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2009年11月30日 平成21年度第5回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び第2回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の第2回合同開催 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成21年11月30日( 月 )14:00~16:00


○場所

都道府県会館 402会議室


○議題

1.新型インフルエンザワクチンの安全性について

2.その他

○議事

○事務局
 定刻になりましたので、「平成21年度第5回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び、第2回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会」を合同開催させていただきます。
 本日の調査会も、前回同様公開で行うこととさせていただきますが、カメラ撮りは冒頭議事に入るまでとさせていただきますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また傍聴者の方におかれましては、傍聴に際しての留意事項、例えば静粛を旨とし喧噪にわたる行為をしないこと、座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うことなどの厳守をお願いいたします。本日御出席の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 本日は第2回目の開催となりますので、委員の紹介は省略させていただきます。本日は、安全対策調査会の大野先生、参考人の内山先生、名取先生、それから新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の岡部先生が御欠席です。なお、本日は議題1のワクチンの関連について合同開催とさせていただきまして、議題2の抗インフルエンザウイルス薬の議題は安全対策調査会の単独開催として行わせていただきますが、議題2について新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の各委員の先生方には、引き続き安全対策調査会の参考人として御参加いただくこととしていますので、参加委員の構成には変更がないことを申し上げておきます。
 それでは、これより議事に入らせていただきたいと思いますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。以後の議事進行を、松本先生にお願いいたします。
○松本座長
 委員の先生方、参考人の先生方には、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。それでは、まず審議の際の申し合わせ事項について、事務局から報告してください。
○事務局
 まず、薬事分科会申し合わせによる審議参加に関する遵守事項についてです。新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の委員の方々には、本日は薬食審のルールに準じた対応とさせていただきますことを御了承ください。本日出席をされた委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄付金・契約金などの受取状況の御報告です。
 本日の議題は、議題1「新型インフルエンザワクチンの安全性について」、議題2「抗インフルエンザウイルス薬について」です。議題1に関しては、調査品目の新型インフルエンザワクチンの製造販売業者である学校法人北里研究所、財団法人化学及血清療法研究所、財団法人阪大微生物病研究会、デンカ生研株式会社及び、競合品目と考えられる新型インフルエンザワクチンの輸入を予定していますグラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社。議題2に関しては、抗インフルエンザウイルス薬の製造販売業者である中外製薬株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、及びその競合品目と考えられる抗インフルエンザウイルス薬を承認申請しています塩野義製薬株式会社から、過去3年度における寄付金等の受取について申告をいただきました。なお、競合品目・競合企業については、事前に各委員に資料をお送りして確認をいただいています。
 今回の各委員からの申出状況から、審議への不参加の委員はいらっしゃいませんでした。五十嵐委員が、グラクソ・スミスクライン株式会社から50万円を超えて500万円以下の受取、ノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受取との申告がございましたので、議題1、2に関しては議決には参加できません。それから、土屋委員がノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受取との申告がありましたので、お知らせいたします。
 参考人の先生方においては、神田先生がグラクソ・スミスクライン株式会社から50万円を超えて500万円以下の受取、ノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受取との申告がございましたので、議題1、2に関しては議決には参加できません。飯沼先生が、グラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下の受取。庵原先生が北里研究所、化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下の受取。工藤先生がグラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下の受取。河野先生が中外製薬株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受取。林先生が中外製薬株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受取との申告がありましたので、お知らせいたします。
 また、本日健康局の予防接種後反応検討会の委員の方々におかれましては、安全対策調査会の参考人として御参画いただいていますので、その寄付金と受取状況を報告いたします。稲松先生がグラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下の受取。多屋先生が化学及血清療法研究所、阪大微生物病研究会、グラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下の受取。永井先生がグラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以下の受取との申告がありましたので、お知らせいたします。以上です。
○松本座長
 ただいま事務局から説明がありました審議の際の申し合わせ事項については、よろしいでしょうか。特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて了解いただいたものといたします。ありがとうございました。
 次に事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○事務局
 それでは、本日の資料一覧に基づいて確認をさせていただきます。いちばん上に座席表があります。その次に、本日の議事次第、次のページに委員等の名簿があります。次のページに、配布資料の一覧があります。こちらの配布資料一覧と資料を照らし合わせて御確認をお願いします。
 資料1の関連です。資料1-1は「推定接種者数及び副反応報告頻度について」、資料1-2は「副反応症例の内訳」、資料1-3は「重篤症例一覧」、資料1-4は「重篤症例の概要」、計24ページの資料です。資料1-5は「死亡症例一覧」、資料1-6は「死亡症例の概要」、トータル30ページの資料です。資料1-7は「インフルエンザワクチンの副反応の報告状況について(重篤)」としましたA4縦のテーブル、計3枚の資料です。資料1-8は「GBSの可能性のある副反応報告」で、A4横のテーブル、トータル10ページの資料です。参考資料1-1は「副反応報告の概要リスト」、参考資料1-2は外国の事例の情報、参考資料1-3は添付文書、参考資料1-4は前回の合同検討会の取りまとめです。
 次に、資料2の関連です。資料2-1は「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」の中間報告、資料2-2-1としてA4横のタミフルの異常行動が記録されている事例の概要、資料2-2-2はリレンザの同様の資料です。参考資料2-1は抗インフルエンザウイルス薬のタミフル、リレンザ、アマンタジンの添付文書、参考資料2-2は6月の安全対策調査会におけるタミフルについての取りまとめ資料、参考資料2-3は「抗インフルエンザウイルス薬に関する注意喚起及び安全対策関連通知」で、今年の9月に出た通知の資料です。参考資料2-4は「抗インフルエンザウイルス薬に関する注意喚起文書及びハイリスク患者等に関する情報提供資料」で、全部で96ページの資料です。参考資料2-5は「インフルエンザ患者における抗インフルエンザウイルス薬の使用状況について」で、トータル5ページまでの3枚の資料です。参考資料2-6は平成19年2月28日付の通知の写しで、「『インフルエンザ治療開始後の注意事項についてのお願い』について」です。それから、当日配布資料として「新型インフルエンザ治療開始後の注意事項についてのお願い」について依頼の案と、こちらは議題1に戻る資料になりますが、当日配布資料2として稲松委員より提出いただいた老年者の突然死に関する文献のコピーです。資料は以上です。
○松本座長
 資料はよろしいでしょうか。よろしいようでしたら、議題1に移りたいと思います。資料1「受託医療機関等における新型インフルエンザワクチン接種実施要領に基づく新型インフルエンザワクチンの副反応状況について」に関して、事務局から説明をお願いします。まず、資料1-1から資料1-4まで一通り説明をいただいて、そこで一度御議論をいただき、その後、残りの資料を説明していただきたいと思います。
○事務局
 それでは、資料の御説明をさせていただきます。資料1-1は、推定接種者数及び副反応報告頻度ということで、今回11月26日までの接種日の副反応を取りまとめています。推定接種者数としては、11月24日まで、トータルとして約600万回程度の推定接種回数となっています。副反応報告は1,096、重篤は110、うち死亡が31ということです。裏面の季節性の資料は、前回同様ですので、説明は省略いたします。
 資料1-2は、副反応症例の内訳ですが、性別・年齢別に報告を分析したもので、御覧のとおりとなっています。資料1-3は、重篤症例の一覧です。前回11月20日に開催させていただいた後、今回重篤については56番以降を追加していますので、資料1-4の重篤症例の概要の項で少し御説明をさせていただきたいと思います。資料1-4の14ページの56番以降が、前回から新たに追加されているものです。56番は、妊婦の方への接種が始まっていますが、臍帯過捻転・胎児死亡、妊娠39週の女性において、このような事例が見られたということです。専門家の意見としては、名取先生より「過捻転があって浮腫があるので直接的な死産の原因は臍帯過捻転。ワクチンとの関連はないと考える。ベースラインのリスクとして1,000出産で周産期死亡は4.7であり臍帯原因が約10%であることから、ワクチン接種との重なりは十分に起きうる」というコメントがございます。そのほかとしては、あとで資料1-8でまた御説明をいたします。
 症例60番、フィッシャー症候群(ギランバレー症候群)ですが、ギランバレー症候群の中の一部に見られるとされるフィッシャー症候群の報告が1例ありまして、「ギランバレー症候群の可能性あり」という因果関係の評価になっています。16ページの症例61番には、10歳未満の男性、小児に対する接種も開始されていまして、小児における重篤な副反応の報告も今回から入ってきています。17ページの、症例64、65が、いずれも10歳未満の男性における、64がけいれん重積、65がけいれん重積、急性脳症です。2症例とも回復していますが、64は情報不足、65は因果関係不明、先行して感染、感冒等による可能性もあるのではないかということになっています。
 そのほか、19ページの症例70番も、10歳未満の女の子ですが、けいれんで調査中です。接種2日後の発熱、5日後にけいれん、意識障害で、先行する感染等の潜伏によるものであった可能性もあるということで、現時点では因果関係不明となっています。
 20ページは、症例74番で10歳未満、女性です。軽快していますが、けいれんの副反応が重篤で事例が寄せられています。専門家の先生からのコメントもいただいていますが、現時点では情報不足、あるいは因果関係がこの段階では詳細がはっきりしないので否定できないというようなコメントを頂戴しています。こちらの資料の23、24ページには、これらの個別症例の評価に御協力いただいています専門家の一覧を付けています。
 資料1-8は、GBSの症例についてです。先ほど、フィッシャー症候群(ギランバレー症候群)での1例の報告がありましたが、インフルエンザワクチンにより引き起こされる副反応の重篤なものの一つとして、ギランバレー症候群が知られています。可能性のある副反応報告として、しびれ、脱力感、神経障害、筋力低下、物が飲み込みにくいというような症状が副反応報告に記載されているものを、幅広に一覧にしまして、GBSあるいはADEM等との関連について、それぞれ専門家の評価をいただいているところですので、こちらの資料にまとめさせていただいています。
 全部で46例ありまして、1例目を御紹介しますと、接種後にしびれ、疼痛などが発現しています。専門家の意見としては、「神経系統の異常は考えられない。ギランバレー症候群は否定できる」というコメントを頂戴しています。局所症状などとしての副反応としても見られる症状ですので、そういったことの可能性はありますが、ギランバレー症候群は否定できるということです。ほとんどの症例については、ギランバレー症候群との関係については、否定ができるというような評価になっていますが、5ページの23番については、ADEMの可能性もあり得る症例として、専門家の意見としましては「現時点では詳細な経過が不明、あるいはギランバレー症候群を否定できる、情報不足に相当する」というようなことですが、ADEMの可能性についてのコメントもございます。
 8ページに飛びます。こちらでは、32番、36番の症例についてです。専門家の先生の意見の中では「GBSかどうか32番の方では評価困難、可能性はまずない、軽症のGBSあるいはADEMの疑いはある」というような評価になっています。36番では「一般的にはGBSとは考えにくい、その後の経過が必要。現時点ではGBSとは診断できない、あるいはGBSの疑い」というような評価をいただいています。
 9ページは、38番、42番がこちらもGBSの関連です。38番では、中村先生は「考えにくい」、埜中先生は「否定できる」、稲松先生は「情報量が少なすぎて評価が困難である」、楠委員は「可能性は否定はできないが低い」というような症例もございました。それから、42番が前回の合同検討会以降の追加分として御紹介しましたGBS、フィッシャー症候群の疑いです。「現時点ではGBSでないとは言い切れない、詳細情報が必要である」「現在の症状から見てもフィッシャー症候群と思われる」というコメント、それからGBSの疑いということで、これについては御意見をいただいている専門家の先生それぞれから、GBSの可能性の指摘をいただいています。
 最後に10ページですが、こちらは44番としてADEMの関連についての指摘の症例です。「可能性は低い、あるいは現時点では詳細情報がありませんので因果関係の否定ができない、ADEMの疑い、可能性はある」というような御指摘です。今回追加となった重篤な副反応症例についての概要で、特に気になる点、小児でのけいれんの副反応、あるいはGBS等については、現時点で取りまとめているものは以上です。
○松本座長
 事務局の方から説明がありましたが、今回小児の例と妊婦さんからの例が追加されているようですが、何か御意見、御質問等はありますか。小児の例が入っているようですが、何かコメントはありますか。
○松本座長
 妊婦さんについては1人だけなのですが、村島先生、何かコメントいただけますか。
○村島参考人
 先ほど事務局の方がお話したとおりだと解釈いたします。たまたまの事象だという形で考えています。
○松本座長
 ギランバレー関係が結構報告されているようなのですが、神田先生、何かコメントをいただけますか。
○神田参考人
 拝見しまして、この書面からギランバレーとはっきり言えるものは1例もないという考えでよろしいかと思います。ひょっとしたら、42番がフィッシャーかもしれないとは考えられますが、あとのものはほとんどギランバレーを否定していいのではないかと思います。
○松本座長
 ありがとうございました。その他の脳炎、ADEMに関して、埜中先生、何かコメントをいただけますか。
○埜中参考人
 今、神田先生が言われたように、私もいろいろな症例を見ましたが、ギランバレー症候群と診断できる例は見つかっていません。ただ1例だけ、症例42番の臨床がフィッシャー症候群によく似ていて否定はできないのではないかというところで、特に追加はありません。
○松本座長
 ありがとうございました。ほかに御意見はありませんか。概ね前回議論されたことと大きくは変わらないような御意見のようですが、それでよろしいでしょうか。それでは、続いて残りの資料について事務局から説明をお願いします。
○事務局
 それでは死亡症例の関係について御説明申し上げます。資料1-5、資料1-6をお手元に御用意願います。状況をざっと御覧いただきますのは資料1-5の方がよろしいかと思います。2ページ目に31番までありますが、20日に開催した合同検討会では、21例目まで御議論いただいております。22例目からが追加となっておりますが、いずれも90代、80代、70代、70代、70代、60代、90代、60代、90代、80代ということと、左から3つ目は基礎疾患の欄ですが、いずれも読み上げは省略いたしますが、基礎疾患を持っておられる高齢者の方において見られているという傾向は、特に前回までと変化はありません。
 資料1-6には、死亡症例の概要をお付けしています。資料1-6の21ページのいちばん最後が、症例22と枠囲みの文字がありまして、22ページからが今回追加の死亡症例の概要です。22番は90歳代の男性の間質性肺炎の患者で、2.にありますように、主治医は「間質性肺炎の増悪が一番の原因と考えられた」としております。専門家の意見として、稲松先生からは「接種を契機として原疾患が悪化した可能性は否定できない」というようなコメントをいただいています。その他、「今回の情報だけでは判断が困難」「判定不能」等のコメントをいただいています。
 症例23は80歳代の女性で、死因は脳内出血とされており、背景に高血圧を保有しておられる患者さんで、主治医は「接種との関連はない」との判断です。専門家の意見として、「因果関係は希薄、あるいは認められない」ということです。
 症例24は70歳代男性で、脳梗塞、脳出血を経験し、後遺症を保有されており、胃瘻の形成を受けておられたと。2.ですが、報告医は「ワクチン接種との関連はないと思われるが、結果が重篤なため報告した」としています。専門家の先生からの評価は、誤嚥に伴う死亡ということで、「関連はない、あるいは関連は評価できない」というようなコメントです。
 症例25は70歳代の男性で、糖尿病、慢性腎不全等を保有されており、狭心症にてステント留置、陳急性脳梗塞を既往に持つ患者さんということで、11月20日にワクチンを接種した後、特に異常はありませんでしたが、22日の朝に心肺停止の状態で発見、心臓死による死亡と診断されており、報告医は「ワクチン接種との関連はなし」ということです。専門家の御意見としましては、「主治医の判定を支持する」というような内容になっています。
 症例26は、70歳代男性で、糖尿病、食道癌の放射線療法後、さらに慢性心不全等を持っており、甲状腺癌術後甲状腺機能低下のあられる患者さんということです。こちらの方については、ワクチン接種を11月20日に行いまして、その後、普段と変わりないということですが、23日の7時半に心肺停止ということです。報告医は「接種との関連はなし」という評価です。専門家の御意見は「心臓死、あるいは主治医の判定が重要な情報」ということです。
 症例27は60歳代女性で、慢性腎不全、心不全の基礎疾患患者、また、脳出血の後遺症から、全介助状態で入院をされていた患者さんです。20日にワクチンを接種後、特段の副反応もありませんでしたが、23日の夜ですが、胃から直接食事を摂っておられましたが、これを嘔吐されまして、同日23時40分頃、呼吸停止に至った。心肺蘇生を行うも、死亡に至っております。主治医の評価といたしましては、「明らかな関連があるとはいえないが、全く否定もできないため、評価不能」ということです。専門家の御意見といたしましては、「血圧低下が見られた情報、あるいは心不全等の原疾患の詳細な情報がありませんので、よくわからない、関係不明」というようなものでした。
 症例28は90歳代男性で、慢性気管支炎を基礎疾患とする患者で、過去に大腸癌手術を実施しております。11月16日に慢性気管支炎の定期受診をしまして、新型インフルエンザワクチンを接種、その後特に異常は見られていなかったとのことですが、19日の午後2時頃にベッドで具合が悪くなり、救急搬送をいたしましたが、午後3時頃死亡。死因は急性心臓死とされております。本例については、27ページの2.「因果関係は非常に低いと考えていますが、全く否定もできない」ということで、主治医は「評価不能と報告した」ということです。この例に関しては、「検死等の結果による評価が重要情報である」というコメントをいただいております。
 症例29は60歳代男性で、慢性腎臓病を基礎疾患とする患者。週に3回、1回4時間程度の血液維持透析を行っております。こちらの方については、20日にワクチンを接種しまして、その後21日、22日と特段様子の変化は認められなかったが、23日午前7時半、目覚ましが鳴り止まないということで、部屋に行ったところ、死亡が既に確認された。推定死亡時刻が22日深夜から23日早朝ということです。主治医の評価としましては、「明らかな関連があるとはいえないが、全く否定もできない。透析患者では、不整脈、心不全による突然死事例も時々起こり得ることがあるということから、評価不能と報告した」ということです。専門家の御意見としましては「情報なく評価困難」ということで、「評価困難、あるいは判定不能」というコメントをいただいています。
 症例30が90歳代女性で、慢性うっ血性心不全、高血圧、慢性骨髄性白血病を基礎疾患とする患者さんです。この方も20日にワクチンを接種後、特に副反応等の兆候はなかったということで、24日も基礎疾患に関連して定期受診を行っておられ、この際も問題なく帰宅ということでしたが、11月25日午前10時に、救急隊により主治医に死亡しているとの報告があったということで、24日の夕食途中で死亡していたことが考えられる。検死結果は脳出血ということでした。主治医からは、「脳出血が原因の死亡で、本剤との関連はなし」とのコメントをいただいています。専門家の御意見としましては、「窒息死らしくワクチンの関連はないらしい」あるいは「年齢を考えると、高血圧による脳出血を来たした可能性もある」というコメントをいただいています。
 29ページの症例31は、現在調査中ということで、詳細は記載していません。
 18番、19番の症例については、前回、詳細を調査中としていたものですので、あらためて今回簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。18例目は18ページの下の方にありますが、80歳代の男性、髄膜炎を基礎疾患とする患者さんです。16日午後1時半頃ワクチン接種。2日後に転院、転院時に肺炎、発熱、意識障害が認められ、翌19日の午後6時前に死亡されたという症例です。髄膜炎のために入院されており、遷延性の意識障害が認められていた患者さんで、報告医は「原病の悪化によるもので、ワクチン接種との関連はない」としています。専門家の先生方のコメントは「因果関係はなさそう」という評価をいただいています。
 19例目ですが、こちらも80歳代男性、慢性気管支炎、脳血管性認知症を基礎疾患とする患者さんです。6日の午後3時20分頃ワクチンを接種、翌朝9時半頃までは特に異常はありませんでしたが、10時35分に呼吸停止状態で発見されたということです。報告医は「もともとの状態が悪く死因は脳血管障害と考えられる。ただし、接種から24時間経過していないことから、評価不能として報告した」としています。専門家の意見としまして、「慢性気管支炎、脳血管性痴呆があり、患者の突然死の原因として、痰づまり、誤嚥性による窒息などが最も考えられる」ということと、「接種後17時間程度、異常ないことが確認されており、アナフィラキシー等の可能性はほとんどない」というようなことでした。「詳細治療状況がわからないので評価に限界がありますが、主治医コメントのように原因がわからない突然死、あるいは因果関係は不明」というコメントを頂戴しております。前回調査中としておりましたもの、今回追加したものについての死亡症例の説明は以上です。
○松本座長
 ありがとうございました。ただいま、事務局から追加の接種後の死亡例について説明がありましたが、何か御意見、御質問等ないでしょうか。相変わらず高齢者が多いようですが、どなたかコメントをいただけますか。
○永井委員
 東京病院の永井です。31例ということで、季節性に比べると、やはり因果関係は別として、死亡の報告が非常に多い、これはやはり今回の新型インフルエンザワクチンということで、報告義務的なものがあるということで多いと考えてよろしいのでしょうか。普段、数例しかないところの報告に対して、多いということについて、何らかのコメントなどを出さないと、ワクチンを打つことによって死亡例が多いというイメージが強く与えられてしまうような気がするのですが、できるだけ挙げて、因果関係がないものを排除して、季節性のものと非常に近い基準で死亡者数を出すというような、何らかのものがないと、ただ数が集まってこうでしたというと、誤解を招くかもしれません。その辺りは、今後、数をどう打ち出していくかという点についていかがでしょうか。
○松本座長
 そうですね。今後、どんどん報告は増えていくでしょうから、その点を明らかにしておく必要はあろうかと思いますが、この点に関して御意見はありませんでしょうか。
○多屋委員
 感染症情報センターの多屋ですが、このように詳細に拝見いたしますと、主治医の先生のお考えですとか、委員の先生方のお考えもよく分かります。しかし、いま永井先生がおっしゃられましたように、明らかにワクチンとの関連はなく、原病によってお亡くなりになられたという表記も非常にたくさんありますので、そこははっきり分けて、区別してまとめる方が誤解を招かないのではないかと思います。以上です。
○稲松座長代理
 前回のこの委員会でも少し議論があったのですが、比較するのに2つの報告基準が少し違っていて、季節性のインフルエンザのときの報告義務の基準と、今回の基準とは少し違いますので、同列に比較できないということと、今回、高齢者については、ほとんど基礎疾患のある、だいぶ状況の悪い人だけが接種を既に利用されているという状況の中で、死亡率が当然高いものだろうと考えています。個々の症例を見たときに、必ずしも因果関係を明確に言えるものはなくて、主治医の先生方からの意見書を見ましても、一応原疾患によるものだろうと思うけれども、念のため報告しているという形のものがほとんどです。
○河野参考人
 長崎大学の河野ですが、いまの例えば薬剤のことは関係があろうがなかろうが、すべて報告するというのが基本になっています。ですから報告がくるのは当たり前だろうと。特に新型のインフルエンザということで、非常に世の中の関心も高いですし、そこは仕方がないのですが、前回からのいろいろな症例を見させていただいても、本当に委員の先生方も、サイエンティフィックに結論が出るのか、どのような情報を集めても、非常に難しいと思います。例えここでかなり関係がないらしいとしても、それを信用される方、信用されない方はたくさんおられるので、そこを議論しても仕方がないのかなと感じました。問題は、このワクチン自体は、従来からのワクチンと製法が何ら変わらない。変わっているのはウイルスだけと。しかも、不活化でということで、理屈の上では、死亡までの副作用を起こすほどとは思えませんし、ワクチンのメリットは、やはり重篤化を防ぐこと、死亡を防ぐことなのですが、ただ、いわれのない罪をワクチンに着せるのは、非常にかわいそうな感じなので、前回に出た意見のようなところを明確にするしかないのかなと。いわゆるメリット・デメリットを考えて適応をしっかり考えてくださいよというところを、もう少し世間の方や実際にされる先生に分かりやすく提言するしかないのかなと思っております。
○庵原参考人
 三重病院の庵原です。死亡例だけではなくて、重篤な症例に関しましても、これは全部報告するとなっていますが、アナフィラキシーとか、アナフィラキシー様症状に関しましても、明らかに因果関係がないと思われるものも含まれているようですので、やはりこういった死亡例だけではなくて、有害事象例も含めて、関連性がどこまであるのかというのを、個別に分けて報告していかないと、数字だけが勝手に走り出しているという印象を持っています。公表するときに、少し説明をしながら発表をしていく必要があるのではないかと私は思います。
○五十嵐委員
 東京大学の五十嵐です。資料1-2の年齢別の表がありますが、質問なのですが、0歳から50歳未満までは死亡者はいないわけですよね。これは、全部で約600万回打っているわけですが、0から50歳までの方はどのぐらいなのですか。接種回数は分かるのですか。あるいは分からないのですか。おそらく、こちらの方が接種は多いのですよね、子どもから始めているから。そうでもないですか。医療関係者から始めましたよね。3番目ぐらいに子どもが入っていました。つまり何を言いたいかというと、若い人たちは、重篤な副反応が起きるのだけれども、死亡に至っている人はいない。ワクチン自体が非常によく分からない。非常に恐ろしいことが起きるワクチンだとすると、高齢者だけに起きて、50歳までの人に起きない理由は何か、逆に言うと考えなければいけないわけですよね。このデータは難しいのかもしれませんが、50歳までの人たちにどのぐらい打っていて、50歳以上の高齢者というと失礼ですね。中高年者、あるいは高齢者にどのぐらい打っているかというデータがこれにあると、もうちょっと物事を考えるときに冷静に判断できるのではないかと思います。
○事務局
 接種の順位から申し上げますと、まず医療従事者が最初にあり、妊婦、基礎疾患を有する方の中で基本的に小学校3年までを最優先ということで、そのあとに基礎疾患を有するそれ以外の方、この中に高齢者の方がたぶん入ってくると思われます。それから幼児、小学校低学年の方については、前倒しをお願いして、11月後半から打っています。そういう面では医療従事者の方は、65歳未満の方が相当部分だろうと思われるわけで、この中でも御高齢の方というのは、明らかに基礎疾患を有する方が、もともと分布人口にあるということです。どれぐらいの数があるかということについて言いますと、正直言いますと、まだ接種者側の報告については、医療機関の先生方も診療のほうでお忙しいということがありまして、10月19日に開始いたしましたけれども、まだ31日までの報告については、十分に補捉ができていない状況です。もう少し経ちますと、分母の方が、きちんと年齢階級別、あるいはグループごとに分けておりまして、基礎疾患を有する方についても、それ以外の年齢階級のグループと同じように分けて御報告いただくことにしておりますので、これが出てまいりますと、もう少し議論ができると思いますが、いずれにしましても、接種者そのものにかなり現時点ではハイリスクといいますか、もともと基礎疾患を持っている方が65歳以上では、これがほとんどであるというように御理解いただければと思います。
○稲松座長代理
 東京都健康長寿医療センターの稲松です。私どもの病院で、長年高齢者の死因について様々検討してきて、以前、当院の副院長の松下が報告をしております。その印象から言いますと、それは別にして、ともかく日本人は約1億ちょっといて、毎年100万弱が生まれて、100万弱が死んで、人口が平行になっている。現在の傾向では、亡くなるのはほとんど高齢者であるというような事実で、そういう意味では年間約80万、90万という方が亡くなっています。我々の病院の検討で、いわゆる高齢者が24時間前までは一見元気だったけれども、予期しない死に当たった人というのは、大体5%か10%ぐらいがその範疇に入ってくるのです。そういう方が、例えば心筋梗塞であったり、不整脈死であったり、窒息であったり、いろいろな形で亡くなるわけです。一応全体の構図としてはそういうことですが、ただ、家族にしてみれば、急に亡くなった方が、あの人何かいつもと変わったことがあったかい、そう言えばワクチン打ちましたという話になってしまうことですよね。そういう事例について、どれだけ因果関係をつけられるのかどうかというのがあるので、非常に難しいのですが、全体の流れを見ながら、評価していかざるを得ない。個々の症例の少ない記載の中から、高齢者で普通に見られることだというように我々自身感じるか、何かちょっとワクチンの関係があるかどうか、そこを疑ってみなければいけないか。ある意味で臨床家として、いろいろなものを迫られていますが、いまのところ個々の症例を見た中で、これはワクチンと因果関係を考えなければいけないなというのは、ほとんどありませんで、ほとんどはこの状態であれば急な死亡であっても、十分了解可能である範囲というように感じております。ただ、個々の症例について、タイミングだけから言って、絶対因果関係がない、100%因果関係がないというのは、神様だって言えないわけで、そこのところはある意味では疫学的な調査で例えば在宅酸素療法の患者さんで、ワクチンを打った人のほうがたぶんむしろ死亡率が下がると思うのですが、明らかな死亡は増えていないとか、そういうバックグラウンドがあれば、またもう少し強く言えると思います。
○川名委員
 防衛医科大学の川名です。この検討会には初めて出席させていただいたのですが、説明があったと思いますけれども、資料1-1の季節性インフルエンザワクチン接種というのがあると思いますけれども。例えば本当に、平成19年、平成20年は4,000万人以上の方が打って死亡例が2人か4人か、明らかな関係がなしということは間違いないというか、むしろこれは、稲松先生の話などを考えますと、確率論的には少な過ぎる報告だということが言えるかと思うのですけれども、というのは、おそらくこういう数字が出ていると、当然2人とか4人という数字と、今回の数十人という数字は、今後比較の対象になるということなのですけれども、平成19年、20年の報告の基準とか、あるいは2人、4人という数字が出てくる前に、ある程度の検討がされて、類似分けがされているのかまでいっているのかとか、その辺はいかがですか。
○松本座長
 その辺については前回ありましたが、もう1回お願いします。
○事務局
 事務局です。本日、配布している資料の参考資料1-4です。1枚紙で裏表になっているものです。資料の後ろの方についています。こちらは、前回11月21日の取りまとめの資料です。いま、川名委員から御指摘があった部分につきましては、1ページ目の1.の○の3つ目に記載をしています。新型インフルエンザワクチンについては、確かに先ほどの資料1-1の2枚目のところから見ますと、副反応の報告が高いように見えるという御指摘ですが、今回の新型インフルエンザワクチンの接種事業においては、死亡、臨床症状に重篤なもの、後遺症を残す可能性があるものに該当すると判断されるものは、因果関係の如何に関わらず報告の対象としています。さらに、この実施要領のもとで、接種医療機関に対する契約により、報告を求めているというような状況があること、あと1-1の2枚目の4,700万人のうちの平成20年度の2人とか、平成19年度に4人といった数字は、季節性インフルエンザの副反応のデータということですが、二つ目の矢印に書いていますように、薬事法のもとで副反応によると疑われる疾患を報告するということで、さらに医薬品機構等の評価を得て、ここに公表させていただいている数字ですので、報告をいただいたものをありのまま公表させていただいている、今回の仕組みと、報告の仕組みからみても、違う前提のもとでの御議論というところかと思います。あとは、当然社会的な関心が高いという理由も考えられるということで、前回のまとめの中で、このような形で御紹介させていただいたところです。
○松本座長
 よろしいですか。
○永井委員
 私も前回出席していなかったもので、質問させていただきました。先ほど数字がこういう基準で出ているのですが、ネット上だけを見ても、死亡数が多いみたいな話だけが広がってしまうのです。ですからこういう基準で発表していますから、多めに出て当たり前です、当たり前とは言いませんが、出ますという話をもう少し明確に打ち出さないと、臨床家としては、患者さんがもう既に今度のワクチンは、死亡数が多いのですかということを、表の数字だけで言われてしまうので、みんな基準が違いますという話も出てこないと誤解を招くのではないかという気がいたします。基礎疾患の人が多いというのは、基礎疾患のある高齢者に打つべきで打っているのであって、その人たちに打たないかということにはならないはずなので、基礎疾患の高い方がたくさんお亡くなりになっているのは残念なことなのですけれども、その人たちこそ我々は打とうと思っているわけでして、基礎疾患がある人は、逆に危ないですよみたいな話が出てしまうのも、臨床現場は非常に困るのです。打つべきだけれども打つと危ないよというような話もいき渡ってしまうと困るし、その辺の誤解がくれぐれもないような発表の仕方というのが非常に大事だなと思います。よろしくお願いします。
○松本座長
 その辺のところをはっきりさせたかったのですが、先生としてはいかがですか。これを打つ場合に、対象の方に説明する、また十分に注意するということで、さしあたりはやむを得ない、それしか現在の段階ではないということでよろしいですか。
○永井委員
 そうですね。私はこれでいけると思います。ただ、数字というのは、結局ワクチンは副反応があって怖いというイメージが結構強く出てしまうと、一気に打たなくなるということですから、副反応と思われるような症状の国民全体の許容範囲というのが、なかなか定まらないところがあると私自身は思っているのです。ちょっとでも出たら全部アウトみたいになるのか、ここら辺ぐらいの数字は、アナフィラキシー様の症状も含めて、国民全体で受け入れられるのかという、こことは大きく関係あるかどうかわかりませんけれども、副反応の許容範囲とをある程度国民の皆様方で決めていただかないと、なかなか難しい部分も出てくるのかなという気がいたします。将来的な話です。
○松本座長
 季節性と比べてどうだというのは、いちばんいまの段階では簡単だろうと思うのですが、やはり、評価する場合の評価基準をはっきりさせるのは確かに必要ではないかと思うのですが、実際やっているとやはり難しいですね。名前が書いてある先生が結構おられますが、いかがですか。どのようなものを基準に評価するのかと言われると「ううん」と言ってしまうところがあるので、永井先生がおっしゃるのが非常に理想は理想なのです。何かよいアイディアがあればお示しいただければと思います。ただ、先ほどもおっしゃいましたように、すべき人に打ってこういうことが起こっているものですから、やはりそれによって直接的な死亡というものはない。いまお話を聞きましても、直接的に死亡に結びついた症例はないというのはよろしいのではないかと思うのですが、基礎疾患を悪くしたかもしれないというのは、確かに存在し得るかと思うのです。こういう方にどうするかというのがいちばん問題になるかと思うのですが、この方はインフルエンザにかかった場合には、いちばん危険性がある、重篤になりやすいというジレンマでもあるわけですので、永井先生にお尋ねしましたように、実際現場で打っておられる先生方が注意されるというしか、いま現在では方法としてはないかなと思っているのですが、いかがでしょうか。
○河野参考人
 やはりワクチン自体を先生方でも誤解されているのです。新型ワクチンを打って、3週間後にかかりました。これをどう思いますかという質問が来るのが一般の医療従事者なので、ワクチンをどのような目的で打っているのか、やはりもう少し明確にすべきだろうと思います。打ったらかからないということは、以前からそんなワクチンがないということを。それとやはり、絶対に高齢者や基礎疾患がある方に打つべきなのですが、先ほども申しましたように、かえってワクチンが本当はいいものなのに、それがあるために悪者になった。ですから、この前、議論で出ましたように、どういった場合に注意していくということを、もう少し分かりやすく、例えばどんな表現がよいか分かりませんが、身体障害者の1級など、心肺疾患があって、御高齢で、例えば御自宅にずっといる方で、ほとんど感染のリスクがない方においては、やはりメリット・デメリットを十分に考えてというような、各先生方がこと細かにそういったところまで指示しないと、どうしてもワクチンを打ったために、たまたま亡くなっている。永井先生が先ほどおっしゃったように、そういったことで、ワクチンとの因果関係がどうしても否定できないということになってしまいますので、そこの辺りをもう少し明確に言わざるを得ないのかなと感じます。
○松本座長
 大変難しくて、医者を教育することも必要になってくるわけですが、飯沼先生いかがでしょうか。
○飯沼委員
 たいがい振られると思って覚悟はしておりましたが、答えがないので困ります。今2回やるというお話が出ましたが、あの質問はよくあります。重篤化予防、死亡率減少のために打つということだけを説明に使うと、2回かかるのも説明できるわけですが、打てば70%ぐらいは感染防御の印象があるわけですから、そこをどう説明するかということも大事ですし、いろいろなことをはっきり説明して打つことが大事です。我々の所に来るいちばんの苦情は、書類を書くのが多いということと、この患者をどう回して治療して差し上げるかということで、ワクチンの接種まではとても回らないということです。
 何が言いたいかというと、1人の患者さんにワクチンの何たるかを全部説明することはとても無理なので、先ほどから出ているように公報をはっきりしていただきたい。しかも、難しい言葉ではなくて、国民が分かりやすい言葉で、じっくりと、何回でも説明していただきたい。そうすればいろいろな誤解も解けますし、先ほどあったようにデータが出てくる基準が違うとおっしゃられても、その説明でも非常に難しいと思います。それも何回も易しい言葉で言わないと。そこがお願いと希望です。
○松本座長
 ありがとうございました。その辺は事務局の方でよろしくお願いします。やはり、死亡例にしても通常の副反応にしても、判定基準についてもう少しみんなが分かるような基準を作ることが必要ではないかと思いますので、その辺も検討していただければと思います。これまでのお話を聞いていますと、現在の段階で、永井委員は不服かもしれませんが、ワクチン接種と直接の死亡とは関係ないということでよろしいですか。
○永井委員
 不服はありません。関係ないと思いますので、不服は特にないです。進めることに対してはあれですが、発表の仕方等について誤解を招かないようにというのが最大のポイントです。
○松本座長
 前回取りまとめた案のとおりで、ここはよろしいですか。これを変更する必要は、現在の段階ではないということで、前半は締めくくってよろしいでしょうか。
○桃井参考人
 老人医学の専門の先生のコメントが関係ないという医学的な御判断であればそうなのだろうと、私は小児科ですので思いますが、これらのデータを見せられて「それでいいですね」とおっしゃられても、疫学的に比較検討できるような数字もありませんし、カルテも拝見しておりません。ですから、今後こういう症例はたくさん出てくると思うので、スタディデザインとしてどうしたらいいのかということも少し考えないと、資料1-5で接種から1、2、3がピークで、2日がピークになっているのは、たぶん主治医の先生が心理的に関連性を否定できないと思われるピークが1、2、3なのだろうと思うのです。
 しかし、そうであるということを言うには、主治医の先生がどう思おうと、こういう方々の死亡がどのように分布されていたかの数字がないと判断できないわけです。ですから、こういう重篤な基礎疾患を持った高齢の方の死亡を、何日まで全例を見たら因果関係が否定できるのかとか、そういうスタディデザインがないと何も言えないのではないかと思います。先ほどの議論では、いろいろな免疫学的反応が後押しをした可能性は否定はできないということですが、予防接種の重要性を鑑みても、マスにおける重要性を鑑みても、マイナスな印象を与えることは非常に大きなマイナスだとは思いますが、その一方で、どういうスタディデザインをしたらこれが本当により関係がないと言えるのかを是非御検討いただきたいと思います。
○松本座長
 そうですね。その点は事務局でも御検討いただければと思います。
○事務局
 それでは、前回の結論である参考資料1-4の2ページですが、「基礎疾患を有する高齢者の死亡について」の三つ目の○で、本日の御評価においても直接の明確な関連の部分においては認められたものはないというおまとめかと思います。ただ、五つ目の○にありますように、「重度の基礎疾患を有する患者においては、ワクチンの副反応が重篤な転帰につながる可能性も完全には否定できないことから、接種時及び接種後の処置等において留意する必要がある」と。ただし、六つ目の○にありますように、リスクベネフィットの部分が当然高齢者で基礎疾患を有する方にはあるという御評価かと思います。
 今後の対応の部分ですが、本日いろいろと御指摘がありましたように、3.今後の対応の二つ目の○ですが、「心臓、じん臓又は呼吸器の機能に自己の身辺の日常活動が極度に制限される程度の障害を有する」方等への接種にあたっては、特にその接種を行うことの適否を慎重に判断するよう求めているところですが、これをさらに徹底させていただくといった対応、また、ワクチンの接種において個々人の判断により行うことを考慮しつつ、今御指摘があったいろいろな情報提供について、行政としても徹底して行うべきだといった部分について、前回の御議論を今回も先生方に御確認いただくということでよろしいでしょうか。
○松本座長
 桃井先生、よろしいですか。確かに死亡症例が一人歩きしているので、大変危険ではあると思うのですが、その辺は十分説明をするように事務局でもお願いします。
○稲松座長代理
 桃井先生の御指摘は当然で、結局疫学的に専門家も納得するようなきちんとした比較試験がなければ、これは決着がつかないのです。そういうものがあれば、これは関係ないですよと言えるのですが、我々自身もそこで言えないでいるのです。今回の機会を捉えて、透析患者だけできちんと比較試験をするとか、在宅酸素をやっている人だけでやるとか、ある程度条件を揃えて比較することはそう大きい仕事でもないような気がしますので、専門の先生に依頼するとか、そういうことを少し考えていただければ幸いだと思います。
○事務局
 事務局の方でも、いろいろ研究班等がありますので、そういった場で御指摘を踏まえて少し検討させていただきたいと思っております。

○松本座長
 よろしくお願いします。ほかにございませんか。
○事務局
 もう1点確認ですが、本日御紹介しました小児におけるけいれん、脳症などの事例、またはギランバレー症候群等の可能性ありと評価されたようなものも、重篤症例にありました。これらについては季節性インフルエンザワクチンでも見られる副反応ではありますが、引き続き情報収集を行って、評価を継続するということでよろしいでしょうか。
○松本座長
 よろしいでしょうか。特に御異論はございませんか。
(異議なし)
○事務局
 ありがとうございました。
○松本座長
 よろしいでしょうか。よろしいようでしたら、新型インフルエンザワクチンの安全性に関する議題はこれまでとなります。なお、本日は会議終了後座長から記者向けブリーフィングを行うことになっておりますので、座長に一任させていただきたいと思います。
 それでは、合同検討会はこれで終了ということでよろしいですか。
○事務局
 ありがとうございました。合同検討会、インフルエンザワクチンの関連の会議につきましては、これにて終了とさせていただきます。これ以降は、「平成21年度第5回安全対策調査会」として、単独で引き続き議事を進めたいと思います。「新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会」の先生方におかれましては、安全対策調査会の参考人として御参加をお願い申し上げます。引き続き、松本先生、よろしくお願いします。
○松本座長
 それでは、安全対策調査会として、抗インフルエンザウイルス薬についての議題に入ります。本日は、厚生労働科学研究インフルエンザ様疾患罹患に伴う異常行動研究班の主任研究者であります岡部先生の御都合がつかず、代わりに分担研究者の大日先生が参考人としておいでになっておられますので、大日先生から説明をいただきたいと思います。その前に、事務局からこれまでの抗インフルエンザウイルス薬及びインフルエンザ罹患時の異常行動に関する安全対策等について説明をいただき、その後資料2-1について大日先生に御説明いただきたいと思います。まず、事務局からお願いします。
○事務局
 それでは、事務局から参考資料2-2から2-6までに関して簡単に説明させていただきます。
 参考資料2-2、今年の6月に安全対策調査会で取りまとめた「リン酸オセルタミビル(タミフル)について」という、全部で47ページの資料を御覧ください。6月16日付で取りまとめを行っております。3ページですが、右肩に「別添参考資料」と付いております。タミフル並びにインフルエンザにおける異常行動の安全対策については、かなり前から取り組んでいる課題ですが、「タミフルの安全対策の経緯等について」の一つ目の○で、平成13年2月にタミフルが開始されております。平成16年5月に「精神・神経症状」に関する使用上の注意の追記が行われ、○の三つ目ですが、平成19年の2月に入ってタミフルを服用したとみられる事例においての転落死が発生したということで、平成19年2月には万が一の転落事故を防止するための予防的な対応として、小児・未成年者についてインフルエンザと診断され治療を開始されたのちは、タミフル処方の有無を問わず異常行動発現のおそれがあることから、自宅において療養を行う場合、異常行動の発現のおそれについて説明すること、少なくとも2日間保護者等は小児・未成年者が1人にならないよう配慮することが適切と考え、平成19年2月28日にこの旨の注意喚起が行われたということです。
 この際の注意喚起文書は、参考資料2-6として本日も御用意しておりますので、御覧いただければと思います。
 この後、平成19年3月20日には、その後にも発生したタミフル服用後の転落事故を受け、「緊急安全性情報」を発出しております。これらに関して、タミフルに関する基礎、あるいは臨床WGなども実施しております。参考資料2-2の6ページ、四角の囲みが終わったすぐ下の○ですが、タミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬「ザナミビル水和物及び塩酸アマンタジン」、リレンザとシンメトレル等ですが、平成19年12月26日にはこれらの抗インフルエンザウイルス薬に関しても服用・使用後の異常行動等に関する医療関係者への注意喚起指示を行っております。
 7ページ以降にあるようなWGの検討を経て、参考資料2-2の1ページに戻りますが、本年6月に基礎WG、臨床WGの結果を受けました。この際、廣田班疫学調査並びに岡部班疫学調査ということで、のちほど大日先生から中間報告をいただくものについて、すでに過去3シーズンこういった調査を実施しており、今回が4シーズン目の中間報告になります。
 それらの検討を踏まえて、2ページです。一つ目の○、タミフルについて現在講じられている措置、注2として中ほどに囲ってある分ですが、現在も妥当であり、引き続き注意喚起を図ること、ほかの抗インフルエンザウイルス薬についても同様の異常行動に関する注意喚起の継続が適当であるということになっています。2ページの○の最後ですが、引き続きタミフルの服用と異常な行動等との因果関係についての情報収集に努め、必要な対応を行うべきであるということになっております。
 今年度も資料2-1にあります岡部班の研究をスタートいただいているわけですが、平行して、参考資料2-3です。今年度新型インフルエンザが発生して、8月には感染症法によるインフルエンザ疾患の調査の定点医療機関当たり1名の週当たり患者を超えたということで、9月4日付でタミフル、リレンザ、アマンタジンに関して「注意喚起の徹底について」というものが資料2-3の1~3ページにありますが、異常行動に関する注意喚起などを9月以降順次実施するようにという指示をしております。
 4~6ページは、それぞれの医薬品ごとですので一つずつになっておりますが、4ページのタミフルについてのものですと、新型インフルエンザに対してリスクが高い患者として想定される方々についての調査等の対策を実施し、それらの方に対する情報を整理し、適切な情報提供を行うようにという対策を求めております。
 これらに対する対応が、参考資料2-4です。注意喚起とハイリスク患者等への情報提供資料ということで、次のページが「タミフルの適正使用のお願いと安全性情報のご案内」で、○の二つ目では異常行動に関する注意喚起などの記載があります。5~6ページは、実際、医療機関、診療所、薬局等に配られている患者様向けの注意喚起文書です。7~8ページは、本年9月以降に配布されているリレンザの注意喚起文書になっております。
 リレンザの方は、10ページにあるものが11月ということで、先週から改めて配布されている分です。11ページには、異常行動の見られた症例として2階からの飛び降り症例についての症例概要も、現在情報提供されております。
 14ページは、シンメトレルについてのみ添付しております。シンメトレルについては、14ページの囲みの一つ目にありますように、異常行動等に先駆けて、新型インフルエンザはアマンタジン耐性であるという報告をまず情報提供し、その後腎障害の患者さん等に対する注意喚起、異常行動に対する注意喚起が行われております。
 17ページ以降につきましては、ハイリスク患者に対する情報を整理し、情報提供するようにということです。19ページですが、「新型インフルエンザの診断と抗インフルエンザウイルス薬の処方について」ということで、妊婦あるいは透析患者、10代への投与等についてという情報提供が、中外製薬のホームページ並びに医療機関への情報提供等が行われております。詳細は省略しますが、70ページからの分はリレンザについて、同様に市販後の使用経験、妊婦、小児、その他のハイリスク患者などに対する使用成績をまとめて、ホームページなどを通じて医療関係者向けの情報提供が行われているという状況です。
 参考資料2-5については、抗インフルエンザウイルス薬の使用状況に関して、グラクソ・スミスクライン株式会社並びに中外製薬株式会社から提出を受けているものです。簡単に説明しますが、1ページがGSKから、2ページ以降は中外製薬からになります。若干数字に違いがありますが、おおよその傾向は類似しているということです。1枚目のGSK社から提出された資料について御説明します。いちばん上に、左から06-07シーズン、07-08シーズン、08-09シーズン、09.5-10シーズンとあって、いちばん右が新型インフルエンザH1N1が流行の主流となって以降の分布です。縦軸ですが、いちばん上が65歳以上、20~64の成人の層、10~19の10代、10歳未満ということで、使用区分を縦に表しています。右に出ている、いちばん左で言うと全年齢平均7.0%というのがリレンザとタミフルのシェアの割合を示すもので、06-07シーズンでは全年齢層を通じてほとんどタミフルが使われています。07-08シーズン以降は、07-08シーズンに入って10代においてリレンザが大きく、85.5%と使用を伸ばし、08-09シーズンではAソ連型のタミフル耐性が流行した年でもありますので、全年齢層にわたってリレンザのシェアが伸び、引き続き新型インフルエンザの流行による抗インフルエンザウイルス薬の使用が、いちばん右ですが全体で約4割を超えるぐらい、10代では8割程度がリレンザのシェアとなっております。
 以上のような状況ですが、今年度引き続き実施している異常行動の研究班について中間報告を頂戴しましたので、大日先生から御説明いただければと思います。
○松本座長
 それでは、大日先生、中間報告をよろしくお願いします。
○大日参考人
 国立感染症研究所の大日です。インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の情報収集に関する研究の中間報告を、研究代表者の岡部先生に代わって報告させていただきます。
 研究班の構成は、資料2-1の1ページの下の段にあります。
 次のページですが、図1に全国5,000の医療機関からのインフルエンザ様疾患の患者報告を定点あたり報告数でまとめており、現在の状況が赤い線で示されております。図2はそこでの年齢構成で、小児が75%以上という状況です。
 次のページですが、図3にありますのは分離検出報告です。第28週以降ですが、新型がほとんどすべてということです。以上は発生動向調査及び病原体サーベイランスでの状況です。
 引き続き、研究班の報告内容に移ります。先ほど御紹介がありましたように4シーズン目の調査になっており、2006年、2007年、これは後向き調査ですが、そこから始まり、今シーズンも新型インフルエンザの発生も受け、9月25日から若干例年より早い段階でスタートしております。
 調査概要に関しては、今日御報告するのは重度のみの場合ですが、重度というのは下の段にあります飛び降りとか急に走り出すなど、制止しなければ生命に影響を及ぼす可能性のある行動が見られた場合に、重度の異常行動ということですべての医療機関から御報告いただくというデザインにしております。インフルエンザ様疾患の定義は発生動向調査と全く同じものですので、通常のものと考えていただいて結構かと思います。
 前半は重度の分析ということで、11月15日までの151例御報告いただいた中で御紹介します。7ページの図4ですが、発熱週と発生動向調査、異常行動の重度の発熱週が棒グラフ、発生動向調査の定点あたり患者数は折れ線グラフで示してあります。4年分示してありまして、左上から2006年、2007年、右上から2007年、2008年、左下が2008年、2009年、右下が2009年、2010年と、現在進行中のものです。横軸は疫学週ですが、縦軸並びに横軸のタイミングを合わせてありますので、相互に比較可能な形になっております。見ていただくと、タイミングが早いというのは新型インフルエンザで当然のことなのですが、ほかの3シーズンと比べると、ほかの3シーズンは若干折れ線グラフと棒グラフの間に乖離がありますが、今シーズンに関してはほとんど乖離がない。少なくとも44週までは乖離がないということで、若干昨シーズンまでのいわゆる季節性インフルエンザの状況よりは、定点あたり患者数と比べると報告例が多いという状況です。
 11月15日までに、今シーズンは151例ですが、昨シーズンはシーズントータルで179例、2007年、2008年シーズンは77例ということですので、すでに2007年、2008年シーズンの倍ぐらいの報告をいただいて、これから流行が拡大するに従って増えていくのかなと予想しているところです。45週、46週が大幅に下がっておりますが、11月15日は46週で、異常行動ということもあり、かなり報告に遅れがあります。今後45週、46週も積み上がっていくのかなと予想しております。
 図5ですが、年齢分布です。縦軸は各年によって違いますが、横の年齢の刻み幅は同じです。これで4年分を比較しますと、ピークが11~13歳ぐらいで、これまでの3シーズンよりは若干高いのかなということです。平均値を見ても9.87歳、中央値も11歳ということで、過去3シーズンより若干高い形になっております。
 患者の性別ですが、これも4シーズンかなり安定的で、男性が66~75%程度です。
 表1.から3.ですが、発熱から異常行動発現までの日数を3シーズンで、表1.が今シーズン、表2.が昨シーズンという形でまとめております。約4分の1から30%程度が1日以内、2日目に起こるのが約半分ということで、2日以内が75%程度というのは3シーズンで共通しております。
 図7は最高体温ですが、これはほとんど平均値、39.35ぐらいで、大きな相違はありません。
 図8は迅速診断キットの実施の有無ですが、これに関しては今シーズン、今回の新型インフルエンザでは実施率が若干低いということです。これは疫学的な状況もあるのかなと思っております。
 図9は迅速診断の検査結果ですが、本シーズンはほとんどすべてA型で、それ以外は陰性という結果です。
 図10が、注目されている睡眠との関係です。濃い赤色の部分が眠りから覚めて直ちに起こったということで、過去4シーズンとも共通して50~60%ぐらいが直ちに起こると。これは今シーズンも過去3シーズンも共通しているところです。
 図11に服薬状況がまとめてあります。右側から見て灰色の部分が服薬なし、濃い黒色の所がアセトアミノフェンのみが服薬されているということです。紫色がリレンザのみ、水色がリレンザ+アセトアミノフェン、赤色がタミフルのみ、赤色の横がタミフルとアセトアミノフェンです。白い所はいずれかの薬剤の服薬状況について不明な場合には全部不明と、いずれかが不明の所に入れております。今シーズンに関しては、いずれかが不明が約半分ということで、前3シーズンと比べると多い状況です。
 薬剤ごとに見ますと、リレンザ、あるいはリレンザ+アセトアミノフェンが26%、タミフルのみ、タミフル+アセトアミノフェンが17%ということで、先ほど御紹介がありましたように、リレンザの服薬状況が非常に多くなっておりますので、それを反映して、数字的にはタミフル服用後の異常行動よりもリレンザ服用後の異常行動の方が多いという状況です。過去3シーズンに関しましては、リレンザ服用後の異常行動もタミフルよりは少ないものの、報告はされておりますし、あるいはアセトアミノフェンのみでの異常行動もかなりの割合で報告されている状況です。
 図12では、異常行動の分類ということで、突然走り出す、飛び降り等々を項目ごとに複数回答で示しております。これも4シーズン非常に共通しており、突然走り出すが非常に高く、次いでその他、飛び降りはかなり少ないという傾向はほぼ一致していると判断しております。
 以上が重度の分析でしたが、さらに飛び降りと突然走り出すのみに限定した分析を次に示しております。例数としては69例に減少しますが、先ほど申し上げたような傾向がほぼ維持されていると思っております。年齢も、今シーズンは若干高いということです。患者の性別も4分の3ぐらいが男性です。最高体温は、過去3シーズンと比べてあまり変化はないということです。迅速診断キットの調査とその結果についても、全体と同様かと思っております。
 薬の服薬状況ですが、これに関しても先ほどお話した状況と傾向的にはほぼ一致しているのかなと思っています。今シーズンに関しては、リレンザの服薬後が22%、タミフルが同じく22%という形で、こちらでは同じ数になっておりますが、リレンザの割合が過去3シーズンと比べて増えているということです。睡眠の関係も、重度全体よりも若干眠りから覚めて直ちに起こったという割合が非常に多くなっているということです。
 以上のことをまとめます。新型インフルエンザの流行拡大に伴って、異常行動の報告も増えている状況です。内容的には従来の季節性インフルエンザにおける異常行動の報告とおおむね類似しています。薬剤の使用状況についても、従来の季節性インフルエンザと同様に抗ウイルス薬の種類、使用の有無と異常行動については特定の関係が認められないという状況です。一方、飛び降りなど結果として重大な事態が発生しかねない報告もあります。今後、このような報告の増加には注意を行う必要があるとともに、一方で注意が十分でない、あるいは注意喚起が十分でない可能性も指摘されるかと考えております。
 以上から、まだシーズンの途中で情報は限られている段階ですが、今後さらに報告を収集して、継続して評価を行う必要があると考えております。また、異常行動による重大な転帰の発生を抑制するために、引き続いて抗インフルエンザウイルス薬の処方に関わらず、インフルエンザ発症後の異常行動に関する注意喚起について、新型インフルエンザについても季節性インフルエンザと同様に発生するし、報告も集積していることを踏まえて再度の注意喚起を行うこと、抗インフルエンザウイルス薬についても従来同様の服薬後の注意ということで注意喚起を徹底するとともに、今後とも異常行動の収集・評価を継続して行うことが必要であると考えております。以上です。
○松本座長
 ありがとうございました。ただ今の大日先生の御説明並びに事務局の説明に対して、何か御質問、御意見等ございますか。
○永井委員
 薬の組み合わせのところで、「いずれかが不明」というのが毎年3分の1から4分の1で、今回半分ぐらいなのですが、これは今後判明するのでしょうか。
○大日参考人
 報告されている分に関しては、追いかけて調査するようなことは考えておりませんので、今後報告例が増えていって、そこでの不明が少なかったら、割合は減っていく可能性はあるのですが、今現在不明のところは調査する予定はありません。
○庵原参考人
 三重病院の庵原です。表3ですが、異常行動はすべて発熱から2日目に出ていますが、日数の計算のときは発熱日を1としてされているかということの確認と、この現象は服薬に関わらず、タミフルを使おうがリレンザを使おうが同じ傾向があるということですか。
○大日参考人
 1日以内というのは24時間以内ということで、初日を1日目と勘定しております。服薬状況との較差の表は今日はお出ししておりませんが、基本的には同じと考えております。
○庵原参考人
 飲んでいない方もこの傾向があるわけですか。
○大日参考人
 そうです。
○庵原参考人
 タミフルにしてもリレンザにしても、服用していないにしてもこの傾向があると言うことですね。要するに、熱が出て2日目に異常行動が起こっていると。そこの確認です。
○大日参考人
 そうです。ただ、例数が服薬全くなしの方は随分減っているので、なかなかきれいな関係にはならないかと思いますが。
○川名委員
 防衛医大の川名です。確認したいのですが、本来オセルタミビルの警告としては10歳以上の未成年と言われているわけですが、大日先生がお調べになったものを見ると、10歳以上の未成年は全症例の半分、場合によっては半分よりもむしろ10歳以下の方が多いわけです。これは添付文書の警告の根拠というか、この結果を見ると添付文書の警告と少し乖離があるような印象を受けたのですが、その辺はいかがでしょうか。
○事務局
 タミフルの従来使用制限の大きな根拠になっているのは転落で死亡に至った事例ということで、これが10代に集中しております。
○河野参考人
 印象だけでよろしいですか。ここまで出ているデータで、あとはどのようなデータが出れば、薬剤と関係がある、ないという結論が下されるのか。私は専門ではないので分かりませんが、WHOなどはここに関してはすでに結論を出していると伺っているのですが、我が国ではこういった情報を詳細に収集して、この結論をいつごろ、どのような形で、どんなものがあれば結論を出せるのか、何かこの委員会で考えられているのでしょうか。
○松本座長
 それは今のところはないのですが、事務局から何かありますか。
○事務局
 まさしく今御質問いただいたような因果関係についての結論をなるべく出したいということで、ずっと検討はしてきていることではありますが、これは使っていない状態と使っている状態の間を同じ土台で比較するということをかなりの規模でやらないと、明確な結論を出すことは困難だろうという話があります。これを今の時点で圧倒的多数の方が、インフルエンザの治療にタミフルとかリレンザとか抗インフルエンザウイルス薬も使われるようなことが実態として慣行とされている状況の中で、改めて使わないケースと厳密に比較するような試験を大規模にやるのは現実には不可能です。これが事情としてはありますし、その次善の策として大規模な疫学調査を計画してやることも1度やっているわけですが、流行の最中にそういうデータを精度よく集めることも非常に困難を極めており、この調査会においても今年6月にまとめていただいた際も1万例近く集めた疫学調査の結果も、これではなかなか評価は難しいという御判断をいただいております。したがって、明確な結論を出すことについては努力をしてやってきておりますが、なかなか難しいというのが現状です。
 一方で、表れている問題が異常行動、飛び降りによる、場合によって大きなけがをしたり亡くなったりという問題ですので、これに対する対応は、飲んでいようが飲んでいまいが対応としては同じだと。インフルエンザに罹患された場合の対応を注意深く見守ること、1人にしないで、目を離したときに飛び降りてしまうことがないように目を離さないという対応は、どちらの場合であっても同じであるということから、対策という意味ではできることは明確であって、それをきちんと徹底することによって、薬を飲んでいることだけで注意をして、飲んでいないケースに対する注意が疎かになることも問題であるということも含めて、明確な御意見はいただいております。したがって、そのような対策に関してはある程度はっきりした御意見をいただいて、それを今周知徹底しているところです。
 ただ、今回新型インフルエンザの流行ということになりましたので、従来の季節性インフルエンザともしかしたら様子が違うかもしれない。その点は、実際に集めてみないと分からないということもあり、今回流行が早く始まったものですから、岡部先生の研究班の調査のスタートを早くして、ここまでかなりデータが集まってきましたので、御覧いただいたということです。結果については今御説明があったとおりですので、これについて対応を御検討いただいて御意見を賜れればということで、今日お諮りをした次第です。出たばかりの結果ですので、こういうことでできるだけ対応をスピーディーに、タイムリーにやっていきたいということでやっているところです。
○松本座長
 ほかに御意見等ございますか。大日先生、ありがとうございました。
 続きまして、事務局から資料2-2と当日配布資料について説明をお願いします。
○事務局
 事務局から資料2-2-1、資料2-2-2、当日配布資料について御説明します。現在大日先生から御説明いただいた資料にありましたように、まさにインフルエンザの流行のピークが、今がピークなのかこれからさらに伸びるのかは分かりませんが、流行が拡大している状況において、10月末までに企業が情報を入手し、私どもに副作用報告を提出いただいているものの中から、従来タミフルに関する調査会の際にお出ししておりますが、異常な行動が記録されている症例の概要のラインリストを資料2-2-1と資料2-2-2に用意しました。こちらは、今回まさにシーズン途中で情報収集の過程にあるところから、企業の評価によるラインリストとなっております。
 資料2-2-1はタミフルの方ですが、タミフルでは実際に転落、飛び降りについては4ページ目、?19に1例あります。こちらは20歳代の女性です。1月2日から1月6日までタミフルの投与を受けられており、この方はうつ病もあったということですが、14日に飛び降りが発現しているということです。こちらについては1月6日までがタミフル投与であること、並びにうつ病もあることから、関連はないという評価をしております。
 タミフルでの転落、飛び降りは今の1例ですが、資料2-2-2のリレンザについては、3ページに?16、11歳の男の子が2階の部屋から突然飛び降りて、右足の骨折をされているということです。4ページの?23、?24が12歳の男女ですが、2階から飛び降りて、?24の女児は手首を骨折されているというケースがあります。これらの症例を比較しますと、タミフルは全部で20症例の報告がありますが、10歳代が2例、リレンザは全体で39例報告がありまして、うち10歳代が28例ということで、参考資料2-5で使用した使用状況なども影響しているものと思われます。
 参考資料で申し上げたように、本年はすでに9月からタミフル、リレンザ、アマンタジンに関して異常行動に関する注意喚起文書の配布を開始し、リレンザについては11月に改めて注意喚起文書の配布も実施しているところです。当日配布資料に少しまとめましたが、平成19年2月にもインフルエンザ治療開始後の注意事項ということで、異常行動の注意喚起のお願いを発出しておりますが、それとほぼ同様なものを当日配布資料の3~4ページに、案としてゴシック体で書いております。「インフルエンザ治療に携わる医療関係者の皆様へ(治療開始後の注意事項についてのお願い)」ということで、○として、本年6月16日の安全対策調査会においてタミフルについて取りまとめられており、インフルエンザ自体に伴い異常行動が発現する場合があることが明確になったということです。タミフルについて講じられている措置、引き続き注意喚起を行うことが妥当である。また、3として、他の抗インフルエンザウイルス薬についても、同様に異常行動に関する注意喚起の計画が適当である。これに合わせて、9月からタミフル、リレンザ、シンメトレル等において注意喚起の徹底を実施しております。
 ○の二つ目として、インフルエンザ罹患時の異常行動に関する研究班(岡部班)において、新型インフルエンザが99%以上を占める現在のインフルエンザの流行状況に合わせても異常行動の報告が急増しており、これには抗インフルエンザウイルス薬処方を受けた例並びに受けていない例がともに含まれ、かつ転落例も報告されている。
 ○の三つ目ですが、また、抗インフルエンザウイルス薬の製薬企業からの副作用報告においても、異常行動の報告が流行に合わせて増加しており、この報告にも転落事例が含まれている。
 以上のことから、新型インフルエンザの罹患及び新型インフルエンザに対する抗ウイルス薬処方に際しても、従来の季節性インフルエンザ同様に異常行動発現のおそれがあることが、異常行動の報告状況からも明らかであるため、以下の点について従来の季節性インフルエンザ同様に御配慮いただきたくお願いいたします。万が一の事故防止のための予防的な対応として、特に小児・未成年者については、インフルエンザ(新型インフルエンザを含む)と診断され治療が開始されたのちは、タミフル処方の有無を問わず異常行動発現のおそれがあることから、自宅において療養を行う場合、?異常行動発現のおそれについて説明をすること、?少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が1人にならないよう配慮することが適切であると考えられます。このため、インフルエンザ治療に携わる医療関係者においては、患者・家族に対しその旨説明を行っていただきたい。
 最後のページは、タミフル、リレンザの異常行動に対する注意喚起をそれぞれ行った際の内容を抜き書き、注釈を付けております。岡部班の中間報告での取りまとめでいただいた御意見、現在の副作用の報告状況を鑑みて、このような注意喚起をさせていただければと考えております。
○松本座長
 ありがとうございました。ただ今の事務局の説明に対して御質問、御意見等ございますか。よろしいでしょうか。
 本日の議論を踏まえますと、新型インフルエンザ罹患時においても、先ほどの大日先生のまとめにもありましたように、季節性インフルエンザ罹患時と同様に、抗ウイルス薬使用の有無に関わらず異常行動に関しては注意する必要があるということかと思います。事務局は、今後の予定はどうなっておりますか。
○事務局
 こちらにつきましては、本日先生方から御意見があればそれも踏まえてということにさせていただきたいと思っておりますが、こちらの文書を関係機関に注意喚起文書として連絡したいと考えております。
○松本座長
 よろしいでしょうか。
○桃井参考人
 最後の説明の(案)ですが、アンダーラインの所で「新型インフルエンザの罹患及び新型インフルエンザに対する抗ウイルス薬処方に際しても」注意してくださいと。その下で今までのデータからも、またその下でタミフルの処方の有無を問わずということもありますので、ここは「新型インフルエンザに対する抗ウイルス薬処方に際して」ではなくて、「診療に際して」が適切なのではないかと思います。いかにも処方が問題であるかのような文面になっていますので、診療に際して注意してくださいということであって、処方に際して御注意くださいということではないはずだと思います。
○松本座長
 そうですね。その方がいいかもしれません。ありがとうございます。ほかによろしいですか。案はそういうことで公表するそうですが、よろしいでしょうか。事務局はよろしいですか。
○事務局
 ありがとうございます。
○松本座長
 それで、以上で本日の議論は終了しますが、本日の議論の取りまとめに関しては、座長に一任させていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、最後に事務局から何かございますか。
○事務局
 今回は特にありません。次回につきましては、これから改めて日程調整しますので、よろしくお願いします。また、本日の調査会の資料等については、厚生労働省のホームページに速やかに掲載するようにします。以上です。
○松本座長
 全体を通じて御発言はございませんか。ないようでしたら、これで本日の会議を終了といたします。長い時間ありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課

電話: 03-5253-1111

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