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薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録
2011年12月1日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録
○日時
平成23年12月1日(木)
○場所
厚生労働省 専用第14会議室
○出席者
出席委員(12名):五十音順 敬省略
庵 原 俊 昭、 奥 田 真 弘、 菊 池 嘉、 清 田 浩、 |
佐 藤 俊 哉、 清 水 秀 行、 中 島 恵 美、 前 崎 繁 文、 |
増 井 徹、 山 口 照 英、 山 本 一 彦、 ◎吉 田 茂 昭 |
欠席委員(9名):五十音順 敬省略
新 井 洋 由、大 槻 マミ太郎、 黒 木 由美子、 櫻 井 敬 子、 |
鈴 木 邦 彦、田 村 友 秀、 ○土 屋 友 房、 濱 口 功、 |
行政機関出席者
内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) |
森 和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) |
三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役) |
佐 藤 岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) |
○議事
○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催させていただきます。
本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
本日の委員の出席についてですが、新井委員、大槻委員、黒木委員、櫻井委員、鈴木委員、田村委員、土屋委員、濱口委員、半田委員より御欠席との御連絡をいただいております。
また、清田委員より遅れていらっしゃるとの御連絡をいただいております。
現在のところ、当部会委員数21名のうち11名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを報告いたします。
それでは、吉田部会長、以後の進行をお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告をお願いします。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1~9をあらかじめお送りしています。このほかに、資料10「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料11「専門委員リスト」、資料12「競合品目・競合企業リスト」を配付しています。また、当日配付資料として資料13「佐藤委員からの御質問」を配付しています。
続きまして、本日の審議事項に関する資料12「競合品目・競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
資料12の1ページを御覧ください。「ランマーク」ですが、本品目は「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
2ページを御覧ください。「カンサイダス」ですが、本品目は「真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症、カンジダ属又はアスペルギルス属による真菌感染症(食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症、アスペルギルス症)」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
3ページを御覧ください。「オノンドライシロップ」は、本品目は「アレルギー性鼻炎」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
4ページを御覧ください。「サリドマイド」ですが、本品目は「らい性結節性紅斑」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
5ページを御覧ください。「イマチニブメシル酸塩」ですが、本品目は「FIP1L1-PDGFRα陽性の好酸球増多症候群、慢性好酸球性白血病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤は無いことから、競合品目は無しとしております。
○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の御意見等はございますか。
御意見は無いようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものとします。それでは、委員からの申出状況について報告をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
議題1「ランマーク」は退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は奥田委員、清田委員、前崎委員でございます。
議題2「カンサイダス」は退室委員は菊池委員でございます。議決に参加しない委員は奥田委員、清田委員、前崎委員、山本委員でございます。
議題3「オノンドライシロップ」は退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は奥田委員、山本委員でございます。
議題4「サリドマイド」は退室委員、議決に参加しない委員は共にいらっしゃいません。
議題5「イマチニブメシル酸塩」は退室委員、議決に参加しない委員は共にいらっしゃいません。以上です。
○吉田部会長 本日は、審議事項は5議題、報告事項が4議題となっております。なお、本日は委員の定足数の兼ね合いにより、審議事項2を報告事項の後に行います。
それでは、議題1に移ります。議題1について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品ランマーク皮下注120mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定について」機構より説明いたします。
本剤の有効成分であるデノスマブ(遺伝子組換え)は、NF-κB活性化受容体(RANK)のリガンドであるRANKLに対する免疫グロブリンG2サブクラスのヒト型モノクローナル抗体です。
本剤は、RANKLに結合することで、RANKを介した破骨細胞の形成、活性化、及び生存を抑制し、骨の破壊に起因する病的骨折等の骨関連事象(SRE)の発現を抑制すると考えられています。
今般、本剤は、多発性骨髄腫患者及び骨転移を有する固形癌患者におけるSREの発現に対し、抑制効果を示す薬剤として承認申請されました。
本剤は、審査報告書の6ページに記載しているように、平成23年9月時点において、骨転移を有する固形癌患者におけるSREの発現抑制に関する適応にて、海外では32の国又は地域で承認されています。
本品目の専門協議に御参加くださった専門委員は、資料11のとおり10名の委員です。
以下、多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変に対する本剤の承認審査の概要を説明します。
今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、本邦を含む一つの国際共同第III相試験、及び海外で実施された二つの第III相試験が提出されました。
有効性については、審査報告書の65ページの下から12行目以降、及び108ページの上から13行目以降に示すように、骨転移を有する乳癌患者を対象とした国際共同第III相試験、骨転移を有するホルモン不応性前立腺癌患者を対象とした海外第III相試験、並びに多発性骨髄腫及び骨転移を有する乳癌及び前立腺癌以外の固形癌患者を対象とした海外第III相試験の結果、いずれの試験においても、多発性骨髄腫患者及び骨転移を有する固形癌患者におけるSREの発現抑制を目的として標準的に使用されるゾレドロン酸に対して、SREについて非劣性が検証されたことから、本剤の有効性は示されたと判断しました。
安全性については、忍容可能と判断しました。
ただし、本剤の使用について注意すべき有害事象としては、審査報告書の73ページの下から18行目以降、及び108ページの下から1行目以降に示すように、低カルシウム血症、顎骨壊死、及び感染症が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により、対応可能と判断しております。
効能・効果については申請どおり、「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」と設定することが適切であると判断しました。ただし、審査報告書の110ページの下から14行目以降に示すように、効能・効果に多発性骨髄腫による骨病変を含めることに関しては、以下のように考えました。すなわち、多発性骨髄腫及び骨転移を有する乳癌及び前立腺癌以外の固形癌患者を対象とした、20050244試験のサブグループ解析の結果ではあるものの、全生存期間に関して本剤は、ゾレドロン酸と同程度の効果が得られない可能性が示唆されております。この点については、専門協議における専門家の意見や多発性骨髄腫の骨病変に対する治療の現状等を総合的に判断すると、添付文書等に必要な情報を明記した上で、多発性骨髄腫患者に対する本剤の使用にあたっては、使用可能であれば本剤よりも類薬の使用を優先する等、本剤投与の可否を慎重に判断するよう、注意喚起する必要があると判断しました。
また、本剤の分子レベルでの作用機序は、ゾレドロン酸などのビスフォスホネート製剤とは異なるため、審査報告書の85ページの上から17行目以降、及び114ページの下から6行目以降に示すように、製造販売後には目標症例数3,000例、観察期間2年の使用成績調査を実施し、本剤の使用実態下における副作用の発現状況等を迅速に把握する必要があると判断し、申請者に指示しております。
以上のような審査の結果、機構は、「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。
本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当であると判断しました。また、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、本剤は生物由来製品に該当すると判断しました。
多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変に対する本剤の製造販売承認の可否等について、御審議のほど、よろしくお願いします。
なお、事前に奥田委員から御質問、御意見をいただきましたので、機構から回答いたします。
御質問は二つあります。一つ目は、「審査報告書に本剤とビスフォスホネート製剤との併用投与は推奨されないと機構の意見が述べられているが、具体的な対応策が読み取れない」というものでした。
機構は、本剤とビスフォスホネート製剤は骨吸収を抑制する機序が共通しており、本剤とビスフォスホネート製剤を併用投与した場合の有効性及び安全性に対する影響は不明であり、臨床的な検討が行われていないことから、本剤とビスフォスホネート製剤との併用投与については推奨できないと考えております。この点については、審査報告書の84ページに記載しましたが、資材等を用いて医療現場に情報提供をすることが適切であると判断しており、申請者にその旨を指示しております。
御質問の二つ目は、本剤の用量に関するもので、以下のような趣旨です。「審査報告書には、本剤120mgの有効性及び安全性を確認した旨が記載されている。一方、本剤の薬力学マーカーである、尿中クレアチニンで補正したI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(以下、尿中NTX/Cr)の抑制率に関しては、本剤30mg、120mg及び180mgで差が無かった旨が記載されている。本剤は抗体製剤であり、薬価が高くなることが予想されることから、同等の効果が期待されるのであれば、医療資源の有効利用と医療経済学的観点を考慮し、30mg製剤として開発・販売すべきではないか」というものでした。
審査報告書の48ページの下から6行目以降、及び83ページの上から15行目以降に記載しましたが、尿中NTX/Crの抑制率に関しては、本剤30mg、120mg及び180mgで差が無かったものの、投与期間を通じて血清中濃度を高く維持し、尿中NTX/Crの維持した抑制効果が最大数の患者で得られる用量として、本剤120mgが選択されております。なお、この点については、母集団薬物動態・薬力学解析においても支持する結果が得られております。このような背景から、本剤のSREに対する有効性が検証された試験においては、120mgのみの検討が行われております。また、申請資料から、本剤30mg投与のSREに対する有効性が明らかでないことを考慮すると、本剤の用量としては120mgを設定することが適切であると考えております。
それから事前に佐藤委員から、審査報告書の誤記等について御指摘いただきました。
誤記については、適切に修正します。
また、審査報告書の68~69ページの悪性腫瘍別の有効性の表に関して、20050244試験の対象患者数の整合が取れていないとの御指摘については、解析対象集団の違い、及び組み入れられた患者数が10例以下の悪性腫瘍については記載を省略していること等によるものですが、誤解の無いように適切に追記します。
御指摘、どうもありがとうございました。
○吉田部会長 奥田先生、今の回答でいかがでしょうか。
○奥田委員 御回答いただきましてありがとうございました。用量に関して120mgを選んだ理由を御説明いただいた趣旨は理解したつもりですが、実際に120mgの十分量を投与することが望ましいような根拠が、途中で示されていたように思ったのです。個人差等も考慮して120mgを選んだというように理解していたものですから、120mgを積極的に選んだ理由が私自身読み取れなかったので、質問させていただきました。具体的に示されているということであれば、結構ではないかと思います。
○吉田部会長 佐藤先生、いかがですか。よろしいですか。
○佐藤委員 はい。
○吉田部会長 では、ほかの先生方から何か御質疑はありますか。
○庵原委員 2点確認したいことがあります。この薬はマルチプルミエローマに対しては層別解析でも、SREに対して効果があるとは、この文章では読めないのですが、そのように判断していいのでしょうか。ただ、SREに対しては効果があるけれども、OSに対しては効果が無いので要注意であるという解釈でいいのかということです。そこが1点です。
2点目は、こういった抗体製剤の活性が落ちてくるところを「中和抗体」と言うのでしょうかということです。このような抗体製剤に対して、これが一般的な表現かどうかというのを確認します。血友病などであると、「インヒビター」という表現を使うのが一般的で、このようなものに「中和抗体」という言葉を使うのが世の中の一般的ならばこれでいいのですが。
○山本委員 こちらが正しいです。
○庵原委員 中和抗体でいいのですか。
○山本委員 インヒビターの方がおかしいです。
○庵原委員 そうですか。今、このようなものはすべて「中和抗体」という表現ですか。
○山本委員 免疫学的には正しいです。
○庵原委員 免疫学的には、「中和抗体」と言うわけですか。
○山本委員 ほかの領域の人が「インヒビター」と聞いても、実際には何か分かりません。「中和抗体」と言えば、免疫学が専門の人は分かります。
○庵原委員 活性を抑制する抗体という意味ですか。
○山本委員 そうです。
○庵原委員 ウイルスの専門では、「中和抗体」では理解ができませんでした。すみません、ありがとうございます。では1点目だけよろしくお願いします。
○機構 機構から、1点目について回答申し上げます。主要評価項目のSREについては、層別解析の結果でも多発性骨髄腫においてハザード比1.0という結果で有効性が示されています。一方、副次評価項目のOSについては、対照薬であるゾレドロン酸と比べて、ハザード比が悪くなる方向の結果が示唆されたので、今回、機構では添付文書等での対応が必要と判断しております。
○吉田部会長 審査報告書の111ページの下の表を見ると、結局、ゾメタの部分で造血幹細胞移植をして積極的に治療した患者の方が多かったとありますね。OSがなぜ伸びたかということに関して、いくつかの答えが出ると思うのですが、多発性骨髄腫自体の治療法が両群で違っていたのですね。そのため、OSに少し差が出た可能性がある。ただSREの評価項目で見た場合、PFSで見る限り有効であるということではないですか。
○機構 そのとおりかと考えております。ちなみに、先ほどのプライマリーエンドポイントのSREの結果については、審査報告書の68~69ページに記載している表の「MM」と表記しているのが多発性骨髄腫の結果です。ハザード比で1.03という結果で、対照薬であるゾレドロン酸と比較して非劣性が示されているという結果です。
○吉田部会長 だから乳癌にしても治療法がそれぞれバラバラで、とにかくターゲットに関して、どれぐらいで増悪するかをゾメタと比較して見ているだけの話なので、治療そのものの内容は、それぞれの癌に縛っていないわけですね。そのような意味で、OSは余り気にしなくてもいいのではないでしょうか。
○佐藤委員 今、庵原委員が御指摘された点は、私も少し気になりました。多発性骨髄腫における骨病変に対して承認してもいいかどうかというのは、だいぶ考えたのですが、その点に関しては専門協議も含めて非常に慎重な議論がなされていて、私の解釈の中では、少なくともゾメタが第1選択の患者さんで、多発性骨髄腫の患者さんはなるべく使用を避けて、腎障害があってビスフォスホネート製剤が使えない方に使うことで担保したいということでしたので、それで結構ではないかと思います。そのような方針でよろしいですね。ビスフォスホネート製剤も使える患者さんに関しては、国際共同治験が予定されていて、日本も参加するというように書かれていますので、できるだけ十分に患者さんに説明していただいて、あくまでもPracticeと言うよりも、試験で検証すべきものだということを徹底して、なるべく日本からも国際共同治験に参加するように働きかけていただきたいと思います。その点はよろしくお願いします。
○新薬審査第五部長 御指摘ありがとうございます。先生の御指摘も踏まえ、申請者の方にお伝えしたいと思います。
○吉田部会長 あと、審査報告書でも触れていますように、非劣性の試験で優越性が偶然見つかってしまったけれども、この優越性というのは余り意味が無いという解釈でいいのでしょうか。佐藤先生、いかがでしょうか。
○佐藤委員 恐らく68~69ページの表を見ますと、かなり対象者数の多い固形癌に関しては、一貫して0.8や0.85ぐらいのハザード比になっていますので、少しこの薬の方がビスフォスホネート製剤よりは良さそうだろうということが言えます。ただ、やはりハザード、生存曲線はかなりくっついていますので、例えば1年の骨折発生率とか骨病変発現率などで見ますと、数パーセントの違いということで、機構の判断どおり第1選択というわけではなくて、両方ともチョイスできるような薬だろうというのが、妥当な解釈ではないかと思っています。
○吉田部会長 その辺は余り強調して宣伝しないように言っておかないといけないですね。ほかにありますか。
○菊池委員 顎骨の壊死の機序が分かっていないところがあります。あと、歯科処置を行った後に悪化することは、知っている人は知っていて、知らない人は知らないと思うので、添付文書のどこかに書く等、無ければ行う前にお知らせするということが必要ではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○機構 その点に関しては、申請資料1.8の19ページに添付文書(案)がありますが、その「使用上の重要な基本的注意」の項の(6)に記載しております。
○菊池委員 分かりました。結構です。
○吉田部会長 ほかにありますか。有害事象その他も、それほどプロフィールが違うというか、突出して頻度が高いものもなさそうですが。よろしいでしょうか。
それでは議決に入りたいと思います。なお、奥田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
それでは、議題3に移ります。議題3について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品オノンドライシロップ10%の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構から説明いたします。
本剤の有効成分であるプランルカスト水和物は、申請者である小野薬品工業株式会社により開発された、選択的システイニルロイコトリエン受容体拮抗薬です。本邦においてドライシロップ剤である本剤は、小児における気管支喘息治療薬として1999年に承認されております。また、本薬の経口カプセル剤は、1995年に成人における気管支喘息治療薬として承認され、2000年に成人におけるアレルギー性鼻炎の効能追加が承認されています。今般の申請は、ドライシロップ剤について小児のアレルギー性鼻炎に対する効能・効果を追加するものです。海外において2010年3月現在、本薬はアレルギー性鼻炎治療薬として13か国で承認されており、そのうち3か国で小児におけるアレルギー性鼻炎治療薬としても承認されています。
本申請の専門委員として、資料11に記載されている4名の委員を指名しました。
主な審査内容について、簡単に御説明します。
まず、審査報告書の8ページの中段から11ページの中ほどに記載している第II相試験の結果について御説明します。第II相試験として、一般環境下において、通年性アレルギー性鼻炎患児を対象とした二重盲検用量反応性試験(ONO-1078-32試験)及びプラセボ対照二重盲検試験(ONO-1078-36試験)が実施されました。しかし、これらの2試験では本剤の有効性及び用量反応性は認められませんでした。その原因としては、10ページの最終段落から11ページの中段までに記載しておりますように、申請者は鼻症状に対する患児の自覚は乏しい旨が報告されていることに加え、日ごろの口呼吸に慣れている患児では、鼻閉を理解し難い旨も報告されていることから、鼻症状に対する患児の訴えの信頼性が評価に影響したことが一因であると推察しております。そのため、以降の試験においては、抗原暴露前後における鼻症状の変化を一般環境下よりも鋭敏に捉えることができると考えられる、花粉暴露室を用いた抗原誘発試験が実施されることとなりました。
11ページの中段の「(4)第III相試験(ONO-1078-40試験)」の項を御覧ください。10歳以上14歳以下のスギ花粉非飛散時期の季節性アレルギー性鼻炎患者を対照に、本薬の有効性及び安全性を検討するため、花粉暴露室を用いて、プラセボを対照とした2群2期の二重盲検無作為化クロスオーバー比較試験が実施されました。用法・用量は、本剤5.7~8.0mg/kg/日又はプラセボを7日間経口投与することとされ、スギ花粉暴露は各投与期間の最終日の治験薬投与後に行われました。主要評価項目には鼻腔通気度が設定されました。これは、アレルギー性鼻炎の薬効評価に通常用いられるくしゃみ、鼻汁、鼻閉の鼻症状合計スコアに比べて、より客観的な評価が可能となり、検出感度が高まることを期待したものです。結果ですが、12ページ上段の表3を御覧ください。有効性の主要評価項目であるPPSにおける花粉暴露室退室後、計5時点の鼻腔通気度の実測値より算出した曲線下面積において、本剤とプラセボの有意な差は認められませんでした。この原因については、観察期とプラセボ投与期の花粉暴露後の鼻腔通気度に再現性が認められなかったことから、アレルギー性鼻炎の薬効指標として、鼻腔通気度が適していない可能性が推察されています。
一方、申請者において事後解析が実施された結果、13ページの表4のとおり、くしゃみ、鼻汁、鼻閉の鼻症状合計スコアに基づく検討では、通年性アレルギー性鼻炎を合併した患者及び花粉暴露による症状誘発が認められなかった患者を除外した解析において、本剤群とプラセボ群間で有意差が認められました。さらに、本剤の効果は、ロイコトリエンが関与する鼻閉に強く見られると予想できることから、鼻閉に2倍の重みを付けた鼻症状合計スコアを用いて解析したところ、通常の鼻症状合計スコアよりも有効性の検出感度が高くなることが示唆されました。以上の事後解析結果を確認するため、第III相試験が再計画されました。
13ページの中段の「(5)第III相試験(ONO-1078-41試験)」の項を御覧ください。試験デザインは、先ほどのONO-1078-40試験とほぼ同様ですが、ONO-1078-40試験の事後解析を踏まえ、通年性アレルギー性鼻炎を合併した患者は対象から除外され、主要評価項目は鼻閉に2倍の重みを付けた鼻症状合計スコアとされました。
結果ですが、14ページの上の表5を御覧ください。有効性の主要評価項目であるPPSにおける花粉暴露室入室中の鼻症状各スコアの平均スコアより算出した重み付き鼻症状合計スコアは、表5の中央の欄に記載のとおりであり、本剤とプラセボの有意な差が認められました。また、副次的評価項目である鼻症状合計スコア(重み付けなし)の場合についても、表5の右欄のとおり、本剤とプラセボとの間に有意な差が認められました。
以上の結果を踏まえて、本剤の有効性評価に関する機構の判断を15ページ以降に記載しております。まず、「1)抗原誘発試験により検証試験を実施したことの妥当性について」です。環境試験において、本剤の有効性が示されなかったことに対する申請者の考察には一定の合理性があり、一般的に小児においては鼻症状の適切な評価が難しく、有効性の検出感度は低下すると考えられます。得られた試験成績を踏まえれば、環境試験において小児での有効性を検証するためには、非常に多くの症例数が必要となり実施可能性が乏しいと考えられることなどから、既に有効性が確認されている薬剤についての小児用量の検討という目的においては、有効性の検出感度を高めるために、花粉暴露室試験を検証試験として実施したことは了承できるものと判断いたしました。また、「2)抗原誘発試験による有効性評価の妥当性について」ですが、最初に実施したONO-1078-40試験で有効性は示されなかったものの、主要評価項目とした鼻腔通気度はアレルギー性鼻炎の評価指標として適切性に問題があった可能性があること、一方、ONO-1078-41試験についてはONO-1078-40試験の事後解析の再現性が認められ、試験系における鼻症状スコア評価の信頼性等にも大きな問題は無いと考えられたことから、ONO-1078-41試験の結果に基づき、本剤の5.7~8.0mg/kg/日の用量におけるアレルギー性鼻炎患児における有効性は示されていると判断いたしました。
次に、18ページの下段からの「(2)安全性について」の項を御説明します。臨床試験において死亡例は認められず、重篤な有害事象は一般臨床試験も含めて3例認められましたが、いずれも本薬との因果関係は否定され、転帰は軽快又は消失となりました。また、19ページの表7、表8などに示しておりますように、本剤の年少小児における安全性について、アレルギー性鼻炎及び小児の気管支喘息を対象とした臨床試験、気管支喘息患児を対象とした製造販売後調査における有害事象、副作用の発現率を年齢別に比較して検討を行った結果、20ページの上段からありますように、機構はアレルギー性鼻炎患児において、特有の有害事象や重篤な有害事象の発現率が高まる傾向や、本剤の安全性プロファイルが年齢により大きく異なる傾向は示唆されていないと判断しました。しかしながら、4歳未満のアレルギー性鼻炎患児に対しては、臨床試験における本剤の投与経験が無いことから、製造販売後調査において、特に年少のアレルギー性鼻炎患児における安全性を十分に検討する必要があると考えました。
製造販売後調査については、23ページの「(2)製造販売後調査等について」のとおり、15歳未満のアレルギー性鼻炎患児800例程度を対象に、観察期間を4週間とする使用成績調査を実施し、年齢、体重等の背景因子別での検討が可能となるよう考慮した上で、使用実態下での安全性及び有効性を検討する予定とされております。
以上の審査を踏まえて、23ページの「IV.総合評価」のとおり、申請された効能・効果、用法・用量に基づいて、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。また、再審査期間は4年とすることが適当と判断しております。
薬事分科会には報告を予定しております。
また、本品目については、庵原委員及び佐藤委員より、事前意見をいただいております。庵原委員からは、「ONO-1078-41試験において本剤の効果が認められた患者の範囲を踏まえて、効能・効果を季節性アレルギー性鼻炎に限定すること、また、対象患者の年齢を10歳以上とすることが適切ではないか」との御意見をいただきました。
まず、対象患者の年齢を10歳以上とすることが適切ではないかとの御意見について、御説明します。
通常、成人における効能が認められた医薬品における小児用量の評価に際しては、評価指標等を考慮して、二重盲検下での検証が実施可能と考えられる年齢層においては、原則としてその実施を求めていますが、適切な評価が困難など、検証試験の実施が困難な年齢層に対しては、成人又は年長小児と同程度の血中暴露量が得られる用量を設定して、安全性の確認を主目的とする臨床試験の実施を求め、有効性については成人又は年長小児の成績との比較結果等を参考に検討することを許容しております。
このような状況及び経緯を踏まえて、委員からの御指摘を検討いたしました。
まず年少小児の安全性については、4歳以上の患児が組み入れられた環境試験の結果等より、特段の問題は無いと機構は判断しました。有効性については、審査報告書の17ページの「3)年少小児に対する有効性について」において記載しておりますとおり、1.ONO-1078-41試験の結果、年長小児では有効性が示されており、年少小児と年長小児で病態に大きな違いは無いと考えられること、2.薬物動態について、3~9歳の暴露量は10~14歳の暴露量を下回る傾向が認められたものの、いずれの年齢の暴露量も成人に本薬カプセル剤の臨床投与量を投与した時の暴露量の範囲に含まれること、3.本申請の通常用量と同用量で申請されている気管支喘息について、年少小児、年長小児及び成人での有効性に大きな差異は認められなかったことを踏まえますと、年少小児においても一定の有効性は期待できると判断しました。以上により、アレルギー性鼻炎に係る本剤の投与対象に、10歳未満の年少小児を含めることは妥当であると考えております。
次に、「効能・効果を季節性アレルギー性鼻炎に限定すべきではないか」との御意見について御説明します。
小児のアレルギー性鼻炎においては、小児では成人と比較して鼻症状の自覚が乏しく、適切な評価が難しいため、通年性アレルギー性鼻炎・季節性アレルギー性鼻炎にかかわらず、一般環境下における臨床試験において、薬剤の有効性を検証するための試験の実施が難しいことが知られています。
また、アレルギー性鼻炎の薬効評価には、通常、くしゃみ、鼻汁、鼻閉の各鼻症状の合計スコアが用いられますが、抗ヒスタミン剤などの他のアレルギー性鼻炎用薬では、鼻閉に対する効果は弱いものの、くしゃみ、鼻汁に対して一定の効果を示すのに対し、ロイコトリエン受容体拮抗薬である本剤では、鼻閉に特異的に効果を示し、くしゃみ、鼻汁に対する効果は低いとされています。また、鼻閉は、くしゃみなどのように回数などの数値指標での評価が難しいことから、有効性の検出感度は低く、抗ヒスタミン剤等と比べても、試験の実施困難さは更に高いと考えられます。さらに、審査報告書にも記載しましたとおり、特に小児においては、鼻閉症状に伴う口呼吸への馴化により、自覚症状の改善を示しにくいことから、一般環境下において、小児における本剤の有効性を検証することは非常に困難なことが推察されました。
このような試験実施の困難さを考慮して、今回の申請に当たっては、有効性の検出感度を上げるとの観点から、意図的に抗原を暴露する試験デザインが検証試験として採用されております。また、本試験では季節性アレルギー性鼻炎患者が対象とされておりますが、これは、試験中暴露させる抗原として取扱いが可能な花粉を用いたことから、結果的に花粉を原因抗原とする季節性アレルギー性鼻炎において有効性が確認されたものであり、当該試験の結果が通年性と季節性の有効性の差を示したものではないと機構は判断しております。
また、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎では、原因抗原の違いを除いて、発現機序及び病態に大きな違いは無いことから、これまでアレルギー性鼻炎用薬の承認審査においても、通年性と季節性は同じ疾病概念の範囲内のものとして取り扱っており、両者の有効性を個別に判断することはしておりません。
このことから、今回の試験においても、季節性で確認された有効性は、通年性にも演繹可能なものと判断いたしました。
次に佐藤委員から、審査報告書の10ページの「通年性アレルギー性鼻炎患児を対象とした第II相プラセボ対照試験(ONO-1078-36試験)において、プラセボ群、低用量群及び高用量群の有効性の結果を比較した時、全く差が見られなかったことから、これは単に試験系の検出感度が低いことが理由ではないように思われる。鼻腔通気度を指標とした第III相試験(ONO-1078-40試験)の結果も踏まえ、臨床現場において通年性アレルギー性鼻炎の患児に対して、有効性が確認できない薬を使用し続けることに問題があり、効能・効果を季節性アレルギー性鼻炎に限定した方がよいのではないか」との旨の御意見をいただきました。
前述のとおり、ロイコトリエン受容体拮抗薬については、鼻閉に特化されるという薬理作用の特徴から、有効性の検出感度が低く、特に小児においては有効性の検証が非常に難しいとの実状があります。実際に、類薬であるモンテルカルストの海外データでは、成人を対象とした場合であっても、プラセボに対する有効性を検証するために、1群300例以上の症例数を要しております。このような状況に対し、本剤のプラセボ対照第II相試験では1群約60例と症例数の設定が過少であったため、有効性の傾向すらも読み取れなかったものと考えられ、本試験が本薬の有効性について否定的な結果を確認したものではないと考えております。
また、通年性アレルギー性鼻炎合併患児も組み入れられた第III相試験(ONO-1078-40試験)については、主要評価とした鼻腔通気度において、通年性アレルギー性鼻炎合併例、非合併例共に、全く再現性が認められていません。鼻腔通気度については客観性のより高い指標ということで、本試験の主要評価に採用されていますが、日内変動等のばらつきが大きく、アレルギー性鼻炎の薬効指標としては確立されたものでないことも踏まえますと、本試験で有効性が検出できなかった原因は、評価項目の設定が適切ではなかったことが主要因と考えられます。
以上を踏まえ、申請者は、これらの試験の結果を探索的なものと位置付け、その後の開発計画において、有効性検出のための工夫がなされたものと理解しております。
また先述のとおり、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎では、原因抗原の違いを除いて、発現機序及び病態に大きな違いはないことから、これまでのアレルギー性鼻炎用薬の承認審査においても、通年性と季節性は、同じ疾病概念の範囲内のものとして取り扱っており、両者の有効性を個別に判断することはしておりません。このことから、今回の試験においても季節性で確認された有効性は、通年性にも演繹可能なものと判断いたしました。
なお、10歳未満の年少小児における有効性及び通年性アレルギー性鼻炎に対する有効性については、製造販売後調査において、年齢層別、季節性及び通年性アレルギー性鼻炎の層別での解析等により、可能な限り検討することを申請者に指示しております。以上申し上げた本剤の審査に当たり、今回説明した背景情報を審査報告書に追記させていただく予定としております。
御意見に対する説明は以上です。御審議のほど、お願いいたします。
○吉田部会長 では、まず庵原先生からコメントをいただきます。
○庵原委員 説明は納得できているのですが、これをここまで広げることが今までの審査の習慣であったという理解でよろしいのですね。
○機構 はい。
○庵原委員 分かりました。
○吉田部会長 佐藤先生、いかがですか。
○佐藤委員 普通は、いかに優れたメカニズムが予想されていても、プラセボ対照の臨床試験の重みというのは、すごく重いと思うのです。今回の機構の説明は、二つのプラセボ対照試験の結果が否定的であったことを後知恵で理屈を付けて否定しようとしているように思えます。やはり、この試験の結果を素直に読めば、確かに機構のような解釈もできるかもしれませんが、一番シンプルで単純な解釈は、通年性のアレルギー性鼻炎患者については、効いていないという解釈だと思うのです。つまり、提出されている臨床試験成績を忠実に表現しますと、ここで仮にプラセボを承認しても、通年性のアレルギー性鼻炎の患者さんに対する効果がこの薬を承認した時と違うことは、誰も証明できないということになります。そのような薬を本当に承認していいのでしょうか。その点について、機構はどのようにお考えですか。
○機構 確かに先生の御指摘のとおり、本剤はプラセボを対照とした第II相試験及び最初の第III相試験においては、有効性の傾向も含めて見られないという結果が出ております。一方で本剤はプラセボとは違い、成人のカプセル剤においては通年性のアレルギー性鼻炎を対象とした臨床試験において、有効性が検証されているということがあります。また、通年性アレルギー性鼻炎・季節性アレルギー性鼻炎に関しては、原因抗原の違い等を除いて、病態等に大きな違いは無いものと考えております。そういった点を併せて考えますと、今回、二つの試験では有効性の傾向も見られなかったことは事実ですが、本剤を通年性に関しても有効性が期待できると判断しても良いのではないかと考えております。
○佐藤委員 期待できるのは分かりますが、今の私たちが持っている技術では、それが有効であることは誰も証明できないわけですね。それで本当にいいのでしょうか。
○機構 先ほどの説明の中でも発言しておりますけれども、季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎というのは抗原が違うのみで、それ以後の抗原感作後の反応は同様です。その後に出てくる症状は同じものというように解釈しておりますので、同一の疾病概念の中に入る疾患であると解釈しております。ですから今回、季節性アレルギー性鼻炎の有効性が示されたという結果をもって、通年性アレルギー性鼻炎に対する有効性は担保可能ではないかと考えています。
○吉田部会長 要するにおっしゃっていることは、遮二無二モデルを作って、それが効いたからといって、すべてに演繹していくことでいいのだろうかということです。例えば、最後の鼻症状合計スコアでも重み付けの方だけで有意差が出た場合、普通、本当はもっと問題になると思うのです。それぐらい微妙なのです。ここで一つ庵原先生にお伺いしたいのは、通年性と季節性は同じだという解釈でいいのですか。
○庵原委員 抗原が違うだけで、あとの病態は一緒であるということは、アレルギーの専門の人たちが言っておりますので、そこはいいと思うのです。
○吉田部会長 では、季節性に効けば通年性にも効くという解釈は、普通の小児科医としては成り立つのですか。
○庵原委員 そのように考えます。ただ、この実験系が花粉で実験していますね。これをハウスダストで実験していたら納得します。要するに、両方の実験を行うということです。行っているのが花粉だけですので、クエスチョンマークを後ろに二つほど付けたくなるということです。
○機構 今、庵原委員から御指摘のあった点ですけれども、通年性の患者を対象に抗原誘発試験を行おうとしますと、普段から患児は抗原に暴露されておりますので、ベースラインの値が高く、抗原誘発前後の変化を検出しにくいため、現時点では試験系が確立していないということがあります。
あと1点補足いたします。ロイコトリエンの類薬であるモンテルカルストの米国におけるアレルギー性鼻炎の小児の効能の承認に当たっては、やはり小児の有効性については検証されておらず、成人の有効性データから演繹するという形を取っているということが事例としてあります。
○吉田部会長 これは本当に悩ましいですね。
○佐藤委員 この薬が臨床の現場でどのぐらい求められているのかというか、必要とされているのかということについて、何か情報がありましたら教えていただけますか。
○機構 本薬に関しては平成20年に、日本アレルギー学会及び日本小児アレルギー学会より、ロイコトリエン拮抗薬の小児アレルギー性鼻炎に対する開発の要望書が提出されております。それは厚生労働省に提出されたものですが、厚生労働省からメーカーの方に連絡し、今回の開発となりました。要望を受けて、申請者の方で開発を中断していたものを再開したものです。また、要望書の中に記載があり、平成20年に行われた調査においては、小児のアレルギー性鼻炎の患児の3割において、ロイコトリエン拮抗薬が適応外使用されているという実態があり、臨床現場においては、既に使われ、ニーズもあるものと考えております。
○吉田部会長 臨床試験そのものがものすごく難しいし、子どもは大人のようにきちんと対応してくれないということもあります。特に自覚症状などというと、コミニケーションの問題もあるでしょう。そのようなことで難しいのは分かっているのですけれども、それを大人と同じように評価できるかというのは、今度は逆に評価する側の問題です。それだけ難しいのです。ただ、それが今度は臨床試験の成績として出てしまうと、どう考えてもロジックが立ち行かなくなってしまって、すごく具合が悪いです。これだけデータを出されると、どのようなロジックを使って認めるかというのもすごく難しくなってしまい、それで機構もだいぶ苦労されているのだろうと思うのです。
○佐藤委員 この成績からは、やはり通年性のアレルギー性鼻炎に対しての有効性には疑問を持っていますけれども、先ほど御説明があったように、臨床現場で既に使われている実績があるということと、そのような要望があるということでしたら、そのことをきちんと説明した上で承認すべきではないかと思います。ここで私もだいぶ勉強させてもらったのですが、効能・効果、用法・用量で縛るか、使用上の注意で縛るかという議論が以前からあったと思うのです。やはり使用上の注意に、「通年性のアレルギー性鼻炎に対する有効性は検証されていない」という一文を加えていただいて、できれば臨床試験成績に情報提供の意味で、プラセボ対照試験の成績も掲示した上で使っていただくのがいいのではないかと思うのです。いかがでしょうか。
○吉田部会長 そのようなことは可能ですか。行われた臨床試験のONO-1078-41では、通年性のアレルギーが証明されていないということで使用上の注意に記載するということですね。ただ、適用に関しては季節性も通年性も何も無しに、アレルギー性鼻炎としておくという格好で記載できますか。
○審議役 御指摘ありがとうございました。非常に難しい評価を御議論いただき、ありがとうございます。今の御指摘について、細かい表現ぶりは、今後、申請者あるいはチームの中で検討しながら、その方向で進めさせていただければありがたいと思います。
○吉田部会長 もし小児を対象とするような臨床試験を行おうとするならば、相当客観的なデータで勝負できるようなもので行わなければ、なかなか難しいですね。企業側も申請を出そうとすると、張り切ってキチッとした臨床試験計画を出すかもしれませんが、むしろそれ程厳格にしなくても良いのでしょうね。難しいプロトコールで試験をして、かえって変な結果になってきた時に解釈がすごく困るということになりかねませんので。要するに、大人で大体の適応が決まっているものであれば、恐らく子どもにも効くでしょうから、その時にはできるだけ分かりやすく、客観的に測れる評価基準で行ってほしいと伝えておいていただければと思います。
○審議役 ありがとうございました。本剤、本疾患に限らず、自覚症状で評価せざるを得ない薬剤も今後は出てまいります。また、佐藤委員からも事前に、ロイコトリエンの拮抗薬に関して、今後はもっと客観的な指標があるべきではないかという御意見も頂戴しておりますので、今後いろいろな場、学会等も通じて議論を行い、より客観的な小児でもクリアカットにできるものが何であるのかを検討させていただきたいと思います。
○吉田部会長 我々が今回判断している背景について言えば、例えば世界標準から相当外れていることを行っているわけではなく、むしろ基本的には世界標準と同じような考え方に立っていると思いますので、その辺を御理解いただきたいと思います。なかなか苦しいところですけれども、ほかに御質問、御意見はありますか。よろしいでしょうか。
特に無いようですので、そういった背景を一応勘案した上で議決をお願いしたいと思います。なお、奥田委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
続いて議題4に移ります。議題4について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題4、資料4「サリドマイドを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
機構が事前評価を取りまとめておりますので、こちらの報告書に沿って、希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について御説明します。
本剤の予定される効能・効果は、らい性結節性紅斑です。申請者は藤本製薬株式会社です。まず、対象患者数について説明します。当初の患者調査において、近年のハンセン病患者総数は1,800~3,000名の範囲にあり、日本ハンセン病学会による使用実態調査からは、近年の国内新規ハンセン病患者が年間2~24名であるのに対し、らい性結節性紅斑を発症した患者は年間0~2名、発症する可能性のある多菌性のハンセン病患者は、年間1~9名とされているなど、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人未満を満たすものと判断しております。
次に、医療上の必要性について説明します。現在、当該疾患の薬物療法について、軽症例では非ステロイド系消炎鎮痛剤等の投与により軽快するとされており、重症例ではステロイドや抗菌剤であるクロファジミンの投与が行われるものの、副作用等の問題があり、十分な治療が困難な状況です。本剤は多くの海外臨床試験成績から、その有効性が確認されております。既に教科書等においても、当該疾患に対する治療薬として紹介されており、WHOのハンセン病に関する専門委員会においても、重篤な患者に対する治療薬として推奨されています。また、本邦では本剤の当該疾患に対する使用は未承認であるものの、ハンセン病療養所等での使用実績があり、一定の有効性が報告されているなど、本剤の医療上の必要性はあるものと判断しております。
最後に、開発の可能性についてです。本年4月現在、米国をはじめ海外10か国で、当該患者の治療薬として承認されており、開発の可能性はあると判断しております。なお、本剤は催奇形性に対する対応として、本邦において再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能・効果で承認される際に、厳重な薬剤管理及び避妊回避の徹底を遵守すること等を条件に、使用が許可されています。本疾患に対する本剤の使用についても同様に、厳重な管理を行った上で使用することとしております。
以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点を検討した結果、本剤は希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと判断しております。
御審議のほど、お願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○佐藤委員 この薬を希少疾病用医薬品として承認することについては賛成しますが、安全管理について関連して伺いたいと思います。TERMSのホームページを見ますと、かなり沢山の違反や逸脱などが報告されています。TERMSによって上手く管理されているかどうかということは、どなたが評価しているのでしょうか。もし上手くいっていなかったとすると、どのように改善の手続などが進められているのでしょうか。
○安全対策課長 TERMSについては、企業の中にTERMSの委員会があり、基本的には、そちらが見ているのですが、外部の第三者委員会というのが組織されており、そこには私どもからも参加をしております。そちらでも見ております。
○佐藤委員 今のところ、大きな問題は起こっていないということでよろしいですか。
○安全対策課長 そのように認識しております。
○佐藤委員 分かりました。ありがとうございます。
○吉田部会長 あと、ハンセン病で妊娠可能な方というのは、どれくらいいらっしゃるのですか。新規患者が相当少ないので、ほとんどお年寄りですか。それとも新規患者は定期的に出ているものなのでしょうか。分かりますか。
○事務局 ここ数年の傾向ですけれども、新規患者は国内で年間2~24名ぐらいは出ています。その中で妊娠可能な女性の正確な数字はよく分かりません。
○吉田部会長 いずれにしても、投与する側が徹底的に行えば、抑えられる数字ですね。要するに、何千人も相手にするわけではないことから、使用上の注意も少しは守りやすいと思いますので、その辺の徹底をお願いします。
○事務局 分かりました。ありがとうございます。
○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、議決に入ります。
本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
それでは、議題5に移ります。議題5について、事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題5、資料5「イマチニブメシル酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
疾患名については、HES及びCELと省略します。資料を2枚おめくりいただき、医薬品医療機器総合機構が作成している評価報告書を御覧いただければと思います。申請者はノバルティスファーマ株式会社です。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に御説明をします。
対象患者数ですが、平成20年の患者調査において国内の好酸球増加症の年間患者数は1,000人程度とされています。1995~2009年のアンケート調査の結果、FIP1L1-PDGFRα陽性患者の割合が12%と報告されています。本剤の対象患者数は120人程度と推計されますので、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人未満の基準を満たしております。
次に、報告書の2ページの医療上の必要性について御説明します。HES/CELにおいては増殖した好酸球による臓器障害に対して副腎皮質ステロイド剤が用いられている現状がありますが、姑息的な治療で依然として有効な治療法は無い状況です。そのような中で、一部のHES/CELにおいてはFIP1L1-PDGFRα融合遺伝子による受容体型チロシンキナーゼの恒常的活性化が原因となることが報告されていて、当該チロシンキナーゼを標的とした本剤の有効性が期待されている状況です。これらのことを踏まえて、本剤の医療上の必要性は高いと判断しています。
最後に開発の可能性ですが、海外では第II相試験においてFIP1L1-PDGFRα陽性のHES/CEL患者における有効性が示されていることなどが報告されていますので、それらを踏まえて米国、欧州において承認されている状況です。これらの状況を踏まえまして、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
以上3点より、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しています。御審議のほど、よろしくお願いします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。特によろしいですか。疾病は希少ですし、メカニズムもある程度分かっていて有効性が期待できる、開発の可能性もあるということです。よろしいですね。それでは議決に入りたいと思います。
本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
続きまして、報告事項に移ります。議題1~4まで御説明をお願いします。
○機構 報告事項議題1、資料6「医薬品アフィニトール錠5mgの製造販売承認事項一部変更承認について」機構より報告いたします。
資料6を御覧ください。本薬は、がん細胞の細胞増殖シグナルを阻害すること、及び血管新生を阻害することによりまして、がん細胞の増殖を抑制すると考えられている抗悪性腫瘍剤で、現在は「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」の効能・効果で承認されています。
今般、ノバルティスファーマ株式会社より、「膵神経内分泌腫瘍」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。
報告事項議題2、資料7「医薬品セレコックス錠100mg及び同錠200mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
資料7を御覧ください。本剤は、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害薬のセレコキシブを有効成分とする消炎・沈痛薬です。「関節リウマチ」に対して、「100~200mgを1日2回経口投与する」との用法・用量にて、「変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘炎」に対して、「1回100mgを1日2回経口投与する」との用法・用量で承認されています。
今般、アステラス製薬株式会社より、「手術後、外傷後並びに抜歯後の消炎・沈痛」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。
なお、部会に先立ちまして、庵原委員よりいただいている御質問は、「本剤は1998年に開発が開始されましたが、2011年の申請までに開発に時間を要した要因を教えてください」というものです。この点については、1995年から開発された関節リウマチ、変形関節症、腰痛症などの慢性疼痛を対象とする臨床開発を優先させたためと申請者より説明されています。
報告事項議題3、資料8「医薬品クラフォラン注射用0.5g、同注射用1g、セフォタックス注射用0.5g及び同注射用1gの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
資料8を御覧ください。本薬は、細胞の細胞壁合成を阻害することでグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して、抗菌作用を示すセフェム系の抗生物質です。
小児の化膿性髄膜炎に対する現在の承認用法・用量の上限は150mg/kg/日ですが、国内外の各種学会診療ガイドライン、国際的に評価されている教科書における記載、国内外の公表論文及び国内外での使用実績などから、当該効能における最大用法・用量を300mg/kg/日に変更する要望がなされまして、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において公知申請への該当性に係わる報告書が取りまとめられました。本年8月1日に開催された本部会においての事前評価を踏まえて、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、資料8に記載した本申請を承認して差し支えないと判断しました。
報告事項議題4、資料9-1~9-10「医療用医薬品の再審査結果について」まとめて報告いたします。
資料9-1~9-10で、いずれも医薬品再審査確認等の結果通知書です。
資料9-1は、一般的名称は「無水エタノール」、販売名は「無水エタノール注『フソー』」のもの、資料9-2は、一般的名称は「無水エタノール」、販売名は「無水エタノール注『マイラン』」、資料9-3は、一般的名称は「ゲフィチニブ」、販売名は「イレッサ錠250」のものでございます。資料9-4は、一般的名称は「デラビルジンメシル酸塩」、販売名は「レスクリプター錠200mg」のもの、資料9-5は、一般的名称は「ガチフロキサシン」、販売名は「ガチフロ点眼液0.3%」のもの、資料9-6は、一般的名称は「パリビズマブ(遺伝子組換え)」、販売名は「シナジス筋注用50mg及び同筋注用100mg」のものでございます。資料9-7は、一般的名称は「アムホテリシンB」、販売名は「アムビゾーム点滴静注用50mg」、資料9-8は、一般的名称は「アバカビル硫酸塩」、販売名は「ザイアジェン錠300mg」のものでございます。資料9-9は、一般的名称は「サニルブジン」、販売名は「ゼリットカプセル15及び同カプセル20」のもの、資料9-10は、一般的名称は「インフリキシマブ(遺伝子組換え)」、販売名は「レミケード点滴静注用100」のものでございます。
これらの品目について、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験の成績などに基づいて再審査申請が行われました。審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量などの承認事項について、変更の必要は無い「カテゴリー1」と判定したものです。
なお、資料9-6のシナジス筋注用のものに関して、庵原委員より6点ほど御質問をいただいております。質問事項の1は、「承認時の先天性心疾患(以降CHDと略します)、CHDを層別解析した結果では、チアノーゼ群はパリビズマブの効果が認められませんでしたが、血行動態に異常のあるCHDがすべてパリビズマブ治療の対象者とされました。今回の特定使用成績調査では、チアノーゼ群の効果は認められたのですか。」という御質問です。
今回の特定使用成績調査において、資料9-6の6ページの3-2の有効性の項にありますように、RSV感染による入院率は3.9%、103例中4例で、そのうちチアノーゼを有している患児では7.3%、41例中3例で、チアノーゼを有していない患児では1.6%、62例中1例でした。症例数が少ないために明確なことが言えませんが、本剤のRSV感染による入院率は、チアノーゼの有無によらず、また承認時及び今回の調査のいずれにおいても有効性について大きく異なるものではないと考えています。
質問事項の2です。「臨床現場において、CHDに対する治療を行っていないCHDの患児のRSV感染時のハイリスク群でない児ですが、パリビズマブが使用されている実態があるということで、今回の特定使用成績調査において、CHDに対する特別な治療を行っていないCHD児はどれだけ含まれていますか。CHDに対する『血行動態に異常のあるCHD』の定義をもう少し明確にすべきと思います。」との御質問、御意見をいただいております。
PMDAの回答ですが、特定使用成績調査において、CHDの治療の有無別のデータはありませんでしたが、併用薬ありの患児は82.3%、130例中107例、なしは17.7%、130例中23例、併用療法ありに関しては29.2%、130例中38例、なしは70.8%、130例中92例でした。また、CHDに対する「血行動態に異常のあるCHD」の定義については、「先天性心疾患児におけるパリビズマブの使用に関するガイドライン」において、先天性心疾患を有するRSV感染ハイリスク児が定義されていて、投与対象者及び除外患者が記載されています。RSV感染の重症化抑制を目的に、本剤の投与を奨励する旨が記載されています。適正使用の観点から、添付文書の「その他の注意」の(6)において、学会等から提唱されているガイドラインやRSV感染症のリスクファクターを参考とし、個々の症例ごとに本剤の適用を考慮するよう注意喚起しています。
質問事項の3です。「パリビズマブの効能・効果は血中中和抗体が上気道、下気道の粘膜に侵出して、感染したRSVを中和することで重症化を予防します。4ページの血清中濃度114.3μg/mLは、どのぐらいの中和抗体価に相当しますか。また、通知書で記載されているパリビズマブの各濃度は、どのぐらいのNT抗体価に相当しますか。」との御質問を受けています。
御指摘いただいた再審査報告書4ページの血清中濃度114.3μg/mLの症例に関しては、中和抗体価は測定されていませんでした。
パリビズマブは元々ヒトに存在していますが、個人差が大きいため、血清中抗体濃度と中和抗体価を比較した検討は行われていません。なお、非臨床の結果ではありますが、RSV中和抗体と血中抗体濃度との関係について、用量反応曲線により推定された中和活性のED50値は約30μg/mLで、ラットに本剤を静脈内投与した時の99%RSV抑制を示す血中濃度が約30μg/mLとほぼ同様の数値を示しています。
質問事項の4です。「7ページの血清中抗シナジス抗体価とはシナジスに対する抗体価と思いますが、中和抗体はどのように測定された抗体ですか。」との御質問です。
申請者は、血清中抗体シナジス抗体をELISA(サンドイッチ)法で測定したものを中和抗体と表現しています。
質問事項の5です。「7ページの『4.RSV感受性検査』の検査方法を教えてください。分離されたウイルスの培養細胞で増殖させて、蛍光抗体法で調べた方法ではないようなので」という御質問です。
回答ですが、RSV感受性検査の実施方法は、RSウイルス感染患児の鼻汁を収集して、免疫蛍光測定法により測定しています。
各ウイルスの臨床分離株を感染させた培養細胞の塗抹標本を作成し、標本に本薬あるいは比較対照抗体を滴下して反応させています。RSV抗体に結合した一次抗体に、蛍光標識したヤギ抗体ヒトIgG抗体を結合させて、蛍光顕微鏡観察によって一次抗体結合の有無を判定しています。
質問事項の6です。「今年は夏場からRSVが流行し、パリビズマブの投与開始時期が話題となりました。11ページからの記載によりますと、パリビズマブの投与回数には制限が無いと読めます。世界的にパリビズマブの投与回数は、何回まで安全性が認められていますか。我が国では『投与回数の制限は設けない』でいいですか。」との御質問です。
再審査報告書の11ページの7.の(2)を御覧いただければと思いますが、米国の添付文書においても同一シーズン内における6回以上の投与における安全性は、5回までの投与に見られる内容及び頻度と同様である旨が記載されていて、投与期間の制限は無いこととされています。本邦においても、おおむね同様の記載とされていて、投与回数についても制限は無いものと理解しています。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。庵原先生、セレコックスとシナジスについてはいかがですか。
○庵原委員 セレコックスは了解しましたが、確かシナジスは一番最初の承認申請の時に心疾患の種類によって、有効性があったものとなかったものと層別解析した時にはあったと思います。その時は、今後このような市販後調査で層別解析をはっきりさせますという回答だったと思います。それが、はっきりしたかの確認をしたかったのですが、結局これではっきりしたわけですか。
○機構 お答えします。先生の御指摘のとおり、承認時には根治術を施行されていない24か月齢以下の先天性心疾患患児を対象とした海外第III相試験において、主要評価項目であるRSV感染による入院率というのがチアノーゼを有していない患児において本剤群で5%、プラセボ群では11.8%であり、こちらでは有意差が認められていたのですが、チアノーゼを有する患児においては本剤群の入院率が5.6%、プラセボ群では7.9%ということで、有意差は認められてはおりませんでした。
今回は承認時の方ですが、日本では血行動態の異常による兆候、又は症状を有する24か月齢以下の先天性心疾患患児を対象とした国内第III相臨床試験において、RSV感染による入院率が本剤群で4.5%で、これはいずれもチアノーゼを有していない患児でした。本剤群の入院率というのが、チアノーゼを有している患児と有していない患児でほぼ同じぐらいの数値であろうということをもって、全部を認めてもよろしいでしょうというようなことで機構は当時考えまして、それを承認して差し支えないものと判断をしました。今回は先ほど御説明をしたところですが、チアノーゼを有している患児で7.3%、有していない患児で1.6%、症例数が41例、62例と非常に少なくて明確なことは言えませんが、おおよそ同じぐらいの数値を示していたということで差し支えないのではないかと考えています。
○庵原委員 要するに、今回プラセボが無いので、効果があったかどうかの評価はできないのですが、明らかにチアノーゼ群とチアノーゼが無い群では入院率が7.3%、1.6%という差がありますね。それをもって、チアノーゼ群に効果があると判断していいのかというところです。
○機構 41例中3例と62例中1例というところで。
○庵原委員 それでしたらもっと症例を重ね、更なる評価が要る等の評価をしないといけないのではないかというのが、お聞きした時の印象です。
○吉田部会長 要するに、承認時の宿題ができていないのではないか、だから、これで再審査ということになるのだろうかということなのですね。普通、再審査という場合、例えば途中で臨床試験があって、あるいは市販後調査でここが分かったので、承認条件は外しますというような段取りになるのですが、それができないですねという話だと思います。それは、いつ取れるのですかということですが。
○機構 調査はここで終わっています。特定使用成績調査に係る承認条件としては特に付してはいなかったようです。
○吉田部会長 承認条件として上がっていなかったのですか。それは間違いないですか。
○機構 はい。特定使用成績調査に係る承認条件は付されておりません。
○庵原委員 承認条件が無ければ仕方がないのですが、一般的に肺の血流量が多いタイプの先天性心疾患ではRSVウイルスは重症化しますが、肺の血流量が少ないタイプの先天性心疾患ではRSVウイルスは重症化しません。そのため、そこまで拡大して使っていいのかということを絶えず承認時から疑問に思っていた薬ですので、今回はっきり効果があるというデータが出てきているのならば、そのデータを信じて使ってもいいと思いますが、話を聞いているとはっきりしていないと思うので、もう少しデータを集めてもらう必要があるのではないかというのが私の印象です。取り決め上、そのようなことができないのでしたら仕方がないのですが。
○機構 特定使用成績調査を行っておりますが、既に終了しています。
○機構 投与時の基礎疾患の先天性心疾患というのも情報収集しており、ASDなりVSDなり、ファロー四徴症、ポタロー管の開存なりを情報収集していますが、無効が認められたのがASDの1例とファロー四徴症の1例と、その他に分類されている2例で、残りの症例については、すべて有効であったと記録されております。
○吉田部会長 残り何例ですか。
○機構 手計算になりますが、120例程度になると思います。
○審査管理課長 庵原委員からの御指摘もありますので、こういった御意見があったことを承認取得者に伝え、適切にさらに情報収集に努めるということで指導したいと思います。
○吉田部会長 問題は病態ですね。
○庵原委員 元々、シナジスには先天性心疾患の全部に効果があるということ自体、初めから疑問に思っていました。要するに、RSVウイルスが重症化するものと、しない先天性心疾患の2種類があり、一番最初に層別でそのようなデータが出ていたのですが、全部まとめて認めたという最初の経緯がありましたので、初め効果が無いと思われたものも、追跡調査できちんと今回効果が出たというデータならば、私はいいと思います。ですから、もう少し症例を集めるように指導をお願いしたいというのが私の考えです。
○吉田部会長 病態等は、中の詳細を見ればある程度把握できませんか。それも含めて足りなければ、引き続き症例を追加するという形にしていくということですね。
○審査管理課長 これまで得られている国内外の情報も参考にさせていただいて、申請者の見解を求めたいと思います。それで、再度先生の方にフィードバックさせていただきたいと思います。
○吉田部会長 よろしいですか。そのようなことで、よろしくお願いします。
○清水委員 報告事項ではありますが、アフィニトールですが、今回の一連の中で、先行の適用も含めた用法・用量が変更になると思います。現在、空腹時に経口投与するという記載の「空腹時」が、「用法及び用量に関連する使用上の注意」の項で、「食後又は空腹時のいずれか一定の条件で投与すること。」という注意事項が書かれることで、「空腹時」が削除されることになっていると思いますが、そこの情報提供は十分にしていただかないと現場で混乱が起こる可能性がありますので、御指導のほどをお願いしたいというのが1点です。
セレコックスの今回の追加の用法・用量ですが、頓用の場合の前のところの「通常成人には初回400mg、2回目以降200mgを経口投与する」というのは、頓用ではなく通常の内服の用法・用量で、1日2回、朝夕食後ということが後ろに隠れているということではなく、単回の投与を意図して書いているのかが読み取れないのですが、そこのところを御説明いただきたいと思います。
○機構 用法・用量の前半の通常初回400mg、2回目以降200mgのところは、通常の内服を意図して書かれているものです。
○清水委員 そうすると、後ろに1日2回、朝夕食後に経口投与するという記載は不用になるわけですか。必要なのではないでしょうか。
○機構 急性疼痛が発生して直後に初回が投与される。最低6時間はあけて2回目以降を投与することになるので、朝夕というタイミングにならない可能性も考えられると思います。
○清水委員 そうすると、頓用の場合の記載のみでは意味をなさないのですか。
○機構 御質問の意味を確認したいのですが、前半の部分の投与を継続するような患者さんに対して、記載が足りないのではないかということですか。
○清水委員 最初の分と、それ以降の分と同じことを言っているということですか。
○審議役 頓用は必ず1回しか頓用しないわけではなくて、数日飲む場合もあるので、その場合も含めて6時間をあけ、1日2回までという意味で最後に書いたという理解です。
○清水委員 それはいいです。通常成人には、セレコキシブとして「初回400mg、2回目以降200mgを経口投与する。」頓用の場合も、「初回のみ400mg、必要に応じて以降は200mgを経口投与する。」という二つの文章の違いは何ですか。
○機構 前半の部分は初回400mgを投与して、2回目、3回目、4回目と連用して200mgを投与することを想定しています。
○新薬審査第四部長 恐らく、術後に何日間も連続して使う場合は頓用とは呼べないので、書き分けているのだと思います。
○清水委員 その時は1日2回ということではなく、6時間投与間隔を開けるということですが、それは頓用ですね。頓用は1回分ではないという審議役のお言葉のとおり、3回、4回とあると思います。要は、これを見て処方箋をどう書くのだということです。「頓用の場合は」はきちんと書けると思いますが、その前の部分はどう処方箋に書いていただければいいのかが読み取れないのですが、いかがでしょうか。
○新薬審査第四部長 誤解を生むような表現ということでしたら、検討させていただきたいと思います。
○清水委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。
○吉田部会長 一任でよろしいですか。
○清水委員 御検討いただければと思います。
○吉田部会長 報告事項で、ほかにありますか。よろしいでしょうか。無いようですので、報告事項については御確認いただいたものといたします。
それでは、議題2に移ります。菊池委員におかれましては、議題2の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
── 菊池委員退室 ──
○吉田部会長 議題2について、機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品カンサイダス点滴静注用50mg及び同点滴静注用70mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より御説明いたします。
本剤の有効成分であるカスポファンギンは、真菌グラレア・ロゾエンシス由来のリポペプチド発酵産物ニューモカンジンB0の半合成誘導体であり、多くの病原性真菌の細胞壁の構成成分であるβ-(1,3)-D-グルカンの合成阻害により、抗真菌作用、抗真菌活性を示すと考えられています。本邦ではポリエン系、アゾール系、フルオロピリミジン系、キャンディン系の4種類の抗真菌薬がありますが、本剤はキャンディン系の抗真菌薬に該当するものであり、類薬としてミカファンギンが承認されています。海外では2000年12月にメキシコで承認されて以来、2011年9月現在、米国及び欧州等84の国又は地域で承認されております。本邦においては2006年1月より臨床試験が開始され、今般、真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症、食道カンジダ症、侵襲性カンジダ及びアスペルギルス症に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。
本申請の専門委員としては、資料11に記載されている10名の委員を指名しました。
審査内容について、臨床試験を中心に説明します。有効性についてですが、審査報告書88ページの上の表を御覧ください。国内第III相試験において、疾患ごとの有効率が食道カンジダ症で100%、侵襲性カンジダ症で100%、アスペルギルス症で46.7%であり、対照薬であるミカファンギン群とほぼ同様の有効性が認められています。また、審査報告書99ページの上から2行目を御覧ください。国内臨床試験での症例数は少ないものの、海外臨床試験において本申請効能に対する有効性が示されており、国内外のカンジダ属及びアスペルギルス属の臨床分離株に対する本剤のMIC分布は同様であること、日本人及び非日本人での薬物動態プロファイルは類似していること、深在性真菌症及び発熱性好中球減少症の医療体系に国内外の差は無いと考えられたことから、海外臨床試験成績を基に有効性を評価することは可能と判断しました。
安全性についてですが、審査報告書の107ページの下の表を御覧ください。国内第III相試験において、有害事象は本剤群で85.0%、ミカファンギン群で88.3%とほぼ同様であり、認められた事象も同様の傾向が認められていると判断しています。また、審査報告書112ページの「1.肝機能障害について」の項を御覧ください。国内外臨床試験において、AST増加及びALT増加が認められています。国内第III相試験ではミカファンギンと肝関連の有害事象発現リスクに大きな差異は無いと考えられたことから、ミカファンギン群と同様に「定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと」を重要な基本的注意の項で記載し、注意喚起することが適切と判断しました。
また、本剤の用量について、審査報告書137ページ下から2行目を御覧ください。本剤は効能・効果により、用法・用量が異なりますが、侵襲性カンジダ症、アスペルギルス症及び発熱性好中球減少症については、いずれも重篤な疾患であり、治療早期に血漿中濃度を定常状態に到達させることが望ましいと考えられ、国内外臨床試験において、投与初日に70mg、2日目以降では50mgで投与した時の有効性及び安全性が確認されています。また、食道カンジダ症については他の疾患ほど重篤性が高くはないこと、海外臨床試験において35mg投与と比較して50mg及び70mgで有効率が高かったものの、70mg投与での有効率は50mg投与と大きな差異は認められなかったことから、国内外臨床試験では50mgを投与することとされ、本剤の有効性及び安全性が確認されています。以上から、各疾患で異なる用法・用量を設定させていただきました。なお、対象疾患による用法・用量が異なることから、本剤の調製過誤が生じないよう、医師等に対して教育資材を用いて注意喚起を行う予定です。
以上の審査を踏まえまして、本剤の真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症、カンジダ属又はアスペルギルス属による食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症及びアスペルギルス症に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。
また、奥田委員より事前に御質問を6点いただいていますので、御説明します。1点目は、「類薬のミカファンギンでは胆汁中排泄をMRP2が媒介すると、最近文献で報告されていますが、本剤についてもMRP2により胆汁中排泄される薬剤との相互作用を検討する必要はないか。」との御質問をいただきました。
本薬は、胆汁中に排泄されることは確認されていますが、胆汁排泄にこのトランスポーターが関与しているかどうかは検討されていません。本薬の累積排泄率は尿中と糞中でほぼ同程度であることから、仮にMRP2を介した薬物相互作用が生じて、本薬の胆汁中排泄が減少したとしても、他の排泄機構が機能することで、特に大きな問題は無いと考えられます。
2点目は、「シクロスポリンA共存時の肝取り込み低下に関して、シクロスポリンAによるOATP1B1の阻害が、要因と考えられるのではないか。」ということに関して御質問をいただきました。
これに関しても、本薬のトランスポーターに関する検討は実施されていませんので、明確なことが言えませんが、本薬はOATP1B1の低親和性基質であることから、シクロスポリンAによるOATP1B1阻害作用が影響した可能性は否定できないと考えられます。
3点目は、「類薬のミカファンギンでは溶解時、泡立ちやすいことが注意喚起されていますが、本剤でも同様の注意喚起が必要ではないか。」ということで御意見をいただきました。
本剤の溶解時に、バイアルを強く振り混ぜた場合に泡立つことがあることは申請者に確認していますが、ただし本剤は比較的容易に溶解すること、また、本剤の添付文書では点滴静注液の調製法の項で、「ゆっくりと振り混ぜて粉末状の本剤を完全に溶解させる」と記載していて、この調製法に従って溶解した場合には、泡立たないことを確認しています。
4点目は、「本剤の希釈は生理食塩液又は乳酸リンゲル液で行うよう指示されていますが、糖液等で希釈した場合には問題が発生するのか」という御質問をいただきました。
本剤は、5%ブドウ糖溶液で希釈した場合に含量の低下が認められていて、そのことから添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意の項で、「ブドウ糖を含む希釈液を使用しないこと」と注意喚起をしました。また、他剤との配合変化については文献報告されておりまして、当該内容はインタビューフォーム等で適切に情報提供することにしています。
5点目は、「審査報告書48ページ上から9行目において、血漿蛋白結合の可能性に関して、肝クリアランスが小さいと考えられることを根拠に含めることは適切か」との御意見をいただいています。
血漿蛋白結合率が高い薬剤において、薬剤が主に肝より消失し、肝クリアランスが大きい場合には、当該薬剤の非結合型濃度が上昇するということが問題になるとされています。本剤は肝代謝型薬剤ではありますが、肝クリアランスが低いことから、このような蛋白結合による相互作用が生じにくいと考えられるのではないかと考えています。
6点目は、「審査報告書の74ページ下から2行目において、『タクロリムスの薬物動態が低下する』と書かれているということですが、『タクロリムスの血中濃度は低下した』等の記載が適切ではないか」という御指摘をいただきました。
先生からの御指摘のとおり、血中濃度の比較を行っているものでありますので、その点は適切に修正したいと考えています。
以上です。御審議のほど、お願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。奥田先生、いかがですか。
○奥田委員 大体了解しました。
○吉田部会長 ほかの委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○前崎委員 国内第III相の症例数の問題ですが、播種性カンジダ症は3例しか組み込んでおりません。しかも、カンジダ血症はたった1例で判断されています。それから、ミカファンギンの相手側もたった1例しか組み込んでいません。もちろん海外のデータを持ってくればいいのですが、感染症というのは地域によって耐性菌の違い等いろいろな違いがあるので、海外のデータをそのまま持ってきて日本で本当に有効かということについては、これだけの症例で検証しても構わないかということがまず1点ですが、いかがでしょうか。
○機構 今回のこの臨床試験の中では、確かに症例数が非常に限られているのが現状です。ただ、国内外でMIC、感受性の差異等も比較していて、その差異は無いこと、あとは、実態として医療体系にも大きな差異は無いことも含めて、海外の試験も含めて読み込めるのではないかということで、今回国内では安全性を中心に見て、臨床試験を行いました。なかなか入りづらいところもありまして、こういった症例数しか入っていないのが現状にはなっておりますが、そういったことも含めて審査をしています。
○前崎委員 ただ逆に言うと、慢性肺アスペルギルス症というのは海外では比較的まれな疾患です。国内第III相試験というのは、ほとんど慢性肺アスペルギルス症だけを対象に有効性、安全性を検討しています。ですから、海外の真菌症のプロファイルと日本のプロファイルがかなり違うということです。それを同じ土俵で議論して構わないのかということを確認したいのですが、いかがでしょうか。
○機構 お答えが非常に難しいところではありますが、少なくとも今回の臨床試験を行うにあたって、安全性をある程度メインに見てほしいところがあり、一般的にも、ある程度海外でも使用されている実態があることから、そこと日本人での少なくとも同じような安全性も見られるかということをある程度中心に見ているということもありまして、確かに有効性に関してはそのあたりは非常にpoorであるところは否めないところではありますが、海外のデータも含めて読み込むことで承認して差し支えないと判断しました。
○前崎委員 もう1点あります。侵襲性アスペルギルス症は1例も入っていませんね。添付文書の中には、侵襲性アスペルギルス症に関しては他剤が無効であったり、他剤の忍容性が無い場合に使うと書いてありますが、実際には第1選択薬としてカスポファンギンを使うことはまずありません。恐らく、臨床現場ではカスポファンギンで効果を期待するのは無理と思い、試験が難しかったわけではなく、元々臨床試験に組み込まれなかったのだと思います。添付文書の中には、侵襲性アスペルギルス症に対しては他剤が無効であるとか、認容性が無い時に使う、考慮することと書いてありますが、これを見ると、いかにも他剤が無効となった時に効きそうなニュアンスで受け取ってしまうと思いますが、どう解釈したらいいのですか。有効性が確立されていないと解釈するのか、それとも他剤が無効の場合は考慮して効くこともあると解釈するのでしょうか。文章の問題ですが、結果から見ると、どちらも有効性は確立されていないということです。カスポファギンは海外でも侵襲性アスペルギルス症に関しては、ボリコナゾールが使用されて以降には比較的対象試験を行っていないと思うので、そうすると他剤が無効な場合に効くという保証はどこにもなさそうなので、この文章はどのように受け止めればいいのでしょうか。そのまま受け取っていいのか、あるいはもう少し表現を変えて、例えば有効性が確立されていないと考えた方がいいのか、もちろん適応症には入っていいのかもしれませんが、そちらはいかがですか。
○機構 お答えさせていただきます。基本的には侵襲性アスペルギルスに関しては、他の治療が無効と考えるべきであろうと考えています。ただ、この薬はファーストラインに立った時、本当はどうなのかということに関しては、確かに症例数も少なく、十分な検討がされていないことから、そこは今後の使用成績調査等で確認し、どういった患者で使ったかも含めて調査していくことは必要だろうと考えています。
○前崎委員 表現はこのまま残すのですか。
○機構 そうさせていただきたいと考えています。
○吉田部会長 そこのところは、使用成績調査や特定使用成績調査を行うのでしょう。
○機構 はい。
○吉田部会長 それでしたら、今の前崎先生の疑問に答えられるような形で、特に侵襲性の調査を行いなさいという指導はできるのではないですか。
○機構 本日の議論を踏まえて、申請者の方には調査の中でも十分調査するよう申し伝えたいと考えています。
○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにありますか。
○清水委員 製剤の特性のところですが、この薬剤は2~8℃の貯法です。添付文書の2ページの調製法の頭書きで「バイアルを室温に戻し」と書かれていますが、2~8℃は室温のうちですね。これは室温ではなく、常温という意味でしたら「常温」に用語を直した方がよろしいかと思いますが、それはいかがですか。
○機構 お答えさせていただきます。今回貯法は、2~8℃ということで冷蔵と考えていただきまして、室温は確かに1~30℃という話にはなりますが、25℃を中心とした温度ぐらいまでと考えるという理解ですので、ここでは室温と書かせていただいたということです。
○吉田部会長 どう違うのですか。
○清水委員 日本薬局方の中で、室温というのは1~30℃と規定されています。そのほかに常温という規定があって、15~25℃と規定をされているので、室温に戻しといっても、そもそも室温の範囲の中なので戻しようがありません。
○審議役 御指摘ありがとうございます。きちんと製剤化ができる条件というのがまず重要ですので、それが確実にできるような表現に改めまして、定義等いろいろな表現ぶりについては事務局にお任せいただければと思います。
○吉田部会長 ただ、例えば常温を使う時に、私たちも知らなかったので、15~25℃と書かなかれば、室温とどこが違うのかが分かりません。
○審議役 具体的に間違いの無いように正しく伝えられるような表現にしたいと思います。
○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいですか。それでは議決に入りたいと思います。なお、奥田委員、清田委員、前崎委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、承認を可としてよろしいですか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
── 菊池委員入室 ──
○吉田部会長 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 次回部会の予定です。本年の医薬品第二部会は本日が最後ですが、次回は来年2月1日(水)午後3時から開催する予定です。よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ほかに委員の先生方から何か御意見、御質問はありますか。
私から一言。11月19日の朝日新聞にベバシズマブの乳がんの承認をFDAが取り消したというニュースがあります。我が第二部会でも相当難産したものですが、私としては新しい事実が分かって取消されたのであれば、承認条件の時に新しい事実が分かった時に再考することになっていましたので、機構の方にお尋ねしたところ新事実は無いということですが、その経緯を教えていただけますか。
○機構 アバスチンの件ですが、米国でも今年の初頭からいろいろ議論がありましたが、基本的には以前、当部会で審議いただきました三つの第III相試験を基にした議論であり、特に新たに試験成績が得られてきて、FDAが対応を取ったわけではありません。
○吉田部会長 そもそも仮免だったので、ほかの抗がん剤との併用で有効性が得られなかったので、認めるのをやめたということのようです。ヨーロッパは、いくつかの薬剤との併用の効能を取っているのですよね。
○機構 ヨーロッパではパクリタキセルとの併用であり、これは日本と同じですが、もう一つはカペシタビンとの併用も認めている状況です。
○吉田部会長 我が国はパクリタキセルだけを認めて、何か新しいことがあったら、いつでも再考するという話になり、日・欧・米でそれぞれ対応が違うということですね。
○安全管理監 PMDAからも補足させていただきます。今のようなお話がありまして、多くの患者たちが非常に不安に感じるだろう。あるいは医療現場でも、御説明に大変苦労されるだろうということもありましたので、当部会における審議なども含めて日本における審査においては、そのような米国における状況も踏まえて承知の上で審査がされたのだという形で、簡単に経過を示したものを作りまして、今PMDAのホームページにアップしてあります。この内容は関係する方々には既にお知らせをしていますので、また御参照いただければと思います。
○吉田部会長 それぞれの独自性もあるでしょうし、協調性も必要だということでしょうが、まじめに審査をしている感じが非常に強く出ていいと思います。是非、その辺を広く国民の方が理解できるように御協力をお願いしたいと思います。
ほかに委員の先生方からありますか。無いようでしたら、本日はこれにて終了します。ありがとうございました。
(了)
※備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。
連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)
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