っているので、そこはめり張りがあっていいような気が私もしています。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたか。
大橋さん、お願いいたします。
○大橋委員 資料2-1に関して、当初は私は最初のポツは別に議論しなくてもいいのではないかと思っていたのですけれども、思えば、こういうことを議論する中で2つ目のポツと3つ目のポツも多分議論の中にしみ出してくると思うので、そういう意味で1つ目のポツも振り返ってみることはいいのかなと思って、この3つでいいのではないかと思います。
石山委員からあった点は私は重要だと思うのですけれども、他方で、今回御紹介いただいた参考資料のデータは、多分個票のデータとか、もう少し利活用ができるという前提で多分AIの利活用と書かれているのではないかと思うのですけれども、そういう意味で、どこまでのデータで利活用できているのかというのは私はよくわかっていないのですが、ある意味これは政府統計でなくてもいいのだと思いますけれども、そのようなかなり粒度の高い個票データは利活用されることが前提でのAI利用だということで認識しておりますということです。
○守島部会長 ありがとうございます。
お答えになりますか。
○奈尾労働政策担当参事官 7人の委員の皆様から御意見をいただいたところでございます。
まず、概括的な私どもの考え方というか、今、お聞きしていての感想でございますけれども、検討事項を幾つかご提案しているわけでございますので、具体的な方向性とか中身については、まさに検討する中でということでいいのではないかと思ってございまして、今こういう方向性でやるべきだというものは持ち合わせていないわけであります。
その中で、幾つか申し上げますと、まず、足元としてある問題、例えば、きょうお出しした参考2の最初のほうに人口の推移のグラフをつけていまして、これを講演とかでお見せすると、皆さん、こんなに働きざかりの人口は減るのかという反応があるわけでございますけれども、こういった問題については大体そんなに争いがないということで、その実態を踏まえてやらなければいけないと思っています。
そうすると、役所のデータはいろいろございますけれども、うまく利活用できているかというと、確かに反省すべき点はいろいろあるかと思いますので、そのあたりのデータの扱い方とか、その扱い方にAIをどう活用していくか。正直、これは私どもは知見がないので、そのあたりは御知見をかりながら次回以降に出せるものはどういうものがあるかということで見ていきたいと思います。
一方、1点補足しておきますと、川崎委員から社会保障とか年金とか税の議論がございましたが、これは若干役所の縦割り的なことを申し上げて非常に恐縮なのですけれども、厚生労働省は社会保障審議会というものが一方でございまして、社会保障審議会と当労働政策審議会と2つ大体大きなものはあるわけでございますが、社会保障となりますと社会保障審議会で審議すべきことに原則はなろうかと思います。労働政策を審議する中で社会保障についてこういった問題意識があったということをお伝えすることは可能かと聞いておりましたけれども、そこを中心に本労政審で議論するのは難しい点もあろうかということで、少し蛇足ながらつけ加えさせていただきたいと思ってございます。
○守島部会長 長谷川委員、お願いいたします。
○長谷川委員 今の事務局の意見ですが、厚労省はいつも役所の縦割りで労働政策以外の議論は難しいと言います。しかし、この議論、きょうのテーマのところにも出てきましたけれども、教育の問題だって文科省との関係がありますし、社会保障をどう考えるのかということは大切なのです。冨山先生がおっしゃっているように、就労形態を変えたり、移動したりとか、ダブル就労とかをすると、年金のカウントをどうするかといった問題になっていくのです。そうしたことを考えると、社会保障はとても重要で、そういう意味で社会保障の話は避けて通れない課題なのです。
そのときに、旧厚生省のほうに伝えておきますでは困るのです。だから、教育の問題とか、社会保障の問題が出てきたら、それはここでの結論はきっちりと関係府省庁に伝えるとともに、大臣がいて、閣議をやっているのだから、そこでちゃんと報告してもらうとか、そういう姿勢が必要だと思います。この問題はこの部会で扱うのは難しいと縦割りで分けてしまっては、また分断、ぶつ切りになってしまうので、事務局もしっかり頑張りますという姿勢を見せる必要があるのではないかと思います。特に重要なのは、教育の問題と社会保障と税です。今後は男性だけなく女性に働いてもらわなければいけないわけですから、そうすると、必ず税制の問題が出てくる。この議論は避けて通れないので、聞いておきますとか、お伝えしますと言って文科省に渋々行って、教育の問題についてこんなことを検討しましたという報告をするだけではなくて、それは政府で責任を持つという姿勢が必要であると私は思います。
○守島部会長 ありがとうございます。
どうぞ。
○古賀委員 今の長谷川さんの意見ですけれども、彼女と打ち合わせをしたわけではありませんが全く同じ問題意識を持っており、だからこそ、私はこの前段の「働き方に関する政策決定「プロセス有識者会議」で、政府の中に労働政策を含む政策全般の基本的な論議をする委員会をつくるべきではないかと発言したのです。それは何かと言うと、今の問題なのです。働き方に関する政策は、社会保障や税制、もっと言えば、産業政策や経済政策が全部絡んでくるのです。特に税制とか社会保障は働き方と密接に関連するのです。
したがって、今の長谷川さんが言ったことに対して、私は賛同し、ぜひ事務局はその辺はきちんと概括的に見て進めていくという姿勢を少なくとも見せるべきです。この問題は必ず出てくる。そのことだけお伝えしておきたいと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
審議官、お願いいたします。
○宮野厚生労働審議官 今、御指摘をいただいた問題でありますけれども、おっしゃるとおりだと思っております。
仕組みとしてはそれぞれ審議会の所掌というものはありますけれども、御議論いただいたとおり、こうした今回お示ししているような議論をしていく中で言えば、社会保障の問題とか税制の問題にも当然かかわってくる。ですから、それを正面切って全て受けとめてこの審議会の場で全て議論をしていくことにはなりませんけれども、例えば、御議論いただいた一定の方向性は整理して、それをそれぞれ厚生労働省内の関係部局なり他省庁にもそうした意見があるということで議論をお願いするということは、当然必要なことだろうと思っております。
実際上も、例えば、きょうお示しをした資料2-1の中でも、兼業・副業の問題とか、雇用類似の働き方という問題が1つ出ていますけれども、こうしたものも当然ながら労働法制上の問題だけではなくて、社会保険をどうするのか等々、いずれにしても避けて通れない問題としてそういうものも入っていると思いますので、御議論としては当然そうしたものも含めて御議論いただきながら、ただ、そこについてはまた政策決定そのものは別のセクションでということになろうかとは思いますけれども、そういった点も含めて御議論いただければとは思っております。
○守島部会長 ありがとうございました。
岩村委員、お願いいたします。
○岩村委員 きょうは、いろいろ皆さんの御意見を伺っていて大変勉強になりました。3点だけ申し上げておきたいと思います。
まず、第1点ですが、議論になりました時間軸の話ですけれども、20年となってしまうとちょっと遠いかなと思います。そうすると、他方で、ある程度の短期的な問題というのは、既に幾つかの分科会なりその前段階の検討会などでも検討している問題もあるので、落ちがあればまたそこを考えるということはあると思いますけれども、まずはそちらでやっていだくということかと思っています。そんなことを考えると、報告書を出して、それをさらに各分科会等で議論をして、それを立法に具体化していって、最後、施行をいつにするかという具体的なプロセスを考えると、大体10年というのが一つの目安なのかなという気はします。急いでやれというのはまた別の話だと思います。
2点目ですけれども、きょうは資料2-1で挙げていただいた3つのポツというのは、今後検討会で検討していくということでちょうどいい問題かと思いますが、確かにこれだと結構多いので、少し絞り込みは必要かなという気がします。ただ、1つ目のポツは結構重要で、ここで挙げられているような問題について、各国で既に処方箋を切っているところもあれば、今、検討しているところとかもあるので、前提になる経済社会条件とか労働市場の構造が違うので、横にすぐ持ってはこられないのですけれども、そういったものを見ておくというのは今後の問題を考える上では重要なのではないかと思います。特に処方箋を切っているところは、ある意味、既に実験をやってくれているという感じがしますので、その成果がどういうものなのかというものを見るというのが一つ重要なポイントかと思います。
3番目ですが、これは既に先ほど武田委員もおっしゃっていたところと関連しますが、労働法学者がこういうことを言うと変なのですが、日本の労働法制は意外とルーズで、ドイツなどのほうがもっと厳格なのです。ドイツがうまく回っていないかというと全然そんなことはなくて、もちろん問題はたくさんあるのですけれども、そんなことはない。日本は、何が一体いろいろなことを規制しているかというと、一つは先ほどおっしゃった慣習です。特に業界の慣習とか、商慣習とか、そういったものが非常に強く影響している。今はどうかわかりませんけれども、よく我々が冗談で言っていたのは、大企業の人は金曜日に下請に仕事を出して月曜日までに出してねということをやる。そうすると、中小企業は土日は休めないという話になってしまうというのをよく半分笑い話で昔は言っていましたが、そういったものが結構大きな影響を与えている。もう一つは、労働法制そのものよりは社会保険と税が企業と働き手の行動にすごく強い影響を及ぼしているので、そこのところは先ほど厚生労働審議官からもお答えがあったのでこれ以上は言いませんけれども、そこは非常に大きなポイントで、労働法制なり労働政策だけを議論していてはどうにもならないところがある。そこは少しこちら側でも何か工夫をしながら、うまくメッセージが伝わるような形で報告書に取り入れるなりして、あとは厚労省の事務方で各省庁との連携その他について御尽力をいただくということなのかなと思っています。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
冨山さん、最後に。
○冨山委員 岩村先生、武田さんから慣習の話があったのですけれども、今、私は典型的な大企業のパナソニックという会社の取締役と東京電力という会社の社外取締役をやっていますが、あとはもちろん大企業の企業再生にもかかわりました。御指摘のとおりで、その一方で、慣習は経営の意思があったら簡単に変えられるのです。実感として、実に簡単に変えられます。
どちらかというと、私自身は労働法制のある種のルーズさが、だめな経営者をして労働法制はどうだからとか、組合がこんなことを言っているとか、慣習が滑った転んだという言いわけを今まで100万回ぐらい聞きました。労働組合があんなことを言っていると言うから実際に組合幹部の方から直接に話を聞いたら、全然違ったりすることはあるわけです。本音でちゃんと腹を割って話をすると全然違っていて、日本の経営の実態は残念ながらよほど組合のほうがまともな議論をしている場合が多いのです。本当にそうです。くそな経営者ほど、大体組合が問題だからできないみたいなことばかり言うのですよ。
何が言いたいかというと、逆に言ってしまうと、そういう慣習の問題がちゃんとよくワークしているのであればいいのですけれども、恐らく今、多くの慣習はネガティブにワークしています。例えば、ブラックの話もそうなのだけれども、現状、例えば、私どもが実際に企業経営をやっていて思うのは、今、ホワイト戦略をとったほうが成長戦略につながるのです。理由は簡単で、今、人手不足ですから、人材確保というのは成長を最も規定するわけで、やっと気がついてヤマトもえらい勢いでかじを切っていますけれども、ホワイトのほうが成長するのです。ただ、それに気がついていない、要するにできの悪い経営者が日本にはいっぱいいるということなので、何が言いたいかというと、慣習である意味では動いているからこそ、要するに、慣習でネガティブに動いているとすれば、私はむしろ労働法制をリジッドにしてしまったほうがいいと思っています。あと、最低賃金も私は多分経済界で唯一1,000円にしろと前から言っている人間で、これは絶対に中小企業経営者団体は反対するのですけれども、例えば、東北地方でうちはバスをやっていますけれども、あの地域でもしバスの運輸業の最賃を1,000円にしてくれれば、多分多くのバス会社は経営に行きづまる。すると何が起きるかというと、うちのグループが入るだけです。うちは賃金高いですから1,000円を超えているので。みんな労働者の経営環境はよくなるし、うちは一番税金を使っていないバス会社で、税金も使わなくて済むのですよ。だから、そういうことだと私は思っているので、むしろ今の岩村委員の話をとらせていただくとすると、むしろ積極的にリジッドにしてしまおうぜとすべきところなのです。すべきところはすべきだし、逆に変にリジッドなところが、先ほど佐々木さんが言われたように、邪魔している部分もあるので、そのレビューというのはむしろこの会議では大胆な議論はやりやすいので、そこはぜひやってもらったらうれしいと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
大分時間も迫ってきたのですけれども、私の聞いているところ、この事務局提案の3点については、大体皆さん方、これを議論していくことについては反対がない。もちろんそれを議論していく中でさまざまないろいろな要素が出てくるというのはあると思っていて、それについて考えていったほうがいいのではないかという御意見が主だったようには思っています。
したがって、多少いろいろなところ、どういうところを取り上げるかという議論はありましたけれども、基本的にはこの3つを基本路線として進めさせていただいて、それを議論する中でさまざまな要素が今のように出てくると思いますので、そういうものについて取り上げることで進めていっていただければと思いますけれども、それで皆さん方、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○守島部会長 それでは、それでいきたいと思います。
事務局、もう一回資料を配っていただけますか。
○奈尾労働政策担当参事官 それでは、僭越ながら、事務局で今後の進め方のイメージについて素案という形で作成してみましたので、それをご覧いただければと思っております。
(資料配付)
○奈尾労働政策担当参事官 お手元にお配りしましたイメージですが、先ほど少し申し上げましたけれども、大体各ポツのトピックごとに2回ぐらいが現実的かと思ってございまして、それぞれ2回ずつということで考えております。
その中では、当然データやエビデンスを整理しながら、あるいは専門家からのヒアリングも含めて実態を把握した上で意見交換等ということで考えておりまして、間に合えば来年6月あたりに報告書の取りまとめに向けた議論をして、夏ごろに取りまとめかと思っております。
大体こういう提案でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
今の御提案について、何か御意見等がございましたらお伺いしたいと思います。
大丈夫ですか。
(委員首肯)
この部会自体は、報告書を来年に出しますけれども、それ以降も議論する可能性は十分にございますので、そういう意味で、積み残しが多少出てくる可能性はございますけれども、徹底的な議論を進めたいと思いますので、皆さん方、御協力のほどよろしくお願いいたしたいと思います。
それでは、最後に事務局から何かございますでしょうか。
○奈尾労働政策担当参事官 当部会の次の日程でございますけれども、別途調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。
本日の会議の議事録につきましては、本審議会の運営規程により、部会長である私のほか、2人の委員に御署名をいただくことになっております。つきましては、大橋委員と古賀委員に御署名人になっていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○守島部会長 それでは、よろしくお願いいたします。
これで、本日の会議は終わりにさせていただきたいと思います。
皆様方、お忙しい中、非常に熱い議論を闘わせていただいて、ありがとうございました。御苦労さまでした。
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