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2013年4月18日 第77回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年4月18日(木) 14:30~17:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 井伊委員 江藤委員 大澤委員
川越委員 桐野委員 西島委員 野村委員
福井委員 松田委員 宮田委員 門田委員
山田委員 渡邉委員

○議題

1 平成25年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(二次)について
2 遺伝子治療臨床研究について
3 ヒト幹細胞臨床研究について
4 平成25年度戦略研究課題について
5 その他

○配布資料

資料1平成25年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(二次)(案)
資料2遺伝子治療臨床研究実施計画及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見について
資料3遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見について
資料4遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づく第一種使用規程の審議について(案)
資料5-1ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料5-2ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料6戦略研究新規課題案について
資料7遺伝子治療臨床研究実施計画の変更に係る意見について
資料8遺伝子治療臨床研究に関する実施計画からの報告について
資料9疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しについて
資料10厚生労働科学研究費補助金における不正使用等の事案に係る公表の方針について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4戦略研究について

○議事

○尾崎研究企画官 
 ただいまから、「第77回厚生科審議会科学技術部会」を開催します。委員の皆様には御多忙の折お集まりいただき、御礼を申し上げます。本日は、6名の先生方から御欠席の連絡を頂いています。今村委員、菊池委員、塩見委員、玉腰委員、橋本委員、山口委員の6名は、御欠席です。出席されている委員は過半数を超えていますので、会議が成立することを報告します。
 本日の会議資料の確認をします。資料の一番上に議事次第があり、そこに配布資料が載っています。資料番号だけを読み上げますので、御確認ください。資料1、資料2、資料3、資料4、資料5-1、資料5-2、資料6、資料7、資料8、資料9、資料10、資料11です。参考資料として、参考資料1、2、3、4です。資料の欠落等がありましたら、事務局にお申し付けください。よろしければ、永井部会長、議事進行をよろしくお願いします。
○永井部会長 
 早速、審議に入ります。平成25年度厚生科学研究費補助金公募研究事業(二次)について、御審議をお願いします。事務局から、資料の説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料1を御覧ください。表紙に「厚生労働科学研究費補助金公募要項(二次)」とありますが、現段階では案です。今回の公募については、3月5日の科学技術部会で報告した厚生労働省の平成25年度科学技術関係予算案のうち、重点事項である「医療関連分野におけるイノベーションの一体的推進」の関連で、厚生労働科学研究費補助金で推進する部分についての公募です。
 内容としては、がん、難病・希少疾病等の8つの重点領域の日本発の革新的医薬品・医療機器等の実用化を目指した研究などが対象です。これについては、今は平成25年度が始まっていますが、一次公募の検討のときには、まだ予算の扱いがどうなるか分からなかったというところですが、予算案も衆議院を通りましたので、この公募についても進めたいというものです。もう1つが、昨年末の一次公募の際に適当な応募課題がなく、採択に至らなかった公募課題や、新たに生じた行政課題についての公募も併せて、この中で行うことにしたものになります。
 公募要項案の資料に基づいて、どのような事項、研究課題が構成されているか等について説明をします。時間の都合上、各研究事業で公募する課題の一つひとつの内容の説明は省略します。なお、今回の関連事業の公募の新規採択方針についても、3月28日から4月6日までの間パブリックコメントを求めたわけですが、意見は1件もなかったことを報告します。
 資料に基づいて説明していきます。1ページを御覧ください。今回の関係の公募については、ここの四角に囲まれている研究事業の中で行う分野、研究課題についての公募を行うということです。4ページ以降には公募に関する諸条件が記載されています。基本的には従来と変わっていません。
 7ページです。応募に関する諸条件は変わっていないと申し上げましたが、(4)応募に当たっての留意事項のア、イを御覧ください。前回の科学技術部会において、不正使用等が行われた対応については、私的流用等が起こった場合には、ペナルティーとして、公募できない期間については5年を10年にするとか、研究費の不正経理に直接関与していないものの補助金を管理する責任者としての義務に違反したと認められる場合は、何らかのペナルティーを掛けることについて報告したかと思いますが、その内容が記載されています。
 11ページを御覧ください。ク.「府省共通研究開発管理システムについて」という所があります。これは通称「e-Rad」と言われているもので、研究費の申請・応募については、e-Radのシステムで電子的に行うということで、申請時に申請書の書面提出は求めないことが書いてあります。
 (ア)の操作方法に関するマニュアルですが、操作方法に関するマニュアルについては、これまでも科学技術部会に提出してきたわけですが、かなり分厚いので、今回は省略しています。
 そのほか、いろいろな注意事項が記載されていますが、公募までの間にいろいろな訂正や、よりよくする場合には、ここの文章は修正されることを御承知おきください。
 14ページを御覧ください。(5)の「公募期間」です。これについては本日、4月18日の科技部会が終わった後に、先ほどのe-Radのシステムへの事務作業等を行い、それが終了次第公募することを考えており、公募期間は従来どおり1か月程度を予定しています。5月から6月初めに、問題がなければそのぐらいの時期になるということで御承置おきください。
 20~21ページは、今回の公募に関する関係事業の担当課の一覧です。22ページを御覧ください。公募要項ですので、研究課題がどのように採択されるか、その内容について、IV「研究課題の評価」が24ページにかけて記載されています。
 25ページを御覧ください。これが先ほど四角で囲まれていた部分や、IIIで囲まれていた公募研究事業の概要です。公募要項ですので、そこにもありますが、今回は一般公募型と、研究事業によっては若手育成型の公募も行うということです。これ以降については、各事業の公募が載っているわけですが、どのような記載の構成になっているか説明をします。
 25ページの真ん中辺りの1の(1)「再生医療実用化研究事業」を御覧ください。事業概要があり、その下に今回の「新規課題採択方針」があります。次のページに行き、基本的には、研究費が1課題当たりどのぐらいの額か、研究期間が何年かを示しており、その後に予定の課題数があります。
 また、一般公募型で、我々としてはどういう課題について公募をしたいかは、26ページの丸1です。例えば、この事業であれば、「ヒト幹指針に従って実施するヒト幹細胞を用いた再生医療の臨床研究」に書いてあるような内容を公募するということです。その後、研究事業によって違いますが、応募条件、研究計画書への添付書類、そういう項目が記載されています。
 29ページを御覧ください。(2)「創薬基盤推進研究事業」があります。ここの課題では、29ページの下の「一般公募型」で「コンパニオン診断薬としての薬事承認を目指した臨床試験への橋渡し研究」と記載されています。今回の公募については、一番最初に申し上げたとおり、「医療関連分野におけるイノベーションの一体的推進」において、日本発の革新的医薬品・医療機器等の実用化を目指した研究などの項目に当たるものや、それに関係するものですので、この事業もその関係になります。
 特徴的な話としては、この事業であれば、29ページの中ほど辺りの「新規課題採択方針」の文章の「なお」以下の所で、文章を読み上げると、「医薬品開発に関する採択課題については、採択後に独立行政法人医薬基盤研究所に新設される創薬支援戦略室と協力し、推進する」と書いてあります。この医薬品の開発に関わる事業については、全てこのような名前が以下に書いてありますので、御留意いただければと思います。
 33ページを御覧ください。「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業」は、34ページの第3段落「このうち」以下を御覧ください。この事業の関係では、先ほど申した2つ目の種類の公募で、「一次公募の際に適切な課題がなく採択に至らなかった公募課題や、新たに生じた課題について二次公募を行う。」ということが書いてあり、それに該当しているものです。
 各事業の個別項目については、時間の関係もありますので説明を省きます。75ページを御覧ください。「公募研究事業計画表」です。先ほど、今回の科学技術部会で御了解いただいた後の公募期間について申し上げましたが、その後の大体の流れが書いてあるものですので、参考に見ていただければと思います。議題1については、説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いします。
○永井部会長 
 ただいまの御説明に、御質問、御意見がありましたら、御発言をお願いします。いかがですか。
○西島委員 
 34ページにもありましたが、「創薬支援戦略室と協力し」ということについて、もう少し具体的にどういうことかを御説明いただけますか。
○福島厚生科学課長 
 基盤研に創薬支援ネットワークの中心的な役割になる創薬支援戦略室をつくるということで、予算が通りましたら、直ちに開始できるように人選、組織の体制の整備を今しているわけです。創薬支援戦略室においては、アカデミアのシーズを見つけてきて、有望なシーズを橋渡しというか、臨床研究にどのようにしていくかという応用研究の部分、いわゆる死の谷をどう埋めていくかをやるわけですが、そこで行う応用研究を、創薬支援戦略室が目利きをしたものについて、この研究費で裏づけをしていくという考え方です。
○西島委員 
 それでも公募になるわけですか。戦略室が目利きをしてしまえば公募にはならないように思うのですが。
○福島厚生科学課長 
 ファンディング機能そのものをここに持たせるわけではなくて、目利きをしたものは、創薬支援戦略室としての立場ですので、研究費としては別途ジャッジは必要であると考えています。
○相澤委員 
 実用研究で、知的財産権の帰属はどうなっているのですか。
○尾崎研究企画官 
 権利の帰属については、採択された研究者になります。ただ、研究者に対して、その権利を使ってたくさんお金が入ってきたといったときには、お金を幾らかこちらに戻してもらうとか、厚生労働科学研究費の規程には書いてあります。基本的には権利は研究者になります。
○相澤委員 
 創薬支援戦略室と協力することになって権利関係の問題が出てくる可能性があるのですが。
○福島厚生科学課長 
 具体的な業務についてはこれから詳細に詰めていくわけですが、基本的には創薬支援戦略室はサポートをするという立場ですので、権利関係については、本来の、もともと開発された方を原則に考えていくべきではないかと今の時点では考えています。
○相澤委員 
 別の話ですが、不正の研究には2つの種類があるのではないかと思います。申請をするときに、不実の記載を含んだもので申請するというものと、研究成果が不正に作られたものだったという場合と2つあると重います。その2つには、現状のこの内容で対応できるとお考えでいらっしゃいますか。
○尾崎研究企画官 
 はい、この内容で対応できると考えています。
○宮田委員 
 創薬基盤推進研究事業は、多分、今回の1つの目玉だろうと、政府全体の目玉でもあると思うのです。今、これは研究者という主語でお話になっていましたが、企業あるいは所属はどういうスコープを考えていらっしゃいますか。むしろこの実用化研究を橋渡しする場合、企業の参画がプロジェクトの初期の段階からかなりあった方が、国民に成果が返りやすいと私は思うのですが、どうお考えでしょうか。
○福島厚生科学課長 
 どこの段階で企業に渡すというか参加していただくのかは、それぞれのものによって違ってくるのではないかとは思います。もちろん、非常に良いもの、良いものと言いますか、かなり実用化に近いものであれば、あるいは有望なものであれば、企業に早くそれを買っていただける可能性はあります。逆にいうと、そうであれば厚生科学研究費を使わなくて、企業の費用で面倒を見ていただくこともあり得ると思います。
○宮田委員 
 今の話からすると、アカデミーとかナショナルセンターの研究者が申請することを暗黙の前提にしていらっしゃるわけですか。
○福島厚生科学課長 
 これは基本的にはアカデミアが持っている優れたシーズをいかに実用化に結び付けるかが創薬ネットワークの目的、狙いですので、基本的にはアカデミアからの申請を前提にしていると。最初の段階では、おおむねそこから出てくる。
○宮田委員 
 今は最初の段階だからしょうがないと思うのですが、実は日本の企業の中で、要するに臨床開発の研究費の資源配分は、必ずしも恵まれない良いテーマがあるのです。それは、要するに企業の資源配分のときに、市場の大きさとか、競合状態とか、そういったところを配慮されているからで、患者のことを余り配慮されてないです。例えば、オーファンドラッグみたいなもので、研究費配分をなかなか受けられない所にも、実は日を当てるべきであろうと考えているので、今年はいいのですが、次の宿題として議事録に載せていただきたいと思います。
○福島厚生科学課長 
 先ほど言った企業からのということもあって、もちろん、ルール上は、企業の研究所からの申請も厚生科学研究は受け付けることになっております。ただ、実際の現実的な問題としてどうかという話のことか、ルール上の問題か、御指摘はどちらですか。
○宮田委員 
 だから、ルールとして明記していないのであれば。
○福島厚生科学課長 
 先ほどの公募要項の4ページの「応募資格者」の所では、民間の研究所は当然、応募資格に入っています。
○宮田委員 
 そうですよね。何年前か忘れましたが、そういう規制緩和があったはずなので、そういうことにも実は気を配っていただきたい。それはなぜかと言うと、この研究費の成果を評価するのは国民なので、そのネタの出所はどこであれ、国民の役に立つものができれば、私は成果だと思っているからです。今日お話を聞いていると、ナショナルセンターの研究者あるいは大学のアカデミーを主に暗黙の前提にしていらっしゃったので、それを明確化したいと思って議論しました。
○福島厚生科学課長 
 そもそも創薬支援ネットワークを考えるときの議論とすれば、企業はそういうシーズを持っていて、企業は企業の中でずっと開発をしてきているわけですが、一方でアカデミアのシーズがなかなか実用化に結びついていっていないことという中で、そこをどうやってサポートするかという仕組みをつくろうというのが、今回の大きな狙いだったものですから、少しそこに重点を置いた説明になりましたが、もちろん科研費としてはそうなっているので、そこは御了承ください。
○宮田委員 
 そこを確認したかったのです。つまり、科研費は何年か前に企業研究者も応募できるような規制緩和があったものですから、そこは精神として保っておいていただきたい。これは余談になりますが、アカデミアの良いシーズも、企業の中で死んでしまう実は良いシーズも、日本の財産なので、そこに区別をする必要は私はないと個人的には思っています。
○桐野委員 
 今の問題と関連しますが、「創薬支援戦略室と協力し」の「協力」の意味が分からないのです。開発の過程では、AというグループとBというグループが協力して何かを行う場合、コンフリクトが起こりやすいと思うのです。つまり大学、アカデミアの開発をしようという方々の基本的な考え方と、基盤研の創薬支援戦略室との考え方が異なった場合は、創薬支援戦略室の考えに従うことと理解すればいいのでしょうか。これは結構ぶつかると思います。
○福島厚生科学課長 
 創薬支援戦略室は、サポートをするチーム、サポートする部門であると私どもは考えており、そういう面では、例えば出口戦略を考えて、どうすれば製品化されているのか、市場に出ていくのかについてのノウハウを持っている方たちが、アカデミアをサポートするというチーム、そういう機能であると考えているので、多分そういうバッティングという捉え方にはならないのではないかと私どもは思うのですが。御懸念の部分がないように、私どもとしても戦略室の運営については考えていきたいと思います。
○宮田委員 
 1つだけ。選考のプロセスをもう少し明確にしていただけますか。どういう形で選考されて、テーマが決まった後で創薬支援室のアドバイスを受けるのか、そこら辺も含めてですね。
○福島厚生科学課長 
 研究としては、評価委員会の評価を受けた後のものになりますが、実際にはシーズを見つけてくるところ、アカデミアにあるシーズで製品化する可能性にあるものがあるのではないかという、正に目利きのところを創薬支援戦略室に持たせようとしているわけで、こちらが先というのは、シーズを評価委員会が見つけるものなのか、申請主義からすると若干そこは異なってくるわけですが、そういう面では目利きをしたものです。
○宮田委員 
 もちろんそうです。当然ではないですか。
○福島厚生科学課長 
 目利きは目利きとして、こういうものが近いよと、つまり製品化につながりやすいものを見つけてくる機能を創薬支援戦略室は持っているわけですから、その部分については、そういう近いものがここにあるということについては、評価をする上でも参考にはなると思います。
○宮田委員 
 そこら辺の心はよく分かるし、組織もできたので、これは善用することを考えなければいけない。その辺りをもう少しきちんと整理してやらないと、ここにいらっしゃる先生が随分懸念をしていらっしゃるような、かえってそういった屋上屋みたいな機能を創薬戦略室が持ってしまうと、ブレーキになってしまう可能性もあるので、そこは整理して、どう関与するかを明示しておいた方がいいと思います。例えば、今おっしゃったことを私風に解釈すると、公募に適した課題がもし目利きで判断できるのであれば、公募を勧奨する、お勧めする機能を果たすのかもしれませんね。
 ここはこれでもう打ち切りましょう。つまり、私どもはまだ準備不足だと判断せざるを得ないので、次の機会にでも、皆さんが懸念したことの無きよう、善用できるという案を教えていただきたいと思っています。今、議論しても、時間の無駄な気がします。
○永井部会長 
 今の点は、要するに利益相反のようなことも起こり得るわけですね。そこをどう手続的に進めるか、事務局で少し検討いただいて、明記した上で公募を掛けることになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○福島厚生科学課長 
 先生、利益相反というのは、事務局としては起こらないと考えています。採択課題については、採択後に支援戦略室が協力をして実用化に向けてやっていくと、ここには書いています。
 ただ、一方で厚生科学研究費を取っている以前のもの、例えば文科省の科研費があるかもしれませんが、見つけたシーズについて実際にやっていく、研究を進めていく方が望ましいものも中にはあるかもしれません。ただ、それも研究を採択するかどうかは、やはり評価委員会の判断によるわけであって、その上で採択されれば、支援室がその後きちんとサポートしていくことになると思います。
○永井部会長 
 支援室は採択には関わらない。
○福島厚生科学課長 
 支援室は採択には関わらないです。
○永井部会長 
 事前にもチェックはしないと、それはよろしいのですね。
○福島厚生科学課長 
 はい。支援室は、飽くまでもサポートをする所です。
○永井部会長 
 決まった後にサポートに入ると。
○福島厚生科学課長 
 そうです。
○永井部会長 
 サポートを断ることもできるわけですか。
○福島厚生科学課長 
 はい。断るというとあれですが、要するに、できるだけ良いものに集中的にいろいろな支援をしていこうという所なので、断ることもあるかもしれませんが、断れるものがたくさん、つまり断らなくてもいいものがたくさんある方が、我々としても望ましいと思っています。
○西島委員 
 目利きということですが、目利きをして戦略室が良いものを見つけて、それで声掛けをすることがあると思うのです。それも1つだし、また、それとはインディペンデントに、全く公募的に応募してくる課題もありますよね。そういうことも含めて戦略室で選考をして、それで課題を選ぶと。選んだ後の作業は、独自に研究グループが研究を進めて、あるところに至って出口が見えてきて、企業化できることになれば、戦略室がその相手を見つけてあげるとか、そういう働きをすることかと思うのですが、そういうことであれば、桐野委員がおっしゃったように、戦略室は一切権利とかいうことには関わらないと私は理解していますが、どうなのでしょうか。
○福島厚生科学課長 
 戦略室は、先ほど言ったように、例えば厚生科学研究費の採択そのものには関与しません。例えば、権利についても、開発者の権利を守るために、どのようなサポートをするか、あるいは知財上どういう手当てをするべきかについての支援をするのであって、何かを持つわけではないのです。支援部門であるということなので、例えば採択をしたり決定をしたりする所ではないことについては、御理解を頂きたいと思います。厚生科学研究費とそこは切り離して別のファンクションで、できるだけ効率的に連動することは考えていきたいと思いますが、少なくとも研究費の採択については無関係な、要するに独立したものであると御理解いただきたいと思います。
○門田委員 
 新しく加わっている者で、創薬支援戦略室そのものについて全然知らないのですが、今のお話を聞いていて思うことは、何か皆さん、この戦略室の機能は分かっていないように私には聞こえます。この点は、未だ機能が明確にされていないから、皆さんが分からないと言っておられるのか、それとも皆さんが混乱しておられるのか分からないのですが、それはどうなっているのですか。
○福島厚生科学課長 
 改めて、創薬支援戦略室の機能は、基礎研究、日本には全て基礎研究があるものの、それが実用化になかなかつながっていっていないという現状がある。特に死の谷の言われるように、実際に商品として、医薬品として市場に出していくための必要なプロセスについて十分捉えていない部分がある。そのときに知財の問題、あるいは企業、ファンディングの問題も含めて、基礎研究を実際の市場に出していくためには、幾つかのハードルがあるわけでして、そういう面では、まず基礎研究のシーズが製品になっていくのかどうか、製品になる可能性が非常に高いものであるかどうかという目利きが要るし、それを製品化していくための出口戦略についてどう考えていくべきか、研究者に支援をする必要もあるし、知財の確保、お金の確保をやっていく、そういうサポート機能が十分できていないわけで、そこのサポート機能を持つ部分として基盤研に創薬支援戦略室という、ウェットな研究をやる部門ではなくて、ドライな、というか、マネジメントする、あるいはマネジメントをサポートするチーム、部門として創薬支援戦略室を置こうと考えているわけです。
○門田委員 
 では、まだお考えなのですか。
○福島厚生科学課長 
 これは今年度予算で予算要求しておりますから、これで進めることとしております。
○門田委員 
 ですから、機能そのもの、おっしゃっておられることはよく分かるし、ずっと今まで問題があるのは言ってきたわけなので、この単語を使っておられるのは、文章化されたものがあって、それが知らされているのかどうかをお尋ねしているのです。
○福島厚生科学課長 
 それは平成25年度予算要求、つまり今の予算案の中に入れておりますので、予算が成立した時点で創薬支援戦略室が正式に発足します。現時点では基盤研に準備室を設けて、そのための必要な人のリクルートを今、進めており、箱ものについても補正予算等でつくって今対応しているところなので、これは今年度から発足する、この機能が動き出すということです。
○門田委員 
 ですから、ポイントとすれば、皆さんは十分理解ができていないので、そこのところを正確に。どこまで、どういうことをするものであるということが分かりさえすれば、今、皆さんはいろいろな心配ごとを持っておられるけれども、それは解決するのではないかと。ですから、それを早く示していただくことが大切なのではないかと思います。
○永井部会長 
 ですから、公募のときに戦略支援室の位置づけとか役割を書いて募集を掛けないと、後で行き違いが起こる可能性があると思うのです。
○野村委員 
 質問ですが、今おっしゃったお話を聞くと、先ほどもともと断られることがないようにとおっしゃっていましたが、「採択の条件とする」というのがあるので、受けないといけないというわけですね。「協力」とありますが、本当に創薬できるのかどうかここが見てということを今おっしゃっていたのですが、それが採択の条件ですよね。
 逆にそうなってくると、次年度以降の研究継続に関して、戦略室が判断してお眼鏡にかなわなかった場合に、彼らの意見で影響が出てくることにもなるということでしょうか。
○福島厚生科学課長 
 もちろん、29ページのなお書きの所に、採択課題については、採択後に創薬支援戦略室と協力して、それを推進の条件とすると。つまり、これはきちんと一緒にやってくれと書いてあるわけで、そういう面では、創薬支援戦略室はこれをサポートしていくことになります。狙いというか、目的・目標が創薬につながること、つまり、薬として市場に出すことを目指してこの研究費は付けるわけですから、そういう面では創薬支援戦略室が言ったものに従ってということではなくて、創薬支援戦略室は、製品化されるように支援をするわけです。市場化していく上でのノウハウを持っている人たちがこちらの方がいいと言っているわけですが、それではない方法をとるのは、現実的にはなかなか難しいのかもしれません。もちろん、戦略室はそこで指示・命令をする立場にはないので、飽くまでサポートをする所だと御理解いただきたいと思います。
○三浦技術総括審議官 
 少し整理してお話を申し上げたいと思いますが、この戦略室は厚生労働科学研究費のためにある組織ではありません。世の中にいろいろなシーズがあるわけですので、そのシーズの中で、世の中で必要とされている医薬品の開発につながるものを自ら見つけ出したり、あるいは、研究者から持ち込まれたりして、この開発をこれからも引き受けてくれる企業はないかとか、あるいは、研究を進めるに当たって、どうすれば早く製品化されるのかということについてアドバイスを求められたときに、適切に助言をしていく、場合によっては開発を担当する企業と引き合わせる、そういうことを担う組織になります。
 したがって、ここの厚生労働科学研究費の話とはまた別途にそういう機能が動くわけですが、この創薬基盤推進研究事業で取り込まれるものは、少なくとも製品化が予定されていたり、あるいは非常に順調に研究が進んでいるものがあるとすると、それは先にどんどん行うことになりますが、一方でいろいろな障害というのでしょうか、難しい問題があって進まないかもしれない研究や、あるいは、どうしてももっと早く進めたいという研究について、この研究事業を通じてでより速いスピードで実用化を目指すものです。
 したがって、進めていくに当たって助言をしてくれる組織があれば、その人たちにとって願ったり叶ったりではないかということです。先ほど課長から説明したとおり、指揮・命令をする組織というよりも、こうしたらもっと早く承認が取れるのではないかとか、こういうデータを出しておくことが安全性や有効性の証明につながるのではないかなど、適切にアドバイスするのが、創薬支援戦略室の役割になるのではないかと思います。当然、研究者はそれについて自ら主体的に研究を行っているわけですから、その中で、そうはいっても自分はこうしたい、こうやるべきだと思ったことがあれば、それは自らの判断で行うこともあり得るだろうと思います。
○松田委員 
 確かに支援室は、アカデミアなりのシーズを早く事業、あるいは、製薬メーカーと一緒になって早く製品にするのをサポートすると。そういう点で、セレクションに関わらないで選ばれてきたものを早く先へ進めるのを支援するという割り切りでいいとは思います。
 しかし、創薬の研究は、御存じのようにスタートしてから大体最初の思いどおりに行かなくて、往々にして変な出口に展開をすることがよくあるわけです。むしろ、それが普通かもしれません。そうなってくると、そこの単語で「目利き」が適切かとは思うのですが、やっているうちに、いや、こうした方がいいのではないか、こういうふうに展開した方がいいのではないかというアイディアは、どんどん出てくると思うのです。
 正に、それが目利きであるから、そこに支援室は、当初の計画には入ってないのだから、単に言われたままにサポートしてくれというのではなくて、私はむしろそれに余りこだわらないで、支援室がサポートする中から積極的に関わるようになったら、また次年度の新たな展開の提案を支援室と一緒にしていくというぐらいに、支援室の位置づけをもう一度柔軟に整理してみる必要があると思うのです。
 申請するときに、その位置づけをもう一度しっかり再定義して、将来そういうことも起こり得ることは書いてもいいのではないかと私は思います。余り固定的に支援だ、サポートだということに位置づけてしまうと、良い人材も集まってこないし、モチベーションも上がらないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○三浦技術総括審議官 
 この組織は正にこれからつくっていく組織でして、今、御指摘にありましたことも含めて、いずれにしても柔軟な対応が非常に重要だと思っているので、今頂いた御意見なども、これからの戦略室の構築に当たって、担当する研究所に対してお伝えをしていきたいと思っています。
○相澤委員 
 文案と今の御説明との間に、若干齟齬があるという感じを受けました。文案については部会長に御一任することを前提として、もう一度検討していただくということでいかがでしょうか。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。先生方、また御意見のおありの方は、事務局まで、このような文案でということをお申し出いただいて、最終的には私の方で取りまとめたいと思います。そういうことで、二次の公募研究事業を進めたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。
 続いて、議事2に参ります。「遺伝子治療臨床研究実施計画及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見」です。千葉大学医学部附属病院の実施計画についての作業委員会の検討結果の御説明を事務局からお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料2を使用して、本件に係る遺伝子治療臨床研究実施計画の作業委員会と遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会の2つの作業委員会の結果を御報告いたします。
 遺伝子治療臨床研究実施計画作業委員会の方から説明します。資料2の表紙を御覧ください。作業委員会の意見は1~10ページ、作業委員会の名簿は11、12ページ、計画の申請書概要書は13~38ページ、実施計画は39ページ以降、説明同意書は142ページです。
 初めに、11ページを御覧ください。今回の作業委員会の先生方の名簿です。
 1ページに戻って、遺伝子治療臨床研究計画の作業委員会の意見を順次御説明いたします。まず、2ページの1「遺伝子治療臨床研究実施計画の概要」を御覧ください。研究課題名は(1)のとおりです。申請年月日は平成22年4月9日です。作業委員会の審査の中で動物実験の実施についての指摘が行われ、千葉大学における実験系の確立及びその実施に2年弱の時間を要して、本日の審議に至ったものです。研究実施施設は千葉大学医学部附属病院です。総括責任者は(4)のとおり、申請の当初は武城先生です。
 2ページの(6)「研究の概要」を御覧ください。今回の研究実施計画の被験者は、資料の通しページの113ページの選択基準にあるとおりです。16~40歳で、そこにあるような基準に基づいて選定された方々です。「家族性LCAT欠損症」とあるのは、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼという酵素を欠損していると確定診断された患者さんで、角膜混濁や腎機能障害などの臨床症状が進行し、将来における生活に支障が出る可能性が高いと担当医師が判断した方です。除外基準は113ページに書かれているとおりです。
 続いて、疾患について簡単に説明いたします。資料の50~54ページを御覧ください。家族性LCAT欠損症は、まれな常染色体の劣性遺伝子性の疾患で、日本では22家系が報告されていると記載されています。当該疾患は血中コレステロールのエステル化を伴うコレステロール逆転送系酵素であるLCATの先天的な欠損又は遺伝子上の当該酵素活性の欠損・欠失等によって活性低下が起こっているものです。そのため、不要コレステロールの眼や腎臓などへの蓄積を招き、HDLコレステロールが異常に減少している状況にある病気です。53ページにあるように、根本的な治療法はなく、低脂肪食などの食事療法による病状の進行を遅らせる治療が行われています。また、正常なLCAT活性の10%に相当する酵素活性を増加させることによって、臨床症状の改善が期待できると別途記載されています。
 61ページを御覧ください。導入されている遺伝子はLCAT遺伝子で、構造や性質が記載されています。遺伝子導入に使用するウイルスベクターの構造と性質については、71ページを御覧ください。モロニーマウス白血病ウイルス由来レトロウイルスベクターです。
 遺伝子導入の標的となる細胞は、被験者の腹部皮下の脂肪組織から脂肪細胞を分離し、天井培養法という特殊な培養法を用いて脂肪になる一歩手前の脂肪細胞である、前脂肪細胞です。63ページに記載されています。この前脂肪細胞にLCAT遺伝子を導入し、更に培養して腹部に戻します。この一連の作業、被験者からの皮下脂肪摘出や遺伝子導入の流れは56ページに記載されています。当該遺伝子臨床研究に関する培養細胞や実験動物を用いた研究成果は73ページ辺りです。
 資料の2ページの(5)「用法・用量」を御覧ください。今回の研究では、被験者の腹部皮下組織細胞から採取し調製した前脂肪細胞にLCATの遺伝子を導入した後、再び皮下脂肪組織に注射により投与するものです。投与量はLCATタンパク量の10%を補充することができる細胞数で行うとされています。
 目標症例数は110ページにあるとおり、3例です。症例ごとに、投与後3か月時点の1次評価終了後の結果等を基に、総括責任者が次の症例への施行を判断して行うということです。
 2ページの一番下、(7)「その他」に、関係研究の外国での状況等が記載されています。家族性LCAT欠損症に対する原因遺伝子の導入による臨床研究は、世界では今のところ行われていません。今回の研究と違うウイルスベクターを用いたヒトLCAT導入の非臨床研究の報告はあるということです。
 続いて、作業委員会の審議概要を説明いたします。3ページの2「作業委員会における審議概要」を御覧ください。遺伝子治療臨床研究の作業委員会においては、審議の前に事前意見や照会事項を求め、その回答が得られています。主なやり取りはここにあるとおりです。その中から幾つか説明いたします。
 まず、アです。LCAT欠損症は希少疾患であるため臨床経過の予測や治療効果の判定は難しいと考えられるが、治療効果として何をどのように評価するか。これについては、そこに書かれているような症状の治療前後の変化を考慮し、効果を総合評価するとしています。
 イは、正常の10%程度の活性があれば、臨床症状の改善が期待できるとされる根拠は何か。これについては、いろいろな症状はLCATの活性が正常の10%を下回ると発症することが示唆されること、また、LCATの補充療法として試みられた新鮮血の輸血で症状が改善したときの、LCAT活性の一過性の上昇などは10%であったということが書かれています。
 ウでは、前脂肪細胞の性質はどこまで明らかにされているかです。前脂肪細胞と脂肪組織由来の幹細胞の違いは何かについては、そこに回答が書かれているとおりです。
 少し飛んで、カを御覧ください。動物実験において移植される細胞はどの程度の期間、どのぐらい細胞が生存していたかです。マウスの試験では、移植28日後において血中ヒトLCATを確認するとともに、生着率は30%と推測されたことなどが書かれています。
 クでは、家族性LCAT欠損症のモデル動物はないか、それを使った有効性・安全性の検討を行うべきではないか。当初の回答としては、そういうものは作れないと書かれています。
 5ページは、作業委員会での審議です。先の回答などを踏まえ、2回の作業委員会を行っています。1回目は、結果としては再度審議することとされました。下のアにあるとおり、LCAT遺伝子のノックアウトマウスにLCAT遺伝子導入マウス前脂肪細胞を移植する治療実験を実施し、有効性・安全性の実験結果を提出するよう指示しています。その回答として、有効性や安全性が示唆されるような実験を行ったことが、6ページに書かれています。
 エは、前脂肪細胞を用いたex vivo遺伝子治療研究はこれまでヒトに実施された例がないため、サルを用いた前臨床試験の成積を得ておくことが望ましいがどう考えるかについてです。回答は、ここにあるとおり、結論としては困難であると判断したということです。以上が1回目の議論の主なものです。
 8ページ以降に2回目の再審議の議論が載っています。主な回答を御覧ください。アで、長期的な有効性・安全性については、動物実験における十分なデータが得られているとは言い難く、データとしては限定的であろう。被験者が過剰な期待を抱くことがないよう、同意説明文書の記載内容を再度慎重に見直し、正確に情報を記載することという指示を出しています。そのような内容にするという回答です。その結果、9ページの3にあるとおり、本作業委員会は本実施計画の内容が科学的に適当であると判断したとしています。遺伝子治療臨床研究の作業委員会実施計画の検討結果については以上です。
 次に、資料13ページを御覧ください。総括責任者が武城先生から横手先生になっています。これは、最近になって総括責任者の変更が行われ、一昨日の4月16日付けで申請書等の一部修正が行われたものです。申請当初の総括責任者は、14ページに分担研究者として記載されているとおり、現在は東邦大学の武城先生で、作業委員会の審議においては、武城先生が総括責任者として対応されていました。しかしながら、武城先生は本年4月をもって東邦大学に異動されたため、横手先生が総括責任者を引き継ぐことになったものです。本変更は千葉大学の倫理審査委員会において先日承認され、申請書の修正が行われたという経緯です。変更が作業委員会の結論の後であったため、事務局から本件について作業委員会の先生方に意見をお聴きし、その結果として、総括責任者の変更はやむを得ないとされました。その際、併せて委員会よりコメントを頂きましたので報告いたします。「本研究については、動物実験等における有効性・安全性に関するデータが限定的であり、作業委員会としては慎重に審議した結果、被験者に十分な説明を行うこと等を申請者に求めた上で、本研究の実施計画を妥当として判断したものであること。また、総括責認者の変更は重要なことであり、本来ならば、これまでの作業委員会とのやり取りに対応された武城先生が総括責任者を担い参画することが一番望ましいこと。新たな総括責任者の下においても、このような作業委員会の審議事項を十分に踏まえ、慎重に研究を進めていただくことが重要であると考える。」です。このようなコメントを頂いた上で、やむを得ないとされていました。
 続いて、遺伝子治療臨床研究に関わる生物多様性影響評価に関する作業委員会の報告をいたします。同じ資料の167ページ以降です。
 169ページが、審査をしていただいた作業委員会の先生方の名簿です。作業委員会の評価結果は、167、168ページです。
 168ページを御覧ください。対象となる遺伝子組換え生物は一番上の欄に記載されています。次の欄が第一種使用規程の内容の項目です。治療施設におけるヒト治療を目的とした、使用、保管、運搬、廃棄、並びにこれらに付随する行為が対象となります。第一種使用規程の具体的な内容は171~174ページに記載されています。遺伝子組換えウイルス導入細胞は、施設内の開放系区域を通って他のP2レベル区域に運搬する場合は、二重に密閉した容器に入れ運搬すること、投与後3日までは被験者を個室内に管理すること、個室管理を解除する前に被験者の血清においてRCRの陰性を確認すること、などの記載があります。
 資料の175~194ページは、この遺伝子組換え生物に対する生物多様性影響評価書です。評価の結果は168ページの「評価結果」に記載されているとおりです。一番下の欄の「生物多様性影響評価書を踏まえた結論」を御覧ください。委員会の結論は、先ほどの「第一種使用規程に従って使用した場合に、生物多様性に影響を生じるおそれはないとした生物多様性影響評価書の結論は妥当である。」と判断したというものです。本件の説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。これは幹細胞研究の対象にはならないことでよろしいのですね。前脂肪細胞を使っているということですね。
○尾崎研究企画官 
 はい、それにはなりません。細胞のプロフィールなどもいわゆる幹細胞とは少し違うと聞いています。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
○西島委員 
 55ページにプログラムの概要が書かれています。この最後の所に「患者へ自家移植」と書かれていますが、これは懸濁液をどこに入れてどこに正着するのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 腹部の脂肪を最初に採った所に戻すということになります。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 この件については承認とし、厚生科学審議会へ報告いたします。
 続いて、遺伝子治療臨床研究について、「遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見」です。東京大学医科学研究所附属病院からの申請です。私はこのプロジェクトに少し関わっていますので、部会長代理の福井委員に進行をお願いいたします。また、私と東京大学に所属しておられる塩見委員は本件の審議についての発言を控えさせていただきます。
○福井部会長代理 
 作業委員会の検討結果を事務局から説明してください。
○尾崎研究企画官 
 資料3、資料7、参考資料2を使用して説明いたします。一般に、遺伝子治療臨床研究を実施するためには、先ほどの議題にもありましたが、「遺伝子治療臨床研究実施計画作業委員会」と「遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会」の、2つの作業委員会での検討がこれまでは必要になっていました。
 本件について、まず、遺伝子治療臨床研究実施計画作業委員会の関係事項について説明いたします。資料7の1ページ及び参考資料の3ページを御覧ください。今回は、東京大学医科学研究所附属病院で既に実施中の進行性膠芽腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いた遺伝子治療ウイルス療法の臨床研究について、総括責任者を含めた研究チームの東京大学医科学研究所附属病院への異動に伴い、医科学研究所附属病院でも同様の臨床研究を実施するというものです。東京大学医学部附属病院においても、この関係者が引き続き当該臨床研究を継続して行うことが東京大学で認められている状況にあり、その内容は資料7の1ページの一番下の注に記載されています。このため、東京大学医科学研究所附属病院は実施計画についての新たな申請を行い、東京大学医学部附属病院は、東京大学医科学研究所附属病院を実施施設として追加するための変更申請を行いました。
 3ページを御覧ください。一番上の(7)「その他」にあるとおり、本研究の目標症例数は21例ですが、平成25年2月時点では10例が実施済みの進捗状況にあります。これらの研究計画の新規性については、参考資料2の3ページのスキームに沿って、資料7の3ページの2「有識者の意見」の2)にあるとおり、「新規性なし」と判断されたものです。その際の主な意見はここに記載されています。資料7の4ページを御覧ください。有識者の意見に基づき、厚生労働大臣の意見としては実施して差し支えないと判断し、平成25年3月22日付けで申請者に既に通知しています。これは、参考資料2の3ページのスキームにあるように「新規性なし」と処理したことを、資料7の実施計画については、厚生科学審議会の諮問・答申は必要ないものとして、本日報告させていただいています。
 続いて、資料3を御覧ください。実施計画自体は既に報告いたしましたとおり、「新規性なし」ですが、もう1つの要件の、遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価については検討が必要になります。東京大学医科学研究所附属病院においては、当該遺伝子組換え生物を使用して研究を行うことは初めてになりますので、いわゆるカルタヘナ法に基づく確認を行う必要があります。この点が本日の審議事項になります。本カルタヘナ法に関わる申請についての諮問・付議は、資料の5、6ページのとおりです。
 4ページは、今回審査をした作業委員会の先生方の名簿です。
 1、2ページが、作業委員会の評価結果についてです。先ほどの議題1であったようなことが書かれています。第一種使用規程の具体的内容は9、10ページにあるとおりです。11ページ以降最後までが、生物多様性影響評価書です。結論は2ページの一番下の欄に記載されているとおり、「第一種使用規程に従って使用した場合に、生物多様性影響が生ずるおそれはないとした生物多様性影響評価書の結論は妥当である。」というものです。東京大学医科学研究所附属病院のカルタヘナの関係については以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○福井部会長代理 
 今の説明について、御意見、御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○福井部会長代理 
 それでは、作業委員会からの報告につきましては、科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告したいと思います。
○永井部会長 
 続いて、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づく第一種使用規程について」、審議をお願いいたします。まず、説明してください。
○尾崎研究企画官 
 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づく第一種使用規程の審議について、まず、資料4の1の「現状と課題」を御覧ください。(1)の遺伝子治療臨床研究において、遺伝子組換え生物を使用しようとする者については、いわゆるカルタヘナ法に基づいて第一種使用規程を定め、厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。カルタヘナ法での開放系での使用の申請です。(2)で、第一種使用規程の承認申請があった場合は、厚生労働大臣は学識経験者の意見を聴いた上で承認の可否を判断することとされています。意見を聴く場として、1つは、「遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会」を開催し、これまで審議してきました。注に書かれていますのは、前回の3月5日の科学技術部会において、遺伝子治療臨床研究を評価するために通常必要な2つの委員会を1つにすることが了解されているということです。今日時点では少し違います。(3)は、一方で、既に承認を受けた第一種使用規程と類似の第一種使用規程の承認申請が行われる場合もあり、このような場合には必ずしも委員会を招集して審議を行う必要がないこともあると考えています。
 対応(案)として、審議の効率化を図る観点から、内容に応じて委員会を開くのではなく、持ち回りで開催し、メール等の手段により委員の意見を集約した上で、科学技術部会に報告できるようにすることとしたいと考えています。また、委員会を持ち回りで開催する場合としては、(2)のとおり、遺伝子組換え生物の種類や使用方法が既に承認を受けたものとほぼ同じで新規性が乏しい等の場合であり、メール等の手段によって意見の集約が可能であると委員会の委員長が判断する場合です。具体的には、そのようなものが事務局に申請されたときに、委員長と御相談して対応方法を決めるものです。ただ、実際に集約ができなかった場合はもちろん開催して検討することになります。よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。御質問、御意見がありましたら御発言をお願いいたします。
○宮田委員 
 これは全然問題ありませんし、むしろ経験が富んでくれば、このように研究を前に進めるような規制緩和は必要だと思っています。1つだけ教えてください。手続的に、ここに案がありますが、審議をするプロセスを簡略化するという形で変えるのですか。法律の下の省令か課長通知か、何を変えることになるのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 先ほどの資料4の2ページを御覧いただきたいと思います。「参照」の所にある平成15年法律第97号がカルタヘナで、これらが関係条文ですが、申請があった場合には生物多様性影響に関して専門の学識経験者の意見を聴かなければならないとなっているだけです。我々が基づいている指針も「意見を聴く」としています。今までは集まって皆で顔を合わせてやっていたのですが、ものによってはそうしなくてもできるのではないかと。法律を変えたりなどはせずに、このことができるという判断で提案させていただいたものです。
○宮田委員 
 要するに、解釈を変えるということですね。
○尾崎研究企画官 
 はい。
○宮田委員 
 運用を変えると言ったほうがよいと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ほかに御意見ございませんか。この件については了承として、資料のとおり進めさせていただきます。
 続いて、ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請についての御審議です。大阪大学医学部附属病院などからの2件の申請について、3月25日付けで厚生労働大臣より諮問され、3月26日付けで当部会に付議されています。事務局から説明してください。
○荒木再生医療研究推進室長 
 研究開発振興課です。資料5-1に基づき、「新たなヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」、付議されたものについて概要を御説明します。
 4ページを御覧ください。第1例目です。「小児重症心筋症に対する自己由来細胞シート移植による新たな治療法の開発」として、大阪大学医学部附属病院の澤先生から出されているものです。対象疾患は小児の重症心筋症。用いるヒト幹細胞は骨格筋筋芽細胞です。実施期間は5年間。目標症例数は15例です。
 治療研究の概要は、標準的な心不全治療を行っても改善が認められない小児重症心筋症患者に対して、自己の腓腹筋から単離した筋芽細胞を温度応答性培養皿を用いてシート化し、心臓外壁に移植するものです。「その他」に書かれていますように、申請者らは、小動物のみならず、イヌ、ブタなどの中動物においても心不全モデルを作り、そちらに対する筋芽細胞シート移植の有効性を確認しています。また、ヒト成人の拡張型心筋症及び虚血型心筋症に対しても既に実施されています。これは、2009年7月30日に大臣意見が発出されたもので、成人に行っています。成人の虚血型心筋症に対しては治験が開始されています。新規性としては、小児心筋症に対して筋芽細胞シートを移植するという点です。
 5ページに、シェーマが書かれていますが、これは成人のときと同様です。
 7ページの「臨床研究の対象疾患」の所です。小児重症心筋症患者の移植適応判定後の平均生存期間は7.5か月で、基本的には小児の心臓移植が最終的な解決法ですが、そのブリッジ治療として今回の心筋シート移植を行いたいということです。
 17ページは、この臨床研究の概要をできる限り平易な用語を用いて記載した要旨です。「本研究の背景」を御覧ください。改正臓器移植法後、小児からの脳死下臓器提供が可能となり、小児慢性特定疾患治療研究事業で、心筋症の患者さんが大体500人弱いらっしゃいます。その中で心臓移植を考慮する患者さんは30~40名程度であろうといわれますが、その数は増加傾向にあります。心臓移植まで待つことを考えると、我が国では体格の小さい患者に対して使用できる補助人工心肺がほとんどないこともありますので、そういう観点からのブリッジとしての心筋シート移植を進めたいというものです。以上が1件目です。
 2件目は、21ページです。前回の科技部会でも御報告したものと同じ共同研究です。「関節鏡下での自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復」として、奈良県立医科大学の田中先生から出されています。対象疾患は外傷性あるいは離断性の骨軟骨炎による膝関節の軟骨損傷です。用いるヒト幹細胞は自己間葉系幹細胞です。研究実施期間は5年間。対象症例数は、共同研究を合わせて、細胞移植群40例、コントロール群40例です。
 治療研究の概要です。腸骨より骨髄液を採取して培養する。培養必要細胞数まで増やし、細胞浮遊液としてヒアルロン酸を加えて関節内に移植するというものです。書かれているように、信州大学、東海大学、大阪大学等からの臨床研究に対しては大臣意見が発出されています。
 22、23ページのシェーマでは、どのように採って、培養して、輸送して、どのように移植するかということが書かれています。こちらは前回の科技部会とほぼ同じものですので、説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 御質問、御意見いかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ、これらの申請につきましては、審査委員会で審査を行っていただいて、検討結果が報告された時点で改めて総合的に判断していただきたいと思います。
○宮田委員 
 最後の、自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復に関しては、ここにも書かれていますが、ジェンザイムなど先行してもう商品化しているものがありますので、そことの違いを是非審査委員会で議論していただきたいと思っています。
○永井部会長 
 その点については審査委員会に申し送りしたいと思います。続いて、ヒト幹細胞臨床研究について、「ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見」についての御審議です。広島大学病院、大阪市立大学大学院医学研究科、大阪大学医学部附属病院、兵庫医科大学、近畿大学医学部からの多施設共同研究の申請について、また、大阪大学医学部附属病院の申請について、審査委員会の検討結果を事務局から説明してください。
○荒木再生医療研究推進室長 
 資料5-2を御覧ください。こちらは審査委員会で御意見を頂いたものです。部会長からもお話がありましたように、資料5-2の表紙にあります6課題の、上から6つの課題は、先ほどの奈良県立医大のものと共同研究の形で、全て同じ関節鏡視下の自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復のプロジェクトです。もう1つの、大阪大学医学部附属病院から出されたものは、先ほど申し上げました、小児重症心筋症に対する自己由来細胞シート移植による新たな治療法の開発です。
 まず、意見です。1ページは、広島大学から出された関節鏡視下の自己骨髄間葉系細胞を用いたものについてです。概要は先ほどのとおり、共同研究施設で、対象症例数は移植群とコントロール群で40例です。先ほど御指摘がありましたが、Carticelなど既にFDAの承認を得ているものもありますが、こちらは関節鏡視下に投与するということで、できるだけ侵襲性を落としたものにするところに新規性があると申請者は言っています。
 3ページは、審議概要と主な変更内容です。こちらは平成25年2月に1回審議がされています。その中で、個別のプロトコールについて御指摘を頂いています。例えば、中段の「プロトコールについて」で、400mLの採血を2度行うとされているが、安全性がきちんと確保されているのか。また、培養細胞について継代が1回だけだということだが、その打切り条件をどうするのか。これらについて個別に御意見を頂きましたものが4ページです。必要な疑義に対する適切な回答がありましたので、持ち回りとして委員会の開催はなく、科学的に妥当だと判断したものです。以上が第1件目の広島大学の案件です。
 第2件目、大阪市立大学の案件です。38、39ページの概要は全て同じ内容です。40ページは、審議概要と主な変更内容です。こちらは、第1回審議が平成24年2月、ちょうど1年ぐらい前に行われました。かなり多くの施設で共同研究するということなので、他の施設から出してくるものも含めて一度に審査をした方が効率的だろうとして、申請者の確認も取り、第2回目は少し間が空いての審査になっています。第2回の審査は平成25年2月6日に行われ、その際にプロトコール等についての指摘がありました。申請者側に戻しまして、適切な回答が得られましたので、42ページのとおり、内容としては倫理的・科学的に妥当であると判断したものです。以上が第2例目の大阪市立大学のものです。
 同様に、66ページからが大阪大学のものです。こちらも概要としては全く同じものです。68ページが審議概要です。第1回審議が2月6日に行われて、こちらは了承され、倫理的・科学的に妥当であると判断されました。
 80ページが兵庫医科大学のものです。82、83ページが審議過程です。これも平成25年2月に第1回の審議をしています。その際に若干の疑義、確認事項が出ていました。例えば、プロトコールについては、搬送があると書かれていたため、搬送のコールドランを実施してくださいと言ったところ、既に行っているという返答を得ています。そのような形で検討されまして、倫理的・科学的に妥当であると判断されています。
 次に、106ページは近畿大学から出されているものです。こちらも概要は一緒です。審議の過程は108ページで、同じく2月にかけられました。例えばCPCについての御指摘や日本薬局法のエンドトキシン単位と合わせるべきだという話など微修正があり、そちらについて適切に修正されましたので、こちらも倫理的・科学的に妥当であると判断され、今回の科学技術部会に報告されています。
 136ページは、先ほど諮問・付議を頂きました大阪大学の小児の事例です。事前審査の形で審査委員会で審査していただいています。その過程と結果は138ページです。中段の「プロトコールについて」で、これは特にお子さんを対象にしますので、低年齢で、血清を70mL、血液としては150mLぐらい採りますが、安全性は確認されているのか。また、説明同意文書について、対象が小学生・中学生以上のものもあるため、意欲的な取組ですが、若干、専門用語が特に説明なく使われているので、簡単な説明が必要ではないかという御指摘もありました。こちらについては修正がなされましたので、倫理的・科学的に妥当であると判断されまして、今回の科学技術部会に報告されています。以上です。
○永井部会長 
 先ほど宮田委員が御指摘されたジェンザイムの製品は、内視鏡下、関節鏡下では使えないということですか。
○荒木再生医療研究推進室長 
 申請者から伺っているのはそういう形で、そこに新規性を認めているということです。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○宮田委員 
 了解しました。これは多施設で相当な症例数で、このような臨床研究を待ち望んでいたところです。本当に白黒つけていただきたい。できればジェンザイムのヒストリカルな彼らの治療成積とも、単純には比べられませんけれども、参考資料として比較して、結果をきちっと報告していただきたいと思います。今までの幹細胞の臨床指針の研究というのは、研究を始めるときに我々は一生懸命精査しますけれど、一体それがどこまでどうなったのかというのを実はきちんとトラックしておりません。こういった評価に値するような研究は是非きちんと研究終了後に御報告いただくことをお願いしたいと思っています。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 そうしますと、審議委員会からの報告については科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告とさせていただきます。
 続いて、議事4「平成25年度戦略研究課題について」の御審議をお願いいたします。事務局から説明してください。
○尾崎研究企画官 
 資料は資料6と参考資料4です。まず、参考資料4を使いまして、戦略研究について、簡単に説明を申し上げます。参考資料4を御覧ください。
 1、戦略研究とは、平成17年の科学技術部会において、厚生科学研究の新たな類型として創設されたものです。類型としては、先ほどの議題1につきましては、公募型、若手育成型になります。?のプロジェクト提案型は、今はありません。指定型については、担当課が研究を主体として実施する人を決定し、実施しているものです。戦略研究においては、疾病の予防・治療介入及び診療の質改善等、国民の健康政策に関連するエビデンスを生み出すために実施される大型の介入研究を対象にしているものです。大型というのは、研究費がその当時の他の類型の研究と比べて大きいとか、エビデンスをより得るために、被験者になる方、対象になる方の数が比較的大きいという意味になります。
 2、戦略研究の特徴です。表1を御覧ください。一般公募の課題と比較しますと、戦略研究については、3ページ目にあるような戦略研究企画・調査専門検討会が、まずは研究計画の骨子を作成し、この骨子自体は科技部会で了解していただいた上で、次に公募を行い、公募により採択した研究者に研究実施計画を作成してもらいます。その後、その計画について、厚生科学審議会の承認を得て研究を実施することになるものです。
 1ページの一番下に「戦略研究の流れ」という所がありますが、本日御審議いただきます項目は、上から4つ目の「戦略研究の実施計画の作成」です。現時点は、ここの矢印の先になります。本日、御了解が得られば、この研究を実施していくということになるものです。開始後は、年次報告、評価、検討会によるモニタリングを実施し、研究の進捗状況の把握や評価を行うものです。研究の実施期間は5年間と決めています。
 2ページの図に研究体制の1例があります。4は戦略研究の状況ということで、現在戦略研究として動いているものはなく、今、ここに書いてある10課題が終了し、今後追跡評価を我々で行っていく予定です。戦略研究の一般的な概要としては以上です。
 引き続き今回の戦略研究の新規課題案について説明をいたします。
○尾田保健指導室長 
 健康局保健指導室長の尾田です。私から資料6に基づきまして、新規課題案について御説明させていただきます。今回の戦略研究で御提案させていただいておりますのは、生活習慣病重症化予防のための戦略研究、具体的には自治体における生活習慣病重症化予防のための受療行動促進モデルによる保健指導プログラムの効果検証です。
 1ページの下段を御覧いただきますと、研究の背景として、循環器疾患や腎臓病による死亡は、全死亡の3割、国民医療費の4分の1を占めており、この発症を予防することが重要な課題となっております。また、患者の半数以上は発症前に医療機関を受療していない、また、健診時にリスクを指摘された重症高血圧者についても、約4割の方が医療機関を受療していないという実態があります。こうしたことから、今回、重症化ハイリスク者を抽出し、薬物治療を受けていない方を対象とした受療行動促進モデルを用いた保健指導の有効性を検証するというのが、今回の戦略研究の中身です。
 2ページの上の「研究デザイン?」の研究対象は、市町村の国民健康保険の特定健診で把握された重症化ハイリスク者で、かつ高血圧、高血糖、脂質異常、腎臓病に関する薬物治療を現在いずれも受けていない方を対象とします。
 デザインの詳細については、下段の図を御覧ください。研究参加地域は、人口規模7万から70万の市になります。それを介入地域17市、対象地域はその3倍の51市にランダムに振り分けます。介入地域においては、重症化ハイリスク者に対して受療行動促進モデルによる保健指導を行います。この重症化ハイリスク者は、血圧で?度高血圧に該当する方、血糖につきましては、HbA1c(NGSP)が8.4%以上で、LDL-コレステロールについては男性のみで180mg/dL以上、尿蛋白2+以上、このいずれかに該当する人を重症化ハイリスク者として抽出し、今回の保健指導プログラムを実施していくというものです。
 右の上段が個別の保健指導プログラムの概要です。重症化ハイリスクに該当した方に対しては、まず初回の保健指導において、その方の健康状態の現状と将来リスク、あるいは医療機関への受診の必要性等について、しっかりと御理解いただくための保健指導を行います。その結果、レセプトデータによりまして、実際にその方が医療機関を受診したか確認の上、医療機関を受診されていない方は引き続き医療機関受療の勧奨を行い、最終的に医療機関を受診したか、また確認をします。そして翌年度の健診を受診していただくような働きかけを行い、その年度の保健指導が完了するというものです。
 保健指導は人間が行うものですので、今回の課題では介入プログラムの標準化が重要になってまいります。このページの下段を御覧いただくと、年度の前半に技術研修を行い、保健指導プログラムの実施状況をモニタリングした上で、その結果をフィードバックしながら、後期にも研修を行います。これにより、保健指導実施者の技術について標準化を図っていき、事後アンケート等を踏まえて、翌年度の研修企画の反映につなげていくということを、5年間継続して実施していきたいと思っております。
 次ページです。今回のプログラムの主要評価項目として、1「医療機関の受療率」、2「生活習慣病・関連アウトカムの累積発生率」を挙げております。1の医療機関の受療率については、医療機関に受療していただくということが短期的な成果ですので、これをずっと把握していくということです。中・長期的なこの保健指導プログラムの目的・成果としまして、ここに掲げております脳卒中等による入院、腎臓病に伴う入院や人工透析の導入、あるいは死亡の累積発生率を把握します。そして、これらについて介入群と対照群で比較して、効果を検証するというものです。
 併せて下の枠の「副次評価項目」に掲げている、医療機関への継続受療の状況や個別の健診データ、あるいは特定健診の継続受診率、その他人工透析導入時の年齢や医療費の動向、保健指導からの脱落率も把握し、最終的な評価をしていきたいと思っております。
 最後は、目標とする対象者数や解析方法に関してでございますが、この主要評価に用いるアウトカムの4年間の累積発生率を6%、その発生率が介入群と対照群で15%の差が生じると仮定し、統計上の有意水準5%、検出力80%等々、介入群と対照群の割合が1対3の両側検定という前提では、介入群全体で約1万2,000人、対照群でその3倍の約3万6,000人が必要であり、人口15万人で集団健診を100%やっている市では保健指導対象者が700人と仮定すると、介入群17地域と対照群51地域が必要という数を出しました。解析は、個別のデータを用い、介入群と対照群の差の検定を行います。また、クラスター・ランダム化に伴う個人内相関は混合効果モデルを用いて解析を行います。解析方法としては、ロジスティックモデル、重回帰モデル、ポアソン回帰モデルを使いまして、統計の専門家も入り、解析をしていきたいと思っています。これが全体の概要です。よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 ありがとうございました。それでは、御質問、御意見を頂きたいと思います。
○野村委員 
 質問というか、教えてほしいのですが、これは、戦略研究で5年間やって、ここで構築できた標準化された介入プログラムの効果が検証できた場合、1ページの下の「研究目的」にある「強力な保健指導」を今後全国民に義務付けていくことを考えているということでいいのですか。全国民というか、対象となる国民に対してということです。
○尾田保健指導室長 
 義務付けするか否かは、検証結果が出たあとの課題となると思いますが、少なくともこういったプログラムを実施して効果があったということにつきましては、医療保険者、国民に対して周知を図り、重症化予防に役立てていただくことは考えております。義務化については、そのときにまた改めて判断することとなると思います。
○野村委員 
 前にも申し上げたと思うのですが、私もその一員ではあるのですが、大体、駄目な生活習慣の方たちは「強力な」というのに非常に怖じ気づいてしまうところがあって、必要だと分かっていてもできない自分に追い詰められていって逃げ出してしまう方が多いということを取材したこともあります。保健師は、そういう人たちを励まし続ける指導プログラムを本当にうまくやっていかないと、病気になっている人たちを追い詰めるだけになってしまう危険があるということも聞いたことがあるので、その辺りを是非考慮した上で、良いプログラムを作っていただきたいと思います。
○川越委員 
 すごく大事なところに着目されたなということがよく理解できます。ただ、どこまで標準化されているのか。つまり、保健指導プログラムがあって、その効果を検証することをお考えだろうということは分かるのですが、この保健指導プログラムは、既に出来合いのものがあるのか、これから開発するのか。つまり、この戦略研究に対しての予算がどのように配分されるか、プログラムの開発にも予算が組まれているのか。そして実際は効果の検証を、介入群と非介入群に分けて、都市のフィールドで設定してやっていくということで、そこへ研究の予算配分がなされるのか。その辺のイメージが今一つ分からないので、説明をお願いいたします。
○尾田保健指導室長 
 プログラムの標準化につきましては、まずこの研究を行うに当たり、先進的に重症化予防に取り組んでいる自治体の例を参考にしまして、タイトルにもありますが、受療行動促進モデルを研究者の皆様に、研究的な側面から検討していただいた結果、標準的な指導方法のマニュアルについて、昨年度1年間の研究実施計画策定の研究の中で、ある程度成果として仕上げていただいております。実施に当たって多少は手直しした上で実施していくことになりますが、全く白紙から作るという状況ではございません。また、自治体に対する支援ですが、これは今後の話にもなりますが、1つには保健指導を重症化予防の方にしっかり振り向けてていただくには、どうしても人の手がかかりますので、人件費や研修経費などを対象自治体に対しては御支援できるようにしたいと考えております。
○宮田委員 
 私の記憶だと、戦略研究というのは昔、いきなり本番をやって、エイズか何かで大失敗をしたことがあって、その前に事前研究というのをやったはずですよね。今もその御説明がありましたが、もし次から御説明いただくときには、その事前研究でこういうような成果があって、これを拡大するのだという説明を頂けると、我々も納得しやすいのではないかと思います。今日は、何か新たな課題のような形で出ていますが、そうではなくて、1年間のプレリミナリーな研究が行われていて、その成果として拡大するのは妥当だと判断したのだけれども、皆さんはどう考えるかという審議の諮り方をしていただくと、より慎重に皆さんが事を進めていることが分かると思います。
 それで、1つだけ。そういった状況があることを分かった上で、市ごとのクラスターを割り付けますが、こういった生活習慣病というのは、実はどの場所にあってどういう文化を持っているのかということが、結構影響するだろうと思います。うまく全国をブロック化して、市ごとに対照地域と介入地域に振り分けるとおっしゃっていましたが、そのブロック化の検討も多分、事前研究でやられていると思いますので、その辺りを教えていただかないと、ずっと北のほうに偏っていたり、南のほうに偏っていたら、それはなかなか意味がないのではないかと思いますので、事前研究の成果も踏まえてそこら辺をお尋ねしたいなと思います。
○大阪大学磯教授 
 事務局席から失礼します。研究実施計画書作成研究代表者の大阪大学公衆衛生学の磯です。今の御質問に対してお答えしたいと思います。まず、計画書の中には触れておりますが、事前研究の成果としては、先進的な市で行われている強力な保健指導により、医療機関への受療率が約30%から90%以上に上昇した事例がありますので、そのあたりの実現可能性を検討して、このようなデザインとしました。
 もう1つ、市ごとのクラスターの割り付けに関してですが、これを行わないと、受療行動促進モデルによるプログラムが、本当に効果があるのかについての科学的な実証ができません。確かにご指摘のように、実現は容易ではありませんが、現在、対象となりうる99市からはアンケート調査の回答を得ており、また先月には説明会等を開催し、たとえ対照地域になったとしても、各自治体が考える方法で重症化予防をやっていただくことは可能であり、介入地域になった場合には、本研究の保健指導プログラムを実施していただくということで、多くの市ではその趣旨を理解していただいていると思われます。また、ブロックにつきましては、例えば北海道だけですと対象となりうる市は少ないので、北海道と東北、関東、中部と上越、関西、中国と四国、そして九州という6つのブロックに分けることで、1対3でランダム化ができるかと考えております。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○渡邉委員 
 疫学研究を介入群と対照群に分けて評価する手法でやるのは非常に適切だとは思うのですが、ほかのいろいろなものでもそうですが、対照群に入った人たちの不利益にならないような考察というのは必ずされるわけですよね。この場合、対照群はハイリスクの人たちですので、この人たちに万が一何か問題が起こるような事象が想定されるとき、例えば血圧が非常に上がるようなことがあった場合には、この方々は受療を促進する方向に入れ込むような介入というか、どういうクライテリアを設けて、この研究デザインをしているのか。その辺りをちょっとお聞かせいただきたいのですが。
○永井部会長 
 先生あるいは事務局からお願いします。
○尾田保健指導室長 
 今、磯先生からご説明いただきましたが、対照群につきましては、今まで自治体でやっていた取組を継続していただくということを想定しています。ですので、受診勧奨レベルを超えた方に対する対応というのは、現行の特定健診・特定保健指導制度の中でも、それは医療保険者からきちんと医療機関に受療するようにという働きかけをすることになっていますので、そこのところまで我々が止めるわけではありませんから、倫理上の問題というのは、基本的に生じないのではないかと思っておりますが、そういった御批判が生じないように気をつけてまいりたいと思います。
○尾崎研究企画官 
 ちょっとすみません。先生方の机の上には、研究実施計画書(案)とを置いております。会議終了後、回収させていただきますが、議論の参考にしていただければと思います。
○門田委員 統計学の素人なので、よく分からないのですが、素人的に見て教えていただきたいと思ったのが、4年間の対照群の累積発生率が6%で、介入群で15%低くなると、6%と5%ぐらいの比較ということですよね。1万2,000人ということで数が増えれば有意差検定というのができるのかも分かりませんが、6%ぐらいのところで比べるのか、あるいは参考資料の4の「戦略研究の流れ」の図の一番下の右端に「追跡評価」というのが書いてあるのですが、ここの追跡評価の中には、こういうことを更に5年過ぎてからも調査をするという意味が入っているのかどうかということについて教えていただきたいと思います。
○尾崎研究企画官 
 まず「追跡調査」について説明をしたいと思います。研究が終わる年度の2月か3月に、得られている成果について、「事後評価」をします。しかし、実際は研究期間終了後にもいくつかの成果がまとめられていることがあります。それを確認するのが「追跡調査」になります。我々の評価基準の中でも、今後「追跡調査」をしていくことが記載されております。既に終了している戦略研究の課題について、期間終了後3年ぐらいを目安に、どういうアウトプットがあったかとか、アウトカムがあったか、その評価をこれから随時やっていくという段階にあります。
○桐野委員 
 この研究計画は、既に終了している糖尿病予防のための戦略研究ととても似ていて、ここの中の課題2と課題3のミクスチャーみたいな研究だと思います。実際このときもクラスターコントロールを設けてやったのですが、たまたま私はこれが進行中のときに国際医療センターにいたので状況をよく知っているのですけれども、一番の問題は、こういう計画を立てて、実験は非常にまじめに進行するのですが、症例のリクルートは大体そんなことで進まないので、4年間の介入では結果が出ないという可能性はかなり高いと思います。その場合に、もちろん研究者のほうは最後の最後までリクルートして、フォローアップをして、エンドポイントがどうであるか決定をして、結果を出されると思うのですが、それ以降の研究の継続は全部自力なのです。
 だから、この糖尿病予防のための戦略研究も、政府からの資金は付けるので、外部からの寄付金等で補ってやるというような形になるのです。それで、政府の資金でここまでやってきたものを、そのあと外部資金で続けていいのかという議論も随分ありますが、私は、戦略研究の5年間では終わらないと思いますね。これは、きちんとした立派な結果になって、多分UMINか米国のレジストリーに登録される研究になると思うので、結果がプラスに出ようがマイナスに出ようが、戦略研究終了後も報告しないといけないと思うのですよ。だからといって、そのあとのところに政府のお金を継続して出せというのも難しいでしょうけれども、こういう事情もあるということを理解して進めていただきたいと私は思います。
○永井部会長 
 終了後ですね。ただ、糖尿病のときよりも症例数が1万2,000人と3万6,000人でかなり多いので、低い頻度でも差が見えるかもしれないですね。イベント発生率は4年で6%であればということですね。
○門田委員 
 これを見ますと、初年度でやったケースについては4年かかりますが、あと毎年追加しますよね。そうすると、期間も短くなってくると、平均すると2年間しかないというような。本当にチェックができるのかなという心配があるのですが、専門家がやっておられるのだから間違いないのだろうと思いますが、ちょっと素人的には不安があるなと思います。
○永井部会長 
 それは当然考慮した上でのケースで解析をなさるわけですね。
○井伊委員 
 この目的は保健指導プログラムの効果検証ということですが、5ページの保健指導プログラムの概要で、初回保健指導と継続指導という2つ枠があります。御説明では、受療行動促進。ですから、初回保健指導のことを検証するのかなと思いますが、実際には受療・受診しても、継続指導の枠の中にある生活習慣改善方法の提案などが、私ども保健指導をする立場にとってはとても重要だと思います。ですので、このプログラム概要の初回保健指導と継続保健指導を誰がするのかということをお尋ねしたいのと、原則1回以上ということですが、もし両方が守備範囲に入っているとすると、1回以上ではなく、少なくとも2回以上ではないかと思うのですが、いかがでしょうかということが1点です。
 次に、書きぶりで揚げ足をとるような言い方で申し訳ないのですが、介入プログラムの標準化で、保健師、事務職員に対する研修を年3回ということは、事務職員にも保健指導をさせるということでしょうか。それとも、介入プログラムを標準化して学ぶべきことは二通りあるということなのかお尋ねしたいです。
 もう1つです。最後のページに、目標とする対象者数ということで、集団健診100%の市で、約700人と仮定しておられますが、多分、人口15万人で集団健診100%という所はないのではないかと思います。そうしますと、17地域、51地域では足りなくて、もっと多くの市町村数を対象にしないと、この数がクリアできないのではないかと思います。介入の途中中断は、必ずしも保健指導だけの影響ではなくて、仕事が変わったり、地理的な条件が悪くなったり、あるいは配偶者に何らかの問題が起こったりとか、介護が始まったりとかいろいろあるので、途中で脱落する人もいるでしょうし、この介入検証のための対象数を得るには、もっとたくさんの対象者数の設定が必要だと思いますが、いかがでしょうか。それで、700人と仮定したときに、先ほど人件費と研修費を準備していただいているということで、それは市町村にとっても大変嬉しいことですが、一体どのぐらいのマンパワーを想定しているのかを是非教えてほしいと思います。
○尾田保健指導室長 
 まず私から御説明させていただいて、詳細につきましては磯先生にフォローしていただきたいと思います。まず、受療行動促進モデルの保健指導の内容ですが、初回保健指導は必ずやって、継続指導もやっていく。最低2回は保健指導をするという中で、原則1回以上というのは家庭訪問や個別面談の形でやる保健指導が、少なくとも1回あるという趣旨でして、あとのもう1回につきましては、違うやり方も可能であるということですので、個別に対面でやる保健指導が必ず1回は入るということです。今回、戦略研究企画・調査専門検討会の中でも、保健指導プログラムの内容よりも回数を重ねることの効果が出てきてしまうのではないかという懸念が示されましたので、このプログラムの中では、受診しない方には何度でも働きかけるということではなくて、限られた回数の中で、しっかりとした標準化した保健指導をやっていただいて保健指導プログラムの内容の効果を見るということで、回数効果が出てこないような形でプログラムを考えているところです。
 また、2点目の介入プログラムの標準化の中で事務職員が研修対象となっているということにつきましては、保健指導を実施する上では、全体の保健事業の計画、評価、企画などで、保健師等の専門職と、事務職員が協働して実施するのが通常ですので、当然その自治体の事務職員の方にも、このプログラムの内容について理解していただいて、特に評価のところ、あるいは全体の企画のところで、保健師等の専門職と一緒にやっていただく必要があることから、この研修の対象にも事務職員を入れています。
 また、3点目の集団健診100%の自治体はないのではないかということにつきましては、先ほど磯先生からありましたが、アンケート調査で事前に確認したところ、少なくとも99の自治体では集団健診での健診受診者数をある程度確保できる見込みであるということは把握しております。
○大阪大学磯教授 
 最後の回答につきましては、集団健診100%という市は、人口7万から20万人ぐらいまでの自治体が多いですが、人口20万人を超えますと、50%前後という市も結構あります。ただ、先生の御指摘のように人口50万人以上の市になりますと、集団健診の率が非常に少なくなります。資料6でお示ししたのは、あくまでも基本的な方針であり、人口15万人の市で集団健診を100%実施した場合に、介入の対象となる未治療の重症化ハイリスク者が約700人抽出されると推計され、これを17市集めれば、統計的な検証ができる数になるということです。実際は人口7万人から70万人の間で、地域ブロックによって異なりますが、できるだけ人口の多い市のクラスターから介入地域と対照地域を選んでいきたいと考えています。
○井伊委員 
 回数効果が出ないような形で5年間やり続けるということについて、現場で保健指導に当たる者にとっては、そういう制限を受けるというのは、ちょっとどうかなと思いますので、そういうことをした場合は対象から外すとか何か工夫をしていただかないといけないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。今回のこれは重症化予防で、こういうことに取り組んでいただいて、いいことだとは思いますが、3ページの重症化ハイリスク者は血圧も高いし、HbA1cも8.4%ですし、こういう方々に対し、どうしても受診しなければ何度も働きかけるのが通常の保健指導のやり方でもあり、回数効果が出ないようにというのは、規制が過ぎるのではないかなと思います。
○永井部会長 
 今の点、いかがですか。
○大阪大学磯教授 
 実際の保健指導プログラムでは研究実施計画書にありますように、2回目の継続指導後に再度レセプトを確認し、それでもまだ受療していない人に対しては家庭訪問することを考えておりますので、個人によっては、その後の保健指導を制限するものではないと認識しております。
○宮田委員 
 これは非常に意義がある研究なので、是非成功していただきたいと思っています。今いろいろな方のお話を聞いていても、重症例に受療を勧奨するプログラムになっていますが、それを今までやっているものにどういう上乗せをするのかというイメージが実はあまり持てないのです。どのような説得をすることをお考えなのでしょうか。
○大阪大学磯教授 
 保健指導後にレセプトで受療状況を把握し、これを繰り返すことが特徴です。受療に関する情報を本人の自己申告に頼らないという点が1つ。
 もう1つは、今回の受療行動促進モデルは、ヘルスビリーフモデルという、欧米でよく使われているモデルを使用する点です。自分の今のリスクの状態をきちんと理解してもらい、例えば医療機関を受診する際の様々な障害や利益・不利益について、本人と保健師が共有し、本人が受診することを納得した上で行動に移すといったところが特徴です。そのためのトレーニングとして、保健師には、動機付け面接法という技術を研修した上で、このプログラムを実施します。この2点が今回の研究で付加する点です。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
○相澤委員 
 せっかくの大規模調査ですから、ここで得られたデータにつきましては、この研究だけではなく、その後の研究に役立つように、データの保存及びそのデータの他の研究への利用についての配慮をお願いいたします。
○福井部会長代理 
 私も2つだけ。1点は、以前私も糖尿病の関係のことで、中央倫理委員会の委員として関わったのですが、やはり自治体のリクルートが非常に難しくて、この計算だけですとぎりぎりで、700人と計算をして、介入地域17市で1万1,900人で、1万2,000人を計算値に近付けようということで、かなり難しいのではないかというのが正直なところです。もうちょっとマージンをとったほうがいいのではないかなというのが1つのコメントです。
 2つ目は、受療行動促進モデルというのは、昔から効果があると言われている方法論ですので、そのモデルを検証するというのは今まで散々やられたことの検証をもう1回やっているように聞こえてしまいます。これだけのお金があるのなら、最初から事業としてもっと広くやったほうが多くの人がメリットをこうむるのではないかなと、何となくそういうイメージを持ってしまいます。コメントです。
○大阪大学磯教授 
 福井先生がおっしゃったように、リクルートのマージンをとるためには、17市にこだわるわけではないので、できるだけ多くの市のリクルートを実施したいと希望しております。
 もう1つは、受療の促進ということについては、ある程度のエビデンスはありますが、ハードエンドポイントである疾病の抑制について対照地域を設定して効果検証を行うのは、世界で初めてであると理解しております。過去の循環器疾患予防に関するコミュニティトライアル、例えばフィンランドのノースカレリア地方のプロジェクトや、スタンフォード大学のプロジェクト、ミネソタ大学のプロジェクト等がありますが、いずれも最初に介入地域を決めて、人口規模、地域特性の類似した対照地域を選んでいくという形です。さらに、その効果検証につきましても、1次予防から3次予防まで全部をセットした保健指導の全体の効果検証という形で、今回の研究のような受療行動促進モデルによる保健指導の効果検証という研究はこれまでないと理解しています。
○永井部会長 
 イベントをしっかり見ていくということですね。そういたしますと、今の御意見を踏まえまして、また磯先生も御意見を取り入れられて、この研究を進めていっていただくということでよろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。では先を急ぎます。報告事項にまいります。「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、事務局から報告をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料7につきましては、先ほど審議事項の中で一緒に説明させていただきました。先にすすめさせて頂き資料8の報告について説明させていただきます。表紙は、実施施設からの報告で、九州大学の研究課題についての重大事態等の報告書です。もう1つは、岡山大学の研究課題についての変更申請書等です。
 まず、九州大学の研究で発生した重大事態としては、4ページを御覧いただきたいと思います。遺伝子治療薬を投与された方に心筋梗塞、胆道系感染症などがそれぞれ臨床研究の治療薬を投与されてから2年10か月後、2年11か月後に起こったというものです。5ページ目の真ん中までに経過が書いてあり、その後の下から3つ目のパラグラフのところに「経過良好のために現在は当院を退院している」と、九州大学を退院しているということが転帰としてあります。これの状況については、6ページ目にその後の対応状況として、九州大学ではこの2つの委員会でこの内容をいつもチェックしているわけなのですが、今後とも患者さんには注意深いフォローが必要という結論になっています。この対応については、この審査に当たった遺伝子治療臨床研究作業委員会も了解しています。
 続いて、9ページ目からの岡山大学です。岡山大学につきまして、総括責任者の変更があり、変更申請書が上がっています。これについて意見としては、9ページにあるように、我々事務局としては問題ないとしたことを報告するものです。変更の内容としては、14ページに書いてあるとおり、Telomelysinの製造元であるオンコリスバイオファーマが、岡山大学にTelomelysinを無償で譲渡するということになり、藤原先生という前の総括責任者の方が、非常勤の取締役ということで、利益相反の問題があるのではないかと岡山大学で検討をし、実施者を変えることとしたということです。15ページに書いてあるように、藤原先生から一緒に研究をやられていた石川先生に総括責任者が変わるということです。
 16ページを見ていただきますと、現在この研究については米国からの当該薬の輸入手続を進めているところで、まだ開始されていません。今回の新しい体制で開始する予定です。この件については以上です。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。御質問、御意見はございますでしょうか。ございませんでしたら、了解とさせていただきます。続いて「疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しについて」、事務局から説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料9を御覧ください。疫学研究に関する倫理指針と、臨床研究に関する倫理指針については、昨年の10月頃に開催された科学技術部会におきまして、見直しの委員会を立てて検討を進めていくということが了解されています。そのときの科学技術部会の先生方の意見といたしまして、この2つの倫理指針の見直しについて合同で検討をしてくださいということと、検討の状況については最終的なものになった段階ではなくて部会に報告してくださいということでしたので、その一環として本日、報告するものです。
 専門委員会の開催の経緯というものが1ページにあります。疫学指針は厚生労働省と文部科学省の共管、2省の大臣告示として出しているものでして、臨床研究指針は厚生労働省の単独のものですが、この3つの委員会が共催して、一緒に合同委員会として検討しているということが書いてあります。
 それで本日報告する内容は、専門委員会における議論で、各委員からの発言または提出のあった意見を事務局で整理したものを御報告するものです。2ページ目以降がその内容です。
 ここにいろいろな事項がありますが、これらを踏まえて今後論点を整理し、見直しの方向性を詰めていく予定です。一部紹介いたしますと、2ページ目の1「疫学指針と臨床指針の統合について」は、このような意見があります。例えば6つ目の●では、一体化が困難な場合は観察研究に関する倫理指針と介入研究に関する倫理指針に再編すべきという意見。下から2つ目は、どちらかを本則、どちらかを例外則としたらどうだとか、インフォームド・コンセントにバリエーションがある疫学研究の方をしっかり配慮する必要があるといった意見が記載されています。
 また2番目の「適用関係について」では、1つ目の●では、人文・社会系の関係する学術的研究を実施する場合どうするのか明確に整理しておいたほうがよいのではないか。3ページ目の上にいきますが、指針で取り扱わない対象をより明確にするということが必要ではないかというような意見その他があるところです。3ページ目の下の、「ヒトゲノム・遺伝子解析の指針の適用について」は、ここに書いてあるような意見が出ているところです。
 4ページ目の「個人情報の取扱いについて」には、個人情報保護の観点から本人同意なしに個人情報を収集できないことによって、公益が損なわれているのではないかという現状。個人情報保護法と研究倫理との切り離しの可能性を検討すべきとあります。続いての「インフォームド・コンセントについて」では、救急医療の現場における同意に関する要望、既存検体の有効活用についての包括同意について検討する必要とあります。
 5ページには、「未成年者の手続について」、「倫理審査委員会について」があります。機関審査ではなくて地域の審査を確立する必要があるとの意見があります。6ページ、7ページ目もそれぞれの項目について意見が出ているものです。繰り返しになりますが、これを踏まえて検討をすすめてっていきたいと思います。なおこの委員会については、福井先生に座長をお願いしていまして、この科技部会の何人かの先生も委員として参加していただいています。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます、よろしいでしょうか。それでは次に進みます。議事の5「厚生労働科学研究費補助金における不正使用等の事実に係る公表方針について」、事務局より説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料10を御覧ください。不正使用等の事案に係る公表については、1を見ていただきますと、厚生労働科学研究費の不正使用や研究上の不正行為が判明した場合には、不正使用等を行った者の所属する研究機関に対して、公表することを求めています。このことについては、2ページ目の関係規程に書いてあるとおりです。ただ、必ずしも適切に公表されていない場合が実際にある、また、公表していない場合に我々の指示が十分ではない場合がありました。
 2つ目の○で、厚生労働省においては、不正使用等を行った者に対して交付決定の取消しや一定期間の交付制限の措置を適宜行ってきたわけですが、その事案の公表については明確な方針を定めていなかったこともあって、公表してこなかったという状況があります。それについて今後の対応としては、引き続き研究機関に対して必要な指導はもちろん行っていく。原則として全てのこうした事案については、措置の内容を今後公表していくものです。具体的な公表の仕方等はこちらで整理をした上で御報告したいと考えています。あとは、研究者に対し、上記の方針について厚生労働科学研究費の公募要項上に明記することにより周知します。今回の議題1の公募要項にこの旨を明記して公募するという予定にしています。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。宮田委員、どうぞ。
○宮田委員 
 これは、申請した研究機関が公表し、なおかつ厚生労働省も公表するということですね。
○尾崎研究企画官 
 厚生労働省の公表の仕方としては、例えばまとめてか、随時か分かりませんが、内容が分かるように公表をしていきます。いくつかの他省庁はすでに公表していますので、その辺を参考にて公表の仕方を考えていきます。
○宮田委員 
 なるべくずばっと公表していただいて、今後こういうような不幸な事例が増えないように御配慮いただきたいと思います。このように隠すと私たちが働いてしまう可能性があるので、分かりやすくやっていただきたいということです。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。続いて議題5、「再生医療の安全性確保と推進のための枠組み構築について」、事務局から報告をお願いします。
○事務局
 医政局研究開発振興課から説明させていただきます。資料11を御覧ください。表題「再生医療の安全性確保と推進のための枠組み構築について」とありますが、3ページに報告書の概要を添付しています。「はじめに」の2つ目の○に書いてありますが、再生医療については新しい医療であるということで、これまで関係法令が十分に整備されていませんでしたので、平成24年9月以降計7回にわたりまして委員の先生方に精力的に議論を頂き、この概要の1から6になりますけれども、報告書を取りまとめていただきました。
 まず、1つ目としましては、再生医療の安全性確保と推進のための枠組みの必要性・構築の目的ということで、再生医療の実用化を推進する、また、国民が迅速かつ再生医療を受けられるようにするためには、実効性のあるルールとして法整備を検討すべきであるという指摘を頂いています。
 2つ目の対象範囲・定義ですけれども、再生医療については一般の医薬品、医療機器とは異なる、細胞特有の未知のリスクというものがありますので、細胞を用いる治療としまして、治療だけではなく、美容目的で自由診療等で行われているものも含むとされています。 
 また、リスクに応じた安全性確保の枠組みは、再生医療と言いましても様々なリスクがあるということで、3分類のリスク分類をしまして、高いもの、中くらいのもの、低いものというイメージで3つに分けました。○の2つ目で、安全性確保対策の必要度の高い医療、リスクが高いものに関しましては、第三者性が担保された地域倫理審査委員会を厚生労働大臣が認定することを考えています。ここの意見を聴いた上で厚生労働省に届出いただき、その上で一定期間の実施制限を設けて厚生科学審議会の意見を聴いた上で厚生労働大臣が安全対策等について確認するというスキームを考えています。
 また、安全性確保対策の必要度が中程度の医療につきましては、地域倫理審査委員会の意見を聴いた上で厚生労働省に届出いただく。安全性確保対策の必要度が低い、リスクが低いものに関しては、今、告示の倫理指針等で行われているものと同じように、施設内の倫理審査委員会にきちんと聴いて届出いただくということを考えています。
 また4つ目として、細胞の培養・加工基準の設定です。これまで細胞の培養・加工を医療機関から企業にすることについての明確なルールがなく、そこの推進が図られなかったということがありますので、これを事業者へ委託することを可能にする。これによって、再生医療に関連する産業の育成と発展に資するのではないかと考えています。一方で細胞培養・加工の基準としての安全性を確保することが必要ということで、そこは薬事法と整合性を図り、その基準への適合性は、当面はPMDAが確認することを検討する。
 5番目として、倫理性の確保ですが、倫理審査委員会の審査事項や基準を法令で明確にするということで、その基準への適合性について倫理審査委員会が倫理的・科学的観点から審査するような立て付けにしてはどうかとされています。また、患者や細胞の提供者への適切な説明及び同意、個人情報の保護等についての規程も定めるべきとの御指摘を頂いています。また被験者保護のための補償の措置、研究促進のためのヒト細胞の円滑入手についても検討を進めるように御指摘を頂いています。
 最後の6、国民への情報提供ということで、国は再生医療及び細胞治療の実施状況を把握して、最新の情報を定期的に広く国民に情報提供すべきであると御指摘を頂いています。また、再生医療及び細胞治療に関する情報が、国民へ一方通行的に流れるだけではなく、国民が知りたい時にきちんとアクセスできるような形に、相談できるような形でヒト幹細胞情報データベースの充実等、既存のものも含め、情報の発信の利便性の向上等の方策を進めるということでまとめられています。
 こちらの専門委員会につきましては、永井部会長に委員長をしていただきまして、非常に短期間でこのような枠組みの構築についてまとめていただきました。概要の後ろに報告書の本文がございまして、27ページから報告書の参考資料という形で、これまでの現状と今後作られるべき法律のイメージについて参考資料を付けさせていただきましたので、御報告いたします。事務局からは以上です。
○永井部会長 
 御質問、御意見いかがでしょうか。桐野委員。
○桐野委員 
 言葉の問題ですが、3ページに「再生医療は、これまで有効な治療法のなかった」云々と書かれています。しかしずっと見ていくと、下の方の3「リスクに応じた安全性確保の枠組みについて」では、「再生医療及び細胞治療の実施にあたっては」と書いてあります。それで6ページの一番上に、「一方、必ずしも安全性が確保されていない『再生医療』の名を冠した細胞治療等が」行われていると書いてあって、何を言っているのかよく分からないですね。これは本当の、正真正銘の再生医療のことを言っているのか、それともその名を冠した細胞治療を言っているのか、再生医療及び細胞治療を言っているのかが分からないという問題がありますので、そこを整理していただいたほうがいいと思います。
○事務局
 事務局からの補足説明をさせていただきます。資料の9ページ下の方を御覧ください。実は桐野委員から頂いた御指摘はかなり委員会でも議論のあったところでして、一番下の○ですが、いわゆる再生医療と呼ばれるものの中には、実際に再生しているかどうか分からないものもある。また、再生という言葉は期待が大きいゆえに混乱・誤解を生む可能性があるので、科学的に適切な表現を明確に定義すべきではないかという御意見がありました。
 続いて、10ページの「今後の方向性」を御覧ください。安全性確保のための法的枠組みの対象とする医療は、細胞を用いる医療のうち、一般の医薬品・医療機器と異なり、細胞特有の未知のリスクがあり、長期にわたる人体への影響の可能性がある等の特質を有する細胞を用いる治療を基本とし、治療だけではなく美容目的も含む。それで※の所ですが、名称についてかなり御議論いただきまして、細胞治療と再生医療、この両者を包含する概念であること、国民の理解を得るために、既に幅広く再生医療という用語が一般的に用いられていることに鑑みまして、本報告では便宜的にこれ以下「再生医療及び細胞治療」という形で、ここの段落以降は使うという形の報告書の取りまとめとなっていますので、前段は一般的な「再生医療」という形で入っていますが、その位置づけ、定義の議論でこの後は「再生医療及び細胞治療」としようということになっています。
 なお、法文上の名称につきましては、最終的には内閣法政局でその定義も含めて妥当性について検討されますので、別途法制的な検討が必要なことに留意するという形にさせていただいています。
○永井部会長 
 お分かりになりにくいと思うのですが、研究として再生医療を推進するというのはいいのですが、出口の段階で再生しているかどうか分からないものが再生医療と言えるのかというと、言えないのですね。そういう場合には細胞治療と言っていくしかないわけで、その辺りを全体をどうまとめるか、再生医療を推進しつつ、しっかりした安全性が確保された再生ないし細胞治療をどうするかというところで、この言葉がいろいろな使い方がされている。ただ「・」で結ぶのはよろしくないということで、「及び」で結ぶということになりました。
○桐野委員 
 御趣旨はよく分かるのですが、細胞を治療として使うというのは、輸血に始まってもうずっと行われているわけですので、なかなか表現が難しいところになるのではないかと思うのです。言ってみれば再生医療の名を冠した細胞治療等が既に行われている、しかもそれが全くノーコントロールの状態で行われているということは、相当問題である。国際的にも問題にされていると聞いたことがあるのですが、多分そういうことを念頭に置いたものと思いますが、言葉はきちんとしておかないと、この言葉の使い方でははっきり言って何がなんだか分からないという感じが私はしました。
○永井部会長 
 外国ではセルセラピーになっています。しかし、再生医療という言葉がせっかく流布しているので、それを使いたいという意見が非常に多かったということで、こういう表現になっているということです。また法律の方ともよく相談して、誤解のないような使い方をしていただきたいと思います。松田委員、どうぞ。
○松田委員 
 委員会の中でも、今も議論になりましたけれども、実際に再生しているかどうか検証する必要があるという議論になりまして、厚生労働科学研究費等を使ってそれを実際にやっていったらどうかという議論もありまして、そういう記述も一部の議事録に残っていると思います。また実際にできた、今御説明いただいた報告書の中の15ページにも、そういう部分がちゃんと記述してあるわけです。そこで、これは質問ではないのですけれども、最初に議論しました今回の、平成25年度の厚生労働科学研究費補助金の公募要項中の再生医療の項目の中に、きちんと細胞の安定性等の記述がありますので、議論を踏まえて要項が書かれていると見たのですが、それでよろしいですか。
○事務局
 そのとおりでございます。また、1年限りではなく、今後実際に法案が出来上がっていった後はどんどん状況が変わってまいりますので、厚生労働省としては、その時々の状況に合わせて一番必要であると思われるものについて、重点的に配分することを考えています。また細かな、下位法令の設定についても、引き続き専門委員会の皆様方の御知見をお借りしながら、議論を進めていくということになっていますので、そういう場でもいろいろと御指摘を頂ければと考えています。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。相澤委員。
○相澤委員 
 この報告書には曖昧なところがあります。どこまでが審査を受ける範囲か、どういう手続を踏めばいいのかということを、ここに使われている用語も含めて、明確にするように、今後検討していただきたいと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。本日の議事は以上で終了です。事務局から連絡事項等をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 まず1つ目ですが、戦略研究の議題の審議のときに使用しました、本日の机上配布資料については、会議終了後に回収したいと思いますので、机上に残していただきますよう、よろしくお願いします。 
 2つ目として、次回の日程については委員の皆様には改めて日程、開催場所等について御連絡申し上げます。事務局からは以上です。
○永井部会長 
 はい、それでは長時間ありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
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 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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