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2011年2月25日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録

医薬食品局

○日時

平成23年2月25日(金)


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(14名):五十音順 敬省略

 新 井 洋 由、 庵 原 俊 昭、 奥 田 真 弘、  菊 池   嘉、

 清 田   浩、 佐 藤 俊 哉、 清 水 秀 行、 ○土 屋 友 房、

 中 島 恵 美、 半 田   誠、 前 崎 繁 文、  山 口 照 英、

 山 本 一 彦、◎吉 田 茂 昭

(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(4名):五十音順 敬省略

 大 槻 マミ太郎、 鈴 木 邦 彦、 田 村 友 秀、  濱 口   功

行政機関出席者

 成 田 昌 稔 (審査管理課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森   和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

 赤 川 治 郎  (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催させていただきます。
 本日は、お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。
 最初に、薬事・食品衛生審議会の委員の改選が行われまして、この部会につきましても新しく委員の任命が行われたところでございます。つきましては、お手元にございます医薬品第二部会名簿に即しまして、委員の先生方を私から御紹介申し上げたいと思います。
 新井洋由委員、庵原俊昭委員、本日御欠席の大槻マミ太郎委員、奥田真弘委員、菊池嘉委員、清田浩委員、佐藤俊哉委員、清水秀行委員、本日御欠席の鈴木邦彦委員、本日御欠席の田村友秀委員、土屋友房委員、中島恵美委員、本日御欠席の濱口功委員、半田誠委員、前崎繁文委員、山口照英委員、山本一彦委員、吉田茂昭委員です。
 また、この部会の部会長でございますが、1月24日に開催されました薬事分科会におきまして選出が行われておりまして、この医薬品第二部会につきましては、吉田茂昭委員に部会長をお願いすることとされておりますので、御報告申し上げます。さらに、部会長代理でございますが、規定により部会長から御指名いただくこととなっております。吉田委員、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 本部会では、私としては土屋委員に是非お願いしたいと思っております。いかがでしょうか。
○審査管理課長 それでは、部会長代理につきましては、土屋委員にお願いしたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 土屋委員、部会長代理席に御移動お願いいたします。
 本日の委員の出席についてですが、現在のところ、当部会委員数18名のうち14名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを報告いたします。 それでは、吉田部会長、以後の進行をお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1~4をあらかじめお送りしています。この他、資料5「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料6「専門委員リスト」、資料7「競合品目・競合企業リスト」を配付しています。また、当日配付資料といたしまして、資料8「医療用配合剤に求められる事由の4.のみに該当する経口医療用配合剤部会審議までの流れ」を配付しています。
 続きまして、本日の審議事項に関する資料7「競合品目・競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
 資料7を御覧ください。「フィニバックス」ですが、本品目はカルバペネム系抗生物質であり、重症・難治性感染症に対する1日当たり1g×3回の用法・用量を追加するものです。同様の効能・効果を有する薬剤として資料にお示しする品目を競合品目として選定しています。
○吉田部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものとします。次に、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
 議題1「フィニバックス」については、退室委員は奥田委員、議決に参加しない委員は前崎委員でございます。
○吉田部会長 本日は、審議事項は1議題、報告事項が3議題となっています。
 それでは、議題1に移ります。
 奥田委員におかれましては議題1の審議の間、別室で御待機いただくこととします。
── 奥田委員退室──
○吉田部会長 議題1について、機構から概要を説明してください。
○機構 議題1、資料1「医薬品フィニバックス点滴用0.25g及び同キット点滴用0.25gの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、塩野義製薬株式会社が創製した注射用カルバペネム系抗菌薬であり、本邦では、各科領域の感染症を適応として平成17年に、また、キット製剤が平成18年に承認されています。
 通常、感染症の治療開始時に原因菌を特定してその感受性を確認することは容易ではなく、重症・難治性感染症では、症状の重篤度から治療の緊急性を要したり、先行薬が影響したりすることから、特にこれらの確認が難しいとされています。こうした状況から、原因菌が不明あるいは薬剤感受性が不明の場合は、低感受性菌と考え初期には高用量の抗菌薬を投与することが必要であるとされています。
 このような背景から、申請者は、重症・難治性の感染症の治療には本剤のより高用量での臨床使用を可能にすることが必要と判断し、既承認用法・用量の2倍量にあたる1g1日3回投与の用法・用量の開発を行ったと説明しています。なお、海外では、0.5g1日3回の用法・用量にて承認されております。
 本品目に関する専門協議に際し、本剤の専門委員としては、資料6にありますとおり、6名の委員を指名し、御意見を賜りました。
 機構における審査内容のうち、本剤の臨床評価について概略を説明させていただきます。
 成人については、審査報告書39ページの表に記載していますように、重症・難治性の敗血症、肺炎、腹膜炎・腹腔内膿瘍等を対象に実施した臨床試験において、有効性評価対象集団である73例における投与終了時の臨床効果について、一定の有効性が確認できたこと、投与終了後の有効性の維持についても、特定の集団及び症例で再燃・再感染が増加する傾向は見られなかったことから、本剤1g1日3回投与による重症・難治性感染症に対する有効性は期待できると判断しました。
 また、審査報告書43ページの表に記載していますように、安全性について、これまでに実施した臨床試験成績を基に評価を行った結果、既承認の用法・用量に比べて1gTIDでは、副作用発現率が増加する傾向が認められたものの新たな特段の懸念はないと判断しました。なお、発現頻度が増加する傾向が認められた肝・胆道系検査値異常及び下痢については、製造販売後に詳細な情報収集を行う必要があると判断しました。
 機構は、以上のような審査を行った結果、重症・難治性感染症に対する本剤1gTIDの有効性は認められ、また安全性は忍容可能と判断し、本剤の用法・用量として1gTIDを追加で設定することは可能であると判断しました。
 なお、専門協議を踏まえて、既承認の用法・用量のうち増量規定で設定されていた0.5gTIDについては、1gTIDと同様に重症・難治性感染症に対する用法・用量として推奨することが望ましいと判断しました。ただし、それぞれの用法・用量が適切に選択できるように、これまでに集積された臨床的なエビデンスを整理して十分な情報提供を行うなど、本剤の適正使用に努めることが必要であると判断しました。
 したがって、審査報告書の2ページの用法・用量にて承認して差し支えないと判断しました。
 本剤の再審査期間については、4年と設定することが妥当であると判断しております。 薬事分科会では報告を予定しております。以上です。
 御審議のほど、よろしくお願いいたします。
 続いて、事前に佐藤委員より御質問をいただいております。この場をお借りしまして、その質問の内容の概略と機構の考えについて述べたいと思います。
 1点目ですが、「初回申請時の臨床試験成績について、今回、対象が重症・難治性感染症となっていますが、初回申請時に実施した臨床試験で、今回の重症・難治性感染症の定義に当てはまる試験参加者はいらっしゃらなかったのでしょうか。」との御質問をいただきました。
 こちらについて、初回申請時の試験では、一部、重症・難治性の感染症が含まれていたものの、多くは中等症の感染症を対象としておりました。また、初回申請時の試験では、今回の試験で設定した「重症・難治性の判断基準」を設定していなかったため、より幅広い患者が組み入れられていたものと考えられます。
 2点目は、「R1434試験について、審査報告書では、試験参加者数が101名であったものの、有効性解析対象が73名であったことを検討されています。その際、『判定不能』の14名については、判定不能と判断した理由を精査されていますが、『登録後に対象疾患外であることが判明した2例』については除外はいたしかたないとしても、残りの12名の参加者は少なくとも分母には加えた評価も必要ではないかと考えます。有効性解析対象の73名に判定不能の12名を加えますと、有効率は64.7%(55/85)、95%信頼区間53.6~74.8%、全参加者87名に加えますと有効率63.6%(63/99)、95%信頼区間53.4~73.1%となり、審査報告書49ページ下方に述べられています『しかし、重症・難治性の感染症に対する治療では、ガルバペネム系薬であるMEPM、パニペネム(PAPM)、IPM/シラスタチン(IPM/CS)の既承認の用法・用量(最大2g/日)における有効率はいずれも60%前後と報告されている(49ページ、下から3-6行)』とも合致した数値となり、ドリペネム1gTIDでも同程度の有効性しか示せないとも考えられますが、いかがでしょうか。」との御指摘をいただきました。
 こちらについて機構は、これまで、判定不能例を除いた集団での解析を行っていたため、報告書で記載したように、そのような解析を行っておりませんでした。しかし、判定不能例を含めた解析については、保守的な評価についても検討しておくべきであり、重要な御指摘であると理解しております。御指摘どうもありがとうございました。
 なお、先生に御指摘いただいたように、判定不能例も含めて、有効率を算出した場合には、類薬で報告されている有効率と同程度になります。
 ただし、類薬での有効率については、あくまで申請者が根拠としているにすぎず、機構としては重視しておりませんでした。審査報告書では、有効率に対する機構の見解は明確に記載しておらず、類薬に比べて本剤がより高い有効性が期待できるのではないかと、誤解される可能性のある記載になっていたかもしれず、申し訳ありませんでした。
 改めて御説明申し上げますと、機構としては、今回の結果をもって、厳密な基準の下に、本剤が類薬に比べて優れた効果を発揮するものとは評価しておらず、あくまで、今回の臨床試験で対象とした患者において、一定の有効性が期待できる、また、他の抗菌薬に大きく劣るものではないとの結果を確認したに過ぎないと思っています。
 つまり、今回、得られた結果としての有効率については、他の試験等の結果と比較考察できるものではないと考えます。
 なお、御指摘いただいた部分については、添付文書(案)4ページの臨床成績の項に、組み入れ患者及び有効性評価対象例などの詳細について記載し、情報提供することを考えておりました。
 今回の先生の御指摘を踏まえて、添付文書以外の情報提供においては、判定不能例を含めた有効率についても示すように、また、有効率の比較をもって類薬よりも優れた効果が期待できるとの誤解を招かないような情報提供を行うように、指示したいと思います。
 最後の3点目は、「中枢神経系への副作用についてですが、審査報告書49ページ上部に『以上より、R1434試験について中枢神経系の副作用の発現率は2.0%(2/101例)と低く、初回承認時までの発現率0.6%(5/835例)と大きく変わらなかった(p=0.1691)ことから、本剤1gTID投与による中枢神経系の副作用に関する安全性の懸念増大はないと考えた』と述べられています。この結論は検定結果に基づいてくだされているようですが、p値が大きくなったのは、中枢神経系副作用の発現率が小さくR1434試験では検出力不足であったことが原因とも考えられます。
 R1434試験と初回申請時までの中枢神経系副作用発現率の比をとると3.3倍となっており、95%信頼区間も0.65~16.8となり、増大している可能性があるようにも思われます。
専門協議でも『中枢神経系障害については、今回の申請用量では海外で承認されている投与量よりも更に高曝露となることもあり、痙攣以外の事象についても注意深く情報収集することが望まれるとの意見等が述べられ(63ページ、下から6-9行)』とありますが、引き続き情報収集するだけではなく、中枢神経系についてもリスクが増大している可能性を注意喚起する必要はないでしょうか。」との御指摘をいただきました。
 こちらについて機構は、中枢神経系の副作用については、御指摘のように、通常用量に比べて1gTIDでは、発現率が上昇している可能性を完全に否定することはできないと考えます。ただし、今回の試験で得られた情報が限られていることから、臨床的な観点から、得られた事象の重篤度や因果関係などを考慮した上で、既承認の用法・用量に比べて特にリスクが高くなる可能性は示唆されていないと判断しました。
 また、カルバペネム系薬の特徴的な副作用として中枢神経系の症状が知られており、既に、現行の添付文書において重大な副作用(類薬)として注意喚起を行っており、更なる注意喚起の必要はないと判断しました。
 申請者には、今回の先生の御指摘を踏まえて、中枢神経系の副作用に対する注意喚起については、より慎重に対応すべき旨を指示したいと思います。また、製造販売後の情報収集については、より詳細なデータを収集できるように、その調査項目について更に検討するよう指示したいと思います。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。佐藤委員、御意見はございますか。
○佐藤委員 大変よく分かりました。ありがとうございました。
○吉田部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。前崎委員、どうぞ。
○前崎委員 抗菌薬の有効性を高めるために用量を上げることについては理解できますが、反面、耐性菌については十分注意が必要だと思います。本薬剤は、海外よりも高用量であり、特に最近は薬剤耐性緑膿菌や耐性アシネクトバクター等、日本ではカルバペネムの耐性菌が非常に問題となっています。この耐性菌に対して、本薬剤の用量を上げていくことに関しては、今後どのような対処を行っていこうと機構ではお考えですか。
○機構 御指摘ありがとうございました。前崎委員がおっしゃるとおり、耐性菌と抗菌薬については、非常に重要な問題だと思っています。今後、機構としては、適正使用をいかにしていくのかが重要な部分になると思っております。申請者については、安易に高用量を投与するのではなく、本当に必要とされる患者さんにのみ本剤が投与されるように、情報提供や適正使用の啓発等、適宜学会とも協力しながら行っていくことを指示しております。
○前崎委員 実際にT>MICで見ると、1日1gを3回とすると、有効な菌種は恐らく腸球菌と緑膿菌です。そのことから、後は1日0.25gを3回だけで、ほとんど十分に満たします。ところが、国内の第III相試験を見ると、腸球菌と緑膿菌に関しては、菌が減っているだけで、消失はしておりません。そのため、腸球菌や緑膿菌のような重症・難治性感染症に、1日1gを3回といった用量でも、有効性が確認されなかった場合には、投与量を見直すこともあり得ますか。
○機構 今回の試験は、非常に症例数も少なく、有効性について明確なプロファイルが描けたとは思っておりません。製造販売後調査については、有効性についても十分な情報収集を行い、そのような結果が出た時は、再審査という枠組の中で見直し、検討を行っていくこともあり得ると思います。
○前崎委員 もう1点あります。重症・難治性の定義が非常に曖昧だと思います。国内第III相試験では、定義がいくつかあります。添付文書(案)上には記載されていないのですが、このような定義をきちんと明確化し、添付文書等で臨床側に知らせる必要があると思います。いかがでしょうか。
○機構 その点についても、専門協議の中でいろいろと議論しました。現状として考えておりますのは、今回の臨床試験で対象となった試験の基準、その点について添付文書以外で情報提供をし、また、具体的にどのような疾患群の背景を持った患者さんに対して、有効性が認められたのかということも情報提供していきたいと思います。併せて今回の用量だけではなく、既承認の用量でのエビデンスもありますので、そちらとの比較も含めて、望ましい用法・用量の情報提供ができればと思っております。
○前崎委員 その際、考えて欲しいことがあります。重症感染症と難治性感染症とは、言葉が全く違いますが、今はこれらを一緒に考えてしまっています。重症感染症については、臨床側としては、効かなければ高用量にすることは理解できます。しかし、難治性感染症は、様々な抗菌薬を使って無効であった場合の症例となりますので、将来的な話ですが、区別して適応症その他を考えていただいた方が良いと思います。どのように考えるのかは、今後の問題になると思います。
○機構 御指摘ありがとうございました。検討させていただきたいと思います。
○吉田部会長 今の前崎委員の御指摘は、大変重要だと思います。カルバペネム系の増量申請はもう1件ありますが、3gの申請を私達が認めた場合、その後始末まできちんと考えていかないと収拾がつかなくなることもあり得るという、大変貴重な警鐘だと思います。そのため、市販後の有効性については、きちんとした調査が必要であり、重症と難治性をプロスペクティブに見て、どこかできちんと分ける必要もあります。定義をしっかりと拾い出していくという作業は、是非ともやって頂きたいと思います。ほかに、御意見はございますか。清水委員、どうぞ。
○清水委員 適正使用を推進するという中で一番重要なことは、用法・用量の記載の方法であると私は思います。今回の用法・用量の記載の中で一番問題なのは、0.5gTIDの位置付けをどのように評価するのかということです。こちらをはっきりしておかなければ、添付文書の用法・用量の記載が分かりにくくなります。つまり、今回の記載は、0.25gの使用から最大量1gTIDという書きぶりになっていますが、0.5gTIDの位置付けをきちんと添付文書の用法・用量の中に書くべきだと思います。いかがでしょうか。
○機構 その点についても、専門協議でいろいろと議論をしました。簡単に議論の内容を含めて御説明申し上げます。
 本剤の通常用量は、既承認の用量ですが、0.25g1日2回又は3回という設定がされておりますが、中等症以上の感染症を対象とした0.25g1日2回による比較試験等の結果から設定されたという経緯があります。また、既承認の上限用量であり、今御指摘いただきました0.5g1日3回については、一般に重症感染症と取られる全身性の感染症、敗血症や感染性心内膜炎、院内肺炎に対して、初回承認時までに探索的な検討が行われ、また、海外においても重症・難治性感染症に対する用法・用量として開発、承認されてきた経緯があります。
 このような経緯から0.5gTIDについては、通常用量からの増量規定という位置付けよりも、全身性感染症や院内肺炎などの重症・難治性の感染症や患者重篤度が重度の感染症患者に対して、治療効果を発揮できる用法・用量と捉えるのが適切ではないかと考え、他の抗菌薬と同様に重症・難治性感染症に対する用量の上限のみ設定することが適切であると判断しました。
 なお、専門委員からも機構の判断について御了解いただいております。ただ、既承認の上限用量の記載が用法・用量から削除されてしまうということから、それぞれの用法・用量の位置付けについては、重症・難治性感染症がどのような疾患、病態であるのかを具体的に示すと共に、重症・難治性感染症に対して本剤を投与する場合、いずれの用法・用量を選択すべきか、これまでの臨床試験成績及び製造販売後調査等の成績や指定される症例の指示等を含めて情報提供を行い、安易に高用量投与が行われないように適正使用に努めるべきと考えております。
 また、現在、申請者の方には、情報提供資材を含めた適正使用の方策について指示しており、具体的な情報提供資材の内容については確認を行っているところです。
 御指摘のように、添付文書で書くべきか迷ったのですが、専門委員の先生方も含めて0.5gTIDは、重症・難治性感染症に対して推奨されるべき用法・用量であるというところで、通常用量としての記載との並びで、どう書き分けていくのか、また、添付文書でそこまで細かく書き分けることはなかなか難しいのではないかと思っています。そこで、その他の情報提供資材で現場に情報提供を行い、適正使用を図っていくのが良いということで御了解いただきました。
○清水委員 類薬の従来の書き方と違っていると言われれば、そのとおりかもしれませんが、記載することは可能だと思います。例えば、重症感染症の場合には0.5gTIDとし、最高用量は1gTIDとするという書きぶりは、記載すること自体は可能だと思いますが、情報提供をきちんと行い、適正使用が守れるように御指導いただければと思います。
○機構 御指摘ありがとうございました。
○吉田部会長 結論的に、2ページより3ページの方が、分かりやすいということですね。その辺を少し工夫したら良いと思います。抗がん剤であれば、A法・B法といったように、この場合も一般的なA法と重症の場合のB法・C法といった書きぶりができると思います。よろしくお願いします。ほかに、御意見はございますか。清水委員、どうぞ。
○清水委員 細かいところで恐縮ですが、添付文書(案)の1ページの最初にある「フィニバックス点滴用0.25g」と「フィニバックスキット点滴用0.25g」の右肩に、それぞれ1.、2.と番号が振ってあります。承認にかかわる箇所にも、1.、2.が使われております。通常こちらは、「1.、2.」ではなく、「点滴用0.25g」や「キット点滴用0.25g」などと書かれております。添付文書の書き方の横並びでいけば、そこに剤形を書いて承認番号、薬価収載日、販売開始日等の記載になるかと思います。
 この「1.、2.」というのは、どのような意味なのでしょうか。添付文書は、剤形によって違いがあるのかと思い、探した結果、承認番号が「1.、2.」となっていて分かりにくいと思いました。御検討をお願いします。
○機構 御指摘ありがとうございました。
○吉田部会長 ほかに、御意見はございますか。よろしいでしょうか。
 有害事象に関して、なかなか分かりにくい部分もあると思います。中枢神経は、確かに気になるのですが、重症感染症の場合、傾眠がちということが、本当に薬によって起こったのか、それとも、病態によって起こったのかは、よく掴みきれないところです。それだけに、投与する患者さんの病態が重症であることを考えると、市販後には相当ストリクトなきちんとした調査をお願いしたいと思います。ほかに、ございますか。
 ありがとうございました。それでは、議決に入りたいと思います。
 なお、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。奥田委員をお呼びしてください。
               ── 奥田委員入室 ──
○吉田部会長 それでは、報告事項について、説明をお願いします。こちらは、一括で進めますか。それとも、一つ一つですか。
○機構 まとめて進めさせていただきます。報告事項議題1、資料2「医薬品ハーセプチン注射用60及び同注射用150の製造販売承認事項一部変更承認について」、医薬品医療機器総合機構より御報告いたします。
 ハーセプチン注射用60、同150は、HER2に対するヒト化マウスモノクローナル抗体であり、HER2に特異的に結合し、ナチュラルキラー細胞及び単球を作用細胞とした抗体依存性細胞障害作用等を惹起することにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている抗悪性腫瘍剤です。現在は、「HER2過剰発現が確認された転移性乳癌」及び「HER2過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法」の効能・効果で承認されております。
 今般、中外製薬株式会社から、「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。
 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。
 報告事項議題2、資料3「医薬品メロペン点滴用バイアル0.25g、同点滴用バイアル0.5g及び同点滴用キット0.5gの製造販売承認事項一部変更承認について」、御報告いたします。
 メロペネム水和物(以下、MEPM)は、住友製薬(現、大日本住友製薬)で開発されたカルバペネム系薬でございます。国内では、1995年6月に各種適応菌種及び適応症を効能・効果として承認を取得し、その後、2004年4月に小児の用法・用量、化膿性髄膜炎及び髄膜炎菌の効能・効果の追加及び2010年1月に発熱性好中球減少症の効能・効果の追加に係る承認を取得しております。
 また、本剤は、海外ガイドラインや教科書において、1日3g(1回1gを1日3回)の用法・用量が推奨されており、米国等では、1日3gの用法・用量で承認されております。一方、国内における本剤の一般感染症の重症・難治性感染症患者に対する1日用量の上限は2gとされていることから、今般、一般感染症の重症・難治性感染症患者に対する1日用量の上限を2gから3gへの変更を目的とした、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされております。
 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、一般感染症の重症・難治性感染症における本剤1日3g投与について、一定の有効性は示されており、安全性も許容可能であったことから、資料3に記載いたしました用法・用量にて、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。ただし、本邦における1日3g投与の安全性・有効性情報は限られていることから、製造販売後には情報収集する必要があると考えております。
 報告事項議題3、資料4-1~4-2「医療用医薬品の再審査結果について」、まとめて御報告いたします。これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。
 資料4-1は、一般的名称は「クリンダマイシンリン酸エステル」、販売名は「ダラシンTゲル1%」のもの、資料4-2は、一般的名称は「ネビラピン」、販売名は「ビラミューン錠200」のものでございます。
 これらの品目につきまして、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験の成績等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。前崎委員、どうぞ。
○前崎委員 メロペンは、投与期間が14日とありますが、類薬のフィニバックスにはそのような規定がありません。なぜ、このような違いがあるのでしょうか。
○機構 メロペンは、恐らく初回承認時の用法・用量として14日以内と書かれております。今回審査した内容は、重症・難治性の上限を2gから3gに変えるということを目的としており、メロペンとフィニバックスの用法・用量の投与期間の記載の違いについては、確認しておりません。
○前崎委員 できれば、投与期間は規定していただいた方が良いと思います。耐性菌の問題で、長く投与されると困ります。できれば、フィニバックスの方をメロペンと同様、原則14日以内としていただいた方が良いかと思います。
○機構 御意見ありがとうございました。
○吉田部会長 ほかに、御意見はございますか。
 私から無理を承知でお願いがあります。ハーセプチンの件ですが、消化管間質腫瘍ではイマチニブがC-kit陽性の症例ということで適用を取っています。例えば、HER2陽性の固形がんということで適用になるのかということについて、お伺いしたいと思います。世界的に見ても、臨床試験で有効性が承認されたのは、まだ胃癌と乳癌だけですが、実際にHER2陽性の大腸癌は少数ながらみられます。今回、胃癌で承認された場合、そういったものにも使われる可能性があると思いますが、そのような時には、高度医療やオーファンといった形で、適用を拡大していく方法になるのでしょうか。機構側と審査側のお話も伺っておきたいと思います。救える手段や対策等何かございますか。お願いいたします。
○審査第五部長 救えるかどうか分かりませんが、メーカーの開発の意向も1点考える必要があることと、Evidence-based medicineの問題として、例えば薬剤としての位置付けや吉田部会長がおっしゃっていた大腸癌の治療のどのような段階に使用すべきかということも考える必要があります。また、適正使用に関しては、常時進めていく必要のある話ですが、大腸癌での適用についてメーカーや我々も含めてきちんと議論をする必要があると思います。
○吉田部会長 要するに、私が申し上げたいことは、本剤はHER2が過剰発現している癌細胞のエピトークを抗体でブロックすることで腫瘍抑制効果を発揮するので、HER2が出ていなければ全く使う意味がありません。そのことから、逆にHER2が出てさえいれば、薬が効くと考えられ、イマニチブがGISTでC-kitが発現している場合は効くけれど、発現していない場合には効かないということと同じだと思います。GIST自体は胃や腸管など多臓器で発生してますので、ハーセプチンの場合にも、臓器にこだわる意味が本当にあるのか少し疑問に思っているのですが。
○審査第五部長 メカニズム的に、非臨床的にはそのように考えることもできると思います。しかしながら、臨床的に意味のある効果が出るのかは、まだ明確ではないと思います。そのため、PMDAは、そちらのエビデンスをつくるべきであると考えているということは述べたいと思います。
○吉田部会長 分かりました。ありがとうございました。ほかに、御意見はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 その他の議題になります。当日配付資料8「医療用配合剤に求められる事由の4.のみに該当する経口医療用配合剤部会審議までの流れ」、について事務局より御報告いたします。こちらは、医薬品第一部会での議論を踏まえての整理です。
 2枚目ですが、対象範囲から説明したいと思います。「平成22年10月医薬品第一部会の結果について(経口配合剤の取り扱い)」の下の(参考)にお示ししておりますが、これまで医療用配合剤については、次のいずれかの事由に該当するものを認めるということで取り扱ってきております。「1.輸液等用時調整が困難なもの」、「2.副作用(毒性)軽減又は相乗効果があるもの」、こちらは配合によって違うということです。「3.患者の利便性の向上に明らかに資するもの」、「4.その他配合意義に科学的合理性が認められるもの」とありますが、今回の議論及び措置というのは、4.に該当するものについてを対象としております。つまり、相乗効果や副作用の軽減について特段の効果があるというものは、対象外です。
 昨年の医薬品第一部会において、経口糖尿病薬の配合剤の審議を契機とし、議論の結果、「1.経過」の白い○二つのとおり、御了解、結論をいただいております。
 まず、単剤の承認後は、配合剤ですので配合成分それぞれの単剤がありますが、その使用経験が少ない段階には、配合剤で発現した有害事象が一つの成分によるものか、成分を配合したことによるものかが、分からないこともあり得ます。そのため、適切な安全対策が講じられず、適正使用の推進に影響を及ぼす可能性があるということです。
 このことを踏まえて、配合剤のベネフィットとリスクのバランスを考慮し、より安全サイドに立った措置として、4.に該当する経口配合剤については、原則として最も新しく承認された単剤の承認から、およそ1年を置いて承認することが適切とされました。
 この結論を受けて1枚目の紙を事務局で整理していますが、配合剤は、配合成分それぞれの単剤のうち、最後に承認されたものの承認から1年を経過してから、審議をお願いしたいと考えております。この間、単剤それぞれについて、市販直後調査、使用成績調査、処方実態調査等の結果が出てまいります。この審議の時点におけるデータということになりますが、こちらをお示しし、御議論いただきたいと考えております。
 以降、このような取扱いについて、医薬品第二部会の対象品目であっても、適用されるものがあれば、このような取扱いとしたい、ということで御報告いたしました。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
 少々分かりづらいのですが、事由4.のみに該当するというのは、輸液ができなかったり、副作用が軽減されるといった相乗効果が認められる等、患者の利便性が良くなる以外には、どのような科学的合理性があるのですか。
○事務局 その他ということですので、様々なものがあり得ますが、契機となった品目について申し上げれば、経口剤の服用の回数が減少するということと、これによってアドヒアランスの向上が認められるのではないかと考えられます。
○吉田部会長 それは、事由3.の利便性にはならないのですか。
○事務局 事由3.は、そのようなものではなく、様々なケースがあり得ると思いますが、例えば注射薬で、注射回数が2回から1回に減るものは、明らかに利便性が高いケースがあると考えます。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。ほかに、御意見はございますか。
 医薬品第一部会にて決められたということですので、特に意見するところではないかもしれませんね。よろしいでしょうか。
 それでは、本件については、御確認いただいたものといたします。ほかに何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は、既に御案内のように、4月28日(木)午後3時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。
○事務局 本日はどうもありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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