ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)> 薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会 議事録(2017年5月12日)




2017年5月12日 薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会 議事録

○日時

平成29年5月12日(金)13:00~


○場所

新橋8E会議室


○出席者

出席委員(17名) 五十音順

◎荒 井 保 明、 石 井 明 子、○一 色 高 明、 梅 津 光 生、
  北 澤 京 子、 小 西 郁 生、  齋 藤 知 行、 正 田 良 介、
  鈴 木 邦 彦、 千 葉 敏 雄、  寺 崎 浩 子、 中 島 康 雄、
  中 谷 武 嗣、 配 島 由 二、  濱 口   功、  菱 田 和 己、
  渡 邉 和 久
 (注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人1名

欠席委員(6名)五十音順

荒 川 義 弘、 後 藤 雄 一、 塩 川 芳 昭、 田 島 優 子、
村 上 輝 夫、  桃 井 保 子、

行政機関出席者

森     和 彦 (大臣官房審議官)
磯 部 総一郎 (医療機器審査管理課長)
梅 澤 明 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)
宇 津     忍 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

○議題

○医療機器審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会」を開催いたします。委員の先生方におかれましては、御多用の中、御出席を賜り誠にありがとうございます。本日は医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち17名の御出席をいただいております。薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしていることを報告いたします。
 最初に委員の御紹介をいたします。本日から御参加いただく国立京都医療センターの院長である小西郁生先生ですが、1月の委員改選で御就任いただいておりました。今回始めての御参加ですので、小西先生から一言頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
○小西委員 皆様、こんにちは。ただいま紹介を賜りました国立病院機構京都医療センターの小西です。専門は産婦人科で、余り役に立たないかも分かりませんが、頑張ってキャッチアップしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○医療機器審査管理課長 ありがとうございます。事務局側の紹介をいたします。機構の医療機器審査第三部長として、4月から高橋未明が就任しております。よろしくお願いします。
○医療機器審査第三部長 4月から医療機器審査第三部長を拝命いたしました高橋です。何分、未熟者ではございますが、御迷惑をお掛けしないように頑張りたいと思いますので、御指導のほどどうぞよろしくお願いいたします。
○医療機器審査管理課長 ありがとうございました。
○事務局 本日の議題の公開・非公開の取扱いについて説明します。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、医療機器の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容等が含まれるため非公開といたします。これより議事に入りますので、傍聴の方は御退席ください。また、カメラ撮りもここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願いいたします。
 以降の進行について、荒井部会長、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 それでは初めに、配布資料について事務局から説明をお願いします。
○事務局 本日の配布資料として、配布資料一覧及び当日配布資料一覧を御覧になってください。配布資料一覧です。資料1、諮問書の付いている「EDWARDS INTUITY Elite バルブシステム」に関するもの、部会報告品目についてとして資料2-1、2-2、参考資料1「薬事分科会審議参加規程」、また、当日配布資料1~3及び5が1枚紙のものとしてそれぞれあり、当日配布資料4は今回審議される品目の要望書です。以上です。御確認をお願いいたします。
○荒井部会長 資料はよろしいでしょうか。次に本日の審議事項に関与された委員と利益相反に関する申出状況について、事務局から報告をお願いします。
○事務局 本日の審議事項に関する影響企業について、委員の皆様から寄付金・契約金等の受取状況をお伺いしたところ、薬事分科会審議参加規程第12条の「審議不参加の基準」に基づく、審議に参加できない委員はいらっしゃいません。以上、報告いたします。
○荒井部会長 ただいまの事務局の説明はよろしいでしょうか。
 それでは議題に入ります。議題1「医療機器『EDWARDS INTUITY Elite バルブシステム』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定の要否について」に入ります。本議題の審議に当たっては、参考人として医療法人社団愛友会上尾中央総合病院心臓血管センター長の手取屋岳夫先生にお越しいただいております。先生、よろしくお願いいたします。
 まず、事務局から説明をお願いします。
○事務局 議題1について説明いたします。資料1です。1枚目は諮問書です。本議題では、医療機器「EDWARDS INTUITY Elite バルブシステム」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定の要否について御審議をお願いいたします。審議品目及び審査の概要について、機構から説明をお願いいたします。
○機構 まず、当日配布資料1「専門協議委員」のリストを御覧ください。本審査に当たり3名の専門委員の御意見を頂きました。また、事前にお配りした審査報告書に1か所誤記がありますので、当日配布資料2「新旧対照表」にてお示しいたします。
 始めに審査報告書の5ページの図1、本品の外観図を御覧ください。本品は外科的大動脈弁置換術(Aortic Valve Replacement)、これを今後AVRと呼びます。このAVRに使用されるウシ心のう膜由来の生体弁と、それを留置する際に使用するバルーンカテーテルなどから構成されます。本品の生体弁の構造は、従来の外科弁の流入側にコバルトクロム製のステントフレームが付けられた構造となっております。
 続いて、当日配布資料3「EDWARDS INTUITY Elite バルブシステムの使用方法」を用いて使用方法を説明いたします。始めに1.、2.に示したように生体弁を大動脈弁位へ挿入します。続いて、3.のように生体弁に糸を掛けます。従来の生体弁の場合、それぞれの弁尖に対して4~5か所、全部で約15か所程度に糸を掛けますが、本品は、この図のように3か所に糸を掛けた後、4.に示すようにバルーンで生体弁のステントフレームを大動脈弁位に圧着させた後、先ほど掛けた糸をしっかりと縫合します。以上の手順により生体弁が大動脈弁位に留置されます。
 審査報告書に戻ります。審査報告書の6ページ、(1)開発の経緯です。本邦においては、高齢化に伴い大動脈弁狭窄症の患者数や、その治療法であるAVRを必要とする患者数も増えております。AVRの標準的な術式では胸部切開後、人工心肺回路を使用し、心拍動を停止して手術を行いますが、人工心肺回路使用時間や大動脈遮断時間の延長はAVRの手術成績のリスクファクターとなり得ることから、本品は単時間での植込みが可能となる生体弁として開発されました。
 当日配布資料4としてお配りしておりますが、本品のように既存のAVR用生体弁に比べて、少ない縫合数で植込み可能な生体弁を通称「スーチャレス生体弁」と呼んでおります。これに関して、日本胸部外科学会及び日本心臓血管外科学会から早期導入の要望書が提出されております。
 また、審査報告書の7ページの(2)外国における使用状況に記載されているように、本品は欧州では2014年に、米国では2016年8月に承認取得しております。
続いて、審査報告書の9~14ページを御覧ください。非臨床試験成績については、本品の物理的、化学的特性、生物学的安全性、安定性及び耐久性、性能に関する試験成績が提出され、特段の問題がないことが確認されました。
 続いて、審査報告書の15ページを御覧ください。本申請に当たり米国において実施された多施設共同前向き、非無作為化臨床試験(TRANSFORM試験)が提出されております。本臨床試験では、当初、本品の前世代品であるINTUITYが治験機器として使用されておりましたが、治験初期に本品に切り換えられております。
 INTUITYは本品の前世代品ではありますが、生体弁の内部構造に違いはなく、生体弁の植込み時により植え込みやすいようにするために、アウター布の取付け位置や拡張前のクリンプ形状など軽微な変更をしたモデルであり、植込み後の生体弁としての有効性・安全性に影響を与える変更ではないことから、INTUITYと本品の成績を合わせて評価することは妥当と判断いたしました。
 また、18ページの下段に記載のとおり、AVRは国内外で古くから行われている手技で、これまでに多くの人工弁が開発されてきたことから、ISO5840という国際規格において、人工弁の臨床試験デザインや評価方法などが定められております。今回も従来の生体弁と同様にISOに則って試験が行われました。
 審査報告書の19ページの表8、表9を御覧ください。表8に示すように弁内部で血流が通過する部分の面積を示す有効弁口面積については、生体弁を留置することにより、術前を示すベースラインに比べて弁口面積が大きく、狭窄が改善されていることが確認されました。また、狭窄により大きくなっていた圧較差についても、生体弁を留置することにより健常レベルまで下がっていることが確認されました。表9に示した弁の中央や周囲からの漏れである逆流回避率についても、術後1年以降まで安定した回避率が保たれていることが確認されました。
 続いて、次のページの表10です。適切に生体弁を留置することができたかどうかを示すデバイス技術的成功率を示しております。本臨床試験では、1回目の留置が不成功となった場合、新たな本品を用いて2回目の留置を試みることを可としております。表10に示すようにデバイス技術的成功率は94.5%、1回目で成功した率は87%でした。
 続いて、審査報告書の22ページの表12です。大動脈遮断時間及び人工心肺時間を示しております。AVRのみを行った群、AVRと同時にバイパス術等を行った群に分け、それぞれ米国のデータベースであるSTSデータベースと比較してみると、本臨床試験ではデータベースよりも20~30分程度時間を短縮できていることが確認でき、本品のコンセプトである手技時間短縮を達成していることが確認できました。
 続いて、審査報告書の23ページの表13です。安全性の各評価項目について、表の右から3つ目、術後31日以降の発現率を示す遠隔期成績の95%信頼区間上限値と、表の右から2つ目、既存の人工弁の臨床成績の目安値を示す客観的性能基準OPCの2倍値との比較が行われたところ、出血と弁周囲逆流について目安値を超える発現率であったことが確認されました。
 審査の概要です。審査報告書の24ページの(1)海外にて実施された臨床試験成績を外挿することについてです。AVRは国内外で古くから行われている手技で、本品は、既存の弁よりも少ない縫合数で留置が可能という特徴はあるものの、基本的な手術方法に違いはなく、日米ガイドラインで示されている診断、治療、臨床評価等にも違いはないことから、米国臨床試験を受け入れることは可能と判断しました。
 続いて、(2)本品の有効性についてです。本品留置後、良好な血行動態や手技時間の短縮が確認でき、その結果、単独AVR時の周術期死亡率も既存弁に比べて良好な結果であったことから、本品の有効性はあると判断しております。また、審査報告書の25ページの上方を御覧ください。申請者は臨床治験中に留置不成功の原因調査を行い、成功率の向上のためには、適切なサイジングや大動脈の切開方法の工夫などが必要であることを明らかにいたしました。申請者は、これらを補足トレーニングとしてまとめ、臨床試験中にトレーニングプログラムへ反映させました。
 次のページの表16に、その補足トレーニングの追加前後での臨床成績を示しております。補足トレーニングを追加することで、手技成功率は93.3%から96.1%まで上昇していることが確認されました。また、27ページの表17、表18に示した最新のトレーニング体制の下に実施された欧米での市販後データにおいても、97%を超える成功率が確認されていることから、トレーニングにより、高い有効性が担保されていると考えております。
 続いて、審査報告書の30ページの1)出血についてです。臨床試験で発現率が高い傾向が見られた出血については、本品のフレーム部分以外は既存の生体弁と同じ構造であり、追加したフレーム部分が出血事象の増加に影響する可能性は低いと想定されること、さらに本臨床試験における出血事象の発現時期や部位を調査した結果、出血の原因が本品の構造由来というよりも、併用される抗凝固・抗血小板療法による影響が大きいと考えられたことから、本品に伴う出血リスクは既承認生体弁と大きく変わるものではないと判断しました。
 また、弁周囲逆流については、31ページの表20に示しております。トレーニング前後で成績を比較してみると、上段のトレーニング前の逆流率に比べて、下段のトレーニング後の逆流率では特に臨床上影響があると想定される中等度、重度の発生率で減少傾向が見られており、留置成功率と同様にトレーニングにより逆流を減らすことが可能と考えられました。
 32ページの(4)本品の臨床的位置付けに記載しているとおり、以上の技能を踏まえ臨床試験で確認された留置不成功や弁周囲逆流については、トレーニング等の工夫により既存のAVR用生体弁と同等程度にまで改善できることが示唆されており、手技成績や術後合併症の発生率に影響を与える手術時間についても短縮されていることが確認されたことから、既存の生体弁と同様の臨床的位置付けとして本品を承認することは妥当と判断しました。
 最後に32ページの(5)製造販売後安全対策についてです。臨床試験等の結果から本品の使用に当たってはトレーニングが重要であるということが分かりましたので、医師に対して表21に示すトレーニングを行うとともに、関連学会と協力して適正使用指針を策定し、使用方法の工夫や注意喚起等について情報提供を行うことといたします。
 また、34ページの表22に示しているとおり、本邦においても200例に対して総調査期間7年の使用成績評価を課し、本邦におけるトレーニングの有用性や長期成績などについて確認することが妥当と判断しました。なお、トレーニング及び適正使用指針に関しては審査報告書の37ページに示している承認条件1、使用成績評価に関しては承認条件2を付すことといたしました。
 以上の審査に基づき、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。本品は原材料としてウシ心のう膜が用いられており、生物由来製品に該当します。また、使用成績評価の対象として指定し、使用成績評価期間は7年とすることが妥当と判断しました。なお、薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございました。それでは、まず始めに参考人でお越しいただいている手取屋先生から、追加の御意見をお願いいたします。
○手取屋参考人 スーチャレスバルブ、特にINTUITYというバルブは、先ほど機構からも御説明のように、我々が最も信頼している生体弁をベースとしたスーチャレスバルブです。スーチャレスと申しても実際には3針の糸を掛けるのですが、これは、あくまでも場所決めのガイディングのスーチャであり、これによって人工弁を弁輪に縫着、安定させるわけではありません。非常に短い時間で、同じバルブではあるのですが、先ほどの御説明のように、我々は通常の弁置換の場合は12~15針、掛け方でも違うのですが、実際には弁輪部には25~30か所弱の針を通します。
 それにより、ある程度そこを縫合し我々が結び上げるわけなので、どうしてもサイズ決定のときに、外科医によってはやや怯み、ワンサイズ小さいものを入れるという傾向にあることも否めません。そういう同じ生体弁なのですが、非常に適切なサイジングによって、有効な弁口面積を術後確保できるような可能性も全体の成績からも示唆されております。
 TAVI経カテーテル的大動脈弁置換術が、既に本邦でも2013年10月から保険償還され、非常に多くの症例数が、とても満足いく成績で施行されております。こういう時代において我々外科医が、その手技に漏れる方々、若しくは、更に低侵襲で手術をされるべきという選択肢を必要とする患者さん方に、大動脈弁置換をするときにとても有効なデバイスの1つになるということで、我々の学会からもこういう要望をしているというところです。
 実際、欧米で大変多くの症例がありますが、その成績もかなり満足いくものですが、ただし、ここにもあるように、我々が普通に外科で手術するよりも手技の成功率がかなり低く報告されております。これは欧米の文化の中の1つかも分かりませんが、一旦、承認されるとある程度の施設で同時に施行されるということで、デバイスのコンセプトを十分に理解せずに、このバルブを使ったというベースもあるのではないかと思います。
 本邦で更にTAVI、TAVRもこれだけ安定して行われている現状を踏まえると、ここに関してはメーカーとも十分なコミュニケーションを取りながら、プロクタリング教育システムを取って、デバイスの挿入術、成功率はこのデータのあらゆるデータよりも高いデータを目指すべきではないかと外科医としては思っております。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の皆様から御意見、御質問等はございますか。
○齋藤委員 全く素人なのですが、海外から輸入された製品は規格の問題で日本人の形態に合うかどうかとか、またサイズバリエーションが、おそらく、問題になるかと思います。その点に関して説明お願いします。これはバルブと生体の心臓との固着ですが、物理的な固着が最初にあり、その後、生物学的にしっかり固着して脱転を防ぐというプロセスで固着されるのかどうかをお聞かせください。
○機構 御質問ありがとうございます。初めのサイズの件です。御指摘のとおり日本人は欧米人よりも体格が小さいことが考えられますので、実際に市販された際には、より小さいサイズが選択されることが想定されます。ただ、審査報告書の19ページの表8を御覧ください。弁が小さいほど、やや弁口面積は小さくなったり、狭窄により生じる圧較差は少し大きくなる傾向が見られております。これ自体は、外科手術を行う基準である、例えば、圧較差であれば40mmHg、面積であれば0.8という面積を比較すると、非常に有効な成績がそれぞれ出ており、安全性についても、サイズによる違いは多くは見られていないということから、サイズによる影響はないと判断しております。
 続いて、2点目です。本品が留置された後については、今、御指摘いただいたとおり、最終的に被膜が行われネイティブな部分と一体化していくと考えております。
○齋藤委員 症例の中で、再度置換するということが起こる可能性はあるのでしょうか、そのときにどのように対応するのでしょうか。
○機構 本品に限らず、弁に関しては再治療を行える可能性があります。ただ、本品に関しても、ステントが付いているのですが、取ろうと思えばポッと取れるような経験があるというか、取れる構造になっているということは、実際に海外の臨床の経験からも報告されております。再留置するとなった場合、本品の場合は縫っている数も少ないので再留置しやすいという印象があります。
○荒井部会長 今のところはかなり専門的なので、手取屋先生、もしよろしければ追加のご説明をお願いいたします。
○手取屋参考人 ありがとうございます。サイズに関してまず1つですが、欧米人をベースにこのサイジングが決められて、販売ベースにあたったのは多分間違いないと思うのですが、身体の大きさ、体重が2倍になったからといって、心臓の大きさが2倍になるわけではありませんので、今のラインナップで日本人として、もう1サイズ小さいものが必要ということは、現実にはありません。
 それと、生物学的に被膜が張り、癒着が起こりますので、その部分がもし再手術などになった場合は、やはりある程度、外科的に剥がしていく必要があると思います。現実的に自分は、このバルブに対する再手術という経験がありませんので、論文ベース又は学会ベースの話になりますが、特にそこで技術的に話題となるような部分は、今まで聞いておりませんので、恐らく通常の再弁置換と同等、又はそれより軽い手技で、再弁置換ができるのではないかと思います。ただ、そういう再弁置換の症例数は非常にまだ少ないですので、これが再弁置換に対してかなりリスキーな要素があるかどうかというのは、今後出てくるのかも分かりません。
○荒井部会長 ありがとうございます。そのほかに御意見、御質問等はありますか。
○小西委員 教えてください。従来のバルブに比べて縫合糸の数が少ないということが改善点とお聞きしたのですが、それは周りの何かを膨らませることによって達成されていると考えてよろしいですか。
○手取屋参考人 基本的には縫合しなくてもいいという、我々の手が要らなくなるというような。
○小西委員 それは、どういう。
○手取屋参考人 それは、大動脈弁というものがもともと付いている弁輪部という所に、この場合は人工弁の下部、左心室側に圧着させるような、そういったスカートを履かせて、それが圧着するという物理学的な圧着で、そこに弁を固定するということです。
 本来は我々が縫合して、そこに固定していたわけですが、それが圧着によって固定できるということが技術的に証明できましたので、今回このような製品が出てきているということです。
○荒井部会長 そのほかに御意見、御質問等はありませんか。
○千葉委員 そのバルーンによる圧着で、物理的に安定して元の位置に保たれるというのは、まだピンとこないのですが、どうして生物学的な癒着の前に、今のバルーンの拡張、圧迫だけで、物理的にも安定した位置に保たれるのでしょうか。
○手取屋参考人 おっしゃるとおりですが、今、適応症例というものは、大動脈弁狭窄症という適応症になっています。大動脈弁疾患には大動脈弁逆流という病気もあります。この場合は大動脈弁輪というものが、恐らく皆さんの今の弁輪と同じように、ほとんど石灰化や年齢的な硬化というものが、まだ起こっていないような状況だったり、逆に非常にフレアな状況の場合が多いわけです。そういった症例に対しては、このような物理学的圧着は不十分であり、適応にはならないわけです。
 逆に申しますと、このバルブに対しても、我々は普通手術をするときには、なるべく軟らかい所に糸が掛かるように、弁の変化によって石灰化病変がありますと、それをなるべくというかほとんど取り除き、指で触っても軟らかくなるまできっちり取り除いたほうが、しっかり大動脈弁がそこのポジションに安定するわけですが、この手技の場合は取り過ぎないということがとても大事なポイントで、病気になった大動脈弁は除去するのですが、大動脈弁輪まできれいに取らないで少し残しておく。それによって生体側にも壁が出来て、そこで圧着させるというシステムになっています。
 ですので、委員が御心配のように、ある一部が軟らかいような、もともとそういった疾患に関しては、今のシステムではまだ不向きとなっています。
○千葉委員 そうしますと、これは私は経験がないので、もちろん分からないのですが、例えば弁が何種類かあって、その全てが同じように石灰化しているわけでは、必ずしもないですね。では、術中にこれは、この方法の適応であるかどうかという判定、それが非常に大事なことになるのでしょうか。
○手取屋参考人 現実的には術前に、今、我々が手にしている術前の画像診断などで、十分に判断することができると思います。大動脈弁狭窄症と申しましても、確かに今、委員がおっしゃったように、弁尖部、普通はペラペラな膜様部なのですが、それだけが石灰化しているというのも、非常にまれですが、そういった症例も少なくありません。現在行われている経カテーテル的弁置換におきましても、そういった症例は、例え大動脈弁狭窄の程度が強くても、こういった糸を使わない、つまり物理的な圧着によって弁を固定するという治療には不向きとされています。
 ですので、ほとんどの場合は術前の診断で判断可能と思いますが、場合によってはそういった術中の所見、若しくは我々の手技の不具合、例えば取らなくてもいい石灰化を取り過ぎてしまって、できないという場合も、これは実際にはあると思います。
○中谷委員 今の説明を補足すると、TAVIでやられているのは、石灰化した部分を残したままバリバリッと広げるという操作です。このため、弁輪の石灰化の強いところは、歪んでそのまま残るため弁輪の逆流も起こり得ます。
 今回のシステムは直視下で見て、今言われたような形で丁寧に石灰化した所を取ってしまいます。この方式TAVIと同じように弁を広げて圧着させることで逆流が少ないものを、短時間でやろうというスタイルになっている。TAVIのいいところと手術時間を短くするやり方を兼ね備えた手技と理解したほうが分かりやすいですね。
 それと、8例という結構多いトレーニングを求めていますが、これに関して先生は、何か意見はありますか。
○手取屋参考人 御質問、ありがとうございます。私も少なからずこの症例をヨーロッパで見てきたりしますと、結構失敗している場合があります。確かに2個目では入れることができるのですが、案外、大動脈切開線とか、一旦入れても出血が起こったりということがときどきあるので、8例は少し多すぎるのかも分かりませんが、1例、2例というのは少し危険かなと思います。
 更にこの8例を、プロクターから外れた場合に、例えば低侵襲で持っていく場合には、更に多分トレーニングが必要で、実際に成功率の経年的なラーニングカーブを見ますと、かなり緩やかでして、それを考えると8例というのは妥当かなと思っています。
○荒井部会長 ありがとうございます。そのほかに御意見はありますか。
○一色部会長代理 今、中谷先生がおっしゃったように、ハイブリッド的に使われるという意味で画期的だと思いますし、手術時間が短くなるメリットはよく理解できるのですが、基本的手技に違いがないという機構の説明には納得できないところがあります。この手術は今までのAVRとは手技的に違うものではないかと思います。
 TAVIを経験されている外科の先生にとっては、バルーンを膨らませて圧着させるという手技について、よく理解されているのではないかと思うのですが、TAVIに携わったことがなくて、AVRだけをされていた先生がこの手術を行おうとする場合には極めて重要なサイジングに関して術前の評価の仕方に差が出てくるのではないかと思います。トレーニングに際しては、これらのことが十分に配慮されているどうか、その辺についてはいかがでしょうか。
○機構 ありがとうございます。今、一色先生からも御指摘いただいたように、本品は従来の外科手術と手技が最後まで全く同じというわけではありません。縫合数は3本ですし、最後にバルーンでステントを固定するというところについては、異なるコンセプトを持ったものになります。
 ただ、本品と従来のAVRに関しては、最終的に人工弁を植え込むまでは、ほぼ同じ手技になっています。また、今回は既存の弁に比べて、逆流といった潜在的なリスクももちろんあるのですが、その留置をするというところに関しては、海外の経験からトレーニング等がしっかり組まれていまして、実際に欧米における海外データ、特に米国などについては非常にデータ回収率もいいようなレジストリの結果になっているのですが、そちらの結果を見ましても、そのトレーニングによって高い手技成功率が見られているというのは、トレーニングや情報提供の工夫、サイジングの工夫などを学んでいただくことによって、高い成功率を保てると考えています。
○医薬品医療機器総合機構 もう1点の、TAVIを経験していることによっての成績の差がないかという点については、今回、海外での実績を基に成績を確認したところ、TAVIを実施している施設も、TAVIを実施していない施設も、両方入った成績において、その面については大きな差は見られていないので、海外の実績を踏まえますと、確かに慣れという面では多少差が出るかもしれませんが、トレーニング等であったり、国内で今予定しているコントロールリリースをしながら、情報提供しながら行えば、十分にそのリスクは回避できるのではないかと、機構では考えているところです。
○手取屋参考人 一言、よろしいでしょうか。一色先生の御指摘は全くそのとおりだと、外科医としては思います。やはり今、総合機構の方で御説明いただいたように、マスで申し上げますと、多分ほとんど変わらないのですが、一番大事なのはコンセプトの理解だと思います。バルーンで圧着させるということで、サイジング、ポジショニング、そういったものを我々が十分理解すれば、いわゆる通常のラーニングカーブで十分な成績が上げられるのではないかと思います。
 現実に我々が、例えば大動脈弁置換術という一言で今は済ませていますが、今、日本にあるバルブでも、機械弁、生体弁の分かれだけではなくて、生体弁にも例えばステントレスバルブがあります。これは今の考え方からいいますと、もっと技術的にはコンセプトをちゃんと理解して、複雑な症例になってまいります。そういった面では人工心肺用のマネージメントだとか、外科的なベースは全く同じなのですが、このスーチャレスバルブというものに対するコンセプト、それから適応も含めて、そういったトレーニングを十分メーカー側にも要求するということが、とても大事ではないかと思います。
○一色部会長代理 ありがとうございます。もう1点ですが、これは2回目が許容されているのですね。通常はTAVIでもAVRでも、2個目を使うというのはよほどのことで、実質的には許容されない、むしろ失敗だと思うのです。それが許容されているということに対しては抵抗感があります。最新のデータで2個目を使うケースは少なくなっているようでありますが、先ほどの手取屋先生のお話では、ところどころ失敗例もあるとのこともありますし、2回目をやってしまうとコストメリットが全く出なくなるし、時間的にも優位がなくなってしまうので、その辺についてはどのようにお考えなのか教えていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。一色先生に御指摘いただいたとおり、審査チームとしても1回目で留置できないのは、本品のメリットが全く活かせなくなってしまうので、余り意味がないと考えていまして、1回目の留置成功というのが非常に重要と考えています。
 そのために、1回目で留置を成功するためにどうすればいいかというリスク低減化措置が非常に重要と考えていまして、1回目で留置をするために、例えば事前のサイジングでしたり、しっかり石灰化を取る、そういう基本的なことにはなるのですが、そういう部分をしっかり周知徹底していただいて、既存の弁よりはより慎重に手技をしていただくということで、1回目の成功率というのは上がるのではないかと考えています。
 また、臨床試験を実施している際には、先ほど御説明がありましたが、本品での治療が適切ではない患者さんというのが、余り明らかになっていなくて、実際、臨床試験の結果などを見てみますと、例えば弁輪が少し歪な患者さんとか、そういう患者さんに対しては、やはり本品ではなくて従来の弁を使いましょうといった、そういう事前に判断ができるような判断基準というのが明確になってきていますので、そういうのを含めまして、本品を市販する際には、より高い1回目での成功率が得られるのではないかと考えています。
○手取屋参考人 我々専門委員からも、このデータを見たときに、これは通常の外科手術としては不成功の率が非常に高くて、とてもアクセプトできるデータではないというのを、私だけではなくて、ほかの2人の委員からも指摘がありました。
 例えば今、あるメーカーのTAVIなども、2個目まではメーカーが持つということもありますので、私はこれは、少なくともプロクタリングの間は、1個目が駄目だったら2個目はちゃんとメーカーが持ちなさいと。それはいわゆるラーニングカーブを上げるための1つの手段として考えてもいいのではないかと思います。
 一色先生がおっしゃるように、これがいわゆる2個目ということに対する、これを成功ということにして、このデータのまま読んでしまうと大変な医療経済損失になりますので、ここは厳しく査定すべき部分ではないかと、個人的には思っています。
○荒井部会長 ありがとうございます。では、梅津委員どうぞ。
○梅津委員 この審査報告書を見ますと、25、26ページの辺りに、トレーニングのプログラムのことがしっかり書いてあると思います。それで、自らの会社がトレーニングのやり方を変えることによって、成績がすごく上がったという記載があると思います。特に表16などがそうだと思うのですが、私はこういう新しいデバイスが臨床現場での選択肢の1つとして増えるというのは、とても大事なことやり方だと思います。
 ただ、このトレーニングが従来のデバイス以上に効果が出るということが分かりつつある中で、我が国の外科医に対して何のためのトレーニングなのかを正確に理解してもらう、すなわち、これを新しく導入するためのセレモニー的なトレーニングではないよと、いうことを伝えることが重要です。先ほど手取屋先生が言われたように、このコンセプトがちゃんと理解できるようなトレーニングであるということが分かることが大事だと思いますが、承認した後の早い時期に、これが本当に効果があるのかどうかという科学的根拠を数値で出すようなことをやって、本当に新しい方式がいいのか、どこに問題があるのか、ということを、早めに情報共有するということがもしも行われれば、安全にデバイスが広がってゆくのではないかという、インプレッションを持ちました。
○荒井部会長 トレーニング内容の検証ということですね。
○梅津委員 そういうことです。
○医薬品医療機器総合機構 アドバイス、ありがとうございます。実際に梅津先生のおっしゃるとおり、トレーニングの周知、手取屋先生もおっしゃったように本品のコンセプトの周知は非常に重要だと考えておりますので、その周知に関しては、今回の要望書を頂いている2つの外科学会と連携して、それを今回の潜在的リスクも踏まえてきちんと周知した上で、今回、使用成績評価の対象として、PMSで周術期、あとは30日ぐらいの成績については定期的に報告を頂いて、きちんとトレーニング結果が反映されているかということを確認しつつ、もし足りないようであれば追加の措置を検討した上で、安全性を担保していきたいと考えています。
○荒井部会長 そのほかはよろしいでしょうか。活発な御議論、ありがとうございます。それでは、議決に入らせていただきたいと思います。医療機器「EDWARDS INTUITY Eliteバルブシステム」につきまして、本部会として製造販売を承認して差し支えないものとし、生物由来製品に指定すること、特定生物由来製品への指定は不要とすることとしてよろしいでしょうか。また、使用成績評価には、期間を7年として指定することとしてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては、次の薬事分科会において報告させていただきます。よろしければ、これで議題1を終了とさせていただきます。手取屋先生、どうもありがとうございました。
(手取屋参考人退出)
○荒井部会長 続いて議題2、「部会報告品目について」に移らせていただきます。まず事務局から説明をお願いします。
○事務局 資料2-1、資料2-2の横表を御覧ください。本部会において3か月に1度、医療機器クラスIV、クラスIIIのもののうち臨床試験成績の評価を必要とするもの、また、体外診断用医薬品のうち測定項目や原理等が新しいものについては、本部会において御報告させていただくこととなっています。
 資料2-1に医療機器について記載していまして、今回は73品目、平成29年1月4日から3月31日までの分を御報告させていただいております。詳細については割愛させていただきます。
 また、資料2-2におきまして、体外診断用医薬品を7品目、御報告させていただいております。備考欄において、測定、原理等の新しいものなどについては、ある程度詳しく記載させていただいております。事前に送付しておりますので、この場での詳細な説明は割愛させていただきます。
○事務局 続いて当日配布資料5、1枚紙のものを御覧ください。「PRESTIGE LP Cervical Discシステムの金属摩耗粉に起因する有害事象への部会後の対応について」というプリントです。こちらは4月21日開催の部会において御審議いただいた、PRESTIGEの部会後の対応についての御報告となります。
 部会において、金属摩耗粉の安全性について確認する必要があるとの御意見を頂戴したところです。この御意見を踏まえ、申請企業等と調整を行い、使用成績調査において臨床症状を注視しつつ、MRIや金属イオン濃度の測定等を実施するとともに、適切な対策を講じることとしました。
 なお、当該内容については、本日御欠席の村上委員に御確認を頂いているところです。以上、御指摘を踏まえた部会後の対応について、御報告申し上げます。
○荒井部会長 これは村上委員からの御指摘だと思います。村上委員に既に確認を頂いたということですか。確認しているのではなくて、確認を頂いたということですね。
○事務局 そうです。
○荒井部会長 分かりました。ただいまの報告について、何か御意見等はありますか。よろしければ、これで議題2を終了させていただきます。本日はこれで予定された議題は全て終了しました。事務局から連絡事項等をお願いします。
○医療機器審査管理課長 今日は1品目ということでした。ただ、非常に大事な、いろいろないい御意見を賜りまして、ありがとうございます。次回は6月ということです。実は当初、23日の午後を予定させていただいたのですが、いろいろ御都合を確認したら難しくなってまいりまして、一応、その日の午前でできないかということで、幾つか調整させていただいて、個別に各先生方にも御連絡をさせていただいたりしていまして、今、調整させていただいております。いろいろな御都合がありますので、無理は言えないのですが、よろしく御検討いただければと思います。
 なぜかと申しますと、次回の部会は、前回の部会で少し御相談させていただきましたシングルユースデバイス、単回使用医療機器の再製造の問題。それから、革新的医療機器の条件付き早期承認制度について、前回の部会からパブリックコメントを近々やらせていただく予定でして、その結果を受けて、どのようにこの問題を処理していくのかということの御議論を、まずさせていただきたいと思っているのと、審議品目で非常にユニークな品目、今のところ循環器系で2品目程度と、あと精神科、ちょっと珍しいのですが、うつの関係の機器も含めて、今はまだ品目が確定していないのですが、幾つかの品目がありまして、でき得ればその頃に分科会の予定もありまして、やらせていただければと思っていますが、いろいろまた個別に事務局から御相談させていただきますので、よろしくお願いできればと思っています。長くなって大変恐縮ですが、よろしくお願いします。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。今のお話のように、次回は今日に比べると大分ヘビーになりそうです。ただ、人数がそろいませんと部会が成立しないものですから、医療機器審査管理課長からお話がありましたように御迷惑をお掛けするかと思いますが、是非御協力を頂ければと思っております。よろしくお願いします。
 それでは、そのほかはよろしいでしょうか。よろしければ少し早いですが、本日はこれをもちまして医療機器・体外診断薬部会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。                                    

(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室 室長 柳沼(内線4226)

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