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薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会議事録
2011年12月16日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会議事録
○日時
平成23年12月16日(金)
○場所
厚生労働省 専用第15・16会議室
○出席者
出席委員(20名):五十音順 敬省略
○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 石 井 明 子、 今 井 聡 美、 |
◎笠 貫 宏、 川 上 正 舒、 齋 藤 知 行、 正 田 良 介、 |
鈴 木 邦 彦、 高 橋 好 文、 武 谷 雄 二、 田 島 優 子、 |
千 葉 敏 雄、 寺 崎 浩 子、 中 谷 武 嗣、 西 田 幸 二、 |
菱 田 和 己、 松 岡 厚 子、 村 上 輝 夫、 桃 井 保 子 |
欠席委員(3名):五十音順 敬省略
行政機関出席者
内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) |
重 藤 和 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) |
○議事
○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、ただ今から「薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会」を開催いたします。委員の先生方におかれましては、お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
初めに、委員の出欠状況について御報告いたします。本日は医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、18名の御出席をいただいておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
続きまして、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付の薬事・食品衛生審議会決議に基づき、議題1、2については、会議を公開で行い、議題3以降については、医療機器の承認審査に関する議題であり、企業情報に関する内容等が含まれるため、非公開といたします。これより議事に入りますので、傍聴の方によるカメラ撮りはここまでといたします。御協力の程よろしくお願いいたします。
それでは、以後の進行について、笠貫部会長、どうぞよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 最初に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 公開議案の資料の御確認をさせていただきます。配付されているお手元の資料は、資料1-1「医療機器の承認基準案について」、参考資料1-1「医療機器の承認基準に関する基本的考え方について」、資料2-1「医療機器の認証基準案について」、資料2-2「医療機器の認証基準案に係る基本要件適合性チェックリスト案について」、参考資料2-1「医療機器の認証基準に関する基本的考え方について」、参考資料2-2「認証基準等で引用するJISについて」以上、参考資料も含めまして六つの資料を提出しております。不足分はございませんでしょうか。
○笠貫部会長 配付資料はお揃いだということでよろしいでしょうか。それでは、これから議題1に入ります。議題1「医療機器の承認基準案について」、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 議題1「医療機器の承認基準案について」御報告させていただきます。資料1-1、参考資料1-1を御用意ください。
はじめに、参考資料1-1について御説明させていただきます。「承認基準」とは、その基準への適合性を確認することにより承認審査を行う医療機器等に関する基準として、原則、国際基準等からなり、臨床試験成績に関する資料の添付が不要の範囲の品目について定められております。これは統一的な技術要件を定めているものでありまして、その基準への適合性が客観的に判断できるような記載となっております。承認基準の構成としては、対象となる医療機器が、一般的名称で指定される適用範囲と、性能、機能、有効性に関する項目等が定められている技術基準、そして基準の対象が限定された使用目的、効能、効果からなっております。また、薬事法第41条第3項の規定により、厚生労働大臣が定める医療機器の基準に定める基本要件の適合性が、各規定ごとにチェックリストとして作成されております。
続いて資料1-1を御覧ください。本日、先生方に御報告させていただく承認基準については、すべて改正となり、中心静脈用カテーテル承認基準、インスリン皮下投与用注射筒等承認基準、硬膜外投与用針等承認基準、麻酔脊髄用針承認基準、麻酔用滅菌済み穿刺針承認基準、硬膜外麻酔用カテーテル承認基準の計6基準となります。以上、御報告させていただきます承認基準に関しましては、パブリックコメント手続を経て発出させていただく予定となっております。
それでは、内容について、PMDAの方から御説明をさせていただきます。よろしくお願いします。
○機構 それでは、PMDAより説明させていただきます。資料1-1を御覧ください。先生方に今回御報告する承認基準案は、日本工業規格の改正に伴う6件の承認基準案の改正案です。1番の「中心静脈用カテーテル承認基準」は、平成17年4月1日に制定された承認基準ですが、今般、JIS T 3218、中心静脈用カテーテルの改正に伴い、承認基準を改正するものです。JISの改正内容は、JISの中で引用している通知の改廃により齟齬が生じないようにした点と、用語などを統一した点のみで、技術要件の変更はありません。承認基準の改正内容は、JIS改正内容を承認基準の記載に反映するとともに、技術基準の記載の整合化及び文言などの見直しであります。詳細は1~16ページの記載のとおりです。
2番の「インスリン皮下投与用注射筒等承認基準」は、平成20年3月25日に制定されたものですが、今般、JIS T 3253、インスリン皮下投与用注射筒の改正に伴いまして、承認基準を改正するものです。JISの改正内容は、注射筒の端部のずれを規格化して追加したことによるものですが、これが技術要件となっております。他はJIS改正の中で引用している通知の改廃や、局方の改正等により齟齬が生じないようにした点と、用語などを統一した点です。承認基準の改正内容は、JISの改正内容の反映と、文書などの見直しです。詳細については17~30ページの記載のとおりです。
3番の「硬膜外投与用針等承認基準」は、平成20年3月25日に制定されたものですが、今般、JIS T 3304、硬膜外針の改正に伴いまして、承認基準を改正するものです。改正内容は、JISの中で引用している通知の改廃や局方改正による齟齬が生じないようにした点と用語などを統一した点のみです。技術要件の変更はありません。承認基準の改正内容は、JISの改正内容の反映と、文言等の見直しです。詳細については31~44ページの記載のとおりです。
4番の「麻酔脊髄用針承認基準」は、平成20年3月25日に制定されたもので、今般、JIS T 3308、脊髄くも膜下麻酔針の改正に伴いまして、承認基準を改正するものです。JISの改正内容は、3番のJISの改正と同様、通知の改廃や局方改正により齟齬が生じないようにした点と、用語などを統一した点のみで、技術要件の変更はありません。承認基準の改正内容は、JISの改正内容の反映と、文言などの見直しで、詳細については45~58ページの記載のとおりです。
5番の「麻酔用滅菌済み穿刺針承認基準」は、平成20年3月25日に制定されたものですが、今般、JIS T 3306、神経ブロック針の改正に伴いまして、承認基準を改正するものです。JISの改正内容に、構成品の誘導針に関する要件を追加するといった技術要件の変更はありますが、技術要件としてはこの1点で、その他は通知の改廃や局方の改正により齟齬が生じないようにした点と、用語の統一です。承認基準の改正内容については、JISの改正内容の反映と、文言の見直しです。詳細については59~74ページの記載のとおりです。
6番の「硬膜外麻酔用カテーテル承認基準」は、平成20年3月25日に制定されたものですが、今般、JIS T 3258、硬膜外麻酔用カテーテルの改正に伴い、承認基準を改正するものです。JISの改正内容は、3番のJISの改正と同様で、通知の改廃や局方の改正により齟齬が生じないようにする点と、用語などを統一した点です。技術要件の変更はありません。承認基準の改正内容は、JISの改正内容の反映と、文言の見直しです。詳細については75~89ページの記載のとおりです。簡単ですが説明は以上です。
○笠貫部会長 それでは、委員の皆様から御質問、御意見ありませんでしょうか。六つの改正案ともJIS改正内容を反映し、文言を見直したものだということですので、特にありませんでしょうか。
特に御意見がないようでしたら、議題2に移ります。議題2「医療機器の認証基準案について」事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 議題2「医療機器の認証基準案について」御報告させていただきます。資料2-1、参考資料2-1を御用意ください。
はじめに、参考資料2-1について御説明させていただきます。認証基準については、平成17年の改正薬事法の施行により、第三者認証という制度を導入させていただいておりますが、現在、我が国には第三者認証機関が13ありまして、厚生労働大臣が基準を定めた管理医療機器については、この第三者認証機関が、その基準に基づいて適合性の評価を行い、認証するというような形をとっております。また、平成23年度中には、この第三者認証機関において、原則、すべての管理医療機器を指定管理医療機器へ移行する完全認証移行に向けた取組を行っているところです。現在までに1,790品目の一般的名称のうち1,309品目、基準数で申しますと780基準が策定され、全体の約73.1%を指定管理医療機器としてカバーする状況にあります。
続いて資料2-1を御覧ください。本日、先生方に御報告させていただく認証基準については、制定が、資料2-1の項目1の「歯科用噴射式切削器認証基準」から、2枚めくっていただいた項目42の「新生児黄疸光線治療器認証基準」の計42基準、改正が、項目43の「単回使用手術用パンチ等認証基準」から、項目52の「輸血・カテーテル用延長チューブ等認証基準」の計10基準となります。以上、御報告させていただきます認証基準に関しましては、承認基準同様、パブリックコメント手続を経て発出させていただく予定となっております。それでは、内容についてPMDAより御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
○機構 資料2-1を御覧ください。先生方に今回御報告する認証基準は、項目の1~43番の、改正を1件含みますが、先ほど御説明がありました、ただ今やっております完全認証移行のプロジェクトに関係する43の認証基準となっています。44~52番までの9件が、日本工業規格の改正に伴う認証基準の改正案です。
最初に、完全認証移行のプロジェクトに関する43件の中で、制定認証基準が1~12番と30~42番の合計25件の基準となっています。これらの25件の認証基準は、品目個別の技術要件を規定したJISに基づく適合性審査を行う認証基準ではなく、安全性に係るJISを告示引用JISといたしまして、性能については、基本要件適合性チェックリストの第6条に要求事項を記載して既存品との同等性を評価することにより、適合性を確認するものとしています。これら25件の認証基準の引用JISとしては、T 0993-1「医療機器の生物学的評価」と、T 0601-1「医用電気機器安全」というJISを引用しています。完全認証移行のプロジェクトに関する43件の中で、13~29番までの17件はセット・キット基準であり、組合せ医療機器全体を総称する一般的名称の基準として、使用目的、効能又は効果のみを規定する認証基準として策定するものです。これは従来の組合せ医療機器の扱いと同じ考え方に基づいたものです。完全認証移行プロジェクトに関する43件の中で、43番は、既存の単回使用手術用パンチ等認証基準に、実質的に同じ医療機器である大動脈手術用パンチの名称を追加する、既存の認証基準に新たに大動脈手術用パンチを追加するという基準です。
44~52番までがJIS制定及び改正に伴う9件の認証基準の改正案です。この中で49番は、JIS T 6531の歯列矯正用エラスチィック器材が制定されていましたので、告示引用JISをT 6531に置き換えるというもので、引用JISが変わるというものです。他の8件は、JIS改正に伴う認証基準の改正で、この8件の基準の中で改正されるJISは全部で6規格あり、JISの改正内容といたしましては、実情に合わせた技術要件の項目追加及び変更、それと記載内容の見直しです。認証基準の改正内容は、JIS改正内容を反映した基本要件チェックリストの変更と、文言の見直しです。
なお、今回、基準改正時に、現状を踏まえて使用目的を見直し、1件改正いたします。75ページの52番の基準を御覧ください。52番は「輸血・カテーテル用延長チューブ等認証基準」です。上段に「使用目的、効能又は効果」の欄があり、「現行」と「改正案」という記載がありまして、今回こちらの改正案のとおり変更することとしています。また、一般的名称の定義も見直し、現状を踏まえて変更いたします。
1ページを御覧ください。1番の「歯科用噴射式切削器認証基準」です。定義欄を御覧いただくと、「現行」と「改正案」と記載されており、こちらの一般的名称の定義も改正案のように変更させていただきます。また、この1件のほかに、同様に実情を反映し一般的名称の定義を変更する機器の認証基準は、資料2-1の表紙で説明しますと、6番~14番と16番、19番~21番、25番、29番、30番、33番、35番、38番~40番、43番、44番、49番です。この合計25件の基準について、一般的名称の定義を変更させていただきます。定義の変更内容は、各基準案の記載のとおりです。
続きまして、資料2-2は「医療機器の認証基準案に係る基本要件適合性チェックリスト案について」です。完全認証移行のプロジェクトに関する制定認証基準の25件と、改正基準1件、及びJIS制定改正に伴う改正認証基準9件の、合計35件の基本要件適合性チェックリストの案となっております。完全認証移行のプロジェクトに関するセット・キット認証基準の17件ですが、これは既に策定されている5個の基本要件適合性チェックリストをそのまま利用するため、新たに策定することはいたしておりません。説明は以上です。
○笠貫部会長 それでは委員の皆様から御質問、御意見ございませんでしょうか。これもクラスIIの第三者認証制度が着々と進んでいることの御報告だと思います。今回43件の25基準と、JIS改正に伴う基準の改正という9件が出されておりますが、御質問はございますか。
○村上委員 今回の認証基準の中で、名称の定義の変更というのがありましたけれども、1ページの歯科用噴射式切削器についての質問です。この場合は、今の定義は歯を切削する機器ということで、名称の噴射式切削器と同じ用語が使われていたところが、今回定義を研削する機器として変えられるということで、私は機械工学分野で加工は専門ではないのですが、加工の分野では切削と研削は区別されます。定義は今回変えられますが、一般的名称はこれまで使われている用語を重視して、このままにされるという理解でよろしいのでしょうか。
○機構 はい、そのとおりです。
○村上委員 ユーザーの方で混乱が起こらなければ良いと思います。
○笠貫部会長 これはいかがでしょうか。名称と定義の違いを御指摘いただきましたが、現場で混乱が起こらないかについては、こういう形で徹底していただくということでよろしいですね。村上委員、現場の方の御意見としてそれでよろしいでしょうか。
○村上委員 名前というのは、社会の利用の仕方と密接に関連しますので、急に変えると混乱が起こるかなというところが気になって質問させていただきました。
○機構 名前の方は変更はしないようにしておりまして、JIS Tでも整合化した名前ということで統一していまして、定義の方は実情に合わせて変えるというようにしています。
○笠貫部会長 名称を変えることによる混乱の話と、JISの改正による言葉の定義を使い分けられているという御説明だったと思います。
○?橋委員 今日いただいた資料の参考資料2-2ですが、その中で違和感を感じているのは、165ページですが、義歯床用アクリル系レジンがありまして、この序文のところで、「この規格で点線の下線を施してある箇所は、対応国際規格を変更している事項である」と書いています。変更の一覧表にその説明をつけて最後の方に出ていますが、このページの右側に plastic cake のことを、ケーキ状レジンと書いていますが、この用語はJISで決められているのですか。
○機構 確認して、後で御報告させていただきます。
○笠貫部会長 それでは、後で委員の方には御報告していただくことで。他の委員の先生方から御質問、御意見はありませんでしょうか。これで、1,790件のうち1,309件、さらに今回52件が認証移行に向けて進んでいることになるかと思います。さらにこの作業はこれからも鋭意進められるだろうと思います。特に御意見がないようでしたら、これで議題2を終了とさせていただきます。公開で行う議題は以上です。
○医療機器審査管理室長 ありがとうございました。以後の議題は非公開とさせていただきますので、傍聴の皆様は御退席の程よろしくお願いします。非公開で行う議題3以降の開始時間は15時35分とさせていただきます。よろしくお願いします。
それでは準備が整いましたので、医療機器・体外診断薬部会を再開いたします。まず非公開の議題に係る配付資料の確認をさせていただきます。資料3、医療機器「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定についての諮問書です。資料4、医療機器「Zilver Flex SFA用バスキュラーステント」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定についての諮問書、資料5-1、医療機器「HA-TCP人工膝関節」の再審査報告について、資料5-2、医療機器「人工膝関節脛骨トレーGB76」の再審査報告について、資料6、競合品目・競合企業リスト、参考資料6、薬事分科会審議参加規程です。不足分はございますか。
○笠貫部会長 資料はよろしいでしょうか。それでは、これより非公開による議題に入らせていただきます。まず本日の審議事項に関与された委員と利益相反に関する申し出状況について、事務局から御報告をお願いいたします。
○事務局 審議事項に関する影響企業の調査について御報告をさせていただきます。資料は資料6、参考資料6になります。これらの報告につきましては、平成20年12月19日付薬事分科会で決定された、薬事分科会の審議参加規程に基づくものになります。皆様から毎回御報告をいただいておりますので概要は御存じかと思いますが、過去3年度に渡りまして寄付金・契約金等の額について、競合企業と申請企業から額の申告をしていただきまして、その結果に応じて審議不参加もしくは議決の不参加という形を、審議会規程として決めさせていただいております。
資料6の競合品目・競合企業リストを御覧ください。表紙になっているのが、今回の議題3「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」についてです。申請者はCook Japan株式会社となっております。競合品目として1点目が、テルモ株式会社の末梢血管用自己拡張型ステントシステム、競合品目の2点目が、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の浅大腿動脈閉そく症に対するステントとなっています。ともに本品と同様の適用を持つ、現在開発中の品目であるとの理由で申告がされています。
次のページが、議題4「Zilver Flex SFA用バスキュラーステント」についてです。こちらは議題3と同様の競合品目となっていますので割愛させていただきます。
本日の審議事項に関する影響企業につきまして、委員の皆様から寄付金・契約金等の受取状況を伺ったところ、薬事分科会審議参加規定第12条「審議不参加の基準」、又は第13条「議決不参加の基準」に基づきまして、御退室いただく委員及び議決に御参加いただけない委員はいらっしゃいません。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 ただ今の事務局からの御説明に、特段の御意見はございますか。よろしければ議題3に入りたいと思います。議題3、医療機器「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」の製造販売承認の可否等について審議を行います。本議題の審議に当たりましては、参考人として東邦大学医療センター大橋病院循環器内科学講座教授の中村正人先生においでいただいています。よろしくお願いいたします。まず審議品目の概要について事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 審議品目の概要について御説明いたします。資料3を御覧ください。こちらの1枚目は「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」の諮問書です。次に審査報告書2ページを御覧ください。一般的名称が「薬剤溶出型大腿動脈用ステント(新設予定)」となっています。販売名は「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」、申請者はCook Japan株式会社です。品目の概要として4ページの下を御覧ください。図1は自己拡張型ステント、及び図2はステントを病変部位に送達させるためのデリバリーシステムから構成されるステントシステムです。3ページの使用目的、効能・効果として、本品は4~7mmの対照血管径を有し、1肢あたり病変長が14cm以下である膝上大腿膝窩動脈の症候性血管疾患の治療に用いることを意図したもの、また同部位におけるインターベンション治療の不成功に伴う急性又は切迫閉塞の治療にも用いられるものです。承認条件として1、2を付しています。
補足させていただきますが、一般的名称の新設についてという、一番最初のタグをおめくりいただければと思います。今回、薬剤溶出型大腿動脈用ステントは、1.高度管理医療機器として新たに指定すること。2.特定保守管理医療機器の指定については、指定しないということ。3.生物由来製品又は特定生物由来製品の指定については、指定しないということで、一般的名称を「薬剤溶出型大腿動脈用ステント」として新設し、クラス分類をIVと考えています。詳細につきましては機構から御説明いたします。
○機構 PMDAより御説明させていただきます。議題3、資料3の医療機器「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」の御説明をいたします。1ページの諮問書の次のページを御覧ください。本審査にあたり、1枚目に記載している4名の専門委員に御意見をいただきました。また2枚目の1ページに書いてある紙に、お配りした審査報告書の正誤表を記載させていただきました。配付した審査報告書には3か所誤記載があり正誤表を付けました。お詫び申し上げます。
本品目の「概要」について説明させていただきます。審査報告書の4ページを御覧ください。先ほど説明がありましたとおり、本品目は図1のステントと、図2のステントが装填されているデリバリーシステムから構成されています。またステントの管腔外面には、新生内膜増殖による治療部位の再狭窄を防ぐ目的で、抗悪性腫瘍薬として承認されているパクリタキルが、ポリマーを用いず直接コーティングされています。
今回、審査報告書の5ページの表1に記載していますように、6Fr及び7Frのステントシステムが申請されていて、それぞれステント径、ステント長のサイズバリエーションが異なっています。7Frのステントに比べ、6Frのステントは留置をさらに容易にするため、小型のイントロデューサーシステムの必要条件に適合するようシステムの断面積を小さくしており、7Frステントとはステントデザインが若干異なっています。
大腿膝窩動脈領域のベアメタルステントは、欧米では既に認可されていますが、本邦では本品が初めてのステントとなります。また薬剤溶出型ステントである本品の外国における使用状況ですが、審査報告書7ページの(2)「外国における使用状況」にお示ししたとおり、2009年7月にCEマークを取得して以来、EU及び16の国及び地域で市販され、2011年9月14日現在で□□個の販売実績があります。なお本品は米国食品医薬品庁(FDA)との共同審査を行っている品目であり、米国でも申請されていますが、まだ承認されていません。
審査の内容に入ります。非臨床試験成績に関する論点について御説明申し上げます。審査報告書18ページ、2)「薬剤搭載量及び放出挙動の妥当性について」の項を御覧ください。動物試験において本品の臨床使用環境に準じた薬物動態を確認したところ、本邦既承認のパクリタキセル溶出型冠動脈ステントの報告値と比較して、ステントを留置した動脈組織内のパクリタキセル量のピーク値は約14倍高い濃度でしたが、さらに本品の臨床用量の4倍量の高用量のパクリタキセルをコーティングした本品ステントを用いた動物試験の結果を見ると、留置6か月後まで臨床に影響を及ぼすような安全性に関する問題は見られず、全身的及び局所的な作用、また好ましくない続発症も認められていません。さらに臨床試験において6か月、1年時点で動脈瘤及びステントの圧着不良は観察されていないことから、パクリタキセルの量や薬剤放出プロファイルに起因する毒性はないと判断しています。
本品の「臨床試験成績」について御説明させていただきます。審査報告書20ページからになります。大腿膝窩動脈に14cm以下の新規狭窄部又は再狭窄部を有する患者を対象に、本品の有効性・安全性を経皮的血管形成術、いわゆるバルーン治療と比較することを目的として、多施設共同の前向き無作為化対照国際共同治験が、日本、米国、ドイツの全55施設で実施され、登録された479例は審査報告書21ページの図4に示したとおり、本品群で241例、バルーン群のPTA群で238例が割り当てられました。その中で日本人は本品群28例、PTA群32例となります。またPTA群では、バルーンによる拡張不全やバルーン拡張時の血管内膜解離に伴う切迫閉塞などの早期PTA不成功が発症した患者は、さらに本品群又はベアメタルステント群のいずれかに無作為に再割付が行われました。ここで用いられたベアメタルステントは、次の審議品目であり、本品と薬剤コーティングのみが異なるベアメタルステントになります。なお本試験においては本品、次の審議品目のベアメタルステントであるFlexともに、7Frの製品を用いていて、6Frの製品は用いられていません。
成績に移ります。有効性についてですが、審査報告書22、23ページの「試験全体の成績」の項を御覧ください。有効性の主要評価項目として「1年フォローアップ時の一次開存率」が設定されていて、本品群で75.9%、PTA群で28.2%と、PTA群に比べ優越性が示されました。
安全性についてですが、審査報告書24ページ~28ページを御覧ください。安全性の主要評価項目として、1年間、臨床事象委員会が定めた主要有害事象が発生しない状態である割合として「無事象生存率」というものが設定されています。本品群の無事象生存率は、PTA群に対して非劣性であることが示されました。また1年フォローアップ時に、いずれかの群で2%以上の発現率が見られた不具合・有害事象に関しては、審査報告書25ページの表6のとおりであり、本品群で特段高い事象は認められていません。さらにステント破断に関して同じ25ページの表7に示したとおり、治療完了時(退院前)に関してはステント破断が認められていませんが、1年フォローアップ時には457本中4本でステント破断が見られ、その4例中3例が日本人であるという結果が示されました。
本品は薬剤溶出ステントであるので、パクリタキセルの効果の評価を行っています。報告書27ページの図7を御覧ください。本品及びベアメタルステントであるFlexを早期PTA不成功の患者に留置し、1年フォローアップ時の一次開存率を見ていますが、ベアメタルステント留置の患者が開存率72.9%に対し、本品群では90.2%であり、本品群で有意に高い結果が得られています。また無事象生存率、安全性に関しても、報告書28ページの図8のとおりであり、本品群で高い傾向が見られます。以上が臨床試験の結果となります。
今申し上げた成績を踏まえ、本品の審査における主要な論点について御説明させていただきます。審査報告書45ページの「総合評価」を御覧ください。論点としては四つあります。1点目として、本品の有効性についてですが、添付された国際共同治験に関しては、有効性主要評価項目である1年フォローアップ時の一次開存率は、PTA群に比べて本品群で有意に高い効果が示され、また早期PTA不成功後の本品又はベアメタルステントの追加留置をした結果、パクリタキセルの効果が示唆されています。さらに、安全性に関して、本品群の1年間の無事象生存率は、PTA群に対して非劣性であることが示されていることから、全集団において本品の有効性は示されていると考えました。また国際共同治験に組み入れられた日本人患者の症例数は53例であり、全集団の成績と日本人の部分集団の成績の一貫性を検討するには十分とは言い難いところはありますが、全集団の成績と日本人の部分集団成績との間に明らかな解離は認められていないことから、日本人においても海外と同様、本品の有効性が得られるものと判断しました。また本治験では14cm以下の病変に対して評価が行われていますから、使用目的、効能・効果では、病変長が14cm以下であることを明記することが適切であると判断しています。
2点目の論点として、臨床試験で未使用であったサイズについての取扱いですが、臨床試験で使用されていない6Frのステントの有効性及び安全性の評価に関しては、6Frステントと7Frステントの間に、寸法、デザインに関して差分がありますが、血管と接触する面積の割合及び薬剤の影響に差異はないと考えられること、一連の非臨床試験で同じ設計仕様に適合していること、以上を踏まえて、7Frのステントの臨床試験成績に基づき6Frの評価をすることは特段の問題がないと判断しました。
ステントの径についてですが、5mm、9mm、10mm径のステントに関しては臨床試験で用いられていません。5mm径のステントは、今回申請されたステントの中でも最も細い径であり、臨床評価が必要であると考えていますが、有効性及び安全性を裏付ける資料が提出されませんでした。また本品9mm、10mm径のステントに関しては、国際共同治験でもほとんど使用されておらず、日本人で使用される可能性が低いことから、以上の考察をもちまして5mm、9mm、10mm径のステントは、審査の過程において申請内容から取り下げられました。
ステント長に関してですが、国際共同治験ではステントは80mm長まで使用可能であり、100mm、120mm長のステントは使用されませんでした。しかしながら、動物試験で140mm長のステントを装填したデリバリーシステムの操作性・留置性能を評価していること、国際共同治験において80~140mmの病変長を有する患者117例に対して、重複留置ではあるが有効性及び安全性の評価が行われ、特段、問題が認められていないこと、またステントの重複留置よりも、1本のステントで治療することで得られるメリットがあることなどを踏まえ、承認は可能と判断いたしました。以上を踏まえ、報告書42ページの表15に示すサイズバリエーションの範囲で承認が適切であると判断いたしました。
3点目の論点ですが、報告書46ページになります。本品が有するリスク及びリスク低減措置についてですが、国際共同治験では、本品が用られた日本人症例数が36例(38病変)のうち3例にステント破断が認められていますから、添付文書において国際共同治験におけるステント破断に関する試験結果を情報提供するとともに、本品の臨床試験に先立ち、トレーニングにおいて留置の際の注意点、リスク回避の方法等を情報提供する必要があると判断いたしました。また、より多くの症例数で長期間の安全性を把握する必要があると考え、承認条件1.を付すことが妥当であると判断いたしました。
4点目の論点ですが、製造販売後調査の調査項目についてです。本品は、本邦で初めての大腿膝窩動脈領域に用いるステントであること、国際共同治験における日本人症例数は限られていること、本邦と海外では生活様式が異なるため、日本人でステント破断の発生頻度が高くなる可能性が否定できないこと、また大腿膝窩動脈領域に用いる薬剤溶出型ステントは本品が世界で初めてであり、長期的な安全性が確立されていないことから、製造販売後調査では、重点調査項目として、有効性の評価として術後のTLR率、また安全性の評価としてステント血栓症及びステント破断を調査すること、また、より多くの症例数で長期間の安全性を把握する必要があると考え、承認条件2.を付すことが妥当と判断いたしました。なお、1回の治療における本品の最大使用本数についてですが、審査報告書15ページの4.の1か月の過剰用量試験の試験結果を踏まえ、3倍の安全域が得られるパクリタキセル量を患者1人に使用できる総量3,500μgと設定していて、その旨、添付文書で記載しています。
以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年と判断しています。なお、薬事分科会で報告を予定しています。
最後に、事前に木村委員から質問をいただいていますので紹介させていただきます。木村委員は本国際共同治験の治験責任医師であり、及び日本心血管インターベンション治療学会理事長であるというお立場を認識しての御意見ではありますが、木村委員から、本品の導入において、大腿膝窩動脈領域の狭窄や閉塞に対する過剰な介入を招かないような対策の必要性について確認したい、との質問をいただいています。この点に関して、大腿膝窩動脈における治療に関してはガイドライン等を参照し、薬物療法や運動療法などの治療方法を検討の上、慎重に使用する旨、添付文書で注意喚起を行っていく予定です。PMDAからの報告は以上になります。
○笠貫部会長 ありがとうございます。それでは参考人の中村先生から何か付け加えることがございましたら、お願いします。
○中村参考人 東邦大学の中村でございます。今、PMDAから御説明がございましたように、現在、大腿動脈におけるステントは本邦では承認されていません。このため、本領域に対する治療を行うにあたり、大きな解離等ができ血流の悪化を招いた場合、そこから回避する手段がないというのが現状です。大腿動脈における治療は時代とともに変遷してきていて、特にステントが登場してきてから治療成績が飛躍的に改善しました。TASCというコンセンサスドキュメントがありますが、今回、治験の適応となった15cm以下の病変に対しては、血管内治療にプライオリティがあり、治療選択肢として妥当であろうと記載されています。従って、その領域に対する治療の手段として、このようなステントが承認されることは患者にとっても我々にとっても大きな利益であろうと考えられます。
一方で、先ほどPMDAから指摘がありましたように、この大腿動脈の病変は多くの患者が無症候または、非典型的症候であります。閉塞があっても症状が重い方から軽症の方までいらっしゃいますので、その方々にすべてこの治療が適合するというのは決して理想的ではありません。したがって有症候性の跛行、または重症虚血肢に対しての適応ということになろうと思いますが、そのような適応を十分考慮すべきであるというPMDAの基本的考え方に同意いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございます。本件につきまして委員の皆様方から御意見をお願いします。
○鈴木委員 次の会議があり中座しなければならないのですが、全体的には有効だと思いますけれども、破断の例が日本人に際立って多いということで、例数が違うので比較はそのままではしにくいかと思いますが、日本人が38例中3例で、日本人以外だと457例中1例ということで、かなり違うと思います。その辺は日本人が正座する、特に御高齢の方が対象ですから、そういうリスクがあるのだろうと考えて、日常的に正座する習慣のある方は注意するとか、正座のように極端に膝を曲げることをなるべく減らすなど、そういう注意を載せていただいたほうがよろしいのではないかと思いましたので、一言、発言させていただきました。
○笠貫部会長 鈴木委員の御指摘のように日本人でステント破断が多いのは、この機器の一つのリスクとして存在します。それについてどうお考えになるか。鈴木委員からは、それについて医師にも患者にも十分それを伝えたらどうかということですが、事務局としていかがでしょうか。
○機構 PMDAからお答えさせていただきます。その点に関しましては、PMDAとしましても十分に注意喚起をしていく必要があると考えておりまして、現状では、申請者の方に、まず使用する医師に対してこのようなリスクがあることを十分に注意喚起していくことと、その医師から、使用する際に患者に注意喚起をしていくというころを、対策で取っていこうと考えています。また使用成績調査に関しても、調査項目として、どういった生活をスタイルするのかといった詳細なところの調査も、今回行っていく予定で、その結果が出次第、リスクの低減措置を順次取っていこうと考えています。
補足させていただきます。まず医師に対する注意喚起という点に関してですが、今回、日本人に対する症例数が少なかったということもあり、正座など日本人特有の生活習慣によるものかどうかに関しては、まだ実際に明確になっていないところもあります。またほかのリスクとして審査報告書46ページの3.に記載しているそのほかのリスクです。今回、ステント破断が起こったのが、正座、胡座、歩行機会が多い日本人特有の生活様式による影響があるかもしれないという可能性が一つです。またステント留置時のステントの伸長ですね、ちょっと伸ばして置いてしまうことが破断の原因になるのではないかということが2点目です。3点目として留置部位によるステントの構造変化、要するに置く場所が石灰化部位や蛇行している部位に置くことによっても起こる可能性がありますので、まず医師に対しては必ずトレーニングプログラムを受けていただきたいと思っています。その場において、これらのリスクがあることをきちんと周知していただこうと思っています。また注意喚起においても、今、添付文書では、臨床試験においてこのようなことが起こったという事実ベースで書いているのですが、鈴木委員の御指摘も受けまして生活様式や留置の問題等も含めて、さらに注意喚起が必要かどうか考えて記載していきたいと考えています。
○笠貫部会長 私も正座しますが、これだけの症例数では因果関係を特定できないにしても、ステントと曲がり捻りを考えたら十分考えられるリスクであり、低減措置として医師あるいは患者向けの説明をすることを取っておくほうがいいのではないかと思います。
○機構 ありがとうございます。そのように対応させていただきたいと思います。
○笠貫部会長 医師のトレーニングの話で、中村先生にお聞きしたいのですが、このステントを使う場合に外科医がやるか内科医がやるか、あるいは放射線科の医師もやるかもしれないので、医師のトレーニングを企業だけにするのか、あるいは学会も絡むのかということについては、いかがですか。
○中村参考人 このステントは大腿動脈領域においては承認されていませんけれども、腸骨動脈領域においては既に承認されていて、実は多くの医師が使用経験を持っています。また、腸骨動脈領域ではフラクチャーが問題とされていません。留置手技による影響というのは、たとえあったとしても隠れてしまうということだろうと思います。今日、お話がありましたけれども、大腿領域においてフラクチャーの要因を検討してみますと、ステントが少し伸張というか、普通の長さより引き伸ばして留置されている症例が多かったとのことです。手技が要因であろうという仮説が挙がっていると聞いております。したがって引っ張らないように留置しましょうということは、十分喚起する必要があります。しかし、現実的にそれほど難しい手技ではなかろうという気はします。とりあえず体外で一通りのことはやったほうがよろしいと思いますが、学会として、それを10例、20例こなす必要があるというほどの難しさではなかろうという気がします。
○笠貫部会長 今、言いました内科医でも外科医でも、放射線科医でも十分できるということですね。
○中村参考人 この手のステント以外、腸骨動脈領域にはSMARTステントやWallステントなど、いろいろなステントがもう既に使える状況にあります。そのステントと取扱いが全く異なるかというと、そういうものでもありませんし、ちょっと注意する点として、より慎重にやるべきだというところぐらいかなという気がします。
○笠貫部会長 中村先生、腸骨動脈の方でも医師の研修というのは謳っていないですか。
○中村参考人 腸骨動脈は謳っていません。
○笠貫部会長 分かりました。それから、アンジオプラスティとの比較で今回出ていますけれども、先ほど御指摘のあった過剰な介入ということから、ガイドラインは、使い分けについて十分徹底されると考えてもよろしいのでしょうか。承認条件にガイドラインは載っていなかったと思いますが、それを載せる必要はないのでしょうか。
○中村参考人 現在、血管内治療にしろバイパス手術にしろ、下肢の跛行に対する症候を取り除くというのが治療の有効性であり、長期予後を改善するという有効性はありません。あくまでも跛行に対する症状を改善することに限局する治療ということは、学会としても十分指導していく方向で行うべきだと思っています。
○笠貫部会長 冠動脈ステントは内科医と外科医が、適応について十分検討するという形の添付文書が進められていますけれども、この領域について、そこまで踏み込む必要があるかどうかについては、中村先生からまず御意見をいただけたらと思います。
○中村参考人 この領域は大きく分けて、治験の対象になりましたTASCのA、Bの領域の範囲とそれ以外のC,D領域に分かれます。A,B領域に関しては、非常に石灰化が高度であるなど血管内治療が明らかに不向きであるという場合は別ですけれども、外科医も積極的に血管内治療をまず行っている方向であろうと思いますし、血管内治療をファーストで行うというのが世界の流れだと思います。TASCのC、Dという病変長がさらに長くなって、より高度な病変になってくると、これは外科との使い分けということになりますから、そこは外科医との話合いが必要になるということだと思います。今回の対象となる領域においては、まずは血管内治療がファーストというのが世界のコンセンサスかと思っています。
○笠貫部会長 今の承認条件を踏まえて、ほかに委員の方から御意見はございますか。
○齋藤委員 私もこの報告書を読ませていただきまして、その力学的な安全性がどれぐらい担保されているのかが疑問になりました。膝関節の後ろになりますと、絶えず屈曲、伸展というのは加わるわけで、局所的にそういった負荷が頻回に加わった場合に力学的にどうなのかというのが、一番気になりました。先ほど見させていただきましたけれども、通常のステントと構造的には変わりないようですので、その辺がどの程度配慮されているのか、メーカーの方にも少しお伺いしたいと思いました。
○笠貫部会長 これは先ほど鈴木委員から出ましたけれども、日本の高齢者となると、正座ということが日常生活で行われ、繰り返されるだろうと思います。それについて事務局から何か追加説明はございますか。
○機構 正座に対する御懸念は最もなことだと思います。私たちも文献等を調べましたところ、日本の医療実態として、腸骨動脈ステントとして使われているSMARTステントの実態調査がございます。そこにおいては、TASCのA、Bにおいてのステントフラクチャー破断率8%という値が出ていました。186例です。SMARTステントに関して米国と日本では、まだ浅大腿動脈領域に関して開発が進んでいる最中ですけれども、昔の臨床試験で行われた浅大腿動脈領域においてのステント破断率は8%という値が出ていて、そこと比べて日本において大きく破断率が増えることは、SMARTステントにおいてはないのかなと考えました。非臨床試験でも、SMARTステントと本品とで別テストが行われているようで、それについてはまた担当から御説明します。
本品に関しましては、ステントの外形は、おっしゃるとおり冠動脈と、そこまで変わらないのですが、一応、今回、そのような複合的な負荷がかかるであろうということを審査側も懸念として持っていて、有限要素解析であったり、実際に負荷をかけるときに、複合的な負荷などをかけて破断があるかどうか確認したところを、文献等の参考値を参考にして、負荷をかけた場合にどうかというところの評価を行っています。非臨床モデルでは実際に破断は見られていませんので、非臨床のほうではそのような担保をしています。実際のところの臨床の結果としては、今、申し上げたとおり他品目と比べて、そこまで高い数値は出ていないというところがあります。ただ、日本人に関しては発症リスクが高くなる可能性がありますので、そこのところを使用成績調査等でしっかり取っていきたいと考えています。
1点、補足ですが、添付文書に「操作方法又は使用方法等」という項があります。資料でいきますと添付資料概要というオレンジのタグのすぐ前のところになりますが、別紙8が添付文書案となっています。その8-2、2ページ目の左上段ですが、「ステントの配置位置」というところに記載していますように、浅大腿動脈の基点の少なくとも1cm下にステントを留置するという話だと思いますが、膝の裏側には置かないように注意喚起していることになっています。
○笠貫部会長 ステント破断については、添付文書の上ではどこに注意事項として実際に書かれているのでしょうか。
○機構 黄色いタグが入っている承認申請書の別紙8-5、左側のカラムの一番下の段落に「ステントの破断率は0.9%であり」という記載があり、ここに先ほど御説明したとおり事実ベースで書かせていただいたのと、日本人症例では3例認められたことを記載して
思います。
○笠貫部会長 臨床成績というところは添付文書としてはあまり読まれないところだと
拠はないかと思います。ここで議論されたことは、全体で4症例のうち3症例が日本人であり、日本人は64例のうちの3例となると、頻度として高いということがここでかなり議論されています。臨床成績の中のワン・オブ・ゼムではなくて、「使用上の注意」あるいは、「警告」までは根拠がないかと思いますが、検討していただけますか。
○機構 はい。今回、御意見を伺いましたので「使用上の注意」に記載し、「臨床成績」のほうを参照する形で注意喚起していきたいと考えています。
○笠貫部会長 全症例登録をしていただけるということですが、これは承認条件ではなく自発的にということなのでしょうか。
○機構 使用成績調査に関してということで、よろしいでしょうか。
○笠貫部会長 はい。
○機構 おっしゃっているとおり、企業の方で自主的に900例までは全症例を登録するということで、企業の方から提出されました。
○笠貫部会長 ちょっと気になるのは、これが国際共同治験であって、アメリカの方はまだ審査中ということですが、これを日本で承認するときに、先ほどの日本人の生活様式の問題が危惧されるので、承認条件をどうするかという問題として議論されるべきだと思います。結果的に企業が全症例を900例まで登録することと、承認条件として市販後の安全対策をどうするかというのは、分けて考えたほうが良いと私は感じます。そのことについてどうでしょうか。私は承認条件として、今回は全症例を登録してくださるという企業の姿勢がありますが、結果論ではなく、今後の問題があるのだと思います。この場合には承認条件としても全症例登録を付けておいたほうが、新しい医療機器で日本で初めてというときには必要だと思います。委員の方、いかがでしょうか。
○荒井委員 笠貫部会長御指摘のように世界で初めてである以上、慎重に対応する必要があるというのはよく理解できます。ただ、それとは別に、全症例を登録し、長期に経過を見るというノルマを企業に課すことについては慎重に考える必要があると思います。というのは、そのような条件が負荷されることで、市場の大きさや製品の値段によっては製品を日本に導入する企業がなくなるというリスクがあるからです。今回は企業の方が900という具体的な数を出したようですが、この数字の設定根拠はがあまり明確でないように思われます。このため、全例登録について賛同しかねるわけです。もし治験で分かったこと、あるいは懸念されることを払拭するために必要な例数として算出されたものであるならば、その科学的な根拠がきちっと示されるべきではないでしょうか。
○村上委員 今回、日本人で3件の破断例があり、そのうち二つは1か所だけで、もう一つは複数箇所ということですが、これからも起こる可能性があると思います。そうすると、破断の原因をもう少し解明していただきたいというのが希望です。たぶん手術時にある程度伸ばして使った例が多いだろうということなので、それで歪みが増えているのですが、その後に単なる引っ張りだけでは、たぶん破断しないのではないかと思うのです。やはり曲げたり捩じったりということが加わらないと、大きな歪みは出てこないと思います。それは生活環境とかの調査も要りますけれども、それと破断箇所自身は、いわゆる引っ張り破壊で壊れたのでしょうか、剪断で壊れたのでしょうか。その辺は調べているのでしょうか。FEM(有限要素解析)でも評価されているということなのですが、引っ張りがきついのか、線がねじれてきついのか、その辺で対策の取り方が違ってくるかと思います。
○笠貫部会長 事務局の方でお答えできますか。
○機構 臨床試験での複合負荷、有限要素解析等では、特段、破断等の兆候は見られていないという結果が出ています。結果としては出ていないということになります。
○村上委員 そうすると、予測以上の環境になった特殊な例と思われます。そういうことですと患者の症状や生活活動など、その辺も含めて評価が必要ということかなと思います。
○機構 補足の説明をさせていただきますと、臨床試験で認められた症例について、どういった引っ張りによるものか、剪断によるものかについては解析ができない部分があります。ただ、この領域は先ほど参考人の中村先生からも説明させていただきましたように、海外では承認されているものがかなりあるとのことです。フラクチャーのタイプについては4タイプに大きく分けて考えるということで、一応、分類の仕方もほぼ確立しています。3例起きていますけれども、特に問題となるタイプIII、IVは1例であったのと、3例起きた中で、フラクチャーに起因して患者に何か有害なこと、血管が詰まったといったことは起きていませんでした。
御質問がありました900例の設定の根拠についてですが、一応、御参考までに企業側が出してきている「使用成績調査実施計画書」の別紙1のところに、企業側の900例の根拠は提示されています。あと補足の説明になりますが、委員の方のコメントのとおり、特に日本と海外で何か差があるのかというところを、PMDAとしても確認したいところです。本品目についてはFDAと情報交換をやっていますが、FDAにはPMSという調査の体制はなくて、代わりに市販後臨床試験が行われる計画があります。米国でのフォローアップでのラクチャーの評価の仕方等の基準と同じものにして、極力、日本で集めたPMSでのフラクチャーの率と、米国で市販後臨床試験でとの比較ができるように、今、調整を図っている状況です。参考の情報として述べさせていただきました。
○村上委員 非常に治療効果のあるデバイスですので、安全性を確保していただいて進めていただければと思います。
○笠貫部会長 御指摘にありましたように、日本ではPMSという市販後の調査になりますが、アメリカの場合のように市販後の臨床研究が日本でもこれから大切になると思います。今のピボタルスタディでは安全性の評価には限界があると思います。今回、日本でピボタルスタディで実際に本品が使われたのは26例です。その中で3例破断が起こっているとしたら頻度は高いということで、たぶん900例に満たないうちに問題シグナルが出てくるのではないかと危惧します。この市販後の臨床調査、日本では調査ですけれども、アメリカの臨床研究に則ったプロトコルでやるということですので、是非、進めていただきたいと思います。そういうことで私は承認条件に、この全症例をどうするかについては、PMDAと企業とで十分な検討をしていただきたいと思います。
○武谷委員 ちょっとお尋ねしたいのは黄色い印の承認申請書のところですが、ここに添付文書で別紙8がございます。オレンジ色の紙の前のところです。添付文書8-5で「臨床成績」というところですが、下から10数行目、下段のほうのパラグラフで「ステントの破断率は0.9%であり、ステント破断が発生した患者の安全性及び有効性に関する結果から、ステント破断は患者の安全性又はZilver PTXステントの有効性に有害な影響を与えないことが示された」というのは、ちょっと表現として理解できないのです。では有害でない影響は与えたのかとか、有害な影響を与えていないなら破断しても構わないのではないか、放っておけばいいし、こんなことは議論しなくてもいいという解釈にもなり得るので、ここは訳が間違っているのではないかと思いますので、御訂正いただいたほうがよろしいかと思います。
○機構 ありがとうございます。適切な表現に修正していきたいと思います。
○武谷委員 事実は、どういうことですか。
○機構 事実は、これに対してさらに追加の治療を行ってはいないと。今回の場合は破断は認められましたが、追加の治療を行っていないというところで、彼らはこういう表現をしたということだと思います。
○武谷委員 放っておいて何ら問題はないということなのですね。
○機構 今回の破断に関しては問題はなかったということです。
○武谷委員 破断してもしなくても、そんなのは観察しなくても問題ないと、そういうことになるのですか。
○機構 ステントフラクチャーに関しては、マルチプルのストラットが破断したりといったことが発生すると、開存率に影響を与えるという研究報告もございますので、きちんと見ていく必要があると考えています。
○武谷委員 不適切ではありますね。
○機構 不適切だと思います。失礼いたしました。
○千葉委員 このステントの使用、適用ですけれども、「切迫閉塞の治療にも」とございますね。つまり、まだ狭くなっていないけれども狭くなるのではないかという意味で、予防的な治療にもこの適用を行うという意味でしょうか。
○中村参考人 予防的な冠動脈形成術というのは、インディケーションがございませんので、そういうものは冠動脈と同様、全くございません。あくまでも有症候性の有意な狭窄に限るということです。
○千葉委員 切迫という判断は、どのようにして現場ではなされているのでしょうか。
○中村参考人 下肢の動脈狭窄症または閉塞症に対して、風船でまず治療しますけれども、血管が単に進展してきれいに広がるわけではなくて、血管に傷が付いて広がります。そのため傷の入り方によっては、かえって血流が悪化することがございます。そういう場合にはさらに下肢の血流悪化につながりますから、その場合に、ステントを入れて血流を再開通せざるを得ないということです。
○笠貫部会長 今のお話と関連しますけれども、施設基準は要らないですか。
○中村参考人 下肢の動脈の治療は全国で行われています。
○笠貫部会長 全国で行われるということと、血管外科医と血管インターベンションの専門医がいることで、緊急の手術になることはないのでしょうか。
○中村参考人 緊急の手術になることは、0%と言うことは不可能ですけれども、ペーパーで見ても緊急でバイパスに移行するというのは、ほとんど報告がございませんので、そういったリスクは皆無と考えてよろしいと思います。
○笠貫部会長 冠動脈ステントとは質的にも違うという先生のお考えで、よろしいでしょうか。
○中村参考人 そうですね。冠動脈の破裂で心タンポナーデを生じるなどのリスクがありますが、そういうリスクは全くございませんので、ちょっと状況が異なるかと思います。
○笠貫部会長 ほかに御意見はないでしょうか。本品は日米同時承認ということでの初めての品目だということと、大腿膝窩動脈領域では日本で初めてのものであるということで十分な検討をいただいたと思います。特にステント破断についてはリスク低減措置を予め打つことと、市販後調査研究という名前の付け方で企業がしていただけるならば、承認条件にも加えていただくことを検討していただけたらと思います。添付文書についてはいくつか御指摘のあったところを、御検討いただきたいと思います。よろしければ議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
医療機器「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」については、本部会として、審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要として、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということで、よろしいでしょうか。御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては、次回の薬事分科会において報告することにいたします。
それでは議題4に進みます。議題4、医療機器「Zilver Flex SFA用バスキュラーステント」の製造販売承認の可否等について審議を行いたいと思います。本議題の審議に当たりましては、参考人として引き続き中村先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。まず審議品目の概要につきまして、事務局の方から御説明をお願いいたします。
○事務局 資料4を御覧ください。1枚目は「Zilver Flex SFA用バスキュラーステント」の諮問書です。次に、審査報告書の2ページを御覧ください。一般的名称は「血管用ステント」、クラスIIIです。販売名は「Zilver Flex SFA用バスキュラーステント」、申請者は先ほどと同様Cook Japan株式会社です。具体的な品目の概要については、4ページの下の図で、パクリタキセルがコーティングされていないステントとデリバリーシステムからなるものです。3ページに戻りまして、使用目的は、4~7mmの対照血管径を有する膝上大腿膝窩動脈の症候性血管疾患に対して、以下のいずれかの状況化における治療に用いることを意図するものです。一つ目として、インターベンション治療の不成功に伴う急性又は切迫閉塞の治療。二つ目として、最大数の「Zilver PTX薬剤溶出型末梢血管用ステント」が留置された後、解離等が生じた場合、ということです。詳細については、機構から御説明いたします。
○機構 「Zilver Flex SFA用バスキュラーステント」の製造販売承認の可否等について、PMDAより御説明いたします。諮問書の次のページを御覧ください。本審査にあたりまして、3名の専門委員の方に御意見をいただきました。続いて、正誤表を御覧ください。配付させていただいています審査報告書に1か所誤記載がありまして、正誤表にて示させていただきました。お詫び申し上げます。
内容に入ります。審査報告書の4、5ページを御覧ください。先ほど説明がありましたとおり、前審議品目のZilver PTXと比べまして、薬の付いていないステントとデリバリーシステムになります。審査報告書5ページの表1を御覧ください。PTXとの違いは、薬が有る無しのほかに、本品では、サイズとして6Frのステントで140mm長まであるところが、もう一つの異なる点となります。
続きまして、外国における使用状況になります。審査報告書6ページの(2)「外国における使用状況」の項に示したとおり、2008年11月にCEマークを取得して以来、EU及び14の国及び地域で市販されていまして、□□本の販売実績がありますが、現状では米国では申請はされていません。
審査の中身について報告させていただきます。本品の非臨床試験成績に関しては、審査報告書の10~13ページの「性能に関する資料」で示した非臨床試験の試験資料等が提出されまして、特段、問題が認められていません。
続いて、本品の臨床試験成績について御説明させていただきます。審査報告書の14ページからになります。審査報告書の15ページの図3を御覧ください。先ほどのPTXの品目で御説明した試験と同一の試験で評価を行っていまして、大腿膝窩動脈の新規狭窄部病変又は再狭窄部病変を有する患者で、バルーン拡張術(PTA)が行われ、バルーンによる拡張不全やバルーン拡張時の血管内膜解離に伴う切迫閉塞などの早期PTA不成功が発生した患者に、本品又は先ほどの品目のPTXの7Frステントの製品が追加留置されました。
試験成績ですが、安全性については審査報告書の16ページ上段を御覧ください。安全性の主要評価項目として「1年間、臨床事象委員会が定めた主要有害事象が発生しない状態である割合」、以下「無事象生存率」と呼びますが、この無事象生存率が設定されまして、PTA治療成功群との比較が行われ、報告書の17ページの図4に示したとおり、本品群の無事象生存率は84.7%で、対照群であるPTA成功群は75.7%であり、本品群の優越性が示されました。また、1年フォローアップ時にいずれかの群で2%以上の発現率で認められた不具合・有害事象に関しては、審査報告書18ページ表3のとおりであり、本品群で特段高い事象は認められていません。さらに、本品のステントに関しては、ステント破断は認められていません。
続きまして、有効性の評価に移ります。審査報告書の16ページの中段を御覧ください。有効性の評価項目として「1年フォローアップ時の一次開存率」が設定されまして、文献による性能基準に基づき評価されました。試験結果に関しては、19ページの図5を御覧ください。1年の一次開存率のカプラン・マイヤー推定値は72.1%で、95%信頼区間の下限値が性能基準の51.3%を上回っていました。なお、本品は、PTA不成功例に対する手技成功率が98.2%で、留置30日後の一次開存率は100%でした。
以上の臨床試験成績を踏まえまして、本品の審査における主要な論点について御説明させていただきます。審査報告書31ページの「総合評価」を御覧ください。論点としては、先ほどと同様四つあります。一つ目は、本品の有用性について、本品は緊急処置として使用されることを予定していまして、PTA不成功例に対する手技成功率を含む周術期における臨床的有用性が示されていること、また長期埋植時においても安全性に問題が見られないことが本品の評価では重要であると考えています。試験の結果、本品は、PTA不成功例に対する手技成功率は98.2%、留置30日後の一次開存率及び無事象生存率はともに100%、1年間の一次開存率は72.1%という結果が出ています。また、1年の無事象生存率はPTA成功群との非劣性が示されていまして、有害事象に関してもPTA成功群と比較して特に高い発現率を示す事象は認められていません。したがいまして、本品のPTA不成功に伴う急性又は切迫閉塞の治療に用いるステントとしての臨床的有用性は、示されていると判断いたしました。また、本品とは薬剤の塗布だけが異なる先ほどの審議品目のPTXを、使用可能な最大本数留置した後に解離が生じた場合、本品を使用せざるを得ない状況が発生することから、当該の内容を適応に含めることは妥当と判断しています。
2番目の論点として、臨床試験で未使用であったサイズについての評価ですが、先ほどのPTXと同様で、5mm径、9mm径、10mm径のステントに関しては、審査の過程において申請内容から取り下げられました。また、100、120、140mm長のステントに関しては、動物試験で140mm長ステントを装填したデリバリーシステムの操作性・留置性能が評価されていること、国際共同治験において先ほどの品目のPTXで80~140mmの病変長を有する患者117例に対して、重複留置ではあるものの有効性及び安全性の評価が行われ、特段、問題が認められていないこと、さらに、ステントの重複留置より1本のステントで治療することで得られるメリットがあること等を踏まえて、承認は可能と判断しました。
3番目の論点ですが、本品の有するリスク及びリスク低減措置についてです。国際共同治験において、本品のステントの破断は認められていません。しかしながら、薬剤の有無だけが異なるPTX、先ほどの審議品目においては、日本人症例で36例のうち3例ステント破断が認められていることを踏まえて、PTXと同様に、添付文書においてステント破断に関する試験結果を情報提供をするとともに、本品の臨床使用に先立ち、トレーニングにおいても留置の際の注意点であったり、リスク回避の方法等を情報提供することが必要であると判断しました。また、先ほどと同様の、審議の中で踏まえた注意点についても、同様に対応を取っていこうと考えています。
最後に4番目の論点として、製造販売後調査の調査項目です。本品は、本邦で初めての大腿膝窩動脈領域に用いるステントであり、長期的な安全性が確立していないこと、国際共同治験における日本人の症例数は限られていること、本邦と海外では生活様式が異なるため、日本人でステント破断の発生リスクが高くなる可能性があることが否定できないことから、重点調査項目として、有効性の調査項目としては術後のTLR率、安全性の調査項目としてはステント血栓症、ステント破断を設定し、調査する必要があると判断しました。以上の審査を踏まえまして、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年と判断しています。なお、薬事分科会では報告を予定しています。PMDAからは、以上となります。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは参考人の中村先生から何かございませんか。
○中村参考人 特にございません。この前に審査していただきましたPTXと、薬剤が搭載されていないということだけで、ステントのプラットフォームとしては全く同一のものです。その有効性も通常のバルーン拡張術よりも勝る有効性が示されていることから、臨床的にはおそらく有効であることは間違いなかろうと考えています。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは、委員の方から御質問、御意見はございますか。
○荒井委員 御説明いただいた審査報告書の30ページの(9)「専門協議の結果を踏まえた対応」で、いみじくも「提出された臨床試験のデザイン及び評価項目は妥当とはいえないものの」という記載があります。要するに、バルーン拡張術が失敗した症例にはベアステント、すなわち薬剤溶出がないステントを入れた。そういう症例も十把一絡げに全部まとめて、結果が良かったからいいだろう、という試験デザインです。企業側からこういう形で申請された以上、審査する側もこれを受ける形で審査せざるを得なかったのは分かります。しかし、結論は、正しく「薬剤溶出ステントありき」というものです。これにどういう値段が付くか私は知りませんが、一般的には薬剤溶出ステントの方が高価ですから、まずはそちらの高い方のステントを使いなさい、うまくいかなかった時は、薬剤溶出でないステントを使ってもいいですよという話です。このような倫理展開が広い意味で日本の医療界あるいは患者に利益をもたらすものかについては、全く配慮がなされていないわけで、このことはかなり大きな問題だと思います。企業からこういった形で申請されたものに対し、その姿勢までを見据えて質問を投げかけることが、この部会、あるいはPMDAの仕事かについても、確かに難しいところはありますが、非常に問題を孕んだ審査の要望であることは事実です。今のご説明を伺っていると、それぞれの判断は妥当であり、結果として日本で今まで使えなかったデバイスが、世界に遅れたものの使えるようになるわけですから、そのこと自体が各国民に大きな恩恵をもたらすことは疑う余地がありません。しかし、結論は、日本では一も二も無く、「初回の治療には薬剤溶出ステントを入れましょう」と決めている訳であり、本当にそれでよろしいのでしょうか。私が不勉強なだけで、薬剤溶出を最初から使うというのが世界の常識なのかもしれませんので、この点についての専門の先生方の御意見をお聞かせいただければと思います。
○中村参考人 今、御指摘がありましたように、この臨床試験は極めてトリッキーなプロトコルで、通常の試験ですとヘッド・ツー・ヘッドの比較試験をしていきますが、そのアームに違うデバイスを二つ組み合わせている試験です。ある意味で、メーカーは非常に賢いプロトコルを作成したと思います。FDA等と協議して、これで承認試験としてFDAが許可したということですので、それなりの根拠がある臨床試験なのかなと思います。今、御指摘がありましたように、これが実臨床にどのように反映されるかは、なかなか予想が困難です。欧米では、この両方のステントが使える状況の中で、ほとんどベアメタルステントが使われています。それは、コストの問題が大きいと聞いています。コストベネフィットが見合うかどうか、欧米ではコストに見合わないという判断だろうと思いますが、日本において本当にコストに見合うかどうかはわかりません。どういう値段が付いてくるか私も全く分かりませんが、その値段をどのようにドクターが判断してどのように使うかということになろうかと思います。下肢の末梢閉塞性動脈硬化症の患者は、非常に御高齢の方が多いです。冠動脈の方が平均年齢60代後半だと思いますが、足の治療の方は70代後半です。その方に高額なこのようなステントを3本、4本と留置をするのが妥当かどうかも併せて、医師が考え直すべきことかなと思っています。すべての医師が薬剤溶出型ステントに全部なびいていくことは、おそらくなかろうという気はしています。ただ、出た瞬間はやはりパッと瞬間風速のように使ってみたいということはあろうかと思いますが、そのうちに使い分けが当然起きてくるかなと考えています。
○笠貫部会長 中村先生のお話ですと、本品では適応がずっと狭められているのですが、インターベンションの治療不成功例と、薬剤溶出型ステントの方が留置されて解離等が生じた場合の、セカンドチョイスになっているのですね。中村先生が言われたように、ドクターのチョイスよりも、適応のところでチョイスに決められてしまっているので、これが一つの大きな問題かなと思います。これについては、事務局の方から何かお答えいただけますか。大変難しい問題を御指摘いただいたと思います。
○機構 非常に難しい問題なのですが、まず今回の場合、ガイドライン等でも、もともとバルーンを拡張したときにどうしても解離が起こってしまうところで、そこを求めていると、そういう機器が必要だというところもありますので、そういう選択肢の一つとしてこのようなベアメタルステントを出す意義があると考えています。また、出した場合に、同時に薬剤が付いているものが出てしまっていて、それが何か限定されているところに関しては非常に遺憾なのですが、やはりまず臨床現場でそういう必要性もある。例えば、薬剤でアレルギーがある方もいらっしゃると思いますので、そういう方に対して選択肢として出すのは意義があるのかなと思っています。また、今、同時に他社もいろいろ開発していまして、近々ベアメタルのものも出てくることがかなり考えられますので、そういうところで対応していけたらと考えています。
○笠貫部会長 今のお話では、ベアメタルステントは別な会社で、使い分けをするという、トリッキーなお答えをいただきました。
○事務局 30ページの出だしを御覧いただきますと、「デザイン及び評価項目は妥当とはいえないものの」と書いてありますとおり、このベアメタルに関してはアメリカでは申請がされていません。ですので、臨床試験の第一義的な目的は、薬剤溶出性ステント、こちらの方の臨床評価を行うものです。そのような中で、日本にはベアメタルも薬剤溶出性のどちらもない状況の中で、アメリカはベアメタルはほかにたくさんありますので、Cook Japan社としてそこは出さないという御判断をなされたと思います。一方、日本の現状に立ち返ってみますと、そういったデータで薬剤溶出性ステントだけを申請していただいて、選択のチョイスが全くないという状況がいいのか、もしくはトリッキーなデザインではあるものの、ベアメタルについても一定の評価ができるような試験という形で見なして、日本でもベアメタルステントを、多少、効能・効果は絞られるとはいえ、早期に導入した方がいいのかを考えた場合に、それは後者であろうという形で、かなりPMDAでも科学的に説明を苦労して、ここまでたどり着いた経緯がありますので、ベアメタルの効能を最初から絞ろうという形でこれが出てきたのではなく、逆にベアメタルをどうにか日本にも同時に導入しようという形でここまで進めてきたことを御理解いただければと思います。
○笠貫部会長 そうしますと、基本的にはまだ大腿膝窩動脈へのステントがないということで、会社としては薬剤溶出型ステントをまず第一に、そして問題が生じた場合に、ベアメタルステントを使うことについて認めるというお話だったと思います。そういう意味だとすれば、これは日本人10例だけですよね。世界としても10例ということで、アンジオプラスティが不成功例に使ったことだけになっていますが、承認条件としては、二つは同じにした方がいいのではないかと思います。添付文書のあり方もそうですが、先ほどのステント破断については同等として考えるべきだろうと思うのですが、このことについては御意見はありますか。あるいは、事務局でその辺りも御検討いただけますか。
○機構 PMDAよりお答えさせていただきます。その点に関しては、こちらも結構考えたところもございます。今回、ベアメタルステント、Flexの方の問題点は、市販後に何を確認していこうかと。やはり薬剤が付いていませんので、遅発性ステント血栓症などの問題よりも、やはりここで注目すべきはステント破断なのだろうなと考えました。ステント破断を考えていく場合にどうなのかというところで、やはりPTXが一緒に出ていきまして、PTXで承認条件も付けて5年間、900例でしっかり見れるというところもあります。Flexではbail outで使われたときの有効性・安全性を確認していく必要もあるだろうと思います。それから、ステント破断についてもまずは3年間、製造販売後調査で見ていこうと考えています。PTXの状況などによっては、さらにステント破断の状況によっては、プラス2年、最長5年まで見ていくというような計画になっています。ということで、承認条件を付けるかどうかの観点よりも、製造販売後調査をきちんと見ていこうというところで、今回は付けずにこのような形になっているところです。
○笠貫部会長 物は同じで、症例数が50例しかなかったことで、しかも適応を絞ったからといって承認条件を変えることには、基本的にはならないのではないかと思います。もう一度御検討いただけたらと思いますので、よろしくお願いします。ほかにはありませんか。
○荒川委員 荒井委員の指摘はもっともだと思います。やはり、これが本当に薬剤が付いていることで有効性を示しているかは、このデザインではなかなか難しいと思います。あくまでPTA不成功群での薬剤の有効性は示されています。ところが、最初からランダム化しているところではなかなかそうはいっていないので、やはりこのデザインで、パクリタキセルが付いていることで、本当に有効だということを示したことにはなっていないと思います。
○千葉委員 先ほど、前の項目で伺ったとおり、急性切迫閉塞は、結果的には同じ適応ですね。ですから、この二つが別々にということが奇異な感じがいたします。
○笠貫部会長 そういう御検討をいただくことをお願いしまして、ほかに特段大きな意見はありませんか。なければ、議決に入ります。
医療機器「Zilver Flex SFA用バスキュラーステント」については、本部会として、承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間を3年間とし、また、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
それでは御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において御報告することにいたします。議題4が終了しましたので、参考人の中村先生におかれましては、御退室いただいても結構です。最後までもう少しお聞きいただいても結構ですので、よろしくお願いします。それでは、次に報告事項に進みます。議題5「医療機器の再審査結果について」事務局より説明をお願いします。
○事務局 報告事項、議題5「医療機器の再審査結果について」事務局より御報告いたします。予定時刻も過ぎていますので、簡単に御報告いたします。資料5-1、資料5-2になります。こちらの資料は、事前に委員にお送りさせていただいていますので、この場で一つ一つ詳細な説明は割愛させていただきますが、ここに出てくる2品目とも、有効性・安全性に特段問題はないという判断がされていまして、薬事法第14条第2項の各号のいずれにも該当しない、再審査の区分を効能・効果、用法・用量などの承認事項について、変更の必要がないカテゴリー1と、2品目とも判断をしています。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 ありがとうございました。本件について、委員の皆様から御意見、御質問はございますか。御意見がないようでしたら、本日予定された議題はすべて終了といたします。今日は、本邦で初めての大腿膝窩動脈領域のステント、さらに日米同時に承認された品目を日米同時に申請された品目について、議論をいただきました。大変大事なことが議論されたと思いますし、リスク低減化措置をどうするかということの御指摘をいただいたと思います。最後には、リスクベネフィットに加えて、コストベネフィットの問題も指摘されたことは、こういった問題も今後出てくる大事な問題だと感じました。これで今年最後の部会を終了とさせていただきます。事務局から何かありましたら、お願いします。
○医療機器審査管理室長 本日は誠にありがとうございました。次回の部会については、平成24年3月1日を予定しています。これでよろしければ、本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会させていただきます。ありがとうございました。
(了)
※備考
この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催され、個別案件以外は公開で開催された。
連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 高江(内線 2912)
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