ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第98回厚生科学審議会科学技術部会 議事録(2016年12月9日)




2016年12月9日 第98回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省 大臣官房厚生科学課

○日時

平成28年12月9日(金) 15:00~17:00


○場所

厚生労働省専用15会議室(12階)


○出席者

【委員】

福井部会長
相澤委員、井伊委員、石原委員、磯部委員、大澤委員
桐野委員、倉根委員、塩見委員、武見委員、中村委員、
橋本委員、宮田委員

○議題

1.平成29年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業について(案)
2.「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく研究機関に対する平成28年度履行状況調査の実施について(案)
3.研究指針の改訂について
  1.人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)について
  2.ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)について
  3.ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針(案)について
4.国立医薬品食品衛生研究所研究開発機関評価報告書の提出について

○配布資料

資料1-1  平成29年度厚生労働科学研究費補助金(1次公募)課題一覧
資料1-2 平成29年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)
資料2 「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく研究機関に対する平成28年度履行状況調査の実施について(案)
資料3-1 個人情報保護法等の改正に伴う指針の見直しについての概要
資料3-2  個人情報保護法等の改正に伴う指針の見直しについて(最終とりまとめ)(案)
資料3-3 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針新旧対照表(案)
資料3-4 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針新旧対照表(案)
資料3-5 ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針新旧対照表(案)
資料4-1  研究開発機関の評価結果等について
資料4-2 国立医薬品食品衛生研究所概要
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2-1  平成29年度厚生労働科学研究費補助金に対する意見募集について(結果)
参考資料2-2 平成29年度厚生労働科学研究費公募要項(案)の審議について
参考資料2-3 厚労科研費等の交付事務手続に係る改正の概要

○議事

○下川研究企画官

 傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております遵守事項をお守りくださりますようお願いいたします。定刻になりましたので、ただいまから、「第98回厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては御多忙の折お集りいただき、お礼を申し上げます。

 本日は、今村定臣委員、川越厚委員、菊池京子委員、玉腰暁子委員、手代木功委員、西島正弘委員、野村由美子委員、門田守人委員、横川拓哉委員の9名の委員から御欠席の連絡を頂いております。本日は、遅れて出席される委員がおられますので、現時点で出席委員が過半数を超えておりません。現時点で科学技術部会を正式に開いて議決することができませんので、まずは報告事項から始めさせていただきたいと考えております。審議事項の頃にはお見えになるかと思います。

 本日の会議資料の確認をお願いいたします。議事次第、座席表のほかに、厚労科研費の1次公募の関係のものが資料1-1と資料1-2にあります。公的研究費の管理・監査のガイドラインに基づく履行状況調査についての資料が、資料2です。個人情報保護法の改正に伴う指針の見直し関係の資料が、資料3-13-5まであります。研究開発機関の評価結果等についての資料として、資料4-1と資料4-2があります。そのほか、参考資料として、参考資料1、参考資料2-12-3があります。資料の欠落等がありましたら、お申し付けください。

 それでは、福井部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。

○部会長

 はい。委員22名のうち現在11名で、過半数を超していないということです。あと1人の出席が必要とのことで、恐縮ですが、そのような順番にさせていただきます。議事に入る前に、任期の関係で本日の会議が最後になられる委員が、現在お2人いらっしゃいます。長い間御貢献されたことについてのお礼を申し上げますとともに、一言簡単に御挨拶いただければと思います。最初に、橋本信夫委員からよろしくお願いします。

○橋本委員

 橋本でございます。長い間ありがとうございました。私は出席率も悪く、そして、発言も少なく、この会議に御貢献できたかどうか大変疑問ではありますが、委員の先生方の御発言が、私にとっては非常にいろいろ勉強になりました。ありがとうございました。この会でいろいろ学ばせていただいたことを、今後も役に立てていきたいと思います。この科学技術部会がますますその存在意義を発揮されますことをお祈りしております。長い間本当にありがとうございました。

○部会長

 ありがとうございました。それでは、宮田満委員からお願いします。

○宮田委員

 日経BP社の宮田と申します。本当に長い間お世話になりました。あっという間の10年でしたが、この科学技術部会の置かれている立場も、AMEDの発足などによって相当変わってきたと思います。一応、そういったことについて幾つか問題提起をさせていただきましたが、任期切れで、後の議論は皆さんにお任せして、是非、適切な結論に応じて、我が国の厚生科学行政を引っ張っていくような審議会として機能なさることを期待したいと思っております。皆さんには本当にくれぐれにもお世話になりました。本当にありがとうございました。

○部会長

 どうもありがとうございました。それでは、議事に入ります。最初に報告事項「国立医薬品食品衛生研究所研究開発機関評価報告書の提出について」、議事の4です。本件については、国立医薬品食品衛生研究所の奥田副所長より御説明をお願いいたします。

○国立医薬品食品衛生研究所奥田副所長

国衛研の奥田です。よろしくお願いいたします。当研究所の機関評価の結果が出ましたので、それについて御説明いたします。報告書が提出されまして、その報告書に基づいて対処方針を作成いたしましたので、それについて御助言等を頂ければ幸いと存じます。お手元に資料4-1と資料4-2をお配りしてあるかと存じますが、パワーポイントの配布資料、資料4-2を御覧ください。私たちの研究所の概要が、3枚のスライドで簡単に記載されています。1枚目は、国衛研がどれぐらいの規模かということで、去年ですと、研究員が173名、試験研究費が8億円という規模です。研究所としては、国立の最も古い研究所で、今、東京にありますが、来年には川崎に移転する予定です。

 主な業務、組織図がこの下のほうに書いてありますが、組織図については、2枚目を見ていただいたほうが分かりがよいかと思います。これは川崎に移転することもあって、もう一度私たちの組織を見直して分類したものですが、青の丸の中が医薬品・医療機器・再生医療等製品を所管とする部門、緑が生活衛生・食品安全、黄色が安全性生物試験研究センターという、動物実験が主体の研究をしている所です。それと、基礎の部分を合わせて20の部門から構成されています。

 具体的な研究のあり方、内容ですが、最後のスライドを御覧ください。私たちの研究所は、ここの「使命」に書いてありますように、品質・安全性・有効性を正しく評価するためのレギュラトリーサイエンスを実施することを使命としております。

 重点項目としては、3つの柱を掲げています。(1)が先端的な医薬品の開発を支援するRS研究強化、(2)が健康、生活の安全確保といった部分、(3)がここは国研ですので、国として不可欠な試験・検査への対応等と、この3つの柱を掲げて研究をしております。その下に書いてあるのは、具体的な事項の例です。

 機関評価の概略ですが、資料4-1を御覧ください。1ページの下のほうにある「機関評価の方法」ということで、望月先生を長とする10名の外部の先生方から成る委員会で評価を頂きました。評価を頂いた項目ですが、2ページの中ほどの「機関評価の結果」のI.でア~コまでの内容を記載しています。こういった項目について評価を頂きました。

 ア~コまでの概略について御説明をします。長いものになりますので、横長の資料、16ページから先に横長で「機関評価結果及び対処方針」というものがありますが、この資料、この部分に基づいて御説明をします。横長の資料の1ページですが、研究、試験、調査及び人材養成等の状況と成果ということで評価を頂いています。全般としては、幅広い分野で多くの優れた研究成果を上げているという評価は頂いておりますが、国立衛研の資源不足について指摘があります。深刻度を増しており、改善方策を至急講じる必要があるという御指摘を頂いています。

2ページでは、それとともに、所内外の人材を養成することについて、国衛研全体として行動するような配慮が必要ということ。また、PMDAをはじめとする各機関との連携を深めて、日本のRS研究の発展のために人材養成を達成することも肝要という御指摘を頂いています。

 これに対しては、特に研究員の充足については私たちも頭の痛いところですが、国の施策に合わせて戦略的に増員をお願いして、定員削減を最低限に抑えているというところです。同時に、医薬品や食品などの品質・安全性、有効性の確保という従来型のものだけではなくて、医療イノベーションの寄与に関する国衛研の役割も含めて更に研究成果の広報を図っていく必要などがあり、一層努力をしたいと考えているところです。

 レギュラトリーサイエンスに関する人材の育成についてですが、RSそのものについての重要性の認識は、今、アカデミアにも急速に広がっています。そこで、連携大学院などを通じて大学院での人材育成に積極的に参加しています。今は10の大学と連携大学院を結んでいます。また、AMEDや食品安全委員会には研究員が出向していますし、PMDAから協力研究員として人を受けたりしています。

 研究分野・課題の選定では、3ページの中ほどを御覧いただくと、定員増を抑えられているという現実を踏まえて、PMDAとの役割分担、協力体制を考えて、国衛研としての姿を目指していただきたいという御指摘を頂いています。PMDAとの関係ですが、PMDAが審査実務や信頼性調査実務を行うということに対して、国衛研は承認・審査に関わる品質・安全性を中心とした評価方法の開発・標準化の取りまとめを担当しています。言うなれば、レギュラトリーサイエンスのウェットは国衛研、ドライはPMDAということかと思います。そして、先端的な医療製品については、厚労省を中心にPMDAと国衛研がガイドラインの作成や取りまとめを行うという共同作業もしているということで、役割の分担と協力をしていると考えております。今後ともこういった体制を続けていきたいというところです。

 さらに、同じページのウの研究資金の配分ですが、3ページの下、4ページの頭です。研究費の取得状況、競争的研究費と私たちの研究所でやっている試験研究費との整合性を求める指摘を頂いたものと思っております。すなわち、御指摘は、国衛研の総予算の中で研究に当てられる予算が減少していると。特に、基準作成など、行政に直結した試験研究業務は、競争的研究費でサポートするのには馴染まないと。その点では試験研究費は十分とは言えないと。本来、国として必要な研究や事業については、競争的な試験ではなくて、別途、予算措置をされるべきであるという指摘を受けています。

 国衛研といたしましても、庁費、インハウスの研究費を抑えられている、特に、試験研究費が減少していることについては、強い危機感を持っています。厚労省直轄の試験研究機関の役割と必要性について、関係者の御理解を得ながら、広く社会に向けて広報を強化したいと考えています。また、この評価の中で御指摘がありますように、インハウス予算が抑制されていることで、例えば薬局方などの公的基準作成のための試験研究費の大部分が、その他の安全性評価ガイドラインの多くが、競争的資金から研究費を得ることが通例となっているのが現実です。これら公的機関が担うべき業務の予算措置について、今後とも粘り強く関係の機関と相談をしていきたいと考えています。

4ページの中ほどで、エとして、組織、施設整備、情報基盤などに関する支援体制についてという項があります。所内ネットワークについては、実は平成276月にマルウェア汚染があり、その経験を経て、セキュリティー強化を実施してきています。ただ、知的財産を含めた支援体制の強化は、実のところ今後の課題となっています。また、当所には、医薬品や食品の安全評価に関連する多数のデータベースがあるのですが、その継承についても、現状では研究者個人の努力によって維持されているということです。それについては、川崎の移転と併せてICTを利用したオープンソース化などによって、利活用を広める方策を考えたいと思っています。

5ページを御覧ください。カとして、共同研究・民間資金の導入状況、産学官の連携ということで、産業界との共同研究、研究資金の導入に関して御指摘を頂いています。民間資金の導入に関しては、当研究所は規格基準を作るといった研究業務がありますので、利益相反の観点から導入の機会は限定的にならざるを得ないと考えております。一方、共同研究そのものについては、ガイドラインの作成や試験法の標準化ということですと、多くのラボと連携をする必要があるということで、産業界との意見交換、共同研究は活発に行ってきたと思っておりますし、今後ともそういった活動は更に充実させていきたいと考えています。

6ページの最後、下にキとして、研究者の養成、確保、流動性の促進ということで、部長選考人事について御指摘を頂いています。それは、7ページの半ばほどに、◆で、「ただし部長選考では」うんぬんという所があります。私たちの部長の選考は、公募が原則になっています。一方で、多くの大学の定年が65歳になる中で、今、国立研究所は60歳が定年ということになります。したがって、部長クラスの方の公募に対しては、外部からの応募が少ない状況にあります。そういうことで、実績としては、部長については内部からの登用、承認がほとんどとなっています。一方、室長以下でありますと、民間の研究者の応募もありますし、それについては、適任者であれば採用をしています。逆に、室長クラスの方で今のところは外部から入っていただいて、新しく組織を活性化するという方針にならざるを得ないというところかと思います。

 同じページのクとして、専門研究分野をいかした社会貢献に関する取組ということで、ホームページについて、各研究部に任されていて、国衛研の広報としては十分とは言えないという御指摘を頂いています。これについては、御指摘のとおり今のところ研究部の努力に任されているのですが、一層努力してアップデートするということ、それから、冒頭に少し申し上げましたように、データベースの利活用も含め、分かりやすい情報の発信と受入れに努めたいと思っています。その資金援助を得ることについては、現在、インハウスの予算が厳しい中でなかなか難しいのですが、関係の方面と協議をして、できるだけ情報基盤の整備と結び付くような資金獲得に努めたいと考えています。

 最後、8ページにコとして、国立衛研の川崎移転に合わせた中期ビジョンの作成を期待するという御指摘を頂いております。これについては、現在、作成中のところです。それで、冒頭にパワーポイントで御説明いたしましたように、私たちは、今後の研究のあり方というパワーポイントで重点項目として挙げた3つの部分については、川崎に移転しても今後も研究の柱としてこれを中心に研究を遂行していく予定です。

 一方で、川崎地区は、ライフサイエンスの開発を基盤とする特区地区でして、そこの地区に存在する研究所として求められているものもあります。また、近年、ICTが著しい進歩を遂げたということで、そういった要素も取り組みつつ、この3本の柱と融合させる形で中期プランを作成する予定です。以上、少し長くなりましたが、説明を終わります。

○部会長

 ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問等ありましたら、お願い致します。私から質問ですが、途中でおっしゃいましたホームページとも関わりますが、情報の発信については、組織体制から見ますと、総務部が担当されているのでしょうか、それとも安全情報部が研究所の全ての情報発信に関わっておられるのでしょうか。

○国立医薬品食品衛生研究所奥田副所長

 今のところは、システム自身のハードの面では、実のところ医薬安全科学部が大きなデータベースを抱えていることもあって、国衛研全体のハードについて、セキュリティー的なものも含めて面倒を見ています。

 一方、安全情報部は、情報発信という意味では、食品、医薬品の情報について、週報という形で情報発信をしています。それ以外にも、例えば、これは今度、実はまた、先ほどの医薬安全科学部になるのですが、医薬安全科学部で一元的に、今、各研究部からそれぞれの研究について、ある学会でのシンポジウムで、ある講演を行ったとか、そういうことがあったときに、そのスライドを頂いて公開をするということで、各研究部が何をやっているかということについて、最新の情報が分かる形で取組をしています。それ以外は、各部ごとにそれぞれ、例えば論文の紹介なりデータベースの発信というものをしています。

○部会長

 ほかにはいかがですか。

○橋本委員

 今のお話の中で、人材確保が非常に大変だというふうにお聞きしました。ナショナルセンターでも、研究所の研究員あるいは部長は60歳が定年です。ところが、国立大学ですと65歳ですし、この5歳の差は、部長を採るときに非常に大きな問題になってきます。国立循環器医療センターの場合は今のところ、それで大きな支障は出ておりませんが、近い将来、60歳と65歳の格差が人材確保に非常によく響いてくると思っておりますので、ナショナルセンターの研究所の部長の定年も、遠からず変えなくてはいけなくてはいけないと思っています。具体的に、例えば60歳定年で人材を確保しようというときに、何らかのインセンティブはお考えなのでしょうか、それとも今のところ、中からの登用でうまくいっているというようなお話だったと思うのですが、早晩、非常に難しい事態ではないかと思うのですが、その辺はいかがですか。

○国立医薬品食品衛生研究所奥田副所長

2つあって、1つは採用が難しいということ、もう1つは実は人材流出があり得るのではないかと思っています。例えば、大学で募集があったとき、55歳のときに大学であと10年やれればと、そういう決断をする先生もこれから出てくるのではないかということがあります。

 あとは、例えば、来ていただく先生に、アカデミアですと、いろいろなやり方があるかと思いますが、教授の方が辞められるときに、スタッフが全て入れ替わるという形で研究室を運営している所もあるかと思います。しかし、こういった国立研究所ですと業務の継続性がありますので、そういう形でスタッフを入れ替えることはできないのです。それをすると継続しなくてはいけない、やらなければいけないものが、できなくなってくるということで、部長の先生方が来られるときに、大きなインセンティブを差し上げるのがなかなか難しい状況です。そういったことも含めて、現状、もし、部長の先生に来ていただくのが難しいのであれば、その前の段階で、もう少し若い中堅のところで外部の優秀な研究者を入れて活性化していくことが、1つの方策かと思っているところですが、もし、先生方から何かこういう良い御示唆が頂けたらと思いますが。

○中村委員

 人員の面や研究費で大変御苦労されているというお話ですが、評価の中でのこういうコメントについて、もう少し強く外に現状を周知していくことは必要ではないかと思いますが、何か方策のお考えはありますか。次の中期目標に何か入れるということでしょうか。

○国立医薬品食品衛生研究所奥田副所長

1つは、こういった部会で報告をさせていただくということで、関係の先生方に広く知っていただくということかと思います。あとは、その中で私たちがどういう活動をしているかについては、例えばどこのナショセンや国研の先生方もそうだと思いますが、いろいろシンポジウムを開催したり、研究会を開催して、広く市民にアピールすると。そういう中でそれぞれの研究所の抱えている問題点を、それだけではやはり不十分ですので、成果とともにお知らせをしていく、広報活動をしていくことかと思います。

○部会長

 よろしいですか。今後ますます重要度が高まる研究所だと思いますが、どの研究開発法人も予算が少なくなってきていて、縮小が既定路線とされ、皆さん苦しんでいるように思います。厚生労働省から、振られても困るでしょうが、このことについて何かコメントはありますか。

○佐原厚生科学課長

 全般的に非常に厳しい状況ではありますが、役所としては、毎年、予算についても削減にならないように、また、定員についても削減にならないように努力をしているところでして、これは引き続き努力していきたいと思っております。

○部会長

 ありがとうございます。それでは、この議事については、報告を頂いたということで、次に進みます。奥田先生、ありがとうございました。

 それでは、議事1に戻ります。「平成29年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業について」の御議論をお願いします。最初に、事務局より説明をお願いします。

○下川研究企画官

 来年度の厚生科学研究費(補助金)の一次公募要項()について御説明いたします。参考資料2-2を御覧ください。平成29年度厚生科学研究費公募要項()の審議についてです。スケジュール表の赤字の(1)ですが、今年の7月に厚生労働科学研究費、AMED研究費について、来年度の事業実施方針を御審議いただき、御了解いただいております。その後(2)8月に内閣の大綱的指針に基づいて、事業の実施評価を行っております。(3)、来年度の厚生労働科学研究補助金の研究事業について、パブリックコメントを実施しております。パブリックコメントの結果については参考資料2-1に、「平成29年度厚生労働科学研究費補助金に対する意見募集について(結果)」とあります。個々の御意見についての説明は本日は時間の関係上省略させていただきますけれども、御意見を頂いた研究に関して、既に実施中の研究もありますし、またその研究事業の中では実施できないものもありますので、それらについてはその旨回答しております。

 参考資料2-2に戻りますが、スケジュール表の赤字の(4)、来年度の厚生労働科学研究補助金の第一次公募要項案を作成しまして、本日(5)ですが、御審議いただきたいと考えております。一方、AMEDの研究費については既に11月から来年度の事業の公募が始まっており、既に12月の初めに締め切られているものもあります。厚労科研補助金については、本日公募要項案について御了解いただけましたら、今月中に募集を開始しまして、来年1月から2月にかけて評価を行い、2月から3月にかけて採択し、研究者の方々が41日から研究を開始できるように準備したいと考えております。

 次に資料の右端部分は、事務局で確認した内容についてです。各事業の所管課から提出された一次公募案について、事務局で事前に7月に御了解いただきました実施方針の内容と整合していることを確認しました。また、実施方針に明確に記載のない課題については、事業所管課からヒアリングを行い、「実施方針の課題との関連性」や「既存の研究課題から派生した課題であるか」ということを確認しております。これらにより、いずれも適正な新規課題であると判断しております。

 本日委員の先生方に御確認いただきたい内容は資料の裏に記載しております。裏面の左側に、公募研究課題の例が載っております。これを例として各記載公募について御確認いただきたいことを御説明いたします。(1)研究課題名については、(2)の目標や(3)の求められる成果から判断し、的確か。(2)の「目標」は、応募しようとする研究者が背景を理解し、具体的な研究手法をイメージできる内容か。(3)の「求められる成果」は、明確かつ無理のないものか。(4)の研究費の実施規模等の部分については、研究実施予定期間が研究費の規模と求められる成果から見て適切に設定されているか。これらを御確認いただきたいと思います。費用については予算成立前で未確定ですので、全体的にある程度幅をもたせた額となっております。(5)の「採択条件」は目標や求められる成果から判断して、妥当であって、競争を阻害する条件となっていないかの御確認をお願いできればと考えております。

 次に、参考資料2-3は、これから御審議いただきます平成29年度厚生労働科学研究費補助金募集要項において、これまでと交付手続の一部を変更しておりますので、その御説明資料です。改正の要点は、厚生労働科学研究補助金における適化法上の「補助事業者等」の範囲を改めるものです。従来、厚労科研補助金における「補助事業者等」は、研究代表者のみとして、研究代表者が研究計画の遂行責任及び補助金の管理、執行責任を全て負うこととしておりました。この運用に関して、研究代表者に過度の負担を課している可能性があるということ、また補助金等の配分を受ける研究分担者も、当該補助金等の管理に相応の責任を負うべきという観点から、補助金等の交付を受ける研究分担者も適化法上の「補助事業者等」に加えることができるという改正を行うものです。

 従来の運用で研究代表者への過度の負担というのは、研究分担者が研究費を不適正に使用した場合でも、研究代表者に適化法上の義務違反があったものとして、交付決定を取り消したり、これにより交付制限措置も研究代表者に課す場合があるということです。交付を受けた補助金の執行管理責任の明確化という観点からは、研究費の交付を受けた研究分担者は、補助事業者となることが望ましいと考えておりますけれども、最終的にどのように資金管理するかを研究代表者に委ねることとして、従来の方法でもよいし、今回追加された方法でもよいこととしております。具体的には、図の中の(1)として、研究代表者一括計上とする方法。(2)として研究代表者から研究分担者へ資金配分する方法。(3)として100万円以上の補助金の交付を受け、自ら資金管理を行う研究分担者を補助事業者等とする方法。この選択肢の中から研究代表者が選択するもので、(1)(2)はこれまでの運用方法で、(3)の選択肢は今回の改正によって追加されます。この改正により、研究代表者に加えて補助金の交付を受け、自ら資金管理を行う研究分担者は適化法上の責務を負い、配分を受けた補助金の執行に関する責任を負うことになります。これにより交付制限措置に係る研究代表者の負担も軽減できる場合があります。これに伴い、応募した研究課題が採択された場合には、新しい方法では研究分担者も交付申請書を提出して、翌年度、事業実績報告書を提出いただくことになります。研究計画の執行責任は従来どおり研究代表者が負うものであることに変わりませんので、研究報告書は研究代表者から1つ提出いただくことになります。

 次に、資料1-2を御覧ください。交付手続の一部変更については、資料1-25ページの(4)新たな取扱いについて、という所に新たに記載をしております。個々の課題の公募案については、30ページ以降に掲載しております。また各課題を一覧にしたものも資料1-1として御用意しております。公募課題数が大変多くあり、本日は時間の関係上、個々の課題についての御説明は難しいと思いますので、委員の先生方には通常より早めに資料を事前に送らせていただき御確認をお願いしたところです。それでは、御審議よろしくお願いいたします。

○部会長

 ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等がありましたらよろしくお願い致します。なお、出席者が12名になりましたので、議決は可能となりました。桐野先生と塩見委員、どうもありがとうございます。

○倉根委員

 参考資料2-3について、今回(3)という、補助事業等とする、この100万円という区切りは必要がありますでしょうか。

○下川研究企画官

 これまでも厚労省から研究代表者に交付する金額の下限値は100万円としておりましたので、それに倣って100万円という形にしております。

○倉根委員

 つまり1つは、全体的に小さな補助金もあり、そうすると現実的には、研究代表者から研究分担者へ配分する額が100万円を割るということは、現実的にはよくとは言いませんが、起こっております。なので、逆に言いますと、研究によっては、研究分担者に100を越してお渡しすることができないという状況もよく起こっておりまして、つまり100を越えて受け取る研究分担者がいないということも、現実的には起こっています。ですので、この100という部分でなぜ線引きをしなければならないかというのが疑問であるのと、それから現実的には100で線引きしても、ここの(3)に当てはまる人がいないという状況が出てくるということが起こっているということです。研究費のサイズにはよると思いますが。

○下川研究企画官

100万円以下の研究者の方に直接国からお配りするとなりますと、かなり何倍にも直接配分する手続が増えまして、なかなか一気に100万円以下ということは、ちょっと現時点では難しいということで、100万円というところにしております。もし、100万円以下の方につきましては、従来どおり(1)又は(2)の方法でしていただくことを現時点では考えております。

○部会長

 主に事務量ということになるのでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

○相澤委員

研究代表者の負担の減少が変更の理由であると説明されたと思いますが、変更によって何か問題が生じるおそれはありますか。特に、ないという理解でよろしいでしょうか。

○下川研究企画官

 代表者のほうの課題、ということですか。

○相澤委員

仕組みを変えたことによって問題は生じませんか。

○下川研究企画官

私どもとしては今回の改正によって課題が起こるというよりも、今まで、研究分担者において不正が起きたときの責任が研究代表者にかかるということが問題だと思っていました。そこを回避する方法を捜したということで、今回改正しております。

○相澤委員

 ありがとうございました。

○部会長

 それに伴って研究者側も厚生労働省側も、(3)を選んだ場合には事務量が増えますね。

○下川研究企画官

(3)を選んだ場合は、厚労省の事務手続きは増えるのですが、研究代表者の負担は減るのではないかと思います。

○部会長

 事業者になった方は大変になりますね。ほかにはいかがでしょうか。

 ここでもう1つ確認したいのですが、公募要項について、参考資料の2-2の裏側に書いてあるような事柄については、見ていただいたということでよろしいでしょうか。

○磯部委員

 すみません、先ほどの(3)100万円のことに戻りますけれども、これは厚生労働科研にこういう改正をするということですが、ほかの省庁、AMEDも含めたものにもこれは波及していく予定なのでしょうか。あるいは厚生労働科研に限ってやっていくということなのでしょうか。

○下川研究企画官

これは厚労科研に限ったものです。AMEDのほうは1,000万円以上の場合に、直接AMEDから研究分担者と契約するという形になっていたかと思います。

○部会長

 よろしいでしょうか。それでは、議事の1につきまして、科学技術部会として了承したものとさせていただきます。

 議事の2に移ります。「「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」に基づく研究機関に対する平成28年度履行状況調査の実施について」、御議論をお願いいたします。最初に事務局より、説明をお願いいたします。

○下川研究企画官

 資料2を御覧ください。この調査は「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」に基づくものです。ガイドラインでは研究機関や配分機関が講じるべき事項を定めて、その遵守を求めておりまして、その遵守状況について、平成27年度の厚労科研費の公募より、「体制整備等自己評価チェックリスト」の提出を求めております。またこのガイドラインにおいては、厚生労働省が講ずるべき措置として、自己評価チェックリストの提出による確認に加え、研究機関におけるガイドラインに基づく体制整備や運用の状況を把握することを目的として、一定数を抽出して履行状況調査を行うことになっております。また、調査の結果、体制の整備や運用に不備があると判断された機関に対しては、所用の改善を促すための管理条件の付与等の措置を講じることが求められております。

 したがって2の実施方針のとおり、今年度も履行状況調査を実施したいと考えております。実施方針ですが、まず、(1)調査対象は平成28年度の厚生労働科学研究補助金の配分を受けた以下の機関を対象として、文科省とも同様な調査を行っておりますので、対象機関の選定に当たっては、事前に文科省等と調整しまして、対象機関が重複しないように配慮したいと考えております。1番目としては、平成27年度の配分実績に基づく配分金額の上位5機関で、昨年度に調査対象とした5機関を除いたものとしたいと考えています。2番目として、厚労省が所管する施設等機関及び国立研究開発法人の全12機関を、3年で全て実施することとしておりまして、昨年度は4機関実施しましたので、残り8機関のうちの今年は4機関実施することを考えております。3番目として、平成27年度に実施した履行状況調査において、改善すべき事項が認められた4機関のフォローアップを考えております。

 次に裏面の(2)調査内容です。このガイドラインに基づき研究機関が遵守すべき項目について、研究機関の実施状況を調査いたします。四角の枠で囲んだのが具体的な調査事項の例示です。例えば、最高管理責任者の役割や責任の所在・範囲を定めた内部規定の整備。あるいは競争的資金の運用・管理に関わる全ての構成員を対象にしたコンプライアンス教育の実施。不正を発生させる要因に対応する具体的な不正防止計画の策定の有無。発注・検収業務について、事務部門が実施しているかどうか。競争的資金等の不正への取組に関する機関の方針等を公表しているかどうか。内部監査部門がリスクアプローチ監査を実施しているかどうか。このようなものが調査事項となっております。

(3)の調査体制・方法ですが、ガイドラインに基づく体制整備・運用状況について、まず研究機関から書面で報告を求める「書面調査」というものを実施いたします。書面調査の結果から、必要があれば「現地調査」を実施して、ガイドラインの遵守状況の確認と実態調査を行います。

(4)調査結果の取扱いです。調査結果を取りまとめて本科学技術部会に報告をする予定となっております。平成28年度の履行状況調査の結果、ガイドラインに基づく体制整備・運用に未履行があると判断された研究機関がある場合には、その事項を改善事項として、履行期限までの改善を求める管理条件を付与することにしたいと思います。また、来年度の履行状況調査において、フォローアップ調査の対象機関として、管理条件の履行状況についてはモニタリングを行う予定です。

 最後のスケジュールですが、本日の部会で実施方針の御了解を頂けましたら、今年度中に、調査対象機関からの調査報告書の提出の後、現地調査を行い、結果をこの部会に御報告したいと考えております。以上です。

○部会長

 ただいまの御説明について、御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。この方針でやっていただくということで、科学技術部会として了承したいと思います。ありがとうございます。

 議事の3、「研究指針の改訂について」、御議論をお願いいたします。最初に事務局より、説明をお願いします。

○下川研究企画官

 個人情報保護法等の改正に伴う指針の見直しについて、3省合同の専門委員会で最終取りまとめを行いましたので、その内容を説明いたします。資料3-2が最終取りまとめの全文ですが、資料3-1を使用して説明します。個人情報保護法等の改正に伴う「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」等の改正案については、824日の科学技術部会において、パブリックコメントにかける前の案について御審議いただきました。その後、922日から1021日までの1か月間、パブリックコメントを実施しました。その結果、医学系指針については738の個人又は団体から1,514件の御意見、ゲノム指針については257の個人又は団体から548件の御意見を頂いております。

2ページにパブリックコメントで頂いた主な意見を記載しております。まず、個人情報の定義についての御意見ですが、改正指針案では個人情報の定義として、「他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別できる」と規定されておりましたが、個人情報保護法では「容易に照合できる」と「容易に」という言葉が入っており、指針が法律より運用が厳しくなることを懸念する意見が多く寄せられました。これについては、行政機関の個人情報保護法、独立行政法人の個人情報保護法では、個人情報保護法と異なって「容易に」という言葉がありませんので、「容易に」という言葉は結論としては入れないのですが、それによって個人情報の解釈が厳格化されたという誤解が生じることのないように、ガイダンスで明確化することとしました。

 次に、インフォームド・コンセントについての御意見ですが、(1)新たに試料・情報を取得して研究しようとする場合ですが、要配慮個人情報を取得する際に「原則同意」を求めないでほしいという御意見については、指針の修正を行いましたので、後ほど説明いたします。また、「同意」と研究参加に伴う「インフォームド・コンセント」の区別が分からないという御意見もありましたが、これについては同意とインフォームド・コンセントの区別について、指針のガイダンスで明確化したいと考えております。また、診療記録を用いた症例研究等ができなくて困るという御意見がありました。しかし、これは誤解で、診療記録を用いた症例研究は新たに情報を取得する場合ではなくて、既存情報を用いて研究を行う場合のカテゴリーですので、同意ではなくてオプトアウトにより実施可能となりますので、そのことをガイドラインで明確化します。

(2)自らの研究機関において保有している既存試料・情報を用いて研究を実施しようとする場合ですが、自機関での利用目的の変更について、研究機関のカルテ情報などの既存情報のみを用いる研究においては、これまでどおりオプトアウトによる研究利用を可能としてほしいという御意見があり、これについては後ほど説明しますが、指針を修正しました。

(3)他の研究機関に既存試料・情報を提供しようとする場合ですが、施設ごとに適用される法律が違う場合、多施設共同研究での手続が分かりづらいという御意見がありました。これについても、後ほど説明しますが、御意見を取り入れ修正しました。

(4)既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合ですが、ゲノム指針において特定の個人を識別できる既存試料・情報の提供を受けて研究に用いる場合、医学系研究指針で求められているように、インフォームド・コンセントやオプトアウトの手続を行う必要があるのではないかという御意見がありました。これについては、後ほど説明いたしますが、指針を修正しました。

(5)インフォームド・コンセントの手続等の簡略化ですが、指針においてインフォームド・コンセントを簡略化できる規定があり、「手続の一部又は全部を簡略化することができる」となっているが、手続の「全部」を簡略化した場合、個人情報保護法の要件を満たしていないのではないか。これについては指針を修正しました。

3ページの匿名加工情報ですが、匿名加工情報を用いた研究の際に、原則インフォームド・コンセントを求めるべきではないとの御意見については、既存情報のみの自機関利用については指針を修正し、インフォームド・コンセント不要にしました。

 その他、外国にある第三者への提供基準を明確にしてほしい。試料・情報を第三者提供したとき及び受け取ったときの確認・記録について、項目の詳細を教えてほしい。それから、連結不可の匿名化された試料を解析して、ゲノムデータが取得された場合の取扱いや必要な手続を示してほしい。また、ゲノムデータに対して本人情報開示請求があった場合に、どのように対応するのか、改正個人情報保護法の下での考え方を明らかにしてほしいという3つの御意見については、御意見を取り入れ、指針の修正又はガイダンスで明確化することとしました。

 改正個人情報保護法では、「大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者が学術研究目的」で個人情報を取り扱う場合は適用除外となるにもかかわらず、なぜ改正個人情報保護法の規定に一致するよう改正されなければならないのか。この御意見については、指針は、どの研究者にも共通の取扱いを定めるという基本原則があるということと、共同研究では個人情報保護法が適用になる研究者と適用にならない研究者が混在しておりますので、統一的なルールが必要という考え方に基づいて改正を行っておりますので、指針の修正は行っておりません。

 経過措置ですが、現在、実施中の研究について、指針改正でどのような対応が必要となるのか、また、対応するために必要な確認事項をチェックリスト形式で示してほしいという御意見については、御意見を取り入れて、ガイダンスで明確化するとともに、チェックリストを作成することとしました。

 倫理審査体制の見直しですが、ゲノム指針について、1つの倫理審査委員会による一括した審査を認める条文については、改正指針の施行を待たず公布と同時に実施できるよう経過措置の附則として記載するよう求めるという御意見についても、それが可能となるよう附則を修正することとしました。

4ページです。先ほど、御意見を取り入れ後ほど説明しますと申し上げたのですが、個別の意見に対して説明する前に、まず複数の項目に共通する事項について考え方を整理しましたので、説明します。パブコメ前の指針の改正案では、要配慮個人情報を第三者に提供する場合に、原則同意が必要となって、また医療機関のカルテ情報など、既存情報を自機関で利用する場合に、例外規定が適用できないとオプトアウトでの研究ができない場合が出てくるとなったことで、このままでは医学研究が止まるのではないかと懸念する意見が多く寄せられました。そのため、そこに書いてあるような次のような整理をすることで、自機関における既存情報の利用や、情報の第三者提供において、現行と同様な手続であるオプトアウトでの実施を可能としてはどうかということになりました。

 個人情報保護法76条が資料の一番下に書いてありますが、学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者が、学術研究の用に供する目的の場合は、個人情報保護法第4章が適用されません。一番上の○の部分ですが、指針に定める諸手続に従って作成・許可された研究計画書に基づく研究者等で構成される学術研究を目的とする研究グループは、個別具体的な事例ごとに判断されるものの、その実質や外形が1つの機関としてみなし得るものであるならば、改正個人情報保護法第76条第13号の「大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体」に該当し得ると考えられる。ただし、改正個人情報保護法第76条第1項第3号を適用する場合であっても、安全管理のために必要かつ適切な措置等を講じ、かつ当該措置の内容を公表するよう努めることが求められております。

 そのため、上記研究グループが1つの機関として実質や外形を持って活動していることを明確化する必要がありますので、このグループはこんな複数の機関からなる共同研究で、診療録を使用してこんな研究をしていますといったことを、研究対象者に通知又は公開することを求める。また、研究グループに参加するための規程をあらかじめ整備することも求めることにしました。この考え方は、指針に沿って行う研究グループの学術研究が全て、そもそも初めから個人情報保護法の適用除外になるという考え方ではありません。指針の内容は、基本的には個人情報保護法と整合を取った手続で書かれておりますが、個人情報保護法と整合性を取ると、どうしても研究を行う上で支障が出る部分についてのみ、指針に記載した特定の手続を行うと、そのときに76条を適用して、ほぼ従来どおりの手続で研究を可能とするという考え方です。

5ページですが、指針の対象と76条の関係を表しております。指針の対象が灰色で後ろ側に囲ってありますが、指針の対象内であっても、企業の製品開発のように学術研究でない場合は76条は適用されませんし、たとえ学術研究であっても、先ほど説明した通知・公開などの手続を行わなければ適用外とならない場合があります。

6ページですが、通知又は公開の項目で、先ほど説明しましたように1つの機関として実質や外形を持って活動することを明確化するために、改正案では項目の追加や修正を行っています。それを表している表です。

7ページです。7ページ以降は、様々な場合におけるインフォームド・コンセント等について、取扱いの内容を記載しております。まず、初めに医学系指針から説明します。新たに試料・情報を取得して研究を実施しようとする場合のインフォームド・コンセントの取扱いについて、パブリックコメントを踏まえ修正した点としては赤字の部分で、赤字が書かれている枠の所を御覧ください。(2)人体から取得された試料を用いない情報のみの研究のうち、要配慮個人情報を取得する研究の取扱いについて、原則は同意ですが、同意困難な場合もあるということから、その場合は先ほどの76条を適用させる手続を取って、法律とは異なる指針独自の世界でオプトアウトを可能にするという修正を行っております。

8ページです。これはパブリックコメントで、指針中に記載されている「インフォームド・コンセント」と「同意」の違いが分からないという御意見に対して、ガイダンスで記載することとしましたので、その内容を記載したものです。

9ページです。既存試料・情報を自機関で利用して研究する場合ですが、人体から採取された試料を用いる場合は、中間取りまとめ案から実質的な変更はありません。赤字の匿名加工情報の部分は、中間取りまとめの部分のときには記載順が、一番下の()にあったのを、上に移動させただけの変更です。

10ページです。既存試料・情報を自機関で利用して研究する場合で、人体から採取された試料を用いず、情報のみを用いる研究において、現行指針ではインフォームド・コンセントを求めておらず、匿名化、またオプトアウトの手続によって実施が可能と規定しておりますが、中間取りまとめでは、人体から取得された試料を用いる場合と同様のインフォームド・コンセントの手続を求める方針としておりました。しかし、研究現場への負担が大きく、研究利用のために個別に同意を求めることは診療の現場にも悪影響を与える懸念がある、人体から取得された試料を用いる場合と同様の取扱いを求めることは適当でないというパブリックコメントが多数ありました。このため、従来どおりインフォームド・コンセントは必ずしも必要でないと変更しました。

2番目の赤字の所の匿名加工情報の部分は、記載位置を移動させただけで実質的な変更はありません。また、赤字で「オプトアウト」と書いてある部分ですが、中間取りまとめでは社会的重要性があるという特例規定を用いて、オプトアウトとしておりました。しかしながら、例外規定に該当しない場合には研究が困難であることから、先ほど説明した個人情報保護法第76条の適用除外の考え方を使用して、中間取りまとめ案を修正し、現行指針と同様の考え方とすることとしました。

11ページです。既存試料・情報を他機関へ提供する場合です。匿名加工情報の赤字部分は記載位置を移動させただけで、実質的な変更はありません。2番目の赤字の匿名化は飛ばして、後ほど説明いたします。3番目の赤字のオプトアウトの部分を先に説明します。個人情報保護法の改正により、要配慮個人情報を第三者に提供する場合には、オプトアウトではなく、原則同意が必要となりました。中間取りまとめ案では、独立行政法人個人情報保護法、行政機関個人情報保護法では個人情報保護法と同様な規定がなく、取扱いが異なるということで、中間取りまとめの表のイ-()とイ-()というように、法律の適用施設ごとにインフォームド・コンセントの手続が異なるというような取扱いになっていたのですが、これは多施設共同研究では手続が煩雑で分かりにくいという御意見が、パブリックコメントで多く寄せられました。これについても、先ほど説明した個人情報保護法76条の適用除外の考え方を使用して、中間取りまとめ案を修正して現行指針と同様の考え方、つまりオプトアウトによる手続の規定を維持することとしました。

2番目の赤字の部分で、匿名化(対応表提供なし)の場合には、通知・公開という部分については次の12ページで説明します。

12ページです。従来は連結可能匿名化、連結不可能匿名化していれば、相手に情報を渡すときに個人情報でないとして取り扱ってまいりました。しかし、今後はゲノム等の個人識別符号は個人情報に該当し、また個人情報の定義上、対応表の有無にかかわらず他の情報と照合して個人が識別できれば個人情報になりますので、改正前の上の横棒の灰色の部分の個人情報でない部分が減って、今後は黄色の個人情報になる部分が増えることになります。

 その際に研究者にとって、個人情報と個人情報でない境目がはっきりしない場合があると思いますので、個人情報でないと明確に言い切れない部分を全て個人情報として取り扱うとなると規制が強くなりすぎますので、水色の部分ですが、匿名化を行って、対応表がある場合には適切に管理して対応表を相手に提供しないなどの条件で、個人情報としてオプトアウトや倫理審査委員会の付議を行うという取扱よりも規制の弱い、通知・公開の手続を行うこととするものです。この匿名化の水色の部分は、先ほど説明した76条の考え方を使用しております。

13ページです。既存試料・情報の提供を他機関から取得する場合です。今、前のページの第三者提供の説明のときに、76条を使って通知・公開により匿名化して提供する場合の手続が加わったということを申し上げましたが、そのようにして提供された情報を受け取った際の受取側の行うべき手続を追加しているのが赤字の部分で、提供先においても、先ほど一覧にあった項目を公開することになります。

14ページからはゲノム指針についてです。新規試料・情報の取扱いについては、変更はありません。

15ページです。既存試料・情報を自機関で利用する場合は、匿名加工情報の赤字部分は先ほどと同様に記載位置を移動させただけで、実質的な変更はありません。

16ページです。こちらも変更部分ですが、医学系指針の改正と同じように修正しております。

17ページです。既存試料・情報を他機関から取得する場合ですが、これも医学系指針と同様な修正を行っております。

18ページです。海外にある第三者に対して、試料・情報を提供する場合の取扱いですが、個人情報保護法上は、表の(1)のように原則として同意が必要となりました。しかし、表の(2)にある、一定の数字を満たしたような、ある特定の国とか、(3)にある一定の基準を満たす体制が確保された者へ提供する場合には、日本国内での提供と同じような手続で可能となります。(1)から(3)の方法ではできない場合には、(4)から(6)のいずれかを求めることとしました。(4)は個人情報でなくして提供するという方法で、(5)(6)76条を適用させることにより可能とするものです。(5)は匿名化しているものは通知・公開、機関の長が把握を行うというものです。(6)は個人情報の場合で、通知・公開、拒否機会の保障、倫理審査委員会の付議、機関の長の許可が必要ということになります。(5)(6)76条適用の場合ですので、(7)は学術研究でない場合で、76条を適用できない場合には、社会的重要性があって、倫理審査委員会へ付議し、機関の長の許可がある場合に提供を可能とするものです。

19ページです。第三者提供時の確認・記録についてです。改正個人情報保護法において、個人情報のトレーサビリティの確保の観点から、第三者提供時の提供元及び提供先において、確認・記録の義務が新たに規定されております。このため、指針においては提供元、また提供先それぞれの機関に対して、原則として第三者提供時の記録の作成・確認、記録の保管を行うことを求めることとしました。提供元は提供後3年、提供先の研究機関は、研究終了について報告された日から5年を経過した日といたしました。

20ページ、経過措置等についてです。これは改正される指針の施行前から実施中の研究の取扱いについて記載したものです。倫理審査委員会の過度な負担を避けるために、指針改正に伴った研究計画書の変更で生じ得る多くのパターンについて、研究計画書の変更には当たらないとみなして、倫理審査委員会の審査を不要としました。また、医学系指針において、既に連結不可能匿名化された情報のみを用いる研究は、これまで指針の対象外でしたが、ゲノム情報など、個人識別符号が含まれるなどの理由によって、新たに指針の適用対象となる場合があります。この場合に、改正指針施行後に自機関のみで当該個人情報を取り扱う場合は、研究計画の作成や倫理審査委員会への付議についても、半年間の経過措置を設けることとしました。

 ここには記載しておりませんが、自機関利用ではなくて他機関提供の場合は、施行日までに研究計画書の作成、倫理審査委員会への承認、研究機関の長の許可の手続を求める必要があります。いずれにしても、施行日までに、研究責任者が現在実施中の研究計画の変更が必要かどうかなどについて、チェックリストを用いて確認できるよう、チェックリストを作成し、周知したいと考えております。

 本日、資料3-3と資料3-4として、医学系指針とゲノム指針の改正()を用意しております。今、説明した内容を記載しておりますので、説明は省略しますが、これは最終版ではありませんで、今後、事務的な文言の修正が入る可能性がありますので、その点、御了承くださるようお願いいたします。

 ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針については、資料3-5に改正案をお示ししておりますが、個人情報及び匿名化の定義などの記載を医学系及びゲノム指針と同様に改正するものです。

 以上、説明が長くなりましたが、本日、指針の見直し案について御了解いただけましたら、来年になりますが、できるだけ早く指針が公布できるよう、ガイダンスと併せて準備したいと考えております。説明は以上です。

○部会長

 ありがとうございます。ただいまの御説明について、御意見、御質問等ありますでしょうか。

○石原委員

 コメントと1つ質問をお願いします。コメントですが、極めて理不尽な法律と、それに伴いかなり理不尽だった中間取りまとめ案について、2,000件を超えるパブリックコメントが来たところに、この国の科学、あるいは医療界の健全性が感じられて、とてもうれしく思いましたし、それに呼応して、きちんと改正、改訂案を示していただいたことについても感謝したいと思います。

 法律のほうはそう簡単に変えられないわけですが、指針は比較的容易に変更が可能だというように了解しております。先ほどお話なさいましたように、今後、内容の変更があり得ることに御留意いただきたいということが、この新しい指針()について書いてあるわけですが、この今後の内容の変更というのは、内容の変更なのでしょうか。それとも単純な文言の変更なのでしょうか。これがもし、また内容が変わるのだとすると、少し心配な気がいたしますので、教えていただきたいです。

○下川研究企画官

 内容の変更ではございません。指針は告示になりますので、法令審査という手続きを経る必要がございまして、そこで事細かく、極めて事務的な修正がありますので、そういった意味では文言は変わるけれども、内容が変わるというものではありません。

○石原委員

 ありがとうございます。

○倉根委員

 少し聞いていて分からない部分があったので教えていただきたいのですが、例えば資料3-18ページに、「同意」ということの説明があるのです。例えば「研究対象者からの同意する旨の口頭による意思表示」、18ページにも「同意」というのがあって、「適切な同意を受けている」。この同意を受けたという事実は、どうやって保存すればいいのでしたか。技術的なというか、細かいところになるかもしれませんが。

○下川研究企画官

 個情法のガイドライン上は、口頭による意思表示だけでもいいとなっていて、特に記録をしなければならないとはなっていません。

○倉根委員

 なっていないのですか。

○下川研究企画官

 はい。この同意の部分は、個情法に指針を合わせた部分なので、同じようなやり方になります。

○倉根委員

 分かりました。もう1つ、19ページに第三者に提供したときの確認・記録ということがあります。「改正個情法において」と書いてあるのですが、3行目に「原則として、第三者提供時の記録の作成・確認、記録の保管を行うことを求める」とあります。この作成を求めるとか保管を求めることはできるかと思うのですが、作成・確認は具体的に言うと、提供した側が提供された側、相手側がちゃんとそれを行っているかを確認することを求めるということになるのですか。

○下川研究企画官

 これは情報をもらった側が、相手がインフォームド・コンセントなりオプトアウトに、どのような手続を取ったかということを確認するということです。

○倉根委員

 そういうことであって、例えば私のほうでどなたかに情報を渡したときに、行ってそれを確認するという、そういう意味ではないのですね。ごめんなさい。私が誤解しているのかもしれません。

○下川研究企画官

 そういう意味ではありません。

○倉根委員

 ではないのですね。承知しました。

○相澤委員

 部会長が取りまとめに努力された合同会議の結論自体に反対という趣旨ではありませんが、個人情報保護法の76条の規定を読むと、広い範囲で学術研究に対する自由な利用が認められると理解されるのに、なぜ狭く解釈をしなければいけないのかということは、法律家として、疑問に思っています。学問研究の自由というものが憲法上の理念ですから、これを狭めて解釈することについては、疑問なしとはしません。ここまで取りまとめていただいて、まとめなければ現実に動かないということですから、それは良かったと思います。個人情報保護法には、個人情報の保護に偏った面があって、法律自体にも問題が多いと思いますが、これからも厚生労働省では、運用において、研究の自由を害さないように、努力をしていただきたいと思います。

○部会長

 大変ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。パブリックコメントを頂くときの内容に随分変更を加えることができて、ひと安心したというのが私自身の感想です。資料3-223ページ、8の「中長期検討課題」の前文の所にも書いてありますが、今後も見直しをやっていこうということになっております。3行目から、「各指針の見直しは5年を目途に検討すること」となっていて、「研究現場に配慮しつつ、社会情勢の変化、医学研究等の進展等諸状況の変化に迅速に対応すべく、機を逸することがないよう検討を加え」ということで、状況を見ながら、必要に応じての見直しは必須だと思っています。よろしいでしょうか。

 ただいまの案については、科学技術部会として了承したということで進めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。これで本日の全ての議事が終了しました。その他、事務局から何かありますでしょうか。

○下川研究企画官

 次の日程については、現在、日程調整中ですので、正式に決まり次第、委員の皆様方には改めて日程、開催場所等について御連絡申し上げます。事務局からは以上です。

○部会長

 任期の関係で、桐野先生の御出席が本日の会議が最後になるということですので、一言御挨拶いただければ有り難いのですけれども。

○桐野委員

 この後、別の専門医の会議があって、早く退室しないといけないと思ったのですが、早く終わっていただいて、どうもありがとうございます。科学技術部会は、随分長い間入れていただいて、厚生科学研究のいろいろな面について学ばせていただきまして、長い間どうもありがとうございました。

○部会長

 ありがとうございました。それでは、本日はこれで閉会といたします。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第98回厚生科学審議会科学技術部会 議事録(2016年12月9日)

ページの先頭へ戻る