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2012年7月31日 第49回労災保険部会議事録
労働基準局労災補償部労災管理課
○日時
平成24年7月31日(火)13時00分~
○場所
厚生労働省共用第8会議室
○出席者
委員<公労使別五十音順>
岩村 正彦 (東京大学大学院法学政治学研究科 教授) |
荒木 尚志 (東京大学大学院法学政治学研究科 教授) |
大前 和幸 (慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 教授) |
小畑 史子 (京都大学大学院地球環境学堂 准教授) |
中窪 裕也 (一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授) |
林 真奈美 (読売新聞東京本社社会保障部 記者) |
大江 拓実 (全国建設労働組合総連合 書記次長) |
黒田 正和 (日本化学エネルギー産業労働組合連合会 事務局長) |
齊藤 惠子 (UIゼンセン同盟政策局 部長) |
新谷 信幸 (日本労働組合総連合会 総合労働局長) |
立川 博行 (全日本海員組合 中央執行委員 国際・国内政策局長) |
森下 光一 (日本基幹産業労働組合連合会 中央執行委員) |
明石 祐二 (社団法人日本経済団体連合会労働法制本部 主幹) |
山中 一馬 (新日本製鐵株式会社人事・労政部 部長) |
小島 政章 (株式会社竹中工務店 安全環境本部長) |
田中 恭代 (株式会社旭化成アビリティ 代表取締役社長) |
長岡 英典 (社団法人大日本水産会 漁政部長) |
事務局<順不同>
鈴木 幸雄 (労災補償部長) |
木暮 康二 (労災管理課長) |
高渕 憲一 (労災補償訟務分析官) |
中原 慎一 (労災保険財政数理室長) |
須永 敏良 (主任中央労災補償監察官) |
若生 正之 (補償課長) |
天野 敬 (職業病認定対策室長) |
引地 睦夫 (労災保険審理室長) |
植松 弘 (労災保険業務課長) |
江原 由明 (労働保険徴収課長) |
○議題
(1)社会復帰促進等事業に係る平成23年度成果目標の実績評価及び平成24年度成果目標について(報告)
(2)治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書について(報告)
(3)行政監視に基づく事業の見直しに関する決議(労災診療費のレセプト審査事務)への対応について(報告)
(4)義肢等補装具専門家会議報告書について(報告)
(5)国立病院及び労災病院の新しい法人制度に関する検討会について(報告)
(6)その他
○議事
○岩村部会長 ただいまから第49回労災保険部会を開催いたします。はじめに前回の部会以降、委員の交替がございました。ご紹介します。使用者側委員として、伊丹一成委員に代わり、新日本製鐵株式会社人事労政部長山中一馬委員が就任されています。
○山中委員 山中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○岩村部会長 次に同じく使用者側委員として宮近清文委員に代わりまして、日本通運株式会社取締役常務執行役員の齋藤充委員が就任されています。本日は齋藤委員はご欠席です。また、議事に入る前に、事務局で人事異動があったとのことですので、自己紹介をお願いします。
○労働保険徴収課長 4月に徴収課長を拝命した江原でございます。よろしくお願いいたします。
○補償課長 4月1日付で補償課長を拝命しました若生でございます。よろしくお願いいたします。
○労災保険財政数理室長 4月1日付で労災保険財政数理室長を拝命した中原でございます。よろしくお願いいたします。
○職業病認定対策室長 同じく4月1日付で職業病認定対策室長を拝命した天野でございます。よろしくお願いいたします。
○労災保険審理室長 同じく4月1日付で労災保険審理室長を拝命いたしました引地と申します。よろしくお願いいたします。
○労災補償訟務分析官 同じく4月1日付で拝命しました労災補償訟務分析官の高渕でございます。よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 それでは早速、本日の議事に入ります。議事次第に沿って進めます。まず第1の議題、「社会復帰促進等事業に係る平成23年度成果目標の実績評価及び平成24年度成果目標について」の報告です。事務局で資料を用意しておりますので、それに沿って説明をしていただきます。
○労災管理課長 資料は非常に大部になりますが、資料1-1、資料1-2が今回の成果目標の実績評価と平成24年度の成果目標に関して後ほど説明する資料です。先に参考1-1からご覧ください。
参考1-1、「社会復帰促進等事業費の推移について」です。平成17年度から24年度までの推移が書いてあります。これはもともと平成17年度予算で1,222億円でした社会復帰促進等事業、旧労働福祉事業ですが、これをさまざまな見直しの中で削減していき、平成24年度予算では738億円となっております。しかし途中段階でさまざまな雇用情勢に対応した補正予算や東日本大震災に対応した補正予算で、主として未払賃金立替払などの経費が増加した場合については、削減目標とは別にきちんと手当すべきところは手当してきた経緯はありますが、間接経費を中心として特に最近は削減をしてきています。
参考1-2は本事業のPDCAサイクルの基本方針ですが、説明は省略して、参考1-3で評価の考え方を説明します。社会復帰促進等事業については、事業の執行率と政策効果、目標で評価をしております。事業の執行率と政策効果の両方ともが高ければA評価です。次に目標は達成しているが、執行率が低い場合はB評価。執行率如何にかかわらず目標を達成していない場合にはC評価にしております。事業執行率の基準は80%ですので、A評価の中でも予算を100%使い切っている事業ばかりではありません。特に最近はさまざまな委託事業については、なるべく競争性を高めるような形での委託をしており、入札金額が低くなることにより予算の執行が節約されます。したがって、それらを翌年度予算に反映させることはPDCAサイクルとは別にやっておりますので、全体の社会復帰促進等事業の予算が最近減少しているのは、そういう理由も大きいということです。
参考1-4は予算額の推移を事業別に書いたものです。ご覧のように、かつてあった労働条件確保事業は廃止しましたが、社会復帰促進事業、被災労働者等援護事業、安全衛生確保事業という内訳の中でご覧いただくと、社会復帰促進事業についてはなだらかな減少ということです。被災労働者等援護事業についてはかなり大幅な減少で、安全衛生確保事業についてはむしろ伸びてきた中で、最近は横這いになっております。参考1-5は「社会復帰促進等事業一覧」です。参考1-6は、これを独立行政法人などそれぞれの実施主体別に情報公開の観点も含めて整理したものです。参考1-7は説明を省略いたします。
参考1-8は、今回、評価いただく全体の個票です。1頁の総括表、平成23年度の評価対象事業は90事業あります。それを概括した状況が書いてあります。A評価を得たものが53事業、約6割です。B評価が11事業、C評価が9事業で、その他独法関係の事業など秋に評価いただく事業もあります。こういうことで、特にB評価、C評価を中心にご議論いただきたいということで、この11事業と9事業を足した20事業を抜き出したものがいちばん最初の資料1-1です。昨年度は資料1-1にあたるものでご説明しましたが、実はこの資料1-1にあたるものの中でも、既に平成23年度限りで廃止された事業なども含まれておりますので、この中からさらに抜き出したものを資料1-2という形で付けております。本日は資料1-2をご説明いたします。
最初の事業番号28-3、「安全から元気を起こす戦略の推進経費」、災害事例の労働災害防止活動への活用促進事業です。これは右側にあるように、平成21年度からずっとC評価を受けております。これは、かつては中央労働災害防止協会に委託されておりましたが、間接経費その他さまざまな問題が指摘され、平成23年度からは委託先を変えて実施しております。平成23年度はそういう委託先の変更もあり、ホームページのアクセス件数2,000万件以上の目標に対して実績が約900万件で大幅に下がりました。これについては、やはり反省すべき点がありましたが、来年度はきちんと情報が国民に伝わるような改善を図っていきたいということで、目標も、その観点から今年度の実績をもとにさらに伸ばすべく設定をしております。
次の頁は、化学物質の危険有害性情報の伝達の促進です。これも、委託先は中央労働災害防止協会でやっておりましたが、厚生労働省のホームページに移したことで、アウトカム指標を達成しなかったものです。これについても同様の改善を図りたいと考えております。
次に3つ目、33の「じん肺等対策事業」です。これは過去の評価B、C、Bということできており、今年度はB評価ですが、アウトプット指標において、石綿の健康管理手帳の新規交付件数3,177件以上とするという目標を達成しなかったということです。ここ数年、このアウトプット指標を満たしていないのですが、私どもで検討した結果、やはり相手があるものをかちっとした数字で目標にするのは、もともと対象がいるかどうかわからないということからすると、必ずしも適切とは言えないのではないかということで、平成24年度のアウトプット指標の目標については、健康管理手帳所持者の健康診断受診率を目標にしたいということで、平成23年度の実施率(54.8%)以上とするという目標に変えてはいかがということで提案しております。
次が「地域産業保健事業」です。地域産業保健事業についても、平成21年度から3年連続C評価ですが、未達成原因の分析にあるように、この事業は、従来監督署単位だった契約単位を都道府県労働局単位に変更したということその他があり、受託先の都道府県の医師会などとの間のさまざまな契約上、あるいは事業実施上の混乱があったということです。これについては昨年度の後半に医師会の方に入っていただいた検討会を開催して、都道府県レベルで協議会を作って円滑に事業を運営していくということで合意形成を図りましたので、今年度以降については、適切な運営が図られるものということで努力しております。
続いて36、「職場における受動喫煙対策事業」です。この受動喫煙防止の1つのやり方として、職場における分煙の取組、そのための設備の設置があります。特にいまは飲食店、宿泊業の事業者については、なかなか全面禁煙は難しいということで、喫煙室の設置等が必要となりますが、これは労働安全衛生法改正の法案がなかなか国会を通らない中で、切実性が足りなかったこともありますが、一方で、いちばん下にあるように、助成率が4分の1と低いことが挙げられており、助成率を上げるというご指摘もいただいております。今後予算をどうしていくかについては検討中ですが、いずれにしても現在の助成金の利用率は4.3%と大変低くなっておりますので、抜本的な改善を図りたいということで検討しております。
次は38、化学物質の危険有害性情報の伝達です。これについても「モデルMSDS」のホームページアクセス件数が達しなかったということで、改善については先ほどご説明したとおりです。
次は40、「石綿障害防止総合相談員等設置経費」です。これも健康管理手帳の交付総数を目標としていたものが達成しなかったのですが、これについては新たなアウトカム指標として、平成24年度目標については、指導員が適切に届出審査、書面指導を行い、署の職員による実地調査等を届出件数の20%以上行うという形で、この届出を使った指導を確実にアスベストの健康被害防止対策に役立てる形の目標にしております。
47、「建設業等における労働災害防止対策費」、特に墜落・転落災害の防止です。これについても平成21年度、22年度はC評価、平成23年度はB評価ということです。これについては目標としていた指導・支援が件数に達しなかったということですが、その実績を踏まえ、目標を若干下げたいという案をいま持っているわけですが、これについては、いちばん下にあるように、安易に目標を下げるのはいかがかというご意見もいただいております。
次は事業番号56、「自動車運転者の労働時間等の改善のための環境整備等」です。平成21年度C評価、平成22年度、23年度はB評価で、これも、ここのところ評価を取れていない事業です。2,000事業場を回ることが1,616事業場の訪問に留まったのは、特にこの分野の重要性に鑑みて深く掘り下げた改善を考えたいと思っていますが、平成24年度は既に予算が決まっておりますので、目標については予算額に合わせた目標にしたいということで、平成25年度に向けた予算上の改善について、いま検討しております。
62番、「労働災害防止対策費補助金経費」です。災害防止団体に対する補助金で、平成21、22、23年度C評価になっております。死亡者数などの目標も一部の産業で満たしておりませんし、教育・研修等の参加者数の目標も達成していないということです。未達成原因の分析では、労働災害防止団体の人員不足とか指導を要請する事業場が減少したと。これは昨年度についても同様の未達成原因の分析がなされていましたが、いちばん下にあるように、もし本当に労働災害防止団体の人員不足であれば、このまま自然体でやっていてもなかなか改善されないのではないか、もっと抜本的、制度的、予算的なことを考えたらどうかというご指摘もいただいております。
次に63、「産業医学振興経費」。産業医科大学に対する助成です。これについては例年A評価できましたが、平成23年度については医師国家試験の合格率が低下したということで、全国の医学部、医科大学80校中、上位20位以内の目標を立てていましたが23位でした。未達成原因の分析にあるように、いろいろ取り組んできましたが、特に成績下位の学生がいたということで認識はしており、夏、秋に特別学習を実施しましたが、結果として不合格になりました。医師になるのはそもそも産業医になる以前の問題ですので、やはりきちんと医師国家試験に合格していただくことが重要です。アウトプット指標の所をご覧ください。医師国家試験の合格率95%以上とするという絶対数値の目標を立てました。
次は「女性就業支援全国展開事業」です。これは事業仕分けで廃止された箱物の後継事業です。事業の切替えにより、年度当初に件数が少なかったと。年度後半の実績だけを見れば、もしそれを単純に1年間に延長すれば目標を達成できたということです。いずれにしても適切な事業実施に努力していくということです。
次に、テレワークです。テレワークについては、東日本大震災の後、事業主の方を中心に関心が高まり、セミナー等についても、大変多くの方にご利用いただくようになりました。一方で、いままでテレワークに関心のなかった方がセミナーに来られたということで、やはりセミナーの内容がよくわからなかったというか、内容について若干ご不満な点があったということで、これは内容の改善をきちんと図っていく必要があると考えています。
以上、非常に大部な資料を駆け足でご説明しました。本来であれば参考1-8の個票を全部ご説明できればよかったのですが、いずれにしても、この機会に皆さま方のご意見をいただいて、今後に反映させていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 ただいま事務局からご説明いただきましたが、それについてご意見、あるいはご質問がありましたらお願いをしたいと思います。
○新谷委員 各論に入る前に、今日の議題の立て方について教えてほしいと思います。今日は議題が4件挙げられていまして、いずれも報告事項という扱いになっております。ただいまご説明いただいた「社会復帰促進等事業に係る平成23年度成果目標の実績評価及び平成24年度成果目標について」は報告事項となっていますが、労災保険部会における報告案件の取扱いについて、まず確認をさせていただきたいと思います。
○労災管理課長 審議会そのものについては法令で定められておりますが、すべては厚生労働大臣が諮問するとか、厚生労働大臣に対して建議するところを中心に法律は立てられています。したがって、実は諮問案件と建議いただくもの以外は、すべて形式上、報告となっているという事情があります。諮問するにいたしましても、大臣に権限が及ぶもの、政省令とか、あるいは計画ものでも閣議決定や大臣が定めるものについては諮問いたしますが、局長以下に権限が落ちているものについては形上は報告とするというようなことで運営しておりますが、これは法令上の整理が、審議会というものが大臣の権限についてということで書かれていることによるもので、報告となっているからといって、それが何か正式なものではないとか、そういうようなことではないということです。これは社会復帰促進等事業については、すべて労働基準局長以下で契約の締結や委託の事務手続が行われていることとの関係上、報告という整理をさせていただいているもので、中身については当然審議会の中できちんと調査審議いただく。労災のこの特別会計についての重要事項という形での調査審議をお願いするというものです。
○新谷委員 わかりました。今日いただいている議題4つのうち、2、3、4と1の扱いは当然違うという認識をしていて、この労災保険部会の中で、社会復帰促進等事業について、特に24年度目標について私どもとしての懸念もいくつかありますので、この目標設定に関する懸念点について是非検討いただきたいということを、まず前置きをしておきたいと思っています。
その上で、いま資料1-2を中心にご説明いただきましたが、資料1-2については見出しが「平成24年度第1回社会復帰促進等事業検討会 主な指摘事業について」ということになっているわけです。これは前々から申し上げておりますように、この検討会は厚生労働省の公式な会議で、ホームページにも出ていますし、委員の名前も出ているわけですが、政府と使用者団体との二者による検討会であるということです。その理由をお聞きしますと、労災保険の保険料の財政負担が使用者であるからということです。しかし、労災保険の保険料を使用者が負担するのは労災保険の仕組みからすると当然です。社会復帰促進等事業については、労災保険の保険料を負担する使用者団体と政府で検討会を実施し、労働側はこれには参画できないという枠組みで現在運用をされており、本日も資料1-2でご説明いただいたわけですが、このように使用者と政府だけの検討会で指摘されたものをこの部会のベースの資料とすることについて、非常に違和感を覚えます。なぜなら、1,000億円近いお金を投じて、労働者の安全衛生対策なり被災労働者の社会復帰等の事業を行うわけでありますし、そこにかかってくるのは不幸にして労働災害に遭った労働者ですので、こうした事業の在り方を検討するに当たっては、当然ですが、労働者の代表を検討会に加えるべきではないかということです。これはILOの三者構成主義からいっても必要なことだと考えておりますので、改めて申し上げておきたいというのが1点です。
もう1点は、これも各論に入る前の総論として申し上げたいのですが、先ほどのご説明いただいた資料1-4に、社会復帰促進等事業の予算額の推移がありました。これを拝見すると、平成17年度の1,200億円規模から、どんどん減ってきていて、1,000億円を切る、あるいは700億円台まで減ってきているわけです。しかし一方で、残念ながら労災による死傷者数は、33年ぶりに2年連続で増加するという非常事態にあります。そういった非常事態に鑑みますと、一層、労働安全衛生対策について、国としても資源を投入して対策を打たなければいけないと考えているわけです。この社会復帰促進等事業の中には安全衛生対策も当然入っておりますので、必要な事業についてはさらに強化をしていく、あるいは、新たな対策が必要な事業については新設をしていくといった、要するに財政的な裏づけを持った対策を打つべきだと考えておりますので、この点についても厚労省の見解をお伺いしたいと思います。以上です。
○岩村部会長 事務局お願いします。
○労災管理課長 この社会復帰促進等事業については、かねて労働福祉事業の段階では、全くPDCAサイクルの評価を行っていなかったという経緯があります。そういう中で、先行して実施しておりました雇用保険の二事業の懇談会というものを参考にして、PDCAサイクルを始めたという歴史的な経緯があるということです。その中で、特別会計仕分けなどを含めて本部会にもお諮りをして、きちんと法令上の位置づけのある審議会の目で調査審議していただくべきだということで、審議会における調査審議をこのPDCAサイクルの中に位置づけるということでの改善を図ってまいりました。いま新谷委員にご指摘いただいたことは、職業安定関係の分科会においてもご指摘をいただいて、職業安定局のほうでも引き取って検討していると聞いておりますので、その状況も見ながら、引き続き、どのような評価がいいのかについては、改善を考えていきたいと考えております。
安全衛生の関係の事業ですが、参考1-4をご覧いただくとおわかりになると思いますが、平成18年度予算までは安全衛生確保事業と労働条件確保事業に分かれていて、平成19年度は安全衛生確保事業になったということですが、この安全衛生と労働条件の平成18年度を足した額より微妙に低くなっているのが平成19年度。安全衛生確保事業が伸びているという形で、実質上労働条件確保事業を統合したような面もあるわけです。いままで労働時間対策としてやっていたものについても、労働時間についても過労死という健康と安全に関わるような面が多くあるだろうと。また、先ほどご説明したような自動車運転手の改善基準のように、まさに命に直接結び付くような事業も労働条件確保事業で実施してまいりましたが、それを安全衛生確保事業に整理して平成19年度予算からスタートしたという経緯があります。
しかしながら、正直申し上げて、やはり労働条件的なものの尻尾が残っていたのではないかということで、事業仕分けなども含めて、あまり適切な事業ではないといって削られたものがあることと、先ほど申し上げてきたように契約そのものに競争性がないというさまざまな指摘の中で、入札を行うことによって実績が下がってきて、それを予算額に反映してということがここのところ続いているということで、予算額が下がってきているという面はありますが、それを除けば、実質上の事業予算でここ2、3年について減少していることはあまりないと思っています。ただ、一部災防団体に対する補助金や産業医大に対する補助金というのは、もともとの額が大きいものですので、そういうものが下がったことが何か影響しないかということは点検する必要があると思いますが、個々の安全衛生の細かな事業については、ほとんど、むしろ事業費そのものは確保されていると思っています。ただ、いま非常に労働災害が、リーマンショックのあとに一時下がっていたものが増加に転じてきているという問題については認識しておりますので、限られた予算の中ではありますが、どのように力を入れるべきかについては建設的にご提言をいただきたいと思いますし、私どもも、それらについては予算編成上考えていきたいということです。
○新谷委員 第1点目の検討会の件については、前向きな検討を是非お願いしたいと思います。
予算の話ですが、来年度予算の概算要求の策定時期だと思いますが、いま申し上げたように労働災害が非常に増加しておりますので、財政的な裏づけがないと現場を含めて対策が打ちにくいと思います。財政的な裏付けをもった対策を講じることで労働災害が減少すれば、労災保険の保険料の収支の改善につながることから、是非前向きな財政支出をお願いしたいと思います。以上です。
○岩村部会長 ほかにいかがでしょうか。
○齊藤委員 資料1-2、事業番号34の地域産業保健事業及び、事業番号36の職場における受動喫煙対策事業について申し上げたいと思います。
まず34の地域産業保健事業ですが、日本の労働者の多くが従事している小規模事業場における労働者の健康管理については、大変重要な課題であると考えております。しかし、現状50人未満の小規模事業においては、産業医の選任義務がないということを踏まえると、地域産業保健事業で支援する地域産業保健推進センターの果たす役割は非常に大きいのではないでしょうか。しかしながら、先ほど説明もありましたように、平成22年度から委託事業の契約単位を都道府県労働局に変更したためCになったということですが、その前の平成21年度から継続的にC評価になっておりますので、このことについて、きちんと抜本的対策を早急に打つべきであり、適切な目標を設定の上、事業を確実に遂行し、効果を上げるように努めていただきたいと考えております。具体的にどのような活動を検討しているのかを確認したいので、教えていただければと思います。
もう1点の職場における受動喫煙対策事業についてですが、現在継続審議となっております労働安全衛生法改正法案の中の1つの柱でもあり、法案の早期成立に向けて尽力していただきたいと申し上げます。その上で、この事業については受動喫煙に対する取組を一層推進すべく、労働安全衛生法改正法案の成立に先行して予算を確保したにもかかわらず、助成金の利用が4.3%という低い結果に留まっているのはいかがなものかと考えております。例えば、ここにも書いてありますが、助成率の引き上げに加え、対象事業場の要件緩和なども検討し、より使いやすいものとする必要があるのではないかと考えておりますが、事務局としてどのように考えているかをお伺いしたいと思います。以上です。
○岩村部会長 2点についてのご質問だと思いますので、よろしくお願いいたします。
○事務局 労働衛生課でございます。地域産業保健推進センターの事業については、委員ご指摘のとおり小規模事業場の労働者に関する重要な施策と考えております。にもかかわらず、こうした目標を達成しないことについては、我々も深く反省すべきところは反省し対処すべきということで取り組んでおります。この理由にも書いておりますが、実際にはこの間にも刷新会議での仕分けの結果を受けて重複するものを重点化したりというようなことの結果、多少予算は減っているようなこともありまして、そうしたことが実施をする側から見れば、少しモチベーションが下がったというようなことがあるのも事実です。然は然りながら、現在において医師会の協力については、一つひとつきちんと説明をした上で説得をさせていただき協力が得られるようになってきているということですが、昨年度の実績について言うと、一部の県が足を引っ張っている状況ですが、改善はしてきているということです。今後についてスタートが遅れて実績が上がらないことがないように、今年は特段注力して指導させていただいているということですので、これについてはきちんと成果が上がるように今後も指導していきたいということです。
受動喫煙についてですが、確かに法規制を視野に入れた改正も検討しながら、同時に支援策を用意させていただいて、できる限り我々としてはPRをしたということですが、残念ながら、法律が審議されないまま昨年度が過ぎてしまったということがあり、現在も審議待ちという状況です。この支援策については、おっしゃるとおり、対象事業場や助成率をもう少し見直すことによって、使いやすいもの、それによってこの受動喫煙の防止対策が進むということが何よりですので、そういうことをきちんと見直しをした上で、今年度の予算要求にはその検討した結果を反映していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 齊藤委員、よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
○大江委員 主な指摘事項の33と40に関連して、質問と意見を申し上げたいと思います。
じん肺等対策事業の33ですが、ここに未達成原因の分析というのが載っています。管理手帳の新規交付件数が目標を下回ったと。これは制度の周知徹底がされていたと書いてありますが、私たちはそうではないと思っています。というのは、うちの組合でも健康診断等をやっていますが、いまアスベストの肥厚斑、胸膜プラークが、うちの組合員の13%にあります。60歳以上の方は20数パーセントということで、これが本当に単純にそういうことが周知徹底されたことによるのかどうか。40の石綿障害防止総合相談員の設置のところにも、昨年度との関係もありますが、47局で数も相当減っているというのが載っています。そのことに関連しても、それと併せて改善事項のところに、今後手帳の所持者は増加を続けることは見込まれるけれども、新規交付自体は減少するのだと。わからないのですが、そう書かれていて、そうしたことが実態と合わないのではないかと思っています。現場では局によって対応が違うという指摘もありますから、47局のすべてのところの交付実績を是非公開していただきたい。地域によって相当差があるのではないかと思っておりますので、是非お願いをしたいということです。同時に、病院等が選べないとか、そういうことが現場では言われていまして、行きたくても行けないということなども言われていますから、そういうことの改善等も是非行っていただきたいということも含めてお願いしたいと思います。
○岩村部会長 ご質問とご要望だと思いますが、事務局お願いします。
○事務局 労働衛生課です。まず健康管理手帳の交付の件について、我々としては各労働局の取扱いに違いがないようにということで、しっかり指導をしていきたいと考えております。確かに委員ご指摘のような事案が個々に発生しているということもありますが、それについてはきちんと現場のほうで運用されるように指導していきたいということです。
健康管理手帳所持者に対して、受診できる医療機関についてですが、現状で、石綿であればそれをきちんと診られる資格のある医師のいる病院、あるいは機材のある病院ということで、数もさることながら質のほうもしっかり確保する必要があるということです。ただ、もちろん言われますとおり、受診される方が不便なく受診できるようにということが非常に重要ですので、今後も公報、あるいは医療機関の増加を働きかけるということで、この目標にある受診率の向上につなげていきたいと考えています。
○大江委員 47の局の実績は発表していただけますか。教えていただきたいと思います。
○事務局 それは交付ですか。
○大江委員 いままでの交付実績です。
○事務局 現在、手元にありません。
○大江委員 あとからで結構ですので、よろしくお願いします。
○岩村部会長 ほかにいかがでしょうか。
○黒田委員 事業番号63の産業医学振興経費についてです。いま、産業医に対するニーズは、労働者の健康管理や過重労働や長時間労働対策をはじめ、すべての職場において喫緊の課題となっているメンタルヘルス対策等の取組の推進が求められていることから、ますます高まっています。産業医が職場において果たすべき役割は大きくなっているとも言えると思います。資料1-8ではこの事業の目的が記載されておりまして、産業医学の振興及び職場における労働者の健康確保の充実に資するためとされています。こうした目的を達成するためにも、産業医のニーズが高まっていることに鑑みれば、産業医数を毎年20名以上純増させるという目標値ですが、より高い目標を設定する必要があるのではないかと考えております。以上です。
○岩村部会長 いまの点、事務局のほうはいかがでしょうか。
○事務局 安全衛生部計画課です。委員のご指摘のとおり、産業医の役割が重要な位置づけになっていることは、我々としても認識しています。産医大の卒業生だけで全事業場の産業医をカバーできるかというと、なかなかそうはいきません。産業医になるためには日本医師会でも認定産業医の研修をしていますが、それらの認定産業医、それから産医大卒業の産業医といった2つの面から供給できればと思っています。
純増20名が目標として低いのではないかという委員のご指摘ですが、産医大を卒業後、当然医師国家試験に合格しなければいけないわけですが、それから一般のドクターと同じで臨床研修に入ります。それが2年間ほどありまして、それからまた大学院に進んだり、よりスキルアップを図るために産医大に残って、産業医の研修等々を行うということで、必ずしも卒業生全員がすぐに産業医になり、活動をするわけではないのですが、いずれにしましても、いま委員からご指摘があった純増20名という数字が、果たして妥当なのかどうかというのは、引き続き検討させていただきたいと思っております。以上です。○新谷委員 いまのところは大事なところだと思います。産業医にはこれからますます重要な役割を果たしていただくと思いますが、ここに書いてある20というのは産業医大の卒業生の中で20名増やすということですか。
○事務局 オールジャパン(認定産業医を含めて)というよりは産医大の卒業生が対象で、先ほど言ったプロセスは含みますが、純増として20名という目標ということです。つまり、産業医をしていて、それから一般のドクターに移るという方も中にはいますから、そういった現状を含め純増という意味です。
○新谷委員 産業医になるために受講すべき講座というのがあるように聞いていますが、それを受講した人の数ではなくて、最終的に産業医になった人の数ということですか。
○事務局 そうです。純増ということです。産医大を卒業して8割ぐらいの卒業生は産業医関連の業務に就くような形になりますが、この目標というのは産業医でなくなった者も含め年度で純増の20名というのが目標です。
○新谷委員 その産業医大の卒業生の中から20名を純増させるという意味であれば、このアウトカム指標の?は産業医大だけではなくて医師会の認定基礎研修の話が混在していてよくわからないと思います。もう少し明確に書き分けてもらわないと、検証のしようもないのではないかと思いますので、よろしくお願いします。
○岩村部会長 事務局のほうは、そこはまたご検討いただくということでよろしいですか。
○事務局 はい。標記の仕方について検討したいと思います。
○岩村部会長 ほかにいかがでしょうか。
○立川委員 社会復帰促進事業に関わる目標設定や成果目標の実績評価については、PDCAサイクルに従って実証されていると思っていますが、そのような中で、社会復帰促進事業に関する検討会における主な指摘事業や事項には含まれておりませんが、目標設定や結果や評価の方法について申し上げたいことがありますので、お願いしたいと思います。
まず目標設定の関係ですが、厳格な目標管理の下に事業を遂行されていくということですが、例えば、事業番号23の石綿関連疾病診断技術研修事業の平成23年度アウトカム指標で、研修人員が予定人員500名というところを倍近い948名が受講したということで、大きく目標を超えて達成しているわけですが、平成24年度目標は平成23年度と同じく500名で変更なしということになっています。このようなことに関して理由をお伺いしたいということが第1点目です。
次に結果の関係ですが、事業番号14の労災保険相談員設置費についてです。これについては平成23年度アウトプット指標の実績の中で、「相談例を記載したFAQを作成したが配布できなかった」と記載されています。9億円近い予算を使って配布できなかったというのは、本来言っているところの厳格な目標管理の下での事業遂行という面から考えると、非常に杜撰な管理と言えるのではないかと思うところです。事業を実施していく上では、このような初歩的な問題はあってはならないと考えるところですので、この辺をいかがお考えになっているのかをお伺いしたいと思います。
最後に評価の方法についてですが、先ほどから申し上げておりますように、事業の遂行に当たっては、厳格な目標管理の下に事業を行うということで、設定された目標に到達しなかったので、目標不達成ということで厳しい評価をするのは当然だろうと思っております。しかし、例えば事業番号57の家内労働安全衛生管理費などで、平成23年度の指標として「家内労働安全衛生指導員による訪問指導を行う家内労働者及び委託者数」1,000人としておりましたが、それが多少足りなかったということでB評価、「予算又は手法等を見直し」というような評価が下されております。このように、目標を達成できなかったというだけで、労働の安全衛生や労働災害の防止といった必要な事業について低い評価がされておるのが実態です。未達成の原因についても調査・分析をされているわけですから、安易に事業廃止につながらないようなことを考えていただきたい。低い評価をされたからといって、事業の存廃の判断が怪しくなるというか、継続ができないようなことにならないような慎重な検討をしていただきたいと思っておりますが、事務局の考え方をお伺いしたいと思うところです。以上です。
○補償課長 最初に、石綿関連疾病診断技術研修事業の関係です。全国各地において計17回の研修を実施し、延べ500人が受講するというアウトプット指標を設定しているが、その実施状況が目標を相当程度上回っているのではないかというご指摘についてです。この目標設定の考え方として、研修内容は、肺がんや中皮腫などの石綿関連疾患に係るレントゲン写真等の読影が中心となっており、その写真そのものがおおよそ40?掛ける35?程度の大きさのものであるため、あまり大きな会場で行うと読影の技術が受講者から見にくい等のご意見がありまして、研修1回あたり30人くらいの規模の会場で月2回程度行い、計17回の研修の実施及び受講者数約500人を目標として、本事業を実施してまいりました。先ほどの委員ご指摘の点について、確かにこの事業の実績を見ると研修実施回数及び受講者数ともに相当数増えておりますので、それらについては今後検討していきたいと考えてております。
○事務局 労災保険相談員設置費の関係ですが、この経費のほとんどは都道府県の労働局あるいは監督署に配置している労災保険相談員という、外からの相談等に応じる方々の謝金でほとんどの経費が使用されておるわけですが、そういう設置費ですから、なかなかアウトプットの指標を出すのが難しかったのです。これはその経費とは別というか、その経費の中の一部で本省のほうで各監督署あるいは労働局で寄せられている相談事例を集積して、それに対する適切な回答事例を集めるということでアウトプット指標を設定しました。経費的にはほとんどかかっておりません。最初私どものほうは相談事例は100事例程度考えておりましたが、相談事例は非常に多岐にわたっておりましたので、なかなか集積するのに苦労しまして、大体200事例ほど年度末時点で集めました。その時点では既に3月末になっていたものですから配布することができなかったところです。いま私どものほうでは、さらにこの年度に入ってからも集め、大体いま220事例ほど集積してまとめましたので、今後これを配布させていただきたいと考えています。
○岩村部会長 あと、評価の方法のところでお願いします。
○労災管理課長 具体的には家内労働についてご指摘いただきましたが、ほかの点でも同様ですが、目標にわずか届かなかったものをどのように見るべきかというものについては、当然その原因なり周辺の環境なりというものもありますので、私どもはそれで一律に機械的に判断しているというわけではないということです。例えば、家内労働ですと最近は非常に対象者が少なくなっている。一方で、きちんとした対応は引き続き必要だというものですので、私どももそのような実質政策全体の中で、予算は判断しているということです。併せて、冒頭私からの説明で申し上げましたように、A評価であっても、入札等で特に間接経費を中心にして節約されるような部分がありますので、そういう部分はまた別途A評価であっても削っているというのもありますので、それは個々に見させていただいた上で予算上の対応をしている部分もあるということで、ご理解いただきたいと思います。
○岩村部会長 立川委員、よろしいでしょうか。時間の都合もありますので、もしよろしければこの議題はこの辺でと思いますが。
○黒田委員 労災発生件数の扱いについて、参考資料1-8の26、30-1、54に記載がありますが、先ほど新谷委員からもありましたように2年連続で増加していて、これは33年ぶりで、いわば非常事態なわけです。にもかかわらず、平成23年度実績のアウトカム指標では5年ごとの数値を一括して取り扱っていて、「労働発生状況の減少傾向を維持している」という記載は、認識としては不足しているのではないかと思います。加えて、26及び54等の平成24年度のアウトカム指標においても減少傾向としておるわけですが、こういった非常事態の下では、「増加傾向に歯止めをかける」というような記載にしていただけたらと思います。よろしくお願いします。
○岩村部会長 ではご要望ということだと思いますが、一応お願いいたします。
○事務局 安全衛生部計画課です。ご指摘のとおり、労働災害発生状況のアウトカム指標の設定の仕方については、単に減少傾向維持ではなく、いまの実情を踏まえたものに改善していきたいと思います。一方でご指摘のあった26は、言ってみれば事務経費のようなものですのでもう少し活動内容の実態を捉えたようなアウトカム指標ということで、少し記載内容の目標の設定を変えさせていただいております。
○岩村部会長 よろしいですか。ありがとうございます。
○齊藤委員 参考の1-8の事業番号30-1ですが、安全衛生啓発指導等経費について、平成24年度の概要や目標(アウトカム指標)に、「都道府県労働局安全衛生労使専門家会議」という記載があります。こちらについては、労働災害防止に資するものとなりますよう、この会議のより一層の活用が求められると考えております。その上で、平成24年度目標(アウトプット指標)においては、都道府県労働局安全衛生労使専門家会議を開催すると記載がありますが、昨年1年間の専門家会議の開催回数及びパトロール回数、さらに昨年度の予算実績を確認させていただきたいと思います。
○事務局 開催実績は全国で72回、局では福島局でできませんでしたので46局。パトロール実績は20回、局数でいくと16局です。実施額は、平成23年度は約700万円ぐらいということです。
○齊藤委員 パトロールが20回で16局ということは、半分以上が開催していない、パトロールを行っていない状況になっていると思います。労災による死傷者数が2年連続で増加しているという現状を踏まえれば、都道府県労働局安全衛生労使専門家会議に対して、現行の領域での労災防止対策の協議だけでなくて、労使の安全衛生専門委員による事業場視察や現場指導などを実施できる権限を付与するなどという、現場における労働安全衛生対策の強化という観点が重要ではないかと考えますが、事務局としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○事務局 権限の付与について、この場でいま申し上げるのは難しいと思いますが、こちらはご承知のとおり昨年度から設置して進めているものですので、そういった中でパトロールのほうも20回、組んでやってきている。この事業そのものは、現場でご活躍されている労使の方に入っていただいて、いろいろな意見を聞かせてもらって、施策にも反映する。そういった議論の中でパトロールしようということになればパトロールもしていただくという制度ですので、ますます各局において活用していただいて、労働災害防止に取り組んでいきたいと思っております。
○岩村部会長 よろしいでしょうか。それでは申し訳ありませんが、次の議題に移らせていただきたいと思います。議事次第の2番目で、「行政監視に基づく事業の見直しに関する決議(労災診療費のレセプト審査事務)への対応について」の報告です。まず事務局のほうから説明をしていただきたいと思います。
○補償課長 補償課でございます。ご説明申し上げます。行政監視に基づく事業の見直しに関する決議(労災レセプト審査事務)への対応について報告いたします。資料2-1、2-2で説明申し上げたいと思います。
まず労働者の方が仕事が原因で怪我をした場合、医療機関を受診して治療を受けることとなりますが、その診療費につきましては、医療機関から労災レセプトとして都道府県労働局に請求され、都道府県労働局においては一定の審査のうえ支払いを行っているところです。この労働局での労災レセプトの審査事務につきまして、昨年12月8日、衆議院決算行政監視委員会において、社会保険診療報酬支払金等への委託についても検討を進めるべきであるとの決議が行われ、その対応状況について、6カ月以内に当委員会に報告するよう求められたところです。これを受け厚生労働省として、今年3月から、学識経験者2名、医師2名、公認会計士1名、合計5名による「労災診療費のレセプト審査事務に関する検討会」を5回にわたって開催し、6月1日、検討会報告書を公表した次第です。
報告書の中身につきましては、労災レセプトの審査について大きく2つに分かれます。1つは労災保険の対象とならない、要するにいわゆる業務外である私傷病を除外するなどの労災固有の審査、診療報酬点数表等に基づいて行う審査の2つに区分できる。前者の私傷病を除外する労災固有の審査につきましては、監督署長が業務上と判断した範囲あるいは根拠に基づいて私傷病を判断することから、労災保険給付の支給・不支給の決定と密接不可分な関係にあるということで、これを支払基金等に委託することは困難であるという報告書でした。もう一方の診療報酬点数表等に基づく審査につきましては、支払基金等に委託するよりも、審査体制、審査期間、費用の面から、国が審査したほうが効率的・効果的であるとされております。
ここに言う審査体制、審査期間、費用の面というのはどういうことかと申しますと、資料2-2を見ていただければと思います。そこの中段に審査体制等が書いてありますので、ここで若干コメントさせていただきます。審査体制につきましては、国と支払基金では、審査担当職員1人当たりの審査件数に大きな相違が見られ、どの程度の審査・査定となるか不明である。具体的に申し上げますと、労働局の審査担当者は1人当たり1日当たりの審査件数は52件、一方、支払基金につきましては1人当たり1日当たり約1,500件ということで、相当審査の件数に大きな違いが見られるということで、そのような状況の下で委託した場合、どのような審査・査定になるか不明であるという趣旨です。
2つ目の審査期間です。審査期間は現在労働局が行っている審査期間より長くなり、結果として労災指定医療機関等に負担を生じる懸念があり、迅速に労災診療費を支給する観点から問題となるのではないかという内容です。これは支払基金に委託した場合、診療報酬点数表に係る審査をまず基金に委託する。それが終わった後に、国はその支払基金の審査結果について、他の保険者と同様に再度審査結果を確認する。併せて労災固有の審査もするということで、支払基金等の審査の後に国の審査がくるという意味で、期間的には長くなるのではないかというものです。
費用の点ですが、支払基金に委託した場合の費用に関する件を試算したところです。試算の観点は3点あります。1つは手数料です。支払基金に委託した場合、99円のレセプト1枚につきまして約100円、それで手数料がありますので、3億2,000万円ぐらいかかるだろうと。それから支払基金に委託したことによって、診療報酬点数表に基づく審査で国が審査担当者の人員を減らせるということで、ここは削減の効果が出るだろうということで、その削減の効果は、一定のいくつかの要件がありますが、3億前後ぐらいのものになっています。併せて基金の支払い結果を再度確認する、これは他の保険者も支払基金に年間600万件ほど再審査請求をしておりますので、国もその一定の数も踏まえると再度確認するということは必要になってくるだろうと。そのような意味で、それに伴う体制の整備が必要になってくる。そういう3点でプラスとマイナスを計算していくと6,000万円~1億7,000万円の増となって、結果として費用面でのメリットは実証できないのではないかという内容になっています。
資料2-1に再度戻らせていただきます。結論として支払基金等に労災レセプトの審査を委託するより、国が労災レセプトを直接一括して審査する現行の方式のほうが妥当であるという報告をいただいたところです。検討会の報告の概要につきましては、6月13日、厚生労働大臣から決算行政監視委員会に報告するとともに、労災診療費のレセプト審査事務については、国が直接一括して審査する現行方式の中で業務改善を行い、さらなる経費の縮減に努めていくという説明をしています。
以上経過ですが、今後レセプト審査につきましては、現行方式の中でさらなる経費の縮減と適正・迅速な審査を行っていきたいと考えております。以上でございます。
○岩村部会長 ありがとうございました。この件についてご質問、あるいはご意見がございますでしょうか。よろしいでしょうか。検討会の報告書自体は妥当なものであろうかと思いますので、事務局におかれましては関係各方面のご理解を得て、今後とも、一元的に国のほうで審査事務の効率化を進めつつやるということでご尽力をいただければと思います。
それでは次の議題です。議事次第の3番目です。「義肢等補装具専門家会議報告書について」の報告です。まず事務局のほうから説明をいただきます。よろしくお願いいたします。
○補償課長 引き続き補償課のほうから説明申し上げます。資料は3-1、3-2ですが、3-1を中心に説明したいと思います。労災保険制度では、業務上の事由による負傷、疾病が原因で、身体に一定の欠損、機能障害が残った方々に対しまして、社会復帰促進事業として義手、義足、車椅子等の補装具の購入や修理の費用を支給しているところです。義手につきましては平成19年までは3つの義手、装飾用、作業用、能動式という義手がありましたが、平成20年度から両上肢切断者に対して筋電電動義手、これは切断した上肢の断端部に電極を入れて、筋肉を動かしたときに発生する電気信号により手の部分が開閉するというものです。資料3-1の裏に、若干見にくいのですが、実物を調達できず申し訳ございませんでしたが、下の電動義手ということで電動ハンド部分、それから能動式の2つを書いております。平成20年度から両上肢切断の方を対象として支給しています。
義肢等補装具専門家会議を、今年1月から5月にわたって計6回開催して、片側上肢切断者に対しても筋電電動義手の支給が可能かどうかを中心に検討を行い、今年の6月29日に報告書を公表しています。概要につきましては大きく3点あります。片側上肢切断者に対する筋電電動義手につきましては、支給する要件として2つあります。1つは就労中又は求職中の方であって、筋電電動義手の装着により作業の質の向上や作業の種類の拡大が見込まれる方。それから、他方の上肢に一定以上の障害があって、筋電電動義手を装着しなければ社会生活ができないと認められる方について支給対象とする。併せて装着訓練を充実させるということで、現在8週間を上限としている訓練期間につき、前腕切断した方につきましては最大10週間、上腕切断した方につきましては最大12週間という形で、一定の訓練期間を延ばしてその充実を図るということです。装着訓練が終わった後も、装着訓練に引き続き社会生活や職場での筋電電動義手を実地に試用装着する期間を1カ月ないし6カ月程度設けるべきという報告になっています。
2つ目の大きな報告書の内容ですが、能動式義手装着訓練です。ハーネスを着けて、肩と肩甲骨を動かして着けている指の先の開閉を行うというものです。療養中はリハビリテーションで訓練が可能ですが、中央においては現在装着訓練の費用が設けられておりませんので、装着訓練の費用についても支給対象とすべきではないかと。その範囲につきましては先ほどの筋電電動義手と同じような内容というものです。
大きな3点目ですが、「車椅子」「電動車椅子」の支給要件の明確化(本省協議の廃止)ということです。現在「車椅子」は両下肢切断又は全廃を支給要件としており、これ以外に支給をする場合は本省の協議ということになっていますが、このような本省協議のケースについて、かなり類型化していますので、支給要件を明確化して本省協議を経ずに迅速的に支給対象とすべきではないかという報告になっています。「電動車椅子」につきましては、両下肢及び両上肢の著しい障害を支給要件としており、これ以外については本省協議ということですが、これも「車椅子」と同様に支給要件を明確化し、本省協議を経ずに支給対象とすべきではないかという報告になっています。厚労省としては、この報告書を受けて所要の予算措置を講じたうえで、来年3月までに具体的な支給基準を定めた要項の見直しを行って、労働災害に遭われた労働者の社会復帰の促進を図ってまいりたいと考えております。以上でございます。
○岩村部会長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして何かご意見、あるいはご質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは議題の4番目です。「国立病院及び労災病院の新しい法人制度に関する検討会」についての報告ということで、事務局から説明をお願いいたします。
○労災管理課長 資料4です。前回の審議会、本部会でもご説明申し上げたと思いますが、国立病院と労災病院につきましては一昨年ぐらいから在り方の見直しを検討し、行政刷新会議の議論を経て、平成26年度から独立行政法人とは別の新しい法人制度に移るとされているところです。本年3月30日から新しい法人制度の制度設計に関する検討会が開催されましたので、報告するということです。秋ぐらいまでに具体的な法律事項以外も含めて、ある程度の大まかな制度設計をして、また本部会に状況についてご報告申し上げるという段取りで考えております。以上です。
○岩村部会長 ありがとうございます。この点について何かご意見、あるいはご質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。こちらで用意しております議題は以上ですが、何かその他ということでご発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、以上をもちまして本日の部会は終了とさせていただきます。本日の議事録の署名委員は、労働者代表は齊藤惠子委員、使用者代表は明石委員にそれぞれお願いをしたいと思います。どうも皆さま、お暑い中、またお忙しい中、ありがとうございました。
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