ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会)> 第57回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録(2014年12月3日)




2014年12月3日 第57回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録

労働基準局勤労者生活課

○日時

平成27年12月3日(水)


○場所

厚生労働省共用第8会議室(19階)


○出席者

公益代表委員

勝部会長、内藤部会長代理、小野委員、鹿住委員

労働者代表委員

大塚委員、川野委員、松岡委員、松本委員代理

使用者代表委員

井口委員、島村委員、新田委員、長谷川委員

(事務局)

谷内大臣官房審議官(賃金、社会・援護・人道調査担当)、松原勤労者生活課長、瀧原勤労者福祉事業室長、山口勤労者生活課課長補佐、竹田勤労者生活課課長補佐

○議題

(1) 特定業種退職金共済制度の財政検証について
(2) 独立行政法人改革に関する中小企業退職金共済法の改正について
(3) 中小企業退職金共済制度と企業年金制度とのポータビリティの拡充等について

○議事

 

○内藤部会長代理 ただいまから第 57 回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を始めさせていただきます。なお、本日は勝部会長が少々遅れてお越しになるとのことですので、あらかじめ部会長代理として御指名を頂いております私が、途中まで議事進行を務めさせていただきます。

 まず、前回部会以降の委員の交代と本日の出欠状況について、事務局から報告をお願いいたします。

○山口勤労者生活課課長補佐 勤労者生活課課長補佐の山口でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 私から委員の交代について御報告を差し上げます。清水侃治委員の後任として、一般社団法人日本中小企業団体連盟理事の井口誠治委員に御就任いただいています。

 続いて、本日の出欠状況について御報告いたします。本日は関委員、松本委員、宮嵜委員、市瀬委員の 4 名が御欠席ですが、労働政策審議会令第 9 条に規定された定足数を満たしております。なお、先ほどお伝えした勝部会長のほか、鹿住委員も遅れてお見えになるということです。また、松本委員の代理として、日本労働組合総連合会 総合労働局 労働条件・中小労働対策局局長の曽原倫太郎様に御出席いただいております。以上です。

○内藤部会長代理 それでは、議事次第に従いまして議事を進めてまいります。本日の議題は、 (1) 「特定業種退職金共済制度の財政検証について」、 (2) 「独立行政法人改革に関する中小企業退職金共済法の改正について」、 (3) 「中小企業退職金共済制度と企業年金制度とのポータビリティの拡充等について」となっております。

 まず、議題 1 「特定業種退職金共済制度の財政検証について」です。前回の部会において、勝部会長から事務局に作成をお願いしている取りまとめ案を資料 1 としてお配りしております。事務局から読み上げをお願いいたします。

○竹田勤労者生活課課長補佐 勤労者生活課の竹田でございます。読み上げさせていただきます。

 平成 26 12 3 。特定業種退職金共済制度における退職金額に係る予定運用利回りの見直し等について ( ) 。労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会。

 中小企業退職金共済法 ( 昭和 34 年法律第 160 ) 85 条において検討することとされている、建設業退職金共済制度、清酒製造業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の退職金額に係る予定運用利回りの見直しについて、労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 ( 以下「部会」という。 ) において検討を行った結果は、下記のとおりである。

 記。 1. 建設業退職金共済制度。

(1) 建設業退職金共済制度 ( 以下「建退共」という。 ) の累積剰余金は、前回の財政検証時 ( 平成 21 ) の水準 ( 351 億円 ) と比較して約 868 億円まで大きく増加しており、今後も増加することが見込まれている。

(2) 前回の財政検証の際の議論も踏まえ、累積剰余金について、悲観シナリオにおいても安定的な運営に必要な水準を確実に確保した上で、従業員に還元されるよう、予定運用利回りを現行の 2.7 %から 3.0 %に引き上げることが適当である。※退職金算出の複雑化、事務負担の増加等を勘案し、前回の利回り引下げを行った平成 15 10 月以降の期間に対しても、施行日以降の退職者については新しい利回りの適用対象として引き上げることが適当。

(3) また、建設業の技能労働者の確保が課題となる中で短期離職者対策の強化が求められており、建退共における掛金の平均納付月数や財政状況等を考慮すると、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針 ( 平成 25 12 24 日閣議決定 ) 」に即して、建退共における退職金の不支給期間を、現行の 24 月未満から 12 月未満に短縮するための中小企業退職金共済法の改正を行うことが適当である。

(4) なお、これらの改正に当たっては、予定運用利回りの引上げに不支給期間の短縮分も含めることが適当であり、その実施は不支給期間短縮に係る中小企業退職金共済法の改正を踏まえて、平成 28 4 月を目途に併せて行うことが適当である。

2. 清酒製造業退職金共済制度。

(1) 清酒製造業退職金共済制度の累積剰余金は、前回の財政検証時の水準 ( 9 億円 ) と比較して約 24 億円に増加している。他方、脱退者数が新規加入者数を上回る状況が続いているため、平成 30 年度において責任準備金は減少し、また累積剰余金も減少する見込みである。

(2) 以上の点を踏まえ、制度の当面の運営に支障は生じないと考えられることから、予定運用利回り ( 現行 2.3 ) の見直し ( 退職金の不支給期間の短縮を含む ) は行わないことが適当である。

(3) なお、制度の規模が小さく、かつ今後も縮減していくと見込まれる中で、次回の財政検証に向けて、就労状況等も踏まえつつ、制度の中長期的な在り方について検討を行う必要がある。

3. 林業退職金共済制度。

(1) 林業退職金共済制度 ( 以下「林退共」という。 ) の累積欠損金は、前回の財政検証時の水準 ( 14 億円 ) と比較して、約 10 億円まで改善したが、今後制度の規模が縮小し、累積欠損金も増加することが見込まれている。

(2) 林退共においては、累積欠損金解消計画 ( 平成 17 10 1 日独立行政法人勤労者退職金共済機構林業退職金共済事業本部 ) にのっとり、平成 34 年度末までに累積欠損金を解消することとされており、厳しい財政状況の中で以下の改善策を講じることにより、その履行を確保し、もって制度の安定的運営を図ることが適当である。

 ○1、予定運用利回りを現行の 0.7 %から 0.5 %に引き下げること。その際、現行の退職金の給付水準を確保するため、掛金日額を 10 円引き上げて 470 円とすること。※掛金日額の引上げを行うには、独立行政法人勤労者退職金共済機構の理事長が、運営委員会の議を経た上で、掛金日額を定めている特定業種退職金共済規程を変更し、当該変更について厚生労働大臣の認可を受ける必要がある。

 ○2、独立行政法人勤労者退職金共済機構の林退共本部における経費及び支部への業務委託費について、それぞれ当分の間、毎年度 500 万円程度削減すること。

 ○3、運用収入の増加を図るため、資産運用方法の見直しを行い、委託運用の部分について一般の中小企業退職金共済制度との合同運用を行うことができるように中小企業退職金共済法の改正を行うこと。

 ○4、新規加入者数が退職者数を上回る状況になるよう、事業者の努力と関係者の連携の下に、林退共の加入促進に積極的に取り組むこと。

(3) 予定運用利回りの引下げは、林退共の安定的な運営を図るため速やかに行う必要があることから、平成 27 10 月を目途に実施することが適当である。

(4) なお、林退共について、今般の改善策の実施状況とともに、累積欠損金の解消に向けた進捗状況を本部会においても定期的に把握し、計画通りに進捗していない場合は、次回の財政検証において、制度のあり方も含め再度検討する必要がある。以上です。

○内藤部会長代理 ただいまの御説明に対し、御意見あるいは御質問などがありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。では、今回のこの見直し等に関しては御提案のとおりということで、よろしいでしょうか。

 ありがとうございました。それでは、議題 2 「独立行政法人改革に関する中小企業退職金共済法の改正について」です。事務局から説明をお願いいたします。

○松原勤労者生活課長 勤労者生活課長の松原です。私から議題 2 の独立行政法人改革に関する中小企業退職金共済法の改正について御説明いたします。資料 2 です。

2 ページに目次がございます。資料の構成としましては、昨年から現在までの「独法改革の経緯」や「法改正を要する事項の概要」をお示しした上で、具体的な改正内容について、資産運用に係るリスク管理体制の強化、あるいは制度のポータビリティの向上等を通じた事務・事業の見直しの各事項について、説明させていただきます。

3 ページを御覧ください。過去の部会において既に説明しました内容ですが、改めて今回の独法改革の経緯を説明いたします。昨年 2 月ですが、「独立行政法人に関する有識者懇談会」が設置されました。その後、 6 月に出された報告を受けて、 9 月に「行政改革推進会議独立行政法人改革等に関する分科会」が設置されたところです。

 当初、勤退機構については、民営化あるいは他の法人との統合も含めて、組織や事務・事業の見直しの議論が進められたところですが、議論の結果としては、昨年 12 月の分科会報告、及びそれを基にした閣議決定として取りまとめられました。

 勤退機構については、独法として存置した上で、資産運用に関わるリスク管理体制の強化及び制度のポータビリティの向上等を通じた事務・事業の見直し等を行い、国庫補助の縮減を図ることとされたところです。

 その後、本年 8 月に、行政改革推進本部決定がなされ、勤退機構の事務・事業の見直しは平成 28 4 月に行うとされたところです。なお、本中退部会については、独法改革の内容について過去に 2 回、説明させていただいたところです。閣議決定前の 12 6 日ですが、機構の組織や事務・事業の見直しに係る議論の状況について御説明し、閣議決定後の今年の 2 21 日に閣議決定等の内容等について説明させていただきました。

4 ページを御覧ください。ここに閣議決定、閣議決定の基となった詳細が書かれている分科会報告と、本年 8 月の行政改革推進本部決定の内容を掲載しております。特に、今回の中退法の改正内容については、分科会報告の内容に即したものとしておりますので、改めて当該部分を読み上げさせていただきます。

 真ん中の欄の 1 つ目のポツです。財務の健全性及び適正な業務運営の確保のため、金融業務に係る内部ガバナンスの高度化を図るべきである。特に、中小企業退職金共済事業において、かつて多額の累積欠損金が生じる状況があったことを踏まえ、外部の専門家による監視体制の強化等の実効性あるリスク管理体制を整備することが必要である。

2 つ目のポツです。中小企業退職金共済事業について、住基ネットの活用による未請求退職金発生防止対策の強化及び退職金の支給要件である加入期間の見直しによる短期離職者への対応の強化に加え、従業員が転職した場合において、その前後の掛金納付月数を通算する企業間通算及び特定退職金共済事業・確定拠出年金制度との間で、事業主が納めた掛金等に相当する資産を引き渡す制度間通算の拡充によるポータビリティの向上等を通じた事務の効率化を進めることを通じ、当該事業における事務費の国庫補助の縮減を図るべきである。

 これらを踏まえて、 5 ページです。法改正を要する事項の概要をまとめております。項目は 3 つありますが、項目だけを読み上げさせていただき、詳細については各論として後ほど御説明いたします。

1. 資産運用に関わるリスク管理体制の強化。 (1) 資産運用委員会の設置。 (2) 資産運用に係るリスク管理体制の強化。これは今ほど取りまとめていただきました財政検証に関連する事項です。

2. 制度のポータビリティの向上等を通じた事務・事業の見直し。 (1) 制度間通算における資産の全額移換の実施。 (2) 特定退職金共済事業等とのポータビリティの向上。 (3) 未請求退職金発生防止対策の強化。 (4) 退職金の不支給期間の短縮。これも財政検証関連です。

3. 施行日については、平成 28 4 月の施行を予定しておりますが、一部、平成 27 10 月の施行が含まれております。

 各論について御説明いたします。 7 ページを御覧ください。ここでは「資産運用委員会の設置」について説明しております。資産運用委員会の設置の目的は、上の箱に書いてありますとおり、勤退機構の資産運用業務に関し、実効性あるリスク管理体制を整備するということにあります。これにつきましては、先ほど御紹介しました閣議決定及び分科会報告においても、求められているところです。

 なお、注意的に申し上げますと、この資料全体に共通することでございますが、太いゴシックの部分は現時点において法律改正が必要な部分だと整理しているところですが、今後の内閣法制局の審査の結果により、変更があり得ることは、あらかじめお含みおきいただければと思います。

 資産運用委員会の具体的な内容です。真ん中の図でお示ししておりますが、機構の中に 5 人以内の委員で構成される委員会を設置します。その業務としては、○1、資産運用の基本ポートフォリオ等を定める「資産運用の基本方針」というものがありましたが、基本方針の改定を付議しなければならない。○2、資産運用状況等の監視する。○3、その他、理事長の諮問に対し意見を述べる権限を付与することとしております。なお、資産運用に係る評価等についても、この資産運用委員会が担うことを想定しているところです。

 もう 1 点のポイントは、右下の括弧の中です。委員の任命は、経済・金融の有識者等から厚生労働大臣が行うこととする。また、資産運用委員には勤退機構と密接な取引きのある金融業関係者が任命されないように、欠格条項を措置するとともに、役員と同様の守秘義務等の服務規程及び解任事由を設けることとしております。

 なお、左下の注の資産運用委員会の設置です。平成 28 年度以降の資産運用の基本方針について、あらかじめ審議を頂くということが適当であると考えておりますので、委員会の設置は平成 27 10 月とする方向で検討しております。

8 ページは、参考として現行の機構における資産運用のガバナンス体制について紹介しております。現在、機構には、外部有識者で構成される委員会として、「 ALM 委員会」と「資産運用評価委員会」がございます。いずれも委員長がその委員の任命を行っております。それに対して、今回新設する資産運用委員会は、これらの委員会の機能を再編するとともに、厚労大臣が委員を任命することなどを通じ、資産運用のガバナンスがより強化されるということを考えているところです。

9 ページは合同運用の実施です。これは先ほど取りまとめいただきました財政検証の中にも出てくるのですが、特に運営状況が厳しいものとなっている林退共におけるリスク管理体制を整備するため、特定業種退職金共済制度と一般の中退共との間において、資産を合同で運用することができるものとするものです。

 自家運用と委託運用の割合は、各制度におけるリスク許容度に応じて設定する必要があるほか、合同運用分野につきましてはポートフォリオを同じものとするため、その実施に当たっては新設される資産運用委員会における審議も踏まえて資産運用の基本方針を改定することが必要となります。ただ、それぞれの業種の実態を踏まえて、最終的には理事長が決定することとなります。

 この図は、林退共と一般の中退共との間の合同運用を想定した図にしておりますが、各制度の委託運用部分に係る資産を、それぞれ新設することとなる合同運用勘定に繰り入れた上で、この勘定の中で資産運用を合同で行うこととしております。

 ポイントは下のほうに点線の箱で囲っています。まずは、新設する合同運用勘定に対する資金の融通というのは、区分経理の原則の例外ということになります。また、この勘定において発生した利益・損失は、それぞれの制度の持ち分に応じて適切に配分されることを中退法に措置することが挙げられます。以上が、リスク管理体制関係です。

10 ページ以降は、「制度のポータビリティの向上等を通じた事務・事業の見直し」です。 11 ページを御覧ください。まず、制度間通算における全額移換の実施です。まず、制度間通算の仕組みを簡単に御説明しますと、 11 ページの ( 現状 ) の図を見ていただければと思います。

 例えば建設業の期間雇用者から、中小企業の常用雇用の従業員に転職した場合を例として挙げています。この場合、企業を転職するということですが、併せて利用している中退共の制度として、建退共から一般の中退共に移動するということになります。通常、建設業の期間雇用者でなくなった場合は、その際に建退共の退職金を請求して、建退共の退職金を受け取ることができますが、現行の制度においては、長期雇用の従業員の退職金が手厚くなるよう、退職金カーブを作っているということを頭に置いていただけると思います。ここでの制度間通算というのは、このように中退共の中で各制度の間を移動した場合において、希望され得るものについては細切れで退職金を受け取るのではなくて、移動後の制度で通算することを可能とするということにより、長期のほうが優遇されるという退職金カーブの効果を、引き続き享受することができるようにするということです。

12 ページです。そのときに、どういう制度間通算の仕組みになっているかということです。ここでも建退共から一般の中退共に移ったケースです。建退共で 120 月分の掛金納付月数があることを前提とした場合に、単純計算では 93 6,789 円の退職金相当額となります。これを一般の中退共の掛金月額 5,000 円という前提で移動した場合は、同じく掛金納付月数 120 月の場合は、 63 2800 円の退職金相当額になると思います。これは建退共の掛金日額は 310 円となっており、月換算で 6,510 円ということなので、このケースでは、一般の中退共の 5,000 円よりも高くなっている、あるいは予定運用利回りが高いということが理由です。

 また、現行制度上、通算可能な月数は、前のほうの建退共における掛金納付月数が上限となっておりますので、その結果として差額給付金が 30 3,989 円出てきます。これが通算できずに、被共済者にその場で支給してしまうということになります。これは退職金の扱いになりませんので、一時所得ということになり、税制上で考えますと、退職所得となるよりも一般的には不利だということになります。この差額給付金の支給件数は、年間 1,300 件ほどあり、勤退機構にとっても一定の事務負担となっているところです。

 こういったことを踏まえ、今回の改正案は 13 ページです。まず、右上に「税制改正要望中」と書いており、実はこの後に何回か出てきますが、これについては退職所得控除の適用との関係で、税制改正要望が必要な事項です。現在、税制当局と調整を行っているということで、こういうような書き方をしていることをお含みおきいただければと思います。

 具体的にはどういう改正かと申しますと、先ほどのページで差額給付金として被共済者に支給していた金額をそのまま勤退機構に移換し、残余額として機構で運用して、退職時に通算した分と合わせて退職金として支給するというものです。その結果として、差額給付金の支給事務がなくなるので、事務の効率化につながるということもありますし、税制改正の要望が通れば、この残余額についても退職所得控除の対象となり、税制優遇が受けられるということになるため、この制度改正については、本制度の利用者にとってもメリットになると考えております。

14 ページは、特定退職金共済事業からの資産移換です。いわゆる特退共と言っておりますが、下のほうに特退共とは何かを書いています。例えば商工会議所等の団体のうち、退職金共済契約を作成し税務署の承認が得られた団体が実施する共済事業を指します。特退共については、本制度の中退共と同様に損金算入、退職所得控除等の税制優遇が受けられるほか、あるいは退職金額なり掛金月額の制度設計が自由にできるということで、それぞれの地域に様々な特退共団体が存在していると承知しています。この特退共については、現在も多くの団体が健全に運営されておりますが、地域によりましては、事業主数、加入者数の減少、あるいは厳しい資産運用状況を反映し、引き続いて運営する状況が厳しいものになっている団体も一部には存在すると聞いております。

15 ページは、今回の制度改正の内容をお示ししております。今回の資産移換の流れのポイントとしては、まずは特退共を実施している団体が、その特退共の事業を廃止した上で、資産の引渡しに関する契約を勤退機構との間で、まず締結することを求めるということにしています。その上で、契約を締結した後、勤退機構は中退共に加入した事業主から資産移換に関する申出を受け、特退共団体から、対象となる資産の引渡しを受けることになります。この引渡金額ですが、事業主が特退共団体に拠出した掛金との範囲内の額です。機構としましては、引渡金額に応じて、中退共の掛金納付月数へ通算するということになります。

 下のほうに「注」ということで書いていますが、委員の皆様は御承知かと思いますが、本年 4 月に厚生年金基金からの資産移換ということが施行されたところですが、これと同様に特退共の事業が廃止される前から、引き続き中退共に加入している事業主についても特退共の事業に係る資産を勤退機構に移換するということを認めることにしています。

16 ページは、実際に特退共団体から勤退機構へ資産移換がなされた場合に、どのように中退共の退職金に通算するのかということを簡単に示しております。

 右の勤退機構の枠の中を御覧いただければと思います。特退共団体から資産移換が行われた場合には、本体の中退共に加入時点である資産移換時より前から掛金を納付していたものとみなす。その上で、掛金納付月数へ通算することとなります。その通算可能月数の上限は特退共団体の加入期間ということにしています。その際、先ほどと同じように、通算できる上限の月数を超える分など、掛金納付月数に通算しきれない額につきましては、残余額として別建てで運用するということにしています。

 なお、下の※に書いておりますが、過去の適格退職年金からの資産移換や厚生年金基金からの移換と同様に、この移換措置そのものが特例措置でありますことから、これらの事業者に対しては、形としては新たに加入することになりますが、加入促進のための掛金負担軽減措置は講じないとしています。また、先ほどの通算月数の給付金における全額移換と同様に、この改正も税制改正要望事項となっているところです。

17 ページは、この資産移換に係る経過措置について御説明しております。今年の 2 月の部会だったと思いますが、独法改革の内容について御説明させていただいた折に、島村委員からお話を頂いた事項を踏まえたものです。

 特退共については、税法上、掛金月額の下限は設定されておりませんので、一般的には 1,000 円となっているものが多いと承知しております。他方、中退共の掛金月額の下限というのは 5,000 円と定まっており、 1,000 円から 5,000 円ということになりますと、資産移換を行う事業主については大きな負担増となる可能性があります。今回の資産移換につきましては、特退共を廃止する団体に加入している各企業における退職金制度の存続を図るということが目的ですので、できるだけ事業主の負担を軽減して、円滑な移換を実現するということが求められます。一方で、既存の中退共の加入事業主との均衡というものを考えたときに、恒常的な掛金の特例を認めるということは困難ですので、中退共に加入したときから 3 年間に限り、特退共団体から資産移換を行った被共済者については、その特退共事業を廃止した時点の掛金月額を中退共の掛金月額とすることを認めております。

 その際に、中退共においては短時間労働の被共済者の掛金月額の下限を 2,000 円としていることもあり、機構のシステム改修のコストがあるということも勘案し、その下限は 2,000 円ということにしたいと思います。

 なお、箱の中の下の 2 つ目の※に書いておりますが、経過措置期間中であっても、掛金の増額は可能ですが、掛金の減額については制限を設けております。具体的には、例えば 2,000 円から 4,000 円に掛金月額を増額して、また後日、 3,000 円に減額するということは認めないことが適切だと思っております。なお、 3 年間が経過した後はどうなるかということですが、その時点で掛金月額が 5,000 円に増額されたものとみなされるということになるとしています。

18 ページは、中退共から確定拠出年金への資産移換です。まず、確定拠出年金について御説明させていただきますので、 19 ページを御覧ください。真ん中の箱で、確定拠出年金の企業型 ( 以下「 DC という」 ) を念頭に置いて御説明しております。

 まず、確定給付企業年金 (DB) と確定拠出年金 (DC) を説明させていただきますと、大きな制度上の違いを太ゴシックで書いております。まず、 DB は将来の給付が規約等で規定されるということです。 DC は、拠出した掛金や運用益により給付額が変動し、決定するということになります。 DC の資産運用の方法というのは、従業員が自身で選択するのですが、その結果は従業員が負うということになります。

 給付の仕組みです。 DB は「支給開始年齢到達前の中途引き出し」が制限なし、可能ということになっており、退職時に退職金として受給するということも可能となっております。これに対して DC は、税制上の制約もあり、「中途引き出し」は原則として認められておりません。つまり、退職時に退職金として受給することは、原則できないという制度になっております。この点が DB DC の制度上の大きな違いだと承知しております。

18 ページの説明に戻ります。中退共の制度の趣旨を念のために申し上げますと、独力では退職金制度を設けることが困難である中小企業主に雇用される従業員を対象とした制度であるということです。ですので、制度に加入できる事業主というのは中小企業者に限定しております。具体的には、一般業種、建設業や製造業等を想定していただければと思います。常用従業員数 300 人以下、又は資本金 3 億円以下というのが、中小企業の要件です。

 そのため、中退共に加入している事業主の方でいらっしゃっても、その後の事業規模の拡大等により中小企業の範囲を超える規模となることがあります。その際、中退共の退職金共済契約については解除となりますが、その場合は、それまで積み立ててきた資金が解約手当金として事業主に支払われるということが原則ですので、結果として将来の退職金として支給することができなくなります。

 現行の中退共制度においては、これらの企業における退職金制度を実質的に存続させるため、従業員の同意を条件として、他制度、具体的には、今は DB と特退共への資産移換を特例的に認めているというところです。

 今回の改正においては、昨年の閣議決定報告なり、分科会報告も踏まえ、解約手当金の支給件数を減らすとともに、企業における退職給付制度の継続による勤労者の福利厚生にも資するよう、現在の移換先に DC を加えることにしたいと考えております。

 どの選択肢を採るかということについては、中退共において従業員の同意が必要とされておりますので、仮に従業員が他制度への移換を希望しないということであれば、従前どおり解約手当金を一時金として受給することも可能となっております。こういった DC を加える仕組みを今回措置したいということで、これも税制改正要望事項です。

20 ページは、企業間通算の申出期間の延長です。中退共の被共済者が退職された場合には、通常退職金が支給されるのですが、先ほど申し上げましたとおり、退職金制度という性格上、長期雇用者が優遇されるような退職金カーブとなっておりますので、細切れで退職の度に退職金を受給すると、このような退職金カーブの恩恵を受けられないということになります。

 したがって、現行の中退共制度においては、従業員が希望された場合には、退職金を支給せず、転職後の企業が中退共を実施している場合には、新たに開始する中退共に、これまで積み立てた資金を通算するということを認めております。その結果、退職金カーブの恩恵を受けやすくなるということです。

 ただ、退職後も退職金を支給せず、ずっと勤退機構において支払われない退職金を管理し続けるというのは必ずしも適切ではないということです。これまでは、退職後 2 年以内に限り、再び中退共に加入して通算の申出をした場合に通算を認めてきたところですが、この通算制度がより活用されるということになれば、機構における退職金の支給事務の減少が期待できることに加え、被共済者にとっても通算が行われやすくなるなどのメリットがあるということも踏まえ、現行の 2 年以内という制限を 3 年まで延長するということが、この改正です。

21 ページは、未請求退職金発生防止対策の強化です。未請求退職金と申しますのは、退職後も従業員が機構に対して退職金の請求を行わず、支給ができていないものを指します。退職金の請求をしないというのは、それぞれ個別の理由があろうかと思いますが、例えば事業主が従業員に対して、中退共に加入していることを十分にインフォメーションしていなかったり、単純に従業員が請求を失念しているという場合が考えられるところです。

 これまでも発生防止の取組強化につきましては、様々な形で指摘を、本部会あるいはいろいろな機会に指摘を頂いているところでございますが、勤退機構の中期計画におきましても、平成 29 年度末までに未請求退職金の発生割合を全体の 1 %程度に向けて努力するという目標を掲げております。更なる取組の強化のために、住基ネットの活用を検討しているものです。

 具体的な利用方法は、勤退機構において、未請求退職金については、まず事業主に協力を求め、住所や連絡先が確認できれば、機構から直接連絡をしておりますが、なかなか中小なり零細企業では、退職後の従業員の住所まで把握できていないというのが現状です。そのため、右の例を見ていただければと思います。勤退機構においては、氏名、性別、生年月日は把握しておりますので、その情報を用いて住基ネットで検索をすれば、住基ネットはそれに比べて住所という情報を持っております。住所情報が確認できるということで、これを基に請求勧奨を実施していくということです。

 左側の一番下の○は、マイナンバー法です。これの施行後は、勤退機構が住基ネットで検索を行う際にマイナンバーが表示されるということで、これを用いることが必要となります。マイナンバー法の改正も、ここで併せて措置しておくものです。

 なお、未請求退職金発生防止対策ということで御説明いたしましたが、特定業種の退職金共済においては、退職金共済手帳を長期間更新していない被共済者の方々も存在しておりますので、こちらについても同様に、住基ネットを活用して現況確認等の実施につなげていきたいと考えております。

22 ページは、退職金不支給期間の短縮です。これも合同運用の話と同様に、先ほどの財政検証の結果も踏まえた措置となっております。参考までに、真ん中に第 56 回中退部会、 ( 前回の部会 ) でお示しした考え方を記載しております。不支給期間の短縮の考え方を書いています。

 現在、技能労働者の確保が課題となる中で、短期離職者対策の強化が求められており、○1、人材確保の観点から、短期離職者に対する建退共の魅力を増す必要が高まっている。○2、建退共における掛金の平均納付月数が、一般の中退共と比較して短い傾向が見られる。○3、不支給期間を短縮することができる財政基盤を有していること等を考慮いたしますと、閣議決定に即しつつ、一般の中退の不支給期間と合わせる形で、建退共における不支給期間を 1 年に短縮することが適当ではないか。このような考え方をお示ししていただき、先ほどの取りまとめでも、このようにしていただいたところです。

 中退法においては、今の法律の体裁として、特定業種 ( 建設業、清酒製造業、林業 ) の不支給期間を一律で 24 月と規定しているところですが、今回は建設業のみを短縮するということですので、体裁を変える必要があります。厚労大臣が指定する業種、具体的には今回の財政検証の結果を踏まえて、建設業を指定することになりますが、この指定業種について、退職金の不支給期間を 12 月とするように改正するということにしております。以上です。よろしくお願いいたします。

○勝部会長 大変詳細な御説明、ありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして御意見、御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。

○川野委員 資産運用委員会の設置、実効性のあるリスク管理体制の強化ということは必要な取組であるということは重々承知の上で、今回、任命権者は厚生労働大臣として資産運用委員会が設置されるということ。言い換えれば、厚生労働大臣の考え方によって、その任命される方々の欠格条項や様々なことがここで書いてあるのですが、その審査というか、その任命される委員の方々の審査機能がどこにあるのか。と申しますのも、こうしたポートフォリオに関わる運用の中身に関わるところに委員会が関与するので、例えば今、新聞等々でも出ていますように GPIF の関係もそうですけれども、その運用によるリスクの部分が加入者の資産保全というか、そういうリスクの高まりにつながる懸念があるということ。この委員会の方々の考え方によっては、メリットもあるかもしれませんが、リスクも高まる可能性があるところについては、ここに書いてある欠格条項や服務規程、守秘義務等々をどのように考えておられるのか。我々、加入者のことを考えると、そうした運用に関して、こうしたリスク管理体制を強化するという観点は全く否定するものではないですが、このことで本当にそうしたリスクが高まらないように資産保全ができるのかどうかに、若干の懸念を持っていますので、御意見として申し上げさせていただきます。

○勝部会長 ありがとうございます。ただいまの質問につきまして事務局から、よろしくお願いいたします。

○松原勤労者生活課長 まず、今般の改正における資産運用委員会の設置の趣旨について、念のため申し上げさせていただきますと、昨今、経済金融情勢が大きく動いて変動が激しいということで、資産運用に関しては様々なリスクが潜んでいるかと思っています。そのリスクに適切に対処していくために、経済金融の専門家がきちんと位置付けられた体制を築こうというのが、そもそもの趣旨です。

 そういった観点でいろいろ御審議いただくわけですが、今の川野委員の御懸念に対しては、まずこの資産運用委員会がどういう形で設置されたかですが、当然、中退法の中に位置付けられているわけです。中退法の趣旨に遡って申し上げますと、独力では退職金制度を設けることが困難な非常に力のない中小企業につきまして、事業主の相互共済という趣旨で、その仕組みによって退職金制度を公的な制度として確立することが、中退共制度の使命です。そういったものを踏まえて資産運用のあり方を審議することが当然であり、委員の方々についてもそういったものとして選任され、あるいは御審議いただくことが当然の前提として、制度として決められていると承知しています。

 また、余裕金の運用に関しては、例えば参考資料の 12 ページを御覧いただければと思います。今の中小企業退職金共済制度という大枠の中で第 77 条の 3 項、下の段ですが、「退職金共済業務に係る業務上の余裕金の運用については、安全かつ効率的な運用」と掲げていますので、これを旨としてやっていただくことは、委員の皆様にも御認識いただいた上で御審議いただくことを考えています。そういった点で委員につきましてはいろいろ御心配もあろうかと思いますが、そういった趣旨は私どもとして十分徹底した上で、選任を行っていく必要があると考えています。

○勝部会長 よろしいでしょうか。ほかに、どうぞ。

○松岡委員 同様の部分で、要はこの資産運用委員会の体制というのが、同じ人たちが基本方針、基本ポートフォリオなどの重要なところを決めてというか提案をして、しかもその運用状況について同じ人たちが監視をするという点で、本当にこれでリスク管理になるのだろうかと疑問を感じるのです。現行体制の状況が果たしてどう機能しているかということとは別なのですが、次の 8 ページを見ていただくと、そういう点では「 ALM 委員会」と「資産運用評価委員会」、 2 つの評価する機能があり別々の体制になっている。どちらも理事長が任命するというのは、いかがなものかというのであれば、そのあたりを勘案した体制も考えられなかったのでしょうか。

○松原勤労者生活課長 お答え申し上げます。おっしゃるとおり、事前の話と事後の話をどういうふうに考えるかということです。ただ、昨今、こういったリスク管理については、評価もそうですけれども、 PDCA サイクルということがよく言われるところです。要は資産運用の重要事項について、まず審議を行う、基本方針の改定等について審議をまず行うことをやった上で、それが十分に実施されているかどうかについて、また資産運用委員会においてその実績の評価を行うことで、更により良い資産運用の実績につなげているという、 PDCA サイクルが十分に回っていることもメリットとして考えられるところですので、今回、このような体制を検討したところです。

○勝部会長 ほかに何か御意見はございますか。島村委員、どうぞ。

○島村委員 質問ではないですが、 17 ページの掛金月額の経過措置について、先ほど御説明があったように私からお願いして、こういう形になったと思います。是非、実現していただければ嬉しいと思っているのと、先の話ですが、実現した暁には我々も周知してまいりますので、厚生労働省や機構からも周知の徹底をよろしくお願いします。

○勝部会長 ありがとうございます。ほかに御意見は、新田委員。

○新田委員 話を資産運用委員会のほうに戻させていただきたいのですが、先ほど川野委員がおっしゃったのと同じことを実は私も感じていて、それは何かと言うと、正に今回、資産運用委員会を設置してガバナンス体制を強化するという方向性はすごくいいということです。ただ、少し引っ掛かっているのは正に任命の方法と、どのような人を任命するのかという部分です。とりわけ社会保険料と違って、この中退共制度の掛金の拠出は事業主が全額を拠出していますので、こういった委員の中に使用者側、事業主の意向なりを反映できるような人が、選ばれるのかどうかが非常に気になっています。そういった部分について何か担保されるのかどうか、どのような任命の仕方をお考えなのかについて、お考えがあれば事務局の方にお伺いしたいと思います。

○松原勤労者生活課長 先ほどの私のお答えと重複するところもあるかと思いますが、もう一度、お答えさせていただきます。資産運用委員会設置の趣旨として、経済金融情勢の関係でかなりリスクが最近は大きくなってきている。それを適切に管理していくという観点で、経済金融の専門家、言い方を変えれば、法律上の用語としては、恐らく「経済又は金融に関して高い識見を有する者」になろうかと思いますが、そういう方々を念頭に置いた選任が行われることになろうかと思います。

 一方で、そのような方が就任するのがふさわしいということです。この就任に際してどういう人を選ぶかですが、全く中退共制度の趣旨、特にポイントとしては退職金制度であり、中小企業を対象にしているということ、あるいは、今、委員がおっしゃったとおり、事業主が拠出して相互共済の仕組みを作っていることが、本制度のポイントであり、その枠内で先ほど申しました運用に当たっては安全かつ効率的な運用が行われなければいけないという枠がはまった中での運用を行うことについての審議をやることを十分に御理解いただき、併せて、単純に経済金融についての専門家というだけでなく、そういったことの識見も含めて持った方が当然選ばれるべきであろうと考えているところです。そういったことで選任が考えられていくのだろうと思います。

 実は勤退機構というのは、御承知のとおり資産運用というのがありますけれども、いろいろな業務を実施しています。中退共制度については当然、加入促進のところから実際に掛金を収納して、その資産を運用し、先ほど未請求退職金発生防止対策もありましたけれども、退職者を追いかけて退職金を支給するという幅広い業務をやっています。そういった資産運用も含めた幅広い業務の中で、機構の内部的な組織ですが、例えば一般中退と特定業種に分け、それぞれの関係している労働者側あるいは使用者側の団体から入っていただいた参与制度も設けているところです。そういった中で、現行におきましても資産運用の状況や評価も報告いただいていると聞いていますので、そういった仕組みを生かしながら関係者の御意見を踏まえた制度運営を行っていくことが、適切かつ効率的ではないかと考えているところです。

○新田委員 後段 3 行の部分ですが、先ほど課長もおっしゃったとおり、この資産運用のところは事前の話と事後の話と 2 つあって、私が間違っていたら申し訳ありませんが、恐らく参与制度でかかっているのは、事後の話がメインではないかと推測できるところです。もしそうであるなら、私の先ほどの問題意識というか、その解決にはならないと思います。したがって、何かしら参与制度のあり方、議題の取り上げ方、あるいはタイミング等々を御検討いただくなり、何かしら工夫が必要ではないかと思います。事業主が全額拠出している中で、そこに何かしらの関与できるあり方、あるいは枠組み等があって然るべきではないかという私の問題意識ですので、その点、すぐ回答は難しいと思いますけれども、是非、事務局内でも御検討いただければと思います。

○松原勤労者生活課長 御意見として承らせていただければと思います。

○小野委員 資産運用の件で、最初は私の個人的な意見ですが、昨今のニュースなどを見ていますと、 GPIF の運用の方針が世間的にはガラッと変わってしまったということが、恐らく皆様方の中で少し引っ掛かる部分になってくると思います。今、委員の方々から御指摘があったとおりで、公的年金の積立金と中退共の積立金は性格が違うのだということではありますが、そこのところが少し気になっているということなのだろうと理解しました。

 それで、どの辺が具体的に違うかという話になると、 4 ページの指摘事項の中に、「かつて多額の累積欠損金が生じる状況があったことを踏まえ」といったことがあり、少なくとも中退共の制度や特定業種も含めて、毎年毎年バランスシートを作り、そこで債務からの欠損金の程度を、だいぶ気にしなければいけない状況になってくるのではないかと思います。そこが公的年金の積立金と少し趣が違うところではないかと思います。この欠損金の発生に関しては、専門家についても相応の注意をしなければいけないところがあり、結論的には、そのあたりが要因となって違ってくる可能性があるだろうと思います。

 ここから先は質問ですが、この資産運用委員会で設定するのが基本ポートフォリオということですが、この基本ポートフォリオは一般中退と特定業種がありますけれども、その基本ポートフォリオの策定というのは、それぞれで行うのかどうかという質問です。もし行うとすれば、恐らく平成 27 10 月に立ち上げた上で、その年度内に基本方針を設定する。一方、林退共のほうは平成 27 10 月から予定利率が変わるという話になってくるわけで、そのあたりです。予定利率の引下げは早くやることに越したことはないというのは、そのとおりなので、そのこと自体は反対しませんが、そのあたりの関係について少し御説明いただきたいと思います。

○瀧原勤労者福祉事業室長 まず、御質問のポートフォリオですけれども、これは 4 つの共済と言ったらよろしいですかね、一般中退と建、清、林、それぞれにポートフォリオは設定することになります。ですから平成 27 10 月から立ち上げ、基本的にはその年度中にポートフォリオをそれぞれ 4 つの部分を策定し、実施時期を確定するときの基本的イメージとしては平成 28 4 月からという形になろうかと思いますが、そこは順次というのはあり得ると思います。林退共の予定利回りが 0.7% から 0.5% に引き下げる部分と同時のスタートには、今のところは、ならないと思っています。

 一般の場合には、 0.7% から 0.5% に下げますので、その 0.5% に見合ったポートフォリオというのが考えられるところですが、今回の場合は赤字を解消していくことが目的ですので、どちらかというと新しいポートフォリオは下げることだけでなく、従来の赤字解消に向けてどうするかという議論になりますから、そこの部分は 0.7% 0.5% に下げる時点と同時でなくても、やっていけるのかなと思っています。

○勝部会長 ほかには何か御意見、鹿住委員、お願いいたします。

○鹿住委員 遅れて来て申し訳ありませんでした。 20 ページ、 21 ページで、企業間通算の申出期間の延長あるいは未請求退職金発生防止対策の強化、これは大変好ましいことだと思いますし、これまでも勤退共さんの御努力によって未請求退職金も減ってきていると思います。ただ、企業間で転職しても通算できますと言っても、被共済者の方御本人がこの中退共に入っていることを認識していないと、御自分から手続を取ることは非常に難しい話だと思います。円満退職ばかりではないと思いますので、元の勤務先に入っていたかを問い合わせて、次の勤務先に「お宅も中退共さんに入っているんですか」と、御自身から問合せする方はなかなかいないのではないか。まして自分が被共済者だと自覚していなければ、そういったアクションも多分されないと思いますから、是非、未請求退職金の発生防止も含めて、被共済者の方に「あなたは中退共に入っていますよ」と、直接、お知らせするような仕組みをお作りいただけないかと思います。多分、契約者の企業を通じてということはなさっているのだと思いますが、ただ、企業が個々の被共済者の方にお伝えいただいているかどうかは確認できていないかと思いますので、そのあたりの確認も含め、請求漏れのないようにということを、是非、心掛けていただければと思います。

○勝部会長 機構として。

○鹿住委員 そうです。

○松原勤労者生活課長 御意見、ありがとうございます。現行の仕組みについて、竹田補佐から簡単に御説明させていただきます。

○竹田勤労者生活課課長補佐 私から現状を説明してまいります。機構のほうでは毎年。

○松原勤労者生活課長 今の発生防止対策の取組、やっていることを。

○竹田勤労者生活課課長補佐 今の発生防止対策につきましては、未請求者に対しては退職金の退職届が提出され、それから共済手帳とともに関係書類を提出していただくとなっていますが、 3 か月経ってもその提出がない方については、機構から、退職金を請求してくださいという連絡をしています。そして 2 年経っても請求がない方に対しては住所を調べ、その住所に退職金を請求してくださいという通知をしています。さらに 5 年経った時点でも再度、請求してくださいということをやって未請求対策に取り組んでいます。

○松原勤労者生活課長 今回、住基ネットの活用ができるとなると、住所がひとつのキーになっていると思いますから、より強化ということで私どもあるいは機構のほうで取り組んでいきたいと思っています。

○松岡委員 今の未請求対策の関係で、制度としてできるかどうかは別なので要望ですが、実は自分たちの所で建退の関係を扱っているのですけれども、自分が入っていたことも分からないで、手帳の申請、加入の手続をすると、以前に入っていましたねということがままあるのです。場合によっては、かなり前に入った方について言うと生年月日と名前だけの管理になっている事例もあって、二重で入っていることに未だに気が付いていない事例もあると思います。住基ネット等との関係をどうするかは、これからいろいろ議論されるのだと思います。

 もちろん、加入者ということで言うと事業主さんのほうですが、被共済者、個々の労働者のほうから自分が加入している制度について逆にたぐれるというか、以前に勤務していた会社が実は中退をやっていたことが周知されていなかったとか、以前、建設業にいたときに実は建退に入っていて資格があったとか、そのようなことが何らかの形で被共済者のほうからたぐれる仕組みというか、そういうのを少し検討していただくと、要は、今は独法のほうでいろいろ努力している範囲で支給をしてあげますよ、請求してくださいという働きかけだけなのですが、「私、もらえるはずなんで、調べていただけませんか」という働きかけが可能になるような方法を、今、別にアイデアがあって言っているわけではないですが、住基ネットやマイナンバーというお話が出ているので、そういう御検討もお願いできればということです。

 もう 1 点、先ほどの資産運用の関係で、ここで欠格条項の関係がありますが、実際、資産運用の関係というのは運用委員会では、ポートフォリオは決めるけれども、例えば運用委託先を決めるところには関与されないのでしょうか。そこも運用委員会が運用委託先の選定にまで関与するとなると、かなり欠格条項が広がるというか、そんな気がするのですけれども、いかがですか。

○瀧原勤労者福祉事業室長 最後の運用のところですが、基本的にポートフォリオの決定自体は業者とは全く関係ありませんので、そこで関わることはないと思います。実際、業者を選定するのは機構の実務の部隊ですので、そこが選定することにはなりません。ただ、今度は評価の問題が入っていますから、評価するときに今回の運用がちゃんと選べているかどうかという判断も当然入ってきます。そういう意味では、この欠格条項は非常に重要になってきて、自分の所の関係する所に対する委託について甘く評価するみたいなことがあってはいけませんし、そういう意味での関わり合いは出てくると思います。ただ、選定には入らないことを考えています。

○松原勤労者生活課長 あと前者の問題につきまして、住基ネットの活用については、運用でどういうことができるかはまだ検討していますから、今の御意見も踏まえて検討を続けたいと思います。

○勝部会長 よろしいでしょうか。それでは、事務局には今日、いろいろ御意見も出まして、特に資産運用委員会についてはいろいろ出てきましたけれども、各委員の御意見を踏まえて、この方向性を基に次回までに独立行政法人改革に関する中小企業退職金共済法の改正について、本部会としての取りまとめ案を作成していただき、次回はそれを基に議論して取りまとめたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、次の議題に移らせていただきます。資料 3 、「中小企業退職金共済制度と企業年金制度とのポータビリティの拡充等について」です。こちらについて、まず事務局から御説明をお願いいたします。

○松原勤労者生活課長 それでは議題 3 は資料 3 です。こちらを用いて御説明いたします。また、併せて机の上に「これまでの部会議論を踏まえた方向性」の 3 枚紙が置かれていると思います。これも横に取り出しておいていただければと思います。まず、本体資料の目次です。今回、この部会において初めて企業年金制度とポータビリティについて御議論を頂くことになりますので、まず、企業年金制度の内容なり、現況を簡単に御紹介します。その上で企業年金制度全体の見直しの議論を行っている社会保障審議会企業年金部会において、ポータビリティの議論を中心にどういうような議論がされているかを紹介させていただければと思います。 4 ページは、先ほどの議題 2 の説明と重なるところもありますが、各種の企業年金制度と中退共の仕組みについて整理しております。 1 番左は確定給付企業年金 (DB) というものです。制度の特徴については、太いゴシックの部分がポイントです。将来の給付額が規約等であらかじめ規定されていることが最大の特徴です。本体名称の中に確定給付という言葉が用いられております。また拠出者は原則事業主であり、制度上の支給開始年齢はありますが、その前の中途引き出しが可能となっているということですので、多くの企業では実質的には退職金制度で活用されることが多いと聞いております。

 次に確定拠出年金 (DC) です。企業型と個人型がありますが、まず、この 2 つに共通しているのは制度の概要の部分の太いゴシックの部分です。いずれも拠出した掛け金と運用益により給付額が決定されます。そのため、確定しているのは拠出額ということで確定拠出という言葉を用いられております。また、給付の仕組みについては、いずれも支給開始年齢は原則 60 歳となっておりますが、それ以前の引き出しができないことになっております。したがって、中退共や DB のように退職時に退職金として受け取ることはできない制度です。また、企業型と個人型の違いですが、一番大きな違いは企業型厚生年金が適用される事業所に加入している事業の対象として、原則として事業主が掛け金を拠出するのに対して、個人型は自営業者や企業年金を実施していない事業所の従業員が加入し、また、加入者自身が掛け金を拠出することになります。その他、特に給付の仕組みには大きな違いはないということです。

5 ページは、現在の制度の体系です。一番下に公的年金である国民年金があり、これは全国民が加入するものです。その上に一般的には 2 階部分と呼ばれていますが、サラリーマンが加入する厚生年金保険があります。企業年金制度は、その上に公的年金を補完する私的年金とされており、一般的には 3 階部分の年金制度と呼ばれております。それぞれの制度の加入者は、 DB 788 万人、 DC 企業型は 464 万人、 DC 個人型は 18 万人となっております。

6 ページは、近年の動向です。厚生年金基金についても付記しております。まず、 DB については、平成 14 年まで存在していた適格退職年金に代わる制度として発足した経緯もあり、適格退職年金からの移行が進められていた平成 23 年度末までの期間は加入者数が増加しておりましたが、それ以降やや減少傾向に入っております。他方、 DC は加入者数が順調に増加しており、平成 25 年度末としては、先ほど御紹介したとおり 464 万人となっております。

7 ページは、社会保障審議会の企業年金部会について紹介しております。上の箱にあるとおり、厚生年金基金の特定解散制度と併せて、公的年金制度の在り方の議論を踏まえつつ、今後の確定給付企業年金制度や確定拠出年金制度等の企業年金制度全般のあり方等についても、より専門的な見地から議論を進めていくことで、この部会は設置されております。

8 ページは、この部会の議論のこれまでの経緯です。ここに出てくる前の 6 月から 7 月にかけて、労使の団体や、実際に企業年金の運営を各企業から受託している金融機関の団体にヒアリングを行って、 7 月の第 7 回部会で議論の方向性の取りまとめが行われました。それを受けて具体的な見直しの内容が 9 月から事項別に行われております。特に税制が絡む課題を中心にして月 2 回程度の頻度で開催されてきております。

 具体的には右に掲げている内容ですが、特に下線を引いているライフコースの多様化への対応については、これは企業年金部会の言い方を借りますと、人生の中で複数の会社を経験する者が増加するとともに生涯の中で被保険者の期間が短くなることが見込まれるなど、就労の有無を含めた就労形態の多様化が進んでいることを踏まえて、制度の見直しができないかということです。また、机の上に配布した資料の 1 ページには、企業年金部会において、今後議論が進められるべき事項がまとめられております。上の箱に書いてあるのが、まず税制改正が必要なものを整理しているものです。これ以外にも見直し事項が存在しており、今後、企業年金部会で引き続き議論がなされていくものと承知しております。

 なお、この紙で言いますと、上から 5 つ目に「企業年金等のポータビリティの拡充」を掲げており、中退共についても言及されております。なお、下の※の 3 つ目に、中退共とのポータビリティの拡充については、労働政策審議会の議論が必要と書かれております。そういった観点から、本部会においても是非御議論をしていただければと思います。

9 ページです。前回の部会で新田委員から簡易型 DC についての紹介の御要望がありましたので、この紙で御説明させていただきます。 9 月の第 8 回の企業年金部会で中小企業向けの取組という会があり、この紙自体は、そこの資料の 1 つとして説明されたものです。その内容は、 DC 自体は、事業主に対して様々な義務が課されております。特に従業員数が 100 人以下、左側の真ん中に「事業主の条件」とありますが、この 100 人以下の小規模事業所等を対象として、拠出額や商品提供数、あるいは適用対象者等が決められています。これを単純化して、また右側の行政機関への届出を一部省略して、事業主の事務負担を軽減させて、このような小規模な事業主にも DC を導入しやすいようにする制度を簡易型 DC として設けるものです。また、具体的な内容は、今後、企業年金部会の中で更に議論されることと承知しております。

10 ページ以降で、企業年金部会におけるポータビリティの議論について紹介いたします。 11 ページは、 7 月の第 7 回企業年金部会で提出された資料で、議論の方向性の資料を掲載しております。まず、 11 ページは、先ほど労使の団体等にヒアリングをしたと申し上げました。この中で 3 つ目の○ですが、中小企業退職金共済の制度は、一定の条件になると加入できないという意見が、経団連、日商から出てきております。

 こういったことも受けて、 12 ページに、今後の議論の方向性として課題が挙げられております。 3 つ目の□ですが、中退共等の他制度との関連について、制度間の連携強化やポータビリティの向上等を通じた企業年金等を継続しやすい措置について、今後議論していくこととされております。

13 ページ以降は、 10 14 日の第 10 回企業年金部会の資料です。簡単にその内容を御紹介します。 13 ページは、例えば転職等をした場合には、企業年金から一旦脱退するわけですが、その場合に制度の加入期間が途切れることの問題点を整理した資料です。特に DB ですが、一定の加入期間に到達しなければ、まとまった額の年金給付は受けられなくなるということで、その要請が大きいものと考えられます。その問題点を一番下にゴシックで書いております。「同じ期間働いたとしても、転職したかどうかによって、将来年金としての支給を受けることができなくなる可能性があるなど、企業年金としての役割が十分に果たせない可能性がある」という問題点が挙げられております。

14 ページは加入者です。転職した場合などに、それぞれの制度の加入期間が通算できるようになった場合のメリット等を整理しております。加入期間が通算できる場合は、当然ながら、将来においてまとまった額の給付を受けることができますので、それを希望する労働者にとってはメリットになると考えられます。ここでも下のゴシックに書いてありますが、「ポータビリティの確保により、転職先の制度設計や下記の可能性を考慮に入れた加入者にとっての選択肢が拡がる」のではないかと考えております。

15 ページに、制度間のポータビリティの課題、あるいは 16 ページで現在のポータビリティの現状を整理しております。この点については、後ほど別途配布した資料で説明させていただきます。ここでは説明は割愛させていただきます。

17 ページには、以上の点を踏まえて、制度間のポータビリティの論点が整理されております。 2 つ目の○ですが、「制度間のポータビリティがない部分について、現場のニーズを踏まえつつ、原則として認めていく方向で検討してはどうか」と挙げられております。なお、下に※が 2 つあり、留意点が挙げられている推移になっております。企業年金制度、あるいは中退共もそうですが、それぞれの制度の違いから税制上も異なる措置を受けている現状があります。仮にポータビリティを講じることになれば、必要な税制改正を行う必要があります。また、中退共における制度改正も、当然ながら、労政審中退部会における議論が必要であることをここに書いてあります。

 別途配布資料の 2 枚目と 3 枚目で、中退共を中心としたポータビリティの現況について整理しておりますので御説明します。制度間のポータビリティと言ったときに、個人単位の資産移換と事業主単位の資産移換に分けて考えたほうが議論としては整理されたものになりますので、ここでは分けて書いております。

 個人単位のポータビリティですが、中心に中退共を置いております。左側にある制度の中退共同士、あるいは特退共については、相互間のポータビリティが可能となっております。しかし、右側の DB DC との関係では措置がされていないということです。

3 ページは、「事業主単位のポータビリティ」です。まず、中退共を真ん中に置いておりますが、中退共から出す場合、現状では、 DB なり、特退共に対しては、中小企業でなくなった場合に、出すほうは出来ることになっております。これは中退共は当然中小企業しか可能とすることができませんので、仮に中退共に加入している事業主が中小企業者でなくなった場合には契約を解除しなければいけません。要は、追出先として DB なり特退共、また先ほど御説明したような DC( 企業型 ) との間で、出すほうは出来ることになっております。それ以外の場合は、つまり、中小企業でなくなった場合以外については、現状では認められていないということです。中退共に移る場合は、制度そのものが廃止された適格退職年金なり、解散する厚生年金基金については、受け皿として資産移換を認めています。また、先ほど独法改革の流れで御説明したとおり、特退共を廃止した場合について、事業を廃止した団体については、中退共に持っていくことができることを今回措置することにしております。一方、 DB なり、 DC からは現行では措置されていないことになっております。以上が資料の説明です。

 再度、考え方の流れを整理しますと、ポータビリティについては、就業形態が多様化する中で、加入者も選択肢を拡大して、老後の所得の確保に向けた自助努力の環境を向上させる観点から、原則認めていくという一般論が企業年金部会で示されております。一方、中退共制度と企業年金制度との間のポータビリティの拡充を考えた場合、中退共については、先ほど何度か出てきましたが、これ自体が労働政策や中小企業政策の一環であるという整理がなされております。あるいは退職金という労使については重要な制度を取り扱っていること。また、事業主の相互扶助の仕組みである共済制度の性格も持っていることも、中退共制度の特徴として挙げられて、こういった面で、企業年金制度とのポータビリティをどう考えていくかという考え方も、一方であります。こういった両方の視点で御検討を頂く必要があるのではないかと考えております。

 なお、先ほど部会長の御発言にもありましたとおり、本日は、事務局としての方向性を、実は確たるものを持ち合わせている状況ではありませんので、この場では私の今の説明に対する御質問なり、あるいは委員各位のいろいろな御意見を賜わることができれば幸いです。よろしくお願いいたします。資料の説明の中でもありましたが、いずれも実は税制改正法と、かなり深く関わっている事項です。仮にポータビリティを措置した場合の税制上の整理についても現在、税務当局と調整中であることを申し添えたいと思いますので、よろしくお願いします。

○勝部会長 今、課長が言われたとおり本議題については、事務局からの説明を聞いて、各委員からの質問を受ける、あるいは意見を述べていただくことにとどめて、次回の議論につなげていくことと考えておりますので、よろしくお願いします。

○新田委員 感想と意見を申し上げたいと思います。まず、感想ですが、前回の部会における私の求めに応じて簡易型 DC の資料を出していただきまして、お礼を申し上げます。それを聞いての感想ですが、中身はこれから詰めていくにしても、中退共に対して強力なライバルが出現してくるという感じがしております。加入促進、あるいはこの制度の魅力をますます高めていく必要があるというのが、まずは感想です。

 意見のほうですが、ポータビリティの話で、これまでの部会の議論を踏まえての方向性の資料の 3 ページに、事業主単位のポータビリティの御説明が先ほどありました。これまで中退共から、 DB だけにしか移換できなかったものが、今回 DC のほうに移換措置予定ということで、これは方向性として大変望ましいと思っております。ただ、 DB もそうですが、まだ現在、中小企業でなくなった場合にしか認められないという部分があり、ポータビリティの向上という観点からすると、やはり条件というのは本来なくしていくべきではないかというのが私の意見です。企業買収等々で、自分のグループ会社に入った中小企業が中退共に加入していたため、自社の制度に合わせようとするときに、中小企業のままだと移換ができないという実態がありますので、先ほど申し上げたように、条件なしの移換が認められる方向で御検討をいただけないかと思います。

○勝部会長 もっと柔軟にということですね。それでは、御意見として承ることにしたいと思います。ほかに何か御質問、御意見等はありますか。

○大塚委員 今の御意見にもありましたが、選択肢が広がるのはよろしいかと思うのですが、他方で中退共の本来の趣旨というのが、やはり中小企業で働く労働者の退職金を、みんなで助け合って作っていく制度です。一方で、例えば DC 等にこれが移換した場合、その辺りは本来の趣旨とは少し外れるのではないかという気も一方でします。もう 1 つは、例えば確定拠出年金に移行する場合に、やはり労使で一緒になって検討するのですが、そういう場が果たしてできるのかと私は心配します。

 と言いますのは、ここに簡易型 DC があるように、 100 人以下の事業規模は、労働組合の組織率では 1 %なのです。したがって、そういうところでいきますと、労働者の意見がどういう形で反映されるのか、私は非常に危惧するところです。以上です。

○勝部会長 これも御意見として承りたいと思います。ほかにはよろしいですか。

○内藤部会長代理 これはある意味で意見というより感想ですが、これを伺って思うのは、労働市場の流動性を増す、あるいは増していく中で、こういったポータビリティ制度が必要であることに何ら反対するものではありません。将来的には必要な措置だとは思うのですが、例えば、企業年金部会のお話を伺って思うのは、これは恐らく中退共などの場合には、将来の年金であると同時に、恐らく退職金の確保という意味合いが非常に強いのではないでしょうか。そうしますと、退職金としての支払いと、年金としての支払いとは、かなり制度構築が変わってくる部分があるかなという気もしております。もちろん、まだまだ今後の課題ですので、これから何年もかけて議論すべきものではありますが、その辺りを一様に全て年金であるかのように扱い、ポータビリティが増せばよいというだけの考えでは、何か問題が出てくる危険性もあるかと少し危惧されます。

 それと同時に、これだけ制度が複雑になってきますと、先ほど鹿住委員、あるいは松岡委員からも御意見があった点ですが、これを受け取る労働者側がどれほどの知識を持っていらっしゃるだろうかと案ぜられます。大変失礼ですが、よく分かるような周知・広報に、より力を入れないと受給権者自身 は一体何をやっているのか全く分からない。それが恐らく未請求問題などにもつながってくるかと思いますので、その辺りに、より一層力を入れていただくと幸いです。

○鹿住委員 全く今の御意見に賛成ですが、流動性が増すことは、もう 1 つ被雇用者から被雇用者ではなくて、例えば被雇用者と自営業者。自営業者から派遣労働になったり、また自営業者になったり、被雇用者の間だけではなくて、自分で独立して自営する方も増えてきているのです。そういったときに、それは、この部会や企業年金部会の対象ではないかもしれませんが、個人事業主の退職金制度ということで、中小企業庁所管の小規模企業共済制度というのがあるのです。小規模企業共済制度も、この部会での議論ではないかとは思いますが、それも視野に入れて、全体の制度の整合性を考えていかないと、流動性に対する対応という点では不十分ではないかと思います。

 実は小規模企業共済のほうも、自営業者の退職金制度とは言っているのですが、実は老齢給付で分割支給もやっておりまして、年金的な性格も持っているのです。老後の資金の確保というものです。更に言うと、小規模企業共済のほうは、世代間のポータビリティが今できるようになっています。事業承継した場合、先代の方から事業承継者に対して契約を引き継ぐことができるようになっていると。そういったポータビリティもやっていることも御紹介したいと思います。そういったライフコースの多様化とか、働き方の多様化に対して、トータルな制度の整合性が必要ではないかという意見です。

○勝部会長 よろしいですか。今、いろいろ御意見を頂きましたので、特性も踏まえつつ体系的に少し整備をする必要があると思います。先ほど申し上げたとおり、事務局には、テーマについては引き続き検討を進めていただきたいということで、次回以降で更に議論を深めることにしたいと思います。よろしいですか。

○小野委員 資料 3 4 ページ、個人型 DC の拠出限度額の欄ですが、個人型というのは 1 号加入者と 2 号加入者とがありまして、 2 号というのはサラリーマンですが、企業年金の支援がない人たちです。これらの方については拠出限度額が変わっており、これよりもかなり低い額だったと思います。 1 点、それを御指摘申し上げたいと思います。

 私も皆さんと大体意見は同じですが、労働者の老後の生活のための資産形成を促進していくという意味では、ここに挙げられた制度も含めて、場合によっては退職手当金や、財形年金であるとか、そういったことも含めて、もし企業を辞めた後に受け皿がないという状況になってしまうと、それは資産形成のためには非常にマイナスになるだろうと。そういう観点からすると、ポータビリティは促進すべきだと思います。その意味で、先ほど御指摘もありましたが、 3 枚ものの資料の中の事業主単位のポータビリティということで、それこそ事業再編によって、制度の行き場がなくなってしまうというケースです。これについては、是非とも措置しておかなければいけないと思います。

 更にこれを個人の転職という形に広めるというのは、 1 つ促進すべきことではあると言える一方で、ある種、こういうことが日常的に行われることは、これにポータビリティを通して関連する制度を一括りにされて考えられるかもしれないという可能性があるので、そこは年金には年金の理屈があると。それぞれの設計思想が違ったりとか、あるいはそれこそ税制措置が違ったりとか、そういったことが今現在ありますので、こういった状況も踏まえながら、検討を進めていく必要があるのではないかと思います。以上です。

○勝部会長 いろいろ貴重な御意見をどうもありがとうございました。本日の議題については御意見は出尽くしたと思われますので、本日の部会はこれにて終了とさせていただきます。最後に事務局から今後の日程について説明をお願いします。

○山口勤労者生活課課長補佐 今後の日程について御連絡します。次回は 12 16 ( )16 時~ 18 時までということで、厚生労働省 12 階の専用第 14 会議室での開催を予定しております。本日、御議論を頂いた独立行政法人改革に関する中退法の改正については、先ほどの部会長の御指示に基づいて、次回の部会において取りまとめ案をお出ししたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○勝部会長 よろしいですか。それでは、本日はこれにて終了いたします。最後に本日の議事録の署名委員は川野委員と新田委員にお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会)> 第57回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録(2014年12月3日)

ページの先頭へ戻る