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2010年11月29日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録

医薬食品局

○日時

平成22年11月29日(月)


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(13名):五十音順 敬省略

 新 井 洋 由、 庵 原 俊 昭、 岡   慎 一、 守 殿 貞 夫、

  清 水 秀 行、 田 村 友 秀、 濱 口   功、 半 田   誠、

○堀 内 龍 也、 前 崎 繁 文、 溝 口 昌 子、 山 添   康、

◎吉 田 茂 昭

(注)◎部会長 ○部会長代理

他参考人1名

欠席委員(5名):五十音順 敬省略

 鈴 木 邦 彦、 竹 内 正 弘、 土 屋 友 房、 早 川 堯 夫、

 山 本 一 彦 

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 成 田 昌 稔 (審査管理課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森   和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

 赤 川 治 郎  (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 ただ今から薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催させていただき
ます。本日はお忙しい中御参集いただきまして、ありがとうございます。現在、当部会委
員数18名のうち11名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達しております
ことを御報告させていただきます。
 本日、鈴木委員、竹内委員、土屋委員、早川委員、山本委員より欠席の御連絡を頂いて
います。岡委員、田村委員につきましては出席の御予定ですので後ほどおいでになると思
います。
 本日のその他事項に関しまして、埼玉医科大学呼吸器病センター呼吸器内科教授の金澤
先生に参考人としてお越しいただいていますので、御紹介させていただきます。
 それでは、吉田部会長、以後の進行をお願いいたします。
○吉田部会長 審議に入ります。事務局から、配付資料の確認、審議事項に関する競合品
目・競合企業リストについて報告をお願いします。
○事務局 資料の確認です。本日席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付し
ています。議事次第に記載されている資料1~9はあらかじめお送りしています。このほ
か資料10「医薬品第二部会審議品目野薬事分科会における取り扱い、毒薬・劇薬の指定
の要否及び生物由来製品/特定生物由来製品の要否について(案)」、資料11「専門委員リ
スト」、資料12「競合品目・競合企業リスト」、当日配付資料資料4「正誤表」を配付
しています。
 続きまして、資料12、本日の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」につい
て御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。
 1ページ、エンセバック皮下注用です。本品目は「日本脳炎の予防」を効能・効果とし
ており、同様の効能・効果を有する薬剤について、資料に掲げるとおり競合品目を選定し
ています。
 次のページ、ステラーラ皮下注45mgシリンジです。本品目は既存治療で効果不十分な
「中等症から重症の尋常性乾癬及び中等症から重症の局面方皮疹を有する関節症性乾癬」
を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤について、資料に掲げる2品目
を競合品目として選定しています。
 次のページ、オルベスコ50μgインヘラー112吸入用ほかです。本品目は「気管支喘息」
を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤について、資料に掲げる3品目
を競合品目として選定しています。以上です。
○吉田部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はございますか。
 ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、
皆様の御了解を得たものとします。
 それでは各委員からの申出状況について御報告をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については次のとおりです。
 議題1は、退室委員、議決に参加しない委員はいらっしゃいません。
 議題2は、退室委員、議決に参加しない委員はいらっしゃいません。
 議題3は、退室委員はいらっしゃいません。議決に参加しない委員は前崎委員です。以
上です。
○吉田部会長 本日は審議事項3議題、報告事項が6議題、その他の事項が1議題となっ
ています。
本日は、参考人の先生にお出でいただいている関係で、その他事項議題1「医療上の必要
性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適
応外薬の事前評価について」から審議をします。金澤先生、御説明をよろしくお願いしま
す。
○金澤参考人 資料10に沿って御説明します。エタンブトールとリファンピシンの非結
核性抗酸菌症に対する適応追加の公知申請の該当性について、医療上必要の高い未承認薬
・適応外薬の検討会議の結果を御報告します。
 3ページを御覧ください。エタンブトール塩酸塩ですが、要望は結核病学会と日本呼吸
器学会、東京HIV診療ネットワークから出ています。効能・効果も同様です。
 4ページ、医療上の必要性についてです。下から3行目に、適応疾病の重篤性とありま
す。肺非結核性抗酸菌症は最近増加していますが、進行は緩徐であるものの、無治療の場
合、最終的に多くが呼吸不全に至る難治性の疾患で、早期治療開始が望まれる疾病に該当
すると判断しまして、「病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾病」
であると判断しました。
 5ページの上から二つ目のパラグラフから、医療上の有用性についてです。国内ではC
AM、RBTの2薬剤以外には、効能・効果に関する承認を取得していないこと、一般的
には3剤以上の治療をすること、もしリファブチンを使ってブドウ膜炎が発生した場合に
は、代替薬がなく極めて治療が制限されることを踏まえ、「既存の療法が国内にない」に
該当すると判断し、必要性が高いものと考えました。
 8~15ページにかけて、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの欧米主要4か国で
は既に承認されていることの記載があります。
 35~39ページは文献等の記載ですが、教科書、各種のガイドラインで治療薬として推
奨されています。ですから、治療法としては極めて確立されたものと考えられていて、実
際の臨床現場でも、既に十分な使用実績があると思われます。
 48ページを御覧ください。効能・効果についてとあります。適応菌種は本剤に感性の
マイコバクテリウム属です。適応症は肺結核及びその他の結核症、それから今回の申請の
マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症となり
ます。
 用法・用量です。結核の場合は49ページの2行目に書いてあるように、エタンブトー
ル塩酸塩として1日量0.75~1gとなっていますが、MAC症を含む非結核性抗酸菌症の
場合は、エタンブトール塩として通常0.5~0.75gとして、0.25g少ない設定としていま
す。ただし、適宜増減して、1日量として最大は1gとしています。ここで通常量を変更
したのは、結核の場合は最近、エタンブトールは2か月~最大6か月ぐらいまでなのです
が、本症の場合は長期間投与ということがあって、視野障害、視神経障害を考慮に入れた
ものです。以上、検討会議ではエタンブトール塩の非結核性抗酸菌症に関する適応追加に
ついては、医学・薬学上公知であると判断しました。
 引き続いて、リファンピシンについて御説明します。55ページを御覧ください。リフ
ァンピシンについても、呼吸器学会と日本結核病学会から要望が出ており、非結核性抗酸
菌及び非結核性抗酸菌症に対する効能・効果の追加になります。疾患については同様です
ので省略します。
 99ページに効能・効果と用法・用量のまとめがあります。効能・効果に関しては、現
行の適応菌種に記載のある「結核菌、らい菌」はマイコバクテリウム属に含まれるという
ことで、本剤に感性のマイコバクテリウム属として包括的な記載としました。
 用法・用量ですが、非結核性抗酸菌症に関し、成人にはリファンピシンとして1日1回
450mgを毎日経口投与しまして、最大量として600mgを超えないという記載を付けました。
リファンピシンもエタンブトールと同様に考えられると思いますが、検討会議でも同様に
考えまして、適応追加については公知であると判断しました。以上です。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等はございますか。
○堀内部会長代理 一つ教えていただきたいのですが、耐性菌の発生について長期投与に
なる可能性があると思いますが、その辺については適応が拡大されますし、この菌に対す
る耐性菌が発生する可能性があると思いますが、それはどう考えたらよろしいでしょう
か。
○金澤参考人 耐性の問題については記載も少しあるのですが、特にMAC
(Mycobactevium avium-intracellulare)に対しては、in vitroの耐性検査の結果をその
まま臨床的に当てはめていいかについてはコンセンサスが得られていません。ガイドライ
ン等にも、vitroでの耐性検査は困難であるということで、実際に使って、これまでに有
効性が経験的に確認されているということで使われていますので、実際に耐性菌であるか
どうかということは、in vitroでやると耐性になるわけですが、それが本当にvivoで耐
性かということについては議論が多い問題であると思っています。お答えになっているか
どうかわかりませんが。
○堀内部会長代理 既にある耐性菌と、耐性菌をつくる可能性についてはいかがでしょう
か。
○金澤参考人 よく議論になるのはクラリスロマイシンです。クラリスロマイシンは非常
に広く使われていて、しかも単剤で投与されているということです。MACに対して耐性
誘導しているのではないかという心配があるわけですが、実際には耐性化したMACが、
本当に効かなくなってしまったAvium-intracellulareというのは一般にはないと言われ
ているのです。ですから、エタンブトール、リファンピシンに関しては、私の知る限りは
ほとんどそういった議論はないと思います。
 クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールの3剤で使った場合に、MAC
に対して耐性化するという議論は行われていないというのが現状だと思います。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○庵原委員 エタンブトールとリファンピシンの2剤を出されていますが、ほかのレボフ
ロキサシンなどのニューキノロンも結構抗酸菌に効くと言われているのですが、これは入
れなくてもいいわけですか。キノロンはもう日本で認められているから、今回は請求しな
かったという整理ですか。
○金澤参考人 認められていないわけですが、まずは本当に現場で必須としているエタン
ブトールとリファンピシンを出したというところだと思います。
○庵原委員 そうすると、キノロンはまた次の段階ということですか。
○金澤参考人 そうだと思います。
○吉田部会長 使われ方ですが、併用して使うのでしょうか、それともファーストチョイ
ス、セカンドチョイスという形にするのですか。
○金澤参考人 どちらもファーストチョイスということになります。クラリスロマイシ
ン、リファンピシン、エタンブトールの3剤がファーストチョイスで、ミコブチンはセカ
ンドチョイスということになります。
○吉田部会長 ほかにございますか。ほかにございませんようですので、その他事項につ
きましては御確認いただいたものといたします。
 参考人の金澤先生におかれましてはお忙しいところ、ありがとうございました。
── 金澤参考人退出 ──
○吉田部会長 それでは議題1に入ります。審議事項議題1について、機構から概要説明
をお願いします。
○機構 議題1、資料1「医薬品エンセバック皮下注用の生物由来製品及び特定生物由来
製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の
要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、ホルマリンで不活化した日本脳炎ウイルスを有効成分とするワクチンです。従
来は、日本脳炎ウイルス北京株をマウス脳で培養した日本脳炎ワクチン(以下、マウス脳
由来ワクチンと称す)が用いられていましたが、本剤は同じ北京株をアフリカミドリザル
腎臓由来株化細胞のVero細胞で培養し製造するワクチンです。従来の日本脳炎ワクチ
ンにおけるマウス脳由来物質の混入リスク減少や安定供給等のメリットを期待して開発
され、平成17年5月に「日本脳炎の予防」を効能・効果として、一般財団法人化学及血
清療法研究所より承認申請されました。
 本剤の開発当初、申請者は、Vero細胞由来の本剤とマウス脳由来ワクチンは基本的
に同等/同質と考え、有効成分である不活化日本脳炎ウイルスの含量を、マウス脳由来ワ
クチンと同じく、たん白質濃度34μg/mLの製剤を用いて、第I相及び第III相臨床試験
を実施しました。しかし、第III相臨床試験の結果、マウス脳由来ワクチンに比べて本剤
は抗体価の上昇が高い一方、注射部位局所の副反応が強い傾向が見られ、又、非臨床試験
でもマウス脳由来ワクチンより発症防御効果が高い傾向が示されたことから、有効成分量
を見直し、改めて本剤の有効性/安全性を検討する追加臨床試験が実施されました。
 また、当初、本剤は液剤として開発されましたが、安定性試験において、保存期間15
か月で有効成分の約□%が分解し、約□%が凝集体となることから、安定性向上のために、
承認申請後に剤形が液剤から凍結乾燥製剤に変更されて、追加臨床試験が実施されていま
す。
 なお、本邦においては、既に、同じく日本脳炎ウイルス北京株をVero細胞で増殖さ
せ、不活化処理した、一般財団法人阪大微生物病研究会の乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン、
ジェービックVが平成21年2月に承認され、同年6月より定期接種ワクチンとして使用
されております。 本剤の専門協議は、資料11にお示しした7名の専門委員です。
 次に審査の概略について、御審議いただく本剤と同じ凍結乾燥製剤で実施された追加臨
床試験成績を中心に御説明します。
 追加臨床試験では、有効成分含量が第III相試験で用いた製剤の1/2量のM剤、1/4量
のL剤が用いられ、対照薬としてマウス脳由来ワクチンが用いられました。各群約140例
に、初回免疫として2回、概ね1年後に追加免疫として1回の合計3回接種されました。
有効性に関しては、従来より日本脳炎ウイルスに対する血中中和抗体価が10以上あれば、
日本脳炎の発症防御が可能とされていることから、中和抗体陽転率、すなわち接種前抗体
価10未満の被験者のうち、接種後抗体価が10以上に転じた被験者の割合を指標として評
価されました。主要評価項目である3回目接種後の中和抗体陽転率を、審査報告書23ペ
ージの表4-8に記載しています。また、副次評価項目として2回目接種後の中和抗体陽転
率を表4-9、2回目及び3回目接種後の平均中和抗体価を常用対数で24ページの表4-10
に記載しています。L剤、M剤ともに、2回目及び3回目接種後の中和抗体陽転率は100
%であり、平均中和抗体価がマウス脳由来ワクチンと比べて高かったことから、L剤、M
剤のいずれの用量でも、マウス脳由来ワクチンと同程度の有効性が期待できると判断しま
した。
 安全性については、審査報告書24ページ表4-11、及び25ページ表4-12に結果を記載
しています。表4-12の副反応発現率についてです。L剤の副反応発現率は、M剤及びマ
ウス脳由来ワクチンよりも低い傾向が見られました。一方、発熱の副反応発現率について、
L剤はマウス脳由来ワクチンと比べて高い傾向が見られましたが、審査報告書27ページ
の表4-13に記載していますように、この傾向は主にGrade1の発現例数がL剤で多かっ
たことに起因するものと考えられ、Grade3以上ではL剤とマウス脳由来ワクチンで大き
な違いがないことから、L剤の安全性について忍容可能と判断しています。また、限られ
た被験者数ではありますが、重篤な有害事象の発現例数がL剤1例、M剤2例、マウス脳
由来ワクチン1例と大きな差はなく、いずれも治験薬接種との因果関係が否定されたこと
からも、L剤接種による局所及び全身反応は忍容可能と判断しております。
 以上から、最終的な本剤の有効成分含量はL剤に相当する、たん白質濃度8μg/mLが
適切であると判断しています。
 続いて、製造販売後調査等に関してです。本剤は、定期接種ワクチンとして多くの小児
に使用されると想定されることから、第1期初回免疫、すなわち1回目及び2回目接種時
の安全性について、小児3000例を対象に使用成績調査が実施され、製造販売開始後速や
かに安全性情報が収集され、評価される予定です。また、第1期追加免疫、すなわち3回
目接種及び9歳~13歳未満の小児を対象とした第2期追加免疫、すなわち4回目接種時
の安全性についても、別途3000例の日本脳炎ワクチン接種歴の異なる小児を対象に特定
使用成績調査が実施される予定です。
 また、第1期に本剤を接種した群及び、同種同効ワクチンのジェービックV又はマウス
脳由来ワクチンを接種した群を対象に、第2期で本剤を追加接種した際の免疫原性及び安
全性を確認する臨床研究が、製造販売開始後速やかに実施される予定となっています。
 さらに、マウス脳由来ワクチンにおいて、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)との因果関係
が否定できないとして、接種勧奨が差し控えられた経緯がありますが、日本脳炎ワクチン
以外のワクチンや、海外のVero細胞由来不活化ポリオワクチン等、マウス脳を使用し
て製造されたワクチン以外でもADEMが報告されていること等から、接種対象者の拡大
にあたっては、製造販売後の安全性情報を踏まえながら判断する必要があると考え、ジェ
ービックVと同様に、「本剤は、製造販売後、可及的速やかに重篤な副反応に関するデー
タを収集し、段階的に評価を行うとともに、その結果を踏まえ、本剤の適正使用に必要な
措置を講じること」という承認条件を付すことが適切と判断しました。
 以上の機構における審査の結果、本剤は日本脳炎の予防に対する有用性が期待できると
判断し、承認して差し支えないと判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であること
から、再審査期間を8年とし、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断しました。以上、
御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○庵原委員 2点確認します。一つは、これは液状製剤のときには長期安定性が悪かった
ので凍結乾燥に変わったと説明がありましたが、凍結乾燥剤の長期安定性というのはどこ
まで大丈夫なのでしょうか。
 2点目は、これはあくまでも1期の初回と追加で承認されたもので、2期はまだ承認さ
れていないのですか。それとも、免疫原性を確認してから2期を認めるのか、それとも2
期を使いながら免疫原性を確認するのでしょうか。
○機構 1点目の凍結乾燥製剤の安定性については、24か月まで分解物等のないことが
確認されています。
 2点目については、本剤の有効性及び安全性については第1期のところでマウス脳由来
ワクチンと同程度の有効性及び安全性が得られると判断しており、第2期の使用を否定す
るものではないと考えています。
 ただ、第2期についても製造販売開始後、速やかに免疫原性と安全性を確認するような
臨床研究を行うように指示しているところです。
○庵原委員 後ろの部分は理解し難かったのですが、要するに2期に使っていいけれど
も、まだデータがないので急いでデータを作ってほしいという解釈ですか。それとも、デ
ータが出るまで2期は使っては駄目ですということですか。どちらの意味でしょうか。
○機構 2期の使用を否定はしていませんが、免疫原性、安全性については速やかに確認
するようにということです。
○堀内部会長代理 添付文書を見ると、2期の追加免疫については、初回免疫後おおむね
1年を経過した時期に注射するとなっていて、やってもいいかどうかという表現には見え
ません。
○機構 本剤の使用方法については用法・用量に関連する接種上の注意の(2)の2)で「第
2期の予防接種は、9歳以上13歳未満の者に行う」と記載されています。ジェービック
Vに関しても同じ用法・用量の書きぶりになっていまして、第2期についても使われてい
ます。本剤についても同様の書きぶりで、第1期追加免疫に関しては初回免疫後1年経過
後の追加の形になっています。第2期の記載については、ここでは触れておらず、時期に
関しては、予防接種実施規制で規定されています。ジェービックVに関しても第2期の追
加免疫まで試験を行って、その結果があるということではなく、製造販売後に臨床研究が
行われ、そのマウス脳由来ワクチンとの代替性、免疫原性、安全性について検討されてい
るということになっています。
○庵原委員 ということは、追加ならばどの時期でもいいという解釈を、この添付文書で
読み取るということですね。
○機構 そのとおりです。
○吉田部会長 第2期の接種の評価については、3000例とは別にやるということですね。
○機構 安全性については3000例の製造販売後調査を行い、免疫原性及び安全性につい
ては、それとは別途臨床研究を行う予定になっています。
○堀内部会長代理 用法・用量の注意のところの(2)の2)にありますが、第2期の予防
接種は、9歳以上13歳未満についてはやるということですか。
○機構 臨床研究の話でよろしいでしょうか。
○堀内部会長代理 いや、添付文書の用法・用量に関係する接種上の注意のところに、「第
2期の予防接種は、9歳以上13歳未満の者に行う、9歳に達した時から10歳に達するま
での期間を標準的な接種年齢とする」と。
○機構 予防接種実施規則で定められた第2期予防接種の年齢は9歳以上13歳未満で、
標準的な接種年齢は9歳~10歳に達するまでの期間とされています。
○堀内部会長代理 それは第2期についてやるということですね。
○機構 はい。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○濱口委員 2.3の230ページのたん白質含量試験で、小分製品に関する品質の試験につ
いてです。記載によると、検体10mLにトリクロロ酢酸を加えて遠心した後、上清を除去
したものを試料とするとありますが、まず、この操作がどうして必要なのでしょうか。
○機構 トリクロロ酢酸溶液を加える操作についてということでよろしいですか。
○濱口委員 はい。
○機構 本剤にはポリソルベート80というものが入っていまして、それが試験系に影響
を与えるということで、1回トリクロロ酢酸で沈殿をした後、もう一度同じ操作を繰り返
すことと説明を受けています。
○濱口委員 一般試験法のたん白質定量法によるということですが、普通のワクチンの場
合には水で希釈した後に試料として使うということですので、あらかじめこういった操作
を加えるということはあり得ないと思うのです。よく見ると、その操作の中にもう一度同
じような操作を加えています。これを考えると、この操作によってもともと製剤の中に含
まれていたたん白質含量が過小評価というか、少なく見積もられてしまう可能性はないか
という懸念があるのですが、そのようなことはないのでしょうか。
○機構 添加回収率をトリクロロ酢酸沈殿1回と2回で操作したもので比べていまして、
2回の方がほぼ100%に近いという結果が出ていますので、こちらの方が適切な方法であ
ると判断されています。
○濱口委員 分かりました。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○清水委員 問題になっているたん白質量ですが、添付文書の中にたん白質量は一般的に
書かないものなのですか。有効成分のところが、「参照品(力価)と同等以上」という書き
方になっていて、たん白質量の記載はないのですが、これが一般的な書き方になりますか。
○機構 機構安全部よりお答えします。今回ジェービックVの記載ぶりと合わせた形で記
載させていただいていますが、必要に応じてジェービックVの記載も含めて、今後記載の
仕方については検討したいと思います。
○清水委員 ジェービックと比較しようと思ったのですが、ジェービックもその数値がな
くて比較できなかったのです。これはどうなのでしょうか。よく御検討いただければと思
います。
○堀内部会長代理 力価ですが、ロットによって大分違いまして、審査報告書の14ペー
ジに、相対力価がロットによって□倍程度違うとあります。これについては改善をする努
力をと。□倍違うとかなり大きな問題になると思いますが、現在はどのくらいのばらつき
があるのでしょうか。それから、低い抗体価のものを接種して、100%中和抗体が上がっ
ているのでしょうか。
○機構 今御指摘のあった審査報告書14ページの「□倍前後」と書かれた6行後に記載
していますが、現時点で、実生産スケール製造された原薬3ロットと、製剤5ロットの力
価試験のばらつきを確認したところ、約□倍のばらつきに収まっています。そのばらつき
の範囲というのは、参照品がマウス脳ワクチンの時代に見られたものとほぼ変わらないと
いうことになっています。
○堀内部会長代理 2番目の質問でお尋ねしたように、低い抗体価のものでチェックをし
てあるのですか。
○機構 追加臨床試験で使用したロットの相対力価が□□、□□という値が出ていまし
て、それでも免疫原性がきちんと得られることが確認されています。
○堀内部会長代理 低いものの方でやっても大丈夫であるという事ですね。
○機構 はい。
○新井委員 副作用のことを伺います。マウスの脳で作っていたときはADEMが発症し
て、そのメカニズムは分かっていたかということです。先ほどの御説明ですと、今回のサ
ンプルでもそれが発症したと。
○機構 臨床試験では発症しておりません。
○新井委員 発症してないのですか。そうすると、それは一つのメカニズムというか、マ
ウス脳由来の何かの抗原が少し入っていて、それが人間の脳の交叉性を示して、抗体反応
で副作用が起きていたのが、そういうのがなくなったので、今度は出なくなったと考えて
いるか、証拠があるのか。どちらでしょうか。
○機構 ADEMについては、ウイルス感染とか、マウス脳由来ワクチンに限らずワクチ
ン接種後に誘導される自己免疫によって発症すると考えられています。
○新井委員 ワクチンを打ったから起きたわけですね。
○機構 マウス脳由来ワクチンを打った後にも出ているのですが、それ以外のワクチンの
接種後にも、かなり頻度は低いのですが、発症するものと伺っています。
○新井委員 これは別に特異的ではないということですね。もう一つ聞きたいのは、今度
はサルの細胞を使ってウシの血清が入っているわけです。そこからウイルスを精製してき
て、抗原にしているわけですが、上清といっても培養細胞の成分は上清には必ずきますの
で、それとウシの血清が抗原としてコンタミした場合には、それに対する抗体が我々の体
の中でできる可能性があると。ですから、今までにはない新たな問題は、一応可能性とし
てはあり得るわけです。我々は、マウスは食べませんが、ウシの製品は牛乳から肉まで、
あらゆるものが外から入るわけです。ですから、そういったものに対する抗体ができてい
ると、我々はそれに対するアレルギー、アナフィラキシーを起こす可能性が新たに出てく
ると思うのです。前とは違う意味で、純度が問題になるのではないかと思います。その辺
はどのように考えられていますか。
○機構 まずウシ血清のお話ですが、原液の規格試験においてウシ血清アルブミン含量試
験を行うことになっていまして、現在までの試験成績を確認したところ、すべて定量限界
以下に抑えられています。
 また、Vero細胞がアフリカミドリザル由来の細胞ではないかという御指摘ですが、
海外では同じVero細胞を用いた不活化ポリオワクチンが広く使用されています。アメ
リカのワクチン接種後の副作用報告に当たるものでは、20年間くらいでADEM発症例
が140件報告されているのですが、そのうちVero細胞由来の不活化ポリオワクチンを
接種された症例で9件報告されています。
○新井委員 余り問題ないということでしょうか。
○機構 そのように考えております。
○新井委員 分かりました。
○吉田部会長 ジェービックとの関係も横並びの形でやっているのでしょうから、そちら
の情報とも併せて調べて回答していただければと思います。
○生物系審査第二部長 補足します。ジェービックの承認の際にも、Vero細胞由来の
医薬品はこれが初めてでしたので、安全性については慎重に評価する必要があるというこ
とで、今回も同じ承認条件を付けていますが、製販後の安全性情報についてはある程度溜
まるまで待たずに、段階的にステップワイズに評価をして、フィードバックをする体制を
取っています。
○吉田部会長 分かりました。
○新井委員 ウイルスの精製過程で、最後に□□□□□□□クロマトグラフィーとありま
して、□□を担体で使っているのですが、我々の領域ではこれを□□□□□□□クロマト
グラフィーとは言いません。そちらの業界では、これをそのように言うのでしょうか。
○機構 先生の御指摘のとおりだと思います。ただ、申請者としては□□□□□□□があ
るということで、精製できているということで説明をしています。
○新井委員 □□□がないものに対して□□□□□□□とは言わないのです。結合するも
のがあったら、何だって□□□□□□□があると言ったら、すべてがそうなってしまうの
で。
○機構 先生が御指摘の点については申請者にも申し伝えたいと思います。
 あと先ほど濱口先生と清水先生から御指摘のあった点についてですが、申請者としては
添加回収試験も行っていまして、申請者の開発したたん白質定量法が真度的にもよかった
という結論が出ています。清水先生の御指摘の点で、ジェービックVは審議された当時は
5μg/mLだったと思います。株は同じ、Vero細胞も同じではありますが、メーカー
が違いますと製造工程等が違うことから、必ずしもたん白質含量だけをもって有効性を規
定するのは難しいかと思います。これはワクチンということもありまして、国家検定の中
では参照品、国際標準品との力価での含量を検定していることから、検討はさせていただ
きますが、たん白含量だけでの規定は難しい場合もあるということで御理解いただければ
と思います。
○濱口委員 我々が危惧しているのは国家検定の一般試験法と、ここで作ってこられたメ
ーカーの試験法とで、よかろうということで改良されても、試験法が若干ずれることによ
って、自家試験のデータと国家検定のデータにずれが生じてしまうということです。
 たん白含量は、どちらかというと不純なものがどのくらいあるかを検査しているわけ
で、これをいろいろな操作の過程で、意図せずにそこから除かれてしまうことになると、
純度が過小評価されてしまう可能性があるということを念頭に置いてください。ですの
で、この後はこのような試験法がいいのか悪いのか、こういう検定の方法をどうするかを
検討していく必要があると思っています。
○機構 申請者としては生物学的製剤基準に則った試験法でも検討はしていまして、添加
回収試験では、うまくたん白量が測れていなかったところがあります。先生がおっしゃる
ように問題があるかというところについては、申請者なりの検討は今までのところしてい
ただきまして、少なくとも今されているものについては問題ないだろうということで我々
としては判断しています。それ以上の検討が必要かどうかについては、今の段階ですぐに
検討するというお答えをさせていただくのは難しいかと思います。
○生物系審査第二部長 補足します。基本的には生物学的製剤基準あるいは局方等の公定
書に収載の方法で試験をされるのが原則だとは思うのですが、今回のこの製剤について
は、添加物に妨害作用があるということで正確に測れないために、異なる方法を採用され
ています。そういう場合には、やむを得ず別の方法でやることもあるかと思います。
○濱口委員 これは阪大微研の製剤とは明らかに違うのですか。
○機構 添加物が異なっています。
○吉田部会長 ほかに御意見はありますか。
○守殿委員 添付文書の2ページの左側の欄の重大な副反応の項目に、脳症、けいれん、
血小板減少は、いずれも頻度不明となっています。三つ並んでいるから目立つのですが、
重大としてあるにしては頻度不明というのは、使用者にとっては不安な感じがあるのです
が、極めて稀だという解釈か、文書にできないからということとか、そのようなことがあ
るのでしょうか。データを見ると、1例か2例くらいのもので、非常に少ない例ですが、
この記載は不親切かと思います。
○機構 今こちらに記載されている頻度不明というのは、マウス脳の添付文書からそのま
ま持ってきたものになっていまして、このようになっています。
○生物系審査第二部長 今回の本剤についての使用実績は治験の範囲ですので、発症頻度
の低い有害事象、副作用等については、まだ情報がないという段階です。ただ、日本脳炎
ワクチンということですので、ある程度マウス脳由来のものと共通する可能性があります
ことから、従来のマウス脳由来ワクチンの記載に倣った形になっています。
○吉田部会長 添加物の問題もあって、この薬独自の評価の仕方ということもあるようで
す。その辺を含めて議論させていただきましたが、よろしいでしょうか。ほかによろしけ
れば議決に入ります。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、本議題について承認を可とし、薬事分科会に報告させてい
ただきます。ありがとうございました。
 議題2に入ります。機構から概要の説明をお願いします。
○機構 議題2、資料2「医薬品ステラーラ皮下注45mgシリンジの生物由来製品及び特
定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇
薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるウステキヌマブ(遺伝子組換え)は、ヒト型抗ヒトインターロイキ
ン(IL)-12/23P40モノクローナル抗体であり、ヒトIL-12及びIL-23の共通の構成
たん白であるp40サブユニットに高い親和性で結合し、IL-12及びIL-23の活性を中
和する作用を有する新規の生物製剤です。
 乾癬は局面型皮疹を特徴とし、寛解と再燃を繰り返す免疫介在性の炎症性角化症であ
り、その最も一般的な病型が尋常性乾癬、尋常性乾癬と同様の皮疹に関節炎を合併する病
型が関節症性乾癬になります。本疾患の発症や病態の進展において、IL-12及びIL-23
が重要な役割を担うことが示唆されているため、本剤は乾癬の治療薬として開発され、今
般、「尋常性乾癬及び関節症性乾癬」に係る効能・効果で申請がなされたものです。
 海外において、本剤は、2008年12月にカナダで承認されて以降、2010年9月現在、乾
癬に係る適応で52か国で承認されています。なお、本邦では抗TNF-α作用を有する生
物製剤であるインフリキシマブ及びアダリムマブが、乾癬に係る適応でいずれも2010年
1月に承認されています。本申請の専門委員として、資料11に記載されている11名の委
員を指名しました。
 主な審査内容について、簡単に説明させていただきます。審査報告書37ページ下段、
2)第II/III相試験の項を御覧ください。国内での主要試験として、日本人乾癬患者158
例を対象に、本剤45mg、90mg又はプラセボを0、4週以降12週間隔で皮下投与した際の
有効性及び安全性を比較する無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されています。そ
の結果、38ページ中段の表13に示していますように、主要評価項目である投与12週目
のPASI75反応率は、プラセボ群6.5%に対し、本剤45mg群では59.4%、90mg群では
67.7%であり、本剤群においてプラセボ群に対し有意な改善が認められています。なお、
PASIスコアは局面型皮疹の状態をその重症度と面積からスコア化した指標であり、P
ASI75反応率は、ベースラインに対してPASIスコアが75%以上減少した症例の割
合を表しています。
 一方、関節症性乾癬については日本では患者数が少なく、個別の検証試験は実施されて
いませんが、表13の下に示していますように、本試験には関節症状を有する患者が22例
含まれており、当該患者のPASI75反応率についても、全体集団と類似した結果が認
められています。また、皮膚症状と同様に重要な症状である関節症状に対しては、国内試
験ではVisual Analog Scale評価により本剤の関節疼痛に対する改善効果が示唆されてい
ること、また、海外試験において関節症状の評価に頻用される指標であるACR反応率に
おいて、プラセボに対する本剤の優越性が示されていることなども勘案し、本剤による一
定の有効性は期待できると評価しています。これらの成績より、機構は尋常性乾癬及び関
節症性乾癬に対する本剤の有効性は示されたものと判断しています。
 38ページの表13をご覧ください。本剤の用量については、本剤の主要評価項目である
投与12週目のPASI75反応率は、90mg群の方が45mg群に比べて高い傾向が見られて
いますが、PASI50反応率は45mg群で82.8%、90mg群で83.9%であり、いずれの用
量でも臨床的に意義のある皮膚病変の改善がほとんどの患者で得られる可能性が示唆さ
れたことなどから、通常用量は45mgとし、45mg投与で十分な効果が得られない場合の増
量用量として、90mgを規定することが適切であると機構は判断しています。
 57ページ中段、(4)安全性についての項を御覧ください。国内外の臨床試験における
有害事象の発現状況を表30及び次のページの表31にまとめていますが、現時点では、死
亡、重篤な有害事象、すべての有害事象について、本剤群とプラセボ群で大きな違いは認
められていません。しかしながら、本剤もTNF阻害薬等の既存の生物製剤と同様に免疫
機能に影響を及ぼす薬剤であること、海外における臨床試験及び市販後データでは、少数
ではありますが本剤投与後に結核、肺炎、敗血症などの発現が認められていることを踏ま
えると、既存の生物製剤と同様に重篤な感染症の発現には厳重な注意を払う必要があると
考えられます。また、本剤と既存の生物製剤では、免疫機能へ影響を及ぼすこと、抗体製
剤であること等の類似性を有することを踏まえると、悪性腫瘍、重篤なアレルギー反応等、
既存の生物製剤で知られている有害事象の発現には、本剤においても留意していく必要が
あると考えられます。さらに本剤の使用経験は海外も含めまだ少なく、今後十分に情報を
集積した上で、安全性プロファイルをより明確にする必要があることなども踏まえると、
製造販売後には、既存の生物製剤と同様の安全対策として、一定数の症例が集積されるま
では全例での使用成績調査、さらに長期投与時の安全性等を検討するための長期特定使用
成績調査を実施し、適正使用の徹底、副作用情報の把握等を図ることが適切であると機構
は判断しています。
 次に54ページの中段、1)効能・効果についての項を御覧ください。当初、申請者は本
剤を、乾癬における既存治療であるシクロスポリンやエトレチナート、紫外線療法と同列
の位置付けとすることを想定して開発を行いましたが、乾癬は一般に致死性の疾患ではな
いのに対し、本剤では致命的な経過をたどる可能性がある重篤な感染症等の発現リスクが
あることなどを考慮すると、本剤を既存治療と同列に位置付けることは適切ではなく、イ
ンフリキシマブ及びアダリムマブと同様に、適用対象を既存治療で効果不十分な場合に限
定すべきであると機構は判断しています。
 以上の審査を踏まえ、承認条件として、製造販売後に全投与症例を対象とした使用成績
調査及び長期特定使用成績調査を実施することを付した上で、本剤を承認して差し支えな
いとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係
る再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当するものと判断
しています。薬事分科会では審議を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいた
します。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。溝口先生、何かコメ
ントなどございませんか。
○溝口委員 本薬の有効性はきちんと証明されていますし、既に乾癬に適用が承認されて
いるインフリキシマブとか、商品名がヒュミラですがアダリムマブなどと、安全性に差が
ないと読み取れましたので、皮膚科医としては是非お認めいただきたい薬剤です。
と、申しますのは、乾癬というのは一生続きますので、いい薬が出たと思って治療を始め
ても、次々と効かなくなるのです。この薬はこれまでのアダリムマブ、インフリキシマブ
と作用機序が違うので、それが効かなくなっても、これが効いていると報告書に書いてあ
るので、治療選択肢が増えることは患者さんにとって非常にいいことだと思いますので、
お認めいただければ有難いと思います。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○堀内部会長代理 今のことに関連して、有効性がどのぐらいの期間続くかということが
問題になると思いますが、47ページの第III相では、投与期間の最大は264週ですから
5年間やられているということになります。それくらいは有効性が続くと考えていいのか
ということと、もし、中断をするとどうなるか、そのようなデータがあれば教えていただ
きたいと思います。
○機構 まず、長期間投与して有効性が持続するかという点ですが、海外のデータから長
期においても初期と同様の有効性が維持できるという結果が得られておりまして、現時点
ではそのようなデータとなっております。
○堀内部会長代理 これは2008年8月にカットオフですね。もっと長く続いていると思
いますが、そのデータはあるでしょうか。
○機構 この成績に関しては、報告書に書いてある情報が最新でして、それ以降の情報は
まだ入手できていない状況です。もう一つ、中止などをした場合はどうなるかという点に
ついては、報告書53ページ下段、2)寛解時における本薬の休薬等の可能性について、に
書いてありますが、今までの検討ですと、やめてしまうと徐々に効果が消失していくとい
う結果になっておりますので、現時点の検討では投与の継続が必要であるという結論で
す。
○吉田部会長 再開したときに、何か起こるということはないのですか。
○機構 現時点では抗体などの発現率が上がるといったようなことも特に見られており
ませんし、効果に関しても休薬以前と同様まで上がるという成績のようですので、問題は
ないかと思います。
○吉田部会長 その他何かあればお願いいたします。
○庵原委員 2点お聞きしたいのですが、先ほどの堀内先生の質問の関係で、長期に使う
とTh1を抑えていくということですから、IL-12を介するマクロファージの活性化を
抑えます。そうすると、結核発症の問題とか帯状疱疹発症の問題など、いわゆる潜在して
いた病原体が再活性化してくるという危険性があります。その辺のリスクをどこまで見て
いるかということです。当然マクロファージの活性化が抑えられますから、がん発症リス
クの増大という問題も出てくると思うのですが、その辺りはどこまで記載されているかと
いうのが1点目です。また、添付文書の皮下注の、この注射の打ち方は、どう見ても三角
筋に打っている筋注のように見えるのですが、この点いかがなものかというのが2点目で
す。
○機構 1点目の長期に使った場合の結核や感染症の発現ということについてですが、現
時点で結核に関しては、海外の臨床試験で1例、海外の市販後で2例の発現が認められて
おりますので、他の生物製剤と同様、厳重に注意していく必要があると考えております。
その他の重篤な感染症等に関しては、現時点での発現は多くはない状況です。
○庵原委員 帯状疱疹に関するデータはないのですか。Th1を抑えれば、年齢が高くな
ると帯状疱疹が増えてくるというのが理屈の上で成り立つことなのですが、実際にそれが
出ていなければ、それはそれでいい薬だという話になるだけです。
○機構 現時点では、特に帯状疱疹の発現率が上昇するというデータは得られてはいない
と思いますが、海外も含めて市販後のデータなどもまだ十分に集積されていない状況です
ので、今後十分注意するように申請者にも伝えたいと思います。
○庵原委員 発がんの問題も、治療しているが増えているということもない、ということ
でよろしいですか。要するに、Th1を抑制する薬剤ですからマクロファージの活性化が
抑えられてきますので、がん免疫の機構を抑えるというメカニズムに関係してくるので
す。ですから、これを長期使用すると何らかの癌が増えてくるという予測、理論上の予測
だけですがでてきます。しかし今までのところ認められていないということでよろしいで
すか。
○機構 特に何かの癌に特異的に発現が見られるなど、そのような情報は今のところは得
られていない状況です。
○吉田部会長 2点目の質問に関してはいかがですか。
○庵原委員 添付文書の最後にもステラーラの皮下注の図がありますが、このほかにも幾
つか皮下注をする文書があると思うのですが、それと整合していただければと思うので
す。この位置は、予防接種で皮下注をやりなさいという場合の部位と少しずれているよう
な気がするので、その辺を合わせていただければと思います。
○機構 分かりました。その点に関しては、適切な書きぶりになるように検討いたします。
ありがとうございます。
○吉田部会長 その他何かあればお願いいたします。
○岡委員 今のコメントと似ているのですが、Th1をかなり抑えると、人工的にエイズ
を作っているような状況です。エイズ患者もときどき乾癬があるのですが、海外ではエイ
ズ患者には使用が禁忌などということはないのですか。
○機構 使用禁忌にしているかという御質問でしょうか。少々お待ちください。
○吉田部会長 では調べてください。守殿委員、お願いいたします。
○守殿委員 同じく感染についての質問ですが、本剤は免疫能を抑制し、リンパ球も減少
するということであれば、添付文書の中の重篤な感染症の記載には細菌、真菌が先にきて
いるのですが、このような病態では、むしろウイルス感染の方が多いのではないかと思い
ます。この記載はウイルスを最初に持ってくるべきではないかと思います。それから、起
こっている感染症の診断名を見ると、ほとんどが局所感染みたいなものです。重篤なもの
としては全身性の疾患がいろいろ書いてありますが、膀胱炎などというのは局所の炎症
で、全身の免疫状態は一切関係ない感染です。ただ、アレルギー性の膀胱炎もありますが、
副作用に出ている感染症の診断名を見ると、ほとんどはアレルギー性が原因で起こってい
る感染症で、バクテリアが実際に感染の原因になっていたのかという印象を持っておりま
す。その辺はいかがですか。
○機構 御指摘の感染症がアレルギー性の関連で発現しているのではないかという点に
関しては、十分な検討には至っていない状況ですので、今後はそのような点にも考慮しな
がら症例を検討するよう申請者にも伝えたいと思います。
○守殿委員 検査異常値も白血球の増加や増大というのはほとんどなしで、好酸球の増加
の方が検査異常値としては結構多いようです。悪性腫瘍のところで前立腺癌が3例と書い
てあります。これはほとんどが有害事象的な因果関係がないという状況かとは思います
が、どのような状況で前立腺癌が発見されたのか知りたいのですが。なかなか難しいこと
ですが、例えばトライアルが長期化に及んでいたら、投与前に前立腺癌が発見できるマー
カー(PSA)を測っていれば、その変化によって癌があるかどうかということが判断しや
すくなります。ただ、数か月か半年、1年の服用で前立腺癌ができるとも思えないですし、
その辺が難しいところです。余り大きく取り上げる必要はないかと思います。
○吉田部会長 その辺の経過は分かりますか。
○機構 詳細なデータは確認する必要がありまして、今この場でお答えすることはできま
せんので、後ほど御報告させていただくということでよろしいですか。
○吉田部会長 例えばPSAがぎりぎりぐらいだったものが、本剤を投与しているうちに
どんどん増えてきた、ということになってきたら、危ないのではないかという話になりま
すから是非とも報告して下さい。その他何かありますか。
○前崎委員 結核のことをお聞きしたいのですが、レミケードやヒュミラに関しては、潜
在性結核という言葉が入っていなかったと思います。今回、この製剤では潜在性結核とい
うことをきちんと言われていますが、潜在性結核とは、まずどのようなことを定義してい
るのかをお聞きしたいと思います。と言いますのは、レミケードとかヒュミラを使うとき、
私ども感染症の専門家は相談されるのです。これまではツベルクリン反応や結核の既往と
いったことで見ていたのですが、潜在性結核ということになると、例えばQuantiFERONな
どといった検査、これは基本的な注意事項にも書いてありますが、そのようなものを要求
することになると、使用前に私どもに結構な負担がかかってくるわけです。この製剤に潜
在性結核という言葉を使うのであれば、レミケードやヒュミラも同じような潜在性結核の
スクリーニングをやらないといけないのではないかと思うのですが、その辺の経緯はいか
がでしょうか。
○機構 本剤に関して認められている結核というのが、先ほど申し上げたとおり3例なの
ですが、このうち市販後の1例は情報不足ですが、2例は潜在性結核であったということ
で、また、作用機序からも潜在性結核を顕在化させる可能性があるため、現時点ではこの
ような記載をしているというところです。
○前崎委員 それは潜在性結核の患者さんが、いわゆる顕著化した、活動性が出てきたと
いうことで判断されているのですか。そうしますと、前にQFTなどといったものでスク
リーニングされている患者さんに投与したということですか。
○機構 市販後の症例に関してはスクリーニングをした際の情報までは入手できており
ませんので、どういった経緯であったかの確認はできておりませんが、医師の判断では潜
在性結核であったという判断になっております。
○前崎委員 もう1点、基本的な注意事項に、潜在性結核の患者さんには本剤投与前に結
核に対する治療を行うと書いてありますが、これは結核に対する治療を行うのか、それと
も潜在性結核に対する治療を行うのか。潜在性結核に対する治療であれば、普通はイソニ
アジドの単剤ですし、結核に対する治療と言うと、4剤併用とか3剤併用になるわけです。
この治療というのは、何に対する治療なのか。もし潜在性結核に対する治療であるならば、
きちんと潜在性結核に対する治療と書かないと、本当の結核の治療が必要になってきま
す。もしそうであれば、そのように書いていただきたいのですが、これはどちらを意味し
ているのですか。
○機構 意図しておりますところは潜在性結核の治療ですので、添付文書の書き方を更に
検討させていただきたいと思います。
○前崎委員 そうですね。その次の「潜在性結核の既往」という言葉もおかしいです。潜
在性結核はもともと既往ですから、これに既往と付けるのもおかしいと思います。潜在性
結核の表現も曖昧ですし、何を意図しているのか分からないので、もう少し考えていただ
いた方がいいと思います。
○吉田部会長 そのとおりですね。
○機構 失礼いたしました。説明が不足していたのですが、より広く結核の発症の予防投
与ということで記載しておりますので、表現が適切になるように修正したいと思います。
○吉田部会長 予防投与という意味ですか。まず治療してから、治療が完結してから使い
なさいということではないのですか。その意味合いがどれぐらい大きいのかというのが余
りよく読めないので、その点の表現を考えておいてください。
○機構 添付文書の記載については、再度検討させていただきます。
○溝口委員 先ほどの帯状疱疹に関しては、播種性の帯状疱疹が起こったということが
59ページに書いてあります。ただ、感染症にしても、癌の発症に関しても、これは今後
見ていくよりしようがないのではないかと思います。乾癬に長年使っておりますシクロス
ポリンなどでは、因果関係はともかくとして、癌の発症がたくさん報告されておりますし、
レミケードはリウマチに長く使っていますから感染症はいろいろ報告があると思います。
ですから、この薬だけが多いのか、などといったことは、今後使われてから分かることで
はないかと思います。それから三つほど伺いたいのですが、34ページの下の薬物動態の
ところに、「外国人と比較して日本人で体重が重かった」と書いてあります。これは「少
なかった」の間違いではないでしょうか。血中濃度が高かった原因というところです。
○機構 御指摘のとおりです。申し訳ありません。
○溝口委員 それから副作用に関することですが、37ページに「活性化部分トロンボプ
ラスチン時間延長」、つまりATPPを延長したと書いてあるのですが、大した肝障害は
起こっていないようです。ただ、ここで結構な頻度が示されているのに、その後の検査異
常値には全く出てこないので、やらなかったのか、その後は見つからなかったのか分から
ないのですが、恐らく出血傾向は余り示さなかったと思うのです。ただ、44ページの上
から3分の1ぐらいの所に、出血性脳卒中が1件あったと書かれていますので、この患者
さんのATPP値を調べる必要があるのではないかと考えました。
 もう1件は、添付文書にアナフィラキシー様症状が出たと書いてあります。頻度は不明
ですから、多分少ないのだと思いますが、その上の重篤な基本的注意の7)に書いてある
ラテックス過敏症、これはカバーが乾燥天然ゴムで作られているということですので、ラ
テックス過敏症とアナフィラキシー様症状は関係があったかどうか。また、抗ウステキヌ
マブ抗体が陽性の患者さんは結構いますが、これとアナフィラキシー様症状と関係があっ
たかどうかを教えていただきたいと思います。また、蕁麻疹の報告もありますので、それ
と抗体の関係がお分かりでしたら教えていただきたいのです。
○機構 最初の御質問の出血性脳卒中の患者様のATPP値ですが、今、手元に詳細なデ
ータがありませんので、後ほどということにさせていただいてよろしいでしょうか。
○溝口委員 もちろん後ほどで結構です。
○機構 アナフィラキシー様症状が発現した症例というのは、海外市販後の症例でして、
詳細な背景が不明ですので、ラテックス過敏症が関係していたかどうかというところは分
かりかねます。また、抗ウステキヌマブ抗体と関係があったかどうかという点に関しても、
市販後の症例ですので、抗体は測定されていないと思いますので関連は不明です。蕁麻疹
等のアレルギー反応等と抗体との関係ですが、現時点のデータでは特に相関は見られてお
りません。
○溝口委員 ありがとうございました。
○吉田部会長 抗体療法ですから、ある程度の抗体が生まれてくるということは必然的に
起こるのだろうと思います。ただ、副作用のところにはGradeが書いていないので、強か
ったのか弱かったのかが分かりません。有害事象の軽いものを除いた場合に何が引っ掛か
ってきたかという話が見えてくると、論点が少し整理できるかと思いますので、その辺も
よろしくお願いいたします。
○堀内部会長代理 報告書の35ページに、糖尿病の合併患者では有効性が低いというこ
とが書いてあり、「糖尿病合併患者における有効性については、糖尿病の重症度等の影響
も含め、製造販売後調査の中でさらに検討する必要があると考えられる」と書いてあるの
ですが、そのことについて添付文書では全く触れられておりません。しかし、この問題は
注意喚起という面からも入れておいた方がいいのではないかと思います。また、その後の
所で継続投与では有効性が大きく減弱した患者における抗体並びに中和抗体活性につい
て、さらに検討する必要があるということなので、承認条件の(2)の最後に「長期投与時
の安全性、感染症の発現について検討すること」となっておりますが、これには「有効性」
を入れておく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○機構 まず、糖尿病と有効性の関係ですが、臨床試験で糖尿病を合併している患者様は
有効性と、血中濃度も若干低くなるという傾向が示されているところですが、これに関し
ては臨床的に大きな意義をもたらすほどの低下ではないということもありまして、現時点
では添付文書の中で特段の注意喚起はしておりません。承認条件については、これまでの
生物製剤で付けているものと同じ表現にしているということもありまして、可能でした
ら、この表現にさせていただければと思っております。
○堀内部会長代理 表現は同じにしなくてもいいのではありませんか。各々の薬によって
違うのではありませんか。
○機構 中和抗体が発現するという特徴に関しては、これまでの生物製剤も同様ですし、
特に本剤に関しての抗体の発現は、ほかのものに比べて若干低い傾向もありますので、同
様の表現でよいのではないかと機構としては考えております。
○堀内部会長代理 添付文書の表現がどの薬についても同じようなものが大変多いと思
います。やはり個々の薬の特徴が出るような書き方というのが大事ではないかと思いま
す。糖尿病については、やはり使う方からしてみれば、これが載っていないと全く何も出
てこないわけですから、どこかに記載をするなどといったことで注意喚起をすることが必
要だろうと思いますがいかがですか。
○機構 御指摘ありがとうございます。申請者とも相談いたしまして、検討させていただ
きたいと思います。
○吉田部会長 承認条件ですが、このままいくとすると、有効性については一定数の症例
にかかわるデータが集積されるまでは、使用成績を見ていく中で調べようということです
から、全くやらないわけではないですね。それから大規模な製造販売後の調査を実施して
とありますが、そのときには有効性ではなく、安全性だけを特に拾っていくという話です
か。
○事務局 審査管理課です。本剤は新薬になりますが、新薬として承認されますと再審査
が付されます。その中で、長期で有効性、安全性を見るということですので、御指摘の長
期の中での有効性についてはその中で確認いたします。また、承認条件の2番目の意味す
るところですが、全体の枠組みの中で、さらに本剤については長期の安全性というのが非
常に大事ですので、そこに絞った承認条件を付しているということです。御指摘の有効性
という点については、制度全体の再審査で見ていきたいと考えております。
○吉田部会長 大規模な製造販売後調査というのも、何例ぐらいやるかは分からないとい
うことですか。
○機構 全例の調査に関しては、現時点での目標症例数として1500例を予定しておりま
す。
○吉田部会長 それは製造販売後の試験ですね。
○機構 調査です。
○吉田部会長 失礼しました。その調査では、何例調べるかというのはまだ決まっていな
いのですか。
○機構 こちらは悪性腫瘍と重篤な感染症の発現に関して、全例での追跡調査という形で
行われますので、明確な目標症例数という形では設定しておりません。
○吉田部会長 1500例の中でということですと、それほど大規模でもないのではありま
せんね。
○機構 そうですね。乾癬自体の患者数も多くないですので。
○吉田部会長 どんどん減るわけですからね、分かりました。先ほどの岡先生からの御質
問の件は分かりましたか。
○機構 海外の添付文書などを確認いたしましたが、特にエイズ患者様について禁忌とな
っているという状況ではないようです。
○吉田部会長 岡委員から何かあればお願いいたします。
○岡委員 どう考えても理論的にはT細胞、免疫抑制なので、同じことが起こると思うの
です。今の副作用のところで、副作用で感染症というのも少しおかしくて、副作用とした
ら細胞性免疫不全が副作用になるのではないでしょうか。その結果として重篤な感染症、
結核、悪性腫瘍等が起こり得るということを、もう少しはっきり明記する必要があるので
はないかと思います。最近は生物製剤で重篤なカリニが多発したり、予期しなかった副作
用がたくさん起こって問題になりつつあるところなので、今までと同一の並びで括ってい
いのかどうかというのは、かなり疑問を感じます。これは今までのものより、より怖いと
思います。
○吉田部会長 いかがですか。まだ横並びでないと難しいですか。これは大事な点で、や
はり免疫不全が起こって感染症という順序でいくべきだろうと思います。ただし、感染症
を起こしている人が、本当に免疫不全だったかどうかの証明がまだ分からないというとこ
ろもあるのだろうとは思うのですが、そのような方向性で整理していくことは大事な話だ
ろうと思いますので、今回は間に合わないとしても、いずれは生物製剤に関して審査管理
課あるいはPMDAで、そういったストーリーについて少し線路を敷いておくといいので
はないかと思います。
○堀内部会長代理 今の考えは非常に大事だと思います。それから、先ほどの長期投与し
たときの有効性についてはまだ明確になっていないわけですから、長期投与時の安全性と
感染症等の発現だけではなく、やはり有効性をきちんと担保すると。先ほどそれは再審査
でやるという話でしたが、そうではなくて、ここで添付文書に明確に入れておくことが大
事ではないかと思います。先ほど5年間やったというのは外国の例で、第III相で5年間
やったという話だけです。第III相なのでそれほど多い数ではないわけですから、市販後
調査あるいは長期投与の中でどうなっていくかというのは、まだ明確ではないと思いま
す。
○審査第四部長 補足させていただきます。資料1-11の製造販売後調査等基本計画書に
は、調査の目的として特定使用成績調査の長期使用に関する調査の中で、安全性及び有効
性を検討すると明記されております。
○堀内部会長代理 いや、添付文書の話をしているのです。
○審査第四部長 今までの生物製剤もそうですが、特に有効性という記載がなくても、市
販後に有効性の確認はしております。臨床試験のような検証試験は特にやらないのです
が、使用実態下での有効性というものは必ず確認しております。
○吉田部会長 堀内先生が言われているのは添付文書の中のどこの部分ですか。
○堀内部会長代理 承認条件の2番目の所です。「大規模な製造販売後調査を実施し、本
剤の安全性を十分に検討するとともに、長期投与時の安全性、感染症等」ということで、
安全性は大事なことですから必要だと思いますが、なぜここで有効性が出てこないのかと
思うのです。
○吉田部会長 これは既に製造販売後の試験で有効性に関するデータを明らかにしてい
るから、あえてここでは書かなかったということですか。
○機構 二つ目の承認条件に関しては、特に安全性をメインにする検討であることから、
本剤の安全性についてという書きぶりにしているということです。
○堀内部会長代理 それならば、長期の有効性については余り明確になっていないから記
載をしないということですか。
○事務局 先ほど御説明いたしましたように、基本計画書では長期の安全性及び有効性を
検討するということになっております。ここの承認条件で言いたかったことは安全性が大
事であるということなのですが、計画書に有効性ということもありますので、御指摘に沿
って検討したいと思います。
○吉田部会長 よろしいですか。その他何かあればお願いいたします。
○清水委員 治療反応が得られない場合の注意事項が、添付文書の用法・用量に関連する
使用上の注意の(1)に書かれていますが、特に最後の「また」の所で、「増量を行っても
効果が得られない場合、本剤の投与継続を慎重に再考すること」という文言になっており
ます。臨床の場で増量して効果が得られなくても、継続して使用をするということは考え
られるものなのでしょうか。使用の中止を検討することなどという文言ではなく、この文
言になっている意味がよく分からないのです。御説明をよろしくお願いいたします。
○機構 趣旨としては、生物製剤を使用している患者さんですと、これ以降の薬剤が限ら
れるということもありますので、効果が低い場合であっても継続せざるを得ないという状
況もあり、こういった記載になっているかと思います。ただ、「効果が得られない」とい
う書きぶりは、御指摘のとおり適切ではないと思いますので、ここは表現を考えたいと思
います。
○吉田部会長 その他何かあればお願いいたします。
○堀内部会長代理 今、添付文書についてはかなり指摘が出たと思います。添付文書は今
のところメーカーの責任という話になっていますが、やはり行政の方の責任というのもき
ちんとしなければいけないと思いますので、直したものを見せていただきたいと思いま
す。送っていただくなり、どんな形でも結構です。そのことを条件にしたいということで
す。
○吉田部会長 それはよろしいですね。改訂案を送っていただけますか。
○機構 承知いたしました。
○吉田部会長 いわゆるMolecular Targetingという、そういった薬ですから全身に相当
な影響を与えることは事実です。最初に溝口先生が言われましたように、病気とのメリッ
ト、デメリットの関係、バランスということでも判断せざるを得ないと言いますか、いろ
いろと懸念されることはあったとしても、疾病の重篤性との兼ね合いになってくるのだろ
うとは思うのです。しかし、今日のいろいろな議論は、大変建設的な意見であるとか、将
来の方向性を見せてくれたようなお話が多かったので、添付文書や市販後の調査その他に
ついても、なるべくそういった方向に沿った形で指導していっていただければということ
で、私からも、その点をお願いしたいと思います。
 そろそろ御意見も出尽くしたようです。ほかに何かございますか。よろしければ議決に
入ります。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議が無いようですので、本議題について承認を可とし、薬事分科会に上程とさせて
いただきます。
 改訂した添付文書については後ほど委員の方々へ送ってください。
 議題3に入ります。議題3について、医薬品医療機器総合機構より概要の説明をお願い
いたします。
○機構 議題3、資料3「医薬品オルベスコ100μgインヘラー56吸入用の生物由来製品
及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬
又は劇薬の指定の要否について、並びに医薬品オルベスコ50μgインヘラー112吸入用、
同100μgインヘラー112吸入用及び同200μgインヘラー56吸入用の製造販売承認事項一
部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明い
たします。
 本剤は副腎皮質ステロイド薬であるシクレソニドを有効成分とする加圧式定量噴霧式
エアゾール剤です。本邦では、本剤は成人における気管支喘息治療薬として、2007年4
月に承認されておりますが、今般、新たに小児用量を追加するための承認申請がなされた
ものです。海外において本剤は2010年9月現在、成人における気管支喘息治療薬として
欧州各国等59か国で、また小児における気管支喘息治療薬として16か国で承認されてお
ります。本申請の専門委員として、資料11に記載されております5名の委員を指名しま
した。
 主な審査内容について簡単に説明いたします。審査報告書8ページの中段、(1)第III
相用量確認試験の項を御覧ください。国内での使用試験として、5歳~15歳までの日本
人気管支喘息患児167例を対象に、本剤50、100及び200μg/日を8週間投与した際の有
効性及び安全性を検討する無作為化非盲検並行群間試験が実施されております。その結
果、表4に示しておりますように、有効性の主要評価項目である朝のピークフロー値(m
PEF)のベースラインからの変化量は、いずれの用量群においても投与前後で有意な改
善が認められております。
 また、本試験では既に医療現場で汎用されているプロピオン酸ベクロメタゾン吸入剤
(100μg/日)が比較参照薬として設定されており、表の下段にHFA-BDP群として示してお
りますように、ベクロメタゾン群でも投与前後で有意な改善が認められております。本試
験において、本剤50~200μg/日のいずれの用量においても、ベクロメタゾン100μg/日
と同程度以上の朝のピークフロー値の変化量を示したこと、また、10ページの表5等に
示しておりますように、海外における大規模な二重盲検比較試験において、プラセボに対
する本剤50~200μg/日の優越性が示されていることも勘案し、機構は、本剤50~200μ
g/日の5歳以上の小児に対する用量としての妥当性は示されたものと判断しております。
なお、本剤50~200μg/日の用量反応性は明確に示されていないものの、国内外試験の部
分集団解析から、重症度の高い患児では本剤100μg/日と比較して、200μg/日による呼
吸機能の改善が示唆されていることなどから、当該用量範囲内において一定の増量効果は
期待し得ると機構は判断しています。
 次に、13ページの下段、(2)安全性についての項を御覧ください。14ページの表9に、
小児を対象とした国内外の主な臨床試験における有害事象の発現状況を示しております
が、いずれの試験においても、有害事象、重篤な有害事象、試験中止に至った有害事象の
発現率に、用量依存的な傾向は見られておりません。また、14~16ページに記載してお
りますように、吸入ステロイド薬の長期使用時に懸念される副腎皮質機能への影響、成長
への影響等についても、国内外臨床試験及び海外市販後安全性データにおいて、特に問題
となる点は示唆されておりません。これらの結果より、機構は、小児における本剤の安全
性について現時点では特段の問題はないと判断しておりますが、国内臨床試験で検討され
た症例数は限られているため、製造販売後調査において長期投与時の副腎皮質機能や成長
への影響も含め、小児での安全性を引き続き検討する必要があると考えております。
 以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御
審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請に係る再審査期間は、初回承認の再
審査期間が平成27年4月までであることから、残余期間とすることが適当と判断してお
ります。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたし
ます。
○吉田部会長 成人で認められたものを小児に適用拡大したという話ですが、御質問、御
意見がありましたら、よろしくお願いいたします。
○堀内部会長代理 3ページの起原及び発見の経緯を見ると、健康成人が吸入した場合、
健康成人及び成人の気管支喘息患者で肺内への分布は52%であると記載されています。
これは外国人のデータだと思います。今度は小児ですから、多分うまく吸入できないとい
うことがあると思うので、データを取るのはなかなか難しいと思いますが、どのくらいの
割合が到達すると考えられるのか。あるいは、これはプロドラッグですからエステラーゼ
で加水分解されて活性型になると思うのですが、その場合は消化管から入ってから吸収さ
れ、血中に入って肺へ行く経路もかなりあると考えていいのでしょうか。基本的には喘息
の治療ですから、高濃度で到達しなければいけないので、吸入されたものが到達するのが
基本だろうと思いますが、どう考えたらいいのでしょうか。
○機構 まず小児の肺への到達率ですが、国内、海外ともに小児でのデータは得られてお
りませんので、実際のところどの程度かというのは分かりません。血中への移行について
は、消化管を経由しての移行は非常に少ないということでして、肺から吸収されるものが
ほとんどであるということです。
○堀内部会長代理 この薬剤はすぐ加水分解されると思うのですが、活性体になったもの
が吸収されるということは、消化管から吸収されることは余り考えないでいいということ
ですか。
○機構 はい。そのようなデータです。
○吉田部会長 どれぐらい入っているかの確認はできないが、有効性は認められているの
で効いているのではないか、ということだと思います。市販後の臨床試験が「5歳~15
歳を対象にして」となっているのは、今の堀内先生の御指摘のように、うまく飲めるとか
飲めないとかというところも入っての考えだと思うのですが、適用自体は0歳からも使え
るのですか。
○機構 添付文書では、通常「小児では」という書きぶりにしておりますので、4歳以下
の小児患者様には禁忌とか、使ってはいけないというものではないです。
○吉田部会長 使用を止めないということですね。その他何かあればお願いいたします。
○清水委員 今回の審査では直接変えられるところではない質問で恐縮ですが、剤形の名
称です。小児適用の拡大なのでどうしてほしいということではないのですが、これはイン
ヘラーという剤形を立てて、キュバールはエアゾールという剤形を立てていて、フルタイ
ドもエアゾールという剤形を立てているのですが、そこのところは開発メーカーが名前を
付けてきたものについてはそれを尊重するという、そのような考え方で指導されているの
でしょうか。
○機構 現時点では申請者の付けてきた名称に特段の問題がなければ、それをそのまま付
けているという状況です。
○清水委員 基本的にはこれもエアゾール剤ではありますね。
○機構 はい。
○吉田部会長 その他何かあればお願いいたします。
○岡委員 未変化体のシクレソニドにも、ステロイド様の作用というのはあるのでしょう
か。
○機構 活性体と比べると弱いですが、全くないというものではない、薬理試験などから
はそのようなデータとなっております。
○堀内部会長代理 1/100とは書いてある。
○岡委員 これは3A4で代謝されて、エステラーゼで活性体になるとあるのですが。
○堀内部会長代理 そうではなくて、エステラーゼで活性体になったものが3A4で代謝
されるのです。
○岡委員 活性体が代謝されるということですか。添付文書の5ページの下の表に、「3
A4阻害作用を有する薬剤イトラコナゾール、リトナビル等」とあるのですが、リトナビ
ルというのは非常に強い3A4の阻害薬で、これが仮に3A4単独だったら、血中濃度が
1000倍、2000倍と上がるリスクがあるのです。最近、吸入ステロイドで骨粗鬆症を起こ
した例を経験したことがあるものですから、そこの注意はかなりしておいた方がいいので
はないかと思います。
○吉田部会長 よろしいですか。
○機構 はい。ありがとうございます。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。それでは議決に入ります。
 なお、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参
加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、本議題について承認可とし、薬事分科会に報告とさせてい
ただきます。ありがとうございました。
 報告事項に入ります。事務局よりお願いいたします。
○機構 報告事項議題1、資料4「医薬品カロナール錠500の製造販売承認について、並
びに医薬品カロナール細粒20%、同細粒50%、同錠200、同錠300、同原末、コカールド
ライシロップ40%、同錠200mg、カルジール細粒20%、同錠200、アニルーメ細粒20%、
同錠200mg、同錠300mg、ピリナジン末及びナパの製造販売承認事項一部変更承認につい
て」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 資料4を御覧ください。本剤はアセトアミノフェンを有効成分とする非ピリン系解熱鎮
痛薬であり、現在は「鎮痛及び解熱」に係る効能・効果で承認されております。今般、昭
和薬品化工株式会社を代表とする計5社から、「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱い
について」(平成11年2月1日付研第4号及び医薬審第104号 厚生省健康政策局研究開
発振興課長通知及び医薬安全局審査管理課長通知)に基づき、「鎮痛」に係る効能・効果
に変形性関節症を追加し、さらに最大用量を1回1000mg、1日4000mgまで増量する効能
・効果及び用法・用量の製造販売承認事項一部変更承認申請がなされ、併せて昭和薬品化
工株式会社より、カロナール錠500の剤形追加に係る製造販売承認申請がなされたもので
す。
 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤の変形性関節症に伴う関節への適
用、及び最大用量として1回1000mg、1日4000mgまでの使用は、医学薬学上公知である
と判断し、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。また、カロナール錠500
についても承認して差し支えないと判断いたしました。
 ただし、アセトアミノフェンの高用量での長期投与により、重篤な肝障害が発現する恐
れがあることから、増量後の最大用量に近接する用量で、4週間程度以上長期投与された
症例における肝障害の発現状況を把握し得る安全性調査を実施すべきと機構は考えてお
り、承認条件として、「本剤の高用量での長期投与により重篤な肝障害が発現する恐れが
あることから、協力の得られた医療機関を対象に肝障害の発現状況を定期的に確認し、規
制当局に報告すること。また、その発現状況等に変化が認められた場合は、必要な措置を
講じるとともに、直ちに規制当局に報告すること」を付すことが適切と判断いたしました。
なお、承認条件の文言については、正誤表のとおり記載整備いたしましたので、併せて御
報告いたします。
 次に報告事項議題2、資料5「医薬品タシグナカプセル150mgの製造販売承認について、
並びに医薬品タシグナカプセル200mgの製造販売承認事項一部変更承認について」御報告
いたします。
 資料5を御覧ください。タシグナカプセル200mgは、Bcr-Ablチロシンキナーゼ活性等
を阻害することにより、フィラデルフィア染色体を有する白血病細胞の増殖を抑制すると
考えられている経口抗悪性腫瘍剤であり、現在は「イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期
の慢性骨髄性白血病」の効能・効果で承認されております。 今般、ノバルティスファー
マ株式会社から、「慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病」の効能・効果及び用法・用量
を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。また、容れ目違い品目
として、タシグナカプセル150mgを追加する製造販売承認の申請がなされました。
 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、「イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期
の慢性骨髄性白血病」において、承認条件として実施中の全例調査と同様の調査を実施す
ることを今回の承認条件として付した上で、タシグナカプセル200mg及び同150mgを承認
して差し支えないと判断いたしました。
 次に議題3、資料6「医薬品クラビット点眼液1.5%の製造販売承認について」御報告
いたします。
 資料6を御覧ください。レボフロキサシンは第一三共株式会社において創製されたフル
オロキノロン系薬です。国内におけるレボフロキサシン点眼液の開発は、平成□年□月よ
り参天製薬株式会社により開始され、平成12年4月にクラビット点眼液0.5%として承
認されております。今般、眼科領域におけるレボフロキサシン耐性菌出現を抑制すること
を開発コンセプトとし、0.5%より高濃度製剤であるクラビット点眼液1.5%の開発が実
施され、製造販売承認申請がなされております。
 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、耐性化抑制に関する検討は十分と言えな
いものの、第III相試験の結果から、本剤の有効性は示され、安全性についても特段の問
題はなかったことから、資料6に記載した効能・効果及び用法・用量にて、本剤を承認し
て差し支えないものと判断いたしました。
 次に議題4、資料7「医薬品カレトラ配合錠の製造販売承認事項一部変更承認について」
御報告いたします。
 資料7を御覧ください。カレトラ配合錠は、ヒト免疫不全ウイルスのプロテアーゼ阻害
薬であるロピナビルとリトナビルとの配合剤です。HIV感染症は生涯にわたり治療を必
要とする慢性疾患と考えられており、効果の持続性だけでなく、より利便性が高く服薬率
を改善できる製剤が求められています。今般、服薬率の向上及び維持を目的として、本剤
1日1回投与の開発が行われ、本剤の1日1回投与による臨床試験成績を取りまとめ、用
法追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。医薬品医療機器総合機
構における審査の結果、資料7に記載した効能・効果及び用法・用量にて承認して差し支
えないと判断しました。
○事務局 続きまして、報告事項議題5、資料8「医療用医薬品の承認条件の解除につい
て(シーエルセントリ錠150mg)」御報告します。
 資料8を御覧ください。販売名シーエルセントリ錠150mg、一般名マラビロク、承認取
得者ヴィーブヘルスケア株式会社の承認条件の一部解除について御報告いたします。
 本剤は平成20年12月に、CCR5指向性HIV-1感染症を効能として承認されてい
ます。その際、日本人における薬物動態に関する情報が得られていないこと等から、1ペ
ージ目の1.2.のような承認条件が付されて承認をされました。今般、この承認条件に基
づきまして、日本人健康成人を対象とした薬物動態試験の結果が提出され、医薬品医療機
器総合機構で審査を行いました。
 4ページ、III.総合評価を御覧ください。提出された資料について審査を行った結果、
日本人の健康成人における本剤の薬物動態は、外国人健康成人と大きく異ならないことを
確認しました。そのため、薬物動態試験に係る承認条件については解除しても差し支えな
いものと判断しており、4ページの下線部にあるとおり変更することといたします。以上、
御報告いたします。
○機構 報告事項議題6、資料9-1、9-2「医療用医薬品の再審査結果について」まとめ
て御報告いたします。これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。
 資料9-1、一般的名称「リュープロレリン酢酸塩」、販売名は「リュープリンSR注射
用キット11.25」です。
 資料9-2、一般的名称「テイコプラニン」、販売名は「タゴシッド皮膚反応用他」です。
 これらの品目につきまして、市販後の使用成績調査、市販後臨床試験、特別調査の成績
等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられ
ている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等
の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。以上でござ
います。
○吉田部会長 ありがとうございました。議題1は、ペインクリニック等々からの要望も
あって、アセトアミノフェンの4g増量を公知で承認したということです。議題2は、こ
れまではイマチニブ抵抗性のものについて適用があったのですが、これからは慢性期移行
期のCMLにも使えるようにしたいということです。議題3は、クラビットを0.5%から
1.5%に増量するという報告、議題4は、1日1回の用法追加をしたいということです。
議題5は、我が国における薬物動態試験が終了したので、承認条件を変更したいというこ
とです。議題6は、長期使用成績が明らかになって「カテゴリー1」と評価した、という
報告とのことです。
 以上の報告事項につきまして、委員の先生方から御意見等ありましたらどうぞ。
○半田委員 資料5のニロチニブの件で質問です。もともとCMLの第1選択薬は、イマ
チニブ、グリベックですが、これを製造販売している所はノバルティスファーマ社です。
今回のニロチニブもノバルティスファーマ社から開発されて、グリベックより効果が高い
ということです。臨床試験は、対照薬がグリベックになっているわけですが、本剤がファ
ーストチョイスとして入った場合、グリベックと本剤が入るわけですね。そうすると、も
ともとがグリベックより有効性が高いものということになると、グリベックは駆逐される
はずで、同じ会社から同じ物が発売されると非常に奇異な感じがするということが第1点
で、これに関してはどのように考えればいいのかということです。
 後は、承認条件です。多分、これは専門家が使われるものなので、専門施設で専門医が
診るものですから、その辺の使い分けについては、基本的にはこれからガイドライン等が
できると思います。欧米では、既にFDA等々も承認されているわけですが、この辺に関
しては承認条件としてもう少しきちんと入れた方がいいのではないかというのが私の印
象です。この辺に関していかがでしょうか。
○機構 1点目の位置付けの件に関しては、審査報告書の20ページに記載しています。
CML-CPでは長期にわたる治療が行われるわけですが、今回提出された資料に関しては非
常に短期間の成績に留まっているところもありまして、本剤は初発のCML-CPに対しては、
治療選択肢の一つという位置付けとして考えております。現時点の限られた成績をもって
第1選択薬に置き換わるとは考えていません。
○吉田部会長 それでよろしいですか。
○審査第五部長 先生の御疑問は、グリベックを出している会社、かつ、本剤を出してく
る会社が同じなのは奇異に感じるという御発言かと思います。会社戦略というのもありま
すし、対抗の薬も世の中にもう1剤存在していることもあるので、我々としては決してそ
れを奇異には感じていません。御存じのとおり、開発のスタート段階では、グリベックに
耐性になった患者さんに対して、本剤は開発され承認されました。次にグリベックと本剤
の直接比較を行って勝ったということで、本剤として一つの価値は出て来ていると思いま
す。そういう意味で、会社の戦略として、本剤の特徴を今後売り出していくというところ
があるかと思います。
 一方で、グリベックは非常に定評があり、かつ、標準療法として確立しています。特に
今、長期の安全性の問題もありますので、長期使用の経験も限られている本剤がすぐにグ
リベックに置き換わるかどうかは、本剤が世の中に出て、今後専門医も含めていろいろな
方々で議論をしていくものだろうと思います。
○吉田部会長 よろしいですか。
○半田委員 そのとおりで、私もすばらしい薬だと思います。いわゆる承認条件としては、
後は市場に任せるとか、学会などに任せると、そういう意味ですね。又、ガイドラインは、
市販後や、あるいは外国のデータをもって作っていくと。その切り分けをつけることなど
が、これから民間や学会等で行われるわけですが、国としては特になく、後は任せていい
ということですか。いわゆる承認条件として、そういうところまで入れるべきかどうか、
どうなのでしょうか。
○審査第五部長 承認条件は医薬品の承認に関わる条件ですので、前回の審査では、国内
での安全性担保というテーマで全例調査を条件にセカンドラインでの承認をしてきたわ
けです。今回安全性情報が蓄積されつつある中で、既承認の適応とは対象患者は少しずれ
るのですが、安全性の担保を確認することを大きなテーマとして前回と同じ承認条件を付
けさせていただいています。したがいまして、先生の御懸念や御指摘の部分に関しまして、
有効性の面でどういう位置付けになってくるかということに関して承認条件を付けてい
るわけではない、ということを御理解いただければと思います。
○吉田部会長 治療する側からすると、いずれ耐性が出るわけですから、耐性が出てきた
ときに次の薬を使うと考えると、やはりイマチニブを先に使って、次にニロチニブを使う
というやり方の方が長く薬をアクティブに使えることになりますので、恐らくそういった
ものがベースになると思います。ただ、ニロチニブを絶対にファーストラインで使っては
いけないか、という話になってくると、それはまた別の話になりますので、そういう意味
では承認条件を広くとっていただいた方が、使う側としては大変有り難いと私は思いま
す。それから、会社が同じ薬を出すというのは、記憶が違っていたら申し訳ないのですが、
ノバルティスファーマ社が、乳癌で同じ薬を出していたかと思います。この会社は、これ
で2回目ですね。既にファーストラインで使われている自社製品と競合する新薬を自社で
開発して、二つ並べるというやり方をしています。ということですので、これが初めてと
いうわけではないと思います。
○審査第五部長 ここの審議とは少しずれてしまいますが。実際はアレディアとゾメタと
いう、骨転移の薬剤でも同じです。やはり新しい薬は特徴を持っていて開発されてきてい
るということです。例えばアレディアの投与時間の問題などが、ゾメタは改良されている
というところもありますし、また、データとしてはそれなりの臨床試験が出されてきてい
ます。今回に関しても、部会長がおっしゃっているように、一つの特徴としては、グリベ
ックに耐性化された患者さんに対しての薬剤として開発されてきたという特徴の中から、
新たにファーストラインでのトライアルによって得られている情報で、ファーストライン
への承認を受けるという流れになっています。
○吉田部会長 他にございますか。
○山添委員 資料6の、レボフロキサシンの件です。確かキノロン系のものについてはメ
ラニン色素に親和性があったと思いますが、点眼に使う場合、そのときの結合の問題は議
論されているのでしょうか。
○機構 こちらにつきましても、0.5%の製剤の開発当時にも、メラニン色素への影響が
非臨床の観点、また、臨床の成績から確認されています。今回、1.5%の製剤でも同様の
観点から確認を行いました。その結果、メラニンの親和性については非臨床の成績からの
考察により特段問題はなく、臨床試験においても特に大きな問題は起きていないことを確
認しています。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。
○山添委員 アセトアミノフェンの件です。4gというのは大変多いのですが、保険金事
件の問題のときに、アルコールを飲んだ後、空腹時にアセトアミノフェンを投与して、ア
ルコール摂取で酵素が誘導されて肝臓が癒着していた、それで亡くなったということがあ
ったかと思います。これは不思議な酵素で、CYP2E1というのはアルコールで安定化され
るために、酵素誘導されるだけではなくて、アルコールを飲んでいると酵素含量が増えた
まま、たん白が安定化しているのですね。ですから、アセトアミノフェンを一緒に飲むと
非常に毒性が増強されるという、少し変わった機序がありますので、やはりアルコールに
ついて何か一言記載しておく必要があるのではないかと思います。
○吉田部会長 いかがでしょうか。
○機構 お答えします。添付文書の中で、使用上の注意の(9)で、アルコール多量常飲者
に関して慎重投与とすると記載していて、それから、相互作用の中でもアルコールのこと
を記載しています。
○吉田部会長 使用上の注意の(9)と、もう一つはどこですか。
○機構 相互作用としての表が載っているかと思いますが、その中程に、アルコールとい
うことで載せております。
○山添委員 なるほど。
○吉田部会長 先生がおっしゃっているのは、アルコール摂取のすぐ後であるとか、一緒
に飲んでしまう、とかそういう話ですか。
○山添委員 アルコールを一緒に飲むと酵素の含量が安定化して、分解が抑えられてしま
うので、これとは機序が少し違うのです。
○吉田部会長 違ってくるのでしょう。ここの話とは少し違いますね。
○山添委員 臨床の機序と。臨床上の問題はそちらの方が大きいと思います。
○吉田部会長 ですから、「アルコールと一緒に服用しないこと」とかそういうことが必
要になってくるのかもしれません。よろしいですか。では岡委員どうぞ。
○岡委員 アセトアミノフェンの所です。これはWHOが4gまで認めているので、本邦
でも4gなのですが、日本人は体重が小さくて、7ページの表1と表2を比べると、やは
りAUCが外国人に比べて少し高くなっていると思います。一般にはアセトアミノフェン
は安全な薬だと思われていますが、オーバードーズの肝障害は結構恐いので、4gまでO
Kとなると、それを超えて飲む人が増えてこないかと。書いてあるから仕方がないのでし
ょうが、その辺何か、それ以上飲まないように、もう少し強く書くことはできるのですか。
○機構 今回、この増量に合わせまして、過量投与しないという所の注意喚起を少し強め
にしました。今までは過量投与の所にこれが書かれていたのですが、これを警告の一番最
初に持ってくる形で注意喚起を強化しています。
○吉田部会長 そのこともそうなのですが、これは承認条件が、協力を得られた医療施設
を対象にと書いてあるのですが、もう少し強めに情報を集められないものですか。あるい
は何例とか、例えば、軽度の肝障害のある人を中心にやるとか。目的がよくわからないよ
うな感じがするのです。
○機構 今予定している調査は、御指摘いただいたとおり、やはり高用量を使用した際の
安全性、肝障害の影響が懸念される点ですので、今回の予定最大用量に近い用量、例えば、
3g/日以上などを長期にわたって投与されている患者さん、500例程度を集積して、肝障
害の発現状況を確認する調査を実施することを計画しています。
○吉田部会長 そのときに、今御指摘いただいたような体表面積や体格の問題もあると思
うので、一応その辺の体表面積との関係も調べておいたらいいと思います。確かに1.5?u
ぐらいの人と2.0?uの人では全然違うと思いますので、是非お願いします。
○機構 ありがとうございます。体重など、そういったものも考慮して、情報を収集する
ようにしたいと思います。
○吉田部会長 岡先生、よろしいでしょうか。では、溝口先生。
○溝口委員 クラビット点眼薬についてです。
○吉田部会長 今のことですか、それでは堀内委員、先にお願いします。すみません。
○堀内部会長代理 私は、先ほど山添委員がおっしゃったことは極めて重要だと思いま
す。ですから、禁忌とは言えないですが、用法・用量の表現を極めて強くすることが文書
の中で必要だと思うので、是非やっていただきたいと思います。
○吉田部会長 では、溝口先生どうぞ。
○溝口委員 今の、アセトアミノフェンは一般薬の風邪薬に入っていますので、本当に今
の用法・用量をきちんとお願いしたいと思います。結構、薬疹の原因にもなっていますの
で。それともう一つ、資料6のクラビット点眼液です。クラビットは本当にいい抗生物質
ですので、内服としてずっと使いたいと考えています。重大な副作用とその他の副作用の
所に、アナフィラキシーと、眼瞼炎、蕁麻疹などの皮膚炎、眼瞼皮膚炎などもあります。
アナフィラキシーを起こした場合は、多分内服もやめなさいという指示があるかと思いま
すが、過敏症を起こした患者さんのその後の処置はどうするのでしょうか。ただ点眼薬を
やめるだけなのか、それとも内服も注意しなさいという指示を与えるのでしょうか。
○機構 今回、まず0.5%のときの試験の成績で、いずれも頻度不明のアナフィラキシー
であるとか、過敏症については頻度不明の有害事象として、副作用として記載しています。
1.5%製剤については、今回の臨床試験ではアナフィラキシーは認められていません。経
口剤との併用の場合については、確認していないのですが、基本的に、このような過敏症
等が発現すればこの点眼剤は中止になると思います。
○溝口委員 わかりました。目の粘膜だとランゲルハンス細胞が少ないので、接触皮膚炎
に関しては感作は起こりにくいかと思います。皮膚科医はみんなそうですが、うっかり外
用薬で抗生物質の軟膏を出してしまって、それで感作すると必要な抗生物質が内用できな
くなるので、こういう点眼薬も注意して開発していただきたいと考えています。
○吉田部会長 他にございますか。よろしいでしょうか。他に御意見がなければ、報告事
項についてはこれで御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はございますか。
○事務局 最後になりますが、先月の第一部会で、経口配合剤の取扱いについて少し議論
があったので、途中ではありますが、御報告をしたいと思います。糖尿病に関するもので
すが、第一部会の方で、経口の配合剤について議論が行われた際、相乗効果等が認められ
ないものについては、配合剤の基となる単剤の承認後、期間を置かずに配合剤を承認する
ことについて安全性上の懸念があるという議論がありました。議論の結果、配合剤の基と
なる単剤の承認が行われた後、一定期間、約1年おいてから承認するということで合意が
得られました。詳細については、今、事務局において取扱いを検討していますが、この第
一部会の内容は、第二部会で御議論いただく配合剤についても、該当するものがあれば同
じ取扱いとしたいと考えています。
 詳細につきまして、事務的な検討が終わったところで改めて御報告したいと思います
が、とり急ぎ御報告です。よろしくお願いします。
○吉田部会長 要するに、第一部会と第二部会で取扱いが変わったら困るので、きちんと
合わせてやってくださいということですね。わかりました。その都度説明していただけれ
ばいいと思います。他にいかがですか。
○堀内部会長代理 基本的に、配合剤は慎重でなければいけないと思います。臨床・薬理
的な観点から言えば、両者をアバウトに、両方を与える。あるいは、それでもってよけれ
ば、それはいいのですが、やはり個々の薬剤について適当な量があると思います。これは、
場合によると生き残りを図る意味合いも出てくるでしょう。したがって、できるだけ慎重
に扱うと。1年経ったら何でも配合剤にしていいという考え方ではないだろうとは思いま
すが、慎重にやっていただきたいと思います。
○吉田部会長 他にございますか。事務局、その他の連絡はございますか。
○事務局 次回の部会ですが、平成23年1月20日(木)13時からの予定ですので、よろ
しくお願いいたします。
○吉田部会長 司会の不手際で、本日は少し延びてしまいまして申し訳ありませんでし
た。これで終了します。本日はどうもありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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