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2012年1月11日 平成23年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成24年1月11日(水)18:00~20:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用第21会議室(厚生労働省17階)


○議題

一般用医薬品のリスク区分について

○議事

○事務局 平成23年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催いたします。本日の調査会は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでといたします。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力のほど、よろしくお願いいたします。傍聴者の方には、傍聴に際しての留意事項、例えば静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと、座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うことなどの厳守をお願いいたします。
 本日御出席の先生方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本調査会は本年度8回目となりますので、委員の先生方の御紹介は省略させていただきます。また、大野委員より、遅れていらっしゃるという御連絡をいただいておりますので、御報告させていただきます。
 続きまして、本日の議題でございます一般用医薬品のリスク区分について、御出席いただいている参考人の先生方を50音順で御紹介させていただきます。東邦大学医学部皮膚科第一講座教授の石河参考人です。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験センター毒性部室長の北嶋参考人でございます。日本医科大学泌尿器科教授の近藤参考人でございます。国立病院機構東京病院呼吸器内科外来診療部長の永井参考人でございます。慶應義塾大学薬学部教授の望月参考人でございます。なお、横浜市立大学大学院医学研究科生殖生育病態医学教授の平原参考人からは御欠席の御連絡をいただいてございますが、御意見をいただいておりますので、後ほど紹介させていただきます。
 これ以降は議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。松本先生、議事進行をよろしくお願いいたします。
○松本座長 事務局から、審議参加に関する遵守事項について御報告してください。
○事務局 まず、薬事分科会審議参加規定についてです。委員及び参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金等の受取状況を報告いたします。
 本日の議題は、議題1がトラネキサム酸配合剤に係るものですので、製造販売業者のダイト株式会社及びその競合2社、エスエス製薬株式会社、エーザイ株式会社の計3社。議題2がニコチン貼付剤に係るものですので、製造販売業者のグラクソスミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の3社。議題3がフラボキサートに係るものですので、製造販売業者の興和株式会社及びその競合3社の大鵬薬品株式会社、クラシエ製薬株式会社、株式会社ツムラの計4社。議題4がミコナゾール腟錠に係るものですので、製造販売業者の大正製薬株式会社及びその競合のロート製薬株式会社、小林製薬株式会社、田辺三菱株式会社の計4社。議題5がジクロルボス樹脂蒸散剤に係るものですので、製造販売業者のアース製薬株式会社、国際衛生株式会社、中山工業株式会社、日産化学工業株式会社、株式会社バイロンの5社から、過去3年度における給付金等の受取りについて申告いただきました。なお、競合品目、競合企業につきましては、事前に各委員に資料をお送りして、御確認をいただいております。各委員からの申し出状況から、今回の審議への不参加の委員はございませんでした。
 なお、五十嵐委員より、グラクソスミスクライン株式会社から50万円超500万円以下の受取りとの申告がございましたので、ニコチン貼付剤のリスク区分の議決には参加いただけないことになります。遠藤委員より、ダイト株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、大鵬薬品株式会社から50万円以下の受取りとの申告がございましたので、報告させていただきます。また、参考人につきまして、石河参考人より大正製薬株式会社から50万円以下の受取り、エーザイ株式会社、グラクソスミスクライン株式会社、田辺三菱製薬株式会社から50万円超500万円以下の受取りの申告、近藤参考人よりグラクソスミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受取り、大鵬薬品株式会社から50万円超500万円以下の受取りの申告、永井参考人より大正製薬株式会社から50万円以下の受取り、グラクソスミスクライン株式会社から50万円超500万円以下の受取りの申告、平原参考人よりグラクソスミスクライン株式会社から50万円以下の受取り、大鵬薬品株式会社から50万円超500万円以下の受取りの申告、望月参考人よりノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受取りとの申告がありましたので、報告いたします。以上です。
○松本座長 ただ今事務局から報告のありました、審議参加に関する遵守事項についてはよろしいでしょうか。特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて、了解いただいたものといたします。ありがとうございました。
 次に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。
○事務局 お手元の資料、1枚目の座席表につづいて議事次第、委員等名簿があり、その次の配付資料一覧に基づいて、資料を確認させていただきます。
 資料1「トラネキサム酸配合剤のリスク区分について」、資料2「ニコチン貼付剤のリスク区分について」、資料3「フラボキサート塩酸塩のリスク区分について」、資料4「ミコナゾール硝酸塩腟錠のリスク区分について」、資料5「ジクロルボス(DDVP)樹脂蒸散剤のリスク区分について」、参考資料1「一般用医薬品のリスク区分の変更手順について」、参考資料2「一般用医薬品のリスク区分」でございます。足りないもの、落丁等がございましたらお申し出ください。
○松本座長 よろしいでしょうか。よろしいようでしたら議事に移りたいと思います。まず、議題1「トラネキサム酸配合剤のリスク区分について」、議題2「ニコチン貼付剤のリスク区分について」、議題3「フラボキサートのリスク区分について」、議題4「ミコナゾール硝酸塩腟錠のリスク区分について」、議題5「ジクロルボス(DDVP)樹脂蒸散剤のリスク区分について」に関して、事務局から説明をしてください。
○事務局 議題の説明に入る前に、一般用医薬品のリスク区分の変更手順について、御説明させていただきます。参考資料1を御用意ください。この変更手順については、平成21年5月8日に行われた安全対策部会において御審議をいただき、御了承いただいたものです。リスク区分の変更については、3.に記載のありますとおり、医薬品安全対策部会において、スイッチOTC等の市販後調査の終了に伴うリスク区分の変更等の調査・審議を行いますが、その事前整理等を「安全対策調査会」で行うこととされています。
 その手順としましては、(1)安全対策調査会の調査・審議に当たり、必要に応じ、関係学会等の有識者等の出席を求め、意見を聴取し、事前整理を行い、その結果、リスク区分等の変更を行う必要があるとされた場合、厚生労働省は、変更案についてパブリックコメントを行う。(2)安全対策調査会における事前整理の結果、パブリックコメントの結果等について調査審議を行い、指定の変更の要否について答申を得ることとなっております。
 次に、参考資料2について御説明をさせていただきます。まず、一般用医薬品はリスクの程度に応じて、第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品に区分けがされております。第1類医薬品は、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害を生ずるおそれのある医薬品であって、その使用に関し、特に注意が必要なものとして、厚生労働大臣が指定するもの。新一般用医薬品として承認を受けてから、厚生労働省令で定める期間を経過していないものであり、一般用医薬品としての使用経験が少ないなど、安全性上特に注意を要する成分を含むものであり、販売は薬剤師により行われ、情報提供が義務となっております。
 続いて第2類医薬品です。第2類医薬品は、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害を生ずるおそれがある医薬品であって、厚生労働大臣が指定するものであり、稀に入院相当以上の健康被害が生じる可能性がある成分を含むもので、薬剤師、登録販売者により販売されます。情報提供については努力義務になっております。また、第2類医薬品のうち特別に注意を要するものとして、厚生労働大臣が指定するものに関しましては、指定第2類医薬品とされており、情報を提供するための設備から7m以内の範囲に陳列するなどの措置を取ることとされておりますが、販売は第2類医薬品と同様、薬剤師、登録販売者により行われ、情報提供についても努力義務となっております。
 第3類医薬品は、第1類医薬品、第2類医薬品に分類されないもので、日常生活に支障を来す程度ではないが、身体の変調・不調が起こるおそれがある成分を含むものであり、薬剤師、登録販売者により販売されます。また、第3類医薬品は通信販売も可能になっております。
 本日の議題であります、トラネキサム酸配合剤、ニコチン貼付剤、フラボキサート、ミコナゾール硝酸塩腟剤について、新一般用医薬品として承認を受けたもので、市販後の調査期間が終了しましたので、今回リスク区分の見直しを行うものです。また、ジクロルボス樹脂蒸散剤につきましては劇薬の殺虫剤として第1類医薬品に区分されていますが、今般、劇薬から除外する方向で進んでいることを踏まえ、リスク区分の検討を行うものでございます。続きまして、各資料につきまして御説明をさせていただきます。
 資料1を御覧ください。まず、トラネキサム酸配合剤についてです。本資料はトランシーノの製造販売後調査の報告書と添付文書を付けております。薬効群はその他の女性用薬、投与経路は内服で、トラネキサム酸、アスコルビン酸、L-システイン、パントテン酸カルシウム、塩酸ピリドキシンの配合剤です。本剤は、肝斑に限ったしみを新効能とする新一般用医薬品として4年間の再審査が終了したものです。現在のリスク区分は第1類医薬品ですが、製造販売後調査報告書が提出されましたので、その結果等を基に、トラネキサム酸配合剤のリスク区分の検討を行うものでございます。なお、トラネキサム酸配合剤に含まれるトラネキサム酸、アスコルビン酸、L-システイン、パントテン酸カルシウム、塩酸ピリドキシンは、第3類医薬品として区分されております。また、その主成分となるトラネキサム酸は風邪薬等にも含まれております。
 3ページを御覧ください。トラネキサム酸の製造販売後調査報告書です。調査期間は2007年の6月21日から2011年6月20日です。調査結果の概要に、特別調査と一般調査の概要の記載がございますのでご覧ください。特別調査は薬局等と契約し、モニター店舗でアンケート等の調査を特別に行ったものです。モニター店舗数は718施設、調査例数は3,186例であり、そのうち副作用報告があったものは76例、110件で、すべて非重篤でした。一般調査は、使用者または薬剤師からの自発報告でございます。こちらの調査では1,039例、1,639件の副作用が報告されており、重篤なものは、スティーブンス・ジョンソン症候群、肺塞栓症、気胸、これらが各1例で、計3例ございました。詳細につきましては、特別調査は5ページ以降、一般調査は25ページ以降に記載しておりますので、ご覧ください。
 続きまして、ニコチン貼付剤について説明いたします。資料2を御覧ください。本資料はシガノンCQ1、ニコチネルパッチ、ニコレットパッチなどの製造販売後調査報告書、添付文書、各製造販売後調査報告書の特別調査及び一般調査の結果からニコチン貼付剤使用中に喫煙した症例を抜粋したものを、参考として付けております。
 薬効群は禁煙補助剤で、ニコチンを有効成分とする貼付剤です。現在のリスク区分は第1類医薬品ですが、本製剤の製造販売後調査報告書が提出されましたので、その結果等に基づき、ニコチン貼付剤のリスク区分の検討を行うものでございます。なお、ニコチンのガム製剤につきましては指定第2類として流通しております。また、本貼付剤の用法・用量は、含量の異なる複数の製剤を順に使用して、8-10週間に用量の異なる投与量を低減していくこととなっております。
 3ページを御覧ください。こちらはシガノンCQ1等の製造販売後調査等報告書です。調査期間は平成20年4月16日から平成23年6月30日です。6ページに別紙(2)として調査結果の概要がありますので、御覧ください。特別調査の結果、モニター店舗から3,144例の調査票が回収され、副作用は676例、1,285件で重篤な副作用はございませんでした。一般調査で報告された副作用は831例、1,638件で重篤な副作用は、てんかん、ニコチン中毒が各1例の計2例がございました。てんかんの症例については37ページにございます。こちらは医師から、ニコチン貼付剤との関連はあり得ないとのコメントをいただいております。38ページはニコチンの中毒についてございます。こちらはニコチン貼付剤を使用中に喫煙し、ストーブの前で談話中にニコチン中毒を起こした可能性があるとされる症例です。また、89ページから、特別調査、一般調査の結果から、ニコチン貼付剤使用中に喫煙した症例を抜粋したものを参考資料として付けていますので、参考として御覧いただければと思います。
 続いて111ページを御覧ください。こちらはニコチネルパッチ等の製造販売後調査等報告書です。調査期間は平成20年4月16日から平成23年5月30日です。112ページに別紙(1)として、調査結果の概要がございますので、御覧ください。特別調査の結果、モニター施設は535施設、調査症例数は3,313例であり、そのうち副作用報告があったものは463例、662件でした。使用上の注意から予測される副作用、予測できない副作用ともに、重篤な副作用と判断されるものはございませんでした。113ページに一般調査の結果がございます。報告された副作用は1,421例の2,466件で、このうち使用上の注意から予測できる副作用は2,172件で、重篤と判断されたものは33例の57件でした。内容としましては、血圧上昇が5件、浮動性めまい及び動悸が4件、感覚鈍麻、狭心症、悪心及び嘔吐が各3件、接触性皮膚炎、色素沈着障害及び収縮期血圧上昇が2件です。使用上の注意から予測できない副作用については294件で、重篤と判断されたものは26例の18件でした。その内容としましては、うつ病及び自殺念慮が各3件、肺炎、薬物過敏症、抑うつ気分、恐怖、幻覚、抑うつ症状、意識消失、構語障害、霧視、心筋梗塞、低血圧、発声障害、吐血、歯周炎、皮膚潰瘍、自然流産、異常感、適用部位びらん、血圧低下、収縮期血圧低下、転倒及び帝王切開、これらが各1件でございました。また、191ページからは、特別調査、一般調査の結果から、ニコチン貼付剤使用中に喫煙した症例を抜粋したものを参考資料として付けていますので、参考として御覧いただければと思います。
 続いて199ページを御覧ください。こちらはニコレットパッチなどの製造販売後調査報告書です。調査期間は平成20年7月1日から平成23年6月30日です。201ページから別紙2として調査結果の概要がございます。まず特別調査の結果として、調査期間中に調査票を回収した症例で、安全性評価対象症例は5,372例であり、副作用は1,368例、2,309件が認められました。次に202ページですが、使用上の注意から予測できない副作用は155例、177件が認められ、重篤な副作用はございませんでした。206ページに一般調査の結果がございます。報告があった副作用は255例の399件でした。こちらも重篤と判断された副作用はございませんでした。231ページから、特別調査、一般調査の結果から、ニコチン貼付剤使用中に喫煙した症例を抜粋したものを参考資料として付けていますので、参考として御覧いただければと思います。
 次に、フラボキサートについて御説明いたします。資料3をご覧ください。本資料はレディーガードコーワの製造販売後調査報告書及び添付文書を付けております。薬効群はその他の泌尿生殖器官及び肛門用薬で、フラボキサートの内服薬です。現在のリスク区分は第1類医薬品ですが、本製剤の製造販売後調査報告書が提出されましたので、その結果等を基に、リスク区分の検討を行うものでございます。
 なお、女性の頻尿、残尿感の効能・効果を有する一般用医薬品で、製造販売後調査を終了したものは、フラボキサートが初めてでございます。また、フラボキサートの添付文書の【してはいけないこと】の項には、男性(男性は前立腺肥大症による症状の可能性があり、本剤を服用すると尿が出にくくなる恐れがある)という記載と、「脳脊髄疾患の診断を受けた人」「子宮癌又は直腸癌等の骨盤内手術を受けた人」「血尿、排尿痛、膀胱痛、尿失禁の症状のある人」「日中の頻尿がなく、就寝後のみ頻尿のある人」「発症が急性の人」は使用しないことと記載されております。
 3ページを御覧ください。レディーガードコーワなどの製造販売後調査報告書を付けております。調査期間は、平成20年1月25日から平成23年8月18日です。4ページに別紙(1)として、調査結果の概要がございます。まず特別調査の結果です。モニター店舗が1,458件で、3,333症例のアンケートが回収されました。副作用は7例12件で、重篤と判断されたものはございませんでした。次に一般調査で報告された副作用が、133例186件です。こちらで重篤と判断されたものは1例1件で、内容としてはアナフィラキシーショックでした。
 次に、ミコナゾール硝酸塩腟錠の御説明をいたします。資料4をご覧ください。本資料は、メディトリートなどの製造販売後調査報告書と添付文書を付けております。薬効群はその他の女性用薬で、投与経路は腟錠、成分名はミコナゾールです。現在のリスク区分は第1類医薬品ですが、製造販売後調査が終了し、報告書が提出されましたので、その結果等を基に本成分のリスク区分の検討を行うものでございます。
 なお、参考として、腟カンジダの効能・効果を有する外用剤で、イソコナゾールの腟錠は第1類医薬品と区分されました。ミコナゾール腟錠の添付文書の【してはいけないこと】の項には、「以前に医師から、腟カンジダの診断・治療を受けたことがない人、腟カンジダの再発を繰り返している人、腟カンジダの再発かどうかわからない人」という記載がございます。
 3ページを御覧ください。メディトリートなどの製造販売後調査報告書を付けています。調査期間は平成20年7月7日から平成23年8月31日です。4ページの別紙(1)に調査結果の概要がありますので、御覧ください。特別調査の結果としまして、使用アンケート調査では2,794例中、副作用が6例8件でした。はがきアンケートによる副作用調査では、320例中、副作用は9例12件でした。いずれも重篤と判断されたものはございませんでした。一般用医薬品については、8例12件の副作用が報告されています。これらについては、すべて非重篤と判断されております。
 なお、本日御欠席の平原参考人より御意見をいただいておりますので、紹介させていただきます。「ミコナゾール硝酸塩腟錠につきまして、腟カンジダ症の再発を繰り返している人などに対して使用してはいけないなど、対面により受診を勧奨する患者を判断する必要がある医薬品であり、引き続き第1類医薬品とすることが妥当と考えます。」といった御意見をいただいております。
○事務局 続きまして、ジクロルボス(DDVP)樹脂蒸散剤のリスク区分について御説明申し上げます。資料5を御覧ください。少し繰り返しになりますが、ごく簡単に概略を御説明させていただきます。ジクロルボス樹脂蒸散剤の劇薬指定の見直しが指定から除外する方向で進んでおりますので、ここで劇薬か否かという視点とは別に、販売時の情報提供のあり方の視点からリスク区分をどのように考えるべきかを御審議いただきたいと考えております。
 まず、資料5の1.「現行のリスク区分」になりますが、2ページの別紙1を御覧ください。こちらは第1類医薬品及び第2類医薬品として示した告示の抜粋です。上段の「第一類医薬品」の下線部のハのところと、下段の「第二類医薬品」の下線部のイのところにありますように、専ら、ねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除のために使用することが目的とされる医薬品のうち、人の身体に直接使用されることのないものについては、毒薬または劇薬の場合には上段の第1類に、そうでないものについては下段の第2類の方に分類されてございます。
 続きまして3ページの別紙2を御覧いただければと思います。こちらはジメチルジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)とありますが、これがジクロルボスと呼ばれているものです。この化合物及びそれらの製剤で、ここの(1)(2)に掲げられているものを除いて、今劇薬と指定されているものでございます。
 1ページに戻っていただきますが、以上、御説明いたしましたようなことから、1.「現行のリスク区分」では、2番目の○に書かれていますように、一般用医薬品として製造販売されているジクロルボス含有製剤のうち、プラスチック板に吸着させた蒸散剤というのは、1プレート中にジクロルボス21.39mg以下を含有するということで、劇薬相当ということになっており、また、リスク区分的には第1類医薬品ということになってございます。
 次に2.「劇薬の範囲の見直しについて」です。こちらは4ページの別紙3を御覧ください。上から2番目の2.「劇薬への該当性について」の2段落目にありますように、製剤としての急性毒性試験で、経皮投与でのLD50の値が、ラットで6200mg/kg以上、経口投与でLD50がラットで25127mg/kg以上ということでして、いわゆる経口投与でのLD50の値が劇薬の指定基準の300mg/kgと比べると、すごく大きいということになっておりますので、当該製剤について劇薬の指定から除外することが適当とされているところです。  なお、数字について補足の説明をさせていただきます。こちらの製剤が、製剤そのままの形状ではラットに投与できないということがございまして、実際の動物への投与試験は、凍結粉砕品を投与して試験を行っております。製剤からの薬剤の溶出率は0.7%なのですが、凍結粉砕品からの薬剤の溶出率が53.3%と大幅に高くなることから、溶出率で補正した形で、この数字になっているということです。それですので、実際に投与した凍結粉砕品の投与量については、この25127という数字よりは小さな数字となっております。
 1ページにお戻りください。3.「劇薬の範囲の見直しに伴うリスク区分の見直しについて」です。6ページの別紙4を御覧ください。ここにありますように、ジクロルボス樹脂蒸散剤については平成16年に、ジクロルボス殺虫剤安全性検討会での評価を踏まえ、2.「ジクロルボス殺虫剤安全性検討会の検討結果」の丸2にありますように、ラットの90日間の反復吸入毒性試験における無毒性量、資料には数値はありませんが、2.09mg/m3と、丸3のテストチャンバーでのデータで、吊り下げタイプの室内の濃度のデータが、最高で150μg/m3というのがありますが、こういった二つのデータの比較などから、丸4の下線部に記載されていますように、高い室内の温度で毎日24時間曝露した場合には安全域を上回るおそれがあると考えられ、念のため、本剤の使用場所を人が長期間留まらない場所に限定するとしております。なお、丸5に、殺虫機使用タイプについて書かれておりますが、こちらは使用後に十分な換気を行うこととなっており、安全性上の問題はないが、使用上の注意をより徹底させるということです。
 7ページの3.「今後の安全対策について」の丸2を御覧ください。適正使用に関する情報提供ということで、薬剤師等の専門家が販売の際に、購入者に適正使用情報を十分に説明できるようにという趣旨で、1)関係企業に消費者向け説明文書の作成と薬局・販売業者等への配布を行うよう指示、2)日本薬剤師会等の関係団体に対して、薬剤師等が本剤の適正使用情報の提供を行うよう協力を依頼となっております。なお、実際に発出されました通知につきましては、8ページ目以降に別紙5としてお示ししております。こちらの説明等は割愛させていただきますが、御参考にしていただければと思います。
 説明は以上になりますが、このジクロルボス製剤のリスク区分について、今般劇薬についての見直しがされているわけですが、リスク区分についてどのように考えるべきか、御審議をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。
○松本座長 それでは、皆様から御意見をいただきます。たくさんありますので、1題ずつ、そのリスク区分について検討をお願いいたします。まず、トラネキサム酸配合剤のリスク区分について、これは御専門の石河先生からコメントをいただけますか。
○石河参考人 トランシーノというお薬で、トラネキサム酸とビタミンCをメインとした配合剤です。これは、我々も普段から比較的よく使う肝斑の治療薬で、安全性は極めて高いとは考えられますが、論点がいくつかあります。
 一つは、有害事象としてスティーブンス・ジョンソン症候群が1例報告されております。これは、かなり重症の薬疹の一型です。これが、トラネキサム酸の処方薬の添付文書を見ますと、スティーブンス・ジョンソン症候群の記載はなかったのです。トラネキサム酸が本当にそうなのかということで調べてもらったのですが、実際にPMDAの方には15件ほどスティーブンス・ジョンソン症候群、もしくはTEN、類縁疾患の報告が上がっていますので、やはり起こりうる副作用ではあると考えられます。
 症例表を見ますと、因果関係は不明であってということがよく記載されていて、SLEなどの免疫異常状態にあることから、因果関係はないのではないかという考察がされているのですけれども、その考察もちょっと疑問な点があります。SLEがあるから薬疹が出やすいということは、我々は一切考えておりませんので、これは否定できない因果関係があるのではないかと思われます。
 2点目の論点は、長期投与の可能性があります。トラネキサム酸は風邪薬にも入っている成分で、成分自体は第3類と伺いました。このトランシーノの場合は、少なくとも1カ月もしくは2カ月、我々の場合は3カ月ぐらい通常は継続して内服させるものなので、長期投与にしたときに塞栓症のリスクが、抗プラスミン作用がありますので、どの程度あるのかというのは未だよく分かっていないところではないかと思います。
 3点目の論点は、トランサミンの添付文書を見ますと、併用禁忌薬が書いてあります。トロンビンという特殊な薬ではあるのですけれども、併用禁忌があるということは、このトランシーノを第3類にしてしまってもいいとはちょっと考えにくいと思います。私としては第2類か第1類のどちらかに止めおくべきと考えますが、その第1類と第2類のさじ加減がよく分からないので、その辺りは委員の先生方に御検討いただければと思います。
○松本座長 先生の御意見では、リスク分類としては第1類医薬品か第2類医薬品ということですね。
○石河参考人 はい。
○松本座長 望月先生、このことに関してコメントをいただけますか。
○望月参考人 私も、今御指摘のあった点で、特に塞栓症を起こしやすくなるリスクが長期に使われるということで、高くなる可能性があるという点は、医師が処方される場合と違って、一般用医薬品の場合は御本人が自宅に購入した後、管理をされることを考えると、ちょっと心配なところではあると思います。成分としては第3類なのかもしれないのですが、トランシーノという特殊な使い方をする製品に関しては、もう少し高いリスク分類であるべきであるだろうと考えます。
○松本座長 分類として具体的に言うと、大体どの辺が妥当と考えられますか。
○望月参考人 そうですね、難しいのですけれども。
○松本座長 少なくとも第3類ではいけないということですね。
○望月参考人 第3類ではないです。長期に使われている間の注意喚起がどう徹底できるかということを考えると、少なくとも使い方に関してどこかで専門家が介入できる形をとっていただいた方がいいのかと。単純な第2類にしてしまうと、専門家がかかわらない可能性が大きくなるので、指定第2類ではどうかという感じはいたします。
○松本座長 石河先生、スティーブンス・ジョンソン症候群とか塞栓症を重大な副作用として、どれぐらい因果関係があるかということによって第1類にするか、第2類にするかある程度分かれていくのではないかと思うのです。現在の段階では、症例数がかなり少ないみたいなので、重大な副作用の報告件数から考えると、第1類にしなければいけないということに関してはいかがでしょうか。確かに、この薬は抗プラスミン作用と止血作用もあるわけなのですが、比較的副作用は少ないということにはなっています。その点を勘案するといかがでしょうか。
○石河参考人 スティーブンス・ジョンソン症候群というのは、大抵いろいろな薬で起こることが多くて、抗生剤や消炎鎮痛剤と比べると極めて少ない症例数であることは間違いないと思います。
○松本座長 絶対に第1類にしなければいけないというほどの頻度ではない。これは、スティーブンス・ジョンソン症候群だけに限って言った場合ですけれども。
○石河参考人 トラネキサム酸自体が第3類に指定されているところもありますので、重篤な副作用の件数からいうと第1類である必要は必須ではないと思います。長期投与しようが短期であろうが、起こるときには起こりますし、起こらないときには起こらないですので。問題は、長期投与の可能性をどこまで勘案するかというところだと思います。
○松本座長 効果としては、肝斑にはかなり有効なのですか。
○石河参考人 診断が肝斑で正しければ効果的です。
○松本座長 ただ、診断は簡単なのですか。
○石河参考人 診断は結構難しくて、皮膚科専門医でも、ある程度美容に精通していないと、肝斑と普通の真皮メラノサイトーシスとかとの区別が非常に難しい場合があります。
○松本座長 その辺が一つの問題点ではありますね。
○石河参考人 はい。患者さんにしてみれば、いまひとつ効かないからずっと飲み続けてしまう可能性がある薬だろうとは思います。
○松本座長 一応これは期間的には3カ月ぐらいのというような使用上の制限はあるのですか。
○事務局 2カ月以上は使用しないと。
○松本座長 2カ月以上は使用しないという制限は入っていますので、一般用医薬品としてはそれでよろしいわけですかね。あとは望月先生が言うように指定第2類でいいとは思うのですが、指定第2類にするか第2類にするかということなのです。この配合成分が全部第3類で、通常ならば第3類にいくような医薬品ではないかと思うのです。これを指定にしなければいけない理由としてはどういうことでしょうか。
○望月参考人 いま先生がおっしゃられた、136ページにトランシーノの添付文書があるのですが、使用上の注意のいちばん最後に中項目として「その他の注意」というのがあり、そこに「2カ月を超えて続けて服用しない」云々のことが書いてあります。その後に、「服用中止後に再発した場合は、また服用を始めてもよいですが、再開までに最低2カ月はあけて下さい」というこの注意と、先ほどの本当に肝斑かどうかも含めての判断のところは、できれば専門家にかかわっていただけると、私個人的にはいいかと思います。
 もし指定第2類ではなくて第2類になるようでしたら、この注意喚起をかなり徹底できるように、例えば138ページの「しみを効果的に改善するために」というところに今度は、「お薬の効果がわかるようになるまで、少なくとも1カ月間は服用しましょう」しか書いてないです。そうすると、患者さんたちに先ほどの「その他の注意」のところが、情報に紛れて目立たないと、これは長く使えば使うほどいいのだというようなイメージを持たせる可能性があるので、長期的に使っていくときの注意喚起を、もう少しきちんと伝わるような形にしないと、専門家が関与しないで、もし第2類で販売されるときには注意が必要なところかと思います。
○松本座長 そのお話からいくと、注意喚起を十分にすることによって第2類でもいいわけですか。指定第2類にしなければいけない理由はありますか。陳列する近さの問題なのですが。
○望月参考人 先ほど、肺塞栓が3,000例の中の1例ですけれども起こっていて、もうちょっと詳細が見られるのかと思っていたのですが、ほとんど何も書かれていないので、因果関係がどうなのか、バックグラウンドがどういう患者さんかも、いまいちはっきりよく分からなかったのです。そういうのが出ている事実を考えると、少し心配しておいた方が、医師が処方せんを書かれて、定期的に診察をされることが確保できない場であるというところがちょっとだけ気になります。
○松本座長 確かに先ほど石河先生がおっしゃいましたように、第2類以上、第1類でも、とおっしゃった気持はよく分かります。配合剤そのもの、配合成分が第3類というのが一つのあれで、あまりにもギャップが大きいので、その真ん中を取るのは難しいところがあることはあります。この点に関して、ほかの先生方から御意見はありませんでしょうか。どのようなリスク区分が妥当であるかということに関して御意見をいただければと思います。
○事務局 事務局から1点、今の肺塞栓の症例ですけれども、133ページに別紙(7)ということで報告書に書かれています。肺塞栓の症例については、論文で発表されたものを情報収集されたもので、子宮筋腫・卵巣新生物を合併する患者で、1週間このトランシーノを服用しましたけれども、その後中止しております。その約21カ月後に肺塞栓の診断がなされたということなので、あまり薬剤との関連性は強くないのではないかと思いますが、そういう症例だということです。
○松本座長 副作用報告から見ると、スティーブンス・ジョンソン症候群も肺塞栓も関連の可能性は低いと思うのです。肺塞栓に関しては、薬剤の作用機序からは絶対に考えられないことはないということから、望月先生がおっしゃっているのだろうと思うのです。これは全体的にいって、もともとの成分が第3類であることから考えますと、第2類にするか指定第2類にするかということになろうかと思うのですが、この辺について御意見はありませんか。
○事務局 以前、生薬とか漢方のリスク区分の際にも、指定第2類の考え方をどうするかという話があったかと思います。これは化学合成品を改めて全体の見直しをするときに、また再整理させていただきたいと思いますが、一応現行の指定第2類のところに並んでいる成分については、例えば妊婦さんへの禁忌、小児への禁忌、何か依存性がある薬物の可能性のあるものなど、ある一定の集団についての注意喚起が必要なものについて分類されているというようなことかと思います。そういう意味では今回のものについては、それに該当するかどうかという点では若干疑問のあるところと思います。
○松本座長 第2類ということでパブリックコメントを求めて、その結果によってまた検討するということでもよろしいのではないかと思うのですが、この点についてはまた後で確認を取らせていただきますけれどもよろしいですか。
 それでは次のニコチン貼付剤のリスク区分について御意見を伺いたいと思いますが、永井先生からコメントをいたただけますか。
○永井参考人 東京病院の永井です。このニコチン貼付剤は、ほかの薬剤は一般的にある疾患を治すために投与するものですけれども、これはまさに毒物といってもいいニコチンを身体に入れるということですので、やはり注意が必要な薬剤だと思っております。したがってこれが入りすぎると、まさにニコチン中毒になります。先ほど御紹介がありましたけれども、これを貼付したままタバコを吸ってニコチン中毒様の症状があったという症例もありました。全体に副作用の発現頻度が20%ぐらいあって非常に高いです。本日ほかの薬剤を3剤拝見いたしましたけれども、副作用としては2.8%から0.12%のレベルの話なのですが、ニコチン貼付剤は3社から出ておりますが、20%、10%、25%と、どの薬剤も非常に高い率で副作用を引き起こしております。
 どういう形で副作用が起こっているかというのは、ジョンソン・エンド・ジョンソンさんのニコレットのところで非常に詳しく解析してくださっています。204ページに表があります。その表のいちばん上に「添付文書の理解度」というのがあり、「わかりにくい点・わからない点があった」という人たちの方が、副作用の発現率が37.4%と有意に高いのです。その下の「ご使用の手引きの理解度」のところを見ても、「わかりにくい点・わからない点があった」という人たちが41.28%ということです。これは御自分で買われて、御自分で読んで判断するのは非常に難しい状況だと思います。しかも、そのすぐ下に「使用期間」ということで、ニコレットに関しては10週間が一応基本なのですけれども、10週超も貼っている方もいます。その方たちは32.8%の副作用が出ているということで、漫然と使ってしまう人たちもいるだろうということがリスクとして考えられます。
 漏れ聞くところによれば、これは禁煙の場所に行くときに使う、ニコチン補充剤として使う。これは大きい声では言えませんけれども、漏れ聞くところではそういう話も出てきています。逆に、これがやめられなくなってしまって、中毒様になって、ずうっと貼り続けるというような話も、数がいくらかと言われてしまうと非常に困るのですが聞こえてきています。したがって、これは毒物であって、中毒を起こしやすいものをどのように使うかという判断は、一般の方が自由に買い求めてできる状況ではないのかという気が一つあります。
 しかも、この3社の薬剤がすべて規格が違うのです。シガノンは2種類あり、ニコチンの量が78mgと36mgとあります。ニコチネルパッチも2種類で35mgと17.5mg。ニコレットパッチは3種類あり、24.9mgと16.6mgと8.3mgと、各社、剤形の中身からみんな違うのです。そのように剤形が違うところで、一般の方が混乱されないかということが一つ心配です。シガノンを買ったのだけれども、次にニコレットを買ってしまったりということが起こらないとも限らないという、その点からもリスクがあります。
 実は禁煙というのは、ニコチン中毒さえ抑えれば治まるものではなくて、薬物依存と、もう一つ心理的依存という部分がありますので、この心理的依存をなんとかしてあげないと、ただこれを貼っただけではなかなかうまくいかないのです。そこに介入が入った方が、禁煙がうまく進むというデータも出ておりますので、誰かがその介入して禁煙を進める作業が必要になると思うのです。
 以上の点から考えますと、やはり薬剤師の先生方が積極的にかかわってあげないとリスクはあるし、禁煙の実が上がらないだろうと思っております。薬剤師の先生の説明義務は外せないなと個人的には思っております。以上です。
○松本座長 第1類のままでいった方が安全であろうということですね。確かにしてはいけないこととか、副作用の報告もそれなりにありますので、その方が安全かとは思うのですが、望月先生から何かコメントをいただけますか。
○望月参考人 私もほぼ同意見です。ただ1点事務局に教えていただきたいのは、今、3製品あるうちの、ニコチネルパッチがほかの製品に比べると、重篤と判断した副作用が多いように思えたのです。調査対象の選び方とか、抽出の仕方はどのようにしたのかにもよるのかもしれないのですが、何か考えられる理由を事務局でお持ちでしたら教えていただけますか。
○事務局 二つ目のニコチネルパッチは重篤と評価している症例の数も多いのですが、中を見るとそれほど重篤でもなさそうなものも入っているのかなという気もいたします。この重篤な判断のところはもう一度確認させていただければと思います。
○松本座長 その点は後で検討していただけますか。
○望月参考人 いずれにしても、分類に関しては永井参考人と同じ意見です。
○松本座長 第1類のままがよろしいということですね。ほかの委員の先生方から何か御意見はございませんか。
 よろしいようでしたら、次にフラボキサートのリスク区分について御意見を伺います。御専門の近藤先生からコメントをいただけますか。
○近藤参考人 本剤フラボキサートに関しては、我々一般臨床でもブラダロンという形で投与させていただいている薬です。この薬は抗コリン剤に属するのですが、我々実臨床においても副作用は非常に少ないお薬です。副作用の報告も3,333例のうち7例ですから0.21%と非常に少ない症例でのことです。特に強いて挙げますと、14ページの眼に関する症状であったり、眼圧が上がってしまったりというのが16ページにありますが、そのような眼に関する症状が目につきます。あとは18ページにあるアナフィラキシーショックがいちばん重篤な副作用で挙がっております。
 アナフィラキシーショックとフラボキサートは関連性があるかどうかということに関してなのですが、我々の感覚からするとあまりないのですけれども、薬ですのでアナフィラキシーショックというのもありうるといえばありうると判断せざるを得ないのではないかと思います。ただ、特にこの薬は女性の頻尿・残尿感に関しての、いわゆる1症状に関しての投与という形になってしまいますので、後ろにどういう疾患が隠れているのかは全く分からないわけです。それに関しては男性であるとか、神経疾患があるとか、あとは子宮がんであるとか、いわゆる膀胱・直腸障害をおこす疾患が隠れている可能性のある疾患や、あとは感染性の疾患であるとかは、一応添付文書中では【してはいけないこと】という形で注意喚起を促しているわけです。そうはいっても先に示したとおり安全性は非常に高い薬ではあると思います。本薬剤を漫然と飲んで、もとの隠れた疾患がどんどん悪くなっていくことを避けるためには、第1類を下げるのは全く問題ないと思いますが、一つ落とす程度にして、注意を促せる環境をひとつ作っておいた方がよいのではないかと考えております。
○松本座長 具体的には第2類か指定第2類程度にしておいた方がよいだろうということですね。これは、合併症のない女性が使う分にはかなり安全性は高いですね。
○近藤参考人 はい、安全性は高いと思います。
○松本座長 ただ、男性と妊婦さんは一応制限がかかっているみたいですね。
○近藤参考人 はい。過活動膀胱に対しては抗コリン剤が適用になっています。男性の場合は、前立腺肥大症によっての症状がこの過活動膀胱と全く同じことが多いので、そういう方にこの薬を投与すると、前立腺肥大の閉塞症状がより悪くなることによって、例えば残尿量が上がってしまいます。残尿が上がることによって、腎臓に対して水腎症などの影響が出てくることがあるので、男性に対しては投与注意という形になっていると思います。
○松本座長 特に、前立腺肥大がある人に危険性があるということですね。
○近藤参考人 はい、そういうことになると思います。
○松本座長 望月先生はいかがですか。
○望月参考人 分類に関しては、第1類である必要はないのかと思います。あとは男性のところについてどう考えるかだと思うのです。いちばん最初のトランシーノのときの、従来からの指定第2類と第2類の分類の括りの定義の中から考えると、この男性というのはそれとは違う定義づけになるのかと思うのです。
○事務局 ある一定の患者群というか、一定の集団に対して禁忌ということであれば、妊婦も禁忌になっているということで、指定第2類というのはありうるかと思います。
○望月参考人 妊婦の方は関係します。指定第2類でいいと思います。
○松本座長 妊婦さんも一応禁忌になっているので、確かに近藤先生がおっしゃるように、少し色を付けて指定第2類ぐらいの程度がいいのではないかということかと思います。ほかの委員の先生方から御意見はございますか。
 ないようでしたら、次にミコナゾール硝酸塩膣錠のリスク区分について御意見を伺いたいのですが、本日は御専門の平原先生は御欠席です。先ほど事務局から読み上げましたように、膣カンジタ症の再発を繰り返している人等に対しては使用してはいけないなど、対面により受診を勧奨する患者を判断する必要がある医薬品であり、引き続き第1類医薬品とすることが妥当と考えます、という御意見をいただいております。確かにこの前のイソコナゾールと比較的似た状態にあります。イソコナゾールが第1類のままでしたので、そのような案にするのが妥当ではないかと思いますが、望月先生はいかがですか。
○望月参考人 それで結構だと思います。私は第1類で結構です。
○松本座長 続いてジクロルボス樹脂蒸散剤のリスク区分について御意見を伺いたいと思いますが、北嶋先生からコメントをいただけますか。
○北嶋参考人 国立衛研の北嶋です。ジクロルボスについては、先ほど事務局からかなり詳しく説明していただきましたので、繰り返しはなるべく避けたいと思います。一つは劇薬という分類。原体は劇物なのですが、製剤は劇薬という分類だったのが、別の審査会において、劇薬の見直しがなされています。劇薬の指定は解除されたわけでしょうか。
○事務局 まだ、手続はこれからです。
○北嶋参考人 手続中であるということです。先ほど事務局からも説明がありましたが、資料5の6ページを見ていただきますと、劇薬、毒薬というのは、主に単回投与による急性毒性による分類なのですが、この観点とは別に、本剤の場合、殺虫剤ですので、虫が発生する時期に、一定期間使用するということで、急性ではなく、ある程度の日数、つまり長期的な影響を加味するということに留意する必要がございます。
 他方、曝露評価の実験報告がありまして、曝露量を実際に測定してみますとその量が、ある程度の反復吸入投与による動物実験、具体的には90日間の反復吸入毒性実験から得られた無毒性量を超えているというものでした。この報告を受けまして、資料中に記載がありますように、平成16年の通知において、「念のため、本剤の使用場所を人が長期間留まらない場所に限定する」と記載されております。つまり、劇薬指定とは別の次元で、ある程度長期的な影響という観点から、こういう通知が出ています。
 具体的には添付文書で、どのような説明文章になっているかと申しますと、8ページと9ページ、の「改訂後の承認内容」のところに「使用場所」、具体的には「以下の場所のうち、人が長時間留まらない区域:店舗、ホテル、旅館、工場、倉庫」等々、いわゆる我々が通常居るような部屋では使うことができないという説明書きとなっております。ジクロルボスというのは有機リン系の殺虫剤で、コリンエステラーゼ阻害剤なのですが、本剤はこれがプラスチック板に吸着されている蒸散剤です。この説明文を見ていただければ容易に想像がつくと思うのですが、私の意見としては、それを手に取って吊り下げた場合に、それが居室で使用できるかどうかということを、一般に売られている物を手に取って認識できるかというと、甚だ疑わしいのではないか。そうすると、区分としては第1類あるいは指定第2類が妥当ではないか。
○松本座長 劇薬指定は外れても、安全性の面からいけば第1類のままでということですか。
○北嶋参考人 はい、私はそのように考えます。
○松本座長 望月先生はいかがですか。
○望月参考人 御専門の先生が第1類とおっしゃってくださっていますので、そういうことで。
○松本座長 全体を通じて、委員の先生方の御意見はありませんか。
○北嶋参考人 二つあります。一つは今申し上げましたジクロルボスについては、劇薬の指定が解除される方向でおそらく動くと思います。そうすると、添付文書なり説明文の方はこのままでよろしいと思うのですけれども、実際の製品の方が第三者の手に渡ったときに、ある程度表示の方で劇薬ではなくなりますので、何かそういう説明書きなりマークなりをされるものなのでしょうか。
 もう一点は別のカテゴリーで恐縮なのですが、いちばん最初のトラネキサム酸配合剤のトランシーノの件です。これは全く別の視点で、薬理学的に申しますと、ほかの喉の痛みを抑えるような形でトラネキサム酸製剤が存在しているわけですが、それとのバランスを考えるといかがなのでしょうか。例えば適用外使用みたいな形でほかのトラネキサム酸製剤のような使われ方をする可能性を考えなくていいのかということなのです。
○松本座長 トラネキサム酸の方ですが、具体的にはどういうものにということですか。
○北嶋参考人 専門の望月先生なり、専門の先生の方がいいのかもしれないのですが、私が認識しているのは、喉の腫れとか痛みを抑える喉の薬にトラネキサム酸が使用されております。
○松本座長 トランシーノをそういうものに使うことがありうるかということですね。
○北嶋参考人 薬理学的に言うと可能なのです。
○松本座長 効果がありうるので。それはどうですかね。逆に、トランシーノを喉の痛みとか、場合によっては止血作用。
○事務局 風邪薬などには、そういう意味でトラネキサム酸が配合されて、それは配合剤としてあります。このトランシーノも風邪のときに使うかという御質問でしょうか。
○松本座長 トランシーノを買って、喉が痛いのに使うことはあり得ないかということなのです。逆は考えなかったのですけれども。
○事務局 一般の方はたぶんあまりないと思うのです。そこまで薬理作用を考えて、肝斑の効能のあるものをわざわざ買って、風邪のときに喉のためにのむということはあまり考えられないかと思います。トラネキサム酸が入った、いわゆる風邪薬がたくさんありますので、それを使うでしょう。もちろん理論的に全くないということは言えないかもしれませんけれども、あまり現実的にはないのではないかと思うのですが、遠藤先生どうでしょうか。
○遠藤委員 OTCとして肝斑の薬として売っているわけですから、一般の人がそれをわざわざ喉の痛みのときに使うことは考えられなくて、もし使うとしたらたぶん医師とか薬剤師など、そういうことを知っている人がたまたまこれを持っていて、とりあえず使うこともあるかもしれませんが、ほとんどそういうことは考えられないと思います。
○松本座長 使っても短期的なので、効果もある程度はありうるわけです。
○遠藤委員 そこまであまり心配しなくてもいいのではないかと思います。
○松本座長 望月先生、その辺はいかがですか。
○望月参考人 私は逆を考えてしまいました。風邪薬等の中にトラネキサム酸が入っていて、トランシーノの箱の、135ページなのですが「肝斑にトラネキサム酸配合」と、トランシーノという文言の下に入っていて、その「トラネキサム酸」という言葉がとても強調されていて、でも確か風邪薬でも「トラネキサム酸配合」という風邪薬があったり、歯磨きにも「トラネキサム酸配合」というものがあったり、いろいろあります。
 そのイメージで、トラネキサム酸配合の風邪薬を、ひょっとしてそういう使い方をしないこともないかなというのが、先ほどこれを見ていてちょっと感じてはいました。逆の方向性かもしれないのですが、いずれにしても、いろいろな薬理作用を持っている成分なので、誤解も一般の方には生じやすい部分はあるかと思いました。
○松本座長 一応そういう意味からいっても、これは医療用でもいろいろな作用はあるので、使用される方はいろいろに使われるのではないですか、そうでもないですか。
○石河参考人 もとは喉の腫れを退かせるために、風邪薬として処方されることが処方薬では多いです。実はそちらの方には肝斑の適応症は確かないです。トランシーノが初めてこの肝斑で使える形になった薬ではあります。それなので適応外使用に関しては、患者さんの判断は、どんなことをやってもやる人はやるし、やらない人はやらないところもありますので、そこまでは心配しすぎかという気もしないでもないです。
○松本座長 もう一つ、劇薬指定が解除された場合のマークの件に関して、事務局から何かありますか。
○事務局 引き続き第1類に指定ということであれば、薬剤師がきちんと説明していただくという部分が担保できるかと思います。販売の際に、説明文書をお渡しいただければ、他の方に渡すときもその文書をお渡しするよう説明いただくことで担保できるのではないかと思います。
○松本座長 最終的に第1類のままということであれば、その辺かなり調整していかなければいけない項目がたくさんあるのではないかと思うのです。その辺は北嶋先生の御意見も伺った上で検討していただければと思います。北嶋先生そちらの方はよろしいですか。
○北嶋参考人 はい。
○松本座長 トラネキサム酸配合剤に関してはよろしいですか、何かまだありますか。
○北嶋参考人 先ほどの各先生のコメントでよろしいのですが、私が気になったのは、肝斑に限るしみの適用について、売る際に強調されるかどうか。それで、どんどん第2類、第3類と持っていけば、そこの部分は強調されないということになりますので、この観点から少し強調させていただいたこととなります。
○松本座長 そういうことで、先ほど石河先生も、望月先生も少し色を付けるかということなのです。この配合剤のすべての配合成分が第3類なのです。それから副作用報告が2例か3例ぐらい確かに因果関係がはっきりしませんが、スティーブンス・ジョンソン症候群と塞栓症があるわけです。このぐらいの程度でいくと、今の段階では第2類か指定第2類程度になろうかと思います。ただ指定第2類にする根拠がもう一つないのでどうかなというところなのです。もう時間がきましたので、最終的に確認を取らせていただきます。トラネキサム酸配合剤については第2類医薬品としてパブリックコメントを求めることに関して御意見はありますか。御異議がないようですので、トラネキサム酸配合剤については第2類医薬品とすることにさせていただきます。
 ニコチン貼付剤については、引き続き第1類医薬品のままにするということに関してはいかがでしょうか。特に御異論はないようですので、ニコチン貼付剤については第1類医薬品とすることにさせていただきます。
 フラボキサートについては、指定第2類とすることに関してはいかがでしょうか。特に御異議はないようですので、フラボキサートについては指定第2類とすることにさせていただきます。
 ミコナゾール硝酸塩膣錠については第1類医薬品とするということに関してはいかがでしょうか。こちらに関しても御異議がないようですので、ミコナゾール硝酸塩膣錠については、引き続き第1類医薬品とすることにさせていただきます。
 ジクロルボス樹脂蒸散剤については第1類医薬品とすることに関してはいかがでしょうか。特に御異議はないようですので、ジクロルボス樹脂蒸散剤については第1類医薬品とすることにさせていただきます。このようにしてパブリックコメントを求めることにさせていただきます。事務局はいかがですか。
○事務局 ジクロルボスのところで補足説明させていただきます。資料5の2ページのところに、第1類医薬品と第2類医薬品の指定の告示の抜粋版で、個別表は付いておりませんが、ここで一応第1類医薬品としてハのところに書かれている記載があります。今回劇薬から外れるという場合にはここでは読めなくなりますので、この表としてではなくて、更に別表第1に掲げるものとして、ジクロルボスのことを法律的にどのように記載するかも含めてきちんと記載させていただくということで考えております。
○松本座長 その辺はよろしくお願いいたします。
○事務局 ありがとうございました。肝斑に使用するトラネキサム酸とその配合剤のリスク区分については第2類医薬品、フラボキサートについては指定第2類医薬品、ニコチン貼付剤、ミコナゾール硝酸塩膣錠、ジクロルボス樹脂蒸散剤のリスク区分については引き続き第1類医薬品にするということで、告示改正に向けたパブリックコメントの手続を行っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○松本座長 本日の議論は終了いたしました。最後に事務局から何かありますか。
○事務局 特にはありません。先生方には、本会議において貴重な御意見を賜りまして本当にありがとうございました。なお、今回の調査会の配付資料等については、厚生労働省のホームページに掲載させていただく予定です。
○松本座長 本日の会議はこれにて終了いたします。長い時間活発な御討議をありがとうございました。


(了)
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