ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第71回厚生科学審議会科学技術部会議事録




2012年5月16日 第71回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年5月16日(水)
15:30~17:30


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 今井委員 今村委員 金澤委員 桐野委員
野村委員 福井委員 町野委員 松田委員 宮田委員
宮村委員 望月委員 山田委員

○議題

1 遺伝子治療臨床研究について
2 ヒト幹細胞臨床研究について
3 その他

○配布資料

資料1-1遺伝子治療臨床研究実施計画等について
資料1-2遺伝子治療臨床研究実施計画変更報告について
資料1-3遺伝子治療臨床研究実施計画について
資料1-4遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程について
資料2ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料3国立感染症研究所の評価報告等について
資料4遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料5ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料

○議事

○尾崎研究企画官 
 定刻になりましたので、ただいまから第71回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催させていただきます。委員の皆様には、ご多忙の折お集まりいただき御礼申し上げます。本日は廣橋先生、岩谷先生、川越先生、佐藤先生、西島先生、橋本先生、南先生、井部先生の8名の委員からご欠席の連絡をいただいております。
 委員の交代についてご報告いたします。参考資料1-1をご覧ください。これまで委員をお願いしておりました高杉敬久委員が辞任され、新たに日本医師会常任理事の今村定臣委員にご就任いただきました。
○今村委員 
 日本医師会の今村です。今後よろしくお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 また、末松誠委員におかれましては辞任のご連絡がございました。これにより、現在の委員定数は22名となります。本日は少し遅れて来られる松田先生もいらっしゃいますが、委員22名のうち、現在の出席委員は半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことをご報告いたします。
 本日の会議資料の確認をさせていただきます。資料のいちばん上の「厚生科学審議会科学技術部会議事次第」に配付資料一覧が載っています。資料番号だけ申し上げますので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料1-4、資料2、資料3、資料4、資料5です。参考資料1、参考資料2、参考資料3です。資料の欠落がありましたらお申し出ください。
○永井部会長 
 議事に入ります。最初は、遺伝子治療臨床研究についてです。大阪大学医学部附属病院と北野病院からの遺伝子治療臨床研究実施計画申請等について、まず遺伝子治療臨床研究作業委員会の検討結果について事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 遺伝子治療臨床研究に関しては、関係の研究計画を検討する「遺伝子治療臨床研究作業委員会」と、「遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会」の2つの作業委員会で検討が行われるものです。
 昨年11月9日の科学技術部会での検討の経緯を含め、遺伝子治療臨床研究作業委員会の検討結果についてご説明いたします。資料1-1、資料1-2、資料1-3、参考資料2です。基本的な説明は資料1-1で行います。資料1-1の17頁は、昨年11月9日に遺伝子治療臨床研究作業委員会から科学技術部会に報告された意見書です。今回検討されている計画は、既に実施が了承されております三重大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究計画を多施設にするものです。また計画を行うために、三重大学医学部附属病院での遺伝子導入細胞の調製を行うものです。17頁の記載のとおり、今回は三重大学医学部附属病院からの、1つの変更報告書と、大阪大学医学部附属病院と北野病院からの2つの新規申請がされていたものです。これについては、それぞれ資料1-2と資料1-3です。
 参考資料2の3頁は、審査の指針に基づく審査の流れです。申請が来ると、複数の有識者に事務局から新規性について意見を求めます。本件について意見を求めたところ、多施設共同研究への変更は初めてであること、現行指針には関係項目を具体的に含めていないことから、医療機関間の搬送に関する細胞の品質の確保についてのデータが申請時点ではあまり付いていないこと。これらで十分なのかどうか、受入試験等も求めるかどうかなど検討する技術的な事項があるということでしたので、作業委員会を設置し、整理することとしたいとして部会に諮り、作業委員会での検討が了承されたものです。部会と作業委員会の役割のおおよそは、参考資料2の3頁のスキームの下のほうに記載があるとおりです。
 既に了解されている三重大学医学部附属病院の研究計画の概要についてご説明いたします。資料1-1の18頁の(5)から(7)にかけてです。当該研究の対象となる被験者については、標準的な治療である化学療法・放射線療法等による効果が期待できない、治療抵抗性の食道癌に罹患しており、その食道癌にMAGE-A4という癌抗原が発現し、白血球の型が(HLA)-A2402の人になるものです。MAGE-A4は、アミノ酸9個のペプチドです。被験者のリンパ球を採取し、そこへMAGE-A4という癌抗原を認識するT細胞受容体の遺伝子を、レトロウイルスベクターで導入するものです。この導入は、三重大学医学部附属病院で行われるものです。
 当該遺伝子を導入されたリンパ球は、理論上MAGE-A4を認識するT細胞受容体を発現し、その癌細胞のみを認識し、攻撃・破壊できるようになるものです。当該リンパ球を患者の体内に点滴で戻し、投与後14日目と28日目の計2回、MAGE-A4のペプチドを投与し、そのリンパ球の活性化あるいは増殖を体内で促す。そして遺伝子導入されたリンパ球等が、癌細胞のみを認識し、攻撃・破壊するという研究計画です。
 研究の目標症例数は、漸次用量を多くし、3用量で1用量3例の基本的に9例となっているものです。ただし、投与量増加基準に従って、1用量6例まで拡大できるということで、最大18例で行われるものです。安全性を調べることを中心とした臨床研究で、第I相試験に相当するものと説明されているものです。
 今回の一連の計画では、大阪大学医学部附属病院と北野病院は、基準に合った被験者のリンパ球を、三重大学医学部附属病院に持ち込んで、遺伝子導入をしていただき、戻してもらったものを被験者に投与するという、多施設共同研究を行うということです。なお、今回の研究途中での多施設研究への移行ということですが、当該目標症例数は変更することはないということです。
 資料1-1の19頁の2のところからですが、これは昨年11月9日に科学技術部会に報告した、遺伝子治療臨床研究作業委員会の審査概要です。主な議論は以下のとおりということで書いてあります。
 (2)のマル1において、今回の計画自体は、三重大学医学部附属病院が平成21年に承認されているものを、多施設にするものなので、ベクターや遺伝子導入法は同一である。
 マル2今回新たに提案されている多施設共同研究として遺伝子治療を行うための遺伝子導入細胞の移送や受け入れ等の技術的な課題については、作業委員会開催前のやり取り等によって十分検討されており、特段の問題はないと考えられた。
 20頁のマル3しかし、作業委員会での当日の議論の中で、安全性の評価を主要エンドポイントとして開始された臨床研究を、途中で多施設共同研究に変更することは、安全性の確認が済んだかのような誤った情報を発信することなどになり、科学的にも倫理的にも問題が多いという意見が複数の委員より作業委員会では出されました。また、既に三重大学医学部附属病院で単独で開始している臨床研究を、この時点で多施設共同研究に変更する理由について、申請者側から合理的な説明は得られなかったとされたものです。
 マル4その結果、作業委員会としては、現在進行中の三重大学医学部附属病院の臨床研究はこのまま継続し、第I相試験としての安全性の評価を行うべきであり、多施設共同研究については、新たな臨床研究として申請することが妥当であるという意見でまとまったものです。
 マル5一方で、一般的な多施設共同研究を進めることは、遺伝子治療の発展にも重要であると考えられる。今後、再申請を行う場合や、新たに多施設共同の遺伝子治療臨床研究を申請するためには、マル2の技術的問題だけではなく、マル3で指摘されたような臨床研究の妥当性についても十分に検討する必要があることを、申請者に伝達することが妥当とされたものです。
 マル6今回の作業委員会の審議を通し、遺伝子治療の安全性や科学的問題だけではなくて、臨床研究としての妥当性や倫理性が主な問題点として取り上げられたと考えて、これらの問題をどこまで議論するかは、作業委員会の役割をより明確にしていく必要がある。以上のことを踏まえ、作業委員会として、科学技術部会に報告することとされました。
 それで、11月9日の本科学技術部会の議論においては、基本的には20頁のマル3の「問題が多いという意見が複数の委員より出された」とか、「合理的な説明が得られなかった」というところについて、この内容だけではよくわからないので、この辺のところは文書をもって、作業委員会のほうとよく話をしてください、その結果を報告してくださいということでした。当日の議論ですので、三重大学医学部附属病院ほか2病院に対し、妥当性とか、問題になった点について再度文書で回答を要求し、作業委員会とも話をしました。
 その回答については、資料1-1の3頁から5頁です。質問として、「三重大学医学部附属病院単独で実施中の遺伝子治療臨床研究を、この時点で多施設に変更することについて、理由とその妥当性・合理性を説明してください」というものです。その回答として、まずは「実用化を目指した細胞療法の早期臨床研究の考え方」というところで、かい摘まんでそれぞれ説明させていただきます。最後の2行で、「実用化に向けた細胞療法の安全性確認を目的とした臨床試験は、緊密な協力関係のもと、少数多施設で行うことが望ましいと考えている」ということです。
 単一施設で開始した理由は真ん中辺りで、「本遺伝子治療臨床研究を立案した当時は、三重大学医学部附属病院で調製された遺伝子導入細胞の多施設への提供に関して妥当性を検討するための指針がなかったことから、単一施設で開始した」と報告されております。
 この時点で多施設に変更することの理由とその妥当性・合理性については、「平成22年3月30日に、厚労省の医政局通知が発出され、複数の医療機関において共同で再生・細胞医療を実施する場合の要件が示された」ということが書いてあり、4頁で、「それをもとにして実地における搬送テストとか、この時点で実施可能な細胞輸送システムについて検討し、それが構築できた。各施設における状況を随時把握するための体制も完成した。具体的には安全・効果評価・適応判定中央部会の体制構築、3施設が協力しての多施設化のSOPの作成、各施設の責任体制などを整えて、各施設での審査委員会での承認を得た」と書いてあります。
 次の段落において、「先行して開始された三重大学単施設での臨床研究においては、これまでに3例の被験者に遺伝子導入細胞が投与されましたが、現在までに遺伝子導入細胞に起因する有害事象は認められていない。増殖性レトロウイルス等の発生も認められていない」と書いてあります。「現在のところ、2番目の用量であるコホート2へ移行している状況です」。「これらのことを踏まえ、3施設のほうは少数多施設化することは科学的視点からも倫理的視点からも妥当であり、合理的であると考えたものです。さらに少数多施設化をこのようにしていけば、試験も迅速化されていくだろうということが考えられる。また、このようなことができれば、主治医の先生の下で安心して研究が進められるのではないか」ということが回答として書いてあります。
 それ以降については、北野病院と、大阪大学の病院のことが書いてあります。それぞれ、遺伝子治療臨床研究について行ったことはないが、いろいろな研究とか臨床研究に参加して行っている状況が記載されています。
 これが提出されましたので、これを踏まえて再度作業委員会でまとめたものが1頁以降になります。1頁の(1)は先ほどご説明いたしました経緯です。(2)は作業委員会の意見で、2つのことが書いてあります。前回報告した作業委員会の意見の中で、科学的にも倫理的にも問題が多いという意見が複数の委員より出されたとした意見の概要等についてまとめているものです。マル1第I相試験は安全性を確認するための重要な段階。そのため、一般的には第I相試験の結果を評価した上で、それに基づき次の段階として、多施設に拡大すべきだと考えるべきではないか。マル2上記の点について、これは当初の話ですので、変更する必要性について特別な事情は説明されなかったと考える。なお、三重大学医学部附属病院の現在の研究計画において、目標とする被験者数が集まりにくいという課題があるにしても、それは当初より想定され得るものであり、遺伝子治療臨床研究では一般的なことではないか。マル3したがって、本件については、現在の研究計画を完了させて、その結果を評価することがより重要と考える。マル4多施設共同研究として実施せずとも、他の施設において同じ計画に基づき、独自に実施する道はある。
 次の○として、今般提出された申請者等の回答について見ても、細胞輸送システムを確立することの必要性や、患者さんの便宜について説明されており、また安全性については3例の患者さんについて有害事象は認められないことが説明されているものの、やはり途中段階で変更することの本質的なところについては、十分説明されていないではないかということ。
 最後の○で、一方、前回報告したとおり、新たに提案されている多施設共同研究として遺伝子治療を行うための輸送や受け入れ等の技術的課題については、十分検討されており特段の問題はないと考えられる。
 まとめとして、以上を踏まえ、多施設共同研究として、現段階で変更していくことの妥当性については、作業委員会で、先ほど参考資料2にありました、主として科学的事項の論点整理にとどまらず、臨床研究の進め方に関する基本的な課題という側面も含めるということから、科学技術部会のほうでご検討を、ということが記載されております。今回の作業委員会でのまとめは以上のとおりとなります。よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 ただいまの説明は、遺伝子治療の科学的問題とともに、臨床研究のあり方についての問題も論点として挙がっております。いまの説明について、倫理面も含め、総合的にご意見をいただきたいと思います。ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。
○山田委員 
 いまの説明を伺いますと、申請者側は、決して安全性を既に担保されたものとして、ステップを拡大しようということを説明しているのではないと私は理解いたしました。それに対して、作業委員会は、まず当初の申請内容に沿って、安全性を確認することが重要で、それが終わった後で多施設への拡大である、という判断をしています。つまり、作業委員会と申請者の論点が双方でしっかり噛み合っていない議論になっているように思います。
 私見ではありますけれども、実際は作業委員会も評価しているように、さまざまな遺伝子導入細胞の輸送であるとか、受け入れ等の技術的課題についてはきちんと検討され、問題はないというのであれば、申請者が主張しているように、より安全性を早く、迅速に確認するための手段として、多施設での共同研究をやることが適切であれば、それを考慮することは決しておかしい問題ではないのではないかと思います。
○宮田委員 
 いままでの幹細胞の遺伝子治療もそうなのですけれども、こういう科学的な安全性の妥当性と倫理性を議論するのは何のためかというと、患者さんに一刻も早くこの医療のイノベーションを届けるというのが、暗黙の前提としてあるべきだと思っています。そういう意味では、作業委員会のレポートを読むと、科学的には全く問題はないのだけれども、途中から変更したのがよくないという理由で、この申請が却下されたとすると、患者さんのためにはならないのではないかと考えています。
 私が伺いたかったのは、途中で施設を拡大することにより、安全性を追求するための臨床研究の質が下がったり、患者さんに対して安全性が低下したりするようなおそれがあるのか、ということを作業委員会で議論していただいて、その上で我々のいままでの通念とか、ガイダンスにも望ましくは1施設でやるような表現があったと思うのですが、判断させていただきたい。遺伝子治療というのは、この場合は食道癌だから違うかもしれませんが、将来の遺伝子治療を考えると、全部オーファンディジーズになります。そうなると、症例を稼ぐためには、どう考えても最初の安全性試験から、複数の共同試験にならざるを得ないというのが現実であることを考えれば、今回これだけ一生懸命皆さんが議論したのですから、これをよき前例として、その遺伝子治療の臨床研究を前向きに進めるべきであると、私は考えています。
○永井部会長 
 事務局は、ただいまのご指摘にお答えできますか。
○尾崎研究企画官 
 この議論の中というか、作業委員長と話した中では、途中で施設の変更をした場合の実際的な問題としては、被験者の選択とか、治療効果とか、有害事象の確認等を行う組織の構成が3施設になるので、その辺のところで委員の考え方の違いによる、被験者の選択や、関係データの解釈に影響が出ることはあり得るのではないかという話もありました。
 現在のところ、9例中投与された方が3例で、登録されている方を含めると5例まで来ています。その辺のところも考慮しても、合理的な、やむにやまれないということは見出せないと考えられたということです。ただ、先ほども申しましたとおり、作業委員会は、技術的な課題を中心に見ていかなければいけないので、そこのところでこうした課題について記載しつつ、部会にご報告させていただいております。
○相澤委員 
 この計画の変更についての考え方なのですけれども、やむを得ない事情がなければ変えられないのか、合理的な事情があれば変えられるのかというところに差があると思います。合理的な理由があるので変えられるのだったら、私は専門外ですけれども、これを見る限り合理的な説明はされていると思います。やむを得ないのかどうかという説明がなされているものではない感じがします。そこの基準はどうなのですか。
○尾崎研究企画官 
 やむを得ないというのは、私のほうがそういう言葉の表現を使ったということです。先ほど言ったとおり、合理的な理由とは文書に記載してあることです。
○福井部会長代理 
 私も、個人的には合理性といいますか、この変更によって、できるだけ早く研究を進めたいという目的があることは理にかなっていると思います。ただ、この研究自体の妥当性が同じクオリティを担保できるかどうかという話については、臨床研究の質を高める上で、研究プロトコルをきっちり客観的に質の高いものにして、それを次のグループも同じようなことがフォローできるようなものを作るという努力をしてきました。確かにいろいろな評価委員会だとかの委員は代わるでしょうが、グループが変わっても同じことができるような体制は十分できるところまで来ていると思います。
 技術的に輸送とか、受け入れの技術的課題がないのであれば、患者さんの視点から、早く研究を進めるという意味では、少なくとも9例の患者さんを確保する目的で、個人的には認めてもいいのではないかと思いました。それから本質的な問題に関する説明というのは、具体的にどういう内容の説明を求めているのかがどうもよくわからない点が正直なところあります。
○宮田委員 
 1つ付け加えたいのですけれども、すごいトリビアなことなのでちょっとだけ付け加えさせてください。いま福井さんがおっしゃったように、だいぶ臨床研究の質も上がってきましたので、皆さんが懸念しているリスクは減ってきていると思うのです。万が一のことなのですが、この臨床研究を認めるに当たっては、3つの施設の情報の共有を一層しっかりしてほしいと思っています。それが保留条件として課されることも重要かと思っています。
 これは必ずしも正しくはなかったのですけれども、癌ワクチンに対する報道が一時あったと思うのです。大きな多施設共同研究になったときに、1施設で副作用みたいな報告があったときの情報の共有というものを、いかに迅速にするかというのがすごく問われてくると思います。3施設で、しかも安全性なのですけれども、これは特に情報共有ということをしっかりやるような一筆をいただきたいという気もしています。
○今村委員 
 医学の進歩であるとか、あるいは患者さんの利益という視点に立って、なるべくこのような研究を進めようということについては賛成です。一方で7頁に書いてある、医政局から各自治体宛に、実施についての技術的な助言というものが、平成22年3月30日付で発出されております。例えば、この中の実施する場合の要件などとして、15頁まで書いてあります。この回答というのは、この要件を満たすのかどうかということを事務局にお聞きします。
○尾崎研究企画官 
 作業委員会で、この指針と見比べてどうだ、というところの確認はしていませんが、搬送についての話については資料1-1の21頁の、作業委員会における事前意見のところで、マル1からマル6までの話と、あとは追加意見を出してこの内容については確認しています。だから、この医政局通知の指針の適用については、一個一個作業委員会のほうで確認したわけではなくて、課題として考えられるところについての意見を出して、作業委員会として納得のいく回答をいただいたということです。
○今村委員 
 第3章の「複数の医療機関において共同で再生・細胞治療を実施する場合の要件」を満たしていると理解していいのですね。そうすれば、ほとんど問題なく、これはGOということでいいわけです。もしこれが満たされていないということで、なおかつ認めるということであれば、それはそれの新たなる議論が必要になるのではないかと思います。
○永井部会長 
 おそらくこの作業委員会の意見の「科学的にも問題が多い」という文が、報告書の1頁のいちばん下にあります。「科学的にも倫理的にも問題が多い」と1頁から2頁にかけて書いてあります。この「科学的な問題、倫理的な問題」というのを、もう少し詳細にお話していただけますか。
○尾崎研究企画官 
 ここのところについては、2頁のマル1からマル4に記載されている内容です。
○永井部会長 
「科学的」というのはなかなか難しいのですけれども。
○尾崎研究企画官 
 第I相試験というところについては、1つの施設で行われることが望ましいということがありますので、それを踏まえたご意見だったのではないかと考えています。
○永井部会長 
 いわゆるメカニスティックな話ではなくて、臨床研究の進め方の方法論として問題が多いということですね。つまり、搬送の技術や細胞の質等については、問題はなさそうだということでしたけれども、研究の方法論として問題があるという、そこの論点のような感じです。それをこの科学技術部会としてどう考えるか。確かにインフォームド・コンセントの最初の話とは違っているわけです。そういう意味では確かに問題はあり得るのですが、それは許容範囲なのか、あるいは非常に許容しがたいところかという、そこでご議論いただきたいと思います。技術的には問題はないけれども、科学方法論として問題があるということでしょうか。
○相澤委員 
 インフォームド・コンセントの点について言うと、現在の治療施設で治療を受けている方は、そこで行われているわけなので、十分に説明を受けられるのではないか。これから、この計画によって治療を受ける方については、新たに変更された内容に基づいて治療を受けるということで、特にその点から患者さんが従前通知された内容と異なる治療を受けることにはならないのではないかと思います。本件について言えば、患者さんに対するインフォームド・コンセントとして問題があるとは思いません。
○宮田委員 
 議論すべきは、2頁のマル1です。要するに、一般と言いながら、ここでの作業委員会の報告は、1施設がやるべきであって、途中で多施設に変えることは認めないという意思表示をここにしていると思うのです。これが科学的かというのは非常に疑問です。もしこのようなことが原則としてあり得ると、先ほども申し上げたとおり、遺伝子治療はこれからオーファンディジーズになりますから、事実上日本で遺伝子治療の臨床研究は進まないという足枷になってしまうのではないかと、私は逆におそれます。
 先ほど福井先生もおっしゃっていましたけれども、日本の臨床研究のレベルが上がってきて、安全性を担保できる、あるいはデータの質を担保できるような基盤が出てきたいまの段階で、やはり金科玉条のごとくマル1を原則として押し進めていくのは、必ずしも賢明ではないと考えます。
 加えてこの勢いで余計なことを申し上げますと、先ほど今村先生のご指摘にもありましたように、新たな通知によって、1施設のCPCで作ったものを分配できるようになった新しい状況に、この遺伝子治療の研究に関する指針が適応できていないのではないかというおそれがあります。平成20年に改正しておりますので、もう4年も経ったので、新しい事態もできたので、指針そのものの抜本的な見直しもそろそろ考えたほうがいいのではないかと思っております。
○今村委員 
 もしこの研究を、申請者の要望どおり認めるとすれば、医政局長からの通知を一遍見直して、新たなものを発出していただく必要があると思います。こういうものがあるのに、それと違うような見解を出してということになれば、それはそれで行政上の瑕疵が残るのではないかと思います。もしこれが、これでいきなさいということであれば、また新たな医政局長通達なり何なりが必要になるのではないか。受ける側からは、そういうふうに思います。
 私どもは、通知の中でいろいろなことを考えていきますけれども、1つの通知が持つ重みいうのは非常に大きいものがあると考えております。もしGOということであれば、そういうことを考えていただきたいと思います。
○永井部会長 
 いまの点について、事務局はいかがでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 遺伝子治療臨床研究については、その研究を行うための指針が厚生労働大臣と文部科学大臣の2省の告示で決まっていますので、この通知とは関係ないものです。いま宮田先生とか今村先生からご指摘がありましたように、それの見直しについては作業委員会とか、設置については部会のほうで認められているわけなので、その準備を早くして、検討していきたいと考えております。今村先生ご指摘の、通知を変えるということではなくて、この辺のところを踏まえて遺伝子治療臨床研究のところを考えていくことは今後検討していきたいと考えております。
○永井部会長 
 この通知は、いわゆる再生医療に関することですね。
○尾崎研究企画官 
 はい、そうです。この辺の項目とか内容の調整のあり方については、現在の遺伝子治療臨床研究指針の中では、特別に関係している項目が何もないということです。ただ三重大学のほうから出てきたことがあったものですので、作業委員会を設置し、新しい、新規性のあることとして、指針の見直しということではないのですが、技術的議論を始めたというか、今回行ったということです。その中で第I相の途中での多施設化という課題について問題になりましたので、部会のほうにご報告させていただきました。そこのほうが重要だということでしたので、報告させていただきました。
○今村委員 
 遺伝子医療について、この発出された通知というのは格段の問題はないということであれば、それはそれでいいのですけれども、わざわざ資料としてこの中に挟み込んであるので、よほど複数医療機関の問題がかかわってくるのかと思って発言させていただきました。
○尾崎研究企画官 
 すみません。この資料については3頁、4頁、5頁の3病院からの回答の中で引かれておりましたので、私どものほうで参考に入れたということです。
○永井部会長 
 この再生医療に関する通知は、複数の機関でもできるようにするという、そのための要件を述べた通知です。三重大学が申請したときに、この通知がなかったがために、単独に申請したと。しかし、こういう通知が出た以上、複数でさせてもらえないかというのが、今回の変更の大きな理由だということです。必ずしもこれは遺伝子治療のためではないのですが、複数の機関で細胞をシェアしながら行うことはできる時代になったということなのです。それを、科学的に妥当なのか、問題があるのかということなわけです。
○野村委員 
 事務局からでも、先生方からでも教えていただけたらありがたいのですが、要はこの途中参加を認めないことによって、研究の遅れはどのぐらいあるのかというのを前にも聞いたことがあったのですが、よくわからなかったのです。マル4に多施設共同として実施せずとも、個別にほかの施設でも独自に実施することができるみたいな、いわゆる私のような素人からいくと、違う方法論、違う道を提示してあるのです。
 そうすると、逆に今回の申請のほうが真っ向勝負で、茨の道を正直に多施設共同でやりますと頑張っているように見えるのです。マル4の即ちこうすることができる、独自に実施することによる方法と、今回の申請の方法とで、患者さんにとってのメリットはどう違ってくるのかが素人の私にはわからないのです。要は、こっちの方法よりも、患者さんにメリットがあると思うから、こういう多施設共同を、途中で初めてのこととして申請されているのではないかと普通は考えます。マル4でこっちの方法だってできるのだからいいではないかという形になってくるときに、患者さんにとってのデメリット、メリットの差はあるのでしょうか。どなたか教えていただければ助かります。
○永井部会長 
 事務局いかがですか。
○尾崎研究企画官 
 ここでの話としては、それぞれの病院で研究を行っている先生方が、自ら当該遺伝子を扱ったり、導入したりすることにより、その内容についてよく熟知することになり、責任をより持って研究を行うことが期待されるだろうということです。現に、これまでは、単独であったこともあるのですが、その辺のところを自らやってきたというところがあるので、そういうことも考えられるのではないか、というところで意見があったということです。
○永井部会長 
 これは結果次第のところがあって、うまく安全性が確認されれば、早く進んでよかったということになり、患者さんにはメリットがあります。でも、何か問題があったときに、慣れていない研究機関が実施したから問題が出たのだろうとか、初めは1施設で実施するはずだったのが、結果が出ないうちに複数の施設が始めたために問題が広がったというデメリットになるわけです。これは、ある意味では、結果次第のところがあります。その辺をどう考えるかという問題なのです。
○桐野委員 
 この研究は、おそらくフェーズI該当する試験を行った後、フェーズIが終了すれば、この同様の施設で次の有効性についてやり始める、という予定で計画を立てられたと思うのです。ちょっとわからないのは、この該当する対象症例が、非常に予想以上に少ないという背景があるのかと思います。親施設である三重大学に患者さんを、フェーズIの間だけは紹介をしていただいて、そこで調製して、そこで治療するような選択肢も十分あり得るわけです。なぜフェーズIの段階から、わざわざ分けてやらなければいけないのかというのがちょっとわかりにくいのです。
 つまり、フェーズIIの前準備をするという意味では、あまりいい計画ではないように思います。フェーズIで、まずきっちり結果を出した上で、フェーズII以降に移っていくというほうが形はいいように思うのです。ただ、もっとそれを上回る合理的な理由があれば。問題はフェーズIのように、ある程度未知のリスクを伴う試験を、途中でスプリットしてやっていいのかどうかということに、最終的には尽きるので、マル1で書いてある原則をどの程度適用するかの議論をきちんとしなければいけないと思います。
○今村委員 
 作業委員会のほうで、どちらかというと抑制的な意見が出てきているのです。そして、ここの部会でそれを覆して進めようということであれば、ここでの議論が最初でGOよりは、もっともっと強い責任がこの部会には求められるわけです。いま桐野先生がおっしゃいましたけれども、マル1を覆すだけの説得できるものが私どもにあるのかというと、これはなかなか難しいと思います。あるいは覆して、例えばネガティブな結果が出たときに、私どもが背負わなければいけない責任は極めて大きいと思います。
○永井部会長 
 特にフェーズIという重みなのです。本当に効くかどうかもわからないし、害があるかもしれないものをヒトに投与するときに、なるべく拡散せずにじっくりやっていただく。必要であれば患者さんに三重まで行っていただいてでも、限られた施設で実施するということで始まったはずというところに、科学的・倫理的に問題があるのではないかというのが、ワーキンググループの意見なのだと思います。そういう中でどうかということです。
○相澤委員 
 先ほどからマル1が問題になっているのですが、マル1というのはここの部会で決定した原則なのですか。つまり、第I相試験の場合には1施設で行う原則というのはここで決めた原則なのですか。そこのところを確認させてください。
○尾崎研究企画官 
 特段ここで決めたということはないのですが、あるガイドラインには、「その1施設でやることが望ましい」という記載があります、ということは前回ご紹介したとおりです。
 また、今回1つ課題になっているのは、他施設共同をスタートからやってはいけないということを作業委員会で言っているのではなくて、同じ症例数の計画を途中で変更してしまうというのは、どうだろうか、ということが課題になって報告させていただいたと理解しております。
○相澤委員 
 いま、なぜ質問したかというと、そもそも複数施設でやることがよくないということなのか、複数に途中で変更するのがよくないのかというところがわかりません。配られている局長通知の中で、複数でやる場合はこれを気をつけなさいということが書いてあるということは、当然複数でやることも可という前提でできていると思うのです。
○永井部会長 
 一般的には、第I相は少数、単独でしたほうが良いと云われています。でも、初めから複数で行うこともできる。おそらくワーキンググループで問題になったのは、途中でルールを変えるということだと思います。途中でルールを変えるとバイアスがかかる可能性があります。臨床研究というのは、なるべく初めに決めたルールで走らないと、後で都合によって変わる可能性もあるわけです。もちろん今回の研究ではそのようなことはないとは思いますけれども、途中で意図的に都合のよい人たちを集めれば、都合のよい結果になります。どういう人たちと共同研究をするか、どういうプロトコルで行うかというのは、一度決めた以上は、なるべく変えないというのが基本です。これが、ばらつきや偶然性を除く非常に重要な、基本的な考え方で、おそらくワーキンググループはそこのことを強調したのではないかと思います。
○宮田委員 
 いまの話だと2つの問題が出ました。1つは、1施設でやるのか多施設でやるのかということ。最初のルールでやるのか、途中で最初のルールをどこまで変えるのか。この問題をきちんと分けて議論していかないと、マル1の中にはそれが両方入っているわけです。私も、厚労省の方にこういうことを聞いてほしいとお尋ねをしたことがあるのですが、まず整理しなければいけないのは、遺伝子治療というのは、ある遺伝子病がこれから重要な対象になってくるとすると、まず1施設でやらなければいけないという原則を、安全性確認のところで認めるとすると、本当に安全性のための症例数をきちんと集められるかという問題が絶対にあると思っていますので、複数でやってもいいのではないかということを議論していただきたいのです。
○永井部会長 
 それは、必ずしも1施設でないといけないというルールはないのですね。
○尾崎研究企画官 
 ありません。
○宮田委員 
 そうすると問題は、途中で変えたというところですよね。その場合もどう変えたかが重要になってくるわけです。
○永井部会長 
 福井先生いかがですか。その辺のプロトコルの扱い方です。
○福井部会長代理 
 確かにRCTや観察研究では我々が知らないバイアスが入ることも危惧されていますが、今回の件は、被験者についてのバイアスとはちょっと違うのではないかと思います。現時点で複数の施設になることで危惧される内容の変更とか、いままで三重大学でやってきたことと違うことが起こり得るかどうかは、わかる範囲内ではあまり考えられないのではないかと思いました。もしそうであれば、できるだけ早くこの研究を結論が出る方向に持っていったほうが、全体としてのメリットは大きいのではないかと思います。
○永井部会長 
 そうしたらいかがでしょうか、この問題はもう一回ワーキンググループに返して、いまの点の第I相を単独施設でする、あるいは単独から複数に変えることの科学的・倫理的な問題とはなんぞやということを、もう少し詳しく書いていただくほうがよろしいように思います。これは、臨床研究論として非常に深い問題があるのです。
○宮田委員 
 ですから、ここで書いているように「一般に」というような逃げは打たないでほしい。このケースでどうなのだという回答を求めたいと思います。
○永井部会長 
 軽々にこれは判断しないほうがよいと思いますし、よく議論を詰めて、問題点を明らかにして対応すべきであろうと思います。実際に1施設でもできないことはないわけです。多少患者さんにご不便をおかけするのですが、三重大学に行っていただくというように桐野委員がおっしゃったとおりですが、こういうプロトコルの変更というものをどう考えるかという問題でもあって、治験であれあるいは臨床研究であれ、いろいろな方々にかかわってくる問題でもありますので、もう少しワーキンググループで理由を述べていただく対応にしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○松田委員 
 遅れてまいりましたので、いままでの議論がどのようになされたかわからない状況で発言するのはいかがかとは思いますが、事前に説明を受けて、その後、資料等をもう一度目を通させていただきました。
事前説明の際、事務局より、こういった結果が出たから、ある程度多施設でやることができるのではないかという提案がなされているとの趣旨の説明を受けました。資料1-1の13頁の第3章に、一定の有効性及び安全性の評価が行われた後には、複数の施設において云々と書いてありますが、あくまでも、最初のプロトコルに従って安全性を確認した後、多施設でやることについては認めてもいいのではないかと解釈できるとすれば、今回の提案は、少し無理があるのではないかと。
 実際に製薬会社として、いろいろな臨床試験を打つ場合に、いかにそのプロトコルが大事で、当初の計画に従って、忠実にしっかりと実施しなければいけないかということを経験してきている者にとって、こういうふうにして例外を認めると、いろいろなケースで、私は波及効果が大きいと思いますので、これはそのように妥協はできないのではないかと考えます。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。そういういろいろなお考えがあろうかと思いますが、一回お戻しするということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○永井部会長 
 それでは、ワーキンググループでこの辺りの議論を十分に詰めていただく、あるいは説明をいただくということで、また改めてこちらで議論したいと思います。どうもありがとうございました。
○尾崎研究企画官 
 確認ですが、作業委員会が科学技術部会に検討をお願いしてくださいというのは、参考資料2の3頁のところで、「遺伝子治療臨床研究作業委員会は主として科学的事項の論点整理、全体的な事項は部会」だという役割分担に基づくものです。文章の報告書上「妥当性」とかいろいろなことが書いてあります。当該部会でご議論いただいた話は、やはり科学的事項もちゃんと含まれている話であるので、もちろん作業委員会の先生方も、課題があるのではないかということであるので、もう一度その辺のところを、作業委員会としてもよく整理して、もう一度出してくださいとご説明するということでよろしいですか。
○永井部会長 
 細胞とか遺伝子という視点からの科学技術論と、臨床研究の進め方としての科学技術論があるわけで、これは少し違ったスタンスから考えないといけないわけです。片方は必然性を追求する話ですし、片方はいかに偶然性を制御するかという話ですから、その両方をトータルしてご判断いただきたい。それはすべてが科学技術論なのだということなのです。よろしいでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 はい。
○永井部会長 
 そういう対応でよろしくお願いいたします。議事2にまいります。ヒト幹細胞臨床研究の実施計画の申請についてです。大阪大学医学部附属病院等4機関の申請について、5月9日に厚生労働大臣より諮問され、5月10日付で当部会に付議されております。また、島根大学医学部附属病院等の2機関より計画変更の申請をいただいております。まず事務局より説明をお願いいたします。
○谷再生医療研究推進室長 
 資料2、参考資料3です。今回はすでに諮問、付議が終わっている課題の追加が何個か含まれていますので、よろしくお願いいたします。
 資料2の3頁目です。第1番目に、大阪大学医学部附属病院からの申請です。4頁に概要があります。こちらは、次の14頁から入っている愛知大学医学部附属病院の研究と共同研究であり、前回申請が出ていた参考資料の35頁の東京大学が申請してきた研究内容と同じもので、多施設共同で行われる計画書です。
 計画の内容としては、角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究です。申請年月日は平成24年3月13日、実施は大阪大学大学院医学系研究科の西田先生です。対象疾患は、角膜上皮幹細胞疲弊症です。ヒト幹細胞の種類としては、口腔粘膜上皮細胞を用いると。実施期間及び対象症例数については、登録期間が平成23年10月から4年間、観察期間が術後1年間、それぞれ10症例ずつとなっています。登録期間については、申請の時点となっているかと思います。
 治療の概要としては、培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の有効性と安全性を検討するとして、患者の口腔粘膜を採取して大阪大学未来医療センターへ空輸、ディスパーゼ・トリプシン処理の後に、CPCにて上皮細胞の培養を行います。フィーダー細胞として、3T3-J2を用いて、培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製後に、東京大学または愛媛大学へ空輸して、1年後に角膜上皮欠損のない面積を測定し、有効性の評価をするという内容になっています。
 新規性については、培養口腔上皮細胞シートを空輸して、移植するという、空輸も含めた形での輸送を伴う研究となっております。全体のスキームとしては、次の5頁に流れ図が書いてあります。
 続いて、同じ内容ですので計画の内容は割愛させていただきますが、15頁をお開きください。こちらも同様に角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究です。こちらは愛媛大学の医学部附属病院の大橋先生からの申請で、対象疾患は同様に角膜上皮幹細胞疲弊症です。こちらも登録期間及び対象症例数、観察期間は同様になっておりまして、プロトコルの中身も同じです。次の頁に、説明用のポンチ絵が出ているので、こちらだけ愛媛大学用に追加して作っていただいたものです。
 続いて、資料2の26頁です。こちらは国家公務員共済連合会の横須賀共済病院の計画です。参考資料3の39頁の末梢動脈疾患患者に対する、バージャー病に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験です。実施者は札幌の北楡病院と共同して行う計画です。
 こちらは、先ほど言いましたとおり、国家公務員共済組合連合会の横須賀病院が新たに加わる。課題名としては、末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験です。対象疾患は末梢動脈疾患、閉塞性動脈硬化症・バージャー病です。ヒト幹細胞の種類としては、G-CSF動員自家末梢血単核球を用いて、試験予定期間としては2009年1月から5年間の10症例となっております。
 治療研究の概要としては、G-CSF皮下注射後にアフェレシスにより自己末梢血単核球を採取し、下肢へ筋肉内注射を行う。有害事象発生の有無などについて、安全性評価に加えて、下肢虚血重症度の推移、潰瘍サイズ、下肢虚血性疼痛、生理学的検査などにより、治療効果を評価するという内容になっております。次の頁に、全体の流れ図があります。
 次の課題ですが、資料2の42頁です。こちらは参考資料37頁で、生活習慣病関連肝硬変に対する自己骨髄細胞投与療法の有効性と安全性に関する試験でというもので、国立大学法人山口大学医学部で行っていたもののモディファイされたものです。申請年月日は平成24年7月11日で、実施施設及び研究者は社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院の佐久川先生からです。対象疾患は生活習慣病関連肝硬変です。ヒト幹細胞の種類は、自己骨髄細胞中に含まれると想定される幹細胞です。実施期間は、実施許可を受けてから2年間、症例数は10症例を予定しています。
 研究の概要としては、肝移植以外の治療法では改善が見込まれない生活習慣病に起因する肝硬変を有する20歳以上70歳以下の症例に対して、全身麻酔下で、自己骨髄細胞採取・投与を行う。骨髄液400mlを採取後に血球分離装置を用いて、無菌的に単核球分離を行い、得られた単核球を経静脈的に投与を行います。治療後6カ月後に、生化学的な検査、腹水量の推移で治療効果を判定するとなっております。
 新規性については、前回の山口大学とは異なりまして、対象疾患がアルコール性またはNASH関連肝硬変であるところが、新規性があるとされて、43頁に流れのシェーマが載っています。以上が新規のものです。
 続いて51頁で、変更の依頼です。今回変更依頼がきた2題のうちの1題ですが、重症低ホスタファーゼ症に対する可及的早期に行う同種間葉系幹細胞移植で、実施者は島根大学医学部附属病院の竹谷先生です。大臣の意見としては、平成22年6月10日に発出しているものです。
 次の頁に変更内容がありますが、臨床研究実施期間の延長、細胞搬送者の追加です。まず変更前は平成25年3月31日に終了ということと、搬送については医師が行うとなっていました。変更後については、平成28年3月31日までの期間とし、医師あるいは医学部附属病院、医学部に勤務している職員としています。
 変更理由です。現在までに3症例の患者に対して、臨床研究を行っておりますが、これまでの経過から、骨髄移植後2~3年間間葉系幹細胞を繰り返し投与する必要性が明らかになりつつある。したがって、登録患者数が5症例のため、残りの患者に骨髄移植を毎年、平成25年3月31日まで行った場合、それらの患者に対して、間葉系幹細胞移植を今年度から2年から3年の間行う必要があるため、臨床研究期間、実施期間の延長を申請するというものです。また、搬送業務を円滑かつ適切に行うため、医師だけでなく、医学部病院、医学部に勤務している職員に搬送業務を拡大して行いたいと思っている。骨髄バンクでも、医師以外の医学部病院、医学部に勤務している職員の搬送が可能となっていることから、搬送者の追加を申請したいということで、今回審議に入るということです。
 次の課題は62頁です。課題名は、自己脂肪組織由来幹細胞を用いた次世代型歯周組織再生療法の開発です。申請者は、大般大学大学院歯学研究科の村上先生です。大臣意見は、平成23年8月22日に発出しております。対象疾患としては、従来の治療では十分な歯周組織欠損の回復が見込めない辺縁性歯周炎としておりまして、幹細胞の種類は、培養自己脂肪組織由来の幹細胞です。
 今回の変更については63頁です。実施計画書における事項として、試験物の概要、研究登録機関の変更、その他誤記等の修正となっています。
 試験物の概要としては、細胞数を3×106個以上だったものを、細胞数を6.7×106以上に増やすと。それに対して、フィブリンゲルの含有量を50%から16.25%まで減らすという内容です。研究登録期間の変更については、大阪大学歯学部附属病院長による実施の許可から2年間となっておりましたが、これを3年間と延長の変更を行っております。変更理由としては、フィブリンゲルに混和する細胞数について、前臨床試験にて見直しを行い、安定した再生効果と安全性が確認された試験物作製方法に変更を行うというものです。現時点で、被験者の登録はまだ行われていないということですが、本研究実施計画の変更に伴い、研究期間の延長を申請したところです。今回の申請と変更計画については以上です。
○永井部会長 
 このヒト幹細胞臨床研究も、計画変更の申請が出ております。この辺りをどう考えるかということで、ご意見を伺わせていただければと思います。例えば4つ目、41頁の申請の生活習慣病関連肝硬変に対する自己骨髄細胞投与療法ですが、現在C型肝炎による肝硬変に対して、同じ治療法が申請されて、研究は始まったところですね。
○谷再生医療研究推進室長 
 始まったところです。
○永井部会長 
 同じ治療法を別の疾患、糖尿病に伴う肝硬変でも研究を始めたいというもので、こういうものをどう考えるか。まだ先行研究が始まったばかりで終了していないけれども、別の施設から同じプロトコルで出てきたということです。
○谷再生医療研究推進室長 
 対象疾患が異なる状態で、同じプロトコルで申請が行われたということです。
○永井部会長 
 そういう問題が1つあります。島根大学のケースは、5例の段階で方法を変えたほうが有効性が見られるようだということで、残り5例については違うプロトコルにしたいということです。繰り返し投与のほうがよさそうだということなのですが、当初の安全性を目的とした研究では10例ということになっています。これも先ほどの議論と少し通じるところがありますが。
○谷再生医療研究推進室長 
 島根大学の件につきましては、当初から複数回の投与が必要だろうということは、ある程度プロトコルでも書かれてはいたのですが、その回数がやや多めだということもあって今回、回数を増やすということになったようです。
 その中で、いままでの患者に対しても、当然2回だったものが3回から4回と増えるので、今後リクルートをして、治験に入っていただく被験者の皆さんも同様に期間がかかるだろうということで、延長の申請が出てきたということです。
○永井部会長 
 そうすると、島根大学の現在の研究で、安全性については結論が出ているということでしょうか。
○谷再生医療研究推進室長 
 現状は安全性の確認を中心としたプロトコルで行っている段階ですので、そういう意味では、まだ結果は得られていないということです。
○永井部会長 
 非常によく似た問題が入っているのです。たとえがよいかどうかわかりませんが、例えばスポーツでは登録メンバーは決めているわけですが、ゲームの途中でベンチ入りを増やしたいというのが先ほどの例なのです。今回は少しゲームのルールというか、方法を変えたいということが途中で起こってくる、こういうものを我々はどう考えるのか。
 初めは社会と約束をして、こういうルールでいきますということでスタートしているわけです。そこにたぶん倫理的な問題も起こります。こういうことを認めることによって、より深刻な問題が起こり得るのだと考える方もおられると思います。
○相澤委員 
 プロトコルの内容によると思います。プロトコルを変えることによって、その研究の内容が変わってしまうというものなのかどうかです。そのプロトコルの中でも、書かれていることの中のすべてが、科学的意味で意味を持っているものではないと思います、変更しても科学的に意味が変わらないのであれば、当初のプロトコルを変更しても、プロトコルの意義は生きているといえるのではないかと思います。
 もう1つは、患者さんがいるので、プロトコルを変えないことによって、患者さんが不利益が生じるというようなことがあるのであれば、それは別に考えなければいけない問題だと思います。
○宮田委員 
 ですから、さっきの遺伝子治療の作業部会にお願いしたいのは、科学的に答えてほしいのですが、途中で参加施設を増やしたときに、患者の安全性にどういう懸念が起こるのかが1番目です。2番目は、得られたデータの質が悪くて、臨床試験としてどのような価値を失う可能性があるのか、また、それはどうやれば防ぐことができるのか。もしできないとしたら、最初の施設でずっとやらなければいけないと思いますが、そういうことに答えてほしいのです。
 だから、作業部会の中に臨床統計学、生物統計学の人がいるかどうかも含めて、遺伝子治療のテクニカルなことだけで議論していると、いまの作業部会の能力を逸脱してしまったのではないかというのが、今回の報告書を読んだ限りで、「一般的には」なんて書いてあるのはやめてほしいと思います。
 それから、もう1つこの幹細胞の計画なのですが、特に私は3番目のG-CSFの申請が、このところ毎回出ているような気がしていて、そうなると、多施設共同試験のプロトコルというのが、22施設ぐらいでやっていますが、これがまず最初に決まっていて、施設の都合でIRBか何かの通過が遅いために、このように五月雨的な審議になっているのか、あるいはさっきの例と同じように、症例が足りなさそうだから、あとで参加施設を増やして、22例までいったのか、これは確かめておくべき事柄かなと思っています。
○永井部会長 
 申し忘れましたが、これはもう1つ問題があって、最初22施設といっていたのが、いつの間には25になっているのです。知らない間にそうなっています。こういう問題がいろいろ出てくるのですね。その点についても、審査委員会で事情を調べてみる必要があると思います。
 よろしいでしょうか。これは今日結論を出すことではありませんので、いまのご意見並びに今後もお気づきの点がありましたらお寄せいただいて、それを審査委員会にお伝えするということで、論点整理を行い、その結果をこの部会に報告させていただくということで進めたいと思います。また、その時点で再度総合的に、この部会で判断するということになります。
 続いて報告事項です。国立感染症研究所の評価報告等について説明をお願いいたします。
○渡邊所長 
 国立感染症研究所の渡邉です。平成22年度の国立感染症研究所機関評価に係る対処方針について、説明させていただきます。資料3です。平成23年2月15日に、11名の委員で構成される評価委員会により、感染研の機関評価が行われました。評価委員の名簿は資料の22頁です。ここにおられます金澤先生に評価委員長をお願いしております。評価事項は、国立感染症研究所研究開発評価マニュアルに基づき、11の課題について行われました。平成23年8月31日付で金澤評価委員長からいただいた「平成22年度国立感染症研究所機関評価報告書」に記載されている感染研の業務活動に関しての意見及びそれに対する感染研としての対処方針について、これから概要を報告させていただきます。
 1番として、研究、開発、検定、検査及び調査等の状況と、成果に関しての委員会の意見として、「研究所の活動自体はその研究条件や研究環境の厳しさを考慮に入れると、非常によくやっている。研究所の業務として、米国のNIH、CDC、FDAの3つの役割を行っているが、米国のそれと比べ、業務に係わる人員数及び予算額においては雲泥の差がある。人員の経費が削減される中、研究所の業務や研究の範囲は拡大し続けており、規模に合った機能の特化及び他の機関、他の省庁との連携を考慮した予算措置・人員措置の在り方を考える時期である」という意見をいただいております。
 感染研としての対処方針です。感染研のミッションは大きくマル1国内外の感染症の発生動向を把握し、その分析を行い、公衆衛生学的対策のための科学的助言と国民への情報の還元を行うこと、マル2感染症の予防に必要な、安全で有効なワクチン等の生物学的製剤を国民に提供できるようにするため、それらの品質管理を科学的証拠に基づいて行うこと、及びそれらの目的を達成するために必要な、科学的基盤に基づく調査・研究を行うことです。
 これらに必要な業務は、感染症の脅威から国民の健康を守るためにも、国として行うことは不可欠であるとともに、業務が相互に関連し、補完し合う関係にあります。一方、SARS、新型インフルエンザ、NDM-1薬剤耐性菌のような新しい感染症が、毎年のように国内外で問題となっております。また、ワクチン政策により、新規のワクチンの導入頻度が高まっており、皆さんご存じのように、HPV、Hib、肺炎球菌ワクチン、不活化ポリオワクチン等が、この2、3年の間に導入されており、及び今後多価ワクチン等の多くのワクチンの導入が控えており、ワクチンの品質管理としての国家検定の役割は重要なものであります。そのような状況において、毎年感染研では10人程度の定員削減がかかっておりますので、感染研としては、必然的に内部での重要事項への優先順位を付け、例えばワクチン等の検定においては、新しい制度の導入を行い、実際の試験項目の削減を図り、業務の効率化を行ってきております。その上で、必要な人員、予算の年度要求を行ってきており、平成24年度は6名の増員を得ていますが、実質的には6名の削減になっております。新興感染症の脅威から国民の健康を守るために必要な機能維持のためには、感染研の予算、定員削減についての十分な配慮をしていただくことを、切に感染研としては願っているところです。
 2番として、研究開発分野・課題の選定についてです。委員会の意見としては、「感染症のほとんどをカバーしており、我が国の感染症の課題に対応した研究テーマが適切に選定されている。今後は公衆衛生、疫学に資する研究分野における更なる強化が重要である」という意見をいただいております。
 その対処方針として、省横断的な研究成果発表会を行うことにより、特に疫学部門とラボ部門の連携強化を目指してきております。ラボ部門の60年の歴史に比べて、疫学部門はできてから14年です。そういう意味では非常にまだ浅いということで、今後さらに強化すべき事項という形で認識しております。
 また、国民に対して、感染研で疫学的対応を行っていることがわかるように、今後は感染症情報センターの名称を、できれば「感染症情報・疫学センター」なるものに変えることによって、実際に疫学研究をやっていることをさらに一層明らかにしていきたいと思っています。また、今後高齢化に伴う院内感染の増加など、特に臨床医学現場での連携が重要になっておりまして、感染研の隣に位置する国立国際医療研究センターとの連携を強化すること、及び研究テーマの選定においては、臨床現場との連携強化を図っていきたいと考えております。
 3番として、公的研究資金・競争的資金及び民間資金の導入状況に関してです。評価委員の意見としては、「競争的資金は十分に獲得されているものと考えられるが、それに反比例し、基盤的研究費、研究事業費の額が研究所の規模から見るとかなり少なく、国の研究機関としての基盤経費を競争的外部資金に依存するのはおかしく、内部予算として確保されるべきである」との意見をいただいております。感染研としても評価委員会のご指摘はもっともであり重要と考えており、例えば米国のCDCは内部予算だけで研究費を賄えるようになっていることを考えると、感染研としての基盤的研究費の十分なる予算化を強く望んでいるところです。
 4番として、研究上の遂行上の基盤組織、研究補助、施設設備、情報基盤及び知的財産権取得支援等の体制に関しての意見です。「すべての感染症に対応するには研究者が圧倒的に足りない。日本の感染症対策の中枢機関であるにもかかわらず、毎年定員合理化(削減)がかかっていることは問題であり、研究所の国民に対する使命の質と大きさに鑑み、定員合理化計画からの除外対象とするべきである。施設整備に関しては、研究所にBSL4施設が絶対に必要である」との意見をいただいております。
 これに対して感染研の対処方針です。感染研としては、業務の優先事項の選定等による人員、予算の効率化に向けての努力を図っていく予定ですが、厚生労働省におきましては、感染研の予算・定員削減について十分に配慮していただくよう、切に希望しております。BSL4の稼働の必要性は十分に認識しておりまして、安全面等に関する地域住民への説明、広報活動は、毎年根気よく続けてきております。また、必要時にはいつでも稼働できるような準備を整えております。
 5番として、疫学・生物統計学の専門家が関与する組織の支援体制に関してです。これに対するご意見として、「疫学や生物統計学分野については、組織的には整えられているものの、この分野の専門家が少なく、研究所に唯一足りない基盤は、この疫学に関する強力なグループと、その機動的な活動と言える。本来は米国CDCのように、それぞれの部門に疫学の専門家が必要であり、平常時のサーベイランスはもちろん重要であるが、緊急時、すなわちアウトブレイク発生時に、特にパンデミック時の情報収集、解析提供の強化は必要であり、健康危機発生時の積極的疫学調査の体制作りも含め重要な課題と言える」との意見をいただいております。
 対処方針として、大学等の公衆衛生学部門の衰退により、感染研になかなかよい人材が集まりにくいような状況ですが、海外で疫学研究を行ってきている人材の登用を図っているところです。国内での種々の健康危機発生事態に対応していくためにも、疫学者を育成していくことは感染研の一つの使命であり、感染研としては、現在FETP(実地疫学者)養成コースを設置し、これには毎年5名から7名の入所者がおります。臨床経験を積んでから感染症の疫学を習得したいという医療従事者を育成すべく努力しているところです。我が国にFETPコースを卒業した疫学者ネットワークを構築し、彼らに平常時及び危機対応時に現場での疫学解析等の一翼を担ってもらいたいと考えております。厚生労働省に対しても、このような組織を維持する予算・人員等の確保の要求を行ってきておりますが、非常に厳しい状況にあります。感染研としても、さらに感染症情報センターの機能の強化を図っていきたいと思いますので、ご支援のほど、よろしくお願いしたいと思っています。
 6番として、共同研究・民間資金の導入状況、産学官の連携及び国際協力等外部との交流に関してです。ご意見として、「国際協力は研究所の重要なミッションであり、WHOなどへの国際貢献は高く評価でき、今後とも積極的な推進が望まれる。また、産学官の連携については、これまで複数の大学に加え、早稲田大学との連携を始めるなどの発展が見られる。アジア、ASEANを中心に、海外の関連機関との連携も十分に図られている。ただ、文部科学省の感染症海外拠点プロジェクトや文部科学省が所管する大学の感染症関連の研究所との有機的連携にはやや問題がある。これは研究所だけの問題というよりも、お互いの問題であろうと思われる。むしろ我が国唯一の感染症研究センターとして、他組織からのリスペクトが足りないように思われる。今後は他機関から自動的に感染症に関する情報が研究所に集まるような仕組みが必要であろう」との意見をいただいております。
 対処方針です。感染症は一国の問題にとどまらず、国を超えて拡大していくため、多くの組織、国々との連携のもとに、そのコントロールを図ることは不可欠であります。このため感染研としては、WHOをはじめとする国際機関との連携及び特にアジアの国々における感染研と同じような機能を持つ国立研究機関との組織間での連携強化を促進してきております。特に、中国CDC、韓国CDCと感染研との間で定期的に行われる感染症情報・研究交換会は年々充実してきており、相互に有益との認識です。現在は、ベトナム及びインドにおける同様の連携を開始しております。文部科学省との感染症海外拠点プロジェクトの関係ですが、これには私が文科省の推進評価委員会のメンバーですので、今後有機的な連携をさらに深めたいと思っています。
 7番として、研究者の育成及び確保に関してです。意見として、「国内の研究者及びアジアを中心とする海外の研究者の育成に貢献している。特に連携大学院などの人材育成の活動は評価できる。なお、疫学や公衆衛生分野での日本の専門家は絶対的に不足しており、FETPだけでなく、連携大学院、ポスドクの採用等などを利用した人材育成を積極的に行うべきである」との意見をいただいています。対処方針としては、感染研は現在10以上の大学との連携大学院を締結しており、大学院生の指導、学位審査権も与えられている場合があります。その中で優秀な人材が感染研に職員として入所しております。今後も、さらにいくつかの大学との連携を考えており、所自ら人材育成にも努めていきたいと思っております。
 8番として、専門研究分野の成果に基づく社会貢献に関してです。意見として、「危機管理への対応について積極的な取り組みがなされており、特に、新型インフルエンザへの対応など、新たな感染症への対応も含めて、社会の要請に適切に応えており、社会的貢献の大きさは言うまでもない。ただ、貢献の割には、それが表に見えにくいところがあるので、一層の情報発信に向けた制度作りが必要である。また、研究所は我が国の新興・再興感染症の広報機関としても重要であるので、厚生労働省とのコミュニケーションの強化をし、一本化した広報、教育を行ってほしい」との意見をいただいています。
 対処方針としては、国立感染症研究所新型インフルエンザ対策行動計画、国立感染症研究所大規模感染症発生時行動計画等を作成し、迅速に危機対応ができる体制を構築してきております。例えば今回の東日本大震災においては、疫学調査、地方衛生研究所支援に関しては、行われた成果概要を、病原微生物検出情報誌に和文、英文でweb上に発信してきております。また、メディア情報交換会を行い、現在問題となっている、また問題となると予想される感染症に対して正確な感染症情報をメディアに流すように努めております。ご指摘のある厚生労働本省とのコミュニケーションの強化、一本化した広報、教育に関しても、今後もさらに充実を図っていきたいと考えております。
 9番として、倫理規定、倫理審査会及び利益相反管理委員会等の整備状況に関してです。意見としては、「倫理規定、倫理審査会及び利益相反委員会については整備され、所内で十分な配慮がなされており、特に問題はないと考える。ただ、おそらく最大の倫理的な問題は、自分たちが作成に関係したワクチンの審査に、自分たちが関わらざるを得ないということであろう。これは現在の研究所の問題というよりも、このシステムが生まれた歴史的経緯に基づく問題点があるので、厚生労働本省の責任で解決すべき問題である」との意見をいただいております。
 対処方針としまして、感染症のコントロールにはワクチンが大きな貢献をしており、感染研としてワクチンの開発でも責務を果たしたいと思っております。感染研におけるワクチンの開発の仕切りとしては、臨床試験前の基礎的、基盤的研究を担うと位置づけております。感染研はワクチンの国家検定を行っておりますので、世間から誤解を受けないよう、ワクチンの開発にかかわる人と、検定を行う人との分離を行い、利益相反に抵触しないように、十分考慮しております。評価委員会のご指摘のように、感染研(当時は国立予防衛生研究所)の創立は、ワクチンの国家検定を主な任務としていたもので、その後、感染症の検査、情報解析等の任務が時代の流れとともに付加されてきており、我が国の状況からすると、こういう混合型にならざるを得なかったという点もあります。人員が少ない中で、効率的に対応しなければならない現状においては、現在の混合型も1つのあり方であると考えております。今後、機能的分離を図るべきであるかも含め、厚生労働省とも相談をしたいと思っております。
 10番として、バイオテキュリティ及び情報管理セキュリティの整備及び運営に関してです。意見として、「感染症研究という業務上、バイオセキュリティの問題は最重要課題であり、安全管理体制も整備されており、感染性物質の搬入、搬出については非常によく管理されている。ただ、国際的な潮流から見て、BSL4施設の指定が受けられていないことが心配である」。前にも述べましたように、BSL4の稼働の必要性は十分に認識しており、安全面等に関する地域住民への説明、広報活動は毎年根気強く続けております。また、必要時にはいつでも稼働できるような準備を整えております。
 11.「その他」として、「平成23年3月の東日本大震災に見られるように、生物資源の喪失が問題となってきている。研究所は貴重な病原体等を多く保有しており、今後の危機管理及びバックアップ体制を早急に整えるべきである」との意見をいただいております。これに関しては、病原体等のバックアップに関しては、ディープフリーザー等の購入を既に行い、保管場所については現在、大阪の基盤研究所にお願いしているところであり、そのバックアップに努めています。
 12.総合評価及び意見として、一部重複するところはありますが、強調するために再度言わせていただきます。(1)「感染症の予防や対策に関して、国の中枢としての役割を担う国立機関が必須であることは、万人の認めるところであり、研究所はその設立の経過や予算等の縛りの中で、極めて高い成果を上げている。研究所そのものの評価というより、国との関係について提言したい。20世紀末ごろから、新たな感染症問題が突発することが多く、研究所の運営も、それらの新興感染症の情勢により振り回されてきた歴史がある中で、国は国としての感染症対策の全体像を明示し、国の感染症対策の中枢機関としての研究所の位置づけと役割をもっと明確にし、予算・人員の裏付けをつけることが重要であり、研究所はその国民に対する使命の質と大きさに鑑み、『国家公務員削減計画』からの対象除外とするべきである」との意見をいただいております。感染研としては誠にありがたいご意見でありまして、このご配慮をお願いしたいと思っています。
 2番として、「疫学や公衆衛生に関わる部門の拡充は必要であり、この分野の日本の専門家の数が絶対的に不足している現状からは、FETPの育成だけでなく、連携大学院などを利用した公衆衛生部門の人材育成が研究所でも積極的に行われるべきである。また、研究所は日本のCDC機能を持つ機関として、本気で疫学のセンター機能を担うべきである」との意見をいただいております。これも先ほど述べましたように、疫学部門の強化を感染研としては最重要事項として考えて、やっていきたいと思っております。
 3番として、「感染症のレファレンス業務については、地方衛生研究所における全般的な機能の低下や地研間格差の拡大が進行する中で、その重要性は増している。現在、衛生微生物技術協議会のレファレンス委員会が、地方衛生研究所のレファレンス業務の振り分けや分担を行っている。しかし、これはあくまでも非公式かつ暫定的な体制であり、公的に制度化されたものではない。できる限り早急にレファレンス業務に公的な枠組みを付与し、国の事業としての位置づけを明確にする必要がある」との意見をいただいております。全国の地方衛生研究所とは、この衛生微生物技術協議会を構築し、連携を強化し、検査法のマニュアルの作成や各病原体の分離情報の収集、還元、解析に努めてきております。感染症患者情報の収集は、感染症法の枠組みで行われておりますが、病原体レファレンス業務は、確かに法的に制度化されてはおりません。今後の検討課題だと考えております。
 次に、(4)「研究所は感染症の世界のレファレンスセンターの役割が期待され、今後もさらにその業務が増大することが予想される。このことが世界(特にアジア)での我が国の存在意義が問われているところであり、今後も研究所はその機能を強化してほしい。感染症はボーダーがなく、特にアジア各国との連携とともに、アジアに拠点を置くぐらいの政策が必要となるので、厚生労働省との検討が期待される」という意見をいただいております。これも先ほど6の対処方針で述べましたように、研究所としてアジアとの連携強化を進めてきております。今後もさらに厚生労働省のバックアップを期待しているところです。
 最後に、(5)「多くの部がワクチン開発に関わっているが、微生物の基礎研究を含むワクチンの評価系の研究開発は一層期待される。しかし、業界との直接の実用化研究開発は、将来その検定を研究所が行うために、利益相反にも関わり注意を要するところである」との意見をいただいております。これに関しましても、先ほどの対処方針で述べましたように、国家検定にかかわる利益相反には十分に注意を払って運営していきたいと考えております。
 最後に、感染研に対する、適切で前向きな評価、提言をいただきましたことに対して、評価委員長である金澤先生をはじめ、委員の先生方に感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
○永井部会長 
 ご意見をいただきたいと思います。
○福井部会長代理 
 疫学者の話ですが、日本でもようやくアメリカでいう公衆衛生大学院が、2000年に京都大学、2007年に東京大学、今年はハーバード大学と連携して帝京大学に設立されています。是非そういうところとの連携を取って、疫学と生物統計学をちゃんと勉強した人をリクルートするようなルートを作っていただければと思います。
○渡邊所長 
 ありがとうございます。そのように考えております。
○永井部会長 
 これは歴史的にメカニスティックな研究は非常に盛んだったけれども、先ほどの議論ではないのですが、偶然性を制御する研究が遅れていたということでしょうか。つまり、偶然なのか要因があるのかという問題ですね。
○渡邊所長 
 疫学を偶然と考えるのか、必然性があると考えるのかによりますが、確かに感染研だけに限らず、日本の中に疫学的、統計学的な処理でものを言うという発想は、現在では臨床でもだんだんそういうものが取り入れられてきていると思うのですが、日本全体としては少なかったように感じます。感染研も、このFETP制度も含めて、感染症情報センターが設けられたのが、感染症法の改正と、1996年に堺市でO-157集団事件が起こったときの疫学調査体制を反省しまして、この情報センターを作ってきた経緯があります。ですので、そういう意味では歴史的に14年しか経っていないということで、徐々にその辺の強化を図っていきたいとは考えています。
○永井部会長 
 金澤先生、評価委員長として何かございますか。
○金澤委員 
 ございません。何というか、「意見等」というところに、かなり過激な意見が出ていまして、大体私が言ったことなので、皆さん方のご意見で丸めていただきました。
○宮田委員 
 市場がグローバル化して、特に日本の企業がアジアの成長を期待しなければいけない状況になってきますので、ますます感染研の重要性は高まるわけです。ここにも明確に書かれていますから、これも蛇足に過ぎませんが、まず3つの機能をやっていて、ワクチン検定と研究の利益相反が起こる可能性が、ものすごくある。これが、あまり利益相反を気にするために、逆にいえばワクチンの開発が遅れていることも予想される。この状況は、何としても解消しなければいけないというのが1点です。
 もう1点は、ここにも何回も書いてありますが、国家公務員の定員削減とは違う考え方を導入する必要があるだろうと。そのためには、かなり大きな力技になってしまいますので、ひょっとしたら、これを違う組織という形態も含めて検討しなければいけない。それは1番目に申し上げた論点とも重なってくると思います。
 それから3番目ですが、これは先ほどの疫学者の養成も、感染症研究所の養成も、全部かかわってきますが、厚生労働省の感染研と大学の連携をもう少しちゃんとやらなければいけません。特に、文部科学省がやっている新興・再興感染症プログラムというのは、いままでなかなか海外に研究拠点を持てなかった日本の感染症研究者の、非常に大きなネットワークが出来上がりつつありますので、ここはフィールドでの経験を持った人たちがそこから続々と出ていますので、是非一緒にやってほしい。何でこれは別々にやっているのだというのは、一国民として理解に苦しむというコメントも、是非議事録に出させていただきたいと思います。
○渡邊所長 
 いまの最後の点は、我々もそう願っております。ただ、私がこれを言っていいのかわからないのですが、文科省側は、感染研がそこに入ることを現在のところウェルカムではないのです。初めに、これができるときは、その当時の課長が感染研に来て、一緒にやりましょうという話で進んだのですが、あるときから、そういう話がなくなったという経緯があります。ですので、感染研としてはウェルカムで、是非一緒にやれればと思います。
○宮田委員 
 質問させていただきますが、例えば感染研は厚労省に所属しているから、海外に研究拠点を持てないという話を聞いたことがありますが、これは事実ですか。
○渡邊所長 
 拠点を持てないというか、人を出すほどの余裕はないということです。本質論にまた返ってしまうのですが、例えば米国CDCのように5,000人とか1万人とか職員がいれば、いくらでも出せるわけですが、感染研はいま研究職の正職員が合計320人ぐらいですので、国外に長期に出すと国内に対応できないということになります。
○松田委員 
 私どももアメリカにポリクローナル抗体の会社を持っておりまして、テーマは最近変えましたが、一時期バイオテロの、炭疽菌のリスクが非常に高まったということで、国防省から多額の研究費をもらったことがあるのです。事程左様に感染症というものは国家レベルの国家安全的な視点からも、非常に重要なテーマですので、是非ここに書いてありますように、そういう国防的な視点からも重要であることは強調すべきではないかと思います。
 それから人材育成のところで、これは我々の非病原性でないアプライド・マイクロバイオロジーという領域で見ても、いま非常に基礎体力が弱っているということが話題になるのですが、是非、病原菌の領域では、実際にそういう基盤的な研究に対して、研究費がどの程度配分されているかはわかりませんが、こういう基礎体力のところにも研究費が十分に回って、そういうところから人材が育成されて、感染研で働くような人材が活躍できるような、もっと人材育成の基本的なところからケアしなければいけないのではないかと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは次の議事、「遺伝子臨床研究に関する実施施設からの報告」です。事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料4「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告」です。ここの3つの研究機関から出されたもので、重大事態報告、変更報告届がございます。これらのものについては、関係の作業委員会の委員の先生方には確認していただいておりまして、特段何かをするというものではない、となっているものです。順番に簡単に報告いたします。
 まず1頁で、東京大学の進行性膠芽腫患者に行われている単純ヘルペスウイルスのG47Δを用いた遺伝子治療です。総括責任者は藤堂先生です。3頁です。重大報告の内容は、被験者の死亡です。原因は、膠芽腫の増悪となっています。発生時期は平成24年3月7日です。
 研究の経緯の2.で、平成22年12月2日と平成22年12月9日に、計画に基づいて2回投与したところです。2回投与の7日後に、MRIで標的病変の面積の増大が見られましたので、プロトコル治療は中止とし、自宅退院となったということです。そのあとについては3.で、基本的には平成24年3月7日にお亡くなりになったということで、投与してから1年3カ月です。この内容について、4で「ウイルス療法との関連」ですが、これは特別な原病変の増大で、ウイルス療法との関係はなく、原疾患の進行によるものと推定されると考えている、となっていまして、2頁の審査委員会の意見についても、それが認められているという状況です。
 本件の剖検ですが、この研究については、参加される被験者の方には剖検をお願いすることがあるというインフォームド・コンセントを取っているわけですが、結局は行えなかったというものです。
 5頁です。三重大学医学部附属病院で、先ほどの議題1の臨床研究の関係する計画変更の報告です。これについては、総括責任者は三重大学の珠玖先生です。7頁の変更の内容ですが、遺伝子導入細胞の調製方法と記載整理の話です。変更理由としては、基本培地であるGT-T503の原料入手が困難となって、使用培地を変更するということです。8頁ですが、この欄は先ほども議題1で少し議論になりましたが、現在での状況について、このように報告していただいています。培地の変更が主なところです。
 11頁です。三重大学の先ほどの研究での重大事態報告の内容です。具体的内容は14頁です。重大事態の発生時期は平成24年4月6日ということで、内容は被験者の死亡です。原因は、食道癌の増悪による全身衰弱というものです。経過は、1.で、まず遺伝子の投入は平成23年6月21日に輸注されました。その後、2. 実施後の経過ですが、計画に従いペプチドを2回投与したということです。若干の縮小を見たが栄養状態は徐々に悪化し、全身状態が低下し、4月6日にお亡くなりになられました。最初の注入から考えると9カ月です。剖検は行われなかったという記載になっています。これについては、関連としては15頁に書いてありまして、13頁に倫理審査委員会の意見として、因果関係は認められないが、今後とも安全性の確認に努めながら研究を継続するよう要望する、と書いてあります。
 続いて、17頁です。国立がんセンターの遺伝子治療臨床研究の変更報告書です。変更内容は19頁で、変更理由は20頁です。基本的には、こちらもGT-T503という培地の原料入手困難ということで、変更です。報告としては以上です。
○永井部会長 
 ご質問はいかがでしょうか。
○金澤委員 
 質問ではないのですが、いま伺っただけで2例亡くなっていて、いずれも剖検させていただいていないということに対して、大変よくないという気がしていました。というのは、非常に先駆的なことをやらせていただいているわけですので、中で実際に何が起こっているのかということに対して、きちんと形態を含め、細胞レベルでも確実に、今後のことを考えて移植片を採らせていただくためには、是非剖検をお願いすることを、より強く求められる状況ではないかと思うにもかかわらず、そのままであるということを私は、非常に危惧をいたします。今後のことを考えますと。こういうことはなかなか難しいかもしれませんが、厚生労働省としてはもう少し強く求めてもいいのではないかとさえ思っています。
○永井部会長 
 事務局から何かございますか。
○尾崎研究企画官 
 剖検につきましては、金澤先生がおっしゃったように重要なことですので、より剖検を行わせてもらえるように、研究者の方に伝え、そこから関係者の方にご理解を得ていただくように、今後ともお願いするように伝えたいと思います。
○永井部会長 
 ほかにございますか。
○福井部会長代理 
 一般的なことですが、剖検のとり方が下手になったように思います。30数年前に、私たちが研修医のころの解剖率は90%でした。いまは、例えば聖路加病院だと6.7%です。本当に稀にしか剖検を行えなくなってしまって、御家族からの了承のとり方の手順が稚拙になってきていることを強く感じます。
○金澤委員 
 下手になっているという言い方も確かにあるのですが、私は熱意が失われていると思っています。必要性を認めていない若い医者さえいるということを、非常に危惧していまして、AIと称して、剖検後にMRIのような画像を撮らせてもらえば、それでいいのではないかという、誤った考えを持っている人が結構いるので、おそろしく思っているのです。たぶん熱意がないのではないかと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは最後の報告事項、「ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告」ですが、事務局から説明をお願いいたします。
○谷再生医療研究推進室長 
 資料5です。今回は3件の報告があります。まず、2頁の名古屋大学医学部附属病院からの変更の報告です。培養骨髄細胞移植の併用による骨延長術ということで、大臣意見が平成22年9月14日に発出されたものです。対象疾患が骨延長術を要する以下の症例ということで、各種骨系統疾患、外傷や先天性疾患により、3?以上の脚長不等を有する症例となっています。
 今回の変更内容は、4頁です。課題名の変更、略語及び用語の定義の一覧の追加、除外基準に悪性腫瘍の既往歴のある患者及び妊娠している患者等を追加、検査スケジュールや検査項目の明記、有効性及び安全性評価項目の定義を明確化し、各種手続きに関する手順書について、計画書に追加という内容です。また、同意文書については、計画の変更に伴い、内容の記載充実の部分と、高学年用と低学年用に分けたということです。
 今回の変更内容については、理由として、高度医療に申請を行った際に、より疾患名、要するに行為自体の患者が明確にわかる題名への変更に伴ったことと、内容の充実です。また、データマネジメント等の職員の充実も図られたことから、このような点につきまして、明確化を図ったという内容です。
 続いて、7頁です。こちらはヒト幹指針の第2章5の「研究機関の長の責務等」として、(8)「厚生労働大臣への報告」の?の二の報告です。こちらは、財団法人先端医療進行財団医療センター病院からの報告で、慢性重症下肢虚血患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球移植による下肢血管再生治療の倫理委員会の審査後における厚生労働大臣への報告です。
 次の頁に重大事態の内容が書かれています。今回は入院または入院期間の延長ということでご報告いただいております。現状としては因果関係はないと倫理委員会でも承認され、研究は継続という判断になっています。
 最後ですが、15頁です。国立大学法人高知大学医学部からの小児脳性麻痺に対する自己さい帯血幹細胞輸血による治療研究ということで、平成23年11月9日に大臣意見が出ていますが、条件つきの大臣意見となっておりまして、条件としては、CPCの中の換気・吸気の関係についての工事が終了次第了解ということで、報告を求めていた事案です。大学からは、今回完成通知として、業者から提出された書類も提出されていますので、これをもって実際に研究が実施されることになっております。以上です。
○永井部会長 
 ご質問はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ご質問、ご意見がございませんようでしたら、ただいまのご報告を了解したということにいたします。本日はこれで議事は終了です。事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 次回の日程については、委員の皆様には改めて日程、開催場所等についてご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 本日は長時間ありがとうございました。これで第71回厚生科学審議会科学技術部会を終了いたします。ありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第71回厚生科学審議会科学技術部会議事録

ページの先頭へ戻る