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2017年11月29日 平成29年度第4回運営委員会議事録

医薬・生活衛生局血液対策課

○日時

平成29年11月29日(水)
17:00~19:00


○場所

厚生労働省6階 専用第7会議室
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 中央合同庁舎5号館)


○出席者

出席委員:(6名)五十音順、敬称略、◎委員長

大平 勝美 岡田 義昭 ◎田野崎 隆二 花井 十伍
室井 一男 山口 照英

日本赤十字社:

佐竹 正博 豊田 九朗 平 力造

事務局:

一瀬 篤(血液対策課長) 山本 匠(血液対策課長補佐)
菓子野 慧(血液対策課長補佐) 三浦 勲(血液対策課需給専門官)

○議題

・感染症定期報告について
・血液製剤に関する報告事項について
・安全技術調査会における審議結果について
・血液製剤産業のあり方について
・その他

○議事

 

○山本匠血液対策課長補佐 定刻となりましたので、平成29年度第4回血液事業部会運営委員会を開催いたします。なお、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いします。

 本日の出席状況ですが、運営委員6名全員の委員に出席いただいていることを御報告します。本日は日本赤十字社血液事業本部より佐竹正博血液事業経営会議委員、豊田九朗技術部参事監、平力造技術部安全管理課長、以上3名に御参加いただいております。よろしくお願いします。

 続きまして、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定しております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を提出いただいており、御負担を掛けておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。また、本日の議題は利益相反に関係する審議事項はありません。

 カメラ撮りはここまででお願いします。それでは、以降の進行を田野崎委員長にお願いします。

○田野崎委員長 皆さん、こんばんは。それでは議事に入る前に、事務局から資料の確認と、前回の議事録に関して御説明をお願いします。

○山本匠血液対策課長補佐 それでは、まず事務局から資料の確認をさせていただきます。まず1ページ目が議事次第となっていまして、続きが座席表となります。3枚目が委員名簿、その次が運営委員会規程、そこからが資料1-1になります。資料1-1が研究報告概要版、資料1-2が研究報告詳細版になります。資料2-1が「供血者からの遡及調査の進捗状況について」になります。資料2-2が「血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例等について」。続いて資料3-1が「血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの一部改正について」。資料3-2がガイドラインの改正案となっています。資料3-3に新旧対照表があります。資料4-1が「血漿分画製剤内資系製薬企業振興施策の検討方向」、資料4-2が「血漿分画製剤の輸出に関する具体的な制度改正案」となっています。資料5が「フィブリノゲン製剤納入先医療機関の調査結果について」と、参考資料1として「血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの一部改正について」があります。不足がありましたら、事務局までお知らせください。

 また、前回、平成29年度第3回血液事業部会運営委員会の議事録につきましては、委員及び参考人の皆様に御確認いただいているところです。確認終了次第、厚生労働省のWebサイトに公開します。以上です。

○田野崎委員長 ありがとうございました。それでは、議題1の「感染症定期報告」について、事務局から説明をお願いします。

○山本匠血液対策課長補佐 それでは資料1-1、感染症定期報告になります。研究報告は今回、文献が1~19まであります。文献1はヨーロッパ11か国を対象として、供血者におけるHEV感染の疫学情報及び輸血によるHEV感染防止策についての概要が報告されております。この文献では、アイルランド、英国では供血血液を対象としたHEVスクリーニング検査が実施されており、オランダでは2017年より開始とされています。

 文献2はデング、ウエストナイルウイルス感染者から、回復期血漿を使用して、in vitroでフラビウイルスIgG抗体のFcγ受容体への結合を介して生じたZIKV感染力の増強が確認されたという報告です。この現象から、近年発生したZIKV感染のアウトブレイクに関する重篤な症状の発現を説明できる可能性があるとされています。

 文献3はジカウイルスに関することで、米国における供血血液に対するZIKV RNA検査の報告です。358,786本に検査を行い、23本が検査陽性となりました。このうち14本に対しては、追加検査のRNA検査、IgM検査で、ZIKVの感染の可能性が高いとされています。

 文献4はジカウイルスですが、妊娠36週のジカウイルスに感染した女性が、出産直前の血液・尿からはジカウイルスは検出されなかったが、出産後、母乳からジカウイルスが検出されたという報告です。文献5はパルボウイルスに関するものですが、赤血球輸血によって、パルボウイルスB19の感染が起こったという症例報告です。文献6は黄熱病に関することですが、ブラジルで黄熱病が流行しているという報告です。2017年5月18日までに758名の確定例が報告され、264名が死亡しています。ブラジル保健省がワクチンを配布しているという報告があります。文献7、8は香港での、世界初の輸血を介した日本脳炎ウイルスの感染の報告です。患者は肺移植患者です。

 文献9は中国における重症熱性血小板減少症候群を発症した6例の調査結果です。血液以外の接触を介して、無症候性の感染を引き起こす可能性があることが示唆されています。文献10は動物を介して重症熱性血小板減少症候群が感染し、死亡したという症例についての報道です。文献11は慢性髄膜脳炎の患者1名の脳脊髄液及び脳生検組織より、次世代メタゲノムシークエンサーにより、カシェバレーウイルスの遺伝子断端を検出したという報告です。文献12は北海道において、国内3例目となるダニ媒介脳炎症例が確認され、患者は70歳代で死亡したという報告です。文献13は、Mycoplasma pulmonalisはげっ歯類に存在し、自然に発生する呼吸器病原体ですが、マウスに接触したヒトでPCR及びELISAにより陽性が確認されたという報告です。文献14は内戦状態にあるイエメンでコレラの感染が拡大しているという報告です。

 文献15は英国における血小板製剤の細菌スクリーニング検査プロトコールについての報告です。導入後、2011年2月から2015年9月で1239,029本のスクリーニング検査を行っており、初回検査で陽性となった割合は0.37%、陽性が確定した割合は0.03%、偽陽性であった割合が0.19%と報告されています。検査が偽陰性となった事例は4例あって、1例は使用されており、細菌感染症状が認められております。細菌スクリーニング検査プロトコールの導入前、2006年から2010年では、10例の輸血による細菌感染が認められていると報告されています。

 文献16Trypanosomaに関するもので、PCR陽性の精液をマウスに投与して、感染が成立したという報告です。性行為を介しての感染の可能性が示唆されています。文献17はリケッチア症に関するもので、日本でRickettsia australisの輸入感染症例があったという報告になります。文献18はメチオニン・バリン型のクロイツフェルト・ヤコブ病で、非特異的な病理像を示す事例についての報告です。文献19は米国赤十字社の輸血による、クロイツフェルト・ヤコブ病の感染症例は認められていないという報告です。以上になります。

○田野崎委員長 どうもありがとうございました。19の文献からですが、委員の先生方、何か御意見がありましたらよろしくお願いします。

○山口委員 18番目のCJDの非常に新しいタイプ、ヘテロタイプなのですが、これはもう1つ、性格的にはいろいろな特徴も違うのですが、ヒト型プリオン、トランスジェニックマウスでも感染しなかったというのは、非常に大きな違いだと思いますので、これが多分初めての症例だと思うので、今後、こういうことが増えるのかどうかということが、注目すべきかなという気がしました。

 それから、2番目のジカに関する抗体依存性の感染の系なのですが、これはin vivoの系で、マウスを使った系でやってはいるのですが、デングそのものは多分、ジェノタイプの違うところで感染を引き起こすというか、ある抗体が別のジェノタイプに対して、その抗体依存性の感染を引き起こすという解釈がされていたような気がするのですが、本当にそこまでの解釈ができるのかどうかというのが、今後、解析を待つ必要があるのかなと。

 あと、日赤のほうにお伺いしたいのですが、5番の例で、非常に低濃度のパルボで感染した事例で、このドナーのフォローアップというのはされているでしょうか。要するに聞きたいのが、ウインドウ期であったのかどうかという、その辺のことが分かりましたら教えていただけませんか。

○佐竹血液事業経営会議委員 これはウインドウ期ではありません。抗体陽性です。

○山口委員 抗体陽性ではなかったと。

○佐竹血液事業経営会議委員 いえ、抗体は陽性です。

○山口委員 陽性だったと。

○佐竹血液事業経営会議委員 はい。

○山口委員 だからドナーの抗体では、多分、もう中和出来ないということになるわけですね。

○佐竹血液事業経営会議委員 そうです。

○山口委員 分かりました。

○佐竹血液事業経営会議委員 今までの感染例が全て、実は抗体陽性なのです。非常に不思議ですけれど、IgMですが。

○山口委員 分かりました。

○田野崎委員長 どうもありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。

○岡田委員 山口委員がおっしゃっていますが、文献18番で今まで報告されていないプリオン病で、これは異常プリオンが、糖鎖が2個付いたのと1個付いたのと、あと付かないという3つのバンドが見えるのが、この患者さん由来のは、2つ付いたプリオンがないという、ちょっと変わっているのです。

 それと、ここに書いてありますが、理由は分かりませんが、ハタネズミによく感染するというのは、よく調べたと思うのですが、ヒトよりもハタネズミに感染するというのが報告されています。理由は分かりません。この患者さんは、うつを患っていて、それで牛の視床下部から抽出したリン脂質を数年間摂取したというのが、気になる点といえば気になるのです。

 非常に特殊で、ヒトのトランスジェニックマウスに感染しないということになると、ヒトからヒトという、ヒトには感染しづらいのではないかと思いますので、これが今後、すごく問題になるということは、まずないのではないかと思っています。

19番のほうでvCJDは、輸血による感染例はこれまでに4例あるのですが、このスポラディックのほうに関しては、幸いまだないというのです。ところが数年前に、スポラディックのCJDの患者さんの血液を、トランスジェニックマウスの脳に接種すると、感染性が認められたという報告があって、スポラディックCJDの末梢血のほうにも異常プリオンがあるのではないかということが疑われています。そのために、こういうレトロスペクティブに解析をするという、そういう研究が行われています。

 ところが、その発端となった研究は、発症したスポラディックCJDの患者さんの血液を、トランスジェニックマウスの脳に接種するという、すごく感度を上げた実験なので、それがそのまま、献血の場合は当然発症していないわけですので、その実験結果で発症していないスポラディックCJDの中に、そういう感染性のプリオンがあるかどうかというのは、また別問題だと思います。

 それと7番、8番で日本脳炎ですが、確かに理論的に日本脳炎は、ウイルスの力価は低いのですが、バイレミアを起こすということで、理論的にはあり得ると思うのですが、ただ、実際に日本脳炎に感染しても、発症する人はごく僅かなのです。それで、この方は移植か何かで、確か免疫抑制剤か何かを使っていたとか、そういう事情があったので、こういう不幸な結果になったのではないかと思います。

 あと10番で、日本でもSFTSが年間で数十例報告されているのですが、意外というか、ネコが結構発症しやすいですね。しかも、この患者さんは不幸なことに、そういう発症したと思われるネコに噛まれて感染したということで、直接ダニに噛まれなくても、こういう発症したネコによって感染するということがあって、病気のネコを見たときは余り近寄らないほうがいいのかなということがありましたし、その一方で、今まで適当な動物がなかったのですが、ネコが非常に感染しやすいということが分かったので、この病気そのものの研究にはネコが使われるようになっています。

 それと、順番が不同ですが、5番のパルボに関しては、患者さんが慢性腎不全で透析を受けている患者さんということで、そのホスト側のファクターもあったのかなと。しかも出血性の腸炎か何かでヘモグロビンが下がって輸血をしたときに、たまたまパルボが入ったということで、それが原因で長引いたというか、治るまでに時間が掛かったと思っています。

 先ほど佐竹先生がIgG陽性だったというので、通常であればもう中和されて、感染性はないのかなと思っているのですが、こういう報告があると、IgGが陽性だからいいとはなかなか言いきれないのかなと。もちろん症例が少ないと思いますが、そういうことを考えました。以上です。

○田野崎委員長 ありがとうございました。

○佐竹血液事業経営会議委員 すみません、IgMだと思います。

○岡田委員 IgMですか、分かりました。

○佐竹血液事業経営会議委員 IgGについては、ちょっと今は忘れましたが、後で確認します。

○岡田委員 分かりました。

○田野崎委員長 ほかはよろしいでしょうか。

○室井委員 15番の細菌感染のスクリーニングのところです。日赤の方にお聞きしたいのですが、検査で陰性で、現場でクランピングがあって見つかったというのが、3人いたみたいなんですよね。それで、これはいろいろな菌で細菌感染を起こすみたいなのですが、菌によってクランピングを起こしやすい菌とか、そうではない菌があるかどうかということと、菌量との関係というのはあるのでしょうか。

○佐竹血液事業経営会議委員 それは非常にあります。こういったコアグラーゼポジティブ・ネガティブという、そのコアグラーゼと言っている言葉そのものが示すように、菌によってコアグラーゼがあるものは、やはりこういったアグリゲーションを非常に起こしやすい。ただ、もう少し時間を置いておきますと、この文献にありますが、それがまた消えてしまう。そういうこともありますので、こういった外観の変化を起こしやすいバクテリアがありますけれども、バクテリアのstrainによっても違いますし、時間経過によっても非常にドラマチックに変わります。全く外観の変化を起こさないものもありますし、これは菌によっても違いますが、血小板のドナーの血液によっても非常に千差万別です。

 ただ、ここにありますようにaureusは、一般にはこういった外観変化を起こしやすいほうの菌であることは確かです。

○室井委員 腸内細菌などは、どうなのでしょうか。

○佐竹血液事業経営会議委員 腸内細菌で外観変化は、ほとんど腸内細菌で汚染例というのは非常に少ないですので、一般的なことは言えませんが、aureusほどは起こさないのではないかなと思います。ただ、詳しいデータはありません。

○室井委員 あと、そのコンタミネーションする菌の量と、クランピングの出来やすさというのは、やはり関係あるのですか。

○佐竹血液事業経営会議委員 外観変化を起こすのは大体107乗くらいにならないと、一般には起こさないです。

○田野崎委員長 貴重な御意見、どうもありがとうございました。それでは、厚生労働省は今後とも引き続き、感染症の定期報告の収集等をお願いします。

 次に議題2に移りたいと思います。「血液製剤に関する報告事項について」です。遡及調査の進捗状況や、副作用・感染症報告の状況、これまでに報告された事例のその後の対応状況等について、事務局から御説明をお願いします。

○山本匠血液対策課長補佐 それでは資料2-1から説明いたします。まずは供血者からの遡及調査の状況になります。3ページの右端を御覧ください。こちらの表が平成29年4月1日から9月30日までの速報値となっております。調査対象となった献血件数は1,445件あります。上記マル1から調査対象とした輸血用血液製剤の本数として1,617本あり、医療機関にはそこから1,112本の報告を行っております。

 続いて()個別NAT関連情報ですが、平成26年8月から献血血液のスクリーニングで個別NATを行っておりますが、遡及調査の対象となった検体が、プールNATでスクリーニングされたものであった場合には、その検体に個別NATを行っております。その献血件数が6件あり、医療機関に供給された製剤の本数は8本となっております。そのうち1名の受血者でHBVが陽転となっており、この事例については前回の運営委員会で報告しております。

 続いて、資料2-2の1ページを御覧ください。平成29年8月から10月の感染症報告事例のまとめとなっております。輸血用血液製剤で16件の報告がありました。HBVに関して2件、HCVに関して5件、HIVに関して0件、その他で9件あり、その他はHEVが0件、サイトメガロウイルスが1件、細菌等が8件となっております。その詳細に関しては資料のA3サイズのほうに書いておりますが、死亡例が1例ありました。

 続いて、資料2-2の16ページを御覧ください。こちらは北海道で行っている試行的HEV-NATの状況について、平成291031日までの結果です。一番下に平成29年1月から10月までの結果があり、陽性者は100名となっております。陽性率は0.049%で、Genotype3が76名、Genotype4が9名となっております。

 3ページに戻ります。輸血用血液製剤で細菌感染が疑われた事例で、今回の死亡例の事例についてに記載しております。12ページの日赤番号3-17-00048のものになります。これは以前の委員会で報告して、感染拡大はないということは確認されております。事例ですが、患者さんは10歳未満の女児となっております。急性骨髄性白血病の再発に対して、同種骨髄移植を実施しております。投与3日前に移植後感染予防のために抗生剤投与が開始されております。輸血当日は血小板製剤の輸血を開始して、20分後に振戦、呼吸促迫が出現し、そこで一旦、輸血を中断し、その後バイタル確認後、血小板輸血の再開はされております。その15分後に嘔吐があり、顔面蒼白、四肢の色調不良、下痢があり、血小板輸血が中止されております。そのときに発熱もあったようです。

 その翌日も発熱が持続して炎症反応があり、エンドトキシンが5.1pg/mLで陽性ということで、抗生剤が変更されております。このときの血液培養の検査結果は陰性でした。投与4日後にショック状態となり、患者さんはICUに入室されて、エンドトキシンが64.1pg/mLとなっております。このときの血液培養の検体が採取されており、その後の経過としては心肺停止も一時あったということです。投与4日後の血液培養の結果から、大腸菌が検出されております。ここまでが以前の運営委員会での報告になります。その後ですが、投与1か月程度で、敗血性ショックによる多臓器不全で死亡となっております。

 4ページに、その状況、検査結果の記載があります。この患者さんに投与された血液製剤は、照射濃厚血小板液の採血後4日目のもので、投与量は20mLになります。検体検査等の状況ですが、被疑薬は医療機関で2週間冷蔵保存されていたもので、細菌分離・同定試験で大腸菌が同定されております。エンドトキシンの定量試験で、バッグから2,000pg/mL以上、セグメントチューブからも2.3pg/mLのエンドトキシンが検出されております。

 その後、当該製剤から検出された菌株と患者由来の菌株の相同性については、以前の運営委員会では調査中でしたが、結果として差異を認めなかったという結果が出ております。また、同一採血番号の原料血漿の試験結果ですが、細菌分離・同定試験、こちらは以前は調査中ということでしたが、陰性という結果が返ってきております。エンドトキシン定量試験は0.8pg/mL以下でした。

 担当医等の見解として第1報ですが、「副作用の程度は重篤であり、本剤と非溶血性副作用との関連性は可能性が大きく、細菌感染との関連性は不明である」とされておりました。追加情報入手後ですが、「細菌感染と輸血血液の因果関係はあると考えられる」とコメントいただいております。

 4.血小板濃厚液の細菌混入対策等についてですが、こちらは後ほど日本赤十字社のほうから報告していただき、運営委員会の皆様には、現状の対策というものを確認していただきたいと思っております。今後としては、血小板濃厚液の細菌感染症の伝播のリスクについては、従来から医療関係者に周知を行っておりますが、適正使用という観点からも、それを引き続き進めていきたいと思っております。では、よろしくお願いします。

○田野崎委員長 大腸菌が混入していった血小板製剤が輸血されて、不幸にも患者さんが亡くなられたという事例の御報告ですが、日本赤十字社のほうから、「血小板濃厚液の細菌混入対策等について」を御説明お願いいたします。

○平血液事業本部技術部安全管理課長 私のほうから御説明させていただきます。まず1の血小板濃厚液の細菌混入対策です。()献血時の問診です。こちらについては、医師による問診・検診によって、細菌感染症の可能性のある次のような項目に該当するものを採血不可としております。熱がある、急性疾患に罹患している、体調不良、発熱を伴う激しい下痢(この場合は1か月間献血不可)、歯科治療中、抗生物質服用中、上皮化していない創傷、化膿性の皮膚疾患等が該当します。

()皮膚消毒です。アルコール綿を替えつつ、2回十分に消毒した後、更にポビドンヨード・アルコール液で消毒をしております。この消毒手技につきましては、採血に携わる看護師は定期的に教育訓練を受けております。

()初流血除去です。皮膚の深層や毛嚢に生息している細菌は、皮膚消毒で消毒しきれない場合があり、これらの細菌は、穿刺後流出してくる採血血液の最初のほうに集中しております。そのため、最初の25mLは別に取り分けて、本採血に含めない採血法を導入しております。この方法によって細菌混入が70%減少することが示されております。

()白血球除去です。腸管などから血液中に入ったサルモネラ菌やエルシニア菌などは、血液中の白血球に貪食された後も、白血球の中で生き続けることがあります。日赤では、採血した全ての血液から白血球の99.95%以上を除去しております。

()血小板濃厚液の有効期間の制限です。上記の手段を講じても、ある頻度で献血者から採血血液に細菌が混入することは避けられません。そのため、日本の血小板濃厚液は、有効期間が採血日を含め4日間と短くなっており、細菌が混入していたとしても、危険な細菌濃度にまで増殖しないうちに輸血することになります。

()外観確認です。細菌が増殖した血小板濃厚液は、凝固物などの発生で外観に変化を来すことがあります。血小板濃厚液の製造工程における外観確認に加え、血液センターから医療機関への供給時にも外観を確認し、異常のあるものは出庫をやめております。

 続いて2の医療関係者への細菌感染にかかるリスク周知活動です。血小板濃厚液への細菌の混入と製剤内での増殖は、まれではありますが起こることがあります。このため、万一そのような製剤が輸血された場合でも大事に至らないように、医療関係者に注意喚起及び情報提供がなされております。

()です。製剤の添付文書へ細菌混入によるリスクを記載し、注意喚起をしております。「本剤の使用により、細菌等によるエンドトキシンショック、敗血症等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には輸血を中止し、適切な処置を行うこと」、「問診等の検診や検査を行っても、検査対象である病原体やその他血液を介するウイルス、細菌、原虫等に感染することがある」、「観察を十分に行い、感染が確認された場合には適切な処置を行うこと」、「外観上異常を認めた場合は使用しないこと」と記載しております。

()国の指針である「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の周知のため、ポケット版を作成し、医療機関へ配布しております。これらの指針に輸血のリスクに係るインフォームドコンセント、血小板製剤の取扱い及び外観確認の方法、細菌感染症等が記載されております。

()血液センターによる、「血小板濃厚液の細菌混入に関するリスク」の周知活動です。日本赤十字社が発行する医療機関向け情報媒体「輸血情報」により、細菌混入のリスクと外観確認の重要性、確認された輸血後細菌感染の現状や症例概要等について、血液センターから輸血用血液製剤を供給する全ての医療機関へ配布しております。こちらの輸血情報については、日赤のウェブサイトへ掲載させていただいております。細菌混入に関する血液センター職員による学会での講演、論文での周知というものを行っております。

 次に、3の本邦における血小板濃厚液の細菌感染症事例と血小板濃厚液の供給本数当たりの細菌感染事例の頻度です。血小板濃厚液による細菌感染は、1997年から201711月までに14例の報告があり、グラム陽性球菌が10例です。大腸菌による感染は、今回の事例を除き1例のみです。初流血除去と保存前白除導入後、2007年から2016年までの10年間には、10例の報告があり、死亡例はありませんでした。同期間における血小板濃厚液の供給本数当たりの細菌感染事例の頻度は、約80万本に1件ということでした。一番後ろの別紙に、14例のほうは詳細が記載されておりますので、御覧になっていただければと考えております。

 続いて、4の諸外国における血小板濃厚液による輸血後感染です。多くの西洋諸国は、培養による検査法(培養法)を導入し、輸血による細菌感染症への対策を実施しているが、いまなお、細菌感染事例が報告されている。今日、培養法によって検出できる例は、実際に細菌が混入している例の半分以下だろうと考えられている。培養法を用いると効果的に細菌を検出するために、採血後、一定期間経過後に培養を開始する必要があること、及び検査開始から結果が判明するまでの期間が必要となるため、有効期間を6日間以上にしなければならない。その培養法と、有効期間を短くし輸血する方法の、どちらが優れているかは一概には言えないが、別紙に挙げた日本国内の輸血による敗血症の頻度などから見ると、日本の安全対策が培養法と同等かそれ以上の効果があると考えられる。以下に、主な国のデータを記載しております。

 まず、フランスです。培養スクリーニングをしない場合の細菌感染の状況です。こちらは2000年から2008年です。100万本に13件の敗血症、100万本に5件の死亡例ということが報告されております。保存日数の判明した血小板濃厚液の輸血症例35例の内訳では、日本の有効期限よりも長く保存されたものが3分の2を占めておりました。引用文献は下のほうに記載しております。

 アメリカです。培養スクリーニング導入後の2011年から2015年の5年間の輸血による細菌感染による死亡例が、12件確認されております。培養スクリーニング効果の細菌感染リスクは、10万本に1件の敗血症、100万本に1件の死亡ということです。

 続いてカナダです。培養スクリーニング導入後の細菌感染リスクです。こちらは2010年から2016年のデータで、約80万本のスクリーニングから得られたものです。敗血症は6件起きており、死亡は50万本に1件の頻度でした。そして培養の偽陰性例は、1万本当たり8~9本ということでした。

 次のページ、最後はイギリスです。培養スクリーニング導入前の1996年から2010年までの15年間に、細菌感染症は40事例、43患者が報告され、11例が死亡しております。培養スクリーニング導入後の2011年以降、2015年に1件のみ(非死亡例)が報告されております。培養スクリーニング導入後も細菌感染疑い症例は報告されているということでした。こちらの資料の説明は以上です。

○田野崎委員長 ありがとうございました。それでは、資料2-1と2-2について、委員の先生方から御意見をお願いします。

○室井委員 詳細な説明をどうもありがとうございました。血小板濃厚液の細菌混入対策の()の外観確認に関してお聞きしたいのですけれども、日赤のほうで外観検査で異常があって、取りやめたそういう製剤の数、それから医療側で見付けて返品された数というのは、大体どのぐらいの件数があるのでしょうか。大体で結構ですけれども、極めてまれですか。

○佐竹血液事業経営会議委員 いや、決してまれではございません。平成27年からちょうど2年半のデータをまとめますと、いわゆる苦情品として挙がってくるわけですけれども、医療機関が136例、それから販売部門、我々の供給の所から199例の何らかの外観の異常が挙がってきております。そういったものは全て我々のほうで培養に供しています。その中で合計335本のうち、培養が陽性だったものは7件です。2年半で7件ありました。

○室井委員 ほかのは、いわゆる細菌感染ではなくて、別な理由の不良品、クランピング。

○佐竹血液事業経営会議委員 これは実際に臨床に使われる前に、何らかの外観等の異常でこちらに挙げられてきた製剤です。

○室井委員 細菌は7件しか分からなかったのですか。

○佐竹血液事業経営会議委員 分からないというか、7件しか出なかったということです。ですので、外観の変化もいろいろな理由で起こりますので、実際にバクテリアで起こったものは、この335例の中の7つだったということです。

○室井委員 あと、先ほどのイギリスの論文に載っていたもので、無症候性の菌血症があると書いてあるのですけれども、アェフレーシス中に、スナックを食べたりすることがあるそうですが、そうすると、口の中の傷から菌が入るということが、ディスカッションであったのですけれども、日本の場合というのは、成分採取中には、そういう飲食というのは、させていないような気がしたのですが、そうでもないのですか。

○佐竹血液事業経営会議委員 成分採血中に固い物を食べたりすることは、避けるようには指導しています。ビスケットとかを食べるのは、全部終わった後に飲物と一緒にする、採血中は飲物は摂っていただきますけれども、固い物を食べることは避けるようにしています。

○室井委員 通常はそこからは入ることは、まずないということですね。

○佐竹血液事業経営会議委員 ええ、ただ、よく言われるように、口腔内の、特に歯肉炎等がありますと、そこからの細菌は極めて容易に、咀嚼運動をしただけで、菌血症になりますので、それ以前の行動によってもなっていることは十分にあり得ますし、非常に難しいですね。

○室井委員 ありがとうございました。

○田野崎委員長 ほかにはいかがでしょうか。

○花井委員 参考までに教えてほしいのですが、72時間震とうを、期限を3日にしましたよね。そのときに、理屈では延びる場合と短くなる場合が生じるのですか。私は、最後の細菌の増殖のトレンドはどうなのか、よく分からないのですが、以前は72時間だったものを3日にして、採血時を入れて4日目までとなったときに、最終的に採血から患者に輸血されるまでの時間というのは、実際に、以前と今とでは平均すると延びているのですか。ちょっとその辺が分からないのです。延びたから問題だと言っているのではなくて、それが影響あるものなのかどうかという、日赤のお考えを教えてください。

○佐竹血液事業経営会議委員 72時間を経て、実際には最長で85時間です。つまり、4日目の夜12時までということです。実際に採血が終わるのが午前11時に一番早いものが終わったとしても、一番最長で72時間プラス13時間で、85時間が最長になります。ですから、72時間から85時間までのところの血液が実際に医療機関に出ていますので、その出た分は今までよりも増えたことは確かだと思います。全体のトレンドを、パーセントか何かで比較したことはありませんけれども、今までの3日といいますか、72時間よりも後のほうで輸血された例が、今までより増えたことは、それは間違いないです。

○花井委員 影響というのは、そんなに問題ない、もちろんそうだからそうしたわけですけれども。

○佐竹血液事業経営会議委員 そうですね、そのように延ばしました理由は、やはり医療機関と血液センターでの血小板の供給と、その輸血の取り回しの窮屈さから延ばしたわけですけれども、その分での、もともとこういった汚染の事例というのは非常に少ないですので、72時間よりも超えたものが、この中にどのぐらい含まれているか、そこをまだ計算していません。それはちょっとやってみたいと思います。

○田野崎委員長 今回たまたま4日目という製剤ということではありますが。

○佐竹血液事業経営会議委員 今回はそうなりますね。理屈で言えば、後になればなるほどリスクが高まることは、それはもちろんそのとおりですけれども。

○岡田委員 外観試験で見付かった7件の細菌は、やはりグラム陽性が多かったのでしょうか。

○佐竹血液事業経営会議委員 結局、輸血されなかったです。輸血されないで外観等で見付かって、それがバクテリアに汚染されていた、それの7割は、実はaureusです。非常に特徴的です。それだけ、やはりaureusは外観に変化を来しやすいということが言えるかと思います。先ほどのイギリスの論文でも、4例は全てaureusなのです。黄色ブドウ球菌です。

○岡田委員 aureusとすると表皮とか、つまり無症候性の菌血症と、ちょっと違うと。オリジンはどうなのですか、皮膚でしょうか。

○佐竹血液事業経営会議委員 それは常に問題になることで、それは先ほどのイギリスのマクドナルド、彼らに聞いても、やはり誰も分からないですね。流血中の可能性もありますし、たまたま通過菌として皮膚にaureusがあるということもありますし。それから、健常人でも鼻腔の中に、2030%ぐらいの人は保菌していますので、それが何らかの格好で、皮膚上に落ちるとか、いろいろなことは考えられますが、決定的な証拠は全くありません。

○田野崎委員長 よろしいでしょうか。現行の血小板製剤、細菌感染防止対策については、諸外国と比べても、かなり十分な対策が取られていると。実際には、それによる有害事象が非常に少ないわけなのですけれども、こういうようなことがあり得るということで、日本赤十字社事務局におかれましては、今後とも十分な対策、そして徹底したリスクの周知、それから適正使用の確保ということでお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、議題3、「安全技術調査会における審議結果について」に移りたいと思います。血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの一部改正について、事務局より説明をお願いいたします。

○山本匠血液対策課長補佐 それでは、資料3-1から3-3を御覧ください。まず資料3-1からになります。改定の主旨ですが、平成29年の第1回安全技術調査会及び第2回血液事業部会で、日本赤十字社より「輸血用血液製剤等の遡及調査に関するガイドライン」の遡及期間の設定方法等の改正と、医療機関への情報提供の対象の見直しについて報告され、改定されることとなりました。また、日本赤十字社においては平成26年8月に個別NATを導入されていることに合わせて、今回、「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の改定を行います。

 2.に主な改正点を示しております。主な改正点として3点あります。遡及調査期間の改正、リスク評価の記載の整備、NAT検査の実施に関する記載についての整備を主なところとしております。まず、遡及調査期間の改正です。こちらは資料3-1と改正案の資料3-2の20ページを御覧ください。これは第1回の安全技術調査会で、日本赤十字社が献血血液に行っている検査の精度が向上したことより、ウインドウ期より設定されていた遡及調査期間の変更を行うことを承認されたため、改正を行っているものです。

 この遡及調査期間は、日本赤十字社で献血者に行っている遡及調査の際に、献血者の感染症検査が陽性になった場合に使用されております。例としては、ある献血者が、複数回献血をしていただいていて、HBs抗原が陽性になった場合、20ページの右上にあるように、確認として中和試験を行った上で、可能な限り過去の献血まで遡って、前回の献血の調査を行い、その前回の献血よりも更に、現行では92日以内の輸血用血液、原料血漿の調査をすることになっておりますが、今回の改定で42日と変更するようになっております。同様に遡及調査期間の設定を変えております。

 次に、主な改正点の()リスク評価の記載の整備です。こちらのリスク評価ですけれども、改正案の18ページと、資料3-3の新旧対照表で15ページを御覧ください。こちらにリスク評価が記載されておりますが、製造販売業者が、製剤にHBV、HCV、HIVなどのウイルスの感染の疑いがある場合に、医療機関に情報提供を行う場合、この場合はリスク評価を添えて情報提供を行うこととなっておりますが、その際の参考として、このリスク評価の分類を記載しております。

 第1回の安全技術調査会で、委員より、この分類の考え方についての言及がありましたので、記載の整備をすることとしております。まず、血液製剤の投与でウイルス感染が疑われた場合。こちらの現行にありますように、NAT試験を行って、「ウイルス等混入血液由来」、こちらを「ウイルス等の混入が確認された血液由来」という形に記載を変えさせていただきます。

 また、個別NAT陰性の場合は、ウインドウ期かどうかということになりますが、2つ目の○、現行の指針の「ウインドウ期血液由来」という部分、こちらは「ウインドウ期間内に採血されたことがほぼ確実な血液」と記載がありますが、これは可能性が高いということですので、それに合わせて「ウインドウ期の可能性が高い血液由来」と記載を変えています。

 3つ目の○ですが、2つ目の○の記載整備に合わせて、「ウインドウ期の可能性が低い血液由来」としております。ウインドウ期の可能性がない場合も考えられますけれども、こちらはHBc抗体陽性の場合等になりますが、これは第1回安全技術調査会で日本赤十字社は医療機関への情報提供をしなくていいということで了承されておりますので、記載のほうはしておりません。

 主な改正点の3つ目は、遡及調査におけるNATというものですが、こちらは資料3-2の8ページと新旧対照表の6ページを御覧ください。医療機関で輸血用血液製剤による感染が疑われた場合、製剤と感染の因果関係を日本赤十字社では確認することとなります。その際に、輸血用血液製剤の保管検体の調査を行うようになっております。現行の指針では、20プールNATを想定して、個別NATを行うと記載されております。平成26年8月に、個別NATを導入しておりますので、現在の輸血用血液製剤で市場に出ているものは、ほぼ全て個別NAT済みということです。ですから、ここで2回の個別NATを行うようになっておりますので、ここの記載を「個別NATでスクリーニングされていない場合は、個別NATを行う」という形に整備しております。

 血漿分画製剤についても同様にあり、資料3-3の9ページに記載がありますが、医療機関で血漿分画製剤での感染があった場合、()のアになりますが、各社受入時のNATの検査をしているということもありますので、「NATを行っていない場合は、NATを行う」という形で記載を整備しております。以上になります。

○田野崎委員長 以上につきまして、何か委員の先生方から御質問などありましたらお願いします。大体よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、事務局におかれましては、改定に向けた手続をお願いいたします。また、日本赤十字社の皆様におかれましては、どうもありがとうございました。

(日本赤十字社3名退出)

○田野崎委員長 それでは、議題4、「血液産業のあり方について」に移りたいと思います。事務局より資料4-1、血漿分画製剤内資系製薬企業振興施策の検討の方向について、説明をお願いいたします。また、資料4-2、血漿分画製剤の輸出に関する具体的な制度改正案の説明についてもお願いいたします。

○菓子野血液対策課長補佐 資料4-1について御説明いたします。血漿分画製剤内資系製薬企業振興施策の検討の方向、その検討の背景として、これまでも運営委員会で議論しましたとおり、免疫グロブリンの自己免疫疾患への適応拡大に伴う国内利用需要の拡大が進んでおりますが、こうした医療需要に応える責務が発生していることと、薬価収載から長期間にわたり薬価が下落し続けたことに加え、これ以上のコスト削減努力が非常に厳しいという収益構造がございまして、血漿分画製剤をめぐる状況が大きく変化しており、これらの変化に対応した血液事業体制の整備が必要である。これにより、目指すべき方向としては、血液法に定める安定供給及び国内自給を、将来にわたって継続的に確保できるような体制を目指していきたいと思っております。これらの検討の成果は来年度の基本方針の改訂にきちんと反映していきたいと思っております。

 具体的に推進していく施策としては、まず毎年度の需給計画の編成において、きちんと国内の医療需要に対応した原料血漿を確保するとともに、その価格が、分画メーカーの経営の持続性と日本赤十字社の安定的かつ効率的な経営にも配慮しつつ、国のほうで責任を持って決定していくことを進めていきたいと思っております。あとは、以前に御紹介させていただきました3社間連携の検討会において、未利用の中間原料の相互利用を進める検討を進めていきたいと考えております。あと、こちらも以前紹介いたしましたが、血漿分画メーカー、代替医薬品である凝固因子のリコンビナントのメーカーも合わせて構成されております、血液製剤産業コンプライアンス推進会議において、コンプライアンスのガイドラインを作成し、法令遵守体制の整備を進めていきたいと考えております。

 下の黄色い枠が、前回のヒアリングで要望を頂いた点ですけれども、論点等を整理していくべき課題として挙げております。後ほど御説明させていただきますが、未利用の中間原料を活用し、献血血液の有効活用と国際貢献のための血漿分画製剤の輸出、あとは、医療上不可欠な医薬品として、献血血液を原料とする血漿分画製剤特有のコスト構造があり、更にはその安定供給の継続のためには当然適切な利益を反映する必要がありまして、これがきちんと展開できるような販売施策の在り方について検討していきたいと思っております。

 次は、企業から提案がありました新たな生産体制の構築であったり、製剤の技術的検討に要する各種薬事手続きでサンプルを精製する必要がありますので、原料血漿がそれに伴って使用されるということで、これらの合理化や国家検定の合理化について、血液対策課はもう少しその3社から詳細な事情をヒアリングして、関係部局が複数ありますので、彼らと協議して課題の詳細を詰めていきたいと思っております。

 原料血漿の備蓄について御提案がありました。まずは、当年度の必要量の確保に需給計画の編成に向けて尽力し、そもそも分画メーカーが持っている在庫で対応できないか否かを検討した上で、原料血漿を備蓄する場合には、冷蔵代やランニングコストが当然生じますので、備蓄主体は誰になるのか、負担は誰がするのかを検討する必要があると思います。御提案のあった研究開発支援については、当省で既にいろいろなメニューを準備しておりますので、これらの活用の是非について検証する。これらの検討の方向性については状況の変化に応じて必要な修正を図っていきたいと考えております。以上です。

○田野崎委員長 資料4-1、内資系の製薬企業振興施策の検討の方向については、前回ヒアリングを3社にさせていただいて、いろいろ議論をしたところですが、この4-1について御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

○大平委員 具体的に推進していく施策の中で、「未利用の中間原料の相互利用による献血血液の有効活用と相互利用を円滑に進める施策」と書かれているのですが、これについて内資系3社の連携の中で、うまく進むのかどうかというところと、いろいろ会社の中での献血血液の原料としての扱いについての在り方が大分違うところもあるように伺っています。そういうことも含めて、相互に円滑に利用できるような施策というのを、もう少し国のほうでも積極的に関与と言ったらおかしいかもしれないですけれども、指導していけるような形を取っていただくというのはいかがなのでしょうか。

○菓子野血液対策課課長補佐 ありがとうございます。全く御指摘のとおりでございまして、各社は当然、製造工程が異なりますから、そもそも未利用の中間原料を受け入れて、それがそのまま自分たちの製造ラインで使えるかどうかという技術的検討は、メーカー間できちんと進めていかないといけないと思っております。御指摘の点は、仮に技術的に受け入れられることが実現した場合に、薬事手続きが様々必要になってくると思います。それがある程度合理的にできるように、想定される問題点について、企業にも協力していただいて、洗い出ししていただいて、我々も、直接薬事の規制をやっている審査管理課だったりPMDAだったり、関係部局と協議をして、なるべく円滑に行うことができるような体制を検討していきたいと思っております。

 その上で、正に今、企業間でも、ちょっと製造能力の話もありますので詳細は述べられないのですけれども、例えばアルブミンなどは原料血漿の今の配分量と各社の製造能力にギャップがあるのではないかと、それをうまく組み合わせれば国内自給を目指すような体制が確立できるのではないかということで、積極的な検討を行っているところでございますので、もうしばらくその技術的な検討も含めて、時間は掛かるとは思うのですが、しっかり進めてまいりたいと思っております。

○田野崎委員長 山口委員どうぞ。

○山口委員 今、大平委員の御意見もありましたけれども、せっかくの献血が、途中までは精製して、その途中から使われなくなって、未利用のまま廃棄されてしまう部分があるというのは、是非改善していっていただきたいと思います。そのために、事務局が今技術的なというところがあったのですが、恐らく国が関与というか、国の中で例えば監・麻課とかPMDAとかそういうところと、いかにその製法変更とかそういう技術的なところはむしろ積極的に利用してというか、どういう相談の仕方があるのかは考えていただく必要があると思うのですけれども、3社で合意したときに、それがうまくスムーズにいくような形に是非していっていただければと思います。

 あともう1つ、一番最初に書かれてある免疫グロブリン等の適応拡大は、どんどん増えていく可能性はあるわけですね。そのときに恐らく免疫グロブリンに関しては、未利用のところから出てくるわけではないような、要するにこの部分が増えていけば当然、原料血漿の必要量の増大というところに多分当たっていってしまうのだろうと。その辺のところの対策というのも一つこの柱の中に、やはり立てていかざるを得ないのかなという気がいたします。

○菓子野血液対策課長補佐 正に御指摘のとおりでございまして、グロブリンの中期的な需要の動向というのもちょっと検証したいと思っていますし、それに沿った形で、日本赤十字社様にも採血の量の確保をお願いしていくことをやっていきたいと思っております。

○田野崎委員長 ほかはいかがでしょうか。大平委員どうぞ。

○大平委員 あと、研究開発支援については、出席されている企業の中からも支援というのですか、そういうのを要請される所があったわけですけれども、ここで、AMEDの研究開発事業等の活用というところでの検証では、国としてはどのようなことを考えていますか。何か具体的なところがあったら、発表できることがあるかどうか分からないですけれども、何かお考えがあるのでしたら示していただきたい。

○菓子野血液対策課長補佐 御指摘の点は、以前、こういう研究業務の振興をつかさどる研究開発課とも協議をしていまして、その希望された企業が活用されるかどうか、その要件が合わないとかという話は今から詰める必要があるのですが、それは別として、御紹介の中で特にプッシュがあったのは、AMEDに補正予算で550億円積んで、資金枠を設けているということです。聞いた話なので不正確かもしれませんけれど、借入れをして10年間据え置き、つまり返済をする必要がないと。事業が成功をしたら返済を始める。仮に失敗をしたとしても支払い義務を免除されるとか、事実上の出資に近いような形の資金枠が用意されているということなので、その企業にとっては研究開発にあたっての財政負担が非常に少なく済むのかなと考えております。

○大平委員 それはただAMEDだけの話で、それに対してのいろいろ、例えば血液製剤の中でも、どうしても足らない部分については代替製剤の開発とか、いろいろなこともこういう中で視野に入れているというように考えてもよろしいのかどうか。

○菓子野血液対策課長補佐 そこを正に詰めていく必要があるのかなと。基本的にAMEDの事業というのは革新性を多分求めるような要件になっていますので、その各社の研究シーズがAMEDの資金枠の要件に合致するかどうかが、まずは事務的に詰めていく必要があるかと思っております。すぐに使える、使えないというのは、なかなか申し上げにくいのですが、申し訳ございません。

○大平委員 AMEDの援助だけしか考えてないのか。

○菓子野血液対策課長補佐 いえ、本省の補助金もありますし、経産省でも研究補助をやっているようなことも聞いていますので、当然、幅広く企業と一緒にいろいろ各省の予算枠について活用を考えていけたらと思っております。

○田野崎委員長 今のAMEDの研究事業に関しましては、サイクル事業の話かと思いますが、まだ具体的にという形でということではないのかなとは思うのですけれども、ちょっと今の内資系の製薬企業振興施策のことと、次の4-2にも関連してくるかと思いますので、できましたら資料4-2も御説明いただいて、それでまた議論を続けていただければと思います。よろしくお願いします。

○菓子野血液対策課長補佐 資料4-2について御説明いたします。血漿分画製剤の輸出に関する具体的な制度改正案です。現状について簡単に御説明させていただきますと、血液法に定める血液製剤は、輸出にあたっては経済産業大臣の承認を受けなければならないこととされております。ただ、昭和41年から、国内需要確保のために当分の間は承認を停止することとされております。当時の衆議院の会議録などを見ますと、国内において物が足りないので、実質上、輸出はさせないという整理になっております。

 そこで具体的な改正案ですが、2ページ以降になります。血漿分画製剤の輸出が国内の安定供給に支障を与えないようにするために、需給計画による統制対象として、輸出する血漿分画製剤を、資料のマル1の()()()のように位置付けたいと考えております。まず、需給計画の統制対象として、輸出すると見込まれる血漿分画製剤の種類及び量を定めるものといたします。需給計画は国が作成するものですが、その参考として企業に届出をやっていただきますけれども、その中に当然輸出すると見込まれる血漿分画製剤の種類及び量を定めるものといたします。これは計画策定段階の改正事項ですけれども、実際に需給計画に沿って物が流通する段階にあっては、月に1回の実績報告事項として、輸出した血漿分画製剤の種類及び量を定めるものといたします。

 需給計画は基本方針に基づいて編成することが法律に明記されているわけですけれども、今まで御議論を頂いたお話だと思うのですが、血液法の第9条に、国内への安定供給及び国内自給を基本としつつ、献血血液の有効利用や海外の患者に対する国際貢献に資する国内の未利用の中間原料を活用した血漿分画製剤の輸出を原則とする旨の規定を追記する、としています。この基本方針に基づいて需給計画は編成されることが法律的に担保されるということです。

 そうすると次のページのマル3で、国内自給の基本理念を踏まえた上で、品目(一般名称ベース)別の国内自給を満たしている血漿分画製剤の輸出を可能とするために、輸出貿易管理令別表第2の19の項の規定を改正したいと思っております。これにより、血漿分画製剤については、貿易管理令の統制から外して、需給計画によるコントロールに移行するということです。

 続いてマル4で、献血血液の活用とは関連しない、輸入された血漿分画製剤の国際間の在庫移動であったり、現行の貿易管理令も原則、承認を停止するとはされていますけれども、例えば委託加工貿易によるもの、例えば輸入されたもので印字かすれとかがあったりして、本国の工場に戻すための輸出というのは、突発的に発生したり、あるいは献血血液の活用とは関連しませんので、マル2の需給計画に逐一記載していないと輸出できないだと、ちょっと通常の経済活動が滞ってしまいますので、それは今でもそうなのですが、各企業が需給状況を勘案の上、厚生労働省への実績報告をすることにより輸出可能とする。

 続きまして同じく通知に規定されており、緊急でスポット的に小ロットで輸出される、人道的精神に基づいて自衛隊等の実施する活動に用いられるもの、人道支援要請に基づくものについても、需給計画に逐一記載しなくても、あと自給率とも関係なく、人道支援ですから、各企業は需給状況を勘案の上、厚生労働省への実績報告を行うことにより輸出可能とするということです。これは輸出貿易管理令の統制対象だったことから、経済産業省の通知に規定されていたのですが、統制の仕方を変えるということで、こういうスポット的に出されるものについては、厚生労働省から改めて整理して通知を発出するということを考えております。

 次の4ページは、今の文字にしていたものを簡単な絵にしてみました。まずは企業が翌年度に輸出すると見込まれる血漿分画製剤の種類及び量を届け出ます。厚生労働省は基本方針に基づいて、輸出する企業の製造能力とか国内自給を満たした上での輸出かどうかを精査の上、需給計画に反映いたします。これが今までの制度との大きな違いだと思うのですが、輸出貿易管理令だと、企業と経済産業省との相対だったわけですけれども、需給計画にきちんと反映することにより、薬事・食品衛生審議会、血液事業部会、運営委員会への諮問がもう既に義務付けられているところです。パブリックコメントも行いますので、輸出量を含む需給計画の妥当性というのが第三者によって担保されるのではないかと考えております。

 続きまして、実際に物が流通しているとき、需給計画の実行時ですけれども、各企業は毎月ごとに輸出の実績を厚生労働省に報告いたします。需給計画で1ビンたりとも間違いがあってはならないという正確なものではございません。見込量はあくまでやっていますので、ただ、病院、医療機関への納入が著しく遅れるとか、欠品を来すような適正を欠く場合には、当然勧告、業務停止命令というのをきちんとやっていくということです。毎月報告していただいていますので、正にこういう状態に至らないように、至る前にきちんと行政指導をやるなりというようなこともきちんとやっていきたいと思っております。そのために報告事項を規制強化するということです。

 これにより、内資系製薬企業は国内自給100%、品目別ですけれども、製品の供給をきちんと行うとともに、アンメットメディカルニーズへの対応、未利用の中間原料の有効活用が可能になるのではないかと。外資系製薬企業にとっては、例えば予想ほど物が仮に売れなかった場合に、期末在庫を多少、他国に融通してもいいのではないかという判断があった場合に、円滑に国際間の在庫融通の合理化が可能になるということです。

 続きまして6ページです。以前の委員会でも御指摘がありましたけれども、これによって、未利用の中間原料を活用したものについて、海外へ日本の献血血液の製剤が出る可能性があるということで、献血者への御理解を頂く必要があると考えております。具体的な周知のイメージですが、基本方針は、当然、運営委員会と血液事業部会の議論を経た上でということですけれども、仮にその制度がスタートするのであれば、基本方針改定の議論のスタートを踏まえて、30年度中にパブリックコメントをやるのですが、法令の公布があったらすぐに施行するわけではなくて、少なくとも半年は周知期間を求めた上で、改正法令の施行をするということで、国はその間に周知を行いたいと思っております。献血協議会等の機会を活用して、この未利用の中間原料の活用というのは一般の国民の方にとっては非常になかなか難しい、血液事業の中でも応用的な部分があるのかなと思っていますので、血液事業の施策全般への理解に努めて、併せて未利用の中間原料を使用して製造した分画製剤の輸出について、丁寧な説明を行っていく。施行後は、採血事業者、現行、日本赤十字社になりますけれども、献血の際に頂いた献血血液の用途、輸血用の分画製剤に使われます、国内の患者に優先して使って、未利用分については海外で使用される可能性がある、あと、まれ血等の人道支援に使われる可能性があることも併せて説明していきたいと考えております。

 最後に、イメージをちょっと模式化してみました。国内自給100%の製品の、その市場が日本のマーケットに限られてしまうので、どうしても未利用の中間原料が発生してしまう、そうした場合に未利用の中間原料を使用して、日本で製剤化して海外へ輸出するというイメージになります。したがって、日本の献血血液を使用した製剤が何の制限もなくどんどん海外に流出するようなことは絶対にない、そういう仕組みを構築したいと考えております。以上です。

○田野崎委員長 どうもありがとうございました。御質問はいかがでしょうか。今、未利用の中間原料を、どうやって3社間でうまく使っていくかということは、まだ解決できていないところだと思うのですが、それができてから、この輸出が普通に実際に大丈夫になっていくというような考えになるのでしょうか。

○菓子野血液対策課長補佐 恐らくそれは別になるのかなと思っております。3社間連携で、特にターゲットになっているのはアルブミン、国内自給はそもそも100%到達していないものですので、それは輸出の可能性は少ないのかなと思っております。前回の運営委員会の非公開部分にはなるのですけれども、お示ししましたとおり、各社の単独の製造能力でも、余剰が生じている製剤が複数あるということで、それが海外のニーズに合うロットを製産できるものであれば、単独でも未利用の原料を活用して輸出する可能性があります。

○田野崎委員長 委員の先生方、いかがでしょうか。大平委員。

○大平委員 大筋で了解できるような形になっているかなと、私自身は思っています。ただ、ひとつ言わせていただきたいのは、何回も言って飽きているかもしれませんけれども、80年代の薬害エイズの問題については、日赤の献血血液が有効に、私たち血友病患者の凝固因子製剤をきちっと作ってもらえていなかった。そういう状況にあって、私たちは日赤の献血血液を有効に使ってほしいということを要望していたわけですが、海外の売血由来の凝固因子製剤を使う状態が続いていたわけです。そのため、この血液法を作るときも、国に対して和解の条件の中での恒久対策の中で、これをきちっと国内自給として、献血血液で国内で血液製剤を使う患者さんたちには、全て献血血液で賄うようにとそういうことをお願いし、そして、国会で承認いただいて成立したわけです。

 その背景としては、献血血液への信頼と献血血液の立ち位置と言うのですかね、位置付けが一般の売血の問題、有償採血の問題とは全く違って無償の献血血液で、そういう善意の血液が生かされるということが大事だと思っています。ですから、そういう意味では、きちっと日本国内で献血血液でそういう製剤が行き渡るということが、まず第1に条件としては必要ではないかと思っています。

 そこで、今回、提示されている中でも未利用分の原料血漿、中間原料という所は、製剤として製造されて輸出されるという話でしたら、それもひとつの監視というか、ここはきちっと管理していくと思いますけれども、こういう特殊な日本の献血血液を有効利用する際には、厳格な調査とか、また、監視というものが十分なされるようなシステムというのが必要なのではないかと思っています。そうしないと献血者への説明とか、全国の献血推進運動をしている中でも多くの方たちの温かい善意で運動しているわけですから、そういうことにもきちっと応えられるようなリスク管理をして、海外への輸出の問題を考える場合にはむやみに流出しないような形をきちっと構築してほしいと思っています。以上です。

○田野崎委員長 ありがとうございました。花井委員、どうぞ。

○花井委員 全体的に、逆にこの輸出貿易管理令によって求められていた機能を、この血液法に落とし込んで、むしろすっきりしたと思うのです。1つ心配なのは、今、大平委員の言った話とも関係するのですが、そもそも安定的な供給をどこかがしなければいけないという責任を持った場合に、どうするかということ。世界的に普通はどうするかというと高い値付けをするとか、あと法律によって規制する。いわゆる私人間契約によってそれは成立している。世界の常識はね、多分。例えば販売するときに、これだけの量を何年間は確保すると契約書に書いてあって、それを満たさなかったらその企業は莫大なペナルティを払わされるとか、こういう形で話は進んでいて、以前、いわゆるリコンビナントのVIII因子がショートしたときに、正に日本から一斉に引き揚げられて、一番優先的な契約の厳しい所に流れたという事情があります。具体的には例えばカナダのCBSとかですが、CBSは政府からカナダ国民の血液の安定供給の責任を負わされている組織なので、それを全うしていろいろな品ぞろえを用意するに当たっては、それぞれのディストリビューターとの間で、CBSが責任を持てるような契約を交わしていることによって、多分、それが実現して、その分、無い袖は振れませんと日本は袖にされたのです。そのときに、プラズマドライブがかなり頑張って、その穴を埋めたという経緯があります。

 そうすると、今回の例で言うと今の大平さんの懸念は正に、これで大体いけるとは思いますが、事実上、海外に必要な分というか、人道的に出していくというときにも、当然、相手のある話なので、そことの契約とか供給する条件があったときに、こちらの統制と相手方とコンフリクトする可能性があると思います。そうすると、実際、例えば世界的にアルブミンがショートしたとき、それはどこが、どうなっているか知らないけれども、高い値段を付けている国があったとすれば、そこにみんな売りたがってショートし出したときに、基本的に血液法でやっているので配分量で大体分かっているから、それが全部日本に入って来ると思ったら、実はショートした相手から、この分は用意してもらわないと困ると、私企業なので契約を盾に脅されたというか、そういう契約の義務が生じていますとなる可能性が、多分あると思います。これがリアルな可能性だと思います。

 そうすると、今回の説明でいいのですが、血液法で、重要事項として、どのように輸出計画などを確認し合って、ちゃんと原料血漿、国内の献血を日本の国内に供給する計画と、一部、これだけ余るから、こうなっていますよという話を見るときに、どこまで見てちゃんと確認できるかというところの細部をやっておかないと、現実世界の力学としてはそういうことが起こり得る話で、各企業は今のところ、現実問題としてそういうことは起こらないと思います。ただ、論理としては管理令で抑えてしまっていれば、そういうことは起きようがないのですが、こういう形にすると、今みたいな各社の自由な経済活動の中の契約というものが、これとコンフリクトするという可能性が出てくるので、そういうところも注意深く考えながら毎年の需給計画ということですが、これは事実上、この需給計画と定期的な報告、この2つではないですか。そうすると、その中身をどうするかが重要になってくると思うので、そういうことに配慮してやっていただいたほうがいいかなと思います。以上です。

○田野崎委員長 ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。室井委員。

○室井委員 最後のテーマは分かりやすいテーマです。C社、つまり、ある分画製剤が国内シェア100%を満たしていて、それに伴って余る中間原料に関して製剤化して売るとか、この製造する製剤というのは、このシェアを満たしている製品とは限らない。つまり、この余剰分を使って作る製品というのは、100%シェアを満たしている製品と同じものなのですか。つまり何を作るかという製品が、ちょっと曖昧かなと思いました。

○菓子野血液対策課長補佐 これは多分2パターン、おっしゃるとおりで一致する場合もあると思います。結局、アルコール分画の場合は、1つのプレシピテートから1つの製剤が発生しますので、それは大体一致するということだと思います。例えばPPSB画分から溶出するとすると、複数の製剤が出るということですけれども。

○室井委員 懸念したのは、その作った新しい製品が国内自給を満たしていないことがあるかなと思って聞いたのです。

○菓子野血液対策課長補佐 ということですね。それだったら、まず国内に仕向けるべきではないかという正に御指摘だと思いますが、我々はそういうふうに運用したいと思っています。未利用だから何でもいいというわけではなくて、正にその未利用画分が、各社が持っている承認でどの製剤に仕向けられるかというのをチェックした上で、同じペーストを使っていても国内自給を満たしていない製剤があったら、そっちに振り向けるべきではないかということで、そういう形で運用したいと思っています。

○山口委員 今のことにも関係するのですが、先ほどの議論の続きで3ページの一番上の所で、国内自給を100%満たしていればその上は全部いいのだという話ではなく、十分に満たして十分なゆとりを持っているものしかできない。そうでないと、多分、できないだろうと。今の室井先生のお話のところですが、恐らく作るのは連産品なので他のものも作れるけれども、あくまでも余剰として作れて、かつ、輸出できるのは100%を満たした上での話と、そういう理解でよろしいですか。

○菓子野血液対策課長補佐 これは、大平委員と花井委員の御指摘にもつながる話だと思っていますが、当然、まずは国内供給のために需給計画を設計して、その中には当然、国内供給が万が一、1ロットアウトしたときのための適正在庫を期首に何箇月分か常に積み立ててあるとか、そういう今の需給計画の編成を前提とした上で、さらに製造余力があるかというのをきちっと見ていきたいと思います。当然、我々も過剰介入にならない範囲で一緒に契約書を見て、本当に各社の製造能力で対応できるような輸出量なのかというのは、企業と一緒になって輸出量を設計していくことになるのかなと思っています。御指摘はそのとおりで、まずは国内向けの需給計画を設計した上での輸出量ということになります。

○山口委員 7ページの図で、余った部分を製造するようなイメージで書いてあるのですが、実際は余ったのを別に製造するのではなく、C社の製造プラントの中に入れて、余剰分に相当する部分で、100%以上十分にある部分が輸出できると。ですから、まだ他に100%に満たいなものが、連産品の中でこのことを使って製造できるならば、それは逆に言うと国内自給を更に増すために有効な手段になると思います。

○田野崎委員長 全体としては改正案、よろしいでしょうか。岡田委員、どうぞ。

○岡田委員 献血者に誤解を与えないように、説明は十分にすることが必要だと思います。例えば血液メーカーが、収入が上がらないから海外に売って利益を得られるように優遇しているとか、そういう誤解がないように、その辺は徹底してもらいたいと思います。それと、ある新聞社などは、輸血用血液も海外に出るのではないかと、そういう危惧までしている報道機関もありますので、そういうことがないように十分な説明を献血者の方にしていただきたいと思います。

 4-1の資料で、一番最後にAMEDの研究開発事業の活用とあります。現状の国内の血漿分画製剤でグロブリンは95%が国内で供給できていて、アルブミンが60%ですが、そう考えると、例えば現行の精製方法だとグロブリンは、ほぼ国内で供給は維持できるけれども、一方、アルブミンはもっと血漿を増やさないと需要を満たさないということです。考え方によって、極限までアルブミンを効率よく精製しても足りないというのだったら血漿を増やすことが必要だと思いますが、考え方を変えて今の製法を改良して、より効率よく収率を高めるような技術を開発することも、将来的に血漿を多く集めることができない事態もあるので、そういう面で技術の開発ということも重要だと思います。

 そうなると、AMEDでそういう新しい技術、特にアルブミンの収率を高めるような技術の開発に特化して研究費を与えて、各メーカーに頑張ってもらい、例えば50%ぐらいの収率であったのを60%にできるような技術だとなると、これはかなり血漿を増やさなくても、もしかしたら国内自給は達成できるかなと。これは、もちろん長期戦ですけれども、限られた血漿を考えると、アルブミンの収率を高めることは是非必要かなと思います。

○田野崎委員長 よろしいでしょうか。内資系の製薬企業のヒアリングを行ったときに、すぐ輸出の準備ができている企業というのは、そんなにあったわけではないことも現実だったと思いますし、技術とかいろいろな面でかなり温度差があるなと。ただ、こういう輸出規制というのが今まであり、そういうことを念頭に置かないでやられていたということだったので、今、この委員会で基本的にはこれを了承するということですが、ただ、詰めるべき点はたくさんあるということで、これから詳細な点を詰めていくことでよろしいかなと思いますが、いかがでしょうか。

○花井委員 それでよろしいと思いますが、今、岡田委員が発言されたので私も国内企業の振興施策というものですね、振興施策ということが出ている意味ですが、2つ考え方があって、1つは普通にオールジャパンで国内の振興というのをやっているわけです。AMEDというのは大体その話でお金を積んでいるわけですが、例えば、もし国内自給を達成して国内のために、国内の国内による国内の献血を国内だけで全部収まって、余ったら仕方ないねという話であれば、そもそもこれは国営でやればよかったという75年構想に戻るわけです。国営で全部やるべきだという話で、今、それから何十年経ってやっている中で、この前のヒアリングではちょっと意欲が足りないというか、つまり、この分は人道的に海外に出してあげますと言っても、そもそも今まで海外でのプレゼンスのない企業が、国内全体を満たした後の残り部分だけが、ちょうどよく販売できるということは現実問題としてないわけです。そうすると、極端なことを言えば抗体製剤とか遺伝子組換えなど、いわゆる血液以外のものについても企業としてどう考えるのかというところが、ここにないと、振興施策でなくて保護施策みたいになるのです。保護施策という考え方では、多分、無理なのだろうというのが、今回、全体の流れとしてある中で、だからといって、それは企業が考えることなので、行政がどうということではないかもしれないですが、そういうことも含めて、メーカーの皆さんには頑張っていただきたいということだと思います。そうしないと、なかなか現実に難しいということが出てくると思います。以上です。

○田野崎委員長 よろしいでしょうか。そうしましたら、今の貴重な御意見を踏まえた上で、本委員会での考え方を血液事業部会に報告するということにしたいと思いますが、その方向でよろしいでしょうか。では、事務局におきましては、次回の血液事業部会に運営委員会の決定について御報告いただいて、部会での審議をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 議題5、「その他」について、事務局より説明をお願いしたいと思います。

○三浦血液対策課需給専門官 議題5、その他としまして2点ほど報告をさせていただきます。1点目、化血研のボルヒールの出荷について御報告いたします。化血研のボルヒールにつきましては、平成28年1月18日からの業務停止期間中、代替品がない等の理由により、業務停止命令除外品目に指定されていた製品でしたが、一部変更承認の取得が完了していなかったことや、熊本震災の影響などから、これまで販売を再開しておりませんでした。今般、一部変更承認を取得し、1031日から販売再開のアナウンスを開始し、1130日から販売再開となりましたので御報告いたします。御報告の内容につきましては、資料がないので口頭での御報告のみになります。

 もう1点のほうも口頭でのみの御報告になります。CSLベーリング社のタコシールレギュラーサイズ、9.5センチ×4.8センチの製品の供給について御報告いたします。CSL社のタコシールレギュラーサイズにつきましては、武田オーストリア社で製造したものを輸入し、日本国内に供給されております。今般、武田オーストリア社で参考品の照会を行っている際、本来、26個あるべき参考品が20個しかないという事象が発生し、この調査のため日本への出荷が遅れるとの事案が発生いたしました。これにより、一時的にCSL社の在庫が不足する見込みとの報告があったため、御報告させていただきます。なお、卸の在庫としては0.8か月分の在庫を確保しており、卸に対し出荷調整等をお願いすることにより、市場への欠品は回避できる見込みとなっております。また、本日午後、CSL社から卸に対し出荷調整等のお願いをしていることを申し添えます。現時点では市場での欠品は回避できる見込みですが、CSL社に対し、CSL社の在庫状況及び卸の在庫状況についても、週報による報告を指示し、在庫状況の把握を行ってまいりたいと考えております。以上です。

○田野崎委員長 ありがとうございました。ただいまの説明について何か御意見等、ありますか。よろしいでしょうか。そうしましたら、事務局におかれましては引き続き、血液製剤の流通の調整・安定の確保をよろしくお願いいたします。最後に、資料5について事務局より御説明をお願いします。

○山本匠血液対策課長補佐 資料5についてです。資料5は、平成25年度に実施したフィブリノゲン製剤納入医療機関書面調査の結果についてです。本調査結果につきましては、既に平成261216日及び平成28年1月29日付けで公表していますが、今回、平成29年6月30日までに回収・精査した医療機関からの回答を含めて集計を行った結果を、11月8日付けで厚生労働省ウェブサイトにて公表しましたので、報告させていただきます。以上になります。

○田野崎委員長 何か御質問、御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、本日の議題は全て終了いたしましたが、ほかに何か御意見等はありますか。よろしければ事務局に議事を戻したいと思います。

○山本匠血液対策課長補佐 田野崎委員長、ありがとうございました。次回の運営員会の日程は別途、御連絡を差し上げたいと思います。本日は長時間にわたり、委員の皆様、本当にありがとうございました。これにて、平成29年度第4回血液事業部会運営委員会を終了します。

 


(了)

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