ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)> 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録(2015年9月11日)




2015年9月11日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

○日時

平成27年9月11日(金)16:00~


○場所

厚生労働省講堂


○出席者

出席委員(19名) 五十音順

◎荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、○一 色 高 明、 今 井 聡 美、
  梅 津 光 生、 生 出 泉太郎、 塩 川 芳 昭、 正 田 良 介、 
  鈴 木 邦 彦、 武 谷 雄 二、 田 島 優 子、 千 葉 敏 雄、
  寺 崎 浩 子、 中 島 康 雄、 中 谷 武 嗣、 新 見 伸 吾、
  濱 口   功、 菱 田 和 己、 桃 井 保 子
 (注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人1名

欠席委員(4名)五十音順

 石 井 明 子、 川 上 正 舒、 齋 藤 知 行、 村 上 輝 夫

行政機関出席者

 成 田 昌 稔 (大臣官房審議官)
 宇 津    忍 (安全対策課長)
 磯 部 総一郎 (大臣官房参事官)
 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 佐久間 一 郎 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)
 俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 他

○議事

○参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当) 本日も大変お忙しい中、「薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会」のために御参画いただきまして、ありがとうございます。これから開催をしたいと思います。

 本日は、医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、現時点で18名の御出席を頂いておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを、まずは御報告したいと思います。よろしくお願いします。

○事務局 次に、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日の議題については医療機器の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容が含まれるため、非公開といたします。それでは、以後の進行について、荒井部会長、よろしくお願いいたします。

○荒井部会長 それでは、最初に、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

○事務局 それでは、非公開案件について資料の確認をさせていただきます。資料1が医療機器「da Vinci サージカルシステム」及び「da Vinci Si サージカルシステム」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定について、資料2-1が医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について、資料2-2が医療機器プログラムのクラス分類の考え方について、資料3-1が医療機器「ディスポーザブルハンドピース」の再審査結果について、資料3-2が医療機器「RFAシステム」の再審査結果について、資料4が競合品目・競合企業リスト、最後に、参考資料1が薬事分科審議参加規程となっております。また、当日配付資料1として審議品目の専門協議委員リスト、当日配付資料2として議題1に関する正誤表、当日配付資料3、4として議題1に関して修正があった箇所を反映した添付文書となっております。資料の確認は以上になります。

○荒井部会長 ありがとうございました。資料はよろしいでしょうか。よろしければ、これから議題に進ませていただきます。本日の審議事項に関与された委員と利益相反に関する申し出状況につきまして、事務局のほうから報告をお願いいたします。

○事務局 本日の審議事項に関する影響企業について、委員の皆様から寄付金・契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、議題1につきまして、薬事分科会審議参加規程第12条の「審議不参加の基準」又は第13条の「議決不参加の基準」に基づき、審議・議決に御参加いただけない委員はおりません。

 議題2につきまして、委員より寄付金・契約金等の受取の申告がありましたが、これは薬事分科会審議参加規程第18条の「個別の医薬品等の承認審査や安全対策に係る審議以外の審議」に該当しますので、部会後に厚生労働省のホームページ上で公開することをもちまして、審議及び議決に加わることができることとなっております。以上、御報告いたします。

○荒井部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、御意見等ございますか。よろしいですか。よろしければ御了解いただけたものといたしまして、議題に進ませていただきます。

 それでは、議題1、医療機器「da Vinci サージカルシステム」及び「da Vinci Si サージカルシステム」の製造販売承認の可否等について、審議を行います。本議題の審議に当たりましては、参考人として、医療法人社団愛友会上尾中央総合病院心臓血管センター長の手取屋岳夫先生に御出席いただいております。先生、よろしくお願いいたします。まず、審議品目の概要につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 議題1につきまして、事務局から御説明いたします。資料1を御覧ください。1枚目が諮問書となっております。本議題では、医療機器「da Vinci サージカルシステム」及び「da Vinci Si サージカルシステム」の製造販売承認の可否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、及び使用成績評価の指定の要否について御審議いただきますが、それに先立ちまして、本品の審査の背景について御説明いたします。機構の担当者、よろしくお願いいたします。

○機構 機構より説明いたします。まず当日配付資料1の専門協議委員一覧を御覧ください。本審査に当たり、資料にお示しする3名の専門委員の御意見を頂きました。また、当日配付資料2、3及び4を御覧ください。事前に配付しました審査報告書及び添付文書に修正がございますので、正誤表にてお示しいたします。お詫び申し上げます。

 品目の概要について説明をいたします。審査報告書5ページ下段の2.審議品目の概要を御覧ください。以降、「da Vinci サージカルシステム」を申請品目1、「da Vinci Si サージカルシステム」を申請品目2、これら2品目を合わせて「本品」と言い換えて説明いたします。本品は、一般消化器外科、胸部外科(心臓外科を除く)、泌尿器科及び婦人科の各領域において、内視鏡下での組織又は異物の把持、切開、鈍的/鋭的剥離、近置、結紮、高周波電流を用いた切開・凝固、縫合及び操作、並びに手術付属品の挿入・運搬を行うために、術者の内視鏡手術器具操作を支援する装置です。

 審査報告書6ページの図1を御覧ください。本品は、術者が操作するサージョンコンソール、専用ジグで実際に施術をするペイシェントカート、ビジョンカート及びその他付属品から構成されます。申請品目にはサージョンコンソールの小型化、ビジョンカート及びステレオビューワの解像度の向上、操作パネルやスイッチケーブルの導入、デュアルコンソールの導入が申請品目1と異なります。

 本申請に至った経緯について説明いたします。審査報告書9ページの中段を御覧ください。申請品目1は平成211118日に、申請品目2は平成241018日に、心臓外科を除く適用が承認されました。承認後に実施された国内臨床試験で、心内操作を行う代表的手技である僧帽弁形成術及び心房中隔欠損症閉鎖術が評価されたため、「心臓外科(心内操作を行う手術に限る)」を適用範囲に追加する本一変申請に至りました。

 次に、本品の国内外での使用状況について説明いたします。審査報告書10ページの表2を御覧ください。本品は、米国及び欧州では平成20年頃から心臓外科に適用されています。平成2612月までの販売台数は、国内外の全診療科を合わせて申請品目1で台、申請品目2で台となっております。

 審査報告書11ページの1)を御覧ください。国外では、死亡例として申請品目1に例、症例全体の0.00467%、申請品目2に例、症例全体の0.00603%で確認されていましたが、調査可能なものにつきましては、担当医師により機器との因果関係が否定されています。

 審査報告書11ページの2)を御覧ください。国内では、申請品目1を一般消化器外科において使用した際に死亡例が1例確認されており、当該死亡例は医療事故として扱われています。担当医師は、トレーニングを受講したものの、ロボット支援内視鏡下手術に熟知したプロクターの指導を受けておらず、独自の手術を施行しておりました。事故調査報告書において、プロクターの指導なく本品を許可した病院のシステムが、本有害事象を誘発させたと指摘されており、国内ではそれを契機としてプロクター制度が導入されました。また、本品の誤動作に起因する有害事象が発現しておりますが、本品の回収後に同様の有害事象が発現していないことを申請者によって確認されています。

 続きまして、本品の臨床成績について説明いたします。審査報告書2526ページの表10を御覧ください。以降、僧帽弁形成術を「MVP」、心房中隔欠損症閉鎖術を「ASD」、胸骨正中切開術を伴う心臓外科手術を「従来法」と言い換えて説明させていただきます。本一変申請では、MVP、ASDを対象とした米国臨床試験及び国内臨床試験が提出されました。被験機器としては、米国臨床試験では申請品目1の前世代品である旧モデルが、また、国内臨床試験では申請品目1が使用されました。

 まず、米国MVP試験について説明いたします。審査報告書2627ページの表11及び27ページの表12を御覧ください。米国MVP試験では、術前に重度であった僧帽弁逆流が、術後1か月に軽度であった場合を手技成功とし、手技成功率について従来法のMVPとの同等性が評価されました。なお、手技成功率は審査において再度評価しているため、後ほど有効性の論点にて説明いたします。また、重篤な有害事象のうち5件は旧モデルとの因果関係は否定されませんでしたが、本品の故障又は誤動作は発現していませんでした。その他有害事象は臨床試験担当医師から旧モデルとの因果関係が否定されました。

 米国ASD試験について説明いたします。審査報告書3132ページの表20を御覧ください。米国ASD試験では、術直後と術後6週において欠損孔が閉鎖されていた場合を手技成功とし、手技成功率は93.3%であることが示されました。また、臨床試験担当医師によって全ての有害事象は旧モデルとの因果関係が否定されていました。

 続きまして、国内臨床試験について説明いたします。審査報告書33ページ、表23の下からの国内臨床試験(国内補完試験)を御覧ください。国内臨床試験では、本品未経験の臨床試験担当医師がトレーニング及びプロクターの指導を受け、有効性達成基準である5症例連続で手技成功が達成でき、かつ、手技成功率が90%を上回ることを達成できるかが評価されました。また、安全性として主要心事故(MACE)の発現率が評価されました。

 まず、国内MVP試験について説明します。審査報告書34ページの().を御覧ください。国内MVP試験では病変部を縫合できることが手技成功とされ、有効性達成基準を満たしていることが示されました。MACEである脳梗塞及び左心耳出血が確認されましたが、臨床試験担当医師によって申請品目1との因果関係が特定されませんでした。また、全例で僧帽弁逆流の軽減が確認されました。

 国内ASD試験について説明します。審査報告書36ページの2.を御覧ください。国内ASD試験では欠損孔の縫合ができることが手技成功とされ、有効性達成基準を満たしていることが示されました。MACEは確認されませんでした。また、全例で欠損孔の閉鎖が確認されました。

 続きまして、本品の審査における主要な論点について説明いたします。一つ目の論点は、本品の臨床的位置付けについてです。審査報告書38ページ上段の機構の見解を御覧ください。本品を使用したMVP及びASDは、手技成功時には胸骨正中切開術を避けられるメリットがあるため、従来法と同等の治療成績が得られる場合は、本品の使用を治療選択肢の一つとして医療現場へ提供する臨床的意義はあると考えました。

 二つ目の論点は、本品の有効性及び安全性についてです。まず米国臨床試験を国内に外挿することについてですが、米国臨床試験と国内臨床試験の試験機器の比較及び国内臨床試験の妥当性の評価から検討し、妥当であると判断しました。

 それでは、有効性について説明します。審査報告書45ページ下段の機構の見解を御覧ください。米国MVP試験における手技成功率の解析は、プロトコル逸脱例5例が含まれていたため、申請者に再解析を要求しました。結果は審査報告書43ページの表37に記載してあります。全症例を対象にしたITT群は、従来法の推定手技成功率92%を下回りましたが、プロトコル逸脱例を除外したPPS-2群においては従来法を上回りました。これを受けまして文献調査を追加で実施しました。その結果、本品を使用したMVPの現在の治療成績ですが、従来法と同等であることが示されていました。

 審査報告書46ページの中段を御覧ください。米国ASD試験においては従来法との比較検討はありませんでしたが、手技成功率は93.3%であり、国内のASD試験では全例で治療効果が確認されたことから、従来法と同様のASDが可能であると考えました。

 以上のことから、術者がトレーニング及びプロクターの指導を受ける場合は、本品を使用したMVP及びASDは従来法と同様に有効であると考えました。

 次に、安全性について説明します。審査報告書47ページ中段以降の機構の見解を御覧ください。国内外の使用状況及び臨床試験において発現した有害事象は、そのほとんどにおいて、担当医師によって機器の故障や誤作動等の機器との因果関係が否定されていました。また、審査報告書48ページ中段の2.に整理しましたが、文献調査においても、本品を使用した症例において、特定の有害事象が上昇しているといった臨床上の問題は報告されていませんでした。しかしながら、本品は内視鏡下手術を支援する装置であり、視野が限定され間接操作であることから、本品使用中の各種状況に適切に対処できる知識が必要であると考えます。以上から、本品を心臓外科において使用する際のリスクは、トレーニング及びプロクター制度が徹底されている場合は、臨床的に許容可能だと判断しました。

 三つ目の論点は、使用目的についてです。審査報告書49ページ中段の機構の見解を御覧ください。MVP及びASDは、心停止下で心内操作を行う手技の代表的なものであることを考慮し、本品の使用目的には心臓外科(心停止下で心内操作を行う手術に限る)を追加することが妥当と判断しました。

 四つ目の論点は、製造販売後安全対策についてです。審査報告書51ページ下段の機構の見解を御覧ください。まず申請者が提供するトレーニングについてですが、国内外の治療成績から本品の操作を習熟させる実績があると考えます。次に、プロクター制度ですが、国内臨床試験等を考慮して、心臓外科関連学会と協力して検討し、また適正使用指針を作成して、プロクター制度を医師及び医療チームに遵守させる必要があると考えます。さらに、他の術式へ移行等の処置が遅延なく行えるよう、実施施設に対する要件が必要であると考えます。なお、プロクター制度及び実施施設基準を含めた適正使用指針は、心臓外科関連学会において作成中です。申請者が示す本品の安全な導入計画は、トレーニングの実施及びプロクター制度の導入を徹底していると考えられるため、受入れ可能と判断しました。

 最後に、五つ目の論点ですが、製造販売後使用成績調査についてです。審査報告書52ページ下段の機構の見解を御覧ください。国内臨床試験及び文献調査では、国内外においてトレーニング及びプロクター制度に従って適切に使用すれば、従来法と同様に使用できることが示されています。また、本一変申請において本品の構成に変更はないため、これまでに国内外で発現した機器との因果関係のある有害事象に対しては、これまで行っている回収等によって適切に対応されていると考えます。さらに、本品の安全性情報は学会レジストリーで収集され、製造販売後の安全対策に活用される予定です。以上から、製造販売後に心臓外科において国内特有の本品に由来する新たな有害事象の発現は想定されないと考えます。薬機法に従った不具合報告によって安全性情報が確認できると考えるため、心臓外科への適用に当たり、使用成績評価の指定は不要と判断しました。

 以上の審査を踏まえ、機構は、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議頂くことが適切と判断しました。生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しました。なお、薬事分科会では報告を予定しております。

 ここで、事前に荒川委員から受けた質問に対して回答させていただきます。質問は、審査報告書30ページ表19においてのものです。大動脈遮断時間がSTSデータの85.5分に対し、米国MVP試験では124.1分と有意に長くなっています。このことによる無症候性の脳梗塞や認知症機能低下等評価を行っていないか。また入院日数の短縮が評価されていますが、この疾患の治療においてどれほどのメリットがあるのかといったものでした。

 まず、無症候性の脳梗塞や認知機能低下の評価についてですが、米国のMVP試験においては行われていませんでした。大動脈遮断時間が長時間であることは審査においても懸念していたところです。米国MVP試験当時は、本品についてトレーニング及びプロクター制度も徹底されていませんでした。そのため術者は独自の手技を行い、その結果、大動脈遮断時間が長時間になったと考えられます。また、旧モデルを使用したMVPにおいては、ラーニングカーブがあることが確認されていますし、先ほど説明させていただいた文献調査におきましては、平成23年のスリ等の報告においては、大動脈遮断時間の平均は本品群で75分に短縮されています。

 さらに、当日配付資料3及び4に示しました添付文書の2/4ページ、左側中段の3.使用方法に関連する使用上の注意の()を御覧ください。ここにお示ししたとおり、本品使用時には手術時間や人工心肺装置の使用時間が長くなる、また、組織の癒着等によって不適切な解剖認識を誘発する可能性もあるということが考えられますので、心臓外科手術に際しては従来法も考慮し、最適な術式を選択することというのを注意喚起しております。以上から、先ほど御説明させていただきましたトレーニングの実施及びプロクターの指導を受けることで、使用経験を積めば、臨床上、許容可能な大動脈遮断時間で本品が使用されると考えます。

 また、入院日数についてですが、それだけをもってメリットを検討するというのは非常に困難でした。しかしながら、胸骨正中切開術やミニ開胸を伴う従来法と比較してみますと、本品は内視鏡手術ですので切開部が小さいということは考えられると思います。ですから、現時点では期待される範囲ではあるのですが、患者の手術の負担は少ないと考えられると思います。

 機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いします。

○荒井部会長 それでは、まず初めに、参考人の手取屋先生から御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。

○手取屋参考人 審査に際しまして、参考人として携わっておりましたが、今、機構から説明があったとおり、本品はda Vinciがこの国に導入した際に、心臓外科だけ置いていかれたような形になったのですが、もともとは開発時、細かい血管を縫うという作業をロボットで、より正確にやるという、そういう発想で設計、開発されたものです。その意味では、従来のものが置かれていって、ほかのものが伸びていったという歴史的な経緯があります。その中で、やはり心臓手術の場合は、低侵襲と申しましても、人工心肺という、全く次元が違う侵襲というものを、常に患者に課さなければならないというものがあります。そういったような意味で、ほかの外科の分野から比べると、極めて内視鏡手術、いわゆる鏡視下手術というような部分が遅れていました。

 そういった歴史的な中でda Vinciが登場したところで、いきなりこの低侵襲が成り立つわけもなく、当時、多分本邦でも、いわゆる低侵襲手術と言って、胸骨を切らない手術、これが本当に低侵襲かどうかは、いまだにいろいろ言う方もいらっしゃいます。私自身も本当かと思いながらやっています。しかし、感染率やいろいろな意味で、患者さんのメリットが大きいということは、良く分かっていながら、毎日ストラグルしていますが、こういったものに移行するのに、歴史的にも、準備が心臓外科領域に、特にこの国の場合には不十分であったということが否めません。この期に及んで我々の分野でも、限られた施設ではありますが、低侵襲手術が活発になりまして、その認知も増えてまいりました。その中で、da Vinciのこの使用をこの領域にも是非いかしていきたいという思いがあります。

 では、海外でこれが爆発的に伸びているかというと、実は余り伸びていません。それは経済的な理由もありますし、それから先ほど、機構からお話があったように、やはりラーニングカーブ、それから対象患者。これは、様々なバイアスが掛かってこういったデータが作られるのは皆さん御存じのとおりだと思います。そういったものに対する、いろいろな感覚的な違いというものがあるのですが、現状、すごく伸びているわけではない。ところが、御存じのように低侵襲で、今、カテーテルでいろいろ弁膜症の治療がされる現在においても、その数のパーセンテージは、一応、一定のレベルは保っているということで、限られた施設で必死になって皆、次のステップに向けてこのda Vinciを使用しているということです。

da Vinciというのは、決して外科医にとって特別なスキルが要るわけではありません。むしろ非常に見にくい所を3Dで、とても優れた視野を機械的に確保できますし、それからアームの方は、我々が使っている鑷子(せっし)や、それからハサミといったものの一番先端部分が術野でくるくる回りながら、360度回りながら自由にやってくれます。既に定点手術の前立腺手術で証明されているように、あの分野の出血量が爆発的に減っているのがそのためで、内視鏡手術がとても難しいところでもってきて、やはりda Vinciの操作性、それから視野の確保によって、このようにすばらしい歴史が泌尿器科領域に生まれてきたわけです。確かに心臓領域は、定点手術として術野を確保しにくい部分がありますが、一端確保されると、我々が思った以上の術野が得られ、そして自由に右利きの人や左利きの人でもハサミ、鑷子を持ち替えて自由にできるようなそういった手技が可能になります。いろいろな意味で将来性が見込まれるので、この時期にしっかりとした形で、この国も導入していけたらなと思っております。

 先ほど、質問事項の1つにあった大動脈遮断時間、これは心臓を止めている時間です。これは短いに越したことはないのですが、実はこれは、必ず最初のうちは伸びてくると思います。そのうちこれが段々ラーニングカーブとともに短くなってくるかというと、必ずしもそうではなくて、これにはいろいろデバイスのサポートが必要になってきます。この国において、まだサポートが十分ではないので、この時間が正直いって爆発的に短くなるかというと、そうではないのです。そういうことを十分に理解しながら、そして、症例を選んでいくと、この分野がきちんとした一つの文化をつくっていくという確信的なものは臨床医として感じております。

 この審査は、いろいろな論点があると思いますが、臨床的な論点から言うと、今しっかりとこの国に導入しておかないと、こういった部分で内視鏡手術、それからロボット手術、そういうものが心臓領域で立ち遅れて、この分野でついて行けなくなってくると。それに付随するいろいろな技術というもので、ディスカッションができないような状況になりつつありますので、是非ここの分野で、しっかりとしがみ付いていく上でも何とか一人の臨床医として、もしも認可されれば正確に患者に少しでもメリットがあるように使用していきたいと思っております。以上です。

○荒井部会長 手取屋先生、非常に明快な御意見をありがとうございます。それでは、委員の皆様から御意見、御質問はいかがでしょうか。

○荒川委員 私は決して専門家ではないので、データだけで判断させていただき、質問させていただきます。大動脈遮断時間のデータ上は、明らかに有意を持って長くなっていると。ラーニングカーブのこともおっしゃっていますが、ラーニングカーブに関してはもちろん初期の導入のときの不利益は、患者さんに十分に説明していただいてやっていただくことがあるかと思います。単に時間が長くなるという説明ではなくて、実際それがどのような不利益を被るかを患者さんにきちんと説明していただければいいとは思いますが、残念ながらそれに関する、十分なデータがないというところに問題を感じています。

○荒井部会長 今の荒川先生からの御指摘に関しては、よろしいでしょうか。追加でお答えはありますでしょうか。

○機構 先生、ありがとうございます。大動脈遮断時間とともにその結果、どういった不利益が予想されるかということも、必ず患者さんに同意を取っていただくようトレーニング等を通じて、使われる術者の皆様に周知させていただきたいと思います。

○荒井部会長 そのほかに御意見ありますでしょうか。

 1つだけ私が気になった点があります。47ページの海外試験の不具合について、死亡例の有害事象の判断、いわゆる因果関係の否定が、担当の医師により行われたという点です。通常であれば、こういったことは第三者が因果関係があるかないかを判断すると思うのですが、どうだったのでしょうか。

○機構 機構からお答えさせていただきます。今回、米国の臨床試験ですが、平成13年、平成14年に行われておりまして、まだ第三者の調査を入れて有害事象を判断するといったことが定着されていなかったと判断いたします。

 機構においても、それは確認をさせていただき、それぞれの有害事象がどういうものなのかを審査の中で見ていました。

 まず、申請者から言われていたのが、これは医師として基本的なことだと思いますが、いわゆる有害事象が起きたときに、その有害事象が死亡に関係するのか関係しないのか。あとは、例えば重篤となりそうなときに、その有害事象が死亡に直結していくのか、そうでないのかというのは判断されている。

 もう1つは、da Vinciは手術器具ですので、まず本品自体が誤作動等を起こしたり、故障を起こしたりして、医師の不本意で患者さんに損傷を与えてしまうということがあれば、これは機器の問題だと判断します。それ以外のところは、医師としての技量の中でやることになりますので、それは術者ないしは起用例、それから術式に関係するだろうと判断がされている。そのような基準としてやっていると。ここまでは確認させていただいております。

○荒井部会長 時代的な推移が背景にあり、特段この部分に疑いを持ってかかる必要はないという判断をされたということでよろしいでしょうか。

○武谷委員 da Vinciがいろいろな外科の領域で利用されていますので、心臓外科領域でも、どのような利用法が可能かということを、ある意味、探索的なまだ段階だと思いますが、それを進めていただくことが私はよろしいのではないかと思います。

 当日配付資料、da Vinciの説明書、資料3、資料4がほとんど同じものになっているのでしょうか。どう違うかよく分かりませんけれども、当日配付資料3、資料4でもいいのですが、これの「警告」の所で、これを用いることができる条件として、「手技に熟練したもののみ」が1に、2は心臓外科領域に特化した心臓外科関連学会が提言する使用指針にのっとりということですが、これも、この「もの」というか、医者個人を限定しているわけです。

da Vinciを含めた内視鏡技術というのは、前立腺がん、あるいは婦人科領域でも、時に開腹しなければいけない状況、緊急事態が生じるということで、そのバックアップ体制が非常に問題ではないかと思います。特に心臓のほうに関して詳しくは分かりませんが、予期せぬ事態が生じた場合の医療チーム、あるいはバックアップ体制というか、ロジスティックスというか、そこがやはり重要かと私は思いますね。

 今回、某大学でありましたものも、やはりバックアップ体制がしっかりしていれば、あそこまでいかなかったようなこともあろうかと思います。文言にこだわるようですが、「もののみ」を限定しているということで、もう少しそこまで含めて、これを使用する条件を記載することはいかがかということです。

○荒井部会長 ありがとうございます。術者要件以外に、いわゆる施設としてのチーム、バックアップ体制がどうかという点についての御質問かと思います。その辺に関しての縛りというか、その辺についてはいかがですか。

○機構 まず、本品のトレーニングについて見ていただきたいと思います。審査報告書51ページの表40を御覧ください。ここに挙げているのは、これは申請者が用意するトレーニングの全貌になります。まず今回のトレーニングについては、医師だけではなく、医療チームの全てが参加して行うことになります。

○荒井部会長 そうですね。

○機構 ですので、医師のみでトレーニングを行うことは、まず企業のほうが受け取らないことになります。簡単に見ていくと、システムの説明やオンライントレーニングとか、いろいろありますが、これが終わった後にはプロクターにつながるというようなトレーニング体制になっています。ですから、先ほど御指摘があった「警告」の中の「もの」というのが、ちょっと分かりづらい。

○武谷委員 「もの」が、これが単数なのか複数なのか分からないので、医療スタッフとか、それに付随する施設ということで、「もの」ですと、その人が他の病院に移動した場合に、全然違ったスタッフと、そういったバックアップ体制がない所でもできてしまうこともあるかと思います。これはこれでよく分かりましたが、これはまた単独で、またいろいろな意味をそれなりに持ってくるのかと思いますので、その辺、御一考いただきたい。

○機構 分かりました。

○荒井部会長 ここの表記の「もの」に関しては、今の御意見を酌んで頂きましょう。内容としては全くそのとおりだと思いますが、手取屋先生、現場的には特に問題はありませんでしょうか。いわゆる術者をできる人が施設を移ったときなどについての懸念はあるかと思いますが、いかがでしょうか。

○手取屋参考人 おっしゃるとおりだと思います。正にチーム医療というか、そのとおりなのですが、もう1つは、外科、エンドポイントとしてどこに持っていくかということも見間違うと、ロボットであることに一生懸命になってしまうと、患者を殺してしまうということになりますので、そういったきちんとした目を持つということから言うと、サージャンだけではなくてということもありますが、病院全体でそういうものをフォローすることで、決して外科医や、究極チームだけでももしかしたら不具合があるのかも分からない。きちんとした施設の認知だとかも要るのかもしれません。

○荒井部会長 それでは今の点について、ここの表記の形を検討いただけますか。

○機構 かしこまりました。

○一色部会長代理 確認ですが、今の御質問の中に施設基準のようなものがあるのかという内容があったかと思いますが、それについてはどのようにお考えなのでしょうか。

○機構 施設基準においても、今、関連学会で検討しているところです。要件は決定されます。

○荒井部会長 決定されるのですね。

○機構 決定されます。

○荒井部会長 そのほかに御意見はありますでしょうか。

○中島委員 私、放射線科の中島と申します。「保守・点検」の所を教えていただきたいと思って質問させていただきます。私はda Vinciの見学をしたことはありますが、実際にやっているところを見たことがないので、ちょっと素人的なものかもしれませんが、da Vinciは非常に複雑な動作をするコンピュータで制御されたものだということは理解しています。例えば放射線科領域では、MRなどは必ず始業点検というか、とにかくそれを使うときの直前というか、毎日それをやる前にはきちんとパルスが出るかどうかとか、それを全部チェックしてその日を迎えるということですが、da Vinciの場合も、ここに書いてあるのは使用者による保守・点検事項が当日配付資料3、資料4に書いてありますが、クリーニングをするとか、掃除をよくするとか、定期的な保守・点検をするという記載ですが、実際に使用される前にきちんと動作確認のようなことは、基本的にはしなくてよいのでしょうか。その辺を教えてください。

○荒井部会長 日々の使用前の点検、それと、定期的な点検についてですね。

○機構 皆様にお配りしている部会資料の中に、本品の取扱説明書をお付けしています。それについて説明させていただきます。タグが付いていないので非常に分かりにくいと思いますが、別添資料2の中盤ぐらいになります。

○荒井部会長 この部厚い別添資料の2です。クリーム色から始まる所ですね。

○機構 はい。当然のことながら本品は精密な機械ですので、保守・点検等についても専門的な知識が必要になってくるものにはなります。

○中島委員 お伺いしたかったのは、当日配付資料の、これは使用書ですね。ここに書かれている次ページの2/4の所でも、4/4の所に「保守・点検に係る事項」とかが書いてありますが、この使用者による保守・点検事項の所に、クリーニングするとかだけの記載なのですが、動作確認を必ず行ってから、その手技をするということは現実的に非常に複雑なコンピュータ制御なので、これができないということも確かにあるかとは思います。この辺に関して、毎回の使用の前にきちんとその辺を確認をして、使用に入るというのが基本だと思っております。そういうことの記載がないのですが、それでよいのかということと、あるいは実際にそういうことができるのかということを質問させていただきました。

○手取屋参考人 よろしいでしょうか。臨床的な、いわゆる保守・点検として機械のメンテナンスということとは別に、毎回の手術日又は当日に機械が正確に動くかということの確かめというような捉え方でよろしいでしょうか。

○中島委員 はい。

○手取屋参考人 実は、これはda Vinciのアームが何本も出ていて、それに患者さんに実際に触っていく鑷子や電気メス、それからハサミ等がアタッチされます。アタッチされるとコンソールでくるくる回すとそれが動き出します。

 実際に、アームは、清潔で入ってくるのですが、それをアタッチした後、くるくる回して動かすようにという指導は受けています、ここには書いてありませんが。ですから実際は、まずアタッチして、それを始動をすると。それぞれのアーム自体は、確か10回使うと次から使えなくなり、オートマチックなカウンターが付いていますので、ちょっとボーッとしていると11回目を使って、エラーが出ることもありますので、まず最初にそれを付けるということを看護師がやって、そして患者さんにドッキングされます。ドッキングされると術野が確保しますが、そこにアームを進めると、ようやく我々の術野に出てまいります。そこでくるくる回して動くかどうかということで、現実的に動かなかったことは私どもの症例ではありませんが、そういった場合はアームを取り替えるということになると思います。

 ですから、委員の御質問のように、保守・点検の段階で全く今日は正常に動くだろうということを事前に調べることはなかなか難しく、症例の中で看護師がまずそれをアタッチして、動くかどうかのチェックと、そして、術野に入ったときに、実際に動くかを改めていくということになります。本当に現場で、それぞれをやるということになります。

○荒井部会長 ありがとうございます。ここに書いてありますね。

○中島委員 ページがないので。

○機構 申し訳ありませんでした。ただ、おっしゃっていただいたとおり添付文書において分かりやすく説明することは大事なことだと思いますので、詳細は取扱説明書に記載はしてありますが、そのような点検等について、行うようにというような文章を添付文書に追記したいと思います。

○荒井部会長 部厚くてページが分かりませんが、2-3の所に確かに「警告:カニューラの内外で、インストゥルメントがスムーズに動くことを確認してください」ということが書かれています。こういったことが明確に分かるよう、取扱説明書でも文章を加えていただくことでよろしいでしょうか。中島先生、よろしいですか。

○中島委員 はい。

○荒井部会長 ありがとうございます。そのほかに御意見はありますか。

○鈴木委員 確認の質問ですが、先ほどの当日配付資料の「警告」の所の「熟練したもの」がひらがなで書いてありますが、ひらがなの「もの」と、漢字で書いたときには、厚労省の方は「しゃ」と読むようですが、その違いはどういうことなのか教えていただけますか。

○荒井部会長 この「もの」というひらがなの所と、それ以外「術者」という表現もあって、日本語の使い方で何か区別しているのかということです。そういう御質問ですね。

○鈴木委員 そうです。

○機構 適切に整備いたします。申し訳ありませんでした。

○鈴木委員 両者は意味が違うのではないかと考えます。「者」と漢字で書くか、あるいはほかを見ると、使用者というとダブるので、例えば医師及び医療チームと書いてある所もあります。そこを分かりやすくしないと、どこまで含むのかと考えてしまいます。もっと分かりやすくされたらいかがでしょうか。

○参事官 漢字の件と、先ほどからチームもということでしたので、その辺をきちんと分かるように、もう1回全部精査して修正したいと思います。

○鈴木委員 お願いします。

○荒井部会長 塩川先生、どうぞ。

○塩川委員 脳外科の塩川と言います。この適用となる疾患の話ということで、先ほど参考人の先生が本来は血管吻合も将来的にはという話でしたが、今回のこれは、私は門外漢ですが、ASDとMVPと2つの疾患について、そして、こういうデータがあって、探索的だけれども日本でも遅れないようにやりましょうというお話だったと思います。この承認条件の所とか、添付文書の所も、特に何もそういうような話が書かれてはいなくて、承認条件の使用目的だと心停止下で心内操作を行う手術に限るというところぐらいの記述があって、添付文書も、2つの当日配付資料を拝見していても、特に何も書いていないので、先ほどの施設基準とか添付文書と承認条件だけを見ると、では、少し慣れてきたからバイパスもやってみようかとか、要するに現場での暴走とは言いませんが、そういったことを抑えるようなものが必要ではないかということです。

 脳血管内治療関係だと、比較的に患者の条件とか、いろいろな基準を血管内治療のデバイスのときに添付文書とかに書いてありますが、要するに、試験で認められた2つの疾患以外のものも、特に添付文書とか、承認条件には何も疾患の話が書いていないので、やはり先ほども話が出た某大学の内視鏡の手術の暴走してしまうような事件もあったので、もう少し限定されたような書き方にする必要はないのでしょうかという質問です。

○機構 ありがとうございます。先生の御指摘はもっともだと思います。一応こちらとしては、使用目的で心臓外科、心停止で心内操作を行う手術に限るというように書いてありますが、その下に使用目的又は効能・効果に係る重要な注意ということで、バイパス手術は除外ということを明記させていただきたいと思います。

○千葉委員 先ほど保守点検やチームを維持するメンテナンスの御質問があったかと思いますが、私が存じ上げている範囲では、メンテナンスのために、たとえこの装置を一切使わなくても年間かなりなコストが掛かると伺ったことがあります。現在もやはり、仮に1例も使わずに機械を持っているだけで、相当なコストが掛かるものでしょうか。あるいはそれだけのことをやらなければこの機械は常に安心して使えないものだという認識はあるのでしょうか。

○機構 すみません、全てにおいて把握しているわけではないのですが、把握している範囲でお答えします。まず、保守点検については、企業が決めている範囲ということもありますし、あと、使わなかったとしても、例えば、ペイシェントカートについては、これは常に満充電にしておかなければならないと。実際にこれまでに起こった有害事象の中には、バッテリーについての有害事象等も起こっているので、そういったところについても、ある程度使っていなかったとしても、点検は必要というのはあり得ると思います。実際に販売予測の中での話なので、それが必ずしも1施設に必要だというのはちょっと考えられないと思うのですが、実際にランニングコストとしましては、恐らく点検だけでも1,000万円程度とは聞いております。

○千葉委員 今でも1,000万円を超えるわけですね。

○機構 その辺どのぐらいずれるか、ちょっと分からないのですが、聞いている範囲ではそのようですね。

○千葉委員 そうしますと、この機械を持って使える施設というのは、ある程度以上の医療施設になるかと思いますね。その場合、これをどんどん使ってランニングコストを上げたいという気持ちは、多分医療サイドには起きるのか、起きないのか、その辺のところもちょっと以前にいろいろな懸念を聞いたことがあるものですから、その辺の御配慮がPMDAでどのように検討されているか、お伺いできればと思っています。要するに、使わなければ使わないだけでも大変なお金が自然になくなるわけですね。

○機構 御指摘ありがとうございます。こちらとしても、関連学会の先生方も心臓血管外科の先生方も、やはり、ランニングコストをどんどん上げて、変な話ですが、客寄せではないのですが、そのように使われることを非常に危惧されていて、それに関して実施施設要件や適正使用指針を作成すると伺っております。ですので、企業としても、心臓血管外科だけのためにというよりも、まずは今、da Vinciが導入されている施設から始めるとは伺っております。答えになっていますでしょうか。

○荒井部会長 価格のことについては、この部会でも全く経済的なことを無視して議論を進める訳にはいきません。ただ、余り深入りし過ぎてしまって、本来の機器の安全性、有効性という観点からの議論からずれてしまうのは、この部分の趣旨に馴染みません。今のお話については、そういった御指摘があったという認識でよろしいかと思いますが、千葉先生、そういう御理解でよろしいですか。

○千葉委員 はい。

○荒井部会長 どこでもポンポン使えるものではありませんし、当然のことながら、こういう機器が営利目的に使われるということは誰も望んでいないと思います。そういったところに抑制が掛かるような対応をしていただければと思います。

○千葉委員 もう1点よろしいですか。この装置は、私も以前トレーニングを受けたことがあって、そのときに自分の鮮明な記憶が1つありまして、手でこう挟みますね。その先端に伝わる力が手で軽く押さえても、先端にはものすごい力が掛かって、針が折れてしまったようなことも、私自身ちょっと見たことがあるものですから、これは機構に関しては、力の伝わり方、手元と先端の力の差というのは、今でも同じなのでしょうか。組織損傷のリスクというのはどうでしょうか。

○手取屋参考人 全く同じで、組織損傷のリスクは改善されておりません。ですので、これは見た目でこのぐらいつかんでいるのだろうという経験は多分必要なのだと思います。いわゆる触覚は全くないということです。ですのでトレーニングの最初には、多分受けられたので覚えていらっしゃると思うのですが、自分たちの視野から、もしもアームがどこかに行ってしまった場合に、このアームがどこかを傷つけているかも分からないと。実際に起こった死亡例はそれなのですが、そういったことがきちんとした手はずを積めば、防げるのですが、どうしてもそれを忘れてしまうと危険なことがあるというので、やはり、機械自体は、先ほどランニングカーブという話もありましたが、一般の我々が使うような鑷子などよりもものすごく便利な分、やはり危険性もはらんでおりますので、しっかりとしたトレーニングを受けなければいけませんし、正に先生のおっしゃったように、この機械が持つ特性を十分理解してもらうようなトレーニングシステムというものを考えなければいけないのではないかと思います。

○荒井部会長 活発な御議論をありがとうございます。よろしければ議決に入らせていただきたいと思います。

○中谷委員 適応疾患として今回手術として行われたのは、先ほど報告されたASDとMVPだけで、その結果を用いて承認しています。それはそれでいいと思いますし、その審査の過程もいいと思います。審査の結果、あえて使用成績評価をする必要がないとするものも分かります。しかし、結局どのような症例に使われたのか、手術が実際どれくらい行われていて、そこで有害事象が起こったか起こっていないかぐらいのことをまとめることも全くしなくていいのでしょうか。そこのところが報告書の最後の部分での書き方ではよく分からないので、せめてそれぐらいのところはチェックしてしかるべきではないかという気はするのですが、どうでしょうか。

○機構 まず今回の適用範囲ですが、MVPとASDだけではなくて、心停止下で心内操作を行う手術であれば使えるという範囲になります。

○中谷委員 使うなという意味ではなくて、実際に販売されて、どういう症例に使われて、特に大きな問題はないですよという単純にそれだけでいいと思うのですが、それぐらいの情報は市販後としてつかんでいるというぐらいでいいと思うのですね。試験を組めとかそんなことをする必要は私もないと思うのですが、ただ、どんな症例で使われているのですかと聞かれたときに、1つも答えられないようなシステムではないかというのが気になるのですが。

○機構 先ほどちょっと話をさせていただいた中の適正使用指針の中に、学会レジストリに本品を使った場合は登録することと書かれる予定になります。ですので、先ほど言っていたMVP、ASD以外にも使われることになると思いますので、各術式にどのように使われているのかと。

 あとは、手術成功率、それぞれの手術に使ったときの有害事象の発生率等というのは、学会と申請者できちんと共有されていて、必要に応じて、例えば安全対策にも使われるという体制は、これから整った上で、今回の話はできていると思います。

○中谷委員 いや、それでしたらそのことをどこかに書かれてあるのでしょうか。報告書ではよく探せなかったので、何か学会基準あるいは使用指針にのっとって使う、推奨する、というのでよいと思うのです。今言われた、学会レジストリですね。その辺のところは審査報告書の最後のところでどうなっているのかよく分からなくて、単に不具合が分かるからそれ以上は求める必要はないという形で書いてあったので、ちょっと疑問に思ったのですけれども。

○機構 学会レジストリのことについては、審査報告書の52ページに記載しております。下段の所に「機構は、以下のように考えた」という所がありますが、そこから書かせていただいているところで、詳細については、申請者より受けた回答については、その上の「申請者は、以下のように回答した」というのが52ページに記載されております。

○中谷委員 何ページですか。

○機構 52ページです。

○機構 1.収集予定の安全性情報及び情報収集方法という所に、「心臓外科関連学会と協力し、学会レジストリを活用して、手技成功率、重篤な有害事象の発現率等を評価するため、本品の使用例を集積する」というように記載がございます。

○荒井部会長 ではこれはきちんとそこに書いたとおりにやるように、御指導ください。よろしいですか。よろしければ議決に入らせていただきます。

○参事官 すみません、ちょっと補足だけ。今、中谷先生の御意見で、特に使用成績評価をどういうものを掛けていくのかと。これまで、この部会でも法改正とともに新しく入れた制度ですので、どういうものを掛けていくか、いろいろ御説明をさせていただきました。私が一番気にしているのは、使用成績評価をかけるのであれば、何を視点に着目して有効性なり安全性の何を見ていかなければいけないのか。これを明確にして、それがきちんとその後、評価できるような形でやらないと、結局、何となくかけてしまうという形で、結局何を見たのか分からないということもありますので、私どもとしては、一体この市販前のいろいろなデータで審査をした結果、どういうことが市販後の、このデータを追い掛けないといけないというものをはっきりさせた上でやろうと。そういう意味でいきますと、先生がおっしゃった何に使われているかというレベルの情報であれば、それだけでちょっと使用成績評価をかけるというのは、ちょっとやり過ぎかと思っているところです

○中谷委員 ただ、そこは任せるのは任せるで、審査報告書の最後のところのまとめの所に、全くなかったので、疑問に思いました。審査報告書の最後のところの結論として学会のレジストリ等任せるなら任せるのでもいいのですが、何かちょっと一言あるべきではないかと思ったのです。

○参事官 それは了解しております。ありがとうございます。

○荒井部会長 今、非常にクリアなお話を参事官からいただきました。使用成績評価を課す場合にはきちんとした明確な目標、これを知りたいが承認段階では確認できなかったのでそれを明らかにするために追加して調べるといった目標をもって行う、ないものに関しては学会のレジストリに使うというお話です。今、中谷先生の御指摘がありましたように、学会レジストリにやってもらうならやってもらうで、ともかくきちんと分かる形で示しましょうという理解でよろしいかと思います。よろしいでしょうか。

 それでは議決に入らせていただきたいと思います。医療機器「da Vinci サージカルシステム」及び「da Vinci Si サージカルシステム」について、本部会として承認を与えて差し支えないでしょうか。また、生物由来製品及び特定生物由来製品、そして使用成績評価の対象に指定しないということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。なお、この審議結果につきましては、次の薬事分科会において、報告させていただきます。ありがとうございました。これで議題1を終了させていただきます。議題1が終了いたしましたので、参考人の手取屋先生、どうもありがとうございました。

 引き続きまして、議題の2に進ませていただきたいと思います。議題2、医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について、審議を始めさせていただきます。

○事務局 資料2-12-2に基づき御説明いたします。まず資料2-2、2ページの上半分に「医療機器プログラムとは」と記載されている部分がありますので、御覧ください。こちらに示したとおり、医療機器には画像診断ワークステーションのように、ハードウェア部分とソフトウェア部分が一体となったものがあります。昨年11月の法改正前までは、ソフトウェア部分のみでは、規制の対象とはならず、ハードウェアと一体で医療機器としての規制対象となっておりましたが、現行ではソフトウェア部分のみのプログラム単体でも規制の対象となっております。

 続いて、下半分に記載されている「医療機器の分類と規制」というスライドを御覧ください。医療機器については、こちらに示しているクラス分類を一般的名称ごとに定めておりますが、現在、医療機器プログラムとして承認申請されている製品については、プログラムとして該当する一般的名称が、まだ存在していませんので、その医療機器プログラムがどのクラス分類に該当するかという点について、本部会にて御審議いただくものです。

 続いて、同じ資料の1枚目に戻っていただき、医療機器プログラムのクラス分類の考え方についてという所を御説明します。1~4に記載している考え方に基づいて、クラス分類を決定することでどうかと考えております。まず1点目は、これまでハードウェアと一体で医療機器としていた製品からソフトウェア部分を取り出したプログラムについては、単純に中身であるソフトウェア部分を取り出しただけなので、そのクラス分類はハードウェアと一体な場合と同じと考えております。

 2点目、放射線治療における照射条件等を決定するためのプログラムなどについては、治療機器を制御するプログラムとなるので、そういったものに関しては、治療機器と一体となって動作するものであり、治療機器と同じクラス分類になると考えております。

 3点目は、歯科矯正使用において頭部X線画像上で距離や角度を計測したり、治療後の骨移動をシミュレーションするようなプログラムがありますが、そういったものは医師が行う診断や治療のために情報提供するプログラムになるので、そういったものについては、医師の判断を補助するものと考えられるため、クラスIIとなると考えております。ただし、こういったもので提供する情報が生命の維持に関わるなど、重要な情報を扱う場合には、クラスIIIになる場合もあると考えております。

 最後の4点目については、1点目から3点目に当てはまらないプログラムがあった場合には、個別に判断していきたいと考えております。以上の考え方に基づき、今回は14のプログラムについて一般的名称を新設し、クラス分類を定めたいと考えております。

 もう一つの資料2-1の6ページを御覧ください。ここに今回新設を予定している14のプログラムの一般的名称の一覧を記載しております。一番左の列に番号を振っていますが、1.~5.については、治療機器を制御するプログラムであり、先ほど資料2-2で御説明した2点目の考え方に基づき、対応する治療機器と同じクラスIII、すなわち高度管理医療機器に該当するものと考えております。

 また、6.14.に関しては、医師が行う診断や治療のために情報を提供するプログラムですので、先ほど資料2-2で御説明した3点目の考え方に基づき、クラスIIすなわち管理医療機器に該当するものと考えております。

 また、いずれも特定保守管理医療機器の指定については不要と考えております。個別の製品についての御説明は省略いたしますが、品目の概要は資料2-1の8ページ以降に記載しております。説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○荒井部会長 ありがとうございます。具体的なものの名称を見ると、なかなか概要だけ伺っても理解しにくいところがありますので、むしろ一般的な、先ほど6ページに書かれている資料を見ていただいたほうがクラスIIIIIというのが分かるかと思います。何か御意見ありますでしょうか。いかがでしょうか。基本的に、今後出てくるか分からないものは、また個別に対応していくということでよろしいですか。

○事務局 はい、そうなります。

○荒井部会長 考え方として、直接患者さんの体に作用するものか、情報を整理して医師の作業を手伝うものかという点で、IIIIIが別れたという理解でよろしいでしょうか。

○事務局 はい、そのとおりです。

○荒井部会長 よろしいですか。特に御異議がございませんでしたら、議決に入らせていただきます。それでは本日審議を行いましたプログラム医療機器について、資料2-1の6ページに記載されているリストの1.~5.までを高度管理医療機器IIIとして指定し、リストの6.14.までを管理医療機器として指定することとしてよろしいでしょうか。また、特定保守管理医療機器として指定しないということでよろしいでしょうか。

 よろしければ、御異議がないようですので、このように議決させていただきます。この結果については、次回の薬事分科会において報告させていただきます。これで議題2を終了させていただきます。

 引き続きまして、議題3、医療機器の再審査結果について、進めます。事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 それでは議題3、医療機器の再審査結果について、御報告いたします。資料3-1及び3-2になります。再審査については、改正前の薬事法第14条の4に基づき、原則新しい医療機器などについては、再審査期間を定め、承認後の使用成績等の調査を行わせ、その資料に基づき有効性、安全性などの再確認を行うことを目的とした制度となっております。今回、再審査結果報告を行う品目は合計2つとなります。

 まず、資料3-1を御覧ください。1枚目が再審査結果通知書となります。販売名は、ディスポーザブルハンドピースです。申請者は株式会社MICメディカルです。本品は肝悪性腫瘍組織に使用されるハンドピースであり、本品の使用成績調査は、使用実態下における不具合発現状況、安全性、有効性等を確認することを目的として、平成14年4月から3年間、症例登録を行う予定でしたが、調査予定症例数に達しませんでした。そのため、最終的に5年間実施されたことになっております。結果につきましては、有効性、安全性に特段問題はなく、薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当しないこと、すなわち、再審査結果の区分を効能・効果、用法・用量などの承認事項について変更の必要がないカテゴリー1と判断しております。

 続いて、資料3-2となります。販売名はRFAシステム、申請者はボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社です。本品は先発品である資料3-1、ディスポーザブルハンドピースの後発品であり、本品の使用成績調査は使用実態下における不具合発現状況、安全性、有効性等を確認することを目的として、平成17年3月から平成17年7月まで症例登録が行われました。結果は、先ほどのディスポーザブルハンドピースと同様に、有効性、安全性に特段の問題はなく、承認事項について変更の必要がないカテゴリー1と判断しています。

 以上2つの報告につきましては、事前に委員の先生方に資料をお送りさせていただいておりますので、簡単な御説明とさせていただきました。以上、御報告いたします。

○荒井部会長 ありがとうございました。本件につきまして、委員の皆様から御意見、御質問等はよろしいでしょうか。ともに肝の悪性腫瘍に対するラジオ波の治療機器ということですけれども、よろしいですか。では特に御意見がございませんでしたら、これで議題3を終了させていただきます。

 本日予定されました議題は全て終了いたしました。事務局から何かありますか。

○参事官 いろいろありがとうございました。私からは、次回の予定を入れさせていただきたいと思います。次回の部会につきましては、平成271016日金曜日、14時から16時で予定しております。連絡事項は以上でございます。

○荒井部会長 ありがとうございます。1016日ということで、よろしくお願いいたします。特に御意見ございませんね。それでは、これをもちまして本日の医療機器・体外診断医薬部会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

備考
 この会議は、企業の知的財産保護の観点等から一部非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局審査管理課 医療機器・再生医療等製品担当参事官室 室長補佐 柳沼(内線4226)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)> 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録(2015年9月11日)

ページの先頭へ戻る