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2010年6月8日 平成22年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録

医薬食品局安全対策課

○日時

平成22年6月8日(火)
18:00~20:00


○場所

はあといん乃木坂413号室


○議題

(1)アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用について

(2)ディート(忌避剤)の安全性について

(3)その他

○議事

○事務局 
 ただ今から、「平成22年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を開催させていただきます。本日の調査会は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また傍聴者の方は、傍聴に際しての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと」、「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」などの厳守をお願いいたします。
 本日御出席の先生方におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。開催に先立って、委員、参考人の先生方を御紹介させていただきます。本日、御出席いただいている、本調査会の常任の委員の先生方を五十音順で御紹介させていただきます。
 国立医薬品食品衛生研究所副所長の大野先生です。獨協医科大学特任教授で、当調査会の座長であります松本先生です。なお、東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長の土屋先生は30分ほど遅れていらっしゃいます。
 続いて、本日御出席いただいている参考人の先生方を五十音順で御紹介させていただきます。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部室長の小川先生です。日本医科大学名誉教授の岸田先生です。浜松医科大学医学部附属病院手術部部長の白石先生です。国立医薬品食品衛生研究所薬理部長の関野先生です。国立精神・神経センター武蔵病院名誉院長の埜中先生です。東京医科歯科大学大学院心肺統御麻酔学教授の槇田先生です。癌研有明病院麻酔科部長の横田先生です。国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第4部長の和田先生です。
 本日は、安全対策調査会委員の五十嵐先生、参考人の西川先生、三宅先生、山田先生、吉村先生は御欠席です。これ以降は議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。以降の議事進行は松本先生にお願いいたします。

○松本座長 
 まず、事務局から審議参加に関する遵守事項について説明をお願いいたします。

○事務局 
 薬事分科会審議参加規程について報告いたします。本日御出席された委員の方々の、過去3年度における関連企業からの寄付金・契約金等の受領状況を報告いたします。本日の議題は、議題1が、アドレナリン製剤をハロゲン系吸入麻酔薬と同時にする場合の安全性に関するものですので、使用上の注意の改訂を要望してきた、アドレナリン含有製剤の製造販売業者及びその競合企業である会社を調査の対象としております。要望企業は、アストラゼネカ株式会社、第一三共株式会社、テルモ株式会社、マイラン製薬株式会社です。これらの企業の競合企業は扶桑薬品株式会社、丸石製薬株式会社となっております。
 議題2は、ディート製剤の安全性に関するものですので、ディート製剤の売上高の多い方から上位三つの企業であるアース製薬株式会社、ジョンソン株式会社、フマキラー株式会社から、それぞれ過去3年度における先生方の寄附金等の受取について申告いただきました。なお、競合品目・競合企業については、事前に各委員に資料をお送りして確認いただいております。
 今回、各委員の申し出の状況から審議への不参加の委員はおりませんでした。なお、土屋先生がアストラゼネカ株式会社、第一三共株式会社から、50万円以下の受取との申告がありましたので報告させていただきます。

○松本座長 
 ただ今、事務局から説明がありました審議参加についてはよろしいでしょうか。特にないようでしたら、競合品目・競合企業の妥当性を含めて御了解いただいたものといたします。ありがとうございました。次に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。

○事務局 
 議事次第と一緒に綴っております、本日の配付資料一覧を御覧ください。<議題1関連資料>ですが、資料1「医薬品等の安全性に係る調査結果報告書」(アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用に関する調査結果)、参考資料1-1「アドレナリン含有局所麻酔剤及びアドレナリン注射液の添付文書記載変更について」(社団法人日本麻酔科学会要望書)、参考資料1-2「吸入麻酔薬による全身麻酔中の局所への血管収縮剤(エピネフリン)の使用状況ならびに偶発症発生に関する緊急アンケート」(社団法人日本麻酔科学会調査)、参考資料1-3「アドレナリン含有局所麻酔剤及びアドレナリン製剤のハロゲン含有吸入麻酔薬に係る禁忌の見直しについて」(アドレナリン含有製剤製造販売企業提出資料)、参考資料1-4「アドレナリン含有製剤及びハロゲン系吸入麻酔薬添付文書」です。
 次は<議題2関連資料>です。資料2-1「ディート製剤の安全対策の経緯」、資料2-2「ディート製剤の神経系への影響に関する試験結果」、資料2-3「国内における副作用等の発生状況、安全性に関する国内外の研究報告等の状況」、参考資料2-1「ディート(忌避剤)に関する検討会(平成17年8月)」、参考資料2-2「ディートを含有する医薬品及び医学部外品に関する安全対策について」、参考資料2-3「ディート製剤の添付文書」です。
 その他の議題ですが、<議題3の関連資料>がございます。参考資料3-1「レブラミド適正管理手順(RevMate)(案)の検討状況について」、参考資料3-2「ゲフィチニブ服用後の急性肺障害・間質性肺炎等に係る副作用報告の報告例数及び死亡例数」についてです。

○松本座長 
 議題1に移ります。議題1は「アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用について」です。事務局から資料の説明をお願いいたします。

○事務局 
 議題1「アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用について」を説明いたします。資料1を御覧ください。資料1は、厚生労働省医薬食品局安全対策課の依頼に基づき、アドレナリン含有製剤をハロゲン系吸入麻酔薬と併用することに関して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が調査した調査結果報告書です。資料1を中心に御説明いたしますが、適宜参考資料1-1~1-4を御覧ください。
 1ページの?T.「品目の概要」です。これは、今回調査した品目の概要ですが、詳細は8ページの別添1にまとめております。8ページにアドレナリン含有リドカイン製剤、アドレナリン製剤、ハロゲン系吸入麻酔薬について、それぞれ販売名や効能・効果等を掲載しております。
 1ページに戻りまして、?U.はこれまでの経緯等について御説明させていただきます。1.は国内におけるこれまでの状況です。アドレナリン含有製剤は、全身麻酔下の手術中の患者さんに、止血の目的等でしばしば投与されますが、ハロゲン系吸入麻酔薬による麻酔中に、アドレナリン含有製剤を併用すると、心筋のアドレナリン感受性が高まり、不整脈のリスクが高まることが知られております。一方、医薬品添付文書の使用上の注意においては、アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用について、アドレナリン含有製剤においては、ハロゲン系吸入麻酔薬との併用を禁忌としておりますが、ハロゲン系吸入麻酔薬の方では、アドレナリン含有製剤との併用について禁忌としておらず、これらの製剤の併用については2通りの注意喚起がなされている状況です。
 また、社団法人日本麻酔科学会より、参考資料1-1にお示しします要望書が、厚生労働省医薬食品局安全対策課に提出されたことも踏まえ、これらの製剤の併用時における安全性について調査したものが本報告書です。
 2.は海外における状況です。海外におけるアドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬併用に関しては、米国等の添付文書の記載状況を確認したところ、重篤な不整脈を防ぐ観点から、慎重に使用するということは記載されているものの、使用禁止、いわゆるコントラインディケーション(日本でいう禁忌)を設定している状況ではありませんでした。10ページの別添3に詳細をまとめておりますので、適宜御覧ください。
 2ページの?V.は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構において、今回併用に関して文献等の調査をした結果です。(1)は、麻酔科学会の安全性委員会医薬品適正評価ワーキンググループの方で調査いたしました、アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用についてでございます。この調査は麻酔科学会の方で、麻酔科学会の認定施設にアンケート調査を行ったもので、ハロゲン系吸入麻酔薬とアドレナリン含有製剤を併用した際の、生命に危険を生じたような偶発症例の発生状況を調査したものです。
 お示しするように、前向き調査と後ろ向き調査が実施されておりますが、前向き調査では、すべてのハロゲン系吸入麻酔薬において、重篤な不整脈の症例の発生は認められておらず、後ろ向き調査では、セボフルラン、イソフルランで0.03%の不整脈の発生があったとのことです。
 また麻酔科学会では、平成17年度に吸入麻酔法における偶発症例調査を実施していますが、こちらの調査では高度の不整脈又は心停止・高度不整脈を併発した者の発生率が、対10万症例に対してそれぞれ18、57であったとのことです。
 これに対して、このアンケート調査の結果では、併用したアドレナリンが原因と考えられた重篤な不整脈は、対10万症例当たりにすると、前向き調査ではゼロ、後ろ向き調査では1.2と非常に少数であり、結論として麻酔科学会の安全性委員会、安全委員会医薬品適正評価ワーキンググループでは、アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用に関して重篤な副作用は生じないと結論しております。なお、麻酔科学会の調査結果については、今回参考資料1-2として用意しておりますので、後ほど本日参考人としていらしている白石先生から詳細に説明をしていただければと存じます。
 続いて、3ページのガイドラインの調査状況を報告いたします。平成16年5月に麻酔科学会が公表した、麻酔薬及び麻酔薬関連薬使用ガイドライン第2版における、アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用に関する記載においては、「アドレナリンとハロタン等の揮発性吸入麻酔薬との併用により、心室性不整脈、心室細動をきたす危険が増大する」とされています。一方、「セボフルラン及びイソフルランでの併用はハロタンと比較して安全とされているが、これらの製剤の併用に際しては希釈濃度、投与速度、総投与量に留意し慎重に投与すること」とされており、またハロタンについては、「アドレナリンとの併用により不整脈発生の頻度が増加するため、併用には注意を要し、アドレナリンの許容量として10万分の1溶液で10分間に10mL以下、あるいは1時間に30mL」と規定されております。使用禁止という状況ではありませんでした。
 2.の国内副作用報告の状況です。平成16年度以降、アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用例において、重篤な不整脈等の症例は、アドレナリン含有製剤を主たる被疑薬とするものが8例、ハロゲン系吸入麻酔薬であるハロタンで0例、セボフルランで12例、イソフルランで1例の報告があり、計21例となっております。
 これらの症例の副作用の転帰を紹介させていただきます。回復や快方に向かった症例が19例、後遺症が2例でした。なお、後遺症の2例については、注釈5にありますように、アドレナリン含有製剤の製造販売業者及びハロゲン系吸入麻酔薬の製造販売業者から、それぞれ報告されている同一の症例でした。死亡例はありませんでした。この副作用の症例の概要については、17ページ以降にリストとして掲載しております。
 3ページの3.の公表文献の調査結果です。公表文献を調査したところ、ハロゲン系吸入麻酔薬が心筋のアドレナリン感受性を高めるというものがいくつかありました。3ページから4ページにまとめておりますように、特にハロタンにおいてその作用が強いとされております。これらの調査の結果を踏まえ、独立行政法人医薬品医療機器総合機構では、アドレナリン含有のリドカイン塩酸塩及びアドレナリン製剤と、ハロゲン含有吸入麻酔薬のハロタン、イソフルラン、セボフルランとの併用について、以下の三つの理由から、これらの製剤の併用に関しては慎重に実施すべき旨の注意喚起に変更することが妥当であると判断しました。
 理由をお示ししますと、?@欧米において、併用が禁忌となっていないこと。?A関連ガイドラインにおいて、併用は希釈濃度、投与速度、総投与量に留意し、慎重に投与すべきとされていること、臨床上これら併用の必要性が一定程度認められること。?B国内副作用報告の集積状況を確認した結果、併用により重篤な不整脈などをきたし、因果関係を否定できない症例があったものの、あらかじめ不整脈発生の可能性を踏まえ、希釈濃度、投与速度、総投与量に留意することで、重篤な転帰を防ぐことができると考えられることが、併用禁忌から、慎重投与に移しても問題ないという理由です。
 その下段でございますが、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の方で、公表文献において指摘されているハロゲン含有吸入麻酔薬が心筋のアドレナリン受容体に及ぼす影響が、セボフルラン及びイソフルランと比較しハロタンで大きいとされていた知見を踏まえ、セボフルランやイソフルランと同様に、ハロタンについてもアドレナリン含有製剤との併用禁忌の見直しについて専門家に意見を伺ったところ、次のような見解が出されております。
 学会の調査結果や、ハロタンの臨床現場での使用実態を踏まえると、ハロタンとアドレナリン含有製剤との併用は極めて限定的であることも勘案し、ハロゲン含有吸入麻酔薬の中でもハロタンによる重篤な不整脈等の発現のリスクが高いという点を注意喚起した上で、ハロゲン含有吸入麻酔薬として包括的に改訂することが妥当であるという意見でした。よって、機構の判断は妥当であるものという結論を専門家から得ております。
 以上、これら専門家の意見も踏まえ、最終的には5ページ以降にお示ししますように、アドレナリン含有製剤の使用上の注意におけるハロゲン含有吸入麻酔薬との併用禁忌を改訂し、これらの製剤の併用に関して慎重な投与を要する旨を注意するとともに、公表文献に基づき、ハロタン、イソフルラン、セボフルランが心筋のアドレナリン感受性に及ぼす影響を具体的に記載し、ハロゲン系吸入麻酔薬間で発現リスクに差異があることを注意喚起することが妥当であると最終的な判断としております。
 具体的な添付文書の改訂案は、6ページ以降に記載しておりますので御覧ください。ポイントの一つ目は、現在禁忌としておりますハロタン等のハロゲン系吸入麻酔薬を投与中の患者というものを禁忌の項目から、慎重投与の項目に移すというものです。ポイントの二つ目は、相互作用の項において、現在併用禁忌となっているハロゲン系吸入麻酔薬を、次の7ページにお示しするように併用注意とし、さらにハロタン、イソフルラン、セボフルランが心筋のアドレナリン感受性に及ぼす影響を具体的に記載し、ハロゲン系吸入麻酔薬間で不整脈の発現リスクに差があることを注意喚起するというものになっております。この改訂が認められましたら、ハロゲン系吸入麻酔薬の方にもアドレナリン併用時の不整脈等の発現リスクには差があることを記載するようにしたいと思います。
 なお、参考資料1-3はアドレナリン含有製剤の製造販売業者の方から今回提出された、アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬との併用禁忌の見直しに関する要望です。臨床使用実態や海外の添付文書の状況等を踏まえ、禁忌ではなく慎重投与や、併用禁忌ではなく併用注意とするような改訂案が提示されており、先ほどの報告書とほぼ同様の改訂案が提示されております。説明は以上です。

○松本座長 
 本日は、麻酔科学会の先生方が参考人として出席しておられますので、先生方の方から要望に至った背景や、学会の方で行った緊急アンケートに関して簡単に説明をお願いいたします。

○白石参考人 
 本日は、麻酔科学会からの要望に関する調査会を開いていただきましてありがとうございます。私は、安全委員会薬剤適正使用ワーキンググループのワーキング長の白石です。学会から、安全委員長の横田と参っておりますが、参考資料の緊急アンケート調査に関わり、その文献を作成した関係で、本日は私が説明させていただきます。なお、補足説明を横田からする場合もあることを御承知おきください。
 まず要望書について御説明申し上げます。2008年1月、エピネフリン含有リドカインの添付文書について、アドレナリン注射液に合わせた形で禁忌の項にハロゲン含有吸入麻酔薬が追加されました。これは、もともとアドレナリン添加リドカインとの間の添付文書に違いがあったものですから直された(?)ということです。もともとアドレナリンが販売されたときには何もなくて、その次に吸入麻酔薬ハロタンが販売されて慎重投与となっていました。ですから、ここのところで二つのねじれと申しますか、その語句が正しいかどうか分かりませんが、添付文書の差異が生じておりました。
 ただし、我々の方としても迂闊と言われればそれまでなのですが、そのねじれに対して気がつきませんで、エピネフリン添加リドカインの使用は併用注意だったものですから、先ほども述べられたように、アドレナリンの薬効である血管収縮による出血量の低下、並びに局所麻酔薬の効果の遷延、長時間作用になるということで、外科手術には非常に多く使われていました。この度の改訂で、吸入麻酔薬で現在使用しているものはハロゲン含有吸入麻酔薬ですので、この結果、エピネフリンあるいはエピネフリン含有のリドカインを使用していると吸入麻酔薬が使えない事態に陥りました。会員からの指摘があり、早速、このお示ししております要望書を提出し、元の「禁忌」ではなく「併用注意」という形に戻していただきたくお願いいたしました。
 続きまして、それに関して吸入麻酔薬とエピネフリン、あるいはエピネフリン含添加のリドカインの使用状況、及び副作用、特に不整脈の発生状況はどのようなものかと学会に問合せがありました。それに関しては、毎年偶発症調査を行っておりまして、年間120万例ぐらい収集しています。年間の全身麻酔症例が200万例程度と見込まれておりますので6割ほどの調査を行っております。
 しかしながら、先ほど事務局から説明のありました、吸入麻酔を併用しておいての不整脈、あるいは心停止というのは、あくまでも原因が何であれ吸入麻酔を併用して心停止あるいは不整脈が出たということ。それから吸入麻酔薬の種別、それからアドレナリンが原因かどうかということは偶発症調査からは読み取れませんので、緊急に後ろ向き調査2007年度1年間と、短時間ではありますが前向き調査1カ月ということで行いました。
 その結果90万例ほどの症例が集まりました。これも約半数ぐらいの症例がつかまえられたと思います。吸入麻酔薬で全身麻酔を行っている症例は、前向き・後ろ向きとも大体75%程度です。これは2008年度時点ですが、今はもう少し吸入麻酔薬の症例は減っているかに思われます。しかしながら、非常に多くの症例を吸入麻酔薬で行っています。それから、エピネフリンを併用していて、不整脈あるいは致死的な不整脈が起こった症例は極めて少ないということ。
 また、先ほども出ましたが吸入麻酔薬の使用の90%がセボフルランとイソフルランであること。また、そのうちの大半がセボフルランであること等々を勘案すると、先ほどの御説明のとおりエピネフリン、あるいはエピネフリン添加リドカインと、吸入麻酔薬の併用は安全であろうと。しかも、手術を遂行する上で、エピネフリンの使用は是非必要であることを踏まえ、禁忌から併用注意に改正していただきたいと学会は要望している次第です。以上です。

○松本座長 
 ありがとうございました。横田先生から何か追加することはありますか。

○横田参考人 
 麻酔科学会で安全委員長をやっております横田です。最近の医療事故とか医療訴訟の状況を見ていると、添付文書の重要性が最高裁判決にも引用されたりしますので、非常に気になるところです。海外の文献等も見ていまして、コントラインディケーション、つまり禁忌項目に入っているのではないのです。日本だけちょっと突出しているような状況なので、これはどうなのだろうというのが第1点です。
 第2点は、特に整形外科、それから形成外科の先生たちが手術するのに、どうしてもアドレナリン添加の局所麻酔薬を手術時に使いたいという要望もあります。確かに、事務局から説明していただいたように注意して使わないといけないのは事実なのですが、禁忌項目に入っていると使えないということなので臨床現場では非常に困っている状況です。そういうことで、2008年から白石先生をはじめ我々はこの点に関していろいろ調査・検討してきました。

○松本座長 
 ありがとうございました。事務局、白石先生、横田先生のお話に対して御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。白石先生、実際上ハロゲン系吸入麻酔薬を用いた麻酔下の手術において、アドレナリン含有製剤を併用するというか、ニーズは高いのですか、いかがなものですか。

○白石参考人 
 高いと思います。先ほど横田先生もおっしゃったように、特に出血しやすいような手術、整形外科で骨膜とか、あるいは血管豊富なものを扱っているような手術に関してはニーズは非常に高いと思われます。実際、外科系の先生方は、こういうことまでは御存じないということもあるのですが、我々がそういうことになったと説明するとびっくりされているのが現状だと思います。

○松本座長 
 併用した場合に、起こる副作用としては不整脈が多いみたいなのですけれども、岸田先生はこの点からコメントはありませんか。

○岸田参考人
 循環器内科の岸田です。この症例表を見ていただければお分かりいただけると思いますが、8例の報告例がありました。でも、この中で問題になる症例は、1~5までで、残りの原因は別のものだろうと思っております。その5例について見ますと、ハロゲンの吸入とエピネフリン系のものを併用して起きたというよりは、アドレナリン系の方のものが原因かなと。それで使い方についても用量が多かったということで、ちょっと不自然なところもあります。併用だから起きたというよりも、アドレナリン系そのものの作用かと感じております。
 症例を見ますと、麻酔科の先生方が実際に付いておられますので、敏速に対応されています。ですから死亡例がないというのはその辺だろうと思っております。私が見た感じでは、禁忌をこのまま継続するというところまでには至っていないのではないかと思っております。

○松本座長 
 ガイドライン等により使用量とか、投与速度などに留意し、実際に副作用が起こるかどうか、不整脈が起こるかどうかに注意すれば、禁忌や併用禁忌を改訂して、慎重投与や併用注意とするということでもよろしいということですか。

○白石参考人
 はい。

○松本座長
 その場合には、ハロゲン系の吸入麻酔薬の種類によって差を付ける必要があるかどうかについて、麻酔科の先生でも、岸田先生でもよろしいのですがコメントをいただけますか。

○白石参考人 
 実際問題として、セボフルラン、イソフルランに関してはあまり気になさらなくてもいいと思うのですが、ハロタンに関してはその二者とは少し違うと。ただ、現在ハロタンの使用量そのものが非常に少なく、小児の喘息発作に対して麻酔としてというよりも、治療薬のような感じの方が多いと理解しております。安全を期するのであれば、投与量に差別化をして注意を促した方がよろしいのではないかと理解しております。

○松本座長 
 事務局がここに示しております、改訂案のこのような条件を付ける程度でもいいということで理解してよろしいのでしょうか。

○白石参考人 
 はい。

○松本座長 
 7ページの添付文書のような条件付きであれば、比較的安全性が保たれると理解してよろしいですか。

○白石参考人
 はい。

○松本座長 
 実際の現場と、添付文書の改訂が少し乖離している面があると思いますので、ただ今の麻酔科学会の調査とか、国内の副作用報告状況、海外の添付文書の状況等から、アドレナリン含有製剤と、ハロゲン系吸入麻酔薬は注意して使用すれば、必ずしも禁忌でなくてもよいと思いますので、事務局の提案どおり、アドレナリン含有製剤とハロゲン系吸入麻酔薬併用に関しては慎重投与、併用注意としていただければと存じますが、よろしいでしょうか。特に御異論はないでしょうか。
(異議なし)

御異論はないようですので、そのようにさせていただこうと思います。事務局の方から今後の予定についてお話ください。

○事務局 
 御審議ありがとうございました。ただ今の御議論を踏まえ、アドレナリン含有製剤のハロゲン系吸入麻酔薬との併用については、製造販売業者に対して、要望のとおりの改訂を認める旨と、改訂内容について連絡することとします。

○松本座長 
 議題2に進ませていただきます。議題2は「ディート製剤の安全性について」です。まず事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 
 ディート製剤の安全性について御説明させていただきます。資料2-1、参考資料2-1を御覧ください。まず、初めにディートという成分について概要の御説明をさせていただきます。参考資料2-1の39ページ、右肩に資料2と四角で囲んであり「DEETとは」となっているページです。ディートは昆虫忌避剤、いわゆる虫よけ剤と呼ばれている製剤の成分です。昭和37年より医薬部外品が販売され、その後、平成2年には医薬品製剤が販売されています。平成17年当時、年間の規模は55億円ということで、現在もあまり大きく変わらないような状況で販売がなされています。
 40ページに用途等があります。いずれも蚊、ブヨ、サシバエなどの忌避、虫よけということで使われております。医薬品についてはスプレータイプ、部外品についてはスプレータイプに加えて塗るタイプがあります。大きな違いとしては、含有濃度で、医薬品については12%、部外品については10%以下という製品が発売されている状況です。
 資料2-1に戻りまして、これまでのディートを含有する製剤に関する安全対策の経緯について御説明させていただきます。併せて参考資料2-1も御覧ください。1番目は、平成17年6月3日となっておりますが、このときに独立行政法人国民生活センターより、このディートを含有する虫よけ製剤に関する調査結果が出されております。具体的な中身については参考資料2-1の4ページからです。この中で、子どもが使用した場合の安全性であるとか、消費者がより安全に虫よけ剤を使用できるように、使用方法、使用量、使用条件などについて、製品に具体的な表示をするようにといった指摘がありました。
 この調査結果に基づき、安全対策課などに対して3点の要望をいただいております。先ほどのように安全性を確認すること、表示の問題としては、使用方法、使用量やディートの濃度について表示をするようにという要望をいただいております。
 資料2-1に戻って、これを受けて、2番、平成17年8月15日に、薬事食品衛生審議会の中の専門委員によるディートに関する検討会を開催し、この中で国民生活センターの調査結果のほか、ラットの皮膚に塗布した試験に関する文献報告であるとか、海外の規制状況などについて検討いたしました。この資料が参考資料2-1で、先ほど4ページから国民生活センターの調査結果を御覧いただきましたが、このほかに44ページから、ラットに皮膚塗布したときの影響など文献、その後ろの方に海外の規制状況ということで61ページから載せております。このように当時の資料について、ディートの安全性を検討していただきました。
 この検討の結果ですが、一つは、我が国において多くの方々が40年以上使用しているにもかかわらず、特に薬事法に基づく重篤な副作用の報告はないということ、また海外において販売停止などの措置を講じている国はないということから、販売停止などの措置をとるだけの科学的根拠はないということ。国内製品については、当時使用方法などの表示に係る記載が不明確なものが多かったことから、製品の表示に使用方法の目安や、ディートの濃度を記載させる必要があるということ、先ほど、ラットの皮膚の塗布試験を御紹介いたしましたが、この中で神経系への影響が認められていて、改めてディートの神経系への影響に関する試験、動物を用いた試験を行うことが必要であること、また同様な研究報告、文献の発表などに注目をしていく必要があるということが確認されました。先ほど御覧いただきましたように、当時の概要が資料に出ております。
 資料2-1に示すように、8月24日にこの検討会の結果を踏まえて通知を発出しております。表題は「ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について」ということで、本日参考資料2-2としてお配りしております。この中で、いくつか検討会の結果を受けた対応をとっております。1つ目は、製造販売業者に対して、ディート製剤の使用上の注意、添付文書の改訂を指示し、用法・用量に関するところに、使用方法、小児の使用方法、眼に入ったときなどの注意、ディート濃度について記載をするように指示いたしました。2つ目は、このような使用上の注意の改訂を行った旨について周知することをお願いしております。
 これに加えて、製造販売業者が、平成17年から当面の間、毎年国内の副作用の発生状況、それから安全性に関する国内外の研究報告などについて、毎年まとめて報告をするということを指示いたしました。また、ディートの神経系に対する影響に関する試験を実施し、その結果について安全対策課の方に報告をするという指示をいたしました。
 資料2-1の4番目で、この指示の下にプロトコールの検討、試験の実施が行われて、平成20年6月19日に、ディートの製剤を製造販売している企業が集まって結成したディート安全対策協議会から、神経系への影響に関する試験結果として、ラットの4週間の経皮投与試験、それから持続皮下投与試験ということで試験の結果が報告されました。本日はこの試験結果、それから毎年提出されました研究報告について御評価をいただければと思います。
 資料2-2は、ディート安全対策協議会から提出されました、神経系の影響に関する試験結果です。この資料の中身は、2ページ以降に結果をスライドの形でまとめたもの、それから14ページ以降は、文章編ということで結果をまとめております。なお、この試験は、GLPに準拠し、二つの試験を実施しております。経皮投与試験、それから持続皮膚投与試験となっております。まず経皮投与試験の方から御説明させていただきます。
 2ページは、4週間の経皮投与試験ですが、7週齢のSDラット、雌雄各10匹を用いて実施しております。3ページにありますように群の構成としては、無処置群ということで全く処置をしない、そのままの群です。擬似処置対照群は、薬剤の投与はいたしませんが、それ以外は被験物質の投与群と同様な処置を実施しております。他に
溶媒を投与した群。それからディート投与群に関しては、低用量の60mg/kg、それから300mg/kgという二つの用量を実施しております。
 この資料の中には具体的な投与の仕方などは書いてありませんが、基本的には開放塗布ということで、ラットの背中をバリカンなどで刈り、同じ2.5×2.5の適用部位に対し、必要な投与液を、溶媒投与対照群以下については均一になるような格好で塗布するということで、これを28日間繰り返し投与することを実施いたしました。また、背中に経皮投与することになりますと、どうしても足でなめてしまったりということがありますので、首から首かせをしてそういうことを防ぐような対応をして実施しております。
 この試験においては検査項目として、一般状態、機能観察、特に神経系に関する観察ということで感覚、握力、自発運動量、それから病理組織学的検査、これは中枢と末梢神経の両方、それから薬物濃度の測定を行っております。なお、このプロトコールの作成に当たっては、投与期間であるとか検査の項目については、OECDの化学品試験法ガイドライン、化学物質の安全性を評価する試験法のガイドラインのうち、齧歯動物における神経毒性試験のガイドラインを参考にしてプロトコールを設定しております。
 試験の結果については4ページ以降にあります。一般状態ですが、ディート投与群において鱗屑、いわゆる皮膚毒性の一種で瘡蓋のようなものができるということです。これが高用量ではかなりの例数に認められております。基本的には軽微な変化であったとされております。4ページの下以降は詳細観察ということで、糞の排泄回数、飲水摂餌量などについて、有意な高値が一部見られたような群、あるいは観察日というのがありました。体重の値に影響がなかったことから、いずれも毒性学的な意義は低かったと考察されております。病理組織学的検査においては、大脳皮質、海馬、小脳などでは異常は認められませんでした。結果は中枢神経、末梢神経系へ顕著な変化は見られなかったということです。
 続いて、4週間持続皮下投与毒性試験を実施いたしました。7ページの下の方にありますが、同じく被験物質としてはディートを用いて実施しております。こちらは媒体対照群ということで、二つの群で実施しております。投与の方法は、浸透圧ポンプの中に被験物質を溶媒で溶かしたもの、あるいは媒体を注入したものを手術で埋め込むという格好で投与しております。それぞれ各群雌雄各5匹を用いて行っております。ディート投与群としては7.2mg/body/dayということで設定いたしました。
 8ページですが、この試験の中で最終的な病理組織学的検査で発見されたものですが、ディート投与群の雄1例において孔脳症、脳の陥没が見られるといった所見がありました。試験報告の中で、このラットについては先天性ということで評価から除外しております。特にこのラットについては解剖するまで、異質な行動などは認められなかったということです。事務局としてこの点については、器官形成期のラットではなく、成熟したラットにおける試験ということで、ディートの神経毒性への影響ではないと考えておりますけれども、この点については後ほど先生方からもコメントをいただければと思います。
 検査項目ですが、プロトコールの中で経皮毒性と同様に、一般状態、病理学検査など同様の項目を実施しております。9ページ以降に結果があります。ディート投与群の雄で、尿排泄回数が低値を示したものがありましたが、これは経皮の方の無処置群と大きな違いはありませんでしたので、特に問題はないのだろうということでした。
 それから剖検ですが、ポンプを埋め込んだところの皮下が暗赤色になったり、あるいは皮下に液体が貯留したという所見がありましたけれども、これらについては対照群と比較して発生頻度に大きな差は見られなかったということです。
 10ページから11ページにかけて、病理組織学的検査を実施しておりますけれども、特に異常は見られなかったとしております。その他の観察の中で、11ページの下のスライドにありますように、飲水量でやや低値を示す個体がありましたが、一過性であったということで、そのほかディート群の使用で一般状態、体重摂餌量などにおいて特に大きな変化は見られなかったということです。
 12ページ以降に、血中濃度の測定の結果があります。28日目の投与の血中濃度をそれぞれ示しております。持続投与群、ポンプで投与した群というのは、経皮投与群の低用量とほぼ同様の暴露量となっていました。このような結果で、特に大きな所見もなく経皮、それから持続皮下投与の試験が実施されております。
 続いて資料2-3を御覧ください。先ほど御紹介させていただきました通知の中で、毎年副作用、それから研究報告をまとめて報告をいただくということで、平成17年から平成21年まで5年間の報告がまとまりましたので御紹介させていただきます。1ページは、ディートを含有する医薬品、部外品における副作用の報告状況となっておりまして、括弧の中が医薬品の内数となっています。こちらの報告ですが、いずれも重篤なものはなく、中等度、軽微な報告が集計されています。ほとんどが発赤や湿疹や、皮膚に関する症状が多くございました。また、そのほか呼吸器や目などにおける副作用というのも、一部報告をされています。
 こちらに関連して参考資料2-3ですが、現行のディート製剤の添付文書を御紹介しています。この中で、最初のページの四角囲いの中の「してはいけないこと」を御覧いただきますと、「使用しないでください。目の周囲、粘膜等」ということで、特に目や喉への暴露を避けるように、注意喚起を行っているところです。
 資料2-3の2ページ以降を御覧ください。5年間で製造販売業者の方々からのディートに関する研究報告をまとめたものです。この中で、ヒトに関する作用を報告されているものが2ページに13報。それから、前回の検討会で問題となりました神経毒性にかかるものが3ページに8報。4ページに安全性全般にかかるものということで3報ございました。このほか5ページ以降ですが、蚊など、昆虫に対する力値といった有効性、あるいは代謝、吸収などの動態にかかるような報告というものが、95報で12ページまでの報告となっております。
 特に安全性にかかる報告に関しては、まず2ページのヒトに関する作用ということで、いくつかの報告がありまして、前向きで調査を実施したもの、疫学の調査、中毒センターなどに集まってくる有害事象を集計したもの、症例報告、総説といったようなものが紹介されております。特にヒトに関する作用については、前向き調査、疫学調査などからは、格段の安全性を懸念するような報告はありませんでした。
 続きまして、3ページの神経毒性に関する報告です。文献の上から四つの14から17は、前回の検討会で議論をいただいたラットの皮膚の塗布試験に関する御紹介です。それから18、20の神経毒性にかかる二つの文献がありますが、これも前回の検討会の中で紹介のあったものでした。19の文献は、ディートの有害性報告ということで、さまざまな動物試験に関するデータをシートとしてまとめているものですが、この中で神経毒性に関しては、18の試験結果を引用しています。21が新規になりますが、こちらについてはPyridostigmineを経口投与されたラットに、ディートとPermethrinを併せて経口投与をするというような基礎的な群に、さらにストレスを加えた群、そのままの群ということで検討したところ、このストレスを加えた群について、脳神経系の影響が示唆されたという報告でした。
 このほか、安全性にかかる報告がありましたが、22は、毒性の全体に関するレビューということになっております。23は、免疫抑制作用に関するもの、24は、カルバメートとの相互作用に関する検討を実施するというようなものでした。ディートに関して、この5年間、安全性にかかる報告としては、こういった文献が報告されているというような状況です。
 結果を簡単にまとめたところ、平成17年の検討において使用上の注意の改訂など、一定の注意喚起が行われたこと、それから、今回実証されたこれまでの毒性試験の結果、研究報告の状況などから、現時点で特段新たな措置が必要な状況ではないと考えております。また、薬事法上の報告義務というのが、すべての医薬品なり部外品にかかっているわけですが、現在ディートについては、さらにそれに上乗せをする形で、中等度や軽微の副作用の集積、研究報告の定期的な提出を求めてきましたが、この取扱いについて今後も続ける必要があるのかどうか。このあたりについて、是非御意見をいただければと思います。
 なお、本日御欠席の西川先生から予めコメントをいただいておりますので、簡単に御紹介をさせていただきます。まず、4週間経皮投与、持続皮下投与試験に関するコメントについては、「もともとラットにおける皮下投与試験、デューク大学で実施をされた試験の再現性を検証することを目的としたということではあるものの、試験のデザインについては、必ずしもデューク大学の方法を踏襲しているものではない。しかしながら、OECDのガイドラインに概ね準拠して実施をしていることから、標準的な試験方法では顕著な神経毒性は誘発されないという結論を導き得るデータとして、評価ができる」という御意見でした。
 先ほども御紹介をした持続投与の中で認められた孔脳症ですが、「発生頻度はそれほど高くないが、自然発生的に見られるラットの先天奇形であり、7週例で4週間投与したラットで誘発された病変とは考えられない。当該動物試験の評価から除外した点は、問題ないと判断される。しかしながら、この動物においては、試験経過中に原因不明の極端な体重低下もあったので、試験終了前に発見し、除外できた可能性は高い」ということでした。
 文献報告に関してですが、「2004年以降神経毒性を明確に示す新知見は、デューク大学の研究グループからも報告されていないようなことも踏まえて、今般特段の措置は必要がない。最近のディートの虫よけの知見として、昆虫の嗅覚受容体への直接作用を示す論文もあるようですが、人への有害性を否定するものではないということから、関連する有害事象の報告には今後も注視していく必要があろう」という御意見でした。事務局からは以上でございます。

○松本座長 
 ありがとうございました。ただ今事務局から説明がありましたが、委員の先生方から御意見、御質問等ありますか。先ほど西川先生からもコメントがありましたが、和田先生、この毒性試験のプロトコールの経緯について、何かコメントはありますか。

○和田参考人 
 私も西川先生と同じ意見で、基本的にはデューク大学の方で陽性結果が出て、それが本当かどうかということに再現性をとるということで、スタディーを行いました。2種類のプロトコールに従って行っていまして、評価項目はデューク大学のもので基本的には評価をするということで行っていまして、結果陰性ということでありまして、特に問題はないと考えています。

○松本座長 
 ありがとうございました。この毒性試験の結果について、小川先生、何かコメントはありますか。新たな措置は必要としないということでよろしいですか。

○小川参考人 
 私も西川先生と同じ意見で、再現性試験をやって陰性であったということで、事務局の案どおりでいいのではないかと。ただし、小児に適用した場合にどうなるかに関しては、このヤング・アダルトの試験だけでは評価できない部分もありますので、引き続き実験をしろということは難しいと思いますので、今後も副作用情報などを収集するというのは、当然やって然るべきことではないかと思います。

○松本座長 
 ありがとうございます。関野先生、何かコメントはありますか。

○関野参考人 
  私は前回の検討会はおりませんでしたので、報告書からの感想ですが、一つ気になった点は、吸入に関してのコメントが足りないのではないかと思いました。前回の資料の参考資料2-1の26ページの「消費者へのアドバイス」には、エアゾールタイプの吸入のことが指摘されておりましたので、この点は重要ではないかと思っています。粘膜からの吸収というのは皮膚からの吸収とは違いますので、この点を少し留意した方がいいのではないかと思います。ただし、甚大への毒性に関しては、これだけの長い時間を使われていますし、人の副作用の報告も少ないので現状のままでいいと思います。可能であれば、使用上の注意の中には吸入のこと、例えば、密閉された部屋の中ではスプレーしないというようなことを追加すればいいと思います。

○松本座長
 ありがとうございました。事務局から、この点について何かコメントはありますか。

○事務局 
 ありがとうございます。小川先生から御指摘のあった小児に関するお話、関野先生からの吸入のお話ですが、必ずしも動物試験でまだ十分にできていないところもありますが、今後こういった研究の報告が出てくるなり、副作用の報告なりというようなことに注意をして、情報を収集してまいりたいと思います。
 添付文書のことですが、参考資料2-2を御覧ください。このときに、一般用医薬品と部外品の通知をしておりますが、参考資料2-3の2ページに小さな文字で恐縮ですが、用法・用量に関連する注意ということで、上から10行目ぐらいの少し黒い四角が付いている所の横になりますが、「漫然とした使用をさけ、蚊、ブユ(ブヨ)等が多い戸外での使用等、必要な場合にのみ使用してください」ということで、一応それに類する注意喚起はしていますので、この状況でさらに様子を見させていただければと思います。

○松本座長 
 よろしいですか。先ほどの孔脳症に関しても、西川先生のコメントでよろしいですね。先天性のものとして片づけて。新たな情報の収集ということに関しては、今の薬事法による通常の情報収集の程度でよろしいですか。改めて何か、今の状態を継続する必要があるという御意見でしょうか。

○小川参考人 
 この現状ですと、さらにということは難しいかなと思います。それから、先ほどの孔脳症に関しては、自然発生だと思います。以上です。

○松本座長 
 ありがとうございました。埜中先生、先回もお聞きしましたが、文献をお読みになった上で何か新たなコメントはありますか。新たな措置が必要であるとか、そういうことに関する御意見をいただけますか。

○埜中参考人 
 私も動物実験で、いろいろ中毒実験をやっていますが、中枢神経や末梢神経に影響があるかどうかというのは、行動異常を評価するのがいちばん早いというか、信頼性があると思いますが、今回の試験では、感覚,握力,自発運動量というものに全く異常がないということなので、かなり安全性が担保されているのではないかと思います。前回、もう一度その安全性を確認する実験をしてほしいということをお願いしたわけですが、今回のこの実験結果というのは十分に信頼できるものであって、安全性が担保されているのではないかと思います。

○松本座長 
 ありがとうございました。ほかに御意見等ありますか。大野先生どうぞ。

○大野委員 
 このディートの報告書をいただいて、読んでいて私は理解できなかったのですが、方法がここに全然載っていなかったのです。神経毒性を見るとか、行動観察を見るにも、投与してからどういうタイミングで見るかが非常に重要で、それが全然記載されていなかったので分からなかったのです。全体としては間違いはないと思いますが、例えば動物が1匹死んでいるのにその理由が書いていなかったり、細かいことですが、データの解析の有効数字が不十分だったり、この報告書をきちんと見ないと危ないなという印象を持ちました。

○松本座長
 事務局からどうぞ。

○事務局 
 申し訳ございません。事務局の方にはプロトコールと、もう少し細かい最終報告書というのをいただいておりましたが、本日も含めて先生方には資料も非常に大部にわたるもので、概要版の方を御覧いただいたような格好になっておりますが、追って個別に御確認をいただければと思います。なお、試験の方法ですが、先ほども御紹介したようにOECDのプロトコールに沿っておりますので、試験のタイミングなどもそれに準じた形になっておりますが、プロトコールも併せて御確認いただければと思います。

○埜中参考人 
 細かい報告書を予めいただいておりまして、それを見て方法論とか、そういうものはきちんとしていると思いました。ただ、ここには行動は正常と書いてあるし、末梢神経障害はないと書いてあるから、パッと見ると、いったい末梢神経はどういうふうにして評価をしたのですかと思いますが、報告書はかなりきちんとしたものが出ております。

○大野委員 
 分かりました。私がいちばん気になったところは、糞が00となって脱糞をしていないので、こんなのは普通はあり得ないので、どういうタイミングかと。全部糞をし終わってからケージに置いたのかなと思いました。そこで、ほかを見渡してどうなのだろうと思ったのですが、きちんと見ていただいたのなら間違いないと思います。

○松本座長 
 埜中先生は見ておられるということなので、よろしいですか。最終的には、また確認してもらってください。ほかに御意見はありませんか。

○大野委員 
 この参考資料2-3の使用上の注意の「してはいけないこと」の(守らないと副作用が起こりやすくなります)で、「次の部位には使用しないでください」ということですね。詳しいデータを見たわけではないですが、一般的なディートの説明を見ると、目刺激性がありますね。これだと、どうなのだろうと。もともと、そういう刺激性があるのだから、起こりやすくなるのではなくて「起こります」ということなのではないかと思います。

○松本座長 
 事務局からお願いします。

○事務局 
 この点ですが、参考資料2-3の2ページに詳しい説明があります。添付文書の階層上、まずやってはいけないことというのを簡潔に書きまして、その後ろは少し詳しい解説となっています。先ほど御覧いただいた用法・用量に関連する注意の中ほどの(5)「目に入ったり、飲んだり、なめたり、吸い込んだりすることがないようにしてください」ということで、その副作用が起こる可能性があるということで、そのときの対処は少し詳しく書いています。

○松本座長 
 大野先生、よろしいですか。

○大野委員 
 実際も目刺激性が非常に強いのか、弱いのかとか、たまたま赤くなるだけとか、私はデータを見ていないので、その程度が分からないのですが。ここで見た資料だと、目刺激性があるということだけなので、それが大きな粘膜の刺激とか、そういうことがなければ、このままでいいと思います。

○事務局
 先ほど御覧をいただきました資料2-3ですが、実際に使った副作用の報告の状況というのを御紹介させていただきました。この中で申し上げましたとおり、重篤なものはありませんで、いずれも中等度・軽微ということでしたが、ほとんどが皮膚に対するものということで、目に関しては3例、目の充血、眼痛、目の周りが腫れたということで、全体の報告状況からすると今のところ数も少ないですし、先ほど申し上げましたように、目の周囲には使わないでくださいということでお願いをしていますので、この状況でまた様子を見ながら対応を考えてまいりたいと思います。

○大野委員
 分かりました。

○松本座長 
 ありがとうございました。ほかにありませんか。ただ今までの御意見をまとめますと、今般提出されましたラットにおける4週間経皮投与及び4週間持続皮下投与神経毒性試験において、特段問題となる所見は認められなかったこと。企業から報告されました副作用報告、研究報告についても、特段の措置を取る必要は認められなかったこと。それから事務局から提案がありましたように、添付文書の更なる改訂等の措置を取る必要はないこと。また、これまで行政指導によって行われていた副作用や文献の調査については、これをもって終了することとしたいと思いますが、御異議はございませんか。
                  (異議なし)

 それでは、そのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 事務局から何かありますか。

○事務局 
 二つほど報告事項がございます。参考資料3-1を御覧ください。こちらは、先の5月31日に開催をされました本調査会で御審議をいただきましたレブラミドの適正管理手順、RevMateですが、調査会でいただいた意見を反映した修正版となっていますので、こちらの方に御提出をさせていただきました。
 参考資料3-2は、ゲフィチニブ服用後の急性肺障害・間質性肺炎などにかかる副作用報告の報告件数等についてです。ゲフィチニブの報告状況についても、これまでも安全対策部会や調査会において、その機会をとらまえて状況を報告させていただいていたところ、今回は昨年度の状況ということで3月までの状況を御報告させていただきます。以上でございます。

○松本座長 
 ただ今の御報告に対して、何か御意見はありますか。よろしいですか。
 最後に、事務局から何かありますか。

○事務局 
 特にございません。本日は長時間、御議論どうもありがとうございました。

○松本座長 
 全体を通じて、何か御発言はありますか。ないようでしたら、これで本日の会議を終了といたします。長い時間、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

医薬食品局安全対策課
03-5253-1111(代表)

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