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2013年3月5日 第76回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成25年3月5日(火) 15:00~17:30


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
井伊委員 江藤委員 川越委員 菊池委員
桐野委員 塩見委員 玉腰委員 西島委員
野村委員 福井委員 松田委員 宮田委員
門田委員 山口委員 山田委員 渡邉委員

○議題

1 部会長の選出 及び部会長代理の指名の結果について
2 遺伝子治療臨床研究について
3 遺伝子治療臨床研究作業委員会及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会の見直しについて
4 ヒト幹細胞臨床研究について
5 その他

○配布資料

資料1厚生科学審議会科学技術部会 委員名簿
資料2遺伝子治療臨床研究実施計画及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に係る意見について
資料3遺伝子治療臨床研究作業委員会及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会の見直しについて(案)
資料4-1ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料4-2ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料4-3ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料5平成25年度 厚生労働省科学技術関係予算案について
資料6厚生労働科学研究費補助金における不正使用及び研究上の不正行為への対応について
資料7遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見について
参考資料1厚生科学審議会関係規程等
参考資料2遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料

○議事

○尾崎研究企画官 
 定刻になりましたので、ただいまから第76回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただき、お礼を申し上げます。
 議事に入る前に、私のほうから本日の会議資料の確認をしたいと思います。資料で「議事次第」と書いてある一枚紙があるかと思うのですが、その中ほどの「配布資料」を御覧いただければと思います。
 資料1、資料2、資料3。資料4-1については、資料4-1の丸1と資料4-1の丸2に分かれています。資料4-2、資料4-3、資料5、資料6、資料7、参考資料1、参考資料2、参考資料3です。資料の欠落等ありましたら事務局にお申し付けください。よろしいでしょうか。
 それでは始めに、事務局から、平成25年の委員改選があり、今回が最初の会議になりますので、委員の先生方を御紹介させていただきます。資料1を見ていただければと思います。資料1に沿って50音順に御紹介させていただきますので、御挨拶頂ければ幸いです。
 まずは、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の相澤英孝委員です。本日は御欠席の連絡を頂いています。
 続いて、日本看護協会専務理事の井伊久美子委員です。
○井伊委員  
 井伊と申します。本日から初めて参加いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 日本医師会の常任理事の今村定臣委員です。本日は御欠席の連絡を頂いています。
 続いて、国立障害者リハビリテーションセンター総長の江藤文夫委員です。
○江藤委員 
 江藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 東京女子医大副学長の大澤真木子委員ですが、本日は御欠席の連絡を頂いています。
 続いて、クリニック川越院長の川越厚委員ですが、遅れるとの御連絡を頂いています。
 続いて、東海大学法学部法学科教授の菊池京子委員です。
○菊池委員 
 菊池でございます。私も本年度から委員にさせていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○尾崎研究企画官 
 独立行政法人国立病院機構理事長の桐野?明委員です。
○桐野委員 
 桐野でございます。よろしくお願いします。
○尾崎研究企画官 
 東京大学大学院理学系研究科教授の塩見美喜子委員です。
○塩見委員 
 塩見と申します。よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 北海道大学大学院医学研究科教授の玉腰暁子委員です。
○玉腰委員 
 玉腰です。疫学・公衆衛生学が専門になります。よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 自治医科大学長の永井良三委員です。
○永井委員 
 永井でございます。よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 昭和薬科大学長の西島正弘委員です。
○西島委員 
 西島です。よろしくお願いします。
○尾崎研究企画官 
 中日新聞社編集局整理部記者の野村由美子委員です。
○野村委員 
 野村由美子です。現在は単域で紙面製作をしておりますが、女性や子どもをテーマにして、患者さんが主体的に医療と関わるような健康のページを作ってきました。よろしくお願いします。
○尾崎研究企画官 
 独立行政法人国立循環器病研究センター理事長の橋本信夫委員ですが、本日は御欠席の連絡を頂いております。
 続いて、聖路加国際病院長の福井次矢委員です。
○福井委員 
 よろしくお願いします。
○尾崎研究企画官 
 協和発酵キリン株式会社相談役の松田譲委員です。
○松田委員 
 よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 日経BP社特命編集委員の宮田満委員ですが、本日は遅れてみえるという御連絡を頂いております。
 続いて、がん研究会有明病院長の門田守人委員です。
○門田委員 
 門田守人でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部研究員の山口照英委員です。
○山口委員 
 山口です。どうぞよろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 日本医用光学機器工業会理事代行の山田澄人委員です。
○山田委員 
 山田です。どうぞよろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 最後になりますが、国立感染症研究所長の渡邉治雄委員です。
○渡邉委員 
 渡邉です。よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 以上21名の委員で、今後、御検討をよろしくお願いしたいと思います。本日は出席議員は既に過半数を超えていますので、会議が成立いたしますことを御報告いたします。
 続いて、事務局について紹介させていただきます。技術総括審議官の三浦です。
○三浦技術総括審議官 
 技術総括審議官をしています三浦でございます。先生方、本日は大変お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。また、この委員を引き受けていただいたことについて、厚く御礼申し上げたいと思います。御案内のとおり、科学技術は、今、大変注目されている分野でもありますし、また、ライフサイエンスというのは今後とも重要な課題であることは間違いありません。そういう意味で、この科学技術部会は厚生労働省における科学技術全体の総括、大元締めということですので、この部会の動きがすなわち厚生労働省、また、ひいてはライフサイエンス全体に大きな影響を与えるような重要な部会であると、私どもは認識しているところです。
 本日も様々な研究について御審議いただくわけですが、先端的な研究などの個別の具体的な審議もありますし、同時に、総括的なこれからの方針というようなものも含めた概括的な御議論も頂きます。大きなものから小さなものまで、事項としてはたくさんあるわけですが、是非、熱心な御議論を頂きたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。
○尾崎研究企画官 
 引き続き、事務局について紹介させていただきます。厚生科学課長の福島です。
○福島厚生科学課長 
 よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 主任科学技術調整官の古元です。
○古元主任科学技術調査官 
 よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 研究開発振興課長の佐原は遅れているところです。
 再生医療推進室長の荒木です。
○荒木再生医療研究推進室長 
 よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 私は研究企画官の尾崎でございます。よろしくお願いいたします。
 引き続いて、部会長の選出、部会長代理の指名の状況について、事務局から御報告いたします。本部会の部会長の選出については、厚生科学審議会令第6条において、「当該部会に属する委員の互選により選任する」とされています。既に委員の方々の互選によりまして、永井委員が部会長に選出されていますことを御報告申し上げます。
 また、部会長代理については、同様の厚生科学審議会令第6条において、「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員又は臨時委員のうちから部会長が予め指名する者が、その職務を代理する」とされており、部会長より福井委員が指名されています。
 以降の議事運営については、部会長にお願いいたします。
○永井部会長 
 それでは議事に入ります。最初に、「遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見」について御審議をお願いいたします。
 三重大学医学部附属病院、愛媛大学医学部附属病院、藤田保健衛生大学病院、名古屋大学医学部附属病院からの多施設共同研究の実施計画について、作業委員会の検討結果を事務局より報告をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料2です。本件に係る遺伝子治療臨床研究実施計画作業委員会と遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会の2つの作業委員会の結果を御報告いたします。
 資料2の1枚目の表裏を見ていただくと、資料の構成の目印があります。例えば、被験者への説明及び同意書などについては、この資料の通しページの140~153ページになります。資料2の9ページが今回の作業委員会の先生方の名簿です。
 資料の1~7ページが、科学技術部会への当該作業委員会からの意見、主として科学的事項の論点整理の結果がまとめられているものです。今回の研究実施計画の概要について説明いたします。資料の2ページ目の1.「遺伝子治療臨床研究実施計画の概要」を御覧ください。研究課題名については(1)にあるとおりです。申請年月日は平成24年7月23日、研究実施施設としては、三重大学医学部附属病院、愛媛大学医学部附属病院、藤田保健衛生大学病院、名古屋大学医学部附属病院の4施設で、多施設共同臨床研究が行われるものです。各大学からの実施計画申請書や実施計画概要書の抜粋は、当該資料の通しページの11~46ページにあります。各施設の総括責任者は、2ページの(4)にあるとおりです。一番下の注)にあるように、TCR遺伝子導入リンパ球の調製は、三重大学の細胞調製施設で行うものであり、三重大学以外の3大学は被験者から採取された末梢血を三重大学に輸送し、遺伝子導入が行われた後に元の施設に輸送されるものです。
 3ページの(6)研究の概要です。今回の研究実施計画の被験者は、薬物療法等の標準的な治療法の実施が困難である非寛解期の急性骨髄性白血病の方や、治療困難な予後不良の骨髄異形成症候群の方であって、腫瘍細胞にWT1を発現しているなど、資料の112ページからの被験者の選択基準に該当し、また、それに続く除外基準に該当しない人になります。導入される遺伝子については、WT1抗原特異的T細胞受容体α鎖及びβ鎖の遺伝子です。すなわち、WT1抗原はがん抗原の1つであり、腫瘍細胞である白血病細胞に発現することが報告されているものです。また、T細胞受容体は、Tリンパ球の表面に出ている抗原を認識するアンテナであり、WT1抗原をHLAの研究の対象になっている方の存在下で特異的に認識するT細胞受容体α鎖、β鎖の遺伝子ということになります。この遺伝子の構造の詳細については、例えば資料の66ページに記載されています。
 遺伝子導入については、レトロウイルスベクターと称するところのMS3-WT1-siTCRにより、被験者の自己のリンパ球に行われるものになります。当該ウイルスベクターの構造等については、資料の66ページや通しページの85ページの図10に記載されているとおりです。遺伝子を導入する際に、被験者のリンパ球が、もともと持っている別のアンテナである内在性のTCRを減らす工夫として導入するT細胞受容体であるTCR遺伝子を選択的に抑制するRNAiというRNA干渉を起こさせるRNA配列が導入されているものです。これについては、資料の67ページのIV.1.1.3に記載があります。
 今回の研究は、遺伝子導入された自己リンパ球輸注の安全性、体内動態、及び臨床効果評価することを目的とするものであり、資料の60ページのVの「遺伝子治療臨床研究の目的」に詳しく記載されています。
 意見書の2ページです。(5)に用法・用量が記載されています。今回の研究では、遺伝子が導入された自己リンパ球を2回輸注し、その後WT1のペプチド300μgの皮下投与を2回行う計画になっているものです。当該自己リンパ球の投与量は、低用量、中用量、高用量の3群で、各群3症例の合計9症例を行うという研究計画です。資料の110ページの図18には、TCR遺伝子導入Tリンパ球調製及び輸注計画の全体像が図示されています。通し番号の111ページにはTCR遺伝子導入Tリンパ球数の設定の理由が記載されています。115ページには、実施期間及び目標症例数の詳細が記載されています。
 今回の研究で使用されるWT1ペプチド関係については、N末端より2番目のメチオニンをチロシンに変更した改変型と称しているペプチド9アミノ酸で、不完全フロイントアジュバント、MONTANIDEとの懸濁液として皮下投与されるものです。これらについては、資料の62ページのV.3又は117ページのIX.5.3.2に記載があります。
 資料の3ページです。(7)に「その他」がありますが、これは外国での関係遺伝子治療臨床研究の状況を記載しているものです。米国では、悪性黒色腫患者に対して、今回の研究とは異なる抗原、MART-1に特異的TCR遺伝子を導入したTリンパ球投与の臨床研究が実施されているということです。また、国内では、同じ三重大学で、治療抵抗性食道癌患者に対して、今回の研究類似のレトロウイルスベクターを用いての研究を実施中であり、その状況が記載されています。
 続いて、作業委員会の審議概要について説明いたします。資料3ページの作業委員会の審議概要を御覧ください。作業委員会を開催する前に、事前の意見・照会事項を出し、その回答を得ているものでして、その概要はそれに続くとおりです。4ページで、主なものについて御紹介いたします。アについては、患者に投与する遺伝子導入リンパ球の細胞生存率を各施設で確認するとされるが、その規格はどうするのか。また、解凍方法は統一されているかということに対して、回答としては、細胞生存率を測定することについては、FDAのガイダンスを参考に70%に設定する予定ということと、手順については三重大学で作成しており、各施設においても同様のことを行うという回答になっています。
 イです。内在性のTCRの発現を抑制するために、siRNA発現ベクターを用いる点に今回の新規性があるが、siRNAの導入によりインターフェロンが高発現する恐れはないかということについては、そこに回答があるとおり他の研究では誘導する可能性が報告されているが、当該反応のメカニズムや、これまで得られた実験データを検討した結果、可能性は低いと回答されているものです。ウです。WT1ペプチドの投与により、TCR遺伝子導入リンパ球にどのような効果をもたらすかという質問に対して、回答としては、WT1ペプチドの投与によっては、いわゆるがんワクチンとしての効果というよりも、導入細胞の生存期間延長に寄与することを目的としているものだという回答を頂いています。エです。第1相的なこの試験を、多施設共同で開始する理由を明確にすることについて、ここに書いてあるような回答がされているものです。
 5ページです。三重大学以外の施設においての治療手技を統一するような実施体制をどのように行うのかということについて、ここにあるような回答がされているところです。クです。重篤な有害事象が認められた際の当該施設での対応と、多施設間での情報の共有についてどうなっているのかということです。回答としては、24時間以内に当該施設の長及び各施設の総括責任者へ口頭、若しくは電話で第一報報告を行うとともに、報告書についても同様に提供するということになっています。
 次のページですが、そのようなやり取りをしていく中で2)にあるように、作業委員会を開いたということになります。開催日時については、平成24年10月22日。議事概要としては、総括責任者のほうから説明を受けた委員間で実施計画の科学的妥当性について審議を行ったと。基本的には、おおむね了承とされ、細かい事項について確認した後に、科学技術部会に報告することとされたということです。委員会の指摘事項及びそれに対する回答がそれ以降にありますが、主なものはイの所で、安全・効果評価・適応判定中央部会について、重篤な有害事象が発生したときの対応、中央部会の委員の選定基準、選定手続を明確にすることということがあり、その回答としては、中央部会が中止すべきと判定した場合は、その意見に従うと。委員の選定については、代表者及び各施設の総括責任者の総意として指名を行うという回答をいただいたということです。委員会の検討結果が7ページの3にありますが、ここに書いてあるように、本作業委員会は、本実施計画の内容が科学的に妥当であると判断したとなっているところです。
 引き続き、いわゆるカルタヘナ法に基づく確認の関係について御説明いたします。資料としては同じ資料で、通し番号の181ページからです。185ページはカルタヘナの関係の作業委員会の先生方の名簿です。作業委員会の評価結果については182~183ページにあります。今回のカルタヘナ法の対象となる遺伝子組換え生物は、一番上の欄にあるようなものです。こういう名前のウイルスということに規程上なります。次の欄に、第一種使用規程の内容の項目が書かれています。各施設の使用規程による具体的な内容ですが、三重大学医学部附属病院関係については資料の189~190ページで、代表的なものというところで、1つ資料に載せていまして、それは193ページの記載のとおりです。
 その規程を見ていただくと分かるのですが、遺伝子組換えウイルスの導入細胞は、施設内で解放系区域を通って運搬する場合は、密閉容器に入れ、さらに、落下・破損を防ぐために箱等に入れて運搬すること、遺伝子組換えウイルス導入細胞の投与後3日までは個室内菅理をするなどの記載があるところです。
 195ページから最終ページの213ページまでには、この遺伝子組換えウイルスの生物多様性影響評価書が添付されていて、この評価に基づく結果は、ページを戻っていただいて182ページの評価結果に記載されているとおりです。
 最後となりますが、183ページの最後の欄の(2)生物多様性影響評価書を踏まえた結論を御覧ください。委員会の結論としては、第一種使用規程に従って使用した場合に、生物多様性に影響を生じる恐れはないとした、生物多様性影響評価書の結論は妥当であると判断したということです。
 この2つの作業委員会の結果をもって、当該科学技術部会のほうに結果を上げてきたものですので、御審議のほどよろしくお願いいたします。以上でございます。
○永井部会長 
 これを全部理解するのは大変ですが、いかがでしょうか。この臨床研究に至った前臨床試験は、どういうものが行われたのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 前臨床試験等については、基本的には免疫不全マウスを使って、このヒト関係の遺伝子の発現した細胞をそこに入れて必要なことを確認したとか、そういう手順を行っております。
○渡邉委員 
 十分に理解していないところがあるかもしれませんが、山口先生がいらっしゃるので、少し教えていただきたいと思います。WT1で、抗原でいわゆるワクチンとして使った場合に、内在性のT cellがactivateされますね。それと、この場合には逆にsiRNAを使って内在性のものをinhibitしているわけですね。それで人工のactivate T cellを入れているわけですね。何か矛盾することをやっているように見えるのですが、これは外来性のワクチン抗原を入れた場合だけと、内在性のT cellを抑制しない場合と、今のような結果でやった場合の比較検討はされて、この方法が一番がん抗原を殺すT cellがたくさん出るというような実験結果があるのでしょうか。
○山口委員 
 複数のことが重なっているので、順番に説明します。
 T-cellにsiRNAとspecificなWT1特異的なT cellリセプターを同時に導入するのは、ex vivoで導入します。導入された細胞にしかsiRNAは入らないので、ex vivo でWT1のspecificなT cellリセプターを導入したT-cellは、内在性のT-cellリセプターの発現が抑制されることになります。また、siRNAのex vivoで導入したT-cellにしか入りませんので、体内にあるT-cellには影響しません。siRNAを入れる理由は、内在性のT cellはもともとT cellリセプターを持っているので、それと導入したT-cellリセプターがキメラを作る可能性があるので、内在性のT cellリセプターをノックダウンするために用いております。
 もう1つ、ご指摘のようにワクチン効果に関しては、WT1がたくさん発現しているようながん細胞を持っている患者は、恐らくWT-1specificな抗原に対する内在性T cellがあるだろうと考えられます。それをワクチンが増幅を促す作用があるのではないかという照会事項は出したのです。その可能性も否定できないのですが、この4大学で狙っているのは、T cellリセプターを導入したT cellの増殖因子としてがんペプチドを使うという発想になっています。ただ、それは実際にやってみないと分からないところがあります。
○永井部会長 
 よろしいですか。
○福井委員 
 随分複雑な治療手技のように見えるのですが、これは手順書を作成して、それを遵守しましょうというだけで、一定のやり方を保証できるものなのでしょうか。つまり、一緒に実習するというセッションがなくて、手順書だけでいけるような性質のものなのでしょうか。
○山口委員 
 複雑なのは、多分、遺伝子導入のところかと思います。遺伝子導入に関しては、三重大学がほかの3大学の分も全て統一してやるとされています。ですから、ex vivoでの遺伝子導入した及び遺伝子導入されたT細胞の培養は、三重大学で統一的な製造方法が取られております。
 製造後各大学に輸送され導入されるのですが、2回導入するので、2回の導入するタイミング、輸送された後の細胞のviabilityといったものは統一した評価方法をやってほしいということで照会を出しました。回答としては、こういう細胞の場合は70%以上のviabilityというのはFDAがまとめていて、それを参考にされたと思います。そのほかの投与方法などの扱い等については、統一されたSOPに従ってコールドランをやった上での話になるかと思います。また、実際にやるまでに、ひょっとしたらなんどか練習をしていただくことが必要になるかと思います。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もし御意見がなければ、ただいまの作業委員会からの報告について、当部会として了承し、厚生科学審議会へ報告することにいたします。ありがとうございます。
 議事3「遺伝子治療臨床研究作業委員会及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会の見直しについて」に入ります。事務局より説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料3を御覧ください。1枚目、「見直しの概要」です。今のところ、遺伝子治療臨床研究に関しては、先ほど審議もありましたように、現在、以下の各委員会が設置されております。1つが「遺伝子治療臨床研究作業委員会」で、遺伝子治療臨床研究に関する指針に基づき、実施計画について、主として科学的観点から審査を行う委員会です。もう1つは、その作業委員会の下になりますが、「遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性評価に関する作業委員会」です。ウイルスベクター等の遺伝子組換え生物を扱うものですので、それを使用する場合について生物多様性影響の評価を行う委員会です。組織構成としては、2ページに現行が書いてありますが、今申し上げた2つの委員会があるということです。
 1ページに戻ります。近年の遺伝子臨床研究の申請件数は波があるわけですが、増加に対応するためとか、2つの委員会間での知見の共有や蓄積を図るほうが、より審査もやりやすく審議効率の向上に資すると考えており、上記の各委員会を1つに統合することを考えております。2ですが、統合後の新たな委員会については、名称は「遺伝子治療臨床研究に関する審査委員会」として、その検討事項や各委員の構成等は、3ページにありますように、今まで2つの委員会でやっていたことを、2の検討事項にあるとおり、両方の項目をこの審査委員会で行うということです。また、委員の構成については、2つの委員会がこれまで検討してきた項目ができるようなメンバーとする。「また、特定事項の審議のために、必要に応じて、当該事項に知見を有する委員を委員会に加え、又は参考人を招致することができる」とし、当該委員会の審議に限り委員会に参加することができるとあります。これは、これまでの実施計画について科学的観点から審査を行った委員会においても、対象となる疾患によっては今までの共通的な委員だけではなく、委員を追加して作業委員会を開いたことがありますので、そのことを反映している文章です。
 委員及び委員長については、科学技術部会の運営細則に基づいて、従来どおり科学技術部会長が指名するということです。委員会としては、平成25年4月1日をもってこの委員会に改組して行っていきたいと考えております。以上です。
○永井部会長 
 ただいまの御説明について、御質問、御意見等はありますか。よろしいでしょうか。御異議がないようでしたら、この見直しについて新たな委員会を設置するということで、御了承いただいたことにいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 続いて、「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」の審議です。大阪大学医学部附属病院等から、11件の申請について2月5日及び3月1日付で厚生労働大臣より諮問され、2月6日及び3月1日付で当部会に付議されております。これらについて、事務局より説明をお願いします。
○荒木再生医療研究推進室長 
 ヒト幹細胞臨床研究について実施計画の申請がありましたので、御報告します。用いる資料は、資料4-1の?及び資料4-1の?です。
 資料4-1の?を御覧ください。表紙にありますように、9件上がってきており、上から4つ、大阪大学から広島大学の「関節鏡視下自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復」については、一連の共同研究の形になっております。
 2ページは諮問書です。平成24年6月27日付で出た大阪大学の計画書から、4番の平成25年1月21日に広島大学から出た計画書、この期間に申請されたものについて御報告します。
 5ページ、「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要」です。関節鏡視下自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復ということで、大阪大学の澤先生を研究責任者とする体制です。対象疾患は、外傷性あるいは離断性骨軟骨炎による膝関節軟骨損傷です。用いるヒト幹細胞は、自己骨髄間葉系の細胞です。実施期間ですが、5年間を研究実施期間として、対象症例数は細胞移植群の40、対照群の40となっております。この症例数は、先ほど申し上げたように共同研究機関と合わせた数です。治療研究の概要ですが、有効性の評価を行うということです。腸骨より骨髄液を採取し、末梢血の細胞で骨髄間葉系の細胞を培養し、それを関節鏡視下で戻すことを考えられているようです。その他、海外での状況ですが、1997年米国においては、Carticelというものが既に商品化されております。新規性についてですが、今回は関節鏡視下に投与するところに新規性があるということです。6ページに図で書いておりますが、基本的には各病院施設で間葉系細胞を腸骨から採取し、自己末梢血も採取し、合わせてCPCで細胞培養し、それをまた病院施設に戻して移植するというものです。
 もう少し平易な用語を用いて記載した要旨ということで、13ページです。今回この申請計画がなされた概要と背景は、関節軟骨損傷が若年者のスポーツ障害として多く見られますが、長期の経過で変形性関節症になる可能性が高いので、放置されるとまずいということです。2つ目のパラグラフにありますように、従来の方向については、関節を大きく展開しているために手術侵襲が大きいという問題点があり、この点について関節鏡視下で骨髄刺激を施行し、同時に自己骨髄間葉系細胞移植を行うということです。さらに、先ほどの対照群については、同様に関節鏡視下で骨髄刺激法を実施する。このケースについては、併せて自己骨髄間葉系細胞を用いて有効性を評価するものです。
 14ページです。繰り返しになりますが、対象疾患・目標症例数は外傷性損傷における膝関節軟骨損傷患者で、対照群40、細胞移植群40ということです。参加全施設合計と書いております。主要評価項目ですが、治療48週後における改善度ということで、IKDC subjective scoreを用いるという内容になっております。
 大阪大学の概略は以上ですが、17ページの兵庫医科大学の吉矢先生から出ているもの、30ページの近畿大学医学部の赤木先生から出ている実施計画、45ページの広島大学の越智先生から出ている研究計画は、全て共同研究ということで、内容としては同じことが記載されております。これが一連の4つの計画です。
 66ページ、東京大学大学院医学系研究科の天野史郎先生から出ている「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する無血清・無フィーダー細胞培養条件による羊膜上培養自己角膜輪部上皮細胞シート移植の探索的臨床試験」です。対象疾患は、角膜上皮幹細胞疲弊症で、使用するヒト幹細胞は自己角膜輪部上皮細胞です。実施期間は3年で、対象症例数は3例を予定しています。
 治療研究の概要ですが、培養された自己角膜輪部上皮細胞シート移植は、これまで動物の血清あるいはフィーダー細胞という指示薬を用いて培養していたものを、それを用いずに、動物に由来する未知の病原菌に感染する危険性を大きく低下させることを目的としてやっていくということです。新規性についても同様に書いておりますが、無血清・無フィーダー細胞下に実施するということです。
 67ページにシェーマを書いております。研究の流れですが、対象疾患が角膜上皮幹細胞疲弊症で、片眼性のものということです。通常、角膜上皮は再生されるのですが、上皮幹細胞が障害されるとなかなか再生しない、角膜移植をしても治らないということで、片眼性の角膜上皮幹細胞の組織を採って、それを無血清・無フィーダー細胞を用いて羊膜上で育てる。そこで作られたシートを用いて、培養シートを移植し、安全性・有効性を評価するということです。観察期間は術後の1年、主要評価項目は、基本的には原則安全性ですが、脱落の有無、あるいは予測される眼合併症の評価、全ての有害事象を考えているということです。副次的には有効性ということで、視力や角膜血管の新生がないかも確認していくということです。
 69ページに、被験者等の選定基準等を書いております。繰り返しになりますが、適格基準としては片眼性の全周の角膜上皮幹細胞消失患者、片眼性で角膜表面全体が結膜組織で被覆されている障害が大きい患者となっております。東大の案件については以上です。
 78ページ、京都府立医科大学の木下茂先生より提出いただいている「水疱性角膜症に対する培養角膜内皮細胞移植に関する臨床試験」です。対象疾患は水疱性角膜症、用いるヒト幹細胞はほかのものと異なって、他家の培養角膜内皮細胞です。研究期間は移植後6か月を観察期間として、対象症例数を6例と考えられているようです。治療研究の概要ですが、有効性・安全性の評価とともに、従来、他家角膜移植のほか有効な治療法がなかった水疱性角膜症について、培養した角膜内皮細胞の前房内注射で治していこうということです。新規性ですが、水疱性角膜症に培養角膜内皮細胞の移植を行うということです。
 79ページですが、簡単な流れです。培養用の角膜組織として、シアトルのアイバンクから輸送し、京都府立医科大学の細胞培養施設(CPC)において培養・製造する。他家の細胞になります。こちらを角膜内皮細胞移植ということで前房に注入することになります。移植後も、6か月はしっかり評価するということです。エンドポイントの定義ですが、6か月後、移植後24週の角膜内皮の密度、あるいは角膜の厚さを主要評価項目としています。副次的には視力の改善率も確認をするということです。これが京都府立医科大学から提出された研究計画書の概要です。
 96ページですが、これは先ほど申し上げた1~4と似ております。東京大学医科学研究所の竹谷先生より提出されている実施結果です。「関節鏡視下自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復」です。1~4との違いは、対象疾患として血友病患者の膝関節の軟骨損傷ということです。これは先ほどの4つと合同してやるものではありません。移植後1年間を後観察期間とし、対象症例数は5例ということです。概要ですが、安全性・有効性の評価を行うということで、血友病においては幼少期より関節内出血のため、青年期において末期の関節症となり得るので、血友病性関節症の患者に対する早期からの有効な治療法を考えているということです。血友病性関節症に間葉系細胞移植を行うところに新規性があるとおっしゃっております。
 少し詳しい概要です。98ページ、移植のプロトコールですが、移植の4週間前から御本人の採血をし、培養用の血清の確保、3週間前に骨髄血を採取し、培養を開始する。移植前日に、関節鏡視下に骨髄刺激をし移植をするということで、プロトコール自体は先ほどの1~4と同一ですが、対象患者が違うということです。
 100ページ、臨床研究の対象疾患です。繰り返しになりますが、こちらは血友病患者を対象とするということです。本疾患の患者は、国内約6,000名いらっしゃるということで、選定基準ですが、早期から進行期の膝関節症、年齢としては20~40歳、更に凝固因子に対する抗体、インヒビターを有しないことが条件になっております。こちらについては、1~4と違うということです。
 112ページ、東京医科歯科大学の関矢先生から提出されている「半月板縫合後の滑膜幹細胞による治癒促進」の計画です。対象疾患は膝半月板損傷、用いるヒト幹細胞は自己滑膜由来間葉幹細胞で、対象症例数は5例です。これも同様に関節鏡視下において半月板損傷に対する縫合術を行い、その際に滑膜を少量採取して2週間培養する。関節鏡で観察しながら、同様の半月板の縫合部に細胞浮遊液を移植するという二段階の治療法を考えるということで、半月板損傷に対する細胞治療は日本では初めての試みというのが新規性です。
 116ページ、少し詳しい概要です。対象疾患としては半月板損傷で、日本での唯一の温存術は修復術ですが、再断裂のリスクが高いので、実際に適用される患者は10%以下ということです。さらには、10%に絞った場合でも30%が再断裂するということで、そういう場合には半月板自体の切除術を行うと。しかし、失われた半月板機能を取り戻すには、既存の医療技術では難しいために、機能不全について損傷した半月板を温存するということで、今回の再生医療間葉系幹細胞を用いたことが新規性ということです。
 126ページ、同じく東京医科歯科大学の関矢先生から提出されている「滑膜幹細胞の集合体による軟骨再生」です。対象疾患は、膝関節軟骨欠損あるいは局所に限定した変形性膝関節症で、これに用いるのも自己滑膜由来の間葉幹細胞です、対象症例数は5例で、先ほどと同様に関節鏡視下で滑膜を少量採取して2週間培養し、更に軟骨欠損部に移植するということです。
 127ページにありますように、自己血清の準備を行いつつ、外来手術で関節鏡下で滑膜を採取し、それを自己血清とともに酵素処理をし、2週間の培養をして、5,000万個までに増やした細胞を関節鏡視下に移植するということです。利点として、低侵襲であること、自己血清を用いるので、動物血清を使用しないということ等が考えられます。これが資料4-1の?の御説明です。
 資料4-1の丸2を御覧ください。3月1日付の諮問書ということで、独立行政法人理化学研究所理事長から提出された「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究」、公益財団法人先端医療振興財団先端医療センターセンター長から提出された同計画ということで、この2機関は共同研究という形になっております。
 4ページ、本臨床研究実施計画の概要です。実施施設は理化学研究所、高橋政代先生から提出されたもので、滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究です。対象疾患は滲出型加齢黄斑変性、用いるヒト幹細胞はiPS細胞、由来は自家皮膚線維芽細胞から樹立する予定にしております。実施期間は、2年10か月の登録期間及び移植後1年を観察期間とし、対象症例数は6例です。先端医療センターとの共同研究ということで、安全性の評価を主に行うということです。
 その他ですが、海外ではES細胞を用いた臨床研究が始まっておりますが、ヒト幹細胞の臨床研究として網膜細胞の移植は日本においては実施されたことはありません。研究者は、基礎研究として免疫不全マウスを用いた3度の造腫瘍性試験、あるいはラットとカニクイザルの網膜下へのRPEシート等の移植をして安全性を確認してきておりますので、それを基に、初めてヒトに対して臨床研究を行うということです。
 5ページにシェーマで簡単に書いてありますが、RPE(Retinal Pigment Epithelium)のシートを移植するということで、加齢黄斑変性の患者から取った皮膚細胞よりiPS細胞を樹立し、そのiPS細胞を用いてRPE細胞を分化誘導・純化・シート化する。その際には、人工的な足場材を含まないシートを目指し、それを網膜下へ移植するものです。
 6ページ、臨床研究の概要です。神戸市立医療センター中央市民病院、先端医療センター病院、理化学研究所のCPCが協力して実施することになっております。特に理化学研究所の細胞培養施設においては、皮膚細胞の培養からiPS細胞を作って、iPS細胞からRPE細胞を分化し純化させる作業、シートの作製を担う。先端医療センター病院において患者のリクルートをし、皮膚組織を採取することになっています。神戸中央市民病院においては、患者のリクルートの支援、あるいは一部検査の実施も行う予定ということです。皮膚細胞を採取してからRPEシート作製まで、約10か月間ということです。その上で適格性の検査・二次登録をし、RPEシートを移植して、6症例、移植後1年間、更には移植後3年までは追跡調査をする予定になっております。
 7ページ、臨床研究の目的・意義です。滲出型加齢黄斑変性(AMD)の患者を対象に、本人の皮膚組織から樹立したiPS細胞より分化誘導したRPE細胞を用いてシートを作製し、網膜下に移植するということです。高齢化社会において、患者数が著しく増加している加齢黄斑変性については、網膜再生によって難治性網膜疾患を治療可能な疾患にするための端緒を開くものとして、意義あるものと考えられるということです。選択基準も詳細に書いておりますが、そちらについては割愛します。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。ただいまの説明について御意見、御質問をお受けしますが、私は東京大学大学院の案件には少し関わりがありましたので発言を控えさせていただきます。いかがでしょうか。iPS細胞の臨床研究が注目されていますけれども、ES細胞を用いた臨床研究が外国で行われていたと思います。あれはその後、どうなったのでしょうか。
○荒木再生医療研究推進室長 
 Clinical Trials govからの情報で、ネット上の情報ですが、まずES細胞を用いて脊髄損傷に対する治療ということで、ジェロン社がやっていましたけれども、そちらは資金のショートという関係もあって、一応、中止されていると伺っています。それ以外に同様な網膜疾患というか、スタッガード病と呼ばれる疾患に対するES細胞を用いた治療ということで、米国のACT社が米国とイギリスでされていると聞いています。あともう1つは、韓国においても同様な網膜疾患に対するES細胞の治療がなされているということで、現行で4件、Clinical Trials gov上は走っていることが確認されています。
○永井部会長 
 その成績は、まだ発表されていないのですね。
○荒木再生医療研究推進室長 
 そうですね。そこまで把握はされていません。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。野村委員、どうぞ。
○野村委員 
 1つは非常に細かいことで恐縮ですが、今の最後の申請の除外基準の13番、「妊娠している可能性のある患者(男性または閉経後2年以上経過している患者、不妊手術を受けている者を除く)」というところが、私の日本語では理解を超えるというか、これは必要なのでしょうか。あと報道などで今回については非常に注目されていて、あくまで安全性を確認という形で、かなり視力の悪い方に対し、効果としてはまだまだ見込めないという形で報道等で読み聞いているのですが、その場合、協力してくださる患者さんに対するインフォームド・コンセントは非常に大事だと思っています。12項目あるこの説明事項の6、7ですが、予期される効果及び危険などについては、どのような御説明をする予定でいるのか分かれば教えてください。
○荒木再生医療研究推進室長 
 まず除外基準の13ですが、確かに妊娠している可能性のある患者は除外基準にする。括弧の中は、男性あるいは閉経後2年以上経過している場合は妊娠する可能性がないだろうということで、ここは丁寧に書いたということだと思います。確かに若干過剰という御意見もあるかもしれませんが、そういうことだと思います。さらに安全性の確認ということを、患者さんにしっかりと御説明するべきだろうということで、これは資料4-1の丸2の30ページあるいは32ページです。これは臨床研究の概要をできる限り平易な用語を用いて記載した要旨ということで、これがこのままインフォームド・コンセントの要旨ではありませんけれども、こういうものを基にこういう図を使って分かりやすく、特に安全性が大事ですという御説明されるのかなと思っています。資料としては分厚いのが届いていますので、それをヒト幹細胞の審査委員会でしっかりと審査いただく形になると思っています。すみません、準備した資料で適切な御説明ができませんでした。
○野村委員 
 30、31の中では、いわゆるインフォームド・コンセントの中で必要とされている予期される効果及び危険などについては、表記されていなかったものですから、それで伺ったのですけれども。
○荒木再生医療研究推進室長 
 いただいている資料、同意取得の文書については詳しく分かりやすく説明されています。すみません、そちらの資料は今回付けていません。大変申し訳ございませんでした。
○野村委員 
 なので聞きたいのです。
○事務局 
 審査委員会の事務局です。今回、諮問ということで、研究計画、ほか平易な要旨などを付けていただいているのですが、同意説明文書については、一旦、ここの科学技術部会から審査委員会に下りて、審査委員会からまた科学技術部会に戻って来たときに、改めて先生方に御議論いただければと思います。それまでは審査委員会で同意説明文書についても詰めていきますので、もう少しお待ちいただけるでしょうか。
○永井部会長 
 松田委員、どうぞ。
○松田委員 
 前段のヒト幹の臨床試験に比べて、後段のヒトのiPS細胞を使った臨床試験というのは少し性格が違うと思います。特に後段の試験については非常に国民的な関心度が高いわけです。ですから情報公開について、もちろんプライバシーとかプライオリティという観点から、無節操な公開はできないでしょうけれども、知る権利というか皆さんの強い関心から、今、どうなっているのかという情報開示を、説明責任として果たさなければいけないという点で、何か情報公開ポリシーというか、そういう内規のようなものをお持ちであるのかどうか確認させていただきたいと思います。
○荒木再生医療研究推進室長 
 貴重な御指摘、ありがとうございます。今回につきましては準備が不足していたところについて申し訳ないと思います。情報公開ポリシーということですが、先進的な医療である再生医療、ヒト幹細胞を用いた研究ですので、中にはプライバシーなり、あるいは研究内容について先進的な部分、特許ということもあるかもしれませんので、そちらについては基本的には現行のところを非公開にしていますけれども、今、申されたように国民的な関心が高い部分もあります。例えば患者さんへの同意という部分については、今後、当然必要になってくると思いますので、審査委員会のほうでも検討させていただきたいと思っています。
○松田委員 
 企業では一般的に、そういう情報公開内規、ポリシーというのをきちんと整備して、あらゆるケースに応じて的確に情報を開示するシステムを持っていますので、是非、参考にしていただければと思います。
○永井部会長 
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
○渡邊委員 
 ここに出ているデータだけだと、なかなか判断できない点があるので教えていただきたいのですが、細かい学問的な話はどこかで議論されると思いますけれども、1つは安全性ということを考えたとき、このiPS細胞に、これは4つの遺伝子を入れていて分化させ、それでRPEに再分化させているのだと思います。その過程においてRPEになった段階で、このプラスミドがどんなふうになっているのか。脱落しているのか、それとも残っているのか。その辺は多分、どこかで検討されていると思いますが、特に前にマウスやサルのところまで実験をやっているはずなので、そこでの実験結果と、ここでヒトの細胞を用いた場合でその辺の違いがあるのかどうか。またはどこかほかの所で議論されるのかどうか、そこをお聞きしたい。もう1つは、RPEに分化させた場合の分化のpurityというのは、どういうふうに科学的に判断なさるのか、その辺を教えていただければと思います。
○荒木再生医療研究推進室長 
 基本的には非常に専門的な話になりますので、こちらのヒト幹審査委員会のほうで、そういうことについても議論されると思います。しかも、今、御指摘のように今回はプラスミドを使った遺伝子導入ということですし、そちらについては遺伝子指針とも関係がありますので、前回の科技部会において遺伝子の審査委員会のほうとも協力してメンバーを追加し、しっかりと見ていただく形になっています。ちなみに11ページに、動物実験のデータが簡単に一覧表になっています。これは使用可という観点からラットあるいはサルの結果も出ていますけれども、purifyする過程についても、下の審査委員会でしっかりと審議していただく予定ですので、申し添えておきます。
○永井部会長 
 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。福井委員、どうぞ。
○福井委員 
 安全性と反するような意見かもしれませんが、iPSの臨床研究については外国との競争もますます激しくなるということですので、この審査期間を少しでも短くできるような可能性はないのでしょうか。通常の審査期間は平均6か月とか、それ以上と理解していますけれども、安全性の審査をきちっとやるという前提のもとで、少しでも期間を短くできる可能性がないかという漠然とした質問です。
○荒木再生医療研究推進室長 
 御指摘のとおり、もしかしたら世界で初めてとなる可能性もあるし、競争というのがございます。しかしながら、初めてヒトに使うということもありますし、そこは審査委員会で慎重かつ穴のないようにお願いしますので、結果として、慎重かつ精力的に審査したことによって早くなるというのはあると思いますが、今のところ、事務局として可能な限り実務的な日程の調整はさせていただきますけれども、審査は審査としてしっかりやっていただきたいと思っています。今の内容につきましては審査委員会にお伝えします。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○菊池委員 
 代諾者のところについてお聞きしたいのですが、20歳未満の方を対象にするときの代諾者の選定方針のところで、1番目、2番目、3番目、4番目、大阪大学から広島大学まで、この4件についてはいずれも親権者と書いてあります。親権者、法定代理人ということですが、親権者と言い切っていいものかどうかは疑問なので御検討いただければと思います。と申しますのは最近は非常に離婚も増えていて、誰が子どもの親権者になるかは非常に重要になっています。親権者と監護者を分けて、お父様が親権者、事実上の身上監護はお母様というケースも多々増えています。また相続に関連して、おじいさま、おばあさまのほうに養子に出すために親権者がおじいさん、おばあさんになる。しかし、事実上の監護や親権者の代理のようなことを、御両親がしているケースも多々ありますので、そういう場合に、ここで親権者と言ってしまっていいのかというところがあります。
 それと代諾者を親権者としたときに、それでは親権者であることを事実上確認しているのか。まさか戸籍を持って来てくださいということはないと思いますので、そうなった場合に、どういう背景があって親権者と言い切れるのか、または言い切っていいのか、そこのところを御検討いただければと思います。
○荒木再生医療研究推進室長 
 大変貴重な御意見、ありがとうございました。本日の御意見をヒト幹審査委員会にお伝えして、対応できるようにしたいと思っています。
○川越委員 
 このiPS細胞、ES細胞を用いた臨床研究についてですけれども、1つは確認の意味で自分の中でも整理したいと思って質問いたします。この新規性というか新しい点は、iPS細胞を使った臨床試験が初めてだと、これはよろしいですよね。それから先ほど永井先生から御質問がありましたように、ES細胞を使った研究が諸外国でされているということですけれども、このES細胞を用いた臨床のトライアルの中で、この疾患に関してのトライは今までされていないと、そういう理解でよろしいのですね。この病気に対してES細胞を使って治療をやっているのですか。
○荒木再生医療研究推進室長 
 まず確認事項の新規性というところですが、おっしゃるとおりでiPS細胞由来で、基本的にはiPS細胞そのままでなく分化させたものを使うわけですけれども、RPEを使っていくことについては新規性があるということです。今、御指摘のようにES細胞を用いた研究の中で、その対象疾患に被りがあるかですが、先ほど4件と申しました。1件につきましては、同様の加齢黄斑変性を対象にしたES細胞のクリニカルトライアルが行われると伺っています。
○川越委員 
 後半のことをなぜ伺ったかというと、これは、ある意味で非常に大事な臨床試験であるということは、皆さん共通の理解だろうと思います。そのときに成果というものが、単にiPS細胞をpurifyして網膜色素上皮ですか、それに変えるという手技的な問題もありますし、もう1つは、その作ったシートを目の中に埋め込み、ちゃんと視力を回復することまで含んだ総合的な判断をしなければいけない。これは手技的にかなり細かい手術だろうし、あまりされていないことを実は危惧しているわけです。ですからトータルの判断としてやるには、かなりリスクが高い。評価が、生着した生着しないという問題だけてなく、エンドポイントとして、本来だったら視力をどんどん失っていく方が、視力を回復していくところに入っていくわけですから、手技的なもので先行の研究が今まであるのか、あるいはこういう手術手技は一般に眼科領域で行われているのでしょうか。その辺のことも含めて教えていただきたい。
○荒木再生医療研究推進室長 
 分かる範囲ですけれども、確かに先生が御指摘のように手術手技としては困難な部類に入ると伺っています。昔であれば本当に大学病院レベルでしかできなかった技術で、最近は少しそれが進んでいると聞いていますけれども、確かに広範に広げていく観点から技術も伴うということですので、御指摘いただいた意見を審査委員会にお伝えしたいと思っています。
○桐野委員 
 非常に大事な試験だろうと思いますが、個人的には、最初にやるiPS細胞の研究としてちょっとどうかなと思う点もあります。結局、これはteratomaを作るかどうかが非常に大きな問題になると思いますが、もしそれより更に浸潤性の強いものができると、視神経交差を超えてしまえば、脳腫瘍ですから扱いに非常に困るという問題もあります。仮に万が一、腫瘍ができても局在性のteratomaで制御可能だろうとは思いますが、そういう可能性のある試験であって、極限までいけば両眼の摘出のみならず、一部、脳腫瘍としての治療が必要になる可能性も、わずかですけれどもある。そういうものであるということです。
 一方では、これは素晴らしい治療法で、網膜色素変性症の加齢黄斑変性に関わる標準的な治療になる可能性もないとは言えない。ただ、これはあくまでも、この治療法が安全にできるかということを最初の目標としておられるので、その辺のところを十分見られる枠組みを作っていただき、実施していただければ大変ありがたいと思っています。
○塩見委員 
 細かなところですが、非自己由来材料使用というところで動物種としてウシとブタが出てきますけれども、ウシは血清だと思います。これに関してはアレルギーという言葉が出てきますけれども、ブタに関してはそのほかに記述がないのです。
○荒木再生医療研究推進室長 
 どちらの研究計画でしょうか。
○塩見委員 
 iPSのほうです。9ページの臨床研究に用いるヒト幹細胞の所でいろいろな項目がありますが、非自己由来材料使用というので。
○事務局 
 事務局です。非自己由来材料使用ということですが、こういったブタなどを用いたものは細胞の剥離ですね、分離調製の際に用いる薬に含まれていることがあるということです。またウシのほうですが、例えば血清などを用いた場合にウシが入ることがあるということです。
○荒木再生医療研究推進室長 
 正式なデータ等につきましては審査委員会にお伝えして、そこについて留意して審査いただくようにお伝えいたします。
○永井部会長 
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、これらの審査につきまして審査委員会で審査を行っていただき、結果が出ましたら総合的に判断をしたいということを御理解ください。ありがとうございます。
 続きまして、「ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について」です。名古屋大学医学部附属病院等から3件の報告につきまして、2月5日付で厚生労働大臣より諮問され、2月6日付で当部会に付議されております。これら3件の報告につきましては、既に審査委員会で検討が行われ、検討結果が届いていますので、次の議事で内容を説明いただきたいと思います。よろしいでしょうか。では議事4です。「ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について」、御審議をいただきます。岡山大学病院等から10件の申請について、審査委員会の検討結果を事務局より説明をお願いいたします。
○荒木再生医療研究推進室長 
 資料4-3に基づきまして御説明申し上げます。岡山大学病院から提出されている、「機能的単心室症に対する心臓内幹細胞自家移植療法の第2相臨床試験」です。2ページをお開きください。申請年月日が平成24年8月29日となっています。対象疾患は機能的単心室症由来の小児心不全で、心臓内の幹細胞を用いる。治療研究の概要ですが、これは付議のときに既に御説明申し上げていますけれども、機能的単心室症の小児不全患者に対して、姑息的心修復術を行う際に心筋組織を採取する。その中にある心臓内幹細胞を精製、培養し、それを術後1か月後に移植するということで、これについては有効性の評価を主要エンドポイントとする第2相試験ということが新しいものです。審査の経過につきましては3ページです。審査回数は9月に1回行い、そこでの修正意見を基にやり取りをして、最終的には4ページですが、倫理的・科学的に妥当であると判断したという御意見をいただいています。これが1番目です。
 次は信州大学医学部より提出された課題です。33ページに概要があります。これは平成24年9月11日に申請されています。実施施設は信州大学医学部で研究責任者は池田先生です。対象疾患は閉塞性動脈硬化症、あるいはバージャー病等の重症虚血肢です。これはヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を使います。治療研究の概要ですが、バージャー病等の重症化した末梢動脈疾患患者さんに対して、皮下脂肪組織由来の間葉系前駆細胞を使います。34ページで審査の過程ですが、審査回数は平成24年9月と11月の2回行っています。その結果としては35ページの下部にありますように、本実施計画の内容については倫理的・科学的に妥当であると判断したと、委員会から結果をいただいています。
 次が56ページで、東京女子医科大学の大和先生から提出されている、「早期食道癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後食道潰瘍への自家口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究」です。対象疾患は早期食道扁平上皮癌、用いるヒト幹細胞は自家口腔粘膜上皮細胞、目標症例数は10例です。治療研究の概要は、周在性2/3以上の早期食道癌に対してESD後の術後狭窄の予防を行うために、培養上皮細胞シートを移植するということ。これは、次の長崎大学との共同研究になっていて、長崎大学において口腔粘膜組織や自己血液を採取し、東京女子医科大学のCPCにおいて細胞シートを作製し、長崎大学に戻して食道潰瘍面に移植する研究計画です。
 57ページにこれまでの審議概要ということで、審査回数は平成24年11月に1回行われています。58ページにありますように、基本的には疑義照会のやり取りの上、検討結果としては、倫理的および安全性等にかかる観点から論点整理を進めた上、倫理的・科学的に妥当であると判断したというものです。
 59ページに、これも諮問・付議の際に御説明申し上げていると思いますが、長崎大学と東京女子医大は1,200キロ離れていて、最長7時間のところを航空機でどう輸送するかというところも、新たな研究のテーマになっているものです。
 次が85ページで、これは、今申し上げましたように女子医大と共同研究する長崎大学のものです。87ページにありますように女子医大のものと併せて平成24年11月に1回審査が行われ、こちらについては問題ないだろうという評価をいただいています。
 次は114ページで、東京大学の天野先生による、先ほど少し御説明申し上げましたけれども、「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する無血清・無フィーダー細胞培養条件による羊膜上培養自己角膜輪部上皮細胞シート移植の探索的臨床試験」で、これは平成24年12月6日に申請されています。115ページにありますように、審査回数は1回で平成25年2月に審査され、その際に必要な御意見が出され、それについて申請機関とやり取りをした上で、基本的には問題ないということで、116ページにありますようにヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会の意見としては、倫理的・科学的に妥当であると判断いただいています。これについては事前審査の形で結果をいただいているものです。
 次は180ページで、これは先ほどの諮問・付議のところと同様のものが出ていますが、平成24年12月25日付で申請されている、京都府立医科大学の木下先生による、「水疱性角膜症に対する培養角膜内皮細胞移植に関する臨床試験」です。181ページにありますように、これも事前審査ということで平成25年2月に1回審査をしています。この審査の結果、●にありますような変更内容等の照会をした上で、182ページの一番下部にありますように、本実施計画の内容について倫理的・科学的に妥当であると、審査委員会で審議された結果をいただいているものです。
 次は207ページになります。これも先ほどの諮問・付議のところで出てきたもので、東京医科歯科大学の関矢先生から出されている、「半月板縫合後の滑膜幹細胞による治癒促進」ですが、事前審査をしているものです。申請は平成24年12月28日になっています。208ページにありますように審査回数1回で、平成25年2月にされています。これも事前審査の結果として209ページにありますように、倫理的・科学的な妥当性が判断されているものです。
 次は228ページで、「重症低ホスファターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植」です。これについては変更申請です。概略ですが、島根大学の竹谷先生より提出されたもので、アルカリホスファターゼ欠損により骨を作ることが障害される低ホスファターゼ症に対し、他家である同種間葉系の幹細胞を移植するものです。飛びまして233ページにありますように、この研究実施計画の中身としては、臨床研究実施期間の延長ということです。これまで平成25年3月31日を終了日としていたものを3年間延長します。理由としては234ページにありますが、骨髄移植後2~3年間、間葉系幹細胞を一定程度、繰り返し投与する必要があることが分かったこと。登録症例数5例で、骨髄移植を今年度行った場合、それから何回か間葉系幹細胞移植をしないと効果が出てこないことから、3年間の延長をしたいということです。これについては229ページにありますように審査回数が3回となり、変更申請ですけれども、間葉系幹細胞を繰り返し投与する必要があることについて、実際にこれまで最初の申請の段階で、そういうことが分かっていたのかどうか。あるいは、それは期間の変更だけでなく実施計画の変更になるのではないか等々、いろいろやり取りがありました。結果として231ページにありますように、論点整理を進めていただき了解が得られましたので、倫理的・科学的妥当性があると判断をいただいています。
 次は244ページで、これも変更申請です。変更申請の主な内容ですが、飛んで247ページにあります。すなわち選択基準として、これは軟骨無形成症等の骨系統疾患に伴う低身長症例に対して下肢延長術、骨延長術をするものです。これまで-3SD以下の低身長を対象にしてきたわけですが、そういう方で既に過去に下腿骨あるいは大腿骨のいずれかの骨延長術を施行されて、-3SD以内に収まっているものについても、機能的及び審美的な観点から、再度、骨延長術が必要な場合には対象にしたいというのが今回の主な内容です。これについて243ページで、変更を了承したと委員会からいただいています。
 次は256ページです。東京大学医科学研究所附属病院から変更申請のあったヒト幹細胞臨床研究で、これは「自己骨髄由来培養骨芽細胞様細胞を用いた歯槽骨再生法の検討」です。主な変更内容ですが、259ページに書いていますように研究期間及びエントリー期間の延長をしたいということです。これは最初の目標とする患者数を集めるためという理由で、これについても256ページにあるように、変更を了承したと意見をいただいています。
 最後に270ページです。名古屋大学医学部附属病院から申請があったヒト幹細胞研究で、「非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた腹圧性尿失禁治療の有用性に関する研究」です。これについて273ページで主な変更内容ですが、実施計画期間として承認後から平成25年3月31日だったものを、2年延長して平成27年3月31日までとしたいと。これは目標症例数が30に達するようにしたいとして2年間延長するということですが、これについても審査委員会で変更が了承されています。長くなりましたが、資料4-3についての説明は以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。ただいまの説明につきまして御質問、御意見をいただきますが、東京大学大学院の案件につきましては、私が少し関与していましたので発言を控えさせていただきます。いかがでしょうか。松田委員、どうぞ。
○松田委員 
 質問ではなくてコメントです。東京女子医大と長崎大学病院との長距離輸送を絡めた臨床研究ですけれども、従来の医薬品の物流システムと最近のバイオ医薬品の物流システムは全く形態が異なっているわけです。そしてまた、こういう細胞治療などになると、どうやって安定・安全に材料を供給していくかというのは非常にクリティカルなポイントで、別の視点で見れば、ここにもまた新しい事業参入の重要なポイントがあるということです。この研究実施計画にも、もちろんそういう輸送システムの確立を目指していると明言していますから、ある段階で物流業界というか、そういう所とコンタクトしてシステムを改良していく。あるいは新規ビジネスの参入を促していく取組も頭の中に入れてやっていただけると、より一層、スピーディで安全かつ安定に、こういう新しい医薬・医療業界の物流システムの構築につながっていくのではないか。コメントです。
○永井部会長 
 ほかに、いかがでしょうか。
○井伊委員 
 資料4-3ではないのですが、被験者に対して重大な事態が生じた場合の対処方法に関して、資料2の遺伝子治療臨床研究の計画書の中には、安全・効果評価・適応判定中央部会というのが出てきて、こういう委員の構成でも、このことに直接関与しない人が委員になるらしいという記述があって、その後の研究計画では、それぞれの研究機関の長が、そういうことの中止等の判断をするような記述になっています。伺いたいのは、そういうことについて統一したルールや組織構成を定めているのかどうか、確認させていただきたいと思いました。最初の遺伝子研究の中央部会というのが、よく分からなかったので御説明いただければと思います。
○荒木再生医療研究推進室長 
 用語の統一というところは少しあるかもしれませんが、ヒト幹細胞臨床研究においても、各施設で施設長が倫理審査委員会を設置することになっています。その倫理審査委員会においては、実施計画を専門的な観点、倫理的な観点から審査し、その結果を基に大臣の意見をいただく形の役割とともに、今、おっしゃったように、例えば重篤な被害あるいは副作用が出た場合には倫理審査委員会に報告し、そこで対処方針を決めていくことが、ヒト幹細胞の指針に明記されています。参考資料3の中にヒト幹指針があります。今回、上がってきた計画においては、当然、倫理審査委員会が設置されていて、そこでの審査結果を基に上がってきていますし、そういう重篤な副作用等が起こったときには、ちゃんとモニタリングをする機能も果たしていただくことになっています。さらに重篤なものについては、直接、厚生労働省に上がってきて、こちらの科学技術部会等で報告させていただいているところです。以上です。
○尾崎研究企画官 
 遺伝子治療の先ほどの先生のお話ですが、遺伝子治療の臨床研究で今回の場合、9例の症例について4施設でやるということなので、どの施設が何例目に当たるかは分からないと。ただ、重大なことが起こったときの情報の共有は、ちゃんとしましょうというところのひとつのアイデアとして、この施設のほうが中央部会を設置してやりたいというところです。もし各施設で、1つの計画の中で自分たちの被験者について重大な事態が起こったときには、基本的にはそこの機関の研究責任者の方がIRBに諮って、厚生労働省に必要な報告をするのが普通ですが、今回の資料2の4施設については、その上に関係しない先生がいて評価をする。ただ、そのときに時間がかかっては何もならないので、その時間については7日以内とか15日以内など、できるだけ短期間に検討する。そういう制限を自らかけて行っていく工夫をしています。基本的にそこの機関で起こったものについては、その施設のIRBが判断し、IRBが、多施設で行っているならば他の施設にも情報提供してやる流れが、指針上、決まっている責任者の責務となるものです。
○井伊委員 
 分かりました。ありがとうございます。
○永井部会長 
 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。野村委員、どうぞ。
○野村委員 
 これは事務局の方か委員の先生に教えていただきたいのですが、東京大学の無血清・無フィーダー細胞下のお話で、114ページにありますように、各世界でいろいろな工夫がされるようになってきたのは非常に画期的なことだと思います。教えていただきたいのは、今後、研究が進むと、あくまで角膜上皮細胞に関してだけに、この無血清・無フィーダー細胞が適用されるものなのか。先ほどのiPSの黄斑のように、ほかのものにもこういった手法が応用できるようになっていくものなのか、眼だけでなく眼以外のものにもとか、臨床試験が進むとそこまで広がっていくようなものなのか教えていただきたいと思います。
○事務局
 審査委員会の事務局から答えさせていただきます。東京大学のこの技術ですが、無血清・無フィーダー細胞培養が可能になったのは、そこで血清フィーダー細胞を用いないで細胞を培養したときに、どういった成分が欠けているかを検討した結果、ある成分が血清やフィーダー細胞を用いないと少ないことが分かり、その成分を補うことによって、無血清・無フィーダー細胞下に細胞が培養できるようになったということです。こういったことを一つひとつ積み重ねていくと、そういった動物由来の製品を使わなくても徐々に培養できる細胞が増えてくるのではないかと考えています。
 もう1つ、先ほど塩見委員がお話された点について、事務局からの回答で言葉が足りていませんでしたので補足させてください。非自己由来材料使用ということでブタ、ウシがあるということですが、再生医療の分野では往々にして、こういった材料が使用されてきていることがあります。しかし、これは細胞を効率的に培養するために必要最小限、使っているところです。なおかつ、そういった由来について、非自己由来のものを用いるということで未知のウイルス感染とか、あるいはアレルギーがどうしても生じるといったリスクがあるのですが、これは審査委員会で原材料から調査し、そういったリスクが可能な限り少なくなるようにして、ぎりぎりのところで使っている。そういう理解をしていただければと思います。
○山口委員 
 先ほどの無血清・無フィーダーの件で、御質問の中身として、恐らく他の技術への波及効果のこともあったかと思いますが、それぞれ細胞ごとに波及する部分もありますし、それぞれ細胞ごとに必要な要素がある場合には、例えば血清が必要である場合などのケースがあるようです。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ほかに御意見はございませんか。ございませんようでしたら、ただいまの御報告につきましては科学技術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告させていただきます。ありがとうございました。
○菊池委員 
 何度もしつこくて申し訳ないのですが、この資料の代諾者のところを見せていただくと、岡山のところではかなり苦労されていて父母、親権者、後見人、保佐人という名称が入れられています。島根では親権者、養育責任者、名古屋では両親あるいは親権者等の保護者と名称が書かれています。これは変更されてこうなったのか、もともとこういう形で努力されていたのかは分かりませんけれども、本来的には父母が親権者ということで通常は問題ない場合が多いと思います。ただ、先ほど言ったようなケースで親権者ということをあまり強調しても、トラブルが起こったときにいけないと思いますし、ではどこまで広げたらいいかというのは、各施設で非常に悩んでいると思います。例えば代諾者というのは、特に代諾者ということで、いろいろな見方でいろいろなことが考えられるということもないので、代諾者とはこういうものであると統一的に用語を定義したらどうかと思います。御検討いただければと思います。
○永井部会長 
 事務局で少しその点、法的にも検討いただけますか。それでは報告事項にまいります。「平成25年度厚生労働省科学技術関係予算案について」、事務局から御報告をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料5に基づき、平成25年度厚生労働省の科学技術関係予算案について御報告いたします。中心的な予算として、「医療関連分野におけるイノベーションの一体的推進」という所の一まとめで、そこに重点化を図って要求させていただいているものです。これについては2ページの、「医療関連分野におけるイノベーションの一体的推進」の所で、目的、人、目標というかゴールとしましては、関係府省の緊密な連携のもとで、新しい医薬品や医療機器を国民に迅速に提供できたり、有効な治療法のなかった病気を治療できる、患者個別の体質や病態にあった有効で副作用の少ない治療を提供できる、そうした医療の実現を目指すというところで要求させていただいているものです。1、2ページ、大きく?、?と分けまして、1つは医薬品・医療機器開発に関する基盤整備と研究の推進、もう1つは2ページの世界最先端の医療の実用化の推進、というところで予算要求をさせていただいております。
 1ページの、医薬品・医療機器開発に関する基盤整備と研究の推進につきましては、基盤整備と研究強化に考え方を分け、医薬品の典型的な開発の流れの中で、この?から?、また、研究の強化の?、?の事項の予算を要求させていただいています。
 2ページは世界最先端医療としまして、再生医療の推進やオーダーメイド医療の推進関係の予算要求をさせていただいています。この具体的な内容については3、4、5ページ、平成25年度の予算案としては全体で130億円というところで、これを推進するために要求をさせていただいております。
 6ページは、「厚生労働省科学技術関係予算の概要」です。ここに項目が出ておりますが、厚生労働省科学技術研究費補助金関係、試験研究機関、ナショナルセンターのいろいろな運営費交付金、諸々の科学技術関係の事業予算などを含めてのもので、平成25年度につきましては、1,636億円、平成24年度、現在は1,608億円ですので、微増の要求をさせていただいているところです。
 7ページは、先ほど研究費の話をしたのですが、研究費自体がどうなっているのかということです。10行目ぐらいに、厚生労働科学研究費補助金という項目があります。平成25年度の予算案は451億円、平成24年度の予算案が465億円で前年比97%。この値については、備考にあるように東日本大震災復興特別会計計上分を含んだ場合ということで、このような状況になっているところです。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。ただいまの御説明に御質問、御意見はいかがでしょうか。
○川越委員 
 最後の説明の所ですけれども、科学研究の補助金が減っているわけですね。それが減ったのは、東日本うんぬんの所の会計を含むということ、つまりこれが減ったから減ったと、そういう理解でよろしいのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 厚生科学研究費補助金の、東日本大震災の特別会計計上分については、内容的に復興庁などと査定をされましてこの額になったというところです。平成24年度予算と平成25年度の引いた額について、厚生科学研究費全体としては同じです。ただ、一番最初に説明しました医療関連分野におけるイノベーションの一体的推進という所で、研究費については、いろいろな医薬品や医療機器の治験への導入を目指して、特にそうした実用化のための研究によりシフトしていこうというところがありますので、そのほかの研究費については、いく分精査をさせていただいているということになります。額としては、特別会計分を引けば同じです。
○宮田委員 
 それに加えてちょっとお尋ねいたします。厚生科学研究費の補助金は前年比3%減ぐらいですけれども、厚生労働省の科学技術関連予算に関しては1.7%増大したということになりますと、この特定疾患治療研究費補助金というものがその増額の主なる理由になるのでしょうか。もしそうだとすると、その特定疾患治療研究費補助金は一体どういうところが増額されたのかを教えていただきたいと思います。
○福島厚生科学課長 
 特定疾患治療研究費補助金、つまり特定疾患の医療費の補助ということで、その分について来年度について増加させるということです。
○宮田委員 
 それが来年度の厚生労働科学技術関係予算の増加の主なエンジンであると、理由であるということですか。
○福島厚生科学課長 
 全体としましては、特定疾患治療研究事業補助金の増加分が90億円ですけれども、全体としては28億円弱の増加です。差し引きますとそれ以外の分はへこんでいるということになりますが、全体とすると、それだけをエンジンというとちょっと語弊があるかもしれませんが、増加分の大半を占めているものはこの部分です。
○宮田委員 
 はい、確認させていただきました。どうもありがとうございます。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○川越委員 
 がん関係の予算がかなり減らされているわけですけれども、これは何か特別な意味があるのでしょうか。
○福島厚生科学課長 
 がん研究費補助金については、平成16年度から第3次対がん10か年総合戦略に沿って推進してまいりましたけれども、平成23年度からはこれに加え、難病・がん等の疾患分野の医療実用化研究事業ということで、がん治療薬の創出を目指す研究を推進しております。この関係の、特に難病・がん等の疾患分野の医療実用化研究については、研究費2億3,000万円の増ということで、全体として、対がん総合戦略に関しては減っておりますけれども、いわゆるライフイノベーション関係、がん関係の研究分野全体としては増加をしておりまして、確かに全体額としては減ってはいるのですが、内容について、より、治療志向といいますか、実用化志向ということで、内容の見直しをしているということで御理解を賜りたいと思っています。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○福井委員 
 資料の4ページ目に、世界最先端の医療の実用化の推進の所に、再生医療の実用化に向け、平成25年度予算案は10億円ということですけれども、首相がiPS細胞関連の研究に10年間で1,100億円を出すとのことですが、その1,100億円とこの10億円とは全く別の話ということでよろしいのでしょうか。
○荒川再生医療推進室長 
 1,100億円は10年間にわたりということで、これは文部科学省さんのほうでの予算になります。当然、平成24年の補正も含めての数字になっているということで、別のというように理解していいと思います。
○永井部会長 
 いかがでしょうか、よろしいでしょうか。御質問がありませんでしたら次にまいります。
 その他の報告事項ですが、「厚生労働科学研究費補助金における不正使用及び研究上の不正行為への対応について」、事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料6の厚生労働科学研究費における不正使用の対応についてです。1ページの不正使用、他の用途への使用、交付の決定の内容やこれに附した条件に違反した使用等を行った者に対して、現在、補助金の返還命令を行うとともに、返還が命じられた年度の翌年度から一定期間、厚生労働科学研究費の交付を制限する措置を取っているところです。具体的な交付制限の期間等については、他府省の競争的資金制度との統一的な対応を図るために、「競争的資金の適正な執行に関する指針」というものがあり、資料としては7ページ以下に添付されていますが、それに基づいて、これまでも規定してきたところです。今回、競争的資金の適正な執行に関する指針についてそれの関係省庁の間で見直しを行ったということがあり、その見直しに基づいて、我々の「厚生労働科学研究費補助金取扱規程」等々について所要の改正を進めているということを御報告するものです。
 どのような改正になっているのかは5ページになります。改正のポイントは不正使用を行った研究者に対する応募資格の制限の改正、応募資格の制限の年数を変えるということです。私的流用を行った者に対する応募資格の制限は厳罰化をするということで今度改正をしようとしているものですが、3ページの下の○の厚生労働科学研究費補助金取扱規程に基づいた交付をしない制限期間については、表にありますように一番長いのが5年でした。それを10年にするということが1つです。もう1つは私的流用以外の不正使用を行った者に対する応募資格の制限の厳罰化・適正化ということです。これまでは、私的流用をした、他の研究に使ってしまったなど用途によって年数を決めていたのを、不正使用の悪質性と行為の内容に応じて判断するように変えるということです。3番目として、善良な管理者の注意義務違反に対する応募資格の制限の新設ということで、研究資金の管理責任者としての責務を全うしなかった場合については、最大2年の制限をかけるということです。
 もう1つは、2ページの研究活動の不正行為への対応です。ここで不正行為というのは(1)概要の1つ目の○にあるように、研究においてのデータの捏造、改ざん及び盗用が行われた場合の対応です。不正行為が行われた研究については、現在、厚生労働省の補助金取扱規程においては、補助金の返還を命じられた者に対して補助金の交付制限をかけるということになっています。次の○ですが、補助金の返還を命じない場合であっても補助金の交付を制限すべき事案もあると考えられ、また、科技部会のほうの御指摘も過去にはありますので、今回の年数制限の改正とともに、補助金の返還を命じなくても交付制限できるように改正していくという方向で作業を進めているところです。
 7ページからの別添3の指針を御覧ください。13ページに先ほど申しました不正使用の応募制限期間の表、14ページに不正行為に係る応募制限の対象者とあり、こういう期間にしていくということで、この申し合わせに基づいて取扱規程の改正を行っていきたいと考えています。適用については、平成25年度4月1日から開始される研究ということで、現在行われている研究については対象にはならないということです。このような改正の手続を進めさせていただいていることを御報告いたします。以上です。
○永井部会長 
 ただいまの御説明について、御質問、御意見はいかがでしょうか。
○玉腰委員 
 確認ですけれども、厚生科学研究は複数年度で支給されている場合に、基金化は認められていましたでしょうか。不正使用はもちろんよくないですが、それを防ぐには柔軟な使用が認められることも重要で、文部科学研究はかなり基金化をして、年度を跨いで使えるような形になっていますが、厚生科学研究費ではそのようなことを見直す御予定はありますでしょうか。
○福島厚生科学課長 
 文部科学研究費の少額なものについては確かに基金的な使用を認められていることは承知しています。厚生労働科学研究費については、おおむね3か年を単位とする研究費ですが、それぞれ単年度ごとの執行になっています。ただし、場合によっては、繰越しを認める場合もありますので、それは個別のことで御相談させていただきたいと思います。
○宮田委員 
 これは確認ですけれども、善管注意義務違反というのが今回出てきましたが、これはどれぐらいの範囲に及ぶものでしょうか。それによっては連座制みたいな感じになる可能性がありますが、具体的に、例えば共同研究を連名で10人ぐらいが、複数の機関でやった場合、一体、誰がこの善管注意義務に当たるのかを、少し、イメージだけでもいいのですが、いただけますか。
○尾崎研究企画官 
 この規程は新たに申し合わせて設けた規程ですので、この規程を含めて、いろいろな適応については各省庁でこれから情報を共有しながら、より一律に、ある条件、ルールをより明確になるようにしていこうというのが現状です。
○宮田委員 
 研究不正を防ぐためには、厳罰主義はあまり役に立たないのです。むしろ、研究を萎縮させないようにするために、どうやって不正した人に対してペナルティーを加えるかという立場で、是非、明快な規程、それから明快な責任者の明示みたいなことを心がけていただきたいのです。多分、条文の中に盛り込めないとするならば、Q&Aのような形でより分かりやすく告知していただきたいと思います。これで研究が萎縮しては全く意味がないと私は思っています。
○菊池委員 
 私もそれには大いに賛成いたします。これは善管注意義務ということで、管理、監督者に責任を押し付けて、その責任に応じて応募制限がなされるということになると、結局、研究機関の中に不正監視のようなシステムをつくって、どんどんこういう不正が行えないように、自分たちを守るために非常によからぬ方向に進んでいくと思うのです。ですから、非常に不正使用の問題というのは難しいと思いますけれども、そこのところをどうぞ御検討いただきたいと思っています。
○松田委員 
 善管注意義務違反というのは、会社の場合は取締役会が1つの責任の取り方としては普及しているのですが、そういう取締役会のメンバーであるということであれば、そういう責任がついて回ると思うのですが、大学の場合あるいはアカデミアの場合に、どこまで及ぶかというのはかなり情緒的になってしまって、範囲を規定するのは非常に難しいと思いますので、その辺りは十分注意してこの用語をお使いになることをお勧めしたいと思います。
 それから、私自身は厚生労働科学研究費をいただいて研究したことはないのですけれども。副作用医薬品機構ではありましたですかね。いろいろなアカデミアの先生とお話させていただくと、いろいろな省庁から研究費をいただいている中で、厚生労働省関係のお金が使いにくいというような意見が結構あります。こういう明らかに犯罪に近いような不正というのは、これはもうペナルティーで、法的にも罰せられると思うのですが、1つの考え方としては制度が形骸化して固定化しているがゆえに、そういう不正につながってしまうようなものもかなりあるのではないかと。ですからむしろ制度面から少し柔軟に対処することによって、逆に不正を減らすことになるようなケースも私個人としてはあるような、そんな印象を受けますので参考にしていただけたらと思います。
○野村委員 
 それに似ていることですが、もちろん不正をする方が悪くて、ほとんどの研究者の方は真面目にやっていらっしゃると思うので、この不正をした後の厳罰化が今回、改正のポイントとして出されていますけれども、選定をした側に責任が全くゼロというわけではないと思いますので、先ほど松田委員がおっしゃったように、形骸化したシステムというのではなく、健全にきちんと研究を見て研究費を配分していただけるように、より一層そういった工夫をお願いできたらと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは次に、議事の5、「遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見について」、事務局から報告をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料7、遺伝子治療臨床研究実施計画に係る意見についてです。三重大学医学部附属病院の、「免疫抑制性前処置後のMAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入Tリンパ球輸注による治療抵抗性食道癌に対する遺伝子治療臨床研究」に関しての取扱いです。5ページと参考資料3の3ページを見ていただきたいと思います。遺伝子治療臨床研究に関する指針については、今回の審議事項にもありましたとおり、作業委員会のほうで検討、審査をするという流れがあるわけですが、その一方で、例えば参考資料3にあるように、厚生労働大臣のほうに申請が上がってきたときに、新規性の判断というものを常にしているということです。?から?に該当する場合については新規性ありということで、厚生科学審議会のほうに諮問をしていきます。ここに該当しない場合は新規性なしとして、事務局のほうで30日以内に大臣への意見を回答するという流れになっています。この流れについては資料7の5ページの参照、指針の規程に基づいて行っているものです。今回のものについては、新規性なしとの対応をさせていただいたところです。
 まず、2ページです。既に先行研究として行われている三重大学医学部附属病院の異施設で行われている研究と、導入する遺伝子ウイルスベクターや対象疾患等諸々のものは全く同じです。治療のスケジュールとしては3ページの参考を御覧いただくと分かるのですが、先行研究として認められている研究は、TCR遺伝子導入Tリンパ球を導入した後にペプチドを2回打つというものです。しかし、本研究はTCR遺伝子導入リンパ球の投与は同じですが、シクロホスファミドの前処置を行うこと、そしてペプチドは投与しないという内容になっています。TCR遺伝子導入のTリンパ球投与の細胞数が先行研究と同じ範囲、そのマックスの用量を超えるものではない、中用量と高用量の部分で行うというものです。3ページの2、有識者の意見として、1)に書いてある先生方に意見を伺い、その結果として、2)にあるように、新規性はなく、指針第五章第一の三のいずれの項目にも該当しないものと。ここの規程というのは先ほどの5ページの参照、指針の規程ですが、このように判断されたというところです。
 4ページ、今回の検討に当たり、有識者からの主な意見を参考として書いてあります。1つは、本研究における遺伝子導入の方法、遺伝子導入細胞の用法・用量等は、既に実施されている先行研究と同じであり、特段新しいものではない。シクロホスファミドによる前処置については、homeostatic proliferationと呼ばれる現象を利用して、TCR遺伝子導入Tリンパ球投与による治療効果の増強を期待して行われるものであり、この手法自体についてもよく行われているものであるということで、一定の注意は必要であるものの、新規性はないものと考えられる等の意見があり、3つ目の○として、なお、新規性の判断には影響しないと考えられるが、先行研究で実施されているMAGE-A4ペプチドの投与を行わない点については、その理由や、先行研究における途中経過の状況を説明することという質問を出しており、その回答として、申請者からは、先行研究においては動物実験等から期待されたペプチド投与による増強効果は今のところは明らかではないこと、ただし、この点についてはデータが限られていることから今後の検証が必要であり、本研究との比較によりペプチド投与の意義を示唆するデータが得られる可能性も期待されること等が説明されました。この3つの内容を踏まえ、有識者の方からは、3ページにあったように、新規性はなく、いずれにも該当しないということで、3の厚生労働大臣の意見というか、我々事務局としてもそれに従い、新規性はなく、該当しないということで、2月26日付で申請者に通知したということです。
 あと、資料として、従来審議のほうに出させていただいている実施計画や、インフォームド・コンセントの文章もここに付けております。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。御質問、御意見はいかがでしょうか。なければこの件については了承とさせていただきます。
 本日の議事は以上です。事務局から連絡事項等お願いいたします。
○尾崎研究企画官 
次回の日程については、委員の皆様に、改めて日程・開催場所等について御連絡申し上げます。事務局からは以上です。
○永井部会長 
 本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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