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2012年7月20日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年7月20日(金)


○場所

厚生労働省 専用第23会議室


○出席者

出席委員(13名) 五十音順

 大槻 マミ太郎、 奥 田 真 弘、 清 田    浩、 佐 藤 俊 哉、

 清 水 秀 行、 田 村 友 秀、○土 屋 友 房、 中 島 恵 美、 

 濱 口    功、 前 崎 繁 文、 増 井   徹、 山 口 照 英、

◎吉 田 茂 昭

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(8名) 五十音順

 新 井 洋 由、 庵 原 俊 昭、 菊 池    嘉、 黒 木 由美子、

 櫻 井 敬 子、 鈴 木 邦 彦、 半 田   誠、 山 本 一 彦

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎  (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森    和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。本日は、お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございます。本日の委員の出欠については、新井委員、庵原委員、菊池委員、黒木委員、櫻井委員、鈴木委員、半田委員、山本委員より御欠席との連絡をいただいております。また、清田委員から少し遅れる旨の連絡をいただいております。現在のところ、当部会委員数21名のうち12名の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 本日の議題9~11に関しまして、川崎市立衛生研究所所長の岡部信彦先生を参考人としてお呼びしております。なお岡部先生から、本日は午後4時頃到着予定との御連絡をいただいております。時間の都合で議題の順番の変更をお願いする可能性がありますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
 事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。矢守隆夫医薬品医療機器総合機構審査センター長が、6月1日より着任しております。
それでは吉田部会長、以後の議事進行をお願いいたします。
○吉田部会長 本日の審議に入ります。事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目、競合企業リストについて報告をお願いいたします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日机上に、議事次第、座席表、当部会委員名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1~資料17をあらかじめお送りしております。このほかに資料18「審議品目の薬事分科会における取扱い等の(案)」、資料19「専門委員リスト」、資料20「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。また、当日配付資料として、資料21の佐藤委員からの御質問を配付しております。
 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストを資料20に基づいて御報告いたします。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
 1ページ、「トービイ吸入液300mg」です。本品目は、「嚢胞性線維症における緑膿菌による呼吸器感染」に伴う症状の改善を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 2ページ、「スーテントカプセル12.5mg」です。本品目は、「膵神経内分泌腫瘍」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページ、「ユナシン-S静注用0.75g/同静注1.5g、ユナシン-Sキット静注用1.5g/3g」です。本品目は「肺炎、肺膿瘍、膀胱炎、腹膜炎」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページ、「シムビコートタービュヘイラー30吸入、シムビコートタービュヘイラー60吸入」です。本品目は、「慢性閉塞性肺疾患」の諸症状の緩解を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページ、「ソナゾイド注射用16μL」です。本品目は、「超音波検査における乳房腫瘤性病変の造影」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページ、「Ecallantide(エカランタイド)」です。本品目は、「遺伝性血管性浮腫の急性発作」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページ、「レンバチニブメシル酸塩」です。本品目は、「甲状腺癌」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 8ページ、「アレムツズマブ(遺伝子組換え)」です。本品目は、「慢性リンパ性白血病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 9ページ、「テトラビック皮下注シリンジ」です。本品目は、「百日せき、ジフテリア、破傷風及び急性灰白髄炎の予防」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 10ページ、「クアトロバック皮下注シリンジ」です。本品目は、「百日せき、ジフテリア、破傷風及び急性灰白髄炎の予防」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○吉田部会長 ただ今の事務局の説明に特段の御意見等はありませんか。ないようでしたら、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。それでは、委員からの申出状況についての報告をお願いいたします。
○事務局 各委員からの申出状況についてです。
議題1の「トービイ」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は大槻委員です。
議題2の「スーテント」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は大槻委員、奥田委員、清田委員、前崎委員です。
議題3の「ユナシン」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は奥田委員、清田委員、田村委員、前崎委員です。
議題4の「シムビコート」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は奥田委員、清田委員です。
議題5の「ソナゾイド」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は清田委員、前崎委員です。
議題6の「Ecallantide」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は清田委員、前崎委員です。
議題7の「レンバチニブメシル酸塩」に関して退室委員は田村委員、議決に参加しない委員は大槻委員です。
議題8の「アレムツズマブ」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員は奥田委員、清田委員、前崎委員です。
議題9「テトラビック」及び議題10「クアトロバック」に関して退室委員はなし、議決に参加しない委員はなしです。以上です。
○吉田部会長 本日は審議事項が11議題、報告事項が6議題となっております。また、先ほど御案内のように議題9、10及び11については参考人の岡部先生が到着次第、一括して審議を行います。それでは議題1に移ります。議題1について、医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題1、資料1-1及び資料1-2「医薬品トービイ吸入液300mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるトブラマイシン(以下「本薬」)は、アミノグリコシド系抗菌薬であり、細菌のタンパク合成を阻害することにより殺菌的な抗菌作用を有し、緑膿菌を含むグラム陰性菌に対して幅広い抗菌活性を示すとされています。
 嚢胞性線維症(以下CF)は、cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(以下「CFTR」)遺伝子の変異を原因として発症する常染色体劣性遺伝疾患です。CFTR遺伝子によって発現するクロライドイオンチャネルは、ヒトの気道上皮細胞において、イオンと水の輸送を調節しており、生体防御機構の重要な役割を担うとされていますが、CF患者では、CFTRの機能異常により気道液の粘性が増すことで、気道粘液線毛クリアランスが損なわれ、粘液中で細菌が増殖する結果、慢性的な細菌感染が生じ、重篤な呼吸器症状が進行することで、多くは呼吸不全及び呼吸器感染症で死亡するとされております。
 米国Cystic Fibrosis Foundationの調査によると、10歳までは約半数のCF患者で黄色ブドウ球菌に感染しているとされていますが、その後、緑膿菌の慢性感染が増加することによって局所にバイオフィルムが形成され、免疫機構の低下、抗菌薬の作用減弱につながり、CFが難治化するとされております。
 CFにおける緑膿菌感染に対し、抗菌薬の静脈内注射が行われておりましたが、適切な濃度の抗菌薬を感染部位に直接送達可能であり、静脈内注射と比較して非侵襲的投与及び在宅療法を可能とすることを目的として、本薬の吸入療法による治療が開発され、欧米では標準的療法と位置付けられています。
 本邦では、CF患者が極めて少数例であることから本剤の開発は行われておりませんでしたが、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、本剤は「医療上の必要性が高い」と評価され、同検討会議において、本疾病の重篤性や患者数が極端に少ないこと等を踏まえ、欧米での臨床データを用いて承認申請資料を取りまとめることを検討すべきと意見されたことから、今般、海外で実施されたCF患者に対する臨床試験成績等に基づき、製造販売承認申請が行われました。なお、本剤は1997年に米国で初めて承認されて以来、2012年4月時点で、海外では45か国で承認されております。
 本申請の専門委員として、資料19に記載されております6名の委員を指名いたしました。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については審査報告書の28ページ及び29ページの図表を御覧ください。6歳以上の外国人CF患者を対象とした海外第III相試験において、本剤300mg又はプラセボの1日2回吸入を28日間投与後、28日間休薬するサイクルを合計3サイクル実施した際の%FEV1及び%FVCにおいて、ベースラインからサイクル3投与終了時の相対変化量及び3サイクルの平均的な投与開始から投与終了時の相対変化量は、プラセボ群と比較して統計学的に有意な増加が示されました。また細菌学的有効性についても、本剤群ではプラセボ群と比較して、喀痰中緑膿菌量の指標であるcolony forming units(CFU)で検討したいずれの評価期間においても、相対変化量は統計学的に有意な減少が認められております。
 なお、審査報告書39ページの機構見解の4行目の記載において、「各サイクルの投与開始時から投与終了時への相対変化量」についても、プラセボ群と比較して統計学的に有意な増加が認められたと記載しておりましたが、一部でプラセボ群と比較して統計学的な有意差は認められていないことから、当該記載については削除させていただきたいと考えております。
 また、審査報告書31ページ及び32ページの図表については、先ほどの試験と同様のプロトコルで実施された、もう一つの海外第III相試験でありますが、こちらにおいても%FEV1及び%FVC及び喀痰中緑膿菌のCFUにおいて同様の結果が得られており、CF患者の緑膿菌感染による呼吸器症状に対する本剤の有効性は示されていると判断いたしました。
 安全性については審査報告書30ページ及び33ページの表を御覧ください。二つの海外第III相試験において認められた副作用の発現率は、プラセボ群と同様であり、本剤投与時に安全性上の特段の懸念はないと考えております。なお、本剤は吸入投与後、低濃度ながら全身に移行することが認められていることから、アミノグリコシド系抗菌薬の副作用である第8脳神経障害及び腎機能障害について、添付文書において注意喚起することが必要と判断いたしました。
 なお、日本人CF患者に対する本剤の投与経験は極めて限られていることから、本剤投与症例全例を対象に製造販売後調査を実施し、本剤の長期投与時の有効性及び安全性に関する情報を収集することを承認条件として付すことが適切と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤の効能・効果を嚢胞性線維症における緑膿菌による呼吸器感染に伴う症状の改善として承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新投与経路医薬品であることから、再審査期間は6年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。
○前崎委員 CFの患者に限るということになると、かなり症例は限られてくると思います。実際に日本の緑膿菌はかなり耐性度が高くなっていて、特にカルバペネムとフルオロキノロンは耐性で、アミノ配糖体だけが残っているような耐性菌が非常に多くあります。アミノ配糖体の吸入では、アミノ配糖体の耐性率が上がってくるので多剤耐性緑膿菌、いわゆるMDRPとなりますので、院内感染対策的には非常に問題になってくると思います。これはCF以外の気道感染症の患者には使わない、ということをきちんと明記していただきたいということです。
 それから、資料にもあるように、これを使うと多剤耐性化を招きますので、多剤耐性化を招くということも十分情報提供しておかないといけないと思います。その辺はどのように対処していただくかをお聞きいたします。
○機構 機構より説明させていただきます。御意見ありがとうございました。一つ目の緑膿菌の耐性化に関しては、我々もそれは非常に懸念しております。そのためにも、本剤の適応症は嚢胞性線維症であるということをきちんと明記させていただき、資材にもその旨を書かせていただくということと、医師及び患者への教育資材もきちんと提供した上で、適切に臨床現場で使っていただくことを想定しています。
○前崎委員 もう一点よろしいでしょうか。市販後調査のところに、緑膿菌以外の菌が出た場合に、その薬剤感受性の推移を見ると書いてあるのですが、基本的には緑膿菌が感染しているCF患者が対象になるということだと思います。そうすると、緑膿菌に加えてその他の複数菌感染が起こったときに、その複数菌感染の薬剤感受性を測定するということですか。そうすると、これは現実的にはほとんどないことと思います。ですから、ここに挙げてあるほかの菌というのは一体どういうことでしょうか。
○機構 少々お待ちください。
○前崎委員 CF患者から分離された菌でなくても、緑膿菌に対するこのトブラマイシンの感受性を見るということですか。
○機構 そういうことではございません。この薬を使っていただいているCF患者において、緑膿菌及びほかの菌に関して感受性を確認することを検討しているということです。
○前崎委員 そうすると、複数菌感染の場合ということですね。
○機構 はい。そういう場合があれば。基本的には緑膿菌感染がメインです。
○前崎委員 それは、恐らくほとんどないと思います。黄色ブドウ球菌から緑膿菌に置き換わってしまうと、多くの例は緑膿菌だけになってしまいます。
○機構 我々も、その点は緑膿菌感染に変わってしまえば、多分緑膿菌がメインだろうと思います。仮に、複数感染菌があれば検討していただきたいと考えています。まず起こらないという点は、そのとおりと考えております。
○前崎委員 わかりました。
○中島委員 5mLの吸入剤ということで、本剤のプラセボ薬の、呼吸困難の副作用が出ているということです。これの適正使用のためには、その教育資材が必要だと思われます。48ページに教育資材を適正使用のために作成するということが書いてあります。これをきちんと使っていく、例えば患者さんのadherenceをきちんと保たないと、副作用でうつ状態になって、自分自身の免疫力が落ちてしまうこともあるかと思います。そういうadherenceを高めるような教育資材を作っていただきたいと思うのです。どういう観点でこの教育資材は作られるようになっておりますか。
○機構 機構よりお答えいたします。現在、申請者と資材については最終的に詰めているところであります。基本的にこの薬は1日2回28日間吸入して、28日間休薬という服薬のルールをきちんと守っていただくことが非常に重要であるということを、資材の中でもきちんと説明させていただいております。また、疾患の特性として、緑膿菌に対してはこの薬が効くということも含めてきちんと説明した上で、菌を抑えることで薬剤の効果が見られることを、きちんと説明する予定です。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。ほかにございますか。
○土屋部会長代理 先ほどの説明で、緑膿菌がバイオフィルムを作って悪化するというのはそうだと思うのですが、それに対して8ページに説明があります。本薬1,000μg/mLを処理すると非常に効果があったと。ただし、実際にはこんな高濃度にはなりませんね。テストとしては、もう少し低い濃度でやって効果があるかどうかを本当は知りたいところなのですが、その辺のところはやっていないということでしょうか。
○機構 バイオフィルムの形成に関する試験に関しては、この濃度以外はやっておりません。
○吉田部会長 ほかにございますか。結局、こういう患者さんは大部分が専門の先生の所に行くのでしょうね。紹介されるか何かして。であれば、使い方その他においてはそれほど心配しなくてもいいのでしょうね。先ほど中島先生が言われたように、患者さんの方のケアが大事なのだろうと思います。それから、ネブライザーは決まっていて、これ以外の器具は使ってはいけないという縛りになっているのですね。
○機構 本薬に関しては、パリ・LCプラスネブライザーのみを使用するということで提案させていただいております。これに関しては第III相試験で、有効性及び安全性が検証されているネブライザーであり、海外の添付文書においても、ネブライザーはほかのジェット式を用いてもよいというような形で広く指定推奨しているわけではなく、「パリ・LCプラスネブライザーを使用すること」とされております。今回、国内で臨床試験も実施されておりませんし、国内で使用経験がありますが、それもパリ・LCプラスネブライザーを使っておりますので、パリ・LCプラスネブライザーのみを使用、ということにさせていただきました。
○吉田部会長 ネブライザーの購入は患者さん自身がしなければいけないということも含めて、きちんと情報提供をしていただくようにお願いいたします。
○機構 はい。分かりました。
○吉田部会長 ほかにはいかがでしょうか。ほかに御意見はないようですので議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。お諮りいたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて議題2に移ります。議題2について、医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品スーテントカプセル12.5mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について」医薬品医療機器総合機構より御説明させていただきます。
 本剤の有効成分であるスニチニブリンゴ酸塩は、血管内皮増殖因子受容体等の受容体型チロシンキナーゼのリン酸化を阻害し、その下流の細胞内シグナル伝達を阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられております。今般、本剤は膵神経内分泌腫瘍に対して効果を示す薬剤として承認申請されました。なお、本剤は平成23年5月に開催された当医薬品第二部会での審議結果を踏まえ、希少疾病用医薬品に指定されております。本剤は、審査報告書の4ページに記載しておりますように、平成24年2月時点において、膵神経内分泌腫瘍に関する適応にて、31の国又は地域で承認されております。
 本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料19にあるとおり5名の委員です。
以下、膵神経内分泌腫瘍に対する本剤の承認審査の概要を御説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、海外11か国で実施された一つの第III相試験及び国内で実施された一つの第II相試験が提出されました。有効性については、審査報告書の19ページの下から6行目以降及び50ページの上から13行目以降に示しますように、海外第III相試験において得られた無増悪生存期間(以下「PFS」)の成績等から、当該試験の早期中止に伴う過大評価の可能性は否定できないものの、標準治療の確立していない膵神経内分泌腫瘍において、本剤の有効性は期待できると判断いたしました。
 安全性については審査報告書の24ページの上から4行目以降及び52ページの上から6行目以降にお示ししますように、既承認の癌種である消化管間質腫瘍及び腎細胞癌と膵神経内分泌腫瘍において、本剤の安全性プロファイルに大きな差はなく、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、初回承認審査時に、本剤投与に伴う特徴的な有害事象と判断した心毒性、高血圧、出血性事象、皮膚毒性、創傷治癒合併症、消化器障害、腫瘍崩壊症候群、甲状腺機能低下症、リパーゼ上昇及び血中アミラーゼ上昇、間質性肺炎並びに可逆性後白質脳症症候群であると判断いたしました。また、これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を有する医師によって、有害事象の観察や管理、休薬・減量・中止等の用量調節を行う等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能であると判断いたしました。
 以上のような審査の結果、機構は膵神経内分泌腫瘍を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に指定された新効能医薬品及び新用量医薬品であることから、再審査期間を10年とすることが適当であると判断いたしました。本剤の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について、御審議のほどよろしくお願いいたします。
 なお、事前に佐藤委員から御質問をいただきましたので、機構より回答させていただきます。資料21にあるとおり、佐藤委員からの御質問は3点あり、以下のような趣旨です。
 1点目は、海外第III相試験のPFSが早期中止された結果であることについて、機構から申請者に対して説明を求めていますが、審査報告書の51ページには、「当初計画された中間解析(130件)に試験が早期中止となる条件付きの確率は91%であった」ことが回答されています。この内容は、機構が説明を求めたとおり、早期中止されたPFSの結果を解釈する上で重要な情報だと考えますが、申請資料には含まれていなかったのでしょうか。申請者の回答内容は、2011年4月12日開催のFDAの会議資料には記載されており、申請日が平成23年10月17日ですので、申請時点では判明していたことですので、上記の情報が審査報告資料に含まれていなかったとすると、申請資料の内容に問題があったように思います、との御趣旨でした。
 この件について、申請資料における海外第III相試験の早期中止に関する記載状況について回答いたします。御指摘の海外第III相試験に係る条件付き確率に関する数値については、当該試験の総括報告書において示されておりました。しかし、PFSの結果の解釈に関連する一部の情報として、例えばIDMCにおける評価結果であるとか、治験依頼者が早期中止を決定した経緯、あるいは早期中止に伴う統計解析計画の変更の詳細等の記載が申請資料になかったことから、機構としては、これらの情報について申請者に対して照会し、確認いたしました。
 佐藤委員御指摘のとおり、機構は条件付き確率の数値を含む早期中止されたPFSの結果を解釈する上で重要な情報は、申請資料において記載されるべきだったと考えておりますので、委員の御指摘についても申請者に伝達した上で、今後はより適切な申請資料の作成に努めるよう申請者に要請してまいります。
 2点目の御質問は、本薬の申請時効能・効果である「根治切除不能の膵内分泌腫瘍」から「根治切除不能の」を削除し、「膵神経内分泌腫瘍」とする理由として、「本薬はがん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師により使用される薬剤であることを踏まえると、本薬の効能・効果において『根治切除不能』や『低分化』等をあえて明示する必要は低いと判断した」としています。
 しかし、本薬の腎細胞癌に対する効能・効果については、平成21年11月26日の審査報告書に、「また本薬の使用され得る投与対象が適切に選択されるようにするため、本薬の効能・効果は『根治切除不能又は転移性の腎細胞癌』と設定し」と書かれています。腎細胞癌と膵神経内分泌腫瘍で、一方では「根治切除不能」が効能・効果とされ、一方ではされない理由を教えてください。また、「根治切除不能」を明示しない代わりに、「ただし、効能・効果における使用上の注意の項において、本薬の投与対象が適切に選択されるよう、膵神経内分泌腫瘍を対象とした臨床試験に組み入れられた患者の病理組織型等に留意する旨を注意喚起することが適切であると判断した」とありますが、これまでの部会での効能・効果で規定するか、使用上の注意に記載するかに関する例からすると、使用上の注意に、臨床試験では根治切除不能な進行再発・転移高分化型膵神経内分泌腫瘍患者しか対象となっていないことを明示した方がいいように思います、との御趣旨でした。
 以上の御質問について回答いたします。本剤の腎細胞癌と膵神経内分泌腫瘍の冒頭に、「根治切除不能」の記載があるかないかの違いが生じる理由としては、それぞれの疾患の基本的な治療方針の差異に基づくものであると考えております。まず腎細胞癌については、日本泌尿器科学会の診療ガイドラインにおいて、術前・術後の補助化学療法に関して記載されていて、その実施が想定される一方で、本剤の腎細胞癌の術前・術後の補助化学療法に対する有効性及び安全性は検討されていなかったため、術前・術後の補助化学療法に本剤を推奨するものではないことを明確にする必要があると考え、効能・効果に「根治切除不能の腎細胞癌」を設定いたしました。
 なお、既存の他の腎細胞癌治療薬についても、術前・術後の補助化学療法に対する有効性及び安全性が検討されていなかったことから、本剤と同様に、その効能・効果には「根治切除不能」と明記されております。
 次に、膵神経内分泌腫瘍については、米国NCCNガイドライン等によると、腎細胞癌のように、術前・術後における補助化学療法の実施が想定される治療方針とはなっておりません。このことから、本薬が、がんの化学療法に十分な知識と経験を持つ医師により使用される薬剤であることを踏まえると、膵神経内分泌腫瘍に対して本剤の使用が想定されるのは、「根治切除不能」の場合のみであり、効能・効果として、あえて「根治切除不能」を明示する必要性は低いと判断いたしました。
 専門協議においては、一部の委員より佐藤委員と同様の御指摘をいただきました。これに対し機構からは、ただ今御説明いたしました考え方に基づき御説明をするとともに、昨年12月に承認された本剤の同種同効薬であるエベロリムスの審査時においても、同様の考え方から、その効能・効果として「根治切除不能」を明示しなかったことを説明し、最終的には、すべての専門委員から、本剤の膵神経内分泌腫瘍に対する効能・効果については、エベロリムスと同じ効能・効果を設定することが妥当であると支持をいただきました。
 このように機構としては、効能・効果については「膵神経内分泌腫瘍」とすることが適当と考えますが、今回の佐藤委員の御指摘及び専門協議での議論も踏まえ、臨床試験に組み入れられた対象集団が明確となるよう、根治切除不能例であった旨、また、分化度を含む病理組織型等について、適切に医療現場に情報提供されるよう、添付文書の効能・効果に関連する使用上の注意の項及び臨床成績の項と併せて注意喚起をするとともに、情報提供資材において適切に注意喚起を行うように申請者に要請してまいりたいと考えております。
 3点目の御質問は、日本人の膵神経内分泌腫瘍患者では、本剤37.5mgから50mgへの増量の経験がないことを注意喚起する必要性について御指摘をいただいております。
 本剤の既承認のがん種である腎細胞癌における本剤の用量は50mgであり、その全例調査において、日本人における50mgの投与についての使用経験が蓄積されております。この全例調査においては、腎細胞癌承認時に比べて、新たな安全性上の懸念は認められなかったものの、日本人の膵神経内分泌腫瘍患者における本剤の使用経験は現時点では限られており、また、臨床試験の中では増量の経験がなかったことから、申請者に対しては、情報提供資材等を用いて、医療現場に適切に情報提供するよう要請してまいります。
 御質問に対する説明は以上です。また、佐藤委員からいただいた誤記等の御指摘に対しては適切に修正させていただきます。御指摘いただきましてありがとうございました。説明は以上です。
○吉田部会長 佐藤先生いかがでしょうか。
○佐藤委員 ただ今の説明でよく分かりましたので結構です。1点だけ、効能・効果のところで、エベロリムスの審査結果というか審査内容について触れておりましたが、エベロリムスは申請時効能が本剤とは違いますね。ですから、一概にエベロリムスと同様に論じられるものではないと思います。
○機構 補足させていただきます。御指摘のとおりアフィニトールは膵臓に限らない神経内分泌腫瘍で申請されておりましたので、審査の経緯という意味では違っておりますが、整理は同じだということです。
○吉田部会長 ほかの委員の先生方に御意見を伺う前に、私からも伺いたいことがあります。佐藤先生の御指摘の1なのですが、なぜIDMCが途中で早期中止にしたかの理由が読んだだけではよく分からないのです。それからもっと不思議なことは、なぜこれでFDAが通したかということです。その後、31の国又は地域で承認をされていったのですが、その辺の事情なり、どういう理解でそうなったかについて、事務局で把握していますか。
○機構 機構より回答申し上げます。今、部会長から御指摘の経緯の部分は把握ができていない状況です。ご指摘の点については、専門協議でも同じように、どういう経緯だったのかという御指摘をいただきましたので、客観的な部分については時系列でまとめさせていただき、IDMC開催の頻度や解析結果については審査報告書51ページに表の形でまとめさせていただきました。
 計3回IDMCが開催されているのですが、その開催の主な目的は安全性のモニタリングだったにもかかわらず、その中で毎回PFSの評価が行われたのかという辺りの背景までは分からないということです。
○吉田部会長 IDMCのクオリティがとても悪いように見えます。日本は、臨床試験が相当遅れているのではないかという懸念を皆さんから頂いていましたけど、これをみると、わが国よりも相当質が悪いと思わざるをえません。こういうことについて、申請者などに対して、こちら側からイエローカードなり、非常に不満足であるというクレームのようなものは出せないものなのでしょうか。
○審査第五部長 ただ今、部会長・部会の先生方から御指摘のあったことについては、申請者に伝えたいと思います。やはり、より適切な試験に基づいて評価すべきだという原則は重要だと思います。
○吉田部会長 我々のそういうコメントが届くのであれば、是非とも届けていただきたいと思います。やはり、我々も審査には責任を持っているわけですから、不十分な資料で判断しなければいけないというのは非常に辛いものがあります。ほかにございますか。
○奥田委員 佐藤先生の3番目の御指摘の、投与量が多いことに対する注意喚起が必要ではないかということで機構の回答がありましたが、投与スケジュールが、今までの経験の投与量と違うのではないかと理解しています。4投2休というのが今までで、今回は連日投与ということで、6週間あたりの投与量にするとほぼ同じぐらいのデンシティになります。それを今回は50mgで連投することになると、実質増量ということは、今まで経験のない世界に入ると思うので、やはり注意喚起なり、あるいは市販後調査でのデータ収集は必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○機構 御指摘ありがとうございます。日本人で、50mgで4週を超える投与というのは、確かに現在は認められていない用法・用量ですので、使用経験はないという整理になります。ただし、審査報告書の37ページに、既承認の腎細胞癌とGISTで全例調査が既に完了しております。こちらの成績を御覧いただきますと、適正使用ではないのですけれども、結果的に50mgで4週を超えて投与した方が180例ほどいます。4週ですので約1か月と考えると、2行目以降の36日以上を見ますと、大体50例ぐらいが該当します。忍容性を示した患者に偏ったという可能性もありますけれども、この中では新たに懸念すべき安全性の問題は見られておりません。もちろん、製販後に使用成績調査を予定しております。60例という予定で今進めていますが、その中で4週を超える投与での安全性については情報を収集させていただきます。
○吉田部会長 基本的に安全性に関しては、既にGISTと腎癌のデータも相当蓄積しているので、その意味ではそれほどの不安感はないのですけれども、有効性ですね、問題は。これを再度証明するのはなかなか難しいと思うのです。佐藤先生の質問にもありましたけれども、膵神経内分泌腫瘍というのは、比較的まれな疾患ですし、さらに転移してという症例を探すとなると意外と大変です。これには60例と書いてあるけれども、60例も集めるのはかなり大変だろうと思うのです。しかもPFSに本当に意味があるかということを知ろうとすると、これは再評価を含めてなかなか難しい問題があります。
 これについて、申請者の方で再度の臨床試験とかを考えているかどうかは分かりますか。要するに、最初のデータにケチが付いたとなると、市販後に再度きちんとした前向きの試験でPFSを調べていくということも、責任の取り方ではないかと思うのですが。
○機構 確かに、いわゆる検証的試験が行われたわけですけれども、途中で中止しておりますので、検証されたとまでは言えない状況であると考えております。申請者からは、フェーズIVの臨床試験を海外で□年□月から開始予定と聞いております。ただし、例数は80例で、単群で、主要評価項目がPFSということなので、検証的試験というよりは、探索的な位置付けの試験です。
○吉田部会長 それでもヒストリカルな成績とは比べられますね。申請時の臨床試験と比べて再現性があるかどうかくらいは見られますね。
○機構 はい。
○吉田部会長 そういう試験も用意されているということを、一応審査の中でお含みおきいただければと思います。ほかに御意見がないようでしたら議決に入ります。なお、大槻委員、奥田委員、清田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただきます。甚だ不十分なところもありますが、市販後のフェーズIVのことも含め、今回の申請に関して承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題3について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品ユナシン-S静注用0.75g、同静注用1.5g、同キット静注用1.5g、同キット静注用3gの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明させていただきます。
 本剤は、β-ラクタマーゼ阻害薬であるスルバクタムナトリウムとペニシリン系抗菌薬であるアンピシリンナトリウムを1:2の比率で配合した注射用ペニシリン系抗菌薬であり、スルバクタムは各種細菌が産生するβ-ラクタマーゼ、特にペニシリナーゼを強く不可逆的に不活性化し、アンピシリンと配合することにより、より広範囲の抗菌スペクトルを示すとされております。本邦では、ユナシン-S静注用が1994年7月に、肺炎、肺膿瘍、腹膜炎及び膀胱炎を効能・効果として承認され、さらに医療現場の煩雑さを改善することを目的に、ユナシン-Sキット静注用が2006年10月に承認されております。本邦における現行の用法・用量は、肺炎、肺膿瘍、腹膜炎に対して1日6g(1回3g1日2回)とされておりますが、海外では重症度に応じて1日最大12g(1回3g1日4回)という用法・用量まで承認されております。
 また、国内外の教科書及びガイドライン等において、市中肺炎及び院内肺炎に対して高用量を含む投与が推奨されており、関連学会及び医療現場から、本邦における本剤高用量投与の開発を要望されたことを踏まえ、今般、市中肺炎患者を対象に本剤高用量を投与した国内第III相試験が実施され、有効性及び安全性が確認されたことから、製造販売承認事項一部変更申請が行われました。なお、本剤の高用量投与は、海外において2012年5月時点で、少なくとも48の国又は地域で承認されております。
 本申請の専門委員としては、資料19に記載されております4名の委員を指名いたしました。
 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。まず有効性については審査報告書20ページの上の表を御覧ください。中等度以上の市中肺炎患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である投与終了時、投予終了7日目の治癒評価時及びさらに7日目の追跡評価時における本剤の有効率は、それぞれ97.4%、94.6%、94.4%であり、90%を上回る有効率を示しております。また、審査報告書32ページの表を御覧ください。国内第III相試験において、肺炎の主な原因菌に対する細菌学的効果においても、本剤投与により高い消失率が認められております。以上の結果を踏まえ、肺炎に対する本剤高用量投与の有効性は示されていると判断いたしました。
 また、肺膿瘍及び腹膜炎に対する有効性については、国内臨床試験では検討されていないものの、海外臨床試験又は海外臨床研究の試験成績に加え、投与回数の増加により、本剤の有効性と相関することが示唆されているTime above MICが増加することが予測されることも踏まえ、本剤高用量投与の有効性が期待できると判断いたしました。
 なお、本申請における追加適応菌種のうち、肺炎球菌及びモラクセラ・カタラーリスについては有効性が期待できると考えたことから、本薬の適応菌種に追加することは可能であると判断いたしましたが、肺炎桿菌については、国内第III相試験での臨床分離株は1株のみであり、審査の過程においても、本剤の臨床的な有効性を明確に示す報告は確認できなかったことから、適応菌種に追加することは困難と判断いたしました。
 安全性については、審査報告書35ページの表を御覧ください。市中肺炎患者を対象に、本剤高用量を投与した国内第III相試験において認められた副作用の発現率は、既承認用量投与時の国内臨床試験及び使用成績調査と比較して高値を示したものの、事象の重症度はほとんどが軽度であり、中等度の事象についても治験期間中に消失が認められております。以上を踏まえて、現時点では本剤の高用量投与時において特段の重大な懸念はないと判断いたしました。なお、安全性については、引き続き製造販売後調査において情報収集を行う予定としております。
 以上の審査を踏まえ、本剤の肺炎、肺膿瘍、腹膜炎に対する高用量及び適応菌種に肺炎球菌及びモラクセラ・カタラーリスを追加した効能・効果及び用法・用量を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新効能及び新用量医薬品であることから、再審査期間を4年とすることが適切と判断しております。また、薬事分科会には報告を予定しております。以上です、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。基本的にはよく知られているユナシンですが、高用量でいきたいという申請のようです。前崎先生、何かありますか。
○前崎委員 適応菌種のことなのですが、確かに肺炎桿菌は1例しか入っていませんが、肺炎桿菌の感染症にβ-ラクタマーゼ阻害薬を使うことは基本的なことです。モラクセラも8例しか入っていませんが、8例で十分で、1例で駄目という理論はどうかという気がします。逆に8例でいいのかというところもありますし、細菌学的に効果があるのに1例で本当に駄目なのでしょうか。実際の症例では肺炎桿菌に対してβ-ラクタマーゼ阻害薬を使うことがあると思います。適応症に含める、含めないというところの判断のところを少しお聞きしたいのですが。
○機構 非常に難しい課題と考えています。今回臨床試験での分離株としては、肺炎球菌が13株、モラクセラが8株、肺炎桿菌が1株でした。それと併せて海外の感受性の状況及びその臨床的な有効性も含めて情報等をきちんと確認はしております。その中で、肺炎桿菌に対しては、国内外臨床試験での株数も少なく、臨床的な有効性についても確認させていただきましたが、今回提出していただいた資料の中で、臨床的な有効性も含めて明確に示されるものがないという現状でしたので、今回これを適応菌種として追加することは困難であろうと判断しております。
○前崎委員 経年的な変化に関しても、株数が10株で変化がなかったと結論することは無理があると思います。MIC90を10株で算出することも非現実的であり、ここも結果から耐性化の傾向がなかったとすることは問題があるかもしれませんので、少し表現を考えていただいた方がいいのではないかと思います。
○機構 ありがとうございます。今後、検討させていただきたいと思います。
○吉田部会長 今の前崎先生の御質問ですけれども、高用量で承認している48か国ですか、アメリカ、フランス、ドイツ等と書いてありますけれども、そちらでは菌株はどのように指定しているのですか。
○機構 申し訳ありません、もう一度お願いいたします。
○吉田部会長 4gの高用量を認めているのが48か国であって、アメリカ、フランス、ドイツ等と6ページに書いてあります。アメリカやドイツ、フランスのときの菌株の指定とかというのはあるのでしょうかということです。今の桿菌の問題です。
○機構 海外でも、肺炎桿菌に関して、提出された海外の臨床試験を踏まえて承認している状況ではあります。また、添付文書ではin vitroの結果も含めて記載することとされておりますので、各菌種に対する感受性はあることは書いているような感じではあります。実際のところ海外でも、肺炎桿菌に関して、臨床株としてはそれほど認められていませんが、作用メカニズム的に効くこともあって書かれていたりします。
○吉田部会長 それは、vitroのデータでもよいということで、海外では認めているのですね。
○機構 はい。
○吉田部会長 そういう状況なのだそうですけれども、先生にお聞きしたいのは、肺炎桿菌の感染は意外と日常的なのでしょうか。
○前崎委員 市中感染症の原因菌としては多くみられます。肺炎の原因菌としても4番目、5番目に検出されます。ただ、先ほど言いましたように、肺炎桿菌の治療にβ-ラクタマーゼ阻害薬を使うことは日常的です。適応菌種ではないが、実際の症例では効果があると考えられ、しかも高用量にするより有効になると思われます。市販調査の結果から肺炎桿菌の症例が集まってくると思うので、そしたらその段階でもう一度見直していただければいいのではないかと思います。
○吉田部会長 分かりました。ほかに御質問、御意見等々はございますか。御意見がないようでしたら議決に入ります。奥田委員、清田委員、田村委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いたただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 岡部参考人入室 ──
○吉田部会長 参考人の岡部先生がいらっしゃいましたので、議題9、議題10、議題11を審議いたします。議題9・10・11について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題9、資料15-1、15-2「テトラビック皮下注シリンジの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、審議事項議題10、資料16-1、16-2「医薬品クアトロバック皮下注シリンジの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。なお、お手元の資料のとおり、資料15-2と資料16-2については同一の資料となっております。
 テトラビック皮下注シリンジは、一般財団法人阪大微生物病研究会(以下、阪大微研)から、クアトロバック皮下注シリンジは一般財団法人化学及血清療法研究所(以下、化血研)から、それぞれ新有効成分含有医薬品として申請されたものです。いずれの品目も、各社が承認を取得している百日せき、ジフテリア及び破傷風に対する予防を効能・効果とする沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(以下、DPT)に、一般財団法人日本ポリオ研究所が開発した1型、2型及び3型の不活化ポリオウイルスを混合したワクチンとなります。
 両品目に含まれる不活化ポリオウイルス成分は、国内で既承認の経口生ポリオワクチンの弱毒セービン株ポリオウイルスを不活化したものであり、本年4月に本部会で御審議いただいたイモバックスポリオ皮下注に用いられている強毒株ポリオウイルスを不活化したものとは異なっております。なお、世界的には強毒株の不活化ポリオワクチンが広く用いられております。
 多方面から、ワクチン関連麻痺の懸念がない不活化ポリオワクチン早期導入の強い要望があったことや、欧米でDPTと不活化ポリオワクチンの混合ワクチンが実用化されていることを踏まえ、国内開発の結果、阪大微研より昨年12月に、化血研より本年1月にそれぞれ承認申請されました。
 両品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料19にお示しした10名の委員です。
 審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。ポリオウイルスに対する中和抗体価は、採取した血清の希釈倍率で表され、中和抗体価が8倍以上であればポリオ発症を予防できるとされております。阪大微研の審査報告書32ページ及び化血研の審査報告書34ページを御覧ください。国内第III相臨床試験において、初回免疫である3回接種後の弱毒株ポリオウイルス1型、2型及び3型それぞれに対する中和抗体価8倍以上を獲得した被験者の割合は、いずれの品目ともに100%であり、両品目のポリオに対する有効性は期待できるものと判断いたしました。
 また、阪大微研の審査報告書33~34ページ及び化血研の審査報告書36~37ページに記載したとおり、対照薬群である既承認DPT接種後と比較し、本剤群での百日せき菌の防御抗原、ジフテリア毒素及び破傷風毒素に対する抗体価及び一定の抗体価以上となった被験者の割合に大きな差は認められず、両品目の百日せき、ジフテリア及び破傷風に対する有効性も期待できるものと判断いたしました。
 安全性については、阪大微研の審査報告書35ページの表4-11並びに化血研の審査報告書37~38ページの表4-15及び表4-16を御覧ください。対照薬群であるDPT接種後と比較し、本剤群で発現頻度の高かった有害事象はあるものの、Grade3以上の発現頻度には大きな差はなく、両品目の忍容性は既承認DPTと同程度であると判断いたしました。また、両品目とも臨床試験で認められた重篤な有害事象は、乳幼児に比較的よく見られる事象であり、両品目の安全性は忍容可能と判断いたしました。
 製造販売後の検討については、阪大微研の審査報告書43~44ページ及び化血研の審査報告書46~47ページを御覧ください。本剤の接種時期である乳幼児期は、熱性痙攣の好発時期と重なるため、発熱、熱性痙攣及び痙攣の発現頻度が把握可能な例数として、各社、初回免疫及び追加免疫それぞれについて750例、合計1,500例、2社の合計では3,000例を調査予定例数とした使用成績調査が実施される予定となっております。
 以上の機構における審査の結果、両品目ともに百日せき、ジフテリア、破傷風及び急性灰白髄炎の予防を効能・効果として承認して差し支えないと判断いたしました。両品目は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年とし、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断いたしました。また、両品目の承認に伴い、生物学的製剤基準に資料17にお示しした基準が追加されます。併せて御審議くださいますようお願いいたします。なお、薬事分科会には両品目ともに報告を予定しております。
 続いて佐藤委員から、資料21にある使用成績調査についての御意見をいただいております。佐藤委員御指摘のとおり、両品目の使用成績調査においても、有害事象発現頻度の精度を踏まえた適切な考察が重要であることは認識しております。今回の調査の例数については調査期間、企業の調査実施能力、専門協議の議論等を踏まえて設定しております。また、今回同じ不活化ポリオワクチンを含むという点では、2社で3,000例の調査結果が得られる予定であることから、専門協議での指摘もあり、調査項目を揃えるなど、2社で同程度の安全性情報が得られるような工夫をするよう企業に指導しているところです。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○事務局 事務局から、追加で2点ほど御説明させていただきます。阪大微研のテトラビック皮下注についてですが、阪大微研の審査報告書19ページに記載があるとおり、製剤の安定性について、申請時点においては12か月までの長期保存試験成績が提出され、有効期間は12か月とされております。その後□月□日に阪大微研から追加で18か月までの試験成績が提出され、その内容を確認したところ、18か月の安定性は確保されていると判断できましたので、承認に当たっては有効期間を18か月とすることで問題ないものと考えております。
 2点目は、本剤の添付文書案についてです。4月に御審議いただきましたサノフィパスツール社の単独不活化ポリオワクチン、イモバックスポリオ皮下注では、海外でギランバレー症候群やADEMの発現が報告されております。これについては添付文書において適切な注意喚起を行っていただくこととしております。本剤4種混合ワクチンに関しても、この類薬である単独ワクチンの情報を踏まえ、お手元の添付文書には間に合っておりませんけれども、添付文書の接種上の注意のその他の注意の項において、「類薬の単独の不活化ポリオワクチンにおいて、因果関係は明確ではないが、ギランバレー症候群、ADEMの海外報告がある。なお、本剤の臨床試験においては報告はない」旨の注意喚起をするよう企業に指示しております。以上2点追加させていただきます。
○吉田部会長 ありがとうございました。まず佐藤先生、今の回答に対していかがでしょうか。
○佐藤委員 2社あるのでということですが、製造販売後調査に必要な対象者数の決め方として、例えば0.1%程度の頻度のものを少なくとも1件検出するようなことが慣例のように行われてきていますが、今回特に健康な小児に対して非常にたくさんの方が接種を受けるわけですし、世界初めてということですから、製造販売後調査の対象者数を決めるための論理をきちんと示していただいた方がいいと思います。熱性痙攣、あるいは痙攣の頻度0.4%をつかまえるのが重要かどうかは私には判断できないのですが、もしそれが本当に重要であるのだとすれば、質問にも書きましたように、0.4%の頻度のものをこれぐらいの精度でつかまえるためには何千例必要といった根拠がきちんと示されていればいいのですが、今の書き方で二つの法人を合わせて3,000例になるからというのでは少し弱いと思います。その辺の理屈の整備をしていただいて、もし、もっとたくさんの対象者が必要になるのであれば、それはきちんとやっていただきたいと思いますし、どのぐらいのものをどう調べたいのかを明確にしていただいた方がいいと思います。通常の医薬品とは違って、何千分の1とか何万分の1という重篤な有害作用ではなくて、もっとたくさんの方のうちの1人ということが問題になってくる薬だと思いますので、その辺をきちんと指導していただければと思います。
○機構 調査の精度についてですが、こちらも重要であることは認識しており、今回いろいろ検討もしましたが、では、どこまでの精度であれば十分と言えるのか非常に難しいところがあって、今回の場合、本剤を接種する乳幼児期であれば熱性痙攣が重要な問題となるということで、専門委員からも痙攣、発熱、熱性痙攣の発現頻度を把握する計画がいいだろうというご意見がありました。また、メーカー側の体力や調査のスピードなど、いろいろなことを総合的に判断して、今回このような例数を設定しております。
○吉田部会長 佐藤先生がおっしゃっているのは、別に750でもいいのです。ただ、きちんとロジックが通っているのですか、ということだと思います。何となく750やりました、1,500やりましたといって、例えば外国から後でフォローが来た場合、日本のデータはどのようなことを扱ったのかと言われたときに、何となく決めましたということでは具合が悪いでしょう。ですから、750でも800でもいいのだけれども、それをどのようなロジックで計算したか、ということだと思うのですが。
○機構 御指摘どうもありがとうございました。我々も例数に関してはかなりメーカーと協議を重ねております。ただ漠然とした不安から、頻度等がよく分からない有害事象を集める形では、調査例数がどこまでいくか分からないということで、今まで得られている情報の中から、この時期の小児に発現した場合には重篤になる可能性があること、臨床試験で発熱や熱性痙攣が1例、2例出ているということで、0.4%程度のものを、先生がおっしゃるように精度に関してもまだもう少し詰めるところがあるかもしれませんが、今の段階ではこの程度の例数を集めるというところで、まずはやってみるということで、専門協議でも御理解はいただけたと思っております。
○生物系審査第二部長 補足させていただきます。先生の御指摘は重々理解しているつもりです。審査チームとして、精度をどの程度とすれば良いかという議論に関し、それが適切かどうかに関する詰めは十分ではない部分があると思います。しかしながら、得られた情報をこの程度の精度であるという理解をしながら評価をすることを考えております。ロジックを考えるに当たりどの程度が適当な精度かを専門委員の議論の中でも行った部分もあり、今回の場合は750例で実施することが適当と決まってきたという流れです。今後ロジックをどう形成するかについては検討していきたいと思います。
○吉田部会長 逆に言えば、メジャーな有害事象の出方を見るということでもいいわけです。要するに、根拠さえ明確にしておけば、90%以上安全だから認めたということでもいいだろうし、何かそういう形がないとサイエンティフィックではないのではないかということです。
○生物系審査第二部長 おっしゃることはよく分かります。90%がいいかどうかというのはまた別の話だと思います。
○吉田部会長 その通りです。全く別の話ですから。99%にしたって、それでは足りないという人もいるかもしれないし。それはあくまでも約束ごとの話ですから。
○生物系審査第二部長 それが総合的という表現になってしまいますが、期間や企業の状況等も考慮して、最終的には判断していくということです。
○吉田部会長 例えば90%と決めたからということでもいいと思うので、そういう書き方にした方がいいのではないでしょうか。
○生物系審査第二部長 ありがとうございます。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。事務局から追加があって、保存期間が12か月から18か月に変わったという報告があったのですが、皆さんには資料がいっておりません。濱口先生に代表で確認していただいて、問題なければ了解ということでお願いしてよろしいでしょうか。
○濱口委員 安定性に関する資料を出していただければ、見させていただきます。
○吉田部会長 先生に一任しますので、そういう形にしたいと思います。よろしくお願いします。
○濱口委員 有効性について伺いたいのですが、今回のIPVが世界初だと、弱毒株を使ったIPVで、安全性の面から言っても強毒株を使わないという点で非常に良くなっているということだと思いますが、逆にこれまでOPVを使って免疫機能を賦活化する際に、ある意味で腸管免疫などもそこで誘導させていたわけですね。それが一気に強毒株のIPVではなくて弱毒株のIPVを使って、これまでと同じような有効性を期待したいということだろうと思うのです。ここに出されたデータを見る限りでは、それは十分かという気はするのですが、将来に渡って接種をした子どもが大きくなったときに、果たしてそれが維持できるのかは、世界初なだけに、強毒株で打たれているIPVのデータとの違いも出てくるかもしれないという気がしています。その辺りのデータはあるのでしょうか。
○機構 臨床試験の中で得られた情報ですが、強毒株に対してもどのような中和活性があるかについては調べており、例えば結果を阪大微研の審査報告書では33ページに示しております。ただ、御指摘の長期に渡っての免疫応答の維持に関しては、現在のところまだそこまでの情報はないのが現状です。
○濱口委員 その際に、例えば感染症流行予測調査みたいなところで、実際に現状どのぐらいポリオに対する中和抗体を持った人が何%ぐらいを占めるのかといった調査は毎年行われていて、ある程度データは把握できていると思うのです。ただ、今回こういう大きな変換があった際に、果たしてそれだけで十分なのかという気もします。今後そういったことも含めて、ワクチンを変えることによって国民全体の抗体保有率や力価がどう変わっていくかは、世界初なだけにきちんとフォローしていく必要があると思います。これは審査のところとは違うと思いますが、是非そこは一緒に検討していただきたいと思います。
○吉田部会長 私も門外漢なのでお聞きしたいのですが、子どものときは免疫があって、後で落ちるということはかなりあるのですか。
○濱口委員 例えば、テトラビックの34ページの表4-10の下のフレーズに「米国及び欧州等のIPV又はIPVを含む混合ワクチン導入国では、4~6歳の学童時期にIPVが追加接種されており、本邦においても本剤接種者に対するIPVの追加接種の必要性において継続して検討する」とありますので、一応は考えてあるのだろうと思うのですが、これからしばらくの間は要注意時期だろうと考えています。そこは一緒に考えてほしいということです。
○吉田部会長 要するに、ブースターのように使うことも考えておいてほしいということですね。岡部先生どうぞ。
○岡部参考人 参考人の岡部です。一つは、サンプリングですが、常にVaccine preventable diseaseに対する抗体保有調査並びに抗原調査もやっています。それは予算事業で行われているのですが、ポリオに関しては優先的にこれを継続させてほしいと提言しております。実際にそうなってくるだろうと思いますが、抗体保有状況は継続して見ていく必要が必ずあるということは、専門協議会のときにも出ました。
 もう1点のブースター効果ですが、これはセービンであろうがソークであろうが不活化ワクチンですので、その抗体がどのぐらい持続するかは長期に渡って見ていく必要があるので、これはリサーチレベルでも、4歳、5歳が適当なのか、あるいは9歳、10歳が適当なのかも含めて、今後検討を続けていただきたいというのも協議会での意見でした。ただ、現実として4、5歳、あるいはその先の数年を見ていると、実際には切替えが遅くなるので、現時点での承認を得てよろしいのではないかというのが協議会の意見です。
 もう一つ、長くなりますが、ポリオそのもののeradicationが今後いつ来るかによって、その後のワクチンの計画が違ってきますので、その辺も流動的に、併せて検討していく必要はあろうかと思います。
○吉田部会長 ほかに御意見、御質問はありますか。
今回、特にポリオで世界初ということを含めて、実際に使われ出したときに、今まで我々が想像もしなかったような誤投与など、いろいろなことが起こる可能性があると思うのです。例えば、ギランバレーは恐らく出ないでしょうけれども、有害事象のようなものが出たときに、すぐ止めるとか、何か判断できるような所が後ろにいてくれた方が、私たちとしては非常に安心なのです。その辺の、監視システムのようなものは機能するようにはなっているのでしょうか。
○審査管理課長 不活化ポリオワクチンの副反応の報告については、基本的に予防接種の中で行われているものですので、副反応の報告も健康局を中心に医療機関からの報告を基本にやっていただくことになるかと思います。その上で、薬事法上の副作用報告としてどのようにやるかは、医薬食品局と健康局の間で連携を図って、企業への報告等の関係で連携を図れないようなことが起きないように、あらかじめ両局で相談をしてきちんとやりたいと思っております。死亡例、あるいは重篤な副作用が発生した場合も、まずは予防接種法上の措置としてどうするかということとともに、医薬食品局も薬事法上の関連措置ということで、併せて協力してやっていきたいと考えております。
○吉田部会長 単なる薬だったら医薬食品局で全部取り仕切れるのですが、予防接種となると健康局が絡むので、なおさら難しいところがあるかもしれません。その辺はよろしくお願いします。岡部先生、何か専門協議で問題になったことや、こういうところはこのように考えてほしいということ、御希望などがありましたらお願いします。
○岡部参考人 専門協議でも、これは世界初に承認されるワクチンということでは、佐藤先生がおっしゃったようなことも含めて議論がありましたが、一方では実際にない病気に対して防御するワクチンということですので、効果の評価が非常に難しいということもありました。事務局からも話がありましたように、現在のニーズ、もう一方で出てくるOPVを使うときのVAPP(Vaccine associated paralytic polio)の問題も含めて、協議でも導入に同意をするというか、最終的な結論を出したという経緯です。
○吉田部会長 審議には関係ないのですが、先生が先ほど言われた「eradicateした」というのは、いつかは明らかになるのでしょうか。
○岡部参考人 実際には、今、日本の位置するアジア・太平洋地域や南北アメリカなどもeradicationが続いています。ただ、インドはついこの間eradicationができていますが、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアといった所にはまだ野生ポリオがあるので、根絶とまでは宣言しておりません。また、抗体が低下した時に昨年は中国、一昨年はタジキスタンに輸入ウイルスによるポリオ拡大が出ているので、根絶の続いている我が国のような所でもポリオの免疫を維持することが必要であるということが全体の方針になっております。
○吉田部会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見はありますか。ないようですので、議決に入ります。お諮りします。本議題について承認及び生物学的製剤基準の一部改正を可としてよろしいでしょうか。
御意見がないようですので、承認及び生物学的製剤基準の一部改正を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。岡部先生、ありがとうございました。
── 岡部参考人退室 ──
○吉田部会長 議題4に戻ります。機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題4、資料4「シムビコートタービュヘイラー30吸入及び同60吸入の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
 本剤は、長時間作動型β2刺激薬(LABA)であるホルモテロールフマル酸塩水和物(以下ホルモテロール)と、合成副腎皮質ステロイドであるブデソニドを有効成分として配合する定量式吸入用散剤であり、本邦では、気管支喘息の維持治療薬として2009年10月に承認されています。今般の申請は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に係る効能・効果を新たに追加するものです。COPDにおける薬物療法の中心は気管支拡張薬ですが、LABA、長時間作動型抗コリン薬(LAMA)等の長時間作動型気管支拡張薬による治療でも増悪を繰り返す患者には、吸入ステロイドの追加投与を考慮することが治療ガイドラインでも推奨されていること等を踏まえ、LABAと吸入ステロイドの配合剤である本剤の開発が行われたものです。
 海外において、本剤は、2012年4月現在、気管支喘息及びCOPDに係る効能・効果で欧州など117か国で承認されています。また、同様にブデソニド及びホルモテロールを配合する加圧式定量噴霧吸入製剤(pMDI)も、気管支喘息及びCOPDに係る効能・効果で米国など26か国で承認されています。
 本申請の専門委員としては、資料19に記載されている5名の委員を指名しました。
 主な審査内容について簡単に説明します。審査報告書8ページ中段の(1)国際共同第III相試験D589DC00007試験の項を御覧ください。本申請における検証試験として、日本人及び外国人COPD患者1,293名を対象に、1吸入あたりブデソニドとして160μg、ホルモテロールとして4.5μgを含有する本剤、又はホルモテロール4.5μgを1回2吸入1日2回吸入投与した場合の有効性を比較する、すなわちホルモテロールに対するブデソニドの上乗せ効果を検討する、ホルモテロール対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。
 まず、試験全体の成績について説明します。9ページ上段の表3に示すように、主要評価項目である全投与期間中の平均投与前FEV1について、本剤群のホルモテロール群に対する比は1.032であり、有意な差が認められています。また、本試験に組み入れられた日本人患者312名の成績についても、表4に示すように、全投与期間中の平均投与前FEV1について、本剤群のホルモテロール群に対する比は1.029であり、先ほどの試験全体の成績と類似した結果が認められています。また、副次評価項目であるCOPD増悪回数は表5、初回のCOPD増悪をイベントとしたKaplan-Meierプロットは10ページ上段の図1のとおりであり、本剤群はホルモテロール群と比較して増悪回数の減少及び初回増悪までの期間の延長が示されております。先ほどの主要評価項目である全投与期間中の平均投与前FEV1について、本剤群のホルモテロール群に対する比は1.032とブデソニドの上乗せ効果は小さかったものの、ステロイドによる肺機能に対する改善効果は、気管支拡張剤のように直接的な作用ではなく、気道の炎症抑制を介した間接的な作用であると考えられること、また、副次評価としてブデソニドの上乗せによるCOPD増悪の抑制効果が示されたことも勘案し、機構は、ホルモテロールに対するブデソニドの臨床的に意義のある上乗せ効果は示されていると判断しました。
 次に、31ページ下段、(2)安全性についての項を御覧ください。ステロイドのクラスエフェクトである視床下部-下垂体-副腎系、眼及び骨に関する有害事象の発現状況について検討した結果を32~33ページ、また、吸入ステロイド治療を受けるCOPD患者において肺炎のリスクが増大する可能性が報告されていることから、肺炎の発現状況について検討を行った結果を34ページに示しておりますが、いずれについても、本剤による発現リスクの上昇を示唆する傾向は認められませんでした。さらに、COPD患者には高齢者が多いことから、年齢別の有害事象の発現状況についても検討した結果、35ページの表30、36ページの表31のとおり、本剤の安全性に年齢による明らかな影響は認められませんでした。これらの検討結果から、機構はCOPD患者における本剤の安全性に大きな問題は認められないと判断しておりますが、製造販売後調査において使用実態下での安全性をさらに確認する必要があると考えております。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は4年とすることが適当と判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。よろしいでしょうか。気管支喘息に有効なものであれば、COPDの諸症状の緩解は当然想定される効果であろうし、基本的に有効性が認められれば、今までの有害事象に対する蓄積データはありますので、特段の問題はないかと思います。
 特に御意見がないようですので、議決に入ります。なお、奥田委員、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加は御遠慮いただくこととします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございました。御異議がないようですので、承認を「可」とし薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題5に移ります。機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題5、資料5「医薬品ソナゾイド注射用16μLの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 審査報告書3ページを御覧ください。本剤は、水素添加卵黄ホスファチジルセリンナトリウムで構成されたシェルに、化学的に安定なガスであるペルフルブタンを内包させ、平均粒子径2~3μmのペルフルブタンマイクロバブルとした超音波診断用造影剤です。本剤を懸濁液として静脈内投与し、超音波を照射すると、血管内のマイクロバブルにより超音波が反射散乱されるため、血流シグナルが増強し、正常組織とは血管構造が異なる腫瘍病変の造影効果が得られます。本剤は、本邦において2006年10月に、「超音波検査における肝腫瘤性病変の造影」を効能・効果として承認されております。海外では、2012年4月現在、肝腫瘤性病変の造影に関する効能・効果について韓国で承認され、□□及び□□では□□□□試験を計画中です。一方、乳房腫瘤性病変の造影に関する効能・効果については、現時点で海外で開発又は承認されている国はありません。本申請の効能・効果である乳房腫瘤性病変の超音波診断に本剤を用いる開発は、第一三共株式会社により行われ、2011年12月に、国内臨床試験成績に基づき製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 本品目の審査に関して、専門委員として資料19に記載されている委員が指名されました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書7ページ、2)第III相試験の項を御覧ください。国内第III相試験において、単純超音波検査にて乳腺に未治療の腫瘤像が認められ、病理検査(細胞診又は組織診)を実施予定の患者を対象に、本剤を静脈内単回投与する非盲検試験が実施されました。なお、本剤の用量は、国内第II相試験を実施し、その結果、既承認用量と同一の0.12μL MB/Kgと設定されております。国内第III相試験の成績は、審査報告書8ページの表5、及び上から4段落目中段を御覧ください。主要評価項目とされた病理検査の診断結果をstandard of truthとした場合の単純超音波検査及び造影超音波検査における正診率は、造影超音波検査が87.2%、単純超音波検査が65.5%であり、両検査法間の正診率に有意差が認められました。
 安全性について説明します。審査報告書12ページ、(5)安全性についての項を御覧ください。国内第II相試験及び第III相試験を併合した有害事象発現率は9.2%、副作用発現率は3.9%、発現した有害事象は下痢が2.4%、鼻咽頭炎、頭痛、嘔吐、注射部位疼痛が各1.0%等、すべて軽度の事象であり、本剤投与による死亡・重篤又は投与中止に至った事象も発現しておらず、忍容性は良好でした。また、乳房腫瘤性病変での臨床試験における有害事象発現率は、既承認効能・効果である肝腫瘤性病変の造影に関する臨床試験と比較して低かったこともあり、乳房腫瘤性病変での本剤投与時の安全性について臨床上新たな問題が生じる可能性は低く、添付文書上に新たな注意喚起等を追記する必要はないと判断いたしました。
 続きまして、本剤の位置付けについて説明いたします。審査報告書15ページ、1.臨床的位置付けについての項を御覧ください。国内第III相試験成績から、本剤を用いた造影超音波検査において、単純超音波検査より有意に正診率が向上することが示されていることから、本剤を用いた造影超音波検査の結果は良悪性鑑別のための有用な情報であると判断いたしました。一方、本剤を用いた造影超音波検査では、乳腺腫瘍の確定診断に際して最も重要な根拠とされている細胞診・組織診と全く同じ結果が得られているわけではないことから、本剤を用いた造影超音波検査は、細胞診・組織診に置き換わる位置付けとまではなり得ず、既存の問診・視触診や他の画像診断等と併せて、細胞診・組織診の施行の判断を補助する、又は組織診・細胞診の診断結果の解釈を補助するための位置付けとして使用される検査であり、精密検査の画像診断ツールの一つに位置付けられるものと考えます。また、乳腺疾患は多種多様であり、良悪性の病変が類似した形態を示すことがあるため、乳腺専門の医師あるいは技師であっても画像により良悪性を鑑別することが難しい場合があること、本剤を用いた造影超音波検査には単純超音波検査にはない造影剤の静脈内投与によるリスクがあること、さらに国内臨床試験では乳癌が疑われる被験者が対象とされていたこと等を踏まえると、本剤を用いた造影超音波検査が、国内第III相試験で単純超音波検査より高い正診率が示されたことを以て、スクリーニング目的で安易に実施されることは不適切であると考えます。
 以上のことは、本剤を用いた造影超音波検査の適正使用を徹底するための情報として、本剤を用いた造影超音波検査の適切な判定方法とともに臨床現場に情報提供される予定です。
 最後に、製造販売後調査について御説明します。審査報告書13ページ、(6)製造販売後調査についての項を御覧ください。3,000例を対象とした使用成績調査において、患者背景、安全性、造影超音波検査結果等に関する情報を収集する予定です。さらに、審査報告書17ページ、(2)腫瘍の組織学的分類別の有効性の項に記載したとおり、国内第II相試験及び第III相試験における少数例での検討ではありますが、乳管内乳頭腫、非浸潤性乳管癌及び粘液癌において、造影超音波検査による鑑別診断の正診率が他の組織型と比較して低かったことから、製造販売後調査において、これらの組織型を含めた組織学的分類別の有効性についての情報も収集する予定としております。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第二部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。再審査期間は4年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議の程よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 イベントが率なので、95%信頼区間で一応有意を取っているようですが、感度にはそれほど有意な差がなくて、特異度で差があるのです。そういった意味で、スクリーニングをしないで精密検査で使うのだという理屈は通っているとは思うのですが、マンモグラフィーが女性にとって非常に苦痛であるという現状があって、早くそれを解放してほしいということもあるので、市販後に特異度が高いという点を利用して、マンモグラフィーがどういう場合は省略できるというところまで詰めていただければありがたいと思います。それはあくまでも希望です。審査とは関係のない要望事項ということでお願いします。ほかにありますか。よろしいですか。
 特にないようですので、議決に入ります。なお、清田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととします。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございました。御異議がないようですので、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題6に入ります。事務局からの概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題6、資料6「Ecallantideを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
 資料6の機構による評価報告書をもとに御説明します。申請者はシミックホールディングス株式会社です。希少疾病用医薬品指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に御説明します。対象者数ですが、1ページの下方において、海外の疫学研究においては、本剤の適応となる遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者は1万~5万人に1人と報告されています。国内でのアンケート結果等に基づき、本邦におけるHAEの患者数も海外と大きく異ならないことと考えられ、2,500~1万2,500人程度と推定されるので、指定要件の5万人未満は満たすと考えています。
 医療上の必要性ですが、HAEでは局所の浮腫の急性発作が生じ、特に咽頭に生じた場合には呼吸困難に陥ることがあるほか、胃腸粘膜に浮腫が生じることによる腹痛などが患者のQOLを著しく低下させます。現在、HAEの治療薬としてヒト血液由来C1-INH製剤が承認されていますが、ヒト血液を原料とすることによる感染症の伝播を完全には否定することはできないことなどの課題があります。本剤は、□□□□□□□□□□□□□□□□□□遺伝子組換えタンパク質の皮下投与製剤であり、先ほどの課題を解決することから医療上の必要性はあると考えております。
 開発の可能性ですが、本剤については2009年に米国で承認されているほか、2011年にイスラエルでも承認されております。本邦では、日本人健康成人を対象とした薬物動態等を検討した試験が終了しており、本剤の有効性及び安全性を検討する第II相試験が本年7月より実施予定とされていることから、本剤の開発の可能性はあると考えております。
 これらのことから、希少疾病用医薬品としての指定要件を満たすと考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。疾病の重篤性、頻度、有効性、開発の可能性その他、特段の問題はないでしょうか。
 それでは、議決に入ります。なお、清田委員、前崎委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございました。御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題7に入ります。田村委員におかれましては、議題7の審議の間、別室で御待機をお願いします。
── 田村委員退室 ──
○吉田部会長 それでは、事務局からの概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題7、資料7「レンバチニブメシル酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。申請者はエーザイ株式会社です。
 資料の評価報告書をお開きください。先ほどと同様に、希少疾病用医薬品の指定要件の対象者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に御説明いたします。対象者数ですが、平成20年の患者調査で、甲状腺癌の患者数は約2万9,000人と推定されております。希少疾病用医薬品の指定基準である5万人未満を満たしております。
 医療上の必要性についてですが、甲状腺癌の第1選択治療は外科的切除です。一部の患者では放射性ヨードの内服療法が行われますが、それ以外の甲状腺癌では確立した標準的治療法はなく、治療の選択肢は極めて限られている状況です。
 開発の可能性についてですが、本剤は、海外臨床試験で放射性ヨード難治性の甲状腺分化癌及び甲状腺髄様癌患者に対して、奏効率はそれぞれ50%、35.6%という成績が得られており、現在放射性ヨード難治性の甲状腺分化癌患者を対象にプラセボ対照の第III相試験を実施中です。本邦ですが、国際共同治験に参加しているほか、国内においても甲状腺髄様癌患者等も対象とした第II相試験が計画中で、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 以上3点から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。本剤は国産のオリジナルです。甲状腺癌ですが、5年生存率が90%以上というのは、ほとんど分化型腺癌で、その人たちが生きているということです。髄様癌、未分化癌等は10%以下で、人数的にはものすごく少ないですが、予後は極めて不良で、即死に近い状態になります。しかも、既に外国の第II相試験において抗腫瘍効果が確認されているということであれば、開発の可能性も非常に高いと期待されると思います。国内第II相試験の実施も予定されているということです。皆様よろしいでしょうか。御意見がないようですので、議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を「可」とし薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 田村委員入室 ──
○吉田部会長 それでは、議題8に入ります。事務局からの概要説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題8、資料8「アレムツズマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。申請者はサノフィ・アベンティス株式会社です。
 評価報告書をお開きください。先ほどと同様に、三つの要件について順に御説明いたします。対象者数ですが、平成20年の患者調査で慢性リンパ性白血病の患者数は約2,000人と推定されており、指定基準である5万人未満を満たしております。
 次に医療上の必要性についてです。国内ではフルダラビン、シクロフォスファミド等が慢性リンパ性白血病の適応を有しておりますが、選択肢は極めて限定的であり、また、慢性リンパ性白血病は一度完全寛解を得たとしても再発を繰り返すとされております。本剤は、CD52抗原に対するモノクローナル抗体で、海外のガイドラインにおいても第1選択治療として推奨されていること等から、医療上の必要性は高いものと考えております。
 開発の可能性については、本剤は、海外臨床試験で未治療の慢性リンパ性白血病患者に対して無増悪生存期間(PFS)の中央値は14.6か月であり、対象とされたchlorambucil群に比べて有意に長いことが示されております。欧米等においてもすでに承認されているという状況です。国内においては、再発又は難治性の慢性リンパ性白血病の患者を対象として本薬の有効性及び安全性を検討する第I相試験が実施されており、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 以上3点から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○山口委員 海外で、維持治療でリツキサンとの併用が選択肢とされているのですが、これも開発の一環としてやられるのでしょうか。
○事務局 事務局より回答いたします。今、御指摘いただいた点については、海外のNCCLSガイドラインで二次選択治療としてリツキシマブとの併用が推奨されているという御指摘かと思います。これについては、まだリツキシマブがNCCLSの適応を持っていないので、これについて検討をすることが必要になるかと思います。また、実際併用することについては、最終的な効能・効果をどうするかというところもあるかと思いますので、承認申請されてから精査をして対応していく形になるかと思います。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。ほかにございますか。御意見もないようですので、議決に入ります。なお、奥田委員、清田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととします。お諮りします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございました。御異議がないようですので、指定を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、報告事項1~6をお願いします。
○機構 報告事項議題1、資料9「医薬品ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.8mLの製造販売承認事項一部変更承認及び承認条件の解除について」御説明いたします。
 資料9を御覧ください。本剤は、アダリムマブ(遺伝子組換え)を有効成分とするヒトTNFαに対して、高い親和性と選択性を有するIgG1サブクラスのヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤であり、現在は、既存治療で効果不十分な下記疾患、関節リウマチ等の効能・効果で承認されております。今般、アボットジャパン株式会社より、関節リウマチ治療薬の第一選択薬として位置付けられているメトトレキサートの使用経験がない日本人関節リウマチ患者を対象とした臨床試験において、メトトレキサート併用における本剤40mg隔週投与の関節の構造的損傷の進展防止効果が確認されたとして、関節リウマチの効能・効果に「(関節の構造的損傷の防止を含む)」を追加し、既存治療で効果不十分な関節リウマチに限る旨の限定を削除する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされ、医薬品医療機器総合機構による審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。
 また、関節リウマチの初回承認時において、生物製剤である本剤のリスク・ベネフィットバランスをより明確にできるよう、承認条件として、「本剤の有効性(関節破壊の進展防止に関する評価を含む)及び安全性等を確認するため、適切な対照群を置いた長期(1年以上)にわたる二重盲検比較臨床試験を製造販売後に実施すること。」が付されておりましたが、今般提出された国内臨床試験成績から、当該承認条件の内容について確認できたものと判断いたしました。
 続きまして、報告事項議題2、資料10「医薬品フラジール内服錠250mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。資料10を御覧ください。フラジール内服錠250mgの有効成分であるメトロニダゾールは、菌体内の酸化還元系によって還元を受け、ニトロソ化合物に変化することで抗菌作用及び抗原虫作用を示すとされています。本剤は、欧米で嫌気性菌感染症、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫感染症、感染性腸炎に対して承認を取得しており、国内外の診療ガイドラインで治療薬として推奨されています。この状況を踏まえ、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成24年2月1日に開催された医薬品第二部会における事前評価を踏まえ、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、資料10に記載した効能・効果及び用法・用量にて承認して差し支えないと判断いたしました。
 続きまして、報告事項議題3、資料11「医薬品バクタ配合錠、同配合顆粒、バクトラミン配合錠及び同配合顆粒の製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
 資料11を御覧ください。バクタ配合錠、同配合顆粒、バクトラミン配合錠及び同配合顆粒の有効成分であるスルファメトキサゾールは、微生物体内での葉酸生合成を阻害し、トリメトプリムは葉酸の活性化を阻害することで抗菌作用を示すとされています。本剤は、欧米を含む海外でニューモシスチス肺炎の治療及び発症抑制に対して承認を取得しており、国内外の診療ガイドラインで第一選択薬として位置付けられています。この状況を踏まえ、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成24年2月1日に開催された医薬品第二部会における事前評価を踏まえ、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、資料11に記載した効能・効果及び用法・用量にて承認して差し支えないと判断しました。
○事務局 続きまして、報告事項議題4、資料12「優先審査指定品目の審査結果について(アービタックス注射液100mg)」御報告いたします。
 今回、アービタックス注射液100mg、成分名セツキシマブ(遺伝子組換え)の頭頸部癌の効能追加について、承認申請とともに優先審査の指定申請が出され、優先審査品目に指定しましたので御報告します。資料の2ページに、優先審査の取扱いについて概要をお示ししていますが、優先審査品目に指定するか否かについては、適応疾病の重篤性及び医療上の必要性を総合的に評価して判断することとしております。
 5ページを御覧ください。1番目の適応疾病の重篤性については、申請された頭頸部癌は生命に重大な影響がある疾患に該当すると考えております。2番目の医療上の有用性についてですが、頭頸部癌に対してフッ化ピリミジン系や白金系の薬剤が承認されており、既存の治療法はあると考えています。その下のイの部分ですが、本剤については、放射線療法や白金系薬剤を含む併用化学療法を対象とした海外第III相試験において、全生存期間の有意な延長を認めております。安全性については忍容可能と考えており、本薬は有効性等の観点から医療上の有用性は既存の治療法より優れていると判断しています。
 これらを総合的に判断して、本申請を優先審査とすることとしました。この品目については、審査を経たのちに、この部会で承認の可否について御審議いただくことになりますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、報告事項議題5、資料13「医療用医薬品の承認条件の解除について(ベクティビックス)」御説明いたします。2ページですが、ベクティビックス点滴静注100mgほかについては、平成22年4月16日にKRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の効能・効果で承認されており、その際に全例調査の承認条件が付いております。今般、この承認条件に関して武田薬品工業株式会社及び武田バイオ開発センター株式会社よりデータが提出され、機構における審査が終わりましたので御報告いたします。3ページの調査結果の概要ですが、本剤の特定使用成績調査については、目標解析症例数は2,000例、観察期間は10か月とされ、合計で3,006例の調査票が収集され、調査結果がまとめられております。
 安全性については4ページから記載しております。副作用が発現した症例が83.7%、6.8%で重篤な副作用が認められております。皮膚障害等の重点調査項目については、添付文書で更なる注意喚起を要するような問題となる状況は認められておりません。有効性については、無増悪生存期間の中央値が13週という結果が得られており、本調査の結果を踏まえた添付文書等の改訂、ホームページでの副作用発現状況の公表が行われています。これらのことから、承認条件の内容については確認できたものと判断しております。
○機構 報告事項議題6、資料14「医療用医薬品の再審査結果(メフロキン塩酸塩)」について報告いたします。資料14ですが、これは医薬品再審査確認等結果通知書です。
一般的名称はメフロキン塩酸塩、販売名はメファキン「ヒサミツ」錠275のものです。この品目については、製造販売後の使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。報告事項は以上です。
○吉田部会長 議題1が承認条件の解除及び効能・効果の変更、議題2、議題3が公知申請、議題4が優先審査の報告、議題5が承認条件の解除、議題6がカテゴリー1の再審査報告となっております。委員の先生方から御質問等がありましたらお願いします。
○前崎委員 フラジールについて、公知申請もクロストリジウム感染腸炎が適応症として挙がっているのですが、実際にここでは感染性腸炎となっています。感染性腸炎というと、例えばウイルス性の感染性腸炎や細菌性赤痢などクロストリジウム感染性腸炎とはかなり違う疾患も考えられるので適応症は「偽膜性大腸炎」と書いていただくか、あるいは「クロストリジウム感染の腸炎」と書いていただいた方が、間違いがないと思うのです。どうして公知申請ではそういう文言が、ここでは感染性腸炎に変わっているのか、その辺の経緯を教えていただきたいと思います。
○機構 機構よりお答えいたします。この効能・効果については、バンコマイシンに併せて設定されております。
○前崎委員 ただ、これはクロストリジウム感染の腸炎の治療薬として、非常に有効な薬剤です。「感染性腸炎(偽膜性腸炎を含む)」と書いてありますが、「偽膜性大腸炎」という言葉できちんと書いていただいた方が、間違いがないような気がするのです。いかがでしょうか。
○審議役 これは通常の申請と違って、未承認等検討会のものですので、その辺の整理をした上で、先生の御要望が反映できるかどうかも含めて検討させていただくということでよろしいでしょうか。
○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。
 御意見がないようですので、ただ今の報告事項については御確認いただいたものとします。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告等はありますか。
○事務局 次回の部会の予定です。既に御案内しておりますが、9月6日(木)午後3時から開催したいと思います。よろしくお願いします。
○吉田部会長 最後に、委員の先生方から何か追加のコメント等はありますか。
 特にないようですので、本日はこれで終了とさせていただきます。ご苦労さまでした。


(了)

備考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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