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薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会議事録
2012年6月22日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会議事録
○日時
平成24年6月22日(金)
○場所
厚生労働省 専用第21会議室
○出席者
出席委員(18名) 五十音順
○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 石 井 明 子、 今 井 聡 美、 |
◎笠 貫 宏、 川 上 正 舒、 齋 藤 知 行、 塩 川 芳 昭、 |
正 田 良 介、 鈴 木 邦 彦、 高 橋 好 文、 田 島 優 子、 |
千 葉 敏 雄、 中 谷 武 嗣、 西 田 幸 二、 菱 田 和 己、 |
欠席委員(5名)五十音順
木 村 剛、 倉 根 一 郎、 武 谷 雄 二、 寺 崎 浩 子、 |
行政機関出席者
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) |
梅 澤 明 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長) |
佐久間 一 郎 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長) |
○議事
○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、ただ今から「薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会」を開会いたします。委員の先生方におかれましては、御多忙の中、御出席いただき誠にありがとうございます。本日は医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、15名の御出席をいただいております。薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告いたします。また、鈴木委員、千葉委員、中谷委員におかれましては、遅れて御出席との連絡が入っており、3名の委員が御出席されますと18名の御出席となることを付け加えさせていただきます。
まず初めに、6月1日付け人事異動におきまして、医薬品医療機器総合機構に、矢守センター長、佐久間副センター長、梅澤副センター長がそれぞれ就任しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
続きまして、本日の議題の公開・非公開の取扱いにつきまして御説明いたします。平成13年1月23日付の薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日の議題1~3につきましては、医療機器の承認審査に関する議題であり、企業情報に関する内容等が含まれるため、すべて非公開といたします。それでは、これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。それでは、以後の進行につきまして、笠貫部会長、どうぞよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 まず、事務局より配付資料について確認をお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 資料の確認をいたします。まず資料1「医療機器『ジャック』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」。資料2「医療機器『MOMAウルトラ』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」。資料3-1「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(自己検査用血液凝固分析器)(諮問書)」。資料3-2「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(歯科矯正用アンカースクリュー)(諮問書)」。資料4-1「医療機器『セルソーバE』の再審査報告について」。資料4-2「医療機器『プリズム2DR』の再審査報告について」。資料4-3「医療機器『ベンタックプリズム2DR』の再審査報告について」。資料5「競合品目・競合企業リスト」。参考資料1「薬事分科会審議参加規程」。参考資料2「クラス分類ルール(平成16年7月20日付薬食発第0720022号厚生労働省医薬食品局長通知)」。以上でございます。
お手持ちの資料について不足分がありましたら、事務局にお申出いただければ準備いたします。どうぞよろしくお願いします。
○笠貫部会長 先生方、資料はお揃いでしょうか。それでは議題に入ります。まず、本日の審議事項に関与された委員の方と利益相反に関する申出状況につきまして事務局から御報告をお願いいたします。
○事務局 審議事項に関する影響企業の調査について御報告いたします。資料は、資料5と参考資料1になります。これらの報告については、平成20年12月19日付の薬事分科会で決定された薬事分科会審議参加規程に基づくものです。皆様から毎回御報告をいただいておりますので、概要は御存じかと思いますが、過去3年度にわたり寄付金・契約金等の額について競合企業と申請企業から申告をいただきまして、その結果に応じて審議不参加、もしくは議決の不参加という形を審議会規程として定めさせていただいています。
資料5の「競合品目・競合企業リスト」を御覧ください。表紙になっているのが、議題1の「ジャック」についてです。申請者は株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングです。競合品目はございません。
次のページが議題2の「MOMAウルトラ」についてです。申請者は日本メドトロニック株式会社で、競合品目として3品目あります。1点目が、日本メドトロニック株式会社の「ガードワイヤ・プロテクションシステム」。2点目が、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の「アンジオガード」。3点目が、ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社の「フィルターワイヤーEZ」となっています。いずれも本品と同様に、頸動脈ステント留置術中に使用される塞栓防止用プロテクションデバイスです。
また本日の審議事項に関する影響企業につきまして、委員の皆様から寄付金・契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、薬事分科会審議参加規定第12条「審議不参加の基準」、又は第13条「議決不参加の基準」に基づき、御退出いただく委員、及び議決に御参加いただけない委員はいらっしゃいません。以上、報告いたします。
○笠貫部会長 ただ今の御報告について、御意見はありますでしょうか。それでは議題に入ります。本日は参考人の先生方のお時間の関係から、議題2から審議をいたします。議題2「医療機器『MOMAウルトラ』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」審議を行います。本議題の審議に当たっては、千葉県救急医療センターセンター長小林繁樹先生にお出でいただいています。よろしくお願いいたします。まず、審議品目の概要について事務局より説明をお願いします。
○事務局 審議品目の概要について御説明します。資料2を御覧ください。1枚目は「MOMAウルトラ」の諮問書です。次に一つ目のタグ、審査報告書の2ページを御覧ください。一般的名称が「中心循環系塞栓捕捉用カテーテル」、販売名は「MOMAウルトラ」、申請者は日本メドトロニック株式会社です。品目の概要としては、お手元の当日配付資料を御参照いただければと思います。
使用目的としては、3ページ目にありますように、内頸動脈病変のステント留置術に際し、病変部にカテーテルを通過させることなく、本品単独で総頸動脈及び外頸動脈を閉塞させることにより、塞栓物質(血栓、デブリ等)の脳循還への流入を阻止し、吸引除去するために使用される塞栓防止デバイスです。具体的な使用方法が、6ページもしくはお手元の当日配付資料にあります。今回「MOMA ウルトラ」は、新使用方法の医療療機器であるため再審査期間を3年とし、また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えております。詳細については、機構から御説明をお願いします。
○機構 議題2、資料2「医療機器『MOMAウルトラ』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
まず資料2の諮問書の専門委員の一覧を御覧ください。本審査では、御覧の4名の専門委員の御意見をいただきました。
本品の概要から説明いたします。審査報告書の4ページ及び当日配付資料を御覧ください。本品は、3本の管腔からなるシャフト、シャフト遠位側にマウントされた2個のコンプライアントバルーン及びシェルを含む手元側部分から構成される本体部分と附属品から構成され、当日配付資料の表面1ページの下段右図に示すように、頸動脈ステント留置術の際に、バルーンを拡張して総頸動脈及び外頸動脈を閉塞させることで、頸動脈ステント留置部位より近位の頸動脈分岐部付近の血流を遮断し、手元側シェルの3つあるチャンネルの中程にあるワーキングチャンネルからシリンジで血液吸引することにより、頸動脈ステント留置の際に生じる塞栓子を除去するもので、これにより遠位塞栓の防止が期待されます。
本邦における既承認の頸動脈ステント術併用プロテクションデバイスは、当日配付資料の下段左図に示すフィルタープロテクションデバイスが3品目、中程の図に示すバルーンプロテクションデバイスが1品目あります。いずれも狭窄部位より遠位に留置して用いられているプロテクションデバイスであるため、ステントを留置する前に病変部にカテーテルを通過させる必要があり、この場合、カテーテル通過時に塞栓子が飛散し、脳循環に流入する恐れがあります。これに対して、本品は総頸動脈と外頸動脈を閉塞する二つのバルーンと塞栓子を吸引除去するための吸引システムが一体型となった中枢側のプロテクションを行う初めての機器であり、機器が狭窄部位を通過する前から塞栓防止が行えるという利点があります。
本品は、頸動脈に位置する病変又は頸動脈分岐部を含む病変の血管形成又はステント留置中に伴う脳塞栓症からの脳保護を適応として、2010年3月にインバティック・ジャパン株式会社より申請され、その後2010年8月に日本メドトロニック株式会社に承継されています。
非臨床試験成績に関する論点について説明いたします。審査報告書の10ページを御覧ください。機器の性能を裏付ける試験として、動物試験が実施されています。安全性について特段の影響は認められておらず、また性能評価については、一人の医師による評価であり、バイアスが払拭できないことを踏まえると、適切に評価できているとは判断し難いものの、本品の主目的である血流遮断は確認できており、ヒトへの使用を否定するような結果は得られていないものと判断しました。
続いて本申請に添付された臨床試験成績について説明します。審査報告書12ページからになります。本品の改良前製品である「MOMA」をFDAで承認された頸動脈ステントと併用した場合の有効性及び安全性を評価することを目的として、頸動脈内膜剥離術における合併症発症リスクが高いと考えられる患者を対象に、多施設共同非無作為化試験が欧州及び米国で実施されました。なお、改良前製品から本品への改良点は、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□を□□□□□□□□から□□□□□へ変更したこと、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□こと、□□□□□□□□□□□□□□□□□□ことであり、塞栓性能に影響を及ぼすような変更ではないことから、機構は改良前製品を用いた臨床試験の成績で本品の有効性及び安全性を評価することは可能であると判断しております。
本試験ではRoll-in試験群37例、ピボタル試験群225例の計262例が登録され、包括解析集団(ITT集団)はピボタル試験群の225例とされました。審査報告書15ページの表2を御覧ください。Roll-in試験群及びピボタル試験群における主要エンドポイント及び副次エンドポイントの結果を示しています。
本試験の主要エンドポイントは、表の一番上に記載しております手技後30日までのMACCE(主要な心臓及び脳血管有害障害)、心筋梗塞、脳卒中、死亡の複合発症率とされ、達成目標は、頸動脈ステント及びFDAの承認を受けた4種類のプロテクションデバイスを用いた5件の臨床試験の報告値から13%と設定されましたが、ピボタル試験群で2.7%、MACCE発生率の片側95%信頼区間の上限値は5.2%であり、予め設定された目標である13%未満を達成しておりました。またその他の副次エンドポイントにおいても良好な成績が得られております。
安全性についてですが、Roll-in試験群及びピボタル試験群における有害事象の総発現率は73%及び58.7%であり、いずれかの試験で3%以上の発現率でみられた有害事象は審査報告書16ページの表3にお示ししたとおりで、低血圧、高血圧、徐脈が多く発現しておりましたが、これらの事象は頸動脈ステント留置による頸部圧迫に伴う頸動脈洞反射で変わると考えております。ピボタル試験群でみられた重篤な有害事象の発現率は16.4%であり、主な事象は低血圧2.7%、貧血1.8%、腎不全1.3%でした。また、神経系障害として脳血管発作及び失神が各2例、頸動脈狭窄、脳過灌流症候群、塞栓性脳卒中、虚血性脳卒中、意識消失が各1例にみられています。
これらの有害事象は、本品が既存の治療法に使用されるガイディングカテーテルより広径のために上昇することが考えられるものの、本品に特有な有害事象ではなく、広径のカテーテルを使用する際の適切な患者選択や手技の教育を行うことにより、医療現場にて大きな問題となることはないと考えています。
続いて、審査における論点について説明します。審査報告書26ページ「5.総合評価」の一つ目の論点、1.「海外臨床試験の外挿性と本邦における本品の有用性について」ですが、海外臨床試験において、主要評価項目である「手技後30日までに発生したMACCE」の発生率は2.7%であり、既承認のプロテクションデバイスの報告値(4.4~8.6%)と比較して、同程度の成績が得られていることから、本品の有効性は示されていると判断しました。また、当該成績の外挿の妥当性については、当該治療に関する日米の医療環境の差は大きくなく、本品の本邦の医療環境への適合性については概ね問題ないと考えますが、当日配付資料の裏面2ページの上の図の右に示していますように、アジア人では白人と比較して総頸動脈に上甲状腺動脈の起始部がある確率が高いことが報告されており、バルーン閉塞時に側肢血管からの血液の流入が生じる可能性が高いことが想定されます。しかしながら、本品の添付文書において、外頸動脈及び総頸動脈閉塞後に血管造影法によって血流遮断を確認することを求めており、本品による血流遮断が確認された患者のみに頸動脈ステント留置術が行われることとなっていることから、民族的な解剖学的構造が異なっていても、同じ解剖学的用件を満たす症例のみが適応となるため、提出された海外臨床所見成績を以て本邦における本品の有効性及び安全性を評価でき、日本人においても本品の有用性は得られると判断しました。
続いて二つ目の論点、2.「本品を使用する際に想定されるリスクについて」。当日配付資料裏面2ページの下の図を御覧ください。本品を併用して頸動脈ステント留置術を施行する際、ステント留置部位が総頸動脈にまで及ぶと、留置されたステントと総頸動脈壁との間に本品の遠位部分が挟まれる状態になる可能性があり、本品の抜去困難やステント破損が懸念されます。海外臨床試験では、抜去困難やステント破損が生じた報告はされていませんが、留置されたステントと動脈壁との間に本品が挟まれていたかどうかという情報は収集されておらず、非臨床試験においてもステントと動脈壁との間に挟まれた状態にある本品が問題なく抜去できることは検証されていません。以上を踏まえると、当該状態となる可能性が高い「頸動脈分岐部を含む病変」に本品の使用を推奨することは好ましくないため、本品と併用するステント留置部位を「内頸動脈病変」とし、本品の使用に当たっては、動脈壁との間に本品が挟まれた状態でステントが留置されることのないよう留意する旨、添付文書で注意喚起するとともに、講習などにおいても十分に指導を行う必要があると判断しました。
以上の二つの論点、並びに本品は本邦初のプロキシマルプロテクションデバイスであることを踏まえ、本品が有効かつ安全に適正使用されるためには、患者の血管走行性を考慮し、本品の適応について慎重に判断する必要があることから、本品に関する講習を受講し、十分な知識・経験を有する医師が使用するよう、承認条件1を付すことが妥当と判断しました。
また、頸動脈狭窄症治療においては、病変部位から飛散した微小な塞栓子が遠位において塞栓を引き起こすことが治療における問題点の一つと認識され、塞栓子の捕捉が不十分であることなどにより生じた合併症を重症化させないためには、脳卒中などの合併症に対し早急に対応する必要があると考えられることから、十分な体制が整った医療機関で本品が使用されるよう、承認条件2を付すことが妥当と判断いたしました。
さらに、本申請に当たり提出された臨床試験成績は海外で実施されたものであり、日本人における本品の有効性及び安全性のデータは示されていないこと、本品は本邦で初めてのプロキシマルプロテクションデバイスであり、二つのバルーン位置が固定されていることから、留置部位に留意した手技が必要であること、本品は脳外科、循環器科、放射線科、血管外科などの様々な医師が使用することなどから、本品の教育訓練を受講した各診療科の医師による適正使用及び安全性の確認を行い、注意喚起の追加や教育訓練の内容の変更などの必要性について検討することが重要であると考えられることから、再審査期間中、調査予定症例のうち一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施するよう、承認条件3を付すことが妥当と判断いたしました。
以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。再審査期間は3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えます。
なお、本日欠席の木村委員からは、「海外臨床試験結果に基づく承認であり、市販後の全例の使用成績調査により日本人データの補完を行う必要がある」とのコメントをいただいております。また、武谷委員からは、特に御意見のない旨のコメントをいただいています。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 どうもありがとうございます。参考人の小林先生から何か付け加えることはありますか。
○小林参考人 審議の過程は今報告があったとおりなのですが、このデバイスの意義がなかなか難しいと思うので、その部分について少し追加させていただいてよろしいでしょうか。
当日配付資料の1ページにありますように、このステント治療をする場所に、コレステロールの固まり等がくっついているところから、いろいろな潰れたものが頭の中に流れていくのが非常に怖いということで、現在までフィルターを使ったり、この病変のもっと奥の部分をバルーンで塞いで血流を遮断して、そういうものが脳に流れないように工夫してきたわけですけれども、この図にある左の二つの方法ですと、こういう道具を最初にこの細いところを通すときには特に守りがありませんので、そのときにどうしても少し流れてしまう危険があります。それを補う方法として、総頸動脈で血流を遮断した状態で作業をすれば脳の方に血液がいかないのではないかということで、もともとこういうパロディ法というのがあったのですけれども、人間の総頸動脈を止めると、血流は実は止まるのではなくて、顔の方にいっている外頸動脈から血液が逆に内頸動脈に流れていくという、多くの方でこういう構造をしていますので、総頸動脈を止めるだけでは駄目で、外頸動脈も止めればほぼ完全に血液の流れを止めることができるということで、こういうやや複雑な道具立てになっています。
先ほど、御紹介にありましたように、日本人の場合には、甲状腺にいく動脈がこの総頸動脈から出る割合が多いものですから、これでもまだ遮断し切れないことがあります。その場合に、それは造影剤を使ってきちんと評価してくださいということを強く警告することが必要でしょうということになったわけです。そういう道具立てということだけ追加で説明させていただきます。
○笠貫部会長 ありがとうございます。それでは本件について、各委員の先生方から御意見、御質問をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
従来の3種類のプロテクションに比べますと、新規性の高いものということで御説明いただきましたし、その臨床的な意義についてもお話いただいたと思うのですが、いかがでしょうか。
○塩川委員 杏林大学で脳外科をやっています塩川と申します。添付文書の「禁忌」のところに「同側総頸動脈の重篤な疾病」と書いてあるのですが、これは要するに動脈硬化性病変が、内頸動脈分岐部をまたいで総頸動脈に伸びているということと同じことを指すのですか。あるいは別のことを指しているのでしょうか。ここが少し分かりにくいように思います。臨床の現場では、内頸動脈の分岐部にあるような病変が、特に手術をしていますと、しばしば総頸動脈にも少しぐらい入ってくることがありまして、その辺の境目というのはかなり微妙なところがあって、まず、この添付文書の文言がそういうものを指しているかどうかということ。総頸動脈に少しでもかかっていると禁忌になると余り言うと、その結果だけが独り歩きする懸念があると感じますので、この添付文書の禁忌の「重篤な疾病」と書いてある部分の表現の御説明などをお願いしたいと思います。
○機構 機構より説明申し上げます。もともとの意味としては、この本品の太い部分を通す部分、ですから分岐部よりだいぶ手前のところに重篤なものがあるものを外すという意味合いでここに書かれていると思います。
○塩川委員 それは総頸動脈そのものの何らかの病変の話で、この治療対象となっている粥腫というか狭窄性病変が、内頸動脈から少し総頸動脈に伸びているということを言っているのではないということですか。
○機構 はい。元来、総頸動脈分岐部も含まれている状態で申請が上がってきておりました。そのときにもこれが書かれていまして、もともとは総頸動脈の低い起始部から分岐部のところまでという意味合いであったものと思います。先生がおっしゃる総頸動脈の分岐部のところの少しはみ出すような病変に関しては、実際に現場の医師の判断によるものと思いますけれども、一番問題となりますのが、先ほどお話がありましたように、ステントがその総頸動脈の方までずっと下がってきまして、資料の絵にあるような、本品が血管壁とステントの間に狭まれるような状況になるような書き方はしないようにという形の病変に限る形になると思います。
○塩川委員 そうしますと、やはり添付文書の禁忌というのは非常に重要な意味を持ってくる場所の記述だと思いますので、もう少し分かりやすく記載されるといいのではないかと思いますが、いかがですか。
○機構 先生のおっしゃるとおりと思いますので、検討させていただき対応させていただきたいと思います。また引っかかることに関する注意喚起につきましては、「重要な基本的注意」の22)に「本品シャフト遠位部が留置ステントと頸動脈壁の間にはさまれないよう、ステント留置位置に十分に注意すること」という旨、注意喚起しています。
○笠貫部会長 塩川委員はそれでよろしいでしょうか。ほかにございますか。
海外のデータを日本に外挿するという根拠は十分書かれていると思います。その中で日本人の場合には上甲状腺動脈の特性があるかもしれないということで、全症例市販後調査があるのですが、そのことについてチェックできる項目というのはどこになりますか。
○機構 お手元にある使用成績調査実施計画書(案)には、特段まだ欄がないようです。ただ審査報告書でも書かせていただいたように、狭窄部位の位置とか長さ、程度、また部会長からお話いただいた上甲状腺動脈の位置に関しては、しっかり調査いただくよう申請者には今後、対応を求めていきたいと思います。
○笠貫部会長 この調査票の中にも書いておく方がいいかもしれませんね。
○機構 了解いたしました。
○笠貫部会長 それ以外にはございますか。よろしいですか。
先ほどの脳外科、循環器科、放射線科、血管外科の4つの診療科にまたがるので、医師基準を作ったとしてもその徹底が難しいかという感じがします。どのように医師基準を徹底するかということと、共通のガイドラインというものが作られるのかどうかについては検討されているのでしょうか。
○機構 この頸動脈ステント留置術そのものの手技自体が、既に11学会からの委員会が成り立っていまして、そちらの方でガイドラインが定まっていますので、基本的手技に関しましてはそちらの方で術者等が定まっています。その中で、本品をどう使うかというところに関しましては、企業の方からの教育訓練という形で、選抜された術者に対して行っていくという形になっています。
○笠貫部会長 先ほど塩川委員から御指摘がありましたが、適応については、既にできあがったこれまでの機種に対するガイドラインを作成したところに、この機器について加えるものがあれば検討するということでよろしいですか。
○機構 それでよろしいと思います。
○笠貫部会長 Roll-in試験というのはここでは初めてかと思います。今回は海外データのARMOUR試験で通っているわけですが、Roll-in試験というのはアメリカでどのような位置付けになっているのでしょうか。
○機構 一般的な話で申し訳ないのですが、手技が新しいとかという場合には、慎重に試験を進めるために有効な手段という認識で行われているものだと思っています。
○笠貫部会長 フィージビリティスタディのような意味合いですか。
○機構 はい、フィージビリティスタディです。
○笠貫部会長 それ以外にございますか。それでは特になければ議決に入りますがよろしいでしょうか。新規性の高い、そして既にヨーロッパではCEマークを取っていて、アメリカでは510(k)で認可されていて、海外では十分な臨床実績があるということで、本邦への外挿可能の根拠も十分に示されていると思いますが、よろしければこれで議決に入りたいと思います。
医療機器「MOMAウルトラ」について、本部会として、審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、また、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては、次回の薬事分科会で報告させていただきます。
これで議題2が終了いたしましたので、参考人の小林先生、お忙しいところありがとうございました。
── 小林参考人退室 ──
○笠貫部会長 次の議題に進みます。「医療機器『ジャック』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」審議を行います。本議題の審議の参考人として、一般社団法人日本人工関節研究所所長の勝呂徹先生に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。審議品目の概要について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 審議品目の概要について御説明いたします。資料1を御覧ください。1枚目は「ジャック」の諮問書です。一つ目のタグ、審査報告書の2ページを御覧ください。一般的名称が「ヒト自家移植組織」、販売名は「ジャック」、申請者が「株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」です。品目の概要としては、六つ目の資料概要イの4ページにある、図イ-1に外観があります。また、6ページの図イ-4に培養軟骨の模式図がありますので御参照いただければと思います。
先ほどの審査報告書の2ページに戻ります。本品は、自家軟骨細胞をアテロコラーゲンゲル中で三次元培養し、自家培養軟骨細胞とコラーゲンゲルの複合体として製品化されたもので、本邦で初めての整形外科療域に用いる細胞・組織加工製品です。使用目的は3ページにあるように、膝関節における外傷性軟骨欠損症、又は変形性膝関節症を除く離断性骨軟骨炎の臨床症状の緩和とされております。他に治療法が無く、かつ軟骨欠損面積が4平方cm以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限られております。
今回の「ジャック」は新構造医療機器に該当し、本品の特性及び対象患者数を考慮し、再審査期間を7年、また自己由来細胞を加工した製品であり、製造工程で使用される原料等から、生物由来製品に該当し、特定生物由来製品には該当しないと考えております。詳細については機構から説明をお願いいたします。
○機構 議題1、資料1「医療機器『ジャック』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構生物系審査第二部より御説明申し上げます。
本品は、患者自身の軟骨組織から分離した軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルに包埋して培養した自家培養軟骨細胞製品です。
膝関節の軟骨欠損に対する治療法としては、保存治療のほか、外科的治療法として欠損部周辺を滑らかにする関節デブリドマン、血液や骨髄の露出を促すことで軟骨組織の修復を図る骨穿孔法、患者自身の非荷重部にある正常軟骨を移植する自家骨軟骨柱移植術などが行われています。しかし、これらの治療法は、長期的な効果や適用可能な欠損面積などに限界があるとされています。本品は、軟骨基質の産生により、膝関節軟骨全層欠損の欠損部位を補綴・修復するとともに、関節機能を改善することを目的として開発されたもので、今般、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングより承認申請されたものです。なお、海外において販売承認実績はありません。本品の専門協議に御参加いただいた専門委員は、諮問書の次のページにお示しした14名の専門委員です。
本申請に関する審査の概要について御説明いたします。本品の品質については、審査報告書7ページ以降に記載しております製造方法、審査報告書9ページから記載している工程検査及び出荷試験により、一定の品質は確保されていると判断いたしました。ただし、最終製品に残留するウシ胎児血清、抗生物質等については、アナフィラキシー等が発生する可能性は否定できないことから、本品使用に当たっては、事前にアレルギー検査や問診を行うとともに、添付文書等において、本品移植時にアナフィラキシー等が起きる可能性について注意喚起することが必要と考えております。
次に臨床試験成績についてです。審査報告書30ページ以降を御覧ください。軟骨が欠損した患者に、自家培養軟骨を移植し、本品の有効性及び安全性を検討することを目的として、外傷性軟骨欠損症、離断性骨軟骨炎、又は変形性膝関節症であり、移植面積1~10平方cmの患者を対象とした、非盲検非対照試験が実施されました。
主要評価項目は、術前と本品移植12か月後での臨床症状のスコア及び関節鏡評価のポイントで評価され、副次評価項目として、膝関節の機能評価として広く用いられているLysholm Knee Scoreでの評価、またMRI、関節鏡による画像評価が実施されています。本臨床試験成績に関しては、審査報告書36ページ以降に記載いたしましたように大きな論点があり、主なものとして、対象疾患の特性の違いに応じた本品の適切な有効評価がなされていないこと、標準的な既存治療法が存在する患者層において、既存治療法との比較評価が可能な臨床試験計画となっていないこと、また、申請者が採用した臨床症状のスコアの科学的妥当性が示されていないことなどでありました。
専門協議の議論においても、提出された臨床試験成績から、本品の有効性、及び臨床的位置付けを評価することは困難であると結論されました。しかし、申請者が想定する本品の適応対象患者の中には、既存治療法では十分な治療効果が期待できず、また想定される患者数が非常に少ないために、新たな臨床試験の実施は困難な対象も含まれていることを考慮した評価検討の可能性について、専門協議の中で議論され、機構は本臨床試験により得られた結果を最大限活用し、個別症例ごとに臨床的観点から評価を行いました。
有効性については、審査報告書50ページにお示ししますとおり、個々の被験者における有効性を検討した結果、臨床症状については鎮痛剤の使用や、リハビリテーション等の影響は否定できないものの、評価が可能であった23例全例において、本品移植後にLysholm Knee Scoreによる臨床症状の改善傾向が認められており、一定の有効性は期待できるものと判断しました。
一方、移植部位のMRI画像所見については、本品移植12か月後において、本品が正常軟骨様組織に置き換わる画像や、硝子軟骨組織の特徴を示す所見は得られていないと判断しております。また、動物を用いた効力又は効果を裏付ける試験においても、軟骨組織の再生を裏付けるデータは示されていないことから、本品をいわゆる再生医療を目的とした製品と位置付けることは困難と判断し、これらの情報は添付文書等において適切に情報提供する必要があると考えております。
安全性については、審査報告書54ページにお示ししております本臨床試験の対象患者33例で報告された、全有害事象について検討した結果、機構は移植12か月後まで本品の安全性については忍容可能と判断しました。ただし、評価対象とされた症例は少数例であり、データは限られていることから、長期的な安全性を含め、製造販売後に継続的に安全性に関する情報を収集することが必要と判断しました。
以上から、審査報告書54ページにお示ししたとおり、本品の臨床的位置付けとして、他に治療法のない患者に対して、新たな治療機会を提供する観点から、標準的な外科治療法がない、すなわち軟骨欠損面積が4平方cm以上ある外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎に限って、本品の臨床的意義はあるものと判断しました。
以上の審査を踏まえ、審査報告書58ページにお示しした「使用目的、効能又は効果」とし、「承認条件」として、製造販売後の一定期間は全例調査を実施すること、及び関連治療に精通した医師及び施設における使用を求めることが必要と考えております。本品の再審査期間は7年と判断し、また本品は生物由来製品に該当するものと判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。
最後に、事前に石井委員、武谷委員、木村委員より御意見、御質問等をいただいております。石井委員から事前に「本品は生物由来製品ではなく、特定生物由来製品に指定すべきではないか」との御意見を頂戴しております。これについて機構は、本品で使用しているヒト又は動物由来細胞は、患者の自己由来細胞だけであること、またほかの生物由来原材料は、生物由来原料基準に適合していることから、細胞加工製品であるため、最終工程におけるウイルス除去等の処理が行えてはいないものの、特定生物由来製品の要件とされる、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための措置を講じることが必要とすれるまでのものではないと判断し、専門協議でも同じ意見をいただいたことから、最終的に生物由来製品への指定が適切と判断しております。
本日御欠席の武谷委員から事前に「審査報告書等に記載の安全性評価において記載している『重篤』という表現について、一般的に重篤とは生命にかかわるものと理解されているが、本件における重篤もそのような解釈でよいのか」との御意見をいただいております。審査報告書等に記載しております有害事象のうち、「重篤」と分類したものについては、ICH E2Aガイドラインに定められている、重篤な有害事象の要件のうち、入院又は入院期間の延長が必要となるものに相当する事象であったことから「重篤」と分類しているものであり、死亡に至るものや、生命を脅かすものではなかったことからこのように記載しております。
本日御欠席の木村委員より事前に「本品について使用成績調査の徹底を図る必要がある」旨の御意見をいただいております。これについて機構は、使用成績調査の計画・内容について、製造販売開始までに申請者と協議を行うとともに、使用成績調査の実施報告を徹底指導してまいりたいと考えております。
機構からの報告は以上になります。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 それでは、参考人の勝呂先生から付け加えることがありましたらお願いいたします。
○勝呂参考人 我々が、整形外科の領域で軟骨の大きな欠損というのは、なかなか良い修復方法がないのが現状です。機構から説明していただいたのですが、外傷性軟骨欠損症と離断性骨軟骨炎、特に離断性骨軟骨炎というのは、20歳より若い世代に起きて、症例によって、荷重部にできる大きな骨軟骨欠損という形になったものは、なかなか良い方法がありません。そして小さなものには、治療法として「モザイク骨軟骨移植」があり、他の部位からの骨軟骨柱を移植しており、十分良い成績が得られている。文献的にも1~4平方cmの範囲は非常に良い成績が得られ得られている。外傷性の骨軟骨欠損症はどういう場合に起きるかというと、一つには直達外力によることが多く、比較的若年層のコンタクトスポーツなどで起きる頻度が高いとされています。代表的な損傷例は、前十字靭帯損傷に伴う骨軟骨損傷です。前十字靭帯損傷の発生メカニズムから骨軟骨損傷が生じます。前十時靱帯損傷の手術的治療の必要性は、歩行時に生じる膝の不安定性があることからです。直達外傷と繰り返す不安定性による軟骨損傷が見られます。放置すると繰り返し生じる異常負荷に結果、かなり広い範囲の欠損が起きてきます。対象年齢が比較的若年者が多く、広範囲の軟骨欠損に対しては、モザイク法やマイクロフラクチャー法などにて対応しております。小範囲の軟骨損傷であれば、自然治癒能力がある程度期待できますが、広範囲の軟骨欠損には、良い治療法がなく、部分的モザイク法、骨切り術で荷重を逃がすなどの治療法を選択しています。広範囲の軟骨欠損には、良い治療法がないのが現状です。このような現状の治療法に加えて、自家培養軟骨細胞のシートが導入できるということは、広い範囲の軟骨欠損に関して、そこの部分を自家細胞で修復できる可能性を持てるということは、新しい治療法をして期待出来ます。
臨床的に必要とされる頻度に関する正確なデータは持っていませんが、前十字靭帯再建がおおよそ年間10,000~15,000件ぐらい行われています。比較的早期に前十字靱帯再建を行った場合には、軟骨変性も無く、また軟骨欠損も進行しておりませんので軟骨移植は必要ありません。不安定膝の状態を放置すると広範な軟骨欠損が起きます。治療法は、比較的早期に前十字靭帯の再建をするようになったので、この治療法が適応となるのは、最高でも年間1,000例以下ではないかと予測しております。比較的若年者に生じるが広範囲軟骨欠損に対する治療法として、患者さんのためになるものと私は思っております。
○笠貫部会長 本品は、細胞・組織加工製品としては、本邦で2番目の審議になると思いますが、整形外科領域では初めてとなりますので、十分な御審議をいただきたいと思います。各委員の先生方から御意見、御質問がありましたらお願いいたします。
○西田委員 質問をさせていただきます。まず一つ目ですが、類似の外国製品として、既に「Carticel」は1990年代、それからここに記載されていた「ChondroCelect」といったものが既に外国ではあります。市販後臨床でかなり使われていると思うのですけれども、市販後の臨床の成績がある程度報告されていたら教えてください。
○勝呂参考人 従来行われている治療法は、フリー(遊離)の細胞です。フリーの細胞を、自家軟骨から培養された細胞を戻す方法です。十分な臨床データの蓄積がなく、その成績にもばらつきがあることがわかってきています。海外で承認されるまで、本邦でもかなり臨床のトライアルはされているのですが、まだ一定した成績まで来ていないのが現状です。ですから、小範囲の軟骨欠損は、良くても、広範囲軟骨欠損は、難しいものがあるのが現状です。欧米でも未だ100%一般化はしていないのが現状です。
○西田委員 もう一つ伺います。使用目的と効能効果のところで、「他に治療法が無く、かつ軟骨欠損面積が4平方cm以上の軟骨欠損部位」という文言があります。軟骨欠損面積が4平方cm以上の軟骨欠損であれば、他の治療方法は難しいと。この文言だけでいいのではないかと思うのですけれども、そこはいかがですか。そこに違和感があります。
○勝呂参考人 明らかな臨床的なエビデンスがまだ構築されていないのが現状だと思います。今は4平方cmぐらいの範囲である時には、若い人ではモザイク法あるいは自然修復にて対応しております。しかしこの培養軟骨移植手術では、2回の手術侵襲が加わります。一回目に自家軟骨の採取、2回目は、培養軟骨の移植が必要です。モザイク法であれば、1回の手術で、臨床的に過去に蓄積されたデータからも、小範囲であると非常に確実な成績が得られるのは事実です。一方自家培養軟骨細胞には、まだそこまでのエビデンスが蓄積されていません。モザイク法では、広範囲の軟骨欠損では、十分なドナー部位が無く、全体のカバーが出来ません。すなわち欠損範囲による限界があります。一方では、広範囲の軟骨欠損では、新しいこの培養軟骨移植が適応となるものと考えております。
○西田委員 私の質問は、4平方cm以上あれば、従来のは適応ではないから、すべてこちらが適応になるのではないかという質問なのです。
○機構 機構から補足させていただきます。「4平方cm」の記載についてということですが、「他に治療法がない」という意味を明確にするために、治療法がない領域としてコンセンサスが得られている具体的な指標として、「軟骨欠損面積が4平方cm以上」を記載することが適切と判断いたしました。
また、4平方cm未満の欠損に対する既存の治療法の適応については、医師によって様々な意見があるところです。具体的な欠損面積を記載しない場合には、「既存の治療法がない」の解釈が様々となり、結果的に本品が不適切に使用される恐れがあるということから記載させていただきました。
○西田委員 手前が要らないのではないですか。「他に治療法がない」というのは要らないのではないかということです。
○機構 再度機構から御説明させていただきます。効能・効果の設定につきましては、「他に治療法がない」の方が主と考えております。その理由としては、この臨床試験の結果で、4平方cm以上の結果が良いということで4平方cm以上にしているわけではなくて、評価対象とした症例ごとの評価全体の結果として、本品の有効性、臨床症状の改善は認められている。ただ、ほかの治療法と比較した場合に、本品を優先する、あるいは選択肢として並べるまでの結果は得られていないということで、「他に治療法がない」という領域で本品の意義があると考えております。ただ、「他に治療法がない」だけですと解釈の問題が出てきますので、具体的な指標として「軟骨欠損面積が4平方cm以上」を補足として記載させていただいているところです。
○西田委員 もう一点質問です。変形性膝関節症の方の話で、少し話がずれます。この治験では一応そちらもエントリーされていて、そちらの個々の成績はどうだったかを参考として教えていただけますか。せっかく患者さんがエントリーされているので、そちらも是非検討して今後に活かしていただくのがいいかということでお聞きしたいのです。
○機構 臨床試験では6例エントリーされております。最初に提出された資料の中では、他の疾患と併せて32例全体としての評価がされております。その後評価をし直したところでは、外傷性軟骨欠損症と離断性骨軟骨炎の症例だけで評価を行いましたので、変形性膝関節症の症例に限った評価は現状行っていないところです。そちらはほかの治療法なり、その治療目的を考慮すれば、この6例のみの結果でどうこうという状況ではないものと考えております。
○西田委員 変形性膝関節症の患者は多いです。私は専門家ではないので教えていただきたいのですけれども、根治療法として人工関節の方を多分選ぶと。ただ人工関節は非常に侵襲があります。侵襲というか、多分高価であります。ですから、他の治療の選択肢があればいいのではないかという観点から、そちらへの適応拡大という話も出ているのでしょうか。
○機構 変形性膝関節症については患者さんが多いというのは確かにそのとおりです。ただ試験として評価をする場合には、離断性骨軟骨炎と外傷性軟骨欠損症とはまた違う試験のデザインで有効性のポイントを見ていかなければならないと考えております。適切な試験を別途行うことによって、変形性膝関節症への適応拡大の可能性もあると考えておりますが、今のところそのような試験は計画されておりません。
○西田委員 先ほどの説明で、再生医療に当たらないという話がありました。「再生医療」という言葉の定義が、今現在まだ不明確なので、そこの文言が気になったので、報告書ではそういう文章は書かない方がいいかと。今は、機能を再生すれば再生医療という、かなり言葉の意味が大きくなってきていますが、まだ定義としては不明確なので、文章に残すとしたら、そこの部分は別の言葉に変えた方がいいかと思います。
○生物系審査第二部長 いわゆる「再生医療」という言葉では、リペアということで、今回は「修復」という意味で申請者も強調されてきています。それに関しての情報が我々としては得られていなかった、と評価しているところです。本品については、いわゆる「再生医療」という視点で考えると、申請者が言うリペアという部分は認められないことから、現時点、再生医療製品のような表現で本品を示していくということは、まだ時期としては早いのではないかと考えております。もう一つ、今後の話ですが、高齢者に非常に多い変形性膝関節症については、本品が期待できる、期待できないという評価は、現段階で申請者から得られている情報からでは、我々としては判断できません。今後、本品をどのように発展させていくかというのは、申請者の方と協議をして考えていければと思っています。
○勝呂参考人 外傷性の骨軟骨欠損症と、いわゆる変形性関節症というのは、やはり病態が違うもので、今回の中では評価できませんでした。今回の中に、実は前十字靭帯損傷があって進んだ形という評価の症例が多いので、いわゆる加齢に伴う軟骨細胞そのものの代謝系が変わってきたもののデータはないことから、明らかな評価は出来ません。他の理由として、培養に用いる軟骨細胞そのものの変性や代謝の低下などがあり、培養増殖の可能性などが問題となるのでないかと思います。今後の可能性として何らかの増殖因子などを付加が必要かと思います。今回は変形性関節症を検討対象とするのは不適切かというのが私の考え方です。
○生物系審査第二部長 実際、薬事戦略相談で、試験デザイン等の相談に関しては適切な方向になるよう、議論をするという形をとります。したがって、先生が今おっしゃっているとおりです。薬事戦略相談をしていただく機会があった場合においては、今回の試験の評価項目等々に関しては適切な試験デザインとなるようPMDAとしての意見を述べさせていただくこととなります。
○笠貫部会長 千葉委員どうぞ。
○千葉委員 この臨床的な評価の中で、増悪例がありますね。手術をした後12か月後の時点で、症状が悪くなっている例の報告がここに書いてあると思うのです。それが24例中9例というのは、数からいえば結構な数かと思うのですが。そのほとんどが、あるいは全例ですか、これが外傷性の軟骨欠損症であったということを考えると、この理由は分かりませんけれども、外傷性軟骨欠損症に対しての適応は相当限られてくる可能性はないかと、この文章だけから拝見すればそう見えてくるのですが、ここはいかがでしょうか。
○機構 臨床症状の改善については、Lysholm Knee Scoreで評価をしています。その合計値で見ると、24例で悪化している例はなかったということで、臨床症状の改善はトータル的に見れば、何らかの有効性、改善傾向を示しているのではないかということで、機構の方では評価をしております。
○千葉委員 今、よく分からなかったのですが、臨床的には改善しているという判断なのですか。24例の多くがというのでしょうか。
○機構 今回、評価のメインに使ったLysholm Knee Scoreについて、症例毎の合計スコアとしては全例で良くなっているというものです。Lysholm Knee Scoreは個別のいろいろな症状のスコアの足し算になっていますので、それぞれの症状別に見たときに悪くなっているものも、ある意味で厳しめに見て増悪例という呼び方をしていますが、一応それらについて何か全体の傾向があるかないか、といった評価を行ったということです。ですので、審査報告書の中で「増悪例」と言っておりますのは、ある意味で厳しめに個別の症状のスコアが落ちた症例をそのように呼んでいますが、その症例についても各症状スコアの合計としては良くなっているというものです。
○千葉委員 どの症状が、その患者さんの日常生活に一番重要かというのは、その方々で多分違ってくると思うのです。ですから、QOLという一般的な言葉になりますけれども、そういう意味からは全体としてその患者さんのQOLが上がっているのかどうなのか、という見方もあっていいのかという気はいたしました。それから24例というのは、確かにまだ十分な数ではないと思いますし、出てきた結果は「改善傾向にあった」というように「傾向」とおっしゃっておられますから、当然ながらまだエビデンスに近いものではないだろうという想像はいたします。そこのところを、今後しっかり見ていただければということを願っております。
○齋藤委員 この文章の中で気になったのは、「再生医療を目的としたものに位置付けけることができない」というのが少し気になります。実際に整形外科領域の再生医療の研究の中で、軟骨の再生はかなりのウエイトを占めています。現在、こういう細胞のソースとしては軟骨細胞もありますし、自家軟骨細胞もありますし、あるいは骨髄由来細胞も使ったり、あるいは滑膜由来細胞とかいろいろな細胞を使いながら、できるだけ正常に近い軟骨を再生しようという努力が今なされているわけです。
例えば、膝関節にとって4平方cm以上というのはかなり大きな欠損であります。若い人にこういう欠損があると、必ず変形性膝関節症に移行する、より早期に移行しているわけです。そういう意味で、こういう軟骨の欠損による関節の不適合をしっかり治していくというのは、特に運動器を扱う人間にとっては非常に重要なテーマと考えております。
そういう意味で、今回の資料の中には御指摘があったとおり不備な点があるのですが、こういう治療法を実際に臨床に応用していく可能性を出していただいたというのは、整形外科にとっては非常に好ましいといいますか、うれしい決断だと感じています。
○村上委員 ただ今の齋藤先生のお話にもありましたが、4平方cmより広いという対象で、欠損部を修復するといいますか、代替するということですので、そのぐらいの面積だとだいたい体重レベル、あるいはその何倍かの荷重がかかるような条件になります。狭い面積だと周囲の組織も支えますので、従来のモザイク法とか、そういうのでわりと安心してできるのですが、今回の広い面積になると、その部分だけで荷重を支える可能性もあるわけです。今回はまだ培養の段階で、軟骨に近いものまではできなかったという報告なのですが、今の研究では軟骨に近いものが徐々にできていると思うのです。その辺で、今回の提案の中では、将来技術へのつながりはどう位置付けられているのでしょうか。
○機構 今回の製品については、コラーゲンゲルに包埋した状態の細胞の製品についての評価ということですので、今後の違った形での製品についての評価は現状特に行われていません。それぞれの製品なり、物の開発をお待ちしているという状況かと思います。今後期待されるものと思います。
○村上委員 ある意味では新しい技術で、つなぎの役をする治療法かと思うのです。そういうときに、力学的な関連から言うと、分担サポートするような設計といいますか、少し複合的な考え方も加えられるところもあり得るのかと思ったので質問させていただきました。
○鈴木委員 本品は再生医療も目指したのだけれども、うまくいかなかったということですね。エビデンスが出なかったと。そこで臨床症状でなんとかということのようですが、見ると臨床症状というのは疼痛とかですね。疼痛とかでしたら、別にもっと安価な鎮痛剤などいろいろなもので対応できないのかどうか。あるいは、ただカバーするだけでしたら、あえて自家移植組織みたいなものを使わなくても、もっと安価にできるのではないでしょうか。多分これはコストがかなり高いと思うのですが、もう少しエビデンスが出てからお出しになられた方がよろしいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○勝呂参考人 最初にお話したように比較的対象症例が、我々が困っている若年者なのです。若年者では、大きな欠損があった場合には、比較的早期に重度の変形性膝関節症に陥る確率が高いのです。私はたくさんの人工関節をしていますけれども、そのうちの10%ぐらいの人が、前十字靭帯の消失があります。ときには比較的若く人工関節に至っています。このような観点からも若年者に対して、確たるエビデンスがまだ構築されておりませんが、一つの手段として、我々整形外科にとっては非常に良いものと考えています。
○機構 補足させていただきます。今回の有効性評価で使っているスコアは、いろいろな症状についてのスコアの合計点となっております。痛みというのは、あくまで一つの症状で、そのほかに膝の屈伸ができるかできないか、階段の上り下り、膝の機能、歩き方など、膝の機能評価の方がどちらかといえば多くなっておりますので、膝の機能評価として良くなっているということであれば、患者さんにとってもメリットがあるでしょうし、今回のような疾患であれば、通常の痛み止めだけではなかなか治らないところもあるのではないかと考えております。
○鈴木委員 痛み止めよりは少しはましかもしれませんけれども、あえてこれを使う必要があるのかという気がするのです。装具とかもあるでしょうし、これがあるからすべて健常の人と全く同じになるかどうかも分からない、長期的な評価もないわけです。あえてこの再生医療にこだわって、効果はそうでもなかったけれども、とりあえずこれを通したい、というような気がして、費用対効果という話も出ていますけれども、そういう面からもどうなのかという気がするのですが、いかがでしょうか。
○勝呂参考人 繰り返すようですけれども、やはりスポーツなどで損傷する世代というのは、20代、30代の若年者です。そのような人々が広範な軟骨欠損が起きた場合には、恐らく40代には変形性関節症に陥ると思います。そういたしますと、人生のライフスパンを考えると、もう40年間痛い生活をする。これは鎮痛剤やサポーターでは抑えられません。それ故新たな治療法は、非常に価値あるものだと思います。残念ながら、本当に元の身体に戻るかと聴かれると、元の組織ではないと思うのです。ただ、機能的には、表層が覆われるということは、膝関節の機能、いわゆるルブリケーションが改善するという意味では大きなメリットだと私はこれを推察しています。
○笠貫部会長 鈴木委員よろしいですか。
○鈴木委員 価格がどうなのかというのが気になるのですが、これは後の話だと思います。後で出てきたときにそちらの方で何か言うかもしれません。
○西田委員 再生医療という概念として、元どおりに組織学的にそれを全く元に戻すというのが再生医療ではないと思っています。「機能」としてそれを戻すというのが再生医療で、そのために一番ベストは元どおりの組織になっているというのがベストなのですけれども、代替としての「機能」のものがそこにできているというのも一つの再生医療のあり方で、「機能」としてはある程度回復しているという、「機能」が大事だと思っています。すべて戻るのが再生医療というのは少しどうかと。審査側の方にもそういう観点から見ていただければいいのかと思いますが、いかがでしょうか。
○生物系審査第二部長 御意見ありがとうございます。この点は内部でも非常に議論した話です。御指摘のとおり、「機能」という問題と、画像から回復を裏付けるものがどうなっているかという見方で見ております。機能としては、有効性が期待できるだろうというのは審査報告書に書いたとおりです。また画像に関しても、我々の評価としては、その裏付けとなる軟骨のリペアが起きているのかということはほとんど認められなかったと思っております。今後の情報や時期とか時間も関係するのかもしれませんが、機能を裏付ける証拠はあった方がいいと思います。先生がおっしゃるとおり「再生医療」の定義がまだ決まっているわけではないですが、軟骨のリペアという意味では、一般に言われるような画像上の判断で、いわゆる「再生医療」とは言えないだろうと結論をしたということです。皆さんの御意見はあると思いますが、機構としてはそういうような考え方で表現しているということで御理解いただければと思います。
○西田委員 十分理解はしています。
○笠貫部会長 たくさんの御意見が出ましたが、臨床のニーズとして代替品がないから早く入れなくてはいけないというお話と、鈴木委員のように、観点を変えた見方も大事ではないかと思いました。その中で私は、この製品について、その科学的根拠はどこか、どこまで科学的根拠を求められるかということが重要で、ここでは再生医療の定義云々ではなくて、この部会として求められるのは本品の科学的根拠だと思います。
気になりますのは、非臨床試験のところで、治療コンセプト自体確認されていないことです。細かいことはたくさん書いてありますけれども、30ページに「本品中の軟骨細胞及び軟骨細胞が産生する軟骨基質により、軟骨組織が修復されるという本品の治療コンセプトは確認されていない」とあります。非臨床試験を総合してこう書かれると、これは何かという疑問が生じます。さらに、臨床試験が今回は申請者から出たものではなくて、PMDAで新たに解析をし直したとすれば、この臨床試験でいいのかということになります。しかも、これは症例ごとの評価です。どこまで科学的根拠を求めるのかが一番問われていて、皆さんにどこでコンセンサスが得られるかということの問題だと思います。
非臨床試験のところであまり議論が出なかったのですが、海外のCarticelとChondroCelectの二つがあり、勝呂先生から、本品は新しいものということです。どこが新しくて、それが海外のCarticelとChondroCelectの非臨床試験とどこが違っていて、どこが足りないのか、その比較があると分かりやすいと思います。
それから、CarticelもChondroCelectも市販前に臨床試験があり、ランダマイズドスタディもあります。その結果がどうであって、今回日本で得られた臨床試験をどう活用して、それが外挿できるのかということが知りたいのです。CarticelとChondroCelectと、本品とどう具体的に違って、申請前の資料がどう違っていて、それをどう評価するのかということを知りたいのですが。
○機構 アメリカで承認されておりますCarticel、それから欧州で承認されているChondroCelectという、主にこの二つがあります。どちらも培養した軟骨細胞を浮遊液、それから懸濁液の形で膝関節に打つというのが、先ほど勝呂先生からも御説明いただいたところです。非臨床の細かい成績のところまでは手元に持ってきていないのですけれども、臨床試験としてはアメリカの方で承認されたのが15年前で、非盲検の単群、シングルアームの試験で行われております。ただ、症例数としては150例程度の試験が行われております。その組織評価としては、組織切片とか関節鏡による評価が行われていて、15例中6例程度に軟骨組織様のものができているという評価を得られて、軟骨欠損に対する修復という適応がとられております。ただ、市販後にいろいろな症例集積がされていて、その後の適応としては、既存の治療を行った後という、二次治療としての位置付けまで限定されているのが現状です。
欧州のChondroCelectについては、2009年に承認されたものです。こちらは、無作為化の群間比較試験が行われていて、そちらで既存治療に対する非劣性が示されています。こちらも組織学的、あるいは構造学的な評価が行われて、軟骨欠損の修復という適応がとられているものです。
○笠貫部会長 具体的に本品との比較において、どこが同一でどこが違っていて、どこを新たに求めるかということについては御検討いただいておりますか。
○機構 製品としては、細胞の浮遊液と、本品の場合はコラーゲンゲルの中に埋め込んで、ある意味漏れにくい形になっているのが本品の特徴かと思います。ただ、臨床試験の成績としては、米国はシングルアームとしても150例を超える成績を出された上で、15年前に承認されたものです。欧州については、比較試験で非劣性が示されています。今回の「ジャック」については、臨床試験としては有効性評価32例で、機構が行った評価としては24例と症例が少ないということです。
○笠貫部会長 症例数だけの問題なのですか。
○機構 それから評価方法としても、Lysholm Knee Scoreで見直していますので、その範囲においては一定の評価はできるであろうとは考えております。ただ、そこに組織学的な評価が「ジャック」の方では、MRIなどによる画像評価のみで、詳細な組織評価までは行われていないところは若干海外と差がある部分と考えております。
○笠貫部会長 コラーゲンゲルで培養したことが本品の特徴で、これについては新たな非臨床試験は必要なのですか。
○機構 動物の種差の問題もありますし、先ほど「非臨床試験の方でコンセプトが確認されていない」という一文についても御指摘いただきましたけれども、申請者の方が軟骨組織が修復なり再生されるという目的で開発されたと。こちら側としても、それを期待して見たところ、組織が完全に元に戻っている、あるいは周りと同じ組織ができているというところまでは確認できていないという意味で、そのように表記させていただいております。
○笠貫部会長 それが「確認されていない」ということでいいのですか。それは科学的根拠をどこまで求めるかですね。
○生物系審査第二部長 先生の御質問の趣旨の理解が不足しているかもしれませんけれども、海外では細胞のサスペンジョンといいますか、細胞培養したものを直接欠損している部位に注入して、その上に骨膜をして漏れないようにするのですけれども、どうしても漏れてしまう場合があるようです。そこで今回J-TEC社は、三次元としてアテロコラーゲンの中に細胞を植え付けて、それを培養すれば、漏れることに関しては非常に少なくなるだろうというコンセプトで開発は進められてきています。したがいまして、薬理効果といいますか、物理的な効果になるわけなのですが、本品の効果がどのように起きるのか、どのように違いがあるのかというのは、やはり非臨床試験からスタートしていくのが通常の開発だと思います。今回、動物実験的をはじめとした非臨床的な情報が十分我々に提示されていなかったということで、開発のコンセプトを裏付ける情報は「認められない」という表現になってきています。御質問の趣旨とは少し違う回答かもしれませんが、そういう開発の流れがあったということです。
○笠貫部会長 開発の流れと、それを承認するプロセスはまた違うかと思うのですが。
○生物系審査第二部長 非臨床試験から得られる情報というのは、先ほども述べたつもりなのですが、一定の基準があるわけではなく、本品の性能の裏付けとなってくるわけです。最終的には臨床試験での情報ということを重んじて承認審査は行っていくということはあります。
○笠貫部会長 こうした新しい製品を日本で認めるときに、海外で二つの類似製品があって、それが非臨床試験でどういう基準をクリアしていて、それを日本でクリアしているのですか。それから、日本でコラーゲンゲルという新規性を持ったところでは、新たな非臨床試験には何が求められるのか、それがどう判断されたのかということを知りたいのです。具体的にどうチェックをして、完璧を求めていることではなくて、ここまでの科学的根拠で認めたということについて、皆さんのコンセンサスが得られればと思うのです。
○勝呂参考人 私はいろいろ気にしながらこの資料を見ていたのですが、資料概要イの10ページの組織図を見ていただきたいと思います。確かに皆さんがお話しているように、この□□□□□□染色などを見ますと、早期の段階では□□染まって、□□□□□□染色性からもかなり細胞増殖しています。□□日ぐらい経つと、新生した骨の健常軟骨と接した、右下の適用後□□日目の図では、元と同じような100%の軟骨組織にはなっていないという見方を私はします。ただ良い点は、表層がきれいに平らになる。いわゆる関節表面の再構築されていることが、動きに関してルブリケーションのため陥凹がなくなりスムーズに動くのではないかと推察しています。多分、更に長期の経過を見ていけば、これは線維性のファクターが強いので、いずれ硝子化することの可能性は0ではないのですが、やはり生体の軟骨というのは、一度障害されると元の硝子様軟骨に戻るのは非常に難しくて、環境変化でほとんど線維性軟骨の成分になるので、非臨床試験での動物では、多分移植軟骨の運命は、このような過程を示すのでないかと、私は理解をいたしました。
○笠貫部会長 それで非臨床試験として、妥当性があるという判断をいただけるかどうか、御意見をいただきたいと思います。もう一つの問題は、臨床試験としてPMDAで新たに32例中24例を検討し直した結果については、先ほど千葉委員から安全性の問題の指摘があり、またこの報告書の中にも感染症のリスク等も書いてありますが、こういう問題を含めて認めるかという場合に、海外での二つの類似の製品がどういう市販前の臨床試験の結果であって、市販後、特にアメリカでは長い歴史があり、その後の臨床試験もたくさんあるわけですから、それがどうであったかというのと、ヨーロッパでの市販後データがどうであったかをお話ししていただけると、この治療法が海外で同じ製品でなくても認められているということが分かると思うのです。それについての検討はされているのですか。
○村上委員 従来の技術と、今回の違いのことで確認させていただきます。今までのアメリカとかヨーロッパのは、サスペンジョンなので骨膜で覆われているのですけれども、今回は三次元ゲルなので固体的になっているわけです。そういたしますと、骨膜をしなくてもいいのかと思ったのです。その方が良好な状態に早く行くのかと思ったのです。そこの違いというのは、まだ今回は骨膜をしていないと安心して使えないといいますか、そういうところがあったのでしょうか。そこが一つ大きな違いになるかと思ったのですが。
○機構 本品の使用方法も骨膜で覆うことになっております。軟骨下骨と軟骨を繋げるといいますか、接着するために何かで押さえておかないと、本品を移植しても取れてしまうということで、今回の製品は骨膜でそれを上から覆うという使い方になっております。
○村上委員 その骨膜は、短期間で分解されるのですか。
○機構 骨膜の分解については、非臨床のデータしかないのですけれども、移植後1年ぐらいまでは恐らく残っているという考察されておりますが、その後のフォローはしておりませんので、データの方はない状態です。
○村上委員 その辺が、違いが出せるところかと思いましたので質問させていただきました。
○笠貫部会長 私の方からお聞きしたかったのは、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社は、「ジェイス」という、日本で第1例目の細胞・組織加工品を出しているのですが、このケースの場合にも市販後調査は義務付けられていたと思うのです。きちんと会社が評価できるのかどうかということについての見通しというか、承認するとしたら先ほどの三つの条件がありましたように、市販後が非常に大事になるので、この「ジェイス」ではどういう成果を上げているかどうかをお聞きしたいのですが。
○機構 前例品の「ジェイス」については、現在、市販後の全例調査と、市販後の臨床試験の方を実施している最中です。再審査期間中は全例を調査することになっておりますので、まだ残りの期間が何年かありますが、引き続き全例の調査をすることになっており、1年ごとに調査結果の報告が提出されております。全例をどこまでカバーしているかについては、製品は患者自身の細胞を受け入れて、会社で製造することになりますので、出荷した数と、実際に調査が行われた数、患者さんの数が分かるのですが、そういう数字から見ますと、かなり全例調査はしっかりされているのではないかという印象を持っています。本品についても、製造販売後の徹底した調査が必要というのは御指摘のとおりで、PMDAでも徹底した調査をするように指導していきたいと思っております。
○石井委員 製品の添付文書の記載について一つコメントさせていただきます。臨床成績のところです。本品は既存の治療法がない疾患に適応できる先端的な医療機器として注目される一方で、有効性・臨床有効性のエビデンスが十分でないという特徴があると思います。つまり、使用に際しては慎重な選択が必要で、情報提供が大事になると思います。そのわりにはこの臨床成績のところ、特に有効性評価のところで表が出されているものの、その解釈については何も書かれていないように思います。この辺りのことを、審査の過程で明らかになったこと、不明瞭のままであったことなどをサマライズしておいていただいた方がよいのではないかと思います。
○笠貫部会長 事務局の方はよろしいですか。
○機構 御指摘ありがとうございます。添付文書の中には、今のところ結果を記載しているのですが、そのほかに今申請者が検討中です。患者さん向け、そして医療従事者向けの詳細な情報提供用の資料を作成し、それとともに製品を提供する計画をしておりますので、その中にもその情報をしっかり含めていきたいと考えております。
○笠貫部会長 いろいろな問題が指摘されました。再生医療については、事務局から出されているように、いわゆる再生医療という一般的に捉えるイメージがあるとすれば、この非臨床・臨床試験ではその再生医療に当たるのかというと、私も疑問を感じます。最終的にはこの案でいいかどうかということは議決の方で、それも含めてお考えいただけたらと思います。
こうした新しい細胞・組織加工品が、日本の治療の中に導入され、有効かつ安全に使用されるということで、「ジャック」は日本で2番目のものとして注目され、多くのディスカッションが活発に行われたと思っています。
特にほかに御異論がなければ議決をさせていただきます。医療機器「ジャック」については、本部会として、審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は7年間とし、また生物由来製品に指定し、特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会に報告させていただきます。議題1は終了いたしましたので、参考人の勝呂先生におかれましては、お忙しいところありがとうございました。
── 勝呂参考人退室 ──
○笠貫部会長 議題3「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定」についての審議を行います。今回は2件です。審議品目の概要について事務局よりまとめて説明をお願いいたします。
○事務局 審議事項議題3、資料3「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」御説明します。医療機器に関しては、一般的名称と呼ばれる区分がないものについては、高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器のいずれであるか又は特定保守管理医療機器であるかについて、薬事法第2条第5項~第8項の規定に基づいて審議会の御意見を伺った上で定めることとなっています。
まず、資料3-1を御覧ください。1ページ目が諮問書になっており、その裏を御覧ください。今回、新設しようとする一般的名称は「自己検査用血液凝固分析器」です。フィブリノーゲン、フィブリン、血小板等の止血(出血抑制)成分の定性や定量、止血時間の自己検査を行う自動又は半自動の専用装置をいう、といったものです。さらに、1.高度管理医療機器として新たに指定すること、2.特定保守管理医療機器の指定で新たに指定することを考えています。最後のページは、新一般的名称が付される予定の品目概要です。
その前のページに戻っていただき、中程に「既存の一般的名称のいずれにも該当しないと考える理由」のところに、今回新設する理由を記載しています。プロトロンビン時間測定用の機器であり、使用目的や機能の上では類似の一般的名称とその定義にある「血液凝固分析装置」に該当するが、当該一般的名称には自己検査用測定器を含まない、こうしたことから、既存の一般的名称のいずれにも該当しないということで新設を考えています。
次に資料3-2を御説明します。1ページ目が諮問書です。その裏のページを御覧ください。こちらの一般的名称は「歯科矯正用アンカースクリュー」です。歯科矯正治療において矯正力付与の固定源として使用する金属性のねじです。口腔内の顎骨に植立し固定、スクリューの頭部に矯正用器具を接続し、歯の移動のための矯正力を付与するときの固定源として用いるもので、セルフタップ型とセルフドリリング型があり、歯科矯正治療後は撤去される単回使用のものです。1.高度管理医療機器として新たに指定すること、また2.特定保守管理医療機器としては指定しない、と考えています。最後のページのとおり、新一般的名称が付される予定の品目はこちらに記載しています。さらに、「新設する一般的名称(案)について」の中程の、既存の一般的名称のいずれにも該当しないと考える理由で、海外との整合性などを図る上で新設が必要であるという理由を記載しており、こちらのとおり、一般的名称を新設するとともに、クラス分類もしくは特定保守医療管理機器の指定を要しないことについて諮問しているものです。以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございます。本件について、委員の先生方から御意見、御質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、特に御意見がなければ議決の方に入ります。
まず、1件目ですが「自己検査用血液凝固分析器」について、本部会として、高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定するとしてよろしいでしょうか。
御異議がないようですのでそのように議決します。
次に2件目ですが「歯科矯正用アンカースクリュー」について、本部会として、高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決します。この審議結果については、次回の薬事分科会で報告いたします。
次に、報告事項に移ります。議題4「医療機器の再審査結果について」事務局から御説明をお願いします。
○事務局 医療機器の再審査結果について御報告します。資料4-1~資料4-3になります。再審査については、薬事法第14条第4項に基づき、原則、新医療機器などについて再審査期間を定めて、承認後の使用の成績などの調査を行わせ、その資料に基づき有効性及び安全性などの再確認を行うことを目的とした制度となっています。
資料4-1です。旭化成メディカル株式会社の「セルソーバE」です。こちらは平成13年に承認された品目です。次ページに再審査報告書があります。こちらは事前にお配りしていますので簡単な説明といたしますが、まず、安全性については、承認時に未知の副作用が出ていますが、こちらは添付文書の改訂等を行うことで対応がされています。また、有効性についても特段問題が出ていないことから、薬事法第14条第2項各号のいずれにも該当しないこと、すなわち、再審査結果の区分を、効能・効果、用法・用量などの承認事項について変更の必要がない、カテゴリー1と判断しています。
資料4-2です。ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社の「プリズム2DR」です。こちらは平成15年に承認されている品目になります。こちらの品目は現在、改良品などが市場に出ており、この品目自体は販売されていません。再審査報告書に安全性等について報告がされており、今後、必要に応じて添付文書の改訂等を行うとしています。また、有効性についても特段問題が見られていないので、先ほどの資料4-1と同様に、再審査結果の区分をカテゴリー1と判断しています。
資料4-3です。こちらは、先ほどと同様の品目で販売名が異なる「ペンタックプリズム2DR」です。同様にボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社の品目になっています。評価については、先ほどの資料4-2の品目と同等の評価が得られていますので、再審査結果の区分をカテゴリー1と判断しています。御報告は以上でございます。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは、ただ今の報告事項3件について、委員の先生方から御質問、御意見はございますか。特に問題ないということでよろしいでしょうか。今日は2つの品目について御検討いただきましたが、特段、何か加えることがございましたらお願いいたします。
私からですが、「MOMAウルトラ」は、日本の臨床試験がなくて海外の臨床試験を外挿しましたが、「ジャック」では日本の臨床試験のデータが不十分であり、海外の類似品の臨床試験のデータ、市販前・市販後のものを含めて広い意味の外挿としての御検討を、資料の中に含めて御説明いただけたら有り難いかと思いました。それから、この臨床試験のプロトコールについては、現在では、薬事戦略相談で積極的に臨床治験の始まる前に、こういうケースが出てこないように相談に乗っているということでしたので、さらに推進していただけたらと思います。そういう意味では、この申請の平成21年から3年という中で、PMDAが臨床試験データを新たに検討し直すという大変な作業をされたのだと感じました。
特にこの2つの案件について、何かございませんでしょうか。よろしければ、本日予定されておりました議題はすべて終了しました。事務局の方から何かありましたらお願いします。
○医療機器審査管理室長 次回の医療機器・体外診断薬部会については、8月29日(水)に開催を予定しています。連絡事項は以上です。よろしければ、これをもちまして本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会させていただきます。本日は長い間ありがとうございました。
(了)
※備考
この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。
連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 高江(内線 2912)
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