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2012年9月6日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年9月6日(木)


○場所

厚生労働省 専用第23会議室


○出席者

出席委員(13名) 五十音順

 新 井 洋 由、 庵 原 俊 昭、 菊 池    嘉、 清 田    浩、

 黒 木 由美子、 田 村 友 秀、○土 屋 友 房、 豊 見 雅 文、

 中 島 恵 美、 濱 口    功、 増 井   徹、 山 口 照 英、

◎吉 田 茂 昭

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(8名) 五十音順

 大槻 マミ太郎、 奥 田 真 弘、 櫻 井 敬 子、 佐 藤 俊 哉、

 鈴 木 邦 彦、 半 田   誠、 前 崎 繁 文、 山 本 一 彦

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎  (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森    和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 佐 藤 岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきありがとうございます。
 まず、部会委員の異動につきまして、清水先生が当部会委員を御退任されておりますので、御報告いたします。また、日本薬剤師会理事の豊見雅文先生に、新たに当部会の委員に御就任いただいております。
 なお、本日の「その他」事項に関して、愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の安藤正志先生を参考人としてお呼びしています。
 本日の委員の出席についてです。大槻委員、奥田委員、櫻井委員、佐藤委員、鈴木委員、半田委員、前崎委員、山本委員より、御欠席との御連絡をいただいております。濱口委員より、遅れていらっしゃるとの御連絡をいただいております。現在のところ、当部会委員数21名のうち、12名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。それでは、吉田部会長、以後の進行をお願いいたします。
○吉田部会長 本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。
○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1~16をあらかじめお送りしています。このほか、資料17「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料18「専門委員リスト」、資料19「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。
 続いて、資料19を使いまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。
 1ページ、「ギリアデル」です。本品目は「悪性神経膠腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページ、「シーブリ」です。本品目は「慢性閉塞性肺疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページ、「ゾシン」です。本品目は「腹膜炎」などを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページ、「ヴォトリエント」です。本品目は「進行性悪性軟部腫瘍」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページ、「タイガシル」です。本品目は「多剤耐性グラム陰性菌による皮膚科領域感染症及び腹腔内感染症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 6ページ、「ベバシズマブ」です。本品目は「膠芽腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページ、「インフリキシマブ」です。本品目は「難治性川崎病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 8ページ、「インフリキシマブ」です。本品目は「特殊型ベーチェット病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 9ページ、「sirolimus」です。本品目は「リンパ脈管筋腫症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 10ページ、「ベムラフェニブ」です。本品目は「BRAFV600遺伝子変異を有する悪性黒色腫」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 11ページ、「タクロリムス水和物」です。本品目は「多発性筋炎、皮膚筋炎に合併する間質性肺炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 12ページ、「細胞培養全粒子プロトタイプワクチン」です。本品目は「パンデミックインフルエンザの予防」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○吉田部会長 今の事務局の説明について、特段の御意見等はございますか。
ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきましては、皆様の御了解を得たものといたします。
 委員からの申出状況についての報告をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況について、御報告させていただきます。
 議題1の「ギリアデル」に関して退室委員はなし、議欠に参加しない委員は清田委員です。
 議題2の「シーブリ」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は清田委員です。
 議題3の「ゾシン」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は清田委員、田村委員です。
 議題4の「ヴォトリエント」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は清田委員です。
 議題5の「タイガシル」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は清田委員です。
 議題6の「ベバシズマブ」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は田村委員です。
 議題7の「インフリキシマブ(難治性川崎病)」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員はなしです。
 議題8の「インフリキシマブ(特殊型ベーチェット病)」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は菊池委員、清田委員です。
 議題9の「シロリムス」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員はなしです。
 議題10の「ベムラフェニブ」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は田村委員です。
 議題11の「タクロリムス水和物」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員はなしです。
 議題12の「細胞培養全粒子プロトタイプワクチン」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員はなしです。以上です。
○吉田部会長 本日の審議事項は12議題、報告事項が3議題となっております。本日は参考人の先生に来ていただいておりますので、4.「その他」の事項から始めます。
資料16「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」、参考人の安藤先生から御説明をお願いします。
○安藤参考人 医療上の必要性の高い未承認薬・適応用外検討会議の抗癌剤のワーキンググループの座長をしている安藤と申します。よろしくお願いします。
 公知申請の該当性について、検討会議での検討結果について御説明いたします。本日評価いただくのは、L-アスパラギナーゼとゲムシタビン塩酸塩、パクリタキセルの3件ですが、いずれも致死的な疾患でして、海外のガイドライン等でも標準的治療に位置づけられていることから、検討会議では医療上の必要性が高いと判断しております。
最初に、L-アスパラギナーゼ筋肉内投与の追加について御説明いたします。資料16の3ページを御覧ください。今回、日本小児血液学会と小児がん学会より、急性白血病及び悪性リンパ腫の筋肉内注射の追加の要望が提出されておりました。4ページからですが、L-アスパラギナーゼの筋肉内投与については、海外で既に承認が得られております。日本についても、複数の臨床試験が既に実施されておりまして、資料22ページから御覧いただきますと、おおむね1日1回2,000~10,000U./平方m当たり週3回、又は1日1回6,000~25,000 U./平方m当たり週1回の用法・用量が用いられております。海外と同様の完全寛解率、無増悪生存期間、生存期間についての内容が報告されております。39ページから、安全性についてまとめられております。アナフィラキシー等の過敏性反応が認められていますが、国内と海外では特に相違はありません。既にこれらの内容については、添付文書で注意喚起がなされております。ただし、今回筋肉内投与の効能を追加するに当たっては、投与部位や同一部位に繰り返し投与することを避ける等の、筋肉内投与を実施する際の一般的な注意事項と、特に今回は小児も含まれるということで、過去に抗生物質等で、筋肉内投与で筋拘縮症を起こした事例があることに関して、適切な注意喚起を行う必要があると考えております。43ページ上方の用法・用量のところを御覧ください。効能・効果を変更する必要はなくて、用法・用量については、記載されているとおりに設定して、ただし溶解方法を用法・用量に関連する使用上の注意に追加することが妥当であると判断しました。以上、御説明したことを踏まえて、本要望について有効性と安全性は医学薬学上公知であると判断いたしました。
 続いて、ゲムシタビン塩酸塩の公知申請の該当性について御説明いたします。51ページを御覧ください。今回、日本リンパ網内系学会より、再発・難治性悪性リンパ腫の効能・効果に対しての要望が提出されておりました。これについては、欧米等6か国で、この効能での承認はありませんが、米国のNCCNのガイドライン等においては、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫に対しての再発後の二次化学療法として、ゲムシタビン、カルボプラチン、デキサメサゾンの併用療法等の有用性というのが、ガイドラインには明記されております。71ページから、国内外の臨床試験成績について記載しておりまして、海外では、本剤を1,000mg/平方m当たり、週1回ずつ3週連続投与1週休薬や、1,200mg/平方m当たり、3週間連続投与1週休薬などの報告がありまして、国内の報告では、1回1,000mg/平方m当たり、週1回ずつ3週間投与1週休薬の報告が得られていまして、安全性等の情報についても、そこの中に報告されております。また、安全性については、添付文書で注意喚起されているものと大きな差異はないと報告の中では考えられまして、がん化学療法に精通した医師によって適切に副作用は管理されて、必要に応じて休薬等がなされるのであれば、安全性についての管理というのは可能と判断しております。効能・効果、用法・用量については、89ページを御覧ください。効能・効果は、再発又は難治性の悪性リンパ腫とし、用法・用量はその下に記載してあるように、通常成人にはゲムシタビンとして、1回1,000mg/平方m当たりを30分かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続、4週目は休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により、適宜減量すると設定するのが妥当と判断いたしました。これらの事項を踏まえて、本要望については、有効性及び安全性は、医学薬学上公知であると判断いたしました。
 最後に、パクリタキセルの公知申請の該当性について御説明いたします。95ページを御覧ください。今回、日本泌尿器科学会より、胚細胞腫瘍の効能・効果についての要望が提出されておりました。これも先ほどの薬と同じように、欧米等の6か国での承認はありませんが、欧米のガイドラインには、二次化学療法としての治療薬で、初回化学療法に抵抗性若しくは初回化学療法後に再発された二次化学療法の治療薬としての有用性が記載されております。110ページから、国内外の臨床試験成績についての記載がありまして、海外では本剤の1回175mg/平方m当たり3時間投与などの報告がありまして、国内では本薬の210mg/平方m当たりの3時間投与と、イホスファミドとネダプラチン併用の有効性と安全性について、報告されております。また、安全性については、既に本薬の添付文書で注意喚起されているものと大きな差異はありませんで、がん化学療法に精通した医師により適切に副作用は管理されて、必要に応じて休薬等が適切に実施されるのであれば、管理は可能と判断しております。効能・効果、用法・用量については、120ページから記載しておりますが、効能・効果は再発又は難治性の胚細胞腫瘍で、精巣腫瘍、卵巣腫瘍というのは卵巣から発生した胚細胞腫瘍、後は性腺外腫瘍として、用法・用量はその次にありますように、他の抗癌剤との併用で、A法というのは、1回210mg/平方m当たり3時間で3週間隔投与使用と設定するのが妥当と判断しました。
 これらを踏まえて、本要望について、有効性・安全性は医学薬学上公知であると判断いたしました。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、何か御質問ございますか。
○庵原委員 L-アスパラギナーゼのところの確認が2点あります。一つ目は、L-アスパラギナーゼは、現在静注では認められています。これを筋注に加えるということですが、静注と筋注と、効能・効果を比べて、ほぼ同等であったというデータはあるということでよろしいですか。それが1点目です。
○安藤参考人 海外の臨床試験成績からは、静注も筋注も、有効性と安全性について特に差異はないと判断しております。
○庵原委員 二つ目は、これはマウスやラビットなどを使って、筋注したことによる組織障害がどのようなもので、それは安全性が認められているということでよろしいですか。言い換えますと、動物を用いたL-アスパラギナーゼの筋肉障害がどのようなレベルであるかということは、検討されているということでよろしいですか。
○事務局 庵原先生からの御質問について、事務局よりお答えさせていただきます。非臨床の成績についてどこまで確認できたかというところは分からないのですが、臨床の成績等を見ますと、これまで筋拘縮症を疑わせるような報告はないことを確認しております。今御指摘いただいた点については、これから申請がなされますので、審査の中で確認するなどして、きちんと対応していきたいと考えています。
○庵原委員 分かりました。現在までのところは、筋拘縮症と類似の組織像は動物ではないと言われているという理解でよろしいですか。
○審査第五部長 今の点を補足させていただきますと、今のところ動物でそこを確認しているかどうかについては確認が取れておりません。ただ、先ほど審査管理課の事務局からも話があったように、海外の使用実態などで特にそこが問題になっているといった事象は見あたらないと聞いています。
○吉田部会長 最終審査に上がってくるときに、そういうことも議題になりそうだということで、一応押さえておいていただければと思います。
 私から事務局に聞きたいのですが、筋注を認めなかったのは申請がなかったからということだけですか、それとも何か理由があったのでしょうか。
○事務局 特に理由は聞いておりませんで、恐らく申請がされていないからということだと思います。臨床研究はかなり多くされているのですが、メーカーが申請をしてきていないからということになると思います。
○吉田部会長 白血病で出血傾向とかが出てきた場合、筋注は使わないだろうということで、除いたのかもしれない。何か不都合があって除いたわけではないのですね。
○事務局 そういった事実は確認できておりません。
○吉田部会長 ただ、単位が25,000で、5ccとなると、相当な量ですね。少し心配な気もしますが。ほかにありますか。
 パクリタキセルについてですが、欧米では未承認だけれども、NCCNに載っているという話で説明されたのでしたか。
○安藤参考人 そうです。アメリカと欧州で、胚細胞腫瘍の効能で承認されている国はありません。ただし、ガイドラインの中には、リンパ腫に対するゲムシタビンと同じように、サルベージ療法としての有用性ということでガイドラインの中に記載されております。
○吉田部会長 つまり、保険で認めてしまっているから欧米の現場で広く使われ、その成績が長年積み上がってきて、こういうことになったという理解ですか。
○事務局 はい。
○吉田部会長 我が国でも、いわゆる未承認ではなくて、適応拡大という考え方でいいのですね。
○事務局 はい。
○吉田部会長 分かりました。ほかにございますか。
よろしいでしょうか。特になければ、「その他」の事項については御確認いただいたということにいたします。安藤先生、御苦労様でした。
── 安藤参考人退室 ──
○吉田部会長 続きまして、審議事項議題1です。医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品ギリアデル脳内留置用剤7.7mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。 本剤は、有効成分であるニトロソウレア系アルキル化剤のカルムスチンを、脳内留置用の基剤として開発されたポリフェプロサン20に含有させた脳内留置用の徐放性製剤です。
 本剤は、脳腫瘍切除後の切除腔に留置すると、ポリフェプロサン20の加水分解とともにカルムスチンが徐々に放出され、カルムスチンのDNA合成阻害作用により細胞の増殖を抑制すると考えられております。
 今般、本剤は、悪性神経膠腫に対して効果を示す薬剤として承認申請されました。なお、本剤は、平成23年6月の当医薬品第二部会で希少疾病用医薬品の指定の可否が審議され、指定されております。また、平成22年4月に開催された「第3回医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討において、医療上の必要性に係る基準に該当すると判断され、同年5月に厚生労働省から申請者に対して、本剤の悪性神経膠腫に対する開発要請がなされております。
本剤は、審査報告書4ページに記載していますように、平成23年11月時点において、悪性神経膠腫に関する適応にて、29の国又は地域で承認されております。
本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料18にございますとおり、8名の委員です。
 以下、本剤の臨床試験成績を中心に説明いたします。
 今回の承認申請では、主な臨床試験としては、国内で実施された第I/II相試験のみが提出されております。また、参考資料として、海外で実施された第III相試験を含む計9試験の総括報告書が提出されております。
 有効性について、審査報告書32ページ本文上から2行目以降に示しますように、国内第I/II相試験は、本剤の安全性の確認を主要目的として計画・実施された非盲検非対照試験であり、有効性の評価には限界があると考えるものの、審査報告書31ページの表等に示しますように、初発悪性神経膠腫及び再発膠芽腫に対して一定の生存率等の結果が得られており、海外では二重盲検比較試験の結果を基に、1990年代以降多くの国で承認され、国際的な教科書、診療ガイドラインで使用が推奨される等、治療選択肢の一つとして、標準的に用いられている現状等を踏まえますと、国内においても悪性神経膠腫患者に対する本剤の一定の有効性は期待できると判断いたしました。
 安全性については、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、審査報告書32ページの上から10行目以降に示しますように、痙攣、脳浮腫、水頭症、創傷治癒不良、感染症、血栓塞栓症及び出血性事象と考えております。
 これらの有害事象については、脳腫瘍切除術後に一般的に発現し得ると考えられる合併症が中心であり、脳腫瘍の外科治療及び薬物療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により忍容は可能と判断いたしました。ただし、審査報告書45ページ下から13行目以降に示しますように、本剤の日本人における検討症例は限られることから、製造販売後には、本剤を使用した全例を対象に、目標症例数250例、観察期間3か月とした製造販売後調査を実施し、安全性情報を迅速に収集する必要があると判断いたしました。
 以上のような審査の結果、機構は「悪性神経膠腫」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。
 本剤は、希少疾病用医薬品に指定された新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を10年とすることが適当であり、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当すると判断いたしました。また、本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。
本剤の製造販売承認の可否等について、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
特によろしいですか。あまり大した話ではないのですが、審査報告書4ページ上段の3段目の段落で、「グリアデルウェハー脳内留置剤7.7mg」が、医療安全上の観点から名前を変えたと書いてあるのですが、これはどういう意味ですか。
○機構 「グリア」という発音と類似している販売名の商品が、既に発売されておりまして、所謂「3文字ルール」に引っ掛かっているということで名前を変えていただいたということです。
○吉田部会長 分かりました。未承認薬・適応外薬検討会議でも有用であるという判断がされているということで、特に御意見がなければ議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
 特に御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは議題2に移ります。医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品シーブリ吸入用カプセル50μgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査機関の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、長時間作用性抗コリン薬であるグリコピロニウム臭化物を有効成分とする吸入用気管支拡張剤であり、今般、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に係る効能・効果で申請がなされたものです。
2012年6月現在、本剤が承認されている国はなく、EU等で審査中となっております。
なお、海外においては、グリコピロニウム臭化物を有効成分とする注射剤及び経口剤が市販されています。また、本邦においても胃・十二指腸潰瘍を適応とした経口剤が販売されていましたが、現在は承認整理されています。
 本申請の専門委員としては、資料18に記載されております10名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について御説明いたします。
 審査報告書34ページの(2)国際共同第III相試験(A2304試験)の項を御覧ください。本申請における検証的試験として、日本人及び外国人COPD患者822例を対象に、本剤50μg又はプラセボを1日1回吸入投与した際の有効性及び安全性を比較する無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されています。
 まず、試験全体の成績について説明いたします。35ページ上段の表8に示していますように、主要評価項目である投与12週後のトラフFEV1について、本剤群とプラセボ群との群間差は0.108Lであり、統計学的に有意な差が認められています。また、本試験に組み入れられた日本人患者96例の成績については、表9に示していますように、投与12週後のトラフFEV1について、本剤群とプラセボ群との群間差が0.108Lであり、試験全体の成績と類似した結果が認められています。これらの成績より、機構は、日本人COPD患者における本剤の有効性は示されていると判断いたしました。
 次に、審査報告書42ページの2)「至適用法・用量について」の項を御覧ください。至適用法・用量を更に検討するため、1日2回投与も含む追加の用量設定試験(A2208試験)が実施され、43ページの表17のとおり、50μg1日1回投与と比較して、25μg1日2回投与で主要評価項目である投与28日後のトラフFEV1がより高値を示す傾向が認められました。しかしながら、先ほど御説明しました、国際共同第III相試験(A2304試験)において、50μg1日1回投与でもトラフFEV1について、プラセボに対する優越性が示されていること、FEV1の投与24時間後までのAUC、FEV1の日内推移等では、1日1回投与と1日2回投与で大きな相違はないこと、また本剤は長期投与が想定されることを踏まえると、1日1回投与の利便性についても理解できることから、COPDに対する本剤の用法・用量を50μg1日1回とすることは許容可能と判断いたしました。
 次に、47ページの下段、(2)「安全性について」の項を御覧ください。第III相試験2試験の併合データにおける主な有害事象の発現状況を48ページの表24にまとめております。本剤における有害事象の発現状況について、プラセボ又は類薬であるチオトロピウム(審査報告では「Tio」と表記しています)と比較して、大きく異なる傾向は認められていません。
 次に、類薬において心血管系・脳血管系事象が副作用として知られていることから、心血管系・脳血管系有害事象の発現状況について、チオトロピウムとの比較も含め検討を行いました。その結果、49ページ中段の1)の項に示していますように、臨床的に重要な心房細動又は心房粗動の再発が本剤群でのみ認められたものの、発現例は少なく、心房細動又は心房粗動の既往のない被験者集団においては、本剤による発現リスクの上昇は示されていないこと、また吸入剤に比べ、より全身暴露量の多い本薬の経口剤においても、心房細動又は心房訴動のリスクは示されていないこと等を踏まえ、臨床試験成績からは、本剤の心血管系・脳血管系有害事象の発現リスクについて、大きな懸念は示唆されていないと判断しております。一方で、類薬のメタ解析の結果、抗コリン薬の吸入投与は心血管系イベントによる死亡等のリスクを高めるとの文献報告もあることから、今後も製造販売後調査等において情報を収集し、心血管系・脳血管系有害事象の発現リスクについて引き続き検討していく必要があると考えています。
 その他、本剤の主な適用対象は高齢者と想定されること、本剤の全身暴露に体重及び腎クリアランスが影響を与えることが示唆されていることから、52ページ~53ページの表31~33に示していますように、年齢、体重及び腎機能別での有害事象の発現状況についても検討を行い、いずれの因子についても本剤の安全性への特段の影響は示唆されていないと判断しています。
 製造販売後調査としては、55ページ(2)の項に示しておりますとおり、観察期間を1年間とし、心血管系・脳血管系有害事象及び抗コリン作用に関連する有害事象を重点調査項目とする長期特定使用成績調査を実施することを予定しております。なお、調査の目標症例数は1,000例を予定しています。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は8年、また、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。
 薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
48ページの「重篤な心房細動は本剤群でのみ4例認められた」とありますが、既往歴に何かあったかどうかは分かりますか。
○機構 もともと既往があった方で、再発という形になります。
○吉田部会長 抗コリン薬を吸引すると急速に血中濃度が上がりそうな気もするので、その辺が少し気になるのですが、慎重投与になっているということは、これで対応してほしいということで、禁忌にはしないということですか。
○機構 COPDの患者さんですと、このような心血管系疾患を合併している方も少なくないと思いますので、現時点では慎重投与という形で対応したいと考えています。なお、類薬についても同様に慎重投与となっています。
○吉田部会長 ほかに御意見はございますか。
○庵原委員 43ページの用量をふったデータを見ていますと、1日2回の方が同じ50μgを投与しても、データがいいように読めるのですけれども、これは場合によっては1日2回投与も可とするわけですか。そうではなくて、このデータでも、これは1回だけにするという形でいいわけですか。
○機構 剤形としては50μgのカプセルしかありませんので、基本的には1日1回のみを考えています。確かに主要評価項目のトラフFEV1を見ますと、2回投与の方がよさそうだというデータになっているのですが、投与24時間までの呼吸機能のAUCなどのほかの評価項目を比べますと、1日2回と1回で、臨床的に意味があるほどの有効性の差はないと判断しまして、50μgの1日1回のみを考えています。
○庵原委員 43ページだと、25μgを2回やった方が、50μgの1回投与よりもプラセボとの差は大きいのですが、そういうことからすると、データは分割で2回の方がいいように読めるのですけれども、このデータの読みはそうではないのですか。
○機構 確かに、主要評価項目のトラフFEV1だけを見ますと、2回の方がいいというデータにはなっているのですが、ほかの有効性の評価項目等とも総合的に勘案して判断しています。また日本人で検証されている用量が50μgの1日1回になっていますので、本邦における用量としては50μgの1日1回を考えております。
○吉田部会長 何で2回投与のデータが出てきているかを御説明しないと、理解できないのではないかと思います。2回と1回のデータを比べて、1回に決まったのではなくて、先に1回が決まっていたのですか。
○機構 まず、単回投与試験等の結果から、1日1回投与でも有効性が期待できそうだということで、申請者としては1日1回投与で開発を進めていたのですが、審査報告書42ページにも記載しているとおり、FDAから投与頻度について、1日1回なのか2回なのかの検討も含めて、更にデータが必要だと要求されたようで、追加の臨床試験を実施したという経緯になっています。
○吉田部会長 2回投与にしても、それほど大きく変わらないので、利便性を考えて、1回投与でそのままいったという説明でいいのですか。
○機構 そうです。日本人が参加している検証試験は、50μgの1日1回投与で実施され、プラセボに対して優越性が示されています。また1日1回では利便性も期待できることも踏まえて、申請の用法のとおりと考えています。
○庵原委員 43ページの表17のデータの読みですが、プラセボとの差を見ると、明らかに1日2回の方が数字はいいですね。
○機構 はい。
○庵原委員 12.5μgも25μgも50μgもいいですね。それでも1日1回と言われるわけですね。
○機構 そうです。ほかの呼吸機能のパラメータ、日内推移等を見まして、総合的に判断して、1日1回でも遜色ないと考えています。確かに2回の方が更に有効性が高いという可能性は否定できませんが、1日1回投与でも、類薬のチオトロピウムと比較して同程度の有効性が認められているというデータもありますので、1日1回投与を考えています。
○吉田部会長 庵原先生、よろしいですか。納得できませんか。
○庵原委員 数字を見ていたら、納得しにくいですが、それで決まっているのでしたらいいです。
○事務局 事務局から補足させていただいてよろしいでしょうか。
○吉田部会長 どうぞ。
○事務局 今回、申請されたのが50μgの1日1回でして、米国で実施されたデータから見ますと、確かに25μgを1日2回が有効性で上回る可能性も否定されてはいないのですが、一方で、今回申請された50μgの1日1回に関しましては、日本人での有効性も認められており、またコンプライアンスの観点からも合理性もございますので、今回のこの用法をお認めいただいても差し支えないのではないかと考えているところです。
○吉田部会長 有意性はどうなのでしょうか。差に推計学的な有意水準はあるのですか。比べられる数字ではないのでしょうか。
○機構 1日1回と1日2回で統計学的な有意差があったかどうかは検討されていません。
○吉田部会長 このデータをもって、今世界では何か国かで審査中ということなのですが、すべて1回で審査中なのですか、それとも2回投与を認める方向の審査もやっているのですか。
○機構 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□まだ詳細については決まっていないとのことです。
○吉田部会長 もし第III相試験が用意されているのであれば、第III相試験が明らかになった段階で再申請があったら、2回にすることはあるのですか。
○機構 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
○吉田部会長 申請するのは企業なので、私たちが2回にしなさいと言うわけにはいかないのは分かっていますが、そういう話があって疑問の余地が残った場合に、第III相試験の結果によっては、会社側が2回でもいい、50μg1回か25μgを2回というやり方で追加申請があることもあり得るのですかと聞いているのです。
○機構 可能性はあり得ると思います。
○吉田部会長 そういうことで対応することはあり得るということですね。
○機構 はい。
○吉田部会長 私から質問ですが、シーブリの類薬が書いてありますが、これは全部抗コリン薬ではないのですか。
○機構 類薬で長時間作用性のものはチオトロピウムのみで、短時間作用型の抗コリン薬も幾つかあります。
○吉田部会長 抗コリン薬の吸入法としての実績はどのぐらいあるのでしょうか。
○機構 本剤と同じ、長時間作用性の吸入抗コリン薬というのは、チオトロピウムのみです。
○吉田部会長 分かりました。ほかにございますか。
○新井委員 この薬は気管支拡張作用があって、QOLを改善するということはよく分かるし、患者にとって効果が大きいと思うのですけれども、COPDそのもの、慢性炎症といったものに対しては、これを見てみると「COPD増悪を予防できる可能性が示唆される」ということが書いてあるのですが、その辺は具体的にはどうなのでしょうか。もしQOLが改善されて、煙草をよく吸うようになったら更に困るのではないかと思うのです。本質的にCOPDに対してどうなのかと思います。ただ、どこかに「COPDそのものも改善できる」と書いてあったので、実際にそういうデータがあるのだとしたら、どうしてそうなるのかも含めて教えていただけますでしょうか。
○機構 本剤は気管支拡張薬であり、薬理作用はあくまでも気管支拡張作用ですので、COPDの病態そのものを治す効果はないものと考えています。気管支拡張作用に基づいて、増悪の抑制といった効果が認められているのですが、あくまでも症状の改善に伴った効果と考えられますので、病態そのものに効いているというわけではないと考えています。
○吉田部会長 ほかにございますか。
よろしいですか。御意見がないようですので、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題3について、医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品ゾシン静注用2.25及び同静注用4.5の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、β-ラクタマーゼ阻害薬であるタゾバクタムナトリウムとペニシリン系抗菌薬であるピペラシリンナトリウムを1:8の比率で配合した、注射用ペニシリン系抗菌薬です。本邦では、タゾバクタムナトリウムとピペラシリンナトリウムを1:4で配合した「タゾシン静注用」が、2001年4月に、敗血症、腎盂腎炎及び複雑性膀胱炎の効能・効果に対し承認されておりましたが、海外と比較して用量が低かったことから、海外における用法・用量等を参考に、本邦における用法・用量が見直され、配合比を1:8とした本剤の開発が行われ、2008年7月に敗血症、肺炎、院内肺炎、複雑性尿路感染症において承認されております。なお、「タゾシン静注用」については、本剤の承認に伴い、2009年4月に承認整理されています。
 今般、腹腔内感染症患者を対象に、国内臨床試験が実施され、本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、一部変更承認申請が行われました。
 なお、本剤は、2012年6月現在、米国、欧州等90か国で承認されており、そのうち腹腔内感染症については、84か国において承認されています。
 本申請の専門委員としては、資料18に記載されている4名の委員を指名いたしました。
 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。
 まず、有効性についてですが、審査報告書25ページ上の表を御覧ください。腹腔内感染症患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である投与終了又は中止時における本剤の有効率は、93.1%であり、感染症診断名別の有効率についても、大きな差異は認められませんでした。また、審査報告書27ページの表を御覧ください。国内第III相試験における投与終了又は中止時の細菌学的効果は、消失率及び菌消失率でそれぞれ87.1%及び91.3%でした。以上を踏まえ、成人腹腔内感染症に対する本剤の有効性は示されていると判断いたしました。次に、審査報告書26ページを御覧ください。本剤の小児腹腔内感染症に対する有効性については、国内では検討されておりませんが、海外における小児を対象とした臨床試験において、対照薬であるセフォタキシムとメトロニダゾール併用投与との同程度の有効性が示されており、成人と小児で本剤の薬物動態に大きな差異は認められないと考えられたことから、本剤の小児腹腔内感染症に対する有効性は期待できると判断しております。
 また、審査報告書35ページの表を御覧ください。申請された適応菌種のうち、バクテロイデス属、ペプトストレプトコッカス属、クロストリジウム属及びプレボテラ属については、国内外臨床試験成績より、有効性が期待できると考えたことから、本剤の適応菌種に追加することは可能であると考えました。一方で、モルガネラ・モルガニーについては、国内外臨床試験における検討症例が少なく、国内外の公表論文において、本剤のモルガネラ・モルガニーに対する有効性を示す十分な情報は確認できず、国内外の成書等で、本剤がモルガネラ・モルガニーに対し、一貫して推奨されているものではないということも踏まえ、本剤の適応菌種に追加することは困難と判断いたしました。なお、クロストリジウム属については、重篤な感染症である偽膜性大腸炎の原因菌とされるクロストリジウム・ディフィシルが含まれますが、本剤のクロストリジウム・ディフィシルに対する抗菌作用は、クロストリジウム属の他の菌種よりも弱く、他のクロストリジウム属とは引き起こす病態も異なることを踏まえ、クロストリジウム・ディフィシルは適応菌種に含めないこととしています。
 次に、安全性についてですが、審査報告書30ページの表を御覧ください。腹腔内感染症患者を対象に本剤を投与した国内第III相試験において認められた有害事象発現率は、既承認効能・効果を対象とした国内臨床試験成績と比較して、特に重大な懸念となる事象は認められていないと考えられました。また、審査報告書31ページの表及び32ページの表を御覧ください。小児については、既承認効能を対象とした国内臨床試験と、腹腔内感染症を対象とした海外臨床試験を比較したところ、下痢が多く認められております。ただ、審査報告書32ページの表にございますように、年齢の低下に伴い下痢の発現率は高くなっていますが、低年齢の小児での下痢の発現率が高いことは、現在の添付文書でも、既に注意喚起をしており、現時点で新たな注意喚起を行う必要はないと判断しております。なお、本剤の承認後には、小児の腹腔内感染症患者を対象とした製造販売後調査を実施する予定としております。
 以上の審査を踏まえ、本剤の腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎及び胆管炎に対する効能・効果及び用法・用量を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能医薬品であることから、再審査期間を4年とすることが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。
 また、本品目については、黒木委員より事前に御質問いただいておりますので、御説明させていただきます。御質問の内容としては、「本剤の添付文書では過量投与の項が設定されておりませんが、海外の臨床試験等で過量投与の症例は認められていないのか。もしあるのであれば、添付文書に記載するべきではないか」という御意見をいただいております。本剤について、これまでに海外の市販後において、13例の過量投与に関する報告が認められておりますが、これらの症例で認められた事象はいずれも既知の事象であります。また、国内臨床試験及び市販後において5例の過量投与例が認められておりますが、いずれの症例も重篤な事象は認められておりません。一方で、本剤の過量投与時の対処法として、血液透析が有用であることが知られていること、海外添付文書においてもこの内容は注意喚起されているということから、御指摘を踏まえ、今回過量投与の項を設定し、過量投与時に認められる一般的な症状及びその対処法について注意喚起することとしたいと考えております。
 以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。黒木先生いかがですか。
○黒木委員 結構です。
○吉田部会長 それでは、ほかの先生方からの御意見、御質問をお願いします。
○庵原委員 31ページの安全性のところですが、国内臨床試験の方が海外臨床試験より下痢の発症頻度が明らかに高いようなのですが、これはバックグラウンドとか、要因などは、どのように考えておられますか。
○機構 32ページを見ていただきますと、国内臨床試験については、敗血症、感染性心内膜炎、細菌性肺炎等の臨床試験になりますが、これらについては、2歳未満及び2歳~6歳未満のところが、例数としては結構多く認められており、低年齢の患者が多かったことが、下痢の発現が多かったことに関連しているのではないかと考えられます。
○吉田部会長 低年齢の方が下痢になりやすいのですか。
○庵原委員 一般的に、こういう抗生剤の治験をやると、低年齢の方が消化器症状が多いので、エントリーされた集団が、日本は低年齢が多くて、海外は年齢が高い人が多ければ、こういうデータが出てきてもおかしくはないと思います。そこはエントリーされている方の年齢構成が違うということでいいです。
○機構 母数は、一番左端の例数のところにあるのですが、国内臨床試験の全体では66例に対して、2歳未満が26例、2歳~6歳未満は32例となっております。それに対して、海外の方では、2歳~6歳未満に関しては、273例中58例ということで、割合は低くなっています。
○吉田部会長 なるほど、2歳未満がないのですね。
○機構 そうです。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○増井委員 臨床試験の様子を見ていると、一つの施設でいくつかの菌株を取ってきて試験をする形なのですが、感染研辺りでは、事故を起こしたような菌株の収集をしていると思うのですが、そういうものというのは標準的に何らかの段階でテストをされたり、トレンドの確認はされるのでしょうか。例えば42ページのところで、市販後試験のところで、20施設から1施設当たり、これだけ収集して調べろという話が出ているのですが、地域によって違うでしょうし、温度というか、そのときの時期でも大分違うと思うのですが、そういうことについてあまり考えずに、一般的に取ってきて調べるというのは、地域的に例えば10施設というのは、南から北までということは、あまり一般的には考えられていないのでしょうか。
○機構 腹腔内感染症で起こる原因菌としては、グラム陰性菌、嫌気性菌などが考えられますが、厳密なことは言えないかもしれませんが、これらの菌の分布が、地域で大きな差異はないだろうと考えられます。今回、国内の臨床試験で、小児を対象とした臨床試験は実施していないということもございますので、小児では実際にどういった分布になっているのか、それに対して、この薬がどのような有効性を示しているのかを確認する意味でも、今回の調査できちんと確認することが重要と考え、菌を取って確認させていただきます。
○吉田部会長 逆に伺いたいのですが、そういう臨床試験をするときに、感染症の地域差は考慮すべきことなのでしょうか。
○黒木委員 それが分からないので伺いました。
○吉田部会長 アメリカ辺りですと、フロリダと砂漠では気候が全然違いますので、そういうことはあるのでしょうが、日本の場合だと十把一絡げでやっているような気がします。濱口先生、いらしたばかりで恐縮なのですが、こういう感染症の抗生剤とか抗菌薬の試験をやるときに、エントリーする地域差などは考慮すべきことなのですか、それとも一般的に考慮しないのですか。
○濱口委員 どういった株が流行っているかということも多少変わってくると思いますし、耐性の度合いも異なってくると思います。今すぐに、どの話だったかよく分からないので、申し訳ございません。
○吉田部会長 一般的にどうでしょうか。
○濱口委員 ただ、大きな意味での地域差というのはあります。
○吉田部会長 国内は国内で、大体一絡げでいいのですか。
○濱口委員 そう思います。
○吉田部会長 分かりました。ありがとうございました。ほかにございますか。
小児の下痢については、市販後にもう1回やるという条件付きでしたね。
○機構 製造販売後調査において確認することとなっております。
○吉田部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はございますか。
ないようですので議決に入ります。なお、清田委員、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題4について、医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題4、資料4「医薬品ヴォトリエント錠200mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるパゾパニブ塩酸塩は、血管内皮増殖因子受容体等の受容体型チロシンキナーゼのリン酸化を阻害し、その下流の細胞内シグナル伝達を阻害することにより、血管新生や腫瘍の増殖を抑制すると考えられております。
 悪性軟部腫瘍は、非上皮組織のうち、骨、歯、網内系、グリア及び実質臓器の支柱組織を除いた、中胚葉由来の線維組織、脂肪組織、筋肉組織、血管組織、滑膜等及び外胚葉由来の末梢神経等の、全身の軟部組織から発生する腫瘍であり、非常に多様な組織型が存在することが知られています。
今般、本剤は、悪性軟部腫瘍に対して効果を示す薬剤として承認申請されました。
なお、本剤は、平成23年8月に開催されました当医薬品第二部会での審議結果を踏まえて、希少疾病用医薬品に指定されております。本剤は、審査報告書3ページに記載していますように、平成24年6月時点において、悪性軟部腫瘍に関する適応にて、4か国で承認されております。なお、EUでは、平成24年8月に悪性軟部腫瘍に関する適応にて承認されています。
本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料18にございますとおり、9名の委員です。
以下、本剤の承認審査の概要を御説明します。
今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、本邦を含む世界各国で実施された一つの国際共同第III相試験成績が提出されました。
有効性については、審査報告書52ページ下から16行目以降に示すように、化学療法施行後に病勢進行を認めた転移性の悪性軟部腫瘍患者における本剤の有効性及び安全性を検討した国際共同第III相試験の結果、対照群として設定されたプラセボ群に対して、本剤群の無増悪生存期間が有意に延長され、当該患者に対する本剤の無増悪生存期間の延長効果は示されたと判断しました。安全性については、本剤の使用において注意すべき有害事象として、審査報告書102ページ下から8行目以降に示すように、肝機能障害、高血圧、心・血管事象、出血性事象、気胸、甲状腺機能異常、消化管穿孔及び消化管瘻、タンパク尿及びネフローゼ症候群、皮膚障害、毛髪変色及び皮膚色素減少、創傷治癒遅延、感染症、可逆性後白質脳症症候群、並びに間質性肺炎が認められており、注意が必要と考えています。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を有する医師による慎重な観察と、適切な処置により、忍容は可能と判断しました。ただし、日本人における検討症例は限られており、審査報告書109ページ上から1行目以降に示すように、製造販売後には、本剤を使用したすべての症例を対象として、目標症例数300例、観察期間1年間の調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示をしております。
効能・効果については、審査報告書105ページ下から16行目以降に示すように、臨床試験では一部の組織型が組入れから除外されていたものの、がん化学療法に十分な知識と経験を有する医師が、これまでに得られている本剤の有効性等を考慮して、患者を選択することが可能となるよう、臨床試験において組入れ対象とされた組織型等について的確に情報提供することを前提として、「悪性軟部腫瘍」と設定することが適切であると判断しました。専門協議においては、すべての専門委員から、この機構の判断を支持する意見が出されました。
 以上のような審査の結果、機構は「悪性軟部腫瘍」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断しました。
本剤は、希少疾病用医薬品に指定された新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を10年とすることが適切であると判断しました。また、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。なお、審査報告書に誤記がございます。審査報告書97ページ下から13行目、有害事象の例数について、「6分の0例」とある文末の部分は、「6分の2例33%」に修正をさせていただきます。また、ほかにも漢字の誤植等の誤記があることから、併せて適切に修正してまいります。本剤の製造販売承認の可否等について、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方からの御質疑をお願いします。
○庵原委員 先ほどの報告の中でも言われていますが、脂肪肉腫をどうするかだと思います。初めの臨床実験では、ある治験のときからわざわざ抜いてやっていて、途中から、海外共同治験では入れているわけです。脂肪肉腫で効果があったかというデータはどこにもないのです。それでもやはり適応に入れる理由は何かあるわけですか。要するに脂肪肉腫を適応として入れ込んでいいのかどうかという、そこの判断です。
○機構 脂肪肉腫については、第III相試験、ピボタルの試験からは除外されていますが、その一つ前に海外の第II相試験という試験があって、審査報告書48ページ(2)の部分です。有効性の解析に脂肪肉腫が含まれており、成績としては19分の5例について、SD以上の患者がいらしたということで、この成績をもって脂肪肉腫に関する有効性についても否定されることはないだろうという判断です。
○庵原委員 第II相で一般的に有効が認められれば、普通は第III相を入れますね。それが入れてないのはどういうことですか。
○機構 この試験が、今、お示しした有効性についてのパラグラフですが、Simonの2段階デザインが用いられており、1段階目で、一定以上のPF率に達した組織型については、後半のフェーズに進むというデザインだったのですが、その1段階目で脂肪肉腫のPF率が当初設定された割合に達していなかったわけです。この試験においては病理組織の分類の難しさもあったのかと思いますが、再分類が行われており、その他として分類されていた患者に事後的に脂肪肉腫であったと判定された組織型の方がいらして、それを併せて見ると、1段階目でクリアすべき基準は満たしていました。
○庵原委員 でも、フェーズIIIでは抜いていますよね。抜いたものを持ってきて、第II相のレベルのものを承認に入れ込むということは、論理的にいいのですかという、そこの確認です。
○審査第五部長 庵原先生御指摘の部分については、専門協議のところでも議論になりました。先ほど事務局からも説明があったとおり、まずこの病態そのものが病理診断上、専門の病理医であっても、判断が難しい場面もあるという話も伺っております。そもそもこの疾病そのものが、それほど患者数も多くないオーファンにも該当するような疾患であることを考えると、第II相の結果で、後から見てということですが、ある程度の有効性が認められている事例があるということを考えると、有効性そのものは脂肪肉腫に対して否定的であるとまでは言えないのではないか、そのような状況を踏まえると、どのような組織でデータがあって、例えば第III相試験でデータがあるとか、脂肪肉腫については第II相でこのようなデータがあるとか、そういったデータをきちんと示すことによって、専門の先生に使っていただくということで現場の判断に委ねることがよろしいのではないでしょうか、という専門協議の御意見もいただき、最終的にこのような効能・効果が妥当だと私どもは判断しました。
○吉田部会長 専門協議には病理の落合先生も入っておられるので、その辺の議論は当然あったのだろうと思います。こういう解釈ですかね。脂肪肉腫はSimonで引っかからなかったので、第III相試験では入れなかった。しかし、第II相試験例の組織型を見直ししてみると、その他としたものの中に脂肪肉腫に相当するものがあって、効いているではないか。これらの症例があれば第III相の対象になったかもしれないのだから、適応をとるときに、あえて抜く必要はないのではないんじゃないかというような話でしょうか。そのようです。
○庵原委員 逆に言いますと、市販後調査では、きちんと本当に脂肪肉腫に効果があるのかどうかは見ておかないと駄目だと思うのですが、その辺の御意見をお願いします。
○機構 先ほど御説明しましたように、全例調査300例においては、対象患者の組織型に偏りが生じないように調査計画を工夫する予定です。有効性の評価は難しい部分もあろうかと思いますが、有効性・安全性に関しては調査の中で取ってまいりたいと考えております。
○吉田部会長 ただ、適応として、今まで悪性軟部腫瘍全般でというのはありましたか。
○機構 悪性軟部腫瘍に関しては、アドリアマイシンとイホスファミドがございます。
○吉田部会長 組織型に関係なく何でも大丈夫となっているのですね。
○機構 はい。
○吉田部会長 病理学的に分類が難しいということもあるし。
○機構 追加になりますが、アドリアマイシンとイホスファミドについては、併用療法検討会議において検討が行われて承認されているという経緯があって、実際に臨床試験をやってきて承認されているものがこれまでないというのが現状です。
○吉田部会長 私もそうではないかと思ってました。田村先生、今の適応のこととか、この資料に関して何かコメントはありますか。
○田村委員 適応に関しては極めて難しい判断だと思います。理詰めとなると厳しいですが、使用する側にとっては、できれば、というところがあります。
○吉田部会長 可能性のある患者には、なるべく使えるようにしてあげるということですね。ほかにありますか。
○田村委員 この試験では、プラセボ群の疾患進行時に、実薬をクロスオーバーしているわけではないのですね。
○機構 クロスオーバーはしておりません。
○田村委員 PFSで差がついていますが、OSはプラセボ群とわずかな差になっています。この点について、審査ではどういう判断をされているのでしょうか。
○機構 OSに関しては、今回の第III相試験の主要評価項目を検証するための例数設定等が行われており、OSの検証を行うための例数設定等が行われていないという状況がございますので、OSの評価自体には統計的な有意差が付くのかという点について、評価は困難だろうと考えております。しかしながら、審査報告書54ページにその成績がございますが、本薬群がプラセボ群に対して、中央値で2か月ほど生存が延びているという点について、少なくともプラセボと比較して短くなることはないのだろうと考えております。
○田村委員 OSは検出力不足である。検出力が上がれば、本来のメリットであるOSにもインパクトがあるはずという判断ですか。
○機構 そのように考えております。
○吉田部会長 プラセボはプラセボでずっと行ったのですか。
○機構 後治療が行われております。
○吉田部会長 後治療はやっていいわけですね。
○機構 はい。
○中島委員 用法・用量で、1日1回800mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に経口投与するということになっていますが、1日1回のアドヒアランスを守るのに1時間前とか、2時間後というのは、少し支障があると思います。さらにこの資料を見ておりますと、食後の方が吸収がいいと書かれているのですが、その辺の事情はどういうことになっているのでしょうか。
○機構 御指摘のとおり、用法・用量は、食事を回避して、食前であれば1時間以上、食後は2時間以降に服薬をしていただくという設定です。これは第III相試験での設定ですので、その条件をそのまま用法・用量に設定させていただくのが適切だろうと考えております。一方、一定の時間帯に飲んでいただくというアドヒアランスの観点については、資料等で情報提供していただくことを考えております。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。
これは経口剤ですね。一応添付文書には熟練した所できちんと緊急対応できるようにとなっているのですが、病診連携ではありませんが、専門施設への通院が大変な患者さんに「どこそこの診療所でこの薬を出してもらいなさい」という話は出ないですかね。私はそういうのはすごく怖いと思うのですが、そういうことも含めて市販後のときには、どのようなルートで行っているかをきちんと把握するようにというのを条件に入れておいていただければと思うのですが。
○機構 今、当面、発売後は全例調査という仕組みを作っていますので、投与されている患者さんがどこにおられるかというのは会社ではすべて把握できるような形にしておく予定です。
○吉田部会長 分かりました。よろしいですか。
○豊見委員 今の表現で、78ページ上から10行目辺りの「食後に本薬を投与した場合」という部分だろうと思いますが、食事の内容によってCmaxなどが上がりすぎるのを防ぐために空腹時にという理解でよろしいですか。
○機構 食事によって吸収が増すということが分かっています。
○豊見委員 増すというのが分かっているので、上がりすぎないようにということですね。
○機構 そのとおりです。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかに御意見はありますか。
意見も出尽くしたようですので、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題5に移ります。議題5について、医薬品医療機器総合機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題5、資料5「医薬品タイガシル点滴静注用50mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるチゲサイクリン(以下、「本薬」と略します)は、グリシルサイクリン系抗菌薬に分類されるミノサイクリンの誘導体であり、リボソーム30Sサブユニットへ結合することによりリボソーム機能を阻害し、細菌のタンパク合成を阻害することで、幅広い抗菌活性を示すとされております。
近年、世界的規模で抗菌薬に対する耐性菌の増加が報告されており、本邦においてもメタロβ-ラクタマーゼ産生性のグラム陰性菌やグラム陰性嫌気性菌、多くの抗菌薬に耐性を獲得した多剤耐性のAcinetobacter属の出現等が問題視されています。これらの菌に対する治療薬は、耐性化の進行とともに減少傾向にあります。
本剤は広域な抗菌スペクトルを有することから、欧米では多剤耐性菌を原因菌に含む複雑性皮膚・皮膚軟部組織感染症(以下、「cSSSI」と略します)及び複雑性腹腔内感染症(以下、「cIAI」と略します)に対する治療選択肢の一つとされております。本邦でも、第一選択薬が無効又は不忍容で既存薬が使用できない皮膚科領域感染症患者及び腹腔内感染症患者における治療薬は限定されていることから、感染症関連学会より「多剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症に関する四学会からの提言」が公表され、その中で、本剤を使用可能とすることが強く望まれているところです。
本邦では、平成□年□月に本剤の承認申請が行われておりましたが、□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、平成□年□月に当該申請は取り下げられました。しかしながら今般、多剤耐性菌の増加による治療上の問題点及び関連学会等からの要望を踏まえ、国内においても多剤耐性菌による感染症に対する本薬の必要性は高いと考えられたことから、本剤の適応菌種を多剤耐性菌に限定して、海外臨床試験成績等に基づき、製造販売承認申請が行われました。  本剤は、2005年に米国で承認されて以来、2012年7月時点で、世界95か国で承認されております。
本申請の専門委員として、資料18に記載されている10名の委員を指名しました。
審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
審査報告書55ページ上から4行目及び57ページ下から10行目を御覧ください。cSSSIに対する有効性について、外国人患者を対象とした海外第III相試験2試験が行われており、主要評価項目である投与終了後2~4週時の治癒率において、バンコマイシン及びアズトレオナムの併用投与に対する本剤の非劣性が検証されました。審査報告書72ページの表を御覧ください。海外第III相試験2試験における投与終了後2~4週時の細菌学的効果では、305-WW試験において本剤群で菌消失率が低下しているものの、300-US/CA試験では対照薬とほぼ同様であり、305-WW試験において、本申請における適応菌種である大腸菌における菌消失率が本剤及び対照薬で大きな差異がなかったことを踏まえ、本剤のcSSSIに対する有効性は期待できると判断しました。
 次に、審査報告書59ページ上から7行目及び61ページ下から10行目を御覧ください。cIAIに対する有効性について、外国人患者を対象とした海外第III相試験2試験が行われ、主要評価項目である投与終了後2~4週時の治療率において、イミペネム/シラスタチンに対する本剤の非劣性が検証されています。また、審査報告書73ページ上の表を御覧ください。海外第III相試験における投与終了後2~4週時の細菌学的効果においても、対照薬とほぼ同様の菌消失率が示されており、本剤のcIAIに対する有効性は期待できると判断しました。
 次に、安全性についてですが、審査報告書73及び74ページの表を御覧ください。cSSSI及びcIAIに対する海外第III相試験において認められた有害事象の発現率を対照群と比較したところ、本剤群では悪心・嘔吐が多く認められております。審査報告書78及び79ページの表を御覧ください。悪心・嘔吐の重症度は多くが軽度から中等度ではありましたが、投与中止例も認められていることから、本剤の投与中は患者の状態を十分に観察することを添付文書で注意喚起しております。
 次に、審査報告書77ページの表を御覧ください。海外第III相試験及び第IV相試験の併合解析結果から、本剤群で対照群と比較して死亡率が高い傾向を示していますが、その理由については明確になっておりません。この事実について、欧米の添付文書においても注意喚起されていること、及び本邦では重症感染症患者が投与対象となることが想定されることから、本邦においてもこの事実を臨床現場に提供するとともに、本剤投与に際してはリスク・ベネフィットを十分考慮した上で本剤投与するよう、添付文書にて注意喚起することといたしました。
 次に、審査報告書93ページの枠内を御覧ください。本剤の適応菌種について、各種抗菌薬に対する耐性化が進行しているものの、国内外で「多剤耐性」の確立した定義が存在していないことから、効能・効果の適応菌種としては「他の抗菌薬に耐性を示した菌株に限る」と記載し、その具体的な投与基準については効能・効果に関連する使用上の注意の項で「本剤の使用は、β-ラクタム系、フルオロキノロン系及びアミノ配糖体系のうちに2系統以上に耐性を示した菌株であり、抗菌活性を示す他剤が使用できない場合にのみ使用すること」を記載することが適切と判断しました。なお、本剤に対する耐性菌出現を抑制することは非常に重要と考えられることから、本剤の適正使用を推進することが重要と考えております。そのため本剤が使用されるべき基準については関連学会とも協力の上、本剤の使用の手引きを作成し、医療現場に周知徹底することとしております。なお、多剤耐性グラム陰性菌を原因とするcSSSI及びcIAIの日本人を対象とした本剤の有効性及び安全性の成績は得られていないことから、本剤投与時の有効性及び安全性に関する情報を収集することを承認条件として付すことが適切と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本剤の効能・効果における適応菌種を「本剤に感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、アシネトバクター属、ただし、他の抗菌薬に耐性を示した菌株に限る」とし、適応症を「深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎」として承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請の再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。
 以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方の御質問をお願いします。
事務方への質問ではないのですが、濱口先生、四学会からの提言ですが、本薬は平成□年に承認申請をしようとしたのに、□□□□□□□□□□□□、1回申請が取り下げられております。今回は日本人の健常人を対象としたフェーズIに外国データだけをつけてきて、それも非劣性で、非劣性もぎりぎりマージンぐらいの所もあるのですが、新しい薬を登場させてほしいということの背景は、やはり耐性菌の問題ですか。
○濱口委員 私もそこのところは詳しくは知りません。ただ、耐性菌に対しての薬は扱い方によっては、次の耐性菌が出てきたときにどのような対応をするかということもありますので、ある意味で最新のものをすぐに出してくるというよりも、どちらかというと、以前というのも一つはありかと考えられます。
○吉田部会長 という位置づけで登場したということのようです。ありがとうございました。それでは御意見を伺いたいと思います。
○土屋部会長代理 テトラサイクリン系の有名な副作用の一つに、光線過敏症があって、その件について、審査報告書80ページ辺りに書いてありますが、これまでのところ、光線過敏症は1例も出ていないということでよろしいのですか。出ていないが、似たテトラサイクリンの副作用なので注意喚起というか、指摘しておきましょうということですか。
○機構 80ページに書いておりますように、製造販売後の情報において光線過敏症というものに関する事象は認められておりません。ですが、本薬はテトラサイクリンの構造類似体ですので、可能性は否定できないということで、注意喚起させていただきました。
○吉田部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。
時代的要請もあり、こういった薬剤の位置づけもあり得るというお話でした。御意見がなければ議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題6に移ります。議題6について、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題6、資料6「ベバシズマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、医薬品医療機器総合機構からの評価報告書に沿って、事務局より御説明いたします。
 申請者は中外製薬株式会社。予定効能・効果は膠芽腫となります。
「患者数」は、平成20年度の厚生労働省患者調査より、膠芽腫を含む中枢神経系の悪性腫瘍患者数は6,000人とされ、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。
 「医療上の必要性」でございますが、初発の膠芽腫に対する標準治療の生存期間中央値は14.7か月との報告はあるものの、再発膠芽腫に対して生存期間の延長が検証された治療法はございません。また、その他の既承認薬はございますが、生存期間の延長は示されておらず、新たな治療薬の開発が望まれており、医療上の必要性は高いと考えております。
最後に「開発の可能性」でございますが、本品目は、海外では再発例に対する第II相試験が実施され、37の国と地域で再発膠芽腫に対して承認を取得しております。また、本邦においては、再発例に対する第II相試験が実施されていることなどから、本品目の開発の可能性はあると考えております。
 以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。疾病頻度、疾病の重篤性、開発の可能性と、ベバシズマブはかなり以前から膠芽腫に効きそうだという話があって、臨床試験も始められたのだと思いますが、よろしいですね。一応3条件には合っているようですので、御意見がなければ議決に入ります。なお、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加は御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題7に移ります。議題7について、事務局からの説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題7、資料7「インフリキシマブ(遺伝子組換え)(難治性川崎病)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、事務局より御説明いたします。
 資料7の二つ目のタブです。申請者は、田辺三菱製薬株式会社でございます。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に説明します。
 まず「対象患者数」ですが、2008年の厚生労働省による患者調査によると、「皮膚粘膜リンパ節症候群[川崎病]」の患者数は1993年以降4,000~9,000人であるほか、2009年の日本川崎病研究センターによる調査成績によると、最も患者数が多かったのは1982年の15,519人となっております。また、本調査成績において、初回ガンマグロブリン静注治療が行われた患者のうち追加療法が行われた割合は22.1%とされていることから、推定患者数は約3,430人となり、指定要件の「5万人未満」を満たすと考えております。
 次に「医療上の必要性」について御説明します。川崎病は、主として4歳以下の乳幼児に好発する、原因不明の全身血管炎を病態基盤とする疾患であり、そのうち難治性川崎病は、初回のガンマグロブリン静注療法に不応なものと厚生労働科学研究費補助金による研究班により定義されております。本邦では、難治性川崎病に対し、追加ガンマグロブリン静注療法や血漿交換療法等が試みられているものの、現状では有効性、安全性が確立した治療法は存在しておらず、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に「開発の可能性」ですが、本邦において、難治性川崎病患者における本剤の有効性、安全性及び薬物動態を検討するため、□□□□□□□□□□□□□□を対照とした□□□□□□□□□□□□□□□が□年□月より実施されていることから、本剤の開発の可能性はあると考えております。これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
庵原先生、何かありますか。
○庵原委員 諸外国でも、こういうインフリキシマブないしはその類のモノクローナル抗体を使った治療がガンマグロブリン不応例に使われています。ただ、まだそれは承認されていないと思いますが、各国でこの研究が行われつつあるという段階だと思います。
○吉田部会長 疾患の頻度、重篤性、開発の可能性もあるということでよろしいですね。よろしいでしょうか。
御意見がなければ議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題8に移ります。議題8について、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 続きまして、審議事項議題8、資料8「インフリキシマブ(遺伝子組換え)(特殊型ベーチェット病〈腸管型、神経型、血管型〉を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、事務局より御説明いたします。
 資料8の二つ目のタブのところを開いてください。申請者は、田辺三菱製薬株式会社でございます。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に説明いたします。
 まず、「対象患者数」ですが、ベーチェット病の患者数は、平成20年厚生労働省患者調査において、平成5年~平成20年まで9,000~18,000人と報告されており、また、特定疾患医療受給者証交付件数は、平成12年以降16,000~18,000人で推移しております。さらに、厚生労働科学研究費に基づく研究班による調査研究において、平成17年におけるベーチェット病患者における特殊型ベーチェット病患者の割合は16.1~18%であると報告されており、患者数は3,500人程度と推定されることから、指定要件の「5万人未満」を満たすと考えております。
 次に「医療上の必要性」について御説明します。特殊型ベーチェット病は、ベーチェット病のうち、消化器、中枢神経又は血管病変が強く、これらの病変の治療優先度が高いものであり、本邦における特殊型ベーチェット病の治療においては、治療法がないことから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
最後に「開発の可能性」ですが、本邦において、特殊型ベーチェット病患者における本剤の有効性、安全性及び薬物動態を検討するため、□□□□□□□□が□年□月より実施中であることから、本剤の開発の可能性はあると考えております。これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
本日は残念ながら山本先生がいらっしゃらないので、病気の話をもう少し聞ければ良かったのですが、特殊型で予後不良ということと、頻度、いわゆる教科書、レビュー報告にも既に上がっているということで、開発の可能性もあるとみなしてよろしいかと思いますが、よろしいですか。
 それでは、御意見がないようですので、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題9に移ります。議題9について、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題9、資料9「sirolimusを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。
「機構による評価報告書」を基に御説明します。申請者は、ノーベルファーマ株式会社です。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に説明いたします。
 まず、「対象者数」ですが、1ページの下方、厚生労働科学研究費補助金による研究班が2006年~2007年に実施した全国疫学調査において、本剤の適応となるリンパ脈管筋腫症(LAM)の受診患者数は、延べ240人と報告され、本邦における有病率は人口100万人に対し1.9~4.5人と推定されています。また、LAMは遺伝性の結節性硬化症の合併症としても生じますが、結節性硬化症患者におけるLAM患者は2,000~4,000人と考えられていることから、本剤の予定される効能又は効果における患者数は、指定要件の「5万人未満」を満たすと考えられます。
 次に、「医療上の必要性」ですが、LAMは主に肺やリンパ節における平滑筋様細胞の異常増殖と組織破壊を特徴とする疾患であり、進行性の嚢胞性肺病変が生命予後を規定するとされています。また、労作性呼吸困難、気胸、血痰等の呼吸器症状のほか、乳糜胸水、腎血管筋脂肪腫等の症状を来し、進行すると呼吸不全に至り、酸素吸入が必要となるほか、呼吸不全が進行した場合には、肺移植の対象となる重篤な疾患です。LAMの治療には、従来からホルモン療法が行われていますが、その効果については否定的な見解も多く、現時点では確立した薬物療法はないことから、医療上の必要性はあると考えております。
 最後に「開発の可能性」ですが、LAM患者を対象とした国際共同プラセボ対照二重盲検比較試験が米国、カナダ及び日本の3か国で実施され、プラセボ群に対して本剤群では有意に呼吸機能の悪化を阻止した結果が得られていることに加え、本邦において、日本人LAM患者を対象にした臨床試験が実施予定であることから、本剤の開発の可能性はあると考えられます。これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。
疾病頻度、重篤性、開発の可能性も問題なさそうですね。基本的には病気のメカニズムが明らかになっているというわけではないのでしょうが、そういったターゲットのポテンシャルも分かっており、開発の可能性はあるというお話でした。御意見ございませんか。
 特にないようですので、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題10に移ります。議題10について、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題10、資料10「ベムラフェニブを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、医薬品医療機器総合機構からの評価報告書に沿って事務局より御説明いたします。
 申請者は中外製薬株式会社、予定効能・効果はBRAFV600遺伝子変異を有する悪性黒色腫となります。
「患者数」は、平成20年度の厚生労働省患者調査より、悪性黒色腫の患者数3,000人及び病型別のBRAF遺伝子変異率を考慮し、約860人と推定され、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。
「医療上の必要性」ですが、悪性黒色腫は、皮膚癌に占める割合は4%である一方、皮膚癌による死亡に占める割合は80%であり、極めて予後不良と考えられます。また、根治切除不能な悪性黒色腫に対して、化学療法は実施されているものの、生存期間の延長は示されておらず、新たな治療薬の開発が望まれており、医療上の必要性は高いと考えています。
最後に「開発の可能性」ですが、本品目は、海外では□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□が認められています。本試験結果等から、米国及び欧州において承認を取得しています。また、本邦においてもBRAFV600遺伝子変異を有する治癒切除不能又は再発悪性黒色腫患者を対象とした第I/II相試験の実施が予定されていることから、本品目の開発の可能性はあると考えております。
 以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
田村先生、何かコメントございますか。
○田村委員 特にありません。
○吉田部会長 皮膚有棘細胞癌についてですが、これは日本のデータを押さえてありますか。
○事務局 今すぐデータはありません。これから行われる治験の中で、そういった情報が集められればと考えています。
○吉田部会長 見ていくしかないのでしょうが、一応、日本ではまだ分からないということでいいですか。
○事務局 分からないといいますか、データがないということです。
○吉田部会長 分かりました。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ほかにございますか。
 特に御意見がないようですので、議決に入ります。なお、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととします。お諮りします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 次は議題11に移ります。議題11について、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題11、資料11「タクロリムス水和物を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。
 資料11の「事前評価報告書」を基に御説明します。申請者は、アステラス製薬株式会社、対象疾患は多発性筋炎、皮膚筋炎に合併する間質性肺炎です。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に説明いたします。
まず「対象者数」ですが、1ページの下方において、平成22年度の「強皮症、皮膚筋炎及び多発性筋炎」に係る特定疾患医療受給者証交付件数は42,233人であり、このうち「多発性筋炎・皮膚筋炎」の患者数は約4割と考えられること、また、「多発性筋炎・皮膚筋炎」の患者のうち、間質性肺炎を合併する患者は20~65%と報告されていることから、本剤の予定される効能又は効果における患者数は約3,400~11,000人と推定され、指定要件の「5万人未満」を満たすと考えられます。
 次に、「医療上の必要性」についてですが、多発性筋炎・皮膚筋炎は、四肢近位の骨格筋を侵す原因不明の慢性炎症性疾患であり、多発性筋炎・皮膚筋炎の患者の一部では間質性肺炎を合併することがあり、この間質性肺炎は多くの患者で不可逆的に進行し、呼吸困難のため日常生活を著しく障害するほか、予後不良の難治性病態を呈し、生命予後に重大な影響を及ぼすとされています。多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎に対し、「びまん性間質性肺炎(肺線維症)」の効能・効果を有するステロイドが用いられていますが、約50%の患者ではステロイド抵抗性であり、そのような患者に対する確立した治療は存在しておらず、本剤の医療上の必要性があると考えられます。
最後に「開発の可能性」ですが、ステロイドと本剤を併用する治療の有効性・安全性を評価する医師主導治験が実施されており、本剤の開発の可能性はあると考えられます。これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。御質問、御意見、お願いいたします。この医師主導治験には、機構も対面相談で助言をしているということですね。ですから、開発に関しては機構も関与しているということでよろしいですね。
○事務局 そのとおりです。
○吉田部会長 ということですので、疾病の対象者数、重症度、今後の開発の可能性、問題ないように思いますが、よろしいですか。
それでは、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 次に、議題12に移ります。議題12について事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題12、資料12-1及び12-2、「細胞培養全粒子プロトタイプワクチンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、事務局より御説明いたします。
 申請者は、武田薬品株式会社及びバクスター株式会社でございます。本品目は両社による共同開発品であり、両社の資料は同一のものでございますので、御説明は資料12-1を用いて説明させていただきます。資料12-1の事前評価報告書に基づき説明させていただきます。
 まず「対象者数」ですが、いわゆるパンデミック用ワクチンについては、承認が与えられたとした場合において、使用することが見込まれる者としており、本邦においては、現在までに症状を伴うH5亜型、H7亜型等の新型インフルエンザの感染例は報告されておらず、現時点で使用が見込まれる者はいない状況でして、希少疾病用医薬品の指定基準の5万人未満を満たしています。
 次に「医療上の必要性」についてですが、H5N1亜型インフルエンザでは、多臓器不全に至ることもあるなど、重篤な症状を引き起こすものでして、世界各地でH5N1亜型、H5N2亜型の鳥インフルエンザの発生や、H7亜型インフルエンザウイルスの感染例も認められている状況を考えますと、様々な亜型のインフルエンザウイルスによるパンデミックに対する対策が求められているという状況です。したがいまして、こういったプロトタイプワクチンについて、本邦において承認はされていないという状況ですので、医療上の必要性は高いと考えております。
 続いて、「開発の可能性」についてです。本剤は欧州において、2008年3月に承認されています。また、国内においては□□□□□試験が実施されておりまして、開発の可能性はあると考えています。
 以上3点より、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○濱口委員 添付資料15ページに製造工程の説明があって、□□をつくってくるところが、バクスター社との共同ということなのでしょうが、□□□でつくられると、その後□□□□□□でまた手が加えられるというような工程ですね。このワクチンはプロトタイプワクチンという形で、とりあえずはこういうモデルをつくっておいて、必要時にパンデミックを起こす病原体に対するワクチンをすぐにつくるという状況だろうと思います。しかし、そうしたときに、武田薬品工業が、□□で□□をつくってという状況は、現実的に大丈夫なのかというのが、心配なのです。バクスター社は自分のところの□□□でやるということなので、問題はないのですが、武田の開発の可能性として、将来にわたっても□□で□□をつくる予定でこれを出してきているのかどうかを、教えていただきたいと思います。
○事務局 武田薬品株式会社の共同開発ということで、まだ申請前ですが、武田薬品としては□□における製造も視野に入れて開発を進めているところです。現時点においては、バクスターの□□□□の□□を用いると説明されていますが、厚生労働省の健康局の基金事業の関係もあり、□□での製造も視野に入れた開発を進めていると聞いています。
○吉田部会長 要するに、□□でつくりたいという目的があるということですね。
庵原先生、何かコメントはございますか。
○庵原委員 私の記憶では、バクスターはヨーロッパでは承認が出ているのですが、□□□□ではまだ承認が出ていないのです。そこだけ引っかかります。ただ、バクスターはヨーロッパ医薬品庁のインフルエンザワクチンの基準は満たしていますので、日本へ技術がうまく導入されればいいだろうということは予測されています。
○吉田部会長 そのようです。ほかに御意見ございますか。
よろしければ、議決に入ります。お諮りします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
 御意見がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは、報告事項についての説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題1、資料13-1、「医療用医薬品の承認条件の解除について」、まず、メタストロンについて、事務局より御説明いたします。
 2ページのメタストロン注は、平成19年7月31日に「固形癌患者における骨シンチグラフィで陽性像を呈する骨転移部位の疼痛緩和」の効能・効果で承認されており、その際、全例調査の承認条件が付されております。今般、この承認条件に関して、ジーイーヘルスケアリミテッドよりデータが提出され、機構における審査が終わりましたので、御報告いたします。
 3ページ上の調査結果の概要ですが、本剤の特定使用成績調査については、目標解析症例数は400例、観察期間は投与後12か月間とされ、平成20年9月5日までに登録された400例の情報を基に調査結果がまとめられております。
 安全性については4ページから記載しておりますが、副作用が発現した症例が45.3%、12.8%で重篤な副作用が認められております。骨髄抑制の発現及び回復期間は5ページ上の表のとおりで、重点調査項目とされた二次性悪性腫瘍の発現は認められませんでした。また、反復投与により新たに発現した副作用はなく、副作用の発現もほとんど認められませんでした。
 以上、添付文書で更なる注意喚起を要するような問題となる状況は認められておりません。
 本調査結果を踏まえた適正使用に係る情報提供も適時行われており、承認条件の内容については確認できたものと判断しております。報告は以上です。
○事務局 続きまして、報告事項議題1、資料13-2、「医療用医薬品の承認条件の解除について」の二つ目について、事務局より御説明いたします。資料13-2「承認条件に係る審査報告書」を御覧ください。
 2ページ中程の「I.レミケード点滴静注用100」は、平成22年4月16日に「既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎」の効能・効果で承認されており、その際、記載のような、全例調査の承認条件が付されています。今般、この承認条件に関して、田辺三菱製薬株式会社より特定使用成績調査の結果が提出され、機構における審査が終わりましたので、御報告します。
 3ページ上方を御覧ください。実施された調査の概要ですが、評価期間は6か月間とされ、平成22年4月16日~平成22年12月1日までに本剤の投与が開始された症例のうち、データカットオフ時点までに調査票が収集された146例について集計・解析が行われ、調査結果がまとめられております。
 安全性について、6ページ下段を御覧ください。安全性解析対象症例における副作用発現率は28.5%であり、承認時までの国内第III相臨床試験で認められた副作用発現率87.9%と比較して、高くなる傾向は認められませんでした。また、副作用の種類に大きな相違は見られませんでした。
有効性について、12ページ上から2行目の段落を御覧ください。有効性解析対象症例139例のうち、全般改善度判定不能の4例を除いた135例の最終評価時点の全般改善度は91.1%でした。また、中程の段落において、BASDAIスコアの改善率について検討がなされており、本調査における改善率は、国内臨床試験の成績より低かったものの、国内外臨床試験における改善率の範囲内であり、特に問題はないと考える旨、承認取得者は説明しております。
 以上を踏まえ、13ページ「III.総合評価」でございますが、本剤の安全性及び有効性について大きな問題はないと判断され、承認条件の内容については確認できたものと判断されています。
 続きまして、報告事項議題2、資料14、「希少疾病用医薬品の指定の解除について」、事務局より御説明いたします。資料14を御覧ください。
 届出者は、ヴィーブヘルスケア株式会社、医薬品の名称は「メシル酸デラビルジン」、販売名は「レスクリプター錠200mg」です。別紙の1ページ「2.」ですが、本剤は、平成11年12月、「HIV-1感染症」を「予定される効能又は効果」として希少疾病用医薬品に指定されました。
 本剤は「HIV-1の感染症」の効能・効果で、平成12年2月に承認を受けましたが、抗HIV治療ガイドラインで使用が推奨されておらず、平成19年以降、本邦にて使用患者が存在しなかったことから、今般、届出者は、本剤の医療上の存在意義がないと判断し、本剤の製造販売の中止を決定し、「希少疾病用医薬品製造販売中止届書」が提出されたものです。よって、本剤の本効能・効果に係る希少疾病用医薬品の指定を取り消すこととしました。
○事務局 報告事項議題3、資料15「優先審査指定品目の審査結果について」、事務局より御説明いたします。
今回、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」を予定効能・効果とするスチバーガ錠40mg、成分名レゴラフェニブ水和物について、製造販売承認申請とともに、優先審査指定申請が提出され、優先審査品目に指定しましたので御報告します。
 資料の2ページに、優先審査の取扱いについて概要を示していますが、優先審査品目に指定するか否かについては、適応疾病の重篤性及び医療上の有用性を総合的に評価して判断することとしています。
 資料8ページを御覧ください。「(1)適応疾病の重篤性」については、申請された「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」は、生命に重大な影響がある疾患に該当すると考えています。続いて、「(2)医療上の有用性」については、「進行・再発の結腸・直腸癌」に対して、フッ化ピリミジン等の既存治療薬はありますが、標準化学療法無効例に対する有効な治療法はないとされています。また、これら標準化学療法施行後に病勢進行が認められた患者に対する国際共同プラセボ対照試験において、本剤は全生存期間の有意な延長が認められております。安全性についても忍容可能と考えており、本薬の医療上の有用性は高いと判断しております。
 以上より、本申請は優先審査とすることとしました。なお、当該申請にかかる審査を経た後、本部会で御審議いただくこととなりますので、よろしくお願いします。
○吉田部会長 ありがとうございました。医療用医薬品の承認条件の解除が2件、希少疾病用医薬品の指定の解除が1件、優先審査指定品目の審査結果が1件となっております。委員の先生方から御質問等ありましたら、お願いします。
特によろしいですか。それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告がありますか。
○事務局 次回の部会は、10月31日(水)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いします。
○吉田部会長 それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。御苦労様でした。


(了)

備考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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