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2012年1月25日 第68回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年1月25日(水)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(中央合同庁舎第5号館 17階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 今井委員 桐野委員 佐藤委員
末松委員 高杉委員 西島委員 野村委員
福井委員 町野委員 宮田委員 宮村委員
望月委員

○議題

1 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しについて
2 ヒト幹細胞臨床研究について
3 遺伝子治療臨床研究について
4 その他

○配布資料

資料1-1「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しについて(案)
資料1-2ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しの方向性について(案)
資料1-3「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直し案
資料2ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料3-1遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について【千葉大学医学部附属病院】
資料3-2遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について【岡山大学病院】
資料4-1ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会について
資料4-2ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料4-3ヒト幹細胞臨床研究に関する報告について
資料5遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
参考資料1-1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料1-2厚生科学審議会関係規程等
参考資料2-1ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会の設置について
参考資料2-2ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成13年3月29日)
参考資料2-3個人情報保護に関するガイドラインの共通化について
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料

○議事

○尾崎研究企画官 
 第68回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様にはご多忙の折、お集まりいただきお礼を申し上げます。本日は廣橋先生、岩谷先生、井部先生、金澤先生、橋本先生、松田先生、南先生の7名の委員からご欠席の連絡をいただいております。一部遅れている先生方がおられますが、現在、13名のご出席ですので、定足数を満たしている状態です。
 次に、委員の辞任についてご報告いたします。これまで委員をお願いしておりました森嶌治人委員より辞任したいとのご連絡がありました。これに基づき手続きを進めまして、現在の委員の定数は22名になります。繰り返しになってしまいますが、出席委員は現時点でも過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことをご報告いたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をいたします。机の上にお配りしております議事次第を見ていただくと、その半分から下に「配布資料」とあります。資料の番号だけを申し上げますので、ご確認のほうをお願いいたします。資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料2、資料3-1、資料3-2、資料4-1、資料4-2、資料4-3、資料5、参考資料1-1、参考資料1-2、参考資料2-1、参考資料2-2、参考資料2-3、参考資料3、参考資料4になります。資料の過不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。よろしければ永井部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 議事に入る前に、部会長代理の指名についてご報告させていただきます。部会長代理は廣橋説雄委員にお願いしておりますが、非常にご多忙で出席が難しいということですので、部会長代理をもうお一方選任させていただきたいと思います。よろしければ福井次矢委員にお願いしたいと思いますが、よろしいですか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 それでは福井先生、こちらにご移動ください。
○福井部会長代理 
 福井です。永井部会長をサポートする機会はあまりないとは思いますが、必要なときには全力を尽くしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
○永井部会長 
 では、議事の1に入ります。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針について」です。事務局よりご説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 説明いたします。当該議題関係の資料は、資料1-1、1-2、1-3、参考資料2-1、2-2、2-3になります。
 まず資料の概要を説明すると、資料1-1は今回の見直しについて、専門委員会での指針の見直し結果の概要をまとめたものです。資料1-2は、3省の合同の委員会で検討した項目と了解された見直しの方向性がまとめられているものです。資料1-3は資料1-2を踏まえまして、改正指針案に起こしたものを現行指針の項目と対照表にしたもので、これも3省合同の専門委員会で了解されているものです。ここをめくっていただくと、改正指針案が告示となりまして、真ん中あたりのゴシック体の部分がそれに当たります。また、細則とか注の明朝体部分については、3省の通知として出すことを考えているものです。参考資料2-1は、厚生労働省の専門委員会の設置の際に、当該部会に提出した資料になります。めくると、実際の3省合同委員会のメンバーの一覧があります。参考資料2-2は、現行のヒトゲノム指針です。参考資料2-3は、個人情報保護のガイドラインの共通化に基づく整理事項をまとめたものです。
 見直しの案は、資料1-1に基づいて説明していきたいと思います。1頁の1「ゲノム指針とは」をご覧ください。ヒトゲノム指針遺伝子解析研究においては、研究の過程で得られる遺伝情報が、提供者及び血縁者の遺伝的素因を明らかにするおそれがあることから、研究現場で遵守されるべき倫理指針として平成13年に、文部科学省・厚生労働省・経済産業省において、いわゆるゲノム指針を策定したものです。当該ゲノム指針の現在の内容については、資料1-1の4頁の別紙1をご覧ください。「主な内容」は、研究の適正な実施にかかる事項、提供者に対する配慮にかかる事項、個人情報の保護にかかる事項が規定されています。
 1頁の1にお戻りください。ゲノム指針については、平成16年に個人情報保護に関する法律に対応し、全部改正を行っています。この検討の際は、2「ゲノム指針の見直し」の1番目の○にあるように、個人情報保護法等の成立を受けた個人情報保護の視点からの見直しに重点が置かれ、研究の進展に対応した見直しは必ずしも十分でなかったということでした。その一方でゲノム指針については、近年大量の遺伝情報を取り扱う研究が実施され、より高速かつ簡易に遺伝情報を解読できるようになってきています。平成16年の改正の施行より5年が経過したことや研究の進展を踏まえまして、本年4月より先ほどの3省の専門委員会を合同開催し、指針の見直しを進めてきました。
 中身について、2頁の3「指針等を改正する主な事項(案)」をご覧ください。1つ目は(1)既存試料等の利用についてです。初めに匿名化の説明をいたします。通常ゲノム研究を行う場合には、いわゆる匿名化し、個人を識別できないような形で試料や情報が研究部門に提供され、研究が行われます。匿名化のやり方には2種類あります。1つは連結不可能匿名化です。これは提供者を識別することができないように、血液などの試料に付された個人識別情報を剥がして、さらに試料番号を個人識別情報に対応させる対応表を残さない方法による匿名化です。このような連結不可能匿名化された試料や情報は、対応表がなくなってしまうと個人を識別することができないので、個人情報に該当しないと指針で整理されています。
 もう1つは連結可能匿名化です。これは必要な場合に提供者を識別できるように、提供者の個人情報と新たに付された試料番号の対応表を残す方法による匿名化で、この場合、対応表がどこで管理されているのかで個人情報に該当するかどうかを整理してきているものです。連結可能匿名化された情報は、対応表を有している法人内においては個人情報に該当するとされ、対応表を別の法人で保有し、当該法人において対応表を有していない場合は個人情報に該当しないと整理しています。これらは、平成16年の個人情報保護などに対応するためのゲノム指針を全面改正した際に整理した考えに基づいているものです。
 このことを踏まえて、本来の(1)の既存試料等の利用の説明をいたします。この件については資料1-3の52、53頁の真ん中の指針改正案の欄の項目14が関係します。現行指針では既存試料、すなわち研究機関において当初の研究が終了した試料・情報は、その使用について同意を得ることを原則とし、同意を得られない場合には同意の内容に応じて定める区分に従い規定がされており、連結可能匿名化がされている場合は使いやすいような状態になっていますが、連結不可能匿名化されたものの場合は、使うためにいくつかの要件を付けています。今回の改正の方向性は、その使用の同意を得る原則は変わりませんが、同意を受けられない場合については同意の内容に応じて区分を定める整理を、ほかの疫学指針や臨床研究指針の試料との扱いの規定の構成に準じ変更し、また連結可能匿名化されており、対応表を有していない場合には個人情報に該当しないことを踏まえて、資料1-1の2つ目の○に記載した要件のみで用意するなどし、若干活用しやすく見直しました。
 資料1-1の2頁の2つ目の試料等の収集・分譲の在り方についてです。資料1-1の5頁の上の絵にあるとおり、現行の指針では研究機関において研究が終了したあとの試料を、いわゆるヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供する場合は、連結不可能匿名化をし、提供しなければなりませんでしたので、左の研究機関?は対応表をなくす形でバンクに試料等の提供が行われ、バンクから研究機関?に分譲される試料等も、連結不可能匿名化な状態の試料ということになりました。分譲を受けた研究機関?が、この試料等に関して追加情報がほしいということがあっても、その個人の方の追加情報に辿り着くことができないようになっておりました。今回の改正の方向性としては、追加情報の取得が可能な形での分譲をできるようにしてほしいなどの要請が多くありましたので、下の絵にあるとおり研究機関?において連結可能匿名化の状態とし、その対応表を提供しないことを前提とし、試料・情報の収集・分譲を行う機関を通じて、さらにほかの研究機関?に分譲提供することを可能とするようにしました。これにより、試料等の追加情報が必要ということであれば、内容に応じて提供するということの道を開きました。2頁に戻りまして、(2)はいま説明した概要を記載しています。資料1-3は、この部分は55頁の項目の15の(1)(2)などが関係しているものです。
 3つ目は(3)インフォームド・コンセントについてです。資料1-1の3頁をご覧いただきたいと思います。先ほどの2の方向性とすることもありまして、既存試料の利用の増加や既存試料をほかに提供していく場面が、これまで以上に増えていくことが考えられます。そこでインフォームド・コンセントを受ける際に、この改正の方向性にあるように、将来、他の研究機関に試料等を提供する場合やほかのゲノム研究に利用される場合を想定し、その可能性がある場合には、将来のゲノム研究にも試料提供することを説明事項等に追加し、提供者に説明し同意を受けるようにしているものです。この部分は資料1-3では、29頁の下の項目7の(3)、また34頁の山括弧の説明文書の記載に関する細則の下から3つ目の中ポツの項目が関係しています。また、当該事項の経緯は、資料1-2の46頁にも記載しておりますので、ご覧いただければと思います。資料1-2の見直しの方向性の検討にもありますが、当該事項の趣旨としては将来のあらゆる利用に関するインフォームド・コンセントに基づき、同意が得られているとしての試料等をゲノム研究に利用することについては、現時点では社会の理解を十分に得ることが難しいのではないかと考え、ほかの臨床研究の指針や疫学指針と同様に認められないとするが、いままで以上に弾力的な同意を取得できるようにというところで整理したものです。
 資料1-1の3頁の(4)遺伝情報の開示についてです。ゲノム研究の進展により、研究の結果として大量の遺伝情報が得られるようになってきているが、得られる遺伝情報の精度や確実性に欠けている場合も増えてきている状況がある。それを踏まえて、提供者の求めに対応する遺伝情報の取扱いを整理しております。改正の方向性にもありますように、個人情報の保護の考え方に十分配慮しつつ、ゲノム研究において得られる遺伝情報が精度や確実性に欠けており、その開示により提供者に精神的な負担を与える可能性があること、また、膨大な遺伝情報の開示が研究の実施に著しい支障を及ぼすおそれがあること等に配慮して、全部又は一部を開示しないことができる要件として、「研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれのある場合」を今回追加しました。併せてインフォームド・コンセントの提供を受ける際に、遺伝情報の開示の方針についても説明し、理解を得ておくことを新たに規定しています。資料1-3の関係では、遺伝情報の開示については36頁の下の項目8の(1)と、それに続く細則が関係するものです。インフォームド・コンセントでの遺伝情報の開示の方針を含めることについては、29頁の下の項目7の(3)にあるものです。
 資料1-1の(5)のその他について、まずは遺伝情報等の取扱いに対する安全管理措置について整理をしています。個人情報の取扱いは、資料1-3では2頁の目次の続きを見ていただきますと、第6ということで個人情報の保護に関する規定をまとめています。具体的事項は、資料1-3の55頁の下の項目6からになります。また、個人情報に該当しない匿名化された情報の取扱いについては、50頁の項目12及びそれに続く細則で明確化しました。
 資料1-1の(5)その他のゲノム研究の外部委託における遵守事項についても、新たに規定しました。個人情報のそれについては、資料1-3の58頁の下の「委託する場合に契約により担保すべき事項に関する細則」として、具体的に追加規定をしています。また、個人情報に該当しない匿名化された情報のそれについては、資料1-3の51頁の(2)に続く細則として、同様な項目を具体的に追加規定して、外部委託はこれまで適切な措置を講ずるということだけだったのですが、具体的に契約できちんと担保しましょうとしています。
 資料1-1の(5)、その他の3つ目の項目として、研究者や倫理審査委員会の委員に対する教育・研修等については、規定を新たに整理・追加等をしています。これについては、資料1-3の8頁の中ほどの項目(11)、20頁の中ほどの項目(8)、45頁の下の項目(7)で追加規定をしています。
 このほか、参考資料2-3をご覧ください。内閣府の示す個人情報保護に関するガイドラインの共通化の方針がありまして、それに基づく見直しも併せてしており、必要な項目を追加しています。見直しの結果の主な事項の説明は以上です。この内容について、ご審議のほどよろしくお願いいたします。また、今後ご了解いただければ、パブリックコメントの手続きその他を進めたいと考えますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございました。3省合同で進めてまいりましたゲノム指針の改正に関するご説明です。ご意見、ご質問はありますか。
○尾崎研究企画官 
 よろしいですか。今回のゲノム指針の見直し関係について、金澤先生からいくつか御意見をいただいておりますので、それをご紹介したいと思います。基本的には、今回見直しているものは、ヒトゲノムの解析の倫理指針ですが、ほかの臨床研究指針や疫学指針と一本化すべきではないかということが改めて意見として出されています。これについては、最初の委員会の設置のときに、この見直しにおいて、必要な項目やヒトゲノム指針に足りない項目については追加をしていくということで、対応しているものです。
 2番目は、包括同意という言葉をそろそろ認めるべきではないかという話もありました。包括同意については、いろいろ社会の中で使われていて、定義も諸々だということもありまして、定義は現時点では難しいだろうということがありました。先ほどもありましたように弾力的な同意をより認めることができるように、インフォームド・コンセントの文書で示すとか、インフォームド・コンセントできちんと説明をすることで対応するという内容になっています。
 3番目は、連結不可能とか連結可能、匿名化という言葉を、まだ今後とも使うのかということがありまして、もともとコード化や匿名化とすべきということで、こういう言葉でないとわかりにくいという話がありました。
 4番目は、ヒトゲノム解析研究をすると、その結果によっては遺伝カウンセリングの話も出て、遺伝カウンセリングのいろいろなシステムが現時点でできていないという話もありますので、その辺も引き続きよく考えるようにというご意見がありました。
 5番目は、今回は研究の指針ということですが、研究と医療を切り離して考えるのはおかしいのではないかと。研究を行うには、臨床の現場というか、患者とのコンタクトを取る現場との話が重要なので、研究者はデータを厳密に管理し、被験者を尊重して研究をすべきであるという話もありました。以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。ただいまの金澤委員のご意見も踏まえて、委員の皆様からご意見をいただきたいと思います。いかがですか。相澤委員どうぞ。
○相澤委員 
 研究されている先生方が、このような指針で、十分にこれから研究を進められるかどうかについてのご意見を伺いたいと思います。
○永井部会長 
 いかがですか。私はこの委員長もしていましたし、自分たちも研究をしております。研究者の研究をしたいという視点からいえば、まだいろいろな制約があるという問題があります。しかしながら、これは社会と協働して進めていかないといけない研究であること、特に、いろいろな倫理的な問題を生み出しがちであるということに留意が必要です。それから現実の体制と技術の進歩に、非常に大きな乖離がいま起こっています。そういう意味では、研究者の側からは不満がまだ残っていると思いますが、そこは慎重に進めていきませんと予期しない問題を生み出す可能性があります。まずはこの辺で今回の改正をまとめ、残された課題は、次の改正のときに対応したいと考えています。
○相澤委員 
 ご質問を申し上げた理由は、研究をするために、どういう環境が必要なのであるかを伺いたいと思ったからです。法律家からすると、研究のためにどのような法的な手当をすればいいのかを考える必要があるかと思います。今回の改正については、これで一歩前進ということで理解をさせていただきます。今後、法律家は研究の進展のためにどういうお手伝いができるかを考えていくのが正しい方向ではないかと思っています。
○永井部会長 
 もう1つは技術の進歩と申しましたのは、研究者がこういうことをしたいと思った以上のデータが、いま生み出されてしまうという大きな技術革新の時代に入っているということです。それに対する備えもしておかないといけないということだと思います。桐野委員どうぞ。
○桐野委員 
 永井先生の言われたとおりだと思いますが、金澤先生が言われたように、いまの問題については指針を一本化してわかりやすくするとか、匿名化というものをもう一歩進めた議論をすることがたぶん将来の問題になるだろうと思います。ただ、今回の改正については、これも永井先生が言われたけれども、かなり前進した内容で、研究者としては以前よりはやりやすくなったし、やりやすいということがある一方で、倫理的な規範をきちんと守れるようになっているのではないかと思います。
 ただ、確かに匿名化の問題は匿名化するときに、手作業で、AならばB、CならばDとやって対応表を作っていくことを想定しますが、現実にはそんなことはしないので、何かコンピュータを使ってやるわけです。それについては、もう既にさまざまな技術があって、一方向性の匿名化という方法を使えば、匿名化のときに使う関数とか匿名化の作業に使われるすべての情報がばれてしまっても、決してということはないですが、逆方向に戻すのは難しいという技術もあるので、このような匿名化をしさえすれば、これは連結不可能匿名化にほぼ近いので、そのようなやり方を将来はお認めいただければ、つまり個人の尊厳や個人情報を守るということをしながら、かつ研究が進むことになると思います。
○町野委員 
 桐野先生がいま言われたことは、例えばどういう場面で、どういう具合に現れてくるかをお教えいただけますと、相澤委員や私のように法律家のほうも少し考えやすくなるところがあります。4本ぐらいの改正の柱がありますが、連結不可能匿名化とかその問題というのは、いくつかのところで関係すると思いますが、研究のどの具体的な場面についてかをおっしゃっていただけますと。
○永井部会長 
 例えば第三者がコード表を管理しないといけないかどうかとか、同一機関では駄目ですということが今回の指針改正に含まれています。しかし、それは桐野先生がおっしゃったように、非常に高度な技術を使えば同一機関の中でも管理できるのではないかという意見もあります。
○町野委員 
 というのは、(1)(2)の両方に関係するということですか。
○永井部会長 
 そういうことになります。
○町野委員 
 (1)というのは既存試料の利用の問題ですよね。このところで連結不可能匿名化と。ある意味でいまのご説明ですと、同一の研究機関の中に対応表というかキーが保存されているときは、もう駄目だという話になる。連結可能ということになるのだというのが若干問題があるという話ですか。
○桐野委員 
 1回限りの研究であればこれでいいのです。ただ、コホートのように継時的に結果を追いかけていく場合は、患者からいただいた情報が入ってきて、それが匿名化されてこちらに出てきますね。必ず同じ患者の情報は、同じ番号で押していかないとわからなくなってしまいますが、それを簡単な方法でやるとすぐ逆行できてしまいますので、そこをきちんとやりさえすれば、同一機関の中でも継時的に、大量の、例えば何万人というデータを研究することができるようになるということです。
○町野委員 
 イメージは若干わかりましたが、基本は連結不可能匿名化にしなければ個人情報ではなくなる。要するに、しない以上は個人情報であるという前提とずっと捉えてきたのですが、そこがまず問題であることと、もう1つは個人情報であるとしても、きちんと管理されれば個人情報の侵害はないわけですから、その2つの点があまりにもタイトに、両方ともギチギチに考えられすぎているので、おそらくは法律の議論としても、今回、その点をもう少し考え直すことができたのではないかと思いますが、そこはいかがですか。
○永井部会長 
 最初に事務局から説明いただけますか。
○尾崎研究企画官 
 個人情報の関係については、今回の現行指針の第6に、その取扱いとかいろいろなものをまとめています。これは従来からですが、個人情報でないような匿名化された情報といろいろなものについても、それに準じた取扱いをするような規定になっていて、今回も資料1-3の50頁の「個人情報に該当しない情報の取扱い」で、これについてもここに書いてあるような内容で、適切な措置を講じなければいけないことになっていますので、個人情報的な管理は、個人情報に該当しなくても、それに準じた遺伝情報の取扱いを行うと指針上はなっています。
○町野委員 
 この問題をずっとやるわけにはいかないと思いますが、個人情報ではないものを個人情報に準じた取扱いをするというのは、かなり理解に苦しむところがあります。これは、個人情報保護の観点でそれに準ずるという理屈では絶対にあり得ないはずですよね。つまり、ここのところで問題というのは、個人情報をいかに保護するかの問題が1つ。提供された試料等を本人の知らない所で勝手に使っていいか、どういう範囲で使っていいかということが1つの問題として扱われているために、混乱が起こっているのではないかと前から思っているところなので、おそらく指針とか、これまでの考え方を全部見直さなければ検討できない問題だと思いますが、いま言われたとおり個人情報ではないものを個人情報に準じて扱うというのは、法律的に言うと全然意味をなさない議論です。
○相澤委員
 個人情報保護法の保護の対象でないものについては、個人情報保護法と調整を考える必要はないことは、町野委員のご指摘の通りです。
○永井部会長
 これからパブコメに入りますので、是非そのあたりのご意見をメールでお答えいただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 ほかに、野村委員どうぞ。
○野村委員 
 名古屋にいても、先端を行く研究者にとってはガチガチに固められている指針というのは研究が進めにくいという声も聞いたりはしていまして、それの研究が進みやすいような改正の仕方というのは必要だとは思いますが、素人の側から言わせていただきますと、遺伝子研究とかいう形になってきますと、患者にとってはものすごく先の出来事になるかもしれない研究であっても、話を持ちかけられて、自分の情報や試料、体の何かを提供するということは、もしかしたら自分の病気でも治るのではないかという期待を、とても抱くと思います。医師と患者との関係は、そうはいっても対等ではありませんので、そのあたりで、これは意見ですが、先端の方は別として、一方で指針が軽くなることでやりやすくなることによって、結構安易な研究デザインで、結局研究を失敗しましたと言われたときに、患者にとっての落胆は非常に大きいものがあることも、関係性が対等でないということからも起きてくることは、どうしても頭に置いていただきたいなというのが大きな前提としてあります。
 それで私が気になるのは、開示しない規定が、またさらに追加された。遺伝情報を提供するときに、開示を希望している場合は開示しなければいけない。開示しないことについて、先ほど少し説明をいただきましたが、条件がまた1つ、「当該研究を行う機関の研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれ」というのが新しく追加されたということ、知る権利を制限するということを新たに追加するということの必要性、というのをもう少し具体的に詳しく教えていただきたい。
 あとは、いま意見として言いましたように、対等性ではないということと、病気を治したいという患者の期待から、インフォームド・コンセントが本当に適正に行われないと、インフォームド・コンセントの撤回後の扱い、研究成果の扱いについても今回改正がありました。そのあたりも必要な改正かもしれないのですが、どうしてもお世話になっているから同意しなくてはみたいなプレッシャーがある中で、同意したあとに撤回するというのは、簡単に考えると、相当な信頼関係の崩れがあるような気もしたりします。その際に、でも、研究成果はこちらのものだよみたいな話がどんどん緩くなっていくと、インフォームド・コンセントを取ったもん勝ちみたいになってしまうところ、それが、どこまでルーズになっていくかが心配なところはあります。やはり関係性が対等ではないということが、前提にあるかと思います。
○永井部会長 
 開示しないことの問題については相当時間をかけて議論しました。先ほどの相澤委員からのお話の中でお答えしましたが、技術の進歩によって、読まれるシークエンスの塩基配列、遺伝子の情報が短時間で極めて膨大な量が出てまいります。数万頁・数千冊という量です。それが、必ずしも配列の正しい情報ではないという問題があるわけです。不確実な情報が大量に出てくる時代になってしまって、それを整理してお渡しすることの大きな技術的な問題、時間的な問題、誤った情報をお渡ししてしまうかもしれない問題。こういうことを含めて、開示については、よく被験者と相談いただきたいということが背景になっています。
○野村委員 
 それについてはよくわかりますが、この一文が研究機関に都合よく解釈されていかないかが心配というのはあります。
○永井部会長 
 そういう意味で、事前のインフォームド・コンセントが非常に重要ということだと思います。
○尾崎研究企画官 
 遺伝情報の開示の部分は、資料1-3でいうと36頁の項目8から続くところになっていて、基本的に従来の現行指針と同じように、開示を希望している場合には原則は開示を維持としています。ただし、しなくてもいい場合を項目として追加拡充していますが、基本的にはいま座長がおっしゃったように、インフォームド・コンセントの時点で遺伝情報開示の方針について十分に説明をすることに、今回の規定上なります。それは、資料1-3の29頁の真ん中の7のインフォームド・コンセントの(3)で、遺伝情報の開示の方針を、前もって十分説明してくださいというところにあります。インフォームド・コンセントのいろいろな文書については、研究計画書の中の一部ということですので、もちろんインフォームド・コンセントはきちんとされているかという、現状はいろいろあるかもしれませんが、それらのものについては、提供を受ける機関の倫理審査委員会に諮られて、その結果を受けて研究機関の長がその研究を行ってもいいかどうかを判断するという手続きになります。この流れは、基本的には変わっていません。
○宮田委員 
 ここで細かいことを議論する時間もないと思いますが、全般的に今回の指針に関しては、これから大量に始まるであろうゲノムコホートみたいなものに対応した指針にはなっていると思いますが、ただ、どうでしょうか。先ほど金澤委員からのご意見にもありましたが、包括同意とか個人情報の再定義みたいな本質的な問題を、今回の改訂では議論できていなかったというのが残念だった。たぶん、我々はこの委員会を作りますよというご報告を受けて、それではやってくださいというような合意はしたと思います。そのときに、今回の指針に関してはこういうことを検討してくださいというようなお願いをすべきだったのではないかと思います。こういう暫定的改革を進めていって、現実に対応させるのはガイドラインだと。これは法律ではないからいいと思いますが、その分、何が起こったかというと、曖昧さが増した。包括同意は認めないぞと言いながら、将来の研究に関してきちんとインフォームド・コンセントすれば、かなりの包括的な同意が取れる。だから、私はいまの段階のこのガイドラインの姿としては、やむを得ないと思います。
 ただし、お願いしたいことが2つぐらいあって、1つはガイドラインを委員会に設定するときに、もう少し大きなことを議論してくださいと。今回、それが実は議論できませんでしたということも含めて、理由を我々が知っていると、次のガイドラインの改訂のときに、出来の悪い増築の旅館みたいな、訳の分からないようなガイドラインになることは少なくなるだろうというのが1つです。今回に関して言えば、包括同意というのをどう考えたのかというのを我々の頭で整理しておかなければいけないと思っていますし、先ほど町野先生とか相澤先生がおっしゃっていた個人情報と非個人情報の区別みたいなこと、つまりDNAの全塩基配列というのは究極の個人情報なのか、ただの医学的な検査値に過ぎないのかという、もう少し根本的な議論を、我々はここでやるべきだったというのが1つの反省です。
 もう1つの問題は、そうなると倫理委員会というのはとても重要になります。実際のインフォームド・コンセントの作り方とか、そういったことに対する倫理委員会の正しい判断が、全国、それで、ほぼ同じような判断がなされるということが重要になりますので、そういう意味では、ここに倫理委員会の規定がきちんと明確にされたことは評価したいと思いますが、しかし、倫理委員会は孤立しています。ローカル。ですから、全国でどういう倫理的な判断がこのゲノム指針によって行われたのかという調査・研究を厚労省がやって、それを倫理委員会の先生方にフィードバックするシステムを作ることによって、いまの日本における倫理審査の相場観を、是非作るような仕組みを作っていただきたいと思います。これが2点目です。
 3点目は、後の幹細胞のところでも議論があると思いますが、例えば、国立がん研究センターというのはこの指針の改訂の前に、包括同意という形でゲノムの解読をやるぞといって資料を集めていますよね。そうすると、この指針というのはいったい何なのか。これはガイドラインですから、皆さんに参考にしていただきたいということでしょうけれども、そういうような革新的なことをやられて、先導的な研究をやっている研究機関のお考えを我々も知りたいし、もう1つ、周知させる努力を厚生労働省がどこまで責任を持ってやるのかも重要になるのではないか。特に、この次に、たぶん議論される幹細胞などでは、知らない、あるいはこれが幹細胞のガイドラインに適合しないというか対象ではないという誤った認識が、結構な研究者においてあることがわかってしまいましたので、ゲノム指針に関しての3点目のお願いとして、みんなにわかっていただきたい。それも、わかるのは医師とか研究機関は当然ですが、参加する患者でもわかるような周知の方法も努力することが必要かと思っています。次回の開催のときは、是非抜本的な議論をさせていただきたいと思います。以上です。
○永井部会長 
 最初の点についてお答えいたします。個人情報等の関係です。これは相当議論しました。個人情報保護法のほうが上位にあるということで、ガイドラインではそれを超えることができないという結論になりました。もし、その問題を提起されるとしたら、ガイドラインよりももっと上部の検討部会あるいは法律改正を含めて議論されないと、残念ながら対応できません。これは検討部会、委員会の中での共通認識です。いろいろな関係者と、相当な時間をこの問題にかけたことはご了解いただきたいと思います。
○宮田委員 
 わかりました。ただ、1つだけ教えてください。個人情報保護法にゲノム情報とかDNAという文言はありましたか。
○永井部会長 
 ゲノム情報は、個人情報にかなり近い情報であるという認識になったということです。
○宮田委員 
 だから、そこの議論を抜本的にもう1回やりたい。
○永井部会長 
 かなり議論はしたのですが、残念ながらそれ以上踏み込めませんでした。
○尾崎研究企画官 
 個人情報の関係については、基本的には、前回の改正のときに十分検討したという前提で検討をしています。ただ、遺伝情報というものがどういう扱いになるかは、永井先生が言われたようにいろいろ検討しました。その中において、出てきた解析結果としての遺伝情報をどうするかは、実際の3省の委員会とか消費者庁にも聞きつつ検討をした結果としては、このようなことになったものです。また、インフォームド・コンセントの包括的なというか、そこについては、一応議論の経緯としてはいろいろな主要なものは資料1-2に、こんな考えでやりましたということで書いているつもりなので、資料1-2のインフォームド・コンセントの同意に関わる46頁以降が、議論の流れと結果であるということになります。
○宮田委員 
 そこはうまく整理されていて、対応表という概念が明確になっていますよね。遺伝子配列が個人情報なのか、対応表が個人情報なのかという議論を、もう少ししたほうがいいような気がします。それは、あとの宿題で。
○尾崎研究企画官 
 倫理審査委員会の御提案の調査研究の話については、今後また検討していきたいというところです。
 この指針を出したあと、まだ決定しているわけではありませんが、一応我々としてはここで了解を得られて、手続きが進めばパブコメを取るということですが、3省の中での話合いとしては説明会を開こうかという議論もしています。
○宮田委員 
 私たちメディアにいると、何回言ってもなかなか情報が伝わらないので、相当な努力が必要だと考えてください。ですから、説明会は絶対必要ですし、もっとわかりやすい、ホームページでの開設が必要になると思います。
○永井部会長 
 Q&Aを相当充実させないといけないだろうということで、議論しています。ですから、是非次回のこの改正のときには、個人情報保護法を所轄している関係省庁と一緒に議論する必要があるのではないかと思います。よろしいですか。今井委員どうぞ。
○今井委員 
 非常に綿密にいろいろ議論されて、ここまで来たことは大変だったと思いますが、表現として言えないというか言いにくいのですが、まず質問として、国際的にどれぐらいの厳しいレベルに日本の倫理指針というのはあるのでしょうか。というのは、倫理指針のあり方の部分でガラパゴス化しているような気がしないでもないです。以上です。
○永井部会長 
 一応、外国の状況も調べていただきましたが、私自身は特にガラパゴス化しているようにも思えませんでした。ヨーロッパの状況を聞きましても、イギリス、ドイツ、イタリア、極めてさまざまです。それぞれの国が、それぞれの方向性で検討しています。そういう状況を見て検討しましたが、さほど日本が特異的なガイドラインを作っているようにも思えません。アメリカの状況も同じだと思います。ですから、インフォームド・コンセントの位置づけが重要になってくるということだと思います。
○今井委員 
 インフォームド・コンセントの重要性が世界各国と日本で、非常に特異な感じがします。日本の場合には、先ほど野村委員からもお話がありましたが、医師に言われたら、患者としては付き合わなきゃみたいな話で、そこに既に差ができてしまうという形です。諸外国の場合は、そこに経済活動が云々みたいなことが重なってくるところには厳しいルールが敷かれていますが、研究のために関しては、もともとが対等で、断る体制があるのも事実だと思いますが、そこで違っています。そうすると日本の研究者たちがスタートラインに立ったときに、それだけの枷を負っていると、先へ進むときに不利になってしまうのではないかなと思います。その不利になるなり方が、要は風俗、習慣の違いかなみたいなところがあります。実は、細かくこれだけ個人情報保護法として、ここで議論されているけれども、何か問題が少しすり替わっているのかなという気もします。
○永井部会長 
 ヒトゲノムの指針でできる範囲ということにどうしてもならざるを得ません。先生のおっしゃったことは大きな話ですので、今後の見直しの際に検討すべきと考えております。
○永井部会長 
 そろそろ時間なので、町野委員、最後にどうぞ。
○町野委員 
 いろいろ申し上げたいことはありますが、先ほど永井部会長が言われたことですが、個人情報保護法が残念ながら上位にあると言われましたが、これは当然上位にある話で、個人情報保護法の意義がこうであると言われているところに、かなり問題があるのではないかと思います。そして同時に、この指針の上位にあるというか、法律のどの部分がそちらに、直接の適用ではないですが、その投影として考えられているわけですが、個人情報についてはその部分だけですよね。それ以外の試料の利用とかインフォームド・コンセントの内容等については、法律は沈黙していると考えて差し支えないと思います。だから、それをいわば自己規制でやっているかなりの部分があるので、おそらく個人情報保護法の解釈についてもそういうところがあるだろうと思います。不必要な、おそらくは理由のない規制をしているのではないかと思われるところがある。その理由がないというのは、研究者のご意見を聞いてみて、こういうところに問題がある。どうして、これを規制しなければいけないのですかという問題が生じたときに、きちんと説明できるものがないのではというところがいくつかあるのが基本的な疑問です。
○永井部会長 
 この検討会のメンバーには法律家の方も入っていらっしゃって、その点は原則遵守でした。そこが研究者側も論戦で苦労したところです。ですから、是非、次回はいろいろな考え方を持っておられる法律家の方にご参加いただきたいと思います。
とりあえず、今回はこれでパブコメの手続きを進めたいと思いますが、そこはご同意いただけますか。
                (異議なし)
○永井部会長 
 ありがとうございます。時間の関係がありまして、先へ進みます。
 ヒト幹細胞臨床研究実施計画の審議です。京都府立医科大学、(財)先端医療振興財団先端医療センター及び大阪大学医学部附属病院の件につき、作業委員会の検討の結果を、事務局から説明をお願いいたします。
○谷再生医療推進室長 
 ご説明させていただきます。今回は4件の申請の検討結果がありますので、ご審議をお願いしたいと思います。
 資料2の2頁をお開きください。第1課題の関節軟骨病変に対する自己滑膜間葉系幹細胞由来三次元人工組織移植法ということで、大阪大学から申請が上がってきています。使用幹細胞は、滑膜由来の間葉系幹細胞です。対象疾患は、外傷性膝関節軟骨損傷となっていて、申請が平成23年6月9日です。
 実施期間及び対象症例です。ちょっと誤植がありまして、「機関」になっていますので修正をお願いいたします。3年間を登録期間として、研究実施は5年間、対象症例数は6例です。研究内容は、滑膜切除術により取り除いた滑膜組織をCPCにてまず単層培養して、1~2週間後にピペッティングによる物理的刺激を加えて、立体的な人工組織片を得た上で、この組織片を整形して軟骨損傷部位に移植するということです。我が国では、広島大学がアテロコラーゲンゲルなどを用いて三次元培養を行っていますが、軟骨様組織を得て非常に良い結果を得ているということです。
 審議の内容は、3頁に少し概略をまとめたものをお付けしました。概要の流れは、同資料の34頁に載っていますのでご参照ください。審議としては、平成23年7月26日に、三次元人工組織について、使用予定のコールドランをやっているのかといったものについての質問。細胞培養での継代中の増殖変化はないか。あとは、同意文書等が少し難解なところもあったので修正を指摘しています。その回答としてはコールドランをやったこと。継代中における増殖特性の特異性は特段見当たらない。あとは、同意文書について修正がかけられたということで、平成24年1月に行われた審査会で意見がまとまりました。
 資料2の33頁をお開きください。34頁に概要がありますが、骨髄由来単核球を用いた脊髄損傷に対する第?相、第?相試験として、北野病院から申請が上がっています。使用幹細胞は自家骨髄単核球で、対象疾患は受傷後3週~1年の脊髄損傷となっています。実施期間は、登録期間として試験開始から2年間、10症例を目指してやるということです。6カ月間の経過観察で治療の安全性、有効性を評価することを目的として、局所麻酔下により腸骨より骨髄液を100ml採取して、比重遠心法にて単核球を分離します。腰椎穿刺の手技によって脳脊髄液を2ml吸引後、骨髄単核球を含む液を髄液腔に注入するといった内容になっています。
 議論の内容は、4回の検討がされています。まず平成23年7月の検討では、投与部位を、損傷部位に関わらず一律でよいのかという指摘に対して回答を求めました。平成23年10月12日の第17回の審査委員会で、自然経過と比較して、既に行われた培養自家骨髄間質細胞移植による治療の経過が優れているかどうか、というところの優位性についての質問がありました。あとは、治療期間の設定が適切であるか。というのは、受傷後が3週間~1年ということで、急性期を過ぎたあとの部分が含まれているので、こういった部分についての指摘がありました。指摘に対しては、それぞれ回答がありまして、安全性の担保というよりも、安全性がきちんと確保できるかといった内容でのチャレンジということになりまして、議論がまとまったところです。
 66頁をお開きください。今度は、先端医療センターの出している資料と同じ多施設共同ですが、今回は2つの機関から上がってきているものです。難治性角結膜疾患に対する培養自家口腔粘膜上皮シート移植に関する臨床試験ということで、実施施設は京都府立医大と101頁に載っている先端医療センターからの申請です。それぞれ、研究者が共同して行うことになっています。対象疾患は、難治性の角結膜疾患となっていて、細胞の種類は口腔粘膜上皮細胞を使用します。実施期間は平成26年9月30日まで、30症例を目的にやっています。
 治療内容は、患者の口腔粘膜を採取して、先端医療センターに移送後、CPCにてディスパーゼ・トリプシン処理の後に羊膜基質上で上皮細胞を培養します。フィーダー細胞としてはNIH3T3を用いて、培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製します。京都府立医大に移送したあとに手術室にて移植を行い、半年後の視力回復・改善あるいは上皮欠損の修復あるいは眼表面癒着解除等の程度を見て有効性を評価すると言っていて、培養が先端医療センターで、患者への手術は京都府立医大で行うというものです。
 68頁は審議の内容の返答が載っています。平成23年10月12日の第17回の審査会において一度目の審査、平成23年12月19日に二度目の審査を経て意見がまとまりました。第1回で、搬送のシミュレーションを実際に行ったのかという指摘に対しては、きちんと東京-神戸間における上皮シートの異常がおきていないことを確認する作業をしていただきまして、ある程度のヴァリデイションは取れたということです。また、羊膜の安全性の疑義について、採取と品質管理は関連指針及び基準を満たしているかということについては、必要な検査は組織バンクにて実施されているとの回答を得られていますので、ある程度安全性も確認ができているのではないかと思われます。あと、培養に用いられる試薬については、臨床研究に適した試薬にしていただいています。その結果、このようなところです。
 次は、内容は同じなので概ね割愛させていただきますが、101頁に同様の研究で先端医療センターからの申請が上がっています。これは2施設30症例ではなくて、両機関で合わせて30症例です。作業としては、こちらのほうが口腔粘膜採取後のNIH3T3を用いた培養を行うことになっていますので、指摘項目も同様のものの指摘が行われたと。回答も同様に医療機関からの回答を得て、審議の結論を得たということです。以上です。
○永井部会長 
 ただいまの説明に、ご意見、ご質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 ただいまの説明を了承と扱わせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 続いて、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会です。事務局より説明をお願いします。
○谷再生医療推進室長 
 一部資料が飛びまして申し訳ありませんが、まず資料4-1をご覧ください。ヒト幹細胞臨床に関する審査委員会におきましては、各有識者にご出席、ご参加いただきまして検討していますが、近年、安全性や対象患者数の有効性、今後の実効などの課題が出てきておりますので、そういった点でご審議いただき、ご了承いただきたいと思っています。
 1枚おめくりください。委員の中に新たに生物統計の専門家の委員に複数名ご参加いただきたいと思っています。背景としましては、一部高度医療等はヒト幹指針を通した後の研究課題にもう移行しつつありますので、臨床研究に引用されている非臨床研究の動静や、生物統計に根差して議論する必要があるのではないかということです。また、臨床研究計画における患者数の設定においても、やはり、5症例でいいのか、それとも30症例なのかといった点も含めて検討が必要ということで、ご了承いただきたいとしてご審議をお願いいたします。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。これはかなり必要性があると考えられますので、よろしければご了承いただきたいと思います。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 ありがとうございます。
 では、議事3にまいります。遺伝子治療臨床研究実施計画です。千葉大学医学部附属病院と岡山大学からの申請です。これは1月4日に厚生労働大臣より諮問され、同日当部会に付議されています。説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 これらは、このような申請があり、今後作業委員会に移して検討することについて了解を得たいという項目になります。
 資料3-1、千葉大医学部附属病院の件から説明します。千葉大医学部附属病院から申請があり、11月7日に受け付けた遺伝子治療臨床研究指針に基づく遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び、いわゆるカルタヘナ法に基づく遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程の承認申請です。まず、申請された遺伝子治療臨床研究実施計画の概要を説明します。当該遺伝子治療臨床研究実施計画については、申請後に、複数の有識者の意見を踏まえて、新規の遺伝子の導入、新規の疾患を対象としていることから、医療上の有用性及び倫理性について厚生科学審議会の意見を聞くことが妥当とされたものです。
 3頁をご覧ください。研究の課題名は切除不能悪性胸膜中皮腫を対象としたNK4遺伝子発現型アデノウイルスベクターによる臨床研究です。総括責任者は千葉大学大学院医学研究院の巽先生です。
 6頁の下から7頁にかけて、研究実施計画概要書の研究の目的欄、対象疾患及びその選定理由欄がありますのでご覧ください。NK4遺伝子によって作られるNK4蛋白質は、HGF(hepatocyte growth factor)という肝細胞増殖因子を分解してできる分子で、HGFとその受容体でありますc-Metとの結合を阻害し、HGFの持つ血管新生作用を阻害することが知られているものです。本研究では、HGFがその受容体に結合することによるシグナル伝達や血管新生作用が、その進展に関与している悪性胸膜中皮腫に対して、NK4遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを使用し、安全性を中心に有効性や抗腫瘍効果も検討するものです。本研究では、悪性胸膜中皮腫のうち、切除不能で化学療法無効あるいは化学療法拒否のものを対象とします。悪性胸膜中皮腫は、体腔内面を広く覆う漿膜に発生するもので、疫学的研究から、アスベストばく露が主因であり、長期の潜伏期間を経て発症し、多くの場合、患者は高齢で呼吸機能が低下している例が多いと記載されています。また、アスベストばく露後の当該疾患の予防法は知られておらず、簡便かつ有用な診断法に乏しく早期発見が困難であり、さらには有効な治療法が確立されておらず、現実の臨床症例の多くは進行例で、治療の選択肢は限られていると記載されているものです。
 10頁の実施計画欄をご覧ください。投与方法は、胸腔内に穿刺針を用いて、腫瘍部位に近い部位にNK4発現アデノウイルスベクター調製液を生理食塩水に混和して投与するものです。試験期間は4週間。第1日目に1回投与し、4週間後までに安全性について、また、4週間後並びに試験終了後1か月に抗腫瘍効果を判定するものです。研究の症例数は合計で9例です。低用量、中用量、高用量による投与量増量試験を行い、主要評価項目は安全性の評価だと記載されています。フォローアップは投与開始後1年が経過するまで2カ月毎に行うとのことです。19頁から42頁が、当該研究のインフォームド・コンセントに関する文書です。22頁の図4には、アデノウイルスベクターを被験者の方にどのように注入するかの絵が載っています。
 当該遺伝子治療臨床研究の実施計画については、科学技術部会の下にこの計画を検討する作業委員会を設け、本部会での今回の議論も踏まえて、主として科学的事項の論点整理を行っていただくことになります。作業委員会のメンバーは通常どおり、今後、部会長に相談、了承の上決定するとして、現在準備を進めています。
 引き続いて、同じ資料の43頁から、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法に基づく、当該遺伝子治療臨床研究実施計画に係る第一種使用規程の承認申請です。申請書と、それに添付して提出することになっています生物多様性影響評価書を含めています。
 まず、47頁の第一種使用規程承認申請書の遺伝子組換え生物等の種類の名称欄をご覧ください。遺伝子組換え生物としてこの対象となるものは、ここに記載された挿入遺伝子を搭載したウイルスです。その下、第一種使用等の内容欄をご覧ください。ここでは、使用、保管、運搬、廃棄、これに付随する行為としています。次に、第一種使用等の方法欄をご覧ください。使用等の具体的な方法が(1)から(6)まで記載されています。例えば、(5)では、個室管理期間中の被験者の排泄物は投与後7日間、あるいはウイルスの排泄がなくなるまで、バイオハザードとして取り扱う規程としたい旨が記載されています。
 今回申請された第一種使用規程の承認に当たっては、カルタヘナ法により、主務大臣は学識経験者の意見を聞かなければならないとされており、これに基づき、既に科学技術部会の下に資料83頁にある生物多様性影響評価に関する作業委員会が設置されていますので、そこで当該規程の確認をするものです。以上のとおり、2つの作業委員会の検討が完了した後に、再度、科学技術部会での確認となります。1件目の説明は以上です。
○永井部会長 
 ただいまの説明に対して、ご質問、ご意見をお願いします。いかがでしょうか。NK4というのは血管新生作用を持つ増殖因子HGFの部分ペプチド断片で、これを投与しますと、HGFの作用を抑えることができるものです。それで中皮腫の治療を行うということです。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。それでは、この件についてはご了解いただいたことにいたします。
 では、続きまして、岡山大学病院からの申請について、説明してください。
○尾崎研究企画官 
 岡山大学病院については資料3-2をご覧ください。岡山大学から申請があり、11月15日に受け付けた文書について説明します。
 申請された遺伝子治療臨床研究実施計画の概要を説明します。これにつきましても、複数の有識者の意見を踏まえ、厚生科学審議会の意見を聞くことが適当とされたものです。まず、3頁をご覧ください。研究の課題名は頭頸部・胸部悪性腫瘍に対する腫瘍選択的融解ウイルスTelomelysinを用いた放射線照射併用ウイルス療法の臨床研究です。総括責任者は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の藤原先生です。7頁から8頁にかけて、研究実施計画書の研究の目的欄、対象患者及びその選定理由欄をご覧ください。Telomelysinは、ヒトアデノウイルス5型を基本骨格とし、テロメラーゼ活性依存性にがん細胞で増殖し、その結果、細胞死を誘導する腫瘍選択的融解ウイルスと記載されています。テロメラーゼ自身は細胞を不活化する酵素であり、一般的に正常細胞ではテロメラーゼの活性、働きは抑えられていますが、悪性腫瘍の細胞では80-85%で活性の上昇が認められるとされています。また、ウイルス自体は本来ヒトの細胞に感染、増殖し、その細胞をさまざまな機序により破壊する性質を普通に持っています。今回のTelomelysinはテロメラーゼ活性依存であるため、多くのがん細胞で増殖し、細胞死を誘導する抗腫瘍活性を有し、正常細胞での安全性は確保される、あまり働かないと記載されています。また、前臨床研究により、Telomelysinの腫瘍内投与と局所放射線治療の併用効果が確認されていると記載されています。
 本研究では、頭頸部・胸部悪性腫瘍として、頭頸部がん、食道がん、肺がんを対象に、腫瘍内局所投与し、同時に局所放射線治療を行った場合の安全性の検討と、評価可能症例における治療効果の観察を目的とするとされています。また、研究に用いられるTelomelysinは岡山大学で開発された製剤であるとされ、今回の研究は、既に米国で実施された臨床研究に使用した海外で製造された製剤を用いて行うとしています。
 12頁からの実施計画欄をご覧ください。投与量は1.0×1010vp(viral particles)から開始して、10倍ずつ増量する3つの用量レベルの投与群を設定し、放射線照射については、対象疾患に応じて照射野を設定し60Gyの照射を行うとのことです。各用量でそれぞれ3人の被験者を評価し、有害事象が発生しなければ逐時用量レベルを上げ、最大耐量では3人に投与し、問題がなければさらに3人、計6人の被験者について行うとされています。目標症例数は原則として12例と記載されています。
 13頁4)の投与方法欄では、腫瘍内に注入し、投与初日を第1日目として重篤な副作用を認めない場合は第18日目、第32日目に同じ病変に計3回投与する。放射線照射は、第4日目から1日当たり2Gy、週5回で総線量60Gyで施行するとしています。
 17頁から36頁までが、当該研究のインフォームド・コンセントに関する文書です。24頁の図4には、Telomelysinの投与方法の絵、25頁には先ほどの治療スケジュールが食道がんの場合として載っています。
 当該遺伝子治療臨床研究の実施計画については、科学技術部会の下にこの計画を検討する作業委員会を設け、本部会での今回の議論も踏まえて、主として科学的事項の論点整理を行っていただくことになります。作業委員会のメンバーは、部会長に今後相談、了承の上決定するとして、現在準備を進めています。
 引き続いて、37頁から、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の第一種使用規程の承認申請です。これについても、申請書と、それに添付して提出することになっている生物多様性影響評価書を含めています。
 43頁、承認申請書の遺伝子組換え生物等の種類の名称欄をご覧ください。ヒトアデノウイルス5型を基本骨格として、テロメラーゼ活性依存性に増殖する腫瘍融解ウイルスTelomelysinと記載されています。その下の、第一種使用の内容欄をご覧ください。使用、保管、運搬、廃棄、これらに付随する行為を定めています。次に、第一種使用等の方法欄をご覧ください。44頁にかけて、使用等の具体的な管理の方法が、(1)から(8)まで記載されています。例えば、Telomelysin溶液はP2レベルの実験室内の冷凍庫に保管すること、開放系区域を通って他のP2レベルの区域に運搬する必要がある場合には、二重に密閉した容器に入れて運搬すること、Telomelysinを廃棄する場合は、記載のウイルス不活性化を行った後、岡山大学の医療廃棄物管理規程に従う、などが記載されています。現段階では先ほどの千葉大学のような個室管理の規程はありません。
 申請された第一種使用規程の承認に当たっては、学識経験者の意見を聞かなければならないとされていますので、資料57頁にあるとおり、先ほどの千葉大学と同様に既にこの委員会が設置されていますので、そこで確認をするものです。以上のとおり、当該遺伝子治療臨床研究実施計画については、2つの作業委員会の検討が完了した後に、再度、科学技術部会での審議となりますので、よろしくお願いいたします。説明は以上です。
○永井部会長 
 岡山大学で開発された腫瘍選択的な融解ウイルス、Telomelysinの臨床研究に関する報告です。いかがでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ご意見がなければ、この両件につきましては、事務局を通じて設置されます作業委員会にお伝えして、そちらで論点整理を行い、その結果は改めて当部会に報告させていただき、再度総合的に判断したいと考えています。よろしくお願いいたします。
 では、その他の報告事項です。ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について、事務局から説明をお願いします。
○谷再生医療推進室長 
 まず、資料4-2をご覧ください。ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設として、先端医療振興財団先端医療センターから、慢性重症下肢虚血患者、バージャー病に対するG-CSF動員自家抹梢血単核球移植による下肢血管再生治療の死亡例と重症化例の報告です。
 前回、このケースについて研究機関から報告が上がっており、第一報としてご報告させていただきました。参考資料3の14頁の右下の(8)をご覧ください。厚生労働大臣への報告等として、前回の報告は?の一、「重大な事態が発生したこと及びその内容を厚生労働大臣に報告すること」ということで報告を受け、今回はその次、二の「重大な事態について、倫理審査委員会の意見を受け、その原因を分析し、研究責任者に中止その他の必要な措置について指示を与えた上で、倫理審査委員会の意見、原因の分析結果及び研究責任者に指示した措置の内容を厚生労働大臣に報告すること」として報告を受けたものに当たります。前回の報告とほぼ内容は同じですが、今回は、倫理審査委員会の意を経た上での結果ということです。
 内容としては、まず、お亡くなりになった女性については、術後に尿閉が起きて、尿路感染による敗血症および急性腎不全の対応をしていたところ、大量の吐下血があり、出血性ショックで亡くなられたということです。こちらについては、独立データモニタリング委員会からの提言もありますが、倫理委員会の評価は、因果関係は今回はなかったのではないかということと、本臨床研究については継続の結果を受けたとの報告を受けています。
 5頁は、同様の治療法で症状が悪化したケースです。当初から高度のチアノーゼがあったということで、治療を進めてはいたのですが、やはり、びらん、潰瘍、壊疽と、増悪傾向で切断を余儀なくされたという報告です。因果関係については、倫理委員会の検討の結果でも「なし」、臨床研究については「継続」と判断されています。以上です。
○永井部会長 
 ただいまの説明に、ご質問、ご意見はございますでしょうか。 第一報は亡くなられて1週間ぐらいで報告があったということですね。よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 それでは、ただいまの件についてはご了解いただいたことといたします。
 続いて、ヒト幹細胞臨床研究に関する報告について、事務局より説明をお願いします。
○谷再生医療推進室長 
 引き続きまして、長崎大学のヒト幹臨床研究に関する報告についてご報告をさせていただきます。ヒト幹の審査委員会にはかかっていなかった事例なので、題名としましては長崎大学から提示されている内容で、非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いたHIV関連リポディストロフィーに対する脂肪再生療法についての研究という、申請が上がった題名を今回は一時的に使わせていただいています。
 1頁は、長崎大学から、ヒト幹の臨床研究に対して抵触するような研究があったということで、自発的に報告書を平成21年1月18日付で提出していただきました。別添として、2頁から14頁までが詳細な報告書です。15頁からは、長崎大学が先週19日に長崎でプレス発表したときに配布した資料です。少し長めなので、当課で概要をまとめたものが18頁です。こちらを使ってご説明させていただきます。
 題名としてHIVと出ていましたが、実態としましては、臨床研究の実施は平成20年から23年に、ヒト幹細胞を用いた臨床研究2件が長崎大学の倫理委員会の承認を経て実施されていたということです。症例数は総計で17症例。病態疾患の内訳としましては、難治性の皮膚潰瘍が9症例。疾病名としては放射線障害が8症例、バージャー病が1症例です。また、脂肪組織萎縮症が5症例(HIV関連5症例)、痔瘻が3症例で、内訳としてはクローン病が2症例と潰瘍性大腸炎の患者さんが1症例となっています。ヒト幹細胞に基づかない臨床研究の実施の疑義が、昨年6月に金沢大学で発生した「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づかない臨床研究に対する報道を受けて、長崎大学が、学内においてどのような実験がされているのか、大丈夫かということで、学内、病院内の調査をしたところ、平成23年8月1日に、臨床研究2件がヒト幹指針に基づかずに実施された疑いがあるとして調査を開始したということです。我々の対応としましては、平成23年9月に長崎大学病院よりヒト幹細胞に関わる臨床研究の実施計画書の申請があり、それに併せて、ヒト幹指針に基づかない臨床研究が実施されていた疑いがあるとの報告を受けまして、まずは事実確認と、原因の究明について指摘しました。その後、厚生労働省より改善策や再発防止等については継続的に、長崎大学の病院長とも数度お会いしまして、どういった原因だったのかも含めて指導させていただきました。指針違反の原因と今後の改善策等をまとめて今回の報告書に繋げたものです。
 長崎大学病院の対応として、ヒト幹細胞の要件を満たした委員会を設置するというのは、原因の中に、当時、倫理委員会の構成メンバーが、ヒト幹指針に必要とされている専門家を含めない人員構成で実際に行われていたことがあったためです。これを受けて、倫理委員会に対して、ヒト幹細胞の専門家を新たに入れたということです。また、ヒト幹指針に対する理解、要するに、研究者自身の理解が浅く、脂肪幹細胞を用いた場合も対象となるという認識がなかったこともありましたので、普及啓発、教育活動を実施するということです。これにつきましては、当室の専門官が一度お伺いして実際に講演をしています。
 それから、長崎大学病院がこの調査報告をまとめる経過の中で再度実施が可能かどうかの判断を行いまして、その結果、現状ではやはり適切な対応がまだ難しいだろうとして、ひとまず取り下げとしたため、申請書の取り下げを受けました。今回の最終報告書を提出していただき、今後は継続して実験が実施できるような体制整備に努めるというご報告を受けています。先ほどもお伝えしたとおり、平成24年1月19日に記者会見を行っています。
 ヒト幹指針についての抵触がありましたので、厚生労働省としては平成24年1月20日付でヒト幹指針の再周知を目的として、研究開発振興課長名で再度徹底について通知を出させていただき、また、今回の審議会に対して経緯を報告するとしています。
 次頁にあるように、1月20日付で都道府県衛生主管部局、文部科学省、その他関連団体に対して、ヒト幹の指針の周知徹底の依頼をしたところです。以上です。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。
○宮田委員 
 これはたぶん、金沢大学に続いて発覚した事例だと思います。潜在的にはほかの医療機関でも起こり得る可能性があります。先ほど、ゲノム指針でも申し上げましたけれど、やはりガイドラインは社会との軋轢を減らすための方策ですので、それをいかに周知させていくのかに関して、課長通知をいただいたことはえらいことだと思いますが、それ以外にも少し努力しないと、実効性を担保できないという気がします。医療機関や自治体の保健所などは当然のことながら、できれば、そういった治療を受ける患者さんのほうの常識についても、チェックの機構としては高める必要があると思います。もう少しわかりやすい、患者向けのヒト幹指針、及びヒトの幹細胞研究に関わるホームページなどもご検討いただくことが重要ではないかと思います。いままでみたいにプロだけに情報を流していても、これはどうもあまりうまく、まあ、うまくはいくでしょうけれども、相互チェックできるように、臨床研究に参加なさる患者さんも、そういう知識を持っていただくことが重要だと思いますので、ご努力をお願いしたいと思います。ゲノム指針についてもです。
○谷再生医療推進室長 
 まず、もう1点ご報告です。一応、この周知徹底の通知につきましては、厚生労働省のホームページにも見られるように掲載しています。ただ、やはり内容的には専門家に向けてのものなので、来年度予算で要求していますヒト幹のデータベース等で、そういった活動も展開できるようなことを念頭に置いて事業をしたらと思っています。
 もう1点、さらに追加です。長崎大学におきましては、既に1件、バージャー病の下肢虚血の血管に対する治療法がヒト幹指針で認められています。そのときの倫理審査の実態としましては、倫理委員会に専門家がいないことを受けまして、臨時的に専門家にご参加いただいた上で審査をして、こちらに申請が上がっています。現状、ヒト幹指針で大臣の意見が出されているものに関しては、審査は適切に行われていることを申し添えます。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○相澤委員 
 治療を受けた患者さんについては、研究の中止によって特段の不都合は生じていないという理解でよろしいですか。
○谷再生医療推進室長 
 はい、そのとおりです。

○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 では、ご了解いただいたことにいたします。
 次に報告事項で、「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、6機関あります。事務局より説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
 資料5を使って説明したいと思います。1枚目の裏表が、今回実施施設からの報告の目次です。目次に従って、次の通し頁で報告ができてきています。
 まず1件目は、九州大学関係です。九州大学の慢性重症虚血肢に対する血管新生遺伝子治療臨床研究についての重大事態報告です。総括責任者は九州大学病院の前原先生です。
 4頁です。発生時期は2011年8月24日です。重大事態の概略としては、頸椎・椎弓形成術の施行です。本患者さんについての経過は、その次の欄で、2008年1月22日に臨床研究の研究薬の投与が実施され、その時点では問題はなく、その後、外来フォローをしていました。5頁です。1つの兆候として、2009年9月1日、臨床研究薬投与後1年8カ月経ったところで、右上下肢の動作の緩慢を訴えて九州大学病院を受診されました。また、2011年7月に腰痛の訴えがあったということです。その後、患者さんが近くの病院さんを受診したなどの話が少し書いてありますが、2011年8月24日に先ほどの形成術を施行したものです。
 有害事象発生の認知により、15日以内に先進医療適応評価委員会における症例のレビューが行われると同時に、第一報が厚生労働省にも従来の流れで入っています。
 結果については6頁をご覧ください。基本的には、当該疾患・有害事象と臨床研究投与薬の直接的な因果関係を示す積極的な所見に乏しく、遇発症例であろうということが、臨床研究審査委員会でも最終的に認められて、それを受けて最終的な報告として今回提出されています。
 次に、19頁をご覧ください。三重大学の研究に関する重大事態報告書です。MAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入リンパ球輸注による治療抵抗性食道がんに対する遺伝子治療臨床研究で、三重大学の珠玖先生の下で行われているものについてです。
 23頁です。重大事態の発生時期は平成23年10月28日。内容は、被験者の方がお亡くなりになったということです。原因は、食道がん増悪による食道気管支ろうによる肺炎です。経緯はその後に書いてありますが、1のいちばん下のほうに、平成23年4月12日に遺伝子導入細胞の輸注が行われています。2番目に、遺伝子治療実施後は有害事象は観察されなかった。5月27日に肺炎を発症され、この頁のいちばん下ですが、10月28日にお亡くなりになられたという状況です。この結果につきましては、22頁の審査委員会の意見にありますとおり、今回の死亡例については、遺伝子治療による直接の因果関係は認められない、今後研究は継続してもよいという内容の報告です。
 25頁、国立がん研究センターです。重大事態報告書と、33頁に計画変更の報告書です。これらは、最初に4月終わり頃に厚生労働省に出されまして、その後、やり取りをして、最終的な報告として12月6日のものになっています。研究としては、ハプロタイプ一致ドナー由来T細胞除去造血幹細胞移植後のHSV-TK遺伝子導入Tリンパ球"Add-back"療法で、国立がん研究センターの平家先生のところで行われているものです。
 28頁をご覧ください。重大事態の発生時期は平成23年3月25日で、発生の内容はウイルス感染症です。経過については、29頁の入院後の経過に、投与日を1としたときの18日目で免疫再構築が確認されなかったため、25日目に第1回目のリンパ球Add-back療法を実施したものです。その際には、細菌感染症を認めず、真菌マーカーの上昇や真菌感染なども認められなかったというものです。その後、発熱等が起こりまして、真ん中辺りに書いてありますが、53日目にはGVHDを示唆する所見は認められなかったということです。60日目、免疫再構築は確認されず、移植科スタッフミーティングで検討した結果、2回目のドナーリンパ球Add-backを実施し、免疫再構築を促すことでウイルス感染を沈静化させる判断をされたものです。その後、61日目に2回目のAdd-back療法を実施し、結局、63日目、1回目のAdd-backから38日目、2回目から2日目にお亡くなりになったものです。
 これにつきましては、27頁に審査委員会の意見があります。T細胞除去による免疫能回復の遅れに伴う感染症による死亡であると考えられ、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入とは直接的な因果関係があるとは考えにくい。継続して問題ないとしています。「ただし」とありまして、新たな知見を加味し、そこに書いてありますように、いろいろなところを修正して検討してみてはどうかと提案されています。
 それを踏まえまして、33頁からの計画変更報告書になっています。基本的には、この研究の作業委員会の先生とセンターとのやり取りを何度か行いまして、結局、12月6日時点の最終的なものとしてここに載せています。この内容につきましては、いろいろな変更があり、中でも課題になったものが39頁にあります。仮登録時選択基準というものがありまして、もともとのものでは、急性骨髄性白血病の関係、40頁で、骨髄異形成症候群の関係、慢性骨髄性白血病の関係、高リスク急性リンパ性白血病の関係が対象疾患であったのですが、変更届出書では、中・高悪性度リンパ腫およびホジキンリンパ腫も追加したいという変更事項が入っていましたので、ここを入れることにつきまして、研究の作業委員会に確認等をした結果、被験者の選定を今後慎重に行い、その妥当性を外部委員を含む国立がん研究センターの遺伝子治療臨床研究効果安全性評価委員会で確認した上で、これを広げてやってくださいということになっています。変更報告書については、変更内容の確認をすることはいまのところ指針にはありませんが、必要があれば作業委員会の先生とやり取りを行い確認することとしています。この変更の確認が完了するまでは、リンパ腫の関係の患者さんは含めないようセンターにお願いをしていたものです。
 次に、59頁をご覧ください。これも変更報告書です。研究内容は、同種造血幹細胞移植後の再発白血病に対するヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ導入ドナーTリンパ球輸注療法の臨床研究で、筑波大学の千葉先生のところで行っているものです。62頁中ほどに、変更内容があります。研究期間を延長することと、研究者の職名の変更です。これも、関係の作業委員会の先生に確認して、特段問題ないとされています。
 次に、67頁です。これも変更報告書です。研究課題名は、ヒトβ型インターフェロン発現プラスミド包埋正電荷リポソーム製剤を用いる進行期腎細胞がんの遺伝子治療臨床研究です。京都府立医科大学の三木先生のところで行っているものです。70頁、変更内容は、研究期間の変更と所属の変更です。69頁に、審査委員会での状況が書いてありますが、現在まで症例登録数が0である理由として、遺伝子治療製剤の製造に遅れが出たこと、及び腎がん治療薬として保険適応となった複数の分子標的薬が治療上で優先されたということが記載されています。一方で、最近、分子標的薬の限界も明らかになっていることから、3年間の延長について了承を得たというものです。これも、関係の作業委員会の先生に見ていただきまして、特段問題ないとされています。
 最後は、75頁の中止報告書です。X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)に対する遺伝子治療臨床研究で、東北大学の土屋先生が総括責任者であるものです。
 78頁をご覧ください。中止理由です。2002年にウイルスベクターの挿入変異が原因と考えられるT細胞性白血病がフランスで2例発生し、現在までに遺伝子治療を受けた20例中5例(フランス4例、イギリス1例)で白血病が発症したと報告され、原因はレトロウイルスベクターに存在するエンハンサーが近傍の癌原遺伝子を活性化したことによると結論付けられているということです。東北大学では、2002年に白血病発症が報告された段階で本研究の自主保留を決定し、再開の可能性を判断するため、これまで原因に関する情報収集に当たってきたものです。結論として、東北大学としてはその現状を総合的に判断して、本臨床研究を中止することが妥当との結論に至ったということで、その内容とともに倫理審査委員会にかけて、11月末に報告されたものです。その後の対応状況に書いてありますが、現時点までに臨床試験に対する患者のエントリーはされていないため、中止決定は患者に直接影響を与えるものではない。実際の患者への治療及び臨床研究としての介入はしていないというところです。報告としては以上です。
 参考資料4をご覧ください。遺伝子治療臨床研究実施計画の申請関係の参考資料です。2頁に、1月25日現在での臨床研究の申請や審査の状況を示していますので、ご参考にしていただきたいと思います。以上です。
○永井部会長 
 ただいまのご報告に関しまして、ご意見、ご質問はございますでしょうか。国立がん研究センターの変更報告については、さらに作業委員会での検討が必要であるということでしょうか。
○尾崎研究企画官 
 作業委員会としては、被験者の選定を慎重に行い、その妥当性を外部委員を含む遺伝子治療臨床研究効果安全性評価委員会で確認することとの条件を出し、それを行うことでいいのではないかということととなり、それで進めたいということです。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○永井部会長 
 それでは、ご了承いただいたということにいたします。本日の議事は以上です。事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
 次回開催につきましては、委員の皆様には改めて、日程、開催場所等についてご連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。
 なお、1点だけお話したいことがあります。前回11月の会議で公募要項欄の説明をしましたが、パブリックコメントを取ったときに、30万円以上の機械器械を厚生労働大臣の承認を得て研究終了後に使うことができるという話がありましたが、本日ご欠席の松田先生から、それは実際にどのぐらいの届出が出ているのかとご質問がありましたので、この場を借りてご報告したいと思います。この手続きは適正化法と言われる補助金関係を適切に使うという法に基づいています。ここ2、3年で言えば、20件から50件ほどの件数です。いまのところ、報告があるのはそれだとご理解いただきたいと思います。以上です。
○永井部会長 
 日程は改めてということですね。それでは、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)
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 厚生労働省大臣官房厚生科学課
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