ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第61回厚生科学審議会科学技術部会議事録




2010年12月22日 第61回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成22年12月22日(水)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(中央合同庁舎第5号館 17階)


○出席者

永井部会長
井部委員  金澤委員  桐野委員  佐藤委員  末松委員
高杉委員  西島委員  廣橋委員  福井委員  松田委員
南(砂)委員  宮田委員  宮村委員  望月委員  森嶌委員

○議題

1 遺伝子治療臨床研究について
2 ヒト幹細胞臨床研究について
3 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しについて
4 その他

○配布資料

資料1-1遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について
資料1-2遺伝子治療臨床研究実施計画について
資料1-3遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程について
資料2-1ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料2-2ヒト幹細胞臨床研究実施計画について
資料3ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しについて
資料4遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料5フィージビリティ・スタディ中間評価について
資料6-1ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針について(経緯等)
資料6-2ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針の概要
資料6-3ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針
参考資料5「戦略研究に向けたフィージビリティ・スタディ」公募要項

○議事

○尾崎研究企画官
 傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事項をお守りいただくよう、お願いいたします。
 定刻になりましたので、ただいまから第61回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様にはご多忙の折、お集まりいただき、お礼を申し上げます。
 本日は、今井通子委員、岩谷力委員、川越厚委員、橋本信夫委員、町野朔委員、南裕子委員からご欠席のご連絡をいただいております。宮田委員、宮村委員は、遅れるということです。いま出席されている先生方でも過半数を越えており、会議は成立するということで順次進めていきたいと思います。
 続きまして、「議事次第」の配付資料一覧を見ていただいて本日の会議資料の確認をしたいと思います。まず資料1-1は「遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について」、資料1-2「遺伝子治療臨床研究実施計画について」、資料1-3「遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程について」、資料2-1「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」、資料2-2「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」、資料3「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しについて」、資料4「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、資料5「フィージビリティ・スタディ中間評価について」、資料6-1「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針について」、資料6-2「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針の概要」、資料6-3「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」。
 参考資料1「厚生科学審議会科学技術部会委員名簿」、参考資料2「遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する参考資料」、参考資料3「ヒト幹細胞に用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料」、参考資料4「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」、参考資料5「戦略研究に向けたフィージビリティ・スタディ公募要項」です。お手持ちの資料の過不足がありましたら、事務局にお知らせください。
 また先生方には、私ども事務局から事前に資料を送付しておりますが、その資料と今回机上に配付している資料については、いくつか修正及び追加点がありますので、説明させていただきます。
 資料3の関係では、委員会の名称について、前にお配りしている資料については、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会(仮称)」というところですが、これについて、本日の資料においては、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会」という名称になっています。資料6-1については、多少修正点として【今後】の部分を追加しました。参考資料5については、本日追加しました。よろしくお願いします。
○永井部会長
 それでは、議事に入りたいと思います。最初は、九州大学病院の「遺伝子治療臨床研究実施計画の申請」及び「遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について」です。これは10月23日に厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会に付議されております。まず事務局より説明をお願いします。
○尾崎研究企画官
 資料1-1をご覧ください。2つの申請について説明します。いずれも九州大学病院からの申請です。まず最初の「遺伝子治療臨床研究実施計画の申請」ですが、遺伝子治療臨床研究を行う施設から意見を求められた場合には、「遺伝子治療臨床研究に関する指針」に基づき、複数の有識者のご意見を踏まえて、新規性を判断した上で、厚生科学審議会に諮問させていただいております。
 流れについては参考資料2の2頁に書いてあります。資料1-1に戻って、1頁が諮問書、2頁が科学技術部会への付議書、3頁は実施計画の申請書、4頁から概要書、32頁からは説明・同意書になります。4頁の概要書により今回の研究について説明いたします。
 研究の名称は、「神経栄養因子(ヒト色素上皮由来因子)遺伝子塔載第3世代組換えアフリカミドリザル由来サル免疫不全ウイルスベクターの網膜下投与による網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究」です。すなわち申請された遺伝子治療研究では、導入される遺伝子は、ヒト色素上皮由来因子である神経栄養因子の遺伝子。遺伝子導入には、アフリカミドリザル由来サル免疫不全ウイルスベクターを用いるということです。
 この研究の総括責任者は、九州大学眼科の教授の石橋先生です。
 6頁の対象疾患の欄を見てください。対象疾患である網膜色素変性については、「視細胞と網膜色素上皮細胞の機能を原発性、びまん性に傷害する遺伝性かつ進行性の疾患群」と定義されています。網膜色素上皮細胞に特異的に発現している遺伝子の異常により起こるもので、遺伝性の疾患です。頻度としては、我が国では、3,400~8,000人に1人で、遺伝性疾患としては比較的頻度が高いというものです。また我が国における成人の失明原因の上位に位置しており、九州大学の眼科で定期受診している患者のうち、社会的失明率は40%です。
 本疾患における遺伝子異常の候補遺伝子としては40種類以上報告されており、大部分が未知の遺伝子異常です。7頁の?Aに書いてありますが、網膜色素変性に対する現行の治療法は、有効性が明確にされた治療法はないとされています。
 今回用いるベクターについての記載が8頁の(2)の?Aにあります。今回用いるベクターについてはSIVベクターと言われているもので、本疾患における視細胞変性は数年から数十年の経過で緩徐に進行するため、長期の治療効果、長期にわたる遺伝子発現を成し得るベクターが必須であるというところで、SIVベクターを選択したということです。SIVベクターについては、レンチウイルスベクターに分類されるものです。
 9頁の2つ目の段落に、本臨床研究で使用するSIVベクターは、第3世代のHIVベクターと同等のもので、野生型のHIVと相同性を有する配列が削除されており、HIVベクターと比較しても安全性は高いと記載されています。そのあとにありますが、九州大学の前臨床試験(動物実験)においても、長期の安定した遺伝子発現が可能であったということで、当該ベクターを選択したというものです。
 2)の導入される遺伝子の項目についての真ん中辺りに、視神経のアポトーシス死によって、この変性が起こりますので、それを抑制する効果のある神経栄養因子を用いたということです。視神経に対するアポトーシス死の抑制効果を示す栄養因子は、これまでに複数報告されているが、その中で今回用いたものは眼内に豊富に存在する内因性の因子であり、血管新生抑制の効果も併せ持つということで選ばれたものです。
 12頁の「遺伝子導入方法の概略」の4)にありますが、導入としては局所麻酔下に、硝子体の手術により、硝子体を切除して、遺伝子を塔載した当該ウイルスベクター液を、網膜下注射針を用いて網膜下に注入するというものです。また、ベクター液の濃度は2段階を設定していることになっています。
 18頁に「実施計画」が書いてあり、ページを進めていくと20頁の6行目、7行目に、基本的にはインフォームド・コンセントは2回行って開始すると書いてあります。4)は先ほどと同じになりますが、網膜下に注入するということで、原則4カ所に注入します。先ほどの2段階の群で行うということでしたが、第1ステージの安全性の注入を、少なくとも28日目までのデータを基にして、急性期の安全性が確認されたところで、第2ステージを開始するということです。
 20頁の(2)に太字で選定基準とあり、患者の片眼を対象として行うということが書いてあります。
 22頁の(4)の研究実施期間及び目標症例数は、研究実施期間は承認時より60ヶ月までみますということです。各症例の実施期間は基本的には導入後24ヶ月を考えています。目標症例数ついては20例、治療の低用量は5例、高用量は15例を考えています。
 本件については参考資料2の2頁の流れでいきますと、これまでにない新しい分野の研究ということで、新たな作業委員会が必要と考えています。そのため、網膜色素変性遺伝子治療臨床研究の作業委員会を新たに設けることを予定しており、部会長と今後ご相談の上、準備作業を進めていきたいと考えています。またこの実施計画については、本部会の審議を踏まえて、今後は新しく設置される作業委員会において、主として科学的事項の論点整理を行っていただく予定にしています。
 続きまして、この資料については、もう1つ案件があり、頭書きの後段ですが、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法に関する手続が、この研究の確認も伴うということで、その関係についてもご報告、ご説明したいと思います。関係資料は資料1-1の93頁からです。参考資料2の13頁、14頁にこの作業の流れが書かれていますので、参考に見ていただければと思います。
 カルタヘナ法の目的については、環境中の生物多様性の確保にあって、遺伝子組換え生物等の使用等が規制の対象となっています。カルタヘナ法では、開放系で遺伝子組換え生物等を使用する場合を、「第一種使用等」と定義しており、遺伝子治療臨床研究のうち、組換え生物等の使用等、保管、運搬、廃棄を含むを行う研究については、第一種使用等に当たると従来からしているものです。すべてがそれに当たるということでないのですが、基本的な考え方になっています。
 具体的には、遺伝子組換え生物等である遺伝子を塔載したウイルスベクターを承認・申請された第一種使用規程に基づいて使用、運搬、廃棄、実際に使用する場合の生物多様性への影響がないことを使用に先立って事前に主務大臣たる厚生労働大臣、環境大臣の承認を得る必要があるという仕組みになります。
 この第一種使用規程の承認に当たっては主務大臣は学識経験者の意見を聞かなければならないとされており、その場としてこの科学技術部会の下に、「生物多様性影響評価に関する作業委員会」を設置しております。93頁がその関係する諮問書、94頁が会長から科学技術部会への付議書ということになります。95~97頁は九州大学からの第一種使用規程の承認申請書で、98頁からはその使用規程を評価するための生物多様性影響に関する情報をまとめ、評価するための「生物多様性影響評価書」になります。当該申請については、本部会の審議を踏まえて、今後は既に設置されている作業委員会で生物多様性の観点から評価していただくというもので、当該作業委員会の委員の構成については既に決まっており、114頁のとおりで、自治医科大学の小澤先生が委員長の会議で議論することになっています。説明は以上です。
○永井部会長
 ありがとうございました。ただいまのご説明にご質問、ご意見がありましたらお願いします。このベクターはこれまでに使用された実績はあるのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 この審議会の中での話としては出てきたのは初めてです。例えば、米国の臨床研究のClinical Trials.govのホームページで検索すれば23件ぐらいは引っ掛かりますので、研究はされています。
○永井部会長
 これはディナベックが独自に開発したものでしょうか、それとも導入でしょうか。
○尾崎研究企画官
 国内でアフリカミドリザル由来のものはディナベックで開発したと聞いています。
○宮田委員
 よくわからなかったのですが、これは疾患モデル動物がいて、このウイルスベクターを使うか、あるいはこのウイルスベクターを使えば有効性が証明できるような疾患モデル動物の研究成果はあったのですか。
○尾崎研究企画官
 その辺はこれから内容を見ていくことになるかと思います。
○宮田委員
 そこが結構重要で、ドースとかプロトコールを決めるときに必ずしも人間と同じではありませんので勘案しなければいけません。そういった基礎データになりますので、その辺はきちんと確かめられたほうがいいと思います。
○尾崎研究企画官
 わかりました。
○永井部会長
 通し頁の15頁、16頁にin vitroでの検討とin vivoでの安全性の検討が書かれていますね。モデル動物について、ワーキンググループのほうで、さらに検討いただくことになろうかと思います。
○佐藤委員
 後半の生物多様性影響評価に関する質問ですが、入院中の患者は管理されると思いますが、その後の管理はどのようになされると理解したらいいのですか。
○尾崎研究企画官
 基本的には遺伝子導入後に、尿などの排泄物からウイルスベクターの関係が検出されないことを確認し、患者は通常は退院していくということになります。基本的にほとんど開放系には出ていかないレベルを前提にしています。
○佐藤委員
 退院後は拘束されることはないという理解でいいわけですか。
○尾崎研究企画官
 はい。特段、拘束されることはありません。
○佐藤委員
 細かいことですが、108頁の(12)に、被験者の個室管理を解除後に遺伝子組換えウイルスが検出された場合の措置というのがありますが、たまたま検出されたらという意味で、定期的に何か管理するようなことがあるわけではないということですか。そこのところを伺いたかったのです。
○尾崎研究企画官
 そこについては、検討委員会などでより確認をしていきたいと思っています。また、ここの記載については誤解がないようにというか、確認した実際のところを記載していただくということになります。
○宮村委員
 この対象疾患は網膜色素変性症で、遺伝子に異常があるわけです。そして導入する遺伝子は神経栄養因子ということで直接的ではないわけですが、何かこういう栄養遺伝子を導入することによって、発現させることによって何か効果があるというエビデンスは蓄積されて、アポトーシス抑制遺伝子を、ということはあるのでしょうか。
○永井部会長
 これは神経栄養因子であるヒト色素上皮由来因子だということをin vitroでは示しているようです。先ほどの宮田委員のご質問との関係で見ますと、16頁でレポーター遺伝子をカニクイザルの網膜に投与すると変性が起こるが、成長因子を入れると変性が認められなかったという所見が書いてあります。非常に人工的なモデルのような気がしますが、これもワーキンググループで、さらに煮詰めていただくのがよろしいように思います。
○尾崎研究企画官
 このほか、資料の43頁のインフォームド・コンセントの文書で簡単に書いてあります。真ん中の「私たち」以下の2)に「網膜色素変性の遺伝性モデル動物で、症状の悪化を有意に遅延させる」とあります。また、40頁のところですが、「視神経が弱るのを遅らせる効果を求めて」という記載があります。
○永井部会長
 16頁の1行目の「ラット51眼の検討」というのは、ラットが動物モデルということでしょうか。
○宮田委員
 いずれにしろ、申請書の書き方が悪いと思います。ですから、なぜこの実験を臨床研究をやらなければいけないか、やるべきかというラショナルを、この申請書の中にもきちんと書かなければいけないので、その意味では、折角それだけの実験をやっているのでしたら、少し継ぎ足していただいて、申請書の体をなすような形にされたほうがいいと思います。
○尾崎研究企画官
 わかりました。ここに書いてある申請書の中の背景となる資料については、ちゃんと出してもらって、必要な部分については計画書をしっかり書いてもらうようにしたいと思います。
○金澤委員
 いままでの議論とそう違わないのですが、16頁の上の段の?Cの最後で「ベクター投与そのものによる網膜変性の可能性の有無を検討していく必要がある」という表現は非常に引っ掛かるのです。これはこれからどこかで検討されるのでしょうが、こういう表現を使いますと、「いいですね」とは言い難いのではないでしょうか、
○尾崎研究企画官
 先生方からいろいろ指摘がありましたので、ここの記載の実際の意味、本当にどうなのか確認していきます。またご指摘の点が確認されていないならば当該臨床研究を行う前に必要な動物実験をやった上でやるべきだとかを作業委員会で整理して、大学に伝えていきたいと考えています。
○永井部会長
 ほかにありませんか。ただいまいただいたご意見を作業委員会にもお伝えし、申請者にもお伝えして、作業委員会で論点整理を行っていただくことにしたいと思います。また検討結果はこの部会に改めて報告がありますので、再度当部会で総合的なご議論をいただければということにしたいと思います。ということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、議事(2)岡山大学病院の「遺伝子治療臨床研究実施計画について」、ご審議をお願いします。事務局より説明をお願いします。
○尾崎研究企画官
 それでは、資料1-2に基づき説明いたします。7頁は、今回の岡山大学の遺伝子治療臨床研究の実施計画について、科学的論点をまとめた作業委員会の先生方の名簿で、1~6頁が、その結果の本部会、科学技術部会への報告書となっていますので、この報告書に基づいて作業委員会での検討の結果を説明したいと思います。
  2頁の1.「遺伝子治療臨床研究実施計画の概要」です。研究課題名は、「前立腺癌に対するREIC/Dkk-3遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療臨床研究」です。申請日は平成21年8月、実施施設は岡山大学病院、総括責任者は岡山大学病院の那須先生です。
 対象疾患については、(5)の前立腺癌。A)内分泌療法抵抗性再燃前立腺癌。?@内分泌療法抵抗性局所再燃前立腺癌(非転移症例)。?A内分泌療法抵抗性転移性再燃前立腺癌(有転移症例)。B)ハイリスク初発限局性前立腺癌(未治療例)について対象としています。
 導入遺伝子については、ヒトREIC/Dkk-3遺伝子です。これについては資料の38頁です。この遺伝子については2000年に岡山大学で発見された癌抑制遺伝子で、細胞のアポトーシスを司る遺伝子と考えられております。種々の癌細胞では、この遺伝子についての発現が低下しており、これらの細胞に当該遺伝子を過剰発現させると、癌細胞選択的にアポトーシスが誘導されるというものです。また、この遺伝子には抗腫瘍効果もあるとされております。2頁に戻って、ベクターの種類ですが、アデノウイルスベクターになります。
 計画の用法・用量については資料の78~83頁です。本疾患については、当該遺伝子発現ウイルスベクターの投与量を1.0×1010vp、1.0×1011vp、1.0×1012vpの3段階で設定し、最大の効果を認め、最小の副作用を示す用量を推定しており、病変部に対して当該遺伝子発現アドノウイルスベクターの溶液を1又は2カ所に注入するというものです。ウイルスベクター溶液については1カ所に1mLです。
 研究実施期間については、厚生労働大臣より了承された日から最終症例の治療終了後5年間です。目標症例数はA、B各群それぞれ12例となっており、各用量レベルでの副作用の出現の有無により、それぞれ最大18例となっています。
 (6)研究の概略ですが、本研究は内分泌療法抵抗性再燃前立腺癌に対して、当該遺伝子発現アデノウイルスベクターを単独で投与した場合、もしくは、外科的切除の適応のあるハイリスクの初発限局性前立腺癌に対して、当該遺伝子発現アデノウイルスベクターをneoadjuvant療法として投与した場合に、主として安全性の検討を主要エンドポイント、また、本治療法の有効性の評価を副次エンドポイントとして研究をするというもので、加えて本治療における有効性を示す可能性のある免疫学的な反応を解析し、同治療効果の病理的な評価を行うことも副次エンドポイントとするというものです。臨床研究のフェーズ?T/?Uで計画されています。
 (7)その他は、当該遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療臨床研究については、米国においても実施予定であり、現在患者の登録受付を行っています。アデノウイルスベクターを用いた類似の前立腺癌の治療としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子ベクターを用いた遺伝子治療研究やインターロイキン-12発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療研究が、既に日本においても実施されています。
 続きまして、作業委員会に関する概要について説明したいと思います。2.作業委員会における議事概要として、第1回の審議は平成21年11月9日に行われました。議事概要としては、3~4頁に書いてある内容について事務局で整理して、申請者に検討を依頼することとし、その結果を基に再度審議することになりました。
 本作業委員会の意見を見ますと、例えば1.は、岡山大学から会議では、説明があったわけですが、説明された内容の多くが実施計画書に記載されていなかったものですので、その辺をちゃんと整理するようにということをお願いしました。
 2.については、内分泌療法抵抗性再燃前立腺癌、ハイリスク初発限局性前立腺癌の2つの群を対象としているが、A群とB群では、標準的治療等それぞれ状況が異なるところがあり、主目的である安全性の検討はともかく、治療効果の観察等については相違するところがあるため、A群とB群のそれぞれについて留意すべき事項が各書類に適切に反映されているか再検討するようにという指示を出しました。
 3.は、被験者の選択基準としてドセタキセル治療無効例を追加することは、申請前後において、新しくドセタキセルについて、前立腺癌の効能追加がされたことがあり、この点との関係を明確にするようにという話です。
 4.は、B群におけるadjuvant効果が期待できる実験的根拠について計画書に記載することなどです。ここに書いてある8項目について検討を依頼しました。これらは、会議後の11月30日、平成22年1月4日付で岡山大学に照会を行っています。
 これを踏まえて5頁ですが、作業委員会の意見に対して、岡山大学から平成22年6月付で回答と追加資料の提出を受け、それを基にやり取りをしました。最終的に回答がまとまったのが平成22年9月2日で、それを受けて第2回の審議を平成22年10月12日に行いました。平成22年10月12日の会議においては、本実施計画を概ね了承することとしたが、一部の点について指摘がさらにありましたので、その内容について整理の上、委員長が確認をした後に、次回以降の科学技術部会に報告することとなりました。その指摘については、5頁に書いてある2点です。
 3.は、作業委員会における審議を踏まえた審議時からの実施計画や同意説明文書の主な変更事項です。一つは、アデノウイルスベクターの製造元は、審議の間に米国ベイラー医科大学の遺伝子・細胞治療センターから、英国Eden Biodesign社に変更されました。資料65頁にその内容が書いてあります。
 二つ目としては、治療前・治療中・治療後のそれぞれの安全性評価について、免疫学的な解析の項目、またB群において病理組織学的な検査を追加しました。それぞれ84頁に書いてあります。
 三つ目は、B群について、有効性の評価の観察項目に、外科的切除により摘出した前立腺組織を用いた組織学的検討というところも追加したということです。これについても86頁に書いてあります。
 5頁の下から2つ目のポツにある同意説明文書において記載を変更したという項目については、182頁にドセタキセルを用いた治療に関する国内状況について書いてあります。5頁一番下のポツの米国における同種の臨床研究が予定されているということについては、191頁に記載されています。
 6頁の被験者の同意文書について、ほかの治療方法に関する記載として、抗癌剤や分子標的薬を手術前に用いて再発率を減らすことができるかどうかの検討が、海外を中心に行われたことについても、追記され、251頁に記載されています。
 結論としては、岡山大学病院から申請のあった遺伝子治療臨床研究実施計画に関して、癌遺伝子治療臨床研究作業部会としては、主として科学的観点から論点整理を進めて、その結果を実施計画及び患者への同意説明文書に適切に反映させた上で、本作業委員会は本実施計画の内容が科学的に妥当であると判断したという結論になっています。
9頁以降については、審議を踏まえて改訂された実施計画書の概要、29頁からは実施計画書、179頁からは説明と同意書となります。
 A群とB群の2つがあるという説明をしましたが、20~21頁を見ますと、どのように投与を行うかということが記載されています。A群に属しているものについては、1回目の投与を行ったあとに28日経ったところで2回目の投与を行うことになります。基本的には2回投与し、2回投与した後、そこからまた28日経ったところで判定をすることになっています。
 B群については、1回の投与をしてから14日目に2回目の投与を行う。2回目の投与を行った後、42日経ったところで手術を行うことになっています。
インフォームド・コンセントついては、書類として179頁からです。ここのインフォームド・コンセントの文章については5種類が用意されており、A群の?@に対するもの、A群の?Aのうち、初めて前立腺癌と評価された人に対するものなどで4種類と、継続投与についてのインフォームド・コンセントが用意されています。説明としては以上です。
○永井部会長
 ありがとうございます。ただいまのご説明にご意見はありますか。
○西島委員
 これの治療法の根本的なところがわからないのですが、この遺伝子を発現させると、その結果、蛋白ができるわけです。これがどのようなメカニズムでこれに効くのかということですが、neoadjuvant療法と書いてあり、そこがポイントかと思いますが、そのメカニズムがわからないので、ご説明をお願いしたいと思います。
○尾崎研究企画官
 この遺伝子については、癌細胞に対するアポトーシスの作用と、抗腫瘍効果という2つの効果を持つということが実験的にはわかっています。このものについては癌細胞に対して局所で注入することになります。この遺伝子については、癌細胞において発現量が低下されているので癌細胞は生き残っており、正常細胞では普通に働いて、ある濃度になっています。癌細胞において、発現量を多くするとアポトーシスの効果で癌細胞は死んでしまうことになります。その後、抗腫瘍効果も持っていることになりますので、その後、再発抑制に効果がある可能性があります。
 B群に対してneoadjuvantということなので、癌細胞に打つと、その癌組織がある程度縮小するのではないか。そのあと手術をすることによって、抗悪性腫瘍の効果も残っているために、再発も起きにくくなるのではないかという内容と聞いています。
○西島委員
 1つはがん細胞を直接殺すという作用で、その結果、それが後日抗原となって免疫作用による抗癌活性も同時に出てくるという意味なのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 はい。
○西島委員
 普通のadjuvant療法というのはわかるのですが、neoadjuvantというのはわからないのですが。
○尾崎研究企画画官
 Neoadjuvantは、例えば、放射線療法や手術の前に行うものです。adjuvantは、がんを切除した後に再発しないように何かすることです。
○西島委員
 そうすると、2回するというのはそういう意味ですか。2回注射するわけですよね。
○尾崎研究企画官
 はい。
○西島委員
 何となく私の理解としてはできましたが、結構です。
○宮村委員
 前立腺癌の治療というのは、多種多様に既にあると思いますが、A群とB群と分けたときの、特にB群のハイリスク初発限局性の前立腺癌が診断されたときに、このプロジェクトが、ほかのよりも良い説得力というか、これに参加してもらうためのラショナーレというか、それは作業部会でも第1回に指摘されていると思いますが、そこは客観的に見てどうなのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 前立腺癌についても、再発が起こってしまう可能性が高いという話がありますので、この遺伝子の効果、安全性の観点で、手術前にこれを打って、縮小効果とか良い影響が出ないかを確認したいということになります。
○永井部会長
 必ずしも再発は起こらないと思いますが、初回治療でこの実験的治療を行うラショナルというご質問だと思いますが、その辺がどう議論されたかということだと思います。例えば、前立腺癌の進展は一般的には非常にゆっくりですので、そういう経過の中で、この効果を見ていくことができるのか、そういう議論があったのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 それはありました。インフォームド・コンセントにも書かれていますが、基本的には手術適用までの間というので、2カ月ぐらい手術は遅れるかもしれない。ただ、専門家の先生においては、手術が、その位遅れても実際の効果に差はないということで、許容されるだろうとのことでした。ただ、インフォームド・コンセントについてその辺の内容について、十分に説明をして納得の上でやってもらいましょうということで、作業委員会のほうは納得しました。
○永井部会長
 そのほかにご意見はありますか。
○末松委員
 58頁の6-3-4.の本遺伝子治療臨床研究に関する研究成果の中に、6-3-4-1.に培養細胞を用いた研究成果というのが出てきて、図-1から図-11で64頁までデータがつながっています。ここは総括責任者のグループが実施をした研究内容だと思いますが、このチャプターに出てくるデータは、ほとんど未発表のデータで、ここに初めて出てくるわけですが、例えば59頁の図-1は、パッと見てわからないかもしれませんが、図-1の中にグラフが1~5番にサブグループが設けてあって、5番のものが1番のものよりも良く効いているということを言いたいデータです。些末なことですが、統計検定が対応無しのステューデントDという2群の検定、いちばん基本的な簡単な検定でやられており、5群のものの中で飛び抜けて5番が顕著な効果を出していることは、この図を見れば明らかですが、検定方法はこれで本当に大丈夫なのかと。
 その目で後ろをずっと見ていきますと、検定方法が書いてありません。実験数は書かれているので、大体の想像はつきます。最後の図-9はKaplan-Mejerの生存カーブなので、そのとおり書いてありますが、ほかは図の不備ではないかと思います。
 図-11のBのカラムのところが、グラフの枠が抜けているのはなぜなのかわからないのですが、要はここのデータは明らかに記載の不備と、統計検定法に問題があるのではないかということを指摘しておきたいと思います。よろしくお願いします。
○永井部会長
 3群以上の場合には多群間比較をしなければいけないわけです。統計的な手法をもう少ししっかりしていただきたいということだと思います。この点は申請施設に連絡して確認しておいていただいたほうがよろしいと思います。
○尾崎研究企画官
 先生のご指摘を申請者に伝えて、ここの資料はきちんと整理させて、その結果として、事実に基づくきちんとした記載に直したいと思います。
○福井委員
 それと関係しますが、目標症例数が12例とか18例とか、先ほどの九大の例ですと、低用量だと5例、高用量だと15例という数値が出ていますが、目標症例を決める根拠はあるのでしょうか。一般的な臨床研究ですと、それなりの根拠があって決めていますが、この場合は何か特別な根拠があるのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 ?T相として、安全性を中心に見たいというのがまず目的としてありますので、この3つの群でどのような安全性というか副作用が起こるのか、起こらないのかを確認して、次のフェーズや次の研究の段階に移っていくということで定められたものと思います。また、先端的な治療研究ですので、この位の少ない例数で確認していくことで差しつかえないとされたと考えます。
○永井部会長
 どうなるのでしょうか。まだどのぐらい有効なのかもわからない段階で、とりあえずは安全性中心で、もし可能であれば有効性も評価できるかどうかという段階ですね。ある程度この数字でやっていただくのはやむを得ないという判断だったわけですね。
○尾崎研究企画官
 そうです。
○永井部会長
 いかがでしょうか。そうしますと、いま出たご意見をワーキンググループと申請者にお伝えしていただいて、計画全体としては進めていただくということかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。では、そのように扱わせていただきます。
 続きまして、岡山大学病院の遺伝子治療研究に係る第一種使用規程についてのご審議をお願いしたいと思います。説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 先ほど議題1のところで九州大学につきましても遺伝子治療の臨床研究については、1つは指針のところからの科学的論点の確認ということのほかに、全然別の視点でカルタヘナ法の確認があるというところを説明しましたが、こちらのほうは、岡山大学版の結果になるものです。
 作業委員会といたしましては、先ほど申し上げた作業委員会のメンバーと同じとなり、資料1-3の3頁目の小澤先生が委員長をしていますこの作業委員会におきまして、この検討をしたものです。この検討委員会での意見につきましては、その前の1頁目と2頁目です。
作業委員会につきましては、昨年12月に開催され、本件に関する審議が行われました。その結果、申請のあった第一種使用規程及び生物多様性影響評価書に関して一部の記載の整備についての指示はありましたが、概ね妥当ということになりました。後日、記載整備等をして、本日、部会に報告となりました。
 2頁目に、その作業委員会の評価結果が表にまとめられております。対象となる遺伝子治療生物等につきましては、2頁目のいちばん上の欄にありますように、REIC/Dkk-3遺伝子を発現する非増殖性の遺伝子組換えヒトアデノウイルス5型ということです。いわゆる遺伝子搭載のウイルスベクターが「遺伝子組換え生物等」になるものです。また、2頁目のその下の所で、「生物多様性影響評価の結果について」という大きい枠の中に項目が4つあります。この組換え生物が?@他の微生物等を減少させる性質はどうか、?A病原性に対してはどうか、?B有害物質の産生性はどうか、?C核酸を水平伝達させる性質についてはどうか、という項目の検討結果がここに記載されているものです。また、今回の岡山大学の第一種使用規程がどういうものかということにつきましては、5~7頁目で、「ウイルスベクターの使用、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為」という所に書いてあるような規程で行うということになったものです。
 委員会の結論としては、2頁目に戻っていただきますと、第一種使用規程に従って使用した場合に生物多様性影響が生ずるおそれはないということで、生物多様性評価書の結論は妥当であるということです。遺伝子治療研究の関係する生物多様性への影響の評価ということですが、先ほども申しましたように、患者さんにつきましては、投与されてから何日間かは閉鎖系の中で管理が行われて、尿とか排泄物の中などから組換えウイルスが出ていないことを確認してから自由に動いてもらうというところが基本にありますので、それを踏まえたうえで、今回の運搬等を規程に基づいて行えば、生物多様性に対する影響が生ずることはないだろうと結論されたものです。
○永井部会長
 ありがとうございます。ご質問、ご意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。もしご質問、ご意見がございませんでしたら、この報告につきましては、本部会として了承するということにしたいと思います。そして、今回ご了承いただきました岡山大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画及びそれに伴うカルタヘナ法に基づく第一種使用規程につきましては、本部会より厚生科学審議会への報告ということにさせていただきます。ありがとうございました。
 では、議事2にまいりますが、こちらは私どもの東京大学からの申請の審議に関わることがございますので、廣橋部会長代理に司会をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○廣橋部会長代理
 それでは、ヒト幹細胞臨床研究についての審議ですね。事務局からの説明をお願いいたします。
○研究開発振興課
 ヒト幹細胞臨床研究につきましては、冊子となっております資料2-1を用いてご説明いたします。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に基づきまして申請されましたヒト幹細胞臨床研究実施計画につきまして、今回は新たに諮問、付議が行われました申請6件につきましてご報告申し上げます。
 資料2-1をご覧ください。今回新たに申請され、新規性が認められまして諮問、付議されましたのは、東京女子医科大学、独立行政法人国立国際医療研究センター、東京大学大学院医学系研究科、東京大学医科学研究所附属病院、大阪大学医学部附属病院、東北大学大学院医学系研究科からの実施計画です。1頁目と2頁目がこれらの申請に関する諮問書です。3頁目には付議書があります。平成22年10月29日付で諮問、付議されております。それぞれの案件につきましてご説明させていただきます。
 まずは東京女子医科大学です。4頁目に申請書がありまして、5頁目に本実施計画の概要があります。研究課題名は「自己培養歯根膜細胞シートを用いた歯周組織の再建」です。対象疾患は、中等度の歯周欠損(歯周ポケット4~9?o)を有する歯周病です。本研究では、歯周病によって引き起こされました歯周組織の欠損に対しまして自己の培養歯根膜細胞シートを作製、移植いたしまして、その治療効果及び安全性を検討するという臨床研究です。
 自己培養歯根膜細胞シートというのは、被験者の血清及び被験者から得られた組織由来細胞を用いて作製いたします。そこで、温度応答性培養皿という新しい培養皿を用いまして培養する。培養シートを移植し、広汎な欠損に対しまして短期間で創傷治癒が認められる新規の治療法として期待され、開発しているということです。本研究機関では、ラット移植モデルで歯根膜細胞シートを培養・増殖いたしまして、硬組織に誘導した培養歯根膜細胞シートを用いて短期間で歯周組織を再建できることを確認しております。さらに、中・大型の動物として、イヌを用いたイヌの培養骨歯根膜細胞シートによる歯周組織再生モデルにつきましても検討を行って良好な結果を得ているということで申請がなされております。
 次の申請ですが、独立行政法人国立国際医療研究センターからの申請です。18頁目に申請書がありまして、19頁目に本実施計画の概要があります。研究課題名は「肝硬変を有するHIV感染者に対する自己骨髄細胞投与療法の有効性と安全性に関する研究」です。対象疾患としまして、HIV感染症を合併している肝硬変症です。肝移植以外の治療法では改善が見込まれない被験者に対しまして、自己の骨髄細胞を採取して投与を行う。骨髄液400mLを採取いたしまして、その後、血球分離装置を用いて無菌的に単核球の分離を行う。その得られた単核球を経静脈的に投与するという研究です。
 これらと同様の研究は、共同研究者である山口大学の坂井田先生らにより平成15年11月、ヒト幹細胞の臨床研究の指針が出る以前より肝硬変症例に対しまして「自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法」という臨床研究が既に開始されており、その結果といたしましては、比較的良好な治療成績が既に報告されているという状況です。それらの施設では、肝線維化モデルマウスを用いた実験で骨髄から採取された細胞を経静脈投与いたしまして、肝機能の回復、さらに生存率の上昇までが実験的には示されている。その機序といたしましては、骨髄由来細胞が障害部に遊走しコラゲナーゼやMMP9などが産生されるということで、肝線維化が改善、肝機能が回復するというように説明がされております。
 続いて、東京大学大学院医学系研究科からの臨床研究計画です。29頁目の申請書に引き続き、30頁目に本実施計画の概要があります。研究課題名は、「口唇口蓋裂における鼻変形に対するインプラント型再生軟骨の開発-アテロコラーゲンハイドロゲルとポリ乳酸多孔体によって構成される足場素材に自家耳介軟骨細胞を投与して作製するインプラント型再生軟骨」です。対象疾患につきまして、口唇口蓋裂における鼻変形のうち、隆鼻術及び鼻尖形成術が必要な、高度な変形を有する患者となっております。口唇口蓋裂における鼻変形のうち、高度な変形を有する患者を対象として、アテロコラーゲンハイドロゲルとポリ乳酸多孔体によって構成される足場素材を用いて、さらに自家の耳介軟骨細胞を培養いたしまして、それを混合して投与する、そのインプラント型の再生軟骨という形態をとるというものを実際には移植するというような研究です。こちらは、3例を対象として、安全性を確認することを主な目的とする探索的な臨床研究計画ということになっております。
 次は、東京大学医科学研究所附属病院からの申請です。42頁目の申請書に引き続いて、43頁目に本実施計画の概要があります。研究課題名は「自己骨髄由来培養骨芽細胞様細胞を用いた歯槽骨再生法の検討(第?T、第?Ua相試験)」です。対象疾患は、歯槽骨萎縮症です。従来は歯槽骨萎縮症に対しまして自家の骨移植が必要とされてきたという患者に対しまして代替療法として歯槽骨を再生し、最終的には、インプラント義歯による治療までを可能とすることを目的としております。当施設ではヒト幹指針の施行前から先行する臨床研究が平成16年から行われておりまして、自己骨髄由来培養骨芽細胞様細胞を用いた歯槽骨再生法の検討というものを報告してきております。それらの移植及びその後の経過観察期間中に本治療に起因するような有害事象は認めず安全性を確認しておりまして、さらに、評価項目では全例で骨の再生を認めたということです。今回の申請におきましては、顆粒状の担体に対して自家の骨髄間質細胞の培養、さらに分化誘導条件というものを最適化する、そこで歯槽骨の再生治療を行うというようなことを主な目的としております。
 簡単に説明いたしますと、自己の骨髄由来間質細胞をリン酸カルシウム顆粒上で培養し、デキサメサゾンとアスコルビン酸等を加えまして骨芽細胞様細胞へ分化誘導するということで、以前用いていた多血小板血漿などを用いないというところが主な変更点ということです。最終的にはその安全性・有効性までも評価するというような研究計画で、以前に行った研究計画との比較ということで、非劣性という評価項目が挙がっております。
 次の大阪大学医学部附属病院と東北大学大学院医学系研究科からの申請の2件は、同じプロトコールに従って実施される臨床研究計画です。53頁目の大阪大学医学部附属病院からの申請に引き続きまして、54頁目に本実施計画の概要があります。まず、そちらのほうを説明させていただきます。
 研究課題名は「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床試験」です。有効な治療法がないとされる角膜上皮幹細胞疲弊症を対象にいたしまして治療法を確立するということを目的としております。大阪大学では、2003年から既に培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究を実施してきております。当初は4例の結果で、術後13カ月から15カ月において、いずれの症例におきましても角膜が透明化し、視力も有意に改善してきた。有害事象がなく、安全性が明らかであるということを証明してきております。その後に、今度は患者6例を対象としまして、それらは両眼の角膜上皮幹細胞が完全に欠損しているという被験者を対象として実施したところ、著明な改善を認め、有効性も認められているといった経緯があります。
 今回は、患者の口腔粘膜を採取してディスパーゼ、トリプシンなどの酵素処理を行いまして、大阪の未来医療センターCPCにて角膜上皮細胞を培養する。培養方法といたしまして、マウスのフィーダー細胞の3T3-J2という基材の細胞となるものを用いて共培養する。その上で培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製したものを今度は被験者に移植するという若干のプロトコールの修正があります。評価方法としては、1年後に角膜上皮欠損がなくなった面積を測定して有効性を評価していくというような研究計画です。こちらの研究計画のプロトコールは、63頁目からの東北大学大学院医学系研究科からの申請と同様のプロトコールとなっております。こちらの東北大学のプロトコールでは、東北大学の未来医工学治療開発センターのセル・プロセッシングセンターを用いて、東北大学の施設ですべて完結するという臨床研究です。大阪大学と東北大学の2施設で実施するということで、これらの治療方法の普及化を目指していく。今後の方向性としては、先進医療として技術の成熟を図っていくことを計画している、という内容です。
 これら6件の申請は、本日の部会の報告に先立ちまして、先月の11月22日に開催されました第13回ヒト幹細胞臨床研究審査委員会にて既に先行審議されておりますことをご報告申し上げます。また、6件のうち4件の臨床研究計画、東京女子医科大学、独立行政法人国立国際医療研究センター、大阪大学医学部附属病院、東北大学大学院医学系研究科の申請につきましては既に審議、了承されておりまして、本日、資料2-2を用いて審議をしていただく予定です。以上、ヒト幹細胞臨床研究実施計画について今回新たに諮問、付議が行われました申請6件につきましてご報告いたしました。
○廣橋部会長代理
 ありがとうございました。ヒト幹細胞臨床研究の実施計画6課題につきまして、ご意見はいかがでしょうか。この中で、国際医療研究センターからの課題には桐野先生、東京大学大学院医学系研究科・医科学研究所附属病院からの課題には永井先生、東北大学からの課題には佐藤先生、それぞれの発言はご遠慮いただきたいということです。そういうことで私が司会をしますが、全体を通してご質問を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
○宮村委員
 最後の2つ、阪大と東北大の全く同一の目的で、同一のというか、プロトコールが出ているわけですが、この2つのプロジェクトでの情報交換は臨機応変になされるという仕組みになっているのでしょうか。
○廣橋部会長代理
 いかがでしょうか。
○研究開発振興課
 研究を実際に実施するというところに関しましては、特に大阪大学の研究責任者である西田先生が東北大学のほうの研究者にも含まれておりまして、実際に行き来して交流しながらやるという技術提携も行うということです。また、それらに応じて得られた知見なども常に情報交換していくという形になっております。
○廣橋部会長代理
 ほかにございますか。
○松田委員
 東京大学からの申請については海外での実施状況というのが書いてありますが、ほかの提案されている計画は、いわゆる国際的なレベルで見たときにどの程度のものなのか、非常に優位性のある試験なのかどうか、あるいは海外での実績が十分であるから日本でもそれをフォローしてみようとか、そのような位置づけを簡単にご紹介いただければと思います。
○研究開発振興課
 それでは上から順番に、まず東京女子医科大学のものから説明させていただきます。こちらの海外の状況といたしましては、主に細胞治療という形で歯科領域の臨床研究が既に行われている機関があります。それに比して本研究は、実際にシートを用いて細胞を感応性の培養皿で培養するということで、シート状の細胞シートを用いて移植するという手技のところで主に新規性があるということです。これは国内初のそういった技術ですので、ほかのところではまだ行われていないという認識です。
 2つ目の自己の骨髄細胞を肝硬変に投与するという臨床研究は骨髄細胞を特に加工を行わずに投与するというもので、既に外国でも臨床研究として行われております。
 次の東京大学医科学研究所附属病院の歯槽骨の再生法も、こういった研究は、歯科口腔領域と整形外科領域で国内、国外、かなり広く行われているというところです。海外では、このような骨、軟骨に関する研究は一部治験等として進んできているという状況です。
 次の大阪大学、東北大学の角膜の上皮細胞シートは、国内で、東京女子医科大学で開発された技術も一部用いられておりますが、それはフランスで既に治験を行ってきているというような状況があります。それと同様のプロトコールを用いつつ、多少の修正などを加えて、国内で先進医療に進めていくということで開発を行っているというような状況です。
○松田委員
 どうもありがとうございました。
○廣橋部会長代理
 それでは、ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、今あったご意見なども審査委員会に報告するということであとは進めていただけますでしょうか。
○永井部会長
 ただいまの意見は、審査委員会にお伝えするということで論点整理を行っていただくということかと思います。では、議事2に進ませていただきます。ヒト幹細胞臨床研究実施計画についてご審議をお願いいたします。これは、岡山大学病院など5機関の件につきましては、審査委員会の結果について審議をお願いしたいということです。この中でも、独立行政法人国立国際医療研究センターの審議につきましては桐野委員、東北大学大学院医学系研究科の審議につきましては、佐藤委員には審議にご参加いただかないということでお願いいたします。事務局より説明をお願いいたします。
○研究開発振興課
 ヒト幹細胞臨床研究につきまして、冊子となっております資料2-2を用いてご説明いたします。専門委員会でありますヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で審議された結果、指針への適合性が了承されました申請5件につきましてご報告申し上げます。
 資料2-2をご覧ください。今回ご報告申し上げますのは、表紙にありますように、岡山大学病院、東京女子医科大学、独立行政法人国立国際医療研究センター、大阪大学医学部附属病院、東北大学大学院医学系研究科からの研究実施計画の報告です。その実施計画の概要と審査委員会での審議経過につきましてご報告申し上げます。
 1頁目をご覧ください。岡山大学病院からの申請、機能的単心室症に対する自己心臓内幹細胞移植療法の第?T相臨床試験に関して、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会、永井委員長からの報告です。2頁目に概要があります。研究責任者は、岡山大学病院の王英正先生です。機能的単心室症の小児心不全患者に対して心臓内幹細胞を移植するという研究です。研究実施期間は1年間、目標症例数は7症例です。姑息的心修復術を行う際に心筋組織を採取いたしまして、細胞調節センターにて心筋内幹細胞を精製、培養いたします。術後1カ月後に心筋内幹細胞を心臓カテーテルを用いて冠動脈内に注入し、細胞を移植するという研究です。安全性の評価を主要エンドポイントとする第?T相の試験です。今回の臨床研究につきましては、8頁目から実施計画書があります。なお、13頁目に要旨がありますので、そちらで主にご説明をさせていただきます。機能的単心室症というのは先天性複雑心奇形の1つで、左右の2つの心室のうち、1つが正常な発育形態を来さないというような心臓奇形です。なお、17頁目には説明図があります。こういった小児の心臓移植の適応例というものに含まれるうち、特に機能的単心室症は約半分、50%以上を占めるという先天性の心疾患です。治療法としては、現在は外科手術が中心となっておりますが、第1期から第3期まで、複数回の心臓手術を行って解剖学的な形態異常を段階的に修復していくというような治療が行われております。もちろん、その長期予後は極めて不良であるということが明らかとなっておりまして、単心室症の手術時に心臓内幹細胞を培養し、カテーテルを用いて心臓に移植するという心筋細胞を作り出すことは大変期待されているというような状況です。
 審査委員会の中での審議経過ですが、3頁目に概要があります。委員会での疑義は、主に同様の研究を行っている京都府立医科大学の研究についての情報を得たい、その先行研究の進行状況等を示した上で安全性情報を教えていただきたい、といったご意見が委員会の中ではありました。また、もちろん先行研究、先ほどの京都府立医科大学の研究とは対象疾患が異なるということ、もしくは、投与方法が異なるといったいくつかの観点から、その追加の安全性を評価するための実験が必要だろうという意見がなされております。そのほか、一部書類の不備があったということ、説明同意文書の記載内容についての修正をすべきだという意見がありました。
 それらの委員会の意見に対しまして、先行研究の成果を示していただきました。こちらはまだ1症例しか行われていませんが、十分安全性が見られ、一部有効性も疑われるといった心臓の幹細胞治療が行われているという成果を示していただいております。また、ラットを用いて右心室の圧負荷モデルというのを新規に作成していただきまして、そちらの冠血管内に細胞を注入するという研究を行って安全性及び有効性を一部示していただいております。そのメカニズムといたしましては、心筋内の線維化領域の縮小というものが見られるということが主な実験結果です。こちらは適切に修正がなされているということを計3回の審議で委員会では確認しております。
 次の案件ですが、26頁目をご覧ください。東京女子医科大学からの申請、自己培養歯根膜細胞シートを用いた歯周組織の再建に関しまして、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会、永井委員長からのご報告があります。27頁目に実施計画の概要があります。中等度の歯周欠損を有する歯周病を対象としまして、自己の歯根膜細胞由来細胞シートを作製し、移植するという研究です。10名を対象として、自覚症状や歯周組織検査にて有効性を判定するという研究です。前臨床研究としてラット、イヌを用いて有用性が示されているというところです。なお、31頁目から実施計画書がありまして、40頁目にはその研究の要旨があります。
 一般的な歯周病の治療は、歯周ポケット内にある汚れを取り除き、歯茎の炎症を抑えて歯槽骨の溶解を防ぐというのが現状です。それに対して現在は、GTR法とエムドゲイン法という再生療法があります。それらを簡単に説明いたしますと、GTR法は歯の周りに特殊な膜を張るということで、歯槽骨の吸収を防ぐというような治療法です。エムドゲイン法というのは、歯槽骨が吸収されてしまった部分に直接歯周組織の再生を促すような薬剤を充填するという治療法です。しかし、これらの2つの治療法は、いずれも、失った歯槽骨を再生して歯周組織を元に戻すことが期待されているという現状ではありますが、なかなか手術が難しい、もしくは手術後の感染が起きやすく、再手術になることも多いといった問題点が指摘されております。これらに対して再生医療による新しい治療法ということで、患者自身の歯に付着した組織から歯周組織を再生できる細胞を取り出して培養、シート状にしたものを移植するというような安全で、かつ、より短期間に歯周組織を再建できるという方法を開発しているというようなことです。
 簡単に説明いたしますと、温度応答性培養皿という特殊な機能を持つ培養皿を開発、使用いたしまして培養細胞シートを作る。それらは、細胞表面の蛋白質を溶かすことがなく、温度変化のみで培養皿からシート状の粘膜を回収するということができるということで、細胞がダメージを受けず、健常な状況で細胞移植をするということができる。これらにより、速やかに歯と歯茎をつなぐセメント質まで再生させるということがわかってきております。現状行われている治療よりも早く治癒するということが期待できるという内容です。また、43頁目から同意説明文書があります。
 審議の経過ですが、28頁目にお戻りください。確認された事項としては、症例数や培養に係る安全性のデータを追加してほしいということ、もしくは、治療が一部変更されたときの対応についてどのように説明するかといった質問がありました。これらの症例数につきましては、類似の研究の既報に基づきまして症例数を設定したということ、そのほか、安全性の試験結果を追加で示したということ、それらの論点につきまして、委員会では持ち回り審議で確認して本臨床研究は了承されているという状況です。
 次は55頁目をご覧ください。独立行政法人国立国際医療研究センターからの申請です。肝硬変を有するHIV感染者に対する自己骨髄細胞投与療法の安全性と有効性に関する研究に関しまして、審査委員会、永井委員長からのご報告です。56頁目には概要があります。HIV感染症を合併している肝硬変症10例を対象として、自己骨髄由来細胞を移植いたします。本研究は、共同研究者である坂井田らが既に肝線維化モデルマウスを作製しまして、骨髄細胞による肝機能の回復、生存率の上昇を示している。骨髄由来細胞からのコラゲナーゼやMMP9などの産生により線維化が改善し、肝機能も回復するということを示しております。
 その知見を基にいたしまして平成15年11月からは、山口大学を中心として複数の医療機関で肝硬変症例に対しまして自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法という臨床研究が開始されていまして、良好な研究成果が報告されている状況です。そちらの研究につきましては、山口大学などの成果を基に先進医療への申請がされているという現状があります。今回の研究では、その対象疾患がHIV感染の肝硬変症患者であるというところが主な変更点となっております。60頁目から計画書がありまして、64頁目には概要があり、66頁目にはポンチ絵があります。本研究は、被験者の自己の骨髄細胞を採取いたしまして、培養などの工程を経ずに分離装置を用いて単核球分画を分離し、手術室で同日、静脈内に注入するという比較的負担の少ない研究です。
 57頁に戻りまして、審議の概要があります。既に類似の研究が行われておりますが、対象疾患が変更になるというところ、その作用機序がまだ解析が不十分でないかというところもあるというようなところ、安全性を確認することがまず第一だろうというようなことの指摘がありました。一番の大きな変更点としては、研究課題名が「肝硬変を有するHIV感染者に対する自己骨髄細胞投与療法の」、当初は「有効性と安全性」と書いてきたのですが、「安全性と有効性」と修正いたしまして、こちらの研究ということで申請名称が変わっているというところがまずあります。それらの修正を行った上で、委員会のほうは持ち回り審議で了承されているというような状況です。
 次は73頁目、大阪大学医学部附属病院の申請です。同様のプロトコールは、102頁に東北大学大学院医学系研究科からの申請があります。「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床試験」に関しまして、それぞれ、ヒト幹細胞臨床研究審査委員会委員長、永井委員長からの報告書があります。
 74頁目に本研究実施計画の概要があります。角膜上皮幹細胞疲弊症10症例を対象として口腔粘膜上皮細胞シートを移植するという研究計画です。大阪大学では、2003年から自己の脂肪組織由来細胞というものをフィーダー細胞として共培養する研究を行ってきておりました。これら4例の研究では、いずれも角膜が透明化し、視力も改善、有害事象がなく、安全性が確認できたと。その後、追加で行った6件の別の研究の中では著明な改善、有効性もずっと示してきているというような経緯がございます。今回の研究ではマウスの3T3-J2細胞というものが、これは一部治験で通った再生医療の臨床試験において、皮膚の上皮細胞を培養する際に3T3-J2細胞というものが用いられておりますので、その細胞をフィーダー細胞として使うというようなプロトコールに修正して今後の普及化を目指しています。さらに、先端医療として治療法の確立を目指すということが主な目的となっております。後述の東北大学大学院医学系研究科と共通のプロトコールです。
 78頁目に実施計画書がありまして、83頁目に要旨があります。89頁目からは説明文書があります。83頁目の要旨でご説明いたします。本疾患について図示がされております。角膜上皮幹細胞疲弊症というのは、角膜の表面が濁った結膜組織で覆われてしまう、視力が極端に低下するという病気です。目の外傷や持続する強い炎症がきっかけとなって透明な角膜の表面の細胞の元となる細胞が広範囲に傷害される、再生が起きなくなってしまうというような疾患です。最終的には、周囲の結膜から異常組織が角膜上へ侵入してきて角膜の透明性が失われ、著明な視力低下にまで至ってしまう。今回の研究では、口腔粘膜上皮細胞を温度応答性培養皿上で培養いたしまして角膜シートを作製、移植する研究を行います。既に治療の経験もある、また有効性も評価されていて、今後は標準治療の確立を想定しているというような段階の治療です。
 審議内容としては76頁にありますが、評価項目が異常上皮の面積であるというところ、そのほか、有効性の評価、症例数の根拠の説明を求めていました。また、培養に用いるフィーダー細胞や血清の安全性の記載の内容について、一部修正を求め、感染症の評価方法というところについては、疑義がありました。評価項目、症例数の説明というものをいただきまして、また、関係文書の修正内容を、それぞれ、委員会のほうで持ち回り審議をいたしまして、了承されております。
 東北大学の審議概要は104頁目にありますが、前述の大阪大学の疑義とほぼ同様の回答がされております。本研究計画では、先ほど申しました研究責任者の西田先生が東北大学では研究者として参画しているということで、研究の同一性も担保されるものということとして審査、了承されております。
 以上、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で指針への適合性が確認された5つの申請についてのご報告を終わらせていただきますが、これらの申請につきましては、審査委員会もしくはこちらの部会では、改正指針以前の研究ですので、旧指針に従って審査を行ってもらっております。
○永井部会長
 ありがとうございます。ただいまの5件についてご質問、ご意見をいただきたいと思いますが、どのような議論がなされたかということにつきましては、私が審査委員長を行っておりますヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会からの審議の概要をそれぞれ付けておりますので、ご覧いただければと思います。いかがでしょうか。
○宮田委員
 永井先生、ちょっと伺ってよろしいですか。
○永井部会長
 はい。
○宮田委員
 先ほど資料2-1で申請について議論をさせていただいて、いま、資料2-2でその申請があったものの一部の審査結果が報告されたと考えてよろしいのですか。
○永井部会長
 そういうことです。
○宮田委員
 この場合、申請のあった6件のうち4件の審査報告の結果が今日出たということですね。
○永井部会長
 そうです。
○宮田委員
 こういうのは順番としてちょっと妙だという議論もたぶんあるのではないかと思うのですが、その辺は事務局はどうお考えになっているのですか。
○永井部会長
 これは、前にこういう進め方にしましょうということで一度審議は行っておりますが、事務局から説明をお願いできますか。
○研究開発振興課
 いままでは、臨床研究をこれから推進、審査していくという形で、まずはじめに部会の了承を得たあとに審議をしていく、そのあとに委員会のほうでまた審査をして、最終的にはまたこちらの部会のほうに上げて確認の審査をしていただくというような流れで策定しておりましたが、審査期間の短縮化ということを目指してまずはじめの部会の報告については審査委員会の先行審議を先にしてからでもいいだろうということで運用しております。これにより、おそらく1カ月程度の審査期間の短縮が想定されるということで、2年ほど前のこの部会でそういった報告をして了承いただいているといった背景がありますので、是非ご了解いただきたいと思います。
○宮田委員
 わかりました。善意でやっていることもわかりましたし、少なくとも素晴らしいですよね、10月に申請されたものが12月10日に部会のほうでOKが出て、ここで最終結論をするということですから。それは素晴らしいことなのですが、資料を読むときにどれがどれなのか対象がよくわからないので、是非この先行審議といったようなマークを付けていただけると、我々も起承転結が理解できるのではないかと思いました。それだけです。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。
○宮村委員
 先ほども言ったのですが、最後の2つの阪大と東北大のプロジェクトに関して、連携をしていくわけですが、プロトコールは非常に似ているわけですが、実際の細胞シートを作っていくのはそれぞれのセンターでやるわけですね。そこで、審査会でも指摘されていましたが、ウシ血清を使っていくということについてこれでいいのかという指摘があったと思うのですが、そこは依然として必ずしもクリアではないと思いますし、本当にウシ血清にディペンドしないと培養ができないのか。それから、もしそこでのバリデーションが出来たとしても、ある特定のバッチについてバリデーションが出来ているということですから、そこでの計画書でもう少し、両方で検討した上での計画書が提出されることが望ましいと思うのです。
○永井部会長
 この点についてはどういう修正になったのでしょうか。
○研究開発振興課
 通常、審査委員会でウシの血清を用いられるというときには常に疑義がなされておりまして、そのウシ血清が必ずしも必要なものかということは確認してくださいという意見がされております。こちらも、ウシ血清の必要性が以前の研究で示されていたという経緯があったということと、最終的な調製物にその血清がどのぐらい残存するかということは、いままでの臨床研究計画の中で濃度測定などが行われほとんど混入がないということが確認されています。その他、最終的に用いるウシ血清の産物がどの国から来ているか、どこから得られたものかというものを明らかにして、そちらのロット番号などは必ず保存していただくというような形で運用させていただいているというような状況です。
○永井部会長
 既にかなり使われてきているということも1つの根拠になっているということですね。ということでよろしいのでしょうか。事務局のほうに。実績がかなりあって、これまで安全性は問題なかったということの1つの根拠になっているということだと思いますが。
○研究開発振興課
 そのとおりです。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。もしご意見がございませんでしたら、以上の件につきましては、科学技術部会として了承するということで厚生科学審議会のほうへ報告したいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、議事3にまいります。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針について」を事務局よりご説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 資料3をご覧ください。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針に関する専門委員会の設置について」です。1.の設置の趣旨の所を見ていただきますと、「また」以下の所に、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」につきましては、平成17年に全面改正が行われとあり、この中で「この指針は、必要に応じ、又は施行後5年を目途としてその全般に関して検討を加えた上で、見直しを行うものとする。」とされているもので、今般、厚生科学審議会の科学技術部会に本委員会を設置し、検討を行いたいというものです。なお、2.にありますが、この検討につきましては、平成23年度中に一定の結論を得たいということです。
 構成につきましては、前回と同じく、医学研究者、医療関係者、法学・倫理専門家等から委員会を構成したいということで、いま、その人選等について行っているものですが、基本的には、科学技術部会長が最終的に指名するということになっているものです。また、この指針につきましては、文科省、経産省につきましても同様の検討会を設置して、3省の検討会で合同で議論を進めたいと考えているものです。
○永井部会長
 ありがとうございます。この点につきまして、ご質問、ご意見はいかがでしょうか。
○末松委員
 1点質問です。施行後5年ということですが、ここ5年というか10年というか、医学・医療の領域でゲノム情報をフルに活用して新しい医療を提供する動きが当然あると思います。医療とか臨床研究の局面で病院内で使うそういうヒトのゲノム情報の管理、情報の管理ですね、そういったところの考え方もどんどん変わってきているのではないかと思うのです。例えば病院内のカルテの情報の無線化とか、部会の中に「医療関係者」と書いてありますので大丈夫だとは思うのですが、情報のそういう扱いに関してセキュリティの問題とか、そういったところの専門家が多少入っていることが望ましいのではないかと思うのですが、その辺についての基本的な考え方を教えていただけるとありがたいのですが。
○尾崎研究企画官
 今回の指針につきましては、先生がおっしゃったように、あくまで研究というものがどういうものかというのをもう一度再整理するというところがまず基本にあります。その中で関係情報をどのように扱っていくか、最近の研究の進展を背景に検討していくということになります。その辺の関連の人についても入れて検討をしていくことについて、3省で一緒にやっていくというところもありますが、その方向で検討はしていきたいと思います。
○永井部会長
 金澤委員、どうぞ。
○金澤委員
 もちろん、この見直しは大事なことですので、是非やっていただきたいのですが、かつて臨床研究の倫理指針に関わった者としてお願いなのですけれども、5つくらい、こういう倫理指針があるのです。それが別個に動いておりまりして、特に、ヒトゲノム・遺伝子解析というのは、当然ながら疫学研究にも、また臨床研究にも関係してくるわけでありまして、少なくともその3つは、やはり1つの同じカゴの中で議論はしてほしいと思うのですが、何とかそこは実行してもらえませんでしょうか。以前、臨床研究の倫理指針を見直すといったときに、既に疫学研究のほうの見直しが終わってしまっていたのです。非常に臍を噛んだ覚えがありますので、そこは是非考えていただきたいと思います。
○永井部会長
 いかがでしょうか。
○尾崎研究企画官
 今回の指針につきましては3省で合同となっており、そのほかの指針は2省庁であるなど様々ですが、この3省で検討を進めて行く中でも、先生ご指摘の点を頭に置きながら進めてはいきたいと思います。
○宮田委員
 この5年の間に、ゲノムワイドアソシエーション・スタディとか、あるいはファースト・ジェネレーション、サード・ジェネレーションのDNASE検査が出てきたのですね。えらいスピードで変わっておりまして、しかも一方で、ここでは研究というところで縛りをつけていますけれども、かなり遺伝情報を日常臨床行為で使うようになっているのです。ですから、いままでは3省庁で文科などがすごく重要だったのですけれども、いまや、今度の審議では厚労省の見解というか、姿勢というか、それが相当重要になってきます。研究という縛りでまだやろうとは思っていらっしゃるのでしょうけれども、それが限りなく日常臨床に影響を与えるし、よい影響を与えるような指針を作るべきだと、私は本当に思います。しかも、今度も見直しを5年後と考えるのは間違いで、3年後とか、2年後とか、見直しのスピードも考えていただかないと困ります。
 経産省の指針に関して言えば、パーソナライズ・ゲノム・サービスというのが、アメリカやヨーロッパではもう始まっています。個人がゲノムを預けて、そのミューテーションのプロファイルや何かで自分たちの疾患リスクの相談を受ける形のサービスが、日本でもAmazon.comで買えますので。そういう指針も、実は、今度の議論の中に入ってきてしまうと思っています。ですから、これは研究という縛りだけで本当に収まるのかということを前提に考えながら指針の枠組みを作ったほうがいいと思います。私はむしろ研究に逃げ込まないようにしていただきたいと期待しています。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。是非そういうご意見を反映させた運営にしていただきたいと思います。ただいまの件についてはご了解いただいたということで進めさせていただきます。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では、議事4、報告事項にまいります。フィージビリティ・スタディの中間評価についてご報告をお願いします。
○尾崎研究企画官
 次は、遺伝子治療研究に関する実施施設からの重大事態等報告書の報告になるかと思います。
○永井部会長
 失礼しました。
○尾崎研究企画官
 資料4をご覧ください。遺伝子治療臨床研究に係る重大事態については、施設から報告がある度に直近の部会に報告させています。今回のものは、九州大学からの報告です。九州大学の対象研究は表紙に書いてある研究です。次の頁にある報告書として出てきたのは、平成22年11月17日です。3頁目の真ん中辺りの欄の「重大事態等の発生時期」にありますが、重大事態の発生時期は2010年8月28日です。重大事態の概略といたしましては、胃体部潰瘍からの出血による吐血です。本件の概要につきましては、その次の欄から書いてありまして、「経過」とありますが、もともとこの患者さんについては2009年6月に症例登録されています。その時点で既に、多発性胃潰瘍などを認めていたとあり、基本的にはその治療を行って、それが終わった後、瘢痕化したのを確認した上で治療を開始した。臨床研究の、遺伝子治療のベクターを注入したのは2009年7月28日です。2009年7月28日に注入して、発生時期は2010年8月28日です。
 次の頁です。基本的には、転帰としましては「回復した」ということになります。九州大学での本件の対応状況は4頁目にあります。九州大学では、このような事態が発生した場合には、発生してから15日以内に、先進医療適応評価委員会における症例のレビューを行いまして、その後に、審査委員会にかけるという手続を取っている。審査委員会にかける手続を取っていると、この情報について我々への報告が遅れることが過去にありましたので、現在は、この先進医療適応評価委員会における評価のレビューの時点で報告をしていただくようにしてもらっています。報告をいただいた後には、関係の作業委員会の先生にも中を見ていただいている状況です。
 先進医療適応評価委員会及び九州大学の中の審査委員会の結論としましては、4頁の下から5行目に書いてあるとおり、基本的には、胃粘膜生検に対するベクターゲノムコピー検査についても臨床検査薬の移行・残存を示唆する所見は認められなかったなど、いろいろな点から検討されて、4頁目に戻って下のほうの「以上から」の段落ですが、「今回発生した重篤な有害事象と臨床研究薬投与の直接的な因果関係を示唆する積極的な所見は乏しく、一度治癒した胃体部潰瘍が原病の鎮痛目的で使用していたNSAIDsの服用による再燃が原因であると考えることが妥当」ということで、本臨床研究は継続「可」だとされておりまして、それを審査委員会も了解した状況にあります。以上です。
○永井部会長
 ありがとうございます。ウイルスベクターを投与して1年1カ月後に胃潰瘍が起こったということですが、多分、因果関係はないであろうという結論でした。今の点についてご質問、ご意見はありますでしょうか。ありませんでしたら、了承したということで進めます。
 先ほどのガイドラインのことですが、この部会の下に専門委員会が立ち上がるということですね。
○尾崎研究企画官
 はい、そうです。
○永井部会長
 ご確認いただきたいと思います。
 では、報告事項2で、フィージビリティ・スタディの中間評価についてご報告をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 フィージビリティ・スタディの中間評価について、資料5と参考資料5を見てください。
 まず参考資料5をご覧ください。「戦略研究に向けたフィージビリティ・スタディ」となっておりまして、1頁目をご覧いただきますと、「戦略研究」とはどういうものかという説明がされていまして、大型の介入研究であるとなっています。戦略研究におきましては、研究デザインとアウトカム指標を含む研究計画の骨子を予め定めている上で、研究を実施する研究者を募集するとなっています。
 2頁目です。実際、それを行う前に、平成23年度より開始される戦略研究についてはフィージビリティ・スタディを実施するとしておりまして、それに対して公募を行います。フィージビリティ・スタディでは提示されたプロトコール骨子に基づいてフル・プロトコールの作成と研究実施準備を行うことになります。特にフル・プロトコールにつきましては、介入方法等の実行可能性の評価・結果等を評価した上で、採択するかどうかを判断する、戦略研究は実施しない場合もあると書かれています。
 次の3頁です。では、どのようにそれを評価していくかにつきまして、「戦略研究企画・調査専門検討会」を設置しまして、その指導・助言の下にその辺の検討を行っていくものです。
 4頁目に、フィージビリティ・スタディの実施スケジュールが図表3に書いてありまして、今回報告するものにつきましては、表の中ほど、「フィージビリティ・スタディの実施」のところに、中間報告書が8月31日で提出されていますので、それに対する中間評価の結果です。
 次の頁は、平成22年度に現に実施している公募課題です。課題1として「乳幼児の事故を予防するための戦略研究に関するフィージビリティ・スタディ」というものが1つ。課題2として「周産期医療の質と安全性の向上に関する戦略研究に関するフィージビリティ・スタディ」で、ここに書いてあるような内容で行われてきたものです。資料の後ろのほうですが、プロトコール骨子について、それぞれ添付しております。本日は、この流れで行った中間評価で、あくまでも戦略研究としてどうかという観点、それから、先ほど申しました検討会での評価結果をご報告するものです。
 まず、乳幼児事故を予防するための戦略研究についてです。中間評価としましては、「提出されたフル・プロトコールは、プロトコール骨子で定められた仮説を検証する研究計画となっておらず、骨子を変更する論拠も示されていない。また、研究の実施体制などの検討も不十分であり、平成23年度から戦略研究に着手することは困難であると考えられる。プロトコール骨子に基づいた研究計画を策定するために、介入に用いる事故予防プログラムを策定し、小規模な介入による効果を検証した上で、戦略研究で必要なサンプルサイズや対象地域の要件などを検討していくことが望まれる。なお、本テーマのような大規模な地域介入研究を開始するために、地域医師会、病院や消防署等の関係機関とのデータ収集体制や、対象自治体や保健所等との研究協力体制の確立が必要である」。
 もう1つの、周産期医療関係の結果としましては、「提出されたフル・プロトコールでは、当初想定していた画一的な介入方法ではなく、介入のフレームワークのみを標準化するという新しい方法が提案された。したがって、例えば少数施設への介入効果の検証を行うなど、この新しい方法の実施可能性を慎重に検討する必要があった。特に、当該研究成果を基に施策を実施する上で重要な介入手順書には、十分な内容と高い水準が求められる。しかしながら、提示された介入手順書等に記載された内容には、戦略研究として実施可能性があると判定するためには不足もあり、さらに充実を図る必要がある、という意見があげられた」というのが、中間評価の結果です。報告としては以上になります。
○永井部会長
 ただいまのご報告にご質問、ご意見はありますでしょうか。なかなか実施は難しい問題に挑戦しているかと思います。よろしいでしょうか。もう少し検討いただくということですね。ご質問がありませんでしたら、ただいまのご報告を了解いただいたといたします。
 その他の、報告3です。ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針について、ご報告をお願いいたします。
○泉母子保健課長
 母子保健課から報告させていただきます。ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針についてです。資料は、資料6-1から資料6-3です。
 まず、資料6-1に基づき、本日に至る経緯についてご説明いたします。平成16年7月の総合科学技術会議におきまして、研究材料としてヒト受精胚を作成することについては原則禁止としつつも、その例外として、生殖補助医療研究のためのヒト受精胚の作成・利用は科学的合理性・社会的妥当性の観点から容認する、こういう考え方が示されています。なお、その際の報告書は次の頁に参考としてお示ししています。その上で、文部科学省・厚生労働省両省において、この生殖補助医療目的でヒト受精胚の作成・利用を行う研究についてガイドラインを作成して制度的な枠組みを整備する必要があるとされております。
 これに基づきまして、平成17年から両省の審議会専門委員会、具体的に申しますと、文部科学省では科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会であり、厚生労働省はこの科学技術部会の下にヒト胚研究に関する専門委員会を置きまして、合同の場で検討してまいりまして、平成21年1月に研究の基本的なあり方を取りまとめています。その後それぞれの審議会にかけて、昨年、平成21年4月には、本部会にも御説明し、それに基づきまして報告書が取りまとまっています。その後、これに基づきまして、事務的にガイドラインにする作業をし、本日ご報告いたします、「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」をまとめてまいりました。
 これにつきまして、今年7月にパブリックコメントも行っています。パブリックコメントの結果を簡単にご紹介いたしますと、意見は17件ありました。「指針案を支持する」という意見が1つ。各論に関する意見で、提供を受けることのできる非凍結卵子の条件について、「条件をなくすべきだ」という意見が1つ。その他15件につきましては、ヒト受精胚の作成にそもそも反対であるという意見でした。しかし、この経過からわかりますように、ヒト胚の作成を行う研究を容認するかについては、既に総合科学技術会議で検討済みでしたので、ガイドラインの案に特に修正は加えておりません。
 その後、本年12月15日に内閣府の総合科学技術会議の生命倫理専門調査会にご報告しまして、12月17日に両大臣名で告示を行いました。
 今後ですが、3月までにかけまして説明会の開催や指針の解釈を示すなど、周知活動を実施しまして、4月1日から施行する予定にしております。
 次に、倫理指針の中身です。資料6-2に概要、資料6-3に実際の指針の本文を示しております。資料6-2の概要に基づいて、資料6-3もご参照いただきながらご説明します。
 まず、指針の適用範囲です。生殖補助医療の向上に資する研究でヒト受精胚の作成を行うもので、研究のためにヒト受精胚を作成するところがポイントです。
 次に、研究に必要な卵子・精子の入手につきまして、基本原則としましては、提供者は十分な同意能力がある者に限る。配偶子の提供は無償、実費相当額を除くとしております。研究への提供が認められる卵子につきましては、1つは、生殖補助医療目的で採取後、凍結保存されていた卵子で、不要になったもの。2つ目は、非凍結の卵子で、さらにイ・ロ・ハの3つがあります。イは、生殖補助医療で用いた卵子のうち、受精しなかったもの。ロは、生殖補助医療目的で採取した卵子で、形態学的な異常等の理由により結果的に用いることができない卵子、又は本人から自発的な提供の申し出があった卵子。ハは、疾患の治療等のために摘出された卵巣や卵巣切片から採取された卵子。このように、認められるものを限定列挙しております。研究目的でボランティアから採取することについては認めておりません。この点につきましては、今後、Q&Aあるいは指針の解釈等の形で、念のため、これが禁止されていることは明記していきたいと考えています。
 次に、インフォームド・コンセントです。配偶子の提供につきましては、具体的な研究内容が確定した段階で、研究内容のほか、提供により生じる不利益等についても説明し、文書によるインフォームド・コンセントを取得する。また、生殖補助医療の過程にある提供者につきましては、心理的圧力がかかることがないよう、主治医とは別に、一定の要件を満たす説明者を置くことが必要としています。この説明者は、要件として、提供者の医療に直接関与しないこと、生殖補助医療研究に深い知識を持っていることなどとしたいと思っておりますが、この要件や説明者の署名など、形式面の整備につきましても、今後、運用で対応していきたいと思っています。インフォームド・コンセントにつきましては、受精胚が保存されている間、原則として撤回可能としております。
 裏面に移ります。作成されるヒト受精胚の取扱いです。まず、取り扱える期間は原始線条の形成前までとし、受精後14日を超えた使用は不可としております。そして、ヒト又は動物への胎内移植及び胎内移植可能な設備を有する室内での研究は禁止。作成したヒト受精胚の他の機関への移送は、共同研究機関の間を除き禁止としています。終了時は廃棄するのですが、固定して標本を保存することにつきましては、予め倫理審査委員会での決定を得た場合は可能となるよう、運用で対応したいと考えています。
 研究の体制につきましては、研究機関においては、十分な管理体制のほか、最低1名の医師の研究への参画、倫理審査委員会の設置等が必要としております。この管理体制の中には、管理者を置くとか、記録を保存するとか、施錠して胚の管理をきちんと行う、そういった内容が入っています。
 提供機関におきましては、十分な管理体制のほか、病院又は診療所であること、産科又は婦人科等の医師がいること、倫理審査委員会の設置等が必要としています。また、倫理審査委員会につきましては、機関外の者が2名以上含まれる、男女それぞれ2名以上含まれるなどの要件を満たすことが必要としています。
 次に、研究実施の手続等です。まず、研究計画の開始、その変更に当たっては、各機関内の倫理審査委員会による審査、さらに、倫理指針適合性について国が確認する二重審査の仕組みを取ることとしております。また、研究機関は、研究実施中は年1回、進行状況を国に報告していただくことになります。個人情報の保護につきましても規定を設けております。
 最後に、研究結果は原則公開です。これにつきましては、研究の透明性確保のために必要なことと考えて記載しています。ご報告は以上です。
○永井部会長
 ありがとうございました。ただいまのご報告にご質問、ご意見がありましたら、お願いいたします。これはあくまでも生殖補助医療の向上に資する研究ということで、再生医療を考えているわけではないのですね。
○泉母子保健課長
 そういうことです。
○永井部会長
 よろしいでしょうか。ありませんでしたら、ご了解いただいたことにしたいと思います。
 議事は以上です。事務局から連絡事項をお願いいたします。
○矢島技術総括審議官
 委員の先生方には平成21年にご就任をいただきまして、間もなく2年が経過いたします。今期の任期が、一応、満了ということになりまして、2年間にわたりまして大変ありがとうございました。本日の部会が今期最後の開催の予定ということになっておりますので、この場をお借りいたしましてお礼を申し上げさせていただきます。先生方には引き続きお願いしたいと考えておりまして、何人かの先生には事前にご相談をさせていただきました。基本的には、先生方に引き続きお願いしたいと考えております。手続をこれから進めさせていただきますので何卒よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
○永井部会長
 では、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課
 担当:情報企画係(内線3808)
 電話:(代表)03-5253-1111
     (直通)03-3595-2171

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(科学技術部会)> 第61回厚生科学審議会科学技術部会議事録

ページの先頭へ戻る