ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第69回厚生科学審議会科学技術部会議事録




2012年2月29日 第69回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年2月29日(水)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 今井委員 岩谷委員 金澤委員
川越委員 桐野委員 高杉委員 西島委員
野村委員 橋本委員 福井委員 宮田委員
宮村委員 望月委員

○議題

1 平成24年度厚生労働省科学技術関係予算(案)について
2 平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(二次)について
3 がん研究助成金事後評価について
4 ヒト幹細胞臨床研究について
5 その他

○配布資料

資料1平成24年度科学技術関係施策予算案の概要について
資料2-1平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(二次)(案)
資料2-2「平成24年度厚生労働科学研究費補助金の公募について(案)」に対する意見募集について(結果)
資料2 別紙厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム(e-Rad)への入力方法について
資料3がん研究助成金事業事後評価報告書(案)
資料4ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料5遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料6個人情報保護法を踏まえた平成16年の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の改正時の整理について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料3遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料

○議事

○尾崎研究企画官 
 ただいまから、第69回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様にはご多忙の折、また雪の折、お集まりいただきまして御礼申し上げます。本日は廣橋説雄委員、井部俊子委員、佐藤洋委員、末松誠委員、町野朔委員、松田譲委員、南裕子委員の7名からご欠席の連絡をいただいております。また相澤先生、今井先生、川越先生は少し遅れます。委員22名のうち、現在の出席委員は12名ということで過半数を超えておりますので、会議が成立しますことをご報告いたします。
 続いて、本日の会議資料を確認します。議事次第を見てください。配付資料の番号だけを申し上げます。資料1、資料2-1、資料2-2、資料2の別紙、資料3、資料4、資料5、資料6、参考資料1、参考資料2、参考資料3です。それでは永井部会長、議事の進行をよろしくお願いします。
○永井部会長 
 議事の1が「平成24年度厚生労働省科学技術関係予算(案)について」、議事の2が「平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(二次)について」ということで、併せて事務局よりご説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 まずは資料1をご用意ください。1枚めくって、1頁をご覧ください。これは昨年末に科学技術部会において検討していただいた、いわゆる概算要求前評価の概要をまとめたものです。科学技術基本計画に基づくアクションプランへの対応、新成長戦略や当時の社会保障・税一体改革成案への対応等を考えて、平成24年度の概算要求を進めたものです。
 2頁をご覧ください。現在、国会で審議されている平成24年度科学技術関係予算の概要です。平成24年度の科学技術関係経費の要求予算額の案としては、合計1,600億円です。平成23年度は1,501億円ということで、対前年度比で復興庁計上分、いわゆる復興枠分を含めて6.6%の増額となっております。その下には、厚生労働科学研究費補助金のことが書いてあります。平成24年度の予算額としては復興枠の25億円を含めて、合計465億円になります。平成23年度の予算額は438億円ですので、27億円増となっています。各研究事業の状況については、2枚目のスライドの下の枠のとおりです。
 平成23年度に比較して増加している研究事業については、資料2頁のいちばん下に「参考」というのがあります。この「ライフ・イノベーションの一体的な推進」で、日本再生重点化措置の特別枠の研究項目を含む事業が増加しているという状況です。また、平成24年度は平成23年度の予算額から、厚生科学研究費補助金が27億円増となっています。これは平成24年度の予算要求の段階で-59億円です。平成23年度の86.5%で要求し、それが基本的に認められて再生措置の重点化の枠等、復興枠で約86億円が別に認められた結果です。
 3頁は、科学技術関係経費1,600億円の主な内訳です。4頁がそのうちの厚生労働科学研究費補助金465億円の内訳です。
 5~7頁は、日本再生にかかる重点化措置のライフ・イノベーションの一体的な推進にかかる資料です。当該予算について説明します。なお、これに含まれる予算事業が、すべて科学技術関係経費に含まれるものではありません。まず5頁が、ライフ・イノベーションの一体的な推進の全体像です。全体で388億円で概算要求等をしておりましたが、最終的には127億円となっています。当該事業の目的は、日本発の革新的な医薬品・医療機器等の創出により、健康長寿社会を実現するとともに、国際競争力強化による経済成長に貢献することを目的としたもので、真ん中の4つの課題に対して、右側の4つの事項を柱として要求したものです。
 続いて6、7頁に書かれたものが、4つの柱に含まれる各種の各局の事業や、厚生科学研究費補助金の研究費の項目を説明したものです。柱の1つ目の「個別重点分野の研究開発・実用化支援」は、6つの項目からなっています。厚生労働科学研究費補助金の関係項目は、このうちのマル1~マル3とマル4の一部です。柱の2つ目が、「臨床研究中核病院等の整備及び機能強化」です。厚生労働科学研究費補助金の関係項目は2つ目の○の前半部分、国際水準の臨床研究を支援するという所が関係しています。7頁です。柱の3つ目が、「技術の進歩に対応する薬事承認審査・安全対策の向上」です。これには4つの事業があります。研究費関連の項目としては、マル2のレギュラトリーサイエンス関係の研究というのが関係しています。4つ目の柱が、「費用対効果を勘案した医療技術等の評価に関する研究・調査」です。厚生労働科学研究の関係としては、諸外国で行われている評価体系などの調査・研究が関連しています。
 8頁は、復興枠分の「東日本大震災からの復興及び大規模災害等への対応に関する研究」についてまとめているものです。8頁にある1から4の項目は、内容から見て便宜的に4つに分類し、それに名称を付けたものです。復興枠の研究としては、大規模災害時の健康支援に関する研究、食品の放射性物質汚染からの安全確保に関する研究、復旧・復興工事における安全衛生確保に関する研究、その他、国際協力その他に関するものからなっています。
 引き続き議題2、平成24年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(二次)の関連の説明をします。資料2-1、資料2-2、資料2の別紙をご用意いただければと思います。本日ご審議いただく二次の公募要項案というのは、昨年秋の一次公募要項案の検討に乗せられなかった、いわゆる復興枠と日本再生重点化措置の特別枠の研究費のうち、一般公募型の研究であって、がん関係の研究を除くもの、一次公募で公募がなかった研究課題、一次公募要項案の検討の時点では、その内容を具体的に決定していなかった新たな一般公募型の研究課題です。
 まず、資料2-2をご覧ください。今回の審議に先立ち、新たな公募となる事項について、各事業概要や新規課題採択方針を対象に、従来どおり広く国民の皆様等から意見を募集しております。資料2-2はその結果です。意見募集は平成24年2月8~15日までのおおよそ1週間で行いました。意見数は5件でした。研究事業別の集計は、資料2-2の最後の4頁を見ていただければと思います。主な意見に対して公募事項に反映されたのは、2頁の復興枠関連の「地球規模保健課題推進研究事業」、2頁の下から3頁にかけての日本再生措置の特別枠関連の「B型肝炎創薬実用化等研究事業」です。 これらを踏まえて資料2-1をご覧ください。資料2-1が本日の公募要項案です。要点を絞って説明していきます。1頁では、厚生労働科学研究費補助金の目的及び性格を記載しています。1頁の四角い枠囲みの中に、平成24年度の二次公募研究事業に関連する10事業を列挙しています。予算成立前であり、その意味で新規の事業は「仮称」と付しています。
 その四角の所を見ていただきますと、上から4つ目ぐらいに、「統計情報総合研究事業」というのがあります。これは復興枠関連の事業です。(2)の「地球規模保健課題推進研究事業」も復興枠関連の事業です。II の2の(1)のアの「臨床研究基盤整備推進研究事業」は、いわゆる試験関係、臨床研究関係のポスト5か年計画を策定している状況で、今回はそれを踏まえた新たな項目を出すものです。イの「被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究事業」は、復興枠関連です。3の(1)の「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業」は二次募集を行います。その下の「障害者対策総合研究事業」は復興枠関連、「B型肝炎創薬実用化等研究事業」は日本再生措置枠関連、IV の6の「労働安全衛生総合研究事業」は復興枠関連、7の「健康安全・危機管理対策総合研究事業」は二次募集を行います。最後の8の(1)の「精神疾患関係研究分野」は日本再生措置枠です。資金としては、そういった所から出ています。
 この四角の枠囲みの下の※で、この公募要項案については、予算の成立状況によっては新規採択予定課題数を下回る場合等があること、公募研究事業名の「(仮称)」と書いてあるものについては、予算成立後に削除する予定であることを注意喚起しています。
 4頁からは「応募に関する諸条件等」です。これは昨年秋に平成24年度分を先生方にご議論いただいて、昨年末に公募している一次公募の要項と基本的には同じ内容です。
 続いて10頁をご覧ください。10頁のいちばん下から11頁にかけて、ク、「府省共通研究開発管理システムについて」というのがあります。今回の二次公募も、これを用いて公募を行います。いわゆるe-Radを用いて行うということで、e-Radの入力等の操作方法に関するマニュアルについては、資料2の別紙になります。内容的には、基本的に一次募集と変わっていません。
 続いて13頁に行ってください。13頁の(5)に「公募期間」というのがあります。これは今後1カ月を超える期間を想定しております。例えば、本件については本日了承していただければ、3月上旬から4月中旬くらいの期日をここに書くことにしております。
 23頁からは「公募研究事業の概要等」です。これ以降は各研究事業について「事業概要」「新規課題採択方針」があります。この「新規課題採択方針」の中には研究費の規模、研究機関、新規採択予定課題数、必要な場合はその上に研究計画作成の留意点などが記載されています。今回は10事業ぐらいが関係していますので、簡単に見ていきたいと思います。まず23頁の1の(1)のアに、「統計情報総合研究事業」というのがあります。これは東日本大震災により、保健医療分野等に関する統計情報が、一部で通常と異なる方法により実施する等の影響を受けて、そこをどういうように評価するかについての研究を行うものです。一次公募型としては「事業概要」にありますように、マル1~マル3のような研究を行います。
 次に、25頁の(2)が「地球規模保健課題推進研究事業」です。これも復興枠関係です。この研究については「事業概要」の「また」以下にありますように、「東日本大震災からの復興の基本方針」において、「復興に当たっては、国際社会等の絆を強化し、諸外国の様々な活力を取り込みながら、内向きでない世界に開かれた復興を目指す」ことが課題として記載されていることを踏まえて、海外医師団と日本の医療チームとの協力に関する研究や、日本の保健医療体制における震災復興スキームの技術移転研究等を行うもので、「新規課題採択方針」に対する5つの項目について行います。
 続いて26頁の2に、「臨床応用基盤研究事業」というのがあります。この中で(ア)の「臨床研究基盤整備推進研究」を行います。これについては新たな研究項目を二次公募します。「事業概要」にありますように、「新たな治験活性化5か年計画」が平成23年度に終了することに基づき、現在、次期計画を策定中です。このポスト5か年計画において提示された課題の解決に取り組むことにより、臨床研究・治験をより一層活性化することを目的として公募を行うものです。
 具体的には27頁のいちばん上を見ていただきますと、次期計画を検討している検討会において、今後取組みを進めるに当たって、特にe-learningを用いた臨床研究に携わる人材の育成や、国民・患者への普及啓発等に関する研究を募集対象とするということで、今回、その2つのものを一般公募することになっております。
 29頁の真ん中の上辺りに、「被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究」というのがあります。これも復興枠関係です。この事業については「事業概要」の真ん中辺りにありますように、被災地域での大学、研究機関発のシーズ開発を後押しし、臨床研究及び医師主導治験を支援するものです。31頁に、この研究の応募条件及び研究計画書の添付書類などが書いてあります。アを見ていただきますと、研究代表者の所属研究機関が、ここに書いてある9県のいずれかの所在であることなどを条件として公募するものです。
 33頁の3の(1)が、「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業」に関するものです。これについては一次の公募を受けて、二次公募を行うところです。内容としては、「新規課題採択方針」というものがあります。健診・保健指導分野において、保健指導の評価方法等の開発を目的として一般公募を行います。生活習慣病対策における保健指導の総合的評価モデルに関する研究を二次公募するものです。
 34頁、4の「長寿・障害総合研究事業」の「障害者対策総合研究事業」です。これについても復興枠ですので、東日本大震災の広域災害対応ということで、災害時から復興時にかけての福祉サービスや障害福祉施設等の活用・役割に関する研究などの推進、PTSDやそれに続発するうつ病、アルコール関連問題等の精神疾患に対する効果的な診断・治療法の開発・実用化に関する研究を推進するものです。
 36頁の真ん中の下辺りにあるのが、「B型肝炎創薬実用化等研究事業」です。これは日本再生措置の特別枠で認められているものです。B型肝炎については、C型肝炎と比較して治療成績が低く、インターフェロンによる治療効果が期待し難い症例では、ウイルス増殖持続抑制目的の逆転写酵素阻害剤の継続投与が行われている状況がありますが、これについてもいろいろな課題があります。結局B型肝炎を中心として、「肝炎7か年戦略」の中間年に当たる今年度、戦略の見直しを行い、新たにB型肝炎の画期的な新規治療薬の開発を今後取り組むべき研究課題として盛り込み、平成24年度を初年度とする「肝炎研究10か年戦略」に対応する研究を行うものです。内容としては、37~39頁にかけての11の研究について総合的に取り組むということです。
 39頁の下の「労働安全衛生総合研究事業」は、復興枠関係です。ここで行うものについては、いわゆる被災地でのがれき処理作業です。がれきにアスベスト等が含まれる可能性があるということで、現地で簡単にサンプリングする方法や、簡易測定の技術の開発化を目指す研究を募集するものです。
 続いて40頁の下のほうには、「健康安全・危機管理対策総合研究事業」というのがあります。この中で行うものについては、41頁をご覧ください。これも一次募集のうち、もう一度二次募集を行う項目です。41頁の真ん中辺りに、「新規課題採択方針」というのがあります。この中では、ご遺体の埋葬や火葬を円滑かつ適正に行うことが東日本大震災のときに課題となったことから、大規模災害時におけるこれらのあり方を提案する研究を行う者を二次募集します。
 続いて41頁、「難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業」の中に、「精神疾患関係研究分野」に関するものがあります。これについてもB型肝炎と同じように、日本再生措置枠でのお金が取れた研究事業です。公募する項目は「事業概要」にもありますように、うつ病を含む気分障害については、いまだに有効な診断・治療法が確立されていないため、客観的な診断法や効果的な治療法の開発研究が必要であるということです。「新規課題採択方針」ですが、脳機能画像等を用いた客観的な診断法や、病態メカニズムに応じた効果的な薬物・精神治療法の開発を行う研究をするものです。
 後の頁は公募事業の計画とか、45頁については「補助対象経費の費目の内容及び単価」、49頁からは研究計画書の様式記入例となっております。この内容で公募を開始したいと考えております。
○永井部会長 
 ただいまのご説明に対してご意見、ご質問をお願いします。
○相澤委員 
 この様式は、申請者側にとっては、特段の不自由はないと理解してよろしいですか。申請する先生方に不便であれば、将来に向かって修正を検討していただくとよろしいのではないかと思います。
○永井部会長 
 私どももよく申請しますけれども、特に書式で問題があるということを聞いたことはありません。私が1つ感じたのは、文科省との調整です。特に実用化研究では文科省も厚労省もTR的な実用化研究を進めています。その事前の打合せをよくしておいていただきたいと思うのです。と申しますのは、趣旨が違うわけですし、研究対象も違うのですが、実際に応募した後あるいは採択された後に、どちらかにしなさいという調整が働きます。現に5年前もそうでしたし、今回もそういう指示が出ました。
ですから趣旨が違うのであれば、違うということを明確にして、それぞれがどこを分担するかということを明らかにして研究費の募集が始まるべきだと思うのです。しかし実際に申請あるいは採択された後に重複があるから駄目というのは、たぶん研究者としてはいろいろな不満があるのではないかと思いますので、事前の意見調整が非常に重要だと思います。
○福井部会長代理 
 資料1の7頁の最後の項目について確認させてください。この「費用対効果を勘案した医療技術等の評価に関する研究・調査」というのは、保険償還価格の設定に用いるための研究・調査ということでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 医療技術等の保険償還価格の設定に関しては、さらなるイノベーションの評価をうまくやっていくために、その辺のところを確保しつつ、費用対効果を勘案した技術の評価を行うためにするものです。どちらかというと、さらなるイノベーションをちゃんと評価していきましょうという観点から、いろいろな調査・研究を行うところです。
○矢島技術総括審議官 
 補足いたします。この研究費は保険局が担当しますので、ご指摘のように、将来的には診療報酬をどういうように評価するかということも念頭に置いた研究になります。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○西島委員 
 質問します。資料1の7頁に、「技術の進歩に対応する薬事承認審査・安全対策の向上」というのがあります。この部分については、資料2-1の厚労科研の公募との関係がわからないのです。先ほどの説明の中では、厚労科研のほうには説明が出てこなかったのです。
○尾崎研究企画官 
 今回のところは一般公募分の公募要項です。研究費については、いわゆる指定型で行う項目もありますので、指定型については関係事業の関係課のほうで適当な方を指定して行います。そのために出てこないのです。
○矢島技術総括審議官 
 少し補足いたします。大学などに公募を行い人材交流が実施できるような、人材を育成する事業の中で一体的にやっていただいて、研究費もセットで機関にお渡しするものです。今回の公募はテーマに応じてやるものです。いま実際には医薬局が担当していて、各大学等の講座の中で、ここにあるような形でレギュラトリーサイエンスの人材を育成していただく機関を公募して、研究費もセットでお渡しします。最終的に医薬局で詰めておりますので、今回の公募研究とは違う形になります。
○西島委員 
 わかりました。
○宮村委員 
 資料1の3頁に記載されておりますように、例えば厚生労働科学研究費補助金のローマ数字3、疾病・障害対策研究分野が軒並み10~20%の対前年度比率になっていますけれども、(5)の感染症対策総合研究経費だけが137%となっています。その理由は、4頁のIII の(5)にありますように、既存の新型インフルエンザやエイズ、肝炎等克服緊急対策が、20%から10%減になっているのに、(5)のエのB型肝炎の創薬実用化等研究経費が28億円付いたというのが、感染症対策総合研究経費にかかった、ものすごく大きな部分であると思います。
 いまのご説明で、この研究費は日本再生措置枠という特別の所から獲得することができた貴重な研究予算です。そして前々から肝炎等克服研究事業というところで、日本ではB型肝炎対応がとても大切であることは論を俟たず、研究が進行していたわけです。ここでとても貴重な研究費をこういう形で使っていくという、ある意味、大きなチャンスでもあると思うのです。パブコメが記載されている資料2-2で、B型肝炎創薬実用化等研究事業については、事業の採択方針が極めて狭く、特に今までやっていたB型肝炎研究者が同じようなテーマで、同じようなことに収斂してしまうのではないかというコメントがきています。そのコメントに対する反応ですが、3頁を見ていただきますと、「ご意見を踏まえ、様々な研究分野の技術・知見を結集した総合力の高い研究を優先的に採択する方針であることを、公募要項に明記することとしました」とあります。それを明記したのが、いま配付されたものですか。そこをもう少し詳しくご説明いただけませんか。
○尾崎研究企画官 
 公募要項案については資料2-1です。「B型肝炎創薬実用化等研究事業」ということで、36~39頁にかけてです。
○宮村委員 
 これはパブコメに出した後に修正したものですか。
○尾崎研究企画官 
 はい。パブコメに出して修正をして、この案になっています。37頁の上から4行目を見ていただきますと、「新規課題採択方針」があります。そこの途中から、「このような事業の特性から、様々な研究分野の技術・知見を結集した総合力の高い研究を優先的に採択する」という方針に、ここの部分を修正して、今はこういうようになっているので、ここに書いた方針で各評価委員会で採択されていくということです。
○宮田委員 
 今のことと、もう1つ別のことと2つ言わせてください。1つは、B型肝炎の治療薬の開発に関して、実はC型肝炎のプロテアーゼインヒビターには非常にいいものが出ていて、海外ではもうすでに軸足がB型肝炎の治療薬に移っているのです。我々国民の立場から言えば、C型肝炎の治療薬の開発というのは非常に重要な課題ですけれども、患者さんから言えば、現在では別に日本の企業が作らなくてもいいのではないかというオプションもあるのです。
 ですから国際的に本当に競える研究課題というのを、しっかり選別していただかないといけません。申し訳ないのですが、創薬に関しては物質特許が非常に効力を持つ分野ですので、二番手、三番手というのはあまり有効ではないということを考えると、今回の課題の審査に当たっては、国際競争力ということを是非頭に置いていただきたいと思います。もちろんその反動として、国内の研究者の育成も重要なので、そのバランスを取りながらやらなければいけないのですが、第一の審査としては、国際競争力のある研究であるということを、審査においては念頭に置いていただきたいと思います。
 もう1つ、東日本大震災の復興というのは、国家的課題だと思っております。ここで取り上げている予算ですが、実は各省庁にそういう枠があって、非常に似たようなもの、あるいは連携を取ればよりその研究が進むようなものがあると思っております。そういったことに関しても、予算の執行や課題の選定のときに考慮していただきたいと思います。是非、文科省とか経産省、総務庁といった所の復興関連予算の担当者と、特に密接な連絡を取って審査を進めていただきたいと思っております。以上、要望です。
○永井部会長 
 ほかにご意見、ご質問はありますか。
○相澤委員 
 宮田委員が、国際競争力に言及されました。私も、国際競争力に注意を払うことは重要だと思います。ただ、この予算額で国際競争力云々と言っても難しいのかなと思います。国際競争力をつけるためには、補助金もそれにふさわしいものにしていかなければいけないのではないかと思います。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。もしご質問、ご意見がなければ、平成24年度厚生労働科学研究費補助金二次公募要項については、資料のとおり進めさせていただきたいと思います。もし今後、字句等の修正がある場合には、事務局と私のほうで対応させていただきたいと思いますので、ご了承いただきたいと思います。
 では、議事の3にいきます。「がん研究助成金事後評価について」です。事務局よりご説明をお願いいたします。
○片岡国立病院課長 
 医政局国立病院課です。「がん研究助成金事業の事後評価報告書(案)」についてご説明させていただきます。資料3をご参照ください。この助成金については序文をご覧ください。この助成金はがん対策に関する企画及び行政を推進し、がん医療を向上させることを目的として、1963年(昭和38年)より予算措置された補助金です。国立がんセンターにおいて管理・運営されてきました。平成22年4月に国立がんセンターが独立行政法人に移行したことに伴い、平成21年度をもってこの助成金は終了いたしました。事業終了に伴い、今回この助成金事業の事後評価をお願いするものです。
 評価の手順ですが、昨年3月のこの部会でご審議いただきました事後評価の方針に基づき、必要性、効率性及び有効性等の観点から評価を行うこととし、まず評価委員会を設置し、この事後評価委員会で本日ご説明いたします報告書(案)を作成していただきました。この評価委員会の委員名簿は177頁の参考資料11をご覧ください。
 報告書(案)の内容についてご説明いたします。序文をめくりますと目次です。1は「全体の展望」ということで、その中で助成金の概要、必要性、効率性、有効性、考察、それから関連する参考資料を後ろに添付しているという構成になっております。報告書(案)の内容について順次ご説明させていただきます。
 2頁は「助成金の概要」ですので説明は省略させていただきます。3頁からが評価になります。「がん研究助成金の必要性」についてです。1)行政的意義としてはAF-2の使用禁止や、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌による胃がん予防に見られるように、厚生労働省のがん政策医療推進の一環として行われ、この助成金による研究成果は厚生行政に高く貢献しました。2)専門的・学術的意義です。記載している例に見られますように、臨床や研究に役立つ成果が多数もたらされています。3)目的の妥当性については、多種のがん研究を支えることにより、がん医療水準の向上に大きく貢献してきました。4)科学的・技術的意義、次頁の社会的・経済的意義についてもここに記載しております例に見られるように、重要な役割を果たしてきたということです。
 5頁は「効率性」についてです。5頁の真ん中の四角の下からですが、研究課題及び研究者の選定、研究費の配分並びに課題の評価に当たっては、行政関係者及び有識者で構成する運営委員会において、社会の要請や最新の知見に照らして審議決定され、また研究計画や成果について運営委員会で評価し、必要な指摘は研究者にフィードバックする体制が取られるなど、適正な運用が図られていました。
 6頁は「研究開発の手段やアプローチの妥当性」です。研究の形態は公募研究で、その中が3つに分かれます。総合研究、計画研究、機械開発研究、それから関連学会や社会的要請に基づき、計画的・集中的に実施する「指定研究」で構成されており、研究責任者である主任研究者が、全国的な視野に立ち、各分野から専門家が選出され、各研究の研究者は全国の国立、公立、私立の医療機関に広く分布し、各分野において着実な成果を収めてきました。
 7頁は「有効性」です。7頁の1)の目標の達成度、2)の新しい知の創出への貢献についても、ここに記載しておりますように内視鏡治療や機能温存手術の開発のように、臨床や研究に役立つ成果が多数出ており、また抗がん剤内包ミセル製剤の開発や、ポリATPリボース合成酵素阻害剤の開発のように、優れた研究が国内外において高く評価されています。
 3)社会・経済への貢献については、多施設共同研究による参加施設のレベルアップ、がん登録により、がん対策の優先順位付けや、治療選択の際の重要な情報源の提供が行われました。また大規模コホート研究により、エビデンスを定量的に示すことが可能となり、がんに関する正しい知識の実践によって、がんのリスクを下げることが可能となりました。
 8頁は「人材の養成」です。この助成金事業は、研究者の養成や資質向上といった人材育成にも貢献してきました。5)直接の成果の内容、6)効果や波及効果の内容については、ここに記載しておりますように多くの成果や波及効果が挙げられております。
 9頁は「実用化・事業化の見通し」「行政施策実施への貢献」「知的基盤の整備への貢献」について、それぞれの領域分野で早期発見、治療、普及啓発等に貢献しています。
 12頁で「考察」です。2つ目の段落で、時代の変遷とともに様々な観点からがん研究が推進されたが、このがん研究助成金により行われた研究は、その時代のがんの傾向を反映したものとなっています。がん研究助成金により取り組まれた幅広い分野にわたる研究は、臨床現場にも影響を及ぼすとともに、予防、診断、治療を含めたがん対策へ広く貢献してきました。
 12頁の下のほうで、またこの助成金はがん対策基本計画で定められた、国立がんセンターの使命・役割を果たすための基盤的な研究課題として、国立病院特別会計で研究費が措置されてきました。これにより国立がんセンターへ研究費を集中させることで、がん研究を効率的に推進し、がん研究の相互調整や、主力研究機関としての高度・先駆的医療の開発等を主体的に実施することができました。
 13頁の2段目の中ごろで、今後の展望として、現在でもがんは日本人の死亡原因の約3割を占める重要な疾患であることからも、今後とも引き続き研究を推進すべき分野であることは確かである。がん研究助成金が構築してきた様々な研究体制や、研究成果が今後も継続され、発展していくことを強く望むものである。
 最後の段落で、今回評価するに当たっていろいろ困難な面がありましたということを付記しております。研究体制や成果報告・評価などの仕組みは、時代とともに整備されてきた経緯があり、現存する資料から長期にわたる成果を今日的な視点から評価することはなかなか困難でした。また国民健康、社会、経済などの領域への影響も少なからずあったと考えられますが、エビデンスを用いて検証することはできなかったということです。
 しかしながら、今回このような困難な状況にかかわらず、研究事業の評価を行いましたが、今後研究事業の評価を実施する際には、行政に与えた成果をさまざまな観点から検証・評価する仕組みが必要と考えられるとまとめております。
 15頁の参考資料1です。これは「がん研究助成金事業の研究成果大要」ということで、国立がん研究センターに依頼して作業チームを組織してもらい、この助成金により支援された主な研究31研究について、それぞれその成果と、それがどのようにがんの診療、治療技術の向上に結び付いてきたか。特に国民にとってどれだけメリットがあったかをわかりやすく取りまとめていただいたものです。なかなか大部にわたっているものです。
 68頁の参考資料2は、「JCOGと研究班の歩み」ということで、がん研究助成金による代表的な研究の1つである日本臨床腫瘍研究グループの過去の経緯を図示したものです。
 69頁からの参考資料3は、平成11年10月からのがん研究助成金運営委員会の委員名簿です。74頁からの参考資料4は、「がん研究助成金予算額・研究課題数の推移」です。77頁からの参考資料5は、全研究課題についての研究課題名と、主任研究者名の一覧です。156頁からの参考資料6は、昭和52年度から実施されてきた、この助成金によるシンポジウムについてです。159頁からの参考資料7は、日本癌学会賞、朝日がん大賞、高松姫癌研究基金学術賞の受賞者がかかわった、この助成金の研究課題についてです。169頁からの参考資料8は、研究課題名に特定の部位名が記載されている研究班の研究課題数と、それぞれの死亡者数の年次推移です。171頁からの参考資料9は、「がん研究助成金による国民の健康増進への貢献」ということで、主ながんの罹患率の推移、年齢調整罹患率の推移、5年相対生存率の推移、がん検診の受診率の推移を示したものです。176頁の参考資料10は、「がんセンターの職員が主任研究者である研究班数と割合」を示したものです。177頁の参考資料11は、先ほどご説明いたしました事後評価委員会の委員の方々の名簿です。お忙しい中をご尽力いただきまして大変ありがとうございました。本件に関し、担当課からのご説明は以上です。ご審議のほどよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 歴史を検証するような、非常に大きな規模の研究事業でしたが、いかがでしょうか。
○福井部会長代理 
 委員に名前を連ねていて恐縮ですけれども、コメントと要望を述べさせていただきます。報告書自体は、最初に委員会を開いたときのものと比べると格段に良くなっていて、これだけの短期間でここまでまとめられたのは本当に素晴らしいと思います。
ただし、このようなポリシー、政策の評価をどうするかというのは外国でも以前から大きな問題になっていて、アメリカでは研究費の1%ぐらいを、研究費がどれぐらい役に立ったかという評価のために使うべきだと、1980年代から言われています。2000年に入ってから、今度はヨーロッパが非常に活発に技術評価、政策評価を行っています。特にオランダやスウェーデンは、いろいろな報告書も出しています。
テクニカルには、例えばどれぐらい日本人の生命が救われたのかといった、国民にわかりやすくインパクトのある数値化をできないかと思っています。方法論としては、費用効果分析や、費用便益分析など、保険医療分野の統計数値を使った評価方法は開発されてきていますので、できることならそのような方法論を今後使う方向で、時間をかけて検討していただければと思います。
○矢島技術総括審議官 
 すごく大事なテーマだと思います。これだけの多額の研究費を使わせていただいて、いろいろな意味で国民の健康・生命を守るために貢献できているところです。個別個別の研究だけではなくて、トータルとしてどのようにやっていくかということになるかとは思うのです。ご指摘については引き続き、どういう方法があるのかは、先ほどの費用対効果、便益分析とかいろいろあるのですが、その辺のところを我々のほうでも検討させていただきます。
○野村委員 
 ここでお願いするべきことなのかわからないのですけれども、素人でもこの50年の間にすごい研究とか、実際に聞いたことがあって治療に活かされているものが、私たちレベルでもわかるような成果があって素晴らしいと思いながら読ませていただきました。そういうすごい目覚しいがん研究の治療で、日々研究成果をもとに、現場の医師の方たちは治療に邁進していると思うのです。
 一方で、早期発見や適切な治療によって、がんで死ぬというイメージがどんどん覆されている中では、私たち一般の患者が賢い患者にならなくてはいけないという面がすごく出てきています。そのためには、せっかくの研究成果を全員が適切に理解できるような情報開示や、情報提供や、啓発が非常に大事になってくると思います。それは前にも言いましたけれども、たくさんの情報を与えればいいとか、易しい言葉で書けばいいというもので伝わるものではないと思っています。必要なときに、必要な情報を、必要な分、多すぎもせず少なすぎもせず十分な量ということがとても必要だと思います。
 取材をしていて感じたことは、がんに限りませんけれども、本当にその知識、領域外の現状をほかの診療科の人たちは全然ご存じないということを、専門医の方たちが嘆いていました。私たち素人からすれば、お医者さんであればこの辺の最新知識ぐらいはみんな知っているのではないかと思うのですが、科が違うと知らなかったり、このことをご存じであればもう少し治療が進むのにと嘆いているお医者さんによく会いました。
 乳房再建の患者さんたちも、ネットに情報は滅茶滅茶あふれているのだけれども、不安なときに滅茶滅茶あふれた情報がどれだけあっても、何の安心にもつながらないということを嘆いてご自身で動いたりしています。
 いま、全国でがんのピアサポートとして、必要なときに、必要な人に、必要な分の情報をということで、適切な情報が入るということですごく頑張っていると思っています。せっかく研究成果があるので、今後はそういう形で私たちが賢い患者になっていく、もちろんマスコミもそういうことをしなくてはいけない一翼を担っていると思うので、私たちもやるのですけれども、その辺りがどんどん活かされるような実際の行動につながっていけばいいと思います。
○片岡国立病院課長 
 いまお話をされたことは大事なことだと思います。この研究の中でもシンポジウムを開催しておりますし、がん研究センターでも、広く一般の方にもわかりやすいような形で市民公開講座のようなこともやっています。そういう機会にどこまで十分できるかはわかりませんが、ただ伝えればいいというわけではなくて、わかりやすく伝えることが大事だと思いますので、その点は肝に銘じて取り組んでいきたいと思います。本日の委員でいらっしゃいます橋本先生の所の国立循環器病研究センターも、市民公開講座という形で、いま一生懸命取り組まれておりますので、がんに限らずそういう取組みは進めていきたいと思っております。
○矢島技術総括審議官 
 追加させていただきます。がんについては、国立がん研究センターの中にがん対策情報センターが出来ました。これはインターネットで最新の研究の知見も含め、患者さんだけではなく、医療従事者向けの情報提供もできるような仕組みを、国立がん研究センターで作っていただいています。それで十分かということに関しては、これからもう少しそういう所の充実というのはあるのかと思いますが、少なくともいまご指摘にありましたような形で、医療従事者にも最新・最先端の治療の方法をご理解いただくような取組みとか、拠点病院のシステムも作り、がんを診療する医療機関の中で、なるべく新しい情報を共有できる仕組みをということもやっています。
 ただ、ご指摘のようにもっと知っていただきたいということについては、大事なことですので、検討させていただければと思います。
○宮田委員 
 審査をなさった委員が同席しているので言いにくいのですけれども、この報告書は極めてインパクトの少ないものです。がん研究助成金事業というのは、我が国のがんの治療にとっては柱の事業だったにもかかわらず、通り一遍のことしか書いてない。例えばPARPインヒビターのことに関して言えば、日本では医薬品の開発は失敗して、海外が先行しているという事例があるのに成果の中に入っている。つまり、身びいきの成果ではないかと思います。本当に、こういう研究助成事業を、国民のために活用するとするならば、これは耳の痛いことも書かなければいけない。
 つまり、この報告書を読んで、次の制度設計をするときに、我々は何をやらなければいけないのか。1つだけ、政策評価をする手法を開発すべきだと書いてありますけれども、本来のがんの研究で、何が良くて何が悪かったのかということを明示すべき、というのが本来の報告書の歴史的な役割だと思っています。そういう意味で、これは大甘だと思います。
 この中で、日本の薬だけに関して言えば、抗がん剤が一体この研究費から生まれたのかということが1つです。日本でもイリノテカンとかいろいろ生まれていますが、そういう「日本発の抗がん剤の開発に対して、どれだけこの研究費が貢献したのか」という単純な字句でも評価はもっとできたはずです。我々は性格が曲がっておりますけれども、ジャーナリストから言うと、これは評価を避けたとしか思えないです。もうちょっと正々堂々とやってほしいです。
 NIHの2004年のときにものすごい圧力がかかりました。予算を縮小しよう、NIHの医学研究の予算に、国民は44ドル毎年投入しているが役に立たないではないかと。上院に呼ばれたときの彼らの言い訳のプレゼンなどを見ますと、2003年から2004年のがん死亡率は2年連続低下しています。高齢者の障害度の割合が10何パーセントも低下していますという形で、政治的なメッセージをきちんと送っています。
 これは、残念ながら厚労省と文科省にがん研究が股ざきになっていることからなかなか難しいのかもしれませんけれども、もし本気で厚労省が、研究開発が国民のために役に立つのだということを証明したいのであれば、厚労省の分野だけではなくて、文科省と共同で、その研究費が国民にどれだけ貢献しているのか、というような研究をやるべきではないか。そういうことをやっていれば、蓮舫のような仕分けに対しても対抗力を持てているので、その辺の行政的な怠惰だったのではないかと思っています。
 我々が国際競争力をいうにはあまりにひどいではないか。これをザッと計算すると、過去30年間で、先ほどアメリカの場合には44ドルと言いましたが、これは医学研究全体です。がん研究助成金に国民が負担したのは1人20円ぐらいです。でも20円を負担することが、どれだけ皆さんに意味があるのかということを証明する義務を行政官は持っていると思っています。我々の委員会はその義務を負っていると思っています。この報告書をシャンシャンで通したというわけには絶対にいかないと思っています。私は、極めて不十分であると議事録に残させていただきたいと思います。
○永井部会長 
 非常に成功した点と、もの足りなかった点の両方を書いておいたほうがよろしいだろうと思います。福井先生いかがですか。
○福井部会長代理 
 私も、基本的には宮田委員と同じスタンスです。ただこのような評価はいつ行うかによって、そのための準備、方法論、かける時間や人手、費用などがまず大きな問題となります。
例えば、アメリカではものすごい人数で評価をしています。統計学者や疫学者などが加わって、多額の費用をかけて評価をしています。いますぐに欧米のレベルで評価をすることはなかなか難しいというのは私も理解しますので、海外の動向をも参考に、その方向に是非持っていっていただきたいと思います。先ほど宮田委員がおっしゃったような、説得力のある数値を使って評価結果を出すのは、今すぐには無理だと思いますので、是非それができる方向で体制を整えていただきたいと思います。
○宮田委員 
 いま現実に無理なことはよくわかりました。厚労科学研究費の指定課題などで、そういうところの手技・手法について研究をしなければいけないのではないかと私は思っています。そういう意味では、研究費の政策的な評価といったところを、もう少し強化するような研究費も少しご考慮いただきたいと思います。
○矢島技術総括審議官 
 具体的に今すぐどういうふうにということは思い浮かばないのですが、少なくともご指摘を踏まえ、そのような研究を始めさせていただく。どういう形で始めるかはいろいろとご相談させていただきたいと思います。今回の指摘を受け、そのような政策的な評価でしょうか、そういうことも含めてどのような評価をして、研究の成果を評価していくのがいいのかということをご相談させていただいて、御指摘のような研究を始めるということで考えたいと思います。
○宮田委員 
 ありがとうございます。是非ご検討ください。何かがん研究者を全員敵に回してしまった可能性があるので余計なことを言いますけれども、この研究事業自体全く意味がないとは考えておりません。非常に意味があったことと、ちょっとまだ不足だったことを明示することが、報告書においては重要だというのが私の発言の趣旨です。
○福井部会長代理 
 先ほどの議事のところで、費用対効果を勘案した医療技術等の評価に関する研究・調査というのが、保険償還価格の設定とか、診療報酬との関連だけで行われるのかどうかを伺いました。ここに書いてある文章には、政策や研究の成果の評価にも使えるような字句がばらまかれているものですから、そういう方面にも研究費を出すという意図で書かれていると思ったのです。もし別のものであれば、国にとって必要なテクノロジーだと思いますので、進める方向で是非お願いしたいと思います。
○岩谷委員 
 委員の1人として言い訳と申しましょうか、ざっくばらんなところ、この報告書が皆様方の満足のいくような報告書ではなかっただろうと思います。しかし、現在のところで最大限努力をして、このようなところに達したということであります。この報告書が出ていったら、おそらくいろいろな所で、こんな報告書は一体何なのだ、というようなご批判を、特にマスコミの方々から受けるであろうということは、私たちも重々承知しておりました。このことを進めるためには、現在の体制で行えるところの限界があったということだけはご報告させていただきます。
 がんセンターの皆様方に大変なお時間をいただいて、参考資料の大部分は部長たちがまとめてくださったものであります。一般的な国民のデータをもっと使えば、もっとちゃんとした、もう少しわかりやすい評価ができたのだと思います。そのために、是非今後こういうために研究費を付けて、ちゃんと評価をする仕組みを作ってほしいということを、最後に付け加えたわけですので、その辺はご理解いただければありがたいと思います。
○相澤委員 
 研究効果の分析は、手法としては回帰分析などを使うべきではないかと思います。ただ、研究効果の分析にはコストがかかるという問題があります。データを集めて解析をしなければいけないし、その解析処理をする専門家もいなければいけないということが課題と思います。福井先生がご指摘のとおりです。
それから、研究なのですから、うまくいく場合と、うまくいかない場合が当然あります。分析をすると、ある面での効果は明確になります。そういうときに、うまくいかなかった研究について、反省することは必要なのだけれども、未知の世界だからやむを得ないということを皆さんに理解をしていただくことが必要なのだと思います。私は、そういう分析はすべきだと思うのですけれども、研究についての理解が得られてないと、コストの問題を別としても、やりにくい面があるのではないかという感じがします。
○金澤委員 
 私も一言だけ。宮田さんの鋭いご指摘は、残念ながらそのとおりだと思います。ただ、後のほうでおっしゃった、我が国が誇るべき成果も実はあった、それから日本の、決してがん研究だけではない、いわゆるバイオロジーの研究に対する非常に大きなインパクトがあったということも同時にあるわけです。それも本当は書いてほしかったと思うのです。
 大変お気の毒だったと思うのです。5人だけでこれをまとめるのはおそらく不可能だと思います。それをやらせたのは無理があったと思うのです。なぜ、そういうことをいま私がここで申し上げるかというと、がん研究だけではなくて、数十年かかって日本が営々として積み上げてきたことがほかにもいくつかあるわけです。難病対策にしてもそうですが、そういうものをこういう形で安易にと言ってはいけませんけれども、簡単な評価のような形にするのはあまり賛成ではないです。皆さん方がおっしゃっているように、きちんと準備をしてやっていただきたいというのが1つです。
 もう1つは、この報告は事後評価ですから、これをどう活かしていくかということを、本当は中でもっと述べていただきたかった。あるいは口頭でも結構ですが、それをいま述べてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
○永井部会長 
 事務局いかがでしょうか。
○西嶋国立病院課長補佐 
 この助成金事業そのものはこれで終了ということですが、いま現在がん研究についてはがん対策推進基本計画等の中で、どういうところに重点を置いてやっていくのかということが述べられております。例えば分野としては小児がんを含めた希少がんであったり、免疫療法であったりというように、具体的にどういうところに重点を絞ってやっていくかということの記載があります。いま現在は平成16年から始まっている「第3次対がん10か年総合戦略」に則って研究が進められていると思います。
○宮田委員 
 それが間違っているのではないかと思っています。本当に良い研究というのは歴史があるのです。突然できるのではないのです。皆さんの予算編成の話だと、新しいワーディングをして、過去の歴史を財務省に話すためでしょうけれども、違うのだということを強調する余り、施策がグラグラ揺れているように見える、あるいは言葉の永続性がないのです。
 これに期待したのは、そういう歴史をきちんと定着して、我々が何を学んで、次に何をすべきかという羅針盤になるようなものがほしい。トータルでこれは600~700億円使ったわけですから、国民の財産だと思っているわけです。いまの問題は、我が国の行政手法の病気なのです。つまり、過去のことを忘れたい、過去のことはすべて成功であったように終わりたい、という皆さんの宿痾がある。だから、そこを少しずつでいいから変えていっていただきたい。そうでないと、行政の連続と、我々の先人たちがこれだけ苦闘して作り上げてきた研究成果に対して失礼だというのが本日の感想です。感想ですからお答えにならなくて結構です。
○川越委員 
 もうほとんど意見が出尽くした中で同じようなことを言って恐縮なのですが、2つのことを申し上げます。1つは、評価すべきことが抜けているのではないかと思っています。私の専門の婦人科がんで言うと、絨毛がんというのは過去のがんになってしまったということがあります。これは胞状奇胎の管理が良くなって、そういう疾患が非常に減ってきたというのは非常に大事な成果なのです。これは、もちろん厚生科研の中でやられているわけですが、こういうものはしっかり拾っていただきたい。個々のことをきめ細かに評価していただきたいということが1つあります。
 2つ目は、50年かけてやった600億円でしたか、莫大な額を投じて行ってきた研究が、将来何の役に立つのかということをしっかり見据えなければいけないということで、この評価は非常に大事だと考えております。先ほど事務局から説明がありましたが、がん対策推進協議会で、がんの基本計画をどうするかということをいま議論していて、中間報告が出ることになっています。その中に私も委員として出ていて感じることは、死亡を減らすということはいいわけです。ただ、そこで出てくる方策の1つが予防ということで、できるだけがんが起きないようにするということ。もう1つは早期発見ということが出ております。
 予防というのは、喫煙を減らすというようなことに代表されるのですけれども、早期発見は検診率をアップすることが非常に大事だと、その委員会の中ではそういうまとまりになってしまっているのです。それに関しては資料の174頁を見ますと、がん受診率の推移というのが、今回の成果の中に盛られています。これでいくとほとんど変わっていないし、実際の問題として検診率をアップすることが、本当に死亡数を減らすことにつながるのかという問題提起になっているのだと思うのです。
 今後の基本的な計画を立てるときに、これまでやってきた50年の積み重ねがどれだけ意味を持つか、ということをしっかり評価していかなければいけないと思っております。今回はこのまとめで、時間的なこともあるので致し方ないかと思いますけれども、これで終わってはいけないと考えております。
○永井部会長 
 このままでよろしいのか、あるいはただいまのご意見を盛り込んで、せめて概要なり考察の中に意見を入れていただいて、最終報告書にするかどうかですが、事務局はいかがでしょうか。いまのご意見を少し盛り込んで、そうしたものを入れることは時間的に可能ですか。
○西嶋国立病院課長補佐 
 先生方から非常に貴重なご意見をいただきました。50年に渡る本研究事業については、非常に限られた資料の中でまとめさせていただいておりますことをご理解いただければと思います。先生方からご指摘いただいたことにつきましては、概要等で盛り込ませていただければと思います。もしよろしければ、その内容について座長にご報告させていただき、座長一任という形でどうかと思いますが、委員の先生方いかがでしょうか。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
(異議なし)
○永井部会長 
 それでは、そういう形で最終的に取りまとめさせていただきます。どうもありがとうございました。議事4の「ヒト幹細胞臨床研究について」のご審議をお願いいたします。大阪市立大学大学院医学研究科等3機関の申請です。2月21日に厚生労働大臣より諮問、2月22日付で当部会に付議されております。なお、東京大学大学院医学系研究科の案件は部会長代理の福井委員に議事進行をお願いいたします。事務局より説明をお願いいたします。
○谷再生医療研究推進室長 
 再生医療研究推進室長です。資料4の3頁からが大阪市立大学の申請書です。4頁に概要があります。今回から少しレイアウトを変え、操作のシェーマを概要の後ろにもう1部付けるようにいたしましたので、参考までに隣の頁も見ながらご検討いただければと思います。
 研究課題名は、「関節鏡下自己骨髄間葉系細胞移植による関節軟骨欠損修復」です。実施主体は、大阪市立大学大学院医学研究科で、研究責任者は石河先生です。対象疾患は、外傷性あるいは離断性骨軟骨炎による膝関節軟骨損傷となっております。使用する幹細胞の種類は、自己骨髄間葉系細胞です。
 実施期間及び実施の対象症例数です。病院長の実施許可の通知から3年間を被験者登録期間とし、5年間を研究実施期間とする。対象症例数は、細胞移植群として40症例、対照群として40症例を実施することになっております。
 治療の内容は、有効性の評価を行うこととしており、腸骨により骨髄液を採取し、大阪大学CPCにて骨髄間葉系細胞の培養を行った上で、必要細胞数まで増やした後、細胞浮遊液としてヒアルロン酸を加えて、関節内に移植するというものです。
 2課題目は16頁です。山口大学医学部附属病院からの申請です。研究課題名は、「低酸素プレコンディショニングによる単核球機能増強と血管再生療法への応用に関する臨床研究」で、第I 相試験となっております。
 実施施設及び研究責任者として、山口大学医学附属病院の岡先生です。対象疾患は末梢動脈閉塞性疾患、バージャー病です。ヒト幹細胞の種類としては、機能増加された自己末梢血単核球を使用する。
 実施期間及び症例数です。登録期間は、許可を得てから平成26年3月31日まで。観察期間としては、平成27年3月31日までで、7症例を対象と考えています。治療の内容としては、6カ月の観察期間で治療の安全性を評価することを目的としております。血液成分分離装置を用いて被験者の末梢血単核球を採取し、採取した末梢血単核球に低酸素状態のプレコンディショニング(2%の酸素濃度、24時間)を行った後に、取り出した細胞を血流の悪い下肢の筋肉内の注射で移植を行うものです。頁の都合で1枚めくったところにシェーマが載っておりますが、こういう流れです。今回は、末梢血のdCSF等は使わずに行うということです。
 3課題目は26頁です。1枚めくりますとシェーマが載っておりますので参考にしてください。27頁に概要が載っております。「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床試験」です。実施機関は東京大学大学院医学系研究科の宮園先生です。対象疾患は角膜上皮幹細胞疲弊症です。幹細胞の種類としては、口腔粘膜上皮細胞を使用する。
 実施期間及び対象症例数は、平成23年10月から4年間となっております。観察期間は、術後1年間、症例数は10症例を予定しております。
 治療の概要は、培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の有効性と安全性を検討するとして、患者の口腔粘膜を採取して、大阪大学未来医療センターへ空輸を行い、ディスパーゼ・トリプシン処理の後にCPCにて上皮細胞を培養いたします。フィーダー細胞としては3T3-J2を用いて培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製後、東京大学へ再度空輸を行い移植を行うということです。1年後に角膜上皮欠損のない面積を測定した後、有効性を評価するとなっております。
 本日は3課題について、審議へのご許可をいただきたいところですが、第1の大阪市立大学の分と、東京大学医学研究科については、双方とも大阪大学の未来医療センターのCPCを使用するということで多施設共同になっております。指針の中に書いてある、厚生労働大臣からの意見聴取等の委任という行為が許可されております。採取、調整及び移植又は投与の過程を複数の機関で実施するヒト幹細胞臨床研究において、総括責任者から(3)の申請内容に定める申請を受け、研究機関の長は、要するに総括責任者が所属する研究機関の長は、その他の研究機関の長の委任を受けて、複数の研究機関を代表して厚生労働大臣からの意見聴取をすることができるとなっております。
 今回少し足りないところとして、申請書類としては委任状の部分、申請書類の大阪大学分の申請書類のところは変わっておりません。研究計画の内容としては、統一のものを使用と思われますので、その部分が出次第審議を開始するということで、今回ご承認いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 大阪市立大学と山口大学の件については私が座長を務めさせていただきますが、この2件についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
(特に発言なし)
○永井部会長 
 特にないようでしたら、事務局の提案のように進めさせていただきます。東京大学の件は福井部会長代理にお願いいたします。
○福井部会長代理 
 東京大学からの計画申請書について、ご意見なりご質問がありましたらお願いいたします。
(特に発言なし)
○福井部会長代理 
 特にないようでしたら、事務局の提案のとおり進めることで認めたいと思います。
○永井部会長 
 この3課題については、このまま進めさせていただくことにいたします。議事5の「遺伝治療臨床研究に関する実施施設からの報告」です。事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 資料5の表紙をご覧ください。本日報告する内容は2件です。三重大学関係の変更報告届と、九州大学から提出された重大事態の報告書です。三重大学のほうは計画の変更報告書です。本臨床研究についてはここに書いてあるような課題名で、三重大学の珠玖先生の所で行われているものです。この研究については、3頁の上から2つ目のカラムに研究実施期間とあります。承認日が平成21年7月17日から4年間になっています。今回の変更内容については、4頁の下の変更内容欄から5頁にかけてです。研究者の氏名、基準、目標症例数という内容で、5頁にそれぞれ書いてあります。変更理由のところで、被験者の選択基準及び除外基準等については、より適切な被験者で実施するため、検査方法の追加、一部項目の削除・修正。研究の実施期間及び目標症例数については、現在までの投与症例数は3例、予定症例数の9例に達していないということで、1年延長するという内容になっています。本件については、審査の作業委員会の先生方にもお送りし、特段問題はないだろうという意見をいただいております。
 17頁は、九州大学からの重大事態報告書です。研究は「血管新生因子の遺伝子搭載非伝播型組換えセンダイウイルスベクターによる慢性重症虚血肢(バージャー病等)に対する血管新生遺伝子治療臨床研究」ということで、九州大学の前原先生の所で行われているものです。
 今回の重大報告については20頁の真ん中辺りに、重大事態の発生時期とあります。発生時期は、2011年12月25日、重大事態の概略としては脳梗塞、臨床研究薬投与3年5か月後です。経過については重大事態等の内容及びその原因のところに書いてあります。経過については20頁のいちばん下のほうの(3)で、この患者さんについては脳梗塞の後遺症があったわけですが、脳梗塞発生は1998年であり、除外基準には抵触しないと判断し、その上で研究に参加しました。経緯や流れについては21頁に書いてあります。臨床研究薬投与は2008年7月8日(平成20年)です。下のほうに2011年12月25日とあり、先ほど申しましたように投薬後3年5カ月で意識レベルが低下し、脳梗塞と診断されて入院したという内容になっております。
 その後の対応状況については22頁です。九州大学では、まず先進医療適応評価委員会にかけ、その後倫理審査委員会にかけました。最初のいろいろな情報については、厚生労働省にも一報は入れてもらっています。
 経過としては、動脈硬化の自然経過による発症であろうとする研究者の見解は妥当と判断された。「しかしながら」以下のところで、本症例のみならず、本研究薬の投与を受けた全症例について、動脈硬化の進展の観点から、動脈硬化病変のハイリスクとなる基礎疾患は今後も厳重に管理、コントロールされている必要がある。十分に注意して観察を継続という要請が出されたとなっています。2012年1月26日に、先ほど申しました倫理審査委員会のほうでも、それが妥当であるとされたものです。本件についても、これを検討した作業委員会の先生にも特段問題はないというご意見をいただいています。報告は以上です。
○永井部会長 
 ただいまの説明に対して、ご質問がありましたらお願いいたします。
(特に発言なし)
○永井部会長 
 特にないようでしたら、この件についてはご了解いただいたことにいたします。その他です。前回の科学技術部会において、ご意見をいただきました「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しに関する件です。その際にご意見をいただきました個人情報保護法の件について、事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究の倫理指針については、3月3日までパブリックコメントを募集しております。前回1月の当科学技術部会においては、同一法人内での個人情報保護の関係の話と、あとはIRBにいろいろな責任が持たされるということで、倫理的な判断がどのように行われていくかについて、情報共有をどう考えていくのかの件。あとは、国立がんセンターが指針開設前に、包括同意という言葉を使って研究を行うという発表をしているという内容についてお話があったかと思います。
 今回は、その中で同一法人内での対応表を持ったときの個人情報保護についての参考資料ということでご紹介いたします。ヒトゲノム・遺伝子解析研究における個人情報にかかわる3省委員会の主な点としては、解析結果などの遺伝情報は個人情報なのかどうか、というのを改めて議論しております。その開示については、個人情報保護法等やUNESCOの世界宣言なども検討し、今回のパブリックコメントにかけている案に整理されたものです。
 そのほか個人情報保護にかかわる個人的な点については、今回の見直しでは平成16年の整理を引き続き踏襲することとして、その項目はそのままになっている状況です。参考までに平成16年の検討を紹介します。
 資料6に紹介する内容については、平成16年改正の3省委員会により取りまとめられた資料からの抜粋です。こういう背景もあったということを頭に置いていただければということで情報を報告するものです。簡単にご説明いたしますと、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における個人情報の必要性について、個人情報保護法については、最初の○にありますように、政府は個人情報の性質及び利用方法に鑑み、個人の権利利益の一層の保護を図るため特にその適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報について、保護のための格別の措置が講じられるよう必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする、とされています。事業分野の実績に応じた措置を講ずることは認められているということですので、ガイドラインとか、医療の分野であれば別法が検討されるであろうという話もあります。
 2つ目の○を見ますと、個人情報保護法というのは、ここに書いてありますように、大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者が学術研究の用に供する目的で個人情報を取り扱う場合等には、学問の自由を損なってはならないという憲法の趣旨を踏まえて、各種規定が適用除外されている、というのが第50条第1項にあります。
 一方で、個人情報保護法のほかに、行政機関個人情報保護法と、独立行政法人等個人情報保護法があります。その機関や事業の公的な性格等に鑑み、国の行政機関、独立行政法人等(国立大学法人を含む)については、学術研究機関であっても、一定の適用除外はあるが個人情報の保護が義務づけられている。
 この3つの法律が絡んでいるということです。特に後者に絡むところもかなりあります。ここに書いてあるような遺伝情報に関しては、提供者の遺伝的素因を明らかにする可能性があり、その取扱いによっては倫理的、法的、社会的問題を招くおそれがあることから、個人遺伝情報を保護し、研究が適正に実施されることが重要であるという記載になっております。
 個人情報保護法の、平成16年当時の観点からの指針の見直しについては2のマル1にあるように、平成16年の見直しにおいて、研究機関も含めた個人、法人全体の長を最終的な責任者としてわざわざ整理することとなったことに対応するということです。そこでの同一法人内での連結可能匿名化の情報の扱いについては次の○に書いてあるような検討がされて、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法の解釈との関係から、最終的には当該情報を個人情報に該当すると整理した、とこの資料ではなっております。法人又は行政機関の長の命令により、監督下になる関係部門の責任者において、連結可能匿名化された情報と対応表を照合することにより、当該部門と他の部門の組織的な情報交換を完全に遮断することは難しいだろうという話があったということであります。
 「しかしながら」以下の項目は確かにあるという状況でしたので、これを報告するものです。この内容については、関係する消費者庁ないしは総務省のほうと再々度の確認を行っているところです。個人情報保護法関係の背景として報告するものです。あとの2つの点については、次回以降のところで、その中に関連する対応、又はがん研究センターの包括同意ということで公表された件についてはどのような背景なのかについて、説明に来ていただくとか、機会を持ちたいと考えております。以上です。
○永井部会長 
 ただいまの説明に対し、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。
○桐野委員 
 いつも気になるのですけれども、研究としてゲノムを扱う場合には、実名でこれを扱うことはあり得ない、まず普通は考えられないので、何かの連結されたラベルを付けて研究することになると思うのです。連結不可能匿名化をしたものは、一応考慮の対象外としますと、まず研究の対象となるのは連結可能匿名化されたものであると考えなければならないわけです。
 そうすると、連結可能匿名化というのは1種類なのかというと、実はどんどん進んでいて、普通直感的に考えれば、ここにある人の名前があって、それに対して研究者が鉛筆か何かで乱数表か何かでやって、こっち側に番号を付けて、それぞれに実名と登録番号等をやるかというと、そんなことはしないわけです。実際は、コンピューターの中のあるアルゴリズムが、名前、いろいろな情報から、あるいは全くランダムにある番号から次の番号を作るわけです。中には左から右には行くけれども、右から左には戻れないという方式もあるわけで、どんどん進んでいます。
 ですから、連結可能匿名化で対応表がなければ、これを個人情報とはみなさないというステートメントというのは、どういう意味があるか私には実際のところよくわからないのです。非常にしっかりした連結可能匿名化、例えば連結匿名化センターみたいなものが仮にあって、そこが銀行などで使っているような暗号を使って匿名化をやればかなり丈夫なわけです。そういうものであれば、当然これは個人情報ではないわけです。そういう方法を促進するような、つまり次のジェネレーションといっても、すぐ来ていると言ってもいいのですけれども、そういう時代のゲノム研究ができるような仕組みを、ここで今後検討するということですから、是非ご検討をお願いしたいと思います。
○宮田委員 
 よくわかりました。個人情報保護法で、要するに法人の長が管理責任を負う、それに合わせました。そうすると、国立病院の医療機構みたいな所だと、機構長が責任を負うのか、各国立病院の院長が責任を負うのかというと機構長が負うことになってしまいます。そうすると、それぞれの病院がいろいろあっても、要するに機構長の指揮下の1つの病院の中で対応表を持っていると、全部連結可能匿名化の情報が個人情報ではないという取扱いにはならないです。
 そういう意味で齟齬が起こっているので、実は今回個人情報保護法に合わせた結果、実際的なゲノムコホートとか、ゲノム研究というのはやりにくくなったという認識は、ここに置いておかなければいけません。というのは、次にどうせ改定するでしょうから、それをやるときに、ここに大きな問題を残した結果改定が行われたということは議事録になんとか記録しておきたいと思います。
○永井部会長 
 おっしゃるとおりだと思います。今回は、匿名可能の資料を遡って使用できることにもなりましたので、いきなりいくつかの改革というのはなかなか難しかったところはあるのですが、是非次回の検討課題としてご指摘いただいた点を記録しておいていただければと思います。
○相澤委員 
 個人情報保護法の解釈については、やや行きすぎた解釈がされているのではないかと思います。意見として、申し上げさせていただきます。
○永井部会長 
 この辺の解釈は、法律関係の方の間でも随分多彩である、多様であるということは我々もいまは認識しております。次回の改定のときには、より広範に意見をお聞きする必要があるのではないかと思います。ほかによろしければ、ただいまの件はご了解いただいたということで、本日の議事はすべて終了いたしました。事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 次回の日程については、委員の皆様に改めて日程、開催場所等をご連絡申し上げますのでよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 それでは、これで終了いたします。どうもありがとうございました。
I


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第69回厚生科学審議会科学技術部会議事録

ページの先頭へ戻る