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2012年8月20日 第73回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年8月20日(月) 16:00~18:30


○場所

厚生労働省 専用第12議室(中央合同庁舎第5号館 12階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 今井委員 岩谷委員 川越委員
桐野委員 塩見委員 西島委員 野村委員
橋本委員 福井委員 松田委員 町野委員
宮田委員 宮村委員 望月委員 山田委員 

○議題

1 厚生労働省の平成25年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)について
2 遺伝子治療臨床研究について
3 ヒト幹細胞臨床研究について
4 再生医療の安全性確保に関する専門委員会(仮称)の設置について
5 その他

○配布資料

資料1-1平成25年度科学技術関係施策及びその重点事項の概要について
資料1-2平成25年度厚生労働科学研究費補助金等研究事業に関する概算要求前評価(まとめ)(案)
資料1-3厚生労働省の平成25年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)
資料1-3                      (正誤表)
資料2遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について 多施設共同研究(計4機関) 
(三重大学医学部附属病院、愛媛大学医学部附属病院、藤田保健衛生大学病院、名古屋大学医学部附属病院)
資料3ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料4再生医療の安全性確保に関する専門委員会(仮称)の設置について
資料5国立社会保障・人口問題研究所の評価報告等について
資料6国立障害者リハビリテーションセンター研究所の評価報告等について
資料7遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料8獨協医科大学研究者の不正行為に係る対応検討委員会報告書
資料9戦略研究新規課題に係る研究実施計画書作成の公募結果について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2厚生科学審議会関係規程等
参考資料3遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料4ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料

○議事

○尾崎研究企画官 
 定刻になりましたので、ただいまから、第73回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様には、ご多忙の折、お集まりいただき、お礼を申し上げます。本日は、5名の委員からご欠席の連絡をいただいております。川越委員については、15分ほど遅れるということです。現時点で出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立することをご報告いたします。相澤先生も遅れているという状況にあります。
 続きまして、本日の会議資料の確認をいたします。議事次第に配布資料の一覧があります。配布資料については、お配りしている資料の番号だけ申し上げますので、ご確認をお願いします。資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料1-3の正誤表、資料2、資料3、資料4、資料5、資料6、資料7、資料8、資料9です。参考資料が、参考資料1、参考資料2、参考資料3、参考資料4。以上です。過不足等ありましたら、事務局にお申し付けください。
○永井部会長 
 議事に入ります。議事の1ですが、「厚生労働省の平成25年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)」について、科学技術部会として評価に関する報告を取りまとめたいと思います。この件についてのご審議をお願いいたします。事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 本議題の関係資料は、資料1-1、資料1-2、資料1-3と、資料1-3の正誤表になります。厚生労働科学研究費補助金の研究事業等の概算要求に当たっては、その方向性および内容等について、毎年度、本科学技術部会に評価をお願いしております。まず、資料1-1を用いて、厚労科研費の現状、そして厚労科研費に関連があり、総合科学技術会議や医療イノベーション会議がまとめている平成25年度科学技術関係施策およびその重点項目の概要について、説明したいと思います。その後、厚労科研費の研究事業の平成25年度の概算要求の方向性および内容を説明いたします。
 まず、資料1-1の1頁です。厚労科研費は、研究を行うことによって国民の保健、医療、福祉、生活衛生、労働衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ることを目的としているものです。図にあるように、疾病や障害を克服したり、国民の持つ健康や安全に関する懸念を解消し、安全・安心で質の高い健康生活の実現をするための施策を検討していく中で、厚労科研費の成果はそれに科学的根拠を提供し、貢献することになるものです。図に記載した数字は、厚生労働省の施策に係る各種の数字の一部を例示したものです。出典は1頁のスライドのいちばん下に記載しています。
 2頁です。本年度、平成24年度の厚生労働省の科学技術関係予算の総額については、復興特会を含め1,600億円、これは試験研究機関の予算を含んだものです。うち厚労科研費は465億円となっているものです。厚労科研費については、健康安心の推進、先端医療の実現、健康安全の確保等に関する研究を行うことによって、安全・安心で質の高い健康生活を実現しようとしているものです。
 3頁から7頁が科学技術関係施策として紹介する2項目の1つ目の総合科学技術会議の関係事項の概要をまとめているものです。3頁は、総合科学技術会議が7月30日に決定した「平成25年度科学技術に関する予算等の資源配分方針」のポイントになります。復興・再生並びに災害からの安全性の向上、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションの分野について、アクションプランを策定し、そこに最優先で進めるべき重点的取組を明示するものです。アクションプランの趣旨に沿って、各省は概算要求を行うことが求められるものです。また、アクションプランの対象として特定された施策については、資源配分を最重点化すべきとしているものです。厚生労働省の関係分野は、このうち復興・再生関係とライフ・イノベーションになります。その内容については4頁から7頁にかけて載せているものです。
 例えば5頁ですが、アクションプランについては分野の重点対象ごとに目指すべき社会の姿を設定し、それを実現するために解決する必要のある課題について「政策課題」として示して、その上でその政策課題を解決するために最優先で進めるべき取組を「重点的取組」ということで示しているものです。この5頁には、再生・復興分野のアクションプランの内容の表があります。「重点的取組」については、簡単に言うと、丸3、8、13、14、15、16、19、22などが新しい取組として追加されたものです。
 7頁には、同じようにライフ・イノベーション分野のアクションプランの内容の表があります。平成24年度のそれに比べて、整理・変更がされている部分があります。例えば、重点的取組の丸8は、全く新しい取組の追加となっているものです。
 8頁からは、2つ目の項目の「医療イノベーション5か年戦略の概要」をまとめているものです。当該戦略については、平成24年6月6日にまとめられたもので、前回の科学技術部会で報告したものです。戦略は平成24年度から5か年を対象として、目標は、国民が安心して利用できる最新の医療環境の整備をしつつ、医療関係市場の活性化と日本の経済成長を実現し、日本の医療を世界に発信するということでまとめられているものです。
 8頁のスライドは、当該戦略の目次の順に重要になっているもので、重要項目には、少し、その表の中で説明の記載を追加したものになります。科学技術関係、研究関係、関係項目としては、Iの「革新的医薬品・医療機器の創出」の丸1、3、4、5、IIの「世界最先端の医療実現」の丸1、2に記載の項目などが関係するものと考えております。資料1-1については以上です。
 続きまして、資料1-3、概算要求前の評価(案)の説明に移りたいと思います。資料1-3は、厚労科研費を構成する個別の研究事業の概算要求前の評価(案)をまとめたものです。最終的に科学技術部会としてご了承いただきたいというものです。資料1-3の1頁です。2の「評価方法」の1)の経緯にありますが、この評価は平成15年度から毎年度行ってきているものです。評価対象としては、3)にありますが、厚生科学研究費の各研究事業と独立行政法人医薬基盤研究所の基礎研究推進事業ということです。基礎研究事業については、159頁からになります。評価方法については1頁の4)にありますが、各研究事業の厚生労働省の各担当部局が外部有識者等の意見を踏まえて、この評価原案を作成しており、当科学技術部会において審議・評価いただくという位置づけになるものです。
 2頁以降にありますが、「厚生労働省の科学技術開発に関する指針」や「厚生労働省における政策評価に関する基本計画」、参考1、参考2ということで関係項目を書いてありますが、これらの関係項目を踏まえながら評価するとしているところです。
 8頁からが厚労科研費の評価原案になるものです。評価は8頁の表の(1)から(13)の研究事業または研究事業を細分化した研究の固まりごとに、評価を従来からまとめているものです。評価原案の構成については、「政策科学総合研究」で説明していきたいと思います。「政策科学総合研究」は、(1)の「行政政策研究事業」を細分化した研究の固まりの2つのうちの1つです。これについては、8頁の真ん中辺りに記載されております。2つ目の囲みは、主管部局と運営体制が記載されているものです。その下に、1として事業概要とあって、その(1)で公的研究としての意義、政策との連動性をまとめているものです。
 10頁の(2)、推進分野の設定等についての項目になります。これは3頁の参考4の報告書のIVの2つ目の○を反映した項目で、各研究事業ごとにメリハリをつけることを目指し、各研究事業の中で重点的な費用配分を行う分野、研究課題について記載しているものです。
 10頁の推進分野の設定です。「政策科学総合研究」では、社会・経済構造の変化と社会保障に関する研究について、推進分野として平成25年度も行うことになっているところです。下の(3)(5)は、先ほど説明したアクションプランの項目との関係、医療イノベーション5か年戦略の項目との関係があるかないか。ある場合は、どこに関係しているかについて、まとめているものです。10頁の下からが事業の内容になります。これは予定している平成25年度の研究の内容になります。
 11頁の下半分の(10)は予算額の項目で、最近の当該研究の予算の動向がわかるものです。平成24年度の予算額については、本日配布の資料1-3の正誤表がありますが、一部訂正をお願いしているものです。また、本日時点で平成25年度の概算要求はまだ行っておりませんので、すべての研究事業でこの欄の記載は「未定」と整理しているものです。
 12頁の2の評価結果に、概算要求前の評価としての現時点の研究事業の必要性、効率性、有効性の評価原案を記載しているものです。また、13頁の3はそれらを踏まえた総合評価になるものです。最後には、参考として各々の研究事業の概要図を載せているところです。これらの項目のうち、特にご確認いただきたい項目は、1の事業の概要の(2)の推進分野の設定等の内容、その方向性。評価結果の必要性、効率性、有効性の内容や総合評価の内容になるかと考えております。「政策科学総合研究」を例に、評価原案の記載の構成を説明しましたが、これを含めて22単位の個別事業について、同様に評価原案を以下、取りまとめているものです。また、159頁からは、医薬基盤研の基礎研究推進事業についても同様の形式で取りまとめているものです。各単位、個別事業の説明については、非常に長くなってしまいますので、資料1-3としての説明は以上にしたいと思います。
 続きまして、資料1-2について説明いたします。資料1-2は、先ほどの資料1-3の個々の事業の方向性を踏まえて、厚労科研費等、全体としては平成25年度の予算の概算要求に当たって、どの分野の項目を重点分野としていくかなどについて、厚生労働省の方針・方向性がわかるようにまとめたものです。また、これらの方向性等に対する評価についても、資料1-3と同様に当科学技術部会でご検討いただき、ご了承いただきたいと考えているものです。なお、3頁の3の評価の記載は事務局で1つの案として作成したものです。
 資料1-2について説明したいと思います。「平成25年度厚生労働科学研究費補助金等研究事業に関する概算要求前評価(まとめ)(案)」です。厚生労働科学研究費が行政施策との連携を保ちながら、研究開発の効率的な実施を図り、優れた研究開発成果を国民、社会へ還元できるように、平成25年度予算の概算要求に先立ち平成25年度の研究事業の方向性等の評価を行ったところです。いちばん最初は科学技術関係施策の周辺動向ということで、先ほど資料1-1で説明した内容を文書で書いているものです。(1)については、政府の動向を文書でまとめたものです。最初の段落で、平成24年1月の「社会保障・税一体改革素案について」をまとめたということが書いてあります。次の段落で、平成24年6月に医療イノベーション会議が「医療イノベーション5か年戦略」をまとめて、こういう方向で取組を進めることが重要だと書かれているということです。「さらに」のあとで、同年7月末に閣議決定された「日本再生戦略」の話に言及しています。「世界最高水準の医薬品・医療機器を国民に迅速に提供するため、創薬支援ネットワークの構築を図るなど、『医療イノベーション5か年戦略』の着実な実施等により、引き続きドラッグラグ、デバイスラグの短縮に取り組むとともに、日本のものづくり力を活かした革新的医薬品・医療機器・再生医療製品等を世界に先駆けて開発し、積極的に海外市場へ展開するとされている」ということです。(2)は総合科学技術会議の動向をまとめているものです。この動向については、先ほど説明したとおりで、この内容については先ほどの資料と同じですが、別紙1で先ほどの表を添付しているものです。
 2頁です。「平成25年度の予算の概算要求については、政府全体の方針として裁量的経費の対前年度▲10%の削減が求められており、平成23年度から3か年連続同様の削減という厳しい状況にある」と書いているところです。これが科学技術関係施策関連の周辺動向です。2、厚生労働省としての研究の方向性の(1)、基本的考え方です。「日本再生戦略」においては、「医療イノベーション5か年戦略」を着実に実施することとされている。このため、平成25年度概算要求においては、「医療イノベーション5か年戦略」の2つの項目に資するよう、重点化を図る。次の○のアクションプランについては、2つのアクションプランの分野の「重点的取組」に掲げられている項目の関係研究分野の取組に寄与できるように、できるだけ配慮する。3つ目の○ですが、各研究事業については、資源が限られている状況下にあることから、政策課題との連携・連動を引き続き明確にするため、「推進分野」の具体的な設定によるメリハリをつけ、取組を進める。次の○ですが、他方で、厚生労働科学研究は、厚生労働施策の幅広い課題に対応する要請を併せ持つことから、幅広い課題に対応できるように出来る限り配慮、工夫をして進める。最後の○ですが、創薬開発に関する厚生労働科学研究は、「医療イノベーション5か年戦略」に掲げられた「創薬支援ネットワーク」と十分な連携を図り、着実な研究を進めるということです。
 もう少し詳しく書いたのが(2)以降で、科学技術施策関連等への対応で、「医療イノベーション5か年戦略」への対応ということで、(ア)と(イ)があるところです。1つは(ア)「アカデミア等の優れた基礎研究の成果を確実に医療の実用化につなげ、革新的な医薬品を創出していくため、厚労科研費においては、がん領域をはじめとする7つ」と書いてありますが、がん領域を含めて8つの重点領域における有望なシーズを対象に、いわゆる「死の谷」と呼ばれる応用研究から非臨床研究に重点化する。また、質の高い研究・治験の実施環境づくりに資する研究分野、革新的な医薬品等の安全性と有効性の評価に関する分野を引き続き推進するなどして、実用化の道筋が明確になるようにするというのが1つです。(イ)として、再生医療や個別化医療の実現に資する研究について推進するということです。
 3頁のアクションプランへの対応です。対象施策として、別紙2の研究課題を現在、総合科学技術会議へ提案しているところで、その研究の推進を図っていくと書いているところです。丸3その他の厚生労働科学研究に関する重要事項への対応で、上記の政府全体としての科学技術政策に関するものの他、重要事項としてここに書いてあるようなものの推進について配慮するとしているものです。評価ですが、この辺については事務局で書いているもので、先生方に特段了解を得ているところではありませんが、平成25年度の概算要求については「医療イノベーション5か年戦略」の2つの項目に対応できるように重点化し、この方向で研究を推進することは適当。また、各研究事業については、推進分野として具体的に設定した内容はおおむね適当であると、とりあえず書いているところです。議題1についての説明は以上です。ご審議のほどよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 ただいまの説明について、ご意見、ご質問をいただきたいと思います。
○山田委員 
 医療イノベーション5か年計画との関連について確認をさせていただきたいのですが、医療イノベーション5か年計画の推進のための取組の基本的な考え方に基づく3つのアクションがあると思います。そのアクションの1つに、国際的に通用する医療情報基盤の整備、ネットワークの整備と、ご説明の中でも情報ネットワークの整備が出てきたのですが、今回の評価の対象となった研究事業の中で、それに具体的に該当するものが伺えなかったのです。そこに対する取組は、別の省管轄の中で行われているということなのでしょうか。
○塚原厚生科学課長 
 いまのご質問は、医療イノベーションの創薬とか医療機器の開発に直結するような研究事業が、厚労科研費の中でどこにあるのかというご質問だと思いますが、それでよろしいですか。
○山田委員 
 再生医療とか、そういう個別の有機的な方面については、いろいろな研究事業と評価が行われていると思うのですが、基盤であるとか、インフラであるとか、そういったものへの積極的な整備、投資といったものが評価対象の中でちょっと伺えなかったので、そういったものはどこで検討されているのでしょうかという質問です。
○塚原厚生科学課長 
 施策としては、いくつかあります。例えば日本は臨床研究が弱いというお話があって、臨床研究を重点的に強化していただくには、病院を整備していこうという予算が別途あります。臨床研究中核病院1か所当たり数億円の、いろいろな臨床研究をするのに必要な整備をするための事業費が別途作られておりますが、それは厚生科学研究費の枠ではなくて、一般の事業費の中で、具体的に言いますと医政局の研究開発課で要求しております。医療イノベーションとしては研究費と研究費以外の事業費という枠の中で推進をしておりますが、今回の厚生科学研究の議論になると事業費が対象になっておりませんので、この説明の中には入っていないのですが、事業としては別途取り組んでおります。
○山田委員 
 わかりました。ありがとうございました。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○松田委員 
 あまり意見がないようなので、あえて少しコメントさせていただきたいのですが、私は最近よく「死の谷」という表現で、基盤・基礎研究成果と実用化、創薬のプロセスの研究をつなげるのに大変時間がかかると言う事が指摘されますが、これを効率よく短縮化してサポートすること自体は、非常に賛同します。例えば2頁の表現で、「アカデミア等の優れた基礎研究の成果」と、わざわざ「優れた」と書く必要はないと思うのです。本当に興味あるシードであれば、いくら基盤研究であっても、極めて初期の段階から、製薬メーカーはコミットしてお金はいくらでも出すと思うのですね。そうではなくて、優れているか優れていないかわからないわけですから、しっかりとしたアカデミアが基盤・基礎研究をやっていただくということが大前提で、その成果を実用化に結び付けることが大事だと思うのです。それをサポートするという意味ですから、あえて優れた研究成果がいかにも放置されているかのごとく表現をするのはいかがなものかと、以前からそう思っているのですけれども。わざわざ「優れた」と書かないで、「基盤研究の成果を実用化につなげることをサポートする」という表現に、むしろ冷静に書かれたほうがいいのではないかと、最近このように思っているのです、参考までに。
○塚原厚生科学課長 
 ご指摘ありがとうございます。ただ、医療イノベーション会議という内閣官房で取りまとめしていただいている部局が、取りまとめるのに、そういう表現にしておりますので、それを尊重して書かせていただいたということです。ある意味『サイエンス』とか『ネイチャー』には、よく日本の研究者の論文が出るんだけどということも背景にあって、優れたものはそれなりにあるのではないかというのがいろいろな方々のご指摘になるところですので、決して放置されているという趣旨で書いているわけではないと思いますが、このような表現になっています。
○野村委員 
 私も本当に素人なので、科学研究の中身そのものについての評価ができるわけではないと思ってはいるのですが、たまたま今日同じ日にあった国立障害者リハビリテーションセンター研究所の評価報告書にも目を通させてもらって、それとこれの中身との表現方法の違いが非常に興味深かったというのですか、その辺が面白かったのです。今回いまやっている資料1-3で、課題的な部分についてというのは、どこに書いてあるのだろうと思いながら、全部読み切れませんが見て、(8)「平成25年度における主たる変更点・見直した点」というのが、あえて言うならそうなのかと思っているのです。それが「なし」とある部分については、その研究については何の問題もなく、何の課題もなくて、オールオーケーだということ。今回、了承で終わると科学技術部会がお墨付きを与えたということになるという理解になるのでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 「25年度における変更」なので、今年度までやってきている流れをそのまま進めていくのだということで、「変更なし」ということになっているかと思います。課題がないわけではなくて、現状認識されている課題をいまもやっているのですが、引き続きその課題を進めていくというようにご理解いただければと思います。
○福井部会長代理 
 全体として予算の削減が求められている中で、研究分野ごとの重点の置き方がいままで以上に、年々厳しくなっていくと思います。重点を置くところには予算を増やすけれども、それ以外のところはいままで以上にカットする必要があると思います。概算要求の項目が全て「未定」になっていますが、この未定の部分はどうやって決めるのかお教えいただけますでしょうか。メリハリをつけるには、かなりの配慮と交渉が必要だと思います。わかる範囲で結構です。
○塚原厚生科学課長 
 先週の金曜日に閣議決定をされた来年度予算の要求の考え方が出ていますが、政策的、裁量的な経費については、昨年、一昨年同様、10%の削減を求められております。それを財源に日本再生戦略を中心とした分野に、重点配分をしていくという考え方が整理されております。そういう考え方からいきますと、厚生科学研究費はいま全般的に460億円ぐらいありますが、一般的な厚生科学研究費については、やはり一定規模の縮減が求められております。もちろん、中身についてこれから少しメリハリを利かせるという作業になるかと思いますが、縮減せざるを得ない状況が一方であります。ライフ・イノベーションの関係ですと、医療イノベーションも含んだもうちょっと広い概念になると思いますが、ライフ・イノベーションについては厚生労働省として削減した額の2倍まで要求できるということですので、そこのライフの分野については重点的に要求ができることになりますから、その辺で予算の編成過程で創意工夫をしていきたいと考えています。もちろん医療イノベーション関係以外でも、厚生労働省の政策課題として重要な研究テーマは多くありますので、そちらのほうが疎かにならないような配慮は十分したいと思います。
○相澤委員 
 総論的な話です。国民の健康という非常に公共性が高いところでも、一律に予算の削減を要求することは、政府の方針として疑問に思います。もう1つ、医療イノベーションについて、日本の総額医療費の対GDP比は、アメリカの半分よりやや大きい程度ですから、国際競争力は難しいかなと思います。折角の機会ですので意見だけ述べさせていただきます。
○永井部会長 
 私の専門分野に関係するところでは循環器、生活習慣病関係の書き方が随分、前から変わってきたという印象を受けます。メタボ、あるいは糖尿病の予防というだけではなくて、合併症防止、あるいは脳卒中とか循環器疾患、臓器の障害をいかに防止するかというところに力点が移ってきているというのは、今回は非常に明確に感じることができるのです。その辺の考え方は「健康日本21」でも議論されたところでもあるのですが、随分それが取り込まれたという感じがいたします。ただ、そうなりますと、研究の手法も随分変わります。メタボ、糖尿病の予防だけであれば、血液検査とか腹囲を見ていればわかるわけですが、合併症の防止となると、かなりしっかりした疫学研究が必要です。またそれに対応する基礎的な研究の仕方も、従来とは変わるのではないかと思います。その辺についてのお考えはいかがでしょうか。非常に難しい研究に入らざるを得ないという感じがするのですけれども。
○矢島技術総括審議官 
 いまの「健康日本21」の流れは、糖尿病とか生活習慣病の合併症を、どのようにこれからもっと詳しくやっていくかということなのだと思うのです。いま先生からご指摘がありましたように、確かに発症を予防するところの予備軍に対するアプローチと、いまありましたように発症してから重症化をどうやって予防するかというところを、これからどのように少し深めていくかということのご指摘かと思うのです。いまの段階では、そのような可能性をゲノムの段階でもう少し、どのような遺伝子情報を持っている人が重症化しやすいかとか、そのようなところの研究が、たぶんいま言っている個別化医療のところで少しずつわかってくるのかと思うのです。まだ具体的に先生がご指摘されているレベルまで、遺伝的なものがあるから重症化をしやすいものだとかというところまでは、これから進めていく研究のレベルなのか。でも、少なくとも個別化医療というところでは、そのようなことも念頭に置いた研究になっていくのではないだろうかと思っていますが、そこのところは議論がまだまだ不十分なのかと思っております。
○永井部会長 
 いずれにしても、疫学研究がベースとしてかなり大事になってきますね。
○岩谷委員 
 これはコメントですが、障害関係で総合福祉法に関連して、障害を社会モデルで捉えるという捉え方への変化がかなり強く要求されてきています。従来の障害に関する研究は、医学的な研究に非常に重点が置かれており、もし社会モデルに移ったとすれば、政策は大きく変わらなければならないのだと思うのです。そういう事態に対処するための基礎的なデータを集めるとか、バイオサイコソーシャルな視点から、障害を基本的に見直して、それを基に政策を考える時期ではないかと思います。これはコメントです。
○矢島技術総括審議官 
 答えられますか。ICFの話はどのぐらいできるのですか。
○事務局 
 ICFということではないですが、特に障害者の身体・知的分野においては政策研究課題を既に置いていますので、そういったところで、法律の施行に伴って来年度もまた新しい課題設定をやっていきたいと考えております。
○宮田委員 
 このサマリーには載っていないのですが、前からお願いしている課題です。つまり、ファッショナブルに新しい課題を追えばいいのかという問題があります。そうではなくて、厚生労働科学研究費が一体どのような方向で進められていて、その達成度合はどうなのか。それから、何が足りないのか。つまり、政策支援のための研究枠をもう少し充実させていただきたいというのを、ちょっと議事録に載せたいと思っています。そうでないと、我々は何か闇夜の中で武器を振り回して、国民の健康を実現しようという、その時点その時点は非常に良い努力をしているのでしょうけれども、全体最適化に向かうような枠組みがないのです。委員も10年ぐらいで交代しますから、つまり忘却のかなたに行ってしまうということになりますので、どちらかというと科学研究のサポートがどういうトラックレコードで行われていて、どのような問題に直面して、それをどう解決するような形で進展しているのかというのを、断面ではなくて歴史的な時間をちょっと余裕をもって見られるような研究の枠組みを是非作っていただきたい。そうすると、いま皆さんがいろいろ局所局所でやっているものをうまくつなげて、次の上位概念の研究プログラムにつなげられるのではないかと実は思っていますので、そういったことも今後またご配慮をさらに強化していただきたいと思っています。
○福井部会長代理 
 いまのご発言とも関係しますが、臨床研究には大きく分けて観察研究と実験研究があり、ほとんどの観察研究は診療のデータを部分的にピックアップしてくるタイプです。外国で最近言われるようになっているのは、すべての診療データが研究データになるような枠組みを考えるべきで、そうでないと非効率的にデータがどんどん死んでいってしまう。臨床医が行っている診療記録すべてが研究データとして使えるような枠組みを作れば、臨床研究が発展するのではないかと考えられます。そういう意味で、先ほどの医療情報の基盤整備とも大きくかかわりますが、横の連携をうまくとるとか、どういうデータをどこで誰が記載するのかという基本的なところも、是非厚生労働省にはアプローチしていただきたいと思っています。
○永井部会長 
 この点はいかがでしょうか。おそらく厚生労働省だけではなくて、経済産業省とか文部科学省、総務省、いろいろな横断的対応が必要だと思いますけれども。ちょっと厚労科研費の枠にははまらない可能性もありますね。
○相澤委員 
 データの集積には2つ問題があって、1つはデータベース化するための技術的な問題です。もう1つは、データに関する法整備をどうするかという問題だと思います。法整備は各省間にかかわる問題ですから、協議をして整備を進めていただかなければいけない問題だと思います。技術的な問題は予算的な問題でありますから、そういう事業に積極的に補助金を分配していくという方向もあり得ると思います。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。とりあえず本日の議論はここまでとして、資料1-2、資料1-3の2つの案について、今日ご発言のあったご意見以外にお気付きの点、追加のご意見等を机上に配布している用紙にご記入いただきまして、8月27日(月)までに事務局へファックスでご報告いただきたいということでお願いいたします。事務局においては、本日の意見および後日の各委員の意見を踏まえ、必要な修正を行っていただき、その内容については私と事務局で最終的な成案として取りまとめるということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。そういうことで、作業をよろしくお願いいたします。
 議事の2にまいります。「遺伝子治療臨床研究実施計画の申請について」です。三重大学医学部附属病院、愛媛大学医学部附属病院、藤田保健衛生大学病院、名古屋大学医学部附属病院からの多施設共同研究に係る申請について、これは8月13日に厚生労働大臣より諮問され、同日付で当部会に付議されております。事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 それでは資料2をご覧ください。三重大学附属病院他の3病院から7月23日に受け付けた遺伝子治療臨床研究に基づく遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び、いわゆるカルタヘナ法に基づく遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程の承認申請がありました。遺伝子治療臨床研究の実施計画の概要から説明します。当該遺伝子治療臨床研究の実施計画については、スキームに則り受付後に新規性について複数の有識者の意見を聞きました。その結果、新規のベクターを用いて新規の遺伝子を導入するものであることから、医療上の有用性及び倫理性について厚生科学審議会の意見を聴くことが適当とされたものです。
 資料の5頁をご覧ください。研究課題名は、「MS3-WT1-siTCRベクターを用いたWT1抗原特異的TCR遺伝子導入Tリンパ球輸注による急性骨髄性白血病及び骨髄異形成症候群に対する遺伝子治療臨床研究」です。三重大学の総括責任者は、三重大学大学院医学系研究科遺伝子・免疫細胞治療学講座の珠玖先生です。また、今回の研究は4施設の多施設共同研究で実施するということです。その他の機関につきましては、29頁、愛媛大学の総括責任者は、愛媛大学大学院医学系研究科の安川先生、33頁、藤田保健衛生大学の総括責任者は、藤田保健大学医学部血液内科学教授の恵美先生、37頁、名古屋大学の総括責任者は、名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学教授の直江先生となっています。
 研究の概要について説明します。8頁から9頁にかけて、研究実施計画の研究目的及び、その選定理由欄があります。本臨床研究の目的は、有害事象の有無、増殖性レトロウイルスの有無、TCR遺伝子導入Tリンパ球のクローナリティの検討ということにより、安全性を確認する、と記載されているものです。WT1についてですが、これはがん抗原の1つであり、がん細胞である白血球細胞に発現している抗原です。TCRについては、T細胞に特異的に発現する何らかの抗原を認識するレセプター。免疫系におけるT細胞の抗原特異性を決定しているということです。
 9頁の対象疾患及びその選定理由の欄をご覧ください。1の研究の被験者としては、薬物療法等の標準的な治療法の実施が困難である非寛解期の急性骨髄性白血病の患者さん、治験困難な予後不良の骨髄異形成症候群の患者さんのうち、腫瘍細胞にWT1抗原が発現している者と記載されているところです。2に、被験者から採取した末梢血リンパ球に、WT1特異的なTCRα鎖及びβ鎖遺伝子をレトロウイルスベクターにより遺伝子導入するとあり、その遺伝子導入された自己のリンパ球を2回経静脈的に投与。その後、被験者体内でのTCR遺伝子導入T細胞の活性化を図る目的で、9個のアミノ酸から出来ているWT1235-243ペプチドを皮下投与するということが書いてあります。WT1ペプチドの説明については55頁の下から56頁の上に書いてあります。
 22頁からは実施計画という欄になります。被験者の選択基準や除外基準などが記載されているものです。25頁の4を見てください。ここに投与量と目標症例数が記載されています。投与量については2×10の8乗cells、2億個から開始して5倍ずつ増量する3つの用量レベルの投与群を設定し、投与量は300μgで同じです。目標症例数については、各用量で3例、計9例の被験者で行うと記載されています。下に行きまして、6には有効性・安全性の評価基準を4施設で統一する目的で、本臨床研究では各医療機関に共通の安全・効果評価・適応判定中央部会を設置すると記載されています。
 続いて41頁から68頁まで、これが当該研究のインフォームド・コンセントの文章となっているものです。また、その中で54頁の図1、59頁の図2を見ていただくと、本研究のイメージがより湧くかと思います。当該遺伝子治療臨床研究の実施計画については、科学技術部会の下に、この計画を検討する作業委員会を設け、本部会での今回の議論も踏まえ、主として科学的事項の論点整理を行っていただくこととなります。作業委員会のメンバーについては67頁です。いつもどおり部会長のほうにご相談し、了解を得ているメンバーで検討を行う予定としています。
 続いて69頁から、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法に基づく当該遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程の承認申請の概要を説明します。申請書と、それに添付して提出することになっている生物多様性影響評価書、この2つをここの資料に含めています。
 まず74頁の第一種使用規程承認申請書の、遺伝子組換え生物の種類の名称欄を見てください。対象となる遺伝子組換え生物は、ここに記載されているような遺伝子組換えモロニーマウス白血病ウイルスです。その下の第一種使用規程の内容欄を見てください。使用、保管、運搬、廃棄、これらに付随する行為ということにしています。続きまして、組換え生物等の第一種使用規程の方法欄というのをご覧ください。申請された使用等の具体的な方法が74頁から75頁、(1)から(10)までに記載されています。具体的には、溶液はP2実験室内の閉鎖系において扱われる。施設内の適切に拡散防止措置を執った冷凍庫に保管するとあります。また、開放系区域を通って別のP2レベルの区域に運搬する必要がある場合は、密閉した容器に入れて、容器の落下・破損を防止するために箱に入れて運搬するとあります。3つ目として、他の共同実験施設に運搬する場合は、密閉した容器に入れ箱等に入れて運搬し、凍結状態で運送するとあります。また、被験者の個室管理については、初回投与後3日までとの記載もあります。
 この申請された第一種使用規程の承認に当たっては、主務大臣は学識経験者の意見を聞かなければならないとカルタヘナ法で規定されており、これに基づいて既に科学技術会議の下に設定されています。資料としては101頁をご覧いただきたいと思います。101頁にある生物多様性影響評価に関する作業委員会が設置されていますので、ここで当該規程の適否の確認を行うことになります。
 以上、当該遺伝子治療臨床研究について2つの作業委員会の検討が完了したところで、再度、本科学技術部会での確認ということになります。説明は以上です。2つの作業委員会で、特に現時点で整理を行うべき事項や、倫理的な観点から整理すべき事項などがありましたら、ご助言のほど、よろしくお願いします。
○永井部会長 
 ありがとうございます。では、いまの説明について、ご意見、ご質問をお願いします。いかがでしょうか。
○福井部会長代理 
 資料を深く読んでいないので確認ですが、遺伝子の導入自体は、それぞれ4つの施設で別個に行うというプログラムなのか、それとも1箇所で導入することになっているのか。
○尾崎研究企画官 
 本件につきましては、患者さん、各施設のTリンパ球について、三重大学の施設に送り、そこで遺伝子を導入、このベクターないしは遺伝子組換え生物によって導入をするというものです。
○宮田委員 
 これは対象疾患は違いますが、前回少し揉めたというか、議論を深めたものですよね。つまり参加している施設も、かなりオーバーラップしていますし、それから、いきなりフェーズ1で多施設でいいのかという疑問に対する検討をしっかり進めていただきたいというのが1つ。私は別に多施設でも問題ないと思いますが、中央判定機関がきちんと機能するのかどうかというのが1つ。
 もう1つは各臨床研究、やはり安全性を担保しながら進めなければいけないので、その安全性に関する情報、患者さんの変化などの情報もそうですが、それをどうやってこの治療グループが共有するのかというところも含めて審査をしていただきたいと思っています。
○尾崎研究企画官 
 その旨、作業委員会にお伝えして、そこについてはしっかり議論していただきます。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは、ただいまのご意見を事務局を通じて作業委員会にお伝えするということで、論点整理を行っていただいて、検討の結果を当部会に報告していただく。その時点で再度、総合的に判断するということにしたいと思います。よろしくお願いします。
 続いて、「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」です。Shinjuku ART Clinicの新規申請及び札幌北楡病院の変更報告について、8月6日に厚生労働大臣より諮問され、8月8日付で当部会に付議されています。事務局より説明をお願いします。
○荒木再生医療推進室長 
 それでは研究開発振興課より、資料3に基づいて付議がありました2件の案件について、簡単に概略をご説明します。資料3の1頁、いま部会長からお話がありましたが、8月6日付で厚生労働大臣より諮問がありまして、8月8日付で当審議会に付議されているものです。
 資料の3頁ということで、まず1件目です。いちばん下のほうに「記」と書いてありますが、ヒト幹細胞臨床研究の課題名、「自己皮下脂肪由来間葉系幹細胞を用いた卵巣機能低下症の改善に関する臨床研究」ということで、研究責任者については加藤レディスクリニック院長の加藤修さんということです。
 次の頁は概要が書いてあります。申請年月日は平成24年7月13日、実施施設はShinjuku ART Clinicということになっています。対象疾患は更年期障害を伴う卵巣機能低下症の患者さんということで、幹細胞の種類は自己皮下脂肪由来の間葉系幹細胞ということです。登録期間及び対象症例数ですが、本計画の承認後3か月、人数が満たない場合はさらに3か月延長するということで、目標症例数は5症例、大体3か月でということを目標にしています。概要です。下腹部または臀部より皮下脂肪組織を採取し、洗浄後にコラゲナーゼ処理。そして遠心分離を行い間葉系幹細胞を含む細胞を得る。この場合は培養を行わずに、そのまま当日、更年期症状を示す患者の卵巣に経膣超音波装置ガイド下に移植をするということです。移植効果については移植後6か月間、血液、血中の、さまざまなホルモン、あるいは超音波検査、そしてクッパーマン更年期症状指数等を用いて総合的に評価をするということです。
 その他(外国での状況等)、抗がん剤を用い卵巣機能が低下したラットに対して、骨髄由来間葉系幹細胞が投与され改善が示されているということが1つ、データとしてあります。それ以外には、更年期障害に対する治療法は完全に確立されていません。対症療法としてはHRT、ホルモン補充療法が選択されるが、本邦では浸透していないということで、本研究で卵巣自体の機能回復を試みることによって、抜本的、根本的な治療法を目指すことができるのではないかということになっています。新規性の部分は、今回は脂肪から取る間葉系幹細胞を使うのですが、この間葉系幹細胞のヒト卵巣への移植例はないということです。これまでは54症例、ヒト幹指針に基づいて認可されたものの中で卵巣というものを使うのは、たぶん初めてだと思っています。これが1件目です。
 後ろに詳細が書いてありますが、ここは飛ばさせていただき、次の2件目の概要が15頁にあります。こちらについては、実は何度も各個別施設ごとに上がってきているものがありますが、今回は変更申請ということです。当時の大臣意見を発出しているのは平成21年5月1日ということで約3年前のものですが、研究課題名は「末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験」というものです。
 実施施設は札幌北楡病院ということです。対象疾患ですが、既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患ということで、ASOあるいはバージャー病等の疾患を想定しています。ヒト幹細胞の種類は自家末梢血単核球細胞。実施期間は当初の実施期間及び対象症例数ですが、厚生労働大臣の意見発出から3年間で144例、これは推奨療法と今回の細胞治療をしたもの72例ずつということで想定しています。概要ですが、G-CSFを皮下注射しまして、4日目に自己末梢血を採取。アフェレーシスによりCD34陽性細胞を採取した上で、末梢動脈疾患患肢のほうに筋注をするということのようです。北楡病院を含む計19施設による多施設共同研究というのが、当初の予定です。
 その他については様々な研究を海外でもやられているということで、割愛させていただきました。新規性の部分ですが、本研究に用いる幹細胞、新規性はないのですが、19施設の多施設臨床研究として実施され、さらにダブルアームでしっかりやりますという部分、そういうプロトコールの新規性を認めるということで、当初の申請が上がっています。今回の変更点の部分は17頁以降に小さい字で書いてあります。19頁を見ていただくとわかるように、当初は19施設で、この臨床研究を多施設共同でやるという話でしたが、さらに10施設が追加されて、合わせて29施設というところが大きな変更点と思っています。
 以上につきまして、今回、大臣が当部会に諮問・付議ということですが、もし可能でしたらヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会のほうで詳細について審議をしたいと思っています。ご審議のほど、よろしくお願いします。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それではご質問、ご意見をお願いします。いかがでしょうか。
 最初のShinjuku ART Clinicの事例ですが、更年期障害を克服するということは、場合によっては妊娠可能の状態にもなり得るということなのでしょうか。
○荒木再生医療推進室長 
 対象の患者さんの選定の仕方にもよるかもしれませんが、理論上は部会長がおっしゃるとおり、可能になる可能性もあるということです。
○永井部会長 
 その状態でもし妊娠されたときに、話が非常に大きくなる可能性があるのですが、それについてはどのように考えたらよろしいのでしょうか。生殖医療にかなり踏み込む可能性があるということですね。単なる再生医療ではなくなってくる可能性があるということかと思いますが、それについては申請者は、特に説明はされていないのでしょうか。
○荒木再生医療推進室長 
 まだ申請の具体的なところについて、ご本人に確認したわけではないのですが、いまの部会長のご指摘の事項も含めて、当然、審査委員会のほうでもしっかり見ていただきますが、もしこの部会でもその点について何かご意見があれば、いただければと思います。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○塩見委員 
 単純な質問ですが、4頁にある「外国での状況等」の所で、「海外では主にホルモン補充療法が選択されるが、本邦ではあまり浸透していない」とありますが、これの理由と、ホルモンを使わないで幹細胞を使うのがベターだと思われる理由というのは何なのでしょうか。
○荒木再生医療推進室長 
 申請者が直接ご存じなのかもしれませんが、確かに日本においてのホルモン補充療法については、実は日本産婦人科学会、医会等の診療ガイドラインのほうにも、これが更年期障害に対する第1選択として書いてありますが、調査によると、日本では浸透率が低いという調査もあるということです。
 1つ考えられるのは、ホルモンとしてエストロゲン、プロゲステロンを使いますので、例えば婦人科系のがんになる、乳がんになるという可能性も副作用としてあると言われますので、その辺で、もしかすると日本でなかなか浸透していないという可能性もあります。申請者がどう考えられているかは別として、事務局が調べた限りではそういう状況です。
○川越委員 
 専門を少し離れていますが、遺伝子治療としての有効性云々ということもさることながら、そもそもこの研究にどんな意味があるのかということを正直思っています。というのは、更年期というのはご承知のように、普通は年が変わるときですから、1年間の出来事ですよね。新しいホルモン環境に慣れるまでの身体の変化ですから、そういうところへこういう治療を持っていくというのがどうかなということ。これは、この場で言う意見ではないかもしれませんが、1つ感じています。
 それから、これは自己の脂肪組織から取った細胞を移植するということで、たぶん問題はないと思うのですが、やはり侵襲を与える治療法になりますので、そういう点の検討というのはなされているのでしょうか。あるいはここで、ただそういうのをやりたいという先生がいらして、問題ないからいいのではないかという、そういうお墨付きを与えるのか。その辺がよくわからないので、教えていただきたいと思います。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○荒木再生医療推進室長 
 大きく2点、特に採取の部分のお話だと思いますので、こちらの安全性については一般の医療技術としてという話もありますし、これは下の審査委員会のほうでは、基本的にはヒト幹細胞を用いる安全性・倫理性を審査するのですが、その前提条件として、医療技術として、そこからものを取ってくるという安全性についても当然見ていただいていると理解しています。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
○相澤委員 
 大学病院等以外の審査の場合、設備がきちんとしているかということも当然審査の対象になるという理解でよろしいですか。
○荒木再生医療推進室長 
 はい、ご指摘のとおり、これはまさに指針に基づいてですので、設備、安全基準、あるいはしっかりと倫理審査委員会を設置して、そこで審査されているか。そこも含めて、全て同等の条件で審査します。
○桐野委員 
 この間葉系細胞を移植した場合、卵巣の血流を上げて機能が改善されるというようなことも書いてあるし、それから5頁の絵ですが、おそらく絵を患者さんは見られるので、この絵を参照すると思うのですが、そこには「機能低下卵巣の再生」と書いてあるのです。再生を目指してやるという意味でしょうが、ずっと行って、最終的には「卵巣機能回復、更年期症状改善」と書いてあって、この説明はミスリーディングだと思うのです。要するに再生するわけではないのに、そのように書いてある。これは変えていただかないとまずいのではないかと思うのですが。
○荒木再生医療推進室長 
 貴重なご意見として賜りました。これは審査委員会のほうにも伝えるようにします。ありがとうございます。
○宮田委員 
 申請者には失礼ですが、いただいた情報だけでは判断できないので、ワーキンググループで、もし審議していただく場合にはきちんと追加情報を得ていただきたい。特にモデル実験動物での文献が、これは読んでいませんが、1個くらいしかなくて、ご存じのとおり科学研究というのは全部追試されないと真ではない。したがって1つだけの論文を根拠にした臨床研究なんて存在し得ないと思っていますので、そういったことも含めて、これは非常にいいレッスンになりますので、この審議を通じて、幹細胞の臨床指針の審査に適格である幹細胞の研究というのは何かということも含めて、少し素案を出していただきたい。そういう考え方みたいなものを出していただきたいと思っています。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、ただいまのご意見を、事務局を通じて審査委員会にお伝えするということで、さらに論点整理を行っていただきます。その検討結果は、また報告がありますので、その時点で再度、総合的に判断するということでお願いしたいと思います。
 では、議事の4にまいります。再生医療の安全性確保に関する専門委員会。
○宮田委員 
 すみません。この北楡クリニックも、素晴らしい研究、ランダムコントロールトライアルは偉いと思うのですが、72×72で何が言えるのかということも含めて、ワーキンググループできちんと審査、審議していただきたい。この研究は何を目的にするのか。つまり安全性なのか、有効性なのか。それから、もし有効性だとしたら、安全性というものがきちんと確かめられて次のステップに行っているのかということも含めて、是非慎重に審議していただきたいと思います。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、その点をお伝えして、また総合的に判断することにしたいと思います。
 続いて、「再生医療の安全性確保に関する専門委員会(仮称)の設置について」、事務局より説明をお願いします。
○佐原研究開発振興課長 
 お手元の資料4になりますが、再生医療の安全性確保に関する専門委員会(仮称)の設置についてということで、ご説明します。まず設置の趣旨ですが、再生医療は、機能不全となった細胞や組織を再生させ、これまで有効な治療法がなかった疾患が治療できるようになるなど、国民から高い期待が寄せられているところです。
 他方、新しい医療である再生医療については、関係法令が必ずしも十分整備されておらず、例えば遺伝子操作による腫瘍化の可能性もある等、再生医療の実用化に際しての安全性には、いまだ課題があると言えます。
 さらに、今年の7月31日に閣議決定がありました「日本再生戦略」においても、この再生医療について、「早期にできる限り多くの実用化の成功事例創出に取り組む」とともに、「医療として提供される再生医療についても、薬事規制と同等の安全性を十分確保しつつ、実用化が進むような仕組みの構築について2012年度から検討を開始し速やかに実施する」とされているところです。これらを受けまして、医療として提供される再生医療、具体的には薬事法の枠の外で治験ではなく行われている臨床研究ですとか、あるいは、いわゆる自由診療の中で行われつつある再生医療ということについて、安全性を十分確保しつつ、実用化を推進するための仕組みというのは、どうしたものが適当なのかということについて検討していただきたく、そのための組織の設置をお願いしたいと考えています。検討課題等については、趣旨で申し上げましたとおり、薬事法等の外で行われている医療として提供される再生医療について、薬事法等関係法規と同等の安全性を十分確保しつつ、実用化が進むような仕組みについて、それが果たしてどういうものなのかということについてご議論いただきたいと考えています。
 検討組織としては、医療として実施される再生医療が、研究的内容を多く含んでいることに鑑みまして、この厚生科学審議会科学技術部会の下に、「再生医療の安全性確保に関する専門委員会」を新たに設置して、ご議論いただきたいと考えています。委員構成としては、厚生科学審議会の委員の中から、医学、特に再生医療の専門家、法律や生命倫理等の専門家、患者の視点を有する一般の立場を代表される方、15名ほどにお集まりいただきたいと考えています。
 最後に、お配りしたペーパーには記載していませんが、検討スケジュールについてご説明をさせていただきます。現在、再生医療に関する臨床研究については、実用化に向けた取組が日々進んでいます。これを踏まえますと、この専門委員会においては、できるだけ早く着手し、精力的にご議論をいただきたいと考えています。具体的にはこの秋より議論を開始しまして、月に1、2回のペースでご検討いただき、来年夏くらいまでに一定の結果をお出しいただければと考えています。以上、ご審議のほど、よろしくお願いします。
○永井部会長 
 ありがとうございます。いかがでしょうか。
○福井部会長代理 
 おそらく、この委員会は安全性の確保が目的ではなくて、どちらかというと安全性を確保しながら、いかに早く推進するかという視点で、外部からの圧力で立ち上げることになったと思います。委員会の名前に推進という言葉
を入れたほうがよいのではないでしょうか。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○佐原研究開発振興課長 
 福井委員からご指摘いただきましたとおり、安全性の確保を十分に図りつつ実用化を進めていくということですので、確かにいまの「仮称」ですと十分でないかもしれませんので、少し考えたいと思いますが、あまり長くなってもいけないと思っているので、少し考えてみたいと思います。
○福井部会長代理 
 例えば「再生医療の安全性確保と推進」くらいの言葉を入れるだけでも、ずいぶん違うのではないかと思います。
○永井部会長 
 他にいかがでしょうか。「薬事規制と同等の安全性」ということは、高度先進医療においても、あるいは臨床研究においても、相当の基準を、あるいは施設を整えて、いわゆる治験と同じようにという、そういう意味でしょうか。
○佐原研究開発振興課長 
 いま薬事法のほうでは、例えば製造所における製造管理の基準ですとか、それから治験審査委員会の設置とか、その審査のプロセスについて規定がありますが、そういうことを、いま臨床研究のほうでは指針で担保しているというのが現状ですが、そういうことについてどう考えていくのか。あるいはデータの質というか、具体的に実用化に耐えるようなデータを出していくにはどうしたらいいのかといったことも、課題としてはあるのではないかと認識しています。
○永井部会長 
 そういう意味でも、安全性確保が中心なのか、推進が中心なのかということを、議論の中でよく整理しながら話をしていかないといけないですね。
 よろしいでしょうか。もしご意見がなければ、当部会の下に「再生医療の安全性確保」と「推進」と付くのかどうかですが、それに関する専門委員会を設置するということで、ご了解いただきたいと思います。ありがとうございます。
 続いて議事の5、「報告事項」にまいります。「国立社会保障・人口問題研究所の評価報告等について」、事務局より説明をお願いします。
○西村所長(国立社会保障・人口問題研究所) 
 国立社会保障・人口問題研究所の所長を拝命しております西村と申します。
○永井部会長 
 失礼いたしました。今日、国立社会保障・人口問題研究所の西村所長においでいただきました。ご紹介を忘れまして失礼いたしました。
○西村所長(国立社会保障・人口問題研究所) 
 いいえ。
○永井部会長 
 それではご説明をお願いいたします。
○西村所長(国立社会保障・人口問題研究所) 
 よろしくお願いいたします。資料は5です。1頁に「評価報告書」があります。6頁にその評価委員の名簿、7頁から「機関評価に係る対処方針」があります。これに基づいて報告をさせていただきます。私どもの研究評価に関しましては、研究評価委員会規程に基づきまして毎年評価がなされ、この厚生科学審議会に対しては、機関評価に係るものについて報告をいたすということが定められております。
 念のために申し添えますと、私どもは、研究課題に関する事前評価、中間評価、事後評価、そして研究者に係る評価をしていただいております。今日は、研究課題などの個々の評価に関しての報告はいたしませんので、ご了承いただきたいと思います。蛇足ですが、私どもの組織にはこれ以外に評議員会がありまして、主に社会科学系の研究者の方を中心に大所高所からのご意見を伺っております。
 資料の評価報告書と機関評価に対する対処方針がありますが、大変恐縮ですが、時間の関係でこの2つを一気に報告させていただきたいと思います。最初の評価報告書は、研究評価委員長の清水先生からいただいた報告書がありまして、この項目の立て方は厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針に則っております。合計9項目ありますが、このうち2つは特段の指摘ということではありませんので、7頁からご覧いただいて、7頁以降、箱の中にご指摘が載っており、その後ろに所長としての対処方針を書いております。これをご覧いただきながらお話を聞いていただくとありがたいと思います。
 まず最初に、私どもは定期的に調査あるいは推計等を行っております。1つは、本年1月に公表いたしました日本の将来推計人口です。これ以外にも、出生動向、人口移動、世帯動態、全国家庭動向といった人口関係の調査を行っております。また社会保障分野に関しましては、今般、統計法上の基幹統計として位置づけられました「社会保障費用統計」を毎年作成し、今年は、さらに「生活と支え合いに関する調査」を実施することとなっております。こういったことに関して今の評価報告書では、1と2についてのご指摘を受けております。
 1つは、従来、社会保障研究と人口研究が必ずしも一体的ではなかったという現状を踏まえて、一体的な研究を進めるようにというご指摘。さらに、政策課題に対する対応をより積極的に行うというご指示がございました。これに基づいて私どもとしては、人口推計に関する新しい手法の開発、社会保障統計の国際的な整合性、根拠に基づく政策提言のための基礎となる研究を進めるという目標を設定いたしました。これに加えて研究評価委員会で話題になりましたこととして、「地域」という表現と「ナショナル・ミニマム」という表現が各学問分野で必ずしも同じではありませんでしたので、その辺りもしっかり踏まえて研究を進めるようにというご指摘を受けて、その方向を検討しております。
 次に8,9頁です。まず、他機関との共同研究の関連です。いま、大変厳しい定員管理がありますので増員はなかなか難しいわけですが、私どもとしては、客員研究員制度、さらには定年退職後の再任用制度等を活用し、研究体制を確保していくと目標を設定いたしました。さらに他研究機関との共同研究。私どもは多くの大学の主に社会科学系、医学系の研究者と、さらに保健医療科学院などとの交流が活発ですが、こういった面だけではなくて、若い人たちへの社会保障の必要性を鑑み、労働政策研究・研修機構といった分野との共同研究も進めてまいりたいと考えております。当研究所内部の研究者の間で共同で行う作業と個人で行う作業があり、この間の密接な業務の分担が必ずしも公平ではないというご指摘がありましたので、そういう問題に関して内容を精査することを対処方針として掲げました。
 併せて統計データに関しましては、私どもが行う調査は、他機関、総務省統計局、統計情報部等の各種調査に基づく研究がありますが、そういったものとの関連について作成過程の明確な表示。あるいは、多くのメディアから問合せがありますので、どういうところからどういうご指摘があったかということも含めて、これらを記録に残す体制を取り、より一層の広報活動を進めてまいりたいと考えております。
 最後は、私どもの組織に関係することです。10頁です。私どもは組織上、部が単位となっておりますが、個々の事業については、時代の要請、国際性の要請などに対応して日々変化させる必要があります。そういった研究を柔軟に進める必要性からプロジェクト方式を採用しているわけですが、このことについても、外部の理解が必ずしも十分でないというご指摘を受け、その認識の下、私どものプロジェクトについての情報発信の努力に努めたいと思っております。最後の話に関しては、参考資料に私どもの年報の抜粋を添付させていただきました。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございました。ただいまのご説明に、ご質問、ご意見はございますでしょうか。
○福井部会長代理 
 先生がお話されたことと部分的に被っているかもわかりませんが、例えばアメリカなどでは、国立のいろいろな研究所とか組織が集めたデータを、ほかの全く無関係の研究者とか学生が、わずかなお金を払いデータを使用・解析をして研究論文を書くということが幅広く行われていて、データを最大限活用しているように見えます。一方、日本ではほとんどそれができないように思います。この点について、先生の研究所ではいかがでしょうか。
○西村所長(国立社会保障・人口問題研究所) 
 今のご指摘は、正確に言うと、一生懸命やっていただいているのは総務省統計局です。そこが全体の省庁の統計を一括していまおっしゃったような方向で、ゆっくりという印象はありますが、日々改善されていると理解しております。私どもは、そのデータを用いて二次利用ということをするのが主です。もちろん私どもが収集したデータに関しては、収集時期から私どもが整理するまでの期間がちょっと長いというご指摘があるのですが、そのあとはほぼ完璧に全面的に公開をしております。ただ全体的に、おっしゃったように、厚労省の中の統計情報部、あるいはそういったいろいろな諸機関との関係調整があります。統計データの2次利用に関して大きな課題だと認識しております。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○宮田委員 
 西村先生がやっていらっしゃる研究は非常に重要なのですね。国の行く末を決めるような話ではないですか。先生方のデータがしっかり作られていながら、いま、私たちは年金問題とか医療費問題で齟齬を来しているという状況があるので、これをどうやって埋めるかという方向が1つある。福井先生がご指摘なさいましたが、やはり先生方が作っている人口モデルが本当に妥当なのかということも含めて、もう少しオープンな議論をして、例えば外から、この社会保障政策ではお金が足りないとか足りるとか、そのような議論が足りないのではないかと思っておりまして、是非とも多くの方々が先生のモデルを使用したり、あるいは批判したりするような活動がもっとできるような、広報・宣伝も含めてですが、やっていただきたいというのが1つです。
 それからもう1つ。政府が少しお金が足りなくなったからということで、我々の寿命が短くなり年金が少し足りなくてもいいような圧力がかからないとも限らないので、メディアの立場からいうと、疑い深くなるわけです。そうすると、一方で独立性をどう保つか。つまり、今の政権が代わって、また、その政権の都合で統計情報などが変えられては困るわけです。そういったことに関しても、オープンにするということがとても重要な独立性確保につながると私は思っています。いまも努力をなさっていると思いますが、その辺の努力をもっとしてもいいのではないかと。特に、「マスメディアへの協力」と1個書いてありましたので、みんなが人口統計の、あるいは人口モデルを作ることの重要性を認識するというようなことをもう少しおやりになるべきだと思います。
○西村所長(国立社会保障・人口問題研究所) 
 ご指摘、ありがとうございます。おっしゃるとおりです。人口推計につきましては、年金政策を歪めるような方向の推計がされているという誤解が一時ありました。これは決してそうではありませんで、私どもは、人口学的研究に関してはかなり科学的な方法でやってまいりました。他方、社会保障に関しては、やはり政策的な議論があります。それが15年前に厚生省人口問題研究所と特殊法人社会保障研究所と統合したあと、若干誤解を招いたことがあったかと考えております。ただし、いま宮田委員がおっしゃったように、同時にその両方を融合して、一方で独立性を持ちながら政策的な議論ができるようなことを推進することが大変大事な課題だと認識しております。今おっしゃった前者については、ミッションとして懸命に頑張ってやってまいりたいと思います。後者に関しては、メディアとの関係はこちらからも言いたいことが若干ありまして、もうちょっと丁寧に報道していただきたいということもあります。しかし、熱心にやってまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
○永井部会長 
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
○岩谷委員 
 社会保障に関するデータは大変参考にさせていただいているわけですが、高齢社会になりまして、それにかかわる経済的な問題とか、特に障害に関する経済的、社会的な影響がどうかというようなことについても、やはりこれは、そういう専門家の方々がいっぱいいらっしゃるわけですので、是非そういう方面からの研究、研究と申しましょうか、はっきりとした実態をニュートラルな形で出していただきたいと思っております。
○西村所長(国立社会保障・人口問題研究所) 
 本当におっしゃるとおりで、私どもは、障害者に関する調査研究は手薄であったということは正直に申し上げたいと思っております。今後、是非そういう方面と協力して研究を推進してまいりたいと思っております。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは西村先生、どうもありがとうございました。
○西村所長(国立社会保障・人口問題研究所) 
 ありがとうございました。
○永井部会長 
 続きまして、もう1つの報告事項です。「国立障害者リハビリテーションセンター研究所の評価報告等について」です。こちらも本日、加藤所長にご出席いただいております。加藤所長からご説明をお願いいたします。
○加藤所長(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) 
 国立障害者リハビリテーションセンター研究所の加藤です。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、早速説明させていただきます。
 資料6です。1頁をお開きください。我々のセンターは厚生労働省の社会・援護局の障害保健福祉部の所掌下にありまして、自立支援局・病院・研究所・学院と、4つの部門からなっております。その中で私どもがおります研究所の機関評価がなされましたので、それについてご説明したいと思います。
 今回は、平成20年度から平成22年度までの3年間を対象としております。評価委員の方々はここにお示ししました10名の方々、医学、工学、社会科学、それぞれの専門家の方々です。障害当事者の方も含まれております。委員長は委員会で互選で決められておりまして、今回は越智先生、大阪警察病院の院長で整形外科がご専門の方ですが、おまとめいただきました。私どもで評価資料を作りまして、それを前もって配布して、今回、さまざまな評価、指摘をいただいたというのがこのまとめた報告書です。
 2頁の機関評価の結果ですが、全体としての評価、それから、5頁の下のほうですが、各研究部についても、それぞれ評価をしていただいております。指摘事項に関しては黒ポツで示しております。それに対する我々の対処方針は18頁から42頁まで、非常にたくさんのご指摘をいただきまして、是非これを今後の運営に反映していきたいと考えております。参考資料として43頁から、私が評価委員会のときに使用いたしました資料をご用意いたしました。これで私どものやっていることをざっとご説明してから評価の結果を説明したいと思います。
 我々の研究所ですが、44頁の下の図にありますように、脳、感覚器、運動器、それぞれのさまざまな障害に対して、医学研究部門が3つ、工学系の研究部門が3つ、社会科学系が1つ、情報センターが1つでしたが、最近、情報センターが1つ追加になりました。このときは、7研究部、1情報センターということになっております。
 次の頁にいきまして、研究員は常勤の研究員が31名。非常に小さな研究所です。医師が9名含まれておりまして、そのほか、流動研究員などを含めて55名の体制でこのときはやっております。医学系、工学系は、それぞれ20名程度、社会科学系が10名程度。この3年間でいちばん大きな変化は組織上の変化ですが、新しく脳機能系障害研究部という部門が設置されました。新しく3つの研究室が設置されました。それから、発達情報センターは本省にあったのですが、こちら側に移されたということです。
 研究資源の状況ですが、一般会計予算のほかに、それと同額ぐらいの競争的外部資金を獲得しております。ほぼコンスタントに獲得しているということです。あとは、各研究部のトピックス的なところを簡単に紹介したいと思います。
 48頁の下に脳機能系障害研究部とあります。ここに「ブレイン-マシン・インターフェースによる福祉機器制御」とありますが、これはかなり活発に研究されていまして、科学・技術重要施策アクションプランの1つとしても取り上げられております。
 次の頁は運動機能系障害研究部です。ここは脊髄損傷を対象としておりますが、歩行再獲得のためのニューロリハビリテーション。感覚機能系障害研究部では、最近、網膜色素変性症の日本人の主要原因遺伝子を発見することができました。次は福祉機器開発部です。ここもいろいろな開発をやっておりますが、最近のトピックスとしては、認知症者を対象とした情報支援システムの開発が注目を集めております。障害工学研究部では、新しいシーズを作っていく取組もやっております。
 次の頁の障害福祉研究部においては福祉行政の施策に資するような、例えば持続的な障害福祉制度に関する研究、こういったものも行っております。義肢装具技術研究部は、実際、うちの病院に来られる患者さんの義肢、義足を作っているところで、作りながら研究をやっているという、臨床と研究が一体化された部門です。「発達障害情報」、昨年度から「・支援センター」というように「支援」が入りましたが、ここでは、ホームページを介してさまざまな情報を発信しています。
 私どもはバリアフリーをモットーとしておりますので、各研究部間でさまざまな連携を行っております。次の頁にありますように、何と言っても、この研究所の特色の1つはお隣に病院と自立支援局という臨床現場があるということです。ということで、そことの部門間の連携も盛んに行われております。
 あと、54頁の下にありますように、いろいろな大学、研究機関、福祉施設、企業との共同研究もしておりますし、国際協力としてWHOのセミナーとか、中国・韓国リハビリテーションセンターとの交流、JICAを通じた技術研修、あるいは、ISOへの参加といったことをやっております。
 55頁、研究者の養成です。流動研究員を、毎年10名前後採用しております。倫理規定などは、次の頁に書いてあるように、一応整備されているということです。
 これに対しまして機関全体としての評価をいただきました。また2頁にお戻りいただきたいと思います。研究、開発、試験、調査及び人材養成等の状況と成果につきましては、障害者の多様なニーズに併せて、市場規模が小さいにもかかわらず研究開発コストが非常に大きい、民間では取り組めないものが課題として取り上げられて、限られた人員・研究費・資源で大きな成果を上げていると評価をいただいております。課題の選定ですが、研究所の大目標に沿った研究テーマが選定されており、その決定プロセスも確立しているという評価をいただいております。
 次の頁にいきまして、丸3の研究資金です。大変厳しい経済的状況の中で競争的資金などの研究費を獲得して、従来どおりの研究資金が確保できていることは高く評価されております。丸4の組織などについては、脳機能系障害研究部などの新しい研究組織の立上げや研究部全体の再編成に取り組んでいる点を評価いただきました。丸5の共同研究につきましても、他施設との間にさまざまな連携が行われており、また、さまざまな国際貢献もなされていると評価をいただきました。丸6研究者の養成です。先ほども申しましたように、流動研究員制度が定着して、その養成に成果が認められるということです。丸8倫理規定及びその他委員会の整備状況ですが、整備されているということです。
 委員の先生方からは綿密に評価をしていただき、非常にたくさんの指摘を受けました。それに対する対処方針はこの表にまとめておりますが、全部は時間がありませんので説明できません。大きく3点だけ説明させていただきます。要するに、国リハ研究所しかできないような研究をこれからもどんどん進めてほしいということが第1点です。隣に臨床現場があるということで、臨床評価部門などを是非強化していきたいと思います。また、先ほどもちょっとお話が出ていましたが、障害に関するデータベースの構築といったものも我々の仕事ではないかと考えております。人員的には少ないし、これ以上増やすことはできないということですので、やはりほかの研究機関、あるいはリハセンターがたくさんありますので、そういうところとネットワークをつくりながらやっていきたいと考えております。国際的な発信をもっとすべきではないかというご指摘がありましたので、今後、大いに発信していきたいと考えております。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、ただいまのご説明に、ご質問、ご意見をお願いいたします。
○野村委員 
 すみません、私も専門ではないのであれですが、以前に取材をした上野千鶴子さんが自立の意味について、100%、24時間全介護が必要な人であっても、したいときにしたいことができる生活が自立なのだということをおっしゃっていたのにちょっと感銘を受けたことがあったのです。私が取材するのは臨床の医療関係者の方が多いのですが、それでも大学病院などに所属されている医療関係者の方たちが、ここ最近、障害や病気を治すだけではなくて、さっき岩谷先生もおっしゃいましたが、社会で自分のさまざまな力を発揮しながら生き生きと生きていくという非常に大切な目的に重きをおいて、福祉関係者の方たちと協力・連携し合っていらっしゃるのをいくつかの分野で取材させていただいたことがあります。それも素人の私からいうと感動的ですらあったのです。そういうことの大切さを考えると、ここにご指摘されているすべての高度な研究において、当事者の方たちの、当たり前のことですが基本的人権と意思表明について、やはりこういった最初の研究であっても必ず前提として認識されている、前提に置かれているということを徹底していただければ非常にありがたいと思っています。
 いくつかのご指摘の中に共通してあったのですが、国立の研究所だからこそできることをしてほしいというようなことがあります。私たちマスコミなどは、よく何でもかんでも効率的と。お金がかかることについては批判をしがちですが、私自身は常々、そうやってお金がかかることが必ずあって、それの認識が大事だと思っております。こういった指摘を、どうぞお心を強くしていただいて、ここでしかできないことがおありであれば、それを胸を張って主張していただければと、私たちマスコミにどんどん発信していただければと思います。
○加藤所長(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) 
 ありがとうございます。前のほうのご意見ですが、我々も治療を目指した研究はもちろんやっております。しかし、それでもどうしても治せない部分があるわけですね。そこに関しては、その人のまだ残っている能力でやれることはたくさんあるわけです。そのやれることをいかにして支援するかと。これはいろいろな意味で必ずしも医学的とは限らず工学的な手法を使ってやれるということで、その辺は力を入れてやっているということです。
○福井部会長代理 
 随分、研究室が多いようですが、常勤研究員が少ないのに驚きました。例えばBMIなどはマスメディアを介していろいろ、最先端の研究で報道されたり、それから外国でも、随分最先端の研究が行われているということですが、脳機能系障害研究部では何人の研究員でBMIの研究をしているのでしょうか。
○加藤所長(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) 
 研究室長が1人、あとは、ここは流動研究員の方が結構多くて4、5人おります。ただ、それぞれが、例えばお医者さんは脳外科の医者であったり、あとは工学系の、ドクターの方は電子工学の専門家であったり、それぞれの分野のエキスパートが集まっているということで、こういうことができていると思っています。
○西島委員 
 関連したことですが、研究員が非常に少ないけれども研究が非常にアクティブにされているということで、その中で流動研究員とか特別研究員が常勤の方たちに肩を並べるほどたくさんおられます。伺いたいことは、この流動研究員とか特別研究員はどのように採用されるのかということ。この方たちの費用の面について情報をいただければと思います。
○加藤所長(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) 
 流動研究員は、毎年、公募で集めております。最近ですと、マキシマムでも10名ぐらいしか採れません。それでも30名ぐらいの応募があります。分野もある特定の分野でなくて、実はすべての研究部、工学、医学、社会科学、全部あるわけですが、その人たち全員を同じ土俵で面接あるいは試験をいたしまして、それで2つの基準で選んでおります。1つはもちろん能力です。と同時に我々のミッションに合っていることをやりたいかどうか、その2つの基準で選んでいます。あと、資金面ですが、これはその枠がうちの庁費の中で取られているということです。
 ただ、ここで申し上げておきたいのは、非常にこの額が低い。しかも日当制で、これでは採用したくても優秀な方に声も掛けられないというのが実情ですので、ここで待遇改善を是非訴えたいと思います。
○西島委員 
 特別研究員で学振などが3にありますが、これはまた学振のほうで別途採るという。
○加藤所長(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) 
 ええ、これは学振のほうです。うちで面倒を見ているということです。だから、流動研究員の収入は特別研究員と比べても非常に低いということで、これは何とかしていただかないといけないと思っております。
○西島委員 
 ありがとうございました。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
○塩見委員 
 素晴らしい成果であるというのはわかるのですが、これは、アウトプットはどのようになるのですか。例えば論文とかの形になりますか。
○加藤所長(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) 
 これも分野によって違うのですが、福祉機器というようなものに関しては、できるだけ企業と組んで、実際に市販しているものもあります。社会科学系ですと論文が多いと思います。また医学系でしたら、そのまま診断に使えると。我々のところは、あくまでもすぐ使えるということを大前提に優先させて研究をやっているということです。
○永井部会長 ありがとうございます。
 それではよろしいでしょうか。もしご意見がございませんでしたら、加藤先生、どうもありがとうございました。
○加藤所長(国立障害者リハビリテーションセンター研究所) 
 どうもありがとうございました。
○永井部会長 
 では議事の5にまいります。「遺伝子臨床研究に関する実施施設からの報告について」です。三重大学及び岡山大学病院について、事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料7をご覧いただきたいと思います。三重大学のほうは少し誤植がありまして、「変更報告届」となっていますが「変更報告書」です。2つの大学からの変更報告書についてご報告いたします。
 三重大学につきましては1頁を見ていただきたいと思います。ここに書いてある課題名の研究についての変更届です。変更の内容につきましては4頁を見ていただきたいと思います。実施計画書における変更事項としまして、研究協力者の所属・職名等の変更。臨床研究を円滑に行うための実施計画の一部変更。その他、記載整備というところです。具体的なところは6頁から7頁にかけて「新旧対照表」ということで書いております。2番目の臨床研究を円滑に行うための実施計画の一部の変更は6頁のいちばん下から7頁にかけてというところで、外来での投与を可能にするとか、そういったことについての記載というところです。本変更届につきましては、関係の我々の作業委員会の先生などに見ていただきまして、特に問題はないだろうということで報告させていただいているところです。
 続きまして、岡山大学の変更報告書についてご報告いたします。13頁をご覧いただきたいと思います。遺伝子治療臨床研究の課題名はそこにある課題名です。
 変更内容ですが、18頁を見ていただきたいと思います。変更内容につきましては、本臨床研究に用いられるプロトコールの一部変更を行うということです。新しくベクターのドーズレベル4を設定し、患者に投与を行う、安全性・有効性の評価を行うということです。変更理由については19頁です。ここでいうB群のプロトコールの最大投与量の1×10の12乗のvpの投与でも、現時点では6症例全てgrade2以上の有害事象を認めなかったということです。本研究につきましては、安全性の確認というか、最大投与MTDを設定すべきということですので、更なる高用量ベクターの投与ドーズレベルを投与するという変更を申請したということです。
 もう一度念のために言いますと、本研究につきましては、10の10乗の粒子数のところで3名、10の11乗で3名、10の12乗で6名というところで、用量を10倍ずつ増加していくというところです。B群のプロトコールにおいては、最大用量のところであまり重篤なことは起こらなかったということなので、今回はドーズレベルの4として、いわゆる、いままでの10の12乗の3倍用量の3×10の12乗レベルを6名で行うというところです。
 なお、これまでの研究結果及び研究結果の公表については19頁のいちばん最後の欄に記載しているところです。これについて岡山大学の臨床研究の審査委員会が研究計画の変更を適当と認める理由が20頁に書いてあります。これにつきましても、作業委員会の関係の委員の意見も求めましたが、特に問題はないだろうということになりましたので、ここに報告するものです。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それではご質問、ご意見をお願いいたします。よろしいでしょうか。もしございませんでしたら、ただいまのご報告をお受けしたということにします。それでは議事の5「獨協医科大学研究者の不正行為に係る対応検討委員会報告書について」です。これは事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料8をご覧ください。獨協医科大学研究者の不正行為に係る対応について検討委員会を設けましてご検討いただきました結果の報告書です。
 まず、「(1)経緯」をご覧ください。平成23年1月末に獨協医科大学に対して、同大学の研究者が研究活動の不正行為、即ち、論文に真正でないデータ、画像を用いていると学外の者から告発がありました。獨協医科大学では、この告発を受けまして調査委員会を設けまして調査をしました。その調査報告書は、平成24年1月28日に厚生労働省に提出されました。これを受けまして、本件について厚生科学審議会に諮問を行い、3月に開催されました当部会において検討委員会の設置について了承をいただいたところです。検討委員会の委員につきましては、永井部会長により、委員長に福井先生、委員に相澤先生、永井先生、宮田先生、宮村先生の5名が選出されたものです。
 続きまして、「(2)獨協医科大学から提出された報告書について」をご覧ください。獨協医科大学副学長からの聴取等により、検討委員会でご検討をいただきました。その結果、報告書の記述について、具体的には、資料8の1頁の下の◆をご覧いただきますと、中ほどですが、「調査の結果、これらの改ざんにより論文の結論に本質的な影響はない。また、医学及び当該学術誌への信頼を損なう行為ではあるが、論文の結論を左右するものではないことから、学術の進展に大きな影響を与えているものでもない」という記載が1つあります。また、次の頁に2つ目の◆がありますが、「委員会としては、論文の結論に影響を与えるような操作を行っているものではなく、むしろ真正の結果に類似する、より鮮明なデータを代用したものであり、オリジナル画像を発見できなかったものについても不適切な使用が行われたということは確認されなかったことから、研究活動自体は適切に行っていたものと判断した」と。これは調査報告書からの抜粋ですが、これらの記載について、もう一度資料8の1頁の(2)に戻っていただいて、検討委員会としては「科学に対する基本的な姿勢を遺憾とするものであり」との記載がされているものです。獨協医科大学の報告書の記述について問題があるという意味です。これにより不正行為に対応する検討につきましては、調査報告書におけるこの部分の記述については参酌しないと特記されているものです。
 続きまして、裏の頁に行っていただきまして、「(3)獨協医科大学研究者に対する対応」をご覧いただきたいと思います。(2)を踏まえた上で、獨協医科大学内科学の元教授が行った不正行為への対応を検討いただきました。この不正行為への対応につきましては、研究活動の不正行為への対応に関する指針と厚生労働科学研究費補助金取扱規程に基づき検討していただきました。その結果が(3)の1から4に記載され結論となっているものです。
 1をご覧ください。指針の趣旨を考えますと、今回のケースは5年間の研究費の申請制限に値する事案です。厚生労働省では、本件が研究活動の不正行為として初めてのケースですが、日本学術振興会では科学研究費補助金について何件か前例があり、この前例を検討委員会において勘案して、本件は5年の申請制限が妥当であるとの結論に達したというものです。2をご覧いただきますとわかりますが、実際に申請制限を課すことが規定されている、いわゆる根拠規定は厚生労働科学研究費補助金取扱規程ですが、この規定は、平成19年4月に項目としては追加されたもので、それ以前に交付された補助金には適用がありません。したがって、本件の研究者から研究費の交付申請があった場合には、採否の検討を慎重に行うこと、即ち、ほかの申請より当然厳しく見ていくという対応をとるべきであるとのご報告となっているものです。
 4につきましては、検討委員会の結果を処分対象者に通知するよう、念のため厚生労働省に指示したということです。以上が報告書の概略になります。
○永井部会長 
 ありがとうございます。ただいまの説明に、ご質問、ご意見をお願いいたします。よろしいでしょうか。もしご意見がございませんでしたら、この報告書についてもお受けしたということにしたいと思います。以上ですべての議事が終了です。事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料9をご覧いただきたいと思います。最後に、「戦略研究新規課題に係る研究実施計画書作成の公募結果について」、ご報告いたします。これを見ていただきますと、前回の会議において、戦略研究について公募をしていました、その公募で来たものは4件だったという報告をさせていただいたと思いますが、戦略研究企画・調査専門検討会と戦略研究の今回のフィージビリティの調査研究を行うための研究費事業であります厚生科学特別研究事前評価委員会による評価を行った結果、基本的には以下の1件が採択されたのでご報告いたします。四角に囲まれている課題について採択されたということです。上記研究班につきましては、今後、戦略研究企画・調査専門委員会からの助言、提言等を踏まえ、戦略研究のフル・プロトコール及び研究実施に必要な諸書類を作成するというような調査研究を進めていくこととしておりますので、よろしくお願いいたします。
 次回の日程につきましては、委員の皆様には改めてご連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございました。以上で本日の議事は終了です。長時間にわたりありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

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