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2011年3月2日 平成23年3月2日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会議事録

医薬食品局

○日時

平成23年3月2日(水)


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(19名):五十音順 敬省略

○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 石 井 明 子、◎笠 貫   宏、

 川 上 正 舒、 木 村   剛、  齋 藤 知 行、 塩 川 芳 昭、

 正 田 良 介、 鈴 木 邦 彦、   高 橋 好 文、 武 谷 雄 二、

 千 葉 敏 雄、 寺 崎 浩 子、  中 谷 武 嗣、 西 田 幸 二、

 松 岡 厚 子、 村 上 輝 夫、  桃 井 保 子

(注) ◎部会長 ○部会長代理

 他参考人3名

欠席委員(1名):五十音順 敬省略

倉 根 一 郎

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 関 野 秀 人 (医療機器審査管理室長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 丸 山   浩 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

 重 藤 和 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○医療機器審査管理室長 厚生労働省医療機器審査管理室の関野です。本日も、よろしくお願いします。定刻を過ぎましたので、これより医療機器・体外診断薬部会を開会いたします。委員の先生方におかれましては、御多忙の中御出席いただきありがとうございます。
 まず初めに、本年1月24日付で薬事・食品衛生審議会の委員の改選が行われ、本部会の委員に関しても、新たに8名の委員に御参画いただくなど、改めて各先生方の委員としての任命をさせていただいているところです。つきましては、まず私の方から、お手元にお配りしています委員名簿に沿ってお名前を御紹介させていただきます。資料の一番上に議事次第がのっていると思いますが、その裏側に委員名簿が印刷されていますので、そちらを御覧ください。50音順で御紹介します。独立行政法人国立がん研究センター中央病院副医院長、荒井保明先生。東京大学医学部准教授・医学部附属病院臨床試験部副部長、荒川義弘先生。国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部第二室長、石井明子先生。早稲田大学理工学術院教授、笠貫宏先生。自治医科大学附属さいたま医療センターセンター長、川上正舒先生。京都大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科学教授、木村剛先生。名簿では次に倉根先生が書かれていますが、本日は御欠席です。横浜市立大学大学院医学研究科教授、齋藤知行先生。杏林大学大学院医学研究科教授、塩川芳昭先生。独立行政法人国立病院機構東埼玉病院副医院長、正田良介先生。社団法人日本医師会常任理事、鈴木邦彦先生。愛知学院大学歯学部歯科理工学講座准教授、?橋好文先生。国立大学法人東京大学医学部産婦人科学教室主任教授、武谷雄二先生。(独)国立成育医療研究センター臨床研究センター副センター長・医療機器開発室長、千葉敏雄先生。名古屋大学大学院医学研究科教授、寺崎浩子先生。独立行政法人国立循環器病研究センター移植部・栄養管理部部長、中谷武嗣先生。大阪大学大学院医学系研究科教授脳神経感覚器外科学(眼科学)、西田幸二先生。国立医薬品食品衛生研究所医療機器部長、松岡厚子先生。九州大学大学院工学研究院機械工学部門教授、村上輝夫先生。鶴見大学歯学部第一歯科保存学教室教授、桃井保子先生。以上で御紹介を終わります。先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、本部会の部会長については、1月24日に開催されました薬事分科会において、笠貫宏委員が選出されていることを御報告させていただきます。
 次に部会長代理についてですが、薬事・食品衛生審議会令の規定に基づいて、部会長が指名することとなっておりますので、部会長、御指名のほどよろしくお願いします。
○笠貫部会長 前期に引き続きまして、部会長に選出いただきました。是非この部会で、国民にとって大事な審議事項について慎重に検討し、的確な判断をしていきたいと思っています。皆さん御協力のほどよろしくお願いします。それでは、今お話がありましたように、部会長代理として荒井保明委員にお願いしたいと思います。
○荒井部会長代理 国立がん研究センターの荒井です。十分なことができるかどうか甚だ疑問ですが、先生方のお力添えをいただきながら、今の笠貫部会長の御指示の下、その方向に乗っ取っていい機器、あるいは医療につながるような判断をしていくことに尽力したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
○医療機器審査管理室長 荒井先生、引き続きよろしくお願いします。部会長代理席にお移りください。次に、委員の出欠状況について御報告します。本日は、医療機器・体外診断薬部会の委員20名のうち、現在18名の先生に御出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしていることを御報告します。後ほど、松岡委員が遅れてこられる予定です。
 続いて、本日の議題の公開・非公開の取扱いについてですが、薬事・食品衛生審議会の決議に基づいて、議題1に関しては、既に傍聴の方が部屋に入っていますが、会議を公開で行うこととし、議題2以降に関しては、医療機器の承認審査に関する議題で、企業情報に関する内容等が含まれるため、非公開とさせていただきます。
 それでは、これより議事に入ります。傍聴の方におかれましては、カメラ撮り(頭撮り)に関してはここまでとさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いします。以後の進行について、笠貫部会長よろしくお願いします。
○笠貫部会長 それでは、最初に事務局の方から配付資料の確認をお願いします。
○医療機器審査管理室長 配付資料がお手元にたくさん積んでありますが、基本的に議題1から順番に上に積み上げていますので、その都度の議題に関してお手元に資料を御用意いただければと思います。なお、我々の方の説明が議題に応じてありますので、その際はどの資料を使うかを、私どもの方からなるべく明確に申し上げ、その資料をお手元に御用意いただくという形にさせていただきます。その際、資料に不足等ありましたら、その場で挙手等によりお申し出いただければ、お手元に届けさせていただきますので、よろしくお願いします。
○笠貫部会長 資料はお揃いでしょうか。もし足りないものがありましたら、今の時点でお申し出いただきたいと思います。それでは、議題に入ります。議題1「医療機器の認証基準案について」、事務局から御説明をお願いします。
○事務局 資料については、右上に資料1と書いてあるもの、それと参考資料1-1、参考資料1-2、参考資料1-3の四つの資料に基づいて御説明させていただきます。
 まず、医療機器の認証基準に関して、簡単におさらいをさせていただきます。参考資料1-2「医療機器の認証基準に関する基本的考え方について」を御覧ください。医療機器の認証基準とは何かをお話させていただきます。医療機器の認証基準については、平成17年4月に薬事法が改正されて、人体へのリスクが比較的低いと考えられる管理医療機器については、これまで承認制度でありましたが、平成17年4月より登録認証機関、いわゆる第三者認証機関の認証を受けることによって、製造販売ができる制度に変わったところです。大臣が基準を定めて、登録認証機関が認証して世の中に製造販売をしていくことになっていますが、その認証基準の項目としては、その医療機器の名称、それと技術基準として我が国では日本工業規格、即ちJISがありますので、そちらを指定すると。それと、その医療機器の使用目的、効能又は効果を指定して、これを認証基準としています。
 その認証基準に加えて、法の第41条第3項に基本要件、いわゆる医療機器の製造販売業者がきちんと守らなければいけない基準があるので、それへの適合を確認するために、チェックリストを準備しているものです。1ページの一番下に参考として、昨年9月27日現在の認証基準の数を書いていますが、今は568基準、一般的名称にして1,036品目が認証の制度に載っています。
 裏ページには、「医療機器に係るカテゴリー」ということで、今回の認証となるものは国際分類では、クラスIIの医療機器です。この横表の右の方に目を向けていただきたいのですが、登録認証機関による認証があります。ちょうどクラスIIの下から大体4分の3ぐらいの所で線が切れています。これはどういうことかと申しますと、先ほど申し上げたように、認証基準ができているものについては、登録認証機関による認証が行われていること。まだできていないものについては、大臣による承認が現在も行われています。現在、4分の3のところにきていますが、これを一番下のクラスIIIの上の線に合わせるということで、認証基準をできるだけ作っていくということで、私どもも進めているところです。
 それについては、本題に入る前に大変恐縮ですが、参考資料1-1を御覧ください。先ほどの参考資料1-2の横表と比べて御覧いただければと思います。「完全認証移行に向けた認証基準策定のための考え方」ということで、整理しています。先ほど申し上げましたように、クラスIIの医療機器をできるだけ認証にもっていくことで、現在完全認証移行に向けた認証基準の策定を順次進めているところです。この参考資料1-1の一番上に「目標」がありますが、「全ての管理医療機器について認証基準を策定することを目標とする」と。「併せて既に策定された認証基準についても適正に認証が行われるよう必要な見直しを行う」ということで、完全認証移行に向けた取組みを国で行っているものです。
 この中で、全ての管理医療機器と申し上げても、例えば認証基準と申しますのは、既存の医療機器を基に基準を作るもので、例えば新医療機器や再審査期間中の医療機器、それらも全てではないことを併せて申し上げます。このような基本的な考え方に基づいて、現在国で認証基準を順次策定しているところです。
 裏の紙を御覧ください。カラーで印刷された「クラスII品目の第三者認証制度への完全移行工程表」を準備しています。この工程表を作るに至っては、医機連、医療機器の業界の皆様方の御協力を得まして、官民共同で今後認証基準を随時作成していこうということで、作りました工程表です。先ほど目標ということで、新しい認証基準を作るということと、既に作ったものについても順次見直しを行っていくということで、目標を申し上げました。上のステージですが、これが新たな認証基準の策定のステージです。これを、平成23年度末までに、即ち平成24年3月までに遂行することで、四つのステージに分けまして、現在検討しているところです。
 1番目のステージで、昨年9月27日に認証基準を120品目、基準数にして81基準を策定したところです。本日先生方に御報告させていただくのは、ちょうど第2弾と書いているところで、品目数にしては238品目、187の基準を御紹介させていただきます。今後も、第3弾、第4弾ということで、平成24年3月までに完全認証移行を進めていくものです。
 一方下の段ですが、現行の認証基準の見直しについても、順次行っているところです。この工程表の赤い線で縦に引いているところが、現在の状況を示していると御理解いただければと思います。ちょっと前振りが長くなりましたが、このような形で本日の資料1医療機器の認証基準案について、御説明をさせていただきます。先ほど申し上げましたように、この資料1に掲載されている認証基準案ですが、238品目、187の基準がありますので、本日は掻い摘んでどのような基準があるのかを御説明させていただきます。
 何枚かめくっていただきますと、1ページが出てくると思いますが、1「核医学診断用リング型SPECT装置認証基準(案)」です。この中で、黒く太く囲ってある部分が、いわゆる認証基準で、厚生労働大臣の基準として告示される部分です。例えば、1番の装置で申しますと、一般的名称「核医学診断用リング型SPECT装置」が、告示に掲載されます。そして技術基準では、もう少し下の方に引用JISとして「JIST 0601-1」が指定されます。そのすぐ下ですが、「使用目的、効能又は効果」として、この装置については「体内における放射性同位元素の分布をガンマ線検出器を用いて体外から検出した画像情報を診療のために提供すること(CTによる画像情報を診療のために提供することは除く。)」ということで、使用目的、効能又は効果が指定されるものです。
 同じような形で、238品目、187基準を指定させていただいています。途中で恐縮ですが、本日先生方のお手元に、158ページに転記ミスがありましたので、本日差替資料を御提示していることを併せて御報告させていただきます。事前にお送りさせていただいた資料から、若干文言が変わったところがあるので、これを158ページに差し替えていただきます。
 この資料1の225ページを御覧ください。認証基準の資料ですが、既に告示する前に広く皆様の御意見を聞くということで、パブリックコメントを実施しています。現在パブリックコメントをこのような形で進めていることで、参考に付けさせていただきました。医療機器の認証基準に関しては、今後このパブリックコメントの皆様方からの広い意見を聞いて、修正すべきところは修正し、最終的には先ほどの工程表にもあるように、本年の3月中に認証基準として公示したいと考えています。事務局からは以上です。
○笠貫部会長 どうもありがとうございます。御説明がありましたように、平成17年の改正薬事法でのデバイスラグの問題に対してだと思いますが、有効かつ安全な医療機器をより早期に認めるため、クラスIIまでは認証制度に移行することになり、先ほどの工程表を見ても、順調に進めているというお話だったと思います。本日は238品目、187基準については、既に皆様方のお手元にお届けしてコメントをいただいたと思います。ここで、特に御質問、御意見がありましたらお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。ただ今、このパブリックコメントも告示中だということですし、さらに前回基準を策定したものについては、基準改正の作業にも着手しているということで、何重にも、より良いものを作っていくことが確認されたと思います。特に委員の先生方から御意見がなければ、これで議題1を終了します。公開で行う議題は以上です。
○医療機器審査管理室長 ありがとうございました。以後の議題は非公開とさせていただきますので、傍聴の皆様におかれましては御退室のほどお願いいたします。それから、非公開で行う議題2以降の関係で、少し準備等がありますので、2、3分お時間をいただきます。再開は16時30分とさせていただきます。それでは、また後ほどよろしくお願いします。
- 中断 -
○医療機器審査管理室長 それでは予定の時間になりましたので、再開させていただきます。
 まず、非公開の議題に係る配付資料の確認です。先ほども申し上げましたが、資料は部厚いものあるいは薄いものも含めてあります。それぞれの議題に関して、事務局が御説明する際には、どの資料を御用意いただくかを予め申し上げますので、その都度該当資料を御用意いただきます。次の議題2に関しては、資料2-1、かなり部厚い資料、背表紙として「ノボリ」と入ったものを2分冊で用意しております。加えて、薄い2枚の資料ですが、資料2-2としてノボリに関しまして概略を示した資料があります。これが関連資料です。お手元にない場合、あるいは次の議題以降に関しても同じように資料を特定させていただきますので、不足等ありましたらその都度お申し出いただければと思います。
 各先生方には事前にお送りしました資料に基づきまして御意見をいただいております。それに関してはこの会議の場でも、予め送っていただいてはおりますが、御発言、御質問していただき、それに基づいて審議をさせていただきます。
 それではこの後の進行に関して、部会長、よろしくお願いします。
○笠貫部会長 資料は皆さんお揃いでしょうか。これから、非公開で行います議題に入らせていただきます。まず、本日の審議事項に関与された委員と利益相反に関する申し出状況について、事務局から御報告をお願いします。
○事務局 資料ですが、皆様の一番下の方の、資料8と参考資料8を御覧ください。資料8は「競合品目・競合企業リスト」、参考資料8は「薬事分科会審議参加規程」です。
 まず、参考資料8「薬事分科会審議参加規程」です。薬事分科会については医薬品・医療機器等の調査・審議を掌るところで、従前から薬事に関係する企業に役員や顧問で就任されている方は委員として任命しない、また、実際に出されてくる申請資料に関与されている方には審議に御参加いただくことを御遠慮いただくという取扱いをしておりましたが、平成19年4月から、企業から寄附金・契約金等の形でいただいている方についても、利益相反の関係から審議の透明性・中立性・公平性を期すという意味で、こちらの審議参加規程は平成20年12月に薬事分科会で決定され、平成21年1月から運用がされており、それについての御報告です。
 では、資料8を御覧ください。今回審議される品目に関係する競合する品目、競合する企業のリストです。まず、議題2のノボリ、テルモ株式会社に係る競合品目です。1~3までありまして、アボットバスキュラージャパンのXIENCE V 薬剤溶出ステント、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社のCypherステント、ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社のTAXUSエクスプレス2ステントが挙げられています。それぞれ競合品目を選定した理由として、直近の承認品目であり、販売量が多い、また、国内・海外での臨床試験の比較対照品目であるということでこれらが挙げられています。
 裏面になりますが、議題3のCochlear Bahaシステムについての競合品目・競合企業です。リオン株式会社の骨導メガネ式補聴器HE72シリーズ、株式会社ウィンベルの骨導補聴器WD2011、リオン株式会社の人工中耳(植込型補聴器)が挙げられています。こちらは一般的名称は同一ではないものの、性能として類似している機器を選定したことで、この3つが挙げられています。
 議題4です。株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングのジェイスですが、こちらは競合品目・競合企業はないと企業から御報告を受けています。
 こちらのリストを基に事前に委員の先生方に寄附金・契約金等の受取状況について御申告いただいたところ、薬事分科会の審議参加規程第12条にある「審議不参加の基準」、又はその第13条「議決不参加の基準」に基づき審議を御退出いただく委員はおりません。なお、議決に御参加いただけない委員は、議題2について木村委員となっています。以上御報告します。
○笠貫部会長 ありがとうございます。ただ今の事務局からの御説明を聞いて、特段の御意見はありませんでしょうか。よろしければ、議題2に入りたいと思います。
 議題2、医療機器「ノボリ」の製造販売承認の可否等について、審議を行います。本議題の審議に当たりましては、参考人として東京医科大学第2内科の主任教授でいらっしゃいます山科章先生に御出席いただいています。よろしくお願いします。
 まず審議品目の概要について、事務局より御説明をお願いします。
○事務局 審議品目の概要について、簡単にまず御説明させていただいた後、総合機構から審議品目の概要、審査の要点について御説明させていただきます。
 まず、資料2-1です。諮問書が1ページ目にあります。医療機器「ノボリ」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否等について御意見を求めているものです。右肩に「審査報告書」とタグがありますが、その審査報告書の2ページを御覧ください。こちらは審査結果の概要がコンパクトにまとめてあります。類別が「機械器具7、内臓機能代用器」、一般的名称は「冠動脈ステント」、販売名が「ノボリ」、申請者は「テルモ株式会社」です。2ページ目の一番下にありますが、使用目的は「対照血管径が2.5mm~3.5mmの範囲にあり、新規の冠動脈病変(病変長30mm以下)を有する症候性虚血性心疾患患者の治療」という形になっておりまして、3ページに承認条件が3つ挙げられています。いわゆるDrug Eluting Stent、DESです。審議品目の概要、審査の要点は総合機構からよろしくお願いします。
○機構 資料2-1を御覧ください。総合機構での審査に当たり、こちらのスライドに示しています御覧の専門委員の御意見を頂戴しました。審査報告書4、5ページに示す本品目の概要について御説明申し上げます。本品は症候性虚血性心疾患を有する患者に経皮的冠動脈ステント留置術を実施する際、血管内腔の確保を目的に病変部に挿入して使用するステントと、病変部に到達させるために使用するデリバリーカテーテルから構成されるステントシステムであり、初めての国産の薬剤溶出型ステントです。以下、薬剤溶出型ステントに関しては「DES」と略させていただきます。なお、本品は初の国産DESではあるものの、DESとしては本邦において既に4社8品目が承認を取得し、臨床使用されていますが、本品においてコーティング薬剤にバイオリムスA9が採用されている点において新規性を有しています。
 本品の構成について御説明します。スライドを御覧ください。本品のステント部は既承認のbare metal stentである□□□□□□□□□□□の「□□□□□□□□□□□□□□□□」を改良したステントをプラットフォームに用い、ステントスラット表面にはベースコートが施されています。さらに、新生内膜増殖を局所的に抑制する目的で免疫抑制作用を有するバイオリムスA9が生体吸収性のポリマーであるポリDL乳酸とともにステントが血管壁に接触する面にのみコーティングされています。なお、バイオリムスA9は本邦及び海外において医薬品としての承認はありません。
 審査報告書7、8ページに示します、本品目の外国における使用状況及び本品もしくは類似した医療機器における不具合発生状況について御説明申し上げます。本品は2008年に欧州でCEマークを取得し、2010年12月までに17か国で販売されていますが、米国では申請されていません。2010年12月までに15万本以上が販売され、0.08%の不具合及び有害事象が報告されており、本品に関連する又は関連する可能性を否定し得ない重篤な有害事象として、死亡及びステント血栓症が報告されています。コーティングされている薬剤に起因すると考えられる事象は今までのところ報告されていません。
 非臨床における論点について御説明申し上げます。審査報告書10ページ下段及び11ページを御覧ください。DESにおいてステントスラットの破断が臨床で報告され、問題視されています。本品においては土台ステントを用いて10年間の拍動に相当する4億回の拍動耐久性試験を実施し、ステントに損傷がないことが確認されました。また、重複留置時の耐久性については、先行開発品TRE-955を重複留置し、10年間の拍動に相当する4億回の拍動耐久性試験が実施されました。先行開発品TRE-955は、本品と比較しステントクラウン数が一つ少なくステント拡張時の歪みが大きいことから、本品を用いるよりも過酷な条件下でステントに損傷がないことが確認されました。以上の、本品単独留置及び先行開発品の重複留置時の10年間相当の拍動耐久性試験においてステントの損傷が認められなかったことから、ステント重複留置時を含めたステント破断のリスクは既承認品を上回るものではないと判断しました。
 報告書24ページ~32ページに示した、臨床試験について御説明申し上げます。本邦で国内比較試験が、欧州ではNOBORI 1 Studyが実施され、添付資料として提出されました。スライドを御覧ください。国内比較試験は冠動脈に対照血管径2.5mm以上3.5mm以下、病変長30mm以下の狭窄性の新規病変を有する虚血性心疾患患者を対象に、本品が194例、対照として既承認のDESであるCypherステントが132例に留置され、臨床的評価項目である術後9か月間のTVF非発生率を主要評価項目として本品とCypherステントの非劣性を検証しています。
 NOBORI 1 Studyは、病変長は5~25mmですが、国内比較試験とほぼ同様の患者を対象に、血管造影評価項目である術後9か月時のLate Lossを主要評価項目として、先発品と既承認品のDESであるTaxusステントの非劣性を検証する目的とした試験です。なお、NOBORI 1 Studyは当初TRE-932を用いて試験を実施していましたが、3例のステント脱落があったことから120例、TRE-932群として85例を導入した時点で試験を中断し、1st Phaseとしております。その後、デリバリーシステムを改善したTRE-955を用いて2nd Phaseを実施しています。国内比較試験では、主要評価項目である9か月間のTVF非発生率のCypherステントに対する非劣性が示され、術後8か月時のLate Loss及び術後9か月時のMACE発正率も、本品とCypherで同様の成績が得られています。NOBORI 1 StudyはTRE-932でステント脱落のため試験が中断され、2nd PhaseではTRE-955が用いられていること、対照機器のTAXUSでも1st PhaseではTAXUS Express2が用いられていたが、2nd PhaseではTAXUS Liberteに変更されており、1st Phaseでも一部TAXUS Liberteが用いられていることから、当初設定されていた検証仮説を明らかにする検証試験とは言い難く、ここでは先行開発品の成績のみ示しています。NOBORI 1 StudyのTVFとMACEの定義が国内比較試験での定義と異なっていたため、国内比較試験において採用した定義を用い、NOBORI 1 StudyのTVF及びMACEの再集計が行われていますが、いずれも国内比較試験の成績と同様でした。また、スライドには示していませんが、各試験において特異的な有害事象は認められず、ステント血栓症に関しても本品群で1例認められたのみであり、既存のDESと大きく異なるものではありませんでした。
 報告書32ページ~38ページに示した、臨床に関する審査における論点について御説明申し上げます。一つ目の論点は、症例数の少ないピボタル試験及び海外試験の成績から有効性及び安全性を担保することについてです。主に、審査報告書36ページを御覧ください。国内比較試験にて対照群に対する非劣性が示されましたが、非劣性限界値が□%と既承認のDESで実施された検証試験と比較して値が大きく、従来品と同程度の非劣性を示すためには症例数が十分とは言えないと考えます。しかしながら、これまで本邦で承認されたDESでは比較対照群を設定した国内臨床試験が実施されていないことを踏まえると、日本人患者における有効性及び安全性を評価するに当たり有益な情報が得られています。また、国内比較試験、NOBORI 1st Phase及びNOBORI 2nd Phaseの有効性に関する成績は、いずれも各対照群と同程度であること、臨床試験の対象患者に両試験において大きな隔たりがないこと、先行開発品と本品との間で結果として主要な有効性評価項目において差が認められなかったこと、試験成績に影響を及ぼす部分については少なくとも違いは認められないことを踏まえると、国内外の臨床試験間で試験成績に同等な傾向が認められており、本品において既承認品のDESと同程度の有効性が得られていることを示唆していると考えます。本来、ピボタル試験のみで有効性が評価できることが望ましいと考えますが、国内試験のみでは十分な症例数が得られず、症例数を確保するためには治験期間が長期化するおそれがあること等を斟酌すると、少し精度が劣るものの、日本人における有効性を直接検証した国内臨床試験をピボタル試験とし、海外臨床試験の成績も踏まえて本品の有効性を評価することは妥当と判断しました。
 本品の安全性に関しては、国内比較試験のみでは十分な症例数ではないことから、NOBORI 1 Studyの成績と合わせて評価する必要があると判断しました。加えて、報告書31ページに示すように、海外で実施された3,067例の大規模市販後臨床試験の1年成績が参考資料として提出されており、本品の安全性の検証における補足データとして評価し、本品の安全性は既存のDESに劣るものではないと判断しました。
 論点の二つ目は、本品の長期的な有効性及び安全性についてです。審査報告書37ページ下段を御覧ください。現時点において国内比較試験及びNOBORI 1 Studyの追跡調査で大きな安全性上の問題は認められておらず、既存のDESと比較し、本品に特有の事象は観察されていません。しかしながら、本品の長期的な有効性及び安全性についてより多くの症例を長期的に評価することが必要であると考え、承認条件1として、本品を用いて実施された国内比較試験及びNOBORI 1 Studyの長期成績に関する経年解析結果報告、及び承認条件2として、使用成績調査の経年解析結果報告を付すことが妥当と判断しました。また、現在得られている臨床成績から見て、本品のステント血栓症のリスクは既存のDESを上回るものではないと考えますが、血栓症の頻度は低く、より多くの症例で検討するべきものであることから、他のDESと同様に再審査期間中に発生したステント血栓症に関する報告を承認条件3として付すことが妥当と判断しました。
 三つ目の論点は、本品使用時の抗血小板療法についてです。審査報告書38ページ上段を御覧ください。国内比較試験では3か月間の2剤併用抗血小板療法がプロトコルに規定されていましたが、実際には96.3%の患者が6か月以上の2剤併用抗血小板療法を受けており、術後6か月未満で中止した場合の安全性は確認できていないことから、本品使用時の抗血小板療法として無期限のアスピリン投与に加え、少なくとも6か月のクロビドグレル硫酸塩又はチクロビジン塩酸塩の投与を推奨することが妥当と判断しました。
 以上の論点を踏まえ、総合機構は審査報告書40ページに記載した三つの承認条件を付した上で、御覧の使用目的にて本品を承認して差し支えないと判断しました。なお、本品は新性能医療機器であり、再審査期間は3年、生物由来製品及び特定生物由来製品には非該当と判断しました。以上です。よろしくお願いします。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは、参考人の山科先生から何か追加することがありますでしょうか。
○山科参考人 今御説明があったとおりですが、このステントの特徴は、先ほど絵にありましたけれど、血管側だけにバイオリムスを塗ってあって、内腔側には塗っていないのですね。内皮は早く張るということで、例えば1か月で、Cypherだと60何%ぐらいしか張っていないし、臨床例では2年ぐらい内膜に金属がむき出しということがあるのですが、本品の場合は内皮化が非常に促進されると思います。むき出しになる状態は少なくなるので、血栓症の発生は理論的には少ないだろうと。実際、臨床的にも増えてはいない。特に、数年経ってもVery Late Thrombosis、超遅発血栓症というものがCypherなど初代のステントでは問題になっているわけですが、そういうことが少ない可能性が非常に高い。
 もう一つ問題になるのはポリマーで、バイオリムスに付けて塗るポリマーですが、ポリマーがいつまでも長く残っているとそこに炎症を起こす。それが生体吸収性であるので、15か月ぐらいだとほとんどなくなってくる。これは動物実験でも確かめられています。そういう意味でも血管の炎症が少ないので、理論的には非常に良いステントだろうと。理論的によければいつも良いかというと、なかなかそういうこともないことも多いのですが、実際上、臨床例で成績は少なくとも劣っていない。3,000例余りあった先ほどのNOBORI 2で見ますと、対照は、一番新しくて最も多く使われているザイエンスというステントです。それと比べても遜色ないし、やや良いかもしれません。臨床的に、少なくとも劣っていないし、有用性が高いだろうと思われ、私はこの品に期待しています。ただ、先ほど話がありましたように、実際に使ってみないと分からないことが多いので、登録が必要であるということです。もう1点は、先ほど言い忘れましたが、今私たちで問題になっている、抗血小板薬をいつまで続けるかということです。DESを植込んだ人たちが癌になったり出血性疾患になったときにやめられない、その場合に、早期に内皮化が起こっていれば中止できるということです。例えば、最初3か月という話がありましたけれども、半年ぐらいで手術になったりしても安心して休薬できるということで、この品に期待しております。以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございました。本件につきまして、委員の先生方から御質問、御意見ありますでしょうか。
 今の山科先生のお話では、stent thrombosisが少ない可能性があるということで、実際このNOBORI 2を含めて欧米で既に15万個が出ているというお話でしたが、臨床的にもstent thrombosis、特にvery late血栓症が少ないというデータは出ているのでしょうか。
○山科参考人 出ているみたいですね。Thrombosisは0.07%ということですので、日本人の場合はj-Cypher、木村先生が中心にされているj-Cypherなので、欧米に比べて少ないですが、少なくともそれと比べても遜色はないと思うし、さらに日本人であればもっと少ない可能性があるので、期待できるのではないかと思っています。
○笠貫部会長 ほかにありませんでしょうか。
 CEマークが2008年ですが、アメリカでは申請されていないということは、これから申請する予定なのですか。
○機構 総合機構から御説明します。米国での申請に関しては、ステントの特許等の関係から申請ができないと聞いております。
○笠貫部会長 アメリカの特許関係では申請できないのはどういう意味か、よく分かりません。先ほどの最初の御説明の中でも、国産初のDESであるとすると、期待は大きいとは思うのですが、特許でアメリカ申請ができないのはどういう壁なのでしょうか。
○機構 総合機構から追加で補足させていただきます。一つは、例えばモノレール型という型のカテーテルがありますが、それについてはある某社が特許を持っています。その形のカテーテルは出せないのです。アメリカではそのような状況になっています。それから、ステントに関しては、ストラットのデザインが、ストラットというのは金属のこの網の目の形のところが特許で押えられていまして、このステントについてはその関連で出せない可能性が高い。ということで、テルモとしてはそこに参入することについて、今思い考えているところだと思います。ただ、まだその点については、この□□□の先行開発をしていた□□□□□という会社がありますが、その点を解決して別途開発するかどうかという点について計画があると聞いています。テルモのこの製品についてまだ今のところ予定がないとお伺いしています。
○笠貫部会長 ほかにはありませんでしょうか。
○村上委員 循環器関係のことはあまり詳しくないのですが、今回、4億回の拍動耐久性試験をされたということですが、この場合の周波数は、加速ということで、どの程度の周波数でされているのでしょうか。厳しさとして等価であれば特に問題はないと思いますが、考え方として、加速しても特に影響はないということであれば問題ないと思います。
 こういう質問をさせていただいたのは、私は人工関節などの評価をやっていますが、人工関節の場合は普通の歩行が1Hzぐらいです。本当はそれより速くして、何年分というものを短かい時間で評価したいけれども、ただ、関節などの場合は周波数で、材料への荷重のかかり方や潤滑状態が変わってくるものですから早くできない。ほぼ1Hzで、ISOなども1Hzでやるというような考え方ですが、今回はどちらかというと繰返しのトータル、その条件でどうかという考え方でいいのだろうと思われますので、質問させていただきました。
○機構 総合機構から御説明します。本品の拍動試験においては、加速条件ということで、詳細な何Hzかに関しては後ほど調べてお答えしますが、加速で短い時間で行っていることは確かです。
○塩川委員 脳神経外科をやっている立場で質問します。MRIの使用の話が添付文書の5/8にあります。左側のコラムの上から10cmぐらいのところです。今、静磁場強度が3テスラの機械も出ているのですが、この文面だけ見ていると、3テスラのMRIで使っていいのか。3テスラを超える場合の評価は行われていないと書いてあると、3テスラは、これはどちらに入るのですか。これは使ってよろしいという記載なのですか。
○機構 総合機構からお答えします。こちらに関しては、3テスラのMRIの使用は可能です。
○塩川委員 では、それを超えるものが試験されていないということですか。そのように読むわけですね。
○機構 はい。
○塩川委員 もう1点は、脳卒中などの患者だと抗血小板剤をもちろん使う人と、それから、出血性のリスクを非常に懸念する場合もあるときに、今、山科先生から、ほかのステントと比べて出血のリスクが原理的には少ないはずだというお話がありましたが、そういうことは、積極的にどこかこの添付文書に盛り込まれるような情報なのでしょうか。それは根拠がないので入れようがないということになるのですか。
○機構 総合機構からお答えします。抗血小板療法を短くできるかどうかに関して、現時点ではエビデンスが得られておりませんので、現状においては既存のDESと同様な抗血小板療法の規定となっています。
○石井委員 医薬品としては承認されていないバイオリムスの品質について伺いたいと思います。これがもし医薬品として承認されるようであれば、品質に影響する製造工程のパラメーターや品質試験の試験方法まで承認事項になると思います。今回は医療機器に含まれる有効成分ということで、そのようなことは一切承認書にはありません。このような場合に、恐らく、製造企業の社内管理に委ねられると思いますが、どのような対応になっているのか教えていただきたいと思います。
○機構 総合機構から御説明します。本品のバイオリムスA9の原薬としての製造に関しては、医薬品の治験薬GMPに準拠した製造管理が行われていることを確認しております。
○笠貫部会長 ほかにはありませんでしょうか。
○石井委員 治験薬の有効性・安全性は恐らくこの評価で大丈夫だったと思いますが、市販後にもその品質が継続して担保されるのかというところが疑問です。
○機構 総合機構からお答えします。それに関しては、製造販売承認後に関しても同様の管理で行われることの陳述を得ております。
○荒川委員 安全性関係ですが、これは安全性に関しては、基本的に最終製品での安全性ですか。化合物そのものの毒性に関して、どの程度資料があるのか、どこにあるのか見当たらないのですが。
○機構 総合機構から御説明します。本品に関して、全体としての生物学的安全性の担保ということは行われておりまして、そちらに関しては、報告書の11ページ下段から記載しています。また、バイオリムスA9の毒性に関しては、個別にバイオリムスA9の毒性試験等が行われており、そちらに関しては審査報告書の12ページ中段以降に記載されております。
○笠貫部会長 よろしいですか。
○荒川委員 ちょっと内容を確認してからお答えします。
○笠貫部会長 その間に。これまでDESが4社8品目ですが、この警告あるいは禁忌のところで、これまでオフラベルユースが非常に問題になっているので、これとの整合性で、どこか変えているのかを御説明いただけますか。
○機構 総合機構からお答えします。当部会において前回Drug Eluting Stentが部会で審議にかかったときにも同様の御質問をいただいて、今、継続で対応しているところです。安全対策課で今その点の対応をしていますが、この時点ではまだその最終的な結論を反映した形にはなっていませんので、今、先生からいただいた御質問に対しての反映はできていない状況です。ただ、その点については今、全体的に、DES全体で動いている添付文書の改訂とともに、こちらも整備していくことにしております。
○笠貫部会長 そういう意味では、これまでのDESの添付文書と、検討中のものをこれから反映して変更し得ることもあり得るわけですね。
○機構 おっしゃるとおりです。
○笠貫部会長 ほかにありませんでしょうか。
○山科参考人 今の笠貫先生の御指摘ですけれど、NOBORI 2はヨーロッパとアジアでされている3,000例余りですが、日本でいうとオフラベルの分岐部病変が20%、完全閉塞が10%、LMTが2%。心筋梗塞が19%などです。我が国の実状と大きな変わりはないので、やっていいというわけではありませんが、そういう使用に関しては、ほかと比べて、少なくとも遜色のないヨーロッパとアジアのデータです。そういうことになると思います。
○笠貫部会長 私も、NOBORI2で3,000例の試験があれば、日本のピボタルスタディが必要か否かという問題、あるいは症例数がどうかということについては、今後の課題として御検討いただけたらと思います。ピボタルスタディとして、症例数が少ないと既に結論が出されているのは問題かなと思います。これからの課題として検討していただくことにして、今回はこの症例数で、承認という方向で報告をいただいたと受け取らせていただきます。
○機構 よろしいでしょうか。石井委員から事前にいただいた御照会事項もありましたので、そこも含めて品質に関してお答えします。
 まず、石井委員から「バイオリムスA9の確認試験で、赤外吸収スペクトルを標準スペクトルとの比較を規格として提出する必要はないのか」という御指摘をいただいています。その点に関しては、一応、比較自体は行われていますが、御指摘のとおり比較は部分的であることは間違いありませんので、きちんと標準値とのスペクトルを比較して規格に設定することで指示させていただきます。
 また、「標準物質の設定やその規格についても説明していただきたい」という御指摘をいただいていますが、標準物質に関しては、原薬を逆相HPLC法により高純度化したものを用いていまして、原薬の規格のうち純度試験を99%以上に規定したものを規格として管理しています。
 また、「各確認試験の試験方法について記載した方がいいのではないか」という御指摘をいただいていますが、その点に関しては、医薬品と医療機器では申請書のフォーマットが異なることもありまして、また、これまで既承認のもので、未承認の医薬品を用いたDESの承認においても同様のフォーマットで記載されているので、現時点においてはほかのものと同様の記載とさせていただきたいと考えております。
 もう数点、よろしいでしょうか。ほかに石井委員から、「品質において重要な工程パラメーターに関して、承認事項として承認書に記載する必要がないのか」という御意見をいただいています。その点について、いただいた御照会事項を申請者にもお話して、どのような設定ができるのかということを今相談していまして、何かしらを設定していきたいと思っております。
 最後になりますが、溶出試験について、有機溶媒を用いていることに関して、「生体内での溶出を担保できるのか」という御指摘をいただいています。その点については、品目仕様の溶出試験は生体内での溶出を直接的に担保するための規格ではないので、本品の最終製剤の品質を担保するために設定されている試験です。本試験は24時間以内に85%以上の溶出率を確保することを目的に溶出試験条件が検討されています。
 バイオリムスA9は脂溶性物質であることから、予備試験で界面活性剤を用いても上記を満たさなかったこともありまして、エタノールを加えた緩衝液を試験液として用いた経緯があります。生体内での溶出強度については、本品の薬物搭載量、薬物含量、全長、均一性、薬物コート総比、ポリマーの分子量を規定範囲に維持することで担保できると申請者からも意見をいただいています。もう一つ、ブタ等を用いた動物試験によっても生体内での溶出を担保しているので、現時点で特段何か、特別対応することはないと考えています。以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございます。できるだけ予めいただいた御質問とそれに対するお答えは先の方にしていただければと思います。
 それでは、特に御意見がありませんでしたら議決に入りたいと思います。木村委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加は御遠慮いただくことになります。よろしくお願いします。
 それでは医療機器「ノボリ」については、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認して差し支えないものとして、再審査期間は3年間とし、また、生物由来製品及び特定生物製品の指定は不要ということでよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会にて御報告することにいたします。
 それでは、議題2が終了いたしましたので、山科先生には御退出いただいても、あるいはこのままいていただいてお聞きいただいても、どちらでも結構です。お時間が許しましたら、どうぞ。御退席なさるそうなので、ありがとうございました。
             - 山科参考人退室 -
○笠貫部会長 それでは、議題3に進みます。医療機器「Cochlear Bahaシステム」の製造販売承認の可否等について審議を行います。本議題の審議に当たりましては、参考人として慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学の教授でいらっしゃいます小川郁先生に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、審議品目の概要について、事務局より御説明をお願いします。
○事務局 それでは、議題3については、資料3-1と総合機構のスライド資料3-2を用いて、御説明します。資料3-1は審査報告書のタグをめくりますと、審査報告書の表紙がありますが、こちらは骨固定型のインプラント式の補聴器、骨伝導型の補聴器です。販売名は「Cochlear Bahaシステム」、申請者は「株式会社日本コクレア」です。詳しい審議品目の概要、要点について、総合機構から御説明をお願いします。
○機構 総合機構での審査に当たり、御覧の専門委員の御意見をいただきました。審査報告書4ページを御覧ください。本品は、既存の治療法では改善が見込めない患者に対し、環境音、語音の聞き取り能力の改善のために使用する埋込み型骨導補聴器であり、音の振動に変換するサウンドプロセッサと頭蓋骨に固定して振動を伝達するインプラント及びインプラントを埋め込むための手術器具から構成されています。なお、サウンドプロセッサには「Divino」と「BP100」の2種類があります。
 次に審査報告書5ページを御覧ください。難聴疾病には、内耳の蝸牛機能がある程度良好な伝音性難聴、聴神経が何らかの原因で損傷を受けることによって生じる感音性難聴、その両者が混合して発症する混合性難聴があります。
 伝音性難聴の原因となる疾病には先天性外耳道閉鎖症、外耳・内耳の疾患である単純穿孔性中耳炎、真珠腫性中耳炎などがあります。伝音性難聴に関しては中耳根本術や鼓室形成術といった外科的手術によって、まず治療が行われ、それでも聴覚機能を回復しない場合に気導補聴器が適応されます。気導補聴器の装用が困難な患者(例えば、先天性の外耳道閉鎖症や耳漏によって補聴器の故障を誘発する症例など)では、骨導補聴器が用いられます。
 従来の骨導補聴器は、気導補聴器に比べて聞き取り音の歪みがなく、音質が明瞭となるという利点がある一方で、振動を皮膚経由で骨に伝えるため、振動エネルギーが吸収されるという欠点、また、装用者に局所的な圧迫感を与えるという欠点もあります。
 本機器では振動子をチタン製のインプラント部に装着することで、振動を直接頭骨に伝え、局所的な圧迫なしに高い効率で音情報を内耳へ伝達することが可能になります。現在回覧していただいているサンプル品のアクリル素材がちょうど頭骨に該当します。
 海外での使用状況としては、本品のサウンドプロセッサDivinoは米国では2004年、欧州では2005年に認可を受けています。
 本品目の臨床試験成績に関する審査の概略について御説明します。まず有効性については、審査報告書12ページの「臨床試験結果」の項目を御覧ください。主要評価項目の結果をこちらにお示ししました。自由音場閾値検査において、伝音障害症例、片側聾症例ともに有意な有効性が認められ、本装置の振動が中耳・内耳へ伝わっていることが確認されました。また、実際の日常生活における語音を聞き取る検査において、伝音障害症例においては有効性が認められましたが、片側聾に関しては有効性が認められませんでした。副次評価項目でのアンケート調査においては、伝音障害症例、片側聾症例において満足度の向上が認められました。
 次に安全性について御説明します。審査報告書14ページ「安全性の評価について」の項目です。有害事象として軽度14件、中等度2件が報告され、いずれも処置により軽快しました。上記のほか、インプラント埋植手術時の硬膜露出6件、出血3件により作業継続が不能になった事例があり、いずれも処置後、別部位への埋込みが実施されました。
 それでは、審査における論点の概要を御説明します。まず一つ目の論点として、本申請における2種類のサウンドプロセッサDivinoとBP100のうち、臨床試験で用いられたのはDivinoのみであることから、当該試験データをBP100に外挿可能かどうかについて、申請者に対し説明を求めました。以降、機構側の論点は審査報告書16~17ページに記載しております。
 申請者からはBP100の改良点についての説明がなされ、基本的な性能は同等であること。性能に関する改良点については非臨床試験において検証しており、臨床試験での評価は不要と考えるとの考察がなされ、機構はこれを了承しました。以降、申請者側の回答は、審査報告書17~18ページに、それに対応する総合機構の判断は18~20ページに記載されています。
 二つ目の論点は、語音了解閾値検査において有意な改善が認められていない片側聾症例への適応の妥当性が論じられました。申請者は海外文献における語音認知の向上、アンケート調査における聞こえの主観的評定の向上、既存機器と比較して装用感、審美性が向上するという根拠を持って、耳に音が入らない恐怖や社会的制約が生じる場合という制限を設け、適応を求めました。
 しかし、機構側は海外文献に関して、文献の実験条件は一般的な日常生活の音環境を反映していない。語音了解閾値の向上が5dBであり、有意差があるものの、その差は大きいとは言えない。アンケート調査の向上に関してはプラセボ効果が否定できない。制限付き適応に関しては、現在片側聴覚障害に対して、非侵襲の医療機器を医療側から通常は処方しないというのが本邦の医療実態であり、かつインプラント部の埋植による一定の侵襲性ならびに術後の感染症などのリスクを踏まえ、片側聾症例に対する適応を求めることは困難と判断しました。
 三つ目の論点である伝音障害症例の片側症例への適応に関しても、同様な理由から適応を認めることは困難と判断しました。
 四つ目の論点として、手術中に発生した硬膜露出の原因と対策について論じられました。臨床試験においては申請者は既に術前にCT画像による骨厚みの確認についての指示がなされていました。しかし、本有害事象が発生したため、その原因を調べたところ、X線不透過マーカーを用いてのポジショニングを行っていた3施設では、硬膜露出の有害症例は発生していないことが分かりました。
 これらの調査により、硬膜露出の原因はCT画像と下穴の位置あわせの不備と考えられました。そこで申請者は添付文書の警告欄にて、X線不透過マーカーの使用を喚起するという対応をしました。機構側はこの対応を了承しました。
 引き続き五つ目の論点に関する議論です。本品は半永久的に埋め込む機器であることから、長期的な有効性及び安全性について考察を求めました。
 その結果、臨床試験においては、最長30か月までの経過観察結果が示され、重篤な有害事象の発現はありませんでした。また米国での使用実績を踏まえた分析がなされ、最も発生率の高かったインプラント脱落に関しては、その多くが術後1年以内に発生しており、骨結合不良が示唆されたことから、添付文書にてその注意喚起をするとの説明がなされました。
 以上により本品の長期的な有効性及び安全性について、現時点で特段の問題は認められないものの、十分な確認がなされているとは言えないことから、市販後の使用成績調査において長期のデータを収集することを指示しました。
 以上の審査の結果を踏まえ、審査報告書21、22ページの記載の承認条件を課すことが妥当と判断しました。総合機構は本品の位置づけを明確にするため、こちらに示す使用目的で承認することが妥当であると判断しました。なお、本品は新性能医療機器であり、再審査期間は3年とすることが妥当と考えます。審査概要の説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 それでは、参考人の小川先生から何かありましたらお願いします。
○小川参考人 今、御説明があったとおりですが、若干補足をさせていただきたいと思います。先生方も御存じのように、難聴があって、保存的あるいは手術的な治療で改善が見られない難聴者は補聴器を使って補聴することになるわけですが、まず一般的に使われるのは気導の補聴器です。よく耳につけているものは全部気導の補聴器です。空気の振動としての音を増幅させて耳の中に入れようということですが、こういった気導の補聴器が使えない難聴者も、わずかですがいらっしゃいます。今日ここにあった症例は先天性あるいは後天性の外耳道閉鎖症で、これは耳の穴が完全に塞がってしまうという方で、特に先天性の子どもの場合、両側が塞がってしまうという子どもが結構おります。あるいは中耳炎等々で耳漏が出て、耳漏の停止がなかなか難しい。耳漏が出ていますと、いわゆる気導の補聴器のイヤホンにその耳漏が付いて、うまく補聴効果が得られない。こういう方の場合には、いわゆる骨導補聴器が使われるわけですが、従来の骨導補聴器は、女の子などがよくバンドをつけてカチューシャをしますが、ああいう所に振動子を付けて耳の骨を振動させる。あるいは眼鏡の柄に振動子が付いているような、いわゆる眼鏡型補聴器というのがありますが、こういう補聴器は皮膚を通して骨を振動させるということで、かなり圧力を加えないとうまく補聴効果が得られません。そういう補聴器を使っているような子どもは1日中、圧力をかけて補聴器をつけているわけです。いろいろな意味で非常にコンプライアンスが悪いということはあります。
 この骨固定型の補聴器の場合には、骨にインプラントを埋め込むわけですから、皮膚を介した骨伝導ではなく、非常に骨伝導が有効で、骨を振動させることができるということで、そういう意味では非常にコンプライアンスが高い方法だと思います。
 今回は非常に限定的な対象を選ばれていて、先天性あるいは後天性の外耳道閉鎖、今お話したような耳漏で普通の気導補聴器が使えないという方ですので、特に体育などで動くときに補聴器をつけたいという子どもの場合のコンプライアンスは非常に高いのではないかと思っています。
 片側聾ということで、今回は適応にならないわけですが、実は欧米では片側聾で補聴器を使っている方が非常に多いのです。これは片方が聞こえない方の場合に、聞こえない側に補聴器を埋め込んで骨の振動を通して機能している方の内耳に音を伝えるということで、聞こえない方から入ってきた音が聞こえる耳で聞こえるわけですから、聞こえない方からの会話もできるというメリットがあります。これに関しては今回は適応にされていないということで、今後の検討課題ではないかと思っています。以上です。
○笠貫部会長 ただ今の点につきまして、御質問、御意見はありますか。
○医療機器審査管理室長 部会長、1点よろしいでしょうか。お手元にお配りした資料に少し不備がありますので、お伝えします。資料3-1ですが、一つ目のタグにある審査報告書の2ページに「審査結果」と書いてあり、その下にさらに審査結果と濃い字で書いてある所の4行目、「非臨床試験として」という文章で始まる所の右側の後ろの方に「生物学的安全性試験等の」となっていますが、「生物学的」ではなくて、「機械的」安全性試験と訂正をさせていただきたいと思います。
 この審査報告書の中には少し誤植がありますが、私の方で一通り内容を確認しましたところ、後で差替えは当然させていただきますが、本日の審議に影響を及ぼす誤りではないと判断しましたので、そのほかの訂正箇所に関しては省略させていただきます。そういった箇所が何箇所かありますのでお詫びいたします。以上です。
○笠貫部会長 ほかにいかがですか。
○齋藤委員 余りよく分からないのでプリミティブな質問かもしれませんが、これは年齢制限が規定されており、18歳で、親の同意が得られれば15歳ということで規定されていますが、例えば先天的な外耳道閉鎖のような場合には、もっと早めに装着した方が患児にとってはよりいいのではないかと思いますが、その辺の設定した理由をお聞かせ願いたいと思います。
○機構 総合機構よりお答えします。この点については審査の過程で臨床の専門家の先生方の御意見もお聞きしましたが、どうしてもインプラントの埋込み部がこの成否を伴ってしまいますので、十分なメンテナンスができないと感染を起こしたり、日常の生活の中でもメリットだけではなく、デメリットも生じてしまうということで、当然この製品の良さとリスクベネフィットを理解した上で、自己管理もできることが、まず市場に下ろすときの条件ではないかということで、未成年ではありますが、ある程度の年齢の方にまず第一線を引かせていただいたということです。
○齋藤委員 頭蓋骨の厚みなども関係するのですか。
○機構 それもあります。添付文書に記載しましたが、成長過程だとそういった問題もあります。小川先生、もし何かあれば御教示いただければと思います。
○小川参考人 おっしゃるとおりだと思いますが、本当にメリットのある効果を期待するということになると、それこそ小学校の早い時期から使うのが一番良いのではないかと思います。先ほど硬膜が露出するような有害事象があったということもあります。そういうことで側頭骨は大体15歳ぐらいまでずっと発達して厚くなっていくわけです。ですから、10代の中ぐらいに入れるということになると、そういった有害事象の頻度も結構高くなるのではないかと思います。ただ、この辺に関してはメーカー側も次のインプラントの仕組みなどでいろいろ考えているようではありますが、今回はそのような意味で年齢設定をされたのだと思います。
○塩川委員 今の話では頭蓋骨にネジを打ち込むというのは脳外科は日常的にやっています。これは大変有用な道具だと思いますが、64例で9例何らかの問題があってというときに、どの場所に正確に打つのかというのは、添付文書にも最初のまとめにもなくて、この分厚い資料を見ていると別紙4-4の45ページには、外耳から50~55mmの所に打つと書いてあります。
 何を申し上げたいかというと、ちょうど外耳の後ろに乳様突起というのがありまして、その下に太い骨の中に静脈洞があります。横静脈洞からS状静脈洞に移る角の部分をアステリオンというのがあって、そこは骨を貫通して硬膜があり、その下に太い静脈もありまして、どの場所に打つか。複数孔をあけた事例が64例中にいくつかあったと書いてありますので、添付文書にもどの場所に孔をあけるかというのも特に書いてありません。CTを撮って骨の厚みを見なさいとは書いてあるのですが、写真で耳たぶの後ろのちょっと上ぐらいは脳外科の目から見ると、非常に太い静脈洞にわりと近い所です。ですから、位置についての情報を添付文書なり、ほかの所できっちり入れた方が安全性が高いような気がするのですが、それはいかがですか。
○機構 警告の上から三つ目のポツに「インプラントの設置部位は外耳道孔から耳後部上方へ約5cm」という文字は一応入っておりますが、これがもう少し明確になるように修正したいと思います。
○塩川委員 後部上方5cmだと範囲が出てしまうので、頬骨弓というそこから外耳道を通っていくと、そこの線というのは横静脈洞の線があって、わりと近いのです。ですから、ネジを打ち込んで静脈洞に孔をあけると、耳鼻科の先生だとなかなか対応し難いようなことも起こり得ると思います。感染して骨髄炎になるとややこしい場所かなと思いますので、安全な場所をもう少し規定された方がいいのではないかと思います。
○機構 この点については申請者にお聞きしておりまして、確かに5cm後方と言ってもどの角度かというのは私どもも申請者にお聞きしているところですが、先生からも御案内いただいたとおり、外耳孔から平行にそのまま5cm下ろしてしまったり、下方に行くと乳様突起に当たってしまうこともあり、上方すぎると帽子をかぶったときなどの日常生活に影響が出たりすることもあると聞いております。
 またあまり離れすぎると集音が難しくなるということもあり、大方の目星は付いているのですが、骨圧等も含めて、打つ位置にはある程度個人差があると聞いておりますので、その辺りは実際にこれを埋め込まれる先生方には、事前にトレーニングを行うとメーカーからは聞いておりますので、詳細はそちらで対応することだと思います。それ以外の点についてホリゾンタルな点は添付文書に書かせていただきました。
○小川参考人 外耳道の後方、マストイドですがそこから上に5cmなのです。ですからS状静脈洞あるいは横静脈洞の後ろ側ということではないので、どちらかというと上に行くことになります。この辺は骨伝導ですので、基本的には効果という意味ではどこでも変わりません。最終的にはCT等の情報から安全な所を選んで打ち込むということになるかと思います。
○笠貫部会長 よろしいでしょうか。この機器はFDAでは2004年、ヨーロッパでは2005年から、トータルで4万台が出ています。それだけニーズが高くて、有効性・安全性は世界的に認められているのではないかと思います。欧米での適応と、日本の適応がどう違うのでしょうか。日本の適応のように狭くされているのか、あるいはもっと広いのか、日本人の難聴で悩んでいる患者にとって、この機器がこれだけ絞られることが妥当なのかどうかについてはいかがでしょうか。
○機構 本機器は確かに欧米では片側聾の方にも使われております。今回は実はそこが最大の論点になりました。実際問題、それを数値的に表すことが我々審査側には求められるわけですが、今回片側聾に対していろいろな角度から検討がなされました。
 ところが、片側聾に関しては語音明瞭閾値、いわゆる雑音下でどの程度まで、50%の語音に了解できるのは何dBかという試験をやったわけですが、実際にはそこのところでは有効な差を見ることができませんでした。
 一つは、片方が生きている、健側は生きている状態でやると、そこの所で差を非常に見つけ辛いということです。欧米では違う実験デザインで行っていました。お示しするように左側は本邦における実験デザイン、右側は海外文献で彼らがここの所に差があったという実験デザインですが、そういう意味では非常に限定された、あるいは本機に対して非常に有利な条件で初めて出てくる有意差である。そこに出てきた閾値は5dBである。普通は25dBぐらいで、ほかの所では有効性としては大体出てくるのですが、5dBというのは、そういう意味では非常に小さい差であります。
 もう一つは、本邦の医療実態が片方が生きている方に関しては医療側から気導補聴器も勧めないという実態があります。そこを勘案して今回は片側聾に関しては適応は慎重にいこうと我々は判断しました。
○笠貫部会長 小川先生にお聞きしたいのですが、専門家の立場として検査の方法で違いがあり欧米では片側聾にも使っているときに、日本人の片側聾で悩んでいる患者にとって、この機器を、これは代替品がないとは思いますので、先生から片方でいいと片方にも伝音で行くというお話があったのですが、いかがですか。
○小川参考人 おっしゃるように、この前の機種から数えますと、もう7万台ぐらい出ているのではないかと思います。そのうちの7割ぐらいは片側聾のような方が使っておられるという現状があります。
 ただ、片方が聞こえなくて、片方が聞こえる方には気導を使ったクロス型の補聴器も実はあるのです。ただ、クロス型の補聴器は使い勝手とか、いろいろなことから余り普及していない。ということは、一側聞こえない方のクオリティーというのが、いわゆる聞こえないことによるクオリティーのロスがクロス型の補聴器をつけるほどには行っていないという考え方もあるのだと思います。
 そういうことで確かに欧米でも非常に積極的にこれを聾側に埋め込んでいる医療施設もありますが、あまり積極的ではない所もあります。そういった意味では聞こえのクオリティーを上げるという意味で、コンセンサスが完全に得られているというわけでもないのかもしれないと思っています。
 私は個人的には非常に良い方法だと思うのですが、今、クロス型の補聴器にしても、こういったものも、実際のところ保険適用などそういうことを考えますと、全くサポートはないわけです。そういう中でこれをどんどんそういった方に使っていただくということになると、保険制度の問題の中でも少し議論をしなければいけないところがあるかもしれないと思っています。
○機構 ありがとうございました。今、先生から御案内いただいたとおりで、現在クロス型補聴器があまり普及していないということは、クロス型をつけるまでしてというニーズがないという状況下で、これは確かに使いやすい製品かもしれませんが、クロス型補聴器よりは侵襲性が高いといった潜在的なリスクも勘案して、今回の適応にいたしました。
 続いてですが、事前に委員の先生方からいただいたコメントが1、2点ありますので、それを御紹介してよろしいでしょうか。
○笠貫部会長 先ほど最初にしていただきたいと申しました。
○機構 すみません。御議論のときに出るかと思いまして控えてしまったのですが、1点目は、川上委員からいただいた点で「BP100とDivinoについて、両者承認を取得する理由はあるのか」と。後継機種だと前世代品だったら不要ではないかという御意見だと思うのですが、性能の差は多少ありますが、その差はあまり大きくないと理解をして1品目にして、今回は承認に至っております。
 その一方で、ユーザー側のインターフェース、つまみの部分などがある程度差異があって、使用者の好みによってある程度使い分けができるということと、製造元でも両者並行して今後も製造を行っていくと聞いておりますので、決して前世代品、型落ち品ではないと聞いております。今後の販売価格も同一価格にする予定だということで、選択の種を増やすという意味のようです。
 もう一点は高橋委員から「この製品を扱うときに、実際に埋め込まれる先生方に対して、認定のようなものが必要か」という御意見と、「使用前にトレーニングなど必要がないか」という御意見をいただいたのですが、本品は確かに埋込み部はあるのですが、通常の耳鼻科の外科手術を経験されている先生方であれば難易度が高い手術だとは考えておりませんので、特別な施設基準や医師基準等を設けることは考えておりません。
 しかしながら、やはり適正使用のために先生方には埋込みの勘所等を事前に御案内する必要があることから、申請者側からは、これを埋め込まれる先生方に対する事前の注意喚起やトレーニングは実施予定だと聞いております。以上です。
○笠貫部会長 先ほど64例中9例は手技上の問題だとすると、決して難易度は低くないのではないかと心配になりますが、そういうことはないですね。
○小川参考人 手術の手技そのものはそんなに難しいものではないと思いますが、先ほど塩川先生から御指摘いただいたように、埋込みの場所、選定の問題あるいは術前の検査から、その検査の骨の厚みなどをきちんと臨床の現場てフィードバックするような方法とか、その辺の注意がしっかりと払われれば、手術手技そのものはあまり問題ないと思っています。
○笠貫部会長 施設基準と医師基準の話が出たものですから、耳鼻咽喉科の専門医であれば、そこで縛りがあればよろしいということでよろしいでしょうか。
○小川参考人 はい、結構だと思います。先ほど二つの機種があるというのは、今の補聴器もそうですが、一つはいつでも手元で音質や音量を変えやすいというタイプのものと、もう一つは、あらかじめコンピュータの中で、例えば普通の会話をするときに使うモード、学校でクラスで使うモード、音楽を聴くときに使うモードのプログラムを決めておいて、それを選ぶというタイプのものと二つあります。例えば、子どもが使うということになると、後者のモードを既に決めている方が、いろいろな意味で安全だと思います。この二つは両方ともあった方がいろいろな意味で選択肢が広がっていいと思います。
○千葉委員 いろいろな考え方の中で、例えば片側聾は使わないとか、どこの場所に置くとかいろいろな決め方を、あまり一様にならないことの個体差があるのではないかと思います。ですから、同じようなことをやっても、決まった場所よりも意外と違う所の方が効果があるという可能性は個体差によってはあり得ないでしょうか。
 仮にそれが否定できない場合に疾患、年齢、場所などを一定に決めてしまうよりも、一定のプログラムによってテストをし、この患者はこの位置がいちばん効果がある、あるいはいちばん本人が快適であるという所を見つけるテスト、方法のようなものを添付して、その場所が解剖学的に安全であるということであれば、そこに入れるというフレキシブルな添付の仕方はあり得ないものでしょうか。
○小川参考人 先生がおっしゃるとおりで、そういう方法もあると思います。ただ、骨導によって骨伝導で内耳に音を伝える場合の頭蓋骨の中での違いというのは5dB以下です。良い方の内耳にこちらから音を伝えるのも、良い方の内耳に同側から打ち込んで伝えるのも、その違いは5dBしかないのです。ということで、音の減衰の仕方とか、そこでの音の歪みなどを考えると、効果としてはどこに打ってもそれほど違いません。
 ただ、そのときにマイクロホンからどういう音を入れたいかということでまず決まってきます。こちら側の音を拾いたいのか、あるいは先ほどから話題になっている一側聾で悪い方からの音を拾いたいのか、そういうところで埋め込む場所はある程度決まってきます。あるいは子どもが帽子など、ウェアの関係でどこがいいとか、髪の毛の中に隠れて目立たない方がいいとか、その患者、患者でのニーズはあると思いますが、それをある程度考えた上での耳の後ろから5cm程度という範囲が決まってきているのだと思います。
○笠貫部会長 新しい機器だということで期待も大きかったのですが、それほどニーズは高くなくて侵襲が高いというお話もあり、一方で使い方については、医師基準までは行かないとしても、先ほどの添付文書等、あるいはトレーニング等については、十分注意をしていただきたいという感じがいたしました。
 それでは議決に入りたいと思います。
 医療機器「Cochlear Bahaシステム」については、本部会として、審査報告書にある条件を付した上で承認して差し支えないものとして、再審査期間は3年間として、また、生物由来製品及び特定生物由来製品の指定は不要ということでよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告することにいたします。
 議題3が終了いたしましたので、小川先生には御退室いただいても構いませんし、あるいはずっと最後までお聞きいただいても結構でございます。よろしくお願いいたします。深い内容でした。本当にありがとうございました。
○小川参考人 勉強させていただきまして、ありがとうございました。
○笠貫部会長 それでは、議題4に移らせていただきます。議題4「ヒト自家移植組織」の希少疾病用医療機器として指定することの可否について、審議を行います。本議題の審議に当たりましては、京都大学大学院医学研究科形成外科教授の鈴木茂彦先生に御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、審議品目の概要及び希少疾病用医療機器に関する制度の概要について、事務局より御説明をお願いします。
○事務局 事務局より議題4「ヒト自家移植組織」の希少疾病用医療機器としての指定の可否について、御説明いたします。資料は、資料4と参考資料4の1枚紙を用いて御説明いたします。
 まず希少疾病用医薬品等の指定制度について、参考資料4を用いて御説明いたします。この制度は、難病、エイズ等を対象とする医薬品や医療機器であるので、医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者が少ないために開発が進みづらいものということで、国として支援措置を行っていくものです。
 希少疾病用医療機器として指定されますと、資料の裏面にありますが、助成金の交付、税制措置、指導・助言、優先審査、再審査期間の延長といった支援措置が講じられます。この指定が直ちに医療機器としての製造販売の承認に結びついているというものではありませんが、指定されることにより、開発が促進されることが期待されるものです。
 資料の表面の中ほどの指定基準です。希少疾病医療用機器の指定の要件は、対象疾患数、医療上の必要性、開発の可能性の三つの要件に該当することです。1.の対象者数は本邦において5万人未満であることです。2.の医療上の必要性ですが、もし製造販売の承認が与えられたら、特に優れた価値を有するといったことなど、いわゆる難病などの重篤な疾患等を対象とするもので、代替の治療法がない、既存の治療法と比較して著しく高い有効性がある又は安全性が期待されるというものです。3.の開発の可能性は、対象疾患に対して当該医療機器を使用する理論的な根拠があり、開発に係る計画が妥当であると認められるということになっています。
 本部会においては、委員の先生方には、審議品目がこれらの要件を満たして、希少疾病用医療機器として指定できるかどうかについて、御審議のほどをよろしくお願いいたします。制度の御説明はこれまでにいたしまして、次に資料4に移ります。
 諮問書と書いてある1ページ目をお開きいただいて、「希少疾病用医療機器概要」です。御審議いただきますのは、「株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」の「ヒト自家移植組織」です。本品は、患者自身の皮膚組織を採取して、分離した表皮細胞を培養し、シート状に形成して患者自身に使用するものです。平成19年に重篤で広範囲な熱傷患者に対する創の閉鎖を目的に既に承認されています。
 今回、希少疾病用医療機器として予定されている効能・効果は概要の2段目に記載があり、「表皮水泡症患者に発生する難治性のびらん・潰瘍を適応対象とする難治性のびらん・潰瘍部位に適用し、速やかに上皮化させることを目的とする」といったものです。
 表皮水泡症の疾患は遺伝子異常に起因する疾患で、先天的に皮膚が脆弱で、少しの外力でも表皮と真皮の結合は乖離し、皮膚表面に水泡やびらんを生じる疾患です。予後は病型によって異なりますが、重症なものでは水泡やびらんが繰り返し形成されて、手足の指が癒着してしまったり、皮膚の悪性腫瘍を併発してしまうものもあります。
 対象者数は、表皮水泡症の国内推定患者数は500~640人とされております。これらから当該疾患における対象疾患患者の総数は5万人未満と考えられます。
 医療上の必要性は、表皮水泡症に対する既存の治療法は水泡内の吸引、びらん箇所への抗生物質の塗布、ガーゼや創傷被覆剤による保護といった対症療法が主体です。しかし、びらんの多くが再発性で難治性であることから、既存の治療方法では長期間にわたる継続的な治療を避けられず、疼痛の継続といったところが問題になってまいります。
 申請者は本品の適用により表皮形成率が高くなることは期待できるとされています。また再発性・難治性のびらんや潰瘍部位を速やかに上皮化させることにより疼痛の低減といったQOLの改善や感染症の防止、併発する皮膚悪性腫瘍の発生を抑制することが期待されています。
 本品の使用により現在行われている対症療法と比べて、再発性・難治性患部への速やかな生着や上皮化が維持され、その結果、疼痛の低減などのQOLの改善や感染症の防止も達成し得るのであれば、医療上の必要性はあるものと考えます。
 最後に再発の可能性です。申請者から御提出いただいた資料では、臨床研究及び文献等においては、移植直後の上皮化等については検討されていますが、それ以降の移植部位に関する情報及びQOLの改善等のデータが示されていないこと。症例に使用された自家培養シートの製造方法等の詳細が不明であること。本品と同様なものが使用されたかどうかが判断できるための情報が不十分であることなどから、本品の表皮水泡症に対する有効性については評価が難しい状況です。
 また本品は遺伝子異常を有する表皮水泡症患者の皮膚を用いて製造されることから、遺伝子の異常が有効性等に影響を及ぼす可能性も考えられますが、申請者からは、表皮水泡症の患者の皮膚を原材料として自家培養シートを製造し、本品の工程検査及び出荷試験に適合することを確認したデータが提出されております。このことから、表皮水泡症の病型ごとに本品の品質を評価した上で、本品が表皮水泡症に対する有効な治療方法になるのかを、今後の開発の中で検討する必要があると考えます。
 このため、本品の表皮水泡症を適応とした開発の可能性を現時点で評価することは難しいものの、一方で本疾患に対する有効な治療方法がない状況のもと、現時点ではその開発の可能性を否定するものではないと考えます。以上、御審議のほどをよろしくお願いします。
○笠貫部会長 それでは、参考人の鈴木先生から何かありましたらお願いします。
○鈴木参考人 この先天性表皮水泡症というのは極めて希ですが、今、いろいろな型があると述べられましたが、確かに型があります。しかし、実際に問題になるのは栄養障害型の劣性にほぼ限られます。
 というのは、単純型の場合はシンプルにびらんができますが、治っていきます。接合部型は、ひどい人はすぐ命にかかわってしまって、治療の対象になりにくい。接合部型のほかの方は、極めて希で数人しかいらっしゃらない。栄養障害型の優性の方の場合も比較的軽い。水泡ができてもたぶん治ります。
 問題となっているのは劣性栄養障害型です。私自身も今まで数例から10例ぐらいの患者を治療しましたが、こういう栄養障害型の劣性の方は、ちょっと触れるだけで水泡ができる、びらんになる。そっとしておけば治るのですが、治ったころがまた擦れる。全身に水泡、びらんができていく。治っていく過程でちょっとでも感染すると、びらんから潰瘍になる。放っておくと瘢痕になって引きつれる、そのようなことを繰り返して、だんだん手がなくなっていく、足がなくなっていくという状況です。
そのような患者に対して我々は頼まれるのですが、植皮をすると採皮部が要ります。採皮部の傷も縫ったあと、縫合して処置をする間に、下手をしてきつく擦ると、また採皮部の周囲もびらんになるというなかなか大変な患者です。
 培養表皮は真皮がなければ生着しませんが、びらんの状態で植えるとうまく生着すると期待できると思います。ただ潰瘍になってからだと、おそらく生着はしません。熱傷の患者さんでも潰瘍でなかなか生着しなくて、前もって他人の皮膚を植えて真皮を生着させてからでないと培養表皮がつかない。
 参考文献に白方先生という先生がおられ、別紙1-4にも書いていますが、白方先生が行った研究で、5cmの潰瘍で培養表皮シートを12回行った。12回も行ってやっと治った例があります。これを効果があると見るかどうか。例えば臨床試験をせよと言われて、治験をしたら、熱傷でも1回植えて付かなかったら失敗とされます。12回も植えたら、絶対に大失敗です。しかし、患者にとっては培養表皮シートを載せていくと痛くないのです。生着しなくても痛くない。12回使って、そのうちやっと治った。使わなくても治ったかもしれませんが、それなりに効果があったと。その辺をどう評価するかはなかなか難しい。
 それと今、報告があった中で、長期のフォローがないとおっしゃいましたが、植皮をしても、した所の皮膚も本来は同じ遺伝子を持っているので、ちょっと触わっただけでびらんになります。長期のフォローをしたら絶対悪いのに決まっています。長期フォローはないのが当たり前で、それができない。ということで、劣性の栄養障害の方に限ってみると、申請者が出された一応培養できることは示されているので、私の個人的な考え方としては、希少疾患用医療機器として認めてあげていいのではないかという気がします。
○笠貫部会長 それでは、本件について、御質問、御意見はありますか。劣性栄養障害型というのは、私は初めてお聞きましたが、非常に難治性で、代替品がないということで、この新たなヒト自家移植組織ということでの希少疾病用医療機器としてお認めいただけるかということだと思いますが、御質問、御意見はありますか。
○西田委員 機構の判断に全く異論はないのですが、質問が2、3あります。一つは、過去の文献を見たら、類似品でオート・グラフトとアロ・グラフトと両方、ある程度効果を認めるということが記載されているので、奏効機序としてはバイオロジカル・ドレッシングというか、完全な生着というよりも、サイトカイン等を供給してその効果で早く上皮化させるということだと理解してよろしいかということです。
 それからジェイスのもともとの重症熱傷に対する適応の年齢について教えていただきたいと思います。というのは、この対象になる場合は年齢が熱傷の場合よりも若い、非常に若い患者になるのかどうかということで、その2点について教えてください。
○鈴木参考人 私からお答えします。例えば潰瘍に関しては、培養表皮そのものが生着するわけではないと思います。先ほど申しました愛媛大学の報告でも、12回も植えたというのは、あくまでも同種で植えても自家で植えても効果としては、予測ですが、たぶん変わらないことを意味しているものと思いました。先生がおっしゃるように、サイトカインその他で創の環境が良くなったと思います。ただ、びらんの状態で新鮮なびらんで植えたらオートでなければ生着しないと思います。熱傷の場合は、私の記憶では年齢制限はなかったと思います。
○笠貫部会長 よろしいですか。それでは、ほかになければ議決に入らせていだきます。
 「ヒト自家移植組織」について、希少疾病用医療機器として指定して差し支えないというものでよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、指定を可といたします。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告をすることにいたします。それでは、議題4が終了しましたので、参考人の鈴木先生におかれましては、御退室いただきます。どうもありがとうございました。
- 鈴木参考人退室 -
○笠貫部会長 それでは、議題5「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」に進みます。事務局から御説明をお願いします。
○事務局 ちょっと時間が押しておりますので、簡単に御説明いたします。資料5、参考資料5です。まず資料5ですが、新しい医療機器に関して、一般的名称と呼ばれる区分がないものについて、高度管理医療機器なのか、管理医療機器なのか、一般医療機器なのか。これは薬事法の定義に基づくものですが、これについては審議会の御意見をお伺いした上で定めるとなっていることを踏まえて、今回お伺いするものです。
 資料5の最後のページ、資料をそのまま裏返していただきますと「新一般的名称が付される予定の品目概要」とあります。今回の品目を簡単に申し上げますと、局麻の皮膚の透過性を上昇させるために電極パットを使って直流の電流を流すことにより、局麻が中に入っていくという機器です。
 このページの一番下に、類似の一般的名称です。これまで我が国で承認されているイオン浸透式の麻酔器は、鼓膜の切開とか、チューブを入れる局所麻酔をする際に使う鼓膜の麻酔器という一般的名称になっており、この一般的名称ですと鼓膜しか読めないというところがあります。今回、新たに申請が上がっているものについては、逆に鼓膜は使えない、経皮的なものにのみ使うということで、一般的名称として、新たに作る必要があると考えています。
 このページの上から三つ目、クラスとして「II」と書いてあって、「GHTFルール6、9」とあります。こちらはGHTF(Global Harmonization Task Force)、国際整合性のため日・米・欧・英・豪・加の規制当局と産業界が集まっている集まりがありますが、そこで参考資料5のクラス分類ルール という、もともとは英文ですが、それがハーモナイゼーションされた形でとりまとめられています。
 このルール6と9は、参考資料5の2ページの真ん中の6の「一時的使用を意図したすべての外科的侵襲型の機器はクラスIIである」。また3ページの真ん中の9は「エネルギーを投与または交換するように意図したすべての能動型治療機器はクラスIIである」に該当すると考えています。
 資料5に戻って、諮問書を1枚めくりますと、その諮問の内容は先ほど申し上げたクラス分類に加えて、新たに医療機器を承認するに当り、特定保守管理の指定の要否、あとは生物の指定の要否ですが、今回新たにイオン浸透式経皮的局所麻酔器という一般的名称を新設した上で、このクラス分類はII、特定保守管理は非該当、生物由来製品又は特定生物由来製品は非該当ということについて、御審議をいただければと存じます。よろしくお願いします。
○笠貫部会長 本件について、委員の先生方から御意見、御質問はありませんか。それでは議決に入らせていただきます。
 本部会として、イオン浸透式経皮的局所麻酔器について、管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要として、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
 それでは御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告することにいたします。
 次に報告事項に進みます。議題6「医療機器の再審査結果について」、事務局から御説明をお願いします。
○医療機器審査管理室長 お手元の資料6-1から始まり資料6-4までの4種類の資料です。医療機器の再審査に関しては、本日も議題2と議題3でありましたように、承認の後一定期間、通常は3年が多いのですが、承認後市販されている状態の中で実際に使われている使用症例に関して集積して、そこから承認時あるいは審査の段階では分からなかったものが何か浮かび上がってくれば、それに対して適宜安全性の確保を含めて対処していくための制度です。
 本日御覧いただきます4種類の品目に関しては、承認の時期で申しますと、多少古いものですが、このたび再審査に関する審査業務が終わりましたので、再審査結果という形で報告をさせていただくものです。
 まず資料6-1の1ページに書いてあるとおり、本品は視力補正用のレンズで、HOYA株式会社が承認を持っているものです。ちなみに承認は平成11年4月で、かなり前のものです。
 次ページは、本品が市販されている状態において、ページ番号2と振ってある中ほどに2として「使用成績調査の概要」という部分があります。この中にあるとおり、この品目について6例の症例が集まりました。ただ、かなり少ない数になっていますが、その下の(1)の安全性の4行目から、既に本品に先行してホーヤソフトSL301が平成16年の段階で再審査の結果が出ています。この先行する品目に関して641眼中、いくつかの市販後の有害事象をはじめとして成績が出ておりますので、それと併せる形で今回この品目についても評価がなされております。
 それに基づきますと、従来品のものと比べて、特段大きな違いはないということになりましたので、このたび、本品についても再審査の報告ということで結果をまとめたものです。若干添付文書の整備等がありますが、基本的に承認した内容について、変更等は不要だということでまとめられております。
 続けて資料6-2です。こちらも視力補正用のレンズでメニコンが供給する品目で、承認は平成18年10月となっております。こちらに関しても2ページの中ほどに2.「使用成績調査の概要」があって、症例の構成で言いますと、収集された数でいうと2,141で、こちらは十分な数があるかと思います。これらについて評価が行われました。
 2ページの下に(2)安全性の項目がありますが、不具合症状が455眼に発現し、そのほか全体で912件の不具合症状が現れたということが、実際の集積の中で分かったわけですが、特段に承認時において想定し得ないものというわけではなく、大きな違いはないということで評価がされております。
 次の3ページの上から二つ目の段落に書いてありますが、30日を超えて連続装用が行われたケースが14名おられるということでした。この製品は30日までが連続装用ということになっている製品ですので、この部分について、使用者に受けるコンプライアンスについて、さらなる注意喚起が必要であろうということで、そのコンプライアンスの向上のための努力ということを今回申請者の企業に伝える対策を講じる予定です。
 そのほか3ページの下の4にあるとおり、重篤な不具合ということで、麦粒腫が1件ありましたが、これについては改めて報告を受けた上で、まだ1例ですので、この先少し推移を見ていくということで、特段現時点での対応はないというものです。これについても承認内容について変更等は今回は不要という判断をしております。
 資料6-3ですが、ここに書くメニコンが供給するライフリーという製品に関しては、資料6-2で説明したものとほぼ同じ製品ですので、両方併せた形での再審査の評価がなされておりますので、結果については同様ということで省略をさせていただきます。
 資料6-4は、整形用品ムコアップというもので、生化学工業が供給するものです。承認は平成18年ということで、1ページの確認等結果にあるとおり、本品はヒアルロン酸ナトリウムで、内視鏡的に粘膜の切除術を行うときに、粘膜の下の部分にこれを注入して盛り上げてその部分を切除する際に用いる注入剤です。
 これに関しても2ページに使用成績調査ということで893例が収集された結果として、さまざまな有害事象及び不具合の報告がありますが、特段これについても承認時に想定されたものと大きな違いはないということで、承認事項に関して変更は必要ないという評価がなされております。ただ3ページの1.「不具合発現状況」に1例死亡例がありましたので、この辺りは今後注意を要するということです。そのほか穿孔を起こした事例等がありますので、これらに関して、3ページの一番下の添付文書に記載する等、今回の再審査の結果を反映させる形で記載の整備をしていくことで考えております。早足で恐縮でしたが、再審査の関連4件は以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは、本件について、委員の先生方から御質問、御意見はありますか。再審査期間を設けておりまして、この再審査の結果は非常に大事なことだと思います。今日は添付文書の一部改訂をするところもありましたし、そういう意味では今後も大変な作業だと思いますが、再審査についての作業を進めていただけたらと思います。
 それでは、この件について、特段御意見がなければ、次に進ませていただきます。議題7「部会報告品目について」です。事務局から御説明をお願いします。
○事務局 議題7については、横置きの資料7、部分的に黄色のグラフ形式になっているものです。こちらは事前に既に御送付しておりますが、今回、前回の部会からの報告として、昨年10月から12月に承認された品目の御報告です。医療機器に関してはトラベキュルラーメタルモノブロック、ジンマー株式会社から8品目で3ページあります。4ページからは体外診断薬の報告の品目が8品目あります。もし何かありましたら、御意見等を後ほどでも結構ですので、御質問いただければと思います。以上です。
○笠貫部会長 各委員の先生方から御質問、御意見はございませんか。それでは、特に御意見がございませんでしたら、議題7はこれで終わらせていただきます。これで本日の議題はすべて終了ということになりますが、事務局から何かございますか。
○事務局 1点御報告させていただきます。本日、右肩資料9として「薬事分科会・部会手続きの見直しの検討について」として、左側が当日配付資料No.24となっている2枚紙の資料を配付しております。こちらの資料は、昨年末、薬事分科会が開催された際に、当日配付させていただいた資料です。
 趣旨、背景として、ドラックラグ、デバイスラグについて、社会的な関心が非常に高く、1の「背景」にありますが、「規制・制度改革に係る対処方針」「新成長戦略実現に向けた経済対策」「薬害肝炎事件の検証検討委員会」と多種多様な場で、この審査の期間を短くするための方策について検討すべきだという形で御指摘いただいているところです。
 2の「現状」ですが、作用機序が新しい新医薬品、新動物用医薬品、また構造・原理の新規性が高い新医療機器については、現行の規定では部会審議に加えて、分科会でも御審議をいただく。これ以外については部会審議の後は分科会の報告という取扱いにさせていただいております。
 先に述べた背景等も含めて、承認に関する分科会、部会の審議対象の範囲について見直しは、医薬品の審査の方ともいろいろと連携を図りながら、医療機器の方にも導入の検討をただ今しております。その結果等については、部会で御報告を今後させていただこうと考えております。以上です。
○笠貫部会長 ありがとうございます。ただ今の御報告について、御質問、御意見はございますか。
○荒川委員 細胞治療や再生医療などを、テッシュ・エンジニアリングに関しては、基本的に医療機器という分類で括られて、医療機器の部会で扱うということではあると思います。多分に生物的な側面もあるということで、今後日米欧の間でも、こういった分類に関して、新たなカテゴリーを設けて審査していくのが本来の姿ではないかと思います。
 もう一つは、薬事法というのは、どうしても業を成す者の法律という認識があると思います。医療の現場では保険適用が目的であって、特に自家移植のものに関しては、そういう組織を加工して、また元の患者に戻してやるというサービスの提供という概念が本来あっても良いと思います。そうしないとなかなか業として成立しないところがあって、開発にも非常に時間がかかってしまうし、その辺の基本的な考え方をもう少し整理していただけないかなという希望があります。
○事務局 今の回答ですが、再生医療等全般に関しては、今般、オーファンの指定をいただきましたジェイスは医療機器で承認しており、今のところ、薬事法で承認されたものはこれだけという形になっています。今、薬事法の概念で医療機器になるものもあれば、例えばサイトカインの放出によって、何らかの臓器の改善が図られるというものであれば、そのサイトカインを投与する手段で再生医療が用いられるということと、医薬品というのもあり得べしと考えております。そこは再生医療の形態が持ち得る特性なり、そういったものを総合的に判断させていただいた上で、事前に申請される予定の方とも御相談して、これを医薬品で行くのか、医療機器で行くのかという判断を、現時点ではさせていただいております。
 また、荒川先生が御指摘のように、GHTFの場、ICHの場とさまざまな国際的な調和の場で、こういった製品をどのように取り扱うかという議論は始まっているところですが、まだ実際にカテゴライズして、これをこうすると決めるところまでの事例の集積がなっていないのかと。そこは引き続きカテゴリーが明確化すれば、当然開発も進めやすいし、薬事も進めやすいというところは御指摘として十分理解させていただいて、今後、対応を図っていければと思います。
 もう一つは業の関係ですが、こちらも再生医療をどんどん進めるべきだという形での御指摘ということもあって、昨年度から再生医療に関するあり方検討会を今年度まで続けて行っております。昨年度に関しては医療機関内で行う際に、例えばある施設で作った細胞をまた施設で使う場合にどういう形でルールづくりができるかを、医政局を事務局として進めて、今年度は再生医療全般について、薬事法での在り方についてどうかという検討を進めて、先日、最終の報告案をいただいておりますので、そういったものも世の中に出ていくということで、先生が御指摘の点も、こちらもそういったものを積極的に広報することによって、現状の在り方についてお知らせする必要があると考えています。
○荒川委員 結局、製品というか価格が付くものは治験をやるという括りになっていますが、一方で医療技術は、いきなり先進医療なりを通じて保険適用ということになるわけです。医療技術なのか製品なのかというときに、自家の細胞を使った再生医療に関しては、業としてもなりにくい側面はもちろんあるとは思いますが、私自身は医療技術として括って、それに対する加工のところのサービスの提供というように括った方が、医療現場からすれば理解はしやすいと思いますし、そういう基準を新たに設けていただいた方がいいような気がします。
○笠貫部会長 私の司会の不手際で時間が延びましたことをお詫び申し上げます。今日の議題の内容は、最初の認証基準はクラスIIを、すべて認証にするということから始まり、デバイスラグの話も含めて、最後は分科会と部会の見直しもあり、部会の意義づけも大きく変わってきています。最後には再生医療の問題まで含みまして、大きな時代のうねりの中で本部会がどういう立ち位置で、役割を果たしていくのかということを改めて認識させていただきました。私の方からは進行を終わらせていただきます。
○医療機器審査管理室長 本日はありがとうございました。次回の部会につきまして、現在、日程調整中ですので、決まり次第、場所等を含めまして、御連絡をさせていただきます。目処としては3か月ごとに一度は開くことで、ここのところやってきておりますので、そのぐらいを目処に御案内できればと思っております。
 よろしければ、これをもちまして本日の部会は閉会とさせていただきます。長時間ありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催され、個別案件以外は公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 高江(内線 2912)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)> 平成23年3月2日薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会議事録

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