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2010年8月23日 第59回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成22年8月23日(月)
15:00~17:00


○場所

厚生労働省 共用第7会議室(中央合同庁舎第5号館 5階)


○出席者

永井部会長
今井委員   岩谷委員   川越委員   佐藤委員
末松委員   高杉委員   廣橋委員   町野委員
松田委員   南(砂)委員   宮田委員   望月委員
森嶌委員

○議題

1 今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について
2 厚生労働省の平成23年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)について
3 ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しについて
4 ヒト幹細胞臨床研究について
5 その他

○配布資料

資料1今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について
資料2-1平成23年度科学技術関係施策及び重点事項について(案)
資料2-2厚生労働省の平成23年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)
資料3-1「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の改正等について
資料3-2「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」新旧対照表
資料3-3ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の改正案
資料4ヒト幹細胞臨床研究実施計画について
資料5総合科学技術会議の動向について
資料6厚生労働省の研究助成等のあり方に関する省内検討会について
参考資料1厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2国の研究開発評価に関する大綱的指針(平成20年10月31日内閣総理大臣決定)
参考資料3厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成21年4月1日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定)
参考資料4厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成21年度報告書)
参考資料5ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料6厚生労働科学研究の成果

○議事

○尾崎研究企画官
 定刻になりましたので、ただいまから第59回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催させていただきます。委員の皆様方にはご多忙の折、お集まりいただきまして御礼申し上げます。本日は井部俊子委員、金澤一郎委員、桐野高明委員、西島正弘委員、橋本信夫委員、福井次矢委員、南裕子委員、宮村達男委員から欠席のご連絡をいただいております。さらに南委員、望月委員、末松委員、川越委員は少し遅れて参ります。委員22名で、現時点の出席者は過半数を超えていません。過半数を超えたところでご連絡をさせていただきます。
 事務局に異動がありましたのでご紹介させていただきます。技術総括審議官に矢島鉄也が、厚生科学課長に塚原太郎が、研究企画官に尾崎福栄が、研究開発振興課長に椎葉茂樹が、再生医療推進室長に谷伸悦がそれぞれ就任しております。
 本日の配付資料の確認をさせていただきます。資料1「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について」、資料2-1「平成23年度科学技術関係施策及び重点事項について」、資料2-2「厚生労働省の平成23年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)」、資料3-1「『ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』の改正等について」、資料3-2「『ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』新旧対照表」、資料3-3「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の改正案」、資料4「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」、資料5「総合科学技術会議の動向について」、資料6「厚生労働省の研究助成等のあり方に関する省内検討会について」です。
 参考資料1「厚生科学審議会科学技術部会委員名簿」、参考資料2「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、参考資料3「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」、参考資料4「厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成21年度報告書)」、参考資料5「ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料」、参考資料6「厚生労働科学研究の成果」です。
 以降の議事進行は永井部会長にお願いいたします。
○永井部会長
 議題に入る前に、事務局を代表して技術総括審議官にご挨拶をお願いいたします。
○矢島技術総括審議官
 7月30日付の人事異動で、前任の谷口の後を継いで、技術総括審議官に就任いたしました矢島です。よろしくお願いいたします。今回は、事務局のほうでも大きな異動がありまして、厚生科学課長をはじめ、研究企画官と、ここに並んでいる者がかなり異動で替わってしまいました。私自身は、1年前まで厚生科学課長ということで、こちらの席で2年間ほど事務局をさせていただいていたこともありますので、どちらかというと厚生科学審議会の科学技術部会に来ると、なんとなく昔の所に戻ってきたようなことで、いろいろお世話になった先生方もたくさんおられるものですから、これからも引き続き頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくご指導をお願いいたします。簡単ですけれども、挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○永井部会長
 ありがとうございました。まだ定足数に達しておりませんので、審議事項は順番を遅らせ、最初に報告事項から始めさせていただきます。議事5「その他」の中の報告事項の「総合科学技術会議の動向について」を事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 資料5「総合科学技術会議の動向について」に基づいて報告させていただきます。動向として表紙にありますように、1番目は「平成23年度科学・技術重要施策アクション・プラン概要」、2番目は「平成23年度の科学・技術に関する予算等の資源配分の方針」、3番目は「科学技術基本政策策定の基本方針概要」の3つです。
 まず、1頁の「平成23年度科学・技術重要施策アクション・プラン概要」です。本資料を横にすると、左手真ん中辺りに頁が振ってありますが、この頁をもとに報告させていただきます。平成23年度科学・技術重要施策アクション・プラン概要ということで、科学技術政策担当大臣と、総合科学技術会議有識者議員で7月20日に決定されたものです。
 2頁は、いろいろな所で公表されていますのでご存じの方もいるかと思いますが、アクション・プランは2020年を見据えて策定するものであり、政府全体の科学・技術予算編成プロセスを変革するものとなっております。平成23年度については、先行課題として「新成長戦略の重要課題におけるグリーン及びライフの2大イノベーションの課題」と、競争的資金の使用ルールの統一化の2つのポイントが決定されております。アクション・プランの特徴として、予算編成プロセスを概算要求後に調整するこれまでの「受動的な仕組み」から、アクション・プランを中心に行動する「能動的な仕組み」に改めるというところがいちばんのポイントになります。
 3頁は、アクション・プラン自体の概要です。今回は、イノベーション関係で2つと、競争的資金の使用ルールの3つから構成されています。その中で厚生労働省と関係しているものは、右側上の「ライフ・イノベーション」です。このイノベーションのなかに「政策パッケージ」とありますが、いくつかの政策をパッケージしたものとしてこの3つの課題が、平成23年度の事項となっております。
 1つ目は「ゲノムコホート研究と医療情報の統合による予防法の開発」です。2つ目は「早期診断・治療を可能とする技術、医薬品、機器の開発」です。3つ目は「高齢者・障がい者の生活支援技術の開発」です。各イノベーションの内容や、それぞれの競争的資金の使用ルールの詳しい解説については4頁以降にありますので見ていただければと思います。
 13頁には、総合科学技術会議での、アクション・プラン関係の予算編成作業等のタイムテーブルが載っています。いまは8月下旬ということで総合科学技術会議では、関係する施策一覧表を確定していて、これに基づいた関係事項を概算要求するようにと指示が出ています。
 16頁からは、2つ目の事項の「平成23年度の科学・技術に関する予算等の資源配分の方針」です。これは、7月16日の総合科学技術会議本会議に提出された資料です。繰り返しになりますが、アクション・プランを策定し、それを概算要求前に各府省と調整し、格段に質の高い予算編成を行うことにより国民の期待に応える科学・技術予算の実現をする方針であることが書かれています。
 17頁以降からは、3つ目の「科学技術基本政策策定の基本方針の概要」です。これも7月16日の総合科学技術会議本会議に提出された資料です。科学技術基本政策策定の基本方針というのは、今後第4期の科学技術基本計画の基になるものです。17頁に基本理念が書いてあります。中ほどの?U番目の緑色のところでは、「国家戦略の柱としての2大イノベーションの推進」ということで、グリーン・イノベーションとライフ・イノベーションを目指すことになっております。
 18頁には、?V番目から?X番目の内容を強化等すると書いてあります。
 19頁には、この基本方針の検討スケジュールが書いてあります。先ほど申しましたように、平成8年度以後5年ごとに科学技術基本計画が策定されており、本年度は第3期基本計画の最終年度になります。その中で、総合科学技術会議においては、総合科学技術会議の下に設置されている基本政策専門委員会で、先ほど18頁までに述べた内容の基本方針を取りまとめ、7月16日に総合科学技術会議本会議で取りまとめたということです。総合科学技術会議の動向については以上です。
○永井部会長
 ただいまの報告に対してご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○廣橋部会長代理
 3頁のライフ・イノベーションのところに、「ゲノムコホートの研究と医療情報の統合による予防法の開発」とありますけれども、非常に長期的には重要な課題だと思います。厚生労働省でも、既にこれまでもコホート研究は推進してきました。さらに医療情報との組合せということをやっていくためには患者の電子カルテのようなものまで活用していくということが入っていますので、プライバシーに対する配慮であるとか、いろいろ解決しなければいけない問題があると思うのです。そういうことは、当然厚生労働省と総合科学技術会議といろいろ相談があって、いままでのコホート研究も活用していただき、有効かつ安全に、プライバシーなどの問題がないように進められると。
 これからのコホート研究では、確かに詳しい臨床情報とゲノム、その結果がどうなるかということは非常に重要なので、その実現のために進むのだという見通しというか議論が進んでいるのでしょうか。
○眞鍋主任科学技術調整官
 先ほどのパッケージは、資料5の9頁に施策パッケージがあります。ここにパワーポイントの絵がありますが、この中では非常に長い期間の研究だと。その中では他の疾患コホート、エコチル等との連携ということが書かれております。当初数年間は、内閣府で各省を調整するということで、そのあり方について検討させていただくということで、いま進んでいると聞いております。
○永井部会長
 ほかにはよろしいでしょうか、よろしければさらに報告事項を進めさせていただきます。「厚生労働省の研究助成等のあり方に関する省内検討会について」の説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 資料6「厚生労働省の研究助成等のあり方に関する省内検討会」です。資料の表題はこのようになっておりますが、内容的にはその結果である「研究助成の改善等に向けた基本的な方向性」という書類を中心に説明させていただきます。この資料には頁が振ってなくて申し訳ありませんが、5枚目に別添1とあります。省内検討会がどうしてできたかについて、もう一度説明をさせていただきます。前回7月6日の当部会において説明させていただいてはいますが、当該検討会の設置の趣旨は「1趣旨」に書いてあるように、厚生労働省の研究助成等について、交付先・事業選定の適切性を高める方策や、研究成果の施策との連動性の確保のあり方などを検討し、研究助成等の予算の適切な運用を図るというものです。このようにして設置されたものです。
 1枚目の裏に戻りまして内容です。会議としては2回の検討を行い、1枚目の裏にある「研究助成の改善等に向けた基本的な方向性について」ということを最終的に取りまとめました。これを受け、本日は評価に反映したところもありますので、参考にご報告するものです。
 この頁以降を見ていただきますと、基本的な改善項目としては大きく4つあります。2枚目、3枚目以降に四角で囲ってあるところがその主なものです。2枚目の最初は?T「研究事業の横断的な確認等」ということで、「横断的な視点で省の研究を確認していくこと」が方向として求められています。?Uでは、すべての研究事業において、「評価基準の設定・見直し、整備(見直し)をしていくこと」ということで、?Uの「評価指標の設定・見直し」の中には2つ示されています。1つには、評価指標の整備とあり、その中には、「政策等への活用を重視し、その内容を具体的に明らかにしていくこと」とあります。次の頁の(2)で、「効率的な運営がなされているかを評価の際には確認すること」、(3)で、「国民にわかりやすい結果公表すること」と、「その結果の活用の評価を行うこと」となっております。
 本日、これから行う評価においては、このうち、「政策等への活用を重視し、その内容を具体的に明らかにしていくこと」について、本日の資料2-2に、それを目指しての項目を追加することを早速始めています。
 もう1つは次の頁で、「定量的な手法による評価の導入」ということで、点数制などで評価をするようにと書いてあります。最初に大きな項目が4つあると言いましたが、その3つ目については1頁めくりまして、四角で囲ってあるところの?V「外部研究評価の徹底」となります。この内容については、各機関・各法人等において、専門的に外部評価できる体制を整備すること。次の頁で、「中間評価機能の積極活用」として、複数年度の研究期間の研究について中間評価の原則実施をすること、当該研究評価の積極活用により、事業見直し・中止等の判断の適切な実施をすることが挙げられております。
 基本的な方針について、続いて?Wは「追跡調査・フォローアップの実施」です。内容としては、各研究事業について、政策への実施・反映の状況、社会的な活用の状況を、厚生科学研究費補助金については、研究終了から3年を経過する年を目処に追跡調査・フォローアップ調査を行い、個別の研究ごとに施策への活用状況を公表するとなっております。
 次の頁では、四つの大きな項目以外の話として?X「その他」で3つの項目が設定されています。1つ目は「重点分野等の設定」、2つ目は「迅速かつ効率的に配分等を行う体制づくり」、3つ目は「緊急な行政ニーズへの対応」が挙げられております。省内検討会の説明は以上です。
 この報告を受けて、今後できる事項は速やかに評価等の仕組みに反映しつつ、具体的な実施内容の検討がより必要な事項は検討を進めていくような対応を採りたいと考えているところです。
○永井部会長
 ただいまの報告についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○廣橋部会長代理
 前回も申し上げた記憶があるのですけれども、この報告書はきちんとできていると思うのです。この報告書の中の大きな四角の枠の?Uの(2)「効率的・効果的運営の重点評価」の中に、「不合理な重複がないか」とか、あるいは「他の研究事業の利活用や連携等による研究効率の向上」ということがありますが、これを省内の研究費だけではなくて、ほかの省庁の研究費までも含めて連携を取ってやると読んでやっていただければいいのではないかと思います。その視点が抜けているのではないかということを前にも申し上げましたので、いまの文章の中で、もしそれを採るとしたらそこだと思いますので、そのように考えていただければいいかと思いました。
○眞鍋主任科学技術調整官
 具体的運営に関してはこれからですけれども、そのような方向で進めていきたいと思います。
○宮田委員
 四角の?X「その他」の2番の「迅速かつ効率的に配分等を行う体制づくり」の中で、Funding Agencyを統合化しようという動きを記入してあります。これは「当面」と書いてありますけれども、どこまでやるのかということと、なぜ国立保健医療科学院を選択したのかという2つの理由を教えてください。
○眞鍋主任科学技術調整官
 政権交代後、いろいろな事業の見直しをしております。あと、研究開発独法の見直しもいま進んでおります。そういう中で、我々としてはこのFA機能を、当面はどこで安定的に行うかということで、当面とりあえずここでと考えているところです。
 もう1つは、総合科学技術会議で指摘されていることで、各省1つのFAにしなさいということもありますけれども、そこも今後の議論を見定めていかなければいけないところもありますので、私どもとしては、まずは国立保健医療科学院でと考えたところです。未来ずっとという意味ではないです。
○宮田委員
 当面どの辺までですか。
○眞鍋主任科学技術調整官
 議論の行方がきちんと見えるところまでだと思っております。定性的な話で申し訳ございません。
○末松委員
 この資料の1頁目の裏のところで、中略ですけれども、一番下の「評価実施等に伴い、研究者が本来の研究開発活動のための時間や労力を著しく費やすこと等のないように」という文章の意味は、評価の実施に時間を取られすぎて、本来の研究の時間が損なわれてしまうことを避けるようにという意味でしょうか、それとも文章がおかしくはないでしょうか。「割くことのないように」にしたほうがいいのではないですか。これは、どういう意味なのかよくわからないです。もし、研究者が本来の時間や労力をきちんと割くべきところに割くという趣旨であるならば、私はもちろん大賛成なのですけれども、そこをご確認ください。
 伺いたいことは、研究者がこの研究費を効果的に使うための、もう1つのこととして厚労科研費等で、間接経費のことがあります。現在私の知る限り間接経費は、申請する方が間接経費は何パーセントにしますかという空欄があって、そこにパーセントを書いて出すような仕組みになっていたかと思います。文部科学省等の科研費では、30%の間接経費を付けるということが一応定形化していて、一方、一部の事業では、研究費の削減の対応で、いきなり間接経費をゼロにするというようなプログラムが、文科省ではそういう問題が起きています。
 何を申し上げたいかというと、特に厚生労働科学研究の場合に、臨床研究とか治験の基盤整備のコストというのを、大学が自分たちのコストとして使っているものというのが少なくないわけです。それぞれの自助努力でやっている部分もあるのですが、いまだに厚労科研の中で、これは内側に間接経費を付けていくと、直接経費の部分が減ってくるのでなかなかやりにくい部分もあるかと思うのです。各研究機関が、そういう研究支援の基盤整備をきちんとやっておくということは、研究者の負担を軽くすることにもつながるので、何らかの形でこの間接経費のあり方についても方向性をきちんと定めて、ある一定の額を確保することを是非お考えいただけないだろうかというのが意見です。
○眞鍋主任科学技術調整官
 確かに私も振り返ってみますと、「割くことのないよう」というほうが明確な意図だと思います。先生ご指摘のとおりでして、評価だけにとらわれずに、ちゃんと本来の研究が出来るようにしましょうということです。その配慮はいくつかのところにありまして、急激にその制度を、旧評価基準をすぐに変えたりしないで、それは先生方と相談しながらするようにと書いてあります。
 2つ目の間接経費ですが、これは厚労科研費においても、今後確保していくというスタンスは変わりありません。間接経費は文科省と並んで30%はちゃんと確保していただくようにという気持はそのまま保っております。
○永井部会長
 そのほかにはいかがでしょうか、もしないようでしたら次の報告事項の「厚生労働科学研究の成果」の説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 報告事項はこれで終えて、末松先生がいらっしゃいましたので、審議事項に移っていきたいと思いますが。
○塚原厚生科学課長
 発言させていただきます。いま委員の数がちょうど半数になられましたが、まだ過半数になっておりません。お一方遅れているという連絡がありました。あとお二方は16時ぐらいにお見えになるという連絡をいただいております。それまで議論を待っているというのはあまり建設的ではありません。決をどうするかというのは、お揃いになるまで待つこととして、事務局からの説明と、議論については審議事項についても進めていただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○永井部会長
 そういうご提案ですが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○永井部会長
 それでは、審議については進めることにいたしますが、いまの報告事項の最後の成果のところはどういたしますか。
○尾崎研究企画官
 本日の報告事項としては2つです。その項目については、参考資料として出させていただいたということです。
○永井部会長
 これは、よろしいということですね。
○尾崎研究企画官
 はい。
○永井部会長
 わかりました。それでは審議事項1「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について」の説明を事務局からお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 議題1「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について」です。資料1の1枚紙については前々回、また前回7月6日の当部会の審議において、議論があり変更された箇所というのは、一番下の●の部分のみでした。最初、ここは「評価研究も重視する」という内容でしたが、前回、評価研究だけではなく、技術に関するいろいろなこともあるだろうということで、「『技術評価・政策評価に関する研究』も重視する」へと変更されました。
 本日、この箇所についてはこれまでの議論を踏まえ、よりわかりやすくなるのではないかと考え、さらに「技術評価」の後に「技術再評価」という言葉を入れさせていただき、「『技術評価・技術再評価・政策評価に関する研究』も重視する」へと加筆したものを提出させていただきました。
 このペーパーの議論については、今回で3回目ということもありますが、とりあえず現時点での、「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題」の議論はひと区切りとして、これをベースに今後は進めていくということにさせていただければと考えております。その点を踏まえてご確認のほどをよろしくお願いいたします。
○永井部会長
 ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○廣橋部会長代理
 いま最後に説明された「技術評価」と「技術再評価」について、もう少し詳しくその中身を説明していただけますか。
○尾崎研究企画官
 厚生労働科学研究でいろいろな知見が出てきたものを確認するためには、臨床研究を行っていくことがあるかと思います。その臨床研究でより確実に知見の確認をしていくという意味合いが1つあります。一方、これまで、ある意味で常識的になっている知識についても、本当にいまのレベルで考えたときに、本当にそれが正しいのかどうかとか、ちょっと違うのではないかというところの視点も必要だということで、2つのことがこの部会では議論されたかと思います。
 前回の「技術評価」という記載では、いわゆる臨床研究で新しい知見をヒトで確認していくという考え方しか入っていないのではないかという議論がありました。最初に部会で考えたときの話は、既存の知見についても検討していったらいいのではないかという話があったと聞きますので、その両方を加味して、この2つの言葉で表現させていただきました。
○永井部会長
 私も少し意見を追加させていただきます。従来、開発型の研究はたくさん行われてきて、これはこれからも重要だと思うのです。しかし、そうした新しい医療技術であれ、既存のものであれ、常にPDCAサイクルを回していかないといけないだろうと、開発はこれからも続けるとして、一方でPDCのC、チェック・アンド・アセスメントということを新しい技術について、そして既存の技術について、さらに政策についても疫学研究等を通じて行っていく、そういう研究ももっと推進すべきではないかということがこの中に入っていると思いますが、そういうことでいかがでしょうか。事務局は、そういうことでよろしいですか。
○尾崎研究企画官
 事務局としては、前々回と前回の元々の話を踏まえますと、そういうことではないかという理解をしていて、それをよりこの言葉にしたら明確になるのではないかということで今回ご提案させていただいております。
○永井部会長
 この点についてご意見はいかがでしょうか。これは金澤委員から、総合科学技術会議としての考え方を少しおっしゃられていたのですが、それとのすり合わせは大丈夫でしょうか。総合科学技術会議では、評価研究というのはトランスレーショナル・リサーチとか、そういう実用化研究の評価というような捉え方をしているとおっしゃられていたように思うのです。つまり、新しい技術の評価を評価である、というようなご意見だったように記憶しているのですが。
○尾崎研究企画官
 金澤先生は、前回のときにはそのような趣旨のご発言をされたということだと思います。言葉としては「技術評価」とか「技術再評価」という、それとは違う言葉を使っていますので、区別はできるのではないかと考えています。誤解を呼びそうなところであれば、またそのことがわかるような表現を追加することもあるかと思います。
○永井部会長
 確かに「評価研究」というと、やや曖昧さが残っていますが、「技術評価」及び「技術再評価」とありますから、新しいものも、既存のものも含めて評価をするというニュアンスが今回は込められたということのように思います。そういうことで、この点はご理解いただけますでしょうか。
○宮田委員
 趣旨はわかって、問題もないとは思うのですけれども、あえて言葉の問題なのでちょっとこだわらせていただきます。「厚生労働科学研究」なのに、「技術評価」にこだわっていると思うのです。例えば、もう少し拡大して「科学技術」というような、「・」を入れてもいいと思いますけれども、そのようなワーディングをしてもいいのではないかという気がしております。必ずしも、厚生労働科学研究自体を眺めてみますと、技術とか、そういう製品とか、そういうものだけに拘泥しているわけではなくて、科学における貢献というものも追求していると私は理解しているのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○永井部会長
 事務局、いかがでしょうか。
○尾崎研究企画官
 我々の所でも「技術」という言葉自体に固執するつもりはありませんで、そのまま「科学技術」「科学・技術」ですかね。
○宮田委員
 どちらでもいいです。いまの政権は「科学・技術」が好きだから、それは後で皆さんですり合わせていただければいいのですけれども、「技術」ということだけに拘泥するのは、ちょっと概念が狭いかなと思っているので、そこはご配慮いただきたいと思います。
○松田委員
 私も、ワーディングのことで、そう簡単に皆さんが正しくこの趣旨を理解してもらえるかどうか甚だ疑問です。永井先生がおっしゃられたように、技術なり物質でもある程度時間をかけて、経費をかけて研究してきたものが、わかりやすい例で言えば、医薬品をあるとき使っていたけれども、理由がわからずある毒性が出て、それを中止したというケースで、それがやがて科学が進歩して、明確にそういうリスクのある患者さんを拾い上げて排除できるような診断技術が進歩したときには、いままで膨大な時間とお金をかけて開発してきたものが、ある事象で中止になったものが、今度は非常に効率的にそれをきちんと正しい診断の下に使えるようになれば、これは患者さんにとっても非常にベネフィットであるし、経済効率的にも、医療経済的にも非常に有利なわけです。
 これが技術なのか、物なのかは規定はしなくても、従来使われてきたそういうものに対して再評価を与えて、それを効率よく使うなり再利用するようなことが具体例で挙げられていれば、このワーディングに対する理解は一段と深まるのではないかと思います。具体的な事象を挙げて、これを論ずるといいのではないでしょうか。
○廣橋部会長代理
 私もいまの松田先生のご意見に賛成です。この紙だけで、下に何の説明もなしにいくと、なかなかこれだけでは理解されないのではないか。そのような形で説明書きを付けて、いま伺ったお話はもっともだと思いますので、そういうのを付けてこの紙を利用するのか、そうではなくてこれだけシンプルな紙にするのであれば、新しい技術あるいは科学技術の評価で、「新しい」というのと、「既存の技術の再評価」という言葉を入れないと、最初に「技術評価」「技術再評価」というのを聞いただけでは、よほどその分野をわかっている方でないとつながらないのではないかという気がいたしました。
○尾崎研究企画官
 この内容について少し解説をここに付け加えたものを次回提案したいと思います。いちばん下の●については、この方向で大体合意されているとの認識ではありますが、念のため次回に出させていただいて確認させていただきます。それ以外のところは、この方向で今後考えていくということをここで一旦ご了解だけいただき、ただこの紙についてはワーディングとか再度確認させていただき、いちばん下の●に関する必要な追加をさせていただいたものを次回ご提示させていただくということでよろしいでしょうか。
○永井部会長
 確かにご指摘のありましたように、技術だけの話ではないと。厚生科学的な概念もそうだと思うのです。疾患概念とか公衆衛生的な、いろいろな考え方も評価・再評価していく必要があるということを、是非この中に盛り込んでいただければと思います。
 定足数に達したということですので、今後の主な研究課題等について、望月先生、いま資料1を議論していたのですが、先生のほうから追加してご発言はございますか。いま問題になりましたのは、いちばん下の「技術評価・技術再評価・政策評価に関する研究」というのは、PDCAサイクルのチェック・アンド・アセスメントであると。それは既存の技術・概念あるいはいろいろな医薬品等について新しいものだけではなくて、既存のものについても疫学等を通じて再評価していきましょう、評価していきましょうということが織り込まれた内容なわけですが、言葉についてはもう少し検討が必要であろうというご意見がありました。そういうことで、今後の主な研究課題等については、この内容で取りまとめてよろしいということでご了承いただけますでしょうか。
(異議なし)
○永井部会長
 ありがとうございました。とりあえず、この件についてはひと区切りとさせていただいて、言葉についてはさらに事務局より提示していただきます。次は議事2「厚生労働省の平成23年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)について」とありますが、科学技術部会として、評価に関する報告を取りまとめたいと思いますので、ご審議をお願いいたします。事務局から説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官
 議題2については資料2-1「平成23年度科学技術関係施策及び重点事項について」と、資料2-2「厚生労働省の平成23年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)」を使って説明させていただきます。本議題については、資料のほかに「厚生労働省の平成23年度研究事業に関する(案)について」に関するご意見を記入する用紙を手元にお配りしております。
 毎年度、研究関係予算の概算要求を行う前のタイミングで、平成23年度の各研究事業の基本的な考え方について、当部会でご審議していただいております。本日の段階では、予算要求の数字などは調整中であり、お示しできておりません。また、今後の予算編成作業においては、事項自体等の修正等がありますことをご了承いただきますようにお願い申し上げます。本日は、大きな方向や、留意すべき点についてご指摘、ご審議いただき、それを基にして総合科学技術会議のSABC評価への対応ほか、今後、来年度に向けた各種作業を進めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 資料2-1は、平成23年度の研究に関する評価を行う上で、現時点までで考慮する必要がある事項等をまとめたものです。1枚めくりますと、資料の右下に頁を振っておりますので、これを利用して説明させていただきます。
 1頁の上半分は、厚生労働行政に関する医療等の基本的な数字などを載せています。これを踏まえると、厚生労働科学研究が取り込むべき課題は多く、さまざまなものがあることが容易に見て取れます。
 これに対応するためには疾病や障がい等の克服、健康や安全に関する懸念の解消、国民の多様なニーズへのきめ細かな対応等が必要であり、安全・安心で質の高い健康生活の実現に向けて、厚生労働科学研究により、科学的根拠が提供されることが引き続き求められている状況にあると考えられます。
 2頁以降が平成23年度科学技術関係施策の状況や動向に関するものを考えるときに基本となるものです。2頁目には、平成22年度の厚生労働省の科学技術関係予算額について記載しているものですので、お間違いのないようにご覧ください。平成22年度の科学技術関係予算は1,541億円であり、そのうち厚生労働科学研究費補助金は472億円になっております。ここに書いてあるように、安全・安心で質の高い健康生活を実施するために、「健康安心の推進」、「先端医療の実現」、「健康安全の確保」の各分野で研究を推進している状況にあるものです。
 3頁は、総合科学技術会議がこの7月に示した、「平成23年度の科学・技術に関する予算等の資源配分の方針」のポイントをまとめたものです。これは、先ほどご報告させていただいた内容になります。
 平成23年度については、「科学・技術重要施策のアクション・プラン」を予算編成前に作成するという新たな取組を実施しています。このプランの中の「重点化対象課題」のところで、「ライフ・イノベーション」が挙がっていて、そこにある3つが重点的に推進すべき課題として挙げられているというところをご確認ください。
 4頁の上半分は、先ほどご議論いただいた、厚生労働科学研究の課題についての考え方をここにもまとめています。先ほどの紙で、1「はじめに」のところで、重点的に進めるべき分野ということで、ここに書いてある「健康長寿社会の実現に向けた研究」と、「少子化・高齢化に対応し、活力あふれる社会の実現に向けた研究」の2つについて進めていくこととなりました。
 4頁の下半分も先ほど報告は済んでおりますが、省内検討会がまとめた、基本的方向性を記載しているものです。ここでまとめられた内容を、本日の資料2-2の評価の資料の中にも反映させています。反映させている項目は2つです。1つは、このスライド4の「主な重点評価項目」のところで、「政策等への活用(公的研究としての意義)」について、それぞれの研究費についてまとめてもらっているものです。
 スライド4の緑色の四角の中の「?W その他」関係の中で、「重点分野の設定」が基本的な方向性には書かれていますが、その中で一番下の「『推進分野』を各事前外部評価委員会の審議を経るなどして設定し、メリハリのある研究費配分を行う」と書いてありますので、これを受けて推進分野についても、設定を各研究事業分野で行っています。
 これを踏まえて、本日の一番中心になります資料2-2についてご説明させていただきます。資料2-2についてはできるだけ簡潔にということに心掛けて資料を作成しておりましたが、いろいろな項目を入れることによって頁数が多くなってしまいましたので、本日の説明については要点を絞って説明させていただきます。
 1頁の上のほうに、1が今回の評価の「目的」とあり、2「評価方法」と書いてあります。その中で2)「評価対象」が真ん中ほどにあります。今回評価をいただく対象としては2つあります。1つ目は「厚生労働科学研究費補助金の各研究事業」、2つ目は「独立行政法人医薬基盤研究所運営費交付金のうち基礎研究推進事業費」を評価対象としています。なお、平成15年度より概算要求前の評価を行ってきた、がん研究助成金については、国立高度専門医療センターの独法化に伴い、該当する事業が基本的になくなったということで、今回の対象からはなくなっています。
 3)で「評価方法」です。各研究事業について、各担当部局が外部有識者等の意見を踏まえて評価原案を作成し、当科学技術部会において審議することになっております。その評価については参考資料に付け加えさせていただいておりますが、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」に基づいて行うとともに、政策評価とも一体として実施するために、この資料の中では「政策評価」の観点でもある、「必要性」「有効性」「効率性」等についても示し、それを総合的に評価するという形での資料となっております。
 そのほかとして、先ほど既に報告していますが、「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について」とか、「研究助成等のあり方に関する省内検討会」において取りまとめられた基本的な方向性も踏まえて、その中で各研究事業における政策との連動性の確保や、どのような研究に重点を置くか等を、この資料の中で明確にしています。これらのことを本日の資料に載せておりますので、これらを踏まえて総合評価をよろしくお願いします。
 6頁の3の「厚生労働科学研究費補助金」という項目です。研究事業の表がありますが、大きな研究分野としては、?Tから?Wの研究分野に分類されています。それぞれの分野には、13の事業がそれぞれ位置づけられているということです。まず、それをご理解いただければと思います。
 早速、各研究事業の評価について、説明をしたいと思います。「行政政策研究分野」ということで、これには「行政政策研究」と「厚生労働科学特別研究」があります。まずは「行政政策研究」のうち、政策科学総合研究です。このところで、事業の概要は6頁の下からになります。このうち先ほど新しい項目を入れたと話しましたが、公的研究における意義、政策との連動性については、厚生労働行政の社会科学、人文科学の施策の企画立案にかなり関係深い研究であるということがわかるかと思います。
 2点目に新しく載せた項目として推進分野の設定です。7頁の真ん中にありますように、この研究においては社会・経済構造の変化と労働保障に関する研究を考えているということになっているものです。また、先ほど確認した今後の厚生労働科学研究において重点化すべき主な分野、2つのうちどちらに該当するかについては、推進分野の設定の四角で囲まれている4つ目にあるように、少子高齢化に対応し、活力溢れる社会の実現に向けた研究に該当するとマークされているものです。
 そのあと、いろいろ評価に関わるような項目が書いてあるわけですが、いちばん最後の総合評価に移ります。10頁に当該研究の平成23年度に関する総合評価があります。本研究については、社会保障に関する国民の関心がますます高まる中で、今後とも厚生労働科学の企画立案、効果的運営のため推進が必要であるとの評価になっているものです。
 続きまして、12頁に行政政策研究のうちのもう1つ、地球規模保健課題推進研究についての評価の記載があります。この研究費は、地球規模保健課題推進研究と国際医学協力研究の2つから構成されています。本資料では、この2つについてまとめられています。2の事業概要ですが、公的研究としての意義については、前者についてがWHO総会等の国際会議の地球規模保健課題に関する政策形成の過程にデータが利用されることが期待されること。後者の国際医学協力研究については、日本の国際貢献としてアジア地域を含め、世界の医学研究の進展に寄与するとされているものです。推進分野の設定については、前者が国際保健課題としての母子保健対策等に関する我が国の技術移転ほか、後者がアジア地域のニーズに沿った疾病等に関する研究を行うとされているものです。
 19頁の総合評価です。地球規模保健課題推進研究については、保健分野において国際的に貢献し、日本のプレゼンスを高め、最終的には国民の健康と安全を守るための研究であると評価されています。20頁ですが、国際医学協力研究については、国際協力・貢献の視点から意義あるものと評価できるとの評価になっているものです。
 続きまして、22頁で、行政政策研究分野のもう1つの「厚生労働科学特別研究」についてです。事業の概要の(2)推進分野の設定です。当該特別研究では、緊急性が高く社会的な要請の高い研究課題について、機動的に研究を行う事業ということもあって、すべての推進分野とも関係があると記載されているものです。また、研究は最大1年の研究期間となっております。すなわち、平成23年度に予期せずに起こる事象に対応する研究費が中心になりますので、他の研究費の目的とは性格が違うものです。前後逆になりますが、公的研究としての意義については、平成22年度の主な結果の状況を記載することによって変えているものです。
 この研究についての平成23年度の総合評価については24頁です。今後とも新規に出現してくる国民の健康安全に関する研究課題、社会的ニーズの高い課題について、迅速に対応していく必要がある。フォローアップ等に留意する必要があるとの評価になっているものです。
 続きまして、?U「厚生科学基盤研究分野」の評価案の説明に移ります。ここの分野には、(3)先端的基盤開発研究事業と、(4)臨床応用基盤研究事業の2つの研究事業があります。まず、(3)の3つの研究から説明いたします。第1は再生医療実用化研究です。これについては、26頁の1の事業の概要で、(1)の公的研究としての意義については、医薬品、医療機器等の研究および開発を推進し、国民の保健や医療等の向上に寄与するとあるものです。推進分野の設定については、再生医療に関する新規治療技術の実用化のための研究開発や再生医療早期実用化促進および汎用性向上のための周辺基盤技術の開発としているものです。
 28頁に当該研究の総合評価があります。再生医療は、革新的医療技術として、これまで完治が困難とされている疾患への応用が期待されている。また、本事業では、これまでに細胞製剤の規格・生成などの成果が得られており、評価できるとされているものです。
 続きまして、創薬基盤推進研究の説明に移ります。29頁の真ん中下からになります。公的研究としての意義としては、同じように医薬品等の研究開発を推進し、国民の保健や医療の向上に寄与するということがあります。推進分野の設定については、29頁の下から30頁の上に書いてあるようなことについて設定すると書いてあるものです。
 32頁の平成23年度における主たる変更の欄です。この研究事業については、小項目を見直して、「ヒトゲノムテーラーメード研究」を「創薬バイオマーカー探索研究」に統合したということ。それにより、創薬スクリーニング等に利用可能なバイオマーカーの探索研究を実施するとあるものです。また、独立行政法人医薬基盤研究所の事業仕分けの見直しにおいて、基礎研究推進事業については研究配分の実施主体を国に移す必要があるという結果に基づいて、平成23年度の当該事業の新規課題については、32頁の(8)、この創薬基盤推進研究の中に新たにこれまでの研究事業の趣旨を踏まえた政策創薬探索研究の項目を作り対応する、という変更になっているものです。
 創薬基盤推進研究の総合評価については、35頁にあります。官民対話に基づく「革新的医療・医療機器創出のための5か年戦略」もあり、創薬基盤推進研究による優れた医療を国民に迅速に提供するための研究開発支援は非常に重要であることから、当該事業は積極的に推進していくべきであると評価されているものです。
 続きまして、38頁の医療機器開発推進研究です。事業概要ですが、公的研究の意義についてはそこに書いてある内容です。その下の推進分野の設定については、ナノテクノロジーを医学に応用することにより、非侵襲・低侵襲を目指した医療機器の開発を目的とした研究開発を推進したいとなっているものです。
 総合評価については40頁下から41頁にかけて記載してあります。医療機器にかかる各種の研究開発を進め、総合評価欄に記載の各種成果を出してきているというところで、引き続き推進することは評価できるという評価となっているものです。
 43頁からですが、同じ厚生科学基盤研究分野の中ではありますが、(4)臨床応用基盤研究事業の説明に移ります。ここに属するものは、医療技術実用化総合研究1つになります。事業の概要ですが、公的研究としての意義については、そこに書いてあるような内容になります。推進分野の設定については、同じようにそこに書いてあるような内容ということです。48頁に、この研究事業についての総合評価が記載されています。後半の部分が中心になりますが、「臨床研究基盤整備推進研究」で臨床研究の実施対策等のインフラを進め、治験推進研究、臨床研究推進研究で特色のある研究開発の支援をすることで、効率性の高い総合的な取組となり、その研究の成果の国民への迅速な還元が期待できるため、各事業を積極的に推進していくべきであるという評価になっているものです。
 続きまして、51頁、?V「疾患・障害対策研究分野」の評価案の説明に移ります。この分野については、5つの研究事業があります。(5)「成育疾患克服等次世代育成基盤研究」です。事業概要の下に、公的研究としての意義が書いてあります。複数の事項が母子保健・児童福祉の政策と密接に関係していると記載されております。研究推進分野の設定については、子どもが成育疾患にならないための研究、子どもが成育疾患を克服するための研究などを推進するとされているものです。
 総合評価については54頁にあります。妊産婦と子どもという2つの世代に注目して、母子の保健・医療・福祉分野の多様な社会的・行政的課題に対する総合的な課題設定が行われている。また、子ども・子育て支援施策の推進にとっても極めて重要な研究であると評価されているものです。
 続きまして、56頁、2つ目の(6)「第3次対がん総合戦略研究」についてです。これには、総合戦略研究とがん臨床研究の2つがありますが、まとめられているものです。事業概要の下の公的研究としての意義については、がん対策推進計画の全項目、目標の実現に向けて分野別施策を実施しているところであり、必要性・重要性の高い研究を推進し、実施に活用しているとあります。(2)推進分野の設定については、「第3次対がん総合戦略研究」の分野3と分野4、「がん臨床研究」についての分野2を推進するとなっているものです。
 総合評価については60頁です。がんに対する研究の重要性はいまも高く、極めて重要な研究事業と言えると評価されているものです。
 続きまして、62頁、3つ目の(7)「生活習慣病・難治性疾患克服総合研究」についてです。ここには、事業名欄にある?@から?Dの研究が含まれ、全体として評価されているものです。また、今回新たに?Dの慢性の痛み対策研究(仮称)を創設するとなっているものです。事業の概要には、それぞれの研究課題別に公的研究としての意義がまとめられているところです。これについて、今回新設の慢性の痛み対策研究については、63頁に書いてあります。国民の多くが痛みを抱えて生活しており、生活の質の低下、社会的損失を招いているとの背景の下、慢性の痛みという疾患に着目して、疾患横断的に効率的な対策を講じることの意義があるとの趣旨が記載されているものです。推進分野の設定については、そこに書いてあるような分野を設定するとなっているものです。
 72頁の半ばからは、当該研究の総合評価が記載されています。それぞれの研究に一層の成果を上げることが期待されると評価されているものです。また、73頁になりますが、新設された慢性の痛み対策研究については、関係研究項目を推進し、痛みを有する者の生活の質の向上を図り、痛みによる社会的損失の軽減につながることが期待されると評価されているものです。
 続きまして、74頁、4つ目の(8)「長寿・障害総合研究」についてです。これは、長寿科学総合研究、認知症対策総合研究、障害者対策総合研究の3つから構成されているということで、第1は長寿科学総合研究になります。事業の概要ですが、公的研究としての意義、推進分野の設定は、それぞれ記載されているとおりです。(3)ですが、科学・技術重要施策のアクション・プランの政策パッケージの対象項目が含まれているという記載もあるものです。
 総合評価については76頁にあります。今後、さらなる高齢者の増加が見込まれる中で、高齢者の介護予防や健康保持を達成する方策を解明、実現していくことは社会の喫緊的課題であるということで評価されているものです。
 続きまして、77頁です。先ほどの(8)の第2ということで、認知症対策総合研究というところで、公的研究としての位置づけ、推進分野の設定は、それぞれに書いてある内容になります。
 総合評価については79頁です。本人や家族支援の対策、若年性認知症対策などを効果的に展開できるものと考えるとされているものです。
 続きまして、80頁です。これは先ほどの(8)の第3ということで、障害者対策総合研究です。事業の概要ですが、公的研究としての意義についてはこのような内容ということと、(2)推進分野の設定については、ここに書いてある4つの点について記載がされているものです。
 総合評価については84頁です。障害発生の予防や原因疾患の治療法の開発、障害を補完する機器開発等を推進することで障害を克服し、障害者の地域生活を支える環境が充実することが期待されているとされているものです。
 続きまして、85頁、疾病・障害対策研究分野の最後、5つ目の「感染症対策総合研究」です。ここにはエイズ対策研究、肝炎等克服緊急対策研究、新型インフルエンザ等新興・再興感染症の研究が含まれているものです。資料としては、3つがまとめられた形になっているものです。事業の概要に移って、公的研究としての意義については、それぞれのところで成果を各種施策やガイドライン等の改定に活用しているという記載になっているものです。推進分野については、その下の項目の分野を推進していくとなっているものです。
 総合評価については92頁にあります。新型インフルエンザ、肝炎等克服、エイズ対策、それぞれについて書いてあるものです。
 続きまして、95頁、?W「健康安全確保総合研究分野」の評価案の説明に移ります。この分野には4つの研究事業があります。まず、(10)の「地域医療基盤開発推進研究」です。事業の概要として、公的研究の位置づけについては、そこに書いてある内容です。(2)推進分野の設定については、漢方・相補代替医療に関する研究を重点的に行うとなっているものです。
 総合評価については97頁です。医療を取り巻く環境が大きく変化している中、新たな医学・医療技術や情報通信技術を活用し、効率的な医療提供体制の構築と良質な医療の提供を実現するため、引き続き研究を推進する必要があると評価されているものです。
 続いて98頁、2つ目の(11)「労働安全衛生総合研究」についてです。事業の概要ですが、公的研究としての意義ということで、研究成果は労働安全衛生関連法令・規制の制定・改廃等の検討に当たり、基礎データとして利用されているとなっているものです。推進分野の設定については、そこに書いてある3つの点について推進するとされているものです。
 当該研究の総合評価については、101頁にあります。労働災害は長期的には減少してきているものの、今なお死亡者数1,000人を超える状況にあり、国民的な課題の1つである。研究により行政課題に対応した科学的知見の収集を計画的に推進する必要があると評価されているものです。
 続いて102頁、3つ目の(12)「食品医薬品等リスク分析研究」については、食品の安心・安全確保推進研究、医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究、化学物質リスク研究の3つから構成されているものです。まず、1番目の食品の安心・安全確保推進研究についてです。事業概要のところの、公的研究としての意義、次の推進分野の設定についてを見ていただければというところです。
 総合評価としては104頁です。リスク管理のための科学的根拠となる研究を推進していくことは、食品の安全確保の推進に不可欠である。また、本事業は研究で得られた成果を国際機関に提供するなど、国際貢献にも活用できるものであると評価されているものです。
 続きまして、106頁、(12)の2番目として、医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究についてです。事業の概要のところの、公的研究としての意義ですが、通知・ガイドラインへの利用、薬事行政の政策形成の過程等における参考としての基礎データの活用が記載されています。推進分野の設定については、?@から?Bの3つのことについて推進するとされているものです。
 総合評価については110頁です。レギュラトリーサイエンスの考え方に基づく研究の推進と、その成果の承認審査事務への応用の強化を図ることや、薬害肝炎事件の教訓を踏まえた医薬品等の市販後安全対策総合戦略に関する研究の充実を図るなど、医薬行政全般にわたる取組の強化に取り組んでいく必要があると評価されているものです。
 続きまして、112頁、(12)の第3の化学物質リスク研究についてです。事業の概要ですが、公的研究としての意義は、国際ガイドライン等に反映させているとか、化学物質の安全評価に利用とあります。推進分野の設定については、化学物質の子どもへの影響評価に関する研究、ナノマテリアルのヒト健康影響の評価方法に関する研究が挙げられているものです。
 この研究について、平成23年度の研究に関する総合評価は115頁にあります。化学物質を利用する上で、ヒトの健康への影響を最小限に抑える目的で行う種々の行政施策の科学的基盤となる事業であり、国民生活の安全確保に大いに寄与する不可欠な事業である。また、化学物質の有用性を踏まえ、今後も安全に利用するための必要なリスク管理を国際協調にも留意しつつ、継続的に進める必要があると評価されているものです。
 続きまして、117頁、4つ目の(13)「健康安全・危機管理対策総合研究」です。この研究については、個別の疾患等に対する研究を行うものではなく、公衆衛生行政システムの活用をテーマとする研究と言えるものです。事業の概要ですが、公的研究としての意義については、健康危機管理のための対策の整備、関係者の情報共有等に活用されている。同時に各種ガイドライン策定や基準値等の改正の際には科学的根拠等として活用されていると記載されています。推進分野の設定については、地域健康安全対策の基盤形成ほかを含めて、4つの分野についてそれぞれ記載されているものです。
 この研究の総合評価については122頁にあります。災害や他の突発的事象への対応に関しては、平時における研修・訓練等における担当者の質の維持・向上や地域における危機管理対応体制および国家レベルでの情報収集・伝達・対処能力を確立することが求められている。また、災害発生時における安全な水を安定的に供給すること等を目的とした水安全対策の強化に関する研究の実施等が必要であると評価されています。
 最後の事項ですが、124頁、「基礎研究推進事業費」についてです。当該研究費は独立行政法人医薬基盤研究所に運営費交付金として交付されて実施されているものです。平成23年度においては、継続課題分を中心に対応するということで進めているものです。事業概要について、公的研究としての意義は124頁の真ん中辺りにあります。推進分野の設定についても、その次にあります。
 総合評価については123頁にあります。知的財産の形成や研究成果の実用化も認められるなど、その有用性も高く評価でき、今後とも推進すべき研究事業であると考えられると評価されているものです。
 膨大な資料になってしまったこともあり、駆け足での説明となってしまいました。各研究事業での推進分野については、今回できるだけ分野を明確にすることを目標に、資料に記載し始めたものです。事業内でメリハリをつけていくという基本的な考えに基づき、今後、検討しやすい資料への改良等にも努めていきたいと考えているものです。説明としては以上です。ご審議のほどよろしくお願いいたします。
○永井部会長
 膨大な内容で把握するのが困難だと思うのですが、お気付きの点、どこからでも結構ですので、ご質問・ご意見をお願いいたします。1つ、32頁の政策創薬探索研究ですが、これは事業仕分けを受けて仕組みを変えるという、そういうご説明だったのでしょうか。内容的にはあまり大きな影響はないという理解で、よろしいでしょうか。
○尾崎研究企画官
 32頁にあります、例えば政策創薬探索研究については、これまで医薬基盤研究所で、いちばん最後に説明した事業の中で行ってきたものの考え方で、その新規課題分については今後、医薬基盤研究所ではなく国のほうで行うようにということがあったものです。それに伴い、こちらのほうに持ってきたというところですので、基本的な内容については変化はないというものです。
○松田委員
 膨大な資料ですので、たくさん意見はあるのですが、2つだけ述べさせていただきます。まず、治験のテーマですが、ご存じのようにいままではまず欧米を開発の対象国として進めて、それから日本で、あるいはアジアでというのが1つの流れだったと思うのです。ご承知のように、アジア圏の経済の発展に伴って、医療環境も進歩し、またそれに伴って治験環境もアジアで非常に急速に環境が整ってきていると思います。人口も多いということで、コホート研究などは非常に効率よくやれるようになってきていると思うのです。是非、治験の推進の1つの方向性として、アジアの中での連携を持ってもいいのではないか。そうすることによって、このアジア圏の中で日本がリーダーシップをとれると。それがいろいろな経済波及効果、あるいはいろいろな政策的なことにも好影響を及ぼすような気がいたしますので、そういう視点を入れたらどうかというのが1つの意見です。
 今日は説明がなかったのですが、直前に急いで資料をいただいて、厚生労働科学研究の成果を見て、非常に興味深かったのです。成果を上げられなかった事例がいくつかありまして、これを見てみますと、いずれもがテーマが具体性に欠けているというよりも、時間を要するテーマというか、そういう長期的なテーマがなかなか成果が出にくいわけです。特に化学物質のテーマもありましたし、これはいくつかのテーマにわたっていると思いますが、基盤的な研究を評価する場合に、やはり成果の出やすいところに評価が行きがちなのはやむを得ないとしても、時間をかけてしっかり基盤を整えるというか、体力をつけるような研究を評価する。その仕組みというか、先ほどの評価のやり方についてもご説明がありましたが、その辺を十分ケアしてテーマ設定をしていかないと、やはり片手落ちになるのではないかなと。そのような印象を持ちましたので、この点のご配慮をお願いしたいと、この2点です。
○尾崎研究企画官
 委員の先生の意見を踏まえて、今後やっていきたいと思います。
○今井委員
 たぶんいちばん最後の117頁、健康安全・危機管理対策総合研究に入ると思うのですが、例えば災害とかテロとか、非常にドラスティックなものに対する危機管理対策に関しては見えやすいのですが、年を追うごとに、徐々に来た気候変動によると思われる今年の夏に関して、熱中症による死亡者や疾病者に対する危機管理対策等もここの中に入っているのかなと。というのは、例えば熱中症に関して、死亡された方の中にはライフラインが止まっていたお家もあったみたいなのですが、水道だけは止められないそうですが、電気やガスは支払いが滞ると止めてしまうということになっているらしいです。人の体がどこまで耐えられるかとか、最低限気温が何度以上の場合は、危機管理対策として、その間だけは空調や扇風機が使用出来るよう、電力供給をするべきとか、避難所を設けるとかを研究し、ある程度基準がないと、社会的に分析できないと思うのです。
 そういうことに関して、自然環境が地球規模で変わってきている状態の中での、災害と言っていいのかどうかわからないのですが、これは人為的災害プラス自然災害ですよね。それから、非常に局地的なゲリラ豪雨とか、いろいろな災害が起こったときに、どこのところで人の体に対してリスクマネージメントを行うかみたいなことに関しては、やはりどこかに入れておいたほうがいい時代が来てしまったのではないかと思います。以上です。
○眞鍋主任科学技術調整官
 いまのこの健康安全確保総合研究は、確かに突然起こる健康危機といったものを念頭に置いております。ただ、委員がご指摘の、例えば温暖化によるもの、あるいは気候の変化というのは、実は環境省ともかかわるところがあるのですが、少し連携をして、お互いどういうことをやっているかという情報交換をさせていただいて考えたいと。もちろんご指摘はご指摘として受けて、考えたいと思います。
○廣橋部会長代理
 全般的な問題意識、あるいは感想なのですが、政府の方針に基づいて推進分野というのを決めて、こういうところを重点的に推進するといったときに、その領域の課題をまた増やすのか、あるいはやっている事業が重要だから、より投資をしてそれを推進するのかとか、きっとそれぞれの事業でやり方が違うのだろうと思うのです。そこを上手にやらないと、かつてこれは大事だからといって、たくさん大きな課題を付けようとしても、必ずしも良い課題が集まらないとか、そういう例もあったと思うのです。推進分野をどのように推進するかというのが、本当はいちばん大事なのではないかなという感じが全般としてはしたのですが、いかがなのでしょうか。
○尾崎研究企画官
 今回の推進分野というのは、先ほどの資料6の我々の省内の検討会の中で、推進分野などをはっきりさせて、メリハリをつけた配分をするという事項に対応したものであり、時間的な関係もありましたが、今回の評価の中に入れさせていただいたというところがまずあります。ただ、推進分野について、適切なメリハリをどうつけるかなど細かいところまではまだ検討が十分進んでいないというところにありますので、今後考えていくことになります。
○宮田委員
 ご説明本当にありがとうございました。そうは言っても、これを理解するのは至難の業で、皆さんもたぶん至難の業なのではないかと思うのですね。結局、我々が国家として厚生科学みたいなものに投資するのは、国民の幸せというか、健康というか、そういったものにどうつながるかということなのだと思うのです。私はこの説明を受けるのは3度目か4度目になるのですが、これはやはりあまり効率的な説明ではございませんね。ですから、いまのところ研究マネージメントという立場から言って、このような研究のグルーピングとか、評価の仕方で、本当に効率かというのをもう少し再検討したほうがいいのではないか。
 例えば感染症に関しても、違う課題において実はプロジェクトが埋め込まれております。ところが、いまの推進分野というものを設定するという構造は素晴らしいと思いますが、ここの目次で想定されている分野別の中の推進分野という形になってきてしまうのですが、科学というのは、例えば感染症でいうと地球規模の研究の中にもありますし、緊急対応にもあるし、いろいろなところにあるのです。それを総合的にどうやって連携して効率よくやっていくか。それによって、国民の健康に結び付けるかということに関して、そろそろ研究開発全体のマネージメントに関する仕組みに関しても研究費を投入して、やり方を検討していただけませんか。この報告書を読み上げるだけの時間というのが全く無駄だと思っていて、結局、今年の厚生労働省の科学研究費で国民にどのような成果を、このような仕組みでやるのだということを例えば15分ぐらいで説明できるようになっていただくと、お互いにこれはよろしいのではないか。
 それから、研究開発そのものもいろいろな部局で部分的に行われているものが、先生のご指摘のように全体把握としてマネージメントできるようになるのではないか。すぐできるとは思いませんが、そのような研究開発のマネージメントの仕組みを、先ほどの最初に省内で研究会をやったというのは素晴らしいことなので、それをもう一歩進めていただいて、省内の中の相互の研究のシナジズムとか、あるいは省外との連携も含めて、効率化、あるいは研究開発のマネージメントの体制を是非考えていただきたいと思います。
 ここで皆さんの説明を伺って、たぶん私たちは「よし」と言うのだと思うのですが、果たしてそれだけでいいのかなというのは、毎年これを繰り返していて思っていまして、もう少し何かうまいマネージメントの仕組みができないかなと思っております。もうちょっとソリューションベース、つまり、インフルエンザとか新興感染症に関しては、このような研究費をこのレベルで投入していって、結局、国民にはこのような成果が期待できるということで言われると、もう少し何か頭が整理されるような気がします。ソリューションベースでお願いしたい。
○永井部会長
 私もちょっとそういうことを感じまして、先ほどPDCAサイクルという話が出ましたが、研究全体のマネージメントにおいてもPDCAサイクルが必要だろうと思うのです。プランをして、実践をどうするか、チェックしてアセスメントをどうするか。その辺の連携がうまくいっているかどうか、あるいはそもそも全体はどこを向いて進めていくのかという。たぶん宮田委員は、まずそういう大枠を知った上で個別の計画をお聞きになりたいということだろうと思うのです。是非、これからそういう検討も進めていただきたいと思います。
○森嶌委員
 いま宮田委員がおっしゃったこととわりと似ておりますが、こういった研究分野、研究事業を選んで、ここへやりましょうということでいろいろ評価をされて、最後に総合評価というようになっておりますね。ここの言葉が、結論としていろいろな言葉が出てくるのです。「非常に重要だ」とか、「もっと進めるべきだ」とか、いろいろな言葉が出てきていますが、ここでもう1つメリハリをつけるといいますか、「これは徹底的にやるんですよ」とか、そういったものは総合評価としてこういう言葉で表現しましょうとか、何かないと、何となくそこに関与された方の書いた言葉そのままで、お好きな言葉を使われておられるなと。これではやはり総合評価としては不十分ではないかなという気がしております。先ほど説明でも必ず総合評価の所を読まれましたね。ここで、この研究は、例えば今年度は、来年度は、これとこれとこれが本当のメインでございますというものが出てくると、もっとわかりやすくなるのではないかと思います。全体的にワーッと流れていってしまいますから、非常に理解がしにくいという感じを受けました。
○高杉委員
 医師会の高杉です。非常に盛りだくさんに良いことが書かれているのですが、では、昨年のインフルエンザの結果はどうだったのだろう。これは新しい施策に反映されていない。あるいは総括をまとめて、さあ、どうするかということが加わっていない。前年と同じようなことを書かれたのではないかなという気が、1つしました。
 私は広島県なのですが、今年、中央に入ってきたから、中央のこういう会議は初めてなのですが、認知症の対策、地域でどう見ていくか。モデル事業をいただいて、いろいろなチャレンジをしました。そういうことの成果を盛り込んだ新しい施策にしてほしいなという思いが1つします。
 結構、地域でいろいろなトライアルをして、各地区でいろいろな試みをやって、良いこと、失敗したことがいっぱいあると思うのですが、それのまとめはおそらく厚生労働省に入ってきている。それをもう1つ揉んだ新しい施策にしてほしいなと、そんなことを思います。
 もう1つ、97頁、鳩山元総理も長妻大臣も、相補代替医療を進められていると聞いているのですが、どうなのだろう。例えばいまのホームヘルパー支援問題も、医師会も今度声明を出しますが、危険なことがいっぱいあるときに、きちんとそれを管理していかなければいけないと。私はそのように思いますが、そこのところもよろしくお願いします。
○永井部会長
 時間の関係があって申し訳ないのですが、お手元に意見をお書きいただく書類が配付されているかと思います。「厚生労働省の平成23年度研究事業に関する評価案に関するご意見」ということで、紙が回っておりますので、各委員の方々これにお書きいただいて、事務局まで月曜日までにお届けいただくということでお願いしたいと思います。これを踏まえて、また事務局のほうでそれを統合した形で取りまとめを行うということで、修正を行っていただきたいと思うのですが、そういう形でいかがでしょうか。申し訳ないのですが、今日は時間の関係がありまして、議論はたくさんあるかと思います。それを是非この意見書にお書きいただいて、ご提出いただきたいと思います。最終的には、事務局から私が報告を受けて、その点を確認した上で取りまとめとしたいということで、お任せいただければと思います。そのようなことで、ご了承いただけますでしょうか。
(異議なし)
○永井部会長
 どうもありがとうございます。それでは、事務局のほうでは作業をよろしくお願いいたします。議事の3にまいります。「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しについて」、ご審議をお願いいたします。事務局よりご説明をお願いいたします。
○椎葉研究開発振興課長
 医政局の研究開発振興課長でございます。「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しについて」、説明をいたします。これまでの経緯ですが、平成18年7月に「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」を策定しております。その後、iPS細胞、ES細胞などの新たな幹細胞技術の出現であるとか、既存の幹細胞の前臨床研究の進展など、幹細胞研究をめぐる状況は日進月歩で変化しているところです。こうした状況を踏まえて、本部会に設置された専門委員会において、昨年の5月から本年の6月まで、12回にわたり指針の見直しの検討および改正指針案の策定を行いました。先の7月8日の部会において改正指針案について説明して、ご審議をいただいたところです。
 本日、配付した資料ですが、3種類あります。資料3-1、資料3-2、資料3-3ですが、まず資料3-1です。これは指針改正案の主な変更点を示したものですが、前回の本部会でお配りしたものから変更はありません。同じものです。また、資料3-2は新旧対照表で、変わったところを赤い字で書いております。資料3-3は本改正指針案です。この資料3-2と資料3-3について、前回の部会でお配りしたものからの主な修正点ですが、冒頭に前文を追加したところです。前回の部会において、委員の先生方からはさまざまなご意見をいただいておりますが、この中でiPS細胞を用いた治療の実現には、現段階において患者の方々に過度の期待を持たせないように注意が必要といったご指摘もいただいております。このような指摘をいただいて、指針に前文を追加させていただいたところです。 資料3-3の4頁をご覧ください。ここに前文を書いておりますが、事前にお読みになった先生方もいらっしゃると思いますが、ポイントについて説明させていただきます。まず前文の4頁ですが、第1パラにはヒト幹細胞を用いる臨床研究についての国民の期待について記載されています。第2パラから第3パラにかけては、これまでの経緯を記載しています。真ん中辺りの第4パラ、第5パラが肝の部分です。第4パラは、新たな幹細胞技術によるヒト幹細胞臨床研究に対し、研究開発の推進を進めるために、ヒトiPS細胞やヒトES細胞についても指針の対象とすることとしたというところです。また、被験者等の安全性、倫理性等の確保を図る観点から、多様化する研究体制等について明確化したというところです。次のパラグラフですが、ヒト幹細胞臨床研究、取り分けヒトiPS細胞やヒトES細胞など、新しい幹細胞技術の臨床研究においては、人体への影響について未知の部分もあることから、被験者の安全性及び倫理性の確保に対して、盤石な体制が構築されている機関において実施されることが必要である。さらに、実施研究機関においては、国民の皆さんがヒト幹細胞による治療がただちに実現する等の誤った認識により、過剰な期待や不安を持つことによって混乱を来すことのないよう、ヒト幹細胞臨床研究に係る適切な知識が得られるよう、情報公開を行う等の積極的な取組が求められることとしています。最後のパラグラフですが、今後の方針です。指針については、今回作成させていただきますが、技術の進歩や新たな科学的知見の集積に基づきまして、不断の見直しを行うことが必要であると。その際には、この厚生科学審議会において審議をしていただくということです。また、実際にヒト幹細胞臨床研究の実施に際しましては、この指針の要件に基づくのみならず、最新の知見に留意して審議会において個別に審査を行うこととする、とまとめているところです。
 前回の部会においては、このiPS細胞の臨床研究の進め方についてさまざまなご意見をいただいたところです。その中での主な意見ですが、自己由来iPS細胞の臨床研究から始めるべきだという意見をいただいた一方、自己細胞と他家細胞の安全性の差異は科学的に認められないので、自己細胞の臨床研究を先に進める理由がないという意見もいただいたところです。先ほど説明させていただいた改正指針案においては、自己細胞に加えまして他家細胞についても、臨床研究で使用できることになっているところです。そうではありますが、iPS細胞を用いる臨床研究の進め方については意見が分かれるところで、今後もさらなる検討が必要であると考えています。特に、自己と他家の安全性の比較などについては、引き続き専門委員会やワーキンググループなどにおいて検討を進めて、必要に応じて指針に明示していこうと考えているところです。
 最後になりますが、このヒト幹細胞、特に我が国で開発されたiPS細胞技術の進展については、本当に我が国にとっても重要な課題です。iPS細胞の研究については、病態解明や画期的な新薬の開発、また夢の再生医療への応用などにも活用されまして、将来の我が国の医学、世界の医学の発展に大きく貢献することが期待されているところです。厚生労働省としても、ヒト幹細胞技術の実用化に向けて、さらに臨床研究を進めていただけるよう考えています。私どもの研究開発振興課の中にも、再生医療推進室を7月20日付で設置したところです。5人体制で、私の隣の谷室長がトップですが、こういった推進室において再生医療推進体制の強化を図っていきたいと考えているところです。引き続き、ヒト幹細胞を用いる臨床研究の推進について尽力してまいるところですので、今後ともご協力をよろしくお願いします。私からの説明は以上です。
○永井部会長
 ありがとうございました。ただいまの説明に質問や意見のある方は、発言をお願いします。前回の部会で金澤委員からご指摘があった再生医療、ヒト幹細胞臨床研究に対する過度の期待というところを、少し明確に説明しておいたほうがいいのではないかということで、前文を付けさせていただきました。しかしながら、基本は安全性の確認ということで、それをとにかくプライマリーに置いて研究を進めていただくことを、特にこの前文の中で強調してあります。ご意見をいただけますでしょうか。
○今井委員
 新しいことに対するチャレンジのときは、必ず危険は付きまとうものというのはおかしいのですが、100%安全という形での新規の研究というのは、あり得ないと思うのですね。今回、このことについてのみならずなのですが、人に関する新しいことが始まったときに、すべてのことをその時点でリスクも含めて知り得ているということはあり得ないのですが、例えば過去にC型肝炎問題も含めてNonA、NonBと言っていて、この肝炎がどんな肝炎かもよくわからず、そんなに弊害はないと思われていた時代に、私も医者をやっていました。ですので、NonA、NonBと言われていたものが突然C型肝炎になったときに、わかったことからその前の部分のところにまで責任を課すような法律が世の中にあること自身がちょっとおかしいのだろうと思います。今回に関しても、これはヒトES細胞の問題だけではなく、あらゆる医学の発展のための問題の中で、やはりそこに何か保険がないと難しいかなと思います。その保険をどういった形にするか。ですから、このことがわかる前のことに関してはお構いなしという保障を世間から、法律的にも取るのか、それともそういった場合の対策費を既に用意しておくのか。または、それだけではなく、ここに何らかのデメリットがあるとわかった時点で、これを必ず全医師に広報して、全員がそれを知ることができるようなシステムを作るかなど、考えることはたくさんあると思います。やはり、何かその辺りのことをきちんとしておいたほうがいいのかなと。もしくは、厚労省の方々がこういうことについてアピールすべく、既にあちらこちらにオファーをされているのだとしたら、それが実るようにもう少し広報していただいたほうがいいかなと思います。以上です。
○永井部会長
 ただいまのご指摘について、いかがでしょうか。
○椎葉研究開発振興課長
 新しい技術を人に導入する際に伴う根本的な問題だと認識しています。私どもとしては、この指針が我々が考えるうえでの最良のもので、これを是非研究をやられる方には知っていただいて、これに基づいてやっていただくことをいちばん最初にアナウンスさせていただきたいと思います。そして、全世界で同じように進められると思いますが、やはり全世界の皆さんが同じ土俵に立っていると思いますので、できるだけ人の幸せにつながるようにしっかりとやっていきたいと考えています。先生のご指摘は、本当に重く受け止めましてやらせていただきたいと考えています。
○永井部会長
 いかがでしょうか。
○宮田委員
 いまのことに関連しますが、指針全体の枠組みは、この間の議論を踏まえていただいて非常にいいものになったと思っています。ですから、むしろ実際に研究者たちと一生懸命議論して、プロアクティブにこの指針を運営していくほうが、今後の課題になるのではないかと思っています。
 1つだけ、前々からこの幹細胞の研究の報告を受けていて気になったのは、17頁の対照表をご覧いただきたいのですが、上のほうの?@「ヒト幹細胞臨床研究における重大な事態について、これこれ報告せよ」ということが書いてあります。いままでの審議では、重大事態の報告が9カ月前の話だったとか、いろいろ遅れているのが非常に多かったと思います。いまの今井先生のお話もそうなのですが、ここで私たちがその報告を受ける最大の眼目は、その情報を皆で共有して必要なら広報するということだと思うのですね。ですから、この?@ですと、重大事態が起こった場所で原因を分析して、その他必要な指示を与えたうえで厚労大臣に報告しろと書いてあるので、これはもう少し早めたほうがいいのではないかと。重大事態が起こりました、原因究明中ですという報告でもいいですから、これは上げるべきだろうと思っています。ですから、これも文章からいうと、「必要な指示を与える」で切っていただいて、「厚生労働大臣に速やかに報告すること」と書いていただければ、すべての措置が終わったうえでいいのではないかなどという誤解が生じなくて済むのではないかと思っています。とにかく、重大事態があったら報告を上げてもらう。それで、逐次どういう手を打ったかということも含めて、本当に遅滞なく我々が事態を認識し共有することが重要だと思っていますので、是非そこの案文は変えていただきたいと思います。
○永井部会長
 いかがでしょうか。
○谷再生医療推進室長
 宮田委員のおっしゃるとおりですので、ここは誤解のないように最後にまとめたいと思います。
○永井部会長
 そのほかにいかがでしょうか。
○森嶌委員
 いまのことに関連するのですが、重大事態というのはどこかに定義はされておられますか。全部は詳しく読んでいないのですが、それがないと実は個人個人の判断になってしまいます。例えば、薬事法や死亡事故の場合など、いろいろありますよね。それが何かないと、結局はあまり明確にならないという気がしてしょうがないのですが。
○永井部会長
 これは、遺伝子治療等でもかなり幅広に取っていまして、原疾患による死亡もすべて重大事態として報告を受けていると思うのですが、いままでのガイドラインの運用に従うということでいかがでしょうか。
○谷再生医療推進室長
 新旧対照表の4頁の上から2つ目(8)に「重大な事態」という文言の定義が行われています。「被験者の死亡その他のヒト幹細胞臨床研究の実施に際して生じた重大な事態及びヒト幹細胞臨床研究の実施に影響を及ぼすおそれがある情報の提供を受けた事態」となっています。基本的には死亡ということですが、高度な障害であるとかいろいろなものが含まれてくるかと思います。この定義についていちばん難しいのは、やはり未知の部分がまだいろいろあると、ある程度の定義が逆にそれ以外の問題点についての報告の足かせになるようなこともありますので、そこはまたワーキンググループ等で検討しながら提示ができればと思っています。いかがでしょうか。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。もしご意見がないようでしたら、ただいま宮田委員から発言いただいた箇所の修正を行っていただいたうえで、最終的に事務局で取りまとめていただいて、私のほうで確認させていただきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○永井部会長
 ありがとうございました。それでは、そのように進めさせていただきます。審議事項の最後ですが、議事の4「ヒト幹細胞臨床研究について」の審議です。名古屋大学医学部附属病院など2機関からの申請です。これについて、事務局より説明をお願いします。
○研究開発振興課
 ヒト幹細胞臨床研究については、資料4を用いて説明させていただきます。ヒト幹指針に基づいて申請されました臨床研究実施計画について、専門委員会で審議された結果、指針への適合性が了承された申請2件について、ご報告申し上げます。今回報告しますのは、表紙にありますように、名古屋大学医学部附属病院、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科からの研究計画の報告です。その実施計画の概要と、審査委員会で審議された経過について、報告いたします。
 1頁目をご覧ください。名古屋大学医学部附属病院からの申請に関して、審査委員会永井委員長からの報告です。2頁目から概要があります。研究責任者は、名古屋大学医学部附属病院の石黒直樹先生です。骨延長術を要する症例として、軟骨無形成症や軟骨低形成症など、骨系統疾患に伴う低身長を呈する症例、または外傷や先天性疾患によりまして、脚長の不等を有する症例が対象となっています。研究実施期間は5年間で、目標症例数は30骨です。骨髄間葉系幹細胞を培養しまして、骨延長術後に培養骨髄細胞と多血小板血漿をトロンビン、カルシウムとともに、骨延長部位に移植するもので、治療期間を短縮することを目的とする臨床研究です。
 今回の臨床研究については、7頁からの実施計画書と、11、12頁に概要があります。また20頁にポンチ絵がありますので、そちらを用いて簡単に説明させていただきます。7頁は、骨延長術が必要な被験者に対して、培養骨髄細胞移植を併用するということで治療期間は短縮できるかどうかを検証することが目的です。
 8頁は、臨床研究の実施が可能であると判断された理由という項があります。こちらの記載ですが、2002年のヒト幹指針の施行前から既に開始されています臨床研究の成果を、委員会に報告いただいています。これまで既に70骨以上に実施しまして、合併症の頻度は従来の治療より有意に少ないという安全性が示されていました。
 11頁に概要がありますが、臨床研究の概要は、対象患者は30歳未満です。一部未成年の被験者も本研究の対象となっているところがポイントです。20頁のポンチ絵には、治療の流れがあります。骨延長術の際に骨髄液を採取しまして、3週間培養した後に、骨芽細胞と多血小板血漿、トロンビン及びカルシウムを混ぜて移植します。その後、臨床経過をレントゲン等で評価していくということです。
 審議の概要ですが、3頁にあります。委員会での疑義については、主に臨床研究のデザインと、未成年者が被験者になるというところでインフォームドコンセントの文書について修正が求められています。ヒストリカルコントロールを対象としまして統計学的に検討した結果、プロトコールを変更していまして、症例数を30例と変更しています。また、未成年被験者にもわかりやすくする目的で、21頁からの説明文書と、24頁からポンチ絵を若干わかりやすくするような意味で追加していただいています。これらの臨床研究の変更内容について審査委員会にて審議を行った結果、了承されています。
 次の臨床研究ですが、25頁にあります。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科からの申請です。末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験です。26頁から、臨床研究計画があります。研究責任者は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の錦戸雅春先生です。本プロトコールですが、本部会で既に複数回の審査をいただいているところです。札幌北楡病院を主任研究機関とする多施設の臨床研究で、27頁から審議概要があります。7月6日の審査委員会にて審議を行いまして、既に了承されています。ほか、29頁に計画書、40頁に趣旨、43頁に説明文書等がありますが、これは以前既に報告した内容と同様ですので、割愛させていただきます。
 以上、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で指針への適合性が確認された2つの申請についてのご報告を終了させていただきます。
○永井部会長
 ありがとうございました。ただいまの説明について、質問はありますか。
○川越委員
 1例目で、私の理解が正しいかどうかを確認したいのですが、これは方法論的には特に問題なくて、内容的には全く同じことをやるということなのでしょうか。
○永井部会長
 何と同じことですか。
○川越委員
 40例70骨以上に対して、既に行っている方法を、もっと数を増やしてというようなことでしょうか。
○永井部会長
 いかがでしょうか。
○研究開発振興課
 ほとんど同様です。研究機関の変更、例えばCPC、細胞の培養施設などの変更があった以外は、全く手技的には一緒です。この研究は、ヒト幹臨床研究の指針が出る以前のものですので、いままで審査などされたことがないということで、今回は審査の対象としました。
○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。
○佐藤委員
 1例目のほうですが、未成年が対象者になるというのですが、年齢的には何か上限や下限というか、何歳以上というのは設けてはいないのですか。
○研究開発振興課
 今回の臨床研究では、下のほうの年齢は特に規定はない認識です。
○佐藤委員
 ただ実際には、あまり若すぎても駄目そうですし、年齢の幅はありそうなのですが、その辺りはいかがなのでしょうか。
○研究開発振興課
 そのとおりです。従来、骨延長術を必要とする患者さんというのは、大体10歳程度が一般臨床では行われており、そういったものが対象となりますので、必然的に年齢も大体そういうところに落ち着いてくるということになっています。
○佐藤委員
 同意書なども、そういうことを頭に入れて審査いただいたということで、よろしいですよね。
○永井部会長
 そうですね。小児にできるだけわかりやすい同意書を別に作っていただきたいということで、対応していただいたということです。
○佐藤委員
 ありがとうございます。
○永井部会長
 そのほかいかがでしょうか。名古屋大学は、いくつか新聞報道でも研究対象のことで指摘されましたが、その点はもう改善したということでよろしいのでしょうか。
○研究開発振興課
 名古屋大学は、新聞等の報道で若干御記憶されているかと思いますが、本臨床研究とは別の臨床研究です。少し時間が押していますが、少しお時間をいただいて簡単に説明させていただきたいと思います。報道された臨床研究は、泌尿器科の臨床研究となっていまして、そちらで若干の問題があるということで、私どもも、ともに臨床研究を確認してまいりました。被験者等の健康状態は特に問題がないということです。ではどういったところに問題がありこのような事件が起きたのかというところを全部確認したうえで、修正を行っています。特に、院内の体制についても、問題点が若干あったという報告を病院側からいただきまして、そういったところを修正しています。最終的には、その修正が全部終わって、これからまた新たに、特に再生医療の臨床研究を行っていくという体制ができたということで、先日の新聞報道会見を行っているということです。ですから、臨床研究体制としては、ヒト幹指針に沿って修正を適切に行っているという理解です。そういったことも併せて、今回の名古屋大学の臨床研究計画について、研究体制が整っていると判断をしているところです。
○永井部会長
 ただいまの件について、よろしいでしょうか。もし質問がないようでしたら、ただいまの件については2件科学技術部会として了承するということで、厚生科学審議会へ報告ということで進めさせていただきたいと思います。以上、予定しました審議、報告事項はこれで終了ですが、何か全体を通じてありますでしょうか。あるいは、事務局から連絡事項はありますでしょうか。
○尾崎研究企画官
 次回については、別途日程調整をさせていただいているとおりですが、10月13日(水)の17時から19時に開催する予定にしています。正式なご案内については、詳細が決まり次第送付させていただきますので、よろしくお願いします。
○永井部会長
 先ほど説明しましたように、研究事業に関する評価についてのご意見は、月曜日までにお寄せいただければと思います。よろしくお願いします。それでは、これで終了させていただきます。どうもご苦労さまでした。


(了)
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