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薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会議事録(2012年11月7日)
2012年11月7日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会議事録
○日時
平成24年11月7日(水)
10:00~
○場所
厚生労働省 専用第14会議室
○出席者
出席委員(14名) 五十音順
○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 石 井 明 子、 今 井 聡 美、 |
◎笠 貫 宏、 正 田 良 介、 高 橋 好 文、 武 谷 雄 二、 |
田 島 優 子、 千 葉 敏 雄、 中 谷 武 嗣、 菱 田 和 己、 |
欠席委員(9名) 五十音順
川 上 正 舒、 木 村 剛、 倉 根 一 郎、 齋 藤 知 行、 |
塩 川 芳 昭、 鈴 木 邦 彦、 寺 崎 浩 子、 西 田 幸 二 |
行政機関出席者
梅 澤 明 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長) |
山 本 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役) |
中 野 惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) |
○議事
○医療機器審査管理室長 定刻となりましたので、ただ今から「医療機器・体外診断薬部会」を開会いたします。委員の先生方におかれましては、御多忙の中、御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、14名の御出席をいただいておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
まず、医薬品医療機器総合機構に人事異動がありましたので、御紹介いたします。山本上席審議役です。中野審議役は本日欠席です。吉田審査マネジメント部長です。坂本再生医療製品等審査部長です。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、本日の議題の公開、非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、議題1~3については会議を公開で行い、議題4以降については医療機器の承認審査に関する議題であり、企業情報に関する内容等が含まれるため、非公開といたします。
それでは、これより議事に入りますので、傍聴の方によるカメラ撮りはここまでといたします。御協力のほど、よろしくお願いいたします。以後の進行については、笠貫部会長にお願いいたします。
○笠貫部会長 おはようございます。まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 まず公開案件ですが、資料1「医療機器の承認基準案について」、資料2-1「医療機器の認証基準案について」、資料2-2「医療機器の認証基準案に係る基本要件適合性チェックリスト案について」、資料3-1「次世代医療機器評価指標について」、資料3-2「整形外科用カスタムメイド人工膝関節に関する評価指標案」、資料3-3「RNAプロファイリングに基づく診断装置の評価指標案」、参考資料1「医療機器の承認基準に関する基本的考え方について」、参考資料2-1「医療機器の認証基準に関する基本的考え方について」、参考資料2-2「認証基準において引用するJIS」です。
非公開案件として、資料4「医療機器『植込み型補助人工心臓HeartMateII』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料5「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(単回使用陰圧創傷治療システム)(諮問書)」、資料6-1「医療機器『アダカラム』の再審査報告について」、資料6-2「医療機器『ノバコア左室補助人工心臓システム』の再審査報告について」、資料7「医療機器・体外診断薬部会報告品目」、資料8「競合品目・競合企業リスト」、参考資料3「薬事分科会審議参加規程」、参考資料4「クラス分類ルール」です。不足等ございましたら、事務局までお申し出ください。
○笠貫部会長 資料はお揃いでしょうか。よろしければ、これより議題1に入ります。議題1「医療機器の承認基準案について」、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項議題1、医療機器の承認基準案について事務局より御説明いたします。資料1、参考資料1、当日配布資料1を御用意ください。まず、参考資料1について御説明いたします。「承認基準」とは、その基準への適合性を確認することにより承認審査を行う医療機器等に関する基準として、原則、国際基準等からなり、臨床試験成績に関する資料の添付が不要の範囲の品目について定められております。これは統一的な技術要件を定めているものでして、基準への適合性が客観的に判断できるような記載となっております。承認基準の構成としては、対象となる医療機器が一般的名称で指定される適用範囲、性能、機能、有効性に関する項目等が定められている技術基準、そして基準の対象が限定された使用目的、効能・効果からなっております。また、薬事法第41条第3項の規定により、厚生労働大臣が定める医療機器の基準に定める基本要件の適合性が、各規定ごとにチェックリストとして作成されております。
続きまして、資料1を御覧ください。本日、先生方に御報告させていただく承認基準については、すべて改正でして、「血液透析器、血液透析濾過器及び血液濾過器承認基準(案)」、他4基準の計5基準です。以上、御報告させていただきます承認基準に関しては、パブリックコメントの手続を経て、発出する予定となっております。これらの具体的な内容については、医薬品医療機器総合機構から御説明いたします。
○機構 資料1を御覧ください。今回御報告する承認基準(案)は、引用する日本工業規格の改正に伴う改正案の5件です。このうち1と2は、日本工業規格を国際規格の改正に伴い見直したものです。3~5は、日本工業規格の原則5年ごとの定期見直しに伴う日本工業規格の改正によるものです。これら5件の承認基準(案)については、適宜、日本工業規格の改正に伴う文言の見直し、技術基準の引用規格や引用基準、要求項目などの見直しを行いました。また、基本要件適合性チェックリストについても、基本要件への適用・不適用、特定文書の確認の記載項目の見直しを行いました。3と4については技術的内容の変更はありませんが、29~32ページ及び41~44ページに示したように、記載方法を旧様式から現行様式に変更しております。
また、3.「長期使用胆管用カテーテル等承認基準(案)」が対象とする一般的名称の定義修正については、当日配布資料1を御覧ください。胆管用ステントと膵臓用ステントの定義については、使用実態を踏まえて、「永久インプラント」の文言を削除し、文言などを修正しております。さらに、膵臓用ステントの定義に医療機器の使用部位の実態を反映して、膵管用であることを明示しております。資料1に戻り、5.「カテーテルイントロデューサ承認基準(案)」では、実際の審査内容を反映させ、従前の技術基準に活栓の要求事項を追加いたしました。説明は以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質問、御意見があればお願いいたします。
大変多くの内容が含まれておりますが、あらかじめ御覧いただいていたと思いますので、特に御質問がなければ、議題1は終了とさせていただきたいと思います。これはパブリックコメントを経てということですので、またそこで御検討いただけるものと思います。
次に、議題2「医療機器の認証基準案について」、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項議題2「医療機器の認証基準案について」、事務局より御説明いたします。資料2-1、2-2、参考資料2-1、2-2を御用意ください。まず、参考資料2-1について御説明いたします。認証基準につきましては平成17年の改正薬事法の施行により、第三者認証の制度を導入しております。現在、我が国には第三者認証機関が13機関ございます。厚生労働大臣が基準を定めて指定する指定管理医療機器については、第三者認証機関がその基準に基づいて適合性の確認を行い、認証する形を取っております。平成23年度では管理医療機器全体の約97%をカバーする状況にあります。裏面に医療機器のクラス分類について記載してありますので、御参考にしていただければと思います。
続きまして、資料2-1を御覧ください。本日、先生方に御報告させていただく認証基準案については、すべて改正でして、1.「血液回路補助用延長チューブ等認証基準(案)」、他7基準の計8基準です。次に、資料2-2を御覧ください。こちらは基本要件適合性チェックリストです。先ほど御説明いたしました認証基準案の改正8件に対応するものです。最後に、参考資料2-2を御覧ください。こちらは今回御報告いたします認証基準において引用する日本工業規格です。本日御報告させていただく基準に関しては、パブリックコメントを終えましてから告示として発出する予定です。これらの内容については、医薬品医療機器総合機構から御説明いたします。
○機構 まず、資料2-1を御覧ください。今回御報告する認証基準案は、告示引用する日本工業規格の改正に伴う改正案が7件、基本要件適合性チェックリストの見直しによる改正案が1件です。1は日本工業規格を国際規格の改正に伴い、見直しをしたものです。2~7は、日本工業規格の原則5年の定期見直しに伴う日本工業規格の改正によるものです。このうち、2.「気管・気管支用イントロデューサ等認証基準(案)」と、7.「一時的使用カテーテルガイドワイヤ認証基準(案)」は、日本工業規格の適用範囲が、クラスIIの医療機器からクラスIVの医療機器までを網羅するように変更されております。このため、クラスIIの医療機器を対象とした認証基準の範囲を明確にいたしました。3ページの「気管・気管支用イントロデューサ等認証基準(改正案)」の使用目的、効能又は効果を御覧ください。「ただし、中心循環系に接触又は中心循環系を経由しないものに限る。」の文言を追加しております。9ページの「一般的使用カテーテルガイドワイヤ認証基準(改正案)」も同様です。8.は基本要件適合性チェックリストによる改正案です。対象とする診断用核医学装置及び関連装置吸収補正向け密封線源は、医用電気機器ではないにもかかわらず、特定文書の確認の欄には、医用電気機器安全の通則規格が引用されておりました。このため、適切な規格を引用するように修正を行いました。
次に、資料2-2を御覧ください。資料2-2は資料2-1で説明した8件の基本要件適合性チェックリスト案です。いずれの基本要件適合性チェックリスト案についても、適宜、日本工業規格改正に伴う文言の見直し、基本要件への適用・不適用、特定文書の確認の記載項目等の見直しを行っております。説明は以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございました。ただ今の説明について、委員の先生方から御意見、御質問があればお願いいたします。
認証基準と基本要件適合性チェックリストを併せて見ていただくと、八つの件が出ておりますけれども、御意見はありますでしょうか。
これも工業規格から日本工業規格への見直し、あるいは適合の問題ですので、特にないようでしたら、議題2は終了いたします。
それでは議題3「次世代医療機器評価指標について」、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項議題3「次世代医療機器評価指標について」、事務局より御報告いたします。資料3-1、3-2、3-3を御用意ください。まず、資料3-1を御覧ください。1.「背景」ですが、平成17年度より、医療ニーズが高く実用化の可能性の高い、次世代医療機器の審査の迅速化、製品開発の効率化・円滑化を目的として検討分野を選定し、評価に当たってのポイントをまとめた次世代医療機器評価指標を作るという事業を行ってきております。今般、整形外科用骨接合材料カスタムメイド人工膝関節及びRNAプロファイリングに基づく診断装置、これら二つの評価指標の検討が終了しましたので御報告いたします。
整形外科用骨接合材料カスタムメイド人工膝関節については資料3-2、RNAプロファイリングに基づく診断装置の評価指標については資料3-3となっております。これらの検討経緯ですが、昨年度までに専門家の方々に御参加いただき、作業グループを設置し、こちらで昨年度までに作成していただいた原案を基に、既にパブリックコメントを実施しております。そこで寄せられたコメントを踏まえて一部修正した最終の案としておりまして、年内には通知として公表する予定で、今回報告させていただいております。資料3-1に戻りまして、2.「評価指標の内容・位置付け」ですが、次世代医療機器については個別に試験が行われました。審査が行われるという点は通常の医療機器と変わらないですが、評価に当たって着目すべき事項、ポイントをまとめた評価指標をあらかじめ作成し、お示しすることで、機器の開発段階における申請資料の収集や、さらには審査の段階が迅速化できないかといった考え方で、このような評価指標の作成を行ってきております。この評価指標というものは、議題1であったような承認基準とは違い、あくまでも技術開発の著しい次世代医療機器を対象としていることから、現時点で考えられる評価のポイントについて示した評価に当たっての道しるべという位置付けで、法令的な基準とは異なる位置付けとしております。これまでに次世代型人工心臓、DNAチップを用いる遺伝子型判定用診断薬、角膜上皮細胞シートなど14の評価指標を公表しており、これらが開発や審査、相談において既に活用されてきているところでして、今回新たに二つの評価指標を加え、16の評価指標となります。3.「その他」ですが、引き続き再生医療の網膜や、リハビリロボットのような活動機能回復装置などについて、現在検討しているところです。以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御意見、御質問があればお願いいたします。
○村上委員 人工膝関節の件ですが、関連したことを研究していることもありまして、質問させていただきたいと思います。整形外科の医師から、患者さんに合わせたモディファイをしたいといった要望をよく聞くことがあります。寸法や形態が変わることになりますが、その場合の力学的強度が劣らないというのが前提であることが明記されていますので、それでいいと思うのですが、評価の場合、実際に使うものを試験に使うと治療に使えないということで、例えば力学試験に加えて、有限要素解析などの計算結果からの評価というのも含めて対応することを考えられているのでしょうか。
○事務局 力学的強度については、カスタムメイドとなると、いろいろな形が想定されますので、特に一番弱い形の場合について、ある程度実験のようなことが必要になるだろうと思います。ただ、当然のことながら、すべての形について破壊するような試験は必要ないだろうという議論がありました。有限要素解析については、アメリカなどの状況ですと、シミュレーションの精度がどの程度正しいかというのが必ずしも確立していない状況もありますので、一番弱い形を特定するときに使われることは認められておりますが、シミュレーションだけの結果で実際の試験を不要とするところまでは、世界的にもまだコンセンサスが取れていないと認識しております。
○村上委員 ありがとうございました。
○千葉委員 資料3-3のRNAプロファイリングの話ですけれども、これを使う話と、例えば妊婦さんの血液からお腹の赤ちゃんのDNAの異常を調べる検査というのとの境界といった辺りは、今、厚生労働省でどのように考えているか。これに関してはまだ議論があるという印象を持っておりますが、癌細胞だけではなくて、妊婦さんに使えば、それは血液中の胎児のDNAにそのまま直結するという印象もあります。その辺の将来への方向性といいますか、現在の評価基準から将来の方向性に結び付く可能性に関してどのようにお考えか、お教えいただければと思います。
○事務局 評価指標は昨年度までに作成しておりますが、パブリックコメントの段階でもそういった意見はなかったので具体的な議論はされておりませんが、仮に開発の相談や申請があった場合には、使用される方の条件などといったものと、それ以外の社会的影響も含めて議論をしていくことになるだろうと思います。ただ、この評価指標の中では、はっきりした議論や検討はまだ行っていないです。
○千葉委員 例えばこの領域に限らず、海外も含めた特許との問題といった辺りは検討課題に入っているのでしょうか。
○笠貫部会長 聞き取れなかったようですので、もう一度お願いいたします。
○千葉委員 この領域も含めてですが、新しいニーズの高いものをやっていくときには、当然、国内外の特許と抵触するか、しないか、そういった話も出てくると思いますけれども、それをこの評価指標の中ではどのように位置付けているのか、そのお考えをお教えいただけますでしょうか。
○事務局 御質問は妊婦の検査のことでしょうか。
○千葉委員 いいえ、特許の件です。最初は妊婦でしたが、次は特許の話と考えてください。
○事務局 特許については、海外で既に癌の診断などが行われておりまして、そういった場合は特許もあるでしょうし、一方で、国内でも開発に取り組んでいる先生方、企業の方がいらっしゃいますので、それぞれ特許の守れる範囲で代替技術を開発するなどされていくのだろうという前提で、特許についてはあまり深い議論をしておりませんでした。
○千葉委員 そうすると、これからの可能性として、海外、国内で特許がどこまで取得されているか、あるいは申請されているかどうかの評価といいますか、検討は、ニーズの高い機器をこれから申請していく側の責任であって、それはやってくださいという方向になるのでしょうか。
○事務局 特許法上の問題がないかというところは、医療機器に限らず、医薬品も含めて申請者がある程度解決してくるという前提で制度を運営しております。
○笠貫部会長 よろしいですか。そのほか何かあればお願いいたします。
今までに評価指標が14できていたということですが、診断装置と治療機器で、書き方は違うと思いますが、あるフォーマットができているとか、そのようなことはあるのでしょうか。例えば、RNAのプロファイリングの診断装置では倫理面の配慮が書いてあるのですが、何に特殊性があるのか、整形外科用はどうなのかといったことで、それぞれ特殊性はあったとしても、書き方などは整合性を持っていてもいいかと思ったのですけれども、いかがでしょうか。
○事務局 検討の段階で、医療や工学的分野の専門の先生方など、いろいろな専門家の方に入っていただいて、まずは様々な論点で、こういうところを見ないといけないというところを幅広く挙げていただいて、それを事務局、国立衛研と医療機器審査管理室、医薬品医療機器総合機構も協力して、ある程度まとまった、似たフォーマットに合わせていく形で作成しております。一方で、様々な医療機器、例えばカスタムメイドの人工関節とそれ以外のものとでは考え方も違うので、必ずしも決まったフォーマットに当てはめてやっているわけではないため、多少のばらつきは出ておりますが、同じようなものについては同じような形になるように気を付けて作成しております。倫理面については、特にRNAプロファイリングに基づく診断装置の場合については、レトロスペクティブに既にあるデータを活用する場合のことなども議論になりまして、その関係で新たにデータを取得する場合と既存のものを使用する場合の個人情報の保護などの議論もあって、倫理面の配慮という項目を盛り込んだというのが議論の経緯です。
○笠貫部会長 分かりました。倫理面の配慮というだけでは、そこが窺いしにくいと思ったものですからお聞きしたのですが、理解いたしました。それ以外には何かありませんでしょうか。
○荒川委員 資料3-2の人工膝関節の件です。長期に使用するものですので、耐久性という点では当然のことですけれども、整形外科医の話ですと、摩耗粉でかなり炎症を起こして骨破壊に結び付くということですので、今後はそういった側面からの検討も可能な限りしていただければと思います。
○事務局 現在、特に金属性のインプラント製品について摩耗の問題が諸外国で議論になっていて、それが一部ヨーロッパの規制改正、規制強化の流れにもつながっているという現状もありますので、それらについては別途レジストリーといったものの取組みが諸外国で検討されているということです。当然のことながら、カスタムメイドに属するようなものについても、そういった点について審査や開発段階で注意をしていくということだと思います。
○笠貫部会長 よろしいですか。評価指標が道しるべということで伺いましたが、このように技術開発が著しく速いものは、評価指標が出たあとに、また新しい様々な知見が入ってくることはあり得ると思います。そうした場合の、改訂は、どのような形で、スピード感をもって、どういう手順を踏んでやるのでしょうか。
○事務局 改正についても順次していくということでこれまでも話はしておりますが、一方で新たなものが出てくるので、新規のものを作る方を優先した方がいいのかというのも難しいバランスのところで、今までのところ改正の方にはまだ着手していません。例えば今回報告しているRNAプロファイリングですと、以前は原理的には、先に開発されているようなDNAチップを用いた遺伝子型判定用診断薬を対象にしておりましたが、改正ではないのですが、少しアップグレードしたようなものを取り組んできているということです。人工関節についても、比較的やりやすい整形外科用の骨接合材料から始めて、より複雑な人工股関節、人工膝関節とレベルアップしておりますので、そういった形でもシリーズ化、改正に近いような充実化を図ってきているところです。
○笠貫部会長 ありがとうございます。そのほか何かあればお願いいたします。
改正からアップグレードまで、イノベーションに対応される評価指標を作っていただいているというお話でした。特に御意見がないようでしたら、以上で議題3は終了いたします。公開で行う議題は以上です。
○医療機器審査管理室長 ありがとうございました。以後の議題は非公開とさせていただきますので、傍聴の皆様方は御退席のほど、よろしくお願いいたします。非公開で行う議題4以降につきましては、傍聴の皆様の御退席が終了後に開始いたします。
○医療機器審査管理室長 それでは準備が整いましたので、「医療機器・体外診断薬部会」を再開いたします。改めまして、非公開議題に係る配付資料の確認をいたします。資料4「医療機器『植込み型補助人工心臓HeartMateII』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」、資料5「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(単回使用陰圧創傷治療システム)(諮問書)」、資料6-1「医療機器『アダカラム』の再審査報告について」、資料6-2「医療機器『ノバコア左室補助人工心臓システム』の再審査報告について」、資料7「医療機器・体外診断薬部会報告品目」、資料8「競合品目・競合企業リスト」、参考資料3「薬事分科会審議参加規程」、参考資料4「クラス分類ルール」です。以上です。
○笠貫部会長 資料はお揃いでしょうか。それでは、これより非公開で行う議題に入ります。まず、本日の審議事項に関与された委員の方と利益相反に関する申出状況について、事務局から報告をお願いいたします。
○事務局 本日の審議事項に関する影響企業について、委員の皆様から寄付金・契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、薬事分科会審議参加規程第12条「審議不参加の基準」、又は第13条「議決不参加の基準」に基づき、御退室いただく委員は、議題4について中谷委員となっております。議決に御参加いただけない委員はおりません。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 ただ今の報告について、特段の御意見があればお願いいたします。
ないようですので、中谷委員におかれましては、御退室となります。
──
中谷委員退室
──
○笠貫部会長 それでは、議題に入ります。議題4「医療機器『植込み型補助人工心臓HeartMateII』の製造販売承認の可否等について」、審議を行います。中谷委員におかれましては、別室で待機いただくこととしております。本議題の審議に当たりましては、参考人として、千葉大学大学院医学研究院心臓血管外科学教授の松宮護郎先生にお願いしております。よろしくお願いいたします。
それでは審議品目の概要について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 議題4について、事務局から御説明いたします。議題に関する資料4は、別刷りの厚いものとなっています。審査報告書というタグをおめくりください。1ページ、一般的名称は植込み型補助人工心臓システム、販売名は植込み型補助人工心臓HeartMateII、申請者はThoratec
Corporationです。審査報告書5ページを御覧ください。図1~3に、本品のシステム構成図、血液ポンプ外観及び血液ポンプ断面図が示されています。
審査報告書7ページ、表1に、国内で使用可能な植込み型補助人工心臓との比較が示されています。本品は、国内で初めて軸流型ポンプを用いた植込み型補助人工心臓で、従来の製品と比較して、軽量、小型でありながら駆出量は同等となっています。
本品の使用目的について、審査報告書3ページ中程を御覧ください。本品は、心臓移植適応の重症心不全患者で、薬物療法や体外式補助人工心臓などの補助循環法によっても継続した代償不全に陥っており、かつ、心臓移植以外には救命が困難と考えられる症例に対して、心臓移植までの循環改善に使用される、となっています。また、その下に3項目の承認条件を記載しています。詳細については、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。お願いいたします。
○機構 議題4、資料4「医療機器『植込み型補助人工心臓HeartMateII』の製造販売承認の可否等について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。お手元にある資料4の諮問書の下に、本日配付した3枚の紙があります。1枚目が審査報告書の正誤表、2枚目が審査に当たり御意見をいただきました専門協議委員、3枚目が最新の添付文書案です。
事前に配付した審査報告書に修正がありましたので、正誤表にて修正いたします。お詫び申し上げます。続いて、本品目の審査に当たり、お示しする2名の専門委員に御意見をいただきました。また、添付文書案の修正ですが、資料送付に間に合いませんでしたので、この場でお配りいたします。お詫び申し上げます。
本品目の概要について御説明いたします。審査報告書4~5ページを御覧ください。本品は、Thoratec
Corporationにより申請された植込み型補助人工心臓です。図1、2にお示ししておりますように、体内に血液ポンプを植え込み、経皮ドライブラインというものによって体外にケーブルを通し、システムコントローラに接続し、制御と電源供給を行います。内部構造を図3にお示しします。インペラと呼ばれる回転子に磁石が取り付けられており、周囲のコイルに電流を流すことによってモーターの原理で回転させて血液を送ります。
本品の特徴を御説明いたします。審査報告書6ページから御覧ください。本品は本邦初の軸流型の補助人工心臓です。図4にお示しするように、血液の流入方向と流出方向が同じ方向を向いています。一方、本邦で承認され現在も使用されている補助人工心臓は2種類ありますが、いずれも遠心型のものであり、血液の流入方向と流出方向が異なります。表1に比較がありますが、軸流型のものである本品は、ほかの2品目より軽量で回転数が大きいという性質がありますが、駆出量は同等です。
外国における使用状況を御説明いたします。本品は、米国、EU等世界各国で承認されており、今年3月末時点で1万台以上出荷されております。外国において改修、改善等を行う必要が生じた不具合について、表4にお示しいたします。2.については現在使用されていない構成品ですので、説明は割愛いたします。1.経皮ドライブラインの改良、3.コネクタの不具合については、改良の妥当性を示す試験成績が提出され、対策は十分であると判断いたしました。4.については、審査報告書9ページ〈ベンドリリーフ付き送血グラフトにおけるベンドリリーフ部の不具合〉においてお示ししておりますとおり、SOBRカラーという固定具を取り付け、縫合糸で結紮することによりベンドリリーフを固定することとしました。機構は、固定具を使用することによりリスク低減可能であると判断いたしましたが、長期間の成績、臨床使用の実績がないことから、市販後に慎重に観察し、必要に応じて更なるリスク低減措置を行うことを指示いたしました。
非臨床試験成績について御説明いたします。審査報告書10ページから御覧ください。安定性及び耐久性に関する資料として、先に御説明した不具合対策が適切に行われたことを示す資料を追加で提出させ、審査いたしました。そのほかの性能に関する資料については、審査の結果、非臨床試験で確認できる範囲においては、植込み型補助人工心臓としての有効性及び安全性は確認できたと判断しました。
臨床試験成績に関して御説明いたします。審査報告書15ページから御覧ください。米国のBTTピボタル試験について御説明いたします。BTTとはBridge-to-Transplantのことで、心臓移植までの橋渡しという意味です。本試験は、米国32施設で実施された非無作為化前向き試験で、末期心不全で心臓移植を待つ患者を対象に行われました。当初133例が登録されましたが、米国FDAの指示により被験者を追加することとなり、最終的には279例が登録されました。解析には当初予定されていた133例のほか、できるだけ多くの患者を組み入れるため、2007年3月までに観察終了した194例が解析対象とされました。主要評価項目は、被験者が心臓移植まで生存すること、又は、UNOSというアメリカの臓器移植ネットワークの心臓移植待機リストに登録されたまま180日生存することを成功と定義し、75%を基準としていました。しかし、結果は66.5%で基準を下回りました。申請者は、心臓移植の希望をやめた被験者や感染症等により一時的に待機リストから外れた患者が不成功とされてしまったことから、主要評価項目の定義が適切ではなかったと判断し定義を変更して解析しました。その結果、成功率は75.8%となり、基準を上回ったと説明しました。主要評価項目の定義変更については、審査報告書25ページからの〈機構における審査の概略〉の1.として、照会・回答及び機構の判断を記載しております。
審査報告書31ページを御覧ください。1.についてですが、機構は、主要評価項目の成功の定義を変更して評価することは、本品の有効性を過大評価する可能性があることから適切ではないと考えます。しかし、変更前の定義では、一時的な離脱も不成功とされていたこと、既に承認された補助人工心臓では、180日目における移植待機リストへの登録は成功の定義とされていなかったことも踏まえると、変更後の成功の定義は、当初設定されるものであって、その内容は必ずしも否定するものではないと考え、変更することは妥当であると判断いたしました。
副次評価項目については、審査報告書17ページから御覧ください。有害事象、故障/不具合等について評価され、ほかの人工心臓と比較して出血が多いこと、消化管出血が報告されていること、溶血が観察されていることなどが異なりますが、疾病の重篤性と本品の有効性を踏まえると、本品を臨床現場に提供することは十分に意義があると判断いたしました。ただし、出血については、補助人工心臓の管理において重要な抗凝固・抗血小板療法について適切な方法を調査し、必要に応じて推奨する方法を変更することを申請者に指示することとしました。そのほかの有害事象については、医師に情報提供することとしました。
次に、国内治験及び国内継続治験について御説明いたします。審査報告書21ページを御覧ください。本試験は国内5施設で実施された非盲検試験で、心臓移植適応基準に準じる末期重症心不全の患者を対象として6例が登録されました。観察期間6か月時点で補助を継続していた患者は、継続治験に登録することとされておりました。
有効性の主要評価項目は、「心臓移植まで生存、心機能の回復により離脱するまで生存又は不可逆的な心臓移植禁忌状態にならず6カ月間補助を継続した被験者の割合」であり、結果は100%で、6例全例が補助を継続していました。副次評価項目については、特に問題がありませんでした。安全性の評価項目は有害事象等であり、重篤な有害事象が1件発生しましたが、回復しており、そのほかに特に問題がないと判断しました。継続治験では、今年9月14日の時点で2例が心臓移植に達し、4例が補助を継続していると報告されました。なお、資料にはありませんが、10月に1例が追加で心臓移植を受けたという報告を受けております。継続治験においては、二つのバッテリを同時に外し、ポンプが停止する事象が1件報告されました。審査報告書34ページを御覧ください。機構は34ページの7.にこの問題について取り上げており、二つのバッテリを同時に外しポンプが停止するという事象については、健康被害が発生していないこと、本品についてバッテリが外れにくい構造であることを踏まえると、リスクは許容できないとまでは言えないと考えております。ただし、更なるリスク低減措置を行うことを指示することといたしました。
以上の非臨床試験及び臨床試験成績を踏まえ、本品の審査における主な論点について御説明いたします。審査報告書37ページ、5.総合評価を御覧ください。一つ目の論点は、本品の臨床上の有効性及び安全性です。米国BTTピボタル試験の主要評価項目である180日間の生存又は補助成功率は75.8%であり、本品の補助人工心臓としての有効性が既承認品と比較して大きく劣ることはないと機構は判断いたしました。安全性については、有害事象は出血を除いて、他の人工心臓で観察された有害事象の発生傾向と大きく変わらないことが示されました。出血事象については米国BTTピボタル試験で多く見られましたが、審査をした結果、原因は特定できませんでした。しかし、大半は臨床的に対応可能な出血であり、出血を原因として死亡した症例は死亡41例中2例であるものの、本品の適応となる疾患の重篤性を考慮すると、本品を臨床現場に提供することは十分に意義があると考えております。ただし、血栓性の有害事象が増えない範囲で出血は少ないほうが望ましいと考えることから、出血に関する更なるリスク低減措置は必要であると考えており、情報を収集した結果、海外の市販後は出血症状を呈している患者は減少傾向にあるという文献報告があること、米国BTTピボタル試験の後に行われた国内治験では、6例という少数例のデータではありますが、出血や血栓事象は観察されていないことから、国内外の情報を収集して、推奨する抗凝固・抗血小板療法を必要に応じて変更することを指示事項1として指示することとしました。
二つ目の論点は、市販後の安全対策です。既に国内で承認された補助人工心臓の使用成績も踏まえますと、植込み型補助人工心臓については、疾患の重篤性のみならず、医療機器の特性から有害事象の発生は避けられないと考えます。また、本品は本邦初の軸流型補助人工心臓であり、軸流型であるために生じた可能性がある消化管出血、溶血が報告されています。本品を有効、かつ、安全に使用していくためには、市販後に生じた不具合、有害事象に対する適切な対応により健康被害を最低限に留めることが重要であると考えております。したがいまして、不具合に対する迅速な対応が図られることや、本品について十分に理解した医師により、実施体制が整った医療機関において使用されることが重要と考え、本品について十分に理解した医師により実施対制の整った医療機関で使用されるように必要な措置を講ずるべき旨を、承認条件1として課すことが妥当であると判断しました。また、2012年2月に発生したベンドリリーフ外れの対策については、注意喚起をするとともに、外れを防止するための固定具を追加することとしましたが、長期間の耐久性を示すデータ、臨床使用された実績がないことから、当該事象の発生状況について情報収集を行い、定期的に報告し、必要に応じて更なるリスク低減措置を行うことを指示することが妥当と判断し、指示事項2とすることを妥当と判断しました。さらに、本品は、両方の電源を同時に外すことによるポンプ停止、それに伴う患者死亡のリスクがあると考えておりますので、患者に対して両電源外しが死亡に直結することを講習で定期的に徹底するとともに、電源が途絶するリスクの低減措置を検討し、必要に応じて仕様の変更を含めたリスク低減措置を行うことを指示事項3とすることが妥当と判断しました。
三つ目の論点は、長期使用時の有効性及び安全性の確保です。日本では心臓移植までの待機期間がアメリカ等に比べて長いという現状を踏まえると、本品による補助期間が長期化することが懸念されます。本品については、非臨床試験で2年の耐久性が確認されていること、海外においては長期間の補助の実績は十分にあることから、心臓移植まで本品を使用することで、本邦においても心臓移植の可能性を高めることが期待できると判断いたしました。しかしながら、本邦での本品の長期成績は十分に得られていないこと、本邦初の軸流型補助人工心臓であることから、本品を使用する症例全例の使用成績調査を行い、長期予後を観察することを承認条件2として課すこととしました。それに加え、本品は医療機関外での使用が想定される医療機器であることから、在宅プログラムにおける医療従事者、患者及びその介護者に対する講習等を徹底し、十分な支援体制を取ることを承認条件3として課すこととしました。
以上の審査を踏まえ、総合機構は本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年、生物由来製品に該当し、特定生物由来製品への指定は不要とすることが妥当と判断しております。なお、薬事分科会へは報告を予定しております。
最後に、事前に笠貫委員、川上委員から御意見、御質問をいただいておりますので、御紹介いたします。川上委員は本日御欠席ですので後程御説明いたします。笠貫委員からは、4点御質問をいただいております。
1点目は、米国試験の出血関連有害事象のうち消化管出血の割合について御質問がありました。消化管出血と断定されているものは、件数で申しますと253件中33件(13%)という結果が出ております。ただし、出血部位が不明とされている症例も50件以上あり、正確には分かりません。
2点目は、抗凝固・抗血小板療法が、これまでに承認されているものと同等かという御質問です。添付文書等で推奨されている抗凝固・抗血小板療法については、まず手術直後にヘパリンを使用し、その後ワルファリンとアスピリンの投与を開始する点では同じです。しかし、ワルファリン、アスピリンの投与開始時期、量、併用薬剤が若干異なります。ワルファリンについてはINRで比較すると、本品は添付文書上では2.0~3.0、DuraHeartでは2.0~3.0、EVAHEARTでは2.5~3.5で管理することとされております。ただし、治験時には本品についてはその方法が遵守されておらず、その時点での医学的治験に基づく現場の判断で、最善と判断されたものが行われたと考えられるので、実際のところ同等か非同等か確認することはできません。
3点目は、米国ピボタル試験の長期フォローによって出血関連有害事象の割合はどのように推移しているかということ、その出血関連の有害事象の原因は、手術に起因する割合、抗凝固・抗血小板療法に起因する割合の内訳について、DuraHeart、EVAHEARTよりも出血傾向が強く出ている懸念点、DuraHeart、EVAHEARTと比べて出血傾向が強い場合に、出血関連有害事象を添付文書の警告欄に記載することも検討するように、ということで御意見をいただいております。長期のフォローの結果ですが、市販後調査においては、市販後調査169例中83例(49%)で出血が観察されており、ピボタル試験の66%と比較すると、単純な数値では僅かに少ないと報告されております。また、審査報告書の引用文献9によると、1,496例の調査を行った結果、再手術の必要があった出血については、臨床試験の結果21%と比較して、7%に減ったという報告もあります。手術に起因する割合等については、機構の審査の過程において、術後7日以内の出血と7日以降の出血に分けて、出血部位等についても詳細なデータを提出させて確認し、7日以内の出血が117例、7日以降の出血が71例と報告されております。手術自体に起因するものか、それとも手術直後のヘパリンによるものかなど、データの詳細を確認しておりましたが原因を特定することはできませんでした。出血傾向が既に承認されているものよりも強いことへの懸念ですが、DuraHeart、EVAHEARTについては症例数がかなり少ないことがあり、本品は1万例以上使われている結果ということもあることと、使用されている国が異なることもありますので、必ずしも出血傾向が多いということを判断できるほどの根拠はないというのが実態です。また、出血関連有害事象を警告欄で特に注意喚起することについては、適切に使用されたとしても、致死的又は極めて重篤、かつ、不可逆的な有害事象が発現する場合とされており、出血による死亡は米国試験においては2例ありますが、生存率の観点では、ほかの原因、ほかの機器と比較して明らかに多いとも言えないため、今のところ警告欄に記載することは考えておりません。その点については、御意見をいただければと思います。
4点目は、米国でDT(Destination
Therapy)の適応を受けた際のデータセット、新生児の資料の件について御質問いただいております。米国ではDTを使用目的とした臨床試験をBTT試験とは別に行っており、その結果DTの適応を取得しております。BTTとDTは患者の選択基準が異なり、DTの場合には、糖尿病、肝不全、腎不全等で心移植待機リストに登録できない患者が登録されております。これまで日本における補助人工心臓は、心臓移植対象の患者に使用するものとして治験が行われて評価がされました。心臓移植対象でない患者に使用するDTを考える際には、どのような患者に補助人工心臓が必要か、その有効性、安全性をどのように評価するかという点について関連学会と検討する予定です。笠貫委員からの御質問に対する機構の考えは、以上です。
川上委員からの御質問について御紹介いたします。「DuraHeart、EVAHEARTとの適応の違いはあるのでしょうか」という御質問をいただいております。機構の考えですが、適応の違いはまずありません。いずれの機器も臨床試験において心移植適応患者に使用されており、特に適応を変えなければいけないという問題はありませんでした。ただ、形状等が異なることから、臨床現場では患者ごとに使い分ける可能性はありますが、承認における適応は同じくしたいと考えております。機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは、参考人の松宮先生の方から何か加えることがありましたら、お願いします。
○松宮参考人 今お話いただいたとおりですが、日本の心臓移植の患者さんは、非常に待機期間が長く、欧米では数か月ですが、日本では2年を超えて3年近い待機期間ですので、ほとんどの患者さんはこの補助人工心臓を付けないと移植まで待機できない。これまで移植を受けられた患者さんの90%以上が、補助人工心臓を付けた患者さんであったという統計があります。ですから、この補助人工心臓は非常に重症心不全患者さんにとって重要なのですが、これまで認可されているデバイスもあるのですが、このデバイスはそれらに比べると、より小型にできます。遠心ポンプと軸流ポンプの違いは、6ページにありますが構造的に違います。軸流ポンプは、より小さくできる代わりに、回転数を高くする必要があるという特徴があります。ですから、日本では体格の小さい方が比較的多いので、体格の面で、これまでのデバイスが使えない患者さんもいらっしゃったわけです。そういう意味で、このデバイスのニーズも非常に高いのです。米国での成績は、今御報告いただいたとおりですが、既に世界中で1万例以上の方がこのデバイスを装着されています。アメリカでも、このデバイスが認可されて急激にこの補助人工心臓を付ける患者さんが増え、今は年間約2,000例の補助人工心臓の植込みが行われている状況で、ほとんどがこのデバイスです。そういう意味でも、有用性は外国では既に広く認められていると言っていいのではないかと思います。概略は以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございます。委員の先生方からの御質問、御意見をお聞きしたいと思います。
○武谷委員 2点ほどお聞きしたいのですが、耐久年数は一応2年ぐらいまでで、治験では6か月となっています。日本は、欧米と比べて心臓移植がしづらい状況がありますので、この治療を受けた方によっては、2年を超えても補助心臓に頼っていかなければならない方も増えると思います。その場合に、もう一度新しい機械と交換するのかどうかという問題と、現状でもEVAHEARTやDuraHeartを装着されている患者さんはおられると思うのですが、専門の先生から御覧になって、我が国における植込み型の補助人工心臓で問題、課題となっている点があれば教えていただきたいです。
○松宮参考人 1点目に関しては、体外での耐久性試験は数か月ですし、日本での臨床試験も6か月をエンドポイントにはしています。実際には、御指摘のように、もう2、3年の使用が必要になります。その耐久性試験を超えた部分は全部付け替えていくかというと、その手術自体も非常にリスクが高いですし、実際にこのデバイスは最長6年を超えて交換せずに使っておられる患者さんも欧米ではおられます。もちろん、耐久性試験を6年やらないと認可されないことになると大変になりますので、そこまではやっていません。しかし、実際の臨床上は2、3年は優に超えて大きな問題がないということですので、特に装置に異常がなければ交換することなくそのまま経過観察をしているのが実情だと思います。もし装置の問題が起これば、手術で付け替えることは可能です。
それから、日本での植込み型補助人工心臓は、古くは10年以上前に一度ノバコアという機械が承認されて使われかけたのですが、少し時期が遅かったということがありまして、外国の企業が製造しなくなり、使えなくなったという経緯があります。今、2種類のポンプが使われていますが、いずれも優れたポンプですが、サンメディカル社のEVAHEARTという機械は東京女子医大で開発されたもので、これも非常に優れた性能を持っています。テルモの方も遠心ポンプで、既に両方合わせると製造販売承認100例近く使われていると思います。それぞれに優れた成績を出していますが、依然として問題になるのは、やはり脳梗塞、血栓塞栓症と感染症、もう一つは装置自体の耐久性の三つが補助人工心臓治療の大きな問題点だと思います。テルモ社のDuraHeartについては、最後の装置の問題で、図を見ていただくと分かるのですが、ポンプにつながっているケーブルを体外に出して、それをバッテリにつなぐのですが、そのケーブルの中の一部が断線して装置の不具合が起こることが何例かありましたので、今それを修正中で使えない状況です。サンメディカル社のEVAHEARTについては、これが今唯一日本で使える植込み型のデバイスです。これは、非常に成績がいいのですが、やはり感染症や脳梗塞の問題はあります。ですから、全く副作用というか有害事象のないデバイスは世界中にもちろんありませんので、ある程度の頻度でそういった問題は起こります。出血も、その一つです。それは、克服すべき問題だと思います。
○笠貫部会長 ほかにいかがですか。
○村上委員 今回は、軸流型ポンプということで、コンパクト、軽量にできて、体型の小さい方にも使えるという非常に大きなメリットがあると思います。その代わりに、駆出量を確保するためには回転数を上げざるを得ないという宿命があると思います。例えば、今回の表1のデータですと、6,000rpm~15,000rpmというかなり広い範囲がありますが、できるだけ低回転の方がいいと思います。実際は、高速回転と低速回転と、普通どのような状態が使われているのでしょうか。
○松宮参考人 回転数は設定をするわけですが、必要になる回転数が、体格によりどれだけの流量が必要かとか心臓の大きさとかによります。これは左心室を補助するので、右心室は直接補助されないのですが、右心室の機能によっても回転数が変わってきたりしまして、いろいろな患者さんの要件や必要になる流量によって回転数を変える必要があります。高回転による問題、即ち溶血や先ほど少し問題になりました出血、高回転で回転していることによって血液中のある因子が壊されたり変性して出血が多いのではないかという推測も一部出ていまして、おっしゃるように、そのような合併症については回転数を下げるほどいいということになります。しかし、大柄な患者さんなどはそれでは血液の流量が十分でなく、逆に心不全症状が起こってしまう可能性もあります。その辺りは、臨床症状や、特に心臓の超音波検査や血液検査などを見ながら調節をしていくことになると思います。一般的に言いますと、手術をして、急性期にはある程度高回転でたくさんの血流を流してあげた方がいろいろな臓器機能の回復はいいのですが、ある程度安定してきますと、回転数を下げたり、あるいは一部の患者さんは、自分の心臓の機能がよくなってきて更に回転数を下げられるということもありますので、時期によっても変わってくると思います。
○村上委員 例えば、今はサイズのタイプが一つなのですが、径を少し変えて回転数を下げるような条件設定などは、将来的には可能ということで期待してよろしいのでしょうか。
○松宮参考人 この軸流ポンプについては、これ以上回転数を下げるのは難しいと思います。ロータリーポンプでもいろいろなものが出てきていますので、構造によってはもう少し回転数を下げていくことは可能だと思います。ただ、軸流ポンプ自体は高回転を前提に作られていますので、ある程度以上までは下げられるかもしれませんが、やはり高回転が必要なことは変えられないのではないかと思います。
○荒川委員 今の御質問と関連しているのですが、溶血に関しては、多分に高速回転によるシェアストレスの可能性が高いと思うのですが、不具合という考え方はないのですか。例えば、個々の埋め込んだ機器の形状等に由来するなど、もともと高速であること自身が問題であったとは思いますが。
○松宮参考人 高速であることが問題なのですが、御指摘のように手術自体で、例えば人工血管をつなぎますが、その血管が途中でねじれたり曲がったりしますと、溶血が起こりやすいのではないかと思います。図2を見ていただきますと、屈曲を予防するためにベンドリリーフが付いているのですが、それでも大動脈につながる所まで付いているわけではないので、そのような部分で屈曲したりすると溶血が起こるのではないかと思います。それから、左心室に脱血コンデュイットを入れるのですが、その方向が、手術のときはよかったのですが、徐々に心臓が小さくなってくると、ずれてきて壁に当たったりして、そこで乱流を作って溶血するなど、高回転以外の原因による溶血も起こり得ると思います。
○荒川委員 市販後の中で、溶血に関してモニタリングされると思うのですが、例えばそういったことも調査項目の中に入っているという理解でよろしいですか。
○機構 溶血については、血液検査においてヘモグロビンの量などは観察することになっていますので、その辺りは観察することは可能です。それから、原因究明については、先ほど松宮参考人より御説明がありましたが、いろいろな原因が考えられます。それについては、現場で超音波検査等をして特定していただくことになると考えています。実際に溶血が起こった症例については、添付資料概要の249ページ、右下の通し番号393ページに、溶血6例が紹介されています。一番上の植込みから0日での溶血については、手術のときに何か紛れてしまったのだと思いますが、血液ポンプ内で糸が発見されまして、ポンプ交換に至ってしまったということ、2例目については、脱血コンデュイットがねじれていたため、溶血ほか様々な症状が発生してしまい、死亡に至ってしまいました。この脱血コンデュイットのねじれを防止する改良が行われていまして、それ以降起こっていないと報告がされています。ほかの4例については、原因は特定されていませんが、回転数を下げる等の対応によって解消しています。
○荒川委員 もう1点よろしいでしょうか。かなり高速ということで音の問題なのですが、添付文書には音の問題が異常、不具合の指標とされています。実際、かなり高速なので、従来品として、患者さんがどのように感じられているかという問題に関しては、いかがでしょうか。
○松宮参考人 私は、これを付けた患者さんを診察したことはないのですが、同じ軸流型でジャービック2000という機械で高速回転を要するものがあります。それでは、普通の日常生活では全く音は感じないのですが、聴診器を当てると音が聞こえる程度ですので、患者さんもその音について何か訴えられたとことは、今まで経験したことはないです。音は、恐らく余り問題にならないと思います。
○千葉委員 体格の小さい患者さんという表現がありますが、これは子どもでも使えるという意味でしょうか。あるいは、国内外で体重何kgぐらいまでの方にも使えるだろうということは、いかがでしょうか。
○松宮参考人 治験のときも、体表面積で規定をされています。体表面積1.5以上が推奨されますが、1.3以上であれば慎重に検討した上で使っていいということです。体表面積1.3といいますと、割と小柄な女性を想定していただいたらいいと思うのですが、身長150cmぐらいで、体重が40kg前後ぐらいの方が、恐らく体表面積1.3ぐらいになるのではないかと思います。ですから、それよりも小さい方については、現時点ではまだ難しいと思います。ただ、先ほど回覧されましたポンプが体の腹壁の中に入るかどうかが一番問題ですので、必ずしも体表面積だけではなく、特にこの場合は体の横幅がある程度あれば入れることはできると思います。ですが、おっしゃるような子どもさんで、更に小さい学童等では、この植込み型はまだ依然として使用するのは難しいので、今あります体外式といってポンプが外に出るタイプの機械を付けないといけないのが現状です。海外では、子どもさん用のポンプも今開発されつつあります。
○千葉委員 もう1点、大分小型化されて、性能は落ちないということですが、将来、コストは上がるのでしょうか、それとも下がってくれるのでしょうか。
○機構 コストというのは機器の値段でしょうか。
○千葉委員 そうです。それが、結局患者さんの負担に反映されるかどうかになります。医療経済的にどのような波及効果があるのか、ないのかを教えてください。
○機構 コストについてですが、将来的にはどれだけ開発費がかかるかは分からないのが正直なところですが、本品については、海外での価格ですが、アメリカでは8万ドルで売られていると聞いています。日本における補助人工心臓の価格ですが、保険医療の材料の価格が、EVAHEART、DuraHeartにおいては決まっていまして、1,810万円とされています。この機器については、どのようになるかはまだ確定していません。
○千葉委員 つまり、小型化、軽量化したことで、現実的にはコストは上がりも下がりもしないという見通しでしょうか。
○機構 新たに小型のものを開発するとなりますと、やはりそれは小型化することによって新たな開発を行うことになりますし、小型化することによってかなり技術的に困難な部分もあることも想定されますので、開発費が上がる可能性も否定できないと思います。逆に、これまでの経験で開発費が抑えられる可能性もありますが、その辺りは分かりません。
それから、先ほどの体格の小さい患者さんについて使用できるかということですが、添付資料概要の217ページ、通し番号361ページですが、米国においては、BSA1.5未満の患者10例について観察がされました。その結果、70%の生存が得られました。しかし、先ほどの松宮先生からの御説明と、この機器のサンプルをお回ししたときに御覧いただきましたが、この機器は小型といいましても、かなり横に張り出す構造となっていて、必ずしも体の小さい患者さんに埋め込めるかというと、横の幅が体格に適合しないと埋め込めないということがあります。そのため、機構としてはBSAで適応を縛るのではなく、後からお配りした添付文書案を御覧いただきたいのですが、1/8ページ、右下の欄に【禁忌・禁止】適用対象(患者)とありますが、その一番初めに「十分な経験を有する医師により、患者の体格、体表面積、埋込み予定部位の解剖学的状況等を総合的に判断した結果、適切な埋込みができないと判断された患者」については使用しないこととしています。
○笠貫部会長 よろしいでしょうか。先ほど、私の質問に対しては詳しくお答えいただいたので、加えてお聞きしたいのは、私が一番懸念したのは、ピボタルスタディで出血が66%、手術が必要な出血が28%という数字は、極めて大きい意味を持つのではないでしょうか。その中で、先ほど出ましたが、Von
Willebrandの因子が障害されそうで、先ほどの回転数が非常に早いことと関係するかもしれないと言われています。その中で軸流ポンプであるがゆえに、出血という問題をどう捉えたらいいかということと、それを使われる側に、情報としてどう提供したらいいかを、お聞きしたいのです。そのときに大事なことは、先ほどDestination
Therapyの話が出ていましたが、実際ブリッジとして使われながら、日本ではDestination
Therapyとして使われてしまいます。これは、結果論として移植のドナーが出ない限りはそうなってしまうという現実があります。Destination
Therapyとしてアメリカで2010年に承認を受けているわけですが、そのときの試験が独自に組まれているとなると、6か月というブリッジ試験のデータだけではなく、Destination
Therapyのため行われていた試験のデータが重要な意味を持つのではないでしょうか。そこで、先ほどの、特に手術が必要な出血はどのぐらいあるのかということは、ここのどこかに書いてありましたか。
○機構 まず、笠貫部会長がおっしゃった結果的にDestination
Therapyになってしまうということなのですが、米国で行われたDT試験については、心臓移植の適応とならない患者ということで、最初に適応が異なります。ですから、日本では当然長期間の補助でDestination
Therapyといいますか、心臓移植を行うことなく、結果的に長期の補助を受ける患者さんは多くなることは予想されますが、当初から心臓移植の対象とならない患者さんに植え込むことについては、まだ行われておりません。
○笠貫部会長 そういうことではなくて、実際日本ではブリッジとして承認しても、destinationになる可能性が非常に高く、また、軸流ポンプがゆえに、Von
Willebrand因子等を含めて出血が高い可能性があるときに、患者さん、あるいは医者に情報提供として、対象が違うのは承知の上で、アメリカの軸流ポンプとしてのデータはお知らせしないといけないのではないかという意味で、その結果を知りたいのです。
○機構 質問の意図を理解しておらず、大変申し訳ありませんでした。
○機構 先生、申し訳ありませんでした。リマッチスタディのことをおっしゃっているのだと思います。対象が違って、肝不全の患者さん等もいまして、出血事象をどの程度までというのを、詳細に検討していませんでした。そのデータとして、リマッチのスタディを医療現場に情報提供できるように、添付文書等も検討したいと思います。ありがとうございます。
○笠貫部会長 是非、その中で、警告欄に入れるか、あるいは使用上の注意でもいいのですが、今までの遠心型ではなく軸流ゆえに、出血性がもし高まるということが、何らかの予測、評価ができるのならば、データとして完全に比較したものはないとしても、それを予測し得るデータがあるのなら、この機械の特殊性として、添付文書に何らかの記載をしておいた方がいいと思います。日本は、梗塞よりも出血が、欧米に比べて問題が起こりやすいということは人種的にあることは明らかだと思います。そのときに、このワルファリンを含めて抗凝固療法と抗血小板療法で、出血、塞栓を予防する薬をたくさん投与することは、人工心臓の宿命なのですが、PTINRを使うときに何らかの注意を促しておいてもいいのではないかと思います。そこを質問したつもりです。
○機構 御意見をいただきまして、ありがとうございます。その点については、添付文書において十分に情報提供するようにしたいと思います。
○武谷委員 このデバイス自体は、ある程度理解できたのですが、ここでの議論とは少し逸れるかもしれませんが、この治療はあくまでも補助的なもので、心移植とのコンビネーションで治療が完結するわけです。それが、従来ここで議論してきた薬品や医療機器とは異なる特徴だと思います。ですから、この機械を装着する適応は、心臓移植適応の重症心不全と明記されていますね。これはいいのですが、やはりこれに引き続く心臓移植が、そのときの医療事情あるいは社会的、文化的な背景などによってかなり異なります。これがあるから移植を前提としてこの治療が成立するのであって、移植状況を考慮しないと、この治療だけで適応に基づいて、機械的というのは失礼ですが、淡々と治療を行うのはかなりいろいろな問題点があるのではないかと思います。移植を取り巻く様々な医療経済もありますし、社会的な事情は、ここでは一切議論しないで、この適応に基づいて医師は粛々とこの治療をすることになるのでしょうか。
○笠貫部会長 どなたからお答えいただけますか。
○松宮参考人 おっしゃるとおり、日本では心臓移植が少ないので、実際にこのデバイスを付けても移植に至らない方もたくさんおられます。しかしながら、移植の適応がありながら、若い方が多くて、重症心不全の方はほかに治療手段がほとんどないのです。ですから、点滴をしたり、あるいは体外式補助人工心臓を付けて3年間入院をしています。病棟で退院できずに待機している状況なのです。このデバイス、植込み型というのは、家に帰してあげることができるので、退院ができるわけです。うまくいけば、手術をして1、2か月で退院することができます。ですから、患者さんにとってはQOLの面でも優れています。
それから、医療経済的にも、これは今後の検討課題だと思いますが、我々何人かが集まって幾つかの心臓移植施設で、少ない数ですが植込み型のデバイスを付けた患者さんとそうでない患者さんで、移植待機までの間にかかった医療費を試算したことがあります。植込み型の方がデバイスは高いのですが、3年間待っている間の医療費よりは圧倒的に少ないというデータもあります。ですから、医療経済的にも、待機している重症心不全の患者さんの精神的、肉体的苦痛を取る意味でも、このデバイスは非常に重要であります。移植の適応がある人に機械的にとおっしゃる意図がよく分からないのですが、皆さんに付けるわけではなくて、これを付けないと命が保てない人に付けるということです。
○武谷委員 ですから、移植の実現性が1、2割でも、このような適応を満たす患者さんがおられたら、やはりこれを勧めることにはなるでしょうね。
○松宮参考人 これを付けなければ命が保てないという患者さんには、これを勧めることになります。
○武谷委員 そうすると、やはり移植の順によっては、このような補助循環を付けた患者さんが大分いらして、また別な形でその辺りの対策を考えなければいけない状況も生ずることはあり得るのですね。
○松宮参考人 そうですね。これを付けた患者さんが退院されてからも、医療機関に通って治療することになっていきますので、それに対する対策は関連学会等も含めて十分練っています。医者だけではなく、看護師やMEなど、医療関係者を教育して資格を作って、そのような患者さんを管理するような資格認定も既に始まっています。それに関わる医療関係者を増やそうという努力を続けているところです。
○笠貫部会長 よろしいでしょうか。大分議論を進めてまいりましたが、武谷委員の御指摘のところは、重症心不全に携わってきた者にとっては、重症心不全で寝たきりのまま亡くなる方に、一つの治療戦略として心臓移植が出てきましたが、絶対的なものではないのだろうと思います。その中で、日本ではドナーが少なく、アメリカでもすぐ出ないというところで、ブリッジとしての人工心臓という機械が開発されてきました。これが更に進歩していきますと、先ほどのDestination
Therapyになるのだろうとは思うのですが、その過程の中で心臓移植のドナーがどう増えるかは、これも先が見えません。また、再生医療が出てくるかもしれません。そのような医学の進歩の中で、現時点の背景を十分考慮した上で、この医療機器をどう導入していくかという判断になると思います。そのようなことを踏まえて、部会で議論してこの機器を承認するかどうかだと捉えています。人工心臓についてはいろいろなお考えがあるかと思いますが、日本では現在、これが承認されますと3機種目になると思います。皆さんにいろいろ御議論いただきましたが、特段の御意見がなければ議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、医療機器「植込み型補助人工心臓HeartMateII」については、本部会として、審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、また、生物由来製品に指定し、特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
それでは、御異議がないようですので、そのように議決いたします。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告することにいたします。議題4が終わりましたので、参考人の松宮先生は御退室いただいても結構ですし、お時間がありましたらお聞きいただけたらと思います。松宮先生、どうもありがとうございました。
──
松宮参考人退室、中谷委員入室
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○笠貫部会長 次の議題に移ります。議題5「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」、事務局より説明をお願いします。
○事務局 議題5、資料5に基づき説明いたします。医療機器に関しては、一般的名称と呼ばれる区分がないものについて、高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器のいずれであるか、又は特定保守管理医療機器であるかについて、薬事法第2条第5項~8項の規定に基づいて、審議会の御意見を伺った上で定めることとなっています。まず、資料5を御覧ください。1枚目に諮問書がありまして、その裏に今回新設しようとしています一般的名称「単回使用陰圧創傷治療システム」が記載してあります。
次のページの一番下に、陰圧創傷治療システムという一般的名称が現在ありますが、今回、単回使用のものが出てきたということで、保守や修理の必要がないことから、新たに一般的名称を新設することとしたものです。具体的に、今後新一般的名称が付される予定の品目、概要については、最後のページに記載をしています。簡単ではありますが、一般的名称の新設についての説明を終わります。
○笠貫部会長 ありがとうございます。本件について、委員の先生方から御質問、御意見はありますか。
特にありませんか。特に御意見がなければ、議決に入ります。「単回使用陰圧創傷治療システム」については、本部会として、高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決いたします。この結果については、次回の薬事分科会において報告することといたします。
次の議題に移ります。議題6「医療機器の再審査結果について」、事務局から説明をお願いします。
○事務局 資料6-1、6-2を御覧ください。再審査については、薬事法第14条の4の規定に基づき、原則新医療機器などについて再審査期間を定めて、承認後の使用の成績などの調査を行わせ、その資料に基づき有効性及び安全性などの再確認を行うことを目的とした制度となります。資料6-1です。株式会社JIMROのアダカラムです。こちらは、平成11年10月29日に承認された品目です。次ページから、審査報告書があります。事前に資料をお配りしていますので、簡単な説明とします。安全性、有効性ともに特段の問題はないことから、薬事法第14条第2項各号のいずれにも該当しないこと、即ち再審査結果の区分を効能・効果などの承認事項についての変更の必要がない「カテゴリー1」と判断しています。
資料6-2です。エドワーズライフサイエンス株式会社のノバコア左室補助人工心臓システムです。こちらは、平成13年8月31日に承認されている品目になります。こちらの品目についても、安全性、有効性ともに特段の問題はないことから、先ほどの資料6-1と同様に、再審査結果の区分を「カテゴリー1」と判断しています。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございます。本件について、委員の先生方から御質問、御意見はありますか。ノバコアはもう市場にはないが、再審査のところで市販後の調査をした結果だと思います。ノバコアからみますと、のHeartMateIIの小さくなりようは、MEの進歩を改めて強く感じました。ノバコアも、その時点では救命という意味では意義があったと考えていますが、調査結果について特に御質問、御意見はありますか。
特に御意見がないようでしたら、これで本日予定された議題は全て終了いたしました。それでは部会の報告品目について、議題7の説明を事務局からお願いします。
○事務局 議題7「部会報告品目について」、事務局より御説明いたします。資料7、横向きの資料になります。平成24年7月1日~平成24年9月30日までの3か月に承認された品目のうち、本部会への報告対象となっている品目について、資料7にまとめています。1~4ページの13品目と、5~14ページの53品目がありまして、医療機器は全部で66品目あります。また、15ページが体外診断用医薬品で2品目あります。こちらの資料については、事前に委員の先生方に送付させていただいていますので、この場で個別品目の詳細な説明は割愛させていただきます。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございました。本件について、委員の方々から御質問、御意見はありますか。
よろしいでしょうか。よろしければ、これで審議事項、報告事項、全ての議題を終了いたします。事務局から、そのほかに何かありますか。
○医療機器審査管理室長 次回の部会については、12月7日(金)に開催を予定しています。連絡事項は以上です。これをもちまして、本日の「医療機器・体外診断薬部会」を閉会いたします。誠にありがとうございました。
(了)
※ 備考
この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。
連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 安川(内線 4226)
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薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会議事録(2012年11月7日)