ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)> 平成27年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録(2016年3月16日)




2016年3月16日 平成27年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録

医薬・生活衛生局安全対策課

○日時

平成28年3月16日(水)
16:00~


○場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)


○議事

○事務局 定刻より少し早いですが、御出席の先生方がおそろいになられましたので、平成 27 年度第8回医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催いたします。本日御出席の委員、参考人の先生方におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本日の部会は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入る前までとさせていただいておりますので、御理解、御協力のほどお願いいたします。傍聴の方々におかれましては、静粛を旨とし、喧噪にわたる行為はしないこと、座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うことなど、留意事項の厳守をお願いいたします。

 本日の委員の出欠ですが、柿崎先生が5分ほど遅れてお見えですが、薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議は成立することを御報告申し上げます。

 今回参考人として、納得して医療を選ぶ会代表の今井先生、公益社団法人日本医師会常任理事の今村先生、公益社団法人日本薬剤師会副会長の生出先生、日本大学医学部脳神経外科の小嶋先生、埼玉医科大学名誉教授の宮尾先生に御出席いただいております。なお、柿崎先生は先ほど申し上げましたとおり5分ほど遅れるとの連絡、今井先生は議事の2番目には間に合うようにお越しいただくとの連絡を受けております。それでは、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。

 以後の議事の進行は、五十嵐座長にお願いいたします。

○五十嵐座長 これから議事を始めます。初めに、事務局から審議参加に関する遵守事項について説明をお願いいたします。

○事務局 議事参加について御報告いたします。本日御出席の委員及び参考人の方々の過去3年度における対象品目及び競合品目の製造販売業者、又は影響企業の選定理由及び当該企業からの寄付金・契約金などの受取状況を御報告いたします。当日配布資料を御覧ください。議題1、使用上の注意の改訂、ヒドロキシエチルデンプン 130000 製剤については、製造販売業者はフレゼニウスカービジャパン株式会社。競合品目は、本剤の有効成分及び作用機序と同様の製剤として、資料に掲げる品目を選定しております。ロクロニウム臭化物製剤及びベクロニウム臭化物製剤については、製造販売業者はいずれもMSD株式会社。競合品目は、麻酔時の筋弛緩、気管挿管時の筋弛緩の効能を有する製剤として、資料に掲げる品目を選定しております。ミコフェノール酸 モフェチルについては、製造販売業者は中外製薬株式会社。競合品目は、臓器移植後の拒絶反応の抑制等の効能を有する薬剤で、売上げ上位品目として、資料に挙げております品目を選定しております。

 次に、議題2、一般用黄体形成ホルモンキットについては、尿中黄体形成ホルモンの検出を目的とする医療用体外診断用医薬品で、売上げ上位品目として、資料に掲げております品目の製造販売業者を影響企業として選定しております。

 これらの競合、又は影響企業については、事前に各委員に確認を頂いておりますが、五十嵐委員より、MSD株式会社より 50 万円以下の受取り。遠藤委員より、MSD株式会社より 50 万円以下の受取り。柿崎委員より、中外製薬株式会社、アステラス製薬株式会社より 50 万円以下の受取り、MSD株式会社より 50 万円超 500 万円以下の受取り。望月委員より、中外製薬株式会社より 50 万円以下の受取り。小嶋参考人より、フレゼニウスカービジャパン株式会社より 50 万円超 500 万円以下の受取り。宮尾参考人より、MSD株式会社より 50 万円以下の受取り、フレゼニウスカービジャパン株式会社、株式会社大塚製薬工場より 50 万円超 500 万円以下の受取り。このように申告いただいたほかは、受取りの申告はありませんでした。この結果、柿崎委員を除く全ての委員におかれましては、意見を述べ、議決にも加わることができます。柿崎委員は、議題1のロクロニウム臭化物製剤及びベクロニウム臭化物製剤の審議について、意見を述べることはできますが、議決には加わることができません。これらの申告については、ホームページで公表させていただきます。審議参加に関する遵守事項についての説明は、以上です。

○五十嵐座長 ただいま御説明を頂きました審議参加に関する遵守事項について、皆さんの御了解を頂けますでしょうか。

                                  ( 異議なし )

○五十嵐座長 特に問題ないということですので、競合又は影響品目、競合又は影響企業の妥当性を含め、御了解を頂いたものといたします。では、事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○事務局 本日の配布資料一覧に基づき、説明いたします。資料1 - 1「ヒドロキシエチルデンプン 130000 製剤について」資料1 - 2「ロクロニウム臭化物製剤及びベクロニウム臭化物製剤について」資料1 - 3「ミコフェノール酸 モフェチル製剤について」です。資料2 - 1「体外診断用医薬品の一般用検査薬への転用について」という、平成 26 12 25 日に医薬食品局長より出ている通知です。資料2 - 2「黄体形成ホルモンキットに係る一般用検査薬ガイドラインの策定について」資料2 - 3「黄体形成ホルモンキットに係る一般用検査薬ガイドライン ( ) に関する意見募集の結果について」資料2 - 4「医療機器・体外診断薬部会における黄体形成ホルモンキットに関する御意見概要」資料2 - 5「黄体形成ホルモンに係る一般用検査薬の製造販売後に行う適正使用のための調査実施及びセルフチェックシートの配布について」資料2 - 6「一般用黄体形成ホルモンキットに係るリスク区分評価の流れ ( ) 」です。

 参考資料2 - 1「一般用医薬品のリスク区分の変更手順について」参考資料2 - 2「一般用医薬品のリスク区分について」です。漏れ、落丁などがありましたら、お教えください。

○五十嵐座長 皆さん、よろしいでしょうか。それでは、早速審議に入ります。議題1は、「使用上の注意の改正について」です。ヒドロキシエチルデンプン 130000 製剤の審議を始めます。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 ヒドロキシエチルデンプン 130000 の使用上の注意の改訂について説明いたします。資料1 - 1を御覧ください。1ページ目の1.品目の概要ですが、本剤は、販売名ボルベン輸液6%、効能・効果は「循環血液量の維持」とされております。続いて、2.要望書の提出の経緯を説明いたします。本剤の禁忌の項に記載があります「頭蓋内出血を有する患者[頭蓋内出血を悪化させるおそれがある。]」に関して、一般社団法人日本脳神経外科学会、公益社団法人日本麻酔科学会より、「既に止血された頭蓋内血腫患者も含まれる解釈がなされる可能性がある」との懸念から、4ページ目の別添1にあります「ボルベン輸液の禁忌事項に関する要望」が、厚生労働省医薬食品局に提出され、本記載について「頭蓋内出血中の患者」に変更する案が提案されました。

 3.にうつります。添付文書への本記載の経緯としては、本剤のCCDS及び海外添付文書に「 Patients with intracranial bleeding 」又は「 Intracranial or cerebral haemorrhage 」が禁忌事項として記載されており、その記載根拠は、海外で既に承認されていた本邦では未承認の他のヒドロキシエチルデンプン製剤をくも膜下出血に起因する脳血管攣縮治療に使用した9例で止血障害が認められ、そのうち5例で出血事象が発現し、うち3例は死亡したとの報告を受けたものとなっており、本剤の添付文書の当該項目については、CCDS及び海外添付文書に準じて、承認時に記載されたものとなっております。

 本剤の頭蓋内出血に関連した副作用報告の集積状況ですが、 2013 10 月の販売開始以降に企業から報告された副作用報告はありません。また、現在実施中の使用成績調査においても、本剤を投与した 911 例のうち、脳神経外科領域の手術に使用された症例が9例存在しており、それらの症例について HES を投与する際に出血中であった症例はなく、本剤が原因と考えられる頭蓋内出血の合併症発現は認められなかったとの報告を企業から受けております。

 次に、類薬での添付文書の記載状況を説明いたします。本剤が販売される以前から、国内で臨床使用されている HES 製剤のヘスパンダー輸液、サリンヘス輸液6%については、日本のみで承認されている製剤ですが、「使用上の注意」の「禁忌」の項に「頭蓋内出血を有する患者[頭蓋内出血を悪化させるおそれがある。]」の記載はなく、販売開始以降の自発報告において、頭蓋内出血に関連する副作用報告はないという状況です。

 以上などから、添付文書への記載経緯、公表文献、使用実態等を踏まえ、本剤の使用上の注意における禁忌のうち、「頭蓋内出血を有する患者」という記載については、出血中の患者のことであり、「既に止血している頭蓋内血腫患者」は含まないと解釈できると考えます。

10 ページ目の別添5に改訂案をお示しいたしましたので御覧ください。臨床の現場で誤解を生じない表現とするために、このとおり改訂することで差し支えないと考えております。資料の説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 今回は、日本脳神経外科学会から小嶋先生に、日本麻酔科学会から宮尾先生に、それぞれ参考人としておいでいただいております。お二人の先生方から、この要望に至った経緯について説明を頂きたいと思います。初めに、小嶋先生からお願いいたします。

○小嶋参考人 日本大学医学部脳神経外科の小嶋です。よろしくお願いいたします。今回、禁忌に関して変更の要望を差し上げた点ですが、 サリンヘス・ヘスパンダー をずっと使っているときには頭蓋内出血を有する患者という禁忌はありませんでした。新たに第3世代ということで、使用量としても多く使えますし非常に有効であるということは分かっているものでしたが、実際に現場においてはこの禁忌が付いていることから、やはり本当に使用していいのだろうかということが上がり、今回それであればその禁忌を取ってもらうか、あるいは禁忌の文言を整備していただいて、より脳神経外科の先生たちに使っていただきたいと、そういうことで、要望を挙げさせていただきました。

○五十嵐座長 宮尾先生、お願いいたします。

○宮尾参考人 麻酔科学会から来ました宮尾と申します。手術中の輸液の選択は、ほとんど麻酔科がやっています。先ほども御説明にありましたように、 40 年間使われていたサリンヘス、ヘスパンダーはほとんど日本だけでしか使われていない、すごく特殊なものでしたが、第3世代 HES であるボルベンが開発されて 10 数年たって、 2012 年に日本に入ってきました。それまでに脳神経外科の手術の患者にもサリンヘス、ヘスパンダーは普通に使われていましたし、副作用報告もありませんでした。今回、ボルベンの発売に当たって、禁忌事項に新しく「頭蓋内出血を有する患者」という文言が入ってきまして、臨床現場に少なからず混乱が生じました。また、欧米の禁忌事項をそのまま日本語に訳したことから、その訳し方が変だったのかもしれません。本来なら新しい製剤のほうが安全性が高いのですが、そういう文言が入っているせいで、いまだに多くの病院でボルベンが使えずに、古い薬剤であるサリンヘス、ヘスパンダーが使われ続けております。サリンヘス、ヘスパンダーがボルベンよりも安全であるという科学的根拠はありませんし、どちらかというと止血凝固系に対しては、ボルベンのほうがサリンヘス、ヘスパンダーよりも影響が少ないという報告もあります。文言で、「頭蓋内出血を有する患者」というと、脳神経外科の手術では手術ですから必ず頭蓋内出血は多かれ少なかれ存在しますので、ボルベンは使えないということになります。「頭蓋内出血中」とすることによって、今、欧米でもそうであるように、アクティブな出血を有していない限りは使えるのだというようにしていただかないと、患者のためにもかえって悪影響を及ぼすのではないかということで、日本麻酔科学会の理事長から要望書を出させていただいたというのが経緯です。

○五十嵐座長 それでは、お二人の御説明に対して、御意見、御質問を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。特にありませんか。よろしいですか。それでは、議決を取りたいと思います。この添付文書への記載の経緯や公表の文献、それから使用実態等を御説明いただいたわけですが、本剤の使用上の注意における禁忌のうち、「頭蓋内出血を有する患者」という記載については、「頭蓋内出血中の患者」と、より限定するということで、分かりやすい記載になると思います。したがって、事務局の提案どおり、文言の修正をしてよろしいでしょうか。それでは、事務局から今後の予定をお願いいたします。

○事務局 ただいまの御議論を踏まえ、ヒドロキシエチルデンプン 130000 製剤の製造販売業者に対して、使用上の注意を改訂しても差し支えない旨の連絡をいたします。

○五十嵐座長 小嶋先生、宮尾先生、御説明どうもありがとうございました。小嶋参考人については、以降の議題については特に御説明を頂く予定はありませんので、途中で御退席されても結構です。今日は、どうもありがとうございました。

 続いて、ロクロニウム臭化物製剤及びベクロニウム臭化物製剤の審議に移ります。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 ロクロニウム臭化物及びベクロニウム臭化物製剤の使用上の注意の改訂について説明いたします。資料1 - 2を御用意ください。本件については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構から、調査報告書が提出されております。I.品目の概要を御覧ください。ロクロニウム及びベクロニウムは、非脱分極性筋弛緩薬で「麻酔時の筋弛緩、気管挿管時の筋弛緩」を効能・効果としています。II.今回の調査の経緯ですが、重症筋無力症及び筋無力症候群の患者では、アセチルコリン受容体が減少しているため、非脱分極性筋弛緩薬の作用が亢進し、筋弛緩作用が遷延する可能性があることから、重症筋無力症、筋無力症候群の患者に対する非脱分極性筋弛緩薬の投与は禁忌とされてきました。しかしながら、平成 22 年に非脱分極性筋弛緩薬の拮抗薬であるスガマデクスナトリウムが承認され、現在では広く普及しております。重症筋無力症等の患者でも、気管挿管時及び術中の筋弛緩状態の維持に、非脱分極性筋弛緩薬は必要であり、スガマデクスが使用できるようになったことを踏まえ、公益社団法人日本麻酔科学会から、厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課に、「重症筋無力症における筋弛緩薬に関する添付文書改訂の要望書」が提出されております。こちらの要望書は、 19 ページにお示ししております。

 続いて、2.海外における状況です。英国及び米国において、重症筋無力症患者への投与は「 Contraindications 」には設定されておらず、「 Special warnings and precautions for use 」、又は「 WARNINGS AND PRECAUTIONS 」の項に、少量から投与を開始するなどの注意喚起が記載されております。

 III.機構における調査の1.関連ガイドライン等における記載状況を御覧ください。日本麻酔科学会によりまとめられた「麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン」や海外の教科書では、重症筋無力症等の患者では、非脱分極性筋弛緩薬に対して感受性が高く、少量ずつ投与する必要があると記載されています。2.国内副作用報告の集積状況を御覧ください。ロクロニウムの副作用報告のうち、原疾患が重症筋無力症等の患者の症例報告として、神経筋ブロック遷延が2例、呼吸不全が1例、重症筋無力症・麻酔からの覚醒遅延・呼吸障害が1例報告されており、いずれもロクロニウム投与との因果関係が否定できない症例でした。これらのうち3例にはスガマデクスが投与され、1例は筋弛緩状態から回復しましたが、残りの2例は再度人工呼吸による管理が必要となり重症筋無力症の悪化が疑われた症例、及び十分な回復が認められず人工呼吸による管理が必要となった症例でした。ベクロニウムについては、副作用報告はありませんでした。

 3.重症筋無力症等の患者でのロクロニウム及びベクロニウムの使用経験 ( 国内文献 ) を御覧ください。重症筋無力症等の患者へのロクロニウム投与に関する国内文献は 54 報あり、 126 例の臨床使用経験が報告されており、これらの多くがスガマデクスの販売開始以降に報告されております。重症筋無力症等の患者には、通常用量よりも低用量でロクロニウムが投与されていました。また、ほとんどの症例で筋弛緩モニターが使用され、スガマデクスによる筋弛緩状態からの回復を図ることで、筋弛緩状態の管理を行うことができたと報告されております。なお、有害事象として、筋無力性クリーゼ及び呼吸不全が各2例、呼吸困難、眼瞼下垂及び眼筋弛緩の遷延が各1例報告されていますが、呼吸不全についてはロクロニウムとの因果関係の特定が困難であり、そのほかの有害事象については、ロクロニウムの副作用とは判断されていません。重症筋無力症等の患者へのベクロニウム投与に関する国内文献として、研究報告が1報、症例報告が2報ありますが、スガマデクスを投与したとの報告はありませんでした。

 4.重症筋無力症等の患者でのロクロニウム及びベクロニウムの使用経験 ( 海外文献 ) を御覧ください。筋弛緩薬への反応は、個々の患者で異なるため、筋弛緩薬の減量が必要であること、筋弛緩モニターが不可欠であること、スガマデクスを用いた拮抗は重症筋無力症等の患者においても安全かつ有効な選択肢であることが報告されています。

 5.機構における調査の概要を御覧ください。ロクロニウムについては、欧米において重症筋無力症等の患者は禁忌に設定されておらず、国内文献では筋弛緩モニターを使用し、スガマデクスにより筋弛緩を拮抗することにより、筋弛緩状態を管理できたと報告されていることから、重症筋無力症等の患者に対するロクロニウムの投与に当たっては、筋弛緩モニター下で低用量から慎重に投与し、筋弛緩状態からの回復にはスガマデクスの投与を行うことにより、重篤な転帰を回避できると判断されています。一方、ベクロニウムについては、欧米において重症筋無力症等の患者は禁忌に設定されておらず、少数例ながら、国内外で重症筋無力症等の患者への臨床使用経験が報告されています。また、スガマデクスの添付文書には、「ベクロニウム臭化物の挿管用量投与直後に緊急に筋弛緩状態からの回復を必要とする場合の本剤の有効性及び安全性は確立していない」と記載されていますが、8ページに記載しておりますように、重症筋無力症等の患者ではないものの、ベクロニウムの挿管用量投与直後にスガマデクスを使用し、緊急に筋弛緩状態から回復させた報告があること、スガマデクスとの親和性がベクロニウムにも認められ、スガマデクスによる回復効果が確認されていることを踏まえると、ベクロニウムの挿管用量投与直後に緊急に筋弛緩状態からの回復を必要とする場合も、ロクロニウムと同様に、スガマデクスによって回復させることができると判断されています。

 以上の検討を踏まえ、機構はロクロニウム及びベクロニウムについて、重症筋無力症等の患者を「慎重投与」とし、「重要な基本的注意」の項で、重症筋無力症等の患者にロクロニウム及びベクロニウムを投与する場合には筋弛緩モニターによる確認を行い、必要に応じてスガマデクスによる筋弛緩状態からの回復を行う旨を注意喚起することが可能と判断しています。なお、スガマデクスに対して過敏症の既往歴のある重症筋無力症等の患者については、ロクロニウム及びベクロニウムを安全に使用できないため、これらの患者については「禁忌」とする必要があると判断しています。具体的な添付文書の改訂案については、 11 ページから 14 ページにお示ししておりますので、御確認ください。

 これらの機構の検討結果については、機構の専門協議において支持されております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 それでは、日本麻酔科学会の宮尾先生から、要望に至った経緯について説明をお願いいたします。

○宮尾参考人 麻酔の大きな要素として、意識を取るということと、痛みを取るということと、筋弛緩という要素があります。筋弛緩が絶対に必要な手術というのがありまして、先ほどの御説明にもありましたように、今まで非脱分極性の筋弛緩薬であるベクロニウムやロクロニウムやその前の薬もそうなのですが、重症筋無力症の患者の手術の際には、それをどうしても使わなければいけないような状況は、過去からずっとあったわけです。その薬がないと手術できなかったわけです。筋弛緩薬を投与すると呼吸ができなくなります。我々麻酔科医はそういう状況になっても、患者が呼吸をできなくても、麻酔科医が用手的に人工呼吸をしたり、あるいは人工呼吸器に付けたりすることによって、安全にその薬が切れるまで管理できますので、手術中に筋弛緩薬を使用してきました。そういう状況が、現実にはありました。海外では禁忌にはなっていないということもあり、日本では禁忌ではあったのですが、使わざるを得ないという状況がありました。今回スガマデクスという筋弛緩薬を元に戻す薬が出てから、非脱分極性の筋弛緩薬はすごく使いやすくなったので、この際、日本だけ禁忌事項に入っている重症筋無力症の患者を禁忌から外していただくのが、科学的にも、世界の趨勢から言っても正しいことではないかということを踏まえて、日本麻酔科学会から要望書を出させていただきました。

○五十嵐座長 それでは、ただいまの事務局からの御説明と、宮尾先生からの御説明に対して、御意見、御質問はありますか。

○遠藤委員 基本的には、例えば添付文書上は禁忌にしてあっても、結局医療上使わざるを得ないということになってしまうわけですよね。

○宮尾参考人 そうです。

○遠藤委員 きちんと添付文書を整備して正しく使ったほうがいいという判断ですか。

○宮尾参考人 はい、そうです。

○遠藤委員 分かりました。

○五十嵐座長 現場では、注意しながら使っていたというのが現状だということですね。

○宮尾参考人 そうです。特に普通の患者もそうなのですが、重症筋無力症の患者は、そういう筋弛緩薬に感受性がすごく高いので、少量ずつ追加していって、必要以上の薬を使わないという形で、我々も今まで使ってきたのです。

○望月委員 添付文書の改訂案については、これから説明があるという理解ですか。もう、既に説明したという理解でよろしいですか。

○五十嵐座長 ということのようです。御意見をどうぞ。

○望月委員  11/28 ページで、改訂案が書かれているのですが、先ほどの御説明で重症筋無力症の方、あるいは筋無力症候群の患者にとっても、こうした筋弛緩薬を使った上で対応していくことが、スガマデクスができたことによって可能になって、臨床上はとても有益であるということは理解させていただきました。その上で、ここの禁忌の書き方ですが、添付文書というのは比較的使い慣れていない方が最初にお読みになる説明文書になりますので、研修医の方などが読むことが多いと思うのですが、そういう方々がこのスガマデクスナトリウムが本剤の拮抗薬であるということが分かる書き方にしていただいていると、なぜここで突然「スガマデクスナトリウムに対して過敏症の既往歴のある患者」という言葉になっているのかというところが理解しやすいのかなと思います。ですので、可能であればですが、「重症筋無力症、筋無力症候群の患者のうち、本剤の拮抗薬であるスガマデクスナトリウムに対して過敏症の既往歴のある患者」というような記述にしていただくことが可能かどうか、御検討いただけたらと思います。

○五十嵐座長 いかがでしょうか。

○安全対策課長 意図を明確にということだと思いますので、その方向で、文言についてはどのようにするかはこちらで検討させていただければと思います。拮抗薬であるということが分かるような形ということで、分かりやすく対応したいと思います。ありがとうございました。

○五十嵐座長 では、その形容詞を付けるという形で御説明をしていただくことにしたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

○大野委員 1つ教えていただきたいのですが、「過敏症の既往歴のある患者」ということですが、過敏症も非常に広いわけですね。こういう形でくくってしまってよろしいのかなと思ったのですが。例えば、アナフィラキシーみたいに特別な大きな問題が起きる場合は禁忌としてもやむを得ないかなと思いますが、単に過敏症で、要は鼻水が出るだけという人も結構いるので。これはいかがでしょうか。

○安全対策課長 これは、御指摘も十分理解できるのですが、現在の添付文書の記載方法でして、1つ前の禁忌の1番を見ていただいても、過敏症の既往歴があるということで、過敏症というのはこういう形で記載をするようにしているものですから、この並びということで考えていただければと思います。

○大野委員 分かりました。

○五十嵐座長 よろしいですか。ほかはいかがでしょうか。そうしますと、この添付文書の改訂、すなわち禁忌の解除に対して、反対の方はいらっしゃらないでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議決としては、これをお認めする方向でよろしいですか。ありがとうございます。それでは、今の、機構の調査結果や国内の副作用報告状況、海外の添付文書、それからガイドラインの状況等から、「重症筋無力症、筋無力症候群の患者」に対するロクロニウム臭化物製剤とベクロニウム臭化物製剤の使用については、十分な注意と適切な備えを用意することによって、慎重に使用できると今考えているので、事務局の提案どおり、使用上の注意を改訂していただきたいと思います。それでは、事務局から、今後の予定をお願いいたします。

○事務局 ただいまの御議論を踏まえ、望月委員からコメントがありましたように、スガマデクスナトリウムが本剤の拮抗薬であるということが分かるような形にした上で、ロクロニウム臭化物製剤及びベクロニウム臭化物製剤の製造販売業者に対して、使用上の注意を改訂しても差し支えない旨の連絡をいたします。

○五十嵐座長 宮尾参考人におかれましては、御説明を頂きましてありがとうございました。以後の議題については、特に御説明を求める予定はありませんので、途中で御退席いただいても結構です。どうもありがとうございました。

 続いて、ミコフェノール酸 モフェチル製剤の審議に入ります。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 ミコフェノール酸 モフェチル製剤の使用上の注意の改訂について説明いたします。資料1 - 3を御覧ください。本件については、医薬品医療機器総合機構から調査報告書が提出されています。まず今回の背景、経緯について御説明いたします。2ページの1.国内における状況です。ミコフェノール酸 モフェチルは臓器移植後の拒絶反応の治療及び抑制に使用される免疫抑制剤です。本剤には催奇形性があるため、承認時から妊娠検査が陰性であることの確認、投与前、投与中及び投与中止後 6 週間の避妊等を注意喚起してきましたが、これまでに国内で催奇形性 ( 小耳症 ) 、自然流産及び胎児死亡各1例が報告されています。また、平成 27 年7月 31 日開催の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、公知申請に関する事前評価を受け、同日付けで「ループス腎炎」の使用に対する保険適用が認められていますが、ループス腎炎は 20 歳代から 40 歳代の女性に好発するため、妊娠可能な女性への本薬投与が増える可能性があります。このような状況を踏まえ、機構にて本薬投与に係る妊娠及び避妊に関して調査をしていただきました。

 次に3ページの2.海外における状況を御覧ください。本剤の妊娠に関する注意喚起として、米国では「 CONTRAINDICATIONS 」の項に、妊婦及び妊娠可能な女性は設定されておりませんが、「 PRECAUTIONS 」の項に避妊及び妊娠検査に関する注意喚起が記載されており、「 WARNINGS 」、「 Pregnancy 」及び「 Postmarketing Experience 」の項に、妊娠中に本剤を投与された患者から生まれた児に、耳、顔面、心臓、神経系の先天性異常の報告があることが記載されています。欧州では効果的な避妊を行っていない妊娠可能な女性、妊娠検査が陰性ではない妊娠可能な女性、適切な代替治療がない場合を除く妊婦が「 Contraindications 」に設定されています。また、「 Special warnings and precautions for use 」の項に、流産と先天性異常のリスクの増大、避妊及び妊娠計画に関する注意、「 Pregnancy and Lactation 」の項に妊娠検査の実施、先天性異常及び流産の報告が記載されています。

 3ページのIII.製造販売業者より提出された資料等の概略を御覧ください。国内外で、耳、眼、顔面、指、心臓、食道、神経系の先天異常が集積しています。また、欧州の European Teratology Information Services には、本薬に曝露した妊婦 57 例が集積しており、 16 例が流産、 12 例が選択的中絶、 29 例の児が生産であり、8例に催奇形性が認められたと報告されています。米国の移植妊娠登録機関には、本薬に曝露した妊婦 97 例が集積しており、 48 例が流産し、 48 例の児が生産、 11 例に催奇形性が認められたと報告されています。

 4ページのIV.機構における調査の概略を御覧ください。まず1.妊娠する可能性のある婦人への投与についてです。本薬曝露中の妊娠を避けるため、確実な避妊法の実施に加え、定期的に妊娠検査を実施することを「警告」の項に追記する必要があると判断されています。また、避妊及び妊娠検査の実施を徹底し、妊婦への曝露を回避することにより、ループス腎炎の患者に対しても本薬による治療の機会を提供できると判断されています。

 次に2.投与中の定期的な妊娠検査実施についてを御覧ください。現行の添付文書では「重要な基本的注意」の項に、投与前の妊娠検査が記載されていますが、本薬の妊婦への曝露の回避を徹底するため、「重要な基本的注意」の項に定期的に妊娠検査を実施し、妊娠していないことを確認すること、妊娠が疑われる場合には直ちに担当医に連絡することを追記することが適切であると判断されています。

 続いて3.催奇形性についてです。現行の添付文書では「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項に、耳の奇形について記載されていますが、国内外で、眼、顔面、指等の先天異常が報告されていることから、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項にこれらの催奇形性の報告を追記すること、「重要な基本的注意」の項に関連する注意を追記することが適切であると判断されております。

 5ページの4.流産についてです。現行の添付文書では流産に関する注意喚起は記載されていませんが、国内でも流産及び胎児死亡が1例ずつ報告されていること、公表文献で報告されている流産の頻度は一般的な流産の頻度を大きく上回っていることから、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項に「本剤を服用した妊婦における流産は 45 49 %との報告がある」と追記することが適切と判断しています。以上の検討を踏まえた添付文書の改訂案を 19 ページ以降にお示ししておりますので、御確認ください。

 これらの機構の検討結果については、機構の専門協議において支持されております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 今の事務局の説明に対し、御意見、御質問を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○柿崎委員 今回の改訂とは直接関係ないのですが、この薬剤を男性患者が服用していた場合の胎児への催奇形性は報告されているのでしょうか。

○事務局 そういった報告はございません。

○望月委員 お若い妊娠する可能性のある女性であっても、ループス腎炎等で本剤がとても重要な役割を果たすということで、そこはよく理解できました。それから、添付文書の書き方についても、妊娠の可能性を定期的に検査する等の注意喚起がされているということで、医療従事者に対する注意喚起というのは、それで徹底できるかなという感じがいたします。

 ただ、当の御本人に対する意識付けということに関して、どのような感じで行われるのかというか、患者向けの説明書のようなものが何かの形で提供されるのかとか、その辺りについて教えてください。

○事務局 患者向けの資材は製造販売業者が用意しており、それを患者に配り、避妊の重要性、催奇形性についても患者様に御理解いただけるような対応を取っております。

○望月委員 そのことに関して、添付文書に「患者向けの資材を提供する」とか、そのような説明文というのは御用意されているのでしょうか。

○安全対策課長  20 ページを御覧いただきますと、使用上の注意の「重要な基本的注意」の ( ) というのがあり、そこで、患者に「次の注意事項についてよく説明し理解をさせた後、使用すること」とされており、そのための資材を用意するということです。

○望月委員 ありがとうございます。

○五十嵐座長 ほかはいかがでしょうか。若い方のループスは病気の活動度が高いので、このような薬剤が使用できることは臨床上有用であるため承認されているわけです。さらに、治療にて病気のコントロールが良くなると妊娠を望む方も当然いらっしゃいますので、今回の注意喚起は大変重要ではないかと思いますが、ほかに御意見はありませんでしょうか。よろしいですか。

 それでは、基本的にはこのような添付文書の改訂をするという方向性で、皆さん御承認いただけますでしょうか。よろしいですか。

 ありがとうございます。では、機構の調査結果、国内の副作用報告状況、海外の文献情報及び添付文書等から、ミコフェノール酸 モフェチル製剤につきましては、「妊娠する可能性のある婦人」に対して、より適正に使用されるように、事務局案どおりに添付文書を改訂したいと思います。事務局から今後の予定をお願いいたします。

○事務局 ただいまの御議論を踏まえまして、ミコフェノール酸 モフェチル製剤の製造販売業者に対し、添付文書の改訂手続を進めさせていただきます。

○五十嵐座長 続いて、一般用のキットである黄体形成ホルモンキットのリスク区分の審議に移ります。事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 議題2「一般用黄体形成ホルモンキットのリスク区分」について御説明いたします。資料2 - 1から資料2 - 6に基づき、順に御説明させていただきます。

 まず、資料2 - 1を御用意ください。こちらは平成 26 12 25 日に発出した「体外診断用医薬品の一般用検査薬への転用について」という通知です。この通知が発出された背景としては、平成 26 年6月に閣議決定された規制改革実施計画において、「医療用検査薬から一般用検査薬への転用の仕組みの早期構築」について検討することとされたためです。この閣議決定を踏まえ、薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会において一般用検査薬の転用の仕組みの在り方について検討が行われ、本通知が発出されたという状況です。

 転用の仕組みを御説明いたします。2ページの上から 10 行目辺りのア「業界における検討」を御覧ください。まず、業界において、一般用検査薬として取り扱う際の使用上の注意、使用方法、性能等を盛り込んだ評価の指針、ガイドライン ( ) を作成し、厚生労働省に提出することとなっております。続いて、イです。提出された案について、厚生労働省及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構において評価を行うこととしております。ウですが、評価を踏まえて医療機器・体外診断薬部会において議論を行うこととなっています。エですが、その後パブリックコメントを実施した上で、再び医療機器・体外診断薬部会で御議論いただいた上、ガイドラインとして作成し通知するといった流れになっております。現在、ここまで対応が終了しているという状況です。

 2ページの一番下の2行です。「使用者に提供すべき情報等を踏まえ、医薬品等安全対策部会において一般用医薬品のリスク区分について議論する」となっており、本日は、このリスク区分について御議論いただきたいと考えております。

 続いて、資料2 - 2を御用意ください。こちらは先月、2月 22 日に策定された黄体形成ホルモンキットに係る一般用検査薬ガイドラインです。先ほど「業界においてガイドライン ( ) を検討する」と申し上げましたが、こちらのガイドライン ( ) の提出者は、一般社団法人日本臨床検査薬協会です。下にページ番号1と書いてあるページを御覧ください。一般的名称は「一般用黄体形成ホルモンキット」です。その定義は、2.にあるとおり、生体中の尿検体を用いて、使用者自らが黄体形成ホルモンの検出を目的としたキット、使用者が自ら検体を採取し、排卵日予測の補助として使用されるもの。使用目的は、尿中の黄体形成ホルモン ( LH ) の検出 ( 排卵日予測の補助 ) となっております。

 また、添付文書案が別紙2に示されております。5ページを御覧ください。一番上に〈使用上の注意〉「してはいけないこと」という欄がございます。後ほど御紹介したいと思いますが、パブリックコメントや医療機器・体外診断薬部会において、「避妊目的という適応外使用がされるのではないか」という懸念の指摘があり、避妊の目的で用いてはいけないということを強調して示すということとなっております。

 続いて、資料2 - 3を御覧ください。本ガイドラインの検討に当たり、パブリックコメントが実施されており、その御意見の概要と厚生労働省の考え方をお示しした資料です。こちらはガイドラインの策定と同日、2月 22 日に公表したものです。1枚おめくりください。左側に頂いた御意見等を、右側に当省の考え方をお示ししております。右側の当省の考え方の上から6行目、2以降を御覧いただければと思います。

 先ほど御紹介しました「避妊目的という適応外使用がされるのではないか」という御懸念に対し、添付文書において避妊に使用できないことを明確化するとともに、製造販売業者に対し、説明資材を作成させ、販売時に説明を十分に行わせること、3で、適正に使用されたかを確認することを目的として、承認後に調査を行うこと、4で、適正使用に資するチェックシートを用意することなどをお示ししております。

 次のページです。4番ですが、「販売者への説明は必須でも、購入者へは必須としないでほしい」といった御意見も寄せられております。

 続いて、資料2 - 4を御用意ください。本ガイドラインが了承された本年1月 15 日開催の医療機器・体外診断薬部会での御議論のうち、適正使用調査やリスク区分に関する御意見を概要としてまとめたものです。1つ目ですが、「適正使用調査、製造販売業者の薬局に対しての適正使用に係る説明の確認調査、チェックシートについて、PDCAサイクルを回して改善できるよう、中間報告や最終報告を医療機器・体外診断薬部会にしていただきたい」。2つ目として、「本品目のリスク区分については、従来の内服薬におけるリスク区分とはまた違うと思うが、薬剤師が説明しなければならないことが多々あるような気がするので、第一類医薬品に該当するのではないか」、3つ目として、「本品目のリスク区分については2年間の適正使用調査等を実施するので、2年後に再検討すると思われるが、その際にも、適正使用調査等の結果を踏まえて十分議論をしていただきたい」といった御意見が寄せられております。

 続いて、資料2 - 5を御用意ください。1ページ目は本品目の適正使用調査等について、1月 15 日の医療機器・体外診断薬部会において決定された概要をお示ししたものです。3つの事項を実施すべきとされております。

 1つ目は検査薬の購入者が適正に使用しているかの実態を把握するための2年間の適正使用調査、2つ目は「チェックシート」の上に「※」で書かれている所ですが、薬局に対して適正使用に係る説明の確認調査、3つ目は検査薬の購入者が自ら使用目的を確認可能とするためのチェックシートの配布です。これらの3つの調査等について、1ページ目の内容を踏まえ、調査シートをイメージしたものを2ページ目以降にそれぞれ添付しています。

 以上を踏まえて、資料2 - 6「一般用黄体形成ホルモンキットに係るリスク区分評価の流れ ( ) 」を御覧ください。本日の審議については、一番左のガイドライン制定のすぐ横にある「安全対策調査会」に位置しており、制定されたガイドライン等に基づいて、本品目のリスク区分を御検討いただきたいと考えております。ただいま御紹介しましたように、医療機器・体外診断薬部会での御議論において、2年間の適正使用調査等の実施が必要であるとされたことも踏まえ、資料の中心の「適正使用調査2年」とある欄に記載されているとおり、まずは第一類医薬品に指定することとしてはどうかと考えております。

 その後、個別に品目が承認され、2年間の適正使用調査等の終了後、その結果を踏まえて適正使用調査の右側にあるとおり、改めて本調査会においてリスク区分の検討をお願いしたいと考えております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 事務局から、先日行われた医療機器・体外診断薬部会の議論の様子についても御説明を頂きました。

 それでは、御専門でもあり、日本医師会の常任理事である今村参考人と、部会の審議に実際に出席されておられた、納得して医療を選ぶ会代表の今井参考人、同じく日本薬剤師会の副会長である生出参考人から、追加や補足、御意見がございましたら頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○今村参考人 基本的には御説明いただいたとおり、第一類に分類した体外検査薬ということでよかろうと思います。ただ、こういうことまでして、本当は一般用の検査薬として販売しなければいけないかどうかということについては、当初説明を受けたときには疑義がございました。そういうこともありまして、日本医師会の他の担当役員、産科婦人科学会、産婦人科医会の先生方とも十分に協議をして、こういったような形での対応もやむを得ないというか、今の時点ではそうせざるを得ないのではないかと。そして、2年間の試行というか、そういうことも設けていますので、その折にはしっかりとした対応をしていただきたいと思っております。以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか、今井参考人はいかがですか。

○今井参考人 今の時点で申し上げるのが適切な内容か判断が付かないのですが、まず1つは製品そのもののリスクという点で考えた場合、本来の目的どおりに使った方にとって最悪の状況というのは、「妊娠しない」ということになると思うのです。そういう意味で、検査薬と医薬品というのは違うとは思うのですが、リスクという点でものすごく高いとは、私は思いにくいと思っています。

 それから、またこれも科学的根拠のある意見ではないので申し訳ないのですが、使い手の方がどう行動するかを考えたときに、体外診断薬部会では「避妊目的で使われるのではないか」という御懸念が非常に出たのですが、一般の方というのはコストが安いか、手間がかからないかということで行動することが多いと思うのです。その場合、この検査薬を使用するという方法が、どちらの点でもメリットが余りないのです。コンドームだったら、当日使えばいいけれども、これは毎日検査をしなければなりません。しかも確実性がなく、もし確実にしたい方は低用量ピルという手段もあります。ですから、本当にどれだけの方が避妊目的でこの製品を見るかというのは、私は微妙だと思っており、むしろ全てのチェックシート等で、「あなたは避妊目的ではないですね」ということで、「避妊に使える」という意識を喚起してしまう恐れもあります。ですから、この製品がもし承認された日には、そろそろ赤ちゃんがほしいというような、一体何のために使うのかを前面に出してもっていくほうがいいのではないかと、私個人としては考えています。

○五十嵐座長 ありがとうございます。生出参考人、お願いします。

○生出参考人 薬剤師会の生出です。資料2 - 4の2番目の○にあるように、先ほど今井さんからも話がありましたが、内服薬のリスク区分とは、意味は違うのですが、従来、薬局医薬品ということで、薬局の調剤室の中に保管し、顧客からの要請により薬剤師が説明して販売していた形態のものを、今後薬局の店頭に移っていくということになると、ある程度いろいろな形で生活者の方々からの質問に答えることができるような専門職である薬剤師が必要だろうと思います。そういう観点から、まずは第一類医薬品という形で販売されるのが妥当で、資料2 - 6の流れのとおり適正使用調査の2年間、少なくとも2年間は第一類医薬品ということは妥当だと判断しております。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 お三方の貴重な御意見を頂きましたが、委員の先生方から御質問、御意見はいかがでしょうか。

○望月委員 一般用検査薬ということですので、一般用の医薬品とは違うという御説明が今もありましたが、実は一般用の医薬品に将来なる可能性のある医薬品について、要指導医薬品等に置いて販売を開始する際には、将来的には添付文書自体がきちんとユーザーに御理解いただける内容になっているかを調べてみることが必要ではないかということが、医薬品のほうでは議論があり、そういうことが実施されていく可能性があると私は聞いております。この一般用検査薬について正しく理解をして、正しく御使用いただけて、正しく判定できるかということについて、先ほどの御説明ですと資料2 - 5のような形で、販売を開始してから一定期間の間、適正使用調査と、購入者の確認のためのセルフチェックシート配布を行うということになっております。

 このチェックシートの中には、「してはいけないこと」、「相談すること」から抜粋したこととか、実際に使用してみて自分で正しく判定ができたかとか、そういうことが書かれておりますが、これが使い終わった後に回収されるという調査方法を取られるという形になっております。今、資料の2 - 2に添付文書案が4ページ目から書かれているのですが、これを先ほど今井参考人がおっしゃいましたが、排卵をチェックすることにどういう意味があるのか、避妊ではない目的で使うキットであるということを、この文書からきちんと理解していただけているのかどうかなどを確認する。本来であれば事前にこの文書でユーザーに理解していただいて、正しく使っていただけるかということを確認をしたほうがいいのではないかと感じました。

○事務局 御指摘ありがとうございます。今の望月委員の御指摘は、添付文書の理解度調査のようなことを申請前なり、事前にしたほうがいいのではないかという御指摘と理解しておりますが、今回業界において、ガイドラインの案が提出されるに当たり、理解度調査が実施された上で、添付文書を含むガイドラインの案が厚生労働省に提出されております。

 そして、またその理解度調査の結果も考慮した上で、PMDAにおけるガイドラインへの評価、医療機器・体外診断薬部会における議論がされているという状況です。

○望月委員 ありがとうございます。

○五十嵐座長 7月までにまだ少し時間があるので、資料2 - 2の4ページから 11 ページの添付文書案の理解度調査をされるということですか。

○事務局 既に理解度調査がされて、このガイドライン ( ) が作られているということです。

○五十嵐座長 分かりました。ほかはいかがでしょうか。

○柿崎委員 先ほど、手間とコストによって使用頻度も変わるということだったのですが、参考までにこれは幾らぐらいの値段で販売される予定なのでしょうか。

○事務局 申し訳ございません、価格までは承知しておりません。

○大野委員 資料2 - 3の4のコメントで、「販売者への説明は必須でも、購入者へは必須としないでほしい」という御意見があったということですが、この意見の理由などが付いていたと思うのです。一応、頭に入れておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○事務局 こちらの御意見については、使用者側から使いやすい環境にしてほしいというような意図があっての御意見だと理解しております。

○大野委員 サリドマイドの検討をしたときに、女性の方がプライバシーのことを聞かれたりすることに非常に sensitive な人も随分いるということだったので、多分そういうこともあって、こういう意見が出たのかなと思うのですが、そういうことも将来、2年後には踏まえて、どういう形でやっていくかを考えたほうがよろしいのかなと思いました。

○事務局 御指摘ありがとうございます。医療機器・体外診断薬部会の議論においても同様の御指摘を先生から頂いております。審査部局とともに御指摘を踏まえて検討していきたいと思っております。

○五十嵐座長 ほかはいかがでしょうか。

 そういたしますと、これから議決を取りたいと思いますが、基本的には事務局案に賛成という考えでしょうか。よろしいですか。

 それでは、一般用黄体形成ホルモンキットのリスク区分につきましては、第一類の医薬品とするということにしたいと思います。特に御異議がないようですので、事務局から今後の予定をお願いいたします。

○事務局 御審議いただき、ありがとうございました。ただいま御審議いただきました結果に基づき、パブリックコメント実施のための手続を進めさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

○五十嵐座長 本日予定している議題は以上ですが、事務局から何かほかにございますでしょうか。

○事務局 特にごさいません。

○五十嵐座長 では、本日の調査会はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)> 平成27年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録(2016年3月16日)

ページの先頭へ戻る