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2012年1月23日 第9回社会保障審議会年金部会議事録

年金局

○日時

平成24年1月23日(月)10:00~12:00


○場所

全国都市会館第1会議室


○出席者

神 野 直 彦 (部会長)
植 田 和 男 (部会長代理)
逢 見 直 人 (委員)
小 塩 隆 士 (委員)
柿 木 厚 司 (委員)
菊 池 馨 実 (委員)
駒 村 康 平 (委員)
小 室 淑 恵 (委員)
小 山 文 子 (委員)
佐 藤 博 樹 (委員)
武 田 洋 子 (委員)
花 井 圭 子 (委員)
藤 沢 久 美 (委員)
森 戸 英 幸 (委員)
諸 星 裕 美 (委員)
山 口  修 (委員)
山 本 たい 人  (委員)
吉 野 直 行 (委員)
米 澤 康 博 (委員)

○議題

社会保障・税一体改革素案に基づく年金制度改革について



○議事

○神野部会長 定刻でございますので、ただいまから第9回になりますが、「年金部会」を開催したいと存じます。
 皆さんには、お忙しいところを御参集いただきまして、本当にありがとうございます。
 今年初めての部会でございまして、新年のごあいさつを申し上げるところでございますが、時期をかなり遅く逸しておりますので、ただ、今年度もよろしく御協力をいただければというお願いだけ申し上げたいと存じます。
 本日の委員の欠席状況ですが、駒村先生は遅れられてますが、すぐにお見えになります。
 植田委員、小塩委員、藤沢委員、山本委員、吉野委員から御欠席の御連絡をちょうだいしております。
 欠席の委員に代わりまして、御出席をされる方につきまして、御承認をいただきたいと思いますが、山本委員の代理といたしまして、佐藤委員の御出席をちょうだいすることを御承認いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○神野部会長 それでは、そのように取り図らせていただきます。
 それでは、議事に入らせていただきますが、お手元に議事次第が行っているかと思います。この「社会保障・税一体改革の素案に基づく年金制度改革について」という議事に入る前に、お手元に配付させていただいております資料について、確認をさせていただきたいと思っております。
 本日のいわゆる本資料が資料1、資料2、資料3と3つございます。更に参考資料が3つございまして、参考資料1、参考資料2、参考資料3と配付をさせていただいておりますが、御確認いただいて、委員の皆様方のお手元に行っておりますでしょうか。
 それでは、ここでカメラの方には申し訳ありませんが、御退室をいただければと思います。御協力をお願い申し上げます。
(報道関係者退室)
○神野部会長 それでは、早速、議事の方に入らせていただきたいと思いますが、前回、もう既に年が明けましたが、昨年12月16日の年金部会以降の動きにつきまして、事務局の方から報告をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○梶尾年金課長 おはようございます。
 それでは、参考資料1、2、3を用いまして、この1か月ほどの動きにつきまして、御報告を申し上げたいと思います。
 参考資料1ですけれども、これは前回12月16日に案の段階のもので、これまでの議論の整理ということで御議論をいただきまして、その際、さまざまな御意見をいただきまして、具体的な修正につきましては、座長に一任ということでの議事になったわけでございますけれども、その修正を加えたものでございます。逐一は御説明申し上げませんけれども、例えば4ページのところに参考1として、現在の課題と今後の対策、改善項目との関係がどの課題がどれに対応するという対応表を付けました。あるいは10~11ページの「(3)低所得者等への加算」で、11ページの最初の○に公平な所得捕捉が必要だということの記載ですとか、その他の項目についても委員からの御発言があったことを少しずつ付け加えております。
 18ページに年金財政の影響に関する、前回の会議では表でお付けしておりましたけれども、この文章の中にも溶け込ませて記載をする等々、少しずつ修正をしているところでございますので、御確認をいただければと思います。
 次に、参考資料2です。これは社会保障・税一体改革の素案ということで、本年1月6日に政府与党社会保障改革本部でとりまとめられたものでございます。これにつきましては、昨年12月16日段階の与党での議論の状況を、資料を用いまして御説明をしたところでありますけれども、年末年始にかけまして、こういった文章で社会保障の部分、税制の部分一体となった文書として整理がされたところでございます。
この資料の最初の方には、「はじめに」から考え方が書いてございまして、5ページからが「第1部 社会保障改革」に関する文章ということであります。
16ページから「4.年金」、「? 新しい年金制度の創設」、17ページに「? 現行制度の改善」ということで、この年金部会で御意見をいただいておりますことについて、(1)から整理してございます。
この中で12月に既に予算編成があり、1月6日にこの文章がまとめられたという段階のものですから、17ページの「(1)基礎年金国庫負担2分の1の恒久化」と18ページの「(4)物価スライド特例分の解消」は予算編成をしておりますので、法案を提出するという表現になっており、それ以外の(2)や(3)は提出に向けて検討すると書いてありますけれども、24年通常国会の法案提出に向けて検討するといった項目につきまして、この会議の後半の方で具体的な内容についての御議論をいただきたいと思っているところでございます。この説明の後に、法案を提出すると整理しております予算関係のところにつきまして、参考資料3で御報告したいと思っております。
25ページまでが社会保障改革で、26ページ以降が「第2部 税制抜本改革」ということで、社会保障と税制の一体改革ということでの文章がるる書いてございます。主に消費税の関係等々がよく報道等もされているところでありますけれども、その中でこの部会との関係では、消費税の増税の部分もございますが、34ページ「2.個人所得課税」の文章の中の36ページに「(5)高齢者・年金に関する税制」ということで、年金課税の在り方についても世代内、世代間の公平の観点からの検討が要るんだというようなことが、この文章の中にも整理されております。ただ、この段階では論点が書いてあるということで、具体的にどうするかということまでは記載をされていないという状況でございます。
これが今日は余りお時間がありませんけれども、1月6日にまとめられました社会保障・税一体改革の素案ということで、これらの内容につきまして、現在、通常国会に法案提出をするということに向けまして、作業を進めているということでございます。
この中の基礎年金の国庫負担の取扱いの点と物価スライド特例措置の解消の件につきましては、参考資料3をご覧いただければと思います。参考資料3「基礎年金の国庫負担及び物価スライド特例水準解消」ということでありますけれども、昨年来、御議論をいただいてきて、24年度の予算編成に関係するものということで、12月の予算編成の段階で24年度についてはこういう対応にしようということを整理し、これは近々に法案化をして国会に提出をし、御審議をいただく予定にしております。
2ページ、基礎年金国庫負担1/2につきましては、従来は1/3でありましたけれども、16年改正後、国庫負担の割合を少しずつ高めてきて、21年度と22年度につきましては、臨時財源、財投特会の剰余金を用いて1/2。
23年度につきましては、臨時財源ということで、当初の予算では鉄運機構の剰余金などを使いましたけれども、これを震災復興に充てたということで、最終的には復興債を充てるという形になったところでございます。
24年度につきましては、年金交付国債という形で書いてありますけれども、上の四角の4つ目の○で、24年度は「平成24年度以降の基礎年金国庫負担の取扱い等について」という次のページで御説明しますけれども、税制抜本改革に確保される財源を充てて償還される年金交付国債で1/2を確保するということの取扱いでございます。
25年度から財政抜本改革実施の前年度までの年度は、必要な税制上の措置を講じた上で1/2を維持するということで、これは25年度以降の対応につきましても、法制上・財政上の措置を講ずることになっております。そして、税制抜本改革の実施によって安定財源が確保された年度以降は、恒久的に1/2にするという点については変更はないところでございます。
今の説明の中の4つ目の○にありました、23年12月22日の財務・厚生労働大臣合意というのが3ページに付けておりまして、24年度の基礎年金国庫負担割合は歳出予算36.5%分と税制抜本改革により確保される財源を充てて償還される年金交付国債というものを合わせて1/2を確保するということで、こういったことを法律にも予算に明確にするということにしております。
具体的なイメージ図は4ページに付けております。24年度の基礎年金国庫負担は1/2にしますと。それは一番下の絵にありますように、通常の国庫負担としての36.5%分とその差額分、1/2の差額分の13.5%分の国庫負担は交付国債という形によって行う。これで1/2の国庫負担がされるということです。この交付国債につきましては、差額分に相当する2.6兆円と、これを償還までの運用収入見込み分というのを交付国債で発行されるということで、この運用収入見込み分は一般の国債の運用収入と同等になるように設定をするということです。
これを具体的にどういう形で償還、現金化をするかということにつきましては、税制抜本改革という言葉を使っておりましたけれども、要するに消費税増税の具体案の決定。これは案としてはできておりますが、法案を本国会に向けて作成するとなりますので、その段階に合わせて決定をして、別途法制化をするということになります。こういう内容になるべく、12月22日の段階では3ページに書いてありますような合意をして、その合意内容を具体的な法案化、予算化をして、今国会に提出をすることになるということでございます。
以上が基礎年金国庫負担割合の1/2の24年度分の取扱いについてということですが、通常国会に提出する法案で、一体的に法案の中に盛り込む内容としまして、5ページ「24年度の年金額について」ということです。これは物価が下がったときに年金額を引き下げなかったことによる差額2.5%で、特例措置を解消するという件であります。
これにつきましては、まず24年度4月からの年金額ですが、昨年の物価の変動は、12月まで終わった1年間の消費者物価指数の変化というのは、今週の金曜日が総務省からの発表のタイミングになります。確定はしておりませんけれども、11月までの傾向、12月分を加えて、0.3%の物価下落ではないかということで、そうしますと0.3%程度、年金を引き下げるということになります。これは法律に従いまして、下がるということになりますが、具体的には今週末に確定をし、政令を年度末に具体的に定めるということになります。
それに加えて、2.5%分というのを3年間で解消するということで、24年度、25年度、そして、26年度から特例水準がなくなるという3段階ということで、24年度4月は0.3%程度の引き下げを行った上で、10月分から更に2.5%を3回に分けて、0.9、0.8、0.8ということで、10月分から年金を更に0.9%下げるということを想定し、通常国会に提出する法案においては、24年度から通常の物価スライドに加えて、0.9%の引き下げを行う。ただし、これは10月実施にする。25年度は通常の物価スライドに0.8%分を加えた形での引き下げをして、26年度からはこれで特例水準というのはなくなるというような御提案をしようかということであります。
勿論これは通常の物価スライドに加えてですので、物価が少し上がるとか、あるいは少し下がるとかいうことがありましたら、そこをベースとして、そこに0.8%分という話になりますので、物価が上がった場合は0.8%下げるという話ではないという形での調整をすることを想定しているところでございます。こういった内容を昨年までの御議論も踏まえまして、予算編成があり、国会に予算関連法案として提出すべく準備をしているということ。
もう一つ、予算非関連ということで、今日の後半の方でも御議論いただきます低所得者等への加算等につきましても、別途、法案提出に向けて、議論を踏まえながら作業を進めていきたいという状況でございます。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 前回、私の責任において、まとめることを御承認いただきました中間的な整理については、事務局と整理して、委員の皆様方からいただいた意見については、すべて反映させたつもりでございます。表現の仕方その他について不適切な点があれば、私の責めに帰すべきことと御寛容いただければとお願い申し上げます。
今、御説明していただいたその後の動きについて、何か御質問、御意見がございましたら、ちょうだいしたい思いますが、いかがでございましょうか。
特によろしいでしょうか。
 それでは、先ほども年金に関しての前回のこの部会以降の動きを御説明していただきましたけれども、基礎年金の国庫負担及び物価スライド特例水準の解消については、近く法案として国会に提出するということになり、作業を進めていただくことになっておりますが、いわゆる予算関連法案です。
ただ、社会保障・税一体改革に伴う予算に非関連法案で、ここで議論をしてきた、つまり現行制度の関税に関わるような問題で残った課題がございまして、それについては3月をめどに法案を提出するということで進めていきたいというお考えのようでございますので、残った課題について御検討をしていただければと思います。
事務局の方から、これについて御説明をいただけますでしょうか。
○梶尾年金課長 それでは、本日は今のテーマに関しまして、3つの論点につきまして、資料を用意しておりますので、順次御説明を申し上げ、御意見をいただければと思っております。
 1つ目は資料1「低所得者等への加算について」という論点についてでございます。資料につきまして、御説明いたします。
 2ページは参考資料2で御紹介しました社会保障・税一体改革素案において、このテーマについて、どのような整理がされているかということで、本文は別冊でお配りしております。
別冊ですと17ページになりますが「(2)最低保障機能の強化」に低所得者への加算ということで、低所得者に重点を置いた老齢基礎年金額に対する一定の加算を行う。その際、保険料納付のインセンティブを阻害しないよう検討する。
障害基礎年金等への加算というのも老齢への加算との均衡を考慮して、一定の加算を行うという記載がされております。これらは消費税の引き上げ年度から実施をするということで、具体的な内容について検討をして、税制の抜本改革とともに24年度通常国会の法案提出ということで検討を進めていくことになっております。
この項目につきましては、同じ一体改革素案の中の「社会保障制度における低所得者対策の強化」という記載が参考資料2の22ページにそういう欄があるのですが、その中に消費税収はすべて国民に還元するという観点に立って、低所得者対策措置の項目の一つとして、?に書いていますけれども、低所得者の年金受給者に対しては、最低保障機能の強化として加算措置を行うという位置づけもされているということでございます。
3ページは、この一体改革の素案の中で、低所得者等への加算がどのように位置づけられているか。今の2ページに書いてありましたポイントを改めて書き出したものであります。
年金制度の最低保障機能の強化を図るためということで、消費税引き上げによる社会保障機能の強化として財源を充てるということの中に位置づけられるということで、消費税の増収分、税財源が充てられるものであります。そして、低所得者に重点を置いた老齢基礎年金に対する一定の加算。保険料納付のインセンティブを阻害しない。消費税引上げは低所得者への影響に対する措置だという位置づけになっているということです。
これは1月の素案での文章ですけれども、去年の秋での御議論の前提、あるいは夏の段階で当時は成案という表現になっておりましたが、このときには最低保障機能の強化ということで、高所得者への調整を含めて、追加的な費用が0.6兆円程度ということを言っておりました。
4ページの上の箱に書いてあります内容は、一体改革成案の文章にあったものでありますけれども、このときの試算の全体として、どういうことにしたかといいますと、これは昨年11月の部会でも御報告しましたが、年収が65万未満に者に対して、一律月額1.6万円を加算する。これは老齢基礎年金の平均額は5.4万円であるということで、5.4万円に1.6万円を加算して7万円になるようにしようということ。
それだけですと、それを少し上回る人に逆転が起きるので、逆転防止の措置を講じるというようなことを前提としまして、5ページのような図での加算を想定して、こういう形でありますと、大体0.6兆円程度の税財源を充てることで、こういった加算ができるのではないかという案を試算していたわけですけれども、この案につきましては、これも昨年11月に御紹介をしましたし、この会議でも同様に御意見をちょうだいしております。年金額が少ないというのは保険料を払わなかったり、あるいは免除を受けたり、さまざまな事情があるわけですけれども、保険料を払わなかったことで年金が少なくなっている方に、加算によって払ったのと同じ額になるということでは、不公平感が生じるのではないかと。
下の図でいいますと、32年余り納めた方と40年納めた方とが結果として同じ額というのは、公平ではないだろうと。保険料納付インセンティブを維持できる工夫をしなければならないということ等、こういった御意見もいただき、これは与党でもそういった議論があって、保険料納付のインセンティブを阻害しないようにしなければならないという御議論がございました。
7ページは参考資料1でも付けてございますけれども、会議での整理としまして、具体的な制度設計については検討する必要があるだろうということで、定額加算を前提とした上で、加算額を納付期間に応じて逓減させるとか、免除期間に特に着目したやり方をとか、これらを組み合わせるとかいうようなことで、具体的な制度設計を進め、保険料納付のインセンティブを阻害しないような配慮を行った上で、事務執行の仕組みを含めた検討をせよということ。
また、低所得者の範囲については、他の制度における低所得者の範囲を参考にしてはどうかといった御意見をいただいたということで、具体的な制度設計をどのようなものにするかということにつきましては、現在の検討状況を御報告しながら、御意見をちょうだいできればと思います。
8ページ、加算の具体的な制度設計についてという論点を整理したものです。今回の低所得者加算につきましては、消費税引上げの増収分を充てて、税財源で行うということになりますけれども、この考え方を基礎としまして、以下のような点、具体的には加算によって確保される水準、どういう水準を確保するために加算を行うのか。そして、どういう方々が加算を受けられるようにするのかという対象範囲。その上で納付のインセンティブを阻害しない方法。こういったことを併せて検討していく必要があるのだろうと考えています。
その一つひとつについてですけれども、加算によって、どのような水準確保をしていくのかということで、9ページはポイントを整理してございますが、10ページ以降を見ていただきたいと思います。水準の関係の資料を付けてございます。現在の基礎年金の平均受給額が約5.5万円ということ。ただし、基礎年金だけの方だと4.9万円くらいであります。満額は現在6万5,740円ということであります。
基礎年金の給付水準につきましては、昭和60年の改正で基礎年金というのができたと。制度発足当初は65歳以上の単身無業の基礎的消費支出を賄える水準という形で、60年、元年のころはそういう水準になっておりましたけれども、次第に基礎的消費支出の伸びというよりは、物価スライドという形での水準設定にしてきた。
更には、平成16年では物価スライドに加えて、現役人口の減少ということもありますので、年金制度の持続可能性の確保を図っていく観点から、物価スライドからいわゆるマクロ経済スライドの調整も行うというような形で、給付と負担のバランスもとりながら設定をされてきておりまして、その結果、65歳以上の無業の基礎的消費支出との関係で言えば、60年元年のころはそれをやや上回る水準でしたけれども、現状では単身の方の基礎的消費支出は少し下回る。ただ、夫婦で基礎年金が2つありますと、満額であれば上回るというような水準になっております。
具体的には11ページを見ていただきますと、単身のケースです。下のグラフが単身65歳以上無業の方の家計支出と家計調査を基にしております。平均的な消費支出が14万6,000円あるというのが統計水準ですけれども、この中の消費の種類を区分していって、左の奥から衣食住までを基礎的消費と定義しますと、基礎的消費部分が6万7,819円ということで、基礎年金の満額は少し下回っておるということになります。
ここ数年、どのような推移になっているかというのが12ページのグラフです。基礎的消費支出の幅は大体6万7,000円くらいから7万円くらいという形で、毎年毎年の統計のずれはありますが、そのくらいの間を推移している。基礎年金の方は最近ずっと余り変わらずにきて、ここ2年で少しずつ引き下げが行われているということで、23年で少し下がり、24年も少し下がる予定であるということになっています。
一方、夫婦で見ますと、夫婦の図が13ページです。夫婦世帯になりますと、2人合わせた消費支出で、2人いると2倍になるというわけではないものですから、基礎的消費を拾った場合でも、約10万7,785円ということで、基礎年金2人分であるとそれは上回っているということで、14ページはその推移をグラフにしたものでございます。これが基礎的消費支出と基礎年金の関係ということで、単身で少し下回っているというような状況でございます。
15ページ、生活扶助額というのがありますけれども、これにつきましても単身の65歳のケース。これは地域差があって、右の1-1は大都市部が1級地-1、左端の3-2は3級地-2ということで郡部になります。単身の方ですと62,640~80,820円ということで、基礎年金月額の額で言うと、2級地以上、3-1も超えていますけれども、生活保護を下回るということではあります。ただ、これも夫婦ですと夫婦の合計額が一番下の欄ですから、夫婦2人分がありますと1級地-1でも基礎年金でカバーできているというような水準になっているというのが現在の水準です。
勿論、上の四角に書いてありますとおり、生活保護と公的年金の役割はもともと異なるので、額だけで単純に比較できるものではないのですが、水準の目安として資料としてお示しをしております。
16ページは特例水準解消の図です。これらを整理しましたのが9ページにあります。9ページの一番下の○にありますように、老齢基礎年金の月額は、23年度は月額6万5,741円です。ただし、これは特例水準の解消後には6万3,866円という額になる。これは今年、来年の物価でどうなるかがありますけれども、特例水準解消後にはこの水準になります。現状、その平均の受給額は約5.5万円。夏のころは21年度の統計で5.4万円と言っていましたけれども、22年度に統計が出まして、5.5万円です。
それは老齢年金をもらっている中での基礎年金も含めて5.5万ということで、基礎年金だけの方だと4.9万円というのが現状であるということであります。現状がそういう水準であり、基礎的消費支出が単身だと大体6万7,000~7万円、夫婦ですと1人5.4~5.5万円、夫婦だと10~11万くらいという水準になる。法基準は単身で地域差がありますが、こういった水準。民主党の新しい年金制度では7万円。こういったことを念頭に、どういう水準を確保するための加算にするかということを一つ考えていく必要があるのだろうと思っております。
17ページ、加算を受けられる対象となる方はどういう人なのか。加算を受けられる対象範囲につきましては、低所得者に重点を置いた老齢基礎年金への一定の加算を行うということになっているわけですが、これにつきましては、やや相対的な表現になっていますけれども、一定の範囲までは広く行う。特例水準の解消が行われることなどを踏まえると、加算により確保すべき水準との関係も考慮が要るわけですが、対象者を幅広くとらえるというような考え方があるのだろうと。これも相対的な話でありますけれども、幅広くとらえれば1人当たりの加算額は小さくなって、低所得者となるのだろうということはあります。
一方で、所得の低い人にかなり重点化をしていくということにすれば、低所得者加算としての低所得者向けの施策としての効果は大きくなるわけですが、対象者は少なくなると。また、低所得者、低年金者はそういう理由があるわけですので、納付インセンティブを損なわない方法を工夫した加算をしなければいけないということがあります。いずれにせよ、加算制度に充てられる税財源は0.6兆円程度ということですので、この範囲での施策をどういうことで、効果的な内容として打っていくのかということになるということ。
事務の執行の方法についても考えなければいけないわけですけれども、この仕事をする際には日本年金機構が他の機関、市町村からの調整情報や番号制度の活用も考えられるわけですけれども、所得状況を得た上で低所得者であるかどうかを判定するということになりますが、その際に一つのやり方として、他の社会保障制度、介護保険の段階保険料の設定を当てはめるための低所得者の基準。そういったものを活用して判定をするというやり方も考えられるということで考えております。
日本年金機構は老齢年金受給者の取得情報を持っているわけではないので、これはそういった仕組みをつくらなければならないということと、番号制度、マイナンバー法ということで参考資料2の後ろの中に記載してございますけれども、この国会に法案提出をした後、2015年1月から順次利用開始される。2015年の所得から使っていくことになりなすけれども、実際に所得情報の交換には、情報連携基盤の運用開始が必要で、これを使い出せるのが2016年1月からだったり、自治体の間では7月めどということですので、消費税の引上げが2015年10月で10%ということですので、それに併せて、この加算を実施するという場合には、番号制度がうまく動き出しているということは、前提にはしづらいということになるかと思います。将来的な話ではございますが、スタート時は何らかの工夫を考えなければならないということではあります。
18ページ、納付のインセンティブを阻害しない方法についてですけれども、これまでもこの部会でも幾つか御意見をいただいておりますので、それを整理したものです。1つは、加算を定額にするということにしながら、保険料納付期間が短かければ、例えば定額の1/4にするとか1/3にするとか、1/nという技術的な表現にしておりますけれども、納付期間が短い場合は加算額を1/4とか1/2とか何段階か付けるというやり方だとか、あるいは大きな階段ではなくて、満額の定額を決めた上で、それに480分の「納付済期間+免除期間」をかける。この場合は免除期間は1で扱うけれども、未納期間は0で扱うということで、納付か免除であれば、それは満額で加算されるというような意味合いになるかと思います。そういう形での定額をベースとしながら、そういった傾斜を付けるというようなやり方があるのではないかということ。
1つ飛ばしまして、一方で定率で加算するというやり方であれば、年金額が少ない人は少ないなりに、多い人は多いなりにということになりますので、年金額が少なかった人により優遇という話にはならないわけですので、納付インセンティブが阻害しないわけですが、低年金者への加算は小さくなる。
真ん中の○は、低年金になっている理由で、未納で低年金になっている分については加算はしないけれども、免除を受けて1/3の計算になっている。あるいは学生あるいは若年者での法律上は免除ということになりますけれども、納付猶予を受けている期間については、それは手続をしているということなので、そこは加算するとか、そういった一定の手続をした部分については上乗せをするけれども、未納であった場合については上乗せをしないという形で、納付インセンティブを阻害しないような形でうまく抽出をして加算をしていくというやり方。
ただ、これらを組み合わせていくとか、そういったような形。上の3つの○のものは、基本的に納付インセンティブは阻害しないような工夫としての案だと思いますが、これらをどれか一つということではなくて、組み合わせていくというようなやり方。そういったことが考えられるのではなかろうかと思っております。
最後のページは「(4)障害基礎年金・遺族基礎年金への加算について」です。これにつきましては、素案の文章にも現在、障害基礎年金の2級と遺族基礎年金の加算分を除いた額というのは、老齢基礎年金の満額と同額になっておりますから、老齢基礎年金の低所得者に対する加算をさまざまな形で検討した上で、老齢基礎年金の満額を受給している人が幾ら加算を受けることになるかということが決まってきた段階で、それと同じ額を障害基礎年金の2級、遺族基礎年金に同様の加算をするということが基本的な考え方になるのではなかろうかと思っております。勿論、その場合は障害基礎年金1級の場合は、加算部分1.25倍するということなのではないかと思います。
ただし、これを税財源での加算ということになりますので、現在その障害基礎年金の中で二十歳前に障害者になって、二十歳になってから保険料を払う機会がなく、障害基礎年金を受けておられる方、無拠出での障害基礎年金につきましては、取得制限ということがございますけれども、取得制限の限度額を付けてございますが、こういった額を参考にして、障害基礎年金と遺族基礎年金につきましても、加算部分については取得制限を考える必要があるのではなかろうかということも論点であろうと思っているところでございます。
資料1につきましての説明は以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 本日はこれまで御説明していただいたように、予算非関連法案に関わる論点、主要なものを3つばかり準備をさせていただいておりますが、そのうちの1番目です。低所得者等への加算ついて御説明をいただきました。この部会での議論を踏まえながら、論点を適切にまとめていただいたと思いますが、御意見をちょうだいできればと思いますが、いかがでございましょうか。
 逢見委員、どうぞ。
○逢見委員 税財源をもとに低所得者等に加算を行うことについては、高齢者に対する貧困防止という点での所得再分配機能の強化が期待できるものであり、一体改革の中で是非やるべき政策の一つであると思っております。
 ただし、基礎年金に保険料部分が残るので、そういった意味では保険料納付インセンティブを阻害しないという点についても十分配慮する必要があると思います。
そもそも低年金に陥る原因は主に三つあり、一つ目は免除期間があることによって満額受給できないということ、二つ目は未納、未加入によって満額が受給できないということ、三つ目は繰上げ受給によって年金が減額されているということが考えられます。
この中で第一にまず救済すべき点は何なのかと言えば、1番目の免除期間がある者、言わばこれは保険料を払いたいけれども、払えないので適切な手続きをとったという状況にある人たちでありまして、こうした適切な手続を取った免除者を対象に加算を行うことが、制度の公平性という観点からも納得性が高いのではないかと思います。
ただ、今回その免除期間に加算だけを行うということになると、たとえば免除制度を知らなかった人や制度が複雑でどのように免除手続を取っていいかわからなくて、できなかったという人など、何らかの理由で免除申請ができなかった人には加算がされません。そうしたことを考えると、免除期間のみではなくて、更に定率あるいは定額の加算の組み合わせが考えられ、事務局資料18ページでいくと、一番下の○にあるような組み合わせ加算というような仕組みがよろしいのではないかと思っております。
最後に、民主党の方では、新たな年金制度の設計の中での最低保障年金が検討されていますので、これと連続性を確保するということは、それぞれが考えなければいけないことだと思います。今回の低所得者への加算を考えるにあたり、全く別物を出すということではなくて、全体として、今回の現状を前提にした措置とこれからの新たな年金制度が相まって、年金額の保障という安心の姿を国民に示すということが必要なのではないかと思っております。
 私からは以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 免除期間のある方を優先するということや組み合わせ方式がよいのではないかということ、及び最低保障年金、抜本的な改革、そういうことを見通した意味での連続性というような3点の御指摘をいただいておりますが、いかがでございましょうか。
 山口委員、どうぞ。
○山口委員 制度設計について3つの課題が列記されておりますので、これに沿った形で私の意見を申し上げたいと思います。
 加算によって確保される水準の意味というところですが、先ほどの御説明にもありましたように、特例水準を解消することで、基礎年金の給付額が2.5%程度低下をすることになります。さらに、今後、消費税の増税によって、物価も上昇するわけですが、それについては基本的に翌年の年金額に反映される形なります。しかし、マクロ経済スライドが発動されると、それは低所得者に対しても一律に発動されることになります。そうしますと、特に女性の高齢単身者などで、現行の年金給付費でもって基礎的な消費支出を今の段階でも支えることができないと言われている苦しい状況を更に悪化させることになります。したがいまして、私の考え方と致しましては、単身者をベースとして基礎的消費支出をおおむね確保できるといった観点から、この問題をとらえていく必要があるのではないかと考えております。
加算を受けられる対象範囲についてですが、全体として6,000億円以下というような予算制約がありますので、その中で考えるといくこと、そして7万円の給付水準を想定していきますと、事務局の試算結果に近いものになるのかもしれないのですが、私はその際に考えなければならない問題点として、年収の概念のとらえ方があると思っております。
この年収の概念について2点、指摘しておきたいと思います。一つは、事務コストの関係からか、今回の案では資産調査をしない方向で議論されているように思われますが、年収に含まれる対象所得の範囲の問題です。資産調査をしないということでありますと金利収入であるとか配当収入といったものが大きい人であっても、それは年収計算の対象に入らないことになりますから、そういう人達がここでの低所得者加算の対象に入ってくる可能性があります。そうなると、大きな金利収入や配当収入があっても、それらの所得は年収計算の範囲に入っていないために、低所得者への加算の対象者になるといったことが、この趣旨に照らした時に、果たしてそれでいいのかといった問題があろうかと思います。
もう一つは、年収の対象として給与収入とか事業所得は入ることになるのですが、これにつきましては、その年に汗を流して稼いだお金と年金収入とを同列に単純に合算することで果たしていいのかという問題があります。今後、労働市場に高齢者の参画が必要になってくるわけですが、そういう高齢者の勤労意欲を阻害する可能性もありますので、せめて年収という表現を例えば基礎収入といった形に表現に改めた上で、年金収入と合算する対象としての給与所得とか事業所得については、例えば半分にしてから合算するといったような配慮を設けることが必要ではないかと考えております。
保険料納付のインセンティブを阻害しない方法につきましては、この資料に書かれております定額加算の2つの案をミックスしたものが妥当ではないかと考えております。定額加算を前提にして、保険料納付済み期間と免除期間を同じ重みでとらえて、それらを合計した期間に応じて、数段階で満額までの範囲で逓増させていくという方法などが考えられます。なお、この資料では逓減という表現で書いてありますが、満額までの範囲では逓増させるという意味だと思いますので、そういうふうに表現を変更されてはどうかと考えております。
なお、この考え方は国庫負担給付のベースでは、免除期間も納付期間と同じように扱うことになっているわけですから、そういうことを背景にこれら2つの期間については同じような重みづけで考えてはどうかということと、480分のいくらといった複雑な計算式は非常にややこしくなりますので、簡便性を考慮して数段階で逓増的にやっていくことでよいのではないかと考えております。
それと併せて、以前申し上げましたように、これはもう既にまとめのところでも書いていただいておりますが、繰上げ受給を行ったために低年金になっている人が結果的に優遇されることがないように、繰上げ受給者についての加算の判断にあたっては、本来の年金額で判定をするような仕組みで、この制度をつくっていく必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。
○神野部会長 対象範囲、インセンティブについては、事務局の方でコメントはございますか。これは税金の方で言えば、ディフェレンシエーション、差別性。つまり、額に汗した所得と財産の所得、その他については担税力、税金を担う力が違うので、それはおのずから差別をすべきだという考え方に基づいて、基礎収入、つまり、新たな概念を導入すべきではないかというようなお話などがございましたけれども、何かコメントはありますか。
○梶尾年金課長 委員の皆様からいろいろと御意見をちょうだいした上で、先ほどの主査のお話もそうですけれども、具体的にどういう事務執行ができるかなども含めた形で、いろいろと御意見をいただいた上で検討させていただければと思っております。
○神野部会長 わかりました。
 あとはいかがでございましょうか。柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 私の方からも3点ほどお話をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、確保される給付水準です。御承知のように、年金財政が非常に厳しいということで、3年で特例水準の解消を図ろうとしております。これにより、老齢基礎年金の満額水準が6万5,000円から平成26年度に6万3,000円に下がるといった状況をかんがみると、加算を設ける場合は、現行の満額水準を前提とするのが一つの考え方であるのではないかと思っております。社会保険制度の中で対応する限りにおいて、7万円等、現行の満額水準を超える額に設定することで、逆に保険料納付に関するインセンティブへの悪影響も生じるのではないでしょうか。これが1点目でございます。
 2点目は、加算を受けられる対象範囲の考え方です。これはいろいろと意見が出ていますけれども、あくまで加算する対象は限定的であるべきだと考えております。
3点目ですが、既に逢見委員から意見がありました通り、未納期間を含めて広く加算する案は望ましくないと思っております。現行制度免除の手続があるわけですから、手続をきちんと行った者について、限定して対応すべきではないかと。ただ、以前からも出ているように、免除制度が非常に複雑だとか、免除を申請する人にとってわかりづらいという面もあるので、そういった面の改正は非常に重要だと思います。いずれにしてもインセンティブを阻害しないためには、手続をきちんととった者を対象とすべきではないかと考えます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 菊池委員、どうぞ。
○菊池委員 水準につきましては、確かに単身者を基準にして、基礎年金をカバーできるというのが望ましいとは思いますけれども、さまざまな状況を勘案して、カバーできないから基礎年金自体が法的に問題があると、そこまでは言えないと思っております。そこは特に異論があるということはございません。
ただ1点、比較として、生活保護の級地制について言及されていますけれども、級地制自体が2007年でしたか。検討会で、このままでいいのかという提言が出ていまして、かなり1級地-1から3級地の-2までそれぞれ7%の違いを設けている。間違ったら申し訳ないですが、実際にこんなに生活水準が違うのかという辺りが議論になっておりまして、今も生活保護の検討をされていると思いますので、駒村先生のご担当だと思いますが、既存の制度ではありますけれども、既存の制度自体も比較の対象としての適切さという点がややあるのではないかと申し上げておきたいと思います。
18ページについては、方向性としては一番上か2つ目の○かなと思います。これは私も結論は出せないのですが、どちらかというと上から2つ目の○をイメージして考えていました。一番上ですと、基本的な考え方として、加入者全体に原則として広く支給するということで、新たな税財源による新たな社会手当的なものをつくるというイメージ。あるいは実質的には、全体として保険料と税財源の割合を変える、税財源の割合を上げるというイメージにならないのかなという、やや違和感があります。そういう制度のつくりだと、税財源でなくても保険料収入で加算をつくるというのも不可能ではなくなってくるような気もします。結論を繰り返しますと、私は上から2つ目の免除期間についての加算ということで、今までは考えておりました。少なくとも未納、未加入の方を対象にするというのは、社会保険という拠出に基づく給付という仕組みの根幹に関わるものですので、私はこれは仕組みとして無理ではないかと。ですので、最低保障年金を設けられた暁に、そちらでしっかりとやるということにならざるを得ないのではないかと思っております。障害への加算は所得制限をやらざるを得ないと思っております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
 諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 私も3点ほど述べさせていただきたいと思います。
 一番初めに、所得を把握するための情報です。この仕組みについては17ページですけれども、日本年金機構はその情報を持っていないということですが、現実に第1号被保険者について先ほどから言っている未納とか滞納、免除申請に関しては、基本的には所得情報をたしか持っていると思います。
 その説明の中で先ほど介護保険のものも参考にして考えているとのことでしたが、その現場で一番問題になったのは、実際に所得の申告をしていない人が結構いると。つまり第1号被保険者であっても、所得の申告をしていないということで、実際の把握がはっきり図られていないんです。ですから、何かしらその仕組みを作るにしても、所得の申告について、きちんとした把握ができるような関連省庁とコンタクトを取る必要があるのではないかと思います。
 社会保障と税の番号制度について、将来的にこれをやりましょうということですが、年金の基礎年金番号ができたのは61年でしたが、そのときも国年と厚年を統一するのに約10年以上かかっているんです。ですから、これを始めたとしても、本当に順調に移行できるのか。番号もいろいろと、今、皆さんは実際に基礎年金のほかにも雇用保険番号、労働保険の関係とか、いろいろな番号を持っていますので、1つの番号に統一する、それが果たしてうまくいくかどうか。これがある数年間ということではなくて、長期的に考えたうえで所得をとらえるような方法を始めから考えるべきではないかと思っています。
 2点目が先ほどから委員の皆様からも話があった、毎度私は言いますけれども、免除の問題です。先ほど逢見委員もおっしゃっていましたけれども、非常に複雑であるということ。知らない方が多いということ。そういった知らない人も多いのですが、その申請方法もわからない。申告しても非常に複雑であるということは、早急に対応すべきだと思います。
先ほど、学生と若年者免除についての免除期間も含めるということをおっしゃっていましたが、学生、若年者については、本来は追納しなければ免除期間は額に反映されませんので、その部分についてはどう考えていくのかを具体的に考慮された方がいいかと思います。
3点目ですけれども、二十歳前の障害基礎年金と同じように、税財源による加算であることから、障害基礎年金の加算については、一定の所得制限を設けるという案については、私は賛成です。
以上です。
○神野部会長 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 今までも触れられていたわけですけれども、加算方法については、組み合わせが重要かと思いますが、そもそも何のための加算なのかということによって、どう組み合わせるのかも変わってくると思います。特例への対応ということになれば、これは2.5%ですから、ここで言う規模とは違ってくる。ただ、存在はする。
 消費税増税分のスライドについては、そのままスライドさせるかどうかで議論があるとは思いますけれども、マクロ経済スライドが続くことによっての低所得、低年金者へのダメージを考えるかということを考えれば、これは所得制限を付けた上での納付と免除に着目した加算。現在の低年金が未納ではなくて、免除が原因による現在の低年金への対応。ここに重点を置きたいと考えれば、当然免除に着目した加算になると思いますけれども、これは今まで議論があったように、実際の低所得者の中で免除の比率は決して高くはないと。最近は上がっているのかもしれませんけれども、推計すると低いかなという感じもしますので、免除の資格があるにもかかわらず頑張って払った方に対して、がっかりさせてしまうのではないかという部分もありますので、この辺は組み合わせるとしても、どのくらいのどういう目標なのかによっては組み合わせ方ですね。複数の着目する期間、税額のウェートづけが大事になるのかなと思います。
 以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでございますか。どうぞ。
○山本委員(代理:佐藤) 山本委員の代理の佐藤です。
 第2回の部会で出席をさせていただいたときにも申し上げましたけれども、今日は直接議論の対象になっていませんけれども、私どもは加入期間を25年から10年にするという点については賛成をしておりますということを申し上げました。その上でその受給資格を持っている方に対して、年金を納めていない期間について基礎年金の1/2、つまり国庫負担の部分を上限に支給という意見でございます。基礎年金の1/2を限度に支給ということであれば、一律に同じ金額を加算ということとは異なりますので、納付期間が長い方が結果的に多くの年金を受けるということができますし、加算により必要な額全体も抑制ができます。
 以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 あとは次の議題に移ってよろしいですか。
どうもありがとうございました。積極的に御意見をお出しいただきまして、感謝申し上げたいと思います。
それでは、引き続いて、2番目のテーマについて御説明をいただけますでしょうか。
○梶尾年金課長 ありがとうございました。
 それでは、次の論点ということで、今の議題とも関係いたしますけれども、資料2の高所得者の年金額の調整につきまして、資料を御説明したいと思います。
 2ページですが、上の箱が一体型の素案にどのように記載されているかということで、最低保障機能の強化。今の加算や資格期間の短縮等を指しますけれども、これと併せて高所得者の老齢基礎年金について、その一部国庫負担相当額までを調整するという制度を創設するということを最低保障機能の強化と併せて実施して、税制抜本改革とともに、24年の通常国会への法案提出に向けて検討すると素案に記載されています。
 年金部会の議論の整理の方ですけれども、これは参考資料1の抜粋で、前回の議論を踏まえた修正を加えたものをここにも記載してございますが、これまでの議論で低所得加算を行う際には、高齢者の世代内の公平、世代間の公平を図る観点から、高所得者の年金の調整を行うということは、方向性として望ましいという意見が多かった。こうした考え方に基づいて、限られる税財源の効率的な使い方として、基礎年金の国庫負担分に限り、一定以上の高所得者に対して、年金額を調整する制度の導入について検討する。
その際、財産権であっても、公共の福祉の観点から、法律により制約を加えることが憲法上許される場合があることは累次の判例で示されているが、今回の措置が累次の判例に照らして、どのように位置づけられるかについては、詳細な制度設計に当たり慎重に検討しておく必要があるということで、これをどのように整理をするかというのは、大きな論点として残っているということでございます。
3ページ、昨年夏の文章では、高所得者の年金給付の見直しについて、低所得者への加算と併せて検討ということで、この段階では年収1,000万円以上から減額を開始して、1,500万円以上は公費負担分を全額減額すると、450億円程度公費が縮減するという試算をしてございます。
その際、左側ですけれども、公的年金等控除縮減をすることによって対応することについても、併せて検討ということを後の段階で記載してございますけれども、一体改革の素案の1月6日の文章においては、この年金の中でこういうのをやるんだということ。そして、年金課税の方につきましては、論点は記載してありますけれども、引き続き検討ということでありますので、税制の議論は勿論やらなければならないということは、1月6日の素案に記載がありますけれども、年金の側での年金の見直しを検討して、具体案を通常国会に出すということで、現在は整理されているということであります。
この450億円程度の公費縮減になります試算の前提ですけれども、下の方にありますように、1,000万円以上のものに対して年金額の減額を開始して、1,500万円以上のものに対しては国庫負担相当額を支給しないという前提にしますと、老齢基礎年金受給者実態調査によりますと、年収1,000万円以上の人は老齢基礎年金受給者の中の0.6%、1,500万円以上の人は0.2%ということなので、計算すると11兆くらい出ている基礎年金国庫負担のうちの約450億円が縮減ということでございます。
これについての具体的な制度設計はどうするかにつきまして、4ページに記載してありますけれども、高所得の基準をどうするかということで、年金額の調整を受ける人はこの世代内の公平もそうですし、世代間の公平という観点からも、こういった措置が要るだろうということですが、年金収入がなくても生活できる程度に相当に高収入な者ということが、この新しい制度の対象になるという考え方になるのではないかということで、現役世代と比べても相当程度の高所得と考えられる水準の所得はどう考えるかというので、家計調査で勤労者世代の所得を見ますと、第10分位の方が1,031万円だということを参考に、年収1,000万円以上については減額を開始をする。徐々に減額幅を大きくしていって、1,500万円程度からはなしということではどうだろうかという水準を設定して、縮減額を見込んでおります。こういった水準をどのように考えるかというのが1点ございます。
下の○は実際の制度設計の際には、収入といいますと経費をどう見るかとかございますので、実際の制度設計に当たりましては、各収入の経費等が調整された課税所得を基準として判定をする。収入ベースで1,500万というと、所得ベースでは1,100万になりますし、1,000万ですと650万程度になるんですけれども、現行の年金世代における所得制限の限度額なども所得で記載をしているというようなこともありまして、実際の制度設計ではそういう形になるのではないかと考えております。
なお、先ほどの低所得者加算のところでも申しましたけれども、この仕事をする際には、年金受給者の所得情報をどこからか得て、それで判断をしていくことになるということでございます。先ほど諸星委員からありましたように、現在その免除とか保険料納付の関係で、一定の範囲で市町村から所得情報を得て仕事をしている部分がありますけれども、それは仕事に必要な範囲で課税情報をいただいているということで、免除とか保険料納付の関係で言えば、現役世代、保険料を納付する世代の方の所得情報を一部いただいているということで、老齢年金をもらっている方、65歳以上の方についての所得情報は現在ないということですので、どういう仕事をするかということを前提に、どういう情報をどういう形でいただくかということを新たに設計していかないといけないということです。その際にどういう基準で設定をして、どういう業務構成をしていくかということを考えていかなければならないということでございます。
5ページは、先ほど0.6%とか0.2%と申しました。以前の社会保障国民会議で600万という数字もありましたので、600万のラインも付けておりますけれども、老齢年金受給者全体を並べていきますと、9割のところで400万の少し下くらいということで、右側の方は人数的には少ないということでございます。こういった中でも、どういった対象の範囲を高所得者の調整という形の対象にするかということが1点ございます。
6ページ、調整の対象、年金の減額の対象になる人、これから受給者になる人。まだ年金の権利の裁定を受けていない人だけにするか。それとも、現在受給をしている、既に年金の裁定を受けている人も減額の対象にするかどうか。これは従来、これまでの年金制度の改革で給付の調整の引き下げをするというのは、これから年金を受給した方々を対象にしてきたということが多かったわけでありますけれども、今回の措置について、新規裁定者だけにするかの、これまで既に受給している人も対象にするのかというのは、決めなければいけないという点が1つあります。これは世代間、世代内の公平の観点から、この制度を導入するということを考えた場合に、どのようにするかということです。
その上で、既裁定者、既に年金を受給している方も減額の対象とするという場合には、憲法上の財産権との関係で、それは事後的な法律によっての見直しになりますので、そこをどう整理するかということですが、これにつきましては、今までの判例などもありますけれども、そういったのも前提に憲法論として、年金を受給する権利は憲法上の財産権ですが、公共の福祉のために合理的な制約として制限することが可能でありますが、今回どのような内容でどういう調整であれば、整理ができるかどうかというのは政府内でも検討をしているところではございます。これは検討いたしますけれども、政策論としてはどういう形が考えられるかということの御意見もいただければと思っております。
7ページ、国庫負担相当額ということですけれども、基礎年金満額の場合、国庫負担相当額は特例水準解消後6万3,870円となった場合において、1/2の国庫負担は3.2万円ですけれども、それは個々人の老齢基礎年金額に応じて国庫負担相当分は異なっているわけです。例えば納付期間が短かったりして、老齢基礎年金額が例えば5万円であれば、国庫負担相当額はその半分の2万5,000円とか、年金額が少なければ、その分の国庫負担相当額も少なくなるという点が1点。
納付された方の場合はそういった半分ですけれども、免除を受けた方は全額が国庫負担相当分となりますので、例えば40年間免除を受けて、その期間が1/3の時期でありますと、40年間免除を受けた方の基礎年金月額は6万4,000円の1/3の2万1,000円余りですけれども、それで現役時代は免除でしたが、高齢になったら所得が高いケースはあり得ますが、その場合は国庫負担相当額から全額という話にするのかどうか。それは国庫負担相当額は人によって違っているわけですけれども、どうするかという点は一つ決めないといけないということ。
これまでに既裁定の年金について減額を行った例では、下の方に国会議員互助年金のケース、参考2では一度廃案になりましたけれども、改めて提出を考えております被用者年金一元化法案における国家公務員OBの追加費用の削減に伴う減額につきましての例がありますけれども、年金額の1割までという制限が設けられております。
ただ、六万数千円の老齢基礎年金だけをもらっている方、あるいは老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて十数万の年金をもらっている方がおられる中で、国庫負担は老齢基礎年金に対してだけですけれども、年金額の1割までというようなやり方が今回妥当なのかどうか。あるいはそういったところをどのように考えていくのかということが、減額の範囲という点では出てくるのだろうと思っています。
なお、8ページに前回の議論の際に、駒村委員から、そもそもこの議論の際には、基礎年金の国庫負担の経緯とか歴史とか、そういったのを踏まえて判断をする必要があるのではないかという資料のおまとめがありましたので、8ページに付けております。
基礎年金の国庫負担です。まず、基礎年金に先立って、年金への国庫負担の経過です。国民年金は昭和36年に制度が発足しましたけれども、制度発足当初は納付された保険料総額の半分に相当する額を国が出す。そうしますと保険料2、国庫1の割合で拠出がさりますので、全体で1/3分が国が見ている形になりますが、制度発足当初は納付された保険料総額の半分の額を国も出すという形での国庫負担、拠出段階での形になっておりましたが、昭和51年に、給付に係る費用の1/3を国が負担するというやり方、給付に対する国庫負担というやり方に変更になりました。
一方で、厚生年金では制度発足当初は昭和19年になりますが、そのときは給付費の1割を国が出す。あとは保険料財源ということでしたけれども、昭和29年に15%、40年の改正で20%を負担するという形で、保険制度全体に対する国庫負担がされるという形になってきております。
そして、昭和60年の改正で基礎年間の国庫負担、基礎年金制度が導入された際に全体共通の基礎年金を導入し、厚生年金は2階だてになるという際に、国庫負担は基礎年金部分に集中して、基礎年金給付費の1/3の国庫負担を行うという整理になって、厚生年金の2階部分については国庫負担はないという整理になったというのが現在です。その後、国庫負担割合は1/2になったということでありますけれども、このときには基礎年金というのは、老後等の保障の基本的な部分に当たるので、一般財源で負担する必要性が高いのだろうということと、厚生年金はもともと60年改正前の全体が定額部分を報酬比例部分になっていまして、全体に対して2割の国庫負担がされておりましたけれども、報酬比例である年金分について給付費の何割と国庫負担をしますと、年金額の高い人ほど多くの国庫負担を受けられるということになりますので、これは定額の部分に国庫負担を集中しようという話になったということ。制度ごとにばらばらだったので、ここは統一をしましょうということで、全国民共通の基礎年金に国庫負担を集中したという説明がされているところでございます。
なお、現在の基礎年金の国庫負担というのは、基礎年金の1/2ということですけれども、基礎年金給付全体を賄うために、基礎年金拠出金という形で国民年金、厚生年金、共済年金、各制度から拠出がされるという際に、その半分を負担すると。拠出金の1/2を国庫負担するということで、保険料負担を軽減しようという役割なので、制度的な話としては受給者個々人の基礎年金給付費の半分が税金、半分が保険料というふうに明確に区分されているわけではなくて、基礎年金給付費全体を賄う基礎年金拠出金を国庫が半分負担していると。制度の位置づけとしてはそういう形になっているということでございます。
説明は以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、2番目のアジェンダになりますが、高所得者の年金額の見直しについて、どうぞ。
○森戸委員 似たような話になるんですけれども、2点ほど。
 1点目は、先ほどおっしゃったのが、最初の議論ではこの話は税金、税制で公的年金控除と年金課税等でやるというものもあったけれども、年金の中でやりましょうということになったというお話でしたが、所得が多い人が問題だというのだから、一番単純に考えたら、それは税金をかければいいのではないかというのは十分ある話だと思うんですけれども、そうではなくて、これはやはり年金の中でやるべきなんだとなったのは、何か理屈として、そちらの方がいいというのがあるのか。それとも政治的なことなのか。後者なら別にお答えは要らないんですけれども、教えていただきたいと思います。
 もう一点はそれに関わるのですが、既得権の話が6ページ、新規裁定のみなのか、既裁定もかという憲法論の話で出てきましたが、既裁定の方が財産権としての意味は大きいというのはそのとおりで、憲法論としては結局公益にかなうかということなので、他方で勿論、既裁定だから絶対に減らしてはいけないとかいうこともないとは思うんです。恐らく感じとしては、減額とか割合がそんなに多くなければ通るのかなという気はしますが、それはそれとして、さっきの税金の話と関わるのですが、憲法論をするときに総合的にいろいろなことを勘案して、合理的な制約かどうか。
容認されるべきかどうかを判断すると判例が言っているようですが、その検討の中で、この話は所得が高い人が問題だというのだから、税金でやればいいものを何で保険制度になっている、一応保険料を払って、給付をもらうという年金制度の中でこれをやるんだというのが、合理的な制約かどうかという憲法論の中でも問題になるのではないかという気がします。つまり憲法判断においても、別にこれでやらなくたって、ほかのやり方の方がいいのではないか。単純に所得が多ければ、その年に税金を多く取ればいいでしょうというので対処できるのに、わざわざ何で年金で既裁定の人を減らすんだという議論もあると思いますので、その辺は慎重に考える必要があるのかなと思います。
以上です。
○神野部会長 事務局の御説明をいただいてからでいいでしょうか。
○梶尾年金課長 言葉足らずなところがあったので補足いたしますけれども、年金の中で低所得者への加算を行うということと併せて、高所得者については年金額の調整を併せて講じていく必要があるのではないかというのが一つ大きな論点としてあって、ただ、その高所得者の調整については、別途、公的年金等控除といった形での検討もあるのではないかということは、論点としてあるわけです。
年金の方については、昨年来ここでも御議論をいただいておりましたとおり、今回、低所得者についての加算を行うということと、高所得者の調整はある意味セットで、基礎年金に対する国庫負担の考え方をどういうふうに見直しをしていくのか。最低保障年金の強化をしていくという中で、それは考えていくべきであろうということと、その内容を法案に入れていくべきだということが一体改革の素案で位置づけられたということです。
課税の方については、勿論それは大事な論点であって、先ほどの参考資料2の36ページにも、高齢者の中にも高い人もいるというようなことで、世代間の公平性を確保していくということ。そういったことの見直しなども考えていかなければならないので、そういったことについては、36ページの文章では、年金制度の改革とも併せて検討していく必要があるということで、そういった方向性の検討が必要だということは、年金課税の方の記載にも入っているのですが、現在までの検討の進み具合ということかもしれませんけれども、年金制度の中では低所得者の加算と高所得者の調整をセットで案を考えていく必要があるだろうということが現状、一体改革の素案の中でも整理されている。
税の方は、その論点は明確にしつつも、この国会の税制の改革の法案の中で、そこをどうこうするところまでは進んでいないということで、そちらで考えるべきだから年金制度の方はやらなくてもいいという話にはなっていないということを御紹介したということでございます。政治的とかいうことではないとお受け止めいただければと思います。
○神野部会長 つまり御質問の趣旨の最初の方は、年金課税を行わずに年金制度の内部内で対応するということになったという歴史的な事実があり、そのときの根拠があるとすれば、教えろという話でしたね。歴史的な事実としては、それはあるのでしょうか。
○梶尾年金価値調 そういうご質問ではなかったと思うのですが。
○森戸委員 歴史的というか、今、何でこうなったかという話なので、今のお答えでいいです。
○神野部会長 どうぞ。
○米澤委員 今、事務局の方から、極めて財政的なニーズが出てきたというのはよくわかって、どこかを削らなくてはいけないというのはよくわかるのですが、今の森戸委員の御意見と菊池委員の御意見と、今日は御欠席ですけれども、以前の植田委員の意見もあったんですが、そもそも年金が何のリスクを減らすようにできているかということから整理をする必要があるのではないかと思います。
 我々は普通は長生きをするリスクをヘッジすると理解をしていますが、御存じのように所得分配というか、最低保障も入ってきているわけですが、税も入ってきているので、ぐちゃぐちゃになっていて、机上の空論になるかもしれませんけれども、経済効率的に見て問題があるのかないのかというのを一回整理する必要があるのではないかと思います。
 例えば所得分配の方に関しては完全に税で行って、長生きリスクの方に関して、社会保険料の方の年金でやるということも十分に考えられるわけなので、そこのところはかなり混乱していると言ったらおかしいですけれども、両方入ってきているのでなかなか難しい点があるかと思います。菊池委員の意見でも、もし最低保障だったら、財源が保険料でなければ、別に納付の条件は余り必要ではないのではないかという議論もできるのかもしれません。私はそれがいいというわけではないですけれども、そういう点でももう一度、税で行う部分と社会保険をベースとするような年金で行う部分というのは、頭の整理として1回整理をした方がいいのかなと思います。
それはそれとして、1つ心配するのは、それこそ高所得者が納付のインセンティブが下がるのではないかと。具体的には自由業者の高所得者ですね。その人たちが払うインセンティブが減るというようなことは心配しなくていいのか。この点が気になるということでございます。
以上です。
○神野部会長 菊池委員、どうぞ。
○菊池委員 この点については、私の考え方については、もう既に述べさせていただいていますので、ここでは繰り返しては述べません。先ほど森戸先生がおっしゃった点と重なると思うのですけれども、既裁定者について財産権との関連で、最終的には総合判断ということで最高裁も言っていますが、恐らく先ほどおっしゃられたように、この判断要素の中に、他に採り得るより権利制約的でない手段がある場合には、それも考慮したかというのが多分、一要素として入ってくると思いますので、この辺は現在検討中ということですが、慎重に検討していただきたい。今までも農業者年金などのときも、かなり慎重に判断をされてきているようですし、この新しい制度によって、逆にほかの制度に対する影響力もあると思いますので、慎重にご検討いただきたいということです。
 新規裁定者につきましては、財産権は直接関連してこないかもしれませんが、やはり信頼保護との兼ね合いで、多分法的には法治国家原理との兼ね合いなどで、全くフリーハンドではないと思いますので、既裁定者に準じた考慮は必要なのではないかと思います。
 以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 山口委員、どうぞ。
○山口委員 今、米澤先生がおっしゃったことと関連しますが、高所得者の年金額の減額というのは、インセンティブを阻害しないという面からも、保険料財源のところまで踏み込んでこれが行われることがないように、あくまでも税財源の国庫負担の範囲に限定して考えるということが前提ではないかと思います。
 その中では、先ほどの低所得者への加算の財源の調整的な意味合いもあるとするならば、減額の対象としては新規裁定者だけでは、なかなかすぐに意味のある財源額にはならないものと思います。ですから、既裁定受給者についてもこの高所得者年金減額の対象とすることでよろしいかと思いますが、そうなると先ほど来、出ている財産権の侵害の問題が生じることになるわけです。ただ、これにつきましては、既に公的年金においては2004年改正でマクロ経済スライドが導入をされ、減額規定が織り込まれているわけです。これは名目の年金額は維持するのですが、実質の年金額は減額していくという話です。ですから、実質的な意味での年金減額については、既にもう法律で定めて一歩踏み出しているんだという認識が必要だと思っています。
ただし、このマクロ経済スライドというのは、すべての受給者が対象になっています。したがって、先ほど来出ているような財産権の侵害に関する解釈でも、すべての受給者ということで公共の福祉に適合するという考え方が、割合わかりやすい概念として理解されるわけです。しかし、今回の話は実は高所得者に限定したもので、仮に対象所得を1,000万以上とするならばそれら1,000万以上の人だけをねらい撃ちするような形でやることになりますので、従来以上にこの減額については慎重な考え方が必要ではないかと思います。
そういう意味でも、森戸先生がおっしゃったように、私もどちらかと言えば、年金制度の中であえてこういう難しいことをやるよりは、どちらかと言えば税の方で公的年金控除について770万円以上のところの課税を強化するといったことで調整して、大体、実質的に同様の効果が上がる方向での検討の方がわかりやすいし、真正面からの憲法問題など余り大きな議論もしなくても済むのではないかと感じております。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 逢見委員、どうぞ。
○逢見委員 年金課税の議論は全く捨て去ったということではなくて、これはこれできちんと議論をする必要があると思います。また、憲法上の財産権の問題は憲法論として、高所得者の年金額の調整は憲法違反にならないという範囲で、どういう方法があるかは考える必要があると思います。その上で、基礎年金には保険料だけではなくて、税が投入されていますが、その基礎年金に投入された税をどのように配分するかというのは、年金の問題として、政策論として考えるところがあると思います。そのときに税財源を受給者に一律に付けるのではなくて、低所得者により厚く充て、その分、財源の制約もありますから、高所得者には少し薄くするということもあると考えます。今回の議論の中で考えれば、低所得者への基礎年金配分を厚くするということとセットで、高所得者の年金額を調整するということはあるだろうと思います。
 そう考えると、既裁定者についても減額の対象にするということは、ある意味では筋が通る議論になるのではないかと思います。勿論これは公共の福祉という観点の中で、財産権を侵害するものではないという判断の下でやらなければいけないわけですけれども、そういった意味では既裁定者を対象とする高所得者の年金額の調整を考える必要があります。その際にどの程度の所得から年金額を調整するかというのは、今の議論が少し整理された上で、余りにも大きな影響を被るような形ではない形で、スタートするということなのだろうと思います。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 今、逢見委員がおっしゃったこととエッセンスの部分は同じです。ただ、先ほども議論がありましたように、保険料に伴う給付までがこれは権利制が強いわけですから、手が付けられるようなことのないようにいなければいけない。これは先生も危惧されているのではないかと思います。
 先ほど紹介があった8ページの話になるわけですが、結局基礎年金の国庫負担分は保険料拠出に伴った発生した部分なのかどうかなのかというところで、これは基礎年金という仕組みそのものが非常にあいまいな性格があるのではないかと。つまり国民年金という加入と保険料の形態、保険料負担を実際にしているわけですけれども、給付の際には基礎年金という形で変換されていると。その際に国庫負担分が入ってきているということだと思います。やはりこれは保険料負担分はもう明らかに個人の拠出に伴う権利ですけれども、国庫負担分については政策でどこに重点化するとは、政策的な判断の余地があるのではないかと思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。武田委員、どうぞ。
○武田委員 本日の議論について、まとめて意見を3点述べさせていただきます。
 まず1点目は、先ほど何度か出ました制度設計についてです。これまでも随分議論してきたわけですが、皆様の御意見を伺っており、やはりトータルビジョンが必要であると改めて思います。年金の役割、税の役割、そして番号制度との関連です。これらを総合的に体系立てて、いつ何をするか期間を設けて進めていく全体像がないと、さまざまな制度設計の面で不都合が発生すると思います。
 消費税増税をひかえ逆進性対策などの議論が今後もし検討されるのであれば、それとの関係も整理する必要が出てくると思います。また、番号制度について、事務局の方から御説明をいただいた資料によりますと、情報連携基盤の運用開始については、2016年1月から国の機関間の連携が開始するとございます。低所得者加算も高所得者層の年金調整も、きちんとした所得情報が必要ですので、番号制度とそれまでの移行期間とその事務コストをどう考えるかという視点も重要だと思います。
 低所得者加算は財源として0.6兆円とされていますが、2段階に分けて、所得情報を収集する体制整備を準備するとなると、別途事務コストが発生します。今後行われるであろう税制抜本改革の方向性、更には番号制度の整備などを踏まえて、政府として最も効率的な方法を模索していく必要があり、トータルビジョンのもとで制度設計を進めていくべきではないかと改めて感じました。
 2点目は、低所得者加算と高所得者年金調整をどう行っていくかという点です。実施するということであれば、低所得者に重点化し未納期間には加算しないということ、また、税財源が限られる中で低所得者加算を行うのであれば、この分、高所得者の年金調整は行わざるを得ないと思います。そして、この年金調整は世代間の公平性の観点から現在の受給者にも適応すべきです。
3点目は、冒頭に事務局の方から御説明をいただいたとおり、基礎年金の国庫負担について、24年度の1/2の差額分の13.5%分は交付国債発行という形で対応することが決定されています。今後の税制改革によって財源を確保することが前提にあると認識していますが、少なくとも現時点では借金で年金の財源を賄う形になります。安定財源として税制抜本改革の必要性をこの年金部会においても改めて認識していく必要があると考えます。
以上です。
○神野部会長 駒村委員は退席されるので、今、全体的な意見が出たので、何かおっしゃって退席されたいことがあれば。
○駒村委員 今日の議論でも皆さんがおっしゃったことでありますけれども、根本的な部分が非常にあいまいになっているのは、そのとおりだと思います。一方、限られ回数の中で政府から出された内容があるわけです。本来は政府の方で税財源の使い方、すなわち最低保障年金といったものをもう少しきちんと詰めた議論もやっていただきたいと思いますが、現在、我々が当面期待されている議論というのは、一体改革の部分にあるわけでしたので、私はかなり限定的にコメントをさせていただきました。ありがとうございました。
○神野部会長 それでは、あとはよろしいでしょうか。
○山本委員(代理:佐藤) 高所得者加算の減額のところで申し上げたいと思います。いろいろな方からお話がありましたけれども、低所得者への加算と高所得者の給付の減額はセットで検討して行うべきだと思います。去年の夏の成案の時点では、一定の条件を置いて、低所得者の方への加算のところで6,000億円の支出増で、高所得者の方の分の減額で450億円の支出減ということですが、非常にアンバランスだと思いますし、低所得者の加算のところで申し上げましたけれども、加算による支出増全体を減らすことと、減額の規模をもう少し大きくするということを併せて検討するべきだと思います。
 冒頭の梶尾課長からの御説明の中で触れていただきましたけれども、社会保障国民会議のときに年収600万円から始めた試算も出ていますので、「年収1,000万円以上で減額」ありきではなくて、600万円、あるいは600万円と1,000万円の間の額から減額することもあり得るかもしれませんが、より対象を広げた形で、低所得者への加算とバランスを取ることについても検討するべきだと思います。
 その上で1点事務局に確認をさせていただきたいのですが、御説明の中で4ページの下のところで所得をどう見るのか、経費を勘案して、ということでお話があり、6ページで新規に受給される方、既に受給されている方という観点で対象をどうするのかというお話がありました。こういったお話と、成案の段階で、高所得の方の年金の減額で450億円程度の支出減という規模が出ていましたけれども、それらの関係はどういうふうになるのでしょうか。例えば後者で言えば、450億円減の試算の段階では、新規に受け取られる方か、既に受け取られている方か、この辺はどういう前提で計算されているのかを教えていただければと思います。
○神野部会長 いいですか。
○梶尾年金課長 450億の算定の際には、現在の高齢者、現在年金をもらっている方も含めて、この1,000万以上に該当する人が何人いるかというのを前提につくってありますので、既裁定者も減額をするという前提での数字をつくっております。
4ページの下の○の話は、試算は現在存在する統計、老齢年金基礎受給者実態調査の統計は収入でつくっていくので1,000万、1,100万でやっております。450億という数字の前提は、統計で収入1,000万と1,500万というのを使っております。実際の制度設計をするときには、収入ベースではなくて、所得ベースで表現をするということで、いかがでしょうかという論点であって、試算の前提は収入でやっております。
○神野部会長 どうぞ。
○山本委員(代理:佐藤) しつこくて申し訳ありません。今の関係で言うと、選択肢が示されていましたけれども、例えば新規裁定の方のみということになると、450億円という規模が更に減るということになるのでしょうか。
○梶尾年金課長 これは要するに新規裁定だけに限れば、初年度のころはすごく少ないと何年か経ちますと、この数字はなるということで、制度成熟時と最初の始まった時期、下敷きで時期で若干ずれが生じるということで理解をいただけばと思います。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 まだ1つ、アジェンダを残しておりますので、今のテーマにつきましては、事務局の方で御意見を踏まえて、適切に対応をしていただくということをお願いして、最後のアジェンダについて、御説明をいただけませんか。
○梶尾年金課長 それでは、資料3「遺族基礎年金について」ということで、資料を簡単に御説明いたします。
 1ページ、一体改革の素案には、遺族基礎年金については、母子家庭には支給される一方で、父子家庭には支給されないという男女差を改善すべきということと、支給要件の判定基準を適正化すべきなどの指摘があることにかんがみ、具体的な法的措置について検討するということになっております。
年金部会の議論の整理は抜粋をしたもので、遺族年金の男女差について、基本的には解消する方向で検討を進めるというようなこと。ただし、850万という生計維持要件の関係につきまして、議論があったというようなことを記載してございます。
2ページ「現行制度における遺族年金制度の支給対象者」についてで、これは以前も御説明したものですので、繰り返しはしませんけれども、子のある妻のケースと子のある夫のケースで支給範囲が大分大きく違うという点がございます。
3ページ、遺族年金の生計維持要件に関する資料ということで、昭和60年の改正で年収600万、今は850万以上ですけれども、年収850万以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者は、亡くなった方に生計維持されたという判断をするということで、遺族年金というのは2ページの冒頭にありますけれども、世帯の生計の担い手が死亡した場合に、その者によって生計を維持されていた遺族に対する所得保障の仕組みということで、生計維持されていたかどうかという判断において、残った方が御自身で850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められるのであれば、生計を維持されてきたとは当たらないだろうという判断をしているということです。
これは考え方のところにありますように、権利発生要件という保険事故発生時に受給権が発生するかどうかを判断するというものですから、通常の所得制限のように、ある年は支給される、ある年は支給されないという毎年毎年の判断ではなくて、なくなった当時に生計維持されたかどうかを判断するという性格の権利発生要件としての基準としてなっているということで、社会通念上著しく高い収入があるというようなことで、被用者年金の上限10%に当たる年収ということで当時は設定をしたということで、現在は850万となっている。
この認定については、遺族年金の裁定の請求の際に、現状850万以下ですという添付資料を付けてもらって判断する。ただ、前年は850万を超えるけれども、近いうちに減る見込みだということであれば、そのことを言っていただいて、将来にわたって有するとは認められないということで、生計維持を認定するという形になっているところでございます。
この議論につきましては、遺族基礎年金の父子家庭の支給の男女差の解消については、基本的には解消するという方向で御議論をいただいておりますけれども、4ページは確認的なことになりますけれども、遺族基礎年金の支給対象に「子のある夫」を追加するかどうかということで、その際に父子家庭に支給対象を拡大するとしても、現在、被扶養者で3号被保険者が亡くなった場合に、子のある夫の方が将来わたって850万以上を有すると認められないということであれば、生計を維持されていたと認定される形に、現在の仕組みはそのままだとそうなるのですが、被扶養者の方がなくなった場合に、その2号被保険者だった方の方に遺族基礎年金が発生するということでいいのかどうかは、論点としての支給要件の判定基準の適正化ということの関係で、整理をしていく必要があるだろうと思っております。
5ページ、現在、年収850万円というのが被用者年金の被保険者の上位10%ということですけれども、この基準の引き下げをするのかどうかということですが、この基準というのが先ほど申し上げましたように、権利発生要件ということであるということを考えたときに、現状、女性が残った場合に関して言うと、ほとんどの範囲の妻に対して遺族基礎年金が支給されているという実態であるということではあります。父子家庭にも拡大する際に、そこをどう考えるか。
この基準の中の意味合いも含めて、どう考えていくのかということで、これは生計維持要件、先ほどの3号の話も含めて、支給要件、生計維持要件の判定の適正化は必要だという議論は民主党の方でもありましたし、この部会でもあったと思っております。その上でどう考えるか。ただし、生計維持要件の判断基準に男女差を設けるというのは、よくないのだろうとは考えておるということを前提に、御議論をいただければと思っております。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 第3番目の検討議題として御説明いただきました。遺族基礎年金について、御意見をちょうだいできればと思いますが、いかがでございますか。
 菊池委員、どうぞ。
○菊池委員 この850万円については、以前、私も発言させていただき、高過ぎるのではないかという意見を述べさせていただきました。理由としては、1つは法律の文言です。被保険者が死亡したときに、その者により生計を維持されていた者と法律上の文言に書いてあるということで、明らかに850万が生計維持されていた者の基準であるというのはおかしい。これは恐らく給付行政の領域だと、従来の公的年金はもっぱら受給者側にメリットがある話なので、緩やかな適用でいいということだったと思いますけれども、先ほどのアジェンダもそうですが、常に給付は財源との兼ね合いで考えなければいけないんだという要請が現在あって、適用については適正に考えていかざるを得ないという時代状況ではないかと思います。
 以前少し述べさせていただいたかもしれませんが、裁判所もやや文脈が違う話ですが、年金受給利益に逸失利益性があるかどうかという文脈の中で、障害年金については拠出と給付に牽連性があるというのを一つの逸失利益性を認める判断の材料としていますし、遺族年金については拠出と給付の関係、牽連性が間接的であるということで、逸失利益性を否定するという判断材料の一つにしていますので、これも一つの根拠になるのではないか。
 制度全体のバランスを考えても、先ほど出た高所得者のまさに自分の拠出に対する給付である老齢基礎年金を減額するという制度を入れるのであれば、そしてそれが例えば1,000万円という基準であるならば、片や拠出と給付の関係が間接的である遺族基礎年金において、850万という基準でその後、受給者が幾ら所得があろうとも給付し続けるというのは、制度的なバランスを欠いているということになるのではないかということです。
 確かにその時点で所得があっても、その後に所得がなくなってしまうかもしれないというおそれは当然ありますけれども、それはその後のその方の所得保障ニーズととらえて、その時点でまたは社会保障制度上、対応をしていけばいいと考えざるを得ないと思いますので、以上から、では基準額を幾らにすればいいのかという名案はありませんけれども、検討していただきたいということです。第3号の方々となった場合についても、先ほどの拠出と給付との関連性という辺りが一つのヒントになるのかもしれないと思います。
 以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
○山口委員 今、菊池先生からお話があった中でも出ていましたが、まさに第3号の取扱いで事務局が書いていらっしゃることが、この850万円の水準の高さを事務局自身が認めている話だと思うんです。要するに扶養者が850万以下で800万円くらいで、第3号の奥様が亡くなられたときには、今までと何も変わらないのだから、生計はその人が支えていたんだから、遺族年金は出さないよという話だと思います。
 この遺族年金の男女差をなくすということになれば、自動的にこの850万円の水準の高さというのは、是正せざるを得ないということにあると思います。それが幾らくらいだったらいいのかということですが、今の報酬月額の上位10%というのではなくて、例えば平均的な報酬月額、中位水準といいますか。平均額的な水準くらいの収入が継続的に見込めるとかいったようにする方が社会通念として、認められやすい概念に近づくのではないかと私などは考えております。
 以上でございます。
○神野部会長 どうぞ。
○花井委員 以前、部会でも発言させていただきましたが、まず4ページに記載のある、遺族基礎年金の支給対象については、「子のある妻」だけではなく、「子のある夫」を追加すべきです。
 次に3号被保険者が死亡した際の遺族基礎年金の問題についてです。これは、3号被保険者が亡くなられたとしても、遺族となる子どもの生計は第2号被保険者で成り立っていると考えられるので、3号被保険者が亡くなった場合に、その遺族に遺族基礎年金を支給する必要性はあまりないのではないかと考えます。
 また、5ページにある遺族年金の生計維持要件850万円については、今、他の委員から、この金額自体が高いのではないかというお話が出ており、幾らにするかというのはあるかと思います。加えて、生計を維持していたと考えられる者が死亡した際の1回限りの判定で遺族年金が出るか出ないかが将来にわたって決まってしまうというのは、遺族となる子どもの生計維持という遺族年金の性格からしてどうかというのがあります。したがいまして、850万円の水準は検討課題としましても、毎年の収入に応じて段階的に年金額を調整する仕組みを導入することも併せて必要ではないだろうかと思います。
 最後に、今回のここには書かれていないのですが、遺族厚生年金については、子のない夫は55歳以上である場合のみしか受給できない仕組みとなっています。妻の場合は何歳でも遺族厚生年金は支給されるのですが、これも男女差という観点からどうかと考えておりますので、制度的に見直すべきではないかと思います。
それを踏まえまして、今回の議題のテーマ自体が遺族基礎年金となっています。できましたら、遺族年金としていただいて、先ほどの子のない夫の遺族厚生年金の見直しも行っていただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
 どうぞ。
○小室委員 私から1点だけですけれども、今回この見直しがなぜ必要かという前提に、男女差を解消すべきというのがあるのですが、それ以前にというか、その者により生計を維持されていたかどうかというような判断自体が、現在はだれか一人の生計で家計を維持するという状態になくなってきていますので、妻も家計を維持する。ただ、その者一人が維持するという形ではなくて、双方で維持するという形になっているのでというような形での変更が必要なのではないかというような視点を入れるべきではないかと思います。なので、父子家庭にも必要なのではないかというような見直しの根拠が必要ではないかと思います。
 以上です。
○神野部会長 ほかにいかがでしょうか。
諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 今の小室委員の発言と同じですけれども、そもそも遺族基礎年金は母子年金が遺族基礎年金になりましたから、母あるいは子どもという限定があったわけですけれども、実際の状況が変わってきているということなので、夫に対する部分は入れるべきだと思います。
 4ページの3号の部分については、皆さんと同じような意見で、条文上も1号または2号と書かれておりますし、2号に扶養されるという前提がありますので、これについては支給しないこととするという点はいいかなと思います。
 ただ、先ほどからの認定時の時点で数年見るべきではないかということですが、実務上これは非常に困難ではないかと私は考えております。近い将来、5年内で下がった場合ということでありますが、もし仮にそれを認めてしまうと、その時点では高額だけれども、その後にわざと金額を少なくする。そういう申告をしてくる場合もありますので、それについては非常に難しいかなと思っています。所得の把握も先ほどから出ていますように、非常に難しい状態ですから、やはり生計維持関係については死亡時の認定で行い、5年以内に明らかに所得が下がる場合の運用がありますので、その範囲でやるべきではないかと思います。
 以上です。
○神野部会長 あとはいかがですか。どうぞ。
○梶尾年金課長 ありがとうございました。今回このテーマについて、緊急に御議論をお願いしているというのが、もともとさまざまな制度改革の要望等があって、この遺族年金の話も御紹介をしたわけですが、この資料の1ページにもありますように、遺族基礎年金については母子家庭には支給される一方で、父子家庭には支給されないという男女差を解消すべきというのが与党での議論の中で強くあって、それで政府与党の検討素案の中にこれが盛り込まれたということです。
これにつきましては、もしまとまれば、もともと夏の段階の成案にはこの項目はなかったわけですが、一定の議論が整理できるのであれば、遺族基礎年金についての男女差の解消、父子家庭にも支給ということを入れられないかというようなことで、御議論をお願いしているということです。
何を申し上げたいかというと、遺族年金の男女差全体の解消ということは、以前よりも論点としてはあるわけですけれども、そうした場合に例えば国民年金の寡婦年金とか、厚生年金の中高齢の寡婦加算とか、いろいろと遺族年金制度の中に男女差があって、それを男性に出すのか、あるいは女性の方をやめるのか。現在の賃金水準の問題とかがある中で、そういうことまで考えると、大事な話ではありますが、今回お願いしているのは遺族基礎年金を父子家庭に支給するということに、とりあえずは限定させていただければという形で、そういう趣旨でこういうテーマ設定をさせていただいています。
遺族年金の男女差の問題というのは、全体があるというのは御指摘のとおりでありますけれども、そういう整理ということでお願いできればと思っております。
○神野部会長 あとはいかがでございましょうか。
 申し訳ありません。短い時間にもかかわらず、積極的に御議論をいただきましたことを感謝申し上げます。
更に、私の説明がまずかったのかもしれませんが、私どもが議論をしてまいりましたビジョンがよくわからないという御議論をいつもいただくわけですけれども、そもそもビジョンが出て、それをもう少し精緻にしていくという作業は別途行われていて、ここでは現行制度の改善で、かつ喫緊の課題をそれぞれ追いかけていますので、今回については、今の状況ですと3月末までに法案化する予算非関連法案関係のアジェンダについて御議論をちょうだいいたしましたので、御議論をいただいたように、根底的な問題にまで触れなくてはいけない問題は幾らでもあるかと思います。所得の問題もそうですし、それにも増して、そもそも同じ所得で同じ経済力があるのか。
もう一つは、これはニコラス・アルドアが言っている大富豪が財産を取り崩して生活をしていれば、所得はマイナスなんです。マイナスにもかかわらず、マハラジャのような生活をしているような人間が税金を全く納めないどころか、給付をもらっていいのか。そういう大きな問題にまで関わってくるので、なかなか難しいので、私たちはいつも現実との進行との追いかけっこになってしまいますから、どうしてもビジョン的な改革と問題解決的に対応する改革を横でにらみながら進めていくしかないかなと思っております。皆様に少し御迷惑をおかけしたことをおわびしつつ、今回はこれで閉じたいと思います。
事務局の方から、連絡事項がございましたら。
○梶尾課長 ありがとうございました。
 次回の開催日時、場所につきましては、また改めて御連絡を申し上げたいと思います。
○神野部会長 それでは、大変お寒い中をお集まりいただきまして、感謝いたします。
これで今回の委員会は終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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